【ともちゃんと】あずまんが大王12【もきなわ】

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ちよ:お姉ちゃん…。援けて…。西瓜さん…死んじゃうよ…。
とも:酷い怪我…。農薬か何かを散布したのかしら…。或いは、何処かの馬鹿学生が調理実習に使ったか…。
ちよ:お姉ちゃんは、回復魔法、出来るんだよね?お姉ちゃんなら、西瓜さん、治せるんだよね?
とも:無理よ。損傷が激し過ぎるわ。フォロー出来るレヴェルじゃない。遣れた所で、気休め程度の延命処置。
 言っておくけれど、此の子は遅かれ早かれ死んで仕舞うのよ?根本的な問題も解決されないから、相応の苦痛も伴う。
ちよ:でも…、此の儘…見殺しになんて出来ない…。
とも:分かったわ。少し下がってて。もう少しだけ頑張って。今助けてあげるわ。
 ドゥンパンドゥンパン・ドゥンパンパーン!
(グシャァァ!!)
ちよ:如何して…?如何して…割って仕舞ったの…。
とも:確かに私は此の西瓜を割った。でも其れは事象の表層でしかない。真の意味に於いて私は此の西瓜を救済したのよ。
ちよ:助けてないよ…。割って仕舞ったんじゃない…。お姉ちゃんの言ってる事、わかんない…!
とも:私が此の西瓜に延命処置を施した所で、其れが何を与えたかしら。
 死ぬ事も出来ず…。生きる事も出来ず…。気休め程度に長らえた生命の上、生と死の狭間に彷徨い…。
 死ぬ迄終わる事の無い苦痛を、味わい続けるだけ。其れでも、ちよちゃん…。
 貴女は、それを"救い"と呼ぶの?眠る事を赦されず、生の鎖に繋がれて。
 未来を失った身体を、苦しみで焼かれ続けて。生まれ来た事を、魂の底より嘆き悲しんで。
 其れでも貴女は、言えるの?其れが、救いなのだと。
 御免なさい。問い詰める様な真似をしてしまって。貴女はとても優しい子。
 他意が無かったのは、分かっているから。
ちよ:でも…。みんな…。お医者さんとか…。お姉ちゃんと、違う…。絶対生きなきゃ…駄目なんだって…。
とも:確かにね。今は其れが世界の定説<スタンダード>。生命は何が在っても救う可き物、
 救われなければ行けない物だというイデオロギー。生命を救うという行為のみに傾倒し酔い痴れた愚者達の吹聴する世迷言。
 生命を救う事と存在を救う事は、決して等価ではないわ。盲目的に生を賛美して。死を嫌忌して。
 例えばあの西瓜に延命処置を施したならば…。其れは、残忍。私に於ける、罪悪。