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('A`):
0対30
打線の援護もない。もう勝ち目はないだろう。
分かっていても、力ない球を投げ続けている。
敗戦処理とはそういうものだ。
意味もなく間を取った。
空を見上げる。曇天。
肩で息をする。握力も落ちた。
それでも、力ない球を投げ続けている。
ベンチに目をやる。誰もいない。
バックを振り返る。誰もいない。
バッターもいない。キャッチャーもいない。
そう、最初から誰もいなかった。
これからも誰もいないだろう。
それでも、闇に向かって力ない球を投げ続けている。
力尽きて試合放棄するまで。
誰かがコールドを告げるまで。
誰も祝福しないが、
9回裏まで辿り着くことがあるかもしれない。
人生の敗戦処理とはそういうものだ。