顎の先に剣、そして鳩尾の辺りに剣。
奴の眼に、これら一対の剣は映っているのか。奴の耳は、姉の話を聞いているのか否か。
いや、そもそも奴は姉の存在に意識を向けているのか。
どの点についても、どうにも掴み辛い反応しか示していない奴だったが、
一拍置いて姉を一瞥した眼には明確な不快感が映っていた。
「俺は蒙昧な信仰者の言になど従わないし、愚者が思い上がるのを笑って流せる程おおらかでもない」
「黙れっ!!」
姉の声は春風のような暖かさを失った、姉の剣は軽さを……持ち替えるだろう。
先にも触れたかもしれないが、俺にはあまり信心が無かった。鍛錬と日々の暮らしを両立できるから、という
単純な理由で俺は警護を引き受けていたが、姉は違った。
心からバラモスの守護を信じていた姉ゆえに、その信仰を否定する暴言に激し……………。
だが、………所者の血など撒き散らしたくはない。最後通告としてもう一度、脅しをかける。
はずだった。
少なくとも俺にはそう見えていたし、後の姉の態度を思い……りその推測は正しか…………