様々な木々が好き勝手に生い茂り、競い合うように背を伸ばす森の深奥。
ひとときの憩いの中で育つ少年の肉体に力は宿る。
肉体は安息を知り、しかし精神は安穏を忘れている。
休められることのない精神に休息を与えたならば、そこに宿るものは何であろうか?
十二分の睡眠を取り、誰に起こされるでもなく瞼を開いた。
…ここへ帰り着いたのは、少し薄暗くなっていた頃だろうか。
「この二人は俺が処置する、お前は寝ておけ」
簡素な作りだが大きく、部屋も多そうな…屋敷と呼んでも良さそうな木造の家に入った俺たちには、
まずは怪我人と死体を処置する必要があった。
が、俺はただ「寝ろ」と指図された。何処で? と俺が思うとほぼ同時に、
「……あぁ、そうだ…こっち側の奥の部屋なら何処を使ってくれてもいい」
向かって右を指した主の言に従って、適当な部屋のテーブルに剣と荷物を投げ出し、
身体は少し埃っぽいベッドに無造作に預けた。
そして、気付いたのが今、朝を迎えた頃だ。
特に何かをしようというわけでもないが体を起こす。
その動作には、あらゆる不調も障害も感じられない。
十分すぎるほど眠ったせいか、すこぶる体調が良い。だが…
それが、今何の役にも立たないことを俺は解っている。
自分の身体に漲る力と、それを活かす事のできない苛立ちが入り混じって気分が滅入る。
俺は、力なく体を寝かせた……