脳梗塞(こうそく)で入院中の日本代表・長嶋茂雄監督を見舞った、
巨人OBのデーブこと大久保博元氏に対し、巨人首脳が激怒している。
「いったい、何を考えているのか」と怒りはとどまることを知らない。
長嶋監督に仲人をしてもらっている巨人・堀内恒夫監督が憤慨する。
「オレだって正直言って1日も早く駆けつけたい心境さ。だけど、
我慢しているんだ。今は早い回復を心から祈り、静かに見守るのが
1番いいんだ。花を贈るのだってしない方がいい。それなのに、
病院に行くなんて信じられないよ」コーチ陣からも「スタンドプレー、
売名行為としか考えられないだろう。常識がなさ過ぎる」と怒りの声が上がる。
それも当然だろう。巨人軍関係者、球界OBの誰もが病院へ駆けつけたい
気持ちを抑えて早期回復を心から願っているのだ。現役時代からONコンビと
して日本のプロ野球界を支えてきたダイエー王監督も、全く同じ心境だ。
「すぐにでもお見舞いに行きたいと思っていたが、長嶋家の方から
面会の許可があるまで待つことにした。静かに見守ることが一番
だろうからね」誰よりも長嶋監督のことを知る王監督ならではの
配慮もある。
「ミスターは自分が苦しんでいる姿を、他人には絶対に見られたくない
だろうからね。元気になってからお見舞いに行くほうが喜ぶだろう」
確かに、現役時代からスランプに陥っても苦悩する姿を見せたことが
ない。いつの間にか不振から脱出したように見せ、「やはり長嶋茂雄は
天才だ」と言わせてきた。
実際は試合後に自宅の地下室で深夜まで素振りを繰り返す毎日。他人の
何倍も努力してスランプ脱出しているのだが、そんな雰囲気すら
見せなかった。「ファンはいつも明るい長嶋を求めている。苦悩した
姿を見せたら失望してしまう。だから何事もなかったように振舞うんだよ」
こういったファン、周囲に対する考え方は監督になっても変わらない。
惨敗したときにも普段通りの表情で「何をそんなに深刻な顔をしているの」
と逆に報道陣を慰めるような発言までしてみせる。
ところが、実際は怒り心頭で球場から家へ帰るまで、愛車の中で大暴れして
いる。今回、長嶋監督の異変に気がつき、病院へ連れて行った運転手の
伊藤さんがこう漏らしていたのだ。「家へ帰ると何事もなかったかのように
しているが、車中は大変ですよ。後ろの席でガンガンと足を蹴りつけるから
危なくて運転できない。『だんなさん、危ないからやめてください』と
言っても聞かないんだから」
負けたストレスを帰りの車中で発散させているのだ。知っているのは身内だけで
他人には決してそんな顔は見せない。今回も全く同じ心境だろう。予想だに
しなかった脳梗塞で入院という事態に苦しんでいる姿は、他人には
見られたくないはず。王監督の言うように、長嶋監督が解禁しない限り
見舞いは遠慮するのが筋だろう。大久保氏の行動に巨人首脳が激怒するのは当たり前だ。