「打撃の神髄-榎本喜八伝」(松井浩著)を読んでみた [転載禁止]©2ch.net
1 :
【中国電 72.0 %】 ◆fveg1grntk @転載は禁止:
過去の名選手を語ることは野球ファンにとって楽しみの1つである
王、長嶋などリアルタイムでは見たことは無いものの、かつてのスーパースターの活躍を多くの映像、書籍が語り継いでくれる
そんな中、不自然なまでに、「語られない名選手」がいる
いくら人気の無い時代のパリーグとは言え、あの何万もの打者を見てきたであろう名将西本幸雄が「もっとも確実な打者」と称賛したあの名選手
彼はまるで黒歴史であるかのようにその存在を消されている
そんな歴史の無言の圧力に毅然と対抗するのはレコードブックである
現代の若きスーパースターたちが記録を達成するたびに彼の名前が現れる
まるで「俺はここにいるぞ」と主張するかのように
最年少1000本安打記録 24歳9ヵ月
最年少2000本安打記録 31歳7ヶ月
偉人の伝記が幼少期の極貧生活から始まることは決して珍しくは無い
貧乏から成功を勝ち取り裕福になりましたと言うサクセスストーリーは私たち庶民にとっても爽快感をもたらしてくれる
しかし、彼の幼少期の極貧生活はそんなありがち以上の意味が有った
極貧生活は彼の生来の気質である真面目さと裏腹である思い詰める性格を加速させた
それが入団5年目までの低迷に繋がっている
低迷?そう、数々の最年少記録を持っている彼も1960年に首位打者を取るまでは三割を打ったことが無い調子の波が激しい打者だった
1年目 .298 16本
2年目 .282 15本
3年目 .269 9本
4年目 .260 13本
5年目 .276 11本
もちろん並みの打者なら立派な成績である
高卒ルーキーがオールスターゲームに出場し、あの毎日のミサイル打線の一角を担っていたのだから及第点以上だろう
しかも、選球眼も抜群で四死球も多く、現代野球で重視される出塁率も高い
しかし、彼の持っていた並外れた才能からすれば間違いなく低迷である
彼の打撃技術は極めて高度だったために、反面、心の乱れから来る微細なズレがスランプに繋がった
「3割を打たないとまたあの極貧生活に後戻りだ」と意識してしまうと美しい自然体のバッティングフォームは無惨に崩れた
(続く 1/3)
2 :
【中国電 72.0 %】 ◆fveg1grntk @転載は禁止:2015/02/01(日) 07:16:18.90 0
当時、毎日オリオンズには荒川が居た
あの「王を育てた」でお馴染みの荒川である
荒川は榎本に合気道の臍下丹田への意識をベースにした打撃理論を授けた
その理論はあまりに難解で高度すぎるため詳細は本書を読んで欲しい
データでも理屈でも表現できない達人の感覚を何とか文字で表現しようと言う著者の苦闘が見て取れる
それは打撃理論だけに留まらない、まさに人体の根源的な真理にまで到達している
そしてある日、彼は打撃の真髄に触れてしまう
バットが自分の体の一部となり、両腕からバットに血液が流れ込む
臍下丹田を意識し、五体を結ぶと自分の身体の動きが、五体の隅々まではっきりと分かった
ピッチャーが投げたボールも、指先を離れた瞬間からハッキリと分かる
そして、自分のバッティングフォームが臍下丹田に映るのを実感した
剣豪の360の刹那を感じ、タイミング、つまり「間」が無くなった
バッティングは投手とのタイミングを合わせることが重要だが、彼にとってはタイミングが「無くなった」ので当然タイミングを外されることも無い
体の芯(臍下丹田)とバットの芯とボールの芯が1つになり、万物が調和された
オカルトのようだがこれが彼が到達してしまった領域である
この手の話は他の選手にもある
江夏は外角のストライクゾーンギリギリにキラキラしたラインが見えたと言うし
稲尾も狙うコース別に自らの右腕が辿るべき軌道を感じることができた
川上哲治はボールが止まって見えたと言う
現代風に言えば「ZONEに入った」と言うことだろう
しかし、榎本の感じたモノはそれらよりもより高くより深いものだったのではなかろうか
(続く 2/3)
3 :
【中国電 72.0 %】 ◆fveg1grntk @転載は禁止:2015/02/01(日) 07:16:41.83 0
彼の最大の幸福は神の領域に達したことであり、最大の不幸はそれが僅か19試合で終わったことである
具体的に言えば1963年7月7日から8月1日までの3週間、彼は打撃の神になった
そして、8月1日に足首を捻挫し、その後7試合の欠場が明けた後には、呆気無くその感覚は失われていた
夢のような天国の日々が終われば、その後に待っているのは地獄だ
いくらヒットを打っても、あの「天国で神様に頭を撫でられ続けた日々」は戻って来ない
もう二度とやって来ない、そして誰とも分かち合えない理想を追い求める苦しみは彼を奇行に走らせる
いや、彼にとって臍下丹田を意識する訓練は奇行でも何でも無く、重要な練習である
しかし、他の選手がバッティング練習をしている時に目を瞑って座っている姿は、客観的に見て奇行と映っても仕方ないだろう
30歳を超えた時、彼は早くも身体的な衰えを感じる
しかし、彼は理想を捨てられない不器用な男だった
バッティングスタイルを現実的なものに変え、自分の選手寿命を少しでも伸ばそうと言う考えは出来なかった
ひたすら座禅を組み、臍下丹田を意識し続けた
あの夢の日々を追い求めて
現役晩年と引退後は自らの技術を次世代に伝えるべく、コーチ業を夢見たが、どこからも声は掛からない
当たり前だろう 奇行癖のあるおじさんに「臍下丹田」「万物の調和」などと言われても戦後生まれの若い選手は「?」で終わりだろう
日本の野球界にはかつて数週間ではあるが神の領域に達してしまった打者がいた
そしてその技術は誰にも継承されること無く失われしまった
(終わり 3/3)
4 :
名無し募集中。。。@転載は禁止:2015/02/01(日) 07:40:38.77 0
昔はすごかった
今はダメだ
渇!
おわり
5 :
名無し募集中。。。@転載は禁止:2015/02/01(日) 08:00:13.75 0
コイツ50代かと思ってたけど定年前のジジイだったんだな
6 :
【中国電 72.0 %】 ◆fveg1grntk @転載は禁止:2015/02/01(日) 09:04:00.76 0
こういう選手を語り継いでいかなければならない(使命感)
7 :
名無し募集中。。。@転載は禁止:2015/02/01(日) 09:14:05.65 0
マエトモとガッツと落合の凄いところと面倒くさいところを凝縮した感じ
そら大沢親分ですら使いたくないと思うわな
8 :
【中国電 72.0 %】 ◆fveg1grntk @転載は禁止:2015/02/01(日) 09:16:04.75 0
ワイもなんとなく前田智徳が重なる
前田はとんでもない大怪我をやったことが、逆に現実路線に切り替えるきっかけになった
怪我をしてなかったら同じ道を辿ってたかも
9 :
名無し募集中。。。@転載は禁止:2015/02/01(日) 09:18:09.33 0
沢木耕太郎の「さらば 宝石」も読んでごらん
10 :
名無し募集中。。。@転載は禁止:2015/02/01(日) 09:21:48.42 0
拍手への流れについてもっと論じたほうがよい
11 :
【中国電 72.0 %】 ◆fveg1grntk @転載は禁止:2015/02/01(日) 09:22:05.09 0
「さらば宝石」も読んだで
あれだと引退後に榎本が体づくりのために、ランニングしてたのは「現役復帰のため」みたいに書かれてたけど
本当はコーチ就任のためやったんやな
12 :
名無し募集中。。。@転載は禁止:2015/02/01(日) 09:24:09.83 0
あと1安打で生涯打率3割がどうのこうの
13 :
名無し募集中。。。@転載は禁止:2015/02/01(日) 09:26:14.47 0
この人の一番イカれた記録は1964年の19三振86四球
14 :
【中国電 72.0 %】 ◆fveg1grntk @転載は禁止:2015/02/01(日) 09:30:31.27 0
入団テストでも際どいボール球をきっちり見逃したんだよな
別当監督もそこに惹かれた
15 :
名無し募集中。。。@転載は禁止:2015/02/01(日) 09:32:25.61 0
「バッターボックスの中にお城を構えているのと同じことなんです。 私の体の前、ピッチャー方向に外堀と内堀があって、その間
でボールを処理すると、バットは速い球にも負けないんですよ。外堀と内堀の幅は合わせて30〜40pぐらいでしょう」
「ぼんやり構えていたら体が死にます。頭の中で飛んでくるボールを描きます。すると両腕の中の血がじんじんとバットに流れこむんです。
だからバットを折ったら中から血が流れ出すんです」
「日本人で箸をどうやって使うか考える人はいないでしょう。無意識に使って、うまくご飯を食べている。打撃の究極もそこだろう……と、
これは僕の考えですよ」
「臍下丹田に、自分のバッティングフォームが映るようになったんです。ちょうどタライに張った水に、お月さんがきれいに映る感じ。寸分
の狂いもなく、自分の姿が映って、どんなふうに動いているのかまでよくわかった。ボールがバットに当たった瞬間から、バットに乗ってい
くところもよくわかった」
言うちゃなんやけどパラノイアやな
16 :
名無し募集中。。。@転載は禁止:2015/02/01(日) 09:40:12.98 0
>>15 松田「なんかそれわかるww」
内川「せやせや」
柳田「つまりフルスイングですね?」
17 :
【中国電 72.0 %】 ◆fveg1grntk @転載は禁止:2015/02/01(日) 09:43:38.53 0
去年、前田智徳と高橋由伸という2人の天才が対談してたけど、全然話が噛み合わなくてワロタ
でも、2人ともその「理解できなさ」を楽しんでた
バッティングって極めれば極めるほど個人的なものになるんだろうな
18 :
名無し募集中。。。@転載は禁止:2015/02/01(日) 09:47:00.46 0
ボールが止まって見える
19 :
名無し募集中。。。@転載は禁止:2015/02/01(日) 10:06:53.61 0
20 :
名無し募集中。。。@転載は禁止:2015/02/01(日) 11:17:23.14 0
榎本のスゴイのはその神が宿って天国が見えた日々を失った以後の
練習もせずに座禅組んだり奇行が目立ってみんなからあきられた数年も誰も真似できない成績だけは残し続けたこと
本人はいくら打っても納得出来ないままどんどん精神の闇に沈んでいくんだけどね
21 :
名無し募集中。。。@転載は禁止:2015/02/01(日) 11:17:57.76 0
おお・・もう・・
22 :
【中国電 72.0 %】 ◆fveg1grntk @転載は禁止:2015/02/01(日) 11:54:13.79 0
臍下丹田ってらんま1/2にも出て来たよか
23 :
名無し募集中。。。@転載は禁止:2015/02/01(日) 11:56:11.56 0
えなに?Tシャツが12ndじゃないとダメだって?
24 :
名無し募集中。。。@転載は禁止:2015/02/01(日) 12:34:06.47 0
藤平光一の弟子
25 :
【中国電 72.0 %】 ◆fveg1grntk @転載は禁止:2015/02/01(日) 13:41:54.45 0
臍下丹田で五体を結ぶんだよ
26 :
【中国電 72.0 %】 ◆fveg1grntk @転載は禁止:2015/02/01(日) 15:07:27.30 0
うむ
27 :
名無し募集中。。。@転載は禁止:2015/02/01(日) 17:45:13.68 0
あれまだご存命だっけか
28 :
【中国電 72.0 %】 ◆fveg1grntk @転載は禁止:2015/02/01(日) 18:04:19.09 0
残念ながら・・・
29 :
【中国電 72.0 %】 ◆fveg1grntk @転載は禁止:2015/02/01(日) 20:19:22.79 0
光の球場 東京スタジアム
30 :
凝@転載は禁止:2015/02/01(日) 20:24:22.10 O
死線を越えられなかったんだよね
31 :
【中国電 72.0 %】 ◆fveg1grntk @転載は禁止:2015/02/01(日) 21:06:30.84 0
ほう
32 :
名無し募集中。。。@転載は禁止:2015/02/01(日) 21:09:21.11 0
守備は必要最低限の事しかしてくんないってボヤかれてたという
33 :
名無し募集中。。。@転載は禁止:2015/02/01(日) 21:18:41.06 0
必要最低限の守備さえやってくれなかった川上よりは
ましだろう
34 :
名無し募集中。。。@転載は禁止:2015/02/01(日) 21:19:49.52 0
昔のファーストってそういう人ばっかな気する
35 :
名無し募集中。。。@転載は禁止:2015/02/01(日) 21:20:20.99 0
守っても安打製造機
36 :
【中国電 72.0 %】 ◆fveg1grntk @転載は禁止:2015/02/02(月) 04:30:34.59 0
811 名前:(O^〜^) ◆PC98xNYFTY[sage] 投稿日:2015/02/01(日) 23:37:07
沢木耕太郎にも榎本喜八を描いたノンフィクションがあるよ
37 :
名無し募集中。。。@転載は禁止:2015/02/02(月) 04:48:27.46 0
栄光なき天才達っていうマンガで読んだ記憶がある
バッドエンドだったか
38 :
【中国電 74.6 %】 ◆fveg1grntk @転載は禁止:
こういう選手を語り継いでいかなければならない(使命感)