暇だしドラクエ3の主人公になった妄想をする4

このエントリーをはてなブックマークに追加
390('A`)
あの日あの時、あの男は無防備に立ったまま「ルビス」と口にした。
こともなげに『甦るもの』ルビスの名を、我らの地にわざわいなすラスタの名を奴は口に出した。
俺はけして敬虔なバラモンではなかったと記憶しているが、奴の緊張感のない態度に微かな苛立ちを覚えた俺は、
微かに殺気を臭わせるように意識して声をかけた。
「…ここはンゴロンゴロに記された我らバラモンの聖地…余所者がみだりに立ち寄ってよい場所ではない」
「やれやれ、驕りだな」
奴が続ける言葉、その口調は呆れに満ちているように聞こえた。
「個人が他者の行動の可否を定める権利は、これを認め得ない」
こいつ、この期に何を、言っている…?
これまでに出会った誰とも異なる、まるで人ではない何者かの声を聞いたかのような感覚だった。
それでも俺は得体の知れない不安感を押し殺し、奴の行く手を遮ろうと無言のまま立ちふさがった。
「お前と問答をする気はない。ここは我らの守護者たる神獣バラモスを祀る社、お前には用の無い場所のはず」
「…姉さん」
相対する俺と奴の間に凛とした声が響き、奴との間の気の歪みを裂いた。
凛としていながらも優しく暖かい響きを感じるが、その裏に冷淡な鋭さを間違いなく内包しているのは、
それが普段耳にする、俺に宛てられた声とは別物だからなのだろう。
姉は滑らかに奴の傍に取りつき、一対の軽い剣先を胸元に突き付けて訊ねた。
「選べ。服従か、信仰か、それとも流血か」


時折話を止めて酒瓶に口をつけ、かさついた唇を濡らしながらノガレは話し続ける。
そこに、いつもの最低限の言葉しか発さない寡黙な梟はいない。