「打撃の神髄-榎本喜八伝」(松井浩著)を読んでみた [転載禁止]©2ch.net
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過去の名選手を語ることは野球ファンにとって楽しみの1つである
王、長嶋などリアルタイムでは見たことは無いものの、かつてのスーパースターの活躍を多くの映像、書籍が語り継いでくれる
そんな中、不自然なまでに、「語られない名選手」がいる
いくら人気の無い時代のパリーグとは言え、あの何万もの打者を見てきたであろう名将西本幸雄が「もっとも確実な打者」と称賛したあの名選手
彼はまるで黒歴史であるかのようにその存在を消されている
そんな歴史の無言の圧力に毅然と対抗するのはレコードブックである
現代の若きスーパースターたちが記録を達成するたびに彼の名前が現れる
まるで「俺はここにいるぞ」と主張するかのように
最年少1000本安打記録 24歳9ヵ月
最年少2000本安打記録 31歳7ヶ月
偉人の伝記が幼少期の極貧生活から始まることは決して珍しくは無い
貧乏から成功を勝ち取り裕福になりましたと言うサクセスストーリーは私たち庶民にとっても爽快感をもたらしてくれる
しかし、彼の幼少期の極貧生活はそんなありがち以上の意味が有った
極貧生活は彼の生来の気質である真面目さと裏腹である思い詰める性格を加速させた
それが入団5年目までの低迷に繋がっている
低迷?そう、数々の最年少記録を持っている彼も1960年に首位打者を取るまでは三割を打ったことが無い調子の波が激しい打者だった
1年目 .298 16本
2年目 .282 15本
3年目 .269 9本
4年目 .260 13本
5年目 .276 11本
もちろん並みの打者なら立派な成績である
高卒ルーキーがオールスターゲームに出場し、あの毎日のミサイル打線の一角を担っていたのだから及第点以上だろう
しかも、選球眼も抜群で四死球も多く、現代野球で重視される出塁率も高い
しかし、彼の持っていた並外れた才能からすれば間違いなく低迷である
彼の打撃技術は極めて高度だったために、反面、心の乱れから来る微細なズレがスランプに繋がった
「3割を打たないとまたあの極貧生活に後戻りだ」と意識してしまうと美しい自然体のバッティングフォームは無惨に崩れた
(続く 1/3)