1 :
('A`):
22 名前:('A`) 投稿日:04/08/27 11:15
黄巾の乱に始まった中国の混乱。
その後の三国の鼎立、戦い、魏の統一、司馬氏による晋の建国・・・。
歴史の一連の流れはこうなっている。
今に伝わる歴史がすべてではない。
三国志もしかり。三国だけの争いではなかったのだ。
歴史の影で自分達のアイデンティティを懸けて戦った男達もいた。
魏、呉、蜀の狭間で、理想の社会を創ろうとした男達。
たった五十年の間だけの理想郷。
世の中のモテナイ男達に夢を与えた国。
喪国。
これはモテナイ男達の話。
14 名前:('A`) 投稿日:04/08/27 10:25
喪王 喪手内
軍師 独秦
大将軍 矢羅傍(ヤラハタ)
団子虫将軍 喪手対
陳国将軍 御托(オタク)
喪国五武人「五鬼将軍」
肝意(カンイ)
武沙(ブサ)
自虐(ジギャク)
堕眼(ダガン)
根雅(ネガ)
妖精将軍 童貞
その他の武将
自慰、不恋愛(ブレンアイ)、泡好(ホウコウ)
16 名前:('A`) 投稿日:04/08/27 10:37
喪王 喪手内
いわずとしれた喪国も王。容姿不端麗だがモテナイ男からの信頼は厚い。
小さい頃から「ブサ、キモ」と罵られモテナイ人が報われない世の中を嘆き
同じモテナイ男、矢羅傍、喪手対達と挙兵、喪国を建国。童貞。
軍師 独秦 ・・・喪国の天才軍師、童貞
大将軍 矢羅傍(ヤラハタ) ・・・喪王と同郷で共に挙兵。喪王の良き理解者であり
喪国一の武人。やさしい。童貞。
団子虫将軍 喪手対 ・・・喪王と同郷。建国時からの配下。一見ネガティブな性格だが
うちに秘める物はかなり大きい。童貞。
陳国将軍 御托(オタク) ・・・途中参加の将軍。知に優れた将軍。独特の趣味を持つ。
若い。童貞。
18 名前:('A`) 投稿日:04/08/27 10:51
喪国五武人「五鬼将軍」
肝意(カンイ) ・・・ 五鬼将軍の筆頭。優れた武を持つ。武沙と仲がいい。
蜀軍の魏延の親戚。童貞。
武沙(ブサ) ・・・五鬼将軍の次点。小さい頃の恨みからイケメンへの復讐に燃える。
肝意とは刎頚の仲。激しい気性。童貞。
自虐(ジギャク) ・・・ 小さい頃から顔のことで苛められ続けたため、声がどもる。
かなり自虐的な性格。童貞。
堕眼(ダガン) ・・・ 元は魏の太守。喪王の信条に感激して喪国に参戦。
自分では駄目駄目な奴だと思っているが相当の武をもつ。素人童貞。
根雅(ネガ) ・・・ 魏国との大きな戦いの時たまたま突撃の時間を間違い、それがたまたま
瀕死の喪王、喪軍を救う事となりその功績により五鬼将軍になった。
ほかの五鬼将軍からの信頼はかなり薄い。仲も良くない。童貞。
20 名前:('A`) 投稿日:04/08/27 10:57
妖精将軍 童貞 ・・・元は呉の家臣。酒の席で酔った呉の軍師周愉に「まこと気味の悪い顔、
酒が不味くなる」と言われ病気となる。喪王挙兵に際し、呉を捨て参加。
周愉をかなり恨んでいる。童貞。
その他の武将
自慰・・・喪国の将。自慰が好き。
不恋愛(ブレンアイ)・・・喪国の文官。
泡好(ホウコウ)・・・元は蜀の将。泡遊び(ソープ)が大好きで毎日のように泡遊びをしていた。
その不倫理を劉備に嫌われ蜀に居づらくなり喪国へ。性格が悪く、
喪国でも嫌われている。素人童貞。
74 名前:('A`) 投稿日:04/08/28 11:46
顔醜・・・顔回の子孫と言われている(というか自分で言っている)が、定かではない。いろいろな意味で顔良の宿敵。童貞。
あらすじ(コピペ人注…最新のものではありません)
412 名前:お粗末 投稿日:04/10/01 22:50:02
これまでのあらすじ
容貌醜怪なるも、仁義に厚く、武に秀でる喪手内は
同郷の矢羅傍と共に曹操に仕え、呂布討伐などに功を挙げた。
その功が認められ、一兵卒ながら曹操への謁見を許された二人であったが
彼の狭量なるを見限り、同士百余名らと共に故郷、宝慶へと帰還した。
そこで、予ねてよりの知己であった喪手対を加え
長兄喪手内、次兄矢羅傍、末弟喪手対とする「宝慶の誓い」を結ぶ。
やがて喪手内らは、地庚山へと居を移したが
噂を聞きつけた各地の喪男らが集い、その数はおよそ千にも膨れ上がった。
地庚山での日々は穏やかに流れてゆき、永遠に続くようにさえ思われた。
413 名前:お粗末 投稿日:04/10/01 22:50:26
だが、その幕引きは唐突に訪れた。
出奔して行方知れずだった喪手内の兄、喪手杉が三千の兵をもって地庚山を包囲したのである。
決死の交渉も決裂し、喪手内は歴史上に名高い「出喪の檄」と共に兵を挙げたが
圧倒的な兵力差を前に、葦之耶への退却を余儀なくされる。
この状況を打開すべく、喪手内は袁紹に仕える名将、顔醜へと援軍要請の使者を送り
その協力を得た喪軍は、辛くも窮地を脱するのであった。
しかし「地庚山に山賊あり」との噂は、既に漢全土に広がりつつあり
喪手内らはやむなく地庚山を下山、新たな拠点を獲得するため当てのない行軍を始めたが
過酷な行軍と兵糧難とに耐えかね、肝意を含む多くの者が喪軍を離脱していった。
このままではいかぬ、と喪手内は思案の末、遂に呉の孫策に身を寄せることを決断、
孫策、周瑜らの打算もあり、何とか客将として迎え入れられることに成功する。
だが孫策軍に随行し、捨石同然の扱いで臨んだ皖城の戦いに、見事勝利はしたものの
喪軍は二喬を間に挟み、孫策、周瑜ら美男子との差を痛感させられてしまう。
この出来事を元に、喪軍の内では反孫策、周瑜の気運が高まりつつあった。
続く
414 名前:お粗末 投稿日:04/10/01 22:50:58
簡易年表(年代が明らかになっているもののみ)
196年 御托、劉備軍を出奔。
198年 喪手内、矢羅傍の両名、呂布討伐戦に参加。功を挙げるも曹操を見限り脱走。
199年 故郷宝慶にて「宝慶の誓い」を結び、地庚山へと移り住む。
「出喪の檄」にて兵を挙げるも、地庚山の戦いにて惨敗。葦之耶に落ち延びる。
顔醜、白馬の戦いにて、顔良の殺害を企てるも失敗、不問に処される。
葦之耶の戦い。顔醜の加勢を得て、喪軍勝利を飾る。
地庚山下山、肝意離脱。孫策に身を寄せる。
皖城の戦いにて、大きな被害を出すも勝利。
200年 喪軍、反孫策の方針を固める。
209年 劉備軍、荊州侵攻。肝意、長沙にて関羽と一騎打ち。
415 名前:お粗末 投稿日:04/10/01 22:52:56
200年現在の喪軍、主要人物
喪手内…喪手内三兄弟が長兄にして、喪軍の長。
喪男の理想郷を築こうとするも、現在は孫策の客将。童貞。
参考…
>>16 以下多数につき省略
矢羅傍…喪手内三兄弟が次兄にして、知勇兼備の名将。
喪手内が最も信頼を置く男である。童貞。
参考…
>>16他多数
喪手対…喪手内三兄弟が末弟。口数こそ少ないが
常に冷静に状況を見据える、喪軍になくてはならぬ存在。童貞。
参考…
>>16 >>128他
武沙……喪軍きっての猛将であるが、激し易いという欠点を持つ。
離脱した肝意とは刎頚の仲。童貞。
参考…
>>18 >>393他
顔醜……元袁紹の配下。顔回の子孫を自称している。
武に優れたるのみならず、儒教にも造詣が深い智将。童貞。
参考…
>>74 >>191-195 >>232-234他
宝慶の誓い編
36 名前:('A`) 投稿日:04/08/27 11:55
「お前不細工だな。」
「ああ、つーかキモイ顔w」
「あはははは」
呂布討伐中の曹操の陣での会話。
笑われているのは若き日の一兵卒、喪手内。
「うるせーよ。」と適当に返す。
幾度となく馬鹿にされ、嘲笑されてきた。
しかし喪手内は耐えてきた。「親から貰った顔だ、耐えるんだ」
その顔のせいで喪手内はいままでずっと女から好かれた事がなかった。
むしろ「気持ち悪い」と差別、嫌われていた。
黄巾族が反乱を起こした辺りから状況は改善した。
平和な時代は女からは侮蔑の目で見られ笑われていたことと
比べると武人が力を持つ戦国時代は女に笑われないだけ喪手内にとって快適だった。
37 名前:('A`) 投稿日:04/08/27 12:07
このまま戦国時代に身を委ねようか、そんな事をいつも考えていた。
「喪手内殿・・・」
同郷の矢羅傍が声をかけ、隣に座った。
「いよいよ呂布との決戦ですな」
根っからの武人、そしてよき理解者。
顔以外はすべて持っている人物。
「そうだね、倒せるかなぁ。」
「いやはや、曹操殿はまさに天才。勝つでしょうな」
立ち上がり天を仰ぎながら矢羅傍は続ける。ああ、上を向いて顔が見えない
矢羅傍はなんとカッコイイことか!隆々とした体に似合った鎧!
「私は喪手内殿にはすべてを話してきたつもりでござる。同郷であり、信頼するに
値する人物だと思っています。みなに馬鹿にされる私のこの不揃いの顔の痛み、
なかなか分かってくれる人物はござらん。今の友ではあなたぐらいです。」
顔を下ろし矢羅傍は喪手内の目を見る。
38 名前:('A`) 投稿日:04/08/27 12:20
あまりに真剣な矢羅傍にすこし喪手内はたじろいだ。
「すみません、こんな話」
「いや、大丈夫だよ・・・。」
言葉に詰まる二人。
「では呂布との戦いでお互いに功績をたてましょう。」
そういい残して矢羅傍は陣舎に去って行った。
残された喪手内は草の上にで先刻の矢羅傍の言葉を反芻していた。
「矢羅傍も・・・」
差別、嘲笑、不細工は耐えなければいけない道なのか、
そして未来永劫耐え続けなければいけないのか、
矢羅傍ほどの人物がなぜ不細工というだけであれだけ悩まなければいけないのか。
呂布のいるカヒ城は目前に迫っていた。
69 名前:どらい ◆q8/Hme/TYQ 投稿日:04/08/28 11:36
曹操軍はカヒ城を包囲した。
「矢羅傍、ちゃんと生き残ろう」
「無論、そのつもりでござる」
戦いの前の矢羅傍の顔は英気と自信に満ち溢れていた。
「俺達は戦いの中でしか生きられない」
曹操軍と呂布軍の小競り合いは数ヶ月に渡り続いた。
喪手内も矢羅傍も目を見張るは活躍ではあったが、所詮一兵卒、
とくに恩賞もなかったが周りの兵士達からは
「貴方達、強いですね。」「この二人の近くにいれば大丈夫だな」
等と言われた。信頼を勝ち取った。
二人は戦い続けた。顔の事で馬鹿にされていたストレスに比べれば
自分達の力が認められる、主張できる戦場(ここ)は天国であった。
70 名前:どらい ◆q8/Hme/TYQ 投稿日:04/08/28 11:36
戦いは佳境を迎え、曹操はカヒ城を水攻めし始めた。
「人中に呂布あり、馬中に赤兎あり」と讃えられた猛将は敗れた。
戦いに勝った曹軍はカヒ城下で略奪、陵辱を始めた・・・。
「浅ましいな・・・」
喪手内、矢羅傍は遠い冷ややかな目でその惨状をまざまざと見ていた。
「喉が渇いた。俺達も酒でも頂こう、もう誰も生きのこっちゃいないさ。
酒の一つ貰ってもバチはあたらないだろうさ」
目の前の民家に入った。
酒を物色していると突然「ガタガタ」と音がした。
「誰だ!」矢羅傍の声。
そこには人妻らしき女がいた。
怯えた眼でこちらを見ている。
「大丈夫、何もしない、なぁ矢羅・・・傍・・・」
矢羅傍の目がおかしい
「はぁはぁ」
「おい!矢羅傍!」
71 名前:どらい ◆q8/Hme/TYQ 投稿日:04/08/28 11:37
突然矢羅傍はその女に飛びつき、弄っている。
「いやぁ!」
「止めろ!矢羅傍!」
喪手内の手が矢羅傍の手に掛かると同時に女の手により矢羅傍は
グイッと突き放された。
「あんたみたいなのにやられるぐらいなら、
あんたみたいな気持ちの悪い男に犯されるぐらいならぁ!」
女の甲高い怒号。はっとする矢羅傍。
「ブチッ」
女の口から血が流れ出した。
「おい!女!」
喪手内は近づき抱き抱える。
「死んでいる・・・舌を噛んだんだ・・・」
呆然と矢羅傍は立ち尽くしていた。
このままココにいてはマズイ、他の奴に見られては!
「矢羅傍、とりあえずこの場を去ろう」
何も言わず虚空を見つめる矢羅傍を引っ張って民家を離れた。
「あんたみたいな気持ち悪いやつに犯されるなら!」
カヒ城は水攻めの後で不快な湿った空気だった。
91 名前:どらい ◆q8/Hme/TYQ 投稿日:04/08/28 22:51
カヒ城には深々と雪が降っていた。
戦いにより汚れた大地もその白さで埋め尽くされそうとしていた。
「喪手内殿・・・」
二人きりの兵舎で、憔悴しきった声で矢羅傍は言った。
「あの女の言葉が今でも耳を離れないのです。気持ち悪いと言う言葉が!」
「矢羅傍・・・」
矢羅傍の顔には苦悩の色がはっきりと見える。
「この戦場でもこのあり様!そう、平和な時代にはこの顔、女人とまぐわるなど
無理なことと承知してござった。しかし、ここは戦場!拙者は・・・ここでなら
できると思っていたのに!それがこの低落!無常、無残!どこへ逃げてもこの顔からは
逃れる事はできないのでござるな!ははは。我が矢羅家も拙者の代で断絶でござるな。
女をむりやり従わせることもできないとは!」
喪手内の耳には歯軋りの音がしっかりと聞こえた。
「これが運命なのでござろうか・・・喪手内殿ぉ・・・」
運命、その言葉が喪手内の何かを捕えた。
(運命とは何か?顔のせいで虐げられてもそれが運命ならば仕方がないのか?)
喪手内の中の何かが変わった。
92 名前:どらい ◆q8/Hme/TYQ 投稿日:04/08/28 22:51
「運命とは・・・」
矢羅傍が顔をあげ、喪手内を見る。いつもとは違うカオがあった。
「運命というものには必ず従わなくてはいけないのか!?また、必ずあるものなのか?
決まっているものなのか!?それが運命だからとそれを甘受しなければいけないものなのだろうか?」
いままでの喪手内とは違った。矢羅傍ほどの人が何故こんなにも
悩まなければいけないのかという懐疑が喪手内の気持ちを何処かへ昇華させた。
何時かの草むらの上での疑問が一気に氷解した瞬間であった。
「顔が悪いだけで虐げられる、そんなものが運命なのか!そんなに安っぽいものなのか!
醜男が虐げられる事など一種の風潮に過ぎないのではないか?そして、そんな安っぽいものが
運命なら運命など従うに値しない!」
喪手内の眼にの中に矢羅傍は未来を見た。
「その風潮、運命を変える事はできるんでござろうか・・・」
「私達が変えるんだ!私と矢羅傍、君とでだ!」
矢羅傍は目の前に光が見えた。その光はどこかへと続いていた。
中国史に燦然と彗星のごとく現れた一個の猛将呂布が曹操により斬首された。
その首が落ちる事は曹操の台頭を意味していた。198年雪の積もる冬だった。
128 名前:('A`) 投稿日:04/08/31 23:42
喪手内、矢羅傍の故郷許都の南、汝南のある村にて。
一人の男が軒の下の黒い虫を見ていた。
「丸まって暗いところにいる。それって幸せなことなのかもしれないな」
大柄な体、不精髭、肉が垂れた醜い顔。
「光があれば姿がはっきり見えてしまう。美男子ならそれがいいのかもしれないが、
俺にはキツイことだ。」
悲しみ混じりに誰に言うでもなく呟いた。(もしかしたら言えばこの黒いモノへ呟いたのかもしれない)
「そういえば喪手内殿や矢羅傍殿が従軍している曹軍は呂布に勝っただろうか・・・、
俺も参加して一旗あげるべきだったかな。あの矢羅傍殿も認めてくれたこの腕、
使ってみるべきだったかな。いやいや、ただのお世辞かもしれん。
やはり、この虫のように暗い所に居る方がいいのだ。」
すべてを自己完結させてしまうこの男の癖である。
「一生暗い所で静かに過ごしたい。誰も俺を突かないでくれ。」
151 名前:('A`) 投稿日:04/09/06 07:11
>>128 しかし揺れ動く乱世は、彼が瓦石に埋もれることを是としなかった。
突如百名ほどの兵を引き連れ、喪手内、矢羅傍らが故郷、宝慶の村に戻ったのである。
「喪手内殿…これは一体」
驚きの表情を浮かべる喪手対を前に、彼はゆっくりと事情を語り始めた。
呂布軍との戦いを終え、功があった喪手内、矢羅傍は
一兵卒の身分でありながら、特別に曹操への謁見を許された。
「此度の戦、真にご苦労であった、そなたらに…」
曹操の言葉が、止まった。
微笑をたたえていた曹操の顔が、みるみるうちに不快の色に染まってゆく。
何故曹操が不興を浮かべたのか、彼らが理解することは容易であった。
彼らの挙げた華々しい戦功と、そのみすぼらしい容姿とは
誰が見てもあまりに釣り合わないものであっただろう。
「…特に恩賞を与える。予は疲れた、退がってよい」
曹操は興を削がれたと言わんばかりに、荒々しく席を立つと
それきり二人の前に現れることはなかった。
152 名前:('A`) 投稿日:04/09/06 07:12
失意の内に兵舎へと戻った二人を迎えたものは、
先の戦いで彼らに心服した兵士達であった。皆一様に醜い顔貌をしている。
「お二人の御活躍でしたら、太守くらいには任ぜられたのでありましょうな」
「ご昇進なさいましたら、是非とも私を麾下にお加え下さい」
明るく冗談を言う彼らを前に、しかし喪手内は真っ青な顔で首を振った。
矢羅傍の目には涙さえ滲んでいる。
二人の尋常ではない様子に、騒がしかった兵舎はしん、と静まり返った。
皆怪訝な表情を浮かべながら、二人を見つめている。
喪手内は事の経緯を小さな声で話し終えると、感極まったように叫んだ。
「風采が人より劣っている、たったそれだけの事でこれほどの恥辱を受けねばならぬのか。
最早あの男の下で働くことは出来ぬ。我について来る者はないか」
ある者は涙を流し、ある者は怒りに体を震わせながら、喪手内の話に聞き入っていた。
皆同じ思いであった。
その夜、曹操軍から百数名の兵士が脱走した。
脱走者の名に喪手内、矢羅傍の両名を見つけた曹操は、敢えて追捕の令を出さなかった。
曹操からすれば、お荷物を厄介払い出来たような心持ちだったのだろう。
153 名前:お粗末 投稿日:04/09/06 07:13
「なるほど、そのようなことが…」
矢羅家にて酒を酌み交わしながら、喪手対が呟いた。
周りでは兵士達が酒を飲み、馳走を喰らいながらわいわいと騒いでいる。
矢羅家はこの村ではそれなりの名家であるため
当面の間、矢羅家が兵士達の面倒を見ることにしたのである。
喪手内が口を開いた。
「我々は君にも是非同行して頂きたい、と思っている。
君ほどの逸材をこのような寒村で終わらせるのはあまりに惜しい」
喪手対はしばし沈思した後、意を決したように顔を上げた。
「分かり申した。あなたの力となるべく、今一度この身を光の下に晒しましょうぞ」
喪手内は満足気に頷くと、懐から三本の剣を取り出し、こう続けた。
「ついては私、矢羅傍殿、そして君とで義兄弟の契りを結びたいと考えている。
さあ、この剣を受け取ってくれ」
乱世にその名を轟かせた猛将呂布の処刑から、年が明けて間もない199年のこの日、
三人は長兄喪手内、次兄矢羅傍、末弟喪手対とする義兄弟の儀式を執り行った。
この出来事は後に、三人の故郷の名に因んで「宝慶の誓い」と呼ばれる。
そしてこの名は後に喪国が建国された際、その都の名称としても用いられることになる。
地庚山、葦之耶の戦い編
158 名前:夏喪 投稿日:04/09/07 04:19
宝慶の誓いの後、喪手内ら喪の勇士百名あまりは、
郊外の霊山たる地庚山(ちこうさん)に移動した。
喪男の集団百名余、矢羅家と小作の村人たちはかまわないとは言ってくれたが、
その暑苦しさ喩えようなく、郷村の婦女は醜女に至るまで門を出でず、
行商人は宝慶を避け隣村へ向かう有様、
畢竟これを愉快に思わぬ村人もあらわれ、喪たちは民への迷惑に恥じ入り、
ひとまず山に篭ることにした。
されど地庚山はイケメンも、キモがる女もいない桃源郷、
喪男たちは渓魚山菜を自給し、脳内彼女と共に山川に遊んだ。
半年ほどの間に、約束の地の噂を聞きつけた喪男が華夏全土より集まり、
喪の勢力は千人ほどにまでも膨れ上がったのである。
「このような生活も悪くないものだ。
辺境の山中とはいえ、我ら喪男に安寧の日が来たのだから。」
あるとき、喪手内は矢羅傍、喪手対に満足げにつぶやいたことがある。
しかし、この喪の楽園も、長くは続かなかった・・・。
160 名前:夏喪 投稿日:04/09/07 05:18
「喪手内様!!大変です!」
地庚山に集まってきた喪男の中でも出色の喪、武沙が、
突然血相を変えて喪手内の幕舎に飛び込んできた。
「軍勢が・・・!!正体不明の秀麗な軍勢が山を囲んでおります。その数およそ三千!」
「何ッ!?」驚いて幕舎を離れ、高台に上った喪手内は血相を変え、
普段温厚な彼にも似合わず、大声を張り上げた。
「あれは我が兄、喪手杉(もてすぎ)!!」
「兄君ですと!? 何かの間違いではござらぬか? 理を説いて我が味方につけしめよ!」
予期せぬ出来事に驚きながらも、矢羅傍は高台の上の喪手内に叫び返した。
「それは無理です・・・」
いつの間に後ろにいたのか、顔色を失った喪手対が、搾り出すような声で答えた。
「矢羅傍兄者も、高台にお登りになって御覧なされば、一瞬にして諒ぜられる筈・・・。」
高台に上った矢羅傍の眼前に広がっていたのは、
眉目秀麗・伊達に軍装を着こなした、彼ら喪男が最も嫌悪すべき集団。
「あの中でも一際目を引く、緋色の直垂の男が我が弟じゃ。」
喪手内は、苦渋の表情でつぶやいた。
そして、喪手内とは似ても似つかぬ兄、喪手杉について語り始めた・・・
161 名前:夏喪 投稿日:04/09/07 05:19
喪手内の父喪手底(もててい)は、村でも有数の醜男だったが、
腕のよい刀剣職人であり、それを皇帝に嘉され、若い頃に後宮の美女を降下されたことがあった。
類まれなる美貌の皇女は、喪手底に嫁ぐや否や子を孕み、喪手杉を生んだが、
出産後一月もせぬうちにイケメンとの不倫にはしり、出奔したまま行方が知れぬ。
女体の味を忘れられぬ喪手底は出哀渓(であいけい)村の醜女、蕪細(ぶさい)と再婚し、
喪手内をもうけた。 喪手内は両親の特徴を大いにうけ、瓦のような男児であった。
母親に似た喪手杉は、醜怪極まりない家族に反発し、
常々村のイケメンと共に喪手内をいじめまくり、
十四歳にして村を出て袁術の軍営に投じたのであった。
162 名前:夏喪 投稿日:04/09/07 05:20
「敵軍より、矢文が届きました!」
矢羅傍に兄との確執を語る喪手内のもとへ、配下の喪男がやってきた。
矢文を読み、呆然とした表情の喪手内。
矢羅傍は手紙をひったくり、目を通した・・・。
「喪手内よ。貴様は自らが容貌醜怪なるにとどまらず、同様の士を集めて山中に篭ると聞く。
我は没落せる偽帝袁術を見限り、曹丞相のもとに降らんと思うが、手土産がなくては始まらぬ。
よって貴様らを討伐し、山賊として漢朝に奏上することに致す。
おとなしく我が軍蹄の蹂躙にまかせ、この秀麗なる余の出世の踏台となるべし。
我軍は袁術麾下でも選りすぐりの美男三千、更には
日焼け茶髪せる南蛮の猛将・畏敬面(いけいめん)、傍若無人の鬼将怒弓(どきゅん)、
我が愛妾奇夜流(ぎゃる)ら、英雄豪傑キラ星の如し。抵抗は無意味である。」
矢羅傍の手もまた、怒りに震えた。
魏蜀呉三国志の裏側で以降数十年にわたって継続する、喪手兄弟の確執、
否、喪男とイケメンの戦いは、ここに第一幕がひらかれたのである。
199年。ときに正史上の白馬の戦いの前夜であった。
163 名前:夏喪 投稿日:04/09/07 05:34
喪手杉(もてすぎ) …母の美貌を受け継ぎ、もてまくりやりまくり。
喪手内の実兄だが、その出自を常に恥じる。
後に曹操軍に投じ、喪建国後に至るまで喪手内と対立。
畏敬面(いけいめん) …黒光りする南蛮出身の猛将。茶髪に白い歯、特技はダンス。
愛馬、世瑠志雄(セルシオ)を駆る。
怒弓(どきゅん) …ヒョウ柄のダボダボの鎧を纏う、鬼畜将軍。
夜中三時に商店とか駅前にたむろする。
口癖は「つーか、マジやばくね。マジマジ。」
奇夜流(ぎゃる) …喪手杉の愛妾だが、怒弓や畏敬面ともクラブのトイレとかでやりまくってるらしい。
でも、喪手杉も彼らの愛妾とやりまくってるから、別に問題は無い。
ビバヒルか?
171 名前:夏喪 投稿日:04/09/07 18:49
続きでつ↓。 長文ウザかったら、言って呉。
しかし、喪手内・矢羅傍もまた一流の武将の素質を有する者、
すぐに怒りを抑え、全山の喪男に防備を命じた。
「拙者、これより軍使として敵陣に赴く所存でござる。
敵将喪手杉、いくら美男とはいえ喪手内殿の兄君、理を説き、情に訴えれば、
もしくはお味方とならぬまでも、ここは見逃していただけるのではなかろうか。」
殊勝にも名乗り出る矢羅傍を、喪手対が制して言った。
「私も喪手杉については存じておりますが、きやつはそんなに甘い男ではございません。
喪手内兄者の実兄とは思えないほど、伊達で垢抜けた、そしてそれを鼻にかけた、
我ら喪男には一分の魂も認めぬ悪魔のような男であります。
例えば喪手内兄者が十一歳の頃・・・」
「もうよい、申すなッ!」鋭い声で喪手内が怒鳴った。
その表情は苦渋に満ち、瞳は虚空をさまよっている。
「憎っくきは喪手杉、もし私があのような仕打ちを受ければ、こうして生きてはおれませぬ・・・」
ついに喪手対は拳を握り締め、さめざめと泣き出した。
ただでさえ醜いその顔が、更に正視出来ぬまでに醜くゆがむ。
その夜、希望を捨てきれない矢羅傍は、部下に武沙一人を伴い、敵陣へと向かった。
そこで、取り返しもつかぬ辱めを受けるとも知らずに・・・。
172 名前:夏喪 投稿日:04/09/07 18:51
普段ならば相手にもしないところだが、軍使とあれば無下に追い払うわけにもいかず、
凛々しい意顔を不満気に歪めたイケメンの衛兵に連れられ、矢羅傍らは喪手杉の幕営へと案内された。
幕舎の外からも聞こえる、ズンズンドムドムと不快に腹を揺さぶる音楽、男女の嬌声。
「戦場に楽隊や女を連れてきているのか・・・」
喪男の感覚では想像すらできない事態に、醜く眉を顰める武沙。
しかし、幕者の舎の中では更に想像もつかないような光景が広がっていた!
喪手杉は、奇夜流を膝の上に座らせ、口移しで酒を飲ませながら、その髪を静かに撫でていた。
奇夜流と同じような奇妙かつ性欲をそそる化粧を施した女が、畏敬面の黒くたくましい胸に頬をすりつけていた。
怒弓は、同じように頭が悪そうな露出の高い女、愛妾古希流(こぎゃる)を相手に、
「マジマジマジ超やっべ、」「マジ?ちょーウケるんだけどマジマジ?」などと、
言語的に崩壊した会話を交わし、笑いあっている。
その他の男女とも、喪男たちにはどこに売っているかもわからないような洒落た仕立ての衣服を纏い、
楽しくて仕方が無いような表情である。
173 名前:夏喪 投稿日:04/09/07 18:52
「t、て、て、敵将。も、も、喪手杉殿とおm、おみうk、おみうけいたs、いたすッ!」
曹操に従い、袁術や張繍・呂布の大軍と戦っても臆すること無かった矢羅傍だが、
自分とは全く別世界の人間たち、殊に多数の美麗・性感極まりない女子たちを前にし、
動揺のあまり舌がうまく回らない。
ニキビ痕でデコボコの頬に、脂ぎった額から汗が絶え間なく滴り落ちる。
「うわー、きっもーい。」
「マジマジ、マジぶっせえ。必死かよ、ヒャハハハ。」
「おじさーん、鼻毛でてるんだけどお(爆」
「オイオイ、脂取り紙とか、ワキガ消しとか買えって。エグすぎなんだけど。」
「ちょっとー、私の足じろじろ見ないでよー。鳥肌たってきちゃった、ほら。キャハハ。」
「見ろよあの生え際、沙吾浄の生まれ変わりじゃねえの?育毛もあきらめてんだなあ・・・。」
「ねーねー、そんな服、いったい漢のどこに売ってんのお?(笑」
幕舎内の寵姫や武将が、一斉にこの醜悪な闖入者を嘲け哂う。
嘲笑に耐えながら、床に這いつくばり、健気にも必死の形相で口上を述べる矢羅傍。
174 名前:夏喪 投稿日:04/09/07 18:53
「ぶぶぶ、無礼でござ、g、z、ござろう!も、喪手内殿のあ、あ、兄君とはいえ、d、d、d、度がす、過ぎましょうぞ!
われ、わr、わ、我ら喪男は、我ら喪男はッ、世間を忍びてこの山に、かくれ、かく、隠れ住みたるに過ぎず、
山賊、山賊などでは、けっけっけけ、け、決して、ごz、ござらぬッ!」
緊張でどもる上に早口なので、何を言っているか聞き取ることすら難しい。
「見苦しいわッ!」堪りかね、口の中のライチの実をブッと矢羅傍の顔に吐きかけ、喪手杉が怒鳴った。
「貴様ら喪男毒男の類など、その命鴻毛に比するもまだ軽し!
我ら美男の成功に奉仕するより他に、貴様らの存在意義など世界のどこにも存在せぬわ!下がれ下郎がッ!」
剣幕におののき、ひっ、と平伏する矢羅傍と武沙。そして這いつくばった姿勢のまま、そろそろと幕舎の出口へと向かう。
175 名前:夏喪 投稿日:04/09/07 18:56
「おいおいオッサン、なんで腰が”く”の字になってんだよ?
ボッキしてんじゃねえの、ヒャハハ!」
ぶるぶると顔を横に振る矢羅傍だったが、怒弓の指摘は正しかった。
下着のような姿で、背中も太腿も露わに男に絡みつく喪手杉の寵姫らの姿に、
矢羅傍たちはすっかり興奮してしまっていたのだ。
敵を相手に、更には自らがこれほど辱められてもなお、
怒髪天を突く勢いで反応する自らの股間、全ては未経験の故だった。
「だからウザいんだって、バーカ。」
罵声とともに、古希流が脚を高く上げ、矢羅傍の腰を思い切り蹴飛ばした。
ずだんと音を立てて仰向けに引っくり返った矢羅傍の股間から、
栗の花の腐ったような凄まじい悪臭が立ち上る。
「ヒャハハハハ、マジで、逝っちゃってるよ。ヤベ、マジ、超早漏。ダッセ、ヒャハハハハ!!」
弾けたように哂い、嘲る怒弓。
その怒弓を横目に見ながら、武沙も静かに下着を濡らしていた。
そう、矢羅傍を蹴り上げた際、古希流の下着が見えたのだ。
女(除く母親)の下着をはじめて見た・・・、武沙の意識は仙境をさまよっている。
数十分後・・・。
悪臭を纏い、軽蔑と嘲笑を背に受けながら、
帰還する哀れな喪男二人の涙は、まるでとどまることを知らぬかの如くであった。
178 名前:夏喪 投稿日:04/09/07 23:02
「きやつらの、、、攻撃は、、、明朝十時の刻とのこと、、、」
この屈辱には、憤怒の童貞・猛将武沙もかたなしであり、
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながら、敵陣で収集した情報を報告した。
ほうほうのていで帰還した二人に、
喪手内は無言で涙拭く木綿のハンカチーフを差し出した。
矢羅傍は、この喪手内のやさしさが、
幼少時に喪手杉とその仲間たちから受けた数々の迫害に起因するものだと気づき、
再び自分たち喪男の置かれた環境の残酷さにむせび泣いた。
その嗚咽は、一晩中地庚山にこだまし続けた。
そして、その翌日。
185 名前:夏喪 投稿日:04/09/08 00:12
喪手内は全山の喪男を高台の前に集め、長広舌をふるった。
その演説の文章は遠く現代に至るまで多くの喪男を励まし、
イケメンによる度重なる筆禍にも耐えて地下出版され続けた、
喪男の基本経典『大喪童貞真書』の原典となるものであった。
世に言う「出喪の檄」である。
喪手内は昨晩の出来事を話し、自らの生い立ちを話し、
そして、ついに彼の夢と理想を語り始めた。
186 名前:夏喪 投稿日:04/09/08 00:13
「全世界に散在する吾が喪男よ團結せよ。
兄弟よ、吾々の祖先は自由、平等の渇迎者であり、實行者であった。
陋劣なる美男政策の犠牲者であり、男らしき恋愛的殉教者であったのだ。
二次元の愛に興じる報酬として、生々しき人間の愛を剥ぎ取られ、
生来の醜悪なる容貌の代價として、暖かい人間の恋愛生活を引裂かれ、
そこへ下らない嘲笑の唾まで吐きかけられた呪はれの夜の惡夢のうちにも、なほ誇り得る人間の血は、涸れずにあった。
吾々が喪男である事を誇り得る時が來たのだ・・・。」
朝靄けぶる清浄な渓谷に、醜悪なる喪男一千人、その頭上を喪手内の声が朗々と響き渡る。
「われわれは、以下の事実を自明のことと考えている。
つまりすべての男は生まれながらにして平等であり、
すべての男は童貞を死ぬまで保有すべき権利も与えられている、
その権利には、生活、自慰、そして特殊性欲の追求が含まれている・・・。」
演説が進むほどに、喪手内のボルテージも上がる。
喪男たちも異常な興奮に包まれ、谷間には早朝からむさ苦しい熱気が渦巻いた。
187 名前:夏喪 投稿日:04/09/08 00:14
「美男・好漢いずくんぞ種あらん、色男いずくんぞ喪男の志を知らんや。
全中国の、そして全世界の喪よ、我が旗下に参じよ!
我らは美男の踏台となるために生まれたのではない、喪男としての人生を享受するため生まれたのだ!
イケメン已に死す、喪夫当に起つべし!!!
眼前の敵を破り、いつの日か我ら喪男の、蜜溢れる約束の地を建設するのだッ!!」
ウォォォォオオオオオ!!!!
喪手内の檄が終わるか終わらぬかのうちに、喪男一千人の歓喜の声が谷間にこだました。
喪男が、ある者は涙を流し、ある者は鼻水まで垂らし、ある者は勃起し、ある者は更に射精しながら、
互いに抱き合い感動に打ち震えていた。
それは極めて醜い、極めて気持ちの悪い、しかし当人たちにとっては何よりも美しい光景であった。
まだ喪国の名こそないが、喪男たちはついに挙兵。
喪手内の理想の歯車はこの瞬間から音を立てて廻り始めたのである。
しかし、その道は最初から棘の道であった・・・。
188 名前:夏喪 投稿日:04/09/08 00:15
『大喪童貞真書』・・・ 後世、喪男のベッドの下に必ず置かれるようになったとされる、伝説の禁書。
喪国の年代記であり、喪手内の理想を読み解く鍵とされる。
注釈書としては、民明書房から関連書籍が多数出版されており、参照されたい。
でも、本編には全然関係ないからスルー _| ̄|○
191 名前:お粗末 投稿日:04/09/08 06:12
喪手内一味が地庚山にて、歴史上に名高い「出喪の檄」と共に兵を挙げたのと同時期、
北方の白馬では、曹操軍と袁紹軍が今将に激突せんと対峙していた。
そんな中、袁紹軍に従軍しながら、積年の怨みをはらさんと機会を窺う一人の男の姿があった。
男の名は、顔醜。後に喪軍の将として大いに武威を振うことになる人物である。
顔醜は冀州の農民の家に生まれ、成人してからは袁紹に仕官し黄巾賊討伐などで功を挙げた。
幼き頃より「我が家は落ちぶれたりと言えども、かの顔回の流れを汲む名家である」と教えられ
本人もそれを妄信し、公言して憚らなかったが、現在に至るまでその証拠となる史料は確認されていない。
ともあれ、顔回の末裔を自認していた彼は自然儒教に傾倒し、長じて多くの書を諳んずるまでに至った。
のみならず、八尺はゆうにあろうという堂々たる体躯を持つ偉丈夫でもあった。
だが一つ、瑕瑾がある。顔中に広がる痘痕、大きく脂ぎった鼻、藪睨みの細い目、濁った瞳…
彼はその名の示す通り、紛うことなき醜男であった。
その為袁紹にも軽視され重くは用いられず、性格も次第に陰鬱になっていった。
192 名前:お粗末 投稿日:04/09/08 06:13
時に袁紹の誇る将の一人に顔良という男がいた。文醜と並んで袁紹軍双璧の武と呼ばれる猛将であり
顔醜と比して学問は無かったが、代わりに誰もが見惚れるほどの美しい容貌を備えていた。
顔醜は文醜とは気が合ったが、この顔良はどうにも苦手であった。
武は顔醜と互角でありながら、袁紹好みの容姿のお陰で彼よりも重用されていること、
婦女子からの評判が高いこと…それらも勿論あったが、何よりこの男には一つ妙な噂が付き纏っていた。
袁紹の次男である袁煕の寵姫、甄氏と逢引きしているというのである。
そしてこの甄氏は、顔醜が密かに憧憬を抱いている相手であった。
彼女の姿を瞼の裏に思い描きながら、自らを慰めてしまったことも一度や二度ではない。
そうしてその都度自己嫌悪に陥るのも、この男の常であった。
その甄氏があの顔良と通じているやも知れぬ、顔醜の心中は穏やかではなかった。
思い余った顔醜は夜間顔良を呼び出し、陰鬱な口調で話し始めた。
193 名前:お粗末 投稿日:04/09/08 06:14
「貴殿が甄氏様と通じている、という噂が流れておる。拙者は単なる噂であると信じているが、
李下に冠を正さず、とも申す。疑われるような行動は慎んだ方が貴殿の為であろう」
顔醜とすれば、脅迫のつもりであった。だが顔良は鼻で笑いながら言った。
「貴公、甄氏様に心寄せているのであろう。普段の貴公の様子、誰が見ても一目で分かることだ。
貴公とて甄氏様にさえその気があれば恩恵に預かりたい、と思っていたのではないか」
図星を突かれて顔醜の顔は情けないほどに紅潮した。
「そんな貴公が忠臣面して私に説教か。まあ密告出来るものならしてみるがよい。ただし」
ここで顔良は一度言葉を切って、険しい表情になった。
「私が篭絡しているのは、甄氏様だけではない。私と通じている袁紹様の寵姫に
顔醜に叛意あり、と吹き込めば、貴公の首などその日に飛ぶことを忘れるな」
顔醜は衝撃を受けた。といっても自分の首が危ない、ということにではない。
傾国と呼ばれるほどの美女甄氏と密通していながら、その他の女とも関係を持っているという事にである。
羨ましいやら悲しいやら、我が身を振り返って顔醜は涙が出る思いだった。
そして、去り際に放った顔良の言葉が彼の繊細な心を抉った。
「貴公のような醜男が一途に女を思うことだけでも迷惑なのだ。
甄氏様もこう仰っていた。顔醜のような男に触れられることを想像するだに寒気がする、とな」
顔醜の矜持は土塊のように、脆くも崩れ落ちた。
194 名前:お粗末 投稿日:04/09/08 06:15
時流れて袁紹軍は白馬に於いて、遂に曹操軍と激突した。
当然、顔醜もこの戦に加わっている。だが彼の狙いは曹操ではない。
顔良の首であった。ここで顔良の首を取り、それを手土産に曹操の幕下に加えてもらう算段である。
この戦に於ける顔良の戦功は凄まじく、張遼、徐晃を始めとする曹操の精鋭を次々と打ち破り
顔良の名を聞くと曹操軍は浮き足立つほどであった。
しかし、ここにきて状況が変化し始めた。前線にてあの文醜が討死との知らせが入ったのである。
聞けば一人の男によって討ち取られ、今顔良の首を狙ってこちらに向かっているという。
顔良に焦りの色が見える。今が好機、と思うが速いか顔醜は顔良の前に踊り出た。
「拙者は今より曹操殿の軍に馳せ参ず、顔良殿、御首頂戴致す」
言うなり顔良に打ちかかる。切り結ぶこと五十合余り、戦いは長きに及んだが
遂に顔醜が顔良の左肩をとらえた。手応えはあったものの、致命傷には至らず
今一度、と得物を振り上げたその刹那、背後より馬蹄の迫る音に気付いた。
さては例の刺客か、と思うほどに、顔醜は一目散に駆け出していた。
馬上にて顔醜は考えていた。このまま曹操に下るか、或いは野に下るか…
全く別勢力に加担しても面白いやも知れぬ、ただ顔良の首が獲れなかったことが心残りだ、と。
195 名前:お粗末 投稿日:04/09/08 06:16
それから数分の後、顔良は関羽によって討ち取られた。
何故顔良ほどの兵が、如何に関羽とは言えど苦も無く討ち取られたかと言えば
劉備からの言伝を伝えようと油断している所を斬られた、など諸説あるが
一つには、この時顔醜より受けた傷が原因であったと言われている。
顔醜が喪軍の噂を聞きつけ、喪手内に臣下の礼を取るのはこれから暫くの後のことである。
232 名前:夏喪 投稿日:04/09/09 22:40
顔醜は、袁紹陣営で欝欝たる日々を過ごしていた。
自らの仇は関羽に討ちはたされ、その混乱で彼のささやかな反乱も不問に付されてしまっている。
顔醜自身、いまや冷静になってみれば自らとて袁紹軍において、決して高くはなくとも禄を食む身、
また、詩文を愛し歌舞を好み、美的感覚並みならぬ曹操のもとに奔ったところで、
冷や飯を食わされること何ら現在のわが身と異なることなしと考え直し、
この醜き身に更に背反者の汚名を被って家名を堕することもなかろうと、
妥協的に現状の維持を選択したのであった。
とはいえその気は日々沈み込むばかり、なかば投げやりに無為な時を重ねていた。
「かまわぬ。一生を賭して我と交わい得る姑娘を見出し、顔家の家名を絶やさぬもまたつとめッ!」
多酒に溺れ、夜半に嘔吐を堪えつつ一人ごち、やけばちに剣を振るうて虚空に斬りつける。
「檀那様は顔だけではなく、お気まで病まれた。」
屋敷の使用人の間では、この一件は公然の噂となっていた。
一方、地庚山では…
233 名前:夏喪 投稿日:04/09/09 22:41
喪手内の檄に千余の喪男は酔いしれ、その士気は鬼人をも驚かすほどであったが、
奈何せん敵は喪の三倍、旧袁術王朝の近衛兵精鋭三千、喪の不利やはり動かし難い。
喪手内は大将を幕舎に集め、何とか喪手杉をやり過ごすための軍議を開いていた。
戦端を開いて間もない時期に、敵側に相応の損害を与え退却に持ち込む短期決戦策、
肝意の主張したこの意見が、最も妥当と思われた。
敵側が、大損害を出してまで喪の殲滅に兵力を投入するとは考えにくかったからである。
しかし、もしも短期決戦に失敗したときの方策について、一同は考えあぐねていた。
その人受けのよさから、
近所の村人や婦女子がどんどん食糧兵馬金銭慰安婦その他を供給してくれる喪手杉軍に比べ、
喪軍は近隣人民からもらうものは嘲笑と哀れみばかり、補給は自給自足に頼るよりないのだ。
234 名前:夏喪 投稿日:04/09/09 22:41
「おおそれながら・・・」
むうっ、と独特の臭気を放って、末席より一同の前ににじり出てきた将がいる。
見事なる乱食い歯に、脂ぎって毛穴がはっきりわかる華、上唇の巨大なホクロ…、その将の名は顔惨(ガンサン)。
「それがしの族兄に、現在袁紹軍に身を置く顔醜と申す者がござる。
河北への使者を立て、かの者に援軍を頼んではいかがか。
それがし、かの人には親族の集まりの際に数度会ったきりでござるが、その名に恥じぬ醜男ぶりであり申した。」
(人の顔のことをよく言うわい・・・)と内心思った喪手内だったが、彼自身ひどい容貌であるから口には出さない。
ただ、「説き伏せられるか?」と聞いたきりである。
しかし、顔惨の答えはさして自身がありそうな様子でもなかった。
説諭使として、こちらの大将級の将を一人つけて誠意を示すのが妥当かもしれない。
喪手対と顔惨は間道を通って戦線を離脱し、河北へと向かった。
果たして、援軍の可否やいかに。
顔惨(ガンサン) …顔醜の親戚にあたる。弟に顔劣(ガンレツ)、父の名は顔変(ガンヘン)、
また特殊な性的志向を持つことで世に名を馳せた祖父の名は、顔射(ガンシャ)。
(誰か顔家系図を作ってください・・・・w)
235 名前:夏喪 投稿日:04/09/09 22:42
その数時間後、喪手杉は総攻撃を開始した。
イケメンを慕って自発的に従軍してきた袁術の宮女五百人が陣の両翼を包むように配され、
手に手に旗や楽器を持って喪手杉軍の美戦士たちに黄色い声援を送る。
なんとも艶やかで色鮮やかな軍団の中心に、
武勇を誇る武沙・肝意を先鋒とした喪男三百人が、むっとむせ返るような毒男のオーラをまとって突撃してゆく。
「ちょっとーーー、マジーーー!!??不細工すぎーーー!!」
「うわーー、空気から精子の臭いがしてきそう!妊娠しちゃわないよね…??」
「キモイーーー、お願いだから氏んでってばあ!!」
喪手杉軍と激突する前に、喪男たちの耳に飛び込んでくる冷たい声。
先程の勢いはどこへやら、どんどん士気を失う喪男たち。
「喪手杉さま!お怪我をなさらないで・・・・!!」
「ブオトコども、畏敬面さまに触ったら承知しないからねーーー!!」
反面、喪手杉軍への声援への声援は暖かさに満ちている。
「まずいですぞ」あせる矢羅傍。
「あれは陰門遁口の陣、我ら喪には連弩や毒矢以上の被害を与える!!!武沙・肝意よ、突っ込むなッ!!」
しかし、矢羅傍の声は女たちの声援と喪男の嘆きにかき消され、前線には届かない。
236 名前:夏喪 投稿日:04/09/09 22:43
「畏敬面さま〜〜♪怒弓さま〜〜〜!!愛してる〜〜〜!!」
「戦が終わったら抱いてえ〜〜」
女たちの喪手杉軍への声援がだんだん過激になってゆくに従い、
一人、二人と腰をがっくり折って _| ̄|○ 座り込む喪男の姿が見られるようになってきた。
「喪手杉様!!私、今日ね〜〜〜、この服の下は何も着てないの〜〜〜!!したい時はいつでも言ってえ〜〜!!」
ブバッ!!!!!
ついに宮女の束帯上からもはっきりとわかる巨乳の女がそう叫ぶに至って、
最前線の喪男の半数あまりが鼻血を滝のように噴出し、その場に崩れ落ちた。
彼らの股間からはプンと鼻を突く栗の花の香りがあたりに漂う。やはり、童貞にはこの戦場は過激すぎた。
夢見る目で女どもを見つめる者、鎧の下に手を突っ込んで自慰を始める者、
女を写生するためにベストアングルを求めて戦場を駆け回る者など、喪の最前線は敵軍に当たる前に崩壊している。
そこに、怒弓と畏敬面が突入してくる。
瞬く間に数百人の喪男が紅に染まり、いたずらにその醜悪な屍を野に晒した。
顔惨の弟、顔劣もこの戦いで命を落としている。
「引け〜〜〜っ!!!!地庚山から深山へ七里、喪男の安らぎの場、葦之耶(ヨシノヤ)渓谷へと落ちよ!!」
必死で叫ぶ矢羅傍の命令がやっと伝わり、喪軍は退却をはじめた。
死者は半数以上、喪の初陣は、目も当てられぬ惨敗であった。
270 名前:夏喪 ◆f3h/vmOhIk 投稿日:04/09/15 00:43:33
ところで、この喪男たちの戦場に、意外な人物が参加していたことはあまり知られていない。
男の姓は趙、名は雲、字は子龍。
後世、蜀にその人ありとうたわれた趙子龍である。
彼は袁紹・公孫讃を相次いで見限り放浪していた折、山賊が跋扈しているとの噂を聞きつけ、
そこは顔が良くとも体力・筋肉至上主義者の浅はかさで、
ろくに真相も調べずに喪手杉の軍に加わったのだ。
もっとも、村人には故なくも蛇蠍の如く忌み嫌われている喪男の集団である。
それが趙雲でなくとも、彼らを討伐しようと考えても不思議ではない。
趙雲は喪手杉軍怒弓の指揮下に入り、
あの初戦において情けない喪男どもを次々と突き殺した。
「ウヒャヒャヒャヒャ!!こいつらマジ弱え!!オラ、氏に腐れやボケ!!」
満面に喜色をたたえながら喪男を突き、蹴飛ばし、
命乞いをしてくる者すら散々に追い回して虐殺する怒弓に、
趙雲は道義的な反感を感じつつも、
相手はその顔を見るだけで不快感を催す喪男集団、手加減をする気にもなれなかった。
「…やはりこの軍も俺が仕えるべき場所ではない。戦いに勝ったら再び流浪に出よう。」
そう呟きながら、本日50人目の喪男を絶命させた趙雲。
すでに喪たちは、葦之耶(ヨシノヤ)へと退却をはじめている。
271 名前:夏喪 ◆f3h/vmOhIk 投稿日:04/09/15 00:44:17
「貴公、そこで馬をとどめていただこう!私は喪手内軍の殿(しんがり)、肝意。
仲間が逃げ去るまで、貴公の相手を致すッ!!」
凛とした声、この上なく格好のよい科白とは裏腹に、趙雲の前に立ちはだかったのは、
どうしようもなく醜い男だった。
日焼けしない真っ白な顔いっぱいに広がった赤い痘痕、
兜からはみ出る天然パーマの細い頭髪、妙にギラギラ光る瞳・・・。
”キモイ”
それ以外の形容詞が、どうしても見つかりそうにない男であった。
「覚悟はよいか?参る!!」
「ムッ!?」
思わず肝意の剣をうけた趙雲だったが、敵のあまりの強さに思わず驚きの声がもれた。
肝意は、天下の趙子龍と打ち合うこと数刻、身に傷すらおわない。
「またれい!」
ついに趙雲は肝意を制して言った。
「おむし、醜きとはいえその腕前、曹軍や袁軍の筆頭将軍にも劣りはせぬ。
後年何らかの名もなそう。このような地で、山賊としてみすみす命を落とすな。
拙者とて今は名もなき素浪人、お互いいずれ名をなしてから決着をつけてはどうか?」
さすがは後に中華にその名を馳せる男、
喪を対手としても、その実力を評価する目はいささかも曇っていない。
喪(肝意)と蜀の趙雲との個人的な友情は、この日から始まった。
肝意の活躍で、なんとか死地を脱した喪手内軍。
以降は葦之耶渓谷に立て篭もり、敵軍をよく防いだ。
喪手対の説得に応じた顔醜が、
曹・袁両軍から糾合したの喪男三千を率いて救援に現れるのは、その一ヵ月後である。
442 名前:夏喪 ◆f3h/vmOhIk 投稿日:04/10/05 03:23:25
本話題名<喪手対説顔醜、喪男之心天下通>
喪手内軍が葦之耶に退却し、窮地に陥っていたまさにその頃、
顔惨と喪手対は、顔醜家の門の前に立っていた。
遠祖顔回は清貧で知られたが、この時代の顔家は相応の発展を遂げており、
顔氏の者とその縁戚、従者により組織された、「顔家軍」と呼ばれる一軍団を有するまでになっている。
…もっとも、血は争えず、顔家軍の構成員は図らずしてとんだ御面相の兵たちばかりなのだが。
「遠房の親戚の者でござる」と自己紹介する顔惨に、胡散臭そうな目を向ける執事。
それも無理はない。顔家軍にすら属さない遠い親戚など、単なる血統詐称の疑いが濃厚なのだ。
「主人は避客牌を掲げております。お引取りくだされ。」
にべもなく断る執事に、なおも食い下がる顔惨・喪手対。
その熱意、尋常とも思えぬ。せめて女子に対してもこの気力があれば。
「なんじゃ。騒々しいぞ」
ついに屋敷の外での騒音に耐えかね、引き篭り生活を続けていた顔醜が、門の隙間から声をあげた。
「それが・・・。この醜き者どもが、殿の遠戚だと言い張って聞きませぬ。何として追い払いましたものか」
自分の顔のことも棚に上げて、えげつない報告をする執事。
顔醜が門前を見ると、確かに言に違わぬ醜男が二人、必死の表情で懇願を続けている。
「!」
「かまわぬ。通せ。」
喪手対たちを追っ払おうとする執事に、顔醜は意外な指示を与えた。
彼らの必死の形相に打たれたのもあったが、
それ以上に、その面妖な容貌に、自己と通じる何かを嗅ぎ取ったためである。
443 名前:夏喪 ◆f3h/vmOhIk 投稿日:04/10/05 03:23:55
顔醜の邸宅に通されたとたん、挨拶もそこそこに、早口でどもりながら大儀を説く顔惨。
普通の人間ならば一瞬で不快に思い、眉を顰めるところなのだが、
顔醜はむしろその話に興味を持った。彼らもまた、自らと同じ星の下に生まれた同胞なのだ。
しかし。
「顔惨殿、申し訳がござらぬ。諸兄の熱意、真にそれがしの心に響くものがござる。
しかしこの顔醜、袁紹旗下にて無官・不肖ながらも顔家の総帥、顔家軍一千人を預かる身。
一切を捨てて賭けに走るのは、もはや自らを堅く戒めております。
また、それがしが貴軍に奔れば、世間の人は我が家を名聞に違わぬ醜男の家として嘲笑するでしょう。
あるいは軍資・兵糧・自慰燃料の類ならばいくばくかのご援助はできますが・・・。」
消極的な答えを出した顔醜。
以前のささやかな反乱の失敗と、長い引きこもり生活が、彼をどうしようもなく後ろ向きにしていた。
俺たちなんて、いくら努力しても、所詮は関羽のような美武兼備の「主役」たちには勝てない。
努力とは、後に待つ地獄への片道切符を買うに過ぎぬの行動ではないか・・・!
「顔醜殿!僭越ながら申し上げます!
家名が何でござる、責任が何でござる、世間の評判が一体どうしたと言うのです!
天は我らを、醜く生ませ給うた。これは確かでござる。
世の女は振り向きもせず、同姓からすら蔑まれ、能力に正当な評価も与えられぬ。
しかし、だからといって我らが喪男なりに人生を享受することが否定されたわけでもございますまい!
我が義兄喪手対は、否、我らが世界の喪男は、
我らが人の目を気にすることなく生を愉しめる国を創る為に、貴公の力を欲してござる。
世間の主たる人は、我らを排除し嘲る以外に何を為しましたや!?彼らの評判など、気にして何になりましょう。
『美男・好漢いずくんぞ種あらん、色男いずくんぞ喪男の志を知らんや。』
これが、わが主君の言でござるッ!」
普段の彼から想像もつかないほど、多言を贅した喪手対。
「・・・。それがしに時間をくだされ。」
答える顔醜。
十日後、顔醜は顔家軍一千を率いて、喪軍への合流を決定、その配下には顔終・顔汚・顔奇・顔不潔らの遠戚たち。
一度決めてしまえばそこは流石に顔醜。
曹操・袁紹の両軍に働きかけ、更に双方から一千づつの味方を得てしまった。
三千の新たな喪男軍団が、殺伐とした葦之耶へと向かう。
「軍団総出かよ!おめでてーな。素人にはおすすめできない!それでも参じる者は我に続けえーーッ!!!」
馬上で指揮を取る顔醜の表情は、燦然と輝いて見えた。
彼は、生きる場所を見つけたのである。
444 名前:夏喪 ◆f3h/vmOhIk 投稿日:04/10/05 03:24:20
地庚山の戦いから一ヵ月後。
趙雲子龍が抜け、戦力の落ち込んでいた喪手杉軍に、突如顔醜以下三千の喪男は牙をむいて襲いかかった。
元々、偽帝袁術の後宮近衛兵を中心にされている喪手杉軍である。
曹操・袁紹の最前線で戦いを重ねた喪の援軍たちとは、到底兵の質が異なる。
あらかじめ期を合わせておいた喪手内軍も葦之耶より出撃し、イケメンを挟撃する。
「マジマジマジマジやっべっ!覚えとけこの馬鹿どもがあ!」
目を血走らせ、ヨダレと涙と鼻水をだらだら垂らしながら、鬼人の如き形相で追跡してくる武沙を振り切り、
捨て台詞を放ちながら首尾よく多数の寵姫を伴って戦場を落ち延びた怒弓。
しかし、怒弓を逃がしはしたものの、顔醜が畏敬面を、肝意が喪手杉をそれぞれ虜とすることに成功した。
しかし、喪手内の厳命により喪軍は婦女子への虐待を一切禁じられていたにも関わらず、
逃げ遅れて捕虜となりかけた寵姫の多くは、ある者は毒を飲み、ある者は短剣を首に突き立てて自殺した。
せめて死体でもよいからハァハァしたい喪男のひとりが、欲望に耐え切れずにその服を脱がせて見ると、
どれもが陰部や胸部に腐剤を塗りつけており、到底使い物にならない。
「死んでも俺たちには機会をあたえてくれないのか・・・!!!」
勝利しながらも、喪男たちの号泣が葦之耶の山河にこだました。
447 名前:夏喪 ◆f3h/vmOhIk 投稿日:04/10/05 20:56:17
闘いがおわり、戦後処理が始まった。
喪軍諸将が居並ぶむさくるしい幕舎に引っ立てられてきたのは、言うまでもなく喪手杉・畏敬面である。
「頼む!命だけは助けてくれっ!血を分けた実の兄を殺すなど、喪手の家名を汚すような真似はするな!
実の弟に殺められては、地下の父上にどういう顔をして会えばよいのだっ!? ・・・なあ?」
これまでの自分の行動は棚に上げて、兄弟の情に訴える喪手杉。
「アアー、ワタシ南蛮ノ人。中国ノコト解ラナイ。ダカラ解放シテクダサイ!!」
女を口説くときはとんでもなく流暢に漢語を操るくせに、こういうときだけ無知な外国人になってしまう畏敬面。
その心情の醜きこと、匹夫にも劣る。
…それでも、顔はいいのだが。
「しかし、、、はてさてどうしたものか。。。」
いくらひどい目にあっても、やはり血を分けた兄を処刑するのにはためらいのある喪手内。
乱世の武将としては欠点だが、そんな彼の優しさが、これほどまでの多くの喪男を集めてきたのだ。
「殿、殿、、、。拙者に名案がござる。拙者の縁戚の・・・と、その友人の・・・を使って・・・をするのです。」
そんな喪手内の心情を察し、ひそかに彼に耳打ちをする矢羅傍。
「おお、そうじゃ!今こそあの者たちを使うときじゃ!!これ、早くこちらへ呼べ。
兄よ、その命は助けてつかわしますぞ。ただし、、、」
喪手内は最後まで言わなかった。
448 名前:夏喪 ◆f3h/vmOhIk 投稿日:04/10/05 20:58:28
「おお、命を助けてくれるのか!流石はわが弟、この恩は一生忘れぬぞ!」
心にも無い科白をぺらぺらと喋る喪手杉だったが、
矢羅傍が連れてきた男たちを目にした次の瞬間、その表情から血の気が引いた。
異常に真っ白な肌に、でっぷりと太った体、妙に濃い髭と腕毛、丸刈りの二人の男たち。
彼らの様子を確認し、おもむろに命を下す喪手内。
「では、矢羅内科(やらないか)、釜堀(かまほり)の両人よ!諸君らにこの美男を七日七晩貸し与える。
たっぷり享楽の限りを尽くすがよい!!!!」
「はッ!!!御意ッ!!!むふふふふふっふふふふふffっふふjdhcdt&'&'R5hwd!!!」
好色そうな目で喪手杉の腰周りを舐めるように見つめていた矢羅内科が、興奮で上擦った声で答えた。
「やめろぉぉ!!!!それだけはやめてくれぇぇっぇぇ!!!」
自分の運命を悟った美男二人が、それぞれ、モーホーの髭マッチョ二人に羽交い絞めにされ、
断末魔の絶叫を上げ続けながら、隣室へと消えてゆく。
「むふ。むふふふふ・・・。尻じゃあっ!白い尻じゃあっ〜〜〜!!」
「ぎゃああぁっぁぁぁ!!!痛いっ!!!痛いぃぃぃ!!!」
「むははは。最初だけじゃあ、じきにようなるわいっ!!!!」
ギシギシ アンアン ギシギシ アンアン
隣室から聞こえ続ける、恐るべき声と音。幕舎に居並ぶ喪の諸将の間に、なんともいえない沈黙が走る。
「やはり、非童貞の矢羅内科は勝ち組なのでは・・・・??」
やり場の無い表情で、ぼそりと呟いた喪手対。
「待てッ!それ以上は申すでない!!」
危ない方向に走ってしまいそうな場の雰囲気を打ち消そうと、大声で彼を制する矢羅傍。
でも、一同ちょっとは羨ましい。
ふと見れば、みんな腰が”く”の字になっている。中座して、自慰に走るものまで出てきた。
449 名前:夏喪 ◆f3h/vmOhIk 投稿日:04/10/05 20:58:50
七日後、真っ白に燃え尽きた喪手杉と畏敬面が、尻を押さえながら葦之耶を降りていった。
彼らが再び曹操軍の将として復活するまで、今後数年の歳月を要するのである。
しかし、この処置は喪軍内部にも衝撃を与えていた。
その数500人にものぼる喪男たちが、衆道へと走って軍を離脱したのである。
これ以後、もてなさ故に自棄になっての男色が、
喪の滅亡に至るまで国家の重大問題として存在し続けるのであった。
葦之耶の戦い―――― 勝つには勝ったが、喪にとって犠牲の大きい勝利であった。
450 名前:夏喪 ◆f3h/vmOhIk 投稿日:04/10/05 20:59:50
矢羅内科(やらないか)・・・血筋では矢羅傍の叔父にあたる。
矢羅傍の祖父・矢羅汁(やらしる)は苦労の末に醜女の林増美(リン・ゾウメイ)と結婚したが、
林増美は葬式の見舞金のために矢羅汁の食事に砒素を盛り、暗殺を図るも失敗。
内の臓を病んだ矢羅汁は、名医華陀の診察を受け、最終的に全快したが、
その時に生まれた子が彼である。
彼は華陀の内科治療への感謝から、矢羅内科と名づけられた。
長じて、あまりにもてないことから男色にはしり、新たな楽しみを見出す。
知略も武力もいまいちだが、以後は拷問担当として喪の中で一定の存在意義を持つ。
釜堀(かまほり)・・・矢羅内科に手ほどきを行った生ぐさ坊主。特技は掘ること。
380 名前:お粗末 投稿日:04/09/27 23:34:49
顔醜の援軍を得て、辛くも葦之耶の戦いに勝利した喪手内であったが
「地庚山に山賊の根城あり」との噂は、既に漢全土に広がりつつあり
明日にでも新たな討伐対が派遣される、との情報も飛び交っていた。
それを聞きつけた喪軍は泣く泣く地庚山を下山し、新天地を求め当て所もない行軍を始めたのである。
豊饒な地庚山を去ると、喪軍には忽ち兵糧危機が訪れた。
折りしも季節は、実りの秋を終えようとする頃であり
僅かな兵糧で食い繋ぎながら、三日、四日と行軍する過酷な日々が続いたのである。
更に長時間の行軍によって、兵達は疲労困憊に達しており
遂には脱走する者や、近辺の村落から略奪を働く者などが現れ始めた。
殊に兵達の略奪問題については、喪手内も心を痛めていたが
「ここまで兵達を追い込んだのは、偏に己の無能が為」
と自責の念すら抱く喪手内に、どうして彼らの蛮行を咎めることが出来るであろうか。
また、脱走略奪とまでは行かぬまでも、直々に喪手内に暇を願い出る者も僅かながら存在した。
喪軍一の驍将(ぎょうしょう)、肝意もその一人である。
381 名前:お粗末 投稿日:04/09/27 23:35:32
「故郷の長沙にて母が一人、病に臥せっておりまする」
と、肝意は沈鬱な表情で重い口を開いた。
肝意は己の給与の殆どを、病床にある母の治療費として送っていたのだが
このまま喪軍に居てはその金が捻出出来ぬ、と言うのである。
「…そうか、あい分かった。止めはせぬ」
喪手内は一つ嘆息しながら、肝意の申し出を許可した。
ここで肝意を失うのは、喪軍にとっては大きな痛手であったが
今の喪手内には、彼を引き止める術などありよう筈も無かったのである。
ここに肝意は喪軍を離脱し、一人故郷の長沙へと帰還することと相成った。
肝意が喪軍に再び馳せ参ずるのは、劉備軍が荊州制圧を果たした後のことである。
それでも行軍は続く。
北には曹操と袁紹が睨みを効かせている為
一行は北を避け、南へ南へと軍を進め、いよいよ呉郡に差し掛かろうかという頃
これまで不平不満も漏らさず、頑なに沈黙を守っていた矢羅傍が口を開いた。
「兄者、既に兵達の疲労や餓えは限界に達しております。
ここは呉の孫策殿に身を寄せる以外に、最早道はございますまい」
呉の孫策は様々な勢力が割拠する江東を、たった十年足らずの内に平定し
若くして「江東の小覇王」の異名を取るほどの英傑である。
しかし世間では山賊扱いされている喪軍を、果たして快く迎え入れてくれるであろうか。
かつ孫策は人一倍好悪の情が激しく、おまけに癇癪持ちであるとも聞いている。
「だが我々に選択肢はない、か」
一か八か、喪手内は矢羅傍の進言を受け入れ、孫策の元へと向かうことを決意した。
382 名前:お粗末 投稿日:04/09/27 23:37:18
喪手内は疲弊した兵を励ましながら、数日後漸く孫策の居城へと辿り着いた。
謁見の間に通され、孫策の前に立った喪手内は、しかじかとこれまでの顛末を話し
是非とも一軍にお加え下さるよう、と頭を垂れた。
だが孫策はしばし待たれよ、と言って奥に引っ込んだまま出て来ない。
はっきりとは聞き取れぬが、どうやら誰かと相談を交わしている様子である。
果して彼の予想通り、孫策は一人の青年と論議を取り交していた。
「躊躇うことはござりませぬ、伯符様。かの者らを我が軍に迎え入れるべきです」
儚げに顰(ひそ)む半月形の眉、知的な情緒を漂わせる、切れ長で深淵な瞳。
すっと通った小振りの鼻は、男性より寧ろ女性を連想させるものであった。
この青年こそが、今や呉にその人ありと謳われる美周郎、周瑜である。
「しかし公瑾、俺はあのように下品な連中を仲間として歓待するなど、到底耐えられぬ」
孫策は断固反対の姿勢であった。山賊紛いの連中を麾下に加えたとあっては
小覇王の矜持(きょうじ)が許さぬばかりか、孫家の名を汚すことにもなりかねぬ、と言うのである。
しかし周瑜は薄い唇を、ふっと綻ばせ、ゆっくりと理を説き始めた。
「私も斯様な連中、視界に入れることすら憚られるほどです。
しかし今は孫呉に取っては重要な時期、ここで邪険に扱って無用な敵を増やすよりも
とりあえずは食客として迎え入れ、利用出来るだけ利用するが得策。
そして用済みとあらば、適当な理由を付けて処分してしまえば宜しいでしょう」
なるほど、と孫策は豪快に笑った。
周瑜とは趣きが違うが、こちらも中々の男振りである。
太く力強い眉目は、かの梟雄呂布を彷彿とさせ、引き締まった口元は猛虎を思わせる。
そして大きく盛り上がった二の腕は、正に美丈夫と呼ぶに相応しい堂々たるものであった。
「公瑾の言、至極尤もである。宜しい、あの連中を迎え入れることにしよう」
斯くして周瑜の理に得心した孫策は、喪軍を食客として迎えることを決断したのである。
383 名前:お粗末 投稿日:04/09/27 23:38:03
「さて、喪手内殿。早速だが我らにお力添え願いたい」
饗応の席にて、孫策はこう切り出した。
「我々呉軍は近々荊州に攻め込む心算である。
それにあたって、劉勲の居城である皖(かん)城を落とし、その足掛かりとする。
ついては喪軍に先鋒として城攻めをやってもらいたい」というのがその要旨である。
「…分かり申した。先鋒の任、謹んでお受けしたく存じます」
無論、先鋒と称して遮二無二突貫させ、少しでも呉軍本隊の被害を減らそう、
という腹積もりであるのは、喪手内とて見抜いてはいるのだが
例え断ったところで、再び寒空に放り出されるが関の山、最悪の場合処刑さえ有り得る。
喪手内としては、黙って命に従う他はなかった。
「よし、これで決まった。早速明日からでも皖城攻めの準備を開始する」
孫策は力強い声で、この場にいる諸将全員に告げた。
大いに沸き上がる諸将達であったが、喪手内にはこの戦に、何か裏があるように思えてならなかった。
384 名前:お粗末 投稿日:04/09/27 23:39:37
皖城攻めの準備は電光石火の勢いで進められ、およそ一月も経過した頃
喪軍を擁する孫策軍は、既に皖城が見渡せる高原まで兵を進めていた。
幕内では周瑜が一帯の地図を広げながら、状況の説明をしている。
「現在太守の劉勲は、食糧調達のため海昏(かいこん)に遠征しておるとか。
つまり今皖城は蛻(もぬけ)の殻、落とすことは容易でありましょう」
これは喪軍にすれば僥倖(ぎょうこう)であった。
僅か数千の兵で敵の主力とまともにぶつかり合っては、如何に喪軍と雖(いえど)も敵する訳はないからである。
だが劉勲とて、幾ばくかの手勢は残しておるのに相違ない。それが果して四千か、五千か…
何れにしろ、三千にも満たぬ喪軍にとって、苦しい戦いになるのは自明であった。
兎も角今日この時を乗り切り、明日への命を繋ぐことに神経を注がねばなるまい。
喪手内は兵達の元に戻ると、朗々と声を張り上げて言った。
「我が軍はこれより、先鋒として皖城に突入する。皆、鬨の声を揚げよ」
喪手内の号令により、兵達は鬨の声を三度揚げると、荒ぶる猪の如く皖城へと突撃して行った。
385 名前:お粗末 投稿日:04/09/27 23:40:38
兵の数は喪軍にやや不利であったが、矢羅傍、武沙、顔醜といった歴戦の将の奮戦もあり
甚大な被害は出したものの、遂に皖城内部への突入に成功した。
城内の人間を全て捕らえ、他に隠れている者がないか、矢羅傍が一つ一つ部屋を検めていると
ふと見目麗しい少女が二人、震えながら部屋の隅に潜んでいるのを発見した。
羞花閉月、沈魚落雁と称えられた、喬公の二人の娘である。
(しまった、女人であったか)
女に免疫のない矢羅傍は頭を抱えたが、見つけてしまった以上は連れて行かねばならぬ。
(それにしても、何と美しい…)
姉妹である二人は、正に瓜二つといった容貌をしていた。
ぽろぽろと涙を零(こぼ)す瑠璃のような瞳、上品に筋の通った鼻、
まだ幼さの残る小さな唇は、さながら風に舞う櫻の如しである。
およそ人界の者とは思えぬ、天女のような美女二人を前に、矢羅傍はすっかり上せてしまった。
「だ、大丈夫じゃ、手荒な真似はせぬ」
矢羅傍は緊張しつつも、精一杯の笑みを浮かべ少女達を差し招いたが
二人の娘は互いに抱き合ったまま、嫌々と首を横に振りこちらを見ようともせぬ。
業を煮やした矢羅傍が、では私の方から伺おう、と足を進めると
二人はきゃっ、と小さく叫びながら、これ以上近づくなら舌を噛んで死にます、と言って聞かない。
実際に舌を噛まれ、女を一人死なせた経験のある矢羅傍の脳裏には
当時の苦い記憶(
>>71)がまざまざと蘇り、これ以上はとても踏み込めるものではなかった。
386 名前:お粗末 投稿日:04/09/27 23:41:22
さてどうすることも出来ず、喪手内らがすっかり往生していると
漸く孫策、周瑜の一団が皖城へと到着し、喪軍の元へと向かって来た。
「おお公瑾殿、実は…」
矢羅傍が駆け寄り事の次第を話すと、周瑜は嘆息しながら口を開いた。
「そなたらでは埒が明かぬ。我らに任せるがよい」
周瑜はこう言い放つと矢羅傍らを押し退け、孫策と共に二喬の前へと立った。
「恐ろしい思いをさせてすまなかった、御婦人方」
穏やかな口調で周瑜が声をかけた、その時である。
先刻まで真っ青な顔で俯き、恐怖に慄いていた二人が、周瑜の顔を見た途端
頬を紅く染め、口元には微笑を湛えながら、何やら恥かしげに身じろぎさえ始めたではないか。
さらに後方より孫策が進み出て、徐ろにこう言い放った。
「そなたら二人は、この小覇王と美周郎の妻となれるのだ。幸運に思うがよい」
余りに突飛で一方的な宣言であったが、当の二喬はと言えば
潤んだ瞳でこの二人の美青年を、じっと見詰めているばかりである。
「私からも是非お願いしよう。共に孫呉の栄華を築いてはくれないだろうか」
尋ねる周瑜に、二人は聞き取れぬ程か細く、だが喜びに満ち溢れた声ではい、と返答した。
孫策と周瑜は満足気に目配せをすると、孫策は大喬、周瑜は小喬の手を取り
各々の馬に娘達を乗せると、そのまま陣に向かって走り去ってしまった。
387 名前:お粗末 投稿日:04/09/27 23:42:02
一部始終を見守っていた喪手内一行は、余りの出来事に言葉も無く
呆けたような表情で突っ立っているその様は、さながら木偶の如しであった。
彼らが一生を賭けてさえ、恐らく触れることすら叶わぬような美女二人を
その眼前にて苦も無く蕩かし、妃として迎え入れることに成功してしまったのである。
「我々をうぬらの嫁探しに利用した、というわけか」
野に累々と連なる喪兵の亡骸を眺めながら、喪手対が無表情に呟いた。
そこから感情を窺い知ることは出来ぬ。
この時より喪軍の内には、孫策らに対する言い知れぬ怒りが芽生え始めていた。
時は冬枯れの199年末。赤壁大戦後に周瑜が死を迎えるまで
約十年間にも及ぶ、喪軍と周瑜との長く深い確執の幕開けであった。
391 名前:つなぎ 投稿日:04/09/28 09:40:21
一時の争いは終わり
平穏な時が流れているように見えていた
しかし、喪軍内部に芽生えた怒りの炎は、憤怒の業火になろうとしていた。
「我々の立場は危ういものだ、しかし、我々にとってあの美女との交わりを見せ付けられる生活は恥
辱の極みに他ならない、屈辱に耐え切れない部下が激発してもおかしくない状況だ。
孫策殿は我らが何を旗印にしているかお忘れなのだろうか、これは我らの大儀を汚されたも同然だ、
かと言って養われの身、下手に事を起こしては立場が弱くなる一方、一体どうしたものか・・・」
喪手内は思案に暮れる日々を送っていた。
ある日、喪手内は部下達を一堂に会して評議を開いた。
392 名前:つなぎ 投稿日:04/09/28 09:59:31
喪手内は皆の顔を一回り見渡してからゆっくり立ち上がり
静かに話し始めた
「我々は先の戦に勝利しながらも、孫策周瑜のあの振る舞い、我らの大儀「喪」に反する。
これは我々を辱める行為で宣戦布告を意味するものであるとも捉えられる」
喪手内の口調が力強くなっていく
「しかし、我々は孫策に外敵から守られている事実もある、かと言ってこのままでは我々が今まで戦ってきた意味
を疑われるものである!諸君らに問う、我々が信じて戦ってきた意味と大儀を我々の手で意味の無かった事と証明
するわけにはいかぬ!各々今後の対策案を述べよっ!」
393 名前:つなぎ 投稿日:04/09/28 10:11:14
部沙ががなりたてるように勢い良く喋りだした
「殿!方針はすでに決まっているものと思われます!我らの大儀に相反する行動を目の前で見せ付けられた
これは殿も仰った通り宣戦布告であると存じます、なれば方針は打倒孫策!後は戦でございまする!」
喪手内は武沙をなだめるように、また静かな口調で話し出した
「まあ待て、そう簡単にはいかぬから私は悩んでいたのだ、今戦を仕掛けても数の上でこちらが不利、
ここいらの地の利も敵の方が知り尽くしておる、こちらから不利を買って出るような喪のだ
しかし方針はそれで良い」
398 名前:つなぎ 投稿日:04/09/29 08:11:28
時は流れ、西暦200年、建安5年
車騎将軍董承が曹操暗殺未遂の首謀者として3族皆殺しにされた。
その数ヵ月後
喪手内はあらかじめ放っておいた間者を使い、曹操の警備兵を買収し
偽の書簡を持たせ、曹操暗殺の首謀者、董承の邸宅から発見されたと報告させたのである
その書簡は孫策からの物でこう書かれていた
今、天下は騒乱の只中にあり、各地の英雄が万民のために立ち上がっています
私もその一人であり、帝のために死力を尽くさんと天に誓った父、孫堅の意思を受け継いで
持てる全ての力を持って万民の敵、朝廷の敵を打倒せんとしている一人でございます
今、あなたの目の前に、帝を力で動かし、自分に逆らう者を朝敵とし、天下を思いの
ままに動かそうとしている逆賊がいますのに、天下の忠義者で名をなさしめている
あなたは一体何をされおられるのですか
献帝が洛陽から曹操に連れ出されて四年になり、下々まで憂えぬ者はおりません
私がその場にいましたならば、真っ先に逆賊の首を取る事を考えるだろうと思います
しかし、私がいるのは遠く呉の地、刃を持った手が逆賊の首までいささか届きませぬ
あなたに忠義の心が残っているのなら、その名に恥じぬ行動を直ちにとっていただきたい
私は微力ながら、天下国家のためにお力添えをさせていただきます
ぬるぽ
399 名前:つなぎ 投稿日:04/09/29 08:14:03
これに並んでその後の孫策と董承の曹操暗殺計画のやりとりと見られる書簡が数通見つかった
それはまさに孫策の目を窮地にいる喪軍から曹操へとそらすための生き残りをかけた計略であった
董承はすでに死刑に処され、その書簡が偽物であると証言できる者はいなかった。
董承の暗殺未遂が現実だった事を考えば、その書簡が偽物であるなどと疑う事もしなかった。
書簡を見開いた曹操の手は怒りに震えていた
「ぬぬぬ、董承の一件を誘ったのは孫策であったか、孫策め!都を移し献帝を命をかけてお守りし
ているのはわしだ!そのわしを逆賊呼ばわりするは献帝を愚弄したも同然だ!自分の野望のために
献帝を利用するとは孫策こそ逆臣よ!!」
曹操としては命の危険を感じるほどの事件が孫策の企てによるものだとすれば
孫策は各地の諸侯にも檄文を飛ばし、すでに自分を倒す密約を水面下で結んでいるのではないかと
無視できないものとなっていた。
だとすれば自分の配下にも朝廷に忠誠を尽くす者は多数いる、配下にも油断はできない
このままではいつ董承に続く者が現れてもおかしくはない、外敵だけでなく、内部にも脅威を感じ
日ごろの警備を倍増した。
曹操は喪手内の策略により、すでに枕を高くして寝られない状態になったのである
この時、曹操は呉攻略を決心したのであった。
420 名前:('A`) 投稿日:04/10/02 06:11:34
その数日後、曹操は緊急に諸将を集めた
集まった諸将の前に出てきた曹操の目には、決断された固い意志を思わせるように鋭く
眼光は強くギラギラとしていた。
その激しい意志を思わせる眼差しに
「戦か・・・・」
諸将はそれぞれにそれを悟り、一人残らず命を捨てる覚悟を決めた。
今回の評定は何事かを聞く者は一人もいなく、皆、曹操に似た目付きに変わっていった。
曹操は集まった将の一人に言った。
「郭嘉、説明せよ」
421 名前:('A`) 投稿日:04/10/02 06:12:40
郭嘉は「は!」と返事をして一礼し、前に出て諸将に話し始めた。
『 「先日の董承の件は存じているだろうと思います。
殿から私に御呼びがかかり、その件につきまして対策を考え談議した所
あの暗殺未遂事件はどうやら孫策が裏で糸を引いているものと、董承の邸宅で発見された
書簡からわかりました。」
「この事から、孫策が各地の英雄と結んで我々を朝敵と見做し、包囲網を作り出す
恐れが出てきました。」
「孫策が包囲網を敷くとすれば、普段から我々と朝廷に不満を抱き、急激に兵士を増やしている
袁紹も、当然その包囲網に加わっているものと考えられます。」
「我々が呉に侵攻した場合、袁紹が空になった我々の城を急襲する可能性は高く、兵力の大きい
袁紹軍を防ぎきる事はできますまい、しかも呉軍は水軍をもって対抗してくる事は自明の理
我々は水の上での戦いの経験がございませんので、危険が大きく今の段階で呉侵攻はできません。
しかし、我らの主力をもってすれば、ただ数を増やしただけの袁紹軍、壊滅させる事はたやすく
できるでしょう、」
「この事から、まず袁紹を討ち、その後に孫策を討てば、もし包囲網を完成されたとしても
大部分の勢力を削ぎ落とせます。不本意ながら包囲網に参加した者はこのどちらかが倒れた時点で
行動が鈍るか、事を起こす事を辞めるでしょう
包囲網が無くともこの二国が我らを敵視してるのは明らか、同時に攻められる危険性がある以上
その前に袁紹を叩くのです、勝ちやすい敵から叩き、力を温存して強敵に当たる対策を立てるのです
これはすでに決まった方針である事をお伝えします」』
422 名前:('A`) 投稿日:04/10/02 06:13:28
郭嘉は曹操と諸将に一礼づつして元いた位置に戻った。
曹操はうんうんとうなずいて、士気を高めるべく言った
「皆の者!我らに立ちはだかる者は、ことごとく討ち滅ぼすぞ!!
この両者を倒せば、天下の大部分は我らの名の下に平定されるぞ!!
出陣だ!!天下にその名を鳴り響かせよ!!!」
オー! オー! オー!! オー!!
オー!! オー! オー!! オー!!!
こうして官渡の戦いは始まった
曹操軍内部の慌しさは、たちまち喪軍上層部に伝わった。
喪手内は狙い通り曹操を孫策に当てる事ができなかった事に危機を感じた
「そうか、曹操はまず袁紹に当たるか、策とはなかなか難しいものだ、上手く乗せたが
これでは時間がかかる、次の手を考えねば。。。」
この頃から喪手内は策の必要性とその面に人材が欠けている事を痛感したのであった。
喪軍を巻き込む四国志最大の戦いと言われる赤壁まで、8年の事である
423 名前:軍師びんびん物語・1 投稿日:04/10/02 15:51:38
(
>>420-422の続きを勝手に作りました。題名の通り、かなりチャチです。)
喪手内は考えていた。
わが軍は猛者は多いが、知略の者がおらぬ。
なんとしてでも、抜擢せねば。
しかし、自ら仕官を願い出る知者など、なきに等しい。
まだ弱小勢力であるうえに、この面々である。
この世に類稀なる喪男の巣窟、同じような顔面的不具者には優しいが、傷の舐め合いの集団には、正直言ってしたくない。
そこから天下統一を夢見、実現させてくれる者が欲しいのだ。
そこには情熱のみならず、それを下で支える冷静沈着な人間も必要。
424 名前:軍師びんびん物語・2 投稿日:04/10/02 15:52:37
…ある時、彼は「粋狂先生」と自称する老人に、城下で話しかけられたのだった。
「ふふ、喪手内殿、天下には知者といえるものは三人おります。
伏龍・鳳雛・豚足とよばれる男たち……その誰か一人でも味方にすることができれば天下統一も夢ではないでしょう」
(参考
>>165)
皆、隠者のような生活をしているという。
「さて、どこから落とすか」
「伏龍は、紅顔の美男子だそうです。鳳雛・豚足は醜男ですが、どちらも秘めるものは伏龍に引けをとりません」
粋狂は言った。
「よし、伏龍は却下」
自動的に、選択肢は残り二つとなる。
425 名前:軍師びんびん物語・3 投稿日:04/10/02 15:53:34
喪手内はその夜、会議を召集した。
「皆の者、どちらが良いか、手にその者の名前を書いて、合図が出たら一斉に見せ合うことにしよう」
喪手内が言うと、しばらく沈黙が流れた。
夏の蒸し暑い夜である。彼らの汗と、その他様々な汁の臭いが室内に充満する。
その中に、墨の香りが、ほんのりと混じる。
「では、見せてみよ!!」
と号令。皆、一斉に掌を開く。圧倒的多数で「豚足」に決定した。
なんのことはない。「鳳雛」は画数が多くて書くのが面倒だっただけなのであった。
426 名前:軍師びんびん物語・4 投稿日:04/10/02 15:54:24
「豚足」は豚の可食部の中では地味な部分ではあるが、たいへん良い出汁がでて、栄養も豊富である。
そんな意味を込めて、「彼」は世間からそう呼ばれていた。
もっとも、非常に肥満しているという理由もあったが、ここでは敢えて割愛しよう。
「彼」の本名は、「独秦」といった。まだ若く、妻を迎えていない。というか童貞である。
どうやら、地庚山近くの「兄姪途(あにめいと)」という小さな村に居を構えているようだ。
一歩も外から出ず、ただただ庵にこもって、書物にいそしんでいるらしい。
…ここまでが、喪手内の得た情報であった。
彼は早速、独秦という男のもとを訪ねようと試みた。
矢羅傍、喪手対を伴って、手土産に美味棒(うまいぼう)を持ち、馬を走らせた。
427 名前:軍師びんびん物語・5 投稿日:04/10/02 15:55:15
「失礼します」
門番の不細工な子供に、三人はひどくうやうやしく頭を下げた。
子供は不細工な顔をますます醜くゆがめ、おびえている。
「坊や、おじさん達は怪しい者ではない。独秦様を訪ねに来ただけだ」
どう見ても怪しい。
「……」
「部屋に、通してくれるかな?」
手土産の美味棒を差し出したが、子供はそれをかぶりを振ってつき返した。
「…独秦様は今出かけていらっしゃいますから。」
「残念!」
と喪手内は一声挙げると、
(おい!ひきこもりという噂は嘘ではないか!)
思わず、隣に立っていた喪手対の脇腹を肘でつついた。
428 名前:軍師びんびん物語・6 投稿日:04/10/02 15:56:13
日を改めて、彼らは再び独秦のもとを訪れた。
「坊や、このあいだのおじさんだよ。怪しい者ではない」
「いませんよ」
門番の子供は依然としてつれない態度である。
「そうか…」
それでも彼らはあきらめなかった。
「坊や、しつこいようだが、独…」
「またですか、帰って下さいよ。そして二度と来ないで下さい」
しかし、時々動く大きな人影があるのを、喪手対は戸の隙間から見逃さなかった。
「嘘をついたな、ガキが!」
喪手対は珍しく激して、子供の頬を平手打ちした。
「ひっ…人を呼びますよ!」
「手間取らせやがってこの野郎!手前のその薄汚ねえ尻を使えなくさせてやろうか!!」
子供がひるんだ隙に、部屋の中に遠慮なく踏みこんでゆく。
他の二人も突然の事態に狼狽しつつ、後に続く。
「!!」
部屋の中には、体格のよい男が座っていた。お世辞にも美男子とはいえないが、威厳と知性のある顔立ちではある。
「あ、あ、あなたがその、と、と、と、豚足!!!」
昂奮の余り喪手内の声が裏返る。
この男が天下の知者かと思うと、戦慄が走る。
「あの、あの、よ、よ、よろしければ、その、その…!!!」
「…落ちついて」
その男が喪手内の肩に手をかけた。
「私は、独秦の兄、独蘇(どくそ)。先ほどまで私と碁を打っていたのだが、今しがた出かけてしまった」
「ど、ど、どこにですか!!」
「あいつは人と交わるのは好まない性質だ。そう執拗に追われると余計逃げるだろう。日を改めなされ」
おもしろいな。続ききぼん。
>>73スマソ、ちょっと連投規制?に引っかかってた・・・
429 名前:軍師びんびん物語・7 投稿日:04/10/02 15:57:20
しかし、俺も男だ。自分の野望のためには、簡単に諦めてはならないのだ。
こうなったら何度でも、地の果てまで追いかけ、独秦を味方にしてやる!!
ところが、矢羅傍と喪手対は、すでに疲れた様子だった。
「もう、鳳雛に狙いを変えた方がよいのでは?」
「今回で最後だぞ」
そう諦めがちに言いながら、仕方無しに同行する。
「…またあんたたちですか。しつこ…」
「尻を」
半ばやけになって喪手対が睨めつけると、子供は驚くほど従順になった。
「今日は、……いらっしゃいます」
「なに!?」
三人とも報われた思いで、室内に駆け上がろうとした。
「ちょっ、おじさん、待ってください!」
「尻…」
「違うんです!あの、しばし門の前で待っていただかないと、その取り込み中で!!」
「何をしているんだ、独秦は」
喪手内の問いに、子供は真っ赤になってうつむき、何も答えなかった。
(変な奴だな)
急く思いに堪えきれず、喪手内は中をそっと覗きこんだ。
そこには、かがみこんで座り、右手を頻りに動かす、一人の男の姿があった。
「はぁ、はぁ、ああっ、呉国太様…ああっ、そんなに、早く動かさ…」
(中略)
430 名前:軍師びんびん物語・8 投稿日:04/10/02 15:58:08
それからどれほどの刻が経ったのだろうか。
独秦、30歳・童貞。知力76、魅力4。
彼は喪手内の軍師として迎え入れられることになった。
喪手内が足を運ぶこと、数えれば4回。
決してあきらめてはならぬ。
この情熱と執念は、喪国にのちのち語り継がれ、守られることになる。
人々はこのことを、「四顧(しこ)の礼」と言う。
なお後世には同じような、劉備が「伏龍」諸葛亮を訪ねたことから生まれた「三顧の礼」という言葉が伝わっているが、本家本元はこの喪手内三兄弟と独秦の故事であることを、私達は忘れてはならない。
460 名前:夏喪 ◆f3h/vmOhIk 投稿日:04/10/08 01:40:13
喪手内らが豚足独秦を迎えた頃、呉の城下はさる事件に沸きかえっていた。
三十歳で世を捨てて山に篭り自涜を極め、齢八十にして悟りに至ったと噂される、
御喃仙人(おなん・せんにん)が呉都にやって来たというのだ。
彼は生まれてこのかた童貞を貫き、妖精・天使を経てついには神仙へと至った偉人で、
ひろく民衆の信仰を集めていた。
御喃仙人は、従来右手を使うほかには何ら考案されていなかった陰陽自涜法を多数編み出し、
長年里の子供たちに教えてきたというので、一部の母親たちを除く多くの人民(特に男)から、
深い感謝と畏敬の念をもって見られていた。
人間、何事であれ極めれ尽くせば尊敬を得るのである。
彼の行くところ、自分のおかずの詳細を仙人に報告せんとする男あり、
自慰の材料として生下着をうやうやしく差し出す女あり、
新しい自慰の方法を教えてもらおうとする子供ありで、常に黒山の人だかりができた。
「仙人よ!前回お教え頂いた蒟蒻(こんにゃく)自涜は、もはや極みに達しつつありまする。
他に何かご存知ではありませんか?不肖私、今はしがなき素浪人の身、自涜しかすることがありませぬ」
ロバのような顔をした若い男が、必死な様子で質問をぶつける。
「ホッホッホ。あなたは毎回特にご熱心ですな。では褒美がわりに、わしのとっておきをお教え申そう。。
大判の餃子の皮を人肌に暖め、それに水を塗ったもので珍宝を擦ってみなされい。。
こうすれば、自らを新たな仙境に導くことができ、運も開けてゆくはずじゃ。
近いうちに、仕官の口でも見つかるかもしれませんぞよ、、、、、、、のう、諸葛瑾どの。」
男を相手に、従来想像だにされ得なかった自慰の方法を伝授する仙人。
仙人の口から新たな方法が伝授されるたび、群集の間から感嘆の声が漏れる。
その人だかりを掻き分けて、粉屋に餃子皮を大量発注しに走る諸葛瑾。
461 名前:夏喪 ◆f3h/vmOhIk 投稿日:04/10/08 01:41:57
「むむむぬんっむっつ、、、むはああっっ!!
この武沙、御喃仙人の自涜四十八手、全て漏らさず聞き覚えて参ったあああッ!!」
喪将がまとめて住まわされているボロ屋敷へ、普段以上に暑苦しいオーラを纏ってドタバタと走りこんできた武沙。
「ぬおおおおおっつつ!!でかしたああアアッ!!」
そんな彼につられて、更にあり得ないテンションで労をねぎらう喪手内。正直言って引く。
その手には、近頃呉国で地下出版され喪男(だけ)の絶大な人気を誇る禁書、
実物の3倍はある巨大な胸と眼を持つ両喬姉妹が奇怪な触手の怪物に陵辱されるさまを描いた書物、
『同仁志(どうじんし)』が握られていた。
「これを書いた人物、、、ぜひ会ってみたいものじゃ。。。。フワッ!!」
隣室にて、早速武沙から聞いた即席麺自涜を、同仁志を片手に試しながら、喪手内は呟き、果てた。
しかし、喪男特有の異常勃起が災いし、
もの凄い勢いで弾け飛んだ精子は同仁志の表紙にべったりとかかり、その上の文字を消し去ってしまった。
「御托」という作者名は、このとき結局喪手内の眼にとまることはなかったのである。
そして次の日。
久しぶりに宮殿の高台から街を見下ろした孫策に、ついに御喃仙人に群がる群衆の様子が眼に入った。
「あれは何じゃ?」と尋ねる彼に、耳打ちして答える臣下。
孫策は激高した。
「ぬぬぬ。きやつを捕らえよっ! 国におかしな宗教がはやり、民が皆それを信じ出したらその国は終わりじゃ!
あのような汚らしい爺いにわが呉の風紀を乱されてなるものかっ!」
<つづく―――中途で終わってごめん>
473 名前:夏喪 ◆f3h/vmOhIk 投稿日:04/10/11 00:42:44
「伯符様、ご考慮のほどを!
かの御喃仙人、一見風紀を乱すだけの老人に見えますが、その影響力は軽視できないものがございます。
仮にかの仙人を捕らえてしまいますと、却って国を乱す原因ともなりましょう。
また、適度な自涜は健康にも好く、多くの独身人民の愛好するところ。かく言う私も日々蒟蒻で・・・ゲフンゴフン。」
孫策の傍らにはべっていた男が、額に汗を浮かべながら諫めた。しかし、
「なんと魯粛よ、おまえまであのような邪教使いを信仰しておるのか!?
この孫策、十二の歳で周瑜と共に女を知って以来、一度とてその種の汚らわしい行為に身を染めたことは無い。
しかし・・・・
もっとも、確かにこれが原因で国が乱れられても困るのう。これから数日、方策を考えるとしようか。」
孫策は聡明な人物だったが、その反面で癇気も自身も強いのである。
「もう夕刻じゃ。あの不快な者の姿を忘れたいわい。酒宴の準備をせよ!」
孫策はそう臣下に命じると、足早に宮殿内へと入っていった。
474 名前:夏喪 ◆f3h/vmOhIk 投稿日:04/10/11 00:43:58
酒宴が始まった。
魯粛は隣席に座っている友人の童貞(ドウテイ;二十六歳)に、さきほどの孫策の言動を伝えた。
「なななななんと!!我が希望の星、御喃仙人を処刑なさるですとっ!魯粛殿、まさかそなたも。。。!」
唾を飛ばし、眼の焦点をあらぬ所に彷徨わせながら狼狽する童貞。
「いえいえ童貞殿、それがしが固くお諫め申し上げ、殿もご考慮あそばされるにとどまった。しかし油断は禁物・・」
小声で答える魯粛。彼もまた、昨日の夜に友人の諸葛瑾から教わって以来、例の餃子皮自涜の虜になっている。
そこに、酒瓶を持った周瑜がやってきた。
「各々方、今日はごゆるりと飲み、愉しまれよ。伯符様は本日ご機嫌斜めじゃ。
我々が飲み、歌い、殿を愉しませましょうぞ。さ、さ、一献差し上げましょう。」
周瑜は味方であれば誰にでも分け隔てなく接する男で、童貞にもそれなりの禮を尽くしてくれる。
もっとも、このときは周瑜がその才能を認める魯粛が、その傍に座っていた所為かもしれない。
酒が進むにつれて、徐々に場が乱れてきた。
話題は、あちらの初体験がいつのころかという話になってゆく。
「我々は、共に十二のときに、隣家の姉妹と致しましたなあ。伯符様は十六歳の姉、私は十四歳の妹の方でした。」
「ハハハ、公瑾よ、よく言うわい。あの三日後に、お前が姉のほうも口説いている姿を見たことがあるぞ。」
「何をおっしゃる、伯符様とて、その時は別の家の娘と一緒に歩いていたではありませぬか。」
楽しそうに語る孫策と周瑜。これを聞いて、童貞は衝撃を受けた。実は、彼はこの二人と同年の生まれである。
彼が蛙を解剖して喜んでいた十二歳の頃、イケメンたちは女体を解剖していたのである。
自分のへたれぶりに後悔しながらも、十六歳の隣のお姉さんとの初体験を想像し、硬くなる童貞の下半身。
なんとも、喪男には苦しい飲み会の空気である。
475 名前:夏喪 ◆f3h/vmOhIk 投稿日:04/10/11 00:44:30
「よーし、では、この席の端のものから、順に初体験の歳と内容を語れい!」
ついに、相当に酔っ払ってきた孫策が、とんでもないことを言い出した。
「では、もう語られた周瑜殿は飛ばして、わしからですな。わしは恥ずかしながら、十六の歳でした。どうもオクテで・・・」
凌操が言った。どこがオクテなものか。
「そういえば私は、十五歳のときでした。あのときはがむしゃらに突っ込むばかりで。。。」
頭を掻きながら、話に加わる呂蒙。「おまえはいつでも突撃ばかりじゃ」とまぜっかえす孫河。
「わしは、九歳のときに近所の人妻に教えてもらいましたわい!」
いつも目立たない張昭が、とんでもない発言をすると、一同の尊敬のまなざしが集中した。
呂範、程普、黄蓋と、呉の宿将たちも、次々と初体験を語ってゆく。皆、十代中盤には済ませていた。
「でわ、次はろひゅくどのじゃ!」かなり酒が廻った、周瑜の声が飛ぶ。
「恥ずかしながら、、、、私は二十二の歳でして・・・。」
冷や汗を拭き拭き答える魯粛。座の一同の表情に、一瞬ながら、ふっ、という軽蔑の表情が浮かぶ。
「がんばって痩せて、良い服を着るように努力して、、、それでやっとできた恋人が相手でありました。」
それでも、努力は報われたとばかりに、それなりに幸せそうな魯粛。
童貞は再び衝撃を受けていた。魯粛だけは仲間だと思っていたのに・・・。そして、彼の番が廻ってくる!
477 名前:夏喪 ◆f3h/vmOhIk 投稿日:04/10/11 00:48:15
「わわwっわっわ、私わっ。童貞でーす♪かかかkっかか、彼女、女の子、bbぼ、っぼ、募集中ですー!」
無理をして受け狙いで言ってみた。が、慣れないことはするものではない。噛みまくりで、かなり寒い。
「ふひゃははははは!!!二十六で童貞とは情けない。毎日マスばかりかいておるクチかのう!」
しらけた一同をよそに、腹を抱えて笑う太史慈。つられて、孫策まで笑い出した。
「例の自涜か!まったく嘆かわしいことよのう・・・!しかしだな、妻がいなければ恋人を作ればよいではないか!
全く愚昧な・・・。まあ、その顔では無理なのかのう。わっはっは。」
生まれの良さと顔の良さが加わると、これほどまでに傲慢な科白が吐けるのか。
童貞はその場に突っ立ったまま、わなわなと震えている。
「そうですな。この童貞殿のまこと気味の悪い顔、酒が不味くなる!」
ついに周瑜までがそう言い出すに至り、ウワァァンと大声で泣きながら、酒杯を蹴り倒して外へ走り出る童貞。
普段いくら礼を尽くしていても、イケメンの本音はそんなものなのだ。反吐が出そうだ。
ワアワア泣きながら、夜の呉都を走る童貞。
その足は自然と、喪軍がおしこめられている呉都のスラム街、密陽区(ミニヨンク)へと向かっていた。
そのうち、前も見ずに走っている童貞は、一人の巨漢の人物にぶつかった。
「あわぶ!」
驚きの声を上げ、童貞にぶつかられた腹をおさえてうずくまっているこの男は――喪の軍師、独秦。
なんかあれだね。小山薫堂の「カノッサの屈辱」を思い出したよ。
あれよりおもしろい。作者才能あるね。
47 名前:('A`) 投稿日:04/08/27 22:16
ある日の劉備軍陣営にて。
うだつのあがらない二人の配下、御托と曹豹が二人で酒を酌み交わしていた。
「曹豹殿、おでは自分で申すのもなんだが、知略には自信がある。されど殿には全く目もかけてもらえぬ」
「それは貴殿がブ…いや、貴殿は悪うござらぬ。ただ時を得ぬだけだ。私と同じく」
「曹豹殿はさすが、我がよき理解者。心の友よ!」
「…さあさ、もっと飲まれよ」
「ところで、これをご覧なされい。昨夜おでが書き上げたものだ。これを殿に献上すれば、きっと殿もおでの才を認め、軍師として召抱えられるやもしれぬ」
「?」
怪訝そうな顔つきのまま、曹豹はそのずしりと重い木簡を、おもむろに開いた。
中身はかすかに栗の花の香りがし、細々とした小さい文字で埋め尽くされている。
曹豹は、目を細めながら、律儀にも読み進めた。
…読みながらふと、曹豹は御托の方に目をやった。
彼の顔は誇りと陶酔をたたえており、あばただらけの頬が紅潮していた。
その途端、曹豹は可笑しくてたまらなくなった。
そして木簡を床に置くと、勝ち誇ったような表情でこう言い放ったのだった。
「御托殿…もしや貴殿は女と交わったことがないのでござるか?」
御托の紅潮した頬の血の気が、みるみる引いていった。
「厠に、行ってくる」
御托はそれきり、蜀陣営に戻ってくることはなかった。
転載さんごくろうさまです
いきなりなくなってたので焦りました
329 名前:お粗末 投稿日:04/09/20 16:28:12
あんまり進展のない話ですが、間繋ぎということでひとつ・・・
>>47 一時の激情で劉備の元を出奔してしまった御托であったが、内心すっかり途方に暮れていた。
「今更父上の下に戻る訳にも行かぬ。はてこれからどうすべきか」
無論、屋敷に戻ったとて追い出されるようなことはあるまいが
功も立てぬうちから逃げ帰ったとあれば、それでなくとも評判の悪い御托のこと、
町の者からこれまで以上に笑い者にされることは必至である。
自尊心が人一倍強い御托にとって、それは到底我慢ならぬことであった。
とはいえ、既に路銀は底を尽きかけ、今宵の宿にも事欠くような状態である。
今彼の手元にある物と言えば、かつて西方より買い付けた名馬『阿忌馬(あきば)』と
自らの執筆した著作数編のみであった。
330 名前:お粗末 投稿日:04/09/20 16:29:09
御托は徐州の名家の次男として生を受け、裕福な家庭で甘やかされて育った為か
自己愛が強く驕慢な人柄となり、長ずるにつれて遊蕩に耽るようになった。
同好の輩を屋敷に集め、眼球が異様に肥大した、面妖なる婦女子の姿など描きながら
これまた趣味の戦談義に花を咲かせるのが常であったが、所詮は素人同士の談合、
大抵は取るにも足らぬ駄弁であるのだが、当人達とすれば一端の軍略家気取りなのであった。
それが志学の年を迎える頃、論を戦わせるだけでは愈々飽き足らなくなり
とうとう「どこかに仕官して我が知略を役立てたい」などと言い出したのである。
御托の遊蕩に内心困却しきっていた父親は、渡りに船とばかりに
当時徐州の牧であった劉備に頼み込んで、漸く仕官の約束を取り付けたのであった。
劉備とすれば、地元の有力者との繋がりを強固にしておきたい、という考えから
仕官を許可したのであって、決して御托個人の力量を見込んでのものではなかったのだが
御托はといえばすっかり有頂天となり、その態度は益々尊大になっていった。
331 名前:お粗末 投稿日:04/09/20 16:30:09
ところで御托には一つ悪癖があった。その傲岸不遜な態度もさることながら、
我が智略優れたり、と無闇矢鱈に自論を振り回し、いらぬ顰蹙を買うのである。
これに有益な進言でもあれば、周囲としても無下に捨てはしないのだが
そこは如何せんまだ十五の若輩、実際にそぐわぬ空論を弄ぶに過ぎなかった。
この悪癖には流石の劉備や関羽でさえもすっかり閉口し、
殊に気の短い張飛などは、酒が入っている時にこれをやられると
忽ち激昂してしまって、御托に打擲を加えるようなことも度々であった。
万事がこの調子であるから、劉備陣営内ではすっかり孤立してしまい
彼に寄り付くのは、せいぜい似た者同士の曹豹くらい、という有様。
尤も曹豹とても真面目に取り合うわけはなく、この無知蒙昧な若者を肴にして
己が陳腐な優越感の充足を得る為、利用しているに過ぎなかったのだが。
332 名前:お粗末 投稿日:04/09/20 16:31:21
その曹豹が、死んだという。
御托の出奔から三週間ほどが経った頃である。
劉備、関羽が不在の折、曹豹が義理の息子である呂布と内応して、徐州を攻め取らせたのだが
そのことを知って激昂した張飛に、戦場で切られたというのが事の次第であった。
もしあのまま徐州にいたら、と震え上がる御托であったが
一方で自分を用いなかった劉備、そして彼の自尊心を傷付けた曹豹の末路を小気味よく思った。
「やはりあのような男を見限って正解であった」
これまでの落胆もすっかり忘れ、意気揚々と歩を進める御托。
だが路銀が乏しいのは相変わらず、昨日などは遂に野宿までする羽目に陥っていた。
「一刻も早く仕官口を見つけねばなるまい」
まだ若く功のない御托にとっては、今や自らの著作だけが頼みの綱であった。
曹豹に鼻で笑われた、あの木簡である。
だが数年後、この著作によって独秦に才を見出され
文官として喪軍に迎え入れられようとは、御托以外の誰が想像し得たであろうか。
これから数年間、御托は仕官口を求めて流浪の生活を送ることになる。
時はまだ「出喪の檄」から遡ること三年の196年。若き御托、雌伏の時であった。
333 名前:お粗末 投稿日:04/09/20 16:34:24
解説など
『阿忌馬』(あきば)
御托が西方より購入した葦毛の醜馬。喪の建国後、喪手内に献上される。
姿こそ醜いが、その疾きこと赤兎に勝るとも劣らぬ、と言われる。
後に喪手内が阿忌馬の大量生産を試みて、多くの雌馬と交配させようとしたが
雌馬がどうしても受け入れず、結局一頭にも種を付けられなかったばかりか
その時雌馬に蹴られた傷が元となって、あえなく昇天。
その死に際して喪手内は「雌馬でさえ我らを受け入れぬか」と涙を流したという。
334 名前:お粗末 投稿日:04/09/20 16:35:37
御托の代表的著作
『沙久羅譚』(さくらたん)
妖術使いの少女、沙久羅が祖国を守る為に妖怪たちと闘う冒険譚。
御托特有の画調で挿絵が入っている。
多くの喪男に夢と心の安寧を与えた、名著中の名著。
『十二妹』(シイアルメイ)
十二人の可憐な妹たちとの甘い生活を描いた妄想譚。
やっぱり御托独特の画調で挿絵が入ってる。
多くの喪男に夢と心(ry
上記二つの著作は文康の『児女英雄伝』にも
影響を与えたとか与えなかったとか言われてるけどどうでもいいや
274 名前:どらい 投稿日:04/09/15 11:21:59
風が蕭蕭と吹く荊州南陽郡、長沙の城下。
「風が冷たいな・・・。」
一人の武人がそっと呟いた。
無骨に筋肉が張り付く巨躯と皺と赤く黒澄んだ醜い顔。
関羽の軍が迫り慌しい城で佇んでいた。
「こんな所にいたのか。」
年老いながらも端正な顔立ちをした老将軍の声。
「黄忠殿ではござらんか。」
黄忠の白い髭が眩しい。
「劉軍は目前ですぞ。そんな呆けた顔で何をしているだ。
さぁ、早く甲冑を着て戦の準備をしなされ。」
「うむ・・・」
「しっかりなされよ。」
軽く肩を叩き黄忠は去って行った。
「戦・・・か。」
城下の騒々しさは増していった。
275 名前:どらい 投稿日:04/09/15 11:22:33
「劉軍ごとき簡単に追い払うことができる!!!」
老将軍が太守韓玄の前に集まった群臣に向かって言い放った。
「ここ長沙には魏延殿、肝意殿、そして拙者がいる。お二人の将として、
武人としての才は皆知っていよう!僭越ながら拙者もまだ若い者には
負けない将と自負している!しかも此度の戦は守り戦、食料、将、兵が
揃っている我が群が負けるはずがござらん!」
文官達は何も言い返せない。
「その通りだ。関羽の使者を送り返せ!開戦じゃ!
よし手始めに、楊齢、おぬしに1000騎の騎兵を与える。
関羽を追い返すのじゃ!その他の将は守りを固め令を待て!」
276 名前:どらい 投稿日:04/09/15 11:22:56
「楊齢ごときでは関羽を打ち破るとこはできん!」
そう考えながら魏延は議場を後にした。
「肝意、ちょっといいか」
慌しく走り回る兵士を尻目に魏延に付いて人気のない部屋へいった。
魏延はいつもとは違った深刻な顔をしている。
「はっきり言って俺は韓玄は志を共にするに値しない人物だと思っている。
今回も先鋒を俺やお前、老将軍に任すなら兎も角、あの楊齢だと!?
ありえない采配だ。普段の行動も品性の欠片もない、君主足らん人物だ。」
突然の魏延の告白に肝意は戸惑った。
「そもそも俺は劉表に仕え、その死後の混乱で劉備殿が追い出された際に
劉備殿に荊州を収めてもらおうと劉備殿を呼び戻そうとした男だ。」
その話、魏延の劉備に対する思いは何度も聴かされていた。
魏延は劉備という男に惚れていた。
「では・・・魏延殿はいったいどうしたいのでござるか?」
真剣な顔で言葉を投げかけた。
「劉備軍に馳せ参じたい・・・。」
魏延の気持ちにはうすうす気づいてはいたが、目の前ではっきり言われ
返答に困ってしまった。
「ただ・・・、一宿一飯の恩は返したい。この戦の間は裏切ったりはしないつもりだ。
縁故者として言っておく。おぬしも使える相手をもう一度良く考えることだ。
この乱世、韓玄のごとき男の元では生き残れんよ。」
そういって魏延は兵の中へと消えて行った。
「仕えるべき相手。何のために仕えるのか。何のために生きているのか・・・。」
その場に座り込んで考え込んだ。
277 名前:どらい 投稿日:04/09/15 11:23:24
その頃関羽の軍は長沙の目前まで迫っていた。
「赤壁で曹操を見逃したことへの責任、自分の配下のみで長沙を落とす」
自分で決めた誓いを反芻する関羽。
いつもは冷静なこの大将軍も自らの責任の重さに少し焦っているように見えた。
「さぁ、関軍の強さを見せ付けてやろう!」
関羽は全軍に鼓舞した。
「おー」長沙の城まで聞こえるような兵士達の太い声。
有る意味関羽自分自身への鼓舞であった。
関羽の軍は長沙の前で陣を構えた。
「参る!」
長沙の城門が開き、楊齢が打って出た。
「関軍は所詮500騎!こちらは1000騎!圧倒的兵力の差!」
数にモノを言わせ楊齢はろくに陣刑も整えず関軍に突撃する。
「ははは、平地での戦いは兵士の数の勝負。戦の基本でござるよ!」
楊齢は声高らかに叫びながら兵の波を切り抜ける。
278 名前:どらい 投稿日:04/09/15 11:23:48
城の高台から韓玄が眺める。
「おお!楊齢が押しているな、さすがワシの贔屓にしているだけあるな。
なぁ!皆の者。わはは!」
愛想笑いだろうか、配下もつられて笑う。
(所詮一時の押しだ)
魏延は確信していた。肝意、黄忠もそう思っていた。
楊齢の軍の真ん中の一角が崩れ始めた。
突然、楊齢の目の前の兵達が退却し始める。
「やや、これはどうしたことだ!」
逃げ惑う兵士達。尋常じゃない恐れ具合。
「化け物だ!」「鬼だ!鬼将軍だ!」
楊齢はハッとした。今更ながら自分が対峙してる相手の恐ろしさを思い出したのだ。
「関雲長・・・」
関雲長、曹操が本気で欲しがった男、万夫不当の猛者!
ヒヤリ、と楊齢の背中に冷たい汗が流れた時にはもう、
楊齢の体は胴だけの肉塊になっていた。
「我が名は関雲長!ぬしらの将は討ち取った!大人しく降伏する、もしくは去れ!」
名馬赤兎馬をいなびかせ薙刀を大きく払った。
その姿はまさに軍神と呼ぶのに相応しい雄雄しい姿だった。
「ひー」
楊齢の兵士達は総退却を始めた。
279 名前:どらい 投稿日:04/09/15 11:25:03
「さすが劉軍一の将だけあるな・・・。」
肝意は関心交じりに呟いた。
「むむむ!楊齢がやられた!糞ったれ!誰ぞ、我こそは関羽を打つ!
というツワモノはおらんか!」
劉軍に信服している魏延は名乗り出るわけもなく、
自分からいくような積極性のない肝意も黙視。
「拙者が参りましょう。」
とても齢60とは思えない、シャンとした姿の老人が名乗りを上げた。
「ぬしで大丈夫なのか!?相手はあの関羽。その老骨ではしょうしょう・・・」
「我が君!!!」
怒り交じりに黄忠が叫んだ。
「失礼ながら、拙者、代々続く武門の家柄。そして自分の才に自信がござる!」
楊齢が如き将以下に見られているのが心底気に入らなかった。
じっと聞く魏延。
「ならば見事関羽を討ち取ってみよ!」
280 名前:どらい 投稿日:04/09/15 11:25:47
長沙の兵の前に立ち、黄忠は語った。
「眼前に迫っている関軍の強さは先頃の戦でしっかり見ただろう!
あれが関軍だ!あれが軍神と恐れられる男だ!
気を引き締め、死ぬ気で戦って貰いたい。」
ゆっくりと城門が開いた。雪崩出る兵達。
「目指すは関羽!」
長沙の兵と関羽の軍は激しくぶつかり合い、ばたばたと兵が倒れていった。
関軍兵と長沙兵の強さには圧倒的な差があった。
有能な兵士のほとんどは楊齢に付けられ、死んでしまっていた。
長沙兵が次々に倒れていく。
「ははは、さすが天下に名を轟かせる関軍よのぉ!」
馬上で獲物を振り回して黄忠が叫ぶ。
その切り込む姿は武芸の型のように美しいものだった。
周りの兵がどんどん少なくなっていく。
(兵の力は負けている、数で押すしかないな。)
「いったん出直しじゃ!引け!引け!」
長沙軍は城へと逃げ帰った。兵の数は半分以下になっていた。
281 名前:どらい 投稿日:04/09/15 11:26:15
「長沙に残る将で気をつけなくてはならないのは・・・先の戦の黄忠、魏延、肝意ぐらいか。」
近くの農民、長沙投降兵からの話を統合して関羽はそう判断した。
「魏延が長兄(劉備)を慕っているのは荊州のできごとからも推測できる。
おそらくは本気ではこないだろう。問題は他の二将・・・。黄忠は忠義の士だと聞く。
しっかり叩かなければ駄目だろう。肝意は・・・わからんな。武が立つらしいが・・・。」
将舎で目を閉じじっくり考える。関羽が後世に評価されるのはその武勇だけではなく、
思慮深さのためでもあった。
「まずは忠義の士、黄忠を倒そう。兵数ではこちらが圧倒的に負けている。
いくら強兵だといってもいつかは疲れがきてしまう。将を狙うべきであろう。
社稷の臣が倒されれば少なからず混乱、士気が下がるだろう・・・。」
おもむろに関羽は書簡を書き出した。
「だれか、これを長沙に届けてくれ。」
282 名前:どらい 投稿日:04/09/15 11:26:53
「関羽からの手紙?一体なんであろう」
結びを開く。他の臣も見ている。
「韓玄ガ臣、黄忠ヘ。ソナタノ金名ハ我ガ劉軍ニマデ響イテイル。
武人トシテ、ソナタガ如キ者ト矛ヲ交エルノハ至極光栄ナコト。
ゼヒ、一手所望シタイ。」
読み上げる黄忠。
(兵の少ない、関羽の作戦か・・・しかし稚拙な・・・。)
肝意はがっかりしながら、思った。
「そんな申し出受ける必要はござらん」
肝意はつい口走ってしまった。
「兵が少ないから将を打つ。分かりきった計でござろう。」
「ははははは。例え計だとしても武人たるもの一騎打ちの誘いを
断る術はござらん。武人とはそういうものでござる。
また、拙者がもし敗れるようなことがあっても肝意殿、魏延殿が
長沙を守ってくれるでござろう。ははは。殿、明朝関羽と一騎打ちをして参ります。」
自信と英気に満ちた顔で黄忠は言った。
韓玄はゆっくりと口を開いた。
「・・・うむ。認めよう。」
283 名前:どらい 投稿日:04/09/15 11:27:17
両軍が見守る中、二人の一騎打ちが始まった。
(老将軍に勝機はあるのだろうか・・・)
肝意は冷静に考え、勝負を見守った。
「我が名は関羽雲長。そこに見受けられるが、長沙が誇る武人、老黄忠殿でござるか!」
「さよう!そなたの一騎打ちの申し出、喜んで受けよう!」
馬のヒズメの音が響く。二人が前に進む。
「さあ!」
激しい打ち合いが始まった。
一合、二合・・・。二人とも武器は薙刀。
刃が擦れる音が草の果てまで届いた。
何十合打ち合ってもまったく勝負が付かない。
「なんと端麗な勝負だ。姿、流れ、型・・・どれも一流。
こういった勝負だけが、史書に残されるんだろう。」
肝意は感動しながら思わず口に出す。
(自分もあそこに、舞台に立ちたい)
肝意は武者震いを感じた。
両者には明らかに疲れの色が見え始めた。
「一旦引かせては如何でしょう。」
とある文官の言葉に戦いに見入っていた韓玄は我に帰り、
「そ、そうだな退却の鐘を鳴らせ!」
この日の打ち合いは二百余合に達した。
100 :
転載:04/10/12 05:05:14
284 名前:どらい 投稿日:04/09/15 11:28:11
翌日、先日同じように両将が向かい合った。
馬を進める二人。
「あいや、待たれよ!」
突然の喚声に皆が目を向ける。
長沙の兵の間から出てくる巨魁。肝意であった。
「関羽殿、その御高名拙者のようなものの耳にも入っている。
ぜひ一手手合わせ願いたい!」
言うやすぐに関羽に飛び掛った。
(舞台に立ちたいんだ!)
「失礼でござろう!肝意どの!これは拙者と関羽の勝負!」
言うのも聞かず打ち合いが始まった。
一騎打ちの最中に止める事は武人の流儀に背くこと、黄忠はしかたなしに見ていた。
「さすがは関羽殿でござるなぁ!すばらしい打ち込み!」
「主こそ、なかなかの腕前!」
肝意の打ち込みは力強いが、無骨なものだった。
決して美しいとは言えない姿、流れ、型・・・。
「いい武だ。しかし戦いには美しさも大事でござろう!
ぬしの技には美しさが足りぬな!」
関羽が肝意の大振りを弾いて言った。
「美しさの中に強さあり、戦いとは芸術!美しくなくてはならん!」
間隙を突いて関羽は必殺の一撃を加えようとした。
「美しいとか、芸術とかそのような言葉聞きたくは無い!
美辞麗句を語るのは詩席だけで結構!」
力任せに関羽の薙刀を払う。
(俺は舞台にたった。確かに美しくはない、しかしこの武で壇上に立つことができる!)
約八十合目、肝意は槍を両手でしっかりと持ち直した。
「不恰好な構えだな。」
「綺麗なものが総てじゃない。綺麗なものが一番ではない!」
肝意の槍が伸びた。関羽の脇腹から血が流れ落ちる。
「まさか・・・。」
思わず自慢の獲物偃月刀を落とす関羽。
「止めを刺せ!刺せ!いまだ!おい!ほら!」
韓玄の下品な叫びが戦場に響いた。
101 :
転載:04/10/12 05:06:13
285 名前:どらい 投稿日:04/09/15 11:28:41
槍に付いた血を払い、トドメの姿勢に入る。
「止めろ!不細工!」
関羽軍の兵士が叫んだ。
「お前如き醜い男が我が大将に手を上げるとは!」
その言葉に肝意はたじろいでしまった。
刹那、肝意の槍が宙を舞った。
「こここここ、黄忠!何をしてるか!!!」
韓玄が狂ったように目を大きく見開いて喚いた。
肝意が振り向くとそこには老将軍が目を吊り上げ睨んでいた。
「拙者と関羽殿の勝負、勝手に終わらせてもらっては困る!
肝意殿、おぬしは武人として拙者の面子を潰した。
ここでトドメを刺すようなマネは拙者が許さん。これは拙者の勝負だ。」
怒りで赤潮している老将に肝意は一歩引かざるを得なかった。
「後日また手合いをお願いしたい。」
そう言って黄忠は城へと帰って行った。
関羽に兵士が駆け寄り、看護している。
関羽軍の兵士全てが肝意を憎悪の目で見ている。
なぜか長沙兵も冷たい視線を送る。(黄忠の面子を潰したことへの反感だろうか?)
居たたまれなくなり肝意は城へと帰ろうとしたその時だった。
城が騒がしい。「ひー」何人かの兵が城から出てくる。
「何事だ!」
肝意の問いに、
「肝意将軍の関羽への止めを邪魔した黄忠将軍を韓玄様が謀反の罪で捕え、
そのことに怒った魏延将軍が反乱を・・・。反乱に民衆が呼応して城下は混乱の極みです。」
おお!ついに魏延は謀反を起こしてしまった。この戦中は起こさないと言ったのに!
ともせず、肝意は韓玄の元へ向かった。
102 :
転載:04/10/12 05:06:44
286 名前:どらい 投稿日:04/09/15 11:29:23
すでに韓玄は生き絶えていた。返り血を浴びて立っている魏延。
「おお、肝意。この暗愚な大将を斬っちまった。忠臣を殺そうとしたからな。
それにこいつは一生付いていく主じゃねぇっていっただろ?」
さも当然のように振舞う魏延に凄まじい嫌悪を感じた。
「しかし君はこの戦の間裏切る事はないと言ったではないか。」
「非常事態だ、しかたないだろう。」
(一宿一飯の恩はどうなった?言葉は鴻毛の如き軽いものとで言うのか?)
忠臣という言葉を使いながら自分の使えていた君主を殺すという、
忠義に反す魏延の行動に肝意は矛盾を覚えた。
(それが魏延殿の忠なのか)
「どうだ、肝意、一緒に劉備軍に馳せ参じようではないか?
そこには新天地があるぞ。」
もう魏延の顔を正視できなかった。
「拙者はもう少し考えてみる・・・いろいろな事を。」
「そうか、まぁ気が向いたらこいよ。お前の武ならどこでも大歓迎だろ。」
魏延は韓玄の首を刎ね、布で包み部屋を後にした。
103 :
転載:04/10/12 05:07:10
287 名前:どらい 投稿日:04/09/15 11:30:37
混乱している関羽軍が城に攻め入っていた。
肝意は裏門からやっとの事で脱出し、近くの山へと逃げた。
見晴らしの良い山から長沙の城を見ていた。
勝鬨が聞こえる。肝意は死んでいった兵士、韓玄に黙祷を捧げた。
「何が正しくて、何が間違っているのだろう。」
肝意は城を背にして駆け出した。
(たとえ外見(そとみ)が汚くても、中が清廉ならいい。
外よりも中が綺麗なほうが大切なのではないか?)
魏延は諸葛亮に反対されながらも劉備の配下となり、老黄忠も
劉備の説得に応じて劉軍に加わった。
肥沃な荊州を手に入れ劉備の力は飛躍した。
104 :
転載:04/10/12 05:10:53
105 :
転載:04/10/12 05:12:10
225 名前:必殺周瑜 投稿日:04/09/09 18:00
「ご注進ー!」
喪国では今文武百官が集まり今後の戦略を練っていた。異様な空気だ
「何だ?」
「呉が攻めてまいりました!」
童貞の眉がピクッと動いた
喪手内が続けて聞く
「孫権自ら出てきたか?」
「いえ、周瑜率いる二万です!」
「うぷっ!」
童貞が突然吐き気を催したようだ。彼は周瑜に直接恨みがある
「部下に甘寧、潘璋、凌統!三路よりこの喪国を攻め立てるつもりのようです!」
「周瑜は俺が斬る!」
武砂が大声で名乗りでた
「い、いえ僕が周瑜を斬って小喬タソをハアハア」
御宅は手作りの二喬の人形に頬ずりしながらすでに勃起している。どうやらすでに妄想を始めているようだ
そばにいた根雅は周瑜を斬った御宅が小喬に近づいて小喬が舌を噛みきるのを想像した
「落ち着け、作戦は軍師殿に立ててもらう」
喪手内が独秦の方に首を向ける
「はい、ここは三将を引きつけておき狙いは大将の周瑜一人に定めます」
「だからその役目は俺が!」
武砂が再び叫ぶ
「はい。ですが肝意殿と童貞殿にも協力して頂きます」
「えっ!」
突然の指名に激しく動揺する童貞
「その役目、承った!」
立ち上がり胸を張って答える肝意
「そして三将を引きつける将も必要です。甘寧には自虐殿、潘璋には堕眼殿、凌統には根雅殿に当たって頂きます。他の将は勿論防備に残ってもらわなければなりません」
106 :
転載:04/10/12 05:12:38
226 名前:必殺周瑜 投稿日:04/09/09 18:02
それぞれの指示を終え喪手内が膝をひとつ叩いて言った
「よし!おそらく呉、特に周瑜に恨みをもつ者は多かろう。この戦は我々醜き者が決して顔の良い男に劣っているわけではないということを天下に知らしめる戦いとなる、いら知らしめてやろうではないか!」
その言葉に文武百官が歓声を上げた。ただひとりを除いては
そう、童貞は吐き続けていた
「うぷっ、俺があの周瑜と?無理だよ無理、絶対無理無理無理無理無理無理…」
周瑜は確かに恨んでいる。殺したい程憎んでいる。しかしそれ以上に周瑜に対する恐れ、劣等感が童貞をこの上なく押しつぶしていた…
107 :
転載:04/10/12 05:13:00
227 名前:必殺周瑜 投稿日:04/09/09 18:07
数刻後作戦通りに自虐は甘寧軍の進路を予測し林て待ちかまえていた
「甘寧っていやあ…」
甘寧といえば付近の少年を集めて川賊の首領をやっていたと聞く。自虐は昔にそういった輩に徹底的に苛められたことを思い出した。深く心に刻みつけられた傷は未だ癒える気配はない
「きっと14か15で童貞なんて捨ててるんだろうな…」
「何でそういう奴が出世して真面目な奴が虐げられるんだろうな…」
「……顔か」
ぶつぶつの顔で一人でぶつぶつ呟く自虐
「勝てるわけないじゃん…」
急に嫌になってきた
「自虐殿ー!甘寧が!」
甘の旗を翻し約四千ほどの軍が進軍してくる
「ああ、うう…」
「自虐殿!」
「ううう…今っ…だっ…かかれ!!」
奇襲…甘寧軍は完全に不意をつかれた形となった
「おのれっ!敵将、名を名乗れ!」
「あうう、お、おでは、」
「ああん?」
甘寧は敵将を睨みつけた
「ひっ…」
ビビらされるとつい反応してします喪男の悲しい性…
「本当に気持ち悪い奴らしかいないのか!喪国ってのは!」
「あううう」
うまく言葉が出ない。おかげで用兵も滅茶苦茶だ
「急に弱くなったな。まあ所詮あの顔じゃこの程度か」
108 :
転載:04/10/12 05:13:35
228 名前:必殺周瑜 投稿日:04/09/09 18:15
甘寧は次々と不細工な喪軍の兵士を斬り刻んでいく
「あーあ、この矛この戦が終わったらもう使えないな。こいつらの血、なんか伝染りそうだ」
強い。正面から挑んだらとてもかなわない。自虐は甘寧に圧倒されますます戦況は悪くなっていく
「ううう…怖い…でも…逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ」
再びブツブツ言い出した自虐はやはりキモい
この喪国の将軍となってから死ぬのなんて怖くなかったはずだ。何度自害しようと思ったかわからない。どうせ生きてたっていいことなんかありゃしない
「…待てよ、何も勝つ必要はないんだ。肝意達が周瑜を斬る時間稼ぎをすればいいんだから…」
「ひ…ひ…」
命令を出そうとしてもうまく声が出ない。そこで鼓持ちに手振りで伝えることにした
「た、退却ですか?」
自虐がこくりと頷く
退却の鼓が響く。自虐の軍は林の中に一斉に引いてゆく
「ちっ、なかなか見事な退却じゃないか。だが、逃がさないぜ」
「しめた!追撃してくる。この林で逃げ続けていれば十分な時間が稼げる…たとえつかまったってどうせ大した命じゃないし…」
109 :
転載:04/10/12 05:14:08
239 名前:必殺周瑜 投稿日:04/09/09 23:10
一方こちらは砦を築き潘璋を迎え討つ堕眼
「将軍!」
物見の者が叫んだ。近づいて来たようだ
「整列!」
直立不動の兵卒の中にひとり震えている者を堕眼は見つけた
「おい、そこのお前」
突然の指名にビクッとするその兵卒
「怖いのか?」
「は…あの…」
もしやと思い堕眼は質問をしてみた
「潘璋を知っているのか?」
呉将の中でも潘璋の悪名は広く知れ渡っている
兵卒は頷いた
「名は?」
「あの…皮棒(ヒボウ)と申します…」
何か深いものがあるのだろうか
「話してみよ」
「あ…でも…」
「いいから」
少し語気を強めた
「は…では…」
汗を垂らしながら皮棒はゆっくりと話し始めた
「自分はいたって普通の村で普通に畑を耕し普通の生活を営んでおりました…その…容姿は普通ではなかったのですが…」
見ればわかる。普通と言いながらその容姿のせいでどれだけの不幸を被ってきたのかも堕眼には痛いほどよくわかる
「自分には恋い焦がれていた娘がおりました…その娘はとても可愛らしく誰にでも優しく自分に声を掛けてくれたのもその娘だけでした…」
そう、そういった娘が我ら喪国の者が最も憧れる典型だ。心当たりのある者も多いだろう
110 :
転載:04/10/12 05:14:32
242 名前:必殺周瑜 投稿日:04/09/09 23:14
「しかし…当然なのですがその娘に恋い焦がれていた男は自分一人ではありません…村で一番ではないかという容姿を誇る男もそうでした…」
そういうときはまず諦めるしかないのが我らの定め
「ある日のことです…村にたくさんの兵士がやってきました。その軍を率いていたのが潘璋でした…彼らは村に略奪をしにきたのです」
略奪などこの乱世では何の不思議もない話だ。ただ堕眼のいた曹操軍は規律の守られている軍が多かった。それを潘璋に求めるのもまた無理な話か
「潘璋は村一番の娘を要求しました。そしてそれが自分の恋い焦がれていたその娘だったのです」
それで娘を持ってかれた、そんなところかと堕眼は考えた
「娘は逃げました潘璋は楽しむかのように娘の着ている布を矛で切り刻んでいました。自分は勇気を振り絞り娘を助けようとしました。追いかけ民家の間でうずくまっているその娘を見つけました。自分は潘璋の手から守ろうと娘に近づきました。しかし」
言葉を一端止める皮棒
111 :
転載:04/10/12 05:14:56
240 名前:必殺周瑜 投稿日:04/09/09 23:11
「来ないで、気持ち悪い!娘は自分にはっきりとそう言いました。そしてその娘は村一番の男に助けを叫びました。自分はすべてを理解しました」
人事ではない話である
「そして男が助けにきました。ですが自分振り向いたときその男の首はすでにありませんでした。そしてその後ろには潘璋が醜悪な笑みを浮かべて…」
皮棒はものすごい量の汗をかいていた
「自分は逃げました。幸運なことに潘璋は自分など眼中にありませんでした。自分はぎりぎり見えるところで一部始終を見ていました。潘璋は必死で抵抗する娘の腕が邪魔だったらしく…それを切り落としました…その時の絶叫は今でも耳に焼き付いています」
堕眼からも汗が吹き出てきた
「全ての行為が終わり打ち捨てられた娘に息はなく…」
皮棒の声がすでに枯れていた。だが堕眼の目に止まったのはいきり立った皮棒の股間であった
「お主まさかその時…」
「……はい」
皮棒は死にゆく娘で悲しみと絶望の自慰にふけっていたのである
「今も…思い出して…?」
「……はい」
堕眼は様々なものを感じたが一言でいうと『不快』であった
その話を聞いて感情の対象を潘璋一人に定めることは簡単なことではなかった
112 :
転載:04/10/12 05:15:34
244 名前:必殺周瑜 投稿日:04/09/09 23:15
なんともいえぬ表情の堕眼の目の前に一本の矢が降ってきた
「しまった…話し込みすぎたか!出陣!」
砦から一斉に出撃した堕眼軍はすぐに潘璋軍との戦闘に入った
「うわあああああああああああああああ!!!!!」
真っ先に潘璋に狙いを定め突撃する皮棒の悲痛な叫びが木霊した
関係ないがちょうどその頃城にいる御宅は脳内小喬と第四ラウンドに入っていた
113 :
転載:04/10/12 05:16:23
314 名前: 必殺周瑜 投稿日:04/09/16 18:41:14
「近寄るんじゃねえ!ムシケラが!」
「気味が悪いぜ!お前ら人間の顔してねえな!」
「来んなっつてんだろ!蝿みたいにたかってくんじゃねえ!」
罵詈雑言を浴びせながら潘璋は次々と喪軍の兵を狩る
「皮棒…!!」
頭を割られ堕眼ですら目を背けるほどの顔になった彼が槍を握り締めながら横たわっていた
皮棒だけではない。ほとんどの喪兵は顔面を潰され脳漿をぶちまけたおぞましい屍と化していた
「わざとか…あいつ…顔をねらって…?」
「むごい…何でだ…?何故こんな殺し方ができる…!?」
一端堕眼は全軍を後方に退かせた
「おい、終わりか?」
そう言うと潘璋は既に息絶えている喪兵の首を矛で持ち上げた
「前よりは少しは見れるようになったんじゃないか?ククク…」
中身が滴り落ちている首を振り落とす
「……俺たちだって…俺たちだって…!」
堕眼の顔がみるみるうちに赤くなっていく
「んふー!んふー!」
鼻息が荒い。いるよねこういうやつ
「あー、キモいよお前」
「ぐうううううううううう!!!!」
堕眼は青筋を立てて右手に矛、左手に剣を構えた。そのまま振り返らず一直線に潘璋を目指す。喪兵はその後ろに続いた
堕眼は剣を振り下ろし潘璋は矛でそれを受け止める。続けて右手から矛で斬りつけるもかわされてしまう
堕眼も「五鬼将軍」に名を列ねる将、決して潘璋にひけはとらない。完全に頭に血が昇り周りが見えなくなっているがそれは逆に幸いなことだった
114 :
転載:04/10/12 05:16:45
315 名前: 必殺周瑜 投稿日:04/09/16 18:43:23
手綱を引き堕眼の矛をかわしつつ冷静に狙った潘璋の一撃が堕眼の剣を弾き飛ばした。それが堕眼の頭を冷まさせることとなった
「うっ…」
堕眼の思考が戻る
怒りに任せ兵を顧みずつっこんでいくなどなんたる無謀!無策!なんて馬鹿なことを!なんて駄目な将なんだ!
本来ならこんな無駄な思考をはたらかせていることこそ将として、戦場に立つものとして失格である
「おい、考え事してる暇があるのかよ!」
「うぐっ」
先程とはうってかわって防戦一方の堕眼
もう駄目だ…勝てない…死ぬのか…まだ俺は…いや…
堕眼はこんなときに一度だけ抱いた遊女のことを思い出した。首を吊った遊女のことを。自虐に話したことを
…自虐は無事だろうか…あいつは自分に面白いほどよく似ている
「……!!」
突然潘璋が反転し離れた
「何…!?」
負けてると思っていた
「押してる…?」
潘璋が冷や汗を掻きながら指揮に戻った
「ちいっ…必死だな!!」
煽り言葉ではない。それは喪男の醜さを表す言葉ではないのだ
必死必死と馬鹿にされてきたが必死とはこんなにも美しいことだったのだ。必死に戦う喪兵の姿は信じられないが美しいのだ
死を恐れない人間は強い
「そうか…そうだよ…我らは喪男!喪男には喪男の生き方があり…死に方がある」
堕眼は再び兵を退かせる。実際生き残っているの千ほどだ
「錐行の陣を組む!我が軍は全員死に兵だ!」
堕眼は自ら最前列で切っ先となり潘璋軍に突撃した
115 :
転載:04/10/12 05:17:12
316 名前: 必殺周瑜 投稿日:04/09/16 18:44:41
場面は変わりこちらは根雅率いる三千。すでに凌統軍と遭遇し一触即発、にらみ合っていた
単騎こちらに近づいてくる。どうやらあれが凌統のようだ。かなり若い、20を越えていないのだろうか
あれだったら…いやいや、男色の趣味はないって。でもなあ…凌統だしほら、両…
「そちらの軍を率いているのはどなただ?」
張りのあるいい声だ。根雅も単騎で前に進む
「このような状況で何かな?」
ちょっとうきうきしながら応えた
「喪国が何故存在するのか問いたい」
「は?」
「あなたがたは何ゆえ外界との接触を断ち独立勢力を築きあげたのか」
今更何を言っているのだろうか
「我々には居場所がない、この喪国はお前らの迫害からのがれることができる唯一の桃源郷だ!」
とはいえこの喪国でも根雅の肩身は狭かった
「迫害?そのような考えかただから人と交わることができぬのではないか?」
うわ、出た
「我らに非があると?」
「もう少し容貌、言動に気をつかえばおのずと…」
「そのような言葉は聞き飽きたわ!」
ああうぜ。なにもわかっちゃいない
「あなたがたは女性を知らぬと聞いた。このままでは永遠に…」
「その見下ろすような態度はやめろ!」
根雅の顔は醜く真っ赤に染まっていた
「何を言っても無駄なようだ。意味のない戦は避けたいのだが」
「貴様のような男には到底理解できん!とりあえず尻を貸せ」
凌統はさらりと流し自分の陣に帰っていった
まともな顔を与えられた人間には一生わからぬであろう。わかってもらいたくもない
116 :
転載:04/10/12 05:17:44
369 名前:必殺周瑜 投稿日:04/09/26 17:39:57
軍師、独秦。今回の軍略はほぼ全て彼によるものであったが一つ引っかかっているものがあった
そのため御托に相談しようと彼の個室に足を運んだのであった…が
「ん…?声が聞こえる。先客か?陳国将軍殿のところにも人が寄り付くのだな」
独秦はそんな失礼なこと呟きながら耳をそばだてた
「…お兄ちゃん、駄目だよう…そんなところ汚いよう…」
「汚くなんかないさ。まったくこんなにして…お仕置きしなくちゃなあ」
御托の独り言だ。独秦はふと相談は他の人にしようと思った
「…あっ、血が出た」
どうやら酷使しすぎたらしい
117 :
転載:04/10/12 05:18:07
370 名前:必殺周瑜 投稿日:04/09/26 17:40:46
「軍師殿、どうされた?」
ばったり出くわしたのは団子虫将軍 喪手対。いちおう独秦は匂いで確認した
「団子虫将軍殿、一つご相談したいことが…」
「何か?…作戦のことですか?」
独秦が首を縦に振った
「妖精将軍殿のことです」
「童貞?彼にわざわざ周瑜に当てさせたのは何か妙策があってのことでござろう?」
独秦は手ぬぐいを取り出し汗を拭き始めた
「いえ…その…そうではないのですよ…」
独秦は肥満している。その体から汗が吹き出ている。飛んできそうなので喪手対は1歩下がった
「その…勢いというか…」
「勢い?」
喪手対は眉をひそめた
「盛り上がるかなーと…」
「はあ?」
一国の命運をかけた一戦で何をやってるんだこの豚は…
「しかし…軍師殿、童貞の周瑜に対する怒り、恨みは並々ならぬもの。拙者は良案と感じましたが」
さっきまで下がっていた独秦の首がいきなり上がった
「あなたはそれでも喪国の将ですか!」
「はっ?」
「怒り恨みを思いのままにぶつけることのできる者がなんでこの喪国に居りましょうか!」
「ましてや相手はあの周瑜!伝聞によりますと我々なぞ姿を見ただけで無条件に謝ってしまうとか…」
なぜか怒られている喪手対は腑に落ちないながらもこう言うしかなかった
「しかしいまさら作戦の変更などできますまい。ここは童貞を信じるほかないでしょう」
「…そうですね。致しかたありません。ここは妖精将軍殿を信じましょう」
勝手に話しをまとめられた。喪手対はあとで喪手内に報告しようと思った
118 :
転載:04/10/12 05:18:31
371 名前:必殺周瑜 投稿日:04/09/26 17:41:29
少し時間は遡り肝意、武沙、そして童貞は三部隊の交戦開始まで砦を築きその機を待っていた
敵の三将を食い止めている間に喪国で最も速い三千の騎馬隊で周瑜を討つ、ということになっている
連日の猛暑で砦は兵達の腋臭で充満していてまともな人間ならとても耐えられないだろう
もちろん香を焚こうなどという神経の持ち主は喪国にはいない
童貞は食も喉を通らず周瑜への恨みと恐れを内で戦わせていた
「おい童貞、元気ねえな」
武沙である。すごい匂いを発しながら童貞に近づいてきた
「よしよし、この俺様が興奮する話を聞かせてやろう」
「まさか…あの話か?」
そこに上半身裸の肝意がやってきた。剣の鍛錬でもしていたのだろうか
「なんです?その話って…」
「ああ、数ヶ月前のことだ。俺は所用である村の近くまでやってきていた」
当然武沙みたいなのが村をうろつくわけにもいかず通りがけただけなのだがそこで村娘と出くわしたそうだ
年はまだ六、七といったところでもう少し成長すれば地元の豪族の餌食になりそうな良質の娘だった
たいていは武沙の顔を見たとたん泣き出して逃げてしまうがこの時は違った
武沙の顔をじっと見つめこう言い放ったのである
「おじちゃんのお顔どうしたの?病気?」
まさかこんな歳の子供にまでそんなことをいわれるとは思わなかった
「生意気な餓鬼め」
武沙は少女に怒りをおぼえると同時に興奮していた
119 :
転載:04/10/12 05:18:59
372 名前:必殺周瑜 投稿日:04/09/26 17:42:19
悪戯心が働いたのかただ単に変態なのか武沙はあろうことか下半身を露出したのである
流石にこれで逃げ出すだろう。しかしそうではなかった。少女は武沙のいきり立った一物を見て言った
「おじちゃん大人なのにこっちは子供みたい!」
武沙は激しく自尊心を傷つけられた。それと同時に武沙にとって究極の言葉攻めとなった
武沙はそれだけで絶頂に達してしまったのである
つぎの瞬間には少女は走り去っていた
「…どうだ。俺はいまでも思い出すだけで…」
武沙は股間を押さえている。童貞はまったく理解できなかった
「おい武沙、ここで始めるなよ」
肝意は砦の外を見ていた。早馬が来たのである
「立て、童貞。周瑜はお前が斬るんだ。お前の中に巣食っている周瑜と共にな!」
伝令の報告を聞き童貞達は三千の騎馬隊で砦を離れた
120 :
転載:04/10/12 05:19:36
246 名前:ワンダー喪喪 ◆T3HqDEgOKE 投稿日:04/09/09 23:50
「我、容貌怪異なれど屈せず
我、容貌怪異なれど諦めず
我、空気読めずとも臆せず」
皆さんはこんな唄を耳にしたことはないだろうか。
この唄の作者こそ、後に喪国を荒らし、喪国50年の歴史を
閉じさせるきっかけとなった男である。その名を保自厨(ぽじちゅう)。
今はただの無職である。
保自厨【ぽじちゅう】
…「努力しろ」が口癖の将。
いつの間にか喪国に入り込み、喪男の理想とは正反対のお触書を繰り返したて、
喪国中の国民から反感を食らう。五鬼将軍、根雅との度重なる衝突が原因で
喪国が消耗し、喪を滅亡させたと伝えられる。
試しに書いてみました。文章力甘くてスマソ
121 :
転載:04/10/12 05:20:09
295 名前:ワンダー喪喪 ◆T3HqDEgOKE 投稿日:04/09/15 17:11:47
喪手内は考えていた。「伏龍に鳳雛か・・・おい、独秦」
「お呼びでしょうか?」「独秦よ、
>>165の話を憶えておるか?」
「はい、憶えております。確かに伏龍と鳳雛は存在します。幼き頃に
苦悶塾の同窓生でございました。」
「なんだよお前しってんのかよ馬鹿早く言えよデブ」
「・・・申し訳ござりませぬ。」
296 名前:ワンダー喪喪 ◆T3HqDEgOKE 投稿日:04/09/15 17:12:20
「その名を卑奇子(ひきこ)と児意図(にいと)と言いまして、
二人とも伏龍、鳳雛の名に恥じぬ傑物にございます。
しかし多少性格に問題が・・・」
「しかし是非とも欲しい。とにかく説得してみてくれ。」
「・・・御意。」
かくして三顧の礼をもって説得に逝った独秦だったが・・・
122 :
転載:04/10/12 05:20:42
297 名前:ワンダー喪喪 ◆T3HqDEgOKE 投稿日:04/09/15 17:13:07
「卑奇子殿!児意図殿!!」 「・・・」
いつまで経っても返事が無い。「留守か。仕方が無い、一旦
引き返すしかあるまいて」独秦が薄汚い馬にまたがり、この際
馬で童貞捨てるかな・・・と考えていると、齢40半ばかと思われる
婦人が立ってこちらに深々と頭を垂れて立っていた。
「卑奇子と児意図の母でございます・・・」
298 名前:ワンダー喪喪 ◆T3HqDEgOKE 投稿日:04/09/15 17:15:42
「母上殿でございますか。お初にお目にかかる、独秦と申します」
「あの・・・息子の事ですが・・・」
「はい、是非とも我が陣営にお迎えしたくやって参りました」
「あの・・・残念ですが、二人ともいい年なのにもう6年も外に
出ておりませぬ。もう母としてどうしていいものか・・・」
泣き出してしまう母、40でも人間ならアリかな、と思う独秦。
しかし、卑奇子と児意図が歴史の表舞台に立つのはしばらく後の事である・・・
卑奇子【ひきこ】・・・引きこもり。童貞。
児意図【にいと】・・・無職。童貞。
・・・スマソorz
123 :
転載:04/10/12 05:21:55
342 名前:ワンダー喪喪 ◆T3HqDEgOKE 投稿日:04/09/21 17:45:58
繋ぎのつもりが、凄く長いです・・・
不恋愛。
普段目立たないこの男だが、この男と普段から懇意にしている男がいる。
根雅である。彼らは二人で酒を酌み交わす事が度々あるが、ある席での事。
「英雄、色を好む。か・・・不恋愛よ、どう考える?」
「もう何度も話したじゃないか、根雅よ。くだらねえ、ほっとけってなもんだ」
「そうか、そうだったな、ハハハ」
この二人、身分は違うが二人のときは遠慮せずとも良い、と上官の根雅が言い出し、
酒席ではまるで友の様だ。しかし、今宵は様子が違ったのである。
343 名前:ワンダー喪喪 ◆T3HqDEgOKE 投稿日:04/09/21 17:46:20
「もし、ちょいとご同席させて頂いても宜しゅうございますか?」
そこに現れた一人の男。なかなか美麗な服を着てはいるが、いかんせん組み合わせ
が悪い。そして、その上にある顔。醜いことこの上ない。二人は直感で「同士よ」
と思った。「おお、ちょうどむさ苦しい男二人で退屈していた所だ、ささ、座りなされ」
片田舎の酒場、街道沿いの窓際席に三人の喪男が席を構えたとなれば、これ以上客が
入ろうはずも無い。店主は顔をしかめたが、諦めた。あまり喋りたくないからだ。
「先程の話し、失礼ながら耳に入ってしまいました。あ、申し遅れました、私は
保自厨と申します」
124 :
転載:04/10/12 05:22:17
344 名前:ワンダー喪喪 ◆T3HqDEgOKE 投稿日:04/09/21 17:46:49
「英雄色を好む、か・・・全く、夢物語だとは思わんか?保自厨殿」
根雅はそう言って、不気味に微笑んだ。不恋愛も同様、不気味に微笑んだ。
しかし、返ってきたのはなんとも意外な答えであった。
「いいえ、そうは思いませぬ。夢物語などではありませんよ」
「なに?」
まさかこんな答えが喪国で聞けるとは。二人はその場で笑い出した。
「ははは、保自厨殿、なかなか面白い冗談だ。ならば、我々にも色を知る
機会があると、こう申すのか?」
二人は再び笑い出した。
「ええ、その通りで御座います」
「はは、保自厨殿、ならばその方法を聞かせて貰おうじゃないか」
次に返ってきた答えは、二人を沈黙させるに充分なものだった。
「努力する事ですよ、根雅殿。不恋愛殿」
125 :
転載:04/10/12 05:22:39
345 名前:ワンダー喪喪 ◆T3HqDEgOKE 投稿日:04/09/21 17:47:11
またこれか。根雅は凌統とのやり取りを思い出し、いささか不愉快になりつつあった。
「・・・保自厨殿、少々笑えぬ冗談だな。ここは喪国、そのような言葉は慎んでいただきたい」
「はて、喪国は女に嫌われる者が集う国、その様な法は存じませぬ」
確かに、
>>188大喪童貞真書にはその様な法は書いてない。しかし、根雅は勝手に
法が存在すると思い込んでいた。
「保自厨どの、この喪国はその様な考えなどいらぬ!」
「根雅殿、貴方は本当に色を知りたくは無いのですか?努力すれば・・・」
遮るように根雅が言う。
「その様な事を言っているのではない!!その努力などという曖昧な言葉など信じられぬ
と言っておるのだ!」
根雅はすぐに顔が真っ赤になる。それが主な原因で今まで虐げられてきた。そんな事も忘れ
激昂する根雅をよそに、不恋愛は冷静だ。昔から不恋愛は異常なまでに冷静になる時がある。
不恋愛が冷めた調子で口をひらいた。
126 :
転載:04/10/12 05:23:00
346 名前:ワンダー喪喪 ◆T3HqDEgOKE 投稿日:04/09/21 17:47:48
「その努力というものを詳しく聞かせてもらおうか、・・・えー、なんと言いましたかな」
「保自厨です。詳しくと言われましても、あまり貴方方の事を良く存じませぬもので・・・」
「貴方と同じ様な事を言う輩は他国で腐るほど見てきている。しかし、皆一様にして貴方と
同じ台詞を吐いて逃げ帰って行きますな」
不恋愛は冷静なようで、その実根雅と同じ気持ちだ。不恋愛は不気味に微笑している。
不恋愛は保自厨をじっと見つめている。不恋愛は、保自厨を攻撃しているのだ。
「初対面でその様な詳しい事は言えませんよ、不恋愛殿」
「しかし挙げ厨殿、その初対面で努力と言うからにはやはり何か共通の「努力」という
物があるのでは?」
「・・・保自厨です。共通の努力など無いと言う事に気づく事からはじめた方が良さそう
ですな、貴方は」
保自厨は少し不愉快そうな顔をした。不恋愛の煽りが少し効いている様だ。根雅は黙って
ニヤリとした。きもい。
「そう言って逃げるのが貴方方の特徴ですなあ、暮暮厨殿」
「保自厨です!!二度と間違えないで頂きたい!!」
根雅と不恋愛は、勝利を確信した。実際は何も勝ってはいないのだが・・・
127 :
転載:04/10/12 05:23:22
347 名前:ワンダー喪喪 ◆T3HqDEgOKE 投稿日:04/09/21 17:48:12
保自厨は、深呼吸を一回した。そして強めの酒を一杯、一気に飲み干した。
「では逆に聞かせて頂くが、貴方方は努力をした事はありますか?自分を見つめ、欠点を
見つめ、一つ一つ解決していくのです。一口に努力といっても、そこには一人一人の、さらに
一つ一つの、さらに数限りない解決法が存在するのです。貴方方は、それをひとつでも
改善しようと試みた事はおありか?」
空気が変わる。沈黙が支配する。その沈黙に耐えかねてか、忘れかけてた見えない支配者への
抵抗か、根雅が口を開く。それは事実上の敗北宣言だった。
「は、そ、その様な事をしても、むむだ、無駄、だ。それに、その様な話を聞かされて
余計にやる気をなくしたわ。所詮我ら喪男は・・・」
「つまり何もしていないと?数限りない選択肢がありながら、何もせずのうのうとただ惰性で
生きていると?」
保自厨が遮るようにまくし立てる。この男も喪手杉や怒弓の前では形無しだろう。しかし、
自分よりも下と見た喪男には強気のようだ。
128 :
転載:04/10/12 05:23:43
348 名前:ワンダー喪喪 ◆T3HqDEgOKE 投稿日:04/09/21 17:49:00
「・・・保自厨殿」
不恋愛が切り出す。
「なんで御座いましょう?」
「貴方は、我ら喪男を見下しに来たのか?他にやることは無いのか?」
「馬鹿な、見下すなどとんでもない。方法を教えて差し上げようと・・」
不恋愛は不快な顔をした。同時に根雅が、
「そ、そのっそれがみく見下し、みみ、」
「戦えぬ軍人に用は無い!!」
保自厨は声を荒げて根雅を制した。完全に打ちのめされた根雅は、小声でぶつぶつと独り言を
囁いている。誰と話しているのだろうか。目の前の保自厨か、それとも長年屈辱的な支配を強いられた
この顔か・・・
「初対面の者など理解できんと言ったではないか。先程の言葉を忘れたか?」
「ここまで話してきて少し判りました、不恋愛殿。貴方の場合、まずは服装からですな」
「ふ、その程度の事は常識だ。もっとましな事を言ったら・・・」
「それで大分変わりますよ、不恋愛殿。貴方は自分が思う程不細工ではない。むしろ、
私などよりぜんぜんましだ」
「・・・貴方に勝ったところで・・・」
「何人かの女性と大分親しくなりましたよ」
不恋愛の表情が変わった。
129 :
転載:04/10/12 05:24:10
349 名前:ワンダー喪喪 ◆T3HqDEgOKE 投稿日:04/09/21 17:49:32
不恋愛は黙っている。保自厨が続ける。
「私からすれば、貴方が羨ましい。一生変えられぬ顔が、私などよりマシなのだから」
不恋愛はまだ黙っている。何を考えているのか・・・
「おっと、もうこんなに遅くなってしまった。明日はやっと取り付けた約束があるので、
今日はこれで・・・」
不恋愛は慌てて、
「約束とは?まさか、女・・・」
「大分努力しましたがね。やっとここまで辿り着けましたよ」
保自厨は微笑する。不恋愛は目をそむけて手の動作でもう行け、と促した。
保自厨が去り、交替に沈黙がやってきた。二人は無言で窓の外を見ている。
根雅は、地面を見た。
不恋愛は、星を見た。
長くてすまん・・・
130 :
転載:04/10/12 05:24:49
75 名前:洞庭湖の戦い1/3 投稿日:04/08/28 13:00
連続もの置いて行きますね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「さて、呉国侵略を開始しようと思うのだが、何か?」
喪王・喪手内は重い口を開いた。
喪手内に心服している配下は、無論意義もなく、一斉に拍手した。
昨晩、四畳半の宴会場で鍋をつつきあったこともあってか、喪将たちの心は一つになっているようだ。
「ご、ご、呉国っつーかまずあのイケメン周瑜をだなぁ!!!!!」
個人的感情丸出しで、必要以上に唾を飛ばして叫ぶのは妖精将軍・童貞。
「俺は、あのスカした野郎に顔射fdし;@grふじこ」
「必死ですね(w」
激した童貞を、隣に居た文官・不恋愛が口と頚動脈を押さえながら制する。
131 :
転載:04/10/12 05:25:13
76 名前:洞庭湖の戦い2/3 投稿日:04/08/28 13:02
場が静まった所で、喪国天才軍師・独秦(知力78、魅力4)が戦略を申し出た。
そして、
「先鋒は…」
ぐるりと一同を見回した後、喪国の武将で一番の厄介者である男を指差した。
「泡好殿です」
ええっ、という声が方々から漏れる。
この男、国庫の金で泡遊びを繰り返すことで有名であった。
いや、最も嫌われる要素は……
「はっはっはっ、いやー、やはり男子たる者、女を知っている者こそ本物。軍師殿も清童ながらなかなかお目が高い!」
本当は素人童貞であるが、この男にはそのような理屈は通用しない。
「氏ね」五鬼将軍の中でも血の気の多い男、武沙(当然童貞)はこぶしを握り締めてつぶやいた。
「で?で?報償はいくらで??」
「だまらっしゃい」
さすがは独秦、この不遜な態度にも顔色一つ変えない。
「泡好殿は、心身ともに健康ですか。今現在かかっている病気はありますか」
「はぁ?」
「正直におっしゃって下さい。先鋒である以上必要な情報なのです」
先鋒、という言葉の響きに酔ったのか、泡好はだらしなく笑って答えた。
「まぁ、大方健康っちゃぁ健康なんですが、実は…」
彼の口からは、数々の病名が出てきた。言うまでもなく、全て下の病である。
一同の冷たい視線が彼に集中した。
132 :
転載:04/10/12 05:25:34
77 名前:洞庭湖の戦い3/3 投稿日:04/08/28 13:03
「すばらしい」
沈黙を破ったのは、独秦の拍手だった。しかし、気がふれたかのような答えだ。
その真意は一体どこにあるのだろう。
「泡好殿」
きわめて慈悲をたたえた表情で、独秦は言った。
「あなたは、先鋒として、周瑜に突っ込みなさい。もちろん、文字通りですよ」
「ウホッ!して、その心は…」
顔をしかめつつも、まんざらでもないといった口ぶりで泡好は訊ねた。
独秦は、うふふ、と不気味な笑みを浮かべた。
「細菌兵器です」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…スマソorz
133 :
転載:04/10/12 05:27:31
103 名前:('A`) 投稿日:04/08/29 22:35
横入りスマソ。揚げついでに置いていきます↓↓↓↓↓
陽のあたらない、訓練場の一角。
ここは人通りも少なく、人目を気にする《自虐》にとっては格好の居場所だった。
剣術に励んで、ようやく額に汗が吹き出てきたという時、背後に足音がした。
「何をしている?自虐殿」
振り返ると、そこには彼と同じく五鬼将軍の一人、《堕眼》の姿があった。
「いや、そ、その…た、鍛錬を……」
「こんな所でやらずとも、もっと表でやればよいだろう」
「し…しかし、私が表に出れば見る者が…目が、腐ると……」
「ここは喪国だ。皆同じ悩みを持っている。誰もそなたのことは笑わぬ」
《自虐》は、はっとした。
「は…そ、そうでしたね…私としたことが…未だに、どうも…」
「私も、そういう国だから、魏から降ったのだ」
「そ、そうですか……ただ…」
未だに《自虐》は、《堕眼》が喪国に来たことを解せないでいた。
魏の太守という地位にありながら、わざわざ魏から降るなど、かなり大それた行為だと思う。
この男は、なかなかの武辺者だ。曹操からも重用されたとしてもおかしくはない。
喪国の将にふさわしい容貌があること以外は、全く喪国に降る理由などない。
その理由を、《自虐》はおずおずと問うた。
134 :
転載:04/10/12 05:27:53
104 名前:('A`) 投稿日:04/08/29 22:36
「英雄、色を好む、だとよ」
「!!」
色、という言葉に《自虐》はどきんとした。
「曹操様がよくおっしゃっていた。ただ、私はどうもその言葉は嫌いだった」
「確か、堕眼殿は…」
「そう、一度は遊女を抱いたことがある。だが、決してよいものではなかった」
まだ女を知らない《自虐》には羨ましいばかりの世界である。
「そんな…」
「私が抱いた次の朝、その女は首を吊ったよ。相当、私の相手が嫌だったのだろうな」
135 :
転載:04/10/12 05:28:13
105 名前:('A`) 投稿日:04/08/29 22:36
「噂はみるみる広まったよ。それ以来、誰も、どの女も私の相手を拒むようになった。こちらが金を積んでもな」
「そうですか…」
「色に憧れど、いつくしむ女がいないのだ。俺は、英雄にはなれないだろうな」
自嘲的に、《堕眼》はつぶやいた。小さく、鼻をすすりあげる音が聞こえた。
《自虐》は何も言えなかった。
自分は、女の手を握る勇気もない。女を抱くことに憧れてはいたが、自分には禁忌であるとも思っていた。
女の白く、柔らかい肌は、《自虐》にはあまりにも眩しかった。
自分が触れたら、穢れて、黒くただれてしまうのではないか、そんな気さえしていた。
「…剣術を、教えて下され。ど、どうも私は、まだ未熟で……」
《自虐》は、話題を変えた。
「いや、なかなかよい筋だと思うぞ」
「…ほ、ほら、堕眼殿は、短兵(刀剣)がお得意とか……」
「私の武器…確かに短兵……」
何を思い出したのか、《堕眼》の顔が一瞬曇った。
けれども、己の中の陰鬱な記憶を昇華させるには、顔や性格の劣等を超越した「武」が必要ではないかと思った。
そう、君主の喪手内の言っているように。
「よし、自虐殿!稽古につきあうぞ!!」
「……はいっ!」
糸冬
136 :
転載:04/10/12 05:35:59
137 :
転載:04/10/12 05:56:01
138 :
転載:04/10/12 06:07:28
疲れた・・・_| ̄|○
誤りや貼り残してる作品とかがあったら修正よろ
最後に一つ置いて行きます・・・
>>80の続きになります
曹操に対する調略が失敗に終わってからというもの、喪軍はすっかり八方塞がりの状態にあった。
することはといえば、御喃仙人より授かった自涜の法を駆使して、無益な自慰行為に耽るくらいのもの。
四顧の礼を以って招いた独秦に於いては、終日転寝(うたたね)と間食を繰り返すばかりで物の役にも立たぬ。
堪り兼ねた喪手内が独秦に諮るも
「未だ機に非ず」
などと言を左右にして逃げ回るばかりであるから
(本当にこやつが、臥龍や鳳雛と並び称されるほどの傑物なのであろうか)
とさしもの喪手内も、不信の念を禁じ得ないのであった。
頼みの綱の独秦がこの有様の為、喪軍の士気はすっかり消沈し
愈々独秦を悪し様に言う者さえ現れる始末。
こうなると独秦も流石に居づらくなって
「少し夜風に当たってきまする」
と言い残し、そそくさと詰め所を後にして来たのである。
「我が軍は三千足らずの小勢、反旗を翻すには未だ機に非ず。
聞けば孫策は曹操の不在を狙って、許都侵攻を企てておるとか。
そうなれば孫策の勢い天をも穿つ程となり、最早我が軍に抗する術はあるまい。
どうにかして、その前に手を打たねばなるまいて」
独秦がぶつぶつと一人ごちながら、密陽区の寂れた街路をとぼとぼ歩いていると
突如何者かが、勢い良く独秦に激突した。
跳ね飛ばされた独秦が、腹部を押さえながら顔を上げると
そこには薄気味悪い面を、涙でしとどに濡らした不気味な男が一人ぼうっ、と佇んでいる。
「貴様、ぶつかっておきながら謝罪の一つもないのは無礼ではないか」
独秦の罵声を聞いて、男は漸く我に返ったのか
あたふたとしながら何か言葉を発しているが、生憎聞き取ることも能わぬ。
(しかし見れば中々立派な服装をしておる、呉の臣であろうか)
何にしろこの狼狽振り、ただごとではないと踏んだ独秦は
日がな屋敷に篭って、顔が知れていないのをいいことに、一つ探りを見ることにした。
「まあ落ち着きなされ、某はこの辺りに住む管惇(かんとん)と申す者。
一体何があったのか、酒でも飲みながら私に話しては頂けませんか」
独秦は、かたじけない、かたじけないと、号泣しながら繰り返す男をなだめながら
一路うらぶれた安酒場へと向かった。
「某、孫家に仕える童貞と申す者でござる」
酒を口に入れたら少しは気が治まったのか、童貞がぽつぽつと事情を語り始めた。
宴席でこれ以上無いほどの恥辱を蒙ったこと、
唯一の同朋だと思っていた魯粛に置いていかれた、という孤独感、
そして何よりも自分自身の容姿が恨めしい、と言うのである。
「このように醜い容貌でなければ、あのような屈辱を味わうこともなかったろうに。
あな口惜しや、口惜しや」
こう言うとまた感情が高ぶってきたのであろう、童貞は卓に突っ伏して再び嗚咽を漏らし始めた。
独秦にも、その気持ちには大いに共鳴する所がある。
彼とてこの世に生を受けてより三十年間、全く同じ理由でいわれ無き迫害を受け
不羈の才を持ちながらも、誰からも求められず山奥の寒村へと押し込められたのである。
(こいつは俺だ、俺もこの通りだったんだ)
どこかで聞いたような台詞を脳裏に浮かべ、薄っすら涙を滲ませる独秦。
だが今は感傷に浸るよりも、情報を引き出すことが肝要である。
「貴公の御気持ち、痛いほど良く分かりますぞ。
して、左様な心無い仕打ちをした者とは、一体何者でありましょうや」
「誰も彼もない、皆寄って集って儂を侮辱しよった。特にあの…」
ここまで言いかけ、童貞ははっと我に返った。
迂闊なことを口走れば、いつ孫策や周瑜の耳に入るかも分からぬ。
第一、自分は目の前にいる男の素性も知らぬではないか。
「…いやこれ以上は止めておこう。愚痴に付き合ってもらってすまなかった」
これは心ばかり、と卓上に金子を置くと、童貞は慌しく席を立った。
「ま、待たれよ、童貞殿」
差し出された金子をしっかり懐に収めると、独秦は路上にて童貞を引き止めた。
「某、このことは決して他言せぬと、天地神明にお誓い申し上げよう。
私とて貴公と同じ憤りを覚えているのでございます。その証拠に」
独秦は自分の顔を指差しながら詰め寄った。
「この面をとくと御覧下され。あなた同様、容貌醜怪、薄気味悪しと罵られ、遠ざけられて
生まれてこの方、女と交わるどころか、まともに口をきいたことすらございませぬ。
同朋に斯様な仕打ちをする者どもの名を、是非とも心に銘じておきたいのです」
言うなりぼろぼろ涙を流す独秦。
まじまじと童貞が見詰めると、成る程この男、確かにその醜さ我に勝るとも劣らぬ。
いや寧ろだらしなく肥えていない分、ともすれば自分の方がましなのではなかろうか。
童貞は暫く逡巡(しゅんじゅん)していたが、やがて意を決したように独秦の手を取り、口を開いた。
「あなたの涙、よもや嘘偽りではござりますまい。教えて進ぜましょう、その者共の名は…」
童貞の告白は、果して独秦の推察通りのものであった。
孫策と周瑜、それが童貞に苦汁を舐めさせた張の本人であるらしい。
(この男、使えるやも知れぬ)
先程まで、情の任せるままに涙を流していたかと思えば
今は打って変わって、冷静に相手を取り込む算段を整えている。
この機転の早さこそが、独秦をして名軍師たらしめた、一つの要因であると言えるだろう。
さて独秦はその場にさっと跪くと、拱手をしながら童貞に語った。
「これまで貴公を謀っていたこと御許し下されい、童貞殿。
実は某、喪手内殿に仕える独秦と申す者。
喪の大願を果たす為に、是非とも貴公の御力が必要なのでござりまする」
喪手内、と言えば童貞にも見覚えがあった。
宴席などでも他将と碌に口をきかず、一人押し黙って酒を舐めている姿が印象に残っている。
だが幾度か見かけたばかりで、会話を交わしたことは一度もない。
「本来であれば、直ぐにでも我が軍に迎え入れたい所。しかし喪軍が弱小の今それも叶いませぬ。
貴公はしばし呉の臣として仕え、機会を窺っていてもらいたいのです。
孫策、周瑜は我ら喪軍に取っても、不倶戴天の怨敵。共に討ち果たそうではござらぬか」
さしもの童貞も、この要求ばかりは軽々に承諾することが出来ぬ。
忠心の厚い童貞にとって、主家に弓引くことはその存在意義すら脅かす、と言っても過言ではない。
しかしあの憎き周瑜を討ち果たせるのなら、という甘い誘惑はどうにも抗いがたいものであった。
「…承知致した、独秦殿。喪の大願の為、力を貸すことを約束しよう。
だが主君を手にかけるような真似は、私には出来かねる。
正式に喪軍に加わるまで、内部の情報を提供するのみに止まらせてもらおう」
彼なりに考えた苦渋の決断であったが、独秦は
「さても天晴な忠臣ぶり。さればこそ私も信頼が置けるというもの」
とあっさり承諾し、童貞の手を取る。ここに密約が成立した。
翌日、独秦はいつものように、日向に寝そべって頻りに欠伸をかいていた。
その姿を偶然見かけた喪手内は、遂に堪忍袋の緒を切らして
一つ文句でも言ってやろうと、足音も荒く独秦の背後に近寄った。
「独秦殿、私があなたを四顧の礼を以って迎えたのも、全てはその智略を見込んでのこと。
ところがあなたときたら、無為無策に日々を送るばかりで
本当にこの苦境を打破する積りがあられるのか」
こう問われた独秦は、もう一つ大欠伸を放つと、ゆっくりと伸びをしながら振り返った。
「いや喪手内殿、どうやら活路が開けたかも知れませんぞ」
怪訝な顔をする喪手内に、独秦が不敵な笑みを浮かべながら言った。
「孫策を、暗殺するのです」
余りに大胆な発言に、喪手内は思わず言葉を失う。
正に、瞠目すべきは軍師の奇策、奢る覇王の命危うし、というところ。
さて、孫策の命はどうなるか。それは次回で。
あの・・・最後の「それは次回で」というのは
それっぽさを出す為だけに書いたので
別に俺がどうしても続きを書くとかそういう訳ではないです、念のため
148 :
('A`):04/10/12 18:18:55
これで戻る?
149 :
('A`):04/10/12 23:24:12
150 :
('A`):04/10/13 16:03:22
保守
151 :
('A`):04/10/14 00:28:28
あげ
152 :
ワンダー喪喪 ◆T3HqDEgOKE :04/10/14 01:26:02
うおおおおををををを!!
荒らしで落ちたから俺が立てようかと思ってた!!
>>1さん猛烈に乙!!!
新作これから読みます!俺喪新しいの書くんで
よろしく!文才無いけど・・・ ('A`)
153 :
('A`):04/10/14 03:48:39
>>152 みんな期待してます。
文才ないとか言う作者さん多いけど
なんだかんだで皆うまいと思います。
保守
ほしゅ
156 :
('A`):04/10/15 18:26:33
作者待ち&気分転換AGE
保守!
javascript:newWin1('0000314');
保守下げ
保守な季節
捕手
162 :
('A`):04/10/18 00:23:55
穂主
163 :
('A`):04/10/18 18:35:10
呉・策略へん書いてた名無しです
そろそろ進ませてもいいのでしょうか?
良ければ明日の朝あたりに
164 :
お粗末:04/10/18 21:20:53
>>163 すいません・・・
俺も丁度今日の夜にうpしようかなと思ってたんだけど
うpしちゃってもいいでしょうか?
>>164の時点で殆ど書きあがってしまっていたので
とりあえずうpしておきます・・・うざかったらスルーして下さい
どちらにしても
>>163さん本当に申し訳ない
今度うpする時にはきちんと予告しときます・・・
独秦の策は喪手内を大いに驚嘆させ、
その是非を諸将らに諮るため、緊急に軍議が執り行われることとなった。
「拙者は賛同致しかねる。こそこそ暗殺などと、真の武人のやることではござらぬわ」
顔醜が声高に自論を開陳すると
「いや孫策は我々にとって相容れぬ宿敵、奸賊誅すべし」
と武沙が持ち前の濁声でがなりたてる。
議論は侃々諤々と白熱し、一向に収拾のつく気配がない。
「しっ、声が高いぞ、皆の者。
まだ策の全容も明らかでない内から、論を戦わせていても始まらぬ。
ここは一つ、軍師殿の話を伺おうではないか」
と喪手対が言ったので、一同はひとまず独秦の言葉を静聴することにした。
「さて軍師殿、孫策暗殺などと申すからには、何かしら策があるのでござろう。
先ずそれを我々に御説明願いたい」
喪手対の言葉を受け、独秦は策の概要を解説し始めた。
「孫策は己の武を過信しておるのか、時折単騎にて狩りをする癖があると耳に致しました。
そこを狙って刺客を放つのでございます」
「しかし軍師殿、孫策がいつ何処で狩りを行うという情報は如何にして」
「その点はご安心あれ」
独秦が得意満面で続ける。
「某、昨日呉の者を一人抱き込んで参りました。
今はまだ葛藤があるようでござりますが、もう一押しという所でありましょう。
さて、後は下手人を誰にするかという問題。
ここさえ解決すれば、この謀は成ったも同然でござりまする」
さて同じ頃、独秦の口車に乗り喪軍への協力を約したものの
どうにも決心の着かぬ童貞は、気晴らしがてら深夜の街を彷徨していた。
すると目の前に、見覚えのある老人がふらふらと一人歩いている。
「もし御老人、ひょっとしてあなたは御喃仙人ではござらぬか」
振り向いた皺だらけの醜い顔は、正しく御喃仙人その人であった。
「おお、あなたは童貞殿。このような夜更けに如何なすったのです」
童貞は、予ねてより御喃仙人の元へと足繁く通い、今では互いに顔を見知る仲となっていた。
「そう言う仙人殿こそ、どうなされたのです。御老体に夜風は毒ですぞ」
「何、この国でも愈々風当たりが強くなって来たのでな。
新たな土地を目指して、再び放浪にでも出ようかと思っていた所。して童貞殿は」
童貞は師と仰ぐ御喃仙人に、全てを包み隠さず打ち明けた。
「某どうすれば良いのか、決めかねて居るのでございます。お導き下さらぬか、仙人殿」
御喃仙人は暫く白髭を捏ね回していたが、やがて徐ろに口を開いた。
「迷うことはござらぬ、是非喪手内殿に協力すべきでしょう。
孫策なぞは所詮小覇王たる器、あなたが忠を尽くす相手ではござるまい」
「私としても、喪手内殿には協力したいと思っておるのです。
しかし主君を我が手にかけるようなこと、この童貞にはとても…」
言いかける童貞を、御喃仙人の言葉が遮る。
「協力はしたいが己の手は汚したくない、というのは余りに姑息ではありませぬか」
ぎくっとして、童貞は思わず俯いた。
心中に、どうにか逆臣の謗りを免れたい、との保身の念が潜んでいたことは否定出来ない。
「今喪手内殿をお助け出来るのは、天下広しと雖もあなた唯一人。
力になっておあげなさい」
今でこそ神仙と崇められ、民衆の尊敬を一身に受ける御喃仙人であるが
そこに至るまでには、筆舌に尽くし難いような屈辱も味わってきたに相違ない。
そのみすぼらしい姿も、老齢や薄汚れた衣類の為ばかりではなかっただろう。
御喃は仙人である前に、一人の喪男であった。
「感謝致す、仙人殿。まるで眼の霞が晴れたようにござりまする」
と童貞が顔を上げると、そこにもう仙人の姿はない。
後には夜風が蕭々と吹くばかりである。
所変わって喪軍陣営では、未だ孫策暗殺の下手人を決めかねていた。
何しろ孫策は、赤手にて干糜を縊り殺すほどの豪傑である。
なまじな刺客では、返り討ちに遭う可能性すらあった。
始め独秦は矢羅傍、顔醜に白羽の矢を立てていたが
この二人は暗殺計画自体に反対であり、容易に承知しない。
「その大任、是非とも拙者に御任せ下され」
と武沙が息荒く立ち上がったが、独秦はあっさり頭を横に降る。
「武については申し分ないが、武沙殿には少し迂闊な所があるように見受けられます。
此度のような策には、失礼ながら適任とは言えますまい」
真っ向から否定された武沙は、消沈しながら再び席に着いた。
さてそうなると、愈々人材が見当たらなくなってくる。
喪手対では武力に若干の不安があるし、まさか喪手内や独秦という訳にもいかぬ。
仕方なく独秦や喪手対が、何とか矢羅傍、顔醜を説得しようと腐心しておる所に
突然来客があった。童貞である。
童貞は直ぐに喪手内達の元へと通され、こちらが件の童貞殿、と独秦が一同に紹介した。
「時に童貞殿。何か動きでもござりましたかな」
尋ねる独秦であったが、童貞は突如床に額づきこう申し立てた。
「これまで私は、己の保身ばかりを専一に考えておりました。
正しく汗顔の至りにて、諸兄らに合わせる顔もござらぬ。
だが今は喪の大願を成就させる為、例えこの身が逆臣の汚名を被ろうとも厭いませぬ。
孫策暗殺の下手人、是非この童貞めに御命じ下さりませ」
事態が把握出来ずどよめく一同を尻目に、独秦はゆっくりと歩を進め童貞の前へと立つ。
正に、神仙憂いて呉都を去り、霞払いて将を導く、というところ。
さて、独秦の決断や如何に。それは次回で。
お、お粗末サン
お疲れ様です、どうぞどうぞ
待ってましたよー^^
では、その次を考えますね
また書き込みが重ならないように、報告しますね
173 :
('A`):04/10/19 15:00:46
新作乙!
乙!相変わらず凄い文才だな・・・
乙です!!
176 :
('A`):04/10/20 10:43:45
浮上
177 :
('A`):04/10/21 00:42:19
保守あげ
178 :
('A`):04/10/21 12:41:36
焦らず、まったり進行しましょう。
小説スレッドですからこんな感じのスピードでOKだと思います。
179 :
('A`):04/10/22 10:50:16
保守
180 :
('A`):04/10/22 20:58:51
ホッシュ
181 :
('A`):04/10/23 19:38:41
捕手
182 :
('A`):04/10/23 19:39:17
とりあえず、俺も諸葛孔明に負けないような軍師になろうかな
張松は喪国にふさわしい
何だこのスレ
ワラタ
185 :
('A`):04/10/24 17:03:59
やべえ早く新ネタ書かないと落ちそう
186 :
('A`):04/10/24 19:21:56
ん、じゃあ明日中に考えて見る
お粗末三の続きで書きますね
187 :
('A`):04/10/24 20:40:24
あげ
「童貞殿、そういうからには何か策でも?
孫策は武勇の人、なまじ半端な腕前では、傷ひとつ付ける前に首が飛びますぞ」
そう独秦は尋ねた
童貞は
「はい、私は役職がら、領地の情報はことさら耳に入ります。それを活かして
どうにかできない物かと。。。」
独秦は見通していたように言った
「そうであろうと思っていました。
一君主の命などそう簡単に奪える物ではありませぬ
策はこちらで考えてあります。あなたはそれを行うだけで末代まで名を残すのです。
しかし、命は無い物と考えていただきたい、そのお覚悟はいかに?」
童貞は御喃仙人と話した時から、すでに決意を固めていた
「是非もありませぬ、乱世に揉まれ、人知れず露と消える命ならば
武人らしく大業を成し遂げ散り消えて行くを本望と致します」
「よろしい、では説明しましょう」
独秦はたんたんと説明し始めた
「失敗は許されません、好機は一度、孫策の身辺警護をしている近衛兵を使います。
それはこちらで事を進めますので、童貞殿は孫策が狩りに連れて行く近衛兵を10名ほど
を迎え、私が指定した日に、日頃の労をねぎらうと、祝宴を開いていただきたい、
そして、孫策が狩りをしている時、あなたはご自分の家来を引き連れ孫策を襲うのです。」
この頃、呉の将兵、呉の賓客の3分の2までが于吉という仙人を崇拝し
于吉が現れると家来は役人の命令も聞かず、命令系統に支障をきたすほどになっている事を孫策
は懸念し、孫策の母までが崇拝している于吉の処遇に頭を悩ませていた
孫策は、信仰も度が過ぎれば国も滅ぼしかねないと、于吉を処刑しようと考えていたが
どうすれば将兵や民衆の反感を買わないで処理できるのかがわからないまま日々を過ごしていた
これにギラリと目を光らせたのが独秦であった。
将兵の仕事にこれほど影響が出ているなら、孫策は間違いなく于吉殺害を考えているだろう
現実に、猛暑で呉が日照りに見舞われ、天候をどうにかできないかと于吉を呼びつけた時
呉の将兵は目の前に現れた于吉に感激し、孫策をほうっても于吉にひれふす有様であった
信仰よりも忠義を重んじる将兵達が、これは呉にとって問題であると噂しあっているところを
独秦が聞きつけたのである
独秦はそれを種に、一人山小屋に住む于吉に接近した
「于吉様、私は喪軍軍師、独秦の使いの者です。主人から言付けを賜り参上いたしました。
あなた様の命は狙われております。主人独秦は、于吉様を民衆の支持厚く、民を幸せに導いている
こういう人には生きていて欲しいとお考えでございます。
御支度をして、どうぞ主人の待つ館へおいでください、私がご案内致します。」
そして、独秦の館に于吉がやってきた。
独秦は作法に則り深く頭を下げ礼を尽くし言った。
「于吉様、ようこそおいでくださいました。
天下に名高い于吉様の玉体をわざわざ御運びいただけた事、恐縮の極みにございます
今回は非常時にて、寛大なご容赦を承りとうございます。
まずは食事をしながらこの度の一件、談じたいと思っております」
于吉は不思議な笑みを浮かべて
「良い良い、死に方は万色あれど人は必ず死ぬ、けれど死地にあって生きるもまた運命での
あなた方に出会えたのも、また運命だろうよ?それも良い良い、ふぉふぉふぉ」
于吉は不思議な老人であった、独秦は仙人に道理を説いて説得するという事に多少の抵抗を感
じていた。民衆に神と称えられている人物である、そんな人物に道理を説くなど。。。。
ましてや喪軍にとっては利のある話、それが道理と上手く説いても今まで通りに事が運ぶかと
いう不安もあった。
ところが于吉は、独秦の言葉に良い良いと言いながらひとつも反論せず孫策暗殺の協力をすん
なり受け入れたのだった。
「喪手内殿の噂は耳にしておる、ちゃんとわかった人だと思うておる
これがあなた達だけ利するものならやらんで、むやみに騒ぎは起こしとうないでの
しかしの、わしと、わしを信じ尊んでくれる者たちのためでもあるでの
あなた達にとって不都合な孫策を殺す事が、たまたまわしを信じる者達のためになるという話よ
良い良い、善行が良い結果を生むとは限らぬ、悪行が悪い結果を生むとも限らぬ
結果は運命が知るところよ、天は何を望むかのぉ? ふぉっふぉっふぉ」
独秦は童貞に言っておいた近衛兵10名を、童貞の屋敷で労をねぎらい祝宴を開かせていた。
そこに突然、于吉を訪問させたのである
于吉は童貞の屋敷にいる近衛兵を説得して、狩りの最中に孫策を殺すよう説得しに来たのだった。
近衛兵は忠義の者で腕のある者が選出され決まる。
誰が説得してもそう簡単に寝返り主人を害する者ではない
ましてや喪軍内部の人間が説得にかかればたちまち孫策の知るところとなる
しかし、于吉であればそれができると、独秦は考えたのであった
于吉は童貞の家人が待てというにも関わらず
良い良いと言いながら祝宴の部屋に平然と入って来て言った
「やあやあ諸君、今日は天の導きで、ここに来れば命の酒がいただけると聞いてやってきた。
わしにも一献いただけるかね?」
近衛兵たちのほとんどが于吉の姿を見て驚愕し、ひれふした。
「どどど、童貞殿!これは?どうしてここに于吉様が?」
皆に釣られひれふしていた童貞は答えた
「わわ、私も于吉様の突然の訪問にただ驚くばかりでござる。何事でござるか?!」
童貞が独秦に言われたのは、今日、孫策が狩りに連れて行く近衛兵をねぎらい祝宴を開くように
と言われていただけで、于吉の事は何も聞かされていなかったのである
泣いていた近衛兵の一人が言った
「童貞さまぁ、于吉さまぁ、わしゃこんな近くで于吉さまを拝見できて、もう死んでも悔いる
事はねえ、今日の祝宴に来れて、良かったぁ・・・おめらもそうだろ?・・・うぐっうぐ」
流石に孫策の母と、呉の将兵、賓客の3分の2が崇拝する于吉である
その姿を見ただけで、信仰する者は何でも言う事を聞きそうなほどに見えた。
于吉を信じない者も中にはいたのだが、状況と雰囲気に呑まれ錯覚したのか
動揺した後、喜んでいるようであった
信じない者にとって、于吉本人を目の前にして、また于吉を目の前にした信者の傍で
自分は信じないなどと言ったり礼を失する態度を取ると、後々信者から何を言われるかわからない
言われるだけならまだ良いかもしれない、呉に広く信者を持つ于吉に直接失礼を犯せば
過激な信者は命を奪いに来る、自分の職務に影響が出れば、それはつまり孫策の命に直結もする
信じない者も信じるように見せるしかない心理的状況であった
これももちろん独秦の計算の内であった。
信じていない者は普段の生活から身近な者には信じていないとバレている
信じない者が計画を知り、漏らそうとしても、漏らす事はすなわち于吉の死を意味し
それはすなわち自分の家族もろとも于吉信者全ての恨みの的、敵となる
呉の3分の2の人々の恨みを買うのだ、国家単位となってしまう
うかつな事はできないだろうという独秦の考えで、その通りになった。
于吉は言った
「今日はの、わしはどうやら死ぬ事になりそうなのだが、ここに来れば命を取り留める酒が飲めると
天から命を受けてやってきたのだよ、ふぉっふぉっふぉ」
皆はわけもわからずといった顔で呆然とそのまま聞いた。
于吉は続けた
「孫策殿がの、どうやら近々わしを殺そうとしておる
わしを信ずる者達はほとんどが孫策殿の民、将兵じゃ、わしにはわしを守ってくれる者などおらん
だがの、ここにわしを守ってくれる者が現れると天から声が聞こえたのじゃ
あんた方がはわしの命を奪う者かの?ふぉっふぉっふぉ」
忠義の者といえど、信仰する直接の人物を前に、おまえは私の命を奪うのかと聞かれれば
そうだと答えられる者ではなかった
自分を助ける者か?と問われれば、どう助けたら良いかわからない者は悩むものである
まして君命に逆らう事になる、返事への期待が持ちにくくなる
冷静な判断をさせないように、反射的に違うと答えさせれば良いのである
そこで、屋敷へ行き、まず自分の命を奪うのか?と尋ねるようにとの、独秦からの注文であった
近衛兵は、驚いて言った
「何を言われますだ!!?私どもは于吉様を心より慕っておりますだ。
命を奪うなど、めっそうもないですだ!!!」
近衛兵たちは顔を見合わせて殺すなどとんでも無いという風に言い合った
独秦は、于吉を屋敷へ行かせ、その言葉をかけるだけで
忠義者の近衛兵たちを叛徒と変えてしまったのだ
于吉は不思議な笑いを浮かべている
「そうですかそうですか、では助けてくださるんですな?やはり天の声は正しかったようじゃの
ふぉっふぉっふぉ」
近衛兵たちは
ここまで来たら助けないとは言えなかった
「もちろんですだ!な?そだろ?おめたち!!」
ああ、当然だ!と言い合った。
于吉の言う天の命と聞いて、于吉を救うのが我らの天命なのだと言い出す者もいた
于吉
「孫策殿に逆らってもかの?」
一瞬空気が止まった
近衛兵たちは保身の事が気になったのだろう
助けるだけならバレないように匿う事もできると甘く考えていたのだが
于吉は孫策に逆らう気があるのかと、ここでハッキリと聞く事で、甘い考えを捨てさせた
お互いが裏切らないかと不安になったが、後には退けない
一人が言った
「血判署で決意を確認するべ、俺は血判に署名してもええ!!裏切る者は死んでもらう!!」
こうして独秦の思惑通り
孫策暗殺を決意させたのであった
独秦の段取りはこうだ
狩りを狙って童貞が手勢を引き連れ孫策を襲う
近衛兵は孫策を逃がす
孫策は城に帰ろうとするが、謀反の徒は孫策が城に戻るだろう事は百も承知
兵が伏せてあるかもしれぬ、すぐに城に戻るのは予想されやすく追撃されやすい、危険が多い
殿が一日戻らなければ城の将たちが異常に気が付き兵をよこすだろう、それを待つのが得策と
近衛兵が城に帰ろうとする孫策を止める、孫策も、それが合理的と納得するだろう
ここが安全と孫策が決めた休憩場所で休んで、孫策の兵が救出に来るのを待っている時に孫策を討ち取る
童貞が攻めて来た時、近衛兵と挟み撃ちにするだけでは、武勇を誇る孫策の事、一人でも逃げ切る恐れがある
孫策の将兵から離れた場所で、孫策が安心して一息休憩をしている隙を狙って、近衛兵10人で
孫策を討ち取るという策謀であった
しかし、独秦はもっと恐ろしい結末を考えていたのであった
198 :
('A`):04/10/25 17:23:33
ちょちょっと書いてみた
また2,3日中に時間あれば続き書きます
もっと早くかけそうな人はどうぞー
乙です
これ読んでると、独秦って知力90ぐらいはあるような気がする。
素晴らしい!これからも頑張って下さいまし。
名軍師がいるようですな
最後のもっと恐ろしい事って気になる
独秦ヘタレモード→知力76〜78
独秦本気モード→知力90オーバー
今の独秦は本気
hosyu
次スレに逝ってたのかよ!
最近忙しくて、ひさびさにスレ開いたら書けなかったので、涙ながらに毎日を過ごしていたのだ。
もうじき参戦するよ!
205 :
('A`):04/10/27 00:01:54
∧∧ ∧∧
夏喪氏キタ━━━━ (*゚∀゚) (∀゚*)━━━━━━!!!!!!!!!!!!
彡 ⊂ つ⊂ つ ミ
(( ⊂、 / \ 〜つ ))
ミ ∪ ≡ U′ 彡
期待してまつ!
「・・・。ということになり申した。今のところ、計画は万事滞りなくすすんでおりまする。
決行は、独秦殿のご指示通り、七日後の正午!」
喪の詰め所にて、経過を報告する童貞。
「して、孫策の狩り場は・・・?」
冷静な口調で尋ねかえす独秦。
同席している喪手内や武沙は、
日頃のへたれぶりからは人が変わったように切れ者になっている彼の雰囲気に飲まれて、言葉も出ない。
「呉都郊外の西の林でございます。
斯くなる上は運を上帝に任せ、命を賭してでも孫策さま、いや、孫策めを・・・!」
答える童貞。
「吉祥、吉祥。大吉祥ですな!」
突然、暗殺の謀議の場には似合わぬ、上機嫌な声を上げた者がいる。
孫策の追捕が厳しくなって以来、喪の屋敷に転がり込んでいた御喃仙人である。
同じ仙人仲間の于吉を、独秦に紹介した関係上、彼もまたこの場に加わっていた。
「呉都郊外西の林・・・、その名は悠虎林(ゆうこりん)と申すのじゃ!」
その名を聞いて、場の一同は顔を見合わせる。林がどうかしたというのか?
「この悠虎林、喪男の間で古来より一つの伝説が語られておる。
遥か未来の喪男末法の世、さる外星よりこの地に天女が光臨して喪の女神となり、
永遠の幸福と興奮を我らに授けるというのじゃ!
おお・・・、その姿を想像するだけで・・・。スク水ハァハァ・・・・。」
普段の姿からは想像もできないほどに興奮し、視線を虚空に彷徨わせる御喃。
その様子は、独秦ら謀議の喪男を勇気付けるに充分であった。
「うおぉぉぉ!りんごももか姫ぇぇぇ!!!」
感極まって拳を虚空に突き上げ、意味不明の呪文を唱える武沙。
気がつけば、独秦も、童貞も、喪手内も、皆が同じ呪文を唱えていた。
「りんごももか姫ぇぇぇ!!!ゆうこりんハァハァっ!!!」
例によって喪男の汗臭い空気が渦巻く一室に、漂うあやしい雰囲気。
でも、計画はきっと成功するに違いない。
たぶん・・・。
とりあいず新スレ記念に、ストーリーに影響ない程度で、一話おいておきます。
遅ればせながら、お粗末氏、そして1さんに激しくGJ!!
>>206 こんな短時間で・・・あんた、喪文学の星だよ。
>>188-197 乙です!果して恐ろしい結末とは・・・?
>>206 夏喪さん待ってました!相変わらず仕事がお早い・・・
遅筆な俺としては是非とも見習いたいところ
そして当日。。。
「ハアッ!!」
孫策の弓は驚くほど正確で力強く飛んだ
「どうじゃ!大したもんだろう」
近衛兵は
「は!流石は武勇誉れ高い殿にござります、天下に並ぶ者はおりますまい」
孫策は無邪気に喜ぶ子供のような笑顔を覗かせていた。
贅沢は飽きるが、これだけは飽きないようであった
夢中で獲物を追いかけ馬を走らせていると、家臣の一人が血相を変えて孫策の元へ飛んで来た
「殿!二、三百の兵がこちらに向かって猛進してきます!!」
冷静に答えた孫策は君主の顔に戻っていった。
「何事か?」
「わかりませぬ、迫り寄る手勢に問いただした所、その者が切られました。
我らに好意的な輩とは思えませぬ、ここは一旦お逃げください」
孫策
「うむ、二、三百ならどうにかできそうなものだが、伏勢がおらぬとも限らぬ
わしを討ち取ろうと考えているなら相手も死ぬ覚悟、できる限りの備えはしてあるだろう
城への道は伏勢がいて当然と考えるべきだのう、退却し、一旦身を隠す、皆付いて参れ!!」
近衛兵は城に戻ろうとする孫策を諌める手はずであったが
孫策は城に戻る道を選ばず自ら独秦の整えた死地への道を選んでしまった
孫策は切れ者だったが、相手が独秦である事を知らなかったのが命取りとなった
独秦はその状況で考えられる一番安全と思える道、方法を数種潰すだけで良かったのである
賢者はできるだけ安全な道を選ぶ、それを一瞬で判断した孫策もすばらしいものがあった
いや、相手が見えない孫策にとって、一番安全と思われるその道を選ぶ他無かったのである
もしもここで相手が独秦であると気が付いていれば、下手に動く方が危険と考え
迫り寄る第一波に突撃し、突き崩して逃げただろう、武勇に自信のある孫策、その可能性も高い
相手を孫策と知りその性質を良く知る独秦が有利で、独秦を知らぬ孫策が不利だったのだ
独秦自身も、この計画が自分と知られ、自分の性質を知られていたら、果たしてここまで上手く
行くか危ういと考えていた。
全て狙い通りだった。
孫策は身を隠し、自分を探しているだろう捜索部隊を、逃走中に見つけた民家で一晩待つ事にした。
孫策の元には全部で14名、10名の近衛兵は残る3名をどうにかすれば残るは孫策一人
そこで見張りを二人置き、順番を上手く調節して2名を見張りに立たせ、残る一人と孫策が寝る
のを待った。
10名の近衛兵は于吉に言われた通り、つまり独秦の計画通り、逃げ道の所々に布を落としていた
これは童貞の兵が、孫策が潜伏した家を発見しやすいためで、その民家周辺に隠れ、近衛兵が失敗しても
孫策が逃げた時のために包囲して捕らえやすくするためであると聞かされていた。
しかし真意は違った。
ここにも独秦の恐ろしいばかりの智謀が隠されていたのである
独秦はすでに孫策捜索部隊と時同じくして、孫策を探す名目で喪軍を出していたのだ。
そして近衛兵が残した目印を追って、いち早く孫策の潜む民家周辺に伏した童貞の兵のさらに
周りに、軍を潜ませていたのである。
これはもちろん孫策を逃さないためであるが、真の目的はその先にあった。
近衛兵は成功させなければ自分達の命が無い、やるかやられるかである
10名の近衛兵は3名の暗殺計画を知らない近衛兵を殺してからと意見したが、そんな事を今こ
こで話し合うわけにも行かず、そのままの計画で遂行する事にした。
孫策は家の者に酒を出させたが、非常時なので寝酒程度で止め、人を待つ時間は長く感じると
とっとと寝入った。
そして、調節した見張りの順番が計画を知らない3人のうち二人に回った。
孫策は非常時のため甲冑を着たまま寝入っている。
計画を知らない3人の内二人は見張りをしている。一人は寝入っている。
10名の近衛兵は顔を見合わせ、一人が足音を立てずに孫策に近づき、剣をそっと孫策の首に当てた
「御免!!」と言う言葉と同時に剣を首に食い込ませ、血は床に広がった。
孫策は目を見開き「ガボボオボ・・・」という声とも音とも言い難い断末魔の叫びを発した。
それが小覇王、孫策の最後の姿だった
計画を知らない近衛兵は切り捨てられ、今日の事は忘れ、くれぐれも他人に漏らさぬようにとの
約束で家人は逃がした。
かねてからの計画通り、暗殺成功の狼煙を上げ、充分煙が上がったのを確認して逃げようとした
ところ「ジャ〜ン!ジャ〜ンジャ〜ン!!!ドドドドド・・・・」
銅鑼の音とひづめの音が大地を揺るがした。
近衛兵は驚いた「しまった、呉の捜索隊がもう来たか!!」
しかし、周りには童貞の部隊がいる、逃げる事はできると、急いで近衛兵たちは逃げ出した。
それは独秦率いる喪軍が、近衛兵が上げた狼煙を合図に童貞軍240を掃討したのだ。
独秦は周辺にいる童貞とその部隊を壊滅に追い込み童貞以外一人残らず殺した。
捕らえられ、独秦の前に連れ出された童貞は言った。
「独秦殿!!これは何の真似でございますか!!」
独秦
「最初に申した通り、あなたには死んでいただかねば困るのです。
最初からこれを打ち明け、あなたが心変わりし逃げられては困る、成功しても命は無いと言って
しまったら心変わりする可能性や、計画を断られる事も考えねばなりませんでした。
呉の捜索部隊に先にあなたを発見されても困ります。
だから近衛兵が落とした布を追い、いち早く駆け付け兵を潜ませておいたのです。
この計画を持ち出した時、命は無いものと念を押したはずです。
私はこのまま、あなたに孫策暗殺の計を授けた首班として周瑜の首を取りに行きます。
これはそのためです。」
童貞
「なぜここで周瑜が出てくるのです!?今回の一件には関わり無いはず
まして孫策と周瑜の仲は!!」
独秦
「その通り、刎頸の友と言った所でしょう。彼がそんな事をと思う者も多いのは事実です。
しかし、それは問題ではありません。
ここで暗殺の下手人としてあなたを討ち取り、適当な証拠を作り上げれば主犯格として
周瑜を討ち取る事が可能なのです。
それ以外、今の我らに呉の軍勢と戦わずして孫策、周瑜の両名を亡き者にする事はできません。
呉に知らせ、呉に任せてしまっては、証拠を作り上げても周瑜を罰する事はしないかもしれません。
我らが呉に勝つには、軍勢と戦わずして孫策、周瑜を討ち取る事が肝要なのです。
そのためには話しが多少強引でも事が済んだ後であればどうにでもなります。
軍勢を戦わせては大量の兵が死に、そして喪軍と呉軍では勝ち目がありません。
我らが今、呉の領地で苦しい状態に立たされているのは孫策、周瑜がいるからです。
喪手内殿が、孫策暗殺犯を討ち取った功績と、喪軍を拡大強化させるための布石を手に入れるのです。
首を献上すれば我々が言う周瑜計画犯説に信憑性が増します。
まさか本当に!とかすかにでも思わせれば良いのです。
謀反人の首を取り逃がし、さらに周瑜が計画犯だと首を取ろうとすれば、我々はただ周瑜の首が欲しいだ
けで孫策もそのために殺したと思われる恐れも出てきます。
あなたの首を献上すれば、どうどうと周瑜の首を取りに行けるのです。
呉の内部においても「あなたたちは仇討ちもしないで、主人の危機に何をしていたのか」と、睨みを利か
せ我々が発言権を持てるようにもなります。
我々は考えられる限り、立場を強化しなければ、天下を平定するどころか明日の命も知れぬ身なのです。
お分かりいただけたなら、この剣で御自害なさいませ、あなたの家族は私が責任を持って匿い養います些
細ながらこれが私にできるあなたへの感謝の気持ちです。どうか、武人らしい死を」
童貞
「わかりました。どうあっても死なねばならぬようですね、元より命を捨てる覚悟、今更惜しみはし
ません。家族の事は、なにとぞ、なにとぞ。。。」
こうして童貞は自らの首を切り自害した。
独秦に同行していた武沙の目は、気の毒そうに童貞の亡骸を見ていた。
「軍師殿、いくら喪や、喪手内殿のためとは言え、後味が悪いのう・・・
他の手は無かったのかのう・・・」
独秦
「大業を成し遂げるには、やりたくない事も、時には非情な事もしなければならないという事です。
功績は喪手内殿、悪名は全て私がかぶっても良いと思っています。綺麗な事だけをしていては
偉業は成し遂げられないのです。。。さあ、喪手内殿に報告をして、次の仕事へ行きましょう」
独秦は喪手内の元へ駆け付け呉軍首脳部に周瑜を計画犯として討ち取りに行くと報告の使者を出そう
としていた。
独秦は一室で喪手内を待っている間に使者に命じた。
独秦
「良いか、許可を取ると言ってはならぬ、それでは返事を待たねばならなくなるからのう
呉にとって周瑜は無くてはならぬ存在、しばし待てと言われるのが落ちであろう
あくまで報告と申すのだ、良いな」
独秦の策謀は真に恐ろしいほどであった。
孫策暗殺計画をここまで利用し、軍勢を戦わずして呉の二大主要人物をこうもあっさりと害そうとし
まさにその目的は達成寸前まで来ていたのである
これが独秦の考えていた謀略であった。
そこに喪手内が落ち着かない様子で現れた
喪手内は独秦の力がここまでとは思いもせず、突然重大な事をした恐怖、呉軍に自分の仕業と
見抜かれはしないかという恐怖、そして何より独秦の思いのほか見事な計略に恐怖
独秦が自分を害す気になればたやすいのではないかという恐怖
絶対に倒さねばならぬ相手だからこそ正々堂々孫策、周瑜を倒したかったという願望や
まだ参加に加わって間もない男がこれほどの功績をあげると、自分はともかく今まで生死を共に戦って
きた他の将が肩身の狭い思いをするのではないか、周瑜だけでも正々堂々と。。。
そして、孫策が死んだ事でとうぶんの間は喪軍に安心できる時間が与えられるだろう
呉は喪軍どころではないはずだ、無理に話を作り上げて周瑜を殺せば疑いの的は一時微量と言えども
我らに向かう、それも危険ではないかと考え
様々な葛藤が周瑜を殺しに行く独秦を止めてしまった。
独秦は「どちらにしろ必ず倒さねばならぬ相手、叩ける時に徹底的に叩きましょう
残り火はまた燃え上がるのが道理です」と説得しても頑として聞かず
武裟の「自分も正々堂々暴れて仇敵呉を倒したい、いや仇敵だからこそ堂々倒さねばならぬ」
という後押しの意見もあり、結局、周瑜を殺す事は一時あきらめる結果となった。
しかし、喪手内は孫策暗殺事件の解決者、仇討ちの功労者として、その後の呉、内部においても
意見を求められるようになり、発言権を持つようになったのだった。
ばばっと書いたので
乱文になってると思います。
220 :
('A`):04/10/27 13:30:46
えっと、今少しチェックしたんですがやっぱちょっと読みにくいですねw
申し訳ない
史実通り、この年に孫策には死んでもらいました
今後の話が作りにくくなると困るので、なるべく史実通りにしようと年を一緒にして于吉を絡め
たりしました。
年は201年かな?
そろそろまた群雄に動きが出る頃ですね
221 :
('A`):04/10/27 16:52:25
乙です!・・・だけど、童貞は妖精将軍じゃなかったっけ・・・
うむ。ただ面白いだけでなくリアルさが有ってイイね!
っていうか、童貞は後の対呉戦争にも登場してるし・・・。
独秦の謀略がかなり(・∀・)イイ!!だけに、これをどうまとめるかが課題だな。
224 :
('A`):04/10/28 00:21:02
男塾ばりの復活でいいんじゃなーい?
225 :
('A`):04/10/28 00:24:32
王侯貴族になりゃもれなく後宮が付いてくるから
>>221>>223 そうですね・・・確かに
それじゃ今日明日くらいまでに、整合を付けるような話を書いてみます
>>220 孫策暗殺の時点ではまだ200年ですかね
え?妖精将軍氏んだの?
しかも、逆賊として?
なんか
め ち ゃ く ち ゃ だ な
作家さんがた、書き込みの前にスレの最初からストーリーを読み直しましょう。
(登場させる人物については、一回検索かけるのがおすすめ)
孫策暗殺から一夜明け、呉では諸将らを集めて首実検が行われようとしていた。
満座が固唾を飲んで見守る中、喪軍の兵によって首級の入った桶が運ばれて来る。
「こちらが童貞めの首にございます」
置かれた首桶を開いてその中味を見るや、一同はあっと声を上げた。
顔には幾つか大きな傷が残されていたが、それ自体は別にどうということはない。
問題は顔の一部が焼け焦げていることで、最早その半分は誰とも判別がつかぬ程であった。
「喪手内殿、この火傷は一体…」
答えようとする喪手内を手で遮り、ここは私が、と同席していた独秦が進み出た。
「此奴め最早これまでと悟ると、あろうことか悠虎林に火を放って自害したのでございます。
その時果敢にも火中に飛び込み、首級を取って参ったのが我が軍の将である武沙と申す者」
確かに呉の救援部隊が到着した時、悠虎林は既に半焼しており死体の多くには火が回っていた。
中には原型すら留めていない死体もあり、それらに比すれば
こうして顔の原型が或る程度残っているだけでも、寧ろ幸運だと言えるかも知れぬ。
さて、この首が童貞のものか否かの議論で、場は愈々騒然となった。
目元や口元などは、一見すると童貞と似ているようであるが
皆これまで童貞の顔など、まじまじと観察したことがない上に
顔の損傷も手伝って、今一つこれといった確信が持てない。
周瑜に至ってはその面を見るのも厭だと、成る可く顔を直視しないように接していたものだから
この傷み具合では、到底見分けなぞ付くものではない。
「喪手内殿、付かぬ事をお聞きするが、これは本当に童貞の首なのであろうか。
何かの間違いなどということはござらぬか」
どこか胡乱(うろん)気な顔で問いかける周瑜に、喪手内は慷慨して叫んだ。
「御言葉を慎まれよ、公瑾殿。
その首一つ取る為に、我が軍の兵にも命を落とした者がいるのでござりますぞ。
そもそも外様である我々が急報を受け、謀反人討伐に血を流していた頃
あなた方譜代の臣は一体何をなさっていたのか」
今度は周瑜がぐっと言葉に詰まる。
確かに呉軍が駆けつけた時には既に後の祭り、孫策は殺害され謀反人の掃討も済んだ後であった。
此度に限って言えば、周瑜やその他の家臣は一分の功すら挙げていないのである。
喪手内の迫力に圧されて森閑と静まり返った所に、ふと将達の中から声が上がった。
「魯粛殿と童貞は親しく交わりを結んでおった仲、ここは一つ魯粛殿に判断してもらおうではないか」
それは妙案、と周瑜は末座に腰かけている魯粛を引っ張り出した。
前に出された魯粛は矯めつ眇めつして首を眺め、暫し黙考した後に口を開いた。
「間違いござりませぬ。この首確かに童貞殿とお見受けします」
魯粛は拱手して礼を一つすると、再び元の席にかけた。
「魯粛殿がそう言われるのであれば間違いはなかろう」
と周瑜が言ったのでその場は解散となり、童貞は謀叛の徒として市中に梟首された。
その日の夕刻、魯粛は自室に篭って一人思索を巡らせていた。
(あの忠義者の童貞殿が、何故謀叛などと馬鹿げたことを…)
やり切れない気持ちで、魯粛はぼんやりと童貞に出会った時の事に思いを移した。
魯粛がまだ呉に仕えていなかった頃、山道を歩いていて匪賊に取り囲まれたことがある。
恐らく黄巾賊崩れといった所であろう、数は十人程度で各々の手には山刀が握られていた。
金品は全て差し出す故、命だけは何卒、と哀願する魯粛であったが
賊共は獰悪な表情を浮かべたまま、返事もせぬ。
最早これまでか、と諦めかけたその刹那、馬上より大喝する一人の男の姿がある。
「そこな匪賊ども、命が惜しくば早急に立ち去るが良い」
男はそのまま匪賊達に突っ込み散々に駆け散らすと、馬から降りて魯粛に声をかけた。
「正に間一髪であったのう。
近頃斯様な連中が増えてきておる故、一人歩きの際には十分にお気を付けられよ」
そう言って笑う男の顔は、爽やかな表情とは裏腹に何とも薄気味悪い。
しかし彼ほどではないにしろ、自らもまた貧相な面構えをしている魯粛にとって
どこか親近感と愛嬌を感じさせるものがあった。
「真に有難うござる。して、貴殿のお名前は」
「某は呉将、童貞と申す。どれこの近辺は危険じゃ、一つ某が麓まで警護して進ぜよう」
こうして魯粛は無事麓に辿り着くことが出来た。童貞とはその時からの付き合いである。
しかし先の首実検、魯粛にはどうにも得心出来ぬ所があった。
(顔貌など似てはいたが、あれは童貞殿の首ではないのではあるまいか)
魯粛は童貞に一方ならざる恩義を蒙っている。
若しあの首が童貞のものでないとすれば、彼を捕らえる為に追手が放たれるやも知れぬ。
自分はかつて童貞に救われた身、恩義に報いるには今この時しかない、と
魯粛は咄嗟の機転で、これぞ童貞の首、と証言したのであった。
(だがあの首が童貞殿でないとしても、生きているとは限らぬ。万一生きているとすれば…)
ここで魯粛は重大なことに思い当たった。
若し童貞が喪軍と通じていたとしたら、喪軍が童貞に良く似た首と差し替えたとしたら…
(もしや、喪手内殿と同席していたあの狸か)
近頃喪陣営に軍師として加わった男、独秦である。
全てはあの男の企てなのではないか、ぞっとするような考えに思わず身を震わせる魯粛。
しかしそれとて何も証拠の無い空論に過ぎぬ、魯粛は首を振ると一つ嘆息した。
(孫策様が薨去(こうきょ)なすったせいか、今日はどうにも悪い方へと考え過ぎるようじゃ)
魯粛は錯綜する頭を抱えながら横になると、疲労の為かそのままうとうと寝入ってしまった。
時はこれから初夏を迎えようという200年半ば、
江東にその名を轟かせた小覇王孫策の命は、逆臣の刃によって露と消えた。
正に、孫策の命運泥土に塗れ、喪手内の意気大いに蒼天を翔ける、というところ。
だがこの時魯粛の内に芽生えた小さな疑念は、後々喪軍を苦しめることになるのである。
ちょっとベタというか、力技を用いてみたわけですが・・・
どんなもんでしょう
ぐあああああああああああああああああああああああああああ
申し訳ない
童貞殺したらまずかったのね、不注意でした
早く気付いて俺の文章は却下という事にしてもらえばよかった・・・・orz
すみません
ダメだ・・・・良い雰囲気だったの壊してしまった・・・・orz
とうぶん読専に側に回ります・・・・・・・・・・
みなさん申し訳ない
お粗末サンお手数かけしました・・・orz
お粗末氏GJ。
あと、>210-218タソはお粗末氏以外では貴重なシリアス系ストーリーの作者さんなので、個人的には今後も執筆して恥を雪(そそ)いでほすいとか思ったり。
もはやクリスマスは近い。
喪の解放のため、互いにがんがりましょうぞ。
まとめサイト作ったらどやねん
童貞の首は影武者、てことみたいですしそう気を病まずに
>>235
239 :
('A`):04/10/29 11:56:56
>>お粗末
ナイスフォロー、お粗末すげえな・・・・
あと
>>235もあんまり(・∀・)キニスンナ!
数ヵ月後。
悠虎林の変については伏せられたまま、孫策は病死しとして喪が発せられた。
その葬儀には国民の数割ともよばれるほどの人々が参列し、若き覇者の死を悼んだ。
跡を継いだ孫権はまだまだ少年の面影を残し、その能力は未知数である。
呉の人々は身分の上下を問わず、不安げな表情で国家の明日を憂いていた。
しかし、そんな世相の裏側で、ほくそえんでいる醜き者たちがいる。
そう、喪男の面々である。
孫策暗殺事件解決の功により、呉の客将喪手内は一城を与えられたのだ。
その地は、荊州との国境地域。劉表や曹操とも接する危険地域である。
喪男たちが呉都に駐留することを嫌った周瑜のさしがねともいうが、
しかし喪にとっては却って好都合でもあった。
この地は、劉・曹・孫の三勢力の均衡を巧みに操ることによって、
状況次第ではゆくゆくは半独立的立場に立つことも可能となる地域なのである。
呉は、喪が知恵袋の豚足独秦を有し、また武力的にも矢羅傍・武沙以下の諸将を擁する事を知らない。
彼らは知らずして、虎に翼を与えて野に放ってしまったのだった。
一方。
「喪服美人の大橋タソ萌えぇ・・・。あのアングルいいねえハァハァ・・・。」
御托は世の流れとは全く無関係に、
孫策の葬儀の場で生の二橋姉妹を見るため、全く無駄な労力を費やしていた・・・。
201年。この年は喪史上の画期となった。
喪手内は荊州国境の領地に到着、
都市を喪男の末永く集う場所との祈りをこめて佛興府(ブックオフ)と命名し、自立への一歩を踏み出したのである。
名目上、呉に臣下の礼はとっているが、もとより喪手内自身、機会あれば独立する準備を進めていた。
急遽喪男の天国と化した佛興府は、
そのむさ苦しい雰囲気を嫌った大量の婦女子及びイケメン・フツメンが隣国に脱出したため、一時人口が大幅に減少したものの、
時間の経過に従って大漢の全土からもてない男たちが流入し、その数は一万五千にふくれあがった。
国民のほとんどが男であるから、これは喪軍が同数の兵力を得たことを意味する。
この当時の、喪の諸将を列記すれば以下の通りである。(このたび佛興府に流入してきた者を含む)
喪候 喪手内(注.まだ王ではない)
軍師 独秦
早老将軍 矢羅傍
団子虫将軍 喪手対
鼻脂将軍 顔醜
脂肪将軍 武沙(注.五鬼将軍の名はまだ無い)
妖精将軍 童貞(注.呉にはその生存は極秘。身を隠すため屋敷で謹慎中。)
<以下、将軍にはついていない人たち>
駄目大将 自虐
塵紙大将 自慰
耳毛大将 顔惨
無職大将 納翻(ノホホン)
惰西大将 埼玉(サイギョク)
不更衣大将 湯肉郎(ユニクロ)
独居大将 鬱死(ウツシ)
拷問担当官 矢羅内科
(同上) 釜堀
筆記(ヒッキー)官僚 不恋愛
顧問 御喃仙人(注.呉から亡命。謹慎中)
新キャラはこれまでのストーリーと関連してないので、戦闘や策略で自由に殺せますw
>>240-241 初めてリアルタイムで投下を見た・・・
夏喪さんGJです、色々使えそうな面々が並んでるなw
244 :
('A`):04/10/31 00:40:58
保守
>241
埼玉(サイギョク)にワラタ!
キャラ紹介でハゲワロタ
堕眼ってまだ本編の大筋には登場してないよね?
まだ出てないね>堕眼
まあいきなり五鬼将軍揃っちゃってもつまらんから焦らず行くべ
堕眼は魏の太守だよな。泡好は蜀。童貞は呉。
こいつらをからめて、うまいこと三国の勢力均衡を保たせるようなストーリーを・・・
これから数日忙しいんで、だれか書いてくれる人がいればおながいします。
(おらんかったら、多少おそくなってもよければ俺が乱文ものします)
249 :
('A`):04/11/01 18:54:25
ほしゅ
250 :
('A`):04/11/02 20:58:11
保守
251 :
('A`):04/11/03 18:52:34
azsdxfghbjmnk,
252 :
JUST WILD BEAT ◆vQnsNS2Q4k :04/11/04 08:33:34
保守
253 :
('A`):04/11/04 14:25:18
hoshu
春秋戦国時代から小国でも王は正室、妃、侍女が54人以上いないと
王とは呼ばれないよ。
255 :
JUST WILD BEAT ◆vQnsNS2Q4k :04/11/04 18:15:39
>254
そんな事どうでもいい
256 :
('A`) :04/11/04 20:33:57
>254
ダッチとエロ本が52個。+両手で、恋人54人ですが何か?
鯖落ちで書き込めなかった・・・
取り急ぎ書き上げたので、若干纏まりに欠けますが一つ
時系列としては
>>229-232の続きというか、補足みたいなもんです
大した話ではないので、暇潰し程度に読み流して頂ければ幸甚
>>232 一方首実検を終えた喪手内は、幕舎に辿り着くと緊張の糸が切れたように溜め息を漏らした。
「何とか事無きを得たようだな」
喪手内が疲労困憊という風に口を開くと
「私もどうなることやら、と内心気が気ではありませんでしたが
ひとまず虎口を脱したようでござりまするな」
と独秦が仏頂面で応答する。今回の策は彼の計画の範疇ではなかったので
独秦が緊張していたのも無理からぬことであった。
(それと言うのも、妙な邪魔立てが入ったからじゃ)
独秦は険しい表情を湛えたまま、昨晩の出来事に思いを巡らせていた。
「さあ童貞殿、お覚悟を」
童貞が渡された剣を手に取り、喉元へと突きつけたその時である。
何やら背後から嗄枯れた声で、待て待て、と語りかけてくる者があるではないか。
独秦が振り返って見れば、今は屋敷にて蟄居している筈の御喃仙人の姿。
「これは仙人殿、何故このような場所にいらっしゃるのです」
「出陣なさる時のあなたのご様子、どうにも唯事ではなかったでの。
或いは斯様な事態になっているのではないか、と思うたのじゃ。
独秦殿、人は殺すものではござらぬ。生かすものにござりますぞ」
この言を受け、傍らに控えていた武沙も平伏して嘆願する。
「拙者からもお願い致す。ここで童貞殿を殺してしまうのは余りに無慈悲というもの。
ここは拙者の顔に免じて、何卒」
武沙は元来直情径行の人で情の起伏が激しく、強者や美男相手には鬼神の如き憤怒を発するが
こと弱者や喪男を前にすると、途端に義侠心が湧いてくるという性質なのであった。
(武沙殿の粗末な面に免じてやる義理なぞないのだが)
自分の顔は棚に上げて、内心で毒づく独秦。
しかし彼も大人であるから、そこは道理で以って説き伏せようと口を開いた。
「それは幾ら何でも出来ぬ相談というもの。
此度の計略を成功させるには、童貞殿の首が何としても必要なのです」
「何も童貞殿本人の首である必要はなかろうて」
御喃の言葉に、独秦は思わず眉を顰める。
「この老いぼれに一計あり。一つ任せてはくれぬか、独秦殿」
御喃仙人は独秦らの前に立ち、その謀計について滔々と説明を始めた。
まずそこらに連なっている兵の亡骸から、可能な限り童貞と顔貌の似た者を探し出す。
そしてそれを童貞の首として仕立て上げる、というのがその概略である。
「しかし童貞殿はこの御面相、そうそう似ている者など居りますまい」
不満気に頬を膨らませて反駁する独秦だが、仙人は微笑を浮かべながら澱みなく話を続ける。
「左様、しかしながら幸いにも童貞殿の部下は、主に良く似てとんだ造作の者ばかり。
根気良く探せば、一人くらいは似たような顔の者もおるじゃろうて」
これを聞いた喪兵達は成る程と納得し、満場一致で仙人の策が用いられることとなった。
計画に思わぬ横槍を入れられた独秦は、すっかり臍を曲げてしまい
勝手にしやがれ、と地べたに寝転び壁際に寝返りを打った。
さて不貞腐れている独秦を除いた一行は、早速死体達の顔を検めにかかった。
真夜中に死体を漁る喪軍の姿は、恰も百鬼夜行絵図といった風情である。
「独秦殿も少しは手を貸して下され」
「(∩゚д゚)アーアーきこえなーい」
一々癇に障る野郎だ、と武沙が舌打ちしながら死体を検めていると
瓜二つとまではいかずも、中々似通った顔立ちの男を発見した。
「ふむ、この辺りが妥当であろう。武沙殿御苦労であった」
「しかし仙人殿。確かに似てはおりますが、これを童貞殿と言い通すのは些か無理があるのでは」
背中で聞いていた独秦がしたり顔で難癖を付けた。
一同は苦虫を噛み潰したように独秦の方を見たが、その言に一理あるのもまた事実である。
「ふむ、その点もしかと考えておる。まずはこの悠虎林に火をかけるのじゃ。
童貞殿はその炎の中で自刃した、ということにして顔に火傷を作る」
さすれば童貞のものかどうか容易に判別出来まい、と言うのである。
「ただし、飽くまで童貞殿の首として検分にかけるのだから、原型を留めぬ程焼いてはならぬ。
一見すれば童貞殿の首に見える、という程度に炙り付けるのじゃ」
「待たれい仙人殿、悠虎林を焼き払ってしまえば林檎桃華姫が…」
これまで背中で聞いていた独秦が、突然慌てた様子で話に食いつき始めた。
逼迫した表情で、りんごももか姫について力説する独秦に
喪兵達はぼんやりした失望を感じたが、独秦の言葉を聞いた仙人は、毅然として首を横に振る。
「りんry姫も虎林星も、所詮は哀しき喪男達が作り出した慰めに過ぎぬ。
まやかしの夢なぞに弄ばれるのは、もう終いにしようではありませぬか」
自分が言い出しっぺの癖に、きっぱり「まやかし」と断言する御喃も御喃であったが
当の喪兵達は何だか大いに感涙しながら、勢い良く悠虎林に火を放ってゆく。
「ぁぁぁ…りんry姫ぇぇ…」
「ええい、いい加減諦められよ!」
往生際も悪く消火活動にあたる独秦を、武沙が渾身の力で殴り倒す。
悠虎林を侵食して行く炎をじっと眺めながら、喪兵達の胸に或る一つの思いが去来していた。
(これからは、りry姫などではなく、我々自身の手で希望を紡ぎ出して行くのだ)
轟々と燃え盛る悠虎林。
その紅い光は幾多の喪男が描いた、儚き夢の終焉と同時に
これから喪が築いて行くであろう、輝かしい未来さえも暗示するようであった。
さて武沙に本気で殴り倒され、遂に昏倒した独秦であったが
漸く厄介者が大人しくなった、と完全に打ち遣られ、今はぐったりと横たわっている。
一同はそんな独秦には目もくれず、今後の展開について議論を交わしていた。
「だがその首で、周瑜始め烏合の衆どもの眼は誤魔化せるにしても
あの魯子敬だけはそうもいくまい。はてさて、どうしたものか」
童貞が思案気に呟く。
彼と親交の深い魯粛のこと、例え首に損傷があっても、一目で童貞でないと看破するであろう。
「うむ、矢張りそこが懸案であろうの。
しかし彼は童貞殿と親交があるばかりではなく、多大な恩義さえ蒙っておる身。
彼とて義を知らぬ男ではござるまい」
御喃仙人は、童貞と魯粛の因縁、その仔細を魯粛本人から聞き及んでいた為
ここは見逃してくれるのではないか、という推論を立てたのだが
しかしそれも魯粛の胸三寸次第、大博打であることに変わりはない。
「喪の命運は子敬殿の掌に有り、という訳ですな。全く大層なことになったものじゃ」
いつの間にか目を覚ました独秦は、半ば諦めたように最後の嫌味を吐いた。
斯くして御喃の推察通り、魯粛は童貞の旧恩に報いる形となって
童貞影武者作戦は一応の成功を収めた。
余談ながら独秦は、提案した周瑜暗殺の計も入れられなかったことで、益々不貞腐れてしまい
それから数日間、喪軍の共有自慰燃料を占拠したまま自室に立て篭もる、という
嫌がらせじみた事件を起こしたが、それはまた別の話である。
解説など
『悠虎林伝説』(ゆうこりんでんせつ)
全くの嘘八百。御喃仙人の先走り過ぎた妄想力の賜物。
皆薄々勘付いていたが、少年の如き心を持つおっさんの独秦だけが一途に信奉していた。
思いついた切欠は、悠虎林という地名が御喃仙人の琴線に触れたから。
『林檎桃華姫』(りんごももかひめ)
御喃仙人曰く、末法の世に虎林星より舞い降りて、全ての喪男を救い給うと言われる女神。
而してその実態は、御喃仙人の妄想によって生み出された脳内彼女の一人。
鼻に掛かった声が特徴的な永遠の処女で、御喃仙人の心をがっちりと掴んで離さない。
『虎林星』(こりんせい)
御喃仙人曰く、地球の背後にある林檎型の星。
林檎桃華姫の統治の下に恐怖政治が敷かれており、人口は凡そ千人程度。
「米が無いなら菓子喰うべし」の号令により、領民は皆菓子ばかり食わされておるとか。
以下説明は割愛するが、御喃仙人の妄想力には舌を巻くばかりである。
GJ!!
乙&保守
ここの作品を、この2ちゃんだけにとどめておくのは惜しい。
ひとつ俺が、ブログでも借りて(きちんとまとめサイト作るのもいいけどめんどくさい)
ここのまとめサイトとしようと思うんだけどどうかな。
とりあえず今から作っておくから、
作者の皆さんはもし嫌だったら言ってください。
公開するのはやめておくよ。
異存ないなら、ブログを借りてまとめサイトにします。
みんなどう?
頑張ってくだされ
おながいします
おねがい。
誰か本にしてくれないかな〜〜〜
272 :
('A`):04/11/05 22:39:35
仮想ナントカシリーズな
氏もだ過激がやってる様な
『陽具兄丸』(やんぐあにまる)
『寒羅』(さぶら)
後、喪に帰順した御托が、独秦のたっての申し入れにより喪国内で創刊した、喪男癒しのメディア。
林檎桃華姫のほか、さまざまな妄想上の姫君が登場。
世界最初の週刊刊行物と伝えられるが、内容が内容だけに、こんにちの史学会での評価は低い。
喪の陥落の際、その宝物庫からは大量のバックナンバーが発見されたが、
その多くは敵兵に焼却されて今日には伝わらない。
ちょっとだけお粗末氏に便乗(w
>>267 是非お願いします
俺もそろそろまとめサイトが必要かな、と感じていたところ
前スレのログを転載してる時、しみじみそう思った・・・
なんかレベル高すぎて書けないよ。
番外編みたいなコーナーもキボン
276 :
JUST WILD BEAT ◆vQnsNS2Q4k :04/11/05 23:52:17
ふう・・・
疲れた・・・
作ると言ってからぶっつづけで作業して
3時間で完成・・・・。
なんとまとめたので、皆さんもご覧あれ。
次スレのテンプレにいれてもらえると嬉しいです。
ttp://blog.naver.co.jp/yongokusi.do 記事にコメントを残す事も出来るので、
感想などを書くと楽しいかもしれません。
皆さんの作品は全部掲載したつもりですが、
穴があったら教えてください。
また、まとめにあたり多少文中の改変(例えば、作品中にレス番が入っている場合など。例>125など)、
話をまとめる為投稿順序の整理を行いました。
それと、メインで進んでいる話とは関係のない作品は
番外編として収録しました。
随時更新して行く予定なので、まとめサイトともども
このスレが盛り上がっていけばいいなと考えています。
277 :
('A`):04/11/05 23:58:38
>>276 激しくGJ!!君のワイルドビートにやられそうだ
278 :
JUST WILD BEAT ◆vQnsNS2Q4k :04/11/06 00:04:18
疲れたので寝ます・・・
みんな喜んでくれるといいな・・・
むにゃむにゃ・・・
>>278 本当にお疲れ様です
こうして形になると中々感慨深いものがあるな・・・
で、早速要望というのが心苦しいのですが・・・
「宝慶の誓い編B」の「しかし揺れ動く乱世は…」以降の文章(スレ内
>>21-22)は
名無しですが自分が書いたものなので、Cの方に移して頂いても宜しいでしょうか?
お手数かけて恐縮ですが、宜しくお願い致します
>>278 グッジョブ!! ∩ ∩
_ _∩ (⌒ ) ( ⌒) ∩_ _ グッジョブ!!
(ヨ,,. i | | / .ノ i .,,E)
グッジョブ!! \ \ .| | / / / /
_n \ \ ∧_∧ .| | / /_∧ / ノ
( l ∧_∧\ \(´∀` )| | / /*´∀`)/ / ∧_∧ グッジョブ!!
\ \ (´∀` ) \ ノ( /____(*´∀`) n
ヽ___ ̄ ̄ ノ | / ヽ | __ \ l .,E)
/ / / / \ ヽ / /\ ヽ_/ /
確かに感慨深い。つД`)・゚・。・゚゚・*:.
激しくtksです。
「お客様お二人ご入店でーす。いつもいつもありがとうございます〜!」
舞台変わって、ここは206年の荊州。その都には、知る人ぞ知る泡式遊郭が存在した。
泡式遊郭とは、西方のトルコ系遊牧民から伝わったとされる新式の遊郭で、まあ、言うなれば要するにアレである。
「ふはははは。英雄色を好む。これもまた武将の嗜みじゃあ!では、今日はサクラちゃん指名で頼むぞ。むふふふ」
片手に風俗情報の竹簡を握り締めながら、妙に尊大なこの喪男の名は、もはや説明するまでもあるまい。
荊州・劉備幕下の財務監査官、泡好(ホウコウ)である。
「ちょっとー。あのキモイ客、もう1週間連続で来てるわよ・・・」
「嫌〜〜〜!例の、すっごくしつこくって有名な客でしょ?出禁にしちゃえばいいのにねえ・・・」
待合室で得意満面の様子で茶を飲んでいる泡好だが、遊女たちの評判はひどく悪い。
職場の金か、親の金か、
とにかく自分で稼いだ金で泡遊びをしているのではないことだけは明らかなくせ、やたら尊大な態度、
その癖、個室では「せっかく金を払ったんだから勿体無い」とか何とか言いながら、ベタベタ触ってくるわけである。
しかも、爪は真っ黒で歯も磨かず、髪にはフケがたかっている有様。
この典型的な風俗沈没型の喪男が、遊女からすら嫌われ抜いているのも宣なるかなである。
「へっへっへ。じゃあ、僕も指名しちゃおっかな〜。ユキちゃんでお願い。待合室が覗けるともっといいけどね・・・。」
泡好の隣で鼻の下を伸ばし、目じりをデレデレと下げる口髭の男。
彼こそは荊州で同じく財務官の職に就く、泡好の同僚かつ唯一の親友である。
その名は、田代(デンダイ)。
泡好(ホウコウ);劉備の財務官僚。
彼の父、泡沫(ホウマツ)は、漢末のバブル景気に乗じて荊州の土地を売買し、一躍富豪となった。
その功績を買われ、劉備政権下の財務監査官と任命されるも、本話の一年前に死去。
不肖の息子・泡好がその後を継いだが、
泡遊びと接待酒場(キャバクラ)通いで瞬く間に父の遺産を蕩尽し、公費に手をつけるに至る。
その性格の悪さは、本話の如くである。素人童貞。
田代(デンダイ);劉備の財務官僚。
古代の七国の一つ、燕の田家の血を引くため、血統コンプレックスの劉備により抜擢された。
しかしその素行はかなり悪く、泡好に泡遊びを覚えさせた張本人。
覗き・下着泥棒と何でもやる男でもある。素人童貞。
その数日後。劉備の屋敷。
「殿!」
苦虫を噛み潰したような表情で、主君の部屋に入ってきたのは、徐州以来の家臣・糜竺である。
客と碁を打っていた劉備が、「なんじゃ」と言いながら顔を上げる。
「お恐れながら、お人払いを・・・」
その言葉を聞いて、部屋を出てゆく客人は、劉表からの使者――伊籍。
「殿、ご報告申し上げます。我が軍の財政において、不正支出が無視できない数字に上っておりまする。その額は・・・」
「何ッ!?」
報告を聞き、驚く劉備。確かに、糜竺が彼に告げた用途不明の金額は相当のものであった。
糜竺によれば、一日あたり五百両から一千両(日本円で5マソ〜10マソくらい)ほどが、
定期的に消費されている形跡があるという。
「財務官は誰だ?」
尋ねる劉備に、泡好と田代らの名を告げる糜竺。
「ふむう・・・。奴等については、登用こそしてみたものの、確かにわしも良い噂は聞かぬ。
糜竺よ、もうすこし探りを入れてもらえぬか? 場合によっては、逮捕してもかまわん。」
「御意承りました。」
糜竺は、命令を聞くや早速部屋から出て行った。
さきほどは汚職疑惑に眉を顰めた劉備だったが、後事は糜竺に任せることにした。
彼は商人の出であるだけに、こういった捜査はお手の物であろう。
「これ、伊籍殿をこちらへ呼び戻せ。碁の勝負はまだ決着がついておらぬぞ・・・!」
気を取り直し、従者に申し付ける劉備であった。
その更に数日後、泡式遊郭『吉原(キツゲン)』の入口にて。
「むはははは。今日の姫はなかなかの別嬪でござったぞ田代殿!」
「泡好殿もお好きですなあ。ま、好きこそものの上手なれ。むははははは!」
お上の金で泡遊びを繰り返し、上機嫌の二人。
しかし、
「待てい!盗人めらがァ!」
突然彼らの頭上に、鐘が割れるような叱責が降って来た。
背筋に冷や汗が流れるのを感じながら、恐る恐る顔を上げる泡好。
そこには、10人ほどの兵士を従え、馬に跨った糜竺が、鬼神の如き形相で立っている。
「貴様ら・・・。我が軍の金を盗み、風俗に継ぎ込みおったナァァァッ!!!!!
帳簿の操作、同僚や遊郭からの聞き込みで証拠は挙がっておる!
この不忠者めらが、玄徳様のもとへ突き出し、その醜い首を刎ね上げてくれるわッ!」
「あわわわ・・・。わ、私はぁっ・・・!!」
言葉に詰まる田代。
「むむっ。この泡好、まったくの無罪にございます。
すべてはこの田代が、奢ってやるからというので一緒に行動したまでのこと。
汚職など何のことやら。田代はいざ知らず、この泡好、身は清廉潔白の極みでございます!」
狼狽する田代とは裏腹に、白を切る泡好。しかも、言うことが酷い。
「オイ。裏切るんじゃねえ!最初に金盗んだのはお前だろうが!」
思わぬ泡好の裏切りに怒り狂う田代。それを意に介すことなく、逃げ道はないかと視線を彷徨わせる泡好。
「お聞き下されい糜竺殿!事件は汚職だけではございませぬ!
この田代という男、先には糜夫人の下着を盗んで喜んでおった、正真正銘のド腐れ外道にございます!」
「何ッ!?我が妹の・・・、いや、玄徳様のご婦人の下着を? 田代、貴様ァァァ!!!」
意外な事実を知らされ、怒髪天を突いて逆上する糜竺。
今がチャンスだ。
ドンッ!
泡好は田代を捕り手の側へ思いっきり突き飛ばした後、吉原の店内に走り込み、そのまま裏口から逃亡した。
「俺たち友達じゃなかったのかよぉぉぉ〜〜〜!」
逮捕された田代が、身も世も無い悲鳴を上げる。
彼は当日の午後、汚職罪と主君の夫人の下着を盗んだかどで斬首され、市中に梟首となった。
出奔した泡好は、越境して隣国の喪に駆け込んだ。
しかしその情報は早晩糜竺の耳に入り、
泡好の引渡しを要求する劉備軍からの使者が、喪に対して発せられた。
絶体絶命の泡好。そして、喪の決断や如何に!
287 :
JUST WILD BEAT ◆vQnsNS2Q4k :04/11/06 08:33:46
>282
了解です。
修正しておきました。
他にも皆さんご要望があれば
忌憚なく言ってください。対応します。
作者の皆さんにも喜んでもらえて感激してます。
随時更新、と言いたいのですが
作品の投稿が新しい投稿が上に来るタイプのため、
一つのお話が完結してからじゃないと
更新ができません。
その為リアルタイムでの更新は出来ませんが、
お話が完結しだい随時更新していきますので
よろしくお願いします。
俺もひとつ、話の筋に関係ないストーリーが浮かんだので書こうかな?
288 :
('A`) :04/11/06 12:28:32
>287
マメなあなたにGJ!作家さんが増えるのはいいことなので、ガソガソ書いてほすいでつ。
>夏喪氏
乙です。泡好最悪・・・。
タシーロ!タシーロ!
290 :
お粗末:04/11/06 20:19:32
>>284-286 GJです、何か田代可哀想だなw
多少年代が進んでますが(206年)、この後に続けるという形で良いのかな?
>>287 素早い対応に感謝の至りです・・・
ストーリーの方も思いついたらどんどん書いて下さい
>>276 友だちリスト(0)
ともかくGJ。・゚・(ノД`)・゚・。
あーダメ、小説って難しいのね・・・。
書こうとしたけど、お話が上手く語れないや。
こういう筋だったんだけど・・・・。
ある酒の席で、泡好が女の乳の感触を自慢する。
それを聞いて興奮した武沙、肝意が
「なにか乳の感触が味わえる代わりの物はないか」と聞く。
一考する泡好。
出した結論は、
「同じ乳だから」という事で
肥満した独奏の乳でも揉んでろ、と。
嫌がる独奏。
しかし、ちょっとしたゲームをやって負けたら乳を揉ませる、と約束する。
独奏はそれに負けてしまう。
尋常じゃない顔つきで独奏の乳をもみ始める武沙。
「あふん」とか言いはじめてまんざらでもない独奏。
ますます興奮する武沙。
乳は乳だけど、それは喪男としてもどうなの、と
その光景を見て涙する武将一同・・・・・。
もし良かったら誰かこれを書いていただけたらなあ、と思います。
いろいろ乙!!
保守〜
295 :
('A`):04/11/07 21:45:01
保守
いいね
捕手
298 :
('A`):04/11/09 15:42:29
あげ
揚げ
300 :
('A`):04/11/10 01:14:23
age
面白そうなスレだな
今から読む
ほっしゅ
或る日の喪軍、酒宴の席にて。
宴も酣(たけなわ)を迎え、居合わせた文武諸官が大いに歓談しておるところ
「何と、諸君らは未だ女の乳にも触れたことがないと申すか」
突然泡好が素っ頓狂な声を挙げた。それと同時に一座の耳目は一斉に彼に注がれる。
そして泡好の前には、狼狽しながら辺りを見回す肝意、武沙の姿。
「しっ、声が高うござる」
「おおこれは失敬。しかし幾らここが喪男の集まりとはいえ、乳すら触ったことがないとはのう」
「だからこそ恥を忍んで教えを乞うているのでございます。
女人の躯とは、一体どのような具合なのでござろうか」
無論泡好とて真っ当な恋愛など経験したことはなく、所詮は素人童貞に過ぎないのだが
それでも喪に於いては、女体の味を知る数少ない人物の一人であり
関心が注がれるのも無理からぬことであった。
「そうさのう、某が吉原に居た時分には毎日のように女を抱いておった。
特にあの乳の感触ときたら、柔肌というのは正にあのことを指すのであろうな」
泡好が得意満面といった体で口髭をひねる。
それを聞き大いに感興を刺激された両人、身を乗り出して泡好に尋ねて曰く
「代替物によって柔肌に違わぬ感触を得る法は、有や無や」
「某が幼少の砌(みぎり)、二の腕を揉みしだくとそれに近い感覚が得られる、と耳に挟んだがのう」
泡好の言葉に、二人は早速袖を捲り上げて実践しようと試みるが
鍛え抜かれた両人の上腕は、幾ら揉んでみても鋼の如き逞しさを呈するばかり。
「泡好殿、これは何か違うように思われるが」
「ううむ、儂はこれ以上のことは知らんよ。まあ乳に関しては諦めることですな」
「そこを何とか、知恵をお貸し下されい」
これだから真性童貞は、と泡好が忌々しげに舌を打ちながら一同を見渡すと
ふと酔い潰れて鼾をかいている独秦が目に入った。
「そんなに御執心ならば、軍師殿の乳でも弄んでいればよかろう。
例え男であろうが乳は乳、然程の違いはあるまいて」
意地の悪い笑みを浮かべながら、ぐいっと酒を流し込む泡好。
当然冗談のつもりであったのだが、武沙の表情は思いの外真剣である。
「それでは失礼して」
言うなり武沙はすっくと立ち上がり、無防備な独秦に近づくと忽ちその衣をたくし上げる。
さてこの光景を見て、俄かに慌てだしたのは他でもない泡好。
「ま、待たれい武沙殿、今の言葉はほんの戯れではないか。まさか本気にしたのではあるまいな」
「いや流石は泡好殿でござる。男であろうが乳は乳、拙者甚く感服致しました」
一人うんうんと納得しながら、露になった乳に手を伸ばす武沙。
すわその手が独秦の胸に触れようか、というその時である。
「い、一体何をしておるのじゃ。血迷ったか武沙殿」
武沙の異常な行動に気が付き、独秦は眼を覚まして身をよじる。
「ええい、手向かいよって。大人しくせぬか」
「某は男でござるぞ、男の乳を触って何が嬉しいのでござるか」
「黙らっしゃい、男でも何でも乳であることに変わりはないわ」
何としても乳を揉みたい武沙、貞操だけは死守せねばならぬ独秦。
二人の小競り合いは苛烈を極めたが、酒瓶に蹴躓いた独秦の上に、遂に武沙が伸し掛かった。
「このままでは武沙によって独秦が手篭にされる」
そんなおぞましい情景を想像し、肝を冷やした諸官が慌てて止めに入ろうとするところ
「囀るなっ…!」
と大喝する声。あまりの大音声に武沙、独秦の二人もはっ、とそちらに視線を移す。
するとそこには―――
「な、何者じゃ、貴様は」
肝意が恐る恐る尋ねた、というのもその顔に全く見覚えがないからである。
「某は魁児(カイジ)と申すっ……!
そんなに乳を揉みたい…というのなら…一つ俺に提案があるっ……!」
鋭く尖った頤に、炯々たる三白眼という容姿もさることながら
何よりも、その独特の口調が対峙する者を圧倒した。
「ここは博打によって白黒をつけるべしっ……!
種目はそう……自慰札(通称「Gカード」)がよかろう……!」
男はそう言うと衣嚢から十枚の絵札を取り出し、それらを二つの陣営に分配した。
有り様は次の通りである。
壱の陣営…『池面』一枚、『女』四枚
弐の陣営…『喪男』一枚、『女』四枚
「この遊戯は、池面側と喪男側の二手に分かれて争われる……!
それでは各札について説明をしていこう……
先ず『池面』の札、これは全ての女を支配する存在……故に『女』に勝つ…!
次に『女』の札、これは喪男を虐げし者……故に『喪男』に勝つ…!
そして最後に『喪男』の札だが……」
ここで魁児はククク…と笑いながら一度言葉を切った。
「『喪男』は持たざる者……故にその捨身の自慰だけが『池面』を討つ……!
この『自慰札』の名前の由来はそこから来ている……正にこの喪国の縮図だ……!
無論これは遊戯の上の話で、実際には池面を討てる喪男など存在しないし……
仮に存在するとしても、それこそ千人万人に一人いるかいないかだ……!
人はそう簡単に捨身になどなれぬっ……!」
「何を、博徒風情が小賢しい口を利きよる。良かろう、拙者が喪男側じゃ」
挑発的な魁児の言葉に、武沙はいきり立って喪男陣営の札を手に取る。
これにしめた、という顔をしたのが独秦。
(ふん、武沙殿は相変わらずの単細胞じゃのう。ここは情に流されず池面を取るところじゃ)
思った独秦だが、表向きは渋々ながらといった風に池面側の札を取る。
こうして武沙と独秦の死闘、Gカードの火蓋が切って落とされた。
「先ずは池面の儂が先攻じゃの……!」
いつの間にやら口調が変わっている独秦。
遊戯上の設定とはいえ、池面気分が味わえるとあって独秦も満更ではない。
さて顎髭などを繕いながら、独秦は沈思黙考していた。
(この遊戯……池面は喪男の自滅を待つだけでも、高確率で勝利出来る……!
故に初手は『女』で様子見が定石……しかし…だから逆に『池面』なのだっ…!
一枚目での『池面』こそ不意打ち……奴の思案の外……!)
しかし頭では解っていても、実際中々一枚目に出せるものではないのだが
流石は独秦、躊躇無く一枚目に『池面』を提示した。
続いて後攻の武沙、こちらも始めから決めていたようにあっさり札を提示する。
「それでは…開示っ…!」
(ククク……死ねっ…武沙っ…!)
独秦の札は当然『池面』、そして武沙がゆっくりと札を捲ると、そこには―――
「ば、馬鹿なっ…!『喪男』だとっ……!」
完全に読みが裏目に出て、呆然自失する独秦。聴衆からは歓声が挙がっている。
「俺の勝ちだっ…独秦……!」
武沙が高らかに勝ち名乗りを上げる。
「ちっ…仕方がない……さっさと揉めっ……!」
覚悟を決めたのか、褌一枚になってその場に座り込む独秦であったが
武沙は不敵な笑みを浮かべたまま、やがて徐ろに口を開く。
「何を言ってる…?独秦……!」
ざわ…
ざわ…
「まだ終わっちゃいねえ……乳吸いをかけてもう一勝負だっ……!」
(乳吸いだって……?何を言い出すんだ、この男……
別系統の喪男……!こいつは儂が今まで接してきた喪男と……全く別系統……!)
武沙の提案に背筋を震わせる独秦であったが、仮にも軍師を拝命する彼が
こと心理戦に於いて、一介の武官に敗れたままとあっては末代までの恥である。
(くっ…この餓鬼っ……!次……次で必ず殺(と)るっ……!)
心頭に燃え上がる瞋恚(しんに)の炎。次の瞬間、独秦は思わず口にしていた。
「分かった……飲もう、その条件…!
青二才めが……後悔させてやる……必ずっ…!」
斯くしてGカード第二戦の幕が上がった。
怒りも露に再戦に挑む独秦だが、先の敗戦から及び腰になり中々『池面』を通すことが出来ぬ。
戦況は膠着し、遂に事実上の決戦である四手目に縺れ込んだ。
追い詰められて脂汗を流す独秦。これまで幾度となく喪国の窮地を救ってきた彼だが
意外と自身の逆境には弱いようである。
「ククク…どうした独秦……怖気付いて『池面』が切れないか……?
純粋な怒りってやつは、保身などは考えない……只がむしゃらに行くだけっ…!
その怒りに損得勘定を持ち込むようじゃ、貴様も愈々終わり……!」
この武沙の発言に、独秦はふん、と鼻を鳴らす。
「見え透いた挑発を……そんな手に儂がかかるものか…!」
そう言って不機嫌に顎髭を捏ね回しながら、札を提出する。
それを見た武沙も札を場に伏せた。
「それでは双方、開示っ…!」
独秦の札は…『池面』……!
そして……!
「喪男は……二度射精(だ)すっ……!」
開かれたその札は……『喪男』っ…!
おおおおおっ……!
「やったあっ…!やったっ…!やったっ…!」
「武沙殿っ…!武沙殿っ…!」
湧き上がる歓声…!歓喜の雄叫び…!
(有り得ぬっ……『池面』が二度も敗れるなど……!)
得心のいかぬ独秦は、武沙に詰め寄って問い質した。
「武沙殿、何故儂が『池面』を出す呼吸が分かったのじゃ」
「御主は重大な決断をする時、顎髭を触る癖があるな。此度はそれを利用させて貰っただけのこと」
意外と初歩的な陥穽に、頭を抱えながらがっくりと頽(くずお)れる独秦。
ここにGカード決戦の雌雄は決した。
「勝負あった……!天晴…天晴…自慰札勝利天晴……!」
手を叩きながら祝福する魁児、そしてそれに習う文武諸官達。
「圧倒的不利な喪男陣営を、敢えて選んだ捨身の気概が勝利を呼び込んだのだ。
武沙こそは、正に喪国が誇るべき勇将である。
この肝意、友の一人として此度のことを誇りに思うぞ」
武沙と刎頚の交わりを結ぶ肝意も、その手を取って労いの辞を述べる。
卓上の争いとはいえ、『喪男』が『池面』を二度に渡り破ったという事実は
喪国にとっては大変な吉兆であり、場はささやかな感激に包まれていた。
武沙もまた瞳に涙を浮かべながら、一同に応えようと口を開く。
「諸兄らの祝福、有難うござる。これで儂も念願叶って乳が吸えるというもの」
一同はこの男の性根にすっかり落胆した。
「約束じゃ、この乳は吸わせて貰うぞ」
武沙は両の手で乳を弄びながら、ゆっくりと左の乳に口を寄せていった。
一同はいい加減うんざりしていたが、そこは怖い物みたさというやつで
息を飲みながら成り行きを注視していたのである。
と、突如勢い良く武沙の唇が乳首に喰らいつく。
眼を逸らす暇も無く、一同からはうわっ、と声が漏れる。
さて当の独秦はといえば、意外にも抵抗することなくじっ、と武沙の顔を見詰めている。
(こんなに一所懸命になって…可愛い…)
赤子の如く乳にむしゃぶりつく武沙の姿に、思わず芽生える母性。
そして武沙の舌が乳頭を刺激する度、独秦はぴくん、と身を震わせる。
(いっそこのまま快楽に身を委ねてしまおうか…
いやいや相手はあの武沙じゃぞ。気を確かに持つのじゃ、独秦!)
己を叱咤激励しながら、愛欲と理性との狭間で揺れ動く独秦。
だが武沙の執拗な乳首攻めに、何とか持ち堪えていた理性も遂に崩壊した。
(あー…もうどうなってもいいや)
最早独秦は思考することを止め、与えられる快楽を全て享受しながら、切ない吐息を漏らす。
その淫靡な様に武沙は更なる官能を覚え、益々舌と指の動きを速めるのであった。
さて二人が激しく求め合う姿に、一同はすっかりドン引き。
或る者は涙を流し、或る者は嘔吐しながら、一人また一人と酒席を後にする。
後に残るは、歓喜の咆哮を挙げる矢羅内科(受け)を、必死の形相で責めたてている釜掘(攻め)。
そして、乳に吸い付いたまま眠っている武沙と
それを慈愛に満ちた表情で見守る、褌一枚姿の独秦のみ。
嗚呼、兵(つはもの)どもが、夢の跡―――
解説など
『魁児』(カイジ)
喪国内を徘徊している、流れ者の博徒。
「限定野球拳」だの「Gカード」だのといった、しょうもない博打を考案し続けるろくでなしだが
莫大な借金を返済する為、幾多の修羅場を乗り越えてきた切れ者でもある。童貞?
『自慰札/Gカード』(じいふだ/じいかーど)
Gカードは後世による通称であり、当時は自慰札と呼称された。
対戦者は池面側(池面×1、女×4)と、喪男側(喪男×1、女×4)に分かれて戦う。
池面は女に勝ち、女は喪男に勝ち、そして喪男が池面を討つ、という三すくみの関係。
魁児によって考案された遊戯であるが、「池面側が圧倒的に有利」という
残酷な現実が浮き彫りになっていた為、喪国内では全く流行しなかった。
312 :
('A`):04/11/11 02:57:13
キモイのキタワァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!☆
最近忙しくて、中々書いてる暇がなかった・・・スマソ
今回はJUST WILD BEAT氏の原案(
>>292)を元に書かせて頂きました
>>303は何故か名無しになってますが一応自分です・・・
独奏ワラタ
名文
,r=''""゙゙゙li,
_,、r=====、、,,_ ,r!' ...::;il!
,r!'゙゙´ `'ヾ;、, ..::::;r!'゙
,i{゙‐'_,,_ :l}..::;r!゙
. ,r!'゙´ ´-ー‐‐==、;;;:.... :;l!:;r゙
,rジ `~''=;;:;il!::'li
. ill゙ .... .:;ll:::: ゙li
..il' ' ' '‐‐===、;;;;;;;:.... .;;il!:: ,il!
..ll `"゙''l{::: ,,;r'゙
..'l! . . . . . . ::l}::;rll(,
'i, ' ' -=====‐ー《:::il::゙ヾ;、
゙i、 ::li:il:: ゙'\
゙li、 ..........,,ノ;i!:.... `' 、 ∧∧
`'=、:::::;;、:、===''ジ゙'==-、、,,,__ ` (゚∀゚) G.J!
`~''''===''"゙´ ~`''ー( ))
u~u
名作age
「喪男は二度射精す」で腹筋が砕けた
お粗末氏もカイジ知ってたのか、超GJ!!
魁児も性根は駄目人間だし、また短編で登場してほしいなぁ
ぎゃはははは、腹筋が、腹筋があ〜〜〜!
お粗末様、俺のつたない原案を
こんな面白い小説にしてくださって
感謝の限りです。
やっぱこのスレ超良スレだわ〜!
いやはや・・・
おもろ杉!!!
321 :
JUST WILD BEAT ◆vQnsNS2Q4k :04/11/11 22:27:18
>303-311
早速ですが、まとめサイトの方の
番外編の方に収めさせていただきました。
それ以外のお話は、一度話し完結してからアップします。
こういった番外編は随時更新です。
今後ともよろしく。
そうですね 戦いは終わったのね…
お姉さま… \____ __/
\___ _/ ∨
∨ _ -─‐-- __ ヽl八八 |トト|ハ| l八≦ /∠、 ! │ .l
, '´ / ニニ`ヽ Li ヽ!,,,___`` `彡/厶 ∨川 | |
/ /⌒ヽ/ --‐‐‐ミ川}ヒ! "L::} ̄″ 丁 〈 ) /// l |
/ /// リ-‐  ̄二二 `′ /// !/ '´ /// | l | |
/ /// 〃 // / ',  ̄/// | l | l |
/ / // / // / / /! '-‐バ ̄ 〃|/ハ! | | | |
/ // / // / / / l ,ィ1| '、__ --く |│_| | |
/ //! | /!l / / l 〃!j 、 __ヽ ソ \! !
/ // ! | / / / l /// > , イ / ヽ / _--ゝ!
323 :
('A`):04/11/12 01:56:44
職人さんに原案依頼っていうのも、このスレではできるんだな。
良スレだ・・・つД`)・゚・。・゚゚・*:.
保守age
325 :
('A`):04/11/13 09:58:45
携帯から保守しますよ
326 :
JUST WILD BEAT ◆vQnsNS2Q4k :04/11/13 13:05:07
ほっしゅ ほっしゅ
保守
328 :
('A`):04/11/14 16:12:31
捕手
329 :
('A`):04/11/14 21:31:53
緊急浮上!!
ho
331 :
('A`):04/11/15 15:27:54
syu
332 :
('A`):04/11/16 01:22:44
age35恋しくて
333 :
夏喪 ◆f3h/vmOhIk :04/11/16 13:00:48
喪の領域からほど近い魏の一郡に、もっぱら世人により無能と評される、若き太守がいた。
その名は堕眼(ダガン)。
この男、その得意とする短剣投げの技能や、兵略の知識は決して人に劣るものではない。
否、むしろ、突出した能力を有すると言っても間違いではないだろう。
問題は、その貧相な容貌。
そして、それに起因する万事への自信の無さと、上に立つものとしての指導力・魅力の欠如にあった。
世人とはなにかと、印象で人を判断するもの。
堕眼の数多い長所は、世人の酷評の下に埋没し、また、彼自身もそれを認められないでいたのである。
205年のある日、そんな堕眼のもとに、魏より使者がやってきた。
「内向郡太守・堕眼殿。曹丞相より各地担当官への布告でござる。
丞相は銅雀台を着工するに当たり、治下の各郡の美女を集め、一堂に会せしめんとの思し召しである。
よって、貴郡も郡下の心身ともに健やかな美少女三人を選りすぐり、業(ギョウ)へ送るようにとのこと。」
布告を聞き、血相を変える堕眼。
急いで臣下の周旋の能のある者に命じ、美女を探し、交渉せねば・・・
「そうそう。更に付言いたす。
古来、こういった布告の際は、しばしばさながら人攫いまがいの徴用が発生し、人民の怨嗟を集めてきた。
近くはかの童卓も同じ轍を踏んでおる。こういった事態は、曹丞相の最も憂慮なさるところ・・・
よって、対象の婦女は各郡の太守が選定し、自らそれぞれに理を説いて同意ならしめよとのお達しじゃ。
これへの違反、また、婦女徴用の期限に遅れた場合は、最大で太守の解任もあり得る。知悉されよ。」
事も無げに言い放ち、使者はそそくさと帰って行った。
恐るべき布告に、泣き出したいような心持の堕眼である。
これなら、単身で呉や荊州に切り込めと命令される方が、まだもマシだ。
ふと周囲を見回すと、意地悪な表情で(・∀・)ニヤニヤ 笑っている臣下たち。
人望の無さが、堕眼の肩に重く、重くのしかかっていた。
自分で解決するしかない・・・
数日後。
「あ。。。あの、、、もし、もし。」
意を決して、美少女との評判高い、埜乃丹(ノノタソ)の家を訪ねた堕眼。
「埜乃丹は病に臥せっております!!
とてもではありませんが、外に出られる状態ではありませぬ!無理無理無理無理!!!!」
血相を変え、必死の形相で咆哮する、埜乃丹の親父。
「いや。。。あ、あ、あ、あの。せめて話だけ・・・」
「無理でございます!!どうしてもとおっしゃるなら、我が家に火を放ち、親娘ともども焼け死ぬ所存ッ!」
親父にそこまで言われては、引き下がるしかない。
がっくり肩を落として去る堕眼の耳に入る、埜乃丹家中の口論の声。
「まあまあお父さん、悪い噂はあっても、最後は曹丞相のもとに行くのだから・・・」
「ならん!その前にあの気色の悪い男に嬲り者にされるとは公然の噂じゃ!
わが娘があんな男に汚されるくらいなら、触手ヌルヌルの山の怪物に捧げたほうがまだもマシじゃあ!!」
「ウワァァンつД`)・゚・。・゚゚・*:. どっちもヤダぁぁぁ・・・・・!!!」
なにやら、とんでもないデマが郷中に流布されているらしい。道は険しそうだ。
<続きます>
期待してます。支援
337 :
('A`):04/11/16 16:29:15
支援ー
どうでもいいが童卓→董卓ですね
要するに自分でナンパしろということかw
きついな。
339 :
('A`):04/11/16 19:04:39
オシャレホシュ
340 :
趙雲 ◆mNsLyBMLN6 :04/11/17 00:52:09
微妙なスレだな
もしゅ
342 :
('A`):04/11/17 21:19:50
保守
343 :
('A`):04/11/18 21:15:53
捕手
344 :
JUST WILD BEAT ◆vQnsNS2Q4k :04/11/19 08:11:06
保守
345 :
('A`):04/11/19 20:12:04
hoshu
346 :
JUST WILD BEAT ◆vQnsNS2Q4k :04/11/19 21:27:21
ひとつひとつが良作だから、
職人さんが作るのが時間がかかる。
だから俺たちに出来ることは
定期的に保守する事だけ。
みんなでこのスレを守っていこう。
347 :
('A`):04/11/20 01:42:47
らじゃー
次に堕眼が尋ねたのは、やはり郷中にて美少女との評判高い、奈薙(ナッチ)の家である。
富豪の娘である奈薙の屋敷の門には、はじめから避客牌が掛けられていた。
かまわず堕眼が邸宅内部に入ろうとすると、門番の老人が真剣な面持ちで、彼の進路をふさぐ。
「ウワァァァ!来るな!!来んでくだされっ!!!」
「ええい、ご老人。道を空けられよ。 拙者はただ、話を・・・」
強引に老人を突き飛ばし、内部に入った堕眼だったが、屋敷はも抜けのカラ。
どうやら、裏口より一族郎党が脱出したようである。
「俺は、俺はどうすればいいんだ。。。」
領民からのあまりの嫌われぶりに愕然とし、座り込んで嗚咽を漏らす堕眼。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・。
「まあとりあえず、誰もいないことだし、奈薙の部屋を漁っておくか・・・。」
考え直し、奈薙の部屋へむかう堕眼だった。
こういう行動が、領民にあらぬ噂を立てられる原因なのであるが、本人は気づいていない。
数時間後。
堕眼は大量の下着その他を懐にしまい、荒い息をつきながら奈薙の邸宅を辞した。
今夜は思い切りフィーバーできそうだ。
でも、問題は未解決のまま・・・。
一夜明けて後、堕眼は方法を変えることとした。
事前に予め訪問を知らせることをせず、突然対象の家を訪れて、何とか会ってもらう作戦である。
「あ、あ、あ、あ、あ、ああ、あの 、あの、あの・・・・!」
内向郡の大馬路で、見目麗しい姑娘が道行く度に、その目の前に立ちはだかる堕眼。
絶え間なくフケをこぼし続ける、寝癖のついた頭。目ヤニに汚れ血走った眼(まなこ)。
堅く握り締めた、汗ばんだ掌。口臭あふれる荒い息を、絶え間なく吐き出し続ける大きく開いた鼻穴と口。
頬を真っ赤に染め、顔中の毛穴から皮脂を滴らせながら、
道行く女に必死で声をかけようと足掻く姿、とても人のそれとは思われぬ。
「ひええええ。」
当然、女子にはさながら化物の如く避けられ、気の強い者などは蹴りを食らわせてくる始末。
「いいいい、、いや、あ、あの、は、h、はん、は、話、はなしだけでも・・・。」
それでも、めげずに無謀な突撃を繰り返す堕眼。
その姿を眼にしながらも、主君を助けようとはせず、むしろ嘲笑うように去ってゆくイケメンの臣下たち。
世の中は斯くも残酷に出来ている。
・・・。
屈辱の一日、その時間は無為に流れた。
太陽は西に傾き、内向郡の街並みを陰気な色に染めあげている。
ここで、本日108人目の女性に声をかけてみた堕眼。
その相手は、偶然にも郡内でも屈指の美少女との評判高い、奈薙(ナッチ)であった。
>349
二行目「突然対象の家を訪れて、何とか会ってもらう作戦である。」
→「路上に繰り出して道行く女性に声をかけ、なんとか話を聞いてもらう作戦である」
変換よろ。(ごめんね)
勇気ある決断をしたものだ、堕眼。
「い、い、い、嫌ァァァァッァァァァァァァァァァ!!!下着泥棒!変態ッ!!!」
恐れと怯えの色を満面にたたえ、おぞましさに身を震わせながら、美しい顔を歪める奈薙。
奈薙は周囲をきょろきょろと見回し、人気が少ないことに驚くと、突然全速力で逃げはじめた。
「あ、あ、あ、あwわあwわあwわあわw!!m、ま、ま、まって、待ってくだされい!!!」
緊張で声が裏返った堕眼だったが、反射的にだばだばと奈薙を追う。
相手は知り合いだから、なんとか話を聞いて欲しい。
しかし、奈薙の足はなかなか速い。どこかで長距離走でもやっていたのか??
必死で奈薙を追う堕眼だが、なかなか距離が縮まらない。
走りながら堕眼は、自分が常に懐に携帯している、短兵(刀剣)の存在を思い出した。
(郡内の者や臣下にはあまり知られていないが、堕眼の投剣の腕前は相当のものである ※このスレ>135参照)
「そうだ!この短兵を使って、彼女の足を止めよう!着物の裾を狙ってうてば・・・・!!!」
手に短兵を構え、走る奈薙に照準を定める堕眼。
しかし、まさに彼が短兵を投擲せんとする間際、突然真横から飛んできた鍋が、その側頭部へ強かに直撃した!
「あぶっ!」
もんどりうってその場にすっ転び、頭をさすりながら視線を上げた堕眼が見たものは・・・
「太守様ご乱心!!」
怒色を露わにしながら、包丁やカマを持って武装した内向郡の人民の姿だった。
「わ、わ、わ、わしは、、、変態などではないッ!!!!」
思わず叫んだ堕眼ではあったが、ふと冷静に、先ほどの自分の姿を考えてみると、
夕暮れの人気のない通りを全速力で逃げる美少女と、刃物をかまえ、それを涎を垂らしながら追う喪男・・・
どう見てもアレだ。
「官憲横暴!!断固反対!!変態死すべし!!!」
「我らが女神を守れ!!!駄目人間逝ってよし!!」
口々に怒号を吐きながら、石や鍋釜を投げつけてくる人民。今度は堕眼が逃げる番だ。
「お、おれは、真面目にやってるだけなのに・・・。」
荒れ狂う人民に恐れをなし、あたふたと逃亡する堕眼。白ニキビがボツボツと吹き出た頬を、涙が伝った。
その日より、堕眼の美少女徴用に反対する人民が、城へ群をなして詰め掛け、ついには一揆が発生した。
「やっぱりあの変態では・・・」「太守は駄目人間・・・」
遂に、郡の高官ですらも、人目をはばからずに堕眼を批判する者が出る始末。
内向郡は、もはや崩壊寸前のところまで追い込まれてしまったのだ。そして・・・
ところ変わって、同時期の喪国。
ときは、泡好が喪に亡命する直前のころである。
諸葛謹は、例の餃子皮自涜により運が開けた結果、呉国に採用され、
例年正月に属邦が呉の中央へ納入する歳幣督促の使者として、佛興府にある喪手内の居城を訪れていた。
喪手内・独秦に閲し、(表面上のことながら)喪候の呉への忠誠を確認した諸葛謹。
その晩は、主家筋からの使者ということで、宴をひらいて歓待する喪手内。
その、宴の最中の出来事である。
男ばかりの宴会ながら、それ相応に場が盛り上がっている中、突然室外より二人の喪男が乱入してきた。
つかつかと歩いて、独秦の前までやってきた二人。顔は脂が浮き、でっぷりと出た腹が印象的である。
すると突然、
なんか一人がデカイ声で「貴様は〜〜〜!!だから佛興府で馬鹿に
されるというのだ〜〜〜!!この〜〜〜!」
ともう片方の首を絞めた。
絞められた方は「ぐええぇーー!悪霊退散悪霊退散!!」と十字を切っていた。
割と絞められているらしく、顔がドンドンピンクになっていった。
そこにもう一人、仲間らしい奴が乱入してきてその二人に声をかけた。
「お!忍者キッドさんとレオンさん!奇遇ですね!」
「おお!そういう君は****(聞き取れず。何か武将ぽい名前)ではないか! 敬礼!」
その様子を見て、喜色を満面に浮かべた独秦。
「敬礼!出た!敬礼出た!得意技!敬礼出た!敬礼!これ!敬礼出たよ〜〜!」
上機嫌で膝をたたき、ニタニタと笑う。
諸葛謹は限界だと思った。
「せ、拙者・・・、すこし酔いが回りすぎたようでござる。 お先に失礼致す・・・。」
逃げるように、場から中座する諸葛謹。やはり他国者にとって、喪男は理解に苦しむ。
しかしその後・・・
「我が君よ。先ほどの喪国間諜参號と伍號の報告によりますと、
我が国国境の魏の一郡、内向郡(ナイコウグン)にて、一大混乱が発生しつつあるようです。」
諸葛謹が出て行ったのを確認してから、
先ほどとはうって変わった真面目な表情で喪手内のそばまで近づき、そっと耳打ちする独秦。
「ふむ・・・。喪男暗号『限界だと思った』じゃな。ならばどうする?」
杯を口に運びながら、眼は笑っていない喪手内。
「我が軍の兵士長・納翻(ノホホン)は、かの地の太守とは同郷の仲とのこと。
彼を使者に立て、切り崩し工作をすすめることと致しましょう。うまくすれば、魏国境の守りの必要がなくなりますぞ。」
「うむ。それはよいな。よきにはからえ。わっはっは。」
上機嫌の喪手内。
堕眼の境遇の裏で、喪の謀略は暗躍する・・・
虎必兵(コピぺ)…独秦が組織した、喪国対外諜報活動を任務とする特殊兵。
「喪男暗号」と呼ばれる、奇妙な暗号を使いこなすことで知られる。
虎必兵による喪男暗号には、今回の「限界…」のほか、
「葦之耶(ヨシノヤ)」「達底空児(ダディクール)」「宇宙本気耶馬久寧(ウチュウマジヤバクネ)」など、
数多くの種類があったと伝えられる。
後年、某国の巨大掲示板郡にて頻出するコピペの語源とも伝えられ、
その暗号的価値について世界の諜報機関の注目を集めることはあまり知られていない。
※上記の「限界…」や「宇宙ヤバくね」コピペについては、ガイドライン板で検索汁
急いで書いたので、ちょっとまとまってないね。
文章相互の接続が悪い場所は、ご海容願いますotz
355 :
('A`):04/11/20 13:00:15
夏喪ノってきたな!
356 :
('A`):04/11/20 15:11:41
新作!出た!新作出た!乙!新作出た!新作!乙!新作乙〜〜!
禿しくGJ!
夏喪さん乙!
今回もおもろいっす!
359 :
('A`):04/11/21 09:08:22
ほっしゅ
360 :
('A`):04/11/22 13:03:18
保
361 :
('A`):04/11/22 17:33:07
ほしゅ
362 :
('A`):04/11/22 21:26:38
age
363 :
('A`):04/11/23 06:08:06
名スレおつ。
364 :
('A`):04/11/23 16:57:44
捕手
365 :
('A`):04/11/23 20:27:50
感動age
366 :
('A`):04/11/24 17:44:32
ほしゅー
367 :
呂布:04/11/24 23:31:10
あげてやる・・・
368 :
('A`):04/11/25 19:27:15
hoshu
369 :
('A`):04/11/26 22:11:52
保守が熱い
370 :
('A`):04/11/27 15:26:55
保守しときますねー
371 :
('A`):04/11/28 11:47:03
ほしゅ
372 :
保守:04/11/29 03:18:18
結構時間かかりそうだけど、誰かの
恋愛もの書いてもいいんですかねえ。
そうゆう話みんな嫌いそうだよなあ。
しかもすげえ長くなりそうだ氏。
373 :
JUST WILD BEAT ◆vQnsNS2Q4k :04/11/29 11:09:55
>372
最終的に童貞を維持出来る、
喪男らしい恋愛譚ならアリだと思いますよ。
上手く行っちゃったりすると、
みんな嫌がると思うけど・・。
374 :
372:04/11/29 18:41:52
>>373 じゃあそのへん考えて書いてみますね。
最近ちょっと忙しいんで時間かかると思うけど、
期待しないでまっててください。
多分ありがちな話になりそうなんで・・・
376 :
JUST WILD BEAT ◆vQnsNS2Q4k :04/11/29 23:01:36
>374
期待してますよー。
期待すんなと言われても
四国志の新作となれば
いやがうえにも期待してしまう。
ゆっくり仕上げてくださいな。
377 :
('A`):04/11/30 16:28:32
あげ
378 :
('A`):04/12/01 21:06:29
age
荊州からの亡命者・泡好が佛興府に至ったのは、諸葛謹が喪を辞去した数日後であった。
初めて訪れた喪国ではあったが、泡好の心中に当てが全く無いというわけではない。
泡好は喪都の外れにある喪国出入りの商人・憑(フウ)公の屋敷へ向かい、門を叩いた。
「主人は昨晩、呉での買い付けより帰宅したばかり。また日を改めてこられたく・・・」
淡々と告げる憑公の門番。
「ご主人に会わせていただけまいか?わしは荊州の泡好と申す者。
以前、貴家の主人がひとかたならぬ恩を蒙った者じゃと説明いたせ。」
恩着せがましく、門番に身分を告げる泡好。
その不自然な態度の大きさに、
どこの大人(たいじん)がやって来たのかと面食らった様子で、門番用件を告げに走った。
応接室の椅子に、どってりと座った泡好が茶をがぶ飲みしながら待っていると、
憑家の当主・俗通(ゾクツウ)が、肥満した体を揺らしながらあたふたと現れた。
「これはこれは泡好殿!お久しぶりでございます。」
すこしびくついた様子で、社交辞令を述べる当主。
「ふむ。君も元気そうで結構。して、病後の具合はどうかね?」
対する泡好は、あくまで尊大である。
「いえいえ、おかげさまで、後遺症もなく・・・。
しかし、本日はどのようなご用件でいらっしゃったのですか?もうあの話は終わったことで・・・。」
「いやいや俗通君。今日は偶然このあたりを通りかかったもので、ついでに君の屋敷にお邪魔したまでだ。
ただ、我々の旧交のよしみで、ひとつ頼みたいこともあるから、ついでに頼みごとしちゃうとするか!」
「は、はあ。私に出来ることでしたら・・・。」
なんて態度だ。泡好。
「君は、喪国に出入りする商人の中で最も喪候の信頼を得ていると聞いている。
そこでだ、ひとつ私を、喪候の臣として推挙していただけないかね。
荊州の劉備はね、私の才能を発揮するにはちょっと器が小さすぎたのだよ。
やっぱり彼は所詮ムシロ売りなんだよね。ハハハハハ。」
自信なさげな当主の目を見つめながら、軽い調子で重大な話を切り出してしまう泡好。
もちろん、自分がソープで国庫の金を使い込み亡命したなどとはおくびにも出さない。
「そ、それはちょっと自分の一存では行いかねますが・・・」
困り果てた様子で、言葉を濁す当主。 泡好の素行と性格の悪さを知っている彼としては、気の進まない仕事である。
「フーン。まあ、やってくれないならいいけどさ。君も、あの件が奥さんにばれちゃうとヤバいんじゃないかな?
まあ、たたでとは言わないよ。僕の宝物を特別に君にあげるから。」
言葉の端々で当主を脅しながらも、その手に持つ金色の牌子を、差し出した泡好。
「そ、それはッ!!!」
とたんに、風俗通を自認する、当主の目の色が変わった。
泡好が差し出したのは、大漢国の全土の風俗で使用可能な、半額割引証(有効期限は3年後まで)である!
「わかりました。なんとか鋭意努力してみますよ泡好殿!!」
瞳を輝かせながら割引証をきっちり懐にしまいこみ、泡好と固い握手を交わす当主。
やっぱり、こいつもダメ人間だ・・・。
憑俗通(フウゾクツウ)・・・喪国出入りの商人。外見は喪男だが、やり手商人なので金はある。
御托の著作をはじめとする自慰燃料を他国で買い付け、喪国に納入。
喪に屋敷を持つが、喪国の人間ではなく、金の力にものを言わせての妻子持ちである。
以前、荊州の賓沙楼(ピンサロ)という風俗で下の病気を移され、妻にばれそうで困っていた際に、
泡好がいい闇医者を紹介したことがある(だから、泡好は彼に態度がでかい)。
けっこう風俗通。
更に数日後。
推挙された泡好を引見した後で、重臣たちと会議しながら判断に迷う喪手内。
傍に控えていた矢羅傍が、進言する。
「喪手内兄者。せっかくの憑俗通の推挙じゃが、あの男は性格が悪そうじゃ。素人童貞だしのう。
ここはやはりお引取り願った方がよいのかもしれぬ・・・」
それを聞いて、うむ、と言いかけた喪手内だったが、そこに独秦が口を挟んだ。
「さきほど荊州方面からの喪国間諜の報告を調べましたところ、
かの泡好はかの地では一級のお尋ね者となっておるとのこと。この独秦、ひとつ思うところがございます。
かの者を登用し、かつ、荊州からの引渡しの使者は、徹底して侮ってからお返しなさいませ。」
意外な意見を述べる独秦。
「うっせーデブ。んなことしたら、下手したら荊州と戦争になるじゃねえか!」
「いえ・・・。それが私の望むところです。」
気の短い武沙の反論も意に介さず、話を続ける独秦。
「昨日の件を思い出されませ。
納翻の切り崩し工作しだいではありますが、仮に内向郡の太守・堕眼がわが国に帰順しますと、
かなりの面積の魏国領が喪に編入されることとなります。
現在は袁紹の残党狩りに忙殺されているとはいえ、さすれば、あの曹操が奪回に動くことは必定。
わが国が単独で魏と対峙して、勝てると思われますかな?」
話を聞き、ぶるぶると首を振り、「まあ、無理だな」と答える喪手対。
「そこで発想の転換でござる。 この局面に、更にもう一つの勢力を加えてみるのです。それが荊州!」
言い切った独秦。
「そうか!!!」
この場でほぼ唯一、独秦の思考速度に付いていけている顔醜が、はたと膝を叩いた。
「内向郡とわが国の国境は山川が多く、土地に慣れぬ者は道に迷いやすい。
彼の地に上手く魏と荊州の兵を誘い込み、偽兵の計を用いて両者に紛争を起こさせれば・・・!」
「そう、魏と荊州の間に戦が勃発いたす。かの二者が争っている限りは、わが国は安泰。
しかも、内向郡もまるごと手に入りますな。もちろん、これはかなり壮大な賭けになりますが・・・」
独秦の名案に、感心する喪の諸将。
自信に満ちた口調で、策を披露する独秦の顔は輝いて見えた。これで、体重があと50貫軽ければ。
「わかった。その策を採ろう。」
静かに決定を下す喪候・喪手内。
「我ら喪男、一度くらいは大きな賭けをやってみる人生もよいだろうよ。」
時は、206年正月。
徐庶を軍師に迎えた荊州の劉備が、魏軍と対峙することとなる一年前の事であった。
わかりやすく解説しますと、
堕眼・泡好をダシにして魏と荊州の軍を動かし、
うまいこと両者に偶発戦争を勃発させてしまおうってことです。
で、その間に小国の喪は漁夫の利を得る策であります。
独秦えらい。
385 :
('A`):04/12/02 17:41:24
GJ!!
夏喪氏GJ乙!
GJ!です。
風俗割引券ワラタw
389 :
JUST WILD BEAT ◆vQnsNS2Q4k :04/12/03 23:00:36
>夏喪さん
新作乙です。
笑いと、三国志がらみのシリアスぶりが
毎度ながらたまらない。
いつも楽しみにしてますよ。
お話的には、まだ続きますよね?
堕眼の去就もまだ決まってないですし。
まとめサイトに収録するのは、
まだ見合わせた方がいいですよね。
どうでしょうか。
一旦区切るなら、ここで収録しますが・・・。
夏喪氏GJ!
>JUST WILD BEAT 氏
ありがとうございます。
ここまでで、収録してくださって可ですよ。
激しく乙であります。
次回から、「魏・荊・喪 激突篇」といきますので、気長におまちください。
(もちろん、他の作家さんが書いてくださっても可です)
では、また。
数ヵ月後。
袁紹の残党の掃討作戦をすすめ、更に北進した曹操軍は、烏丸の軍と対峙しつつあった。
冬を越えたとはいえ、いまだ寒風吹きすさぶ北の大地を埋め尽くす、大漢国最強の赤い軍団。
ある日、都から発せられた一騎の使者が、その軍営を訪れた。
「報告であります。荊州辺境の内向郡太守・堕眼が、魏の領域から脱することを宣言いたしました!!
例の、銅雀台の美女徴集に対する反抗とのことであります。」
「ふむ? ・・・、ああ、例の件か?」
眼前の茫漠たる荒野に詩想を誘われ、竹簡を片手に思いを廻らせていた曹操は、突然の報告に生返事を返した。
「とすると、きやつは荊州に奔ったというわけか?」
「いえ、堕眼は隣接する呉の属邦・喪に、全領土を献上したとのことでございます。
これを受け、内向郡内の壮丁・婦女はことごとく隣国に亡命、
現在の内向郡は、でっぷり腹のでた脂っぽいヲタクが、背中にカバンを背負い、
『サクラタンハァハァ』とかぶつぶつ言いながら、同仁志片手にウロウロする場所と成り果てているとのこと。
これ危急存亡の秋(とき)でありますッ!!!」
内向郡の惨状を聞き、一気に詩境から引き戻された曹操。
「ふむ・・・。どうしたものかな。」
魏国全体から見れば、内向郡など取るに足らないほどの面積。
また喪にしてもひと揉みで制圧できる小国に過ぎない。
ただ、対烏丸の役がいまだ終わらぬ今、あまり大規模に南方に兵を動かして、
荊州や呉を刺激するのは避けたかった。
「む。そうじゃ。」
ひとつ思い出すことがあり、曹操ははたと膝をたたいた。
「この間、我が軍に亡命してきた・・・、少なからず性格は悪そうじゃが顔のすこぶる良い男がいただろう。
奴は確か、喪男軍と戦ったことがあったはずじゃ。貴奴に2000の兵を与え、国境を安寧ならしめよ。」
侍従に、てきぱきと指示を与える曹操。
「お言葉ですが丞相。かの者はもと袁術の将にて、我が軍中では単なる客将にすぎませぬ。
正規軍を与えるのには多少問題があるのでは・・・?」
口をはさんだ郭嘉だったが、曹操はそれをたしなめた。
「ふ。奉孝よ。この曹操を見くびるな。近頃余が見出したさる人材に、随分と見所のある奴が一人おるのだ。
まだ若造だが、だからこそ小規模な作戦で経験を積ませておきたい。
この軍に、やつを軍監としてつけるのが、わしのまさに狙うところよ。」
「・・・、さすればこの郭嘉、あえて異は唱えませぬ。早速、都に使者を送り、出陣を手配いたしましょう。」
半月後、内向郡回収の小部隊が編成され、喪国境へと進発していった。
そして喪国。
「そんなことより軍師よ、ちょっと聞いてくれよ。こないだ、葦之谷逝ったんです、葦之谷!
そしたら軍人がめちゃくちゃいっぱいいて戦ってるんです・・・」
喪の居城に駆け込んできた虎必兵が、喪男暗号「葦之谷」で報告を行なった。
暗号の解読によれば、喪を攻撃する魏軍の編成は、
大将; 喪手杉(モテスギ・魏の客将)
副将; 怒弓(ドキュン・同上、喪手杉の部下)
副将; 合棍(ゴウコン・魏軍側の喪手杉の友人、喪男の敵)
軍監; 司馬懿(シバイ・曹操の登用を受けた魏の若手官僚)
と、いうことである。
あわただしく出陣の準備を始める喪の諸将であったが、
敵の軍監が、後年かの諸葛孔明をも退ける、若き日の司馬懿仲達であるとは知る由もないことであった・・・。
はたして、喪の命運や如何に!
395 :
('A`):04/12/04 15:26:53
いやあ面白い
書籍化しようぜ!
396 :
('A`):04/12/04 15:32:09
GJ!
虎必兵ワラタ
398 :
('A`):04/12/04 17:03:16
とらひつ?
こっぴぺえ?
400 :
('A`) :04/12/04 19:25:39
虎必兵については>353を参照汁
401 :
('A`):04/12/05 04:09:15
夏喪氏GJ!!
今回もグッジョ!
403 :
JUST WILD BEAT ◆vQnsNS2Q4k :04/12/05 17:15:29
>夏喪さん
新作おつです。
お話が一段落したとの事で、
まとめサイトに収録させていただきました。
年表も更新したので合わせてご覧ください。
次回作楽しみに待っていますね。
404 :
('A`):04/12/05 17:28:10
ちょうど 野生 打つこと も乙
ぐあ。
収録順間違えた。
訂正しないとダメだ・・・。
今訂正します。
訂正完了・・・
お騒がせしました。
>JUST WILD BEAT氏
205年、堕眼ら魏国内の太守に、銅雀台建設のための美女徴集令布告
↑これを年表に追加おながいします。
408 :
JUST WILD BEAT ◆vQnsNS2Q4k :04/12/05 20:20:24
>407
追加しました。
他にも気付いた点があれば言ってください。
対応します。
409 :
('A`):04/12/05 21:47:34
喪手内VS喪手杉
410 :
('A`):04/12/05 21:50:00
東南の喪風
411 :
('A`):04/12/05 22:38:41
もりあがってまいりました
412 :
('A`):04/12/06 20:59:47
age
413 :
('A`):04/12/06 20:58:48
age
414 :
('A`):04/12/06 21:00:09
age
415 :
('A`):04/12/07 08:04:15
まとめサイト、今気づきました。乙です。
416 :
('A`):04/12/07 08:07:53
ここってけっこんしたブス女が来てるの?それとも不細工学生が
きてるの?どっちだろ。
417 :
('A`):04/12/07 22:36:46
ほssっふ\\
418 :
('A`):04/12/08 17:13:18
ほっしゅ
419 :
JUST WILD BEAT ◆vQnsNS2Q4k :04/12/09 19:35:48
ニート保守
ジャックバウアーみたいなエージェントが欲しいな。
特殊部隊の活躍期待
421 :
('A`):04/12/10 20:54:44
g
422 :
('A`):04/12/11 20:50:27
>416
俺は武沙学生だYO!age
424 :
('A`):04/12/13 01:27:50
保守
425 :
('A`):04/12/13 16:15:44
ほす
426 :
('A`):04/12/13 17:00:47
保守
427 :
('A`):04/12/13 21:08:21
hoshu
428 :
('A`):04/12/14 18:04:10
ほっしゅ
429 :
JUST WILD BEAT ◆vQnsNS2Q4k :04/12/14 19:59:05
保守がてら、キャラの人気投票でもしないか?
俺は独奏に一票
430 :
('A`):04/12/14 23:19:16
意外と泡好
431 :
('A`):04/12/14 23:36:52
タシーロ
>>429 独「奏」ではなくて、独「秦」ではないか?
433 :
('A`):04/12/15 02:15:24
皆様お久しぶりです
勝手に独奏を殺した名無しです
一年の幕締めに挨拶に来ました
いつもとても楽しみに読ませてもらっています
来年も楽しみにしていますので
これからも読専で邪魔にならないよう楽しませてもらいます
大変待ち遠しく楽しませてもらっているので
今後もがんばってください
434 :
('A`):04/12/15 02:19:46
僕は勝手に独奏を殺した罪により打ち首になったという事にしておいてください。。。('A`)
また明日から書き込みはしませんが
いつも楽しみに待っています
435 :
JUST WILD BEAT ◆vQnsNS2Q4k :04/12/15 20:08:58
>433
死んだのは独奏ではなく、童貞では?
あのストーリーは、実に見事な展開だったと思います。
孫策暗殺という重大ストーリーに喪を絡めての展開、
描写が難しいと思われる独奏の奇策、
それを全てまとめあげたのは見事の一言です。
もう書き込まないなんて言わずに、色んな人に書いて欲しいです。
今は書き手が減ってるのだと思われ。
本編に参加しずらければ番外編という手もあるし、
どうですか、気が向いたら参加してください。
俺は待ってますよ。
436 :
('A`):04/12/15 21:39:49
うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!
超嬉しい、友達いない俺としては友達ができた気分です。。。。。。。。。
そうですね、番外編ですか
書かせていただいてもよろしいのでしょうか?
まとめサイトも密かに見ていて
あ〜、、、、あんな失敗したのに書いてくれてるんだなぁ。。。と
とても嬉しく思っていました。話おかしくしてしまったので
もしもまた入れてもらえるのであれば、また、何か間違いがあるかもしれませんが
その時は、おい、違うだろ、氏ね、と
間違ってたら無かった事にして飛ばして話を進めてくれればありがたいです
もしも、また皆さんの内輪に入れてもらえるなら
がんがりまする
なぜかしばらく書けなかった・・・。
顔醜に一票イレテミル。
(むしろ、喪紳士JUST〜氏に一票いれたひw)
>436
失敗したどころか、
その後の首実験というエピソードにも発展したので
大成功だったと思いますよ。
今、みんなの力で素晴らしいものが出来上がっている過程だと思います。
俺もまとめサイトという形でここに貢献できて嬉しい。
番外編でもいいし、本編でもいいから書いてくださいな。
新作待ってますよ。
>438
アクセス規制ですかね?
俺はここでは紳士かもしれないけど、
喪板全体では元アゲ荒らしだったりします・・・。
下の方にあるスレにAA貼って上げてた。
なんて愚かな事をしてたんだ・・・・。
顔醜もいいキャラですね。
文武両道の名将だ。
>436
失敗したどころか、
その後の首実験というエピソードにも発展したので
大成功だったと思いますよ。
今、みんなの力で素晴らしいものが出来上がっている過程だと思います。
俺もまとめサイトという形でここに貢献できて嬉しい。
番外編でもいいし、本編でもいいから書いてくださいな。
新作待ってますよ。
>438
アクセス規制ですかね?
俺はここでは紳士かもしれないけど、
喪板全体では元アゲ荒らしだったりします・・・。
下の方にあるスレにAA貼って上げてた。
なんて愚かな事をしてたんだ・・・・。
顔醜もいいキャラですね。
文武両道の名将だ。
442 :
JUST WILD BEAT ◆vQnsNS2Q4k :04/12/16 22:51:48
だーやっちまった。
二重投稿だよおいヽ(`Д´)ノ
鯖の調子悪いね今日・・・。
443 :
JUST WILD BEAT ◆vQnsNS2Q4k :04/12/16 22:53:27
またか?
また二重投稿か?
鯖調子悪すぎなんだよゴルァヽ(`Д´)ノ
ジャスト持ちつけw
445 :
('A`):
よし、ここは保守