娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 16

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娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 16 はじまり

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娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 15
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2名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/18(月) 19:41:46.49 0
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娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』
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娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 7(113レスでdat落ち)
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娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 9(609レスでdat落ち)
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娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 10
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娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 11
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娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 12(81レスでdat落ち)
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娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 13
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娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 14
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娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 15
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3名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/18(月) 19:42:12.44 0
登場人物
生田衣梨奈 えりぽん。魔道士。家出して道重さんの家に居候中。世界一の魔法使いを目指している。
鞘師里保 りほりほ。協会魔道士。道重とえりぽんの監視役としてM13地区に出張中。
道重さゆみ M13地区に住む三大魔導士の一人。えりぽんの師匠。不老長寿の魔法を会得している。
譜久村聖 フクちゃん。えりぽんのクラスメイト。
鈴木香音 ズッキ。えりぽんのクラスメイト。
飯窪春菜 はるなん。黒猫。相当変な一般の魔道士。
新垣里沙 ガキさん。元執行局魔道士。すべての魔力をさゆみに託し、旅に出る。えりぽんの憧れの人。
工藤遥 どぅー。元協会魔道士。協会の施設で育つ。優樹を助けて逃亡しM13地区に入る。
佐藤優樹 まーちゃん。協会に追われている狗族の少女。遥とともにM13地区に入る。
石田亜佑美 あゆみん。工藤、佐藤の友人。協会の施設で育つ。首席で執行魔道士に抜擢
4名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/18(月) 19:43:03.86 0
◆娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 まとめサイト

AA込みの本編はもちろん外伝や小ネタに用語集
さらに、やっつー漫画まで読める充実サイト!!!

http://www61.atwiki.jp/eriponmagi/


◆避難所

娘。小説『魔法使いえりぽん』.避難所
http://yy21.kakiko.com/test/read.cgi/morning/1387095395/

http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/20619/1401159235/
5名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/18(月) 19:43:34.68 0
◆娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 RPG

http://www1.axfc.net/u/3214942.zip

・Win対応
・所要時間2h〜3h
・ミニゲームはタイトルからすぐに遊べるようにしました
・ゲームクリア後におまけを入れています

初めてのゲーム製作なのでおかしいところも多々あると思います
暇つぶし程度に楽しんでいただければ嬉しいです

◆娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 RPG風紹介動画

YouToube
http://www.youtube.com/channel/UCXGqmpuHdjbykhM2SKULf0g

ニコニコ動画
http://www.nicovideo.jp/search/%E9%AD%94%E6%B3%95%E4%BD%BF%E3%81%84%E3%81%88%E3%82%8A%E3%81%BD%E3%82%93%E3%80%80RPG
6名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/18(月) 19:44:13.57 0
 
       * ∠\`・* 。
        | /★`、 `*。
       ,。∩______フ *  
      + |||9|‘_ゝ‘) *。+゜ <テンプレ終了〜
      `*。 ヽ、  つ *゜*
       `・+。*・' ゜⊃ +゜
       ☆   ∪? 。*゜
        `・+。*・ ゜
7名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/18(月) 19:44:19.64 i
乙~
8名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/18(月) 20:25:49.01 0
素晴らしい!
9名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/18(月) 20:29:31.67 0
さくらの人物紹介はさすがにまだか
10名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/18(月) 20:37:23.85 0
そろそろ考えてもいい時期かもね
次スレに入る頃には小田ちゃんの立ち位置も
しっかりと定まってるはずだろうし
11嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/18(月) 21:09:32.17 0
「LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-」

【配役】
http://i.imgur.com/gDGrl4Y.jpg

鞘師里保 / リリー
和田彩花 / スノウ

福田花音 / 紫蘭(シラン) - 監督生
譜久村聖 / 竜胆(リンドウ) - 監督生
田村芽実 / マリーゴールド
佐藤優樹 / マーガレット - お嬢様だと思ってる勘違いの女の子。3人の召使がいる

鈴木香音 / ローズ - 仲の良い4人組
竹内朱莉 / カトレア - 仲の良い4人組
勝田里奈 / ナスターシャム - 仲の良い4人組
石田亜佑美 / チェリー - 仲の良い4人組

中西香菜 / キャメリア - 男役
工藤遥 / ファルス - 男役。

小田さくら / シルベチカ - 失踪した少女

田辺奈菜美 / ジャスミン - マーガレット親衛隊
加賀楓 / クレマチス - マーガレット親衛隊
佐々木莉佳子 / ミモザ - マーガレット親衛隊
12嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/18(月) 21:10:06.19 0
かつて、ヴァンプ(吸血種)は不死の命を持っていたとされる。
でも、私達ヴァンプは不死を失った。
時が来れば全ての生き物と同じように、その命を終えるのだ。


「シルベチカ! シルベチカ! ねえどこなの? 隠れてないで出てきてよ! ……シルベチカ」

鬱蒼と茂った夜の森は、雨に覆われより一層の重く暗い雰囲気を醸し出していた。
あらゆる生物の存在を拒絶するような森の闇の中を、
濡れることも厭わず名前を呼びながら彷徨い歩く一人の少女。
途方に暮れたように彼女が足を止めたその時、後方から厳しい声がかかった。

「リリー。勝手な真似は許さんぞ」

「こんな夜更けにどこに行こうというのです」

声をかけられた少女――リリーが振り返ると、そこにいたのは監督生の2人、
紫蘭(シラン)と竜胆(リンドウ)だった。

「ごめんなさい、あたし……」

「雨に濡れて風邪引いて死ねばいいのに。風邪で死ぬヴァンプ。アハハハハハ、随分間抜けなこと」

リリーの謝罪を遮り、嫌味っぽく笑い飛ばす紫蘭。

「シルベチカの声が聞こえたの」

「シルベチカ?」

「訳の分からないことを言うでない」

「さあ、早く戻りなさい」
13嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/18(月) 21:10:39.74 0
眉を顰めながら監督生2人がリリーを促す。
リリーもそれに逆らうことなく2人の後に従った。

「ねえ紫蘭、竜胆」

「なんだ」

「どうしてこの森には、ずっと雨が降っているの?」

「雨?」

間断なく雨粒を落とし続ける黒雲を見上げる竜胆。

「止むことのない雨」

「それはきっと、誰かが時間を閉じ込めてしまったのだ。だからこの森に降る雨は止むことがない」

「……閉じ込められた時間」

まさかそのまま言葉通りに受け取られるとは思っていなかったのか、
取り繕うかのように紫蘭がまた笑い飛ばす。

「アハハハ、冗談に決まっておろう。何を真に受けておるのだ」

「さあ、みんなが心配するわ。戻りましょう、私達のクランに」

これ以上無駄口を叩くつもりはないと背中で語る紫蘭と竜胆。
そしてリリー達3人は、森の深い闇の中に溶けていった。


14嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/18(月) 21:11:11.13 0
あたし達が暮らすそのサナトリウムは、クランと呼ばれていた。
千年も昔から続いた由緒正しき吸血種達の療養所。
クランとは血族、血のつながりを意味する言葉。
あたし達はそのクランで仲間たちと共に、終わることのない退屈な毎日を過ごしていた。
でも、あの日はなんだか、いつもと様子が違ったの……。


「あんたってホント〜に、馬鹿ね!!!!」

チェリーの口の悪さはいつものことではあったが、出会い頭にいきなり顔をグッと寄せて
馬鹿にされるというのは、さすがのリリーでもいい気はしない。

「チェリー、何よいきなり」

「昨日クランを抜け出したらしいじゃない」

昨夜はみんなが寝静まるのを確認してからこっそりと抜け出したはずなのに、どうしてそれを!?
焦りを隠せずチェリーに詰め寄るリリー。

「誰から聞いたのよそんなこと!」

「監督生が話してるのを聞いたのよ。もうみんな知ってるわ。
あんたね、人間に見つかったらどうするつもりよ」

文句を言いつつも人のことを心配してくれるのがチェリーなりの優しさ。
まっすぐでお節介焼きな娘だとわかっているから、たとえ罵倒されても腹がたつこともない。
15嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/18(月) 21:11:40.16 0
「だって、ここは人間の里からだいぶ離れてるし……」

「考えが甘いのよ」

腰に手を当てたチェリーが、心底呆れたように答える。

『あんたね、そんなことだから自分の記憶を取り込まれそうになるのよ』

それは会話の流れにそぐわない違和感のある一言だった。

自分の記憶? 自分って……誰?? あたしは……リリー。
……じゃない! うちの名前は……里保! 鞘師里保だ!!

自分の名前が頭に閃くとともに、消えかかっていた記憶が一気に蘇る。

「そこで注意が必要なのは、しっかりと強く自我を保っていないと
自分の意識をその登場人物に取り込まれてしまう危険性があること」

さゆみの言葉が頭の中で反復される。
自分はまさに、その通りの状況に追い込まれていたんだ。
そしてそれを救ってくれたのは……。

驚きの表情のままにチェリーに目を向けると、胸を張っていかにもなドヤ顔を返すその姿は、
まぎれもなく石田亜佑美そのものだった。
だがそう見えたのも一瞬のことで、すぐに本来のチェリーの表情に戻る。

ありがとう亜佑美ちゃん、おかげで意識を取り戻すことができたよ。

里保は心の中で、亜佑美にそっと感謝の言葉を投げかけた。


(つづく)
16名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/18(月) 22:21:30.20 0
乙です
エネルギー送り込んだときに意識も少し飛ばせるのかな
導入ドキドキしたw
17名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/18(月) 22:29:21.03 0
よくこんな細かく台詞覚えてるな
18名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/18(月) 22:36:20.54 0
シルベチカー・チカローン
19まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/08/18(月) 22:54:57.86 0
や、ヤバい
先がすごい気になる…
だけどネタバレかうぅー

とりあえず更新お疲れです&新スレおめっと
20名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/18(月) 23:03:30.39 0
福田さん体調不良とのこと
魔法使いは体力要るんだな
212.162.135.27.ap.yournet.ne.jp@転載は禁止:2014/08/18(月) 23:09:10.91 0
本編はどうなりました?
22名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/18(月) 23:18:55.88 0
本編の心配もそうだけど名前欄を『名無し募集中。。。』にしてみよう!
23名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/19(火) 00:20:48.46 0
避難所にべり編の続きをあげました
よかったらどうぞ
24名無し募集中。。@転載は禁止:2014/08/19(火) 01:09:00.33 0
22さん。
ごめんなさい。
25名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/19(火) 09:29:53.44 0
保守
26名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/19(火) 12:52:32.22 i
       * ∠\`・* 。
        | /★`、 `*。
       ,。∩______フ *  
      + |||9|‘_ゝ‘) *。+゜保全の魔法っちゃよ
      `*。 ヽ、  つ *゜*
       `・+。*・' ゜⊃ +゜
       ☆   ∪? 。*゜
        `・+。*・ ゜
27名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/19(火) 16:35:04.88 0
リリウムは見てないけど小説は楽しみにしてる
冒頭の配役表助かります
28名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/19(火) 19:38:38.04 0
川c ’∀´)
29嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/19(火) 20:13:36.30 0
>>11-15より
「いいこと、人間にとってあたし達ヴァンプは、化け物とおんなじなんだから!」

「そう。まったくもってふざけた話だよ」

会話に突然割り込んできたのは、キャメリアだった。

「キャメリア! ちょっとあんた、ここ女子寮よ! なんで勝手に入って来てんのよ!!」

「人間も僕達ヴァンプも何も変わりやしないのに、化け物扱いなんてさ。
時代錯誤もいいところだよ」

「あんた、話聞いてる?」

チェリーのツッコミも無視して滔々と語りだすキャメリア。

「昔はヴァンプ狩りなんてのもあったらしい。
十字架や聖水やニンニクなんかでヴァンプを退治しようとしたんだ。
そんなの迷信だってのに。ま、ニンニクは臭くて勘弁してもらいたいけどさ。
中には太い銀の杭を胸に刺されて殺されたヴァンプもいたらしい。
そんなの刺されたらヴァンプじゃなくても死ぬっつーの。
野蛮な種族だよ、人間ってヤツは。僕達ヴァンプから見たら、人間の方が化け物さ」

あまりに人の話を聞かないキャメリアに業を煮やしたチェリーが、
思いっきり助走をつけるとキャメリアにジャンピングパンチを叩き込んだ。
30嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/19(火) 20:14:04.32 0
「痛ててててて、何すんだよ!!」

「あんたが人の話を聞かないから!!」

そこから繰り広げられる2人の痴話喧嘩を、微笑ましく見守るリリー。

「仲が良いのねあなた達」

「「仲良くなんかない!!」」

綺麗にハモったその返答が、リリーの言葉を見事なまでに肯定していた。


ようやく意識を取り戻したものの、
借りている身体の宿主であるリリーの意識が消えたわけではなく
里保の意思とは別に、変わらずにリリーとして喋りそして行動が続いている。

イメージとしては、上位人格と下位人格に分裂してしまった二重人格者という感じか。
下位人格は、上位人格があることを認識できないまま普段通り生活しているつもりだが、
上位人格は、人格が現出していない時も下位人格のことをしっかりと認識し、
その言動もすべて把握できているのだという。

普段決して体験できないなんとも不思議な感覚だが、
このまま傍観を続けていていいのだろうか。
おそらく遥も自分と同じように意識を取り込まれている可能性が高く、
すぐにでも探し出して回復させてやる必要があるのではなんてことを考えると、
居ても立ってもいられなくなってくる。
31嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/19(火) 20:14:34.28 0
「シルベチカを見なかった?」

「シルベチカ?」

「昨日から見かけないのよ。部屋にも戻ってないみたいだし」

「シルベチカって……誰よ」

「誰って、シルベチカはシルベチカよ」

「シルベチカなんて娘、このクランにはいなかったと思うけど」

「何言ってるの? もしかして、2人であたしをからかっている?? 冗談でも笑えないよそれ」

「あんた、大丈夫? 頭でも打った?」

昨日もそうだったけど、リリーはシルベチカという娘を探しているらしい。
でも今の里保にとっては、遥を見つけ出すことの方がずっと重要だ。

今は身体をリリーの意識に委ねている状態だが、自分の意識を強く集中させれば
思い通りに動かせる――はっきり言えば乗っ取ることができそうだと感覚的にわかる。

あまり時間をかけすぎると完全に遥の記憶が取り込まれてしまう危険性が高いし、
いっそ今すぐにでもリリーのこの身体を乗っ取って探しに行くべきか……。
32嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/19(火) 20:15:08.19 0
リリー達のいる広間に騒がしい声が響き、
ローズ、カトレア、ナスターシャムの3人が姿を現す。
勝手自由気ままにはしゃぎまわるカトレアとマイペースなナスターシャムに、
心配性のローズが手を焼いている印象だ。

「あんた達またやってんの」

「ああチェリーじゃない。あんたからも言ってやってよ、またこの2人が面倒臭くってさぁ」

「面倒臭いのはこっちも同じよ。またこの娘がおかしなこと言い出したの」

「この娘がおかしいのはいつものことじゃない」

ローズがリリーに呆れたような視線を送る。

『どぅーは大丈夫だからもっと信頼してあげて、
一度きりのチャンスを焦らずしっかりと見極めればいいのよ』

予想外の言葉に驚いてローズの顔を見返すと、彼女が見せる
人を魅きつけてやまない満面の笑みは、間違いなく鈴木香音のものだった。
33嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/19(火) 20:15:46.98 0
そうだよ、自分が取り込まれそうだったからどぅーもそうだろうと勝手に思っていたけど、
どぅーが自分の力で意識を取り戻しているかもしれないし、
うちのように誰かの助言で意識を取り戻すことだって十分にありえる。

下手にリリーの身体を乗っ取って、勝手な行動で物語の流れを壊してしまったら、
余計な混乱を招いてバンシーを探すどころではなくなってしまう。
道重さんも、しばらくは物語の流れに身を委ねながらバンシーを探せと言っていたし。
香音ちゃんの言葉通り、チャンスは一度きりとタイミングを見計らって
しばらくはリリーとともにこのリリウムの世界をじっくり観察していこう。

香音ちゃんの助言がなければ、危うく暴走してしまうところだった。
ありがとう、香音ちゃん……。


「ねぇ! シルベチカを見なかった?」

「シルベチカなんて知らないわ」


(つづく)
34名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/19(火) 20:20:17.38 0
台詞の書き起こしサイトとかあるんですか?
35名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/19(火) 20:46:50.96 0
作者さんではないですが実はあります

あと音源がごにょごにょしていたので本人が聞き取られたかもしれませんが
36名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/19(火) 21:19:04.93 0
あの芝居見ごたえあったからねぇ
書き起こしあっても不思議じゃないけどすごい労力だw
37名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/19(火) 21:58:37.47 0
凄い!見事にリリウムとリンクしてる読んでると舞台を見てた時の記憶が鮮明に蘇る

一時期書き起こししたテキストがゴニョゴニョされてたねw今でもたまに読み返す
38名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/20(水) 00:24:20.93 0
 <::ヽ             。'“゜`・*。 。*゜”`'。
  |::::::\    ☆       *     ゜+゜     ♪
 ∠ニニニ`_  /゜''+。.,      ゜,,        ,.。+''゜
  |||9|‘_ゝ‘)つ    ゜“・:+.:.。♪,,*:...。.:.+・ ”゜
  ⊂   へ(/⌒)         ゜*。
  ノリ.〉 /^/@ニ)'            ゜・*。+・`
   〈 〈/ ,/
  (_/@二)
  `ー―'"
39名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/20(水) 00:32:45.97 0
保全の魔法使いえりぽんがパワーアップしてるw
40名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/20(水) 00:46:17.07 0
俺にはエウ○カセ○ンに見えるw
41名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/20(水) 02:08:19.61 i
  *``・*+。
     `*。
      *。
 。☆ノハヽ   *
+川c ’∀´)*。+゚
`*。 ヽ  つ*゚*
 `・+。*・`゚⊃ +゚
 ☆  ∪~ 。*゚
 `・+。*・+ ゚
42名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/20(水) 06:05:34.67 0
魔法使いたちはハワイへ
43名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/20(水) 07:23:31.70 O
       * ∠\`・* 。
        | /★`、 `*。
       ,。∩______フ *  
      + |||9|‘_ゝ‘) *。+゜保全の魔法っちゃよ
      `*。 ヽ、  つ *゜*
       `・+。*・' ゜⊃ +゜
       ☆   ∪? 。*゜
        `・+。*・ ゜
44名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/20(水) 07:23:49.84 0
 <::ヽ             。'“゜`・*。 。*゜”`'。
  |::::::\    ☆       *     ゜+゜     ♪
 ∠ニニニ`_  /゜''+。.,      ゜,,        ,.。+''゜
  |||9|‘_ゝ‘)つ    ゜“・:+.:.。♪,,*:...。.:.+・ ”゜
  ⊂   へ(/⌒)         ゜*。
  ノリ.〉 /^/@ニ)'            ゜・*。+・`
   〈 〈/ ,/
  (_/@二)
  `ー―'"
45名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/20(水) 08:33:01.78 0
ハワイの魔法使いはシャーマン系ぽいイメージ
46名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/20(水) 11:13:10.18 0
保守
47名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/20(水) 11:14:03.02 0
>>44
ハワイまで自力で飛ぶのか?
48名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/20(水) 12:22:57.07 0
NASAや米軍にレーダー追跡されるえりぽん
49名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/20(水) 12:54:25.94 0
不法入国w
50名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/20(水) 13:52:33.09 0
色々浮かぶんだが全部ワンシーンやカットごとでSSにもならんw
51名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/20(水) 17:36:24.17 0
空飛ぶ魔法使い
52名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/20(水) 19:48:25.84 0
ヒコー少女ですわ
53名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/20(水) 23:35:32.02 0
ワイハ
54名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 01:52:44.74 0
|||9|^_ゝ^)<ハトさ〜ん
55名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 04:05:11.74 0
魔法使えないえりぽん
56名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 07:41:08.69 i
 <::ヽ             。'“゜`・*。 。*゜”`'。
  |::::::\    ☆       *     ゜+゜     ♪
 ∠ニニニ`_  /゜''+。.,      ゜,,        ,.。+''゜
  |||9|‘_ゝ‘)つ    ゜“・:+.:.。♪,,*:...。.:.+・ ”゜
  ⊂   へ(/⌒)         ゜*。
  ノリ.〉 /^/@ニ)'            ゜・*。+・`
   〈 〈/ ,/
  (_/@二)
  `ー―'"
57名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 08:02:18.18 i
ほ!!
58名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 10:16:25.44 0
しゅっ!
59名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 14:46:24.26 0
続きを投稿したいと思います

今回は「原作」のリンク上、多少のグロ注意があります
苦手な方はこの作品を飛ばしてください
60名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 14:47:14.32 0
魔法少女みずき☆マギカ6


聖が黙っていると・・・

「皆・・・気をつけて!」

突如、花音が叫んだ。
その声に全員が花音の視線を追うと、そこには小さな人形のような姿をした「何か」がフワフワと浮んでいた。

「あ・・・かわいい」
「・・・何あれ?」

聖と香音の呟きに、花音が注意を促す。

「見た目に騙されないで。あれも紛れもなく「魔女」よ・・・鈴木さん!」
「あ、はい!」

花音が「魔法少女」に姿を変えて、香音もそれに続く。

「あの、ちっちゃいのが「魔女」なの?」
「そのようですね・・・」

里保と春菜が戸惑いながら呟いたのを聞き、さゆべぇが驚きの声を出した。

「・・・君たち、「魔女」の姿が見えているのかい?」
「え?うん・・・普通に見えてるけど」
「私も見えてますよ」
61名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 14:48:54.13 0
その言葉に、さゆべぇはジッと二人を見つめるだけだった。
聖は、香音に近づいて心配そうに声をかけた。

「香音ちゃん、気をつけてね」
「大丈夫!聖ちゃん、私の魔法を見ててね!」

聖がその場を離れるのと同時に、香音が気合を込めた。

「うりゃぁ!」

その声に呼応するように香音の右腕が輝き出し、みるみる形を変えていく。
そして、腕の光が収束し終わった後、現れたのは巨大な「前足」だった。

「香音ちゃん、その手・・・」
「どう?私の魔法!その名も、「ちゃーちゃんぱんち」!!」

その「ぬいぐるみの手」のような腕の形に、里保が驚愕の声を上げた。

「すごい・・・あんな見た目なのに、魔力が限界まで圧縮されて詰め込まれてる。これが「魔法少女」の力なの?」
「確かにあれで「ぱんち」されたら、どんな相手でも一撃で粉々になりそうですね・・・鈴木さん、すごいです!」
「香音ちゃん・・・すごい!」

春菜と聖の絶賛の声に、香音は顔が赤くなった。

「・・・そう?いやいや、全然、そんなことないよ!」

そう言って、巨大化した手をブンブン振り回す。

「・・・ちょっ、香音ちゃん!それをこっちに振り回さないで!危なすぎるから!!」
「あ、ごめん聖ちゃん」
「鈴木さん、照れている場合ではないわ。早く攻撃しないと・・・」
62名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 14:50:16.03 0
花音の注意する声と同時に、香音の腕が元の形に戻ってしまった。

「ありゃ?」
「香音ちゃん、どうしたの!?」

聖の質問に、香音はえへへと笑いながら説明した。

「この魔法、十秒くらいしか持たないんだよね」
「・・・おいっ!」
「しかも、一回使ったらしばらく使えなくなっちゃうんだよね、これが」

唖然とする聖たちを尻目に、「魔女」は相変わらずフワフワと浮び続けている。

「・・・仕方ないわね。私がやるから皆そこで見ていなさい」

花音はそう言って、自分の目の前に巨大な砲台を生み出した。

「マロ・フィナーレ!」

打ち出された魔法の砲撃が、「魔女」の胴体部分に直撃し・・・

ばしゅぅ!!

「魔女」の体が、木っ端微塵に吹き飛んだ。

「やった!さすが福田さん!」

香音の喜ぶ声に、花音は髪をかきあげながら答えた。

「まあ、今日は弱い相手だったから良かったものの、次からは・・・」
63名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 14:50:49.87 0
その時だった。
今破裂した「魔女」の頭部分が膨れ上がり、巨大な口と牙をもつ異形へと変化した。
そして、その一瞬の変貌に唖然として、硬直する花音を・・・


「・・・え?」

がぶっ

その、あまりの光景にその場にいた全員が凍りついた。
凶暴化した「魔女」は、花音の首から上を(以下規制)。

「・・・福田さんが・・・マロった・・・」

春菜の意味不明な呟きに反応するものはなく・・・
ぶら下がった花音の体は、ピクリとも動かない。

聖の思考が停止している中、その足元に近寄ったさゆべぇが叫んだ。

「聖!今すぐ僕と契約を!」

その声に反応したのは、聖ではなく「魔女」だった。
くわえた花音を遠くへ吐き出すと、聖に視線を向ける。

「・・・あ・・・」
「願い事を決めるんだ!このままだと、ここにいる全員が死んでしまう!早く!」
64名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 14:51:39.96 0
・・・死ぬ?
私・・・死ぬの?

聖は、突然目の前に降ってわいた「死」の恐怖に、体も、口も動かすことが出来なかった。
そして「魔女」は、ゆっくりと聖に近づき・・・

「聖ちゃん!!」

香音の叫びと同時に、「魔女」が大きく口を開けた。その瞬間・・・

ばりばりばりばりっ!!!!

「魔女」の体が、ほとばしる電撃に動きを止める。
香音が、その攻撃が来た方向を見て声を上げた。

「・・・里保ちゃん!」

里保の放った電撃の魔法で、「魔女」は体中を縛られて身動きがとれない。

「・・・そんな!見るだけじゃなく、攻撃まで出来るなんて!」

さゆべぇの驚愕した叫びと、「魔女」の咆哮らしき声が響きわたり・・・

「・・・なんしよーと!!!」

その声に、全員が屋上の出入り口の方へ振り向いた。
そこには、衣梨奈が怒りに満ちた顔で立っていた。
65名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 14:53:18.38 0
「・・・えりぽん!!」

聖の叫びと同時に、衣梨奈が「魔女」に向かって地面を蹴った。

「皆に手を出すなああああああああああ!!!」

衣梨奈の渾身の蹴りが、「魔女」の顔に命中し・・・

ぶしゅううううううううう!!!

空気が抜けるような爆発音とともに、今度こそ「魔女」は消滅した。

「・・・すごい!」

香音の驚く声に、聖も我に返ると同時に思った。

これが・・・えりぽんの力・・・

聖が立ち尽くしていると、衣梨奈は怒った顔のまま近づいて来た。

「・・・だから言ったやろ!危ないって!!」
「・・・あ」
「聖に何かあったら、絶対に聖を許さんけんね!!」

その矛盾しているような言い方に、聖は少し混乱し、香音がフォローした。

「ほら、これでも生田は聖ちゃんを心配して言ってるんだよ」
「香音ちゃんも一緒!」
66名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 14:54:20.04 0
「・・・え?」
「もうその「魔法少女」なってしまったのなら仕方ないっちゃけど、これ以上危険な目に遭うのは許さんけんね!」

香音はその言葉に、一瞬ポカンとして・・・すぐに嬉しそうな顔で謝った。

「うん。ありがとう、えりちゃん」

衣梨奈は頷いて、また聖の方を向いた。

「聖、これで分かったやろ。もうこんなことに巻き込まれるのは辞めるっちゃ」

衣梨奈の真剣な目つきに、聖の心が揺れ動いた。

・・・私が「魔法少女」になっても、多分えりぽんの足元にもおよばない。
それに、こんなに「戦い」が恐いとは思わなかった。

・・・でも・・・それじゃ・・・
ここでもし「魔法少女」になるのを辞めたら・・・
今までと、何も変わらないよ・・・

「・・・皆さん、話は後です!それよりも・・・福田さんが・・・」

春菜の悲痛な声に、全員がその事を思い出した。
慌てて、「魔女」の口から吐き出された花音に近づく。

「福田さん!!」

その体は、見るも無残な姿で・・・すくっと立ち上がった。

「きゃあ!」
「・・・ふう、危ないところだったわ」
「なんで生きてるんですか!?」
67名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 14:54:56.51 0
「ふっ・・・このシンデレラの生まれ変わりである私が、あの程度でやられるわけないでしょ」
「いや、首から上をかじられたら、普通死にますって!」

全員からの突っ込みに、花音は涼しい顔で髪をかきあげた。

「そんなことよりも、譜久村さんと鈴木さん。あなた達、随分強力な「魔法少女」のお友達がいたのね」

花音の言葉に、衣梨奈と里保は慌てて否定した。

「うちら、「魔法少女」じゃないですよ」
「そうったい。えりはただの魔道士で・・・」
「細かいことはいいわ。でも・・・これなら、なんとかなるかもね」
「・・・なんとか?」

聖が聞き返すと、花音は真剣な顔でこう説明した。

「そう。もうすぐ、とても恐ろしい「魔女」が現れるの。そいつは、私達三人だけでは、とても勝てないほど強い」

その突然の告白に、全員が息を呑んだ。そんなに強力な「魔女」が現れる・・・

「そいつは、最強、最悪の「魔女」。私達「魔法少女」は、そいつと戦う為に集めらたらしいわ」

そして花音はゆっくり息を吸うと、その「魔女」の名を口にした。

「私達の真の敵。その名も、「ローズクォーツの夜」・・・」

(続く)
68名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 14:56:30.06 0
今日はここで終わりです
また時間がある時に投稿します
69名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 16:00:42.82 0
更新乙です
kntmクル━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
70名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 18:21:18.98 i
  *``・*+。
     `*。
      *。
 。☆ノハヽ   *
+川c ’∀´)*。+゚
`*。 ヽ  つ*゚*
 `・+。*・`゚⊃ +゚
 ☆  ∪~ 。*゚
 `・+。*・+ ゚
71名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 18:46:46.70 i
>>68
おつおつなの
魔女に(以下自粛)されてもあっさり元通りのまろワロタw
やっぱりえりぽんとりほりほは別格の強さ
これに暴君…ロズクォさんがどう絡むのか楽しみです
72名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 19:39:04.53 O
えりぽんは身体能力と怒りのパワーだけで蹴散らしたようなw
73名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 20:29:43.69 0
ローズクォーツ…フイたw
ハロメン総出演も夢じゃないな
74名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 22:03:26.15 0
今週のさくさくラジオのオープニングポエム
「秋の訪れを波が告げる
 別れを惜しむように
 彼女は波間に踊る」

マジスタッフにここ見てる人いるんじゃないかと疑いたくなるw
75名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 22:24:02.72 0
>ふと風に乗って歌が聞こえて来た。

>見れば海岸の岩場に白いワンピースを着た少女が一人
>気持ち良さそうにクルクルと踊りながら荒波と戯れている。
>麦わら帽子を風に飛ばされないよう手で押さえながら戯れるその姿はとても愛らしく微笑ましい。


確かにこの情景を彷彿とさせるポエムだなw
76名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 23:44:39.10 0
作者あるあるか知らないけど投下間隔をあけていると
内容忘れちゃうというねw
ベリ編は絶賛(?)避難所連載中

戦国物語は書き溜まってきたw
77名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 23:46:10.32 0
細かな構想だけで何もできてない!!wwwwww
78名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/21(木) 23:58:37.12 0
普通に書いてる作者さんも凄いが同時進行で複数書いてる作者さんはホント凄いわ
79まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/08/22(金) 00:01:40.18 0
というわけでまーどぅーの戦国編を本格スタートさせます
お付き合いください

あとストーリの都合上、いくつかの外伝の設定を勝手に(←オイ)
使わせていただいています
80まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/08/22(金) 00:03:50.34 0
道重邸に戻った春菜達。
一同がリビングへと集まるとそこへ分厚いファイルを持った春菜とさゆみがあらわれた。

「お待たせ!」
「お待たせしてすみません。」

「はるなん、どういうこと?説明してくれる?」
衣梨奈の問いかけに対し春菜はコクリと頷くと手元にあるファイルの一ページを探しその記事を指差した。
衣梨奈や里保、亜佑美が覗き込む。

『連続犯の仕業か?魔導士の行方不明相次ぐ!』


「これもですね…」
春菜はどんどんページをめくっていく。


『高級魔法道具、盗難!犯人はグループか』
『突如道路陥没、原因不明のまま』

「はるなん、これってどういうことっちゃろ?
 どぅーと優樹ちゃんに関係あるとね?」

「この手の事件が起き始めたのは約2ヶ月程前のことです。
 それまで何もなかったのに急に増え始めました。
 これは魔法新聞なのでもちろん魔法関連のものが載っています。
 ただ、一般の新聞にもそれと似たような件が見られます。」

ここで春菜は一息置く。
81まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/08/22(金) 00:05:48.33 0
語り出した春菜を一同が静かに見つめていた。

まだ話の全体が掴めてはいないのでイマイチピンと来ない。


「それで?」
亜佑美が先を促した。

「はい、それぞれの事件の現場の状況からやはり魔法が絡んでいることは間違いないです。
 しかもその魔力が結構大きくて、痕跡がはっきりと残っているのに誰が掛けたのかわからないんです。
 協会の法務局ではおそらく『時空を操る魔法』だと見ています。」

「あっ!!」

突然里保は声を上げた。昼間の局長から依頼された事柄…。

里保は慌てて鞄の中から一枚のクリアファイルを取り出した。

「ねぇはるなん?もしかしてこれが絡んでるのかな?」

里保は衣梨奈の父からの依頼を話し始めた。
春菜とさゆみは里保の話が終わると目を合わせてコクリと頷く。

そしてファイルを一枚捲った。
82まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/08/22(金) 00:09:54.66 0
「こ、これって…」

『M13レンタルーム且ミ外秘』

まさにそこには里保がもらってきた任務内容の資料があった。
しかもその内容は里保が局長から聞いた内容よりはるかに細かく記載されている。


一同は改めて、春菜の情報屋としての腕前に感心していた。
しかも社外秘って…。


「この案件が持ち込まれたとき依頼者は道重さんを疑っていました。
 そもそも時空を操る魔法なんてものは今使える魔導士なんてほんの一握りなんです。

 …ただ、偶々この街にはその魔法を使える人物が2人います。
 
 1人はもちろん道重さん。
 
 
 そしてもう1人は音楽楽団のおじいさんです。」



「あっ、そういえばそんな話を聞いたことがあるっちゃね」
83まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/08/22(金) 00:11:39.32 0
「『不完全な四次元空間は他の魔力の干渉を受けると内部崩壊を起こす』
 これが、道重さんとおじいさんの見解でした。会社側を調査してみましたが
 確かに不特定の位置に四次元空間ができてしまうことはあるとのことでした。」


春菜はさゆみの方をチラリとみた。

「きっと2人は同じ空間に落ちたので間違いはないでしょうね…。
 まーちゃんもどぅーも直前まで魔法を使っていたとしたら…。



 もうこの時代にはいない。」




さゆみの言葉に一同は黙り込む。なんとかしなければという思いはみんなが持っている。
だが、2人をどうすれば見つけることができるのか…。

それが皆目見当つかない。

さゆみも額に人差し指を当て考えこんでいた。

「その会社、ぶっ飛ばせばよかと!」
不意に、衣梨奈が声を上げる。

「ぶっ飛ばして、研究内容、えり達で調べれば……」
84まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/08/22(金) 00:14:36.53 0
「いやいやいや、生田さん、それは無理ですって。
 さっき鞘師さんも言ってたじゃないですか、政府が絡んでるかもって!」


里保は衣梨奈と亜佑美のやり取りを聞きながら懸命に思考を回転させていた。

(考えろ…考えろ…思考を止めるな。何か………何かあるはず……)


「やけん、バレんようにやるっちゃね。」

「………賭けてみるしかないかしらね…。」
突如さゆみが発した呟きに一同の視線が集まる。

「まっ、まさか道重さん
 
 ……潰しに行くんですか?」
さゆみの発言の真意を図りかねるといった様子で春菜は恐る恐る尋ねる。
85まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/08/22(金) 00:15:56.81 0
「まさか!さゆみはそんな手荒な事はしないから安心して。
 生田の意見には半分賛成。
 魔法はかけた当事者に聞くのが一番だから、会社側に研究内容の提示を求める必要はあると思う。
 意外とね、この魔法って再現性が高くてね…。」

そうして、さゆみは自身の考えを伝えた。

その考えを聞いた一同は驚きの声を上げる。

「ウチ、そ、そんなことできるんですか?」

「りほりほくらいの魔導士なら朝飯前よ。
 とにかく、時空がズレているということは時間の進み方も違うからなるべく早くにやらないと!
 明日は満月だし…魔法は使いやすい方がいいでしょ?」


全員が遥と優樹を救うため、各々ができることをやる。
そして、作戦実行のために行動を開始した。

現代
満月まであと1日……

続く
86まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/08/22(金) 00:17:46.22 0
というわけでこんばんはここまでにします

とここまで書いてようやく名前欄が作者のままということに気付いたorz
本編来ないかなwkwk
87名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 00:32:40.66 0
M13レンタルルーム・・・確かにすっかり忘れてたw外伝とのリンク…気になりますね〜てか楽器のじいさんがドンドン凄い人になってく!実は協会の前々会長だったりしてw
88名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 01:35:57.29 0
本人も忘れてました
書きっぱなしの無茶振りをリサイクルしてくれてありがとう
89名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 05:56:37.11 0
90名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 07:21:23.75 0
レンタルルームや楽器じいさん話は作者さん違うのか?外伝も多くなってきたから改めて読み返そうっと
91名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 11:35:10.83 0
やはりあのじいちゃんただものではないのね
92モブ爺達の秘密@転載は禁止:2014/08/22(金) 14:10:48.32 0
「お爺ちゃんがホントはすごい実力の持ち主だなんて
えり全然知らんかったけど、どうしてそんなに強いの?」

普段は温和そのものの魔法楽団の老人に、衣梨奈が訊ねた。

「まあワシも、若い頃は血の気が多くて色々やってたからのう」

「色々って?」

「おう、それを聞いてくれるのか。これはここだけの秘密じゃからな」

老人が悪戯っぽい顔をして声をひそめる。

「実はな、ワシは若い頃に戦隊ヒーローの一員じゃったんじゃ」

その言葉とともにギターが勇壮なメロディーを奏で、
それが一段落するタイミングでクールなポーズを決めた老人が見得を切る。

「楽団ブルー!!」

老人のあまりに突拍子もない言動に、唖然として目を見張る衣梨奈。
驚かせることができて嬉しかったのか、老人は満足げな笑顔を向ける。

「どうじゃお嬢ちゃん、信じてくれるかの?」

「うーん、でも戦隊モノって一人じゃできないんじゃ……」

遠慮がちな衣梨奈の反論に、老人もさもありなんとうなずく。
93モブ爺達の秘密@転載は禁止:2014/08/22(金) 14:11:48.01 0
「もちろん戦隊に所属していたのはワシだけじゃないぞ。まあ見ていなさい」

再びギターが勇壮なメロディーを奏で、一段落するタイミングで空中にスクリーンが現れる。
そこに映る豪華な調度品が並ぶ部屋の一室にいた一人の老人が、
さきほどと同じようにポーズを決めた。

「会長レッド!!」

「楽団ブルー!!」

「「2人合わせて、モブ爺戦隊モブジアン!!!!」」

ビシッと2人の声が揃い、そしてまたスクリーンが消え去った。
その見事な連携に、「すごーい!」と拍手を送る衣梨奈。

「これで今度こそ信じてくれるかの」

「うん、信じるっちゃけど……。でも戦隊モノで2人ってバランスが悪い気が」

その衣梨奈の一言に、それまで上機嫌だった老人が顔を顰める。

「う、お嬢ちゃんも痛いところをつくのう。本当はもう一人、どんな疑問にも
的確に答えられる明晰な頭脳を持った『頭陀襤褸イエロー』がいたんじゃがな。
まあ色々あって登場できなくなってしまってなぁ」
94モブ爺達の秘密@転載は禁止:2014/08/22(金) 14:13:00.79 0
「色々って?」

「うん、それはじゃなぁ……」

『大人の事情や!!!!』

老人が言いよどむと、空から突然雷鳴のような声が響き、衣梨奈が思わず身をすくませた。

「フォッフォッフォッ、あまり細かいこと言ってると某三大魔道士が介入してきそうじゃから
これ以上は深く突っ込まない方がよさそうじゃの。
それよりな、一つ提案じゃがお嬢ちゃんも戦隊ヒーローの一員になってみんかの?
今は欠員のため活動休止中じゃが、お嬢ちゃんが入ってくれるならいつでも再開するしな」

まさかの誘いに衣梨奈が目を輝かせるが、しばらく真剣に考えるとゆっくりと首を振った。

「なんでじゃ? お嬢ちゃんのために黄緑色もちゃんと用意するぞい??」

「だって、もし衣梨奈がなるなら戦隊ヒーローより仮面ライダーの方がいいけん」

「なんとそんなオチじゃったとは……」

ショックのあまりがっくりと老人がうなだれるとともに、
「ファンファンファンファンファ〜ン!」と失敗音が辺りに響き渡ったのだった。


(おしまい)
95名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 15:49:32.91 0
なんだっけな?大人の事情
96名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 16:46:03.90 0
大人の事情

>・伏線の話
>どうせ続かないと思って脳内にあった設定や先の展開への伏線を最初の方から投げまくってました
>書いていくうちに話の展開が変わったり、設定も見直したりということがどんどん出てきて、結構な割合で伏線が死にました
>中でも割と思わせぶりに書いて時々レスも貰った「はるなんともう一人りほりほを監視してた人物」
>ごめんなさい本当にごめんなさい
>こいつは本編には金輪際登場しないです
>実は某ぼろ雑巾みたいな人をりほりほの相談相手兼「説明しよう」役として考えてました
>これだけ長くなっても未だに娘。全員が登場もしてないのにそんなどうでもいいキャラを描写する余裕は無かったです
>しかも猫はるなんが優秀で便利なキャラだったので、まじでこの人必要無くなりました
>レスとか貰うたびに出そうか出すまいか10秒ぐらい葛藤しましたが、やっぱり要らなかったです
97名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 18:17:14.57 0
あーそれですか!!ww

♂さんもどこかのハロコンか何かで言ってませんでした?



魔法楽団の設定は薄っすらと私もありますけど難しい
元楽団メンバー
現メンバー(弟子?)

3人?4人?5人?

さくらちゃんや皆とセッションとか素敵でしょうね

と私には無理かなあ
98名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 18:29:20.28 0
大人の事情や!

auのCMですな
99名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 18:38:43.03 0
あーそれか!!2回目
100名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 21:33:41.44 0
またギョニソ落ちたのか…
101名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 21:39:25.56 0
もしかしてみなさんハワイ?
102名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 21:54:34.09 0
もちろん今ハワイに・・・行けるものなら行きたかった
シュワポカーの作者さん垂涎のしゅわぽく無双だったようだし
103名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 23:14:04.86 O
留守番してないとですね。

かなとも出る?
104名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 23:27:17.07 0
伝え聞くしゅわぽくだけでぼかぁ幸せだよ
悔しくなんて
105名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 23:27:52.55 0



激しい風の音。
さくらが目を覚ますと白み始めた空を轟々と雲が流れていた。

いよいよ台風がすぐそこまで来たらしい。
木々が激しく葉を揺らし、さくらの髪や服の裾も空気の中を暴れまわる。
よくもまあ、呑気に寝ていられたものだと苦笑しながら
さくらは立ち上がり、大きく伸びをした。
すると身体がいっぱいの風を受け、飛ばされそうになってよろめく。
それが可笑しくて、小さく笑い、朝の歌を口ずさんだ。
さくらが歌った歌は、風に巻かれコロコロと空を転がって雲の間に消えてしまった。

さくらはポケットから取り出したバッグを元の大きさに戻し肩に掛けた。
それから早朝の丘を、風の上を滑るように駆け下りると
まだ起きたばかりの街の空気を楽しみながら、昨日散策の途中にこっそり見つけていた
お風呂屋さんの暖簾を潜った。
106名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 23:28:32.47 0
地元のお婆ちゃんたちと愛想よく会話しながらお風呂に浸かる。
汗をしっかりと流し、湯船に疲れを溶かし出す。

お風呂上がり、鏡の前で他のお客さんが居ない間を見計らって少しだけお化粧。
さくらは、「持ってきておいてよかった」と独りごちた。
バッグの中には、ちゃんと着替えも用意してある。

魔法を研究するのに熱中するとどうしても色々なことが疎かになりがち。
殊、身だしなみはよく注意していないと酷いことになる。
これから昨日と同じワンピースで汗ばんだ身体を包んで
衣梨奈達ともう一度会わなければならなかったらと想像すると、ちょっと笑えない。

先生から頼まれた魔法に関するお仕事。
だけど「旅行気分」で来て本当によかった。

お風呂屋さんの壁を叩く風を思って結局別のワンピースを諦めて
パンツルックを選んださくらは、誰に見せるでもなく得意げな表情になって鼻歌を歌い外に出た。

風の中に居る。
いつ体が浮き上がりはしないかなんて考える。それが何だかさくらの心を弾ませた。
今日は特別な日だと思う。
それは風のせいだし、衣梨奈や里保達と再会出来る日、そして亜佑美や優樹達と別れなければならない日だから。
107名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 23:30:14.47 0
.


遥は珍しく優樹に起され、眠い目を擦りながら朝食を摂っていた。
さゆみ、衣梨奈、里保、優樹、亜佑美と遥が食事を囲む。
そこには心地いい賑やかさがあって、それが少しだけ気恥ずかしい。
もう慣れたけれど、慣れないなと遥は思った。

里保もしゃんと起きている。とても珍しいことに。
衣梨奈、亜佑美、優樹もどこか楽しそうな浮ついた様子。
きっと昨日の少女のことと、今日これからのことを考えている。
夏休みがあと少しで終わり、遥にとっては今までと違う学校生活がもうすぐ始まる。
色々なことがちょっとずつ、それで何だか今朝は特別な気がした。
遥は最近毎朝特別を感じるなと、小さく苦笑した。

窓の外で風が庭木を激しく揺すっている。
何だかんだ言って台風で嬉しくなってしまっているだけなのかも。
妙にそわそわする自分自身と周りの様子を、遥はそう結論付けて朝ごはんを掻き込んだ。


皆での朝食を終え、片付けも終えると
さゆみ以外の5人が集まって、今日の遊びの計画を立て始める。

さゆみは夏休みを満喫する子供たちを楽しそうに眺めていた。
108名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 23:30:43.04 0
遥はまだ会ったことの無いさくらを中心に進む話の成り行きを見守っていた。
その少女と会うことは、昨夜から亜佑美と優樹によって強制的に決められている。
聖や香音も、昨夜衣梨奈達が遊ぶ約束を取り付けたから
集まれば結構な大人数になるなと、ぼんやりと考えていた。

8人。多分春菜も来るだろうから9人。
遥にはそんな大人数で遊んだ記憶はついぞ無い。
どんな風になるのだろうか。

なんだか気分がふわふわしていた。

衣梨奈と里保が、聖と香音の迎えに行くことになり、
亜佑美、優樹、遥は先にさくらと合流しようと話が纏まった。
流されるままそれに従い、亜佑美と優樹に続いて道重家の門を潜ると
強い風が遥の身体にぶつかってくる。
一気に楽しくなって、優樹と遥の二人、大はしゃぎで風と戯れながら歩いた。

三人の横にはいつしか見慣れた黒猫がヒョコヒョコと寄り添っていた。
109名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 23:31:20.95 0
「おはよう、はるなん。今日もその格好なの?」

亜佑美が春菜に気付いて笑いながら言う。

「おはようあゆみん。色々考えた結果こうなりました…」

「それじゃ今日も一日喋れないんじゃないの?」

ニヤニヤ顔のまま亜佑美が春菜を抱き上げた。
春菜が喉を鳴らし、亜佑美の胸に頬を摺り寄せる。

「立派に猫を演じてみせるわ」

芝居がかった春菜の声に亜佑美が吹き出し
しこたま唾を浴びた春菜が不満げにニャーと鳴いた。
優樹と遥も亜佑美に抱き上げられた春菜に気付き、挨拶もそこそこに髭や尻尾を引っ張って遊び始めた。

「ところでさ、小田ちゃんと合流って言うけど、どこで合流するんだっていうね」

一頻りじゃれ合った後、亜佑美が呟く。
春菜もそれに続けた。

「私も気になってたんですよ。昨日結局誰もどこで何時にとか約束してないんですよね」

そんな二人の言葉に呆れた表情を浮かべる遥。
その横で優樹が不思議そうな表情を浮かべる。
110名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 23:32:13.11 0
「昨日の公園だよ?」

「帰り際に別れたとこ?」

「確かに今何となく私たちあそこに向かってますね」

「うん。小田ちゃんあそこにいるよ」

「なんでまーちゃんはそう思うの?」

亜佑美の言葉にますます不思議そうな顔をして優樹が首を傾げた。

「なんで?だって昨日あそこでバイバイしたじゃん」

亜佑美も不思議そうに首を傾げる。
だけど、元々そこを目指しているのだし
食い下がる理由も無いかと亜佑美はそれ以上何も言わなかった。

そのやり取りを聞いて遥も不思議に思った。
何で同じ場所で同じ女の子と別れた二人が、意見を食い違わせているのかが分からない。
もっとも、そんなことは強い風が吹くとすぐどうでもよくなってしまった。

公園に到着し見渡すと、探すまでも無く
揺れるブランコに一人、女の子が座っていた。

3人と一匹が公園に足を踏み入れる。
芝生の上を一層強い風が暴れまわり、さくらの長い髪を掻き上げた。
111名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 23:34:37.84 0
「小田ちゃーん!」

優樹が大声を上げて駆け出す。
風の向こうでそれに気付いたさくらがパッと顔を上げ
満面の笑みを浮かべた。

それから立ち上がると同時、突っ込んでくる優樹を受け止め抱きしめた。

「本当に居た」

亜佑美が苦笑しながら言う。

「ですね」

春菜も小さな声で返事をして、それからわざとらしくニャーと一鳴いた。

遥もそんな亜佑美と春菜の数歩後ろを歩きながら
いきなり抱き付いた優樹の行動に眉を寄せる。

「あれが小田ちゃんか」

遥の呟きを見上げた春菜は
その顔に浮かんでいる不満げな表情に小さく笑って
優樹たちの方へ歩を速めた。
112名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 23:36:28.07 0
「良かったです。昨日そういえばどこで待ち合わせとか全然言ってなくって、
 連絡先とかも誰のも分からなかったからどうしようって思ったんです」

一頻り優樹とじゃれ、足にすり寄った春菜を抱き上げたさくらが
側まで来た亜佑美に頭を下げながら言った。

「ほらぁ、やっぱりそうだよね」

亜佑美がさくらの言葉を受けて優樹に言う。

「小田ちゃんここに居たじゃん」

優樹も応じる。
さくらは二人の謎の対抗を微笑ましく眺め、優樹の手を握った。

「佐藤さんと何か通じ合ってたんですかね」

言うと優樹が嬉しそうに笑う。
それからさくらとおでこを突き合せて微笑み合った。

暫くじゃれあった後、優樹がさくらの手を引いて歩き出した。
さくらと手を繋いだまま遥の所に来た優樹は、もう片方の手を遥の手と絡める。
遥は急なその行動に訝って優樹をねめつけ、それからチラチラとさくらを見た。

「小田ちゃん、どぅーだよ!」

「どぅーさん?」

「あー、小田ちゃん。こっちは工藤遥、通称どぅーってゆうの」

亜佑美の助け船にさくらがニコリと笑う。
「工藤遥さん」と口の中で呟いて、それから遥にもニッコリと柔らかい笑みを投げた。
113名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/22(金) 23:37:40.27 0
「私、小田さくらです」

「あー、どうもっす…」

さくらの笑顔にどうすればいいのかも分からなくなった遥は
仄かに頬を染め視線を反らした。
その様子を眺めていたさくらの唇が「かわいい」と動いたことに春菜は気付いた。

風が遮って、小さな声はみんな聴こえない。
だから大きな声で喋る以外の些細な呟きは、今日は全部独り言。


亜佑美が改めて遥をさくらに紹介する。
優樹や亜佑美の大切な友達であること。
是非さくらに会って欲しいと思っていたこと。

それから、衣梨奈と里保のことについても話した。
彼女たちにも大切な友達が居て、遥と同じようにさくらに会わせたいと思っている。
今迎えに行っているから間もなく合流するはずだということ。

さくらはそんな亜佑美の説明を嬉しそうに聞いていた。
亜佑美や優樹が自分のことを想っていてくれたことが嬉しい。
114名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/23(土) 00:00:40.58 0
暫く話していると衣梨奈からの連絡があり
程なく、衣梨奈と里保の二人も公園にやってきた。

昨日ぶりの再会に喜んで笑顔で迎えようとしたさくらの表情が固まる。
衣梨奈達の後ろを歩いて来た二人。
聖と香音の姿が遠目に映った瞬間、さくらは思わず呟いてしまった。

「みつけた」

慌てて口を噤み、亜佑美と優樹と遥、それに春菜の表情を見たけれど
4人ともが衣梨奈達の方を向いていて、風に遮られて誰にも呟きが聴こえなかったよう。

さくらはほっと胸を撫で下ろし、もう一度「その二人」をちらりと見ると、
一つ深呼吸をして改めて衣梨奈と里保に笑顔を向けた。



115名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/23(土) 00:01:40.93 0
あまりにも話が進まなくて凄いやばい
このままだとまーどぅー編並の長さになっちまう
116名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/23(土) 00:10:02.91 0
ついに出会ってしまった・・・!
ゆっくり進行でも長く楽しめるからそれはそれでOKっす
117名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/23(土) 00:11:04.61 i
いいねいいね~
118名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/23(土) 00:23:09.19 0
いやぁやっぱり本編はいいですよ
この一つ一つの心の動きがとても細かい
119まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/08/23(土) 00:35:42.64 0
本編きたぁ
小田ちゃんもドキドキな展開引き込まれます

一外伝作者ごときが最近でしゃばって申し訳ない
本編ホントに楽しみにしています
ゆっくりでも全然OKっすむしろワクワクが高まる
120名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/23(土) 00:48:09.90 0
乙です
日常風景がいいね
ケン・ワタナベ風の「みぃつけた」だったらちょっと怖いなと思ったw
121名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/23(土) 01:19:00.44 0
ついに出逢っちゃった…どんな展開になるのか楽しみなような不安なようなw
122名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/23(土) 01:20:44.51 0
見  つ  け  た

  ( 田小田)
123名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/23(土) 01:21:12.67 0
www
124名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/23(土) 01:30:43.11 0
うーん相変わらず読ませるなぁ次がどうなるかドキドキ
ずっと前からとっくにわかっていたことだけど
↓の表現を見てこれは逆立ちしても真似できないと完全にシビれました

さくらが歌った歌は、風に巻かれコロコロと空を転がって雲の間に消えてしまった。
125名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/23(土) 01:42:52.01 0
さくらじおのポエムで言って欲しいなw
126名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/23(土) 01:50:18.00 0
表現がどこか懐かしい気がするのは私だけなのかな?
もちろん私にも真似はできませんが良い意味で懐かしいのです
127名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/23(土) 07:29:10.16 0
ひゃっほータイ
128名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/23(土) 08:32:15.54 0
本編キテタ!!!!
やっぱり良いねぇ…綺麗だねぇ…!!!
129嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/23(土) 11:32:48.68 0
>>29-33より
いいですことみなさん、これから大切なことを教えます。よく聴いておくのよ。

はい! お姉様。

我ら若いヴァンプは例外なく、時が来れば特別な状態を迎えます。それが繭期なのです。

繭期って、なんだっけ?

繭期というのは人間でいう、思春期と同じことですが、
ヴァンプの繭期は人間のそれと、比べてとても深刻なのだ。
繭期を迎えたみなさんは、ものすごく情緒不安定になっちゃうの。
過去に幾度となく繭期のヴァンプが人間と諍いをおこし続けてきたのだ。
我ら吸血種の統率機関である血盟議会はその事態を重く受け止め、
繭期のヴァンプをひと時の間、隔離するための施設を設けたのだ。
それがこのサナトリウム・クラン。

このクランは特に重症の繭期のヴァンプを収容するために造られた場所。
このクランで繭期を過ごし、いつの日か立派な大人のヴァンプになるために。
お前達の毎日のお薬は、その繭期の症状を抑えるためになくてはならぬもの。
よく覚えておくように。
本日の講義はここまで。


規律を守り、友人を愛し、心を穢さぬよう血族の誇りを育みましょう。
我らの道が、純潔であらんことを。

純潔であらんことを。


130嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/23(土) 11:33:21.70 0
講義を終えて一息つく監督生2人に、キャメリアが気軽に声をかける。

「やあ、竜胆、紫蘭。監督生は大変だね。
自分だって繭期のくせに、みんなの面倒みなくちゃならないんだから」

「他者に依存することは繭期の症状によくありません。
だからこのクランでは何より自律性が重んじられるのです。
そのための監督生制度ですことよ」

「そういうお前も男子寮の監督生であろう。さっさと自分の寮に戻らぬか」

いかにも軽薄な雰囲気を漂わせているキャメリア。
その落ち着いた口調からも思慮深さが窺える竜胆。
勝ち気な性格が表情にも表れている紫蘭。
同じ監督生という立場でも、三者三様で個性がはっきりと分かれている。

「そうカリカリしないでよ。ヒステリーは繭期の典型的な症状だ。
あ、もしかして薬が足りてないんじゃないか?」

「どうやら鞭で打たれたいようだのう!」

威嚇するように音を立てて鞭を振るう紫蘭にも動じることなく、
おどけながら怖がる素振りを見せる。
131嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/23(土) 11:34:00.25 0
「この女子寮に何のご用ですか」

「……あれ? そういや僕、何しに来たんだろう」

何気ない竜胆の言葉に、驚くほど真剣に悩みだしてしまうキャメリア。
その思わぬ反応に、戸惑いの表情で竜胆と紫蘭が顔を見合わせる。

「お前こそ薬が足りてないんじゃないのか? この愚か者めが」

「紫蘭、口が悪いわよ」

「何か……大事なことを忘れてるような」

3人の間に流れる微妙な空気を破るように、
一人の少年が頭を抱えてよろめきながら入ってきた。

「ああぁぁぁぁぁぁぁうぅ」

「おいファルス、どうした?」

その少年――ファルスの様子に気づいたキャメリアが、手を貸して身体を支えてやる。
132嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/23(土) 11:34:29.75 0
「大丈夫、いつもの貧血だ。心配ご無用」

「本当かよ」

「ちょうどいい所へ来たわ、ファルス」

心配そうな顔を向けるキャメリアの後ろで、
紫蘭とともに軽く目礼をした竜胆が、懐から一通の手紙を取り出した。

「なんだよ」

「今月のクランの生活方針について御館様からお手紙が届いていました」

そして念押しするように続ける。

『ちゃんと工藤遥としての記憶を取り戻しておくように』

その一言に動きを止めたファルスが、しばらくして目が覚めたような表情に変わる。
そんな様子を柔らかく見守る譜久村聖の笑みは、ほどなくして竜胆のものに戻った。


こうして里保に続いて遥もまた、聖の助言をきっかけにして
ようやく自分の記憶を取り戻すことができたのだった。


(つづく)
133嘆きの先にある光・余談@転載は禁止:2014/08/23(土) 11:41:53.74 0
「繭期のティーチング」で検索すればyoutubeで冒頭の歌詞の曲が聴けます
舞台未観でDVDが出るまで情報を遮断しているという人でなければ
せっかくなのでぜひ一度聴いてみてください
134名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/23(土) 11:42:24.29 0
ふくちゃんやるじゃねえかwwww
惚れ直したぜ
135名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/23(土) 17:09:24.52 O
魔法
136名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/23(土) 17:45:39.06 0
これで二人共気づいたのね
137名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/23(土) 20:56:01.61 0
小田べチカ!
138名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/23(土) 21:33:57.59 0
やべー…ついにふくちゃんとズッキの巨乳コンビが…
139名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/23(土) 22:50:50.44 O
ブルンブルンにユサユサと肉弾相打つのか・・・
力技で押す香音の攻めを敏感な肉体を持つ聖が耐えきれば
変態マスターさゆみ譲りのテクニックを持つ聖の攻めに香音は潮を噴いて屈するしか無いのだが
勝利の女神はどちらに微笑むのか
140名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 00:00:14.01 i
     |
      | ☆ノノハヽ
     \川c ’∀´) また私の話してる
       (|   |)::::
        (γ /:::::::
         し \:::
            \
141名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 00:15:06.95 0
推測するに 小田と飛竜の魔力は同等かもと…
何かそんな気がする
142名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 01:53:16.46 0
避難所連載中のベリ編上げました

気合いがこもってきたよー
143名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 02:30:54.19 0
まーちゃんはどんな感じに導くんだろ?
144名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 05:14:42.86 i
       * ∠\`・* 。
        | /★`、 `*。
       ,。∩______フ *  
      + |||9|‘_ゝ‘) *。+゜保全の魔法っちゃよ
      `*。 ヽ、  つ *゜*
       `・+。*・' ゜⊃ +゜
       ☆   ∪? 。*゜
        `・+。*・ ゜
145名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 09:42:44.61 0
あさ
146名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 11:03:55.15 0
おはようです
続きを投稿します
147名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 11:05:43.93 0
魔法少女みずき☆マギカ7


「「ローズ・・・の夜」?・・・何なんですか、それ」

里保の質問を花音は手で制し、グラウンドの方を見下ろしながら言った。

「ひとまず、学校を離れましょう。下の生徒が騒ぎ出しているわ。・・・他の人間は「魔女」を見ることができなくても、
あなたたちの魔法は思いっきり見えていたようね」


道重邸に引き上げてきた聖たちは、花音の説明に耳を傾けた。

「「ローズクォーツの夜」・・・さっきも言ったけど、最強にして最悪の「魔女」よ。現れたら最後、辺り一面全てを破壊する。
私も、一度だけ戦ったことがあるけど、手も足も出せずに逃げ出してしまったわ」

そう言うと、花音は目を閉じながら、首を左右に振った。

「・・・そんなに、強いんですか?」

聖の質問に、さゆべぇが答えた。

「まさに「暴君」だね。今までの「魔法少女」も、花音を残して全員が「ローズクォーツの夜」に吸収されてしまったんだ」
「えっ!?」
「吸収って・・・」
「「魔法少女」たちを取り込んだあいつは、更に手がつけられない程の力を持った「魔女」になってしまった。
・・・正直、君たちが束になっても、勝算は薄いだろう」
「・・・そんなん、やってみんと分からんやん!」
148名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 11:06:33.26 0
衣梨奈の言葉に、さゆべぇははっきりと答えた。

「君たちには驚かされた。例え魔道士だったとしても、「魔法少女」でもない君たちに「魔女」が見えたり、攻撃までできるのにはね。
そして、その戦闘力は、驚愕に値する。・・・だけど、そのことを踏まえても、「ローズクォーツの夜」には遠く及ばないんだ」
「そんな・・・」

里保が唖然として呟き、その隣で猫の姿の春菜が言った。

「「ローズクォーツの夜」・・・ますます、あのアニメそのままですね。要するに、「ワルプル」・・・おっと、誰か来たようだ」
「誰も来ていないよ、はるなん・・・あっ!」

里保は、思い出したように春菜に詰め寄った。

「はるなん、道重さんたちに連絡できない?今の話が本当なら、私達だけじゃ手に負えない相手かもしれない」
「なるほど、そうですね。わかりました」

春菜が魔法のディスプレイを空中に出現させている間、香音が心配そうに聖に話しかけた。

「・・・聖ちゃん、大丈夫?なんだか、思いつめた顔をしているけど」
「・・・え?あ、うん」

聖は、自分も「魔法少女」になって、皆と一緒に戦いたいと思っていた。

・・・聖も、やっぱり皆の力になりたい。
えりぽんが私を心配してくれる気持ちは嬉しいけど・・・
やっぱり、このままじゃ、嫌!

そこまで考えて、聖は突如、思いついたことがあった。
それは、全てを解決する、とても素晴らしいアイデアで・・・
149名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 11:07:50.25 0
「聖、願い事は決まったかい?」

さゆべぇが聖に問いかけるのを、衣梨奈が口を挟んだ。

「ちょっとそこの白いの!聖に変な事言って惑わすのやめるっちゃ!」
「・・・わかった。私、「魔法少女」になる」
「聖!!」
「・・・えりぽん、聞いて」

聖は衣梨奈に落ち着いた口調で言った。

「聖、「魔法少女」になるって言ったけど、「魔女」と戦うとは言ってないよ」

その言葉に、さゆべぇは目を見開いて訊ねた。

「聖、君は一体何を・・・?」
「願い事。『「魔女」がいない世界にして』っていうのは、できる?」

それを聞いた全員が息をのみ、そのアイデアを驚いた。

「・・・なるほど、ふくちゃん!」
「さっすが聖ちゃん!その手があった!あったまいい!!」

高ぶる里保と香音の声に、花音の落ち着いた声が続いた。

「さゆべぇ・・・それは、可能なの?」
「可能では、あるね。でも・・・」
150名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 11:09:14.70 0
さゆべぇはそう答えて、首を振った。

「あの「ローズクォーズの夜」も含め、全ての「魔女」を消しさる・・・それを叶えるには、途方もない魔力を消費する。
僕の計算では、その願いを叶えた人間は、間違いなくこの世界から消滅する」
「・・・え?」

ゴ・・・ゴ・・・ゴ・・・

突然、地面が鳴り響いて、全員に緊張が走った。

「な・・・何!?」
「まさか・・・もう来たの!?」

花音の言葉に、聖たちが屋敷の外へ飛び出すと・・・

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!

夜空一面を覆うほどの、巨大な物体が飛行していた。

「でっかい!!」
「花音さん・・・あれが?」
「そう・・・あれこそ、最強の「魔女」、暴君「ローズクォーズの夜」」

その姿は、今までの「魔女」と違い、まさに「魔法使いの女性」と言い表すにふさわしかった。
巨大な人間が空に浮んでいる・・・その美しい顔は、自分以外の全てを見下していた。

「・・・聖!ここでおとなしくしてるっちゃよ!香音ちゃんも!」

衣梨奈は言い残すと、ひとりで「ローズクォーツの夜」に向かって走り出した。

「・・・えりぽん!」
「えー、私も留守番?」
151名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 11:09:44.05 0
「はるなん、道重さんは、まだ連絡とれないの!?」
「鞘師さん、それが・・・なぜか繋がらなくて」

春菜が焦っているのを横目に、花音が聖に向かって言った。

「譜久村さん。あなたが「魔法少女」になるか、どんな願いを叶えるかは、全て自分が決めることよ」
「花音さん・・・」
「後になって、後悔することのないようにね!」

そういい残すと、花音も衣梨奈を追いかけて行ってしまった。そして、里保も・・・

「うちも、行くね。香音ちゃん、はるなん、聖ちゃんを守ってね」
「里保ちゃん!」

里保が走り去ると、残された二人と二匹はただ立ち尽くしていた。

「聖ちゃん、どうする?」

その質問に聖が何も言えずにいると、香音はニッコリと笑顔を見せた。

「聖ちゃん、あんまり考えすぎなくていいと思うよ」
「香音ちゃん・・・」
「大丈夫大丈夫!どんなことがあっても、多分なんとかなるよ!」

その、根拠も何もない言葉に、聖は吹き出してしまった。

「そうね・・・香音ちゃん。はるなん、私たちも行こう!」

(続く)
152名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 11:16:09.65 0
今日はここまでです
本編や他の外伝もとても楽しみにしています

今までの自分のを読み返してみましたが誤字脱字の多さに驚きました申し訳ないです
皆さんは投稿前にチェックをどれくらいするんでしょうか?
ちなみに自分は一回しかしません(だから駄目なんですが)
153名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 12:18:12.45 0
更新乙です
さゆがどう絡んでくるか気になるな
154名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 13:40:19.18 0
フクちゃんがどう決断するのかな?巨大な暴君ってw
155名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 16:12:47.73 0
さゆべぇかぁ・・・

あの『笑顔』の作者さんだからもしかしてまた
やられた!というカラクリがあるのか!?
なんて勝手な妄想を思いついてしまった
156名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 19:38:46.56 0
おっともう夜ヤシ
157嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/24(日) 19:48:14.64 0
>>129-132より
「シルベチカ! シルベチカ! ……どこ行っちゃったのよ」

「あんたも懲りないわねえ。いもしないヤツをずっと捜してるだなんて」

「シルベチカはいるわ! あなたが忘れてるだけよ」

「はいはい、もう聞き飽きたわ」

呆れ顔のチェリーを気にすることもなく、リリーはシルベチカのことを探し続けている。

シルベチカとは一体何者なのか。
なぜリリー以外のみんなはその存在を覚えていないのか。
気になるところではあるけれど、それ以上に今の里保にも探すべき相手がいる。

まずは未だ合流できていない遥。ただにこれについては香音の助言に従い、
このまま物語の流れに身を委ねていればきっと会えるはずだと開き直ることにした。

そして、里保の本来の目的であるバンシーの存在。
以前書物の中に誘い込まれた時に遭遇したバンシーの顔を思い出そうとしてみたが、
真っ赤に泣きはらした燃えるような瞳に心を完全に奪われてしまったため、
容姿としての記憶がまともに残っていないのが悔しい。

これまで出会ってきたクランの住人の中に、もしかしたらバンシーが紛れ込んでいるかもと
注意深く観察してきたものの、残念ながらピンとくる人物には巡り会えていない。

とはいえ、ろくに手掛かりもなくほとんど直観に頼るしかない状況なので、
本当はもうバンシーと接触していながら里保が気づいていないだけという可能性もある。
もしかしたら、これまでずっとリリーのことを気にかけてくれているチェリーの正体が
実はバンシーということだって、ないとはまだ言い切れないのだから。
158嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/24(日) 19:48:43.85 0
可能性で言えば、リリーが探しているシルベチカの正体がバンシーかもしれない。
行方不明の振りをして姿を隠し、こっそりとリリーそして里保のことを観察している。
手掛かりの少ない現状では、そんな妄想でさえ完全に否定する材料がないのが悩ましい。

「何か心配ごと?」

「え?」

困り顔で考え込んでいるリリーに、一人の少女がそっと近づく。

「浮かない顔してるから」

「ええ。友達がいなくなっちゃったの。でも、どこにも見当たらなくて」

「きっと……もう会えないわ」

「え?」

「嘘よ嘘」

真顔のまま声の抑揚も少ない静かな話し方で突然そんなことを言うものだから、
まったく嘘をついているような口調には聞こえない。

「あの……」

「何?」

「ビックリしちゃった」

「何が」

「だってスノウが急に話しかけるんだもん」
159嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/24(日) 19:49:24.64 0
ベンチに独り腰かけ、静かに本を読む姿を何度か見かけたことはあったけど、
この娘の名前はスノウというのか。
硝子細工のような透明な美しさと、そして儚さを兼ね備えた少女。

「あたしがあなたに声かけちゃ悪い?」

「だって、あなたいつも独りでいて誰とも話そうとしないから」

「独りでいちゃ駄目?」

「いや、駄目なことはないけど」

「誰かと関わると、余計な思い出が増えてしまう。
思い出なんて所詮、いつかは消える……幻だもの」

「思い出が幻……」

「どうせ失うのなら、最初から手にしない方がいいのよ」

達観しているというのか、諦め顔というのか、なんとも表現しがたい
他の少女とは明らかに違う幻想的な雰囲気をまとっている。

「シルベチカを捜してるんでしょ」

「あなた、シルベチカのこと覚えているの?」

「あなただって覚えてるんでしょ」

リリー以外にシルベチカのことを知っている初めての娘。
シルベチカはもしかしてリリーの想像の中にだけいる幻の存在じゃないかなんて、
里保も密かに考えないではなかったものの、どうやら違ったようだ。
160嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/24(日) 19:49:59.69 0
「でも、みんな忘れてしまってるんだ。
まるでシルベチカなんて最初からいなかったみたいに」

「みんなはあなたがおかしいって?」

「ええ」

「じゃあ、私もおかしいのかしら」

「おかしくなんかないわ! だって、確かにシルベチカはいたんだもの」

「じゃあ、おかしいのはみんなの方?」

「……わからない」

「あたしもあなたも、繭期で頭が狂ってしまったのかしら」

確かにシルベチカのことを覚えているくせに、
そんな煙に巻く様なことを言ってリリーを困惑させる。

「ねぇスノウ。シルベチカはどこにいったの?」

「そんなの私が知るわけないわ」

「……ごめんなさい」

「またそうやって、すぐに謝る」

かと思えば、リリーの問いかけをすげなくあしらうスノウ。
なんとも捉えどころのない会話に、里保の思考も整理がつかない。
161嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/24(日) 19:50:30.97 0
「ねえリリー。シルベチカを捜すのはやめた方がいいわ」

「でも」

「シルベチカがどこに消えたのか。
それを知れば、あたし達は夢から覚めてしまうかもしれない。
それでも、あなたは知りたい?」

「夢から、覚める……」

「覚めない方がいい夢もあるのよ。たとえ、それがどんな悪夢であっても。
とにかく……シルベチカを捜すのはやめなさい」

謎めいた警句を残して立ち去るスノウの後ろ姿を、
リリーはただ呆然と見送ることしかできなかった。

シルベチカのことを覚えており、しかもリリーも知らない
なんらかの秘密を握っている神秘的な雰囲気の少女スノウ。
リリーはきっと、スノウの言葉には従わずシルベチカのことを探し続けるだろう。
それが今後の未来にどのような影響を与えていくのか。
そして、この謎の多いスノウの正体が実はバンシーだなんてことはありえるのか。

半ば放心状態で佇むリリーの後ろから、不意に重い警告の声がかかる。

「あの娘に近寄っちゃ駄目よ!」


(つづく)
162名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 19:50:57.74 0
投稿前のチェックについては書き上げてすぐ投稿するとミスが多いため
基本一日は空けて落ち着いて読み返してからにしています
それでも投稿後に失敗が見つかることはいくらでもあるのですが
163名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 19:59:19.92 0
まあ誤字脱字は俺も多いから気にしないで
164名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 21:33:14.13 0
なるほど参考になりましたありがとうございます
投稿したすぐあとに誤字を見つけるとため息が出ます
165名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 21:41:36.15 O
そんなに気にしなくても良いと思うんだけどね
フクちゃんのバストが1サイズ小さくなったならともかく
だーちゃんのバストが1サイズ大きくなっても誰も気が付かないようなもんさ
166名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/24(日) 21:57:28.90 0
作者さん更新乙なのなの
誤字脱字気にしなくて大丈夫ですよー
逆にライブで書いてる感じがしていいと思います


>>165
だーいし早寝
167名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/25(月) 00:55:16.55 0
確かにAAとAは差がないかもな
168名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/25(月) 02:30:33.37 0
おやぷみなさい
169名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/25(月) 06:04:39.10 0
あさ
170名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/25(月) 10:24:28.61 0
ぺす
171名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/25(月) 14:32:36.81 0
ひる…すぎてた
172名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/25(月) 19:19:21.11 0
173嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/25(月) 19:41:42.96 0
>>157-161より
「マリーゴールド」

リリーが振り向くと、そこにいたのは暗い瞳をした少女だった。

「だってあの娘、きっとあなたを不幸にするわ」

「大丈夫なの?」

「大丈夫って……何が?」

「だって、最近繭期の状態が良くないって」

マリーゴールドの警告については触れずに、その身体のことを心配するリリー。

「ぜん〜っぜん! 今日はすっごく調子が良いの! ほーら身体だってピンピンしてるわ!
だからホント、私なんて死んだ方がいいのよ……」

「マリーゴールドものすごく不安定だよ!!」

「ごめんなさい。繭期って……メンドクサイ」

「もう少し休んだ方が良いよ」

ハイテンションでスクワットをして健康をアピールしたかと思えば、
次の瞬間には床に倒れこみ鬱々と死を口にする。
なるほどこれが繭期をこじらせている状態なのかと、里保は呆気にとられる。
174嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/25(月) 19:42:23.46 0
「ねえ、リリー」

「何?」

「どうして私のこと心配してくれるの」

「どうしてって……。友達だもの、心配くらいするよ」

「そんなこと言ってくれるのはあなただけよ」

マリーゴールドは吸血種と人間のハーフであるダンピールとして生まれ、
そのどちらからも忌むべき存在として虐げられてきた。
このクランでもその扱いは同様で、クランの住人から石を投げられるマリーゴールドを
リリーがかばう姿を、里保は実際に目の当たりにしている。

変わり者扱いされることの多いリリーにも親しげに接してくれるチェリーまでもが、
マリーゴールドに率先して攻撃していたのには、里保も少なからずショックを受けた。
ただその時のチェリーの瞳が、何かに怯えるような、抑えきれない悲痛を訴えかけており、
普段は裏表のない様に見える彼女の中に、何かトラウマのようなものが隠れているのかと、
そんな勝手な想像をしてみたこともあったのだが。
175嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/25(月) 19:42:53.15 0
「私、あなたにお願いがあるの」

「お願い?」

「あの娘と喋らないで」

「え?」

「その何て言うか、あのね、私あなたとスノウに喋って欲しくないってゆーか、
スノウはほら、気味が悪いじゃない、いつも独りでいて、
まあ私もいつも独りだからお前が言うんじゃないって話かもしれないけど、
だから、まあ何と言うかとにかく!!
……スノウとは、話さない方が良いと思うの」

堰を切ったかように早口で言葉を紡いだかと思えば、一転して重々しく感情を込める。
これも繭期の症状からくる特徴的な喋り方なのか。

「でも……」

「お願いよリリー!! もうあの娘と喋らないで。じゃないと、私……」

「やっぱり顔色が良くないわ。あたし監督生のところに行って薬もらって」

明らかに尋常ならざるマリーゴールドの様子にその場を離れたとした瞬間、
マリーゴールドがリリーの手を掴み、一気に顔を寄せる。
176嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/25(月) 19:43:19.59 0
「……マリーゴールド」

「私ね、怖いの。どうしてだかわからないけど
あなたとスノウが話しているとどんどん不安になってくるの。
黒い塊が、私の胸の中に入り込んできて私の心を汚してくのよ」

「ねえ、やっぱり繭期の具合が良くないのよ。部屋に戻って休んだ方が」

鬼気迫る姿に圧倒されながらも、どうにか落ち着かせようするリリーだが、
その声がマリーゴールドにまともに届く様子はない。

「スノウに近づいたらあなたが不幸になる」

「!!」

マリーゴールドがリリーの身体を引き寄せ、強く抱きしめた。

「私は……。あなたに、幸せになって欲しいの」

その声は切実さとともに危うい妖艶さを伴い、リリーの耳元に迫ってくる。
危険を感じた里保が、瞬間だけでもリリーの身体を乗っ取って抵抗しようとしたその時。

今までに体験したことのない感覚に襲われ、里保が介入するその前に
リリーがマリーゴールドを突き飛ばしていた。

「ごめんなさい、あれ、あたし、どうしちゃったんだろう! ……身体が勝手に」

突き飛ばした方も突き飛ばされた方も、予想外の事態に呆然自失で一瞬固まる。
リリーの言葉通り、突き飛ばしたのはリリーの意思によるものではなかった。
まるで何かに操られて勝手に身体が動いたような不思議な感覚。
177嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/25(月) 19:43:50.98 0
「リリー……私は!」

「あああぁぁ、貧血が」

「え?」

マリーゴールドの言葉を遮るようにその場に乱入したのは、
うめきながらいきなり倒れ込んできた一人の少年だった。

「どうやら一人で歩けそうにない。申し訳ないけど、君……。
僕を医務室まで連れていってもらっても、いいかな」

言葉とは裏腹に平然と立ち上がると、リリーに接近していきなり頼み込む。

「ちょっと! 顔近い」

間近で少年の顔を見て、里保は確信した。
香音ちゃんが言ったとおり、ついに出会えた。
間違いない、どぅーが身体を借りているのはこの少年だ。

「お取り込み中のところ悪いね。この後お礼にお茶とかどう?」

状況の変化に対応できないままのマリーゴールドを残して、
リリーの手を引いて少年がその場を離れる。

こうしてようやく、里保と遥の2人がこのリリウムの世界で巡り合えたのだった。


(つづく)
178名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/25(月) 20:41:26.06 i
続きキタ━(゚∀゚)━!
やっぱ読んでてわくわくする
179名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/26(火) 00:00:50.02 0
ここの作者陣は皆さん良い話を書いてくれるものだ
180名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/26(火) 01:02:59.55 0
壁ドンくる?
181名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/26(火) 04:57:50.93 i
       * ∠\`・* 。
        | /★`、 `*。
       ,。∩______フ *  
      + |||9|‘_ゝ‘) *。+゜保全の魔法っちゃよ
      `*。 ヽ、  つ *゜*
       `・+。*・' ゜⊃ +゜
       ☆   ∪? 。*゜
        `・+。*・ ゜
182名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/26(火) 12:18:50.33 0
昼ヤシ
183名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/26(火) 16:53:56.94 0
( ^▽^)<♪
184名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/26(火) 20:06:14.82 0
石川さんだー
サンダー
185名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/26(火) 22:29:43.24 0
なんかスレが静かだね
一時期より書き込みが減っている気がするけど
規制食らってたりするのかな
186KD182249242037.au-net.ne.jp@転載は禁止:2014/08/26(火) 22:48:31.23 0
「もっと!もっと、早く!!」
里保は後ろを見ながら声をかける。

「わかってるって!そう焦らせんと!!」
衣梨奈はただ、前だけを見すえ魔力をスケボーへと注ぎ込む。


2人がいるのは広大な海の上。右も左も見渡す限り海である。空と海の碧の中に悪目立ちする黄緑色のスケボーと赤い服。

そして、2人を追うように3機の戦闘機が隊列を組んで飛んでいた。

「元はと言えば、里保が悪いっちゃん!里保が今日も寝坊するから」

「それを言うなら、えりぽんも似たようなもんでしょ!集合場所で、ヘッドホンしててウチが、来たの気づかなかったんだから。」

「2人とも…そんなこと言っている場合ではなさそうですよ?」

「「は、はるなん!!」」
187名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/26(火) 22:53:02.11 0
やらかした

名前欄がそのままだった
ということでダサいスタートになりました
魔法使いえりぽん海外編です本格的なのは今の
外伝シリーズが一段落ついたらですかね
188KD121109154046.ppp-bb.dion.ne.jp@転載は禁止:2014/08/26(火) 23:08:23.14 I
本編が好きすぎて更新全裸待機
189名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/26(火) 23:14:02.19 0
気持ちは分かるが服着ろよw
190名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/26(火) 23:19:32.40 O
アイアンマンの1シーンを彷彿とさせるなw
スケボーが2人乗りで空飛んでたりすりゃスクランブルしてきたジェット戦闘機のパイロットも驚くだろうなw
おまけに落とされたりしたら一生トラウマになるぞww
191名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/26(火) 23:27:55.08 0
ラプターかライトニングか
いや架空でいいか
192名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/26(火) 23:41:49.00 0
実は海外編の作者は戦国物語の作者だったり…

というね…どうもお酒を飲むと外伝を書きたくなる悪いくせがあります

ニューヨーク講演に合わせたいな
193名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 03:46:36.34 0
おやすみヤシ
194名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 07:12:30.48 0


「若者、と言っても二十七では大して若くないか。男の嫁になった女は―私の母のことだが―遠国の知り合いの医者の家から嫁いで来たのだが、実はその家の娘では無く、女芸人一座から送り込まれた間者だったのだ。
お圭という娘は思いの外、男に気を許していたようで、自らの身の上だけでなく仲間の事も多く話していた。その中には人に知られては不味い事もあったらしく、誰に話したかを知るためにあれからずっと道重家を探って居たのだ。
取り敢えずは使用人として何人か屋敷に潜り込ませる事は出来たが、男の身近にいつも居られる立場では無い。そこで思い切って、嫁として女を送り込む事にしたわけだ。
婚儀は滞り無く行われた。嫁と共に医師夫婦と何人かの親戚の者が付き添いで来たが、彼等は本物の知り合いであった。女は五年前にその家族に拾われて養女になったのだが、勿論偶然では無い。
そうまでして隠したい事とは何なのか? お前も知りたいとは思わぬか?」
195名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 07:14:15.64 0


父は義緒の応えは期待しては無かったようで、直ぐに後を続けた。
「女は正体を隠したまま三人の子供を儲けた。誰の目から見ても良妻賢母であった。嫁入り前に仕込まれたようで、医者の妻の役も立派に熟した。そうして誰にも疑われる事無く時は過ぎて行った。
その間、男が誰かに秘密を漏らした事は無かった。自分の妻にもだ。お圭との約束だったのだろう。
女は男の誠実さを身に知らされたが、同時に妻として秘密を打ち明けられない事に一抹の淋しさも覚えていた。しかし子育てや日々の生活で忙しく、その想いは日が経つに連れて薄れて行った。
そんな女を息子の私から見ると、時々不気味に思う事があった。母には嘘が通じなかったのだ。まるで心を読まれているようだった。恐らく実際そうしていたのだろう。間者にされたのも其のせいかも知れん。
だが、そう感じていたのは私だけだったらしい。屋敷の者は誰一人疑っていなかった。まあ、母に嘘を付くのが私だけだったからかも知れんがな。子供の頃は良く嘘を付いておったわ。
今も私が嘘を言っていると疑ってるのでは無いかな? 誓って言うが嘘では無い。
本当の処は、母が気を許していたのが私だけだったと言う事だ。他の者の前では決してそういう面は見せなかったのだ。
兄弟の中で私が一番母の血が濃いからだと母は言っていたが、最初に生まれた子供だからと言うのが一番の理由だろう。周りの者に自分を偽って暮らすのは四六時中息を殺してるようなもの。私は母の唯一の息抜きだったのだ」
196名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 07:16:54.26 0


「私は元服しても中々修行に出して貰えず、都に上がるのを許されたのは二十四歳になってからだった。親族、特に都の大叔父が他の兄弟にも働きかけて反対していたのだ。
道重家の頭首とは言え、一族の恥と烙印を押された父の立場は弱いものだった。
私は事情を知らなかったので父に都行きを催促しては困らして居たわけだが、もしそうしていなかったら都行きは無かったかも知れん。親戚を説得するのはそれ程大変だったのだ。
だが、母が父の尻を叩いて説得を続けさせたらしい。そして最後にはお圭との事は父の若気の至りと言う事で親類も渋々承知した。
都に上がると決まったとき、出立前の父の忠告は要領を得ない物だった。その意味は、都に上がると直ぐに気付かされることに成ったがの。
都で暮らし始めると直ぐに父の噂を耳にした。物好きがわざわざ教えて呉れたことも一度や二度では無い。彼等の話では父は無類の女好きにされていて、私は苦笑するしか無かった。
父は噂を知っていたのであろう。あれこれ聞いても鵜呑みにするな、とだけ言っておった。しかしそんな忠告は無用だった。父を光源氏のように言われて信じろと言う方が無理だ。私自身は直ぐに噂を聞き流せるようになった。
だが、昔の話を蒸し返されて大叔父の家の者が快く思って無いのは、日頃の言動から察せられた。廓に通うのにも一々気を遣ったものよ」
197名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 07:18:38.29 0
廿

「三十年以上経っても人々の記憶に残っていたのは、あれからも女一座が毎年二度の興行を打っていたからだ。その間に何度も恋沙汰があって、その度に父の事が引合いにされたようだ。
そんな事もあって、身分のある者は一座と関わらなくなり、興行の場所も逗留も町の外れに移っていた。だから普通なら私が彼等と会う機会は無かったのだ。
しかし大叔父がろくに患者を診させてくれぬから暇を持て余す。家に居ても腹が立つから外に出掛ける事が多くなった。
大叔父からは女一座に近付かぬように言われていたが、禁じられるとしたくなるのは世の常。何度か知らぬ振りをして側を通ってみた。
それは葦簀(よしず)掛けの急ごしらえの小屋だった。半日掛けて建てたり仕舞ったりする小屋で、車に載せて一座と共に移動するのだ。外に漏れて来る声から判断すると、大層繁盛しているようだった。
流石に中に入ったり一座の者と口をきくのは躊躇われた。小屋の近くを通っただけで家の者に嫌味を言われたから、共の者が告げ口しておったのは間違い無い。中に入りでもしたら故郷に帰らせられるのは必定。危ない橋を渡る気にはなれなかった。
それに元々大して関心があった訳では無いから、それ以上探るのは辞めにした。父がいた頃と同じ者が残っていたとは思えなかったしな。それよりも都の近くの薬草を調べるのに忙しかったのだ」

(続く)
198名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 07:24:41.79 0
なんと
各作品と作者さん被ってるのはどぅーなってんだろう
本編、リリウム
戦国、海外
笑顔、魔法少女
かな?
199名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 07:40:17.52 0
>>198

あとまーどぅー戦国の人はべり外伝もですよね

でも本編の作者さんがリリウムを書いてるんですか
気付かなかった
200名無し募集中。。。@転載は禁止@転載は禁止:2014/08/27(水) 08:14:23.80 0
リリウム作者さんは「シュワポクが入れ替わったら」の作者さんなのではないかとふんでるのですが
201名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 08:25:45.24 0
>>199
間違ってたらごめんなさい
202名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 09:09:17.35 0
りほえり+はるなんの飛行シーンは1個構想がありましたが他の方のも楽しみ
203名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 10:23:26.07 i
>>200
めっちゃなつかしい・・・あれ最高に面白かったよなあ
このスレじゃないやつだよね?
204名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 11:14:05.08 0
管制機かCICや追撃機のコードネームの方向性はどこだろう
205名無し募集中。。。@転載は禁止@転載は禁止:2014/08/27(水) 12:17:33.38 0
>>203
そうです
スレ違いですが今だに続編を心待ちにしています
本編は完結したけど
206名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 14:50:43.49 0
兄重外伝も俺は楽しみだったりする
スレ的に人気がないのはわかるがw
207名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 15:01:53.13 0
魔法少女みずき☆マギカ8


先に行った衣梨奈たちを追いかけて、二人と二匹も走り出した。
空に浮ぶ巨大な女性の姿を見ながら、春菜は身震いをした。

「あんなに巨大な存在が浮遊しているのに、この地区の方たちは全く気付かないなんて・・・」
「「魔法少女」の素質を持つ者でなければ、魔道士だろうが一般人だろうが認識できないからね。あれが見える君が特殊なんだよ」
「・・・あっ、あれ!」

香音の声に聖が前方を見ると、「ローズクォーツの夜」の真下まで来た衣梨奈たちが敵を見上げていた。

「えりの攻撃、あの高さじゃ届かんし!」
「うちが、やってみる!」

里保が魔力を練りはじめ、横で花音が巨大な砲台を出現させた。

「マロ・フィナーレ!」
「はあああああ!!」

里保の電撃と花音の砲撃が同時に放たれ、二つの閃光が「ローズクォーツの夜」に直撃した。
しかし・・・

「効いてない!?」

何事もなかったかのように無傷の敵を見て、花音が息を呑んだ。

「やっぱり・・・この程度じゃ、ダメージを与えられない」
208名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 15:04:06.24 0
「・・・里保!」

衣梨奈が呼びかけると、里保はそれだけで言いたい事がわかった。
里保は頷くと、衣梨奈の後ろに回ってその体を抱えて、一緒に宙に浮き始めた。
衣梨奈が抱えられたまま魔力を腕に込める。そして・・・

「うりゃああああああああ!!!」

里保の浮遊で敵の胸元に飛び込むと同時に、正拳突きを繰り出した。
その拳が「魔女」の体に当たった瞬間・・・

「えっ!?」

衣梨奈の拳を、「ローズクォーツの夜」の手が受け止めたのだ。
驚いて空中で硬直する二人を、その手が力を込め・・・弾いた。

「・・・デコピン!?」
「きゃあああああああ!!」

弾かれて後ろに飛ぶ二人を、跳躍して先回りした花音が受け止めた。

「二人とも、大丈夫?」
「福田さん・・・助かりました」
「いったぁ・・・なんてことしよぅ、あいつ!」
「まいったわね・・・どうやらあなたたちの助けがあっても、焼け石に水みたいね」

途方にくれる三人に、到着した聖たちが駆け寄った。

「・・・聖!くんなって言ったやろ!!」
「えりぽん、聞いて!」

聖は、衣梨奈に対して真剣な目を向けながら叫んだ。
209名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 15:05:10.41 0
「聖も、えりぽんの・・・皆の力になりたいよ!えりぽんたちと、同じ目線で戦いたいよ!!」
「聖・・・」
「聖にだって、何かできるかも知れない!だから・・・だから、一緒にいさせてよ!!」

その言葉に、衣梨奈は唖然として聖を見つめるだけだった。
その様子を見て、香音も真剣な顔で言った。

「えりちゃん、聖ちゃんが自分で決めたことだよ。それに、私もやっぱり戦いたいよ」
「香音ちゃん・・・」

香音の言葉に、衣梨奈は視線を伏せて呟いた。

「でも・・・えりは、二人が心配で、たまらんっちゃ」
「えりぽん・・・うちも、二人が心配だよ」

うつむく衣梨奈に、里保も優しく声をかけた。

「でも、うちも二人と一緒に戦いたいよ。大切な友達だけど、「仲間」でもあるんだもん」
「里保・・・」

衣梨奈は、しばらく無言で皆を見ていたが・・・

「・・・わかったっちゃ」
「えりぽん!?」
「皆で、あいつをぶっとばしてやるっちゃよ!!」

衣梨奈の熱い笑顔に、聖は、胸が高鳴って満たされるのを感じた。

・・・えりぽん!
良かった・・・

「・・・でも、問題はどうやってぶっとばすか、よね」
210名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 15:06:06.93 0
花音の言葉に全員が空を見上げると、「ローズクォーツの夜」は一同を見下しながら浮遊し、その表情は余裕に満ちていた。

「くっそー、あいつドヤりやがって!・・・でも、なんで何もしてこないんだろう?」
「・・・どうやら、吸収する順番を考えているようだね」

さゆべぇの不吉な台詞を聞いて、香音はあ、そうと答えた。

「・・・あっ!繋がった!!」

突然の声に全員が振り向くと、春菜が魔法のディスプレイに向けて話し込んでいた。

「あっ道重さん!突然すみません!こっちは大変なことになっていて!助けて欲しいんです!!・・・・・・・・・・え?」

春菜は、さゆみの声を聞きながら、唖然とした表情になっていった。

「・・・あ、あの・・・道重さん・・・・道重さん!!」

どうやら通信が切れたらしく、暗い顔をしてこちらに戻ってきた春菜に、里保が慌てて訊いた。

「はるなん、どうしたの?道重さんは?」
「・・・道重さんは、来ません」
「そんな・・・もしかして、あっちでも何かあったの!?」

里保の質問に、春菜は首を左右に振って答えた。

「どうやら・・・あの3人が一緒に露天風呂に入ってくれないらしくて、ふてくされてらっしゃるらしいんです」
「・・・・・・・・・・・・・」
「「さゆみ、つまらないから寝る」って・・・だから、来ません」
211名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 15:07:21.21 0
言葉を失った里保に、衣梨奈は笑いながら語りかけた。

「ま、それが道重さんっちゃ」
「おい!!」
「もう、えりたちだけでなんとかするしかないっちゃね」

里保をなだめながら、衣梨奈は皆を見渡した。

「何か、いい方法はないやろか」

皆がうーんと悩む中、里保が香音を見て言った。

「そういえば、香音ちゃんの魔法、前に見たときの魔力量なら、もしかするとあいつにダメージを与えられるかもしれない」

その言葉に、香音は首を左右に振りながら答えた。

「えー、でも私の場合はえりちゃんと同じで近距離タイプだから届かないし」
「だったらうちが、えりぽんと同じように抱えて飛んでいけば・・・」
「あ、なるほど」
「・・・でも、鈴木さんの魔法は10秒程度しか発動しないはずよね?万が一、相手に届く前に魔法が切れたら・・・」

花音の言葉に、里保は黙り込んだ。しかし・・・

「あああああ!いいことを思いついたあ!!」

香音の叫びに、全員が驚いた。

「ど、どうしたの?香音ちゃん」
「福田さん!!」
212名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 15:08:14.45 0
香音が花音の耳元でごにょごにょ囁くと、花音は頷いて立ち上がった。

「やってみる価値はありそうね」

花音は目の前に砲台を出現させた。そして・・・

「ちょっ!香音ちゃん!?」

その砲台に香音が入り込んでいくのを見て、全員が唖然とした。
砲台から顔だけを出しながら、香音が満面の笑みでこう言った。

「名づけて、「ダブルかのん・キャノン」!!この砲撃ならば、一瞬であのドヤ顔の前まで近づけるわ!完璧な計算!!」

そして、砲台の中で魔力を発動させると、腕を変化させたまま叫んだ。

「今です、福田さん!!」

花音は砲台の向きを空にいる「魔女」に合わせると・・・

「マロ・フィナーレ!!」

香音ごと、砲撃した。
次の瞬間、香音は「ローズクォーツの夜」の顔の前まで飛ばされた。

「香音ちゃん!!」
「計算通り!くらえ、ドヤ顔!!!!」

そして・・・

「・・・あれ?」

そのまま、「魔女」の顔の横をかすめると、夜空へ消えていった。
213名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 15:09:06.84 0
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・香音ちゃん?」

里保の呟きに、花音は目を閉じて髪をかきあげながら言った。

「命中率までは、計算に入れてなかったわね」
「うおぃ!!!」
「多分、大丈夫よ。宇宙までは行ってない・・・はずだから。多分ね」
「何か来きますよ!?」

春菜の声に、一同が慌てて空を見上げると、「ローズクォーツの夜」の両肩から、沢山の何かが飛び出してくるのが見えた。

「あ・・・かわいい」
「何あれ!?」

その大群は、一つ一つが可愛らしい妖精のような姿をしていて、何かを呟きながらこちらに向かってきていた。

『がんばりん!がんばりん!』
『がんばりん!がんばりん!』

「あれは、「ローズクォーツの夜」の使い魔、その名も「コピンク」。見た目以上にやっかいな相手なんだ!」

さゆべぇの説明に、花音がためらうことなく攻撃を行った。

「マロ・フィナーレ!」

その砲撃で「コピンク」は数十匹が消え去った。しかし・・・

「駄目だわ!数が多すぎる!!」
214名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 15:10:03.26 0
里保も電撃を放つが、倒しても倒しても、その後ろから新しい援軍が続いていく。
そのうちに周りを囲まれしまい、一同はその場から動けなくなってしまった。

『がんばりん!がんばりん!』
『がんばりん!がんばりん!』

「きゃっ!」
「このままじゃ、皆捕まっちゃうよ!!」

里保の叫びに、衣梨奈は魔力を込めた手足で応戦した。

「皆に、近づくな・・・うわ!!」

衣梨奈の後ろから、沢山の「コピンク」がのしかかった。
倒れこんだ衣梨奈に続き、里保と花音、そして春菜も動けなくなってしまった。

「ちょっと、放しなさい!」
「きゃあああ!!」
「あ!私は関係ないですよ!ただの黒猫ですから・・・あっ尻尾つかまないで!ぐぇ」
「・・・皆!!」

聖は叫んで、呆然と立ち尽くした。

「なんで・・・私は、掴まれないの?」
「それは、君がまだ「魔法少女」としての契約を結んでないからだよ」

(続く)
215名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 15:11:25.45 0
とりあえずここまでです
後でもう少し投稿する予定ですがさる回避です
216名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 15:14:56.53 0
ほい
217名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 16:38:55.78 0
では続きを登校します
00分をまわったのでさるにはならないはず・・・
218名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 16:40:58.44 0
魔法少女みずき☆マギカ9


「さゆべぇ!?」

聖と同じく「コピンク」に捕まっていないさゆべぇは、聖の顔を見上げながら言った。

「今からあの「コピンク」たちは、「ローズクォーツの夜」の為に彼女らから魔力を吸収していく。
魔力を限界まで吸収されれば、君の仲間たちはただでは済まない。彼女らを助けたければ、君が「魔法少女」になるしかないんだ」

その言葉が終わらないうちに、「コピンク」たちは次第に輝きだした。そして・・・

「あ・・・力が抜ける・・・」
「やばい・・・っちゃ」
「皆!!」

段々精気を失っていく声に、聖が悲鳴を上げた。

みんなが・・・やられちゃう!

「さあ、聖。僕と契約しよう」
「・・・わかったわ」

聖は決意した目で、さゆべぇを見つめた。

「私、「魔法少女」として契約します」
「・・・みずき・・・」

衣梨奈の呻きに、聖は心の中で叫んだ。

えりぽん!
今助けるからね!!
219名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 16:42:05.75 0
さゆべぇは目を瞑り、念を込めた。
すると聖の体が輝きだし・・・

「きゃっ!」
「さあ、これで契約は結んだ。あとは、君が願い事を唱えれば、すぐに「魔法少女」に変身できるよ」

その言葉に、聖は頷いた。

「さあ聞かせてくれ。君の願い事は、なんだい?」
「私の・・・願い事は・・・」

聖は、息を大きく吸ってから、はっきり答えた。


「この世界から、「魔女」を消し去って欲しい」


「みずきっ!!」

衣梨奈の驚愕した叫びが響き、それにさゆべぇの戸惑いの声も続いた。

「・・・そんな・・・その願い事をすれば、君は・・・」

次の瞬間、「コピンク」たちが一斉に腕を放し、空中へ溶けていくのが見えた。
そして・・・

ごごごごごごごごごご!!!!

空に浮んでいた「ローズクォーツの夜」が、苦悶の表情を見せながら震えだした。
220名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 16:43:24.96 0
「・・・消えていく・・・」

花音の声に全員が見上げる中、最強の「魔女」は、その存在を消滅させた。

「良かった・・・これで・・・」

聖の呟きに、体を開放された衣梨奈が立ち上がった。

「聖っ!!!」
「ふくちゃん!」「譜久村さん!」

自分の体が透け始めたのを見て、聖は微笑んだ。

私、消えるんだ。
仕方ないね・・・

聖に抱きつこうとして、そのまま触る事ができずに素通りしてしまった衣梨奈は、涙声で叫んだ。

「聖のばか!ばか!大ばか!!なんてことしよーと!!!」
「ふくちゃん!!」

里保や春菜、そして花音が駆け寄るのを見ながら、聖はホッした。

皆・・・無事でよかった。
私・・・私なんかでも。
皆を、守ることができたよ。

えりぽん・・・

涙を流しながら聖を見つめる衣梨奈に、聖はゆっくりと話しかけた。

「えりぽん・・・聖、嬉しいんだ。えりぽんを救えて」
221名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 16:44:04.02 0
「聖・・・」
「えりぽん・・・今までありがとう」

そう言うと、聖の体が輝きだした。

「聖!!」
「聖ね・・・ホントは、えりぽんの事・・・」

その言葉を、聖は最後まで発することは出来なかった。
光が消えた後、そこには聖の姿はなかった。

「ふくちゃん!?」
「譜久村さん!」

里保たちの涙声を聞きながら、衣梨奈は崩れ落ちて、叫んだ。

「聖のばかああああああああああああああああああああ!!!!!!」

そして・・・

世界が、光に飲み込まれた。



「・・・え?」

聖が目を覚ますと、そこは自分の部屋のベッドの上だった。

「・・・夢?」
222名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 16:45:00.69 0
上半身だけ起こして息を吐き出すと、今見た夢が蘇ってくる。

「すごいリアルな夢だったな・・・」

そう呟きながら、聖は思った。

でも、夢で良かった。
私、この世界から消えてなくなるところだった。

そして・・・急に赤くなると、布団に顔を突っ込んだ。

私・・・もしかして、言った?
えりぽんに・・・私の気持ち、言っちゃった?

聖はベッドの上に立ち上がって、頭を振った。

「言ってない!言ってない!セーフ!!」


朝、待ち合わせの場所で待っていると、香音が手を振りながらやってきた。

「おはよう、聖ちゃん」
「おはよう香音ちゃん」

二人は学校に向けて歩きだした。

「そういえば、昨日さあ」
「うん」
「へんな夢みちゃって」
「・・・え?」
223名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 16:45:43.15 0
聖が驚いた顔をしていると、香音は前を向いたまま話を続けた。

「なんか、私や聖ちゃんが魔法を使えるようになるっていう設定で、しかもなんかバケモノと戦ってたんだよね」
「・・・そう」
「なんか、すごいリアルな夢でさあ・・・」
「香音ちゃん・・・」

立ち止まった聖を、振り向いた香音は不思議そうに見つめた。

「あれっ?どうしたの聖ちゃん」
「その夢、最後どうなったの?」
「えー?」

香音はその質問に、思い出しながら答えた。

「えーと、確か・・・すごい強いのが出てきて・・・で、私はなぜか・・・」
「うん」
「最後、大気圏に突入してた」

聖は一瞬ぽかんとして、すぐに吹き出してしまった。

「ね、へんな夢でしょ?」
「うん、そうだね」

二人は再び歩き出した。暑さで、汗が噴出してくる。

「あっつぅぅぅぅぅぅい!!」
「朝から、暑いねぇ」

駄菓子屋の横の自動販売機でジュースを買うと、二人はその場で飲み始めた。
224名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 16:46:27.92 0
「・・・そういえば、えりぽんと里保ちゃんは?」

聖が訊くと、香音は少し考えて答えた。

「えっと確か、今日は朝から魔法の特訓をするから、学校を少し遅刻するって言ってたね」
「そうなんだ・・・」

聖は、手元のジュースの缶を見つめながら、呟いた。

「ねえ・・・香音ちゃん」
「ん?何?」
「私たちも、見に行こうか、特訓」
「は?」

聖の言葉に、香音は慌てて返した。

「今から行くの?私達も遅刻しちゃうじゃん。それに、私達は魔法を使えないし・・・」
「そんなの、関係ないよ!」

笑顔で言う聖を、香音は驚いて見つめた。

「聖ちゃん・・・」
「私たちが魔法を使おうが使えなかろうが、私達は「仲間」でしょ!」

そう言って、聖は思った。
225名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 16:46:59.93 0
そう。
私に必要だったのは。
魔法を使える力じゃなくて・・・

勇気だったんだ!

聖の顔を見つめていた香音は、フッ笑うと・・・

「そうだね、行こう!皆、一緒がいいもんね!!」

そう言って、溢れんばかりの笑顔を作った。

缶をゴミ箱へ投げ捨て、二人は、来た道を走りながら戻っていった。

(おしまい)
226名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 16:48:50.62 0
おしまいです。やれやれ・・・

今まで読んでくれた方本当にありがとうございました
227名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 17:48:11.50 0
お疲れ様でした
元ネタをよく知らないから案外あっさり目な結末だと感じたけど
コメディ調のお話だし綺麗なまとめ方だし
変にいじくりまわさない方が正解なんでしょうね

さゆが物語のキーになるのではと勝手に思い込んで
魔女と大魔女の繋がりとか名前から連想で
さゆべぇの正体がさゆじゃないかとか色々妄想してたんですがw

ともあれ長いこと楽しませてくれてありがとう
『笑顔』の続編もまた楽しみにしてます!
228名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 18:45:44.80 0
乙です
ふくちゃんのくだりいいですね
映像化したらいいだろうなぁ
お話的にはいろいろ作れそうな終わりかたなので勝手に期待してみたりw
229名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 19:35:45.16 i
俺も元ネタ全く知らな買ったけど楽しかったす!
230名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 21:44:29.53 0
魔法少女シリーズ面白かったです!
作者さん乙でした

RPG風のゲームはギリギリ31日にアップできそうです
あと、動画投稿の転載して下さった方ありがとうございました!

>>200
まさかそのスレの名前がここで出てくるとは…
本スレ落ちた後に避難所に外伝小説投稿してましたw
231名無し募集中。。。@転載は禁止@転載は禁止:2014/08/27(水) 22:10:38.04 0
>>230
マジですか!
外伝もEvernoteに保存してたまに読み直してます
232嘆きの先にある光・作者@転載は禁止:2014/08/27(水) 22:29:32.29 0
>>198
作品被りの件で話題が出ていたので一応簡単に・・・

本編の作者さんと間違えられるのは光栄というか恐れ多い限りですが残念ながら別人です
ついでにシュワポク入れ替わりも好きな作品でしたが自分ではないです
現在書いているのは予想以上に大作になってしまったリリウム編一つだけですし
このスレ以外でSSはほとんど書いていません
ちなみに以前は今は亡き生ガキホテルスレの避難所でよく投下させてもらっていました

リリウム編の続きは明日辺りにまた投下したいと思います
233名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/27(水) 23:35:36.00 O
>>232
あそこで書いてたということは・・・・・
リリウム編の次はムフフ編ですなw
234まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/08/28(木) 00:30:05.22 0
本当にいろいろな人が集まっていて楽しいですね

ということで続き行きます
235まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/08/28(木) 00:33:20.05 0
(ここで一気に片をつける…。行くぞ…。)

ユラユラと遥の体から陽炎のように魔力が立ち上る。
自分でも何故こんなに一生懸命になっているのかわからない。
ただ、譜久を思う香の気持ち、小田の気持ち。

それぞれの気持ちは遥にも通じるものがあった。
何が何でも護りたいという想い……。

(ハルだってまーちゃん護るんなら何でもするし…。)

「工藤!まだか!」

「OKっす!2人ともありがとうございます。
 しっかり水分とってください。」


遥は再び、前線へと出ると前を睨み付ける。

敵の中で遥の魔力が急に高まっているのを感知したのだろうか。
急に一群が動きを止め、じりじりと下がり始めた。

「もう、遅いよ!

 意外とハル、ケンカ強いんだから。」

譜久・香・小田が固唾を呑んで見守る中、そう一声言うと、遥は一気に自分の魔力を解放した。

突如訪れた静寂。今まであんなに自分達に向かっていた声がやむ。
236まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/08/28(木) 00:38:15.72 0
3人が恐る恐る辺りを見回して見ると誰一人立ち上がっているものは居なかった。

否、立ち上がれる者が居なかった。
遥はその様子を見て満足げに手を宙に上げる。


その先には巨大な水の球体があった。
遥が小さく呪文を呟くとその球体は破裂し、消滅した。

「さぁ、これでしばらくアイツら動けないっす。
 先進みましょう。」


「くどぅー………お前一体何を…。」

まるで倒れているのが当たり前とでもいうように振る舞う遥に訳を尋ねようと立ち上がろうとした香の身体がフラつく。
慌てて遥はその身体を支えた。

「だから言ったじゃないスか。
 きちんと水分取って下さいって。」


再び香を座らせた遥は館を出る前に汲んでおいた水に粉末状の物を入れて香へ差し出す。


「人間って意外にデリケートなんっすよ。
 体内の水分量が少しバランス崩しただけでも不調になるっす。
 まぁ、あんまし褒められた物じゃないっすけどハルの得意技です。」

顔を少し赤らめながら遥は頭に手をやった。
237まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/08/28(木) 00:39:49.29 0
道重領まではあと僅か………。

遥は少し使いすぎた魔力を回復させたいと考えていた。
川の流れを鑑みて自分の魔法はそろそろ任務完了のようだ。

「ハルちょっと寝ますね。魔力さっきのですっからかんだ。」

そう告げ、遥は横になる。
我ながら、少し我が儘かなとは感じたが、魔力がないと戦えない以上ある程度の休息は必要であった。


(異変が起きれば、気づくっしょ…。)


遥が小さな寝息を立て始めると、残った3人も誰にも見つからないよう自分達の上に茣蓙をかけ眠りについた。

舟はゆっくり、だが、確実に進んで行く。

それぞれの思いを道重領へ運ぶため……。
そして月は蒼く静かにその光を地上へと届けている。
238まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/08/28(木) 00:44:31.34 0
保と衣が風呂へ入っている間、さゆみは屋根へと登り夜空を眺めていた。


世の中では、『天動説』か『地動説』かで大変な賑わいを見せていた。
だが、今も昔もさゆみにとってどうでも良い話題なのは間違いなかった。


いつの時代も自分が可愛くそして楽しく生きられればと思っている。

「ふふふっ、佐藤のいる世界ではもう決着はついてるのかしらね?」

今のさゆみの関心事は『違う世界』からやってきた優樹と、もう1人のツレをどうやって元居た世界に返すかにあった。


今の魔法研究で時空間の移動はまだまだ未知の領域であった。
さゆみ自身理論を組み立てようと思えば、できるのだがそれを実際に実用するとなると話は別である。
恐らく長い年月を費やすだろう。

またそれとは別の、一つの可能性がある。
それが、満月であった。満月と満月の世界同士は繋ぐことができると考えられている。


強力な魔力を満月に注ぎ込めば扉を開くことは可能だった。
だが、出口が無ければそれは無意味なこと。そして、今月は十六夜。

そう1人呟くと、下を覗き込み、優樹を呼ぶ。
239まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/08/28(木) 00:50:22.27 0
「なんですかーーみにしげさ…」

突如、優樹の声がやむ。そしてさゆみも山の遥か彼方を見やる。

今確かに強力な魔力が山の向こうから感じた。
この世界にはない魔力…。


「どぅーだ!!
 
 どぅーーーーーーーーー!!!」


優樹がうれしそうに大声ではしゃぐ。

(なるほど…。これは扉が開くわけだわね)

そうさゆみはつぶやくと、もう一度夜空に浮かぶ月を見上げる。

「ちょっと、頑張っちゃおうかなぁ」

そんなさゆみの独り言は夜の闇へと吸い込まれていった。


――満月まであと2日――
続く
240まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/08/28(木) 00:52:40.05 0
意外とストックなくてあせったw

続きをがんばります
べり編もがんばります
海外編も一生懸命書きます
241名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 01:00:17.35 0
乙です
やっぱりどぅー強いな
いろいろつながったw
242名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 07:39:17.62 0
ノノ刀e _l‘)<たまに今回みたいに訳のわからない話ができあがります

从*・ 。.・)<実を言いますと、調子に乗って外伝をもとにした漫画を描こうとしたことがありました。
      みなさん素敵なお話を書かれるので、ついムラムラと。
      でも「笑顔」のどんでん返しを見て、心底描かなくて助かった、と思いました。
      調子に乗って描いてたら、飯窪さんと黒猫という謎の漫画になってしまうばかりか、
      作者さんの邪魔になるところでした。危なかった・・・。
      

http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org5281710.jpg
243名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 08:20:37.54 0
www
244名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 08:36:28.79 0
保存ぬしました
私も黒猫が2匹になるところでした
いえ途中まで2匹でした
245名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 09:40:32.71 0
>>242
9期にあって10期に足りないものですかねぇ・・・ww
246名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 09:45:45.69 0
よく見たら黴ヤシが飛んでるしwww
247名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 10:24:56.21 0
>>240
マイペースでOK
その方が長く楽しめるので
248名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 12:03:07.20 0
ピカソか誰かの絵にその小田ちゃんみたいなのあったかもw
つーか怖いw
249名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 12:31:36.07 0
>>242
ナマタどこだと思ったらww
やっつーじゃねぇよww
250名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 14:00:14.44 0
一コマ目の尻尾みたいなのはなんだろう?
251名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 14:25:19.26 0
ナマちゃんっていう名前の生田のチンコ
252名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 17:13:40.30 0
どぅーくそイケメンwww
253名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 17:22:57.82 0
安定のBOIN
254嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/28(木) 19:44:09.13 0
>>173-177より
しばらくは為すがままに少年に手を引かれていたリリーだったが、
ようやく思考が戻ってきたのか慌てて静止の声をかける。

「ちょっと待って! ねえ、ねえ! ねえ待ってってば!!」

「何」

「あなた誰よ」

「あれ、自己紹介まだだっけ。……まあいいや。
僕はファルスだ。はじめまして」

やけに含みのある思わせぶりな口調が気にはなったが、
里保もようやくこの少年の名前を知ることができた。
問題は遥がちゃんと記憶を取り戻せているかだけど、一体どうやって確認すべきか。

「いきなりどういうつもりよ」

「何だよ、せっかく助けてあげたってのに。そんなに怒ることないだろ」

「どういうこと?」

「さっきの彼女、君のこと噛もうとしていた」

マリーゴールドの声が耳元に迫ってきた時に感じた危険は、そういうことだったのか。
255嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/28(木) 19:44:42.16 0
「それが何だっていうのよ」

「はあ。繭期のヴァンプは物忘れが激しくていけないや。
僕達ヴァンプが同族を噛むということが、どういうことかも忘れるなんて」

「噛んだらどうだっていうのよ」

「イニシアチブだよ」

「イニシアチブ……」

どこかで聞いた単語。記憶を掘り返していくと、さゆみの言葉が蘇ってきた。

「吸血種同士で相手を噛むと、イニシアチブという主従関係が生じて
噛まれた相手が絶対服従となってしまう特殊能力がある」

つまりマリーゴールドはリリーを服従させ、支配下に置きたかったということか。

「はっ! 思い出したわ」

「これだから繭期は厄介なんだ」

「でも、どうしてマリーゴールドはあたしを噛もうとしたのよ」

「それは……。君の血が、美味しそうだからじゃないかなぁ?」
256嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/28(木) 19:45:12.73 0
気障に決めて軽やかにリリーの顎を撫でるファルス。
その瞬間、リリーが繰り出したパンチが見事にファルスの顔面に炸裂した。

「痛って! 何すんだよ!!」

「それはこっちの台詞よ!」

「君はもう少しレディの品というものを学んだ方がいい!」

「あなたのような下品な人に言われたくないわ!」

「僕のどこが下品だよ!」

「レディの身体に断りもなく触れるなんて信じられない!」

「ちょっと触っただけじゃないか!」

「ちょっと触っただけでも駄目なの!」

普段は比較的落ち着いた雰囲気のリリーがこれだけ怒りを露わにするとは、
里保もこんな姿を見るのは初めてだった。

「もしかして……照れてるの?」

「はあ? 何言ってるの。……用がないなら、あたし帰るわよ」
257嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/28(木) 19:45:45.39 0
ニヤリと笑ったファルスの意表をつく一言に、明らかに動揺するリリー。
そそくさと立ち去ろうとするところをファルスが一気に距離を詰め、
リリーを壁際に追い詰めると右手を壁に力強く叩きつけた。

「はっ、壁ドン!」

初めての体験に凍りつくリリーに、ファルスが嗜虐的な笑みを浮かべて顔を寄せる。

『鞘師さん! 意識を取り戻せていますか?』

そこでファルスの口から漏れた言葉は、意外にも遥のものだった。
どぅーもちゃんと意識を回復できてたんだと安堵するとともに、
一瞬だけ宿主の口を借りて話すという方法も可能なのかと感心する。

『うん、亜佑美ちゃんのおかげで目が覚めたよ』
「ねえ、ドキドキしたぁ?」

『ハルも譜久村さんに助けられました』
「す、する訳ないでしょそんなの」

ファルスとリリーの会話の合間を縫って無事を確かめあう。
ファルスの言葉に被せるように里保が喋り、リリーの言葉に被せるように遥が喋りと、
二重音声のような慌ただしいことこの上ない状況になっている。
258嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/28(木) 19:46:17.79 0
『バンシーの手掛かりは何かつかめた?』
「ハハハハハ、ハハハハハハハ」

『まだですけど、さっき鞘師さんを噛もうとしてた娘って怪しくないですか?』
「何がおかしいのよ」

『マリーゴールドね、確かにあるかも……きゃ!』
「ごめんごめん、君ってさあ、可愛い……ぐぇ!」

ついにキレたリリーが華麗なアッパーカットを決め、ファルスが吹っ飛ぶ。

『だ、大丈夫どぅー!?』
「だから何で殴るのさ!!」

『……痛みは共有してないんで一応平気です』
「キモい!」

『なら良かったけど……』
「キモいって何だよ!」

『でもビックリした……』
「キモいからキモいって言ってんのよ!」

「キモくないよ!!」

「ちょ〜キモ〜い!!」

この後もリリーとファルスの低次元な言い争いはしばらく続き、
里保と遥は、今後も誰がバンシーかを慎重に見極めていこうとだけは、
喧嘩の合間にどうにか確認しあうことができた。

(つづく)
259嘆きの先にある光・余談@転載は禁止:2014/08/28(木) 19:47:00.48 0
本当は宿主とは五感を共有してるという設定の方が辻褄は合いそうなのですが
もしそうだとリリウムの物語のラストであまりに凄惨なことになってしまうため
少なくとも痛覚は共有していないということにしておきました
260名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 19:52:37.50 0
乙です
自分もそこ気になってたんだw
261名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 21:26:53.12 0
それでは続きを投稿したいと思います。
262名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 21:27:37.77 0
魔法少女みずき☆マギカ [真編] 叛逆の物語


やあ、聖。
久しぶりだね。

・・・僕を忘れてしまったかい?
そう、さゆべぇだよ。

今僕は、寝ている君の脳に直接アクセスして、語りかけているんだ。

・・・夢?
違うよ。僕は確かに存在している。
君たちが「魔女」と戦った事も、紛れもない現実さ。
でも、君たちの中では、「夢」として処理されてしまったんだね。

今頃になって君の脳にアクセスしたのは、ちょっとした好奇心からなんだ。
どうしても、「あの時」の事で納得がいかない事があったからね。
だから、君の思考パターンと記憶を探らせてもらおうと思ってね。

・・・・・・・・・・

・・・これは・・・そうか・・・
やっぱり君たち人間の思考は、僕の想像を上回っていたんだね。
263名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 21:28:20.20 0
・・・なんだい?
ああ、そうだね。この君の記憶に間違いがなければ、わかるはずがないよね。

「魔女」と戦った事が現実だったとすれば、なぜ君が生きているか・・・

まあ、正直僕にはそれを君に教える義務はないんだけどね。
・・・まあ、「お礼」として特別に教えてあげるよ。

君はあの時、自分の「願い事」を使って「魔女」をこの世界から消滅させた。
そして、その代償として、君もこの世界から消滅するはずだった。

だけど、君が消滅してしまうのを、彼女の「願い事」が許さなかったんだ。

そうだよ。
鈴木香音。
彼女の「願い事」さ。

・・・プリン?
なんの事だい?

ああ、彼女はそんな事を言ったんだね。
それは、君たちの思考パターンで言う、「照れ隠し」だと思うよ。
・・・そうか、本当にプリンが余ったのは、ただの偶然だろうね。

鈴木香音は、あの夜僕と契約しようとした。
彼女は契約する前、暗い顔をしていたんだ。
それは、君とあの生田衣梨奈がケンカした事を気に病んでいたからだった。
だから彼女は、「願い事」として、こう言ったんだ。


「みんなが、ずっと一緒でありますように」
264名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 21:29:03.26 0
この願いを聞いた時、僕は気付かなかった。
この「願い事」が、どれほどの力を持っているかを。

「ずっと、一緒でありますように」・・・
それはつまり、これから先、なにがあっても、一緒に「生きていく」ということ。

だから、君は消滅することなく、蘇った。そう、何事もなかったようにね。

そして、この「みんな」という言葉の通り、鈴木香音が思う「仲間」とされる人間は、誰も死ぬことはなかったんだ。

福田花音は、首から上をかじられても、傷ひとつなかった。
生田衣梨奈と鞘師里保も、「ローズクォーツの夜」の攻撃を受けて、全くの無傷だった。

そして、鈴木香音自身も・・・
宇宙空間に投げ出されようが、大気圏に突入しようが、生きているんだ。

ふつうならば、これら全ては致命傷だったはずなのに・・・

そして、さらに。

この「願い事」には、もう一つの意味も含まれていたんだ。
鈴木香音自身も気付かなかっただろうけどね。
265名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 21:30:04.60 0
「みんなが、ずっと一緒でありますように」という言葉。
それは、「一緒に生きていく」という意味の他に、「ずっと、一緒の状態を保つように」とも、取れるだろう?
君たちの言葉のニュアンスは、あいまい、かつ、ややこしい事が多いようだね。

つまりあの時、君たち「仲間」は、「願い事」をした鈴木香音と同じ状態になっていた。
そう、「魔法少女」と同じ状態にね。
だから、その素質のないはずの彼女ら・・・生田衣梨奈、鞘師里保、飯窪春菜も、「魔女」を見ることも、攻撃することもできたんだ。

これでわかったかい?
君が、まだこの世界で生きている理由。
僕も、後で全てを理解した時はさすがに驚いたよ。


・・・僕の、目的かい?
それこそ、君に教える義理はないんだけどなぁ。
どのみち君は、明日目覚めたら、この会話の事をきれいに忘れているんだよ。

・・・まあ、どうしてもというなら教えてあげるよ。
もう、こうなってしまった以上、隠す理由もないしね。

僕の目的は、君たちの持つ特殊なエネルギーを回収することだったんだ。

君たちの世界では、「因子」と呼ばれているらしいね。
・・・驚いたかい?君は、特別な力を持っていたんだよ。

君たちの「因子」は、僕の住む世界のエネルギー源として、とても優秀な素材なんだ。
でも、そのままじゃ使えない。
「因子」の魔力を、僕たちのエネルギーに変換させる儀式が必要なんだ。
それが、「魔法少女」の契約さ。

・・・そう、君たちの「願い事」は、自分自身の力で叶えていたんだよ。
僕は、きっかけを与えただけさ。
266名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 21:30:39.76 0
そうしてエネルギー変換を行った君たちを、最後は回収させる。
「ローズクォーツの夜」にね。
そうだよ。全ての「魔女」は、僕から生まれたんだ。
僕の分身としてね。

・・・でも、「魔女」は全て消滅させられてしまった。
君にね。
だから、今となってはもう君たちに用はないんだよ。
また、新たなエネルギー源を探すだけさ。


・・・え?
ああ、「お礼」は「お礼」さ。

まあ、直接君には関係ないけどね。
感謝しているのは、鈴木香音にだけどね。

僕を、消滅から救ってくれたからね。

そう。「魔女」たちは、僕の分身だった。
だから、僕も「魔女」といえる存在だったんだ。

当然、僕も君の「願い事」で消えるはずだった。

だけど・・・本当に・・・
君たちの、人間の思考パターンには驚かされたよ。

まさか・・・僕も、鈴木香音のいう「仲間」に、入っていたとはね。
267名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 21:31:43.22 0
思えば、一度しか会っていなかった僕もだけど、福田花音もそうだった。
その一度の出会いで、僕らは「仲間」として認定されたんだ。

まあ彼女は、君たちで言うところの「人間のでかさ」を持っていたんだろうね。

でもおかげで、こうして僕は生きている。
やれやれ・・・だから、「お礼」さ。


・・・まだ、訊きたいことがあるのかい?
これで、最後だよ。

・・・ああ、僕が何を納得出来なかったのか、ね。

それは、君の行動さ。

何故、「魔女」を消すなんて「願い事」が、君に出来たかってことさ。

「魔女を、この世界から消す」・・・
その「願い事」をした「魔法少女」は消滅する。
僕が作ったルールだったのに、君はあっさりそれを実行した。
・・・そうさ。「魔女」を消されてはとても困るからね。

それで、僕は考えた。
君は、もしかして鈴木香音の「願い事」を理解していたんじゃないかってね。
だから、君は自分が消滅することがないと知っていた上で、あの「願い事」をしたんじゃないか・・・

でも、違ったね。

僕は、君の記憶を探って、君が確かに自分が消滅するのを覚悟していたのを知った。
268名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 21:32:15.28 0
本当に、人間は、今でも理解できない。
意味がわからないよ。

でも、それでも、それが人間なんだね。

「理解」は出来ないけど、「納得」はしたよ。


さて、僕はそろそろ失礼するよ。
また、別のエネルギー源を探さなくてはならないからね。
これから先、僕が君たちの前に現れることはないから、安心していいよ。

・・・ついでに、教えておいてあげるよ。

鈴木香音の「願い事」は、もう効果がなくなってるんだ。

そう、彼女の魔法の力と同じで、彼女自身が制限時間を設けたらしいね。
あの「願い事」は、24時間限定だったんだよ。

だから、君たちがこれから先も「ずっと一緒」にいられるかどうかは、君たち次第ってことさ。

まあ、せいぜい頑張って、「ずっと一緒」にいればいいと思うよ。


それじゃ、聖。
じゃあね。


(完)
269名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 21:46:31.51 0
これで「完結」です(笑)
昨日も書きましたが読んでくださった方本当にありがとうございました。

コメディっぽく作ろうとしましたが、やっぱり何か仕掛けをいれようと思いました。
仕掛けがあることに気付かれた方がいて嬉しかったです

でも、「さゆべぇ=さゆ」は思いつかなかったですw

あと、アニメの原作を知らない方が多かったのは申し訳ありませんでした。
ほんとに原作を知らないとポカンなとこもあったり・・・

でも、本当に楽しく作ることができました。皆さん、ありがとうございます!


そろそろ『笑顔』過去編を作っていこうと思います
また時間がある時に投稿したいと思います

・・・あと、『笑顔』の黒猫の件のことは、皆さんありがとうございますw
270名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 21:55:40.23 0
乙でした!!
なんか花粉症みたい
ディスプレイが見えない...スケールの大きなお話ありがとう
271名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 21:57:20.85 0
あっさりと終わりに見せかけてさらにトゥルーエンドとはしかも前回の最後に
「おしまいです」と明言しておきながらだからやっぱり侮れないなぁw
てっきりコメディキャラとばかり思ってたズッキが鍵だったとはまったく予想外でした

これからも「やられた!」と思わせるような力作を楽しみにしてます!
272名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/28(木) 21:59:41.60 O
さるべぇ敵の黒幕だったのか。
273名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 00:39:23.65 0
もう笑顔の作者さんには毎回ビックリさせられるねw
274名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 02:11:02.53 0
くそう





「素材!みぃっーっけっ!!キキキキキキ」


耳障り・・・いや・・・心触りと言うべきか。

精神的に、著しく逆撫でされる雑音が、笑い声として香音の耳を襲った。

だが、彼女の心は己が腕の中の聖に注がれていた。




むう
うぐう
275名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 03:01:38.50 0
いきなり思わせぶりなシーンで寸止めされたら
続きが気になるじゃないか
276名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 08:25:38.72 0
前ので話は終わったと思ってたらまだ続きがあったとはw
277名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 12:20:00.87 0
ひるほ
278名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 17:24:55.71 0
ノハ*゚ ゥ ゚) < 保全
279名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 17:27:28.68 0
新加入の12期メンバーが10人で
そのうち6人が男の娘という夢を見て跳ね起きた
280名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 17:27:59.25 0




風が強く窓を叩き、唸りを上げる。
子供たちが出かけた家で、さゆみはのんびりとテレビを見ていた。
天気予報によれば台風がこの地域に上陸するのは今夜半。
だというのに、今朝から凄い風が吹いている。
随分大きくて遅い台風だ。
きっとこれが通り過ぎると一足飛びに秋になってしまう、そんな予感が胸を浸した。

さゆみは出かけた子供たちのことを考えていた。

昨夜からみんな随分とはしゃいでいた。
偶然出会った、よその街から来たという女の子。
その子との邂逅と、過ごす時間に夏のひとときの楽しみを見つけ
胸躍らせている。

少し子供返りしているな、とさゆみは思った。
勿論皆まだ子供なのだけれど。

それは、夏の初めに起こった優樹と遥を取り巻いた事件の反動なのだろう。
里保も衣梨奈も亜佑美も、その年齢に見合わない大きな苦悩と煩悶に苛まれた。
もがき苦しむ中で自ら決断すること、その意味を知らされて。

春菜や優樹、遥も含め子供たちにとって、とても大きな経験だったことは間違いない。
そしてその激動の後に訪れた、あまりにも平穏で幸せな夏休みに
すっかり弛緩してしまったのだろう。
里保や亜佑美、執行魔道士という立場を持つ子供たちも
今は奇跡のように手に入れた大切な友人たちとの時間に浮かれて
遊ぶことに夢中になっている。
281名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 17:28:25.39 0
さゆみはそれを眺めていることを楽しいと感じていた。
緩んでいるとも言えるけれど、心から伸び伸びと出来る夏休みが
あの子達に訪れたことは単純に嬉しかった。

そしてふと思う。
自分自身も、随分と緩んでいるな、と。

さゆみはここ数週間の自分が、とても満たされていることを感じていた。
優樹達が来て、一つ山が過ぎて、みんながこの家に留まれることになって
亜佑美が来て、もっと賑やかになって。

口にしてはいけない言葉のような気がして
もうずっと忘れていたけれど、さゆみは確かに『幸せ』を感じていた。

これまでどんな時も、どんなに満足した時も
心のどこかには必ず渇きがあったのに。
今怖い程に自分の気持ちは満たされていた。

多分、自分は渇いていたから生きて来られた。
その渇きがそれだけで生きる理由になったのだ。
心が満たされると、生きる必然性が無くなっていく。
例えば里保と花火の夜に交わした約束。その実現の前に死ぬのは申し訳ないから。
そんな風に、生きる目的を数えださないと分からないくらい薄らいで。
心が満たされるというのは、そういうことなのだろう。
この状態を悪いとは思わないけれど、不安定な状態だとは思った。
282名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 17:28:53.13 0
ぼんやりしている間に、テレビの天気予報は終わっていてた。
テレビの電源を落としパソコンを立ち上げる。

成長著しいとはいえ、まだまだこれからが楽しみな子供たち。
そんな姿をずっと見ていたいのに、自分がこんなことじゃいけないな、と笑う。
そうしてまた一つ、今生きる意味を数え上げた。

衣梨奈達が出会ったという可愛い女の子。
物凄く興味はあったけれど、敢えて話に入らなかった。
今までのパターンで考えれば、衣梨奈はその気に入った女の子をきっとさゆみの元に連れてくる。
何故だか可愛い女の子が次々に寄ってくる衣梨奈は、さゆみにとって密かに自慢の弟子だ。
明後日には子供たちの夏休みが終わってしまうから
多分今晩、その子を連れてくるはず。

楽しみにしていよう。

窓の揺れる音と甲高い風の音に、何だかさゆみの頭はふわふわしていた。
283名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 17:29:24.43 0
ふと、自分のパソコンのメールボックスに見慣れない名前を見つけた。

通販サイトの広告やメールマガジン以外で
さゆみのメールアドレスを知っている人もそうそう居ないはずだけれど。
そう思いながら暫時その名前を眺めている間に、その差出人に思い至った。

G.M(Golden Magician)

「ていうか、そのままじゃないですか…」

さゆみは思わず呆れた声を漏らした。
自分は”大魔女”という呼ばれ方を気に入っていない。可愛くないから。
だけど彼女は、自分のその通り名をそのままハンドルネームにするくらいには気に入っているらしい。
「大魔女」「西の大魔道士」に比べれば、カッコイイと言えなくもないからだろうか。

「それにしても突然過ぎるわ」

先日協会の前会長から「西の大魔道士」の名前を聞いた。
他の三大魔道士のことを思い出したのも随分久しぶりのことで、その時にはちらりと彼女のことも思い出していた。
だけどこれからも到底関わることは無いし、その方が世の為にもいいだろう、なんて思っていた自分に苦笑する。

きっと彼女のこのメールには本当に何の意味も意図も無くて、何となく思いついてさゆみに送ってみた、それだけの物だろう。
さゆみ以外の二人が、『世の為』なんて少しでも考えるわけがない。
改めて他の二人に比べて、自分が中途半端な存在だと思い知る。
だけど、そんな自分が嫌なわけじゃないし、結局彼女たちと自分とは交わらない、それだけのことなのだ。
284名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 17:29:50.82 0
それはそれとして、彼女を思い出した途端、懐かしい記憶が次々と蘇ってくる。
昨夜見た飛竜の夢が、この前兆だったのかとふと思った。

メールを開いてみて、さゆみはまた苦笑した。

『やっほー、道重ちゃん久しぶり、げんきー?』

本当に何の意味も意図も無いようだ。
これは返信すべきかすまいかも微妙なところ。
だけどさゆみは、返信の為の文章を考えはじめた。
改めてこういう連絡をされるとどう返していいのか難しく、それが可笑しい。
何せ前に会った時はまだパソコンなんてものがこの世に無かったから。

お互い三大魔道士で、同格。
だから気を遣うことも無いのだけれど、やっぱり昔を思い出すと少しだけ固くなってしまう。

衣梨奈達が帰ってくるまではまだまだ時間がある。

ふと、衣梨奈や里保も彼女に会ってみたらいいんじゃないかと考えた。
けれど、流石に今は魔法使いとして刺激が強すぎると思い直した。
もう少し時間が経ってから、会わせよう。きっと衣梨奈も里保も、いろいろと学ぶことが出来るだろう。

気の緩みきったさゆみは、昔のことと今のこととに思いを行き来させながら
たっぷりと時間を使って旧い知人とのメールのやり取りを楽しんだ。



285名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 17:31:23.33 0
てか12期発表ももうすぐなんよね
286名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 17:55:59.08 i
おお!?
俺の頭の中の予想が一気に外れたぞ!?
これは気になるww
287名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 18:22:55.54 0
Goldenってなんだと考えてみて関連がありそうなさゆの先輩が
一人思い当りさらにもう一度読み返して「そのままじゃないですか…」
の一言でようやく確信いや本当にビックリですこれは
288名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 18:29:45.46 0
わかった!
何か凄い人出てきたw
289名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 18:38:02.83 0
ゴールデンての何?!
ヒントだけでも教えてくだしあ!
290名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 18:38:31.27 i
更新おつおつです
毎度ながら文章が美しく輝いていて自然と目頭が熱くなります
さてさて新しい登場人物が出てきましたね
メールの文章のノリとさゆが緊張するってことは…
真っ先にあの人が思い浮かびましたがここで言うのは野暮なんで遠慮しておきます
多分間違ってると思うのでw

おかげさまで穢れた心がスッキリしました
次の更新をお待ちしていますなの
291名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 18:39:44.47 0
>>289
頭の色とか
292290@転載は禁止:2014/08/29(金) 18:42:20.59 i
やっちまった_| ̄|○
テンパったあまり前後の文章すっ飛ばした…
だとしたらあの子かなあ
まあその真偽は後々の楽しみに…
293名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 18:42:45.62 0
マッキングGOLD?
294名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 18:43:53.97 0
G Mて…まさか…
名前のイニシャル?
295名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 18:46:18.89 0
娘。でGoldenと言えばゴールデンオーディション
つまりもうすぐ加入する12期メンバーこそが
三大魔道士の一人だったんだよ!!
296名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 18:48:09.86 0
続きが気になりすぎるw
297名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 19:04:32.23 0
从VvV)<Great(Aya)Mikiだなコレは。でしょ?重ちゃん
298名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 20:32:34.72 0
ちゃゆの生き方が切ない
299名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 20:40:49.81 0
作者さん乙です
いよいよ三人目の大魔道士が登場!
小田ちゃんとG・Mさんがどう絡んでくるのか気になりますね

おまたせしていたRPG風ゲームをアップさせてもらいました
暇つぶし程度に遊んでいただければと思います
ゲーム作成を了承して下さった作者さんありがとう!

http://www1.axfc.net/u/3308122/ookami

・Win対応
・所要時間まーどぅ編だけで3h〜4h
・導入編、まーどぅ編のそれぞれ最初から遊べます
・オリジナルの「まーちゃん救出作戦」はタイトルからでも遊べます
・フリーズするようなバグはたぶん無いと思います
・以前のverのゲームは近日中に削除させて頂きます
300名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 22:10:32.09 0
いつもありがとう!
時間がある時にゆっくり遊ばせてもらいます
301名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/29(金) 22:29:34.53 0
無事まーちゃんを救出出来た!
大作本当に乙でした!
302名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/30(土) 01:20:23.75 0
なんちゅー夢をw
303名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/30(土) 01:37:30.29 0
ゴージャス松野とは懐かしいな・・・
304名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/30(土) 01:42:22.89 0
>>303
予想外すぎるわw
305名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/30(土) 02:26:37.63 0
>>299
初めてやらせて頂いたんだけどいろいろおかしくないか
いきなり道重邸いっちゃって何もできなくなったしメニュー一回開いたら戦闘技出しちゃうようになったしshiftキーでキャラ変わっちゃうんだが
306名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/30(土) 06:23:29.17 0
>>305
救出以外の場面でメニュー操作するとその症状が出ますね
こんなエラーに気づかないとは申し訳ないorz
近いうちに修正します!
307名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/30(土) 07:00:30.92 0
>>299
何で開いてますみなさんは?
308名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/30(土) 12:27:00.88 0
309名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/30(土) 16:10:31.24 0
シパパ
310嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/30(土) 17:11:58.36 0
>>254-258より
「ああああぁぁぁ〜、リリ〜〜〜〜!!!!」

放っておくとといつまでも続きそうだったリリーとファルスの喧嘩を止めたのは、
取り乱し号泣しながらリリーに縋り付いてきたチェリーによってだった。

「チェリー! どうしたの!?」

「ねえ、私って……臭い? 私って、ドブネズミの臭いがする?」

「何言い出すのよ」

「ねえ正直に言って! 臭いなら臭いって言って〜!!」

「くっさーい」

「ちょっと何言ってんのよ! そんなことないわよ」

「田舎臭い」

追ってきたカトレアとナスターシャムがローズの制止も聞かず追い打ちをかけ、
さらに激しく泣き出すチェリー。リリーは困惑の表情で頭を振る。

「ぜんっぜん話が読めない」

「マーガレットが、あたしのこと、ドブネズミのにおいがするってぇ!!」

「またマーガレット? あの娘の言うこといちいち真に受けちゃダメよ」

「だってえ……」
311嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/30(土) 17:12:24.96 0
また里保の初めて聞く名前が出てきた。
しかしチェリーも、臭いと言われたくらいで動揺しすぎじゃないか。
もしかすると、何か本人にしかわからない傷跡を抉られているのかもしれないけど。

漠然とそんなことを考えていると、また新たな人物達が乱入してきた。

「ちょっとそこのお前さん達!」

「静かにしていただけるかしら!」

「シャ〜ラップ、シャ〜ラップ! 日本語で言うとお黙りなさい!」

「あなた達、誰よ」

「ジャスミン!」「クレマチス!」「ミモザ!」

「「「我らマーガレット親衛隊!!!」」」

「マーガレット親衛隊?」

「せーの! 姫姉様の、お通りよ」

「わ〜〜! 来た〜〜〜!!」

3人の誘導で可憐な少女が姿を現し、チェリーがより一層の動揺を見せる。
その姿を確認した遥が、信じられないといった口調で思わず呟いた。

『ま、まーちゃん!?』
312嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/30(土) 17:12:58.46 0
皆様 ご機嫌麗しゅう あたしのことをご存じかしら
皆様 ご機嫌麗しゅう 遠慮なさらずひれ伏しなさい

朝起きて目覚めれば 太陽が昇る
それはあなたのこと プリンセス・マーガレット
夜が訪れれば 美しい月が光る
それはあなたのこと プリンセス・マーガレット

あたしはこの城のプリンセス (プリンセス プリンセス プリンセス・マーガレット)
世界中の民達が あたしのことを羨むの (プリンセス・マーガレット)
あたしはこの城のプリンセス (プリンセス プリンセス プリンセス・マーガレット)
世界中の花達が あたしの美貌に嫉妬する (プリンセス・マーガレット)

そうよ あたしはプリンセス みんながあたしを愛してくれるのよ!


3人の親衛隊を引き連れ、自由気ままに歌いそして舞い踊るマーガレットの姿は、
頭の上から足の先まで、どこをどう見ても佐藤優樹としか認識できなかった。
さゆみもエネルギー注入によって登場人物に干渉できるのはほんの一瞬だと言っていたし、
これまで助けてくれた仲間達も確かにそうだった。
ならばこのマーガレットと優樹が瓜二つなのは、ただの偶然ということ??

「あら? なんだかドブネズミの臭いがする。
あ、チェ〜リ〜〜!! あなたがいるからね!!」

あまりにも無邪気な口調で、あまりにも無慈悲な言葉を放つマーガレット。
無造作に虫の羽を毟り取る子供の残酷さにも似ている。
その言葉にまた一層泣き崩れるチェリーを、犬でもあやすかのようにリリーが慰める。
313嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/30(土) 17:13:30.45 0
「なんだかこいつ、めんどくさいヤツだな」

「繭期をこじらせちゃってるのよ」

「自分をどこかの国のお姫様だと思い込んでいるの」

「きっと今に、『今夜は舞踏会よ』とか言い出すわ」

「今夜は舞踏会よ!!」

「ほらねえ」

強烈すぎるマーガレットのキャラクターに好奇の目を向けるファルスに対し、
ナスターシャムとカトレアが説明を加える。
どこまで本気なのかローズの皮肉通りの言葉を言い放つマーガレットに、
みんなただただ呆れかえるしかなかった。

「オ〜ホホホホホホ!」

「めんどくさいヤツだなぁ」

「キャ〜〜!!」

同じセリフを繰り返すファルスにも構わず高笑いのマーガレットだったが、
ファルスの姿を認めた途端、顔色を変え甲高い悲鳴を上げた。

「なんだよ」

「お! お! 男よ〜! バターンキュ〜」

まさか自分で擬音を発しながら倒れるだなんて、
里保も唖然とするより先に思わず笑ってしまう。
314嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/30(土) 17:13:57.61 0
「「「姫姉様!!!」」」

「姫姉様に何てことを!」

「姫姉様は男性恐怖症なのよ!」

「なんで女子寮に男がいるのさ!」

「そうよ、なんでいるのよ!」

「あ、いや、男子寮はむさっ苦しくてさ。
ここには可愛い女の子がたくさんいるだろ、だから、目の保養にさ」

「ファ〜ル〜ス!」

親衛隊3人とともに便乗するリリーにまで厳しく詰め寄られ、
しどろもどろになりながら誤魔化そうとするファルス。
そこに起き上がったマーガレットが、また金切声を上げる。

「爺や! 爺やはどこ! 早くこいつをお城からつまみ出してちょうだい!」

「爺やなんていないし」

「あ、そんなとこにいたのね。爺〜や!」

「爺やじゃねえよ!!」

巻き込まれたローズの本気のツッコミも意に介さず、
ファルスのことを指さし睨め付けるマーガレット。
315嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/30(土) 17:14:28.22 0
「あ〜もう、男子なんて汚らわしいだけ。
ちゃんとその瞳を見ればどんなに隠してたってすぐにわかっちゃうんだから!!
も〜ドブネズミ臭い、このドブネズミ!!!」

……なんだろう今の違和感は。何かとても重要な内容が紛れこんでいたような。
里保が内心で小首をかしげる。

「そんなこと言うヤツは、ろくな目にあわないぞ」

さすがに腹に据えかねたのか、ファルスがその腕を取り凄みを利かせると、
マーガレットがまた一段と大きな声を張り上げた。

「さ、さ、さ、触られた〜〜!!!!」

「「「姫姉様!!」」」

「急いで消毒しなくちゃ! タナベ! カガ! ササキ!」

「ジャスミンです!」「クレマチスです!」「ミモザです!」

「カミテに捌けるわよ!!」

「「「はいっ!!!」」」

そしてドタバタと騒がしい音をさせながら、嵐のようにマーガレット達が走り去っていった。
316嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/30(土) 17:14:54.78 0
ひとつ間違えれば物語そのものを崩壊させかねないような、あまりに突拍子もない言動。
そして何よりファルス――工藤遥と絡んでいる最中のこの上なく楽しそうな姿。
一体どこからどこまでがそうだったのかはわからないけど、
これは佐藤優樹の意思がそうさせたものに違いないと、里保は確信した。

あれだけ自分も本の世界に入りたいのにと羨んでいたのが、
注入されたエネルギーが並はずれていたからか、
それともマーガレットとの相性がずば抜けてよかったからか、
まさかここまでリリウムの世界を存分に満喫してしまうとは……。
さすがはまーちゃんだと里保も素直に感心するしかなかった。

そんな里保の隣で、遥が焦ったような口調で独りごちる。

『やべっ、まーちゃんから何か助言もらったような気がするけど、
インパクトが強すぎてどれがそうだったかよく覚えてないや』


いつもと変わらないクランの情景。
仲間達と過ごした大切な時間。
でもあの時、すでにその大切な時間は壊れ始めていた。


(つづく)
317嘆きの先にある光・余談@転載は禁止:2014/08/30(土) 17:15:27.12 0
今回取り上げている佐藤優樹の歌う「プリンセス・マーガレット」は
リリウムの中でも屈指の名曲です
タイトルで検索すればyoutubeで聴くことができます
さらにこの曲に関してだけはそこからのリンクで現段階唯一
映像でも確認ができます(「中の人から評価が高いまーガレット」)
もしDVD待ちでなければぜひ一度観てみてください
318名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/30(土) 17:42:37.52 i
文章化しようが何しようがこの部分は本っっ当に面白いなwww
まーちゃんまさかの明確な助言を残さず去るとはwww
319名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/30(土) 18:37:16.42 0
親衛隊は『ザマス』『ガンス』『フンガー』が聞きたかったwそれにしてもマーガレットの演技に思わず鞘師が笑ってしまった舞台上でのハプニングまで取り込むとはww
320名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/30(土) 21:22:24.77 0
まーちゃんそのまんまマーガレットかw
321名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/30(土) 23:26:15.53 i
あげとく?
322名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/31(日) 01:32:15.43 i
 <::ヽ             。'“゜`・*。 。*゜”`'。
  |::::::\    ☆       *     ゜+゜     ♪
 ∠ニニニ`_  /゜''+。.,      ゜,,        ,.。+''゜
  |||9|‘_ゝ‘)つ    ゜“・:+.:.。♪,,*:...。.:.+・ ”゜
  ⊂   へ(/⌒)         ゜*。
  ノリ.〉 /^/@ニ)'            ゜・*。+・`
   〈 〈/ ,/
  (_/@二)
  `ー―'"
323名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/31(日) 08:20:53.62 0
|||9|‘_ゝ‘)
324名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/31(日) 11:21:19.02 0
24時間テレビの魔法使い
325名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/31(日) 15:40:15.82 0
ノリ*´ー´リ
326名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/31(日) 17:54:58.21 0
もう終わりか&amp;#8226;&amp;#8226;&amp;#8226;&amp;#8226;&amp;#8226;&amp;#8226;
327嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/31(日) 18:31:24.24 0
>>310-316より
衣梨奈がさゆみの前に連れてきたのは、コケティッシュな雰囲気を持つ小柄な少女だった。

「この娘も手を貸してくれると言うんで連れてきちゃったんですけど、大丈夫ですか?」

衣梨奈の言葉に、困ったように腕組みをするさゆみ。

「うーん、手助けしてくれるのは確かにありがたいんだけどね。
大丈夫かと聞かれると、本編との兼ね合いもあるからこのタイミングだと
色々問題があるというのが正直なところなんだよねぇ」

半ば独り言のように呟きながら考え込んでいたさゆみだったが、
しばらくしてついに吹っ切れたのか、衣梨奈の隣にたたずむ少女に声をかける。

「うんわかった。じゃあ、あなたは今回初登場のオダベチカって
名前の娘だということにしておくけど、それでいいかな?」

「はい、わかりました!」

いかにも楽しげな様子で快活に返事をするオダベチカ。

「詳細はもう生田から聞いてるね。じゃあさっそくだけどエネルギーを注入させてね」
328嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/31(日) 18:32:15.10 0
先ほどと同様の手順で、オダベチカが書物の上に人差し指を置き、
さゆみの詠唱とともにエネルギーが流れ込んでいく。
ほどなくしてそれが一段落すると、オダベチカはホッとした表情をさゆみと衣梨奈に向けた。

「私もみなさんと同じように、少しでも力になれる機会がもらえて嬉しかったです。
あまり長居しすぎるとご迷惑をおかけしてしまいそうなので、もうお暇させてもらいますね。
またいつか遊びに来れる日を楽しみにしてます!」

そしてペコリと頭を下げたオダベチカは、鼻歌交じりで足取りも軽く去っていった。
目を丸くしてその背中を見送った衣梨奈が、驚きの口調でさゆみに話しかける。

「しっかりとエネルギーを注入したはずなのに、
気絶することもなく平気な顔で帰っていきましたね……」

「そうだね、わかってはいたけどやっぱりただ者じゃないってことね」

「また……会えますかね」

「大丈夫、もうすぐ普通に会えるようになるよ。
その時にはきっと、こんな回りくどい手続きを踏まなくてもよくなってるから」


329嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/31(日) 18:32:56.66 0
「シルベチカ……どうしていなくなったの?
どうしてみんなは、あなたを忘れてしまったの?」

いまだにシルベチカのことを探し続けるリリーが、途方に暮れた様に独り呟く。
リリーがゆっくりと目を閉じると、そこに一人の少女の姿が浮かんだ。

「ねえ、リリー。あなたは永遠に枯れない花があると思う?」

「シルベチカ……」

「こんな話を知ってる? 永遠に枯れない花をつくろうとした、庭師の物語」

これは一体どういうことだろう。突然の変化に里保の思考が乱れる。

今までは、リリーの言動は一緒に体感できても、その心の内まで覗くことはできなかった。
それなのに里保は今、目を閉じたリリーの脳裏に浮かぶ過去の情景、
そして初めて見るシルベチカの姿をはっきりと認識できている。
これは、里保の知らない何か不思議な力が発現しているということだろうか。

「あの時あなたがあの話をしてくれたのも、こんな冷たい雨の夜だった」

リリーの独白とともに、シルベチカが柔らかく歌を紡ぎだす。
330嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/31(日) 18:33:23.24 0
その庭師は大切にしていた花があったの
身寄りのなかった孤独な庭師は
その花をまるで恋人のように 大事に大事に育てたの

でもその花は程なく枯れてしまった
どれだけ美しく咲く花もやがて枯れるの
庭師はひどく悲しみ泣いた

涙も底をついた時 庭師はとある決意をする
永遠に枯れない花をつくろう

庭師は来る日も来る日も花の研究に明け暮れた
でもどんな花も必ず枯れて朽ち果てる
ついに庭師は力尽き枯れた花畑で息絶える

そして庭師の亡骸の上に一輪の小さな花が咲く
だけど結局その花も儚く朽ちて果てるのだ
どれだけ美しく咲く花もいずれ枯れる


シルベチカの哀しげな歌声が、里保の心に染みわたる。
そして歌い終えたシルベチカが、リリーに微笑みかける。
331嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/08/31(日) 18:33:57.27 0
「古くから伝わるお伽噺。昔、母さんがよく話して聞かせてくれたの。
寂しい物語だけれど、私はこの話が好きだった。
その庭師が愛した花はね……忘れな草。
忘れな草の花言葉、知ってる?」

「シルベチカ……あたしは」

「私を、忘れないで……」

その言葉とともに、リリーの心の中に映るシルベチカが
霧のようにかすれていき、ついには姿を消した。
しかしその直前、里保の耳には確かにもう一言、シルベチカの声が届いていた。

『忘れないで、花言葉ってとっても重要なんだよ』

今のはもしかして……オダベチカ!?
これまで聞いたこともないはず名前が、ふと里保の頭に浮かぶ。
詳しいことはよくわからないけど、うちのために大事な助言をくれたのは間違いない。
ありがとう、オダベチカ……。

「あたしは、あなたを見つけてみせるわ」

里保が心の中で感謝の言葉を呟くのと同じタイミングで、
リリーもまたシルベチカに決意の言葉を呟いたのだった。


(つづく)
332嘆きの先にある光・余談@転載は禁止:2014/08/31(日) 18:34:24.06 0
今回取り上げている「或る庭師の物語」も例によって
タイトルで検索すればyoutubeで聴くことができます
333名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/31(日) 18:55:17.16 0
まさかのオダベチカw正直無理に取り込まなくても物語的には問題無かったような?ヒント出すのに必要だったのかな?
334名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/31(日) 21:45:42.48 i
       * ∠\`・* 。
        | /★`、 `*。
       ,。∩______フ *  
      + |||9|‘_ゝ‘) *。+゜保全の魔法っちゃよ
      `*。 ヽ、  つ *゜*
       `・+。*・' ゜⊃ +゜
       ☆   ∪? 。*゜
        `・+。*・ ゜
335名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/31(日) 21:50:45.49 0
从 ´゚e゚ リ<そして鞘師さんが物語の中に入っている内に生田さんは私が頂きますわ

Σノリ*´ー´リ <!?
336名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/31(日) 23:01:32.46 0
ちょびっとさみしいから宣伝w

避難所にべリ編あげてます


リリウム深いわぁ
337名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/31(日) 23:16:03.52 0
小田ちゃんキター!!!
338名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/31(日) 23:25:19.90 0
いつの間にかベリ編もすごいことになってる
339名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/08/31(日) 23:52:28.60 0
リリウムもベリ編も戦国編も兄重編ももちろん本編も全部楽しく拝見してます笑顔編も続きが待ち遠しい…
340名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/01(月) 04:46:33.75 0
ブラックバタフライ♪
341名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/01(月) 09:32:11.63 0
ノリ*´ー´リ <小田ベチカ、小田ベチカいますか?
342名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/01(月) 12:47:59.52 i
  *``・*+。
     `*。
      *。
 。☆ノハヽ   *
+川c ’∀´)*。+゚
`*。 ヽ  つ*゚*
 `・+。*・`゚⊃ +゚
 ☆  ∪~ 。*゚
 `・+。*・+ ゚
343名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/01(月) 15:55:13.28 0
ほす
344 【ぴょん吉】 @転載は禁止:2014/09/01(月) 17:38:42.26 0
ノハ*゚ ゥ ゚)
345嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/01(月) 19:35:19.67 0
>>327-331より
シルベチカを探し続けながら、まともな成果も得られず時だけが無情に過ぎていく。
これ以上リリーにできることは、もうすでに限られていた。

「ねぇスノウ。あなたに話があるの」

「あたしは別に話なんてないわ」

いつものように独りベンチで本を読むスノウに、リリーが声をかける。
しかしスノウは、本から目を上げることもなく冷たく突き放す。
他人を立ち入らせようとしない障壁を感じて一瞬ひるみそうになるも、
ここで引いては埒が明かないとあえてもう一歩踏み込んだ。

「あなたになくてもあたしにはあるの」

「何」

ようやく本から目を上げたスノウに、重要な頼みごとを伝える。

「あなたに、シルベチカを探すのを手伝って欲しいの」

「忠告したはずよ。シルベチカは探さない方がいいって」

本を閉じてベンチから立ち上がり、冷淡にリリーを見据えるスノー。
だが忠告を受けたとしても、シルベチカを探すのをやめるわけにはいかない。
346嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/01(月) 19:36:05.43 0
「あなたは何を知ってるの?」

「あなたが知っても意味のないことよ」

「シルベチカがどこにいるか知ってるの?」

「知らないわ」

にべもないスノウの受け答え。

「みんながシルベチカのことを忘れてしまった。
覚えているのはあたしと……あなただけ」

リリー以外にシルベチカのことを覚えている唯一の存在。
そしてシルベチカについて、何かリリーの知らない秘密を胸に抱えているスノウ。

「ねえスノウ、あたしにはあなたが必要なの!」

シルベチカを独りきりで探すことに行き詰った現在、
いくらすげなくあしらわれても、このスノウだけが最後の頼みの綱だった。

リリーの懇願に、なぜか哀しげに視線を落したスノウが、
まったく予想外の問いを投げかける。
347嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/01(月) 19:36:43.15 0
「ねえリリー。もしも……もしもの話よ。
永遠に枯れずに咲き続ける花があったら、あなたはどう思う?」

「え?」

永遠に枯れずに咲き続ける花。
それは以前、シルベチカが語ってくれた庭師の物語の中で出てきた言葉だ。
里保もリリーの記憶の中で追体験したばかりだが、
それがなぜこのタイミングでスノウの口から?

「あなたはその花を見て、どう思う?」

真剣な表情で問いを繰り返すスノウに、リリーも戸惑いながら真摯に答えを返す。

「あたしは……。あたしは多分、哀しい気持ちになる」

その返答にスノウの表情が曇り、そして涙が溢れだす。
充血した瞳からとめどなく流れ落ちる涙に、リリーが慌てたような声を上げる。

「スノウ、どうしたの? また泣いてるの?」

……また?
咄嗟に発した自らの言葉に、驚いたように自問するリリー。
348嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/01(月) 19:37:15.33 0
「どうして? あたし、前にも泣いてるあなたを見たことがある。
あなたと話したのはこないだが初めてなのに」

初めて見るはずなのに、本来あるわけがない記憶が残っている。
これは一体どういうことだろう。

だが、ほんのひと時だけでも記憶を共有したことが原因か、
リリーの言葉に嘘がないことは里保にもはっきりとわかった。

確かにうちは、スノウの涙を見たことがある。

「あ、スノウ!」

リリーの独白にハッと我に返ったスノウが、逃げるようにその場から走り去り、
リリーもまた、追いすがるようにその後に続いた。


「駄目よ、駄目よ絶対に駄目よ!
あの女は必ずリリーを不幸にするわ!
私が守らなくちゃ、私はリリーを幸せにしなくちゃいけないのよ!」

リリーとスノウのやり取りを隠れて窺っていたマリーゴールドが、
強い呪詛にも似た決意とともにさらに2人の後を追ったことに、
その時点で気づいた者は誰もいなかった。


(つづく)
349名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/01(月) 22:12:04.79 0
リリウム編更新乙です
演劇見た人は誰がバンシーなのかわかってるのかな…
350名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/01(月) 22:18:00.90 0
いやさっぱりわからんw
大分進んできたな〜
351名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/02(火) 00:18:50.84 0
バンシーは原作通りなら彼女なんだが・・・もしそうならどうストーリーに絡めるのか凄い楽しみ
352名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/02(火) 02:57:16.33 0
バンシーの正体は・・・いやなんでもないなの
353名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/02(火) 06:59:28.90 0
でもぶっちゃけ本を読んだ事あるさゆなら分かりそうなもんだけど・・・巧妙に隠されてるのかな?
354名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/02(火) 09:50:16.55 0
もしわかってても口にしないのがさゆだから
355『笑顔』@転載は禁止:2014/09/02(火) 11:58:00.88 0
それでは投稿していきます
これは『笑顔』を補足する為の話ですのであまり長くはならないと思います(多分)
『笑顔』本編を忘れてしまった方もなんとなく思い出して頂けたら幸いです



『笑顔』過去編
356『笑顔』過去編・1@転載は禁止:2014/09/02(火) 11:59:17.11 0
私がこの美術館に来るのは、今日で一週間目。
学校が終わった後に、私は毎日「彼女たち」に会いに来ていた。
でも、それも今日で終わり。

私は、「彼女たち」を見張るのに丁度いい位置にあるソファーに座って、その時を待っていた。

早く、閉館時間にならないかな・・・

私は、壁に掛かっていた大きな時計をまじまじと見た。
今日ここに来てから、その時計を何度確認しただろうか。
閉館時間までは、あと20分もなかった。

・・・もう少しだ。
今日閉館すれば、ようやく長かった展示会は終わる。
・・・やっと、一緒に帰れる。

館内には、もう観覧客の姿は見当たらずに、係員の人たちも閉館準備を始めていた。
私はいてもたってもいられなくなって、「彼女たち」のもとへ走り寄った。

「彼女たち」・・・その絵を、私は見上げた。

私の、大切な絵。
大切な「宝物」・・・
357『笑顔』過去編・2@転載は禁止:2014/09/02(火) 12:00:17.27 0
「素敵な、絵ですね」

その突然の声に、私は心臓を揺さぶられた。
目を見開いて、声のした方へ振り向く。
私の隣に、いつの間にか女の子が立っていた。
笑顔を私に向けてくるその子に、私は思わず狼狽した。

もう他のお客さんは、みんな帰ったと思ったのに・・・
まだ、残ってた人がいたの?

「あなたも、この絵が気に入ってるんですか?」

その子は、私の目を見ながら丁寧な口調で訊いてきた。
私はその質問に答えようとして・・・

「あ・・・う・・・」

思ったことが、うまく声にならない。
私は、初めて会った人に対しては、いつもこうだ。

「今日、この美術館の絵は全て見回ってきたけど、この絵が一番好きです」

そう言って、その子は私の絵をじっと眺めた。
私はそれを聞いて、顔が熱くなるのを感じた。
358『笑顔』過去編・3@転載は禁止:2014/09/02(火) 12:01:29.45 0
私の絵を、好きだって言ってくれた・・・
そんなこと、お父さん以外では初めてだ。

横目で彼女を確認してみる。
私と同じくらいの歳だろうか。身長も、同じくらい。
しかも、肌の色まで似ている。私と同じで、色黒だ。

でも、着ている服が、私と圧倒的に違っていた。
その、キラキラした装飾がついた可愛らしいワンピースは、彼女が着るために作られたんじゃないかと思うほど似合っていた。
二人を並べて見てみると、私の使い古した服が、一層ダサく感じた。

そんな彼女は、キラキラした大きな目で私の絵を眺め続けていたけど・・・

「・・・でも、なんでこの絵には名前がないんだろう?」

彼女はふと、首を傾げながら言った。
絵の下にあるプレートを見て、不思議に思ったみたいだ。


『            〔和田彩花〕』


「他に展示されてあった絵は、全部名前があったのに」
「・・・名前、つけないの」

私がぼそっと呟いた。
359『笑顔』過去編・4@転載は禁止:2014/09/02(火) 12:02:41.05 0
「え?」
「描いた絵に、名前・・・つけたことない」

私が彼女の手の辺りを見ながら言うと、その子が軽く息を呑むのが分かった。

「もしかして・・・この絵を、あなたが描いたんですか?」

その質問に、私は彼女から視線を逸らしたまま頷いた。すると・・・

「本当!?凄いっ!!」

そう叫んで、彼女は私の両腕をがっしり掴んだ。
私は、心臓の方も掴まれた気がして、そのまま硬直してしまった。
彼女の顔が、私の目の前にある。

「これ、地区の絵画コンクールの最優秀作品じゃないですか!」
「・・・うん」
「大人に混じって、あなたみたいな子が描いた絵が、選ばれるなんて!!」

目の前の彼女は、そう言いながらぴょんぴょん跳ねた。
手を掴まれている私も、それにつられて腕が上下する。
ふと、後ろの方で咳払いが聞こえて、彼女はピタッと動きを止めた。
係員の人の視線に気付いて、舌を少し出して笑う彼女の仕草が、妙に似合っていた。

「じゃあ、あなたの名前は「和田彩花」さん?」
「・・・うん」
360『笑顔』過去編・5@転載は禁止:2014/09/02(火) 12:04:14.52 0
私がその質問に頷くと、彼女は私の手を放してから自己紹介をしてくれた。

「私は、飯窪春菜。「はるなん」とお呼びください」
「はる・・・」
「はるなん。春菜だから、はるなん。この絵を描いた人に会えて、光栄です」

私は少し呆気にとられながら、彼女・・・はるなんを見た。

なんだか、少し変な子だ。
いきなり、自分の事をあだ名で呼ばせてるし・・・
それに、話し方も、大人と話す時みたいに、ずっと丁寧だ。

そう思いながら私は、ふと自分がおかしいことを考えてるのに気付いて笑ってしまった。

私も、相当変わってる方なのに、人のこと言えない。

「・・・どうしたんですか?何か、おかしかったですか?」
「ううん、なんでもないよ」
「なら、いいです。それにしても、本当に絵がお上手ですね」

そう言ってはるなんは、にっこりと笑顔を見せた。
なんだか、くすぐったくなってくる。

「・・・褒めすぎ・・・だよ」
「そんなことないですよ。だって、実際コンクールで選ばれてるじゃないですか。見る目がある人が、あなたを認めてるんですよ」
361『笑顔』過去編・6@転載は禁止:2014/09/02(火) 12:04:47.14 0
私は、相当顔が赤くなっていただろう。顔を背けて、頭をかいた。
お父さん以外の人に、ここまで私の絵を褒められたことはない。
まあそもそも、今まで私の絵を他人に見せたことがないんだけど。

「そうだ。少し、おしゃべりしませんか?」

はるなんは、そう提案した。そして、後ろにあるソファーに、私を誘った。
私は再び心臓を掴まれた気になった。

私が・・・おしゃべり?
同い年くらいの子と・・・?

私が視線をキョロキョロと彷徨わせていると、はるなんは・・・

「ね、いきましょう!」
「うぁ!」

私の腕を掴んで、ソファーの方へ引っ張り出した。
私は驚いて・・・でも、なすがままはるなんに付いていく。
今日は心臓が大忙しだな、と思いながら、高鳴る鼓動を聞いていた。
362『笑顔』過去編@転載は禁止:2014/09/02(火) 12:19:17.01 0
とりあえずここまでです

「魔法少女」の方が終わりましたので(本当に終わりですw)こちらに集中したいと思います。
また時間があったら投稿します。

「魔法使いえりぽん」本編やたくさんの外伝、それから漫画や動画の作者さんたち、いつもお疲れ様です。
自分はあまり他の作品の感想を書かないようにしていますが、いつも本当に楽しませていただいてます。
そして、自分の作品を読んでくれる人もいつもありがとうございます。
363名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/02(火) 12:55:34.31 i
おつです!!!待ってました!!!
364名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/02(火) 12:57:58.63 0
ドラマで観たい
はるなんも演技自然だしあやちょも良い感じだし
365名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/02(火) 16:34:27.39 0
更新乙です再開待ってました!
一枚の絵の形容が「彼女たち」とはやっぱりあの絵のことかな!?
一人称がですます調からである調に変わったことに何か意味は??

笑顔作者さんのお話はまた何か仕掛けがあるんじゃないかと
推理小説を読む時のような深読みをしてしまいますw
366名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/02(火) 20:04:27.97 0
夕ご飯ヤシ
367名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/02(火) 23:45:06.56 0
停滞中
368名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/03(水) 01:53:37.84 0
おやすみなさやし
369名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/03(水) 04:58:39.59 0
朝ぽん
370名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/03(水) 10:14:13.95 0
10時のおやつ
371名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/03(水) 12:53:18.57 i
 <::ヽ             。'“゜`・*。 。*゜”`'。
  |::::::\    ☆       *     ゜+゜     ♪
 ∠ニニニ`_  /゜''+。.,      ゜,,        ,.。+''゜
  |||9|‘_ゝ‘)つ    ゜“・:+.:.。♪,,*:...。.:.+・ ”゜
  ⊂   へ(/⌒)         ゜*。
  ノリ.〉 /^/@ニ)'            ゜・*。+・`
   〈 〈/ ,/
  (_/@二)
  `ー―'"
372名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/03(水) 17:35:11.02 0
RPG風ゲームしてるんだけどさ
まーどぅー編のゲーム特別編でまーちゃんを救出に向かうところの属性のスイッチの最後がわからん
ヒントでいいから助けてくれ
373名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/03(水) 17:59:49.16 0
あ、スイッチクリアできた
でもそのあとのラスボス強すぎて全然クリア出来る気しねえ…
その前の雑魚たちとの戦いでHP減ってるからすぐ負けてしまうけどコツとかないのかな
374名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/03(水) 18:32:52.37 0
時間置けばHPとMP全快出来るだろ
375名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/03(水) 18:46:21.55 0
HPは生田の魔法で回復できたのか
376嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/03(水) 19:32:36.62 0
>>345-348より
「スノウ、待って! ……どうしちゃったのよ。
待って、ねえ待って! どうして逃げるの!」

「触らないで!!」

ようやく追いつき腕をつかんだリリーを、強い口調で拒絶するスノウ。

「ねえスノウ、あなたは何を知っているの?」

「知らない方が良かったわ! その方があたし達は幸せでいられた!!
……でも、でももう忘れることができないのよ」

今までにない激しい感情を露わにしたスノウだったが、
最後の言葉は弱々しくやるせなさを残し周囲に溶けていった。

「スノウ」

「……トランプ」

「え?」

スノウの口から唐突に、また里保が初めて耳にする単語が発せられた。
377嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/03(水) 19:33:04.36 0
「リリー、あなたはトランプを知ってる?」

「トランプ……」

「TRUE OF VAMP。
その英語の最初と最後の文字を繋げてTRUMP(トランプ)。
真(まこと)なる吸血種。
今から何千年も前に、この世に初めて現れた始まりの吸血種よ。
あたし達ヴァンプの血脈は、そのたった一人の吸血種から始まった」

「それはお伽噺の中の話よ。ほら、一角獣とかサンタクロースとか、そういうのと同じ」

「もしそれが、お伽噺じゃなかったら」

「そんなのありえないわ」

あまりに現実離れした話に、信じられない様子でリリーが呟く。
しかしそんなリリーにも構わず、スノウは語り続ける

「かつて、あたし達ヴァンプの血族は永遠の命を持っていたとされる」

「それは作り話の中だけの話よ! 
あたし達が永遠に生きることなんてできない。時が来ればみんな死ぬ」

「そう、あたし達は永遠の命を失った。そのはずだった。
言い伝えでは、トランプは永遠の命を持ち続けるただ一人の吸血種。
トランプは死ぬことができない。
だからもし、トランプがお伽噺なんかじゃなくて本当に実在するなら……。
トランプは、この世界のどこかで今も生きているわ」

「何言っているの。トランプなんていないよ」
378嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/03(水) 19:33:34.53 0
いきなりそんな夢のようなことを言われても、ただ否定することしかできない。
内容だけならそれこそ冗談にしか聞こえないが、
語るスノウの表情は真剣そのもので、そして悲壮感に満ちている。

「ねえリリー、あなたは死ぬのが怖くないの?」

「死ぬこと……」

「いつか自我の意識が途絶え、永遠の無だけがそこに残る」

「そりゃ、誰だって死ぬのは怖いよ」

「生きる者はみなそう。吸血種や人間だけじゃない。
動物や昆虫も花や草木も、きっとみんなが死を怖れる。
トランプはそういった心が生み出した幻想だとも言われている。
多くの者がその幻想を追い求めた。
トランプなら、失われた永遠の命をあたし達に授けてくれるかもしれない」

そこで、激情に駆られたように抑えきれず声を荒げるスノウ。

「でも!! 時には死を怖れない者もいる。自ら……死を受け入れる者が」

「それがシルベチカと何か関係があるっていうの!?」

「それを言ったところであなたは何も信じてはくれないわ。
だって……今までずっとそうだったもの」
379嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/03(水) 19:34:07.71 0
一見まったく関係ないようなトランプの話をするスノウの意図は?
そして「今までずっと」というのはどういうこと?
謎ばかりが深まり、里保の思考がまるで追いつかない。

「おかしいよ、こんなのおかしいよ。
あなたとこうして話してると、ずっと古くからの友達と話してるような。
ううん……そんなんじゃない。そう、まるで自分と話してるような気持ちになる。
ねえスノウ、あなたは一体誰なの?」

謎といえばこのリリー自身が持つ不思議な記憶も、里保にとっては不可解そのものだ。
そんなリリーの問いに答えることなく、スノウがさらに驚愕の一言を放つ。

「もし、トランプが。トランプが、このクランにいるとしたら」

「え?」

「馬鹿馬鹿しい!!」

そこでスノウの言葉を投げ捨てるような強い口調で遮ったのは、
2人の間に乱入してきたマリーゴールドだった。

「トランプだなんてあなた、そんな話を信じてるの!
おかしなことをリリーに吹き込まないでよ。あんたは……狂ってるわ!!」

そんなマリーゴールドの罵倒に反応もせず、スノウはまるで歌うようにリリーに語りかけた。
380嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/03(水) 19:34:36.13 0
「もしもこの世に終わりなどなく、命が永遠(とわ)に続くというならば」
「永遠の命なんてないわ!!」

「愛する人達の命の火が、ただ消えるのを待つばかりよ」
「たった独りきりで……」

「リリー! こんなヤツの話、聞いちゃダメよ!!」

「もしもこの世界が終わる時に、星の轍を見届けるならば」
「やめて頭がおかしくなる!!」

「滅びぬ者は命のためにレクイエムを捧げるでしょう」
「それが不死なる定めよ……」

「TRUE OF VAMP。真なる吸血種よ」
「ありもしないお伽噺!」
「それを信じろと言うの?」

「TRUE OF VAMP。終わりのない物語」

「TRUE OF VAMP。真なる吸血種よ」
「あなたどうかしてるわ!」
「あなたは何を知ってるの?」

「TRUE OF VAMP。終わりのない命」


3人の真情が、激情が、情念が、それぞれにぶつかり合い、
強大なエネルギーの潮流となって広間全体に拡散していく。
里保はただ圧倒されてその饗宴を見守ることしかできなかった。
381嘆きの先にある光・余談@転載は禁止:2014/09/03(水) 19:35:05.84 0
今回の3人が歌う「TRUE OF VAMP」も例によって
タイトルで検索すればyoutubeで聴くことができます
ただこの曲についてはCD以上にDVDで3人の放つエネルギーを
より直接的に感じてほしいそんな曲ではあります
382名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/03(水) 19:36:41.46 0
>>380
ラストに

(つづく)

をつけ損ねましたorz
383名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/03(水) 22:22:28.87 0
『 スノウはまるで歌うようにリリーに語りかけた。』の一文で文章なのに歌のように聞こえてくる…思わずサントラ聞き直してしまったw
384名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/03(水) 23:56:11.88 0
避難所にベリ編(?)の続き投下しました

あゆみんストーリーが楽しくてなかなか先に進まないw
385名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/04(木) 01:39:02.25 0
おやすみにゃー
386名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/04(木) 06:02:26.06 0
あさ
387名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/04(木) 12:13:54.09 O
∩<やっつー
388名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/04(木) 17:50:46.82 0
ほる
389名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/04(木) 21:24:46.27 0
本編来ないかな?
390名無し募集中。。@転載は禁止:2014/09/04(木) 22:38:20.81 0
リリウム?
よくわからないけど、読み返して楽しみたいと思います。

でも、本編と戦国が気になって・・・
391名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/05(金) 01:21:18.26 0
おやぷみなさい
392名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/05(金) 05:35:45.89 0
朝ぽん
393名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/05(金) 07:08:21.82 0
              。・*.'        ・*.・。..・'゜〜☆
            。'゜  oノハヽo  ★' ゜
            .*'   从*・ 。.・)/  <みんなに良いことがありますよーに
            ・。  ( つ  つ   ゚  '*
                 (  ヽノ 。    ..・
                  し'(,_)  '・ * ' ゜
394名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/05(金) 07:51:04.97 O
みんなに良いことってさゆの盗撮が封じられることだぞ
395名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/05(金) 08:19:56.49 0
画像が全部消えてるのっ…!!
  从*T 。.T) ガタッ
  .r   ヾ
__|_| / ̄ ̄ ̄/_
  \/    /
396名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/05(金) 08:56:09.28 0
流出したら大変だったw
397名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/05(金) 10:17:35.64 0
 从*・ 。.・)<こんな事もあろうかとバックアップしておいてるの☆
 ( つ/ ̄ ̄ ̄/
 ̄\/ *´ー´*/ ̄
398『笑顔』過去編@転載は禁止:2014/09/05(金) 12:32:51.43 0
↑さゆが大変な中申し訳ありませんが続きを投稿します
失礼しますね
399『笑顔』過去編・7@転載は禁止:2014/09/05(金) 12:33:45.99 0
ソファーに座ると、はるなんは私に自分の事を話し始めた。
私はぼそっと相槌を打つだけだったけど、なんとなく彼女の事がわかった。
同じ地区に住んでいる女の子。
通っている学校は違うけど、住んでいる家は私の家と少し近い。
絵を見るのが好きで、今日は一人でこの美術館に来たらしい。

「私も絵を描いたりするんですよ」
「・・・え?」
「とはいっても、漫画やアニメのキャラクターのイラストを落書きする程度ですけどね」

そういって、はるなんはえへっと笑った。
素敵で、可愛らしい笑顔だと思った。

「彩花さんは、いつから絵を描いているんですか?」
「・・・いつから、かな」

はるなんの質問に、私はあいまいに答える。正直、自分でもいつからかは覚えていない。
お父さんが言うには、私はいつの間にか絵を描くようになっていたらしい。
まあ、あんな家で育ったんなら、仕方が無い気もするけど・・・
400『笑顔』過去編・8@転載は禁止:2014/09/05(金) 12:35:10.10 0
その時、時計の音が鳴り響いた。
私は立ち上がって、時計の時刻を確認する。閉館時間だ。

「あ、もうこんな時間ですね」

はるなんも立ち上がって、時計を見た。

「・・・どうしたんですか?」

その質問に私は答えず、後ろの方ををジッと見つめていた。
さっき咳払いをした係員の人が、私たちの方へ向かって来る。
でもその人は、私たちを通り越してそのまま進み、私の絵の元へ近づくと、その絵を壁から取り外した。
そして、私にその絵を手渡しながら、優しい声で言った。

「もう、持って帰っていいよ。一週間お疲れ様」
「・・・ありがとう・・・」

私はその人にお礼を言うと、絵を丁寧に丸めてから、ポケットに入っていた袋に包んだ。
私がそれをバックに入れるのを見て、はるなんは納得した様子だった。

「ああ・・・コンクールの入選作品の展示は、今日までだったんですね」
「・・・うん」
「でも・・・もしかして、一週間ずっとここに通っていたんですか?」

不思議そうに訊いてくるはるなんに、私は少し俯いて答えた。

「うん・・・「この子たち」が、寂しくないようにって」
「え?」
「一週間、知らないところで貼られたままじゃ寂しいだろうから・・・私が、一緒にいてあげようって・・・」

そこまで言って私は、今の自分の言葉をこの子が聞いて、私の事をどう感じるだろうと心配した。
401『笑顔』過去編・9@転載は禁止:2014/09/05(金) 12:36:20.56 0
たかが絵にそこまでするなんて、相当変わった子だと思ったかな・・・

「そうだったんですか!」

はるなんは、少し声を張り上げて頷いた。そして・・・

「彩花さんは、とてもその絵を大切になさっているんですね!」
「え・・・?」
「私、感動しました!!」

私は唖然として、彼女の顔を見つめた。
はるなんは、目を輝かせながら、私を笑顔で見つめている。

・・・やっぱり・・・
この子も、少し、変わってる。


美術館を出た私たちは、その敷地内のベンチに座った。
外はまだ明るくて、もう少しで夕方という時間だ。

「彩花さん、さっきの絵を、もう一度見せてもらえませんか?」

はるなんが私にこうお願いしてきたけど、私は正直、あまり気が進まなかった。
そもそも、私は自分の描いた絵を、あまり他人に見せたくない。
町のコンクールに出したのも、お父さんが勝手に応募してしまったからだった。
それがなければ、私はこの絵を家の外に出そうとは思わなかっただろう。
私が黙っていると、はるなんは真剣な目を向けながら言った。

「私、あなたの絵が、とても・・・とても気に入ったんです。だから・・・お願いします!!」

両手を合わせて、しかも少し泣きそうな目になって・・・
私は、ため息をついてからバックの中に手を入れた。
402『笑顔』過去編・10@転載は禁止:2014/09/05(金) 12:37:05.30 0
「・・・はい」
「ありがとうございます!!」

はるなんは嬉しそうにお礼を言いながら、私から絵を受け取ると、それをゆっくり開いて眺め始めた。
しばらくの間、はるなんは無言で絵を見続けていた。
ふと私は彼女の隣で、なんだかだんだん恥ずかしくなっていく自分に気付いた。
自分の描いた絵を見られ続けるのもそうだが、女の子と一緒にベンチに座ってこうしてゆったりしている自分にも、そう感じていた。

今まで、こういうことなかったから・・・照れるな・・・

「・・・彩花さん」
「ひゃい!」
「・・・どうしました?」
「な・・・んでもない」
「そうですか・・・あの、ちょっと訊いていいですか?」

はるなんは、私の絵を指差しながら質問してきた。

「そもそも、この絵はなんの絵なんですか?」

私の絵に描かれていたのは、六人の女性だった。
全員が、真っ白な衣装に身を包んでいて、踊り歌っている。
その周りには、沢山の観客が彼女たちに向かって歓声をあげていて・・・

「これは・・・コンサートをしているところ」
「コンサート?じゃあ、歌手の皆さんなんですか?」
「歌手・・・というより、「アイドル」」
「アイドル?」
403『笑顔』過去編・11@転載は禁止:2014/09/05(金) 12:38:03.89 0
はるなんは、首を傾げながらも、再び絵を指差した。

「でも、ここに描かれている真ん中の人は、もしかして彩花さんですか?」

はるなんが指をさしていた場所には、黒髪で長髪の女性がこちらに綺麗な笑顔を向けている。

「うん・・・そう。よくわかったね」
「はい。とてもよく似てらっしゃいますよ。でも、どういうことですか?随分大人の方に見えます」

その質問に、私はゆっくりと説明し始めた。

「この絵は、私が想像して描いた、私の未来の姿なの」
「想像で?」
「うん・・・「もし、こうだったらいいな」って考えて、浮んだ風景を描きだしたの。全て、私の妄想」
「なるほど・・・じゃあ、将来彩花さんは、アイドルになりたいんですか?」
「え!?う・・・ちがっ・・・」

私は顔が熱くなって、俯いてしまった。

私が、アイドル・・・ありえない!!

確かにそう願っていた自分がいたから描いてしまっているはずだけど、改めて他の人に言われると・・・

「でも、彩花さんならなれると思いますよ」
「え?」
「だって、とても可愛らしいですし・・・」
「違う!!違うの!!そうじゃないの!!」

私は、「可愛らしい」という言葉が頭を何周も駆け巡るのをそのままにしながら、全力で否定した。
404『笑顔』過去編・12@転載は禁止:2014/09/05(金) 12:38:59.20 0
「私がなりたいのは、画家なの!!絵を描く人!!」
「あ、そうなんですか」
「そう!!画家!!アイドルじゃないの!!」

私は少し息を切らしながら、はるなんの顔を見つめた。
はるなんは、ニコニコしながら私の様子を眺めている。
私は、少しからかわれた気がして、視線を逸らした。

「あの、ごめんなさい。気を悪くしないでください」
「・・・・・・」
「本気で、そう思ったんですよ。あなたなら、と」

はるなんは申し訳なさそうな口調で謝ると、急にこんなことを訊いてきた。

「このアイドルグループは、なんて名前なんですか?」
「え?」

私は、彼女がその質問をする意味がわからなくて、一瞬呆然としてしまった。

グループ名・・・

でも、その直後・・・その質問に対する答えが、頭に急にフワッと浮んできた。

「スマイ・・・」
「住まい?」
「いや・・・スマ・・・レ?」

私がなんとなく頭に浮ぶ言葉の欠片を、なんとか形にして口から出そうとしていると・・・

「スマイル、じゃないですか?」
「え?」
「「スマイル」・・・とても素敵なグループの名前です」
405『笑顔』過去編・13@転載は禁止:2014/09/05(金) 12:39:49.66 0
はるなんは笑顔で頷くと、勝手にそう名付けてしまった。そして・・・

「わかりました。じゃあ、『笑顔』ですね!」
「・・・え?」
「この絵のタイトルです」

そう言ってはるなんは、私の絵を私に見せるように掲げた。

「『笑顔』?」
「はい。だって、この人たちの名前が「スマイル」ならピッタリでしょう?それに、この人たちの顔!」

そして、「彼女たち」の顔を指差しながら、こう言った。

「皆、こんなに輝くほど素敵な笑顔をしているじゃないですか!!」

少し興奮した様子で、私の顔に絵を近づけてきたはるなんに、私は呆気にとられてしまった。

タイトルって・・・
絵に、名前を付けるの?

「どうですか?」
「・・・えっと・・・」

私は、はるなんの紅潮した顔を眺めながら考えてしまった。

今まで、一度も自分の描いた絵には名前を付けるという発想すら湧いてこなかったけど・・・
『笑顔』・・・『笑顔』か・・・
悪く、ないかも・・・
406『笑顔』過去編@転載は禁止:2014/09/05(金) 12:41:27.48 0
とりあえずここまでです
また時間があれば投稿しますね

みなさんお疲れ様です
407名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/05(金) 13:21:30.05 0
あやちょがドキマギしてる感じがめっちゃ想像できて読みやすいっす!
やっぱこれ面白いなーwww
408名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/05(金) 13:23:30.00 i
一番本編の世界に近い外伝が避難所に追い出されたベリ編とかなんだかなぁ
409名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/05(金) 13:33:35.18 0
一番本編の世界に近い外伝を自分が率先して
書いてくれるというのなら大歓迎だよ
410名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/05(金) 14:34:45.90 0
どこだろうが読めるなら関係なくね
411名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/05(金) 15:10:43.31 0
そのベリ編の作者が通りますよっと

避難所でも楽しくワガママに書いてます
読んでくれるっていうのがありがたい
412名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/05(金) 18:50:06.68 0
『笑顔』というタイトルのきっかけははるなんだったのか
413名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/05(金) 23:02:47.45 0
414名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/06(土) 06:00:29.46 0
ぽん
415まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/09/06(土) 09:54:56.44 0
こんにちは

久々の投稿でどこまで行ったっけとかなりながらです

お付き合い下さい
416まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/06(土) 09:56:23.69 0
一艘の舟が川を下っていく。
緩やかだが確実に……。



コツン


やがて舟は岸へとたどり着いた。しばし静寂の刻。



チュンチュン

雀のなく声で遥は目を覚ます。
大きく伸びをしそれから周囲を見渡した。
葦の生い茂った場に舟は泊まったようだ。
魔力の回復具合は中くらいというところ…。


遥はもう一度大きく伸びをし、欠伸をすると近くで寝ている3人を突っつく。


「くどぅ、ここは?」
「さぁ?ハルにもわかんねっス。
 起きたらここに着いてました。」

目を覚ました小田は遥と同じように周囲を見渡す。
葦に囲まれた地形。小田は何か違和感を感じた。
417まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/06(土) 09:59:25.57 0
(何か不自然だ……。)

そして川へそっと指を差し込む。
遥は急に川へ指を入れた小田の動きを見ていたが
その指にかかる水の流れを見るや否や遥と小田は全てを悟った。

明らかに水の流れは舟が泊まるほどのものではない。


「やられたね……。」
「どうやらそのようですね…。」


2人がそんな呟きをすると同時に周囲から火の手が上がる。

遥は溜め息をつくと魔力を練り上げた。

「くどぅ、まずはこの火を何とかしないと活路が開けんぞ!」

小田はすでにその手に愛銃を構えている。

「わかってますって!
 てか、水の魔法使えるやつに対して火とかバカでしょ。」

遥は川の水に魔力を注ぎこむ。
するとひとつのうねりとなってたちまち水の縄と化した。

「ハル武双の時間だ!」

ジュ
ジュ
ジュー
418まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/06(土) 10:02:41.90 0
遥が水の縄をふるう度に触れた火はその勢いを失っていく。

「お、オイ!な、何が起きているんだ!?」

いつの間にか、香も譜久も起きていたようだ。
起き抜けの頭には少々刺激的だったのかもしれない。

「くどぅ、舟が保たない!
 陸を走るぞ!」

小田が譜久の側へ張り付き遥へと叫ぶ。

「チッ、全く……癪だな。
 何でこんなにハル達狙われてんだ?
 
 あー、譜久さん、香さん行きますよ!」

そして一同は遥の切り開く活路を走る。
だが、元々遥の背丈より高い葦が生えていることに加えて
火を放たれたことにより視界がとても悪い。


ふと遥は気づくと葦の茂みの中に香と2人で立っていた。
小田と譜久の姿はない。
419まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/06(土) 10:05:39.85 0
「小田ーーーー!返事しろーーー。」
「譜久さーーーーん!」

2人は声の限り叫んで見たが返事が返ってくることはない。
突然護るべき主を失った香はパニック状態に陥っている。


そしてそこを狙い澄ましたかのように伏兵が現れた。


「マジかよ……ハルへとへとなんだけど。」

度重なる襲撃の度に魔法を使ってきた遥。
練り上げる魔力も次第に小さなものとなっていく。

(いやいや……これはマズいっしょ。)


はぐれた譜久達も気になるがまずは自身が助からなければ意味がない。
近くの相手には蹴りを、遠くの相手には水塊を飛ばし少しずつ囲みを突破していく。

だが、元々多勢に無勢。
徐々に遥と香は追いつめられていく。
420まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/06(土) 10:06:49.39 0
香は既に戦意を喪失していた。それでも遥は活路を探す。
ともに助かり生き延びる道を考える。


(考えろ…考えろ…思考を止めるな…)

『どぅー!』

(あーもう、まーちゃんうるさいよ…
 ハルは今立て込んでんだからあとに……ん?)

『どぅーーーーー!』

「ま、まーちゃん!?」
遠くから微かにだが自分を呼ぶ声が聞こえる。
こんな喧騒とした中でもはっきりと捉えることのできる何度となく聞いたことのある響き……。

「まーーーちゃーーーん!!」
遥も声を限りに叫ぶ。
相手は突然叫び出した遥にギョッとした様子を見せた。

『どこだよ?D・O・どぅーーー!ここか!!』

ガウッ
小高な丘から一頭の白い山犬と2頭の馬が飛び出した。

「まーちゃん!!」


続く
421まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/09/06(土) 10:08:09.11 0
今日はここまで

あと4回ぐらいの更新で完結しそう
422名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/06(土) 10:15:18.24 0
まーどぅー再会キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
423名無し募集中。。。@転載は禁止@転載は禁止:2014/09/06(土) 10:20:51.27 0
かつてここまで頼もしいまーちゃんの登場があっただろうか?
424名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/06(土) 10:35:18.72 i
更新おつなのなの
まーちゃん△
この後のまーどぅ無双に期待です
425名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/06(土) 11:54:49.00 0
BGMも格好良いんだろうね
426名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/06(土) 13:19:41.21 O
キテタ━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!
427名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/06(土) 14:04:59.12 0
まーどぅーーーーーー!!!!
428名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/06(土) 14:49:02.73 0
なんか昔 d.o. ってエロゲーメーカーがあったのを思い出した
429名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/06(土) 19:20:10.95 0
|||9|‘_ゝ‘) <出番がないっ
430名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/06(土) 19:47:37.98 O
確かにww
でも、えりぽんは馴れてるだろ
431名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/06(土) 21:42:06.21 0
それはそれでどうかと思うがなw
432名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/06(土) 22:41:00.42 O
       * ∠\`・* 。
        | /★`、 `*。
       ,。∩______フ *  
      + |||9|‘_ゝ‘) *。+゜歌の上手くなる魔法っちゃよ
      `*。 ヽ、  つ *゜*
       `・+。*・' ゜⊃ +゜
       ☆   ∪? 。*゜
        `・+。*・ ゜
433名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 02:03:34.67 0
( ^▽^)<♪
434名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 02:55:51.46 0
                                 。___________。
              ___ハヽヽ☆______  | 歌はね、          |
             〃  ∩从^▽^从        〃⌒i 上手い下手じゃない。.|
       ____|   ヽヾ "゙"゙"゙)    ..__i:::::::::::i 良いか悪いかなんだ。 |
      [__]___|    /⌒ヽ   〈 |ミ   [_]  :::::::::|.       ‐ 石川梨華 ‐│
       | ||___|___./ ソ ,'ヾ ノ ミミ,,,_,| ||    ::::::| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ゚̄
       |(______ノ /    | (_ノ__::| ||    ::::|
       | LLLLLLLL ゝ〜んソ  ゙|LLLLLL:| ||二二二_」
       |_||        し'.ノ^、_.ゝ     |_||     l_ll "'"'"'"
      "'"'"  "'"'""   (_ノ    "'"'"  "'"   "'"'"
               "'"'"'"'"'""'     "'"'"'"'"
435名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 04:20:14.52 0
おう懐かしいAAw
436名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 05:50:25.81 i
  *``・*+。
     `*。
      *。
 。☆ノハヽ   *
+川c ’∀´)*。+゚
`*。 ヽ  つ*゚*
 `・+。*・`゚⊃ +゚
 ☆  ∪~ 。*゚
 `・+。*・+ ゚
437afo ◆2chttAFOJc @転載は禁止:2014/09/07(日) 06:28:40.49 0
錦織おめ!
決勝頑張れ
438名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 07:29:37.04 O
ハ´ 。`ル<スゲー!決勝進出だー!マジスゲー!

ノリ*´ー´リ<うん、決勝戦も頑張って欲しいね

|||9|‘_ゝ‘)<絶好調みたいっちゃね

||c||* ^_〉^)<マサも応援するういる

川c ’∀´)<もっと調子良くなるように私が魔法をかk

Σハ;´ 。`ルノリ*;´ー´リ|||9|;‘_ゝ‘)||c||*; ^_〉^)<ダメッ!滑って転んで負けちゃうっ!

川c; ’∀´)<フェアじゃないとかの理由じゃないんですか・・・・
439名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 08:30:24.61 0
  *``・*+。
     `*。
      *。
 。☆ノハヽ   *
+川c `.∀´)*。+゚
`*。 ヽ  つ*゚*
 `・+。*・`゚⊃ +゚
 ☆  ∪~ 。*゚
 `・+。*・+ ゚
440名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 08:30:39.00 0
まーちゃん毛色は白だったのね
モロの子供の登場シーンを連想した
サンみたくくどぅーが乗るのかな楽しみ
441名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 08:33:23.96 0
雪のような真っ白が俺のイメージだったな
中の人が北国生まれだし
442名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 08:55:58.87 0
>>439
ヤスw
443名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 09:16:15.34 0
モロみたく自分も白を連想してたら
グレーor鉛色でケルベロスみたいな毛色だと本編で読んだ気がしたから・・・
何かとごっちゃにしてしまってる気のせいな気もするけどw
444名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 10:17:55.69 0
>>443
遡る必要がありそうですな
445名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 10:54:07.59 0
本編で狗姿の描写ってあったっけ?なくってみんなで好き勝手言ってた記憶がある・・・
自分もモロみたいな姿かゲームの大神に出てくるアマ公みたいな感じに想像してた
446名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 13:06:21.11 0
さやしりほ
447443@転載は禁止:2014/09/07(日) 13:31:27.64 0
誤報だった場合の責任を感じ、M13地区トンネル決戦、魔法協会脱出時と
自分で記憶してる限りは確認してみましたがそんな描写見当たりませんでした;
やっぱり何かと記憶が混じったようです、お騒がせしてしまい申し訳ありませんでした。。m(_ _)m
448名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 13:33:27.61 0
>>439
不死王光臨
黄泉返り?
上京?
遡上?
449名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 14:16:41.46 0
>>447
気にせんで
450名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 14:51:35.42 0
RPG風ゲームの修正をさせてもらいました
どうやらメニューやセーブをしたときに多発していました

(ver2.1)
http://www1.axfc.net/u/3314635/ookami

本編に描写は無かったけど狗姿は白にしておけばよかった…
451名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 15:50:33.95 O
まーちゃん無双マダー(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
452嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/07(日) 17:43:33.73 0
>>376-380より
「こんな話に付き合ってられないわ! もうリリーには近づかないで!」

そう捨て台詞を残して、マリーゴールドがリリーの手を引いて去っていく。 
ただ独り、哀しげな顔のままでとり残されるスノウ。

そんな彼女の前に、訳知り顔で現れたのはファルスだった。

「やあスノウ。どうやら振られちゃったみたいだね」

そこでふらついてよろけるファルスだったが、
差し伸べたスノウの手を取って、どうにか体勢を立て直す。

「ごめん、今日もちょっと、貧血気味でね」

「ファルス……」

「駄目じゃないか、彼女を不安にさせるようなことを言ったら」

優しく言い聞かせるようなファルスの言葉に、スノウが哀しげに目をそらす。

「あたし達は、どうなってしまうの」

しかしファルスはその問いに答えることなく、スノウの身体を引き寄せた。

「少し踊ろうか」

「ちょっと何するの、何するのよ」

嫌がるそぶりのスノウにも構わず、強引にエスコートしてステップを踏む。
ファルスから顔をそむけながらも、諦めたかのように踊りに付き合うスノウ。
453嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/07(日) 17:44:00.44 0
間近でスノウの顔を覗き込みながら、改めて遥は思う。
本当に綺麗な人だ。でもなんで、いつもこんなに冷たくそして哀しげなんだろう。
もし笑顔になれば、より華やいだ美しさを放つだろうに。
心の内に抱える何か憂いを取り除くことができれば、彼女に笑顔は戻るのかな。
ハルにそんなことができるとも思えないけど、でもいつか、
暖かく微笑む彼女と楽しげに笑いあえるような、そんな日が来てほしい……。

「どう、結構上手いだろう。昔習ったことがあるんだ」

「やめてよ、今そんな気分じゃない」

「何を怖がってるんだよ。もしかして、男の子と踊るのは苦手?」

「そんなんじゃない」

「じゃあ……僕が怖いの?」

「あなたなんか……怖くないわ」

嗜虐的な笑みを浮かべるファルスの問いに、
強気を装って答えるスノウの声は明らかに震えていた。

「ねぇスノウ。僕達は夢を見ているんだ。みんなで同じ夢を。
それはとても幸せな夢だ。怖れることは、何もない」

そしてファルスは、踊りながら歌を口ずさむ。
454嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/07(日) 17:44:27.30 0
夢を見よう 同じ夢を見よう ここは理想郷だ
夢を見よう 想いのままに このまま幸せな夢を
宝物を閉じ込めるみたいに

If ever I should say to the moment
Stay on! You are so beautiful!
時よ止まれ 君に永久の美しさを

共同幻想ユートピア 一人で見る夢は寂しいけれど
みんなで至福の夢を見よう

共同幻想ユートピア 一人で生きるにはこの世は酷だ
だから同じ夢を見よう


「離してよ……離してよ!!」

ファルスの腕の中から逃れようとスノウが激しく抵抗するが、
逆にスノウの身体を抱き寄せるファルス。

「僕はね、君達にずっと純潔でいて欲しいんだ」

「ファルス……あなたの穢れた唇で、何を言っているの?」

震えた声で弱々しく拒絶するスノウをさらに強く抱き、

「怖がらないで。僕がずっと……一緒にいてあげるから」

何か強い意志を伴ったその言葉とともに、腰の短剣に手をかけて大きく振り上げた。
455嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/07(日) 17:44:58.35 0
「!!」

なぜファルスがスノウを刺そうとしているのか、まったく理解できない。
しかし遥にこのまま見過ごすことはできなかった。
ファルスの身体を乗っ取ってでも制止しようとした、その瞬間。

「嘘よ。あなたは……嘘をついているわ」

言葉とは逆に、まるで肯定しているようにも聞こえるスノウの呟き。
それをきっかけに、遥の介入を待たずしてファルスの身体から力が抜け、
その抱擁から逃れたスノウが、後ろを振り返ることもなく走り去っていった。

結果的にスノウが救われたのは良かったものの、理解に苦しむ謎が多すぎる。
バンシーを見極めるためこれまで多くの人物を注視してきたけど、
怪しさで言えば宿主であるファルスが一番深い謎を隠し持っている。
まさか推理小説で探偵が実は犯人だったという結末があるように、
宿主のファルスが実はバンシーだったなんてオチはさすがにないだろうけど……。
どの謎がバンシーに繋がるものなのかまったく想像もつかず、遥は内心で頭を抱えた。

そしてしばらく硬直したように動きを止めていたファルスもまた、
走り去るスノウの背中を一瞥することもなく、肩を落としてその場から立ち去った。


雨降る森の奥深く。クランでの日々は漠然と過ぎていった。
シルベチカはいなくなったまま、月日だけが過ぎ去っていく。
まるで誰かが時間を閉じ込めてしまったみたいに、同じ毎日が繰り返される。
それはまるで……永遠にも思えるような、そんな時間だった。


(つづく)
456嘆きの先にある光・余談@転載は禁止:2014/09/07(日) 17:45:33.42 0
今回ファルスが歌う「共同幻想ユートピア」も例によって
タイトルで検索すればyoutubeで聴くことができます
457名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 17:48:25.78 0
リリウム懐かしい
早くDVD見たいな
458名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 18:35:09.38 0
>>450
本日もご苦労様です><
途中までプレイし少しづつは何だか勿体ない気がして
完成の暁には復習も込め一気に楽しんじゃおうと考えていたのですが・・・
泣いて笑って笑ってまた泣いてゲーム作者さんはまーちゃんの毛色は何色にしたんだろう?wと
開始より2時間半、、未だまーどぅーも登場しておりませんwwがメチャ2面白いです!

とそろそろお出掛けの時間なのでと一旦セーブしたのですが
BGMは流れてるのに黒画面から進まなくなっちゃいました;
状況はさゆが箱の魔法で5人の魔導師を捉えた後のセーブポイントで
そこまで使用してたスロット1から2にセーブ場所を変更した途端バグで先に進めなくなっちゃいました

長々と申し訳ありませんでした良ければ報告役立てて下さいありがとうございました♪
459名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 18:39:36.76 0
ご苦労様とお疲れ様の違いがわからないなら調べておいたほうがいいよ
わかってて使ってるならいいけど
460名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 18:42:10.58 0
ご苦労様は上からだったね
バタ2してたのでどうぞお許しを失礼しました;
461名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 19:03:48.00 O
>>459
なかなか良い管理職になれそうだね
もっとも部下からは蛇蠍の如く忌み嫌われるだろうけど
462名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 19:17:29.04 0
外でご苦労様なんて使ってお前のとこの若いのどうなってんの?ってなるよりは嫌われた方がマシだわな
463名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 19:18:36.21 0
ちゃんとした部下ならそんなに嫌わないさw
464名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 19:22:46.16 0
ホークスの王監督が辞めた時に他球団の監督が皆お疲れ様でしたって言ってる中で
巨人の原監督だけご苦労様でしたって言ってて楽天の野村監督が怒ってたのを思い出したw
465名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 19:23:40.49 0
>>461
お前も働いて後輩が出来たらわかるよ
466名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 19:24:30.37 0
さすが若やで
467名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 19:25:08.43 O
そりゃ確かにそうだがなw
狼は職場じゃないんだからもう少し肩の力抜いて気楽にやればw
468名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 19:26:22.25 0
言われた本人からの苦情ならまだしも
所詮は狼なんだから言葉遣い一つに細かく絡むのはやめよーぜ
言葉遣い云々よりそれでスレの雰囲気が悪くなる方がよっぽど迷惑だわ
469名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 19:28:20.77 0
絡まれた本人が素直に謝ってるのに電話がイチャモンつけるから悪いんだろ
フルボッコにあって焦ったのか草生やして誤魔化してるし
470名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 19:31:28.34 0
引きこもりのニートに職場とプライベートの切り替え求めても無駄だと思うよ
471名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 19:31:36.64 0
俺は別にここでご苦労様が悪いとは書いてないよ
わかってて使ってるならいいって書いたでしょ
ただリアルでご苦労様ご苦労様言ってたら顰蹙買いそうだからチクッと刺しといた
まあお節介だったなすまんすまん
472名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 19:34:51.55 0
まあ余計なお節介と言えばその通りだわな
もしリアルで>>458が顰蹙を買ったとしても
それでこのスレの誰が迷惑をこうむるってわけでもないしw
473名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 19:35:47.84 0
>>470
いきなり管理職だの部下だの言い出した電話のことだよな
474名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 19:36:29.81 0
はいはい
電話が悪い電話が悪い
終わり終わり
475名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 20:16:59.43 0
>>458
遊んでもらってありがとうございます!
導入編とまーどぅ編のつなぎの箇所修正しときます
とりあえずはタイトルでまーどぅ編からはじめるを選んでもらえるとつづきが遊べるかと

あと挨拶の件は全く気にしてないので大丈夫ですw
476名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 20:55:59.99 0
挨拶で盛り上がり過ぎw
マジレスするとお疲れ様もご苦労様も上から目線これマメな
477名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 21:38:33.69 0
>>470
こういうレスするやつもいるんだなこのスレ
478名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/07(日) 22:30:56.53 0
           rC            
          (__`ソ グツ     (⌒ヽo
           Y     グツ   (⌒(_)   館長さん直伝のスープ!!
          r彡>-―.■.―-<ミ>       おいしくな〜れっ♪
   ____  `Y. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.l'´         ______          
   |  ⊆⊇  |   |::       :|             || ̄//|§|
   | ̄ ̄ ̄ ̄|   |::       ミ  ノノハヽo∈  .||/__|llロ|
   | ロロロ ::oo |   |,___ ☆━と(^<_^*|9|| __|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄|||从~∀~从||| ̄`ヽ    `つ .||□△_∩■_||
   | ̄~|~ ̄|  | . ̄ ̄ ̄ ̄ ̄     〉 ,  ) ..||    0|0   ||
  .. |  ゚.|.゚  |  |              (_(_ノ  .||     .|.    ||


               ノノハヽ  生姜が決め手なの
               从*・ 。.・)
         _____(つ / ̄ ̄/____         .
       /        \/__/     /|       
     /rェェェ、      .rェェェ、     ./ .,i|  
    /_||_||_||____||_||_||___/ ノ|_」   
   :| .:.  ||_||_||_       ||_||_||_   |,ノ´    
    `| |^゙|___|7`"^⌒^`|___|7^'^1 |
479まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/09/07(日) 23:20:26.51 0
ちょっと短めの昨日の続きです
480まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/07(日) 23:23:38.65 0
小高な丘から一頭の白い山犬と2頭の馬が飛び出した。

「まーちゃん!!」


山犬の爪はあっという間に周囲の敵を蹴散らす。
そして、遥と香は後ろを走っていた馬上へと引き上げられた。
ちらりと2人が無事なことを確認すると大きくひと声吠えた。
そしてその場で跳躍すると沼地へと着地した。

宙に舞い上がる泥の塊。


突然起きた出来事にしばらくは馬上で茫然としていた遥はその光景を見て、考えるよりまず体が動いた。
すかさず手を中空に向け魔力を込める。

相手は目の前で起きている現象にわが目を疑った。
泥の塊がいつまでたっても落ちてこない。
それどころか山犬が毛を逆立てるとみるみる内に球状だった泥の形状が鋭利な棘へと変化する。

「「いっけぇぇぇ!!」」

遥がその手を振りおろすと一気に地上へと降り注いだ。


事前に打ち合わせていたわけではない。
長年の付き合いのある2人だからこそできる見事なコンビネーションであった。
481まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/07(日) 23:24:48.96 0
山犬とともにやってきた2人も腰から刀を抜き、活路を開いていく。

「「ひ、ひけぃ!ひけぃ!!総員退却!!」」

突如現れた軍勢に驚き相手は陣形を崩し逃げるよう去って行った。


遥は馬から飛び降りると一目散に山犬に駆け寄り飛びついた。

「まーちゃんのバカ!今までどこに居たんだよ!」
その目は心なしか潤んでいた。


だが、変身を解いた優樹は腰に手を当てている。


「どぅーこそこんなとこで襲われて、まさが来なかったらどうするつもりだったの?」

「フ、フン!まーちゃんの助けが無くたってあんな奴らハルの敵じゃないし。
 第一、まーちゃんがハルのとびきりな作戦の邪魔したんだからね!」

「はぁ?何言っちゃんてんの?これだからナルシストは」

「うっわマジむかつく!
 ハル、ナルシストじゃないってば!!」
482まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/07(日) 23:26:12.46 0
「あれ、感動の再開ってやつなんかね?」

「いまいち、わからんっちゃね……。

 それより、お香!久しぶりっちゃね。」


突如向こうの方で始まったケンカに唖然としながらも衣はかつての友人、香へ笑いかけた。


城へ行き譜久へ仕えることを選んだ香。


こちらも久々の再会だった。
感動を喜びたいところではあったが今の香の心配事は別にある。

「衣!!譜久様を、譜久姫様を見なかったか?」


続く
483まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/09/07(日) 23:28:42.08 0
たいへんだ

ストックがなくなったw
少し投稿間隔が開くと思います(こちらはねw)

自分のまーちゃん変身バージョンはもののけイメージが一番しっくり
来たのとリリウムの衣装から白にしています
484名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 00:36:08.95 0
おぉ〜まーどぅーかっけぇ!
485名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 00:36:58.42 0
まーどぅー通常運営
486名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 01:18:16.98 O
あっさりやっつけたなw
さすがのまーちゃん無双
487名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 06:54:19.94 0
まーちゃんが頼もしいw
488名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 11:55:10.73 O
从*・ 。.・)<5時間も放ったらかしなの
|||9|‘_ゝ‘)<これは5時間正座でお説教っちゃね
489名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 13:43:58.64 0
ワクワクドキドキ
 ☆ノハヽ
ノハ*゚ ゥ ゚)
 (=====)
 と_)_)
490名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 14:54:58.27 0
はうたんは放置で
それもまた喜びそうだがw
491名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 18:27:51.89 i
ノハ*゚ ゥ ゚)<放置プレイはぁぅぅぅぅぅー!
492嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/08(月) 19:24:45.71 0
>>452-455より
「あ〜面白かった」

「まーちゃん何があったか覚えてるの?」

バリバリと音をさせて煎餅を食べながらご満悦の優樹に、亜佑美が驚いたように尋ねる。

「もちろん! どぅーとやすしさんに会ったよ」

「あ〜でも、あたしも里保ちゃんに会えたような気がする。ただの夢かもしれないけど」

「聖も多分どぅーに会えたかも」

「そう言われてみるとうちも鞘師さんに会ったのかな?
まーちゃん他に残ってる記憶とかあるの?」

「う〜ん、なんかとっても楽しかったことだけはよく覚えてるよ」

「やっぱり優樹ちゃんも具体的なことはわかんないのか」

気絶から回復した4人は、一仕事を終えた和やかな雰囲気で紅茶を手に談笑していた。
しかし衣梨奈だけは、眉間にしわを寄せて険しい表情のまま会話にも加わらなかった。

オダベチカは連れてきたものの、他にえりができることは何かないんだろうか。
みんなのようにわかりやすく力になりたいのだけど、
そのためにどうすればいいのか、いくら考えてもまったくいい方法が思いつかない。
493嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/08(月) 19:25:20.22 0
「ただいま戻りました」

「あ〜はるなんお帰り!」

丸テーブルに着いた春菜にも紅茶が振る舞われ、
一息ついたところでさゆみが報告を促す。

「それじゃあバンシーについて調べてきたことを聞かせてもらえるかな」

その一言で、弛緩していた居間の空気がまた緊張したものに変わった。

「はい。バンシーは、本来は『嘆きの妖精』という名称の通り妖精の一種でして、
その特性は、泣き声を聞いた者の死を予言するというものです。
ここで重要なのが、それはあくまで予言であって呪いなどではないということ。
バンシーが相手に何らかの手を下して死をもたらすわけではないようです」

「それってつまりどういうこと?」

イマイチ意味がつかめていない様子の聖が訊ねる。

「バンシーの泣き声を聞いた者が、もしバンシーを倒すなど働きかけをしたとしても、
バンシーの予言、『もうすぐ死ぬ』という未来は変えることができないということです」

「えっ、じゃあ里保ちゃんとどぅーが今やろうとしてるのも意味ないってことじゃない??」

香音の驚愕の声とともに周囲にざわめきが起こる。
物語の世界に入り込んでバンシーさえ浄化なり倒すなりすれば、
2人が受けた死の宣告も解けるとばかり思っていたのが、
もしそうしても死の未来から逃れられないのなら、一体どうすればいいというのか。
494嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/08(月) 19:25:50.85 0
「はいはいみんな落ち着いて。はるなんの話はまだ終わってないよ」

さゆみの一声でどうにかざわめきも静まったものの、重苦しい空気は残ったままだ。
優樹の煎餅を食べる咀嚼音だけが、やけに大きく響く。

「最初に『本来』と言ったのは、現在は妖精としてのバンシーが
ほとんど見かけることのない非常に稀な存在となっているからなんです。
代わりに現れることがあるのが、アンデッドとしてのバンシーです」

「アンデッド……」

「現世に強い恨みや執着を残したために、成仏できずに蘇った死にきれざる者達。
アンデッドとしてのバンシーは、明確に相手を殺そうという意図で行動します。
そしてその泣き声は、予言ではなく聞いた者の生命力を奪う呪いとして相手を束縛します。
これはあくまで呪いなので、もし受けてしまってもバンシーを浄化するなり
倒してしまうことが叶えばその死の宣告から解放されるはずです。
問題は今回のバンシーがどちらに属する者なのかということですが……」

「うん、この書物に憑りついているのは間違いなく、アンデッドとしてのバンシーだね」

さゆみの断言で、ようやく重苦しい空気が少しだけ取り払われた。
里保と遥がしっかり役目を果たせれば、受けた呪いもちゃんと打ち払うことができる。
そのことがはっきりしただけでも、春菜の集めてきた情報の価値は十分だろう。

「他に何か、アンデッドとしてのバンシーについてわかったことはある?」

亜佑美の問いかけに、春菜が改めて説明を加える。
495嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/08(月) 19:26:20.33 0
「呪いについてもう少し詳しく説明しておくと、
すでにその呪いを受けてしまった鞘師さん達は、徐々に生命力が奪われていき
最終的には死に至ることとなりますが、泣き声を一度聞いただけなら
効果が現れるまで時間がかかり、おそらく少なくとも数週間の猶予はあるはずです。
ただ怖いのは、その泣き声をまた聞いてしまう、つまり呪いを重ねて受けてしまうと
その効果は何倍にも高まり急激に生命力を失ってしまうという危険な特性があります」

「ということは、いざバンシーと対峙した時に、
またその泣き声を聞いちゃうと2人とも一気に危なくなるのか……」

香音の呟きに春菜が頷く。

「はい。あともう一つ危険な武器がドレインタッチです。
バンシーの魔力を持った手に触られると生命力を吸い取られ、
それだけで死に至る危険性のある恐ろしい攻撃です」

「うーん、やっぱりアンデッドというだけあってとっても厄介な存在なんだね」

「でも大丈夫ですよ。鞘師さんとどぅーの2人なら、
絶対にバンシーの浄化を成し遂げてくれますから」

亜佑美の前向きな発言に、みんなもその通りだと同意する。
そんな中、春菜の説明の最中も難しい顔で黙りこくる衣梨奈の異変に聖が気づいた。

「えりぽん、どうかしたの?」
496嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/08(月) 19:26:46.66 0
今のえりにできること。
はるなんの説明の中に何か重要なヒントが隠れていた気がする。
あともう少し、もう少しで大きな道筋が繋がりそうなんだけど。
考えろ、とにかく考え抜いてそれを見つけ出さなきゃ。

その時、これまで聞いたさゆみの言葉が不意に衣梨奈の脳裏に蘇る。

「この書物に憑りついているのは間違いなく、アンデッドとしてのバンシーだね」

「残念ながら本の世界に入り込めるのは『鍵』となる人物と、
それ以外だったら人ならざる者くらいしか不可能でしょうね」

「自分に何ができるか、とにかくよーく考えてみな生田。
よーく考えて、そして思いついたどんな些細なことでも試してみて、
使えるものがあったらそれが何であっても最大限に利用して、
自分にできることを極限まで全部やり尽くしたその時に、
それがきっとりほりほと工藤への何かしらの手助けとなっているはずだから」

アンデッド……。
人ならざる者……。
使えるものはそれが何であっても最大限に利用……。

そうか!! 
やっと繋がった!!! 
えりにもできることがあった!!!!
497嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/08(月) 19:27:16.15 0
いきなり力強く立ち上がる衣梨奈。
椅子が音をたてて倒れ、みんなの視線が一気に集まるのも構わず、
噛みつかんばかりの勢いでさゆみに頼みこむ。

「すみません道重さん、黒電話借りていいですか!?」

「うんいいよ、好きに使ってちょうだい」

さゆみの返事とともにダッシュで居間を飛び出す衣梨奈を、
みんなはただ呆然と見送ることしかできなかった。

「なんかいかにもえりちゃんらしいけど、あれって一体どうしちゃったですか」

「生田にもようやく自分にできることが見つかったんでしょ。
まあそんな気にすることもないよ」

楽しげに微笑むさゆみに、周りも訳が分からないままつられて笑みがこぼれる。
その中で、春菜だけは真剣な表情でさゆみに質問をぶつけた。

「道重さん。リリウムという物語について、もっと詳しく教えてくれませんか?
バンシーを生んだきっかけとして、きっとこの物語の悲劇が深く関わっていると思うんです」

「そうだね、じゃあ生田が戻ってきたらその話をしておこうか。
でも覚悟しておいてね。このリリウムの結末も絡んだ完全にネタバレの内容になるから」

さゆみの言葉に、みんな期待と不安それぞれの様子で頷いた。


(つづく)
498嘆きの先にある光・余談@転載は禁止:2014/09/08(月) 19:28:51.05 0
さゆみの最後の言葉通り次回から完全なるネタバレの内容となります
ネタバレ回避の方はご注意ください
そしてようやくこの物語も本格的にクライマックスに進んでいきます
できればリリウムDVD発売日頃には終わらせたいと思っていますが……

あと黒電話は本来居間の隅にあるはずのものですが
演出の都合によりここでは居間の外にある設定にしたことご了承ください
499名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 19:39:50.12 0
おつおつなの
リリウム本編では出番がなかったえりぽん活躍クル━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ ?!!
さりげない気遣いにも感謝ですw

残念ながら舞台を見れなかった自分は読ませていただきます
その上でDVDが発売されたら確認のつもりで楽しみたいと思います

作者さんの熱気に煽られて自分も外伝を・・・・
構想は出来ているけどそれを文章に起こす能力が乏しいので・・・・
500名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 20:56:28.68 0
 
          r彡>-―.■.―-<ミ>      
   ____  `Y. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.l'´         ______          
   |  ⊆⊇  |   |::       :|             || ̄//|§|
   | ̄ ̄ ̄ ̄|   |::       :|          .||/__|llロ|
   | ロロロ ::oo |   |,_____,|        ..|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄|||从~∀~从||| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||□△_∩■_||
   | ̄~|~ ̄|  | .. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄           .||    0|0   ||
  .. |  ゚.|.゚  |  |                   ||     .|.    ||
                         ∋oノノハヽ
                           |||9|‘_ゝ‘)
               ノノハヽ        (o旦o)      〜へ_/⌒ヽ   
               从*・ 。.・)         し--J               `l
         _____(つ日と)_____         .            [] ミ  
       /                   /|   ノノハヽ        ノノハヽ∩ 
     /rェェェ、      .rェェェ、     ./ .,i|   ノハ*゚ ゥ ゚)        (^〈_^*リ /  ミ  
    /_||_||_||____||_||_||___/ ノ|_」    (=====)        (⊃  / 
   :| .:.  ||_||_||_       ||_||_||_   |,ノ´      と_)_)         し--J
    `| |^゙|___|7`"^⌒^`|___|7^'^1 |
 
 
501名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 20:57:38.01 0
まーちゃん煎餅咀嚼音キターww
そうかもうすぐDVDも発売なんだな
外伝と合わせて楽しみだ
502名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 20:58:17.33 0
>>500
ちょwどっからツッコめばいいんだwww
503名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 21:46:49.99 0
とりあえずだな・・・姐さんお元気そうで何より
504名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 21:50:58.69 0
話は進まないまま(リアルの)時間だけが過ぎていく…
505名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 21:51:43.19 0



香音は昨夜里保から受けた電話を思い出しながら、衣梨奈、里保、聖と並び歩いていた。
電話口で香音は里保に何の気なしに「その子は魔法使いなのか」を尋ねた。
答えはノー。香音はその時妙な感覚に陥った。

魔法使いでは無い女の子と衣梨奈たちが偶然出会い、夏休みも終わり掛けた一日を使って
遊びまわったという話に、理由のわからない違和感を覚えていた。
それは小さな小さな違和感で、寝るときには忘れてしまって
衣梨奈達と会って思い出したけれど、強い風が何度も髪を巻き上げるうち、また忘れてしまった。

それよりも今朝はっきりと気になったのは、一緒に衣梨奈や里保達と待ち合わせた聖のことだった。
その表情の奥に沈む静かな戸惑いと、大仰に風にはしゃぐ身振りとが
少しだけ痛ましくて、自分以上に彼女が戸惑っていることを知る。

だけど香音は聖にも衣梨奈にも何も言わなかった。
変わらないようで、毎日なにかが少しずつ変化している。

きっと10代のある年の夏休み、その最後の数日はとても特別。
その特別な時を、衣梨奈や里保が共に過ごすことを選んだ。きっとそれは特別な女の子。
この先もう二度と会えなかったとしても忘れることは決して無いような、そんな存在になるだろう。
そしてその場に、聖や香音も居ることを求められた。
それが昨夜の電話の意味ならば、やっぱり衣梨奈や里保にとって
香音も聖も、特別なのだ。
506名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 21:53:04.39 0
聖や衣梨奈や里保が紡ぐ青春。それもいい。
友人たちのそんな姿を眺め、これからも毎日小さな変化を感じながら
秋を迎え、冬を迎えられたならうれしい。
そんな風に考えて、香音は気楽な心持で公園までを歩いた。


公園に差し掛かり、亜佑美や優樹や遥、それに猫の春菜が囲む輪の中に見知らぬ女の子を見つける。
可愛らしい女の子。だけど、想像していたのとは全然違う子だな、と香音は思った。
活発そうとか、大人しそうだとか、そういう一目見て感じるような印象が浮かばない。
どちらとも言えるし、どちらとも言えない。そんなミステリアスさをその少女は放っていた。

電話口で一度、ここまで歩く道すがらにも一度、里保の口から
「不思議な子」だと聞かされた。
香音からしてみれば里保だってよっぽど不思議な女の子だけれど
なるほど、その子も確かに不思議な雰囲気を纏っている。

「さくらちゃん、おはよう!」

衣梨奈が風の中大きな声を出すと、少女はニコリと笑って応えた。

「おはようございます、生田さん、鞘師さん!」

力強い声。
だけど想像以上に可愛らしく明るい声が聞こえて
香音は小さく微笑んだ。
507名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 21:53:55.15 0
衣梨奈と里保がさくらに駆け寄る。
香音は、隣を歩く聖が些か緊張しているのを感じて
笑顔でその手を取って、みんなの輪に歩み寄った。

「そちらが?」

「うん、昨日言ってたふくちゃんと香音ちゃん。
 えっと、譜久村聖ちゃんと鈴木香音ちゃんだよ」

里保の紹介にさくらが二人を向く。
香音は、側に立ったさくらのことを小柄だなと思った。
背の低い自分よりももっと小さくて、可愛らしい。

「小田さくらちゃんだよね?里保ちゃんたちから話は聞いてるよ。よろしくね」

香音が言うと、さくらはキュッと目を細めて笑い、よろしくお願いしますと頭を下げた。

「あ、えっと私は譜久村聖だよ。よろしく」

聖も慌てて後に続く。さくらは聖にも同じように頭を下げた。
暫くさくらは香音と聖をじっと見つめ、口の中でその名前を繰り返していた。

それから香音たちは集まっている面々にも一頻り朝の挨拶を交わしていく。
風の音がうるさくて、自然と声が大きくなるのが可笑しくて、大人数で集まるのも楽しくて
みんな朝も早くから随分とテンションが上がっていた。

そうしている間、さくらの視線が自分や聖によく届いていることに香音は気付いたけれど
それに何か意味があるとは思わなかった。
ただ里保や衣梨奈にまで不思議な子と言われる普通の女の子、さくらに俄然興味が湧いてきて
早くもっと話せる機会があればいいと考えていた。
最近来たばかりの亜佑美とだってまだそんなに話せているわけじゃないけれど
何せさくらはもうすぐどこか他所の街に帰ってしまうのだ。
508名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 21:58:40.52 0
台風のせいか、風が騒ぐ街に人の気配は少なかった。
公園を出ると街路樹の葉が道に散らかって、それをまた風が巻き上げる。
目まぐるしく色々なものが眼前を横切り、歩いているだけで気分が高揚していく。

8人と一匹は大所帯を成して人気の少ない通りを歩いて行った。
衣梨奈の提案で、昨日行けなかったお寺を目指す。

そこはこの街で一番大きな、何かしら由緒のあるお寺で
広い境内にそびえ立つ巨大な松林の奥に立派な本堂が鎮座していた。
外には大きな御堀がある。
風を嘲るように亀がちょこんと鼻先を出していた。

香音はさくらと話したいと思いながら中々近づけないでいた。
優樹が遥と亜佑美の手を引っ張って、がっちりとさくらの側を固めている。
嬉しそうな優樹の様子を見ていると、香音の口に笑みが漏れた。

仕方が無いから聖の横をキープして、さくらたちの様子をのんびりと眺めていた。
509名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 21:59:06.92 0
「聖ちゃん的にはどう?」

尋ねると、聖が曖昧に笑う。

「可愛い子だよね。何か大人っぽいような、子供らしいような不思議な感じ。さくらちゃん」

「そだね。全体的に何か不思議」

だけど普通の子。
衣梨奈や里保が惹かれた理由が、分かるようなまだ分からないような。


ふと振り返ったさくらと目が合った。
今しがた話した声が聞こえはしなかったかとドギマギして香音と聖が慌てる。
さくらも少しだけ驚いた顔をしたあと二人に向けニコリと微笑みかけた。
510名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 21:59:33.38 0
お寺を一通り巡りはしゃいだあと、一度輪になって向かい合う。
さて次に何処に行こうかと衣梨奈に視線が集まったけれど
衣梨奈はそれ以上何も考えて居なかった。

「ちょっとえりぽん、えりぽんが決めないと動けないでしょ」

「何か他に観光スポット的な場所とかないんすか?」

里保や遥に詰め寄られ、衣梨奈が困り顔で笑う。

「別にこの街観光地やないけんねー。さくらちゃん、何かしたいこととかある?」

「いえ、私は皆さんと一緒に居られれば」

あーでもないこーでもないと輪になって悩む。
だけどそもそも目的がはっきりしていないから、なかなか妙案も浮かばない。
別にそうしてグダグダと過ごす時間を、誰も悪いとは感じていなかったけれど
同時に時間が勿体ないなとは感じていた。

ふと聖が口を開く。

「ひまわり…」

だけど小さな声は風に遮られた。
聞き返されて、聖が今度は大きく口を開けて言う。

「あのね、この近くにひまわり畑があるの。
 聖、毎年夏に見に行ってたんだけど、今年は見に行けてないから
 もし良かったら行ってみたいなと思って」
511名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 22:00:00.33 0
聖の提案に一同は感心の声を漏らした。


「流石聖ちゃん。花畑とかあたしじゃ出ない発想だわ」

「さすがふくちゃん、生まれた時からこの街に住んでるだけあるね!」

「キラーン!
 でもどうだろう、もうシーズン終わりかけかも。
 さくらちゃん、どうかな?」

「素敵ですね!是非行ってみたいです!」


「けってーい。じゃー行こう!」

「まーちゃん場所知らないでしょ!」

取りあえずの目的地が決まったことが嬉しくて
みんながまたはしゃぎ始める。
聖も、称賛の声に照れながら先頭を歩き始めた。

香音がそれに続くと、さくらが二人の側に寄り、話しかけてくる。

「譜久村さんと鈴木さんって、ずっとこの街で育ったんですか?」

会話はこれまでそんなにしなかったけれど
香音も聖も、もうすっかりさくらが居ることに慣れていたから
歩きながら自然に話すことが出来た。
512名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 22:00:26.62 0
「うん。聖も香音ちゃんも、生まれた時からずっとこの街にいるの」

「うちらの次に長いのってえりちゃんだけど、それでも3年ちょっとだからね」

「そうなんですか?」

「里保ちゃんとか優樹ちゃんとかくどぅーとかなんてまだこの街に来て半年も経ってないよ。
 亜佑美ちゃんは半月も経ってないね」

「じゃあ、お二人は大ベテランなんですね」

そう言って、心底感心したように手を打つさくらの姿が愛らしくて
聖と香音は顔を見合わせて笑った。

「そうなの。キラーン!」

「あ、『キラーン』って聖ちゃんのマイブームらしいから気にしないであげて」

「わかりました!」

近くのお花畑まで歩く短い道のりの間で、聖と香音とさくらもすっかりと打ち解けていた。
里保や衣梨奈がその様子を満足気に眺めついて歩く。

程なく聖が看板を示し、件のお花畑へ辿り着いた。


.
513名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 22:01:36.59 0
「これは…」

その『ひまわり畑』を見て、亜佑美が思わず呟いた。

「終わってる」

優樹も無遠慮に口に出す。

そこにあったのは、何百本ともしれない大きなひまわりが
花を萎れさせ、草臥れた茎を風に薙ぎ倒された、おおよそ「お花畑」のイメージとかけ離れた光景だった。

きっともう少し前ならば、それは見事に咲き誇っていたであろうひまわり達。
だけど今はもう、その堂々たる姿の面影も無い。

聖はその光景見て、暫し呆然として佇んでいた。
少し遅いかもしれないとは思っていたけれど、こんな「ひまわり畑」は想像していなかった。
去年まで見ていたこの場所は、この花はこんなんじゃ無かったから。
だけど、当たり前だけど花は枯れる。

この場所に、意気揚々と皆を連れて来たことが悲しかった。
まるで何かの終わりを暗示しているようで。

もし自分に魔法が使えたら、今すぐにでもここを満開のひまわり畑に戻すのに。
そんなことを考えると、聖はますます悲しくなった。

佇む聖に、誰も声を掛けられなかった。
514名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 22:02:06.32 0
と、さくらが花畑の中に足を踏み入れた。
倒れたひまわりを、それでも踏まないようにと気を付けながら。

そして萎れた花に顔を寄せると、振り返り聖に笑いかけた。

「さくらちゃん…何かごめんね」

聖が言う。だけど風に遮られて届かず、さくらは首を傾げて微笑んだ。

「ありがとう御座います、譜久村さん」

さくらの言葉を聞いて聖はますます申し訳なくなった。
周囲で他のみんなが二人のやり取りを見ている。

だけどさくらは何も気にせず、嬉しそうに言った。

「私ここに来れて良かったです。
 強い花も枯れる。枯れるときもこんなに力強いって、知ってるつもりだったけれど忘れてました。
 それを思い出させて貰いました」

さくらの笑顔が、衷心からの物と思えて聖は酷く戸惑った。
まるで本当に、この枯れた花畑を愛で、喜んでいるかのようで。

「満開の花畑も勿論綺麗だけど、このひまわり畑も綺麗なんだって、そう思えました」

「そうかな…?」

「はい!」
515名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 22:02:21.32 0
>>489-491
以前にそんなエロギャグ漫画を見かけたことがあるな
絵柄は古風だった
516名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 22:02:37.20 0
風吹き荒ぶ枯れたひまわり畑の中にさくらの満面の笑みが咲く。

その笑顔を見ていると、聖の心にもそこが素敵な場所のように輝き出した。

それは満開の花畑の突き抜ける爽やかさとは全く違う、寂しさと悲しさを包み込む逞しさの輝き。
花がただ見られるためだけにある飾りでは無く、生きていること。
この花畑を守る人の手に渡すよう、満々に種を抱いて枯れていく、その様は確かに美しいと思った。

その想いは、衣梨奈や里保や香音、亜佑美や遥や春菜にも伝播する。
確かに感じられる夏の終わり。
それは意味も無く寂しいことだけれど、秋が来ることが悲しいことのはずがない。
だからきっと季節の移ろうその瞬間も、目を凝らせば全部が輝いて見えるのだろう、と。

衣梨奈はすっかり感心し、無邪気に笑うさくらを目で追いかけた。
それはまるでさくらの言葉と笑顔が齎した魔法のようだと思いながら。

優樹だけが心底不思議そうに眉を寄せ、「いみがわからない」と呟いた。




517名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 22:04:22.95 0
さゆ卒までにとかこのペースじゃどう考えても無理なので
開き直ってのんびりやらせてもらうことにしました
遅くてごめん!
518名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 22:06:49.62 O
これはもう流石としか言いようがありません
519名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 22:07:15.86 0
ついに亀も登場キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!! w

のんびりペース大歓迎です
これからも楽しみにしています!
520名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 22:07:48.28 0
おつかれさまです
途中変なの挟んで申し訳ないです
521名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 22:15:08.23 0
きたぁ♪

もうゆったりとやりましょ
その分楽しみが続く!

ところで避難所にベリ編上げました
書いててだんだんテンションあがって来ちゃってるw
522名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 22:16:04.20 0
>>498
グフフどうやらあたしの出番のようね
523名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/08(月) 22:18:46.66 0
乙です!
524名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/09(火) 01:08:57.02 0
リリウム編は遂に確信に!舞台見れたんで違いを探しつつ楽しんでます

本編は読んでてやっぱ心が暖まる…でもこの後何が起きるのか楽しみのような心配なような…

ベリ編すっかりあゆみん主役になってますねw
525名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/09(火) 01:09:36.79 0
>>522
誰?
526名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/09(火) 02:28:58.29 0
おやすミキティ
527名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/09(火) 02:41:39.80 O
人ならぬものと言えば外伝で・・・・
528名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/09(火) 07:41:02.67 0
>>524
ここからまだまだベリ編続きます(笑)
529名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/09(火) 08:30:09.14 0
>>525
今イタリア旅行行ってる御婦人じゃないにょ?
530名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/09(火) 12:40:32.62 0
おーいつのまにか本編が
作者さん乙です
531名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/09(火) 13:33:30.10 0
        o    O     ○。
     _   。 0     。    ♪
     ┻┓∬( 。)  oノハヽo
       |||   。o∬从*・ 。.・)
     ( ̄ ̄ ̄o) ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄)
      i ̄○ ̄ i ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄o ゜ ̄i
      (__oノ_O__゜__。_ ノ
      ))   ((o   o。o))  ○(

ノノ刀 _l☆)キラーン!

从*´◇`)<聖ちゃん何やってるんだろうね・・・

ノノ刀G‘ _l‘)<ち、違いますの!決して覗きとか盗撮とかではなく!
         そ、そうですわ!今、このキラーンってのが聖の中でマイブームなのです!

从*´◇`)<それなら安心だわ

ノノ刀e _l‘)<なんとかごまかせましたが・・・・
         これでこのキラーンを多少強引にでも使っていかなくてはならなくなりましたわ
532名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/09(火) 15:51:34.93 0
本編作者さんは台風クラブが好きとみた
533名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/09(火) 19:40:09.24 0
>>531
キラーンがマイブームの理由はこれだったのかw
つーかズッキもそれで納得するなよww
534名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/09(火) 22:03:44.61 0
>>532
あの映画名作だよね
535名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/10(水) 01:07:38.39 0
>>531
鼻血出さないようにねフクちゃん
536名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/10(水) 04:22:35.18 O
フクちゃん的にはロリボディのだーちゃんの方が・・・・
537名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/10(水) 08:29:29.70 0
川c;’∀´)
538名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/10(水) 10:06:01.77 0
ぺたんこだからなあ
539名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/10(水) 10:24:20.23 0
難しいねえ
さゆが居ないか傍観者って状況が欲しいんだが
他にもけっこうな大魔道士多いし
540名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/10(水) 11:32:20.89 0
 ______
│        │
│从*・ 。.・) さゆみは傍観者に徹するの
│ ゞo【◎】カシャッカシャッ
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
        .|           .( ( | |\
           | )          ) ) .| |  |
        .|_(________(__.| .\|
        ./―             ―\≒
      ./      ノリ*´ー´リ       .\
      | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
      |______________|
541名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/10(水) 15:54:00.93 0
キープ
542名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/10(水) 16:14:38.47 i
マープ
543名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/10(水) 18:56:22.32 i
       * ∠\`・* 。
        | /★`、 `*。
       ,。∩______フ *  
      + |||9|‘_ゝ‘) *。+゜保全の魔法っちゃよ
      `*。 ヽ、  つ *゜*
       `・+。*・' ゜⊃ +゜
       ☆   ∪? 。*゜
        `・+。*・ ゜
544名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/10(水) 19:52:46.73 0
リリウムネタバレ警報発令中!!
以下4レス完全なるネタバレ中ですご注意ください
545嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/10(水) 19:53:24.45 0
>>492-497より
しばらくして、衣梨奈が居間に戻ってきた。

「どうしたのえりぽん!?」

「うん、別に大丈夫やけん、気にせんといて」

充血させた瞳で明らかに泣きはらした痕の見える衣梨奈だったが、
心配そうな聖の問いかけにも、これ以上の質問を拒むような口調を返す。

「自分のできることは全部やりきることができた?」

わざわざ黒電話を借りたことに深い理由はない。
ただ自分の携帯より黒電話を使った方が繋がりそうな、そんな気がしたから。
そのおかげかどうかはわからないけど、ちゃんと望んだ相手に連絡が取れ、
自分の想いをぶつけることができ、そして勝手極まりないお願いも了承してもらえた。
それがどこまで里保達の力になれるのかはわからないけど、
でもこれで自分のすべき役割は果たせたという、そんな達成感はある。

「はい!」

さゆみの確認の言葉に、ようやく迷いのない返事ができた。
そんな衣梨奈の姿に満足げに頷いたさゆみは、あらためてみんなのことを見渡す。

「それじゃあ生田も戻ってきたことだし、このリリウムの物語について、
悲劇の核心を説明するからね。最後にもう一度だけ念押ししておくけど、
完全なるネタバレの内容だから覚悟しておいてね」

さゆみの真剣な表情に、みんなの表情も自然と引き締まったものとなる。
546嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/10(水) 19:53:54.26 0
「全ての悲劇の発端は、このリリウムの物語から遥か3000年前。
ソフィ・アンダーソンというダンピールの少年がとある事件に巻き込まれて、
真祖たるトランプのクラウスに噛まれたことにより、
望まぬ不老不死の力を得たことから始まるの」

「3000年前……」

いきなりの壮大すぎる話に、唖然とするしかない一同。

「不老不死――新たなるトランプとなったソフィに死を与えられるのは、
真祖たるトランプのクラウスのみ。しかし彼は姿を消し、
ソフィの懸命の捜索もむなしく見つけ出すことができない。
死にたくても死ねないまま続く永遠の日々に疲れ果てたソフィは、
ともに永世を生きる仲間を求めた。そのために1000年前、
繭期のヴァンプ達を集め創設したのが、サナトリウム・クランなの」

望まぬ不老不死となり、死を求めてさ迷い歩く永遠の日々。
その凍りつくような時間の流れを想像し、春菜は思わず身震いがする想いだった。
だが、春菜の想いは当然のことだがあくまで想像の産物。
不老長寿というソフィに近い存在ともいえるさゆみにとっては、
これまで経験してきた長きに渡る歳月から、より強くその絶望が響くのではないか。
さゆみの心なしか哀しげな表情から、ふとそんなことを夢想する。

「とはいっても、新たなるトランプのソフィには真祖クラウスのように
噛んだ相手に不老不死を分け与える能力は備わっていない。
でも彼は諦めなかった。その血液を元にして精製し、試行錯誤を重ねた上で
ついには飲んだ者の老いを止める薬を作り上げたの」
547嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/10(水) 19:54:21.38 0
「老いを止めるってつまり」

「そう、不老を実現する薬ってことね。ソフィはその薬を、
繭期の症状を改善する薬だとして、集めてきたヴァンプ達に定期的に飲ませた。
さらにソフィは、事前に彼女達を噛んでイニシアチブを掌握し、
クランで暮らすために都合の悪い記憶をその都度消去改竄していった。
こうしてクランの住人は、本人の知らぬままに永遠の繭期を生きることとなり、
ソフィもファルスと名を変えてその一員となることにより、
ついに彼の望み、ともに永遠を生きる仲間を得ることができたの。
まあ、仲間というにはあまりに一方的な押し付けだけどね」

「ファルスって確かどぅーの……」

聖の記憶にうっすらと残るその名前。
さゆみも微笑んでそれを肯定する。

「工藤の宿主となっているのがファルスのようね。
そんなファルスがようやく作り上げた永遠の繭期も、
もちろん1000年もの長い歳月の中では色々トラブルが生じることだってあった」

「……繭期も1000年やってらんないでしょ」

「あぬみんサムい!」

ふと思いついたフレーズをこっそりドヤ顔でささやくも、
まさかの優樹に一刀両断されて凹む亜佑美を、みんな生暖かくスルーした。
548嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/10(水) 19:54:52.00 0
「薬との相性が合わずに死んでしまった者も大勢いるし、
不老が実現したのなら不死も同時に備わっているのではないかと試して、
ファルスが少女達を殺してしまったこともある」

「非道い……」

春菜が口を押えてうめくように呟く。その瞳はすでに涙で濡れていた。

「ホント非道い話よね。
そして、りほりほの宿主であるリリーも、トラブルを起こしたことがあった。
スノウとともに800年以上前からクランで過ごす古参メンバーだったリリーは、
500年前に自らが望まぬ永遠を生かされていることを知り、
普通に死ぬことができる元の身体に戻してほしいとファルスに懇願した。
でもファルスはそれを許さず、記憶を改竄してまた永遠の繭期を生きるよう強制したの」

「望まぬ永遠の生を与えるって、3000年前に自分がされた仕打ちとおんなじじゃないですか」

悲嘆と憤慨がないまぜになったような声で衣梨奈が指摘する。

「その通り。でも長い歳月が、それに気づかぬほどファルスの心を歪ませてしまった。
ともあれ、トラブルがあってもみんなの記憶を操作することで乗り切ってきたファルスは、
300年前からファルスの考えに賛同した紫蘭と竜胆の協力も得て、
よりスムーズにクランを運営していくことができるようになった。
ファルスの理想の世界は、このまま永久に続いていくかにも思えたのだけど……」

そこで言葉を切ったさゆみが、一旦紅茶で喉を湿らせた後、
まるで宣言でもするかのように厳かな声を発する。

「その崩壊のきっかけを作ったのは、シルベチカだったの」


(つづく)
549名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/10(水) 21:08:44.25 0
作者さんおつです!
550名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/10(水) 21:27:27.31 0
あゆみんw
あらすじを語り口調で改めて説明してもらえると分かり易くて良いね!てか…ホント完全なるネタバレだなww
551名無し募集中。。@転載は禁止:2014/09/10(水) 22:15:08.20 0
作者様、お疲れさまです。
原作を変えてオリジナル希望。
昔で言う、大どんでん返しで。
リリウムは、道重さんも生田さんも基本出ていないので・・・
ドキドキしたいっス
552名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/10(水) 22:29:10.42 0
最近またしても繭期がぶり返してきたんだけど
どう考えてもここの外伝作者さんのせいですありがとう
553名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/10(水) 22:34:50.11 0
荒らされてるからスレ元は貼らないけど
あと2週間でついにリリウムDVD発売!
またガッツリ繭期にハマりこめるよ!

1 名前:名無し募集中。。。@転載は禁止[] 投稿日:2014/09/10(水) 11:37:01.07 0
 
末満健一 @suemitsu
本日完成して稽古場に届けられた『LILIUM-リリウム少女純潔歌劇-』DVDのパッケージが、
手に取って嬉しい豪華ボックス仕様。封入されているブックレットには、
舞台写真と、劇中歌の全歌詞を掲載しております。発売まであと二週間!

2 名前:名無し募集中。。。@転載は禁止[] 投稿日:2014/09/10(水) 11:37:35.09 0
 
末満健一 @suemitsu
特典映像「永遠の繭期の終わり-LILIUM LAST DAY-」は
僭越ながら僕が撮影・編集を担当させていただきました。
芝居の流れや本番中の役者の袖周りの動きを熟知している演出家だから撮れる、
舞台裏の映像が満載。大阪公演千秋楽の、あの最後のカーテンコールも収録しております!

3 名前:名無し募集中。。。@転載は禁止[] 投稿日:2014/09/10(水) 11:38:11.89 0
 
末満健一 @suemitsu
特典映像はもう一種。工藤遥が公演中になにやらいろいろカメラを回しておりました。
こちらもお楽しみに。
その他、オーディオコメンタリーや痒いところに手が届くシーンチャプターなど盛りだくさん。
『LILIUM-リリウム少女純潔歌劇-』DVD発売まであと二週間。よろしくお願いいたします!!
554名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/10(水) 22:54:49.14 0
うおー見てー!!ってFC先行かと思ったら一般でも買えるのか?予約してなかった…今からしても発売日に届くかな?
555名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/10(水) 23:09:27.07 0
余裕で買える
556名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/11(木) 00:00:05.20 0
ありがと早速予約した
557名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/11(木) 02:09:17.23 0
|||9|‘_ゝ‘)<・・・うちは出とらんから寂しいと
ノハ*゚ ゥ ゚)<(私が出てない間に、あやちゃんがくどぅーに惚れてしまうだなんて・・・)
558名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/11(木) 02:10:03.03 0
おやさゆみん
559名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/11(木) 07:53:50.24 0
ノハ*゚ ゥ ゚)< 朝ですよーーー
560名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/11(木) 10:47:16.35 0
はううう
俺設定が本編さんや皆さんと違いすぎるかもしれんなあ
まだ発表してないけど
561名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/11(木) 16:49:07.74 0
从*´◇`)<age
562名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/11(木) 21:33:17.51 0
       * ∠\`・* 。
        | /★`、 `*。
       ,。∩______フ *  
      + |||9|‘_ゝ‘) *。+゜保全の魔法っちゃよ
      `*。 ヽ、  つ *゜*
       `・+。*・' ゜⊃ +゜
       ☆   ∪? 。*゜
        `・+。*・ ゜
563名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/11(木) 23:56:40.08 0
慣用句辞典
564名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/12(金) 02:56:15.30 0
エリリウム
565名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/12(金) 06:02:24.65 0
今日は運転免許書き換えに行く
566名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/12(金) 08:59:26.52 0
書けよ書けば分かるさ
567名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/12(金) 12:19:18.19 0
迷わず書けよ書けばわかるさ
バカヤロー!!
568名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/12(金) 12:48:23.96 0
免許書き換えてきた
569名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/12(金) 17:19:23.28 0
>>547
>「……繭期も1000年やってらんないでしょ」

あゆみん、まさかのBerryzネタwww
クソワロタ
570名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/12(金) 18:16:13.83 0
> 風吹き荒ぶ枯れたひまわり畑の中にさくらの満面の笑みが咲く。
さくらのしらべを思い出した
ヲタの前で歌う小田ちゃん・・
571嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/12(金) 19:46:30.94 0
>>545-548より
「ねえ、本当にお化けが出たらどうする?」

「お化けが出たら大歓迎よ。むしろあたしはお化けがいてくれた方が嬉しいわ。
だって、お化けがいるっていうことは、死んでもまだ続きがあるっていうことでしょ?」

――立入禁止区域探検中、ローズとカトレアの会話より





シルベチカ。
里保の宿主であるリリーが、ずっと探し続けてきた少女。
彼女の秘密がついに、さゆみの口から明かされる。

「シルベチカもまた、自分が薬で無理やり永遠の繭期を生かされていると知ってしまった。
それに対し彼女は、不老の命を強硬に拒絶した。
薬を飲むことを拒み、クラン中を巻き込んだ大騒動を引き起こしたの。
そして最後には、薬の効果が切れたため止まっていた何十年分の時間が一気に押し寄せ、
急激に老いさらばえた挙句、そんな姿をさらしたくないと
みんなの見ている前で塔の上から飛び降りて自殺してしまった。
それがこの物語の始まりから10年も前のこと」

「10年も前……。じゃあリリーは10年間ずっと、もう死んでしまってるシルベチカのことを
いなくなったと思い込んで探し続けてたということですか?」

「ファルスにイニシアチブで記憶を消されたからでしょ。
あれ? でも記憶を消されたんなら、どうしてリリーはシルベチカのことを覚えてるんだろ??」

聖の疑問に答えた香音だったが、自分もまた話している最中に矛盾を感じて首を傾げてしまう。
572嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/12(金) 19:46:57.84 0
「そうだね。事件のあとファルスは当然イニシアチブでみんなの記憶を操作して、
シルベチカに関する情報を消し去った。それでいつも通り全て解決したと思っていたの。
でも、シルベチカの最後の言葉、『私を忘れないで』という一言が、
みんなの心に絡みつく呪縛となった」

「呪縛……」

言葉の力、言霊が与える影響力については、以前衣梨奈もさゆみから聞いたことがある。
この時のシルベチカの一言がまさにそうだったということか。

「シルベチカの恋人だったキャメリアは、記憶は戻らなくても
自分でもわからぬままについ女子寮に何度も足を運んでしまう。
そしてリリーは、不完全ながらシルベチカのことを思い出した。
彼女はシルベチカがいなくなったと思い込み、
何度記憶を改竄されても探し続けるのをやめなかった。
そしてそれは、リリーの『覚醒』を促すきっかけにもなったの」

「『覚醒』ということは、やっぱりリリーにも何か秘密があったんですね」

「秘密という表現だとちょっと違うんだけどね。
まあとにかく、そんな様々な過去を経ての現在。
クランの破滅の始まりは、2つの事件によってだった。
第一の事件の主役が、マリーゴールド。
彼女はマーガレットと親衛隊3人を噛んでイニシアチブを握り、
スノウ――彼女にとってリリーのことを不幸にする存在――を殺すように命令したの。
そして第二の事件の主役が、チェリー、ローズ、カトレア、ナスターシャムの4人組」

その名前を聞いてなぜか自分のことを呼ばれたような気持ちになり、
亜佑美と香音がなんとなく照れたような表情で顔を見合わせる。
573嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/12(金) 19:47:27.93 0
「立入禁止区域を探検していた彼女達は、偶然ファルスが秘薬を製作する工房を見つけ、
そこでシルベチカの名前が記載されたクランの歴代在籍名簿と、
リリーとスノウの姿が写っている800年前の集合写真を発見してしまう。
そのため永遠の繭期を守ろうとする紫蘭に口封じで殺されそうになり、
どうにかリリーの元へと逃げ出したの」

「それまで知らないと言い続けてきたチェリー達が、ついにシルベチカの存在を知って
これまで聞いたリリーの言葉が嘘じゃないとわかったんですね」

ずっとリリーの話をまともに受けとめようとしなかったチェリーの後悔が、
なぜだかダイレクトに亜佑美の心に響いてきて、そっと胸を押さえる。

「混乱の中で、リリーが、そしてスノウが、本来操れるはずのないイニシアチブの能力で
危機を脱するなんてこともありながら、ついにはみんなが一堂に会した。
そこに現れたのが、スノウをかばい刺されて死んだと思われていたファルスだったの。
ファルスにとっては、今回のこともよくあるトラブルの一つにしかすぎなかった。
自らの正体を明かし、シルベチカの死について語った後、
いつものようにイニシアチブでみんなの記憶を消し去った。
今回もまたそれで全てが問題なく収まるはずだった……」


574嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/12(金) 19:47:54.74 0
ファルスのイニシアチブを受けて倒れ込んだヴァンプ達は、
目を覚ますとこれまでの記憶が消されてしまっていた。
それぞれ起き上がると、みんな何事もなかったかのように普段通りの生活へ戻っていく。
その後残されたのは、ファルス、スノウ、そしてリリーの3人だけだった。

「これで元通りだ。……君達以外はね」

「どうしてあたしは、シルベチカを忘れずにいたの?」

満足げに笑うファルスに、状況の変化に対応しきれず混乱の残る様子のリリーが問いただす。

「それはスノウ、君の口から話してあげればいい」

「……スノウ」

「リリー……。あたしとあなたは800年間もこのクランで生き続けてきた。
800年もの長い間、ファルスの血液を体内に摂り続けたことによって、
あたし達の身体はファルスと同化していったのよ。
あたし達は、ファルスなの。
だから、ファルスのイニシアチブの影響を受けなくなってしまったのよ」

「あたし達が……ファルス!?」

身体が同化するだなんて信じられないような話だけど、これまでリリーと
行動を共にしてきた里保には、確かに話の辻褄が合っていることがわかる。
575嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/12(金) 19:48:21.18 0
辛そうに言葉を紡ぐスノウの後を継いだファルスの声は、
好対照なまでに自慢げなものだった。

「その兆候が最初に現れたのは、スノウだった。今から50年ほど前だ。
彼女は僕のイニシアチブの影響を受けることなく、失われるはずの記憶を保ち続けた。
そして……。君にもようやく、その兆候が現れた。
君はシルベチカの記憶を忘れることなく保ち続けた」

そこで恫喝するかのように声を高め、ファルスがリリーに迫る。

「スノウは!! 全てを受け入れてくれた。このクランで永遠に生き続けることを。
だからリリー。君も受け入れるんだ、この運命を」

「あたしは……死ぬのが怖かったの。もし、死から逃れることができるなら、
トランプに従い、このクランで永遠を過ごしても構わないと思った。
でも……!」

「何を怖れることがある!!」

震える声でリリーに真情を吐露したスノウだったが、
最後に伝えようとした何らかの決意を込めた言葉は、声を荒げたファルスに遮られた。
576嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/12(金) 19:48:47.79 0
「君達は僕の最高傑作だ。君達はもしかしたら、不老不死の身体を手に入れてるのかもしれない。
でもそれをどうやって確かめたらいい。君達を、一度殺すしかない。
僕は、何度も何度も何度も何度も君達を殺そうとした! でもできなかった!!
君達がもし不老不死でなければ、僕は君達を失ってしまう。
そんなのは嫌だ。僕は、君達を愛しているんだ。
いなくならないでくれ。僕を独りにしないでくれ。
僕は。僕は……寂しいんだ」

自分の世界に酔いしれたように熱く語るファルスの口調は最後
懇願のような呟きに変わるも、それがリリーの心に響くことはない。

「そんなことであなたは、あたし達を800年も苦しませてきたっていうの」

「800年が何だっていうんだ!! 僕は、僕はもう3000年も生きているんだ!!
たった独りで……3000年もだ」

「だからってこんなの、酷すぎるよ」

そしてファルスの剣幕に圧倒されながら上げるリリーの苦しげな抗議の声もまた、
彼の心に届くことはなかった。

「さあ、我が永遠の友よ。未来永劫の時を生き続けよう。
この世界に終わりが来ようと、僕達の終わりはこの世にはない」

それを拒否される可能性などまったく考えていないような、
陶酔した顔つきでリリーを誘うファルス。
577嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/12(金) 19:49:13.73 0
「スノウ……ダメよ!」

ファルスの傍らで目を伏せるスノウにかけたその言葉は、
ファルスに従わないよう促すものなのか、
それともこれから起こることを予見してのものなのか。

「ねえ、リリー。覚えてる? あたし達、800年前は親友だったのよ」

「スノウ……」

リリーの目をしっかりと見据えて、すがるような言葉を投げかけるスノウ。

その瞬間。
狂気に満ちた一陣の風が、リリーの背後からまっすぐ吹き抜けた。

「……マリーゴールド!」

「リリーを悲しませるヤツは許さないわ」

走り込んできたマリーゴールドの振るう短剣が、あやまたずスノウの心臓を貫く。
悲鳴を上げることもなくその場に崩れ落ちるスノウ。

「何やってんだよ!! 
どうして!? お前の記憶はイニシアチブで消したのに!!」

倒れたスノウに駆け寄るリリーとファルス。
リリーがスノウを後ろから抱きかかえ、ファルスはその足元にすがりつく。
578嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/12(金) 19:49:40.76 0
「……あたしが思い出させたのよ。
あたしとあなたのイニシアチブは同じヒエラルキーにあるわ。
だから、あたしが思い出させたの。マリーゴールドの記憶を。
あたしを、殺したいほど憎いっていう記憶を……」

「スノウ! ダメだ! 死んじゃダメだ! 
君は僕の最高傑作だ。君は、不老不死なんだぞ。死ぬはずがない……。
さあ、スノウ! 立ち上がるんだ……」

取り乱して叫ぶファルスに目をくれることもなく、リリーのことを見つめるスノウ。
真っ赤に泣きはらしたその瞳から、とめどなく涙が零れ落ちる。
そして刹那、燃えるような輝きを放った後、徐々に光を失っていった。

「ねえリリー。忘れないでね、あたしがいたことを……」

「スノウ……」

その言葉を最後に、スノウがゆっくりと目を閉じ、そのまま息を引き取った。

「死んだ! 死んだわ! ハハハハハハ。
これでリリーを悲しませるヤツは消えた。
リリー、私があなたを幸せにしてあげる」

スノウの死を見届け狂喜するマリーゴールド。
その身体から突然、大きく火の手が上がる。
579嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/12(金) 19:50:09.01 0
「身体が……燃える! ファルス、あんたのイニシアチブね」

「お前なんか、燃えて……灰になれぇぇ!!!!」

「あんたも私とおんなじね。可哀想な人。アハハハハ、ハハハハ……」

「マリーゴールド……!!」

マリーゴールドの笑い声とともにひときわ大きな炎が舞いあがり、
その身体は灰となって完全に消失した。

目の前でスノウとマリーゴールド2人の死を目の当たりにしたリリーは、
思考が麻痺してしまったのか、ただ名前を呼ぶことしかできない。
そして里保もまた、あまりに衝撃的な光景を前に絶句するしかなかった。

ただ、これでマリーゴールドはバンシーでないことがはっきりした。
となると、残るはやはり……。

「綺麗に消し飛んだ。ハハハハ、ハハハハハ……」

狂ったように絶笑するファルス。
だが、ほんの一瞬だけ重なったその視線は、間違いなく遥のものだった。
それはファルスとリリーの同化の影響か、それとも2人の想いが同じだったためか、
その視線だけで遥の思考がダイレクトに里保に伝わってきた。

そう。後はもう決定的なタイミングを待つだけ。

バンシーとの対峙の刻は近い。


(つづく)
580名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/12(金) 20:33:23.27 0
どーなるんですかー
581名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/12(金) 20:42:16.38 0
ついにここまで話が進んだか
全くもって誰がバンシーなのか見当もついてないことは内緒だ
582名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/12(金) 21:32:48.00 0
これなんでリリウムDVD出る前に書こうと思ったの?
583名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/12(金) 21:34:10.46 0
これ…実際に演技してるとこ見てたら泣いちゃいそうだ
584名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/12(金) 21:47:26.72 0
現実と物語とのリンクが上手いなぁすんなりイメージとして頭に入ってくる!舞台見てない人はDVD見た後再度読んで欲しい
585名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/12(金) 21:52:52.38 0
舞台見てない人はネタバレあるから気を付けろって再三言われたろ
俺はDVD待ちだから読んでないぞ
586名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/12(金) 21:56:00.23 0
ネタバレ云々で文句とかじゃなくて純粋に疑問だったんだよ
DVD出たあとの方がみんな読みやすいだろうになぁっていう
わざわざセリフも設定も丸々そのまんまなら書くんならさ
587名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/12(金) 21:58:43.10 0
読むのはいつでもいいんだから書きたい時に書けばいいんじゃね
588名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/12(金) 22:12:41.15 0
まあ言いたいこともわからんではないがな
リリウムの設定を借りるっていうか丸パクリだし
ただ面白いか面白くないかも自由だし書くのも自由だ
589名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/12(金) 22:24:52.20 0
少なくとも自分は楽しく読ませて貰ってますDVD見たらまた読み返したい
590名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/12(金) 22:33:16.54 0
あくまで本編がメインだし、スレの保全として考えるなら外伝は優秀なものだと思う
591名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/12(金) 23:16:22.46 0
外伝は本編が来るまでの暇つぶしになればという思いで書いています

本編の邪魔だけはしないように気をつけてますね

ばい 戦国&ベリ編作者
592名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/13(土) 02:50:25.08 0
おやすみなさやし
593名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/13(土) 05:40:31.25 0
朝ぽん
594名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/13(土) 07:15:00.98 0
個人的にはリリウムDVDを待つ間にこの外伝の連載が来て嬉しかったよ
595名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/13(土) 12:18:37.57 0
お昼ヤシ
596名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/13(土) 12:58:00.41 0
ベリ編作者の方が面白いな
597名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/13(土) 15:14:07.00 0
保守
598名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/13(土) 18:56:56.81 0
ぎゃ
599名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/13(土) 23:03:39.69 0
a
600名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/14(日) 06:32:13.32 0
危ない!?
601名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/14(日) 08:45:14.18 0
落ちるまいぞ
602名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/14(日) 09:15:04.89 0
おぱよ
603名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/14(日) 09:47:56.61 0
ほぜん
604名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/14(日) 12:19:38.60 i
       * ∠\`・* 。
        | /★`、 `*。
       ,。∩______フ *  
      + |||9|‘_ゝ‘) *。+゜保全の魔法っちゃよ
      `*。 ヽ、  つ *゜*
       `・+。*・' ゜⊃ +゜
       ☆   ∪? 。*゜
        `・+。*・ ゜
605名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/14(日) 16:06:17.79 0
   oノハヽo
  从*・ 。.・)       カタカタ
 _(__つ/ ̄ ̄ ̄/
   \/_重_/ カタカタ  カタカタ
606名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/14(日) 17:03:58.68 I
川c ’∀’)<私の見せ場はよ!!
607名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/14(日) 18:35:07.80 O
       * ∠\`・* 。
        | /★`、 `*。
       ,。∩______フ *  
      +  川c ’∀´) *。+゜見せ場つくる魔法ですよ
      `*。 ヽ、  つ *゜*
       `・+。*・' ゜⊃ツルッ +゜
       ☆   つツルッ 。*゜
        `・+。*・ ゜
608名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/14(日) 18:42:25.29 0
貧乳でつるつるになる魔法か
609名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/14(日) 22:07:26.25 I
川c ’∀’)< 爆乳なうえにツルツルじゃい!!!
610名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/14(日) 23:54:01.92 0
ハo´ 。`ル <水没!
611名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/14(日) 23:55:36.22 0
ベリ編の続きを避難所へ上げました
612名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/14(日) 23:55:37.46 0
爆乳でパ○パ○で低身長お前はAVちゃんか
613名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/15(月) 06:54:07.66 0
ノハ*゚ ゥ ゚)< 朝ですよーーー
614名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/15(月) 09:26:52.27 0
⊃ ヤッツー
朝立ち
615名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/15(月) 11:43:51.23 O
∩<一日中勃ちっぱヤシ
616名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/15(月) 16:01:24.56 0
勃起
617嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/15(月) 16:59:14.11 0
>>545-548より
「スノウの死によって、ファルスにとっては全てを共有した存在として
ともに永遠を生きることのできる相手がリリーしかいなくなった。
彼はリリーに自分を受け入れるように迫ったの。
それに対してリリーは、マリーゴールドの、そしてスノウの死をまのあたりにしても、
徹頭徹尾自分自身のことしか頭にない勝手極まるファルスの姿に、ついに怒りが爆発した。
このままファルスの言いなりで、歪み切った永遠の繭期を続けていくわけにはいかない。
そう決心した彼女は、怒りで高まったイニシアチブの能力によりファルスの行動を封じ、
同じくイニシアチブを使ってクランのみんなを呼び出したの」

「一体リリーは何を……」

この後の哀しい結末を予感してか、聖の問いかけは半ば独り言のような弱々しいものだった。
みんなも、息を殺してさゆみの次の言葉を待つ。

「呼び出されたみんなは、リリーの命令により腰の短剣を手に取った。
そして、ファルスが半狂乱になってやめてくれと制止するのも構わずに、
自らの心臓を貫いて、全員が自害して果てたの」

「そんな!!」

思わず上がる悲鳴のような声と、そして嗚咽。
618嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/15(月) 16:59:46.44 0
「そしてリリーもまた、ファルスの最後の懇願も無視して同じように自らの心臓を貫き倒れた。
こうして、ファルスが1000年の時をかけて作り上げてきた永遠の繭期は、ついに終焉を迎えたの。
取り残されたファルスは、全てを絞り出すような絶望の叫びを放った後、
諦めたかのように弱々しく立ち上がり、
『僕には時間だけはいくらでもあるんだ。それこそ永遠に』と
捨て台詞を残して独りクランを去った。
そこから再び永きに渡る彼の放浪の日々が始まるのだけど、これはまた別の物語」

重々しい空気が辺りを支配する。
みんなの瞳は涙で濡れ、時折堪えきれず嗚咽の声が漏れる。

「本当に……哀しいお話ですね」

衣梨奈の呟きに、さゆみがため息で応えた。

「そう。ここで終わっても十分に悲劇の物語なんだけどね」

「えっ!?」

「悲劇はこれだけでは終わらなかったの。
リリーは、ファルスが作り上げた勝手極まる永遠の繭期を終わらせるため、
その呪いから解放するためにみんなを死へと追いやった。
ただ彼女の行為は、みんなの意志を完全に無視しておこなわれたものであり、
リリーの自分勝手な思い込みの巻き添えにしたという意味では、
ファルスがこれまでしてきたこととまったく同じだった。
そして彼女は、もっとも残酷な形でその報いを受けることとなるの……」


619嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/15(月) 17:00:31.07 0
森を支配していた永遠に止むことのないはずの雨もいつしか上がり、静寂だけが支配する空間。
ヴァンプ達の亡骸が放置されている中を、ゆっくりと上体を起こす人物の姿があった。

それは、リリーだった。

どうしてあたしは、こんなところに倒れているんだろう……。

周囲を見渡し、霞み掛かった思考が徐々に回復してくる。

「……みんな。……夢!?
あっ、あ、あたし……。どうして……。心臓を貫いたはずなのに。
チェリー! ……カトレア! ……マーガレット! ……みんな!
スノウ! ねぇ! スノウ! 起きてよ! 起きてよ! 起きてよ! 起き……。
どうして……。あたしだけが」

手当たり次第みんなにすがって身体を揺さぶるが、一度命を失った者が再び目を覚ますことはない。
なぜ自分だけが生きているのか。動転したままにリリーは落ちていた短剣を手に取り、
そして先ほどと同じように大きく振りかぶると、絶叫とともに自らの心臓を深々と貫いた。

……が、死ねない。
短剣を引き抜くと、胸の傷が見る見るうちに塞がり、全てが元通りに回復してしまう。

「……嘘だ」

ファルスの言葉が、リリーの脳裏に蘇る。

「君達は僕の最高傑作。もしかしたら君達は、不老不死の身体を手に入れてるのかもしれない」

嘘だ! こんなのはあり得ない! こんなことがあってはいけない! こんなことが……。
620嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/15(月) 17:01:10.30 0
「あっ! あっ! あっ! 嘘だわ!!!!」

半狂乱で自らの胸を延々とめった刺しにするリリー。
だが、その結果はなんら変わることはなかった。

嗚咽とともに、短剣を取り落す。

死にたかった。みんなとともに死ぬはずだったのに……。でも、死ぬことができなかった。

ずっとあたしのことを気にかけてくれていたチェリー。
心配性で世話焼きのローズ。
退屈と言いながら楽しげに駆け回っていたカトレア。
マイペースで不思議な言動をするナスターシャム。
可憐で天真爛漫なマーガレット。
そんなマーガレットを姉と慕うジャスミン、クレマチス、ミモザ。
時には厳しくあたし達を導いてくれた紫蘭。
いつも温かくあたし達を見守ってくれた竜胆。
シルベチカに深い愛情を注いでいたキャメリア。

みんな、死んでしまった。……いや違う。
あたしが、この手で、殺してしまった。
みんな誰も死にたいだなんて望んでいなかったのに、
それを、あたしは、勝手な想いを押し付けて、無残にも殺してしまった。

この手でみんなを殺めたという重い十字架を背負って、
不老不死の身体とともにあたしに永遠を生きていけというの??
そんなことできるわけない!!
そんなことできないのに……できないのに、死ぬことさえできないだなんて……。
そんな……そんな…………!!!!
621嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/15(月) 17:02:12.90 0
「あああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

絶望の慟哭を上げること三度。
その場に泣き崩れたリリーは、いつまでも肩を震わせていた。









リリーの口から洩れる嗚咽だけが微かに響くクランの広間。
放置された亡骸の中から、息絶えたはずの一人の少女が音もなく立ち上がる。

真っ赤に泣きはらした燃えるような瞳からは、とめどなく涙が流れ落ち、
その掌はほのかに青白い光を放っていた。

――リリー、そんなに嘆かないで。あたしが今、あなたの望みを叶えてあげるから……

声なき声とともに、その少女――バンシーはうずくまるリリーにそっと近づくと、
魔力を帯びた掌を、ゆっくりとその肩に伸ばした。


(つづく)
622嘆きの先にある光・作者@転載は禁止:2014/09/15(月) 17:05:48.83 0
冒頭のリンクを間違えました・・・

誤:>>545-548より
正:>>571-579より
623名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/15(月) 17:24:55.28 0
誰だろ?
全く検討がつかない
624名無し募集中。。。@転載は禁止@転載は禁止:2014/09/15(月) 17:27:06.00 0
いよいよクライマックス?
早くラストが知りたい!
625名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/15(月) 17:42:32.29 0
乙です
626名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/15(月) 17:56:10.18 0
ついにバンシーの正体が!?結果は知っていたはずなのにやっぱ改めて読んでも救いようのない物語……バンシーが誰だったとしても悲しみが和らぐ事はないんだろうなぁ・・・
627名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/15(月) 20:02:37.38 0
リリーは舞台の時も生き残ったの?
628名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/15(月) 20:21:01.45 0
悲しすぎるな
629名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/15(月) 21:23:19.43 0
>>627
それは…DVD見て確認してw
でも物語は忠実に再現されてると思う
630名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/16(火) 00:04:51.50 0
ねる
631名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/16(火) 00:38:19.37 0
ふううむ
632名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/16(火) 07:05:03.55 0
あさ
633名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/16(火) 08:27:51.87 0
おはよう諸君
634名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/16(火) 11:42:36.80 0
昼あげ
635名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/16(火) 15:10:15.14 0
三時のおやつ上げ
636名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/16(火) 15:27:17.75 O
お昼休み少し遅めの
637名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/16(火) 20:13:50.97 0
952
638名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/16(火) 22:39:53.12 0
えり
639名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/16(火) 23:12:07.38 0
避難所にちょっと短いベリ編の続きを上げました

まーどぅー編は明日か明後日辺りに続きをいきたいな
640名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/17(水) 06:23:58.16 0
おはよう
641名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/17(水) 10:55:04.30 0
おう
642名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/17(水) 12:09:12.23 0
よっつ
643名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/17(水) 16:06:12.29 O
∩<やっつー
644名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/17(水) 18:55:45.88 0
DVDマガジン63のダイジェストオ!!見ました
なんかシンクロするなあじんわりと
645名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/17(水) 19:01:12.05 0
みんなで過ごす夏休みか
買わないと
646名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/17(水) 19:33:05.76 0
リリウムDVD発売までついにあと一週間
物語完結まで皮算用で今日の更新を含めてあと4〜5回予定……
647嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/17(水) 19:33:36.63 0
>>617-621より
バンシーのドレインタッチがリリーの身体に接触する、その寸前。
リリーの前に突如、水の障壁が現れる。
水壁は、触れたバンシーの身体を大きく弾き飛ばすと、そのまま細かい水玉となり消滅した。

「鞘師さん! 今です!!」

声を上げながら飛び込んできたのは立ち去ったはずのファルス――いや、
その身体を支配した工藤遥だった。
遥の声に応えるように鞘師里保もまた、リリーの身体を支配して起き上がる。

「信じたくなかったけど……。本当にそうだったんだ」

「やっぱりあなたが、バンシーだったんだね」

遥と里保が目を向けた、その先にいる人物。

「スノウ……」

遥が寂しげにその名を呟いた。

バンシーと化したスノウの様子は、普段通りの姿とほとんど変わりがなかった。
真っ赤に泣き濡れた瞳。魔力を帯びた掌。いつものスノウと違うのはそれだけだ。

壁際まで飛ばされたスノウがゆっくりと立ち上がり、哀しげな瞳を2人に向ける。

「どうして……。どうしてあたしがバンシーだってわかったの?」

冷たく距離を感じさせるようなその声音もまた、スノウそのまま。
648嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/17(水) 19:34:12.77 0
里保は遥と軽く視線を合わせると、厳しい表情でスノウの問いに答える。

「最初の違和感は、あなたの泣いている姿を見た時。
初見のはずの泣き顔をリリーは以前見たことがあると言い、そしてうちも同じことを感じた。
それは前にリリーと記憶を共有したためかと勘違いしたんだけど、
答えはもっと単純なところにあったんだ。
だってうちは実際に、バンシーとしてのあなたの泣き顔を直接見ていたのだから」

――確かにうちは、スノウの涙を見たことがある

「決定的だったのは、スノウ、あなたの死の直前でした。
まーちゃんの指摘がなかったら見逃していたかもしれないけど、
真っ赤に泣きはらしたその瞳に、燃えるような一瞬の輝きを見出して、
そこでようやくハル達は確信したんです。
だってそれは、初めてバンシーと出会った時の、
心を奪われて釘づけになったあの瞳とまったく同じものだったから」

――ちゃんとその瞳を見ればどんなに隠してたってすぐにわかっちゃうんだから!!

「そして、オダベチカの助言。
あなたの名前を冠する花、スノウドロップの花言葉が全てを物語っていたんだ。

『あなたの死を望みます』

うちらの死を望む者、つまりバンシーの正体がスノウ、あなただってことを!!」

――忘れないで、花言葉ってとっても重要なんだよ
649嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/17(水) 19:34:38.57 0
これまで長い時をかけてリリウムの世界を体感してきた里保と遥は、
ついにバンシーの正体を暴き、ここにようやく対峙の刻を迎える。

「そうだったのね。でも……嬉しい。
ファルスまで戻ってきてくれるなんて」

正体を見破られていたとわかっても、スノウに動じる様子はなかった。
魔力を帯びた右手をかざしながら、ゆったりとした歩調で2人に近づく。

「待ってスノウ!
うちらはあなたの哀しみを取り除くために来たんだ!
教えて! どうしてあなたはうちらを殺そうとするの?」

「どうしてって、そんなのは今更聞くまでもないこと。
もちろんあなた達の望みを叶えるためよ」

言葉を返しながらもスノウは歩みを止めることなく、
徐々にドレインタッチの射程が2人に近づいてくる。

「やめてください!
ハル達はあなたと闘いたくないんです!!」

遥が素早く呪文を唱えると、スノウの前に先ほどと同じ水の障壁が現れる。
だが、スノウの右手が手刀を形作り、魔力を込めて袈裟懸け一閃するとともに
水壁はあえなく飛散して崩れ去った。

「これはもう、効かないよ」
650嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/17(水) 19:35:05.36 0
その瞬間、里保の魔法による突風がスノウの身体を捕らえ、一気に壁際まで押し返す。

「お願いスノウ、話を聞いて!
どうしてあなたはバンシーになんてなってしまったの?
どうすればあなたの哀しみを浄化できるの?」

「ハル達は、あなたを救いたいんです!!」

「あたしがバンシーになったのは、あなた達に死んでもらいたかったからよ。
だから、あたしを救いたいと言うのなら、そんな抵抗なんてしないで、大人しく死んで」

まともな会話も成立しないままに、ドレインタッチのために迫るスノウを
里保と遥が風と水の魔法でいなすという攻防がしばらく続く。

「これじゃあ……キリがないですよ」

遥も里保も、肩で息をするようになってきた。2人とも徐々に消耗してきたのに対し、
バンシー――アンデッドであるスノウは疲れを見せる気配もない。

「いっそ力づくで消滅させる方がよっぽど楽なんだけどね」

「でもハル、スノウを攻撃なんてできませんよ!」

「わかってる。だけど、せめて足止めだけでもしないとこのままじゃ厳しい」

「足止め……。それはいいアイディアね」

「「えっ?」」
651嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/17(水) 19:35:31.37 0
里保達の会話に割り込んで答えたのは、スノウだった。
そして彼女はその場に立ち止まると、肩を怒らせ大きく目を見開く。

「どぅー!!」

「はい!!」

スノウが慟哭の声を放つのと、里保と遥の呪文が効果を表すのはほぼ同時だった。

初めてバンシーの慟哭を、呪いの声を受けた時の衝撃は今でも鮮明に覚えている。
春菜の情報を耳にしたわけではないが、もう一度同じ衝撃を受けてはならないことは
里保も遥も魔道士として本能的に理解していた。

里保と遥の合体魔法。
風と水で障壁を組み合わせ真空の空間を作り上げて薄い層と為し、
2人の周りをくまなく囲うことにより一切の音を遮断する。
これでスノウの泣き声も届くことはない、そのはずだった。

次はハル達の番だ。
何か足止めに使えそうな魔法はないか、瞬時に思考を巡らす。

しかし。
652嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/17(水) 19:35:58.48 0
スノウの慟哭は、大気だけでなく大地までをも揺るがせた。
その震動は床を伝って2人の足元まで達し、そこから身体全体を震わせる。

「そ、そんな馬鹿な……」

慟哭の呪いが震動として体内を駆け巡り、一気に身体中の力が抜けていく。
集中力が続かず合体魔法も途切れ、よろける遥を支えようとした里保だったが、
力が入らずに身体を抱き寄せた状態で2人とも膝をついてしまう。

「どぅー……大丈夫?」

「あんまり……大丈夫じゃないっす」

ついに2度目の呪いを受けてしまった2人は、息も絶え絶えとなり
呪文の詠唱どころかまともに立ち上がることもままならない。

「これでようやく、望みが叶うわ」

スノウが一歩一歩、着実に歩を進めて2人に近づいてくる。
しかしこの状態では、それを止める術がない。

まずい。このままじゃまずい。どうにかしなくちゃ。どうにかしないといけないけど……。

身体だけでなく、頭も朦朧としてまったく考えもまとまらない。
スノウもすでに、ドレインタッチ射程圏の直前まで迫ってきている。

嗚呼、もうダメかも…………えりぽん!!!!
653嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/17(水) 19:36:24.45 0
「そこまでだ、スノウ」

里保が頭の中で友の名を叫んだそのタイミングで、不意に制止の声が広間に響く。
スノウが振り向くと、いつからいたのか、そこに見慣れぬ人物の姿があった。

漆黒のローブを身に纏い、顔には黒光りのする仮面を着用し、錫杖を手にしている。
その姿を一言で表現するならば、まさに怪しさを絵に描いたかのような人物だった。

「あなたは誰? ……いや、誰でもいいわ。
誰にもあたしの邪魔はさせやしない」

スノウが大きく目を見開き、再び慟哭の声を放とうとした、その時。

シャン!!!!

錫杖の音が響き渡り、スノウが俄かに動きを止める。
そして、震える身体でゆっくりひざまずくと、そのまま頭を垂れた。

「こ、これは……イニシアチブ!?」

スノウの呻きとともに、里保と遥の身体に力が戻り、
2人は支え合いながらようやく立ち上がることができた。

「これは一体……どういうこと?」

「……わかんないですけど、あの人が助けてくれたみたいっすね」

スノウがどうにか顔を上げ、悔しげに謎の人物を睨みつける。

「あたしの身体をイニシアチブで支配するだなんて……。
誰? あなたは一体誰なの!?」
654嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/17(水) 19:36:50.35 0
スノウの誰何の声に対し、その人物は軽く錫杖を掲げると厳かな声を発した。

「我が名はクラウス!
真祖たるトランプにして、全世界のヴァンプを掌握する者なり!!」

クラウスという名前を耳にして、真っ先に反応したのは遥の身体だった。
ビクンと大きく波打つと、身体中に激しく震えが走る。

「どぅー! どうしたの!?」

「……わかりません。でも多分この身体の持ち主であるファルスがきっと、
クラウスのことを何か知っていて、その名前に反応してるんじゃないかと……」

スノウもまた、その名前を聞き驚愕の表情を浮かべたが、抵抗するかのように大きく首を振る。

「嘘よ……。こんなところに真祖たるトランプがいるはずないわ」

「我は、この世の全てのヴァンプを支配するイニシアチブの力を持つ。
スノウよ。初めて会ったはずの汝の身体がイニシアチブで封じられていること、
それだけで我が存在を証明するに足る、そう思わないか?」

クラウスと名乗るその人物の言葉に、スノウががっくりと頭を落とす。

「嘘よ……。そんなこと……ありえないわ…………」

呪詛のような呟きとともに、スノウの瞳から零れ落ちる大粒の涙が床を濡らしていった。


(つづく)
655名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/17(水) 19:41:31.26 0
あれ?なんか抜けてる?話が繋がらない
656嘆きの先にある光・作者@転載は禁止:2014/09/17(水) 19:47:47.88 0
>>655
確認しましたが抜けずに全てコピペできています
話が繋がらないと感じたのならただ文章が下手なだけだと思うのですが
どの部分が繋がらないと感じましたか?
657名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/17(水) 19:49:30.23 0
>>656
ごめんNGワードに引っ掛かってたっぽい
別のブラウザで見れた
658名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/17(水) 20:00:34.85 0
>>657
それなら良かったです
何か致命的なミスでもあったかと
一瞬焦りました(苦笑)

と投下しようとしたらここでサルを食らうとか・・・
659名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/17(水) 20:14:09.98 0
支援
660名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/17(水) 20:16:07.85 0
俺もNGあるけど今回は大丈夫だった
661名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/17(水) 20:37:09.93 0
すでにさるだたら支援意味なかったか
おつです
662名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/17(水) 20:46:51.85 0
譜久村という名前を耳にして、真っ先に反応したのは遥の身体だった。
ビクンと大きく波打つと、身体中に激しく震えが走る。

「どぅー! どうしたの!?」

「……わかりません。でも…ああっ!」

シパパパパ

鞘師の眼前で放たれたしぶきは、夏の終わりと秋の訪れを告げる爽やかな香りがした。

(つづく)
663名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/17(水) 21:10:37.18 0
どさくさにまぎれてwww
664名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/17(水) 21:15:42.42 0
つづくのかよ
665名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/17(水) 21:55:26.55 O
>>662
「譜久村」「遥」の二つのキーワードから
「シパパパ」を正確に予測してしまった俺って・・・orz
666名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/17(水) 23:01:46.07 0
まさかのバンシー
全くわからんかった
667まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/09/17(水) 23:18:13.03 0
続き行きます
お付き合いください
668まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/17(水) 23:22:33.58 0
「衣!譜久様を見なかったか?途中ではぐれてしまった……。」

香の声はとても悲痛な叫びを伴っている。

「譜久?いや、見とらんっちゃね…。
 保は見たと?」

「ウチも見てない」
2人の返答を聞き、肩を落とす香。
何よりも主を見失ったのは家臣である自分の大失態。
何事もなく無事であれば良いが……。

「それよりもマサキチも言ってたっちゃけど、なんでこんな所で襲撃されとるとね?
 ここは、宮本領。本来、譜久の嫁ぐ先やけん」

「そう、それ何スよ。なんでハル達こんなに襲われてるんだろうって……。」

いつの間にか、優樹との喧嘩を終えた遥も腕組みをして考え込んでいた。

「なん?この子は?」

「あっ、そうか。どうもっす、工藤遥と申します。
 あそこにいる佐藤優樹の友人です。
 お二人は……

 えっと鈴木さんが香で譜久村さんが譜久だから、衣さんと保さんってとこですか?」
669まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/17(水) 23:24:05.92 0
突如、初対面のしかも年下のような相手に丁寧な自己紹介をされた上、名前を当てられた2人は驚きを隠せない。
そんな2人をよそに遥は今までの様子を思い出す。

(敵の種類も襲撃の仕方も違ってはいるんだよなぁ。
 でも何か不自然。うーん…、引っかかる点と言えば……)

「なんで、今回敵はあんなに簡単に逃げたんスかね?」

遥はふと感じた疑問を口にする。

「それは衣達が来たからじゃないのか?」

「そうっちゃね!それにマサキチは化けとったし。」

香と衣はそう考えていた。

確かに急に山犬が襲いかかってきたら誰しも恐怖を感じるハズ…。

(それはそうなんだけど……あっさり引き上げすぎなんだよな…。
 まるで、時間を稼ぎたかった、足止めをしておきたかっただけのような…。)
670まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/17(水) 23:27:08.16 0
そのとき遠くから優樹が呼ぶ声が聞こえた。
「どぅー!どぅーったら!!
 
 もう、こっちきてったら!!」


「何だよ…さっき絶交って言ってたじゃんか。」

遥は小さくため息をつくと優樹の招く方向へと足を向ける。

優樹はしゃがみこんで地面を見つめている。
「どーしたの、まー…」

「見て見て!ちょーキレイなお米!カラフルだよー。
 向こうにも落ちてたから拾ってきちゃった。
 でも、お米をこんな所で落としちゃうなんておっちょこちょいだよね!」

満面の笑みで両手を突き出した優樹。
その手には確かに色とりどりのお米が載っていた。

(コレって…1、2、3…)


「香さん!き、きてください!これって…」
遥の呼ぶ声に慌てて駆け寄る香。後から衣と保もついて来る。

優樹の手に載った色とりどりの米を見て香はつぶやく。

「これは…五色米…。」
「佐久守さんのですかね…。」
671まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/17(水) 23:29:26.32 0
五色米とは本来、忍などが用いていた情報を秘匿するための道具の一つである。
だが、今回のように自分が通った道を後の者に示すために使われることもある。

だが、この見ず知らずの他人の領内を探し回ることがどれほど危険なことなのかは
優樹にですらわかっているようだ。
重苦しい空気が立ち込める。


「……行こう。」
最初に口を開いたのは衣であった。

「今でこそ、みんな離れ離れになっとうけど、衣にとってはみんな大切な友達やけん!」

「衣…。」
保も腰の刀に手をかける。

「そうだね、みんなで譜久様を助けに行こう。」

「そういうことだから、わかった、どぅー?」
優樹も腰に手を当ててウンウンと一人頷いている。

「どういうことだよ!
 …でもまぁこのままだとハルも気分悪いっスからひと暴れといきますか!
 そういう訳なので香さん、行きますよ」

みんなの気持ちが痛いほど香の心に響く。
顔を上げた香は一同の顔を見渡す。

「うん、……みんな参るぞ!」
672まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/17(水) 23:34:14.73 0
まーどぅー戦国物語〜最終章〜

「ここが…『M13レンタルーム梶x?」

「どうやらそうみたいですね…。」

建物の前でなんとも緩い会話を里保と亜佑美はしていた。

『政府も絡んでいる可能性が否めない』なんて話をされるものだから
どんな大企業かと思っていたら、何のことはない。

よくある街の小さなビルの一つの中に入っていた。

今回里保達に課せられた使命は2つ。

まずは、遥と優樹の居所の手がかりを掴むこと。
これは自分だけではなく他のみんなの願い。

そして2つ目は執行局員として政府と一企業の関連を暴くこと。
こちらに関しては局長から無理はしなくてもよいという指示が出ている。


亜佑美は任務内容を小さな声で1人何度も何度も呟いている。
その手には、衣梨奈の父からの注意事項が書かれた紙がしっかりと握られている。
673まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/17(水) 23:36:29.59 0
この仕事は里保と亜佑美がバディとなって初めての仕事。
先輩として何かタメになるような任務にしたいものだが……。

あいにく、里保はこういった調査関連の任務を不得意としていた。
執行局に居たときも周囲の人間のサポートに回り、なんやかんやで避けてきた。

だが、今日はそんなことも言っていられない。

(やるしかないんだ…。)


覚悟を決めた里保は隣の亜佑美を促す。

「亜佑美ちゃん、さぁ行こうか。」

そして、ゆっくりと受付のドアを開くと中へと足を踏み入れる。
入口を通り抜けるとき何か不思議な感覚が身体を走る。


「な、何これ……。」
思わず、亜佑美が声を漏らした。
里保も亜佑美の手前、格好付けていたが、心の中で思い切り叫んでいた。

『あなたの未来に想像できない創造を M13レンタルーム』
674まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/17(水) 23:40:37.44 0
中は大勢の人で埋め尽くされていた。
外観はカモフラージュである。
広大な会社を大規模な魔法で隠しているのであった。

しばらくその場の空気に圧倒されて動くことのできない2人……。

「何か、御用で御座いますか?」

その声にはっとする。そこには胡散臭そうな目で自分たちを見つめる警備員らしき人がいた。

(この人、魔導士だ……。)

「あっ、いえ、私達、あの、決して怪しいものではなく……。」

「執行局から参りました。
 この度、連続失踪事件に関する情報提供をいただけると言うことで社長に会わせていただけますか。」

慌てふためく亜佑美をよそに凛とした声を言い放つ里保。
完全に任務モードに入っている。

警備員の男はしばらく電話で誰かと話をしていたが数分後には上階へと案内する。
上階へと続くエレベーターの中で里保はこの先の展開を予想する。
はたして、社長はこちらの要求に応じるのか。


藍色の絨毯がひかれた廊下をしばらく歩く。やがて一つの部屋の前で止まった。

コンコン

「社長!先程お話いたしました客人でございます。」

『うむ、入れ。』
675まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/17(水) 23:44:15.37 0
「失礼します!」
「失礼しま〜す」
「し、失礼します!」

案内された部屋へ入ると、大きな窓が目に入る。
そこに映る景色は明らかにここのものではない。


「こんな所までわざわざお出向きいただきありがとうございます。
 ようこそ、我が社へ。」

その窓際にあるデスクに腰掛けていた男性が里保達の姿を見つけると立ち上がり手を差し出してきた。

だが里保はそのあいさつを一瞥する。

「これはこれは執行局から人が来ていると聞いたからどんな人かと
 思っていたら、こんな勝ち気なお嬢さんだとはね。ハハハハハ!」

男は大きく笑い声を立てる。


「我が社も舐められたものだな。」




『現代』の満月まであと8時間…

続く
676まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/09/17(水) 23:48:29.71 0
こんばんは
常日頃から温かいご声援をありがとうございます

ついに戦国編原稿が書き終わり結末を迎えました
あと4回分ほどです
本当に長きにわたりありがとう
677名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/18(木) 02:06:12.01 0
乙カレーライス
678名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/18(木) 02:11:44.02 0
乙です
679名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/18(木) 07:17:58.83 0
ベリ編共々楽しみにしてますついに話の中核に迫りますね
680名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/18(木) 08:18:38.58 0
あさ
681名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/18(木) 12:16:28.60 O
お昼っちゃ
682名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/18(木) 13:19:44.59 0
小田ちゃんは今のところ

小田さくら さくら小田ちゃん。謎の少女。飛竜に乗ってやって来た。歌が好き。先生と呼ぶ魔道士がいる。

でいいのかな?
683名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/18(木) 17:12:14.29 0
ノハ*゚ ゥ ゚)< ちきぶん ちきぶん
684名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/18(木) 21:32:59.62 0
从*´◇`)<おっとっと
685名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/18(木) 21:33:26.46 0
>>682を参考にして簡潔にまとめてみたけどどうだろう
ニックネームは特にないなら無理に書かなくていいんじゃないかと

小田さくら 「先生」の指令により飛竜に乗ってM13地区にやって来た謎の少女。
686名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/19(金) 01:39:58.78 0
687名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/19(金) 04:13:56.97 0
おやぷみなさい
688名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/19(金) 06:08:11.62 0
あさ
689名無し募集中。。。682@転載は禁止:2014/09/19(金) 11:48:42.46 0
>>685
おお
簡潔
なるほどありがとす
690名無し募集中。。。682@転載は禁止:2014/09/19(金) 17:04:10.78 0
登場人物
生田衣梨奈 えりぽん。魔道士。家出して道重さんの家に居候中。世界一の魔法使いを目指している。
鞘師里保 りほりほ。協会魔道士。道重とえりぽんの監視役としてM13地区に出張中。
道重さゆみ M13地区に住む三大魔導士の一人。えりぽんの師匠。不老長寿の魔法を会得している。
譜久村聖 フクちゃん。えりぽんのクラスメイト。
鈴木香音 ズッキ。えりぽんのクラスメイト。
飯窪春菜 はるなん。黒猫。相当変な一般の魔道士。
新垣里沙 ガキさん。元執行局魔道士。すべての魔力をさゆみに託し、旅に出る。えりぽんの憧れの人。
工藤遥 どぅー。元協会魔道士。協会の施設で育つ。優樹を助けて逃亡しM13地区に入る。
佐藤優樹 まーちゃん。協会に追われている狗族の少女。遥とともにM13地区に入る。
石田亜佑美 あゆみん。工藤、佐藤の友人。協会の施設で育つ。首席で執行魔道士に抜擢。
小田さくら 「先生」の指令により飛竜に乗ってM13地区にやって来た謎の少女。


まだ早いですがテンプレこれでいいでしょうか
691名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/19(金) 17:24:52.47 0
いいんじゃないでしょうか
692名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/19(金) 19:42:16.04 0
そういえば昔スレでふくちゃん視点の登場人物紹介があったなw
693嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/19(金) 19:59:19.06 0
>>647-654より
最初はほんの囁くほどにしか届かなかったスノウの呟きは、
徐々に声量を増していき、ついには全てを振り払うように語気を強める。

「嘘よ……。ありえない……。やっぱりそんなはずはない!!
今のあたしはバンシー。そう、アンデッドなのよ。
たとえあなたが本当に真祖たるトランプだとしても、
すでにヴァンプではないあたしの身体を支配するなんて、できやしないわ」

また顔を上げ、強い瞳でクラウスと名乗るその人物を睨みつけた。

「フフフフ……。ハハハハハハハハ…………」

スノウの詰問に応えるように、俄かにその人物の笑い声が響き渡る。

「その通り。クラウスはこんなところにはいない。
このままバレずに済むかと思っていたんだけどね。
本当は正体を明かさないままでいたかったんだけど、
どうやらそういうわけにもいかないか」

笑いを収めた時には、その人物の口調も声音も一変していた。
その言葉とともに、遥の身体の震えもピタリと収まる。

「誰なの? あなたがクラウスでないというのなら、
あたしの身体をイニシアチブで縛るあなたは誰だっていうの!?」

スノウの再びの誰何の声に、その人物はローブをはためかせると大きく見得を切った。
694嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/19(金) 19:59:46.53 0
「我こそは不死王ケメキングデッド、命無き者の王にして闇を統べし存在なり!!!!」

力強い宣言の後に、砕けた口調で嬉しそうに小さな呟きを漏らす。

「フフ、まさか本当にこの見得を切れる日が来るとは思わなかったわ。
もしもの時に備えて普段から準備はしておくものね」

だがそんな場違いな呟きも、スノウの耳には届いていなかった。

「ふ、不死王……」

全てを悟ったかのように張りつめた空気が解かれ、力なく肩を落とすスノウ。

「どうやらこれで、あなたがイニシアチブで縛られている理由も理解できたようね」

「どうして……。どうしてこんなところに不死王がいるのよ!!」

半ば自棄になって叫ぶスノウだったが、不死王はその声には応えず、
まったく状況を呑みこめず強張った表情の里保と遥に話しかけた。

「あなた達には別のちゃんとした名前で自己紹介した方がよさそうね。
はじめまして。……って本当はヤッシーとは二度目ましてなんだけど、
まあ覚えてるわけはないよね。
あたしの名前は保田圭。今は色々故あって不死王なんてのをやってるけど、
さゆちゃん――道重さゆみや、よしこ――吉澤ひとみの先輩に当たる者だ、
という言い方をすればわかってもらえるかな。
ああそうそう、仮面をずっとつけたままでごめんね。本当はこんなのしないでも
いいかと思ったんだけど、よしこが怖がられるから絶対に着けてけって五月蠅くてさ」
695嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/19(金) 20:00:12.68 0
不死王などという禍々しい響きに神経を尖らせていた2人だったが、意外にも軽い口調と、
その口からさゆみとひとみという馴染みの深い名前が発せられたことで、
ようやくはっきりと味方であることがわかり、里保も遥も緊張が解いて肩の力を抜く。

「危ないところをありがとうございます。
保田さんがいなかったら本当にどうなってたことか……」

「道重さんからの頼みでわざわざ助けに来てくれたんですか?」

里保の深謝に軽く手を上げて応えたケメコが、遥の言葉に楽しげに答える。

「ううん、あたしが要請を受けたのはさゆちゃんじゃなくて、よしこの方」

「吉澤さんが? わざわざどうして!?」

道重さんならともかく、吉澤さんは今回の騒動のことなんて知らないはず。
なのにどうしてうちらを助けてくれるようなことを!?

予想外の返答にきょとんとする里保を見やったケメコが、上機嫌で種明かしをする。

「ヤッシー。この前あなた、梨華ちゃんが迷惑をかけた時よしこに貸しを作ったんだって?
今回のことはその時の借りを返すためなんだと、よしこはそう言ってたわよ」

以前、聖が思いがけず梨華に連れ去られそうになるという騒動があり、
衣梨奈と里保がどうにか解決した後に、確かにひとみはこう言っていた。

『今回みんなには色々迷惑をかけたし、その埋め合わせはきっとさせてもらうから
もしあたしにできることがあれば気軽に言ってよ』

まさかこんなところでその約束が果たされるとは。
でもなんで、ひとみが今回の件を知ってるんだろう。
696嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/19(金) 20:00:38.33 0
「でも感謝するのなら、よしこじゃなくてあんたのいい人、生田にするんだね」

なんでえりぽんに? ていうかいい人って何!!?

ケメコの悪戯っぽい一言に動揺して顔を真っ赤にする里保に代わり、遥が疑問を口にする。

「生田さんが一体どう関わってるんですか?」

「よしこのところに生田から、切羽詰まった様子で電話があったそうよ。
あなた達2人を助けてくれって。
あたしに手助けしてもらうよう、よしこから頼んでくれって。
この前のヤッシーへの借りを返してやってくれって。
仮にも年下の親友に真摯な声で泣きながら頼まれたら断るわけにもいかないよねなんて、
よしこも笑いながら話していたけどね」

「なるほどそうだったんですか。愛されてますね生田さんに」

「ちょ、ちょっと何言ってんのさ!
助けてくれと頼んだのはうちら2人をでしょ! 変なこと言わないでよ」

遥にからかわれて、さらに顔を赤らめながら怒ったように否定する里保を、
ケメコも微笑ましく見守る。

「あたしもよしこには色々世話になってるからさ。
その頼みを快諾して今ここにいるわけだけど。
まあ生田もどこまで理解していたのかはわからないけど、
今回の件であたしに出馬を要請したのは大正解だった」

弱々しく俯いたままのスノウに目をやるケメコ。
697嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/19(金) 20:01:03.90 0
「今のあたしは不死王。全てのアンデッドの上位に位置する者。
そこにアンデッドが出没しているのであれば、
たとえ物語の中だろうが何だろうがどんな場所でも往来が可能だし、
そしてアンデッドはあたしの命令に決して逆らうことができない。
この世界の言葉を借りれば、全てのアンデッドに対してイニシアチブを握っているという、
言ってみればあたしはそんな存在なわけよ」

そこでケメコは、芝居がかった冷ややかな声を投げかける。

「だからそこのバンシーは、あたしが責任を持って
無理やりにでも引っ立てて、冥界の門に放り込んで処分してやる」

ケメコの声を背中に受けて、スノウの身体が大きく震えだす。
思わず息を呑む里保と遥。
確かにケメコに全てを任せてしまえば話が早い。それはそうだけど……。

そこで遥が強く首を振ると、意を決して異議を唱えた。

「そ、それはやめてください。スノウはハル達がどうにか……」

「はい合格」

「えっ?」

遥の言葉を遮ったケメコが、満足げに頷く。
698嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/19(金) 20:01:30.05 0
「やっぱりさゆちゃんが見込んでるだけあって、責任感が強くていい娘達ね。
さっき言ったようなことも、やろうと思えば簡単なんだけどさ。
ただそこまで手伝っちゃったらさゆちゃんから過保護すぎるって叱られそうだし、
スノウは地獄の業火に焼かれて魂ごと消滅することになるから、
少なくとも彼女を浄化するという目的は果たせなくなるわけよ。
だから、あなた達が本当にスノウのことを救いたいのであれば、
自分達の力で成し遂げなくてはならない。
それこそ2人が乗り越えるべき試練だから、まあしっかりやりなさいな」

ホッとしたような、これからの困難を想って身が引き締まるような、
複雑な心境で遥と里保が顔を見合わせて頷きあう。
そこでケメコが、しまったという風に頭を掻いた。

「ごめんね、ちょっとベラベラとお喋りがすぎたみたい。
普段よしことかたまに遊びに来てくれるくらいでなかなか話し相手がいないから、
こんな滅多にない機会をもらえて嬉しくてついつい口が止まらなくてさ。
でもあたしの口出しもここまで。とりあえず危険な呪いだけは解いておいたから、
後は邪魔にならない場所でゆっくりと2人のお手並みを拝見させてもらうわね」

そしてケメコは錫杖を一つかき鳴らし、物々しい口調で宣告する。

「さあ、深い縁に導かれ次元を超えてリリウムの世界に至りし勇者達よ!
さ迷えるアンデッドと化したこの憐れなスノウの魂を、汝らの手により見事浄化してみせよ!!」

「「はい!!」」

里保と遥の気持ちのこもった返事に、意を得たりとばかり呵々大笑するケメコ。
そして徐々に漆黒が身体全体を覆い、笑声とともにそのまま闇の中へと溶けていった。


(つづく)
699嘆きの先にある光・余談@転載は禁止:2014/09/19(金) 20:02:24.12 0
ケメコと里保の初めての出会いについては「ケメコ外伝」
ひとみが里保に作った借りについては「夕陽に黄昏」を
それぞれご参照ください(どちらもまとめサイト「外伝(続きもの)」内に所収)
700名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/19(金) 21:19:53.39 i
ケメコキタ━(゚∀゚)━!
701名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/19(金) 21:25:11.28 0
乙です
ケメコびびったw
702名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/19(金) 22:12:31.67 0
まさかの展開w不死王の作者さんだったとは!さてどうやって浄化するのか期待だね
703名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/19(金) 22:13:48.32 0
まさかのケメちゃんw
704名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/19(金) 22:16:05.33 O
>>496
>アンデッド……。
>人ならざる者……。
>使えるものはそれが何であっても最大限に利用……。

ここから思ってた通りケメが出てきたww
けどヨシ子まで絡んでくるとは予想できんかった
で、思わぬピンポンネタで盛り上ったしww
705名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/19(金) 22:56:11.02 0
さすがにケメちゃん登場は読めなかったw
706名無し募集中。。。682@転載は禁止:2014/09/19(金) 23:53:14.48 0
ヤスヲタの俺大歓喜
ありがとう
707まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/09/20(土) 00:29:00.19 0
えーっとこんばんは

まさかの流れに若干戸惑っています
でも流れをくまず続きに参ります
708まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/20(土) 00:31:16.13 0
M13レンタルームへと里保と亜佑美を見送り、衣梨奈と春菜を海岸の楽士のもとへやるとさゆみは家に誰も居ないことを確認する。
そしてそっと地下への階段の封印を開いた。
刹那、歪な魔力が部屋から飛び出し、さゆみの家の魔力が歪む。

だが、それも一瞬のことで、さゆみが一つ口笛を小さく吹くとその乱れは収まった。

「この部屋は相変わらずね。」
さゆみはそう苦笑し呟くと部屋を見渡し、目的のものを探す。

部屋の中はまさに異様と言うべき光景が広がっており、また置いてある一つ一つの魔法道具や書物から
放たれる魔力は並みの魔導士であればショック死するのではというくらい禍々しいものである。

……灯ることの無いランプ…鳴り止むことの無いオルゴール
……嘆きの書物…りほりほのアルバム…


一通り部屋を回ったさゆみは目的の物を見つけ出した。
フッと息を吹きかけると、永く置かれていた所為か表面に溜まっていた埃が宙に舞い上がり視界が霞む。

「ゴホッゴホッ、もう!
 魔力を纏っているんだから埃ぐらい防ぎなさいよ全く。
 
 ……これを使うのは久し振りね。」


『時の羅針盤』

文字通り、時を渡る際の導きとなる魔具である。
それこそ、時空を操る魔法が主流となっていた時代は大活躍していた代物であった。
709まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/20(土) 00:32:23.17 0
だが、時空を渡ると言うことは時間の流れに干渉するということ。
それで未来を変えてしまって存在そのものが消滅してしまった魔導士を何人もさゆみは見てきた。

慎重には慎重を……。

そのために、無駄とは知りながらも里保と亜佑美を執行局員として会社に派遣したし、
今回ばかりは違う魔導士の意見も聞きたくて彼の所へ話を聞きに行かせた。ただ……。

(恐らく、時空を開くのは『ここ』と『異世界』さゆみ…。
あとは2つを繋ぐ共通の『鍵』と『魔力』があれば大丈夫ね。)


さゆみはもう一度確認をすると大きく伸びをして子ども達の帰りを待つのであった。
710まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/20(土) 00:34:43.40 0


保と衣、そして優樹を送りだしたさゆみは一人思案する。

あの2人をこのままこの時代に、この世界に『置いた』ままにしてはいけない。
時間は絶えず流動的でこの世の起こること全ては偶然ではなく必然性を持っているとさゆみは感じている。

だが、その流れの一部が乱すいうことは川にまるで竿を刺すかのように周囲の流れにも影響を与える。
本来、あの2人は『この世界』、言うならば魔法が一般的ではない『この時代』にいるべき存在ではない。

その影響は少なからず実際のものとしてあらわれている。


あの日の夜、衣は保を連れて帰る事もなく、生まれた故郷で非業な最期を遂げる『ハズ』であった。
そして譜久も何事もなく嫁いでいった。
だからあの晩、衣が何事もなく保を自分のところへ連れてきたことに少なからず驚いたし、またその理由も優樹の姿を見て合点がいった。


さゆみの『知っている世界』とは何かが少しずつ変化している。
もしかしたらそれが本来あるべき姿であったのかもしれないしそうでないのかもしれない。
『いま』を生きている自分にとっての未来を予知する、未来が視えるというのはそういう
不確定な部分も多く含んでいるんだということを改めてさゆみは感じたのであった。

「まだまだ、さゆみも精進が足りないわね。こんな些細な出来事に振り回されちゃうなんてね」
そんなことを呟きながらさゆみはこの時代で自らの魔力の及ぶ範囲でやったことをもう一度確認する。
711まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/20(土) 00:37:04.18 0
(恐らく出口は向こうのさゆみが開くはず…。
 となるとこの世界で必要なのは道をつなぐための『鍵』と『魔力』が必要なの)

昨晩の山の向こうから感じた魔力が優樹の仲間のものだということはさゆみにもすぐに分かった。
だが、今すぐにでも家を飛び出しそうな優樹を押し留めるとさゆみは昼間、保が眺めていた刀を手に持ち戻ってきた。

「みにしげさん!!むこうにどぅーが!
 あの山の向こうにどぅーがいるんだよぅ。

 ………なんでいかしてくれないのさ。」
 

この世界に来てから約2日が経過しようとしている。
その間も口にはしていなかったが恐らくずっとその仲間の身を案じていたのだろう。
だがここにきてその存在を身近に感じることにより一気にその思いが爆発した。

そんな優樹の様子を見てさゆみは微笑みを浮かべ優しい口調で優樹をいさめる。

「だーめ!ここはマサキチ知っている世界ではないでしょ?
 そんな中に1人で、しかもこんな夜中に出るなんて危なくて許可できません。」

「でも…どぅーが…。」

「ダメったらダメ!
 大丈夫。明日の朝早く衣も連れて行っていいから、みんなで捜しに行きなさい、いーい?」

「………はい。」
712まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/20(土) 00:38:36.26 0
「さっ!明日の朝早くに出るのならもう寝とかないと、おやすみマサキチ。」

優樹はしぶしぶ立ち上がり寝床の準備をする。
そして布団に入るのを確認するとさゆみは小さく指を振るった。

「明日はきっとタフな一日になりそうね。ゆっくりおやすみ!」


----------------------------------------

((チャンスは恐らく一瞬…。その瞬間に扉をこじ開ける))
さゆみは心にそう決めたのであった。
奇しくも次元の異なるそれぞれの世界の住人の意見が一致した。
それもただの住人ではない。


あの道重さゆみだ。世界の理ですら変化させることが可能である。
時は着々と進んでいく。時の変異点へと…………………。
713まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/09/20(土) 00:42:53.86 0
最終回が近付いていて若干、話をまとめに入っているせいか展開が雑な
気がします

遠慮なくご意見等ください
714名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 01:03:47.16 0
更新乙ですついに過去と現代がつなが・・・ってちょっと待った!!『りほりほのアルバム』ってなんだ!?w
715名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 01:17:20.45 0
大丈夫かと
716名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 01:18:46.78 0
三種の神器の一つでは?
717名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 01:21:58.92 0
さゆの三種の神器
・譜久ちゃんのパンツ
・りほりほのアルバム
あと一つ何がいいかw
718名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 01:39:53.61 O
りほりほのアルバムにそれほど禍々しい魔力が宿るとは・・・・
りほりほの使用済みパンツともなれば全人類を滅ぼしかねない魔力が宿っているのだろう
そのパンツを毎夜のように脱がせて平気なえりぽんは人類の救世主たる偉大な魔導士に成長するに違いない
719名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 01:54:51.13 0
嘆きの書物って・・・リリウム?
720名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 06:53:43.62 0
>>717
えりぽんのなまちゃん?w
721まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/09/20(土) 08:11:17.51 0
おはようございます
魔具部屋はさらっと書いたのでw
嘆きの本はリリウムということにします

そっか りほりほのパンツかwww
722名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 09:06:10.75 0
りほりほのアルバムに宿る禍々しい魔力…
さゆが必死に見すぎたせいだなw
723名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 12:37:30.25 0
724名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 17:38:58.04 0
ほん
725名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 18:46:08.19 0
みなさん現場かしら
726名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 19:17:06.42 0
さゆ・・・
卒業発表の時点であれだけ衝撃を受けていた
本編作者さんの精神状況が心配だわ
727名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 19:33:42.44 0
むしろこうなることを予見していたからこその落ち込みだったんじゃないかな
なんとなく予感していたさゆオタは多かったと思う
728名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 20:58:17.12 0
さゆロス2回目
729名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 20:58:56.83 0




風に揺られる枯れた花畑の中に9人は暫く佇んでいた。
さくらは萎れた花弁を撫でながら、時折聖の顔を窺っていた。

もちろん、心から思ったことを言ったのだけれど
打ち沈んだ聖の表情が少しは晴れれば、という気持ちもあった。
笑顔になってくれた。
だけど、聖の顔はまだどこか寂しそう。
それは、この花畑に感じた寂しさとは別の所から来るもののようにも思えた。

聖の横に立つ香音の顔も窺ってみる。
気の抜けたような柔らかい表情。
それは包み込むように聖に向けられていた。
730名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 20:59:23.33 0
先生に言われた通り、見た瞬間にこの二人が「因子持ち」なのだと分かった。
それは、言うなれば魔道士としての感覚に訴えかけられる存在感。
柔らかいような、暖かいような、心惹かれる雰囲気を、確かに二人は放っていた。

先生によれば、普通の魔道士はその存在を感じることは出来ない。
今さくらが知覚しているような「因子」を感じる感覚は
魔道士の中にはあるのだけれど、何らかの手段で強引に呼び覚まさない限りは発現しないらしい。

さくらの場合は、今回の任務にあたって先生自作の薬と、幾つかの複雑で胡散臭い魔法の施術によって顕現した。
他にもいくつか方法はあるけれどそれが一番手っ取り早いということだった。
もう失われて久しいという「因子」にまつわる技術。
勿論さくらも、実際に見るのは初めてだった。

まさかこんな形で目的の二人に出会うとは思わなかった。
もう半ば、先生のお使いのことは諦めて楽しく過ごそう、なんて思っていたから。

だけど見つけてしまったからには、任務を果たしたい。
役立たずだと思われるのは勿論嫌だし、何より、聖と香音に実際会って
先生の目的、その結果が知りたくなった。

だけど、二人を見つけることが出来たけれども、二人を連れ帰ることにはまだ大きな困難が立ちはだかっている。
731名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 20:59:56.07 0
一同がようやく花畑を後にした頃には、曇天の向こうの太陽が頂を超えていた。
腹ごしらえにとぞろぞろと移動し、衣梨奈や香音たちが馴染みの定食屋さんへと入って行く。

台風で暇をしていたお店に8人でテーブルの二つを占拠し、猫を連れて入っても
気さくな店主は嫌な顔をせず迎えてくれた。

席に着くなり、さくらの身体に違和感が襲う。
それは、昨日衣梨奈達との別れ際にも感じたもの。
薬の効き目が、切れかけている。

さくらは慌てて、だけどなるべくおしとやかに、お店のお手洗いに駆け込んだ。

個室に入って鍵をかけると、ポケットから鞄を取り出し元のサイズに戻す。
それから、薬を取り出した。

「もう切れちゃうなんて…」

思わず声が漏れる。
昨日は確かに丸一日はもったのに、今日はまだ半日と少し。
身体に耐性が出来てしまったのか、そもそも薬の質が微妙に違うのか。
魔法の薬の効果に、絶対ということはない。
まして自分で研究して作ったものならともかく、この薬は先生が作ったもの。
だからある程度、想定外を加味していたつもりだけれど
ここで切れてしまうのはとってもまずい。

残る薬は最後の一つ。
今飲むとして、同じような効果なら明日の朝を待たずに切れてしまう。
もしかしたら、もっと効き目は短くなっているかもしれない。
時間が無い。
732名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 21:00:26.16 0
とにかく、飲まないわけにはいかない。
さくらは小瓶の蓋をあけ一気に煽るとまた鞄を小さくしてポケットに仕舞い、
また身体の様子が元に戻るのを確認してからお手洗いを出た。

「大丈夫?」

席に戻ると里保が心配そうにさくらに言った。
慌てて席を立ってしまったから。
よくよく考えれば、身体が察知してから完全に効果が切れるまでにはかなりラグがあるから
落ち着いてお手洗いに行けばよかったのだ。

「はい。もう大丈夫です」

さくらが笑顔を作ると、「そっか」と里保も笑った。
顔色が悪いわけでも無かったから、大したことはないと思ってくれたらしい。

「ねえ、さくらちゃん。今日の夜さ、えり達の家に来ん?」

「え?」

不意に衣梨奈が告げた言葉。
見れば亜佑美や優樹も、どこか期待を込めた眼差しでさくらを見ていた。

「今ちょっと話とったっちゃけど、もうすぐ夏休みも終わってしまうけん、
 みんなで夕ご飯食べようってなって。
 えりと里保と亜佑美ちゃんで腕振るうけん、さくらちゃんもどうかなって」
733名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 21:00:52.82 0
その言葉を聞いて、さくらは複雑な気持ちになった。
タイミングがいいのか悪いのか。
是非ともご一緒したい。
だけど、今薬を飲んで、次に効果が切れたら薬はもう無い。
夜まで一緒に居て、そこで切れてしまったら大変。
それに

「道重さんも、多分さくらちゃんのこと気になっとーしね」

「うちら昨日ずっと小田ちゃんの話してたもんね」

やっぱり、とさくらは思った。
不思議と、昨日から一緒に居てその名前が衣梨奈達の口から出たのは初めてだった。
だけれども、どこかで確信していた。
衣梨奈達が『大魔女』と深い繋がりがあることを。
別に隠していたわけでも無いのだろう。
さくらのことを魔道士では無いと思っているのだから、道重さゆみという名前にもそれほど意味はないはず。
ただ、今までその名前が出るタイミングが無かっただけなのだろうけれど。

会ってみたい。
だけど、たとえ薬を飲んだ状態でも、会うわけにはいかない。
「先生」と同格の魔道士。
多分何を隠そうとしても、見透かされてしまう。
734名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 21:01:18.64 0
そしてますます、聖と香音を連れ帰ることの困難を思い知らされた。
思えば「因子持ち」を取り囲む若い魔道士が6人も。
それはまるで二人を守っているかのよう。
こうなっては、衣梨奈達にも知られずに、二人に話をしなければならない。
そんなタイミングがあるとは思えない。

少し強引な方法をとらなくちゃならないかもしれない。

気楽な気分でこの街に来たはずなのに、そんな綱渡りをするものだろうか。
なるべくなら手荒なことはしたくない。
だけどさくらは、二人を見つけている状況で、二人を連れず戻ることは出来ないと思った。
自分は「先生」の弟子なのだから。

「あの…、ごめんなさい。
 是非お邪魔させて貰いたかったんですが…。
 予定が早まってしまって、今晩には帰らなくちゃならないみたいなんです」

「え、そうなの…?」

「はい。本当にごめんなさい」

「いや、小田ちゃんが謝ることじゃないよ。
 だけど、今晩かぁ」

定食屋さんの壁を風が殴りつける。
柱の軋む音に、店ごと飛ばされはしないかと心配になったけれど
店主は陽気にそれぞれの注文した料理を運んできた。

一同の中に、さくらが帰ってしまうという事実に寄り添う小さな寂しさが広がっていて
お店の中にはやかましい風と、美味しそうな匂いが混じり合った何とも言えない空気が出来上がっていた。
735名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 21:02:13.59 0


書きはじめて一年経ってた
我ながらようやるわ
736名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 21:26:29.11 0
作者さん投稿&1年経過乙です
一人で長く続けられるなんて凄い!
こんな大作の動画やゲーム作らせてもらえてホントに良かったです
これからも楽しみにしてます!
737名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 21:26:42.98 0
本編キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!
738名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 21:54:01.20 0
ドキドキしてきたw
乙です
739名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 22:59:15.79 O
さゆに鍛え上げられた生田の性技に籠絡され先生を裏切ってしまうさくら
740名無し募集中。。。@転載は禁止@転載は禁止:2014/09/20(土) 23:28:57.46 0
マジかもう一年!オタになって割とすぐこのスレに来たんだなー
741名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/20(土) 23:58:02.77 0
仕事&呑み会から帰宅
何かあったすか?
742名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/21(日) 00:12:13.72 0
大魔道士のブログ見てみそ
743名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/21(日) 09:54:49.01 0
間に合え
744名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/21(日) 10:36:28.99 0
ブログ見てきました

好きだったから
ただただ好きだった
好きなものになっただけ

良い生き方じゃないですか
その後はまだ不明ですがヲタとしては寂しいでしょうね

潔し清々しいて受け方もありますが
745名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/21(日) 14:35:36.93 0
本編乙です ついに動きあるのか…
さゆロス再び
746名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/21(日) 16:08:09.86 0
本編作者さんてオープンのJJウグイススレでも書いてる?
さわやかな作風が似てると思った
747名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/21(日) 16:44:02.23 0
1年経ちますか
俺どっからだっけか
結局グダグダ妄想ばかりで何もしとらんな俺は
748名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/21(日) 18:24:08.15 0
一周年おめでと
749名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/21(日) 20:36:18.77 0
気付いたら一年!
750名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/21(日) 23:07:05.51 0
一年かー
751名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/21(日) 23:23:03.84 0
1スレ目から存在は知ってた
でも「なんかそそられない題名だし、すぐ終わるんだろうなー」って思って見なかった
それからしばらくして4スレ目になっているのを見つけた
あ、この小説まだ続いてるんだ、今は暇だし、読んで見ようかなって読み出した日に徹夜
今に至ります
一周年おめでとうございます
752名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/22(月) 01:53:15.68 0
前にこのスレでもチラリと話題になった『魔法使いの嫁』を1巻だけ
読んでみたんだがここの本編の話と通じる部分があって面白かった
(魔法使いと魔術師の違いとか主人公が魔法使いの
弟子|||9|‘_ゝ‘)であり嫁ノリ*´ー´リなところとか)

両者の開始時期を比べてみると
『魔法使いの嫁』の連載開始が2013年11月30日発売号より
このスレが始まったのが2013年9月より・・・

これはもしかしてパクられてる!?
とまではいかなくてもこっそりこのスレを読んでて設定とか
密かに参考にしてる部分もあったりするんじゃないかと
思わず妄想してしまったw
753名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/22(月) 03:18:59.92 0
漫画ゲームとかでもハロメンをモデルにしたんじゃないかって子がいるもんね
754名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/22(月) 07:10:23.47 0
>>735
1周年おめでとうございます!これからも続くこと期待してます
755名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/22(月) 07:23:16.49 0
1年早いな

|||9|^_ゝ^)<ちちんぷいぷい魔法にかーかれ!
756名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/22(月) 07:30:02.67 O
1年で魔導士えりぽんは空飛べるようになったり随分成長したように思うんだが
リアルえりぽんはただのチャラいイケメンになってしまった・・・
757名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/22(月) 11:00:17.59 0
そっか。いつの間に
758名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/22(月) 12:21:47.06 O
自分も何気なくこのスレを見つけてもう1年です
1周年おめでとうございます!
759名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/22(月) 18:39:43.53 0
あげとく
760嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/22(月) 19:51:33.55 0
>>693-698より
春の嵐のような不死王の襲来もようやく一段落し、広間に束の間の静けさが戻る。
不死王のイニシアチブからは脱したはずのスノウも、もはや立ち上がる気力も失せたか、
俯いたまま、ぽたりぽたりと涙で床を濡らすばかりだ。

「スノウ……。
ハル達はあなたにこの命を捧げることはできません。
でも、あなたの深い苦しみを取り除くことはできるかもしれない。
いや、そうじゃない。絶対あなたを絶望から解放します!!」

「だから、教えてほしいんだスノウ。
どうしてうちらをこの世界に呼び寄せたのか。
どうしてバンシーに身を落としてまでうちらの、リリーとファルスの死を願うのか。
あなたの心に巣食う闇の全てを、うちらに聞かせて」

遥と里保のまっすぐな情熱がスノウにも響いたか、
ポツリポツリと弱々しいながらもスノウが心情を吐露していく。

「あたしは……死ぬのが怖かったの。
だからファルスとの同化が決定的となりイニシアチブの影響を受けなくなった50年前から、
あたしはファルスに従いこのクランで永遠を生きることを選んだ。
でも……。リリー、あなたは違った」

スノウが、泣き濡れた哀しげな瞳を里保へと向ける。
761嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/22(月) 19:52:00.82 0
「リリー……。
あなたは、あたしにとって800年前からの大切な親友。
その親友のあなたが、ファルスの永遠を拒絶しようとするのを見て、
あたしの心は張り裂けそうだった。
唯々諾々とファルスに従うあたしの姿に、リリーはどう感じて何を思うのか。
もしかしたらあたしの選択に引きずられて、リリーも最後には
ファルスの永遠の繭期を受け入れてしまうかもしれない。
でも意に染まぬ選択をしたリリーは、たとえ身体が永遠を受け入れたとしても、
きっと心はそれを拒絶して死と同様に全てを閉ざしてしまうわ。
あの頃のリリーに戻ることは決してないの。
かといって、ファルスを拒絶するなら、残る道はシルベチカのように自ら死を選ぶしかない。
その場合、親友の死を目の当たりにした上で、ファルスとともに永遠を生きるなんてことは、
あたしには到底容認できることではなかったの。
ファルスに迫られたリリーがたとえどんな選択をしたとしても、あたしの眼前に映る未来は
死への恐怖以上に苦しく受け入れがたいものとなることがはっきりしていた。
……だから。あの時あたしができることは、リリーの負担とならないためにも、
あたし自身のためにも、マリーゴールドの手を借りて死を選ぶことしかなかったのよ」

スノウの口から初めて語られる、親友リリーへの想い。
続いてスノウの視線は、遥へと向けられる。

「ファルス……。
あたしは……。あたしは、あなたのことを愛していた」

おもむろにスノウから発せられた愛の告白に、遥の胸が激しく高鳴る。
762嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/22(月) 19:52:26.84 0
「でもわかっていた。
あなたが欲していたのは、永遠の孤独を慰めるために全てを受け入れてくれる
友という名の操り人形だけだということを。
たとえどんなにファルスに愛を注いだとしても、きっとあなたから還ってくるのは、
口では愛の言葉を転がしていても、実質は独善的な気持ちの押し付けだけ。
お互いの愛が混じり合って一つになることは決してない。
それが自明だったから、あたしはこの胸の内に生じたファルスへの愛から目を背けた。
どうしても受け入れることができなかった。
ファルスとともに永遠を生きるということは、あたしにとって何よりの至福であるとともに
それ以上に耐えがたい苦しみの日々でもあった。
だからあたしはファルスから逃げたの。リリーの拒絶をきっかけにして、
あたしは死を選択することによってファルスへの愛から逃げだしたの」

ドンッ!!!

右手を振り上げたスノウが大きく床を叩きつけ、心の内に秘めていた感情を爆発させる。

「でもあたしの選択は誤っていた!!
あたしの死を契機として、リリーはクランの住人を死へと至らしめ、
その重い十字架とともに永遠を生きることを余儀なくされ、
ファルスは作り上げてきた永遠の繭期を失い、また独りきりで放浪の旅を強いられることとなった。
あたしが死を選んだことが2人を不幸へと追いやった!!
あたしこそがあなた達の不幸の元凶なのよ!!」
763嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/22(月) 19:52:54.04 0
スノウの語り口調が、徐々に呪詛のような響きを伴ってくる。

「あたしは死して後に大きな悔恨の念に囚われた。
あたしの大切な親友が、愛する人が、死ぬこともできず永遠の苦痛にのた打ち回る中で、
2人を不幸にしたあたし自身は、死へと逃げ込んで安らぎとともに現世を去る……。
そんなことが許されていいはずがない。今のままでは死んでも死にきれない。
せめてあたしに、2人の強いられた永遠を終わらせる力があれば。
ほしい、2人を永遠から解放する力、2人に死を与える力がほしい!!
……そしてあたしは、ついにその願いを叶えることができた。
あたしの強い想いが天に通じたのか、この身はバンシーとして蘇り、
リリーの、そしてファルスの永遠の呪縛を断ち切る能力を手に入れることができたの」

「そんな。そんなことが……」

バンシーがスノウだと確信した時、里保も遥も一つの疑問を抱いていた。
なぜスノウは自分達の、そしてリリーとファルスの死を望んでいるのだろうかと。
死にきれずにバンシーとして蘇ってまで晴らしたい、そんな強い恨み辛みを抱えているのか。
でもスノウからは、深い悲嘆は感じられても恨みや殺意など片鱗も感じ取ることができず、
まったくその答えが想像もつかないまま途方に暮れていたのだけど……。

まさか、スノウがバンシーと化した理由、リリーとファルスへ死を望む理由が、
恨みとは真逆の、重すぎる愛ゆえのものだったとは。
親友を、そして愛する人を、永遠の苦しみから解き放つために、
自ら不浄の者と化してまで相手の死を希求する。
その悲痛なまでの愛の深奥に思いを致し、想像を絶する闇の深さに、里保は眩暈に襲われた。
764嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/22(月) 19:53:20.35 0
「でもそれだけじゃダメだった。
たとえバンシーになろうとも、あたしはこの世界に属する者。
その理から逃れることはできない。
あたしは2人を死へと導くことのできる能力を手に入れながら、
この世界の理に縛られてそれを行使することもできず、ただ歳月だけが無為に過ぎていった。
その時だったの。時空を超え宇宙を超え、あなた達の存在を感知したのは」

里保がそっと遥の左肩に手をかけ、遥がその上から自らの右手を重ね合わせる。
ついに2人がこの世界に呼び寄せられた理由が、スノウによって語られる。

「あなた達2人は、遠く次元を超えて、リリーの、そしてファルスの魂の一部を継承する者」

魂の一部を継承。
突拍子もない話だったが、これまでリリーとともにリリウムの世界を体感してきた里保は、
薄らとではあったがお互いの魂に何か通じ合うものを感じており、
その言葉も案外すんなりと受け入れることができた。

「だからあたしは、あなた達をこの世界に導き入れた。
あなた達の命を奪えば、きっとリリーとファルスにも死が、とまではいかなくても
それに近い何らかの影響を与えることができるだろうと思ったから」

初めて慟哭の呪いを受けた時の衝撃、そして元の世界に引き戻された時の感覚が蘇る。
あの時、道重さんの介入がなければ本当に危なかったんだ……。
765嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/22(月) 19:53:48.20 0
「あの時はあと一歩で取り逃したけど、慟哭の呪いであなた達を縛り付けることはできた。
だからこそ、受けた呪いを解くためにあなた達は自らこの世界に乗り込んできてくれた。
たとえリリーとファルスの魂の一部を継承しているとはいえ、
この世界にとってあなた達は明らかに理から外れた異物。
異物であるあなた達の存在によって、世界の理に綻びが生じ、バンシーと化したあたしもまた、
ついに理の呪縛から解放され、自分の意志で行動できるようになったの。
そう。あなた達のおかげであたしはようやく、リリーに、ファルスに、
あたし自身の手で死を与えるまたとない機会を得ることができたのよ。
……それなのに!!!」

それはやり場のない無念が凝固したような、痛々しい叫びだった。

「まさか不死王にあたしの悲願を阻まれるなんて……。
いえ違うわ。あたしのことを阻んだのはあなた達2人。
ねえお願いよ。あたしのことを救いたいというのなら、その命をあたしに頂戴。
今のあたしは、リリーに、ファルスに死を与えるため、永遠の苦しみから解放するために存在しているの。
ねえリリー。このままだとあなたは、クランのみんなを殺めたという重い十字架とともに、
この先何百年、何千年と望まぬ永遠を生き続けていかなければならないのよ。
ねえファルス。これまで3000年もの長い間、永遠に囚われてきたあなたなら、
その辛苦は嫌というほど心身に刻み込まれているでしょう。
永遠の繭期なんてこの世には存在しないの。それは砂上の楼閣でしかないの。
あなたはこれからまた先の見えない苦しみを、何千年と繰り返していくのよ。
今のあたしならあなた達の苦しみを救えるのよ!!
あなた達を永遠から解放するのはあたしにしかできないのよ!!
……だからお願い。その命、あたしに頂戴。
これ以上愛する人の苦しむ姿を、あたしはもう見ていられないのよ……」

スノウの悲哀に満ちた心の叫びは、最後には涙とともに哀願に変わり、
虚しく広間の闇の中に吸い込まれていった。


(つづく)
766名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/22(月) 20:27:45.85 0
乙です

いや…これ大丈夫か?w
破壊力ハンパないな
767名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/22(月) 21:02:00.45 0
((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
768名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/22(月) 21:12:25.75 0
なかなか重いですな
769名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/22(月) 21:33:42.17 0
正しく『真説・リリウム』と言っても過言ではない…まさかスノウに心の奥底にこんなにも深い愛を隠していたとは・・・若干いやかなり歪んではいるけどw
770名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/22(月) 21:36:46.98 0
東野圭吾の白夜行以来の
愛の形 かもw
771名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/22(月) 22:06:00.01 i
ヤバイな
いつも以上に話に引き込まれるわ
772名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/22(月) 22:55:59.64 0
まーどぅーの続きを行きます


と思ったけど今夜はやめときますw
スノウの悲しみの威力半端ない
773名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/22(月) 22:57:53.90 0
ノリo‘ο’)<773!
774名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/22(月) 23:10:57.27 0
スノウはファルスが大好きって設定(中の人の話じゃなく)はやっぱ欲しいですよねえ
775名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/23(火) 03:05:16.63 0
川 ´‘ _‘||<呼んだ?
776名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/23(火) 06:40:49.12 0
  リリーが悪いんだからね!
    ∨
川 `‘ _‘|| パーン!
  ⊂彡☆))*゜ー゜リ <なんでヤシ!
777名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/23(火) 13:03:24.98 i
あげ
778名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/23(火) 17:37:45.76 0
いまだにリリウムのDVDが送られてくる気配もなし・・・
779名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/23(火) 18:41:26.32 0
みんな遅いんだな届くの
自分は昨日届いたが…
780名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/23(火) 19:50:17.80 0
もう手元にあるなんて羨ましい
こっちもようやく発送メールが来たから
発売日当日の明日には届きそう
781名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/23(火) 20:55:23.70 i
まだ受け取れない
782名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/23(火) 22:52:07.59 0
俺くそ田舎だからDVDは大概金曜か土曜だわ
783名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/23(火) 23:03:28.82 0
25〜27のどこかに届く予定ってなってたorz
今日地元のお店に売ってたorz
784名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/23(火) 23:13:17.70 0
キャンセルしろ
785名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/24(水) 00:02:59.00 0
今日の昼間に来たらしいけど名古屋コン参戦で不在
宅配ボックス使えって何回言えば分かるんだよ・・・
786名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/24(水) 00:07:42.48 0
ステーシーズも一緒に頼んでるんだよ
787名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/24(水) 10:00:49.70 0
788名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/24(水) 14:23:19.73 0
永遠のさゆ期
789名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/24(水) 19:41:21.95 0
永遠のさゆ期が終わっちゃう・・・
790名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/24(水) 19:50:58.92 0
枯れない花はない…

ちゃうううううううううううううううううううううう
791嘆きの先にある光・作者@転載は禁止:2014/09/24(水) 19:53:51.53 0
本日リリウムのDVD発売日!!
そしてこのリリウムの物語も今日でついに結末を迎えます。
とにかく長いのでご注意ください。
以下この前言とあとがき含めて全16レス、一気にラストまで駆け抜けます。

あと、まーどぅー作者さん、
もし今回も投稿のタイミングが被ってしまったらごめんなさい……
792嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/24(水) 19:54:24.81 0
>>760-765より
スノウが吐露した魂の激白に、里保も遥もただただ圧倒されるしかなかった。

自らをバンシーに堕してまで相手の死を望むという行為からして、
よほど壮絶な想いと覚悟が秘匿されているのではなんて漠然と考えてはいたけど、
まさかこれほどのものだったとは……。
この圧倒的なまでの愛の重圧と深淵の闇を前にして、
一体スノウにどのような言葉をかければいいというのか。

「鞘師さん!?」

その時、動いたのは里保だった。おもむろにスノウの元へと歩き出す。

いや違う。うちは何もしてない。……なのに身体が勝手に!?

一瞬パニックになりかけた里保だったが、すぐにその原因に思いが至る。

これは、リリーの意志によるものだ。
うちがこの身体を支配してから、休眠状態となっていたはずのリリーの心に、
スノウの悲嘆と哀願の声が届きそして覚醒したんだ。
うちの支配を脱して、今この瞬間、うちとリリーの意志は同じヒエラルキーにある。

そこではたと気づく。自分が今、何をすべきかということに。

「どぅー! 自分の心の内に耳を傾けて!
そこにあるファルスの想いをスノウに伝えてあげて!」

無理やりに自分の言葉を探そうとする必要はない。
ただ、リリーの想いを掬い上げて、ありのままにスノウに届けてあげればいいんだ。
793嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/24(水) 19:54:51.40 0
うずくまり涙を落とすスノウの前で膝をついた里保は、その身体をそっと抱きしめる。

「スノウ、ありがとう。
そんなにもあたしのことを想ってくれて」

「リリー……」

里保の口から自然と紡ぎだされたのは、リリーの言葉であり、そして里保の言葉でもあった。
スノウが顔を上げて、悲哀に満ちた瞳を向ける。

「でもね、それ以上に今、あたしはとっても哀しいの。
だって、愚かすぎる自分の選択によって、大切な親友をバンシーにまで貶めてしまったのだから」

「それは違うわ!
あたしがバンシーになったのは、自分自身の意志によってよ。
リリー、あなたが哀しむ必要は何もないわ」

「それを言うのなら、あたしがクランのみんなを手にかけて
無残にもその命を奪ったのも、あたし自身の意志によるものよ。
それはスノウのせいじゃないし、あなたが責任を感じる必要はどこにもない」

リリーの反論に言葉が詰まり、視線を落とすスノウ。
794嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/24(水) 19:55:23.20 0
「スノウ。あなたがあたし達を永遠の苦しみから解放してくれようとする、
その気持ちは本当に嬉しい。
でも、もしあなたの手によって念願の死を得てあの世へと行くことができたとしても、
そこから先はどうなるの?」

「そこから先……?」

「あなたは悲願を叶えた後もバンシーとしてこの世界をさまよい続け、
たとえいつか誰かの手にかかり活動を停止したとしても、アンデッドの行く末は地獄のみ。
あなたとあの世で再び巡り合うことすらできないのよ。
あたしの大切な親友が、アンデッドとしてこの世をさ迷い歩き、死してなお地獄の業火に焼かれる中を、
あなたをアンデッドとして貶めた元凶であるあたし達が、死へと逃げ込んで安らぎとともに現世を去る……。
そんなことが許されていいはずがない。そんな状況では死んでも死にきれないよ」

それは、先ほどスノウが語った悔恨の念と、まったく同じような言葉だった。

『あたしの大切な親友が、愛する人が、死ぬこともできず永遠の苦痛にのた打ち回る中で、
2人を不幸にしたあたし自身は、死へと逃げ込んで安らぎとともに現世を去る……。
そんなことが許されていいはずがない。今のままでは死んでも死にきれない』

リリーの言葉に、スノウが驚いたような表情となり、
そして何かを悟ったかのようにゆっくりと目を閉じた。
795嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/24(水) 19:56:08.19 0
「そう。残念だけど、あなたが今やろうとしていることは、誰にも幸せをもたらさないの。
それは結局、哀しみの連鎖を繋げていくだけなんだ」

リリーの悲痛な宣告。スノウの閉じた瞳からまた涙が溢れだし、とめどなく頬を伝い落ちる。

「そんな……。リリーの、ファルスのことを想って、
あなた達を苦しみから解放したくてバンシーにまでなったというのに、
それなのに、そんなあたしの存在自体が結局あなた達を苦しめるだなんて……。
あたしにはあなた達を幸せにすることができないの?
あたしは一体どうすればよかったの? この先一体どうすればいいの……?」

震える身体とともに、うわ言のように絶望に満ちた問いを投げかけるスノウ。
その震えを、絶望を全て受け止めるように、リリーは強くスノウの身体を掻き抱いた。

「スノウ、あなたにももちろんできることはあるよ。
ううん、そうじゃない。あなたにお願いがあるんだ。
それはあなたにしかできない、あなたにしか頼めないこと」

「あたしにしか……できないこと」

「自分勝手な押し付けで、クランのみんなを殺めたのはあたしの罪。
罪を犯した者は必ずそれに対する罰を受けなければならない。
だからあたしはその重い十字架を背負いながら、望まぬ永遠を生きていく。
でもね、あたしは諦めない。いつか永遠を打ち破って死を得る方法を探し続ける。
何百年、何千年かかろうと絶対にそれを見つけ出してみせるから」
796嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/24(水) 19:56:44.61 0
まるで子供をあやすかのように、スノウの黒髪を優しく撫でつける。

「だからお願い。スノウは先にあの世に行って、クランのみんなと一緒に
いつかあたしが会いに行くまで待っていてほしいんだ。
親友のあなたがあの世で待っていてくれてると思えば、
あたしも希望を捨てることなく頑張れる。どんな苦難だって乗り越えられるから。
だから……。いつかスノウの元へたどり着くその日まで、あの世であたし達のことを見守っていて」

「あの世で見守る……」

「見守るだけが能じゃないさ」

リリーが軽く身体を引くと、入れ替わりにスノウの手を取ったのは遥、いやファルスだった。
スノウの手を引いて立ち上がらせたファルスが、その身体を引き寄せる。

「少し踊ろうか」

「ちょっと何するの。やめてよ、今はそんな気分じゃない」

「この世ではこれが、君と僕とで踊る最後のダンスだ。後生だから僕に付き合ってくれないか」

最後という言葉が胸に響いたのか、スノウは抵抗を止めて黙ってファルスに身を任せた。
797嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/24(水) 19:57:24.36 0
「ねぇスノウ。たとえこの世では最後のダンスでも、それが全てじゃない。
彼女達、異世界の住人であるこの2人がその証明だ」

「どういうこと……?」

「彼女達は、僕とリリー、2人の魂の一部を、次元を超越して継承する者だ。
これはとても素晴らしいことだと思わないか。
スノウ、君もあの世では僕らのことをただ見守るだけではなく、
自分の魂の一部を次元の彼方へと解放してみればいい。
いつの日か、こことは全く違うどこか別の世界で、
僕とスノウ、それぞれの魂の一部を受け継ぐ者達が巡り合い、そして再びダンスに興じる。
そんなことを夢想するだけで、たまらなく胸が高鳴るじゃないか」

優雅にスノウをエスコートしながら、自信に満ち溢れた口調で語るファルス。

「でも君がアンデッドとして地獄に落ちてしまえば、その魂も消滅し、
僕の夢想も永遠に叶わなくなってしまう」

そしてゆったりと足を止めたファルスは、スノウの身体を情熱的に抱きしめた。

「だからスノウ。君は先にあの世に行くんだ。
僕の夢想をいつか、現実のものとするためにね」

「ファルス……。あなたはこんな時でも自分のことばかりが優先なのね」

スノウの返答には、どこかしら呆れたような苦笑いの響きを伴っていた。
それはバンシーとなって初めて見せる、悲嘆以外の人間的な感情の発露。
798嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/24(水) 19:58:10.46 0
自分勝手にしか聞こえないファルスの言葉も、
その実は彼なりにスノウのことを気遣ってのものだと遥にはよくわかる。
そしてそのファルスなりの思いやりは、スノウにも確実に届いている。

ファルスに抱かれたスノウの背中から、リリーがさらに包み込むように抱きしめる。

「お願いスノウ。あたし達のこの想い、受け入れて」

2人にやさしく抱かれ、黙って目を閉じるスノウ。
再び目を見開いた時、その瞳から悲嘆の色は消え去っていた。

「温かい……。この凍えきったバンシーとしての身体に、
あなた達の温もりが、想いが、染みわたってくる。
あたしのことをこんなにも想ってくれるなんて……嬉しい」

悲嘆の消えた瞳から零れ落ちる大粒の涙。
それはキラキラと朝露のような清々しい輝きとともに拡散していき、
ゆっくりとスノウの身体を包み込んでいく。

「スノウ!?」

「これは……嬉し涙よ。
嘆きの涙を流せなくなったバンシーは、もうバンシーとして存在できない。
バンシーでなくなったあたしは、もうこれ以上この世にはいられないの。
だから……。この嬉し涙とともに、あたしはこれからあの世へと旅立つわ」

リリーとファルスに見守られながら、安らかな表情で感謝を伝えるスノウ。

「ありがとう、リリー。ありがとう、ファルス。
あなた達が永遠の呪縛から解放されるのを、あの世でいつまでも待ち続けているから。
ありがとう、ヤッシー。ありがとう、くどぅー。
いつかまた……あなた達に……会い……たい…………」
799嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/24(水) 19:59:12.50 0
その言葉とともに、涙の輝きがスノウの身体全体を覆いつくし、
一際大きな光を伴って、スノウはついに天へと召されていった。

「スノウ……」

涙ながらにスノウを見送った里保と遥。
安堵と、達成感と、物寂しさと、言葉にできない様々な感情が心の内を駆け抜ける。

そんな2人の前に、錫杖の音を響かせて闇の中から再び不死王が姿を現した。

「バンシーの浄化、見事であった!! 我、不死王の名においてしかと見届けたり!!」

大仰な口調で褒め称えると、一転して砕けた調子で声をかけるケメコ。

「それじゃああたしも最後の仕事をしましょうかね。
あなた達もちゃんと使命を果たしたし、これでこの世界ともお別れ。
さあ2人とも目を瞑って。これから元の世界に送り返すからさ。
みんなあなた達のことを心配して待ってるわよ」

バンシーの浄化を、自らの呪いを解くために訪れたこのリリウムの世界。
個性溢れる人々と巡り合い、そして多くの悲劇を目の当たりにしてきた。
それでも、スノウを哀しみから解放できたことで、ほんの少しだけ救われた気がする。
リリー。ファルス。2人ともこれまで長い間ありがとう。
うちらもあなた達のことを、自分の世界からずっと見守っているから。

里保と遥は万感の想いとともに目を閉じ、そっとリリウムの世界に別れを告げた。


800嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/24(水) 20:00:28.54 0
意識を回復した里保の目にまず飛び込んできたのは、さゆみの柔らかい笑顔だった。

既視感のある光景。自分が今ベッドに横たわっていることに気づく。
横を見ると遥も同じように、状況を認識できていない様子で目をしばたたかせている。

もしかして、今までずっと夢を見ていただけ?

ベッドの周りには見慣れた面々が、心配そうに2人の様子をうかがっている。

はるなん、えりぽん、ふくちゃん、香音ちゃん、亜佑美ちゃん、まーちゃん、……オダベチカ?

笑顔でたたずむ小柄な少女の姿が一瞬視界をかすめたように感じたけど、
その幻は瞬き一つで儚く消え去った。

視線を一回りさせて、さゆみの元へと戻す。

「りほりほも工藤もおかえりなさい。2人ともよく頑張ったね」

さゆみからのねぎらいの言葉。
そこでようやく、これまでの体験がやっぱり夢じゃなかったんだと認識できた。

本当に帰ってこれたんだ!! 使命を果たすことができたんだ!!

さゆみの一言をきっかけに、周囲から歓喜の声が上がる。
衣梨奈と聖と香音の3人が抱き合って喜び、春菜は思わず安堵の涙を流している。
801嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/24(水) 20:00:56.23 0
「どぅー! やすしさ〜ん!!」

優樹がベッドに飛び込み2人に抱きついてくる。
そして亜佑美も今回はそれを止めようとしなかった。優樹に続けとばかり
自らもベッドに飛び込み、それを見たみんなが次々とベッドへと突撃していく。

本来無理をしても定員3人程度が限界のベッドの上は、
8人の少女が入り乱れて「おしくらまんじゅう」状態となり、
みんな泣き笑いになりながら喜びを全身で表現する。

「みんなが手を貸してくれたおかげで、うちらは何度も助けられたんだ。みんなありがとう!」

半ばみんなの身体に埋もれかけながら、感謝の言葉を伝える里保。
そのすぐ側に、香音に圧し掛かられてもがく衣梨奈の姿があった。

「えりぽん……。えりぽんが吉澤さんに、保田さんに声をかけてくれなかったら、
きっとバンシーの手にかかり帰ってこれなかった。
うちらが今こうしていられるのは、えりぽんが助けてくれたおかげだよ。
本当に感謝してるから」

「えりは、里保達に何も手助けできないんじゃないかとずっと悩んどったけん、
そう言ってもらえると、えりも役に立てたんだと嬉しい」

香音の重圧に息も絶え絶えの衣梨奈が、どうにか右手を伸ばして里保の頭をぽふぽふすると、
里保も顔を赤らめながら黙ってそれを受け入れる。
802嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/24(水) 20:01:27.99 0
「う〜ん、愛されてますね〜」

そこに遥がここぞとばかりからかうと、みんなもこぞって2人を囃し立てた。

「ちょっと、どぅーもなんでまたそういうこと言うのさ!
でもそんなどぅーだって、うちはちゃんとわかってるんだからね」

「な、なんですかいきなり思わせぶりに」

「どぅーってさ、スノウのことが好きだったんでしょ。
傍から見てたら、どぅーがスノウにベタ惚れなのがバレバレだったよ」

里保の思わぬ反撃に遥の顔が一気に紅潮し、周りのからかいの対象も遥へと移る。

「なになに、もっと詳しく聞かせてよどぅー」

「まだまだ少年だとばかり思っていたくどぅーも、もうお年頃なんだね」

「ちょっと何それ信じらんない! どぅーなんかもう知らないんだから!!」

「優樹ちゃんが焼き餅焼いてるよ!」

自然に広がっていく、ほっこりとした笑顔の連鎖。

いつ終わるともしれないみんなのじゃれ合いを、
さゆみが眩しそうな表情で暖かく見守っていた。


803嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/24(水) 20:02:01.15 0
「じゃあリリウムの書物は、ここの本棚に収めておきますね」

春菜が勤める古本屋の奥にある秘密の書庫。
本棚は壁際を全面取り囲むように並ぶのみで、綺麗に整頓されていることもあり、
より広々とした空間を感じさせる。

「あの雑然とした古本屋の奥に、こんな場所があるなんて全然知らなかったよ」

「ここは選ばれた人にしか入ることのできない特別な書庫ですから。
2人をここに案内するよう道重さんの指示があったのも、
きっと鞘師さんとくどぅーへのご褒美だと思いますよ」

「えっ? 道重さんからは、リリウムを保管するから
はるなんと一緒に行っておいでとしか聞いてないけど?」

「この書庫には、道重さんのお宅ほどじゃないですけど
珍しい魔道書や魔法に関する研究書が数多くありますから。
この場所への案内を許可したということは、今回頑張った2人に
ここにある本を自由に閲覧していいよという意味ですしね」

どことなく自慢げな様子で里保と遥に説明する春菜。
遥も感心したように部屋全体を見回し、思わずため息をついた。

「ハルは実践派だから普段魔道書とかほとんど読まないけど、
せっかくだからもっともっと強くなれるように、少しはここで勉強してみようかな。
でもこれだけたくさん本があると、一体どこから手を付けていいのやら」

「フフフ、くどぅーの場合はまず自分がまともに読める魔道書を探すところから始めないとね。
大丈夫、読みたい分野とか教えてくれれば、あたしが目ぼしい本を見繕ってあげるから」
804嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/24(水) 20:02:28.83 0
興味深げに本棚の背表紙を眺めていた里保が、ふと気になって春菜に訊ねてみる。

「でも貴重な魔道書を、こんなわかりやすい場所に保管していて大丈夫なの?
それこそ誰か普通の人でも間違って入れそうだったけど」

「先ほどは、案内人の私が一緒だったからすんなりと入ってこれましたけど、
本来は選ばれた人以外、入り口の扉を見つけることもできないようになってるんです。
何しろ道重さんの魔法の力も借りて仕掛けを施していますから、
たとえどんな魔道士でも自力だけで入り込むのはまず不可能だと思いますよ。
ましてや普通の人がこの書庫を見つけることなんて……」

コンコンッ!

その時、春菜の説明を真っ向から否定するように入り口の扉がノックされ、
呆気ないほどにすんなりと、一人の少女が書庫に入室してきた。

「すみません……。美術関係の本を探してるんですけど、ここには置いてますか?」

オドオドと緊張した様子で声をかける少女の姿に、
春菜があり得ないという表情で大きな瞳をさらに丸くする。

里保と遥もまた、驚愕とともに顔を見合わせたが、春菜のそれとは意味合いが異なっていた。

透き通るような綺麗な瞳が印象的な、黒髪の美少女。そして甘く耳に残る声音。
その何もかもが、スノウと瓜二つだった。

遠く次元を超えて、スノウの魂の一部を受け継ぐ少女。
スノウはあの世で、ファルスとの約束を守ったんだ。
805嘆きの先にある光@転載は禁止:2014/09/24(水) 20:02:59.86 0
その認識が事実かどうかは誰にもわからない。
だが、里保も遥も瞬時にそう理解して、2人で嬉しそうに笑みを交わし合った。

「あ、あの……。もしかしてあたし、お邪魔でした?」

3人が見せる異様な雰囲気にすっかり萎縮してしまった少女が、
恐る恐るといった口調で訊ねる。

その時だった。

それは遥の意志によるものか、はたまた遥の魂の一部を形成するファルスの意志がそうさせたのか。
優雅な足取りで少女の元へと近づく遥。そこで片膝をつくと、恭しく手を差し伸べた。

「いきなりの申し出でごめんなさい。ハルとここで、一緒に踊ってくれませんか」

あまりにも大胆すぎる遥の誘いの言葉に、里保も春菜も固唾を呑んで成り行きを見守る。

少女もまた、驚いたように身を硬くしていたが、
やがて何かを理解したかのように、柔らかく相好を崩す。

それは、遥がずっと、見たいと望み続けていた笑顔だった。
咲きほころぶ花の美しさを思わせる、華やかで暖かい微笑み。

そして少女は、ゆったりと遥の手を取った。

「ええ、喜んで」


(おしまい)
806嘆きの先にある光・あとがき@転載は禁止:2014/09/24(水) 20:04:12.43 0
約2カ月近くに渡って続いてきたリリウムの物語も、ついに完結を迎えました。
書き終えた感想を一言で表現すると、まずはとにかく長かったです(苦笑)

内容的にはリリウムの物語に半分以上おんぶに抱っこ状態だったとはいえ、
これほど長い話を書いたのは今回が初めてでした。
初めて尽くしの挑戦のため、内容的に色々と粗や齟齬もあるかとは思いますが
とにもかくにも最後まで書ききることができてホッとしています。

そして何より、これだけの長編をわざわざ読んで頂いた方々には、
ただただ感謝の気持ちで一杯です。本当にありがとうございました。


なんだかんだで2カ月近くリリウムと向き合ってきたため、
ずっと繭期を引きずりっぱなしで精神的にも色々大変でしたが、
少しでも落ち着いたら、今回の話の裏話というか小ネタ的なものを
保全代わりに書きたいなんて今のところは考えています。
リリウムのDVDが届いたら、さらに繭期をこじらせてひどいことになりそうですがw
807名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/24(水) 20:19:14.31 0
リリウム編完結お疲れ様でした!まさか本編以外で季節はずれの花粉症で画面が読めなくなるとはw
まさしく『真説・リリウム』と言っても過言ではないと思いました
てかDVD届いたのにこれ読んだ後じゃまた泣きそうで観れないよww
808名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/24(水) 22:51:59.44 0
リリウム編おつでした!
繭期再発したうえにDVD届いちゃったからまた拗らせてしまう・・・
809名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/24(水) 23:05:07.53 0
DVD来たようだが不在だったので明日受け取る
810名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/24(水) 23:28:46.40 0
なんかいろんなものがクライマックスに向かってるみたいで速度についていけない
811名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/24(水) 23:41:28.27 0
おつかれさまでした
正直に言います
悔しいです!!
以上ww
812名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/24(水) 23:45:38.04 0
>>810
ホント今年は激動な1年だよね
813名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/25(木) 02:30:05.60 0
繭期こじらせて眠れない・・・
814名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/25(木) 06:47:25.99 0
川 ´‘ _‘||
スマイレージが1人
スマイレージが2人
スマイレージが3人
    ・
    ・
    ・
スマイレージが54人
スマイレージが55人

寝れない
815名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/25(木) 06:51:11.72 0
あやちょ…怖いよw
816名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/25(木) 07:07:56.61 0
リリウム編面白かったです
リリウムの話にどう魔導師達が関わっていくのかなと思っていましたが素晴らしかったです
ありがとうございました
817名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/25(木) 08:40:06.47 0
あやちょw

牛乳吹いたわw
818名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/25(木) 10:39:34.01 i
ちちんぷいぷい魔法にか〜かれ!
819名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/25(木) 11:39:09.63 0
あ、かかっちゃった
820名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/25(木) 17:02:39.68 0
川 ´‘ _‘||<スマイレージ増員します

川 ´‘ _‘|| 川 ´‘ _‘|| 川 ´‘ _‘||
821名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/25(木) 18:26:41.41 O
ヤダなに怖いよ
822名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/25(木) 21:47:49.32 0
 <::ヽ             。'“゜`・*。 。*゜”`'。
  |::::::\    ☆       *     ゜+゜     ♪
 ∠ニニニ`_  /゜''+。.,      ゜,,        ,.。+''゜
  |||9|‘_ゝ‘)つ    ゜“・:+.:.。♪,,*:...。.:.+・ ”゜
  ⊂   へ(/⌒)         ゜*。
  ノリ.〉 /^/@ニ)'            ゜・*。+・`
   〈 〈/ ,/
  (_/@二)
  `ー―'"
823名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/25(木) 23:01:47.47 0
ちょちょちょ
824名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/25(木) 23:50:28.22 0
様々な邂逅がありますが同じ出会いでも作家さんの数だけあるんだなあ
と感じました
825名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/26(金) 06:21:18.52 0
おはようさん
826名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/26(金) 12:15:17.93 O
お昼
827名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/26(金) 16:50:43.22 0
兄弟スレが落ちてる・・・
828名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/26(金) 19:24:24.56 O
次スレ立てれなかった
誰か頼む
829名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/26(金) 22:23:30.36 0
立てたよ
明日まで保たず落ちたりすると悲しすぎるので
保全と話題投下の協力お願いします


もしも鞘師りほりほと佐藤まーちゃんが女の子のふりをしてアイドルをする兄弟だったら 5夜目
http://hello.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1411737666/
830名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/26(金) 22:25:13.10 0
乙です
831まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/09/26(金) 23:40:09.69 0
こんばんは

リリウム編とかぶること2回
今夜こそ投下していきます
832まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/26(金) 23:44:38.59 0
「あれ鞘師さん?
 どうしてそんなにくたびれた様子しているんですか?
 確か、M13レンタルームに話を聴きにいっただけ…ですよね?」

海岸からの帰り道、衣梨奈と春菜はやたらムスッとした亜佑美とその後ろで疲れ果てた里保に出会った。

「まさか、里保……。暴れてきたとね?」

「ち、ちがうよ。これはそのさ…
 あの…なんというか…ヒヒ…うん、まぁ疲れただけ。」


珍しく言葉を濁す里保に首を傾げる衣梨奈と春菜であった。



「我が社も舐められたものだな。」

社長室に広がる緊張感。
周囲で高まっていく魔力。
どうやら社長室の外にも耳をそばだてて中の様子をうかがっている者もいるようだようだ。


あまりここで騒ぎを起こしすぎてもマズい……。局長からも無理はするなという指示がでている。
いつもの里保であればここで冷静さを取り戻し、一歩引いた対応をとっていた。
だが、今日はいつもと事情が異なる。
とにかく時間がない。さゆみから告げられたリミットまで無駄な時間はなかった。
その想いは亜佑美にもしっかりと伝わっていたようで………。

「な…」
「舐めてんのはどっちだ!さっさと情報寄越しなさい」
833まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/26(金) 23:46:47.73 0
突然横から、当に自分が言おうとしていた言葉が聞こえ、里保は驚き横を向く。
そこには今にも飛びかからんとするような勢いの亜佑美がいた。その目は猛々しい程に爛々と光っている。

「あ、亜佑美ちゃん?」

「これ以上大人しくなんていられない。まーちゃんとどぅーの運命がかかってるんだもん!」


そう叫ぶと亜佑美は魔力を解放する。
その瞬間、社長室の温度が一気に冷え込む。部屋にいる全員がその変化に気づいた。
外で様子をうかがっていた社員も声を聞きつけ中に入ってきた。

かなりの魔導士の数だ。

里保は想定外の事態に慌て、亜佑美を制止させようと前に出る。

(まさか、亜佑美ちゃんがヒートアップするとは……。)


だが、その焦りは思わぬ形として現れた。
普段から履き慣れない靴。人見知りを押し殺しての威圧的な振る舞い。
その結果……。
そう、カーペットにつまずいて転けたのだ。

しかも悪いことに転ぶまいと踏ん張った左足で思い切り亜佑美の足を踏む。


顔を上げた里保を睨みつける亜佑美。

「ちょっと鞘師さん、邪魔するんですか!?」

「い、いや偶々だって!」
834まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/26(金) 23:48:10.10 0
突然、険悪な雰囲気となった執行局員の2人を見て唖然とする社長。
次第にヒートアップする言い争いを見て口を挟もうとする。

「お、おい。そんなとこでケンカして…。」

「うるさい!」
「部外者は黙って!」

「…はい。」


「どうやら、口でいっても判らないようだね。」

「望むところですよ。」


魔法競技会以来の闘い。


やたら2人のテンションが低かったのはこのためであった。
任務先でケンカ…。

しかし、その結果2人の魔力に恐れをなし、そして一刻も早く引き取って欲しいと感じたのか
会社側は研究内容に関する情報の多くを提出してくれた。


任務的には上々の出来、だが……。

(うん、局長には報告できないな…。)

そう一人心で呟く里保は衣梨奈達と共に道重邸へと急ぐのであった。
時刻は15時過ぎ。日没まで3時間であった。
835まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/26(金) 23:50:43.11 0
さゆみの所へと戻ると何やら異様な魔力が家全体を覆い尽くしていた。
普段はこういった事に疎い衣梨奈ですらその変化に気づいた。

恐る恐る4人が家に足を踏み入れると、何のことは無く、さゆみがにこやかに4人を出迎える。
まさかさゆみが襲撃されていると考えていたわけではないがほっとする4人。


だが、リビングに置いてあるものを見た瞬間、全員に戦慄が走る。
それは途方もない程強力な魔力を放っている。


「み、道重さん?これは……。」

「あぁこれ!だからみんな固まっちゃってるのね。
 これは『時の羅針盤』といってね。時空を移動するときに使ういわば道案内役みたいなものよ。
 しばらく使ってなかったけど、さゆみの魔力、まだしっかり残ってそうね。
 今回はこの羅針盤が工藤とまーちゃんの所に導いてくれるハズ。」

一時はどうしたらいいのかわからなかった。だが、道は確実に拓かれ始めている。
里保はふとここでもし自分一人だけだったらと考える。
恐らく何もできないまま徒に時が流れて往くだけだっただろう。

里保は改めて、三大魔導士である道重さゆみの力を思い知る。
いつかは越えたい、越えなければ…。そんなことをいつのまにか里保は考えるようになっていた。


さゆみの話はまだ続く。
836まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/26(金) 23:52:46.31 0
「それでね、今回時空を渡ってもらうメンバーなんだけど……。
 なるたけ、時の流れに干渉したくないから。」

さゆみはそこで一度言葉を切った。


「りほりほとはるなんに行ってもらう。」


その一言は春菜にとてつもない衝撃を与える。

「わ、私ですか?そんな無理です!
 ………足手まといになりますよ。」

「いいえ。さゆみも直前まで悩んだけどもやっぱりはるなんが適役だと思う。
 2人でまーちゃんと工藤を連れて帰ってきて!」

「そうだよ、はるなん!
 せっかく道重さんが道を拓いてくれたんだからウチらで頑張ろう!」

しばらく春菜は下を向き躊躇うように考え込んでいたがやがて決意したように顔を上げると
ハッキリと頷いた。


「そうと決まれば、早速行きますか。
 生田、亜佑美ちゃん、サポートよろしくお願いね!」

そうして指で一つ円を宙に描く。描いた軌跡はしばしキラキラと光っていたがやがて一つの穴となった。
さゆみの後に続き続々と里保達も穴をくぐる。穴の先はなんとまーちゃん達が消えたと想われる崖に繋がっていた。

空はすっかり夕焼け空に包まれ東の空からは満月が顔を覗かせている。
837まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/26(金) 23:55:07.37 0
「いい、2人とも?さゆみが保証出来る出口はざっと4時間が限界。
 とにかく羅針盤に従うこと。後は『鍵』を信じることね。」

「「はい、行ってきます」」

返事を聞いたさゆみは満足そうに頷く。
そして両手を大きく広げるとスッと目を閉じた。さゆみの身体からゆらゆらと魔力が立ち上る。
そのエネルギーは徐々に大きくなり、周囲の木々のざわめきもはっきりと聞こえるようになった。

突如、さゆみの身体から魔力の放出が止まる。その瞬間、足元に複雑な魔法陣が出現した。
そして、一筋の光がさゆみの身体からその姿を現したばかりの満月へと延びていく。

延びた光は満月へと届き、その姿を一層輝かせる。

「あっ!」
衣梨奈が声を上げる。崖の中腹に月の輝きと同じ光の輪が出現していた。

『行きなさい。しっかりやってくること!』

頭の中でさゆみの声が響いた。里保と春菜は意を決して崖へと飛び込んだ。

その手に羅針盤を………忘れて。


「あぁ!鞘師さん!」

その事実に気づいた亜佑美が慌てて崖に近寄るが勢い余ってそのまま落ちて行った……。
一人残された衣梨奈は呆然として泣きそうな声で呟く。

「また、出番がないとね…。」
838まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/26(金) 23:56:49.27 0



(空が騒がしい……。)

小田は石でできた壁の小さな隙間から見える空を見て呟いた。
時刻は夕刻過ぎくらいであろうか。西の空が茜色に染まり始めている。
東の空からは少しずつ夜が近づいていた。

小田は視線を空から部屋の中へと戻す。そこには譜久が寝ていた。
今2人は捕らわれの身である。

舟を降りたのちしばらくは工藤や香の後を追うことができていたが、余りの視界の悪さに前の2人を見失ってしまった。


小田はそこで、一度立ち止まり、譜久の安全を確認する。
だが、その直後、複数の兵に襲撃され為すすべがなかった。


(一体、何者であろうか。なにが目的で、我々を……。)

「まさか、私としたことが標的を間違えるとはな…。」


突如入口から声がする。牢の隙間から覗いた顔に思わず、小田は驚きを隠せない。

「と、朋之丞…。」

「よう。小田、久しいな。」
839まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/26(金) 23:59:19.84 0
金澤朋之丞。
宮本家家臣にして領家随一の荒くれ者。
領主にすら物怖じしないその振る舞いの噂は隣国である譜久の国へも届いていた。

だが小田自身、朋之丞とは同郷の出であることや宮本家との兼ね合いで、何度か顔を合わせたことがあった。


「これは、お前の仕業か?一体何故……。」

「半分当たりで半分外れだ。我らが攫うつもりであったのは譜久姫とその付き人、香というものだ。
 何でもな、その2人『因子持ち』といって非常に貴重な存在なんだよ。」

小田は聞き慣れない言葉に首を傾げる。そして朋之丞の肩越しに何かを見つけた。

「『因子持ち』?」
何か引っ掛かる単語であった。遠い昔にどこかで見たような…。

「まあ小田のような者にはわかるまい。
 これは我ら特殊な存在の者にのみ重宝するのだからな。こんな近くに2人も居ようとは……。」

そのとき、部屋の入口が騒然となる。朋之丞は小さく舌打ちをすると声をかける。

「何事だ!」

一人の兵士が駆け寄る。
「申し上げます!敵襲です。」
「なに?どこのものだ?」

「わかりません!ただ、数は4人とのこと。これがかなりの手練れで中の1人は妖術の類を用いるようです。」

朋之丞は報告を受けるともう一度小さく舌打ちをする。
840まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/27(土) 00:02:17.22 0
「…わかった。すぐ参る。ということだ小田。
 絶対に姫を自害させるな、そんなことが起きれば我らの世界の損失となる。」

そういい残すと、朋之丞は報告の兵と共にその場を離れていった。
周囲には人の気配はない。そのことを確認すると、小田は小さく口笛を吹く。

コトッ

「佐久守さん、大丈夫ですか?」
牢の外の天井から遥が顔を覗かせた。
「本当にくどぅーは忍びのようだな。あぁ大事はない。譜久姫様も無事だ。」

そういうと小田は苦笑する。そして横に静かに着地した遥に尋ねる。

「外の騒ぎはくどぅー達が?」
「そうっすね、あのあと衣さん達と合流して五色米を追いかけていたらここについた感じッスよ。」
「そうか、あの五色米が…。」
「それより、早くここから出ましょう。さっき佐久守さんと話をしていたやつ、あいつハル達と同じ魔導士だ。
 向こうにはまーちゃんがいるから簡単に負けるとは思わないけど…。」

「魔導士…。因子持ち…。特殊な存在…。

 ハッ!」

「譜久さん、譜久さん起きてください。行きますよ!」

「あれっ、工藤いつの間に?」

小田の中で何かが繋がった。慌てて遥へと声をかける。

「くどぅー!お香が危ない!!」
841まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/27(土) 00:04:31.00 0



「どうしよう…。こいつめちゃ強いなう」

城門付近では優樹が肩で息をしながら目の前の相手を睨みつけていた。
その後ろにはまだ完全に回復しきっていない保を庇うように衣が、そして香は朋之丞の元にいた。


「諦めの悪い奴だ。勝てない相手に挑むのは勇気のあることではない。
 ただの犬死にだ。」

「うるさい。まさは弱くないもん。見てろよ。」
そう言うと優樹は忽ち姿を山犬へと変える。そして一声吠えると、鋭く牙を剥きながら朋之丞へと襲い掛かる。
だが、朋之丞はその様子を見ても驚くことなく逆に小さく頷いている。

「うんうん、やはり狗族であったか。若いのに大した魔力だ。
 だが、何というかな。弱い犬ほどなんとかと言うしな。」

そして、朋之丞は親指と中指で小さな輪を作ると静かに右手を前に突き出し、自分に対して向かってくる優樹へ指を弾いた。

(デコピン!?)
一点に集約された魔力はとてつもないエネルギーを持つ。
842まーどぅー戦国物語@転載は禁止:2014/09/27(土) 00:09:41.88 0
だが、頭ではわかっていても既に駆け出してしまっていた優樹に出来る術はなかった。

ドンッ
辺りには魔法による衝撃波が広がる。

「マサキチ…。マサキチー!」

朋之丞の一撃をもろに受けてしまった優樹はその変身を解かれグッタリとした様子で衣の遥か後方に倒れていた。

「さて…。私の正体を知ってしまったからには生きて帰すわけには行くまい。ここでまとめて死んでもらおうか。」

冷たい朋之丞の声に保の持つ刀を取り、抜き放つ衣。今朝、家を出る前にさゆみから託された一振りの刀。

「そうは、問屋が卸さないってか。食らえ!」

「朋之丞!ここが年貢の納め時だ。観念しろ!」

小田と遥が来てくれた。やすやすと2人の攻撃をかわす朋之丞。

届かない事は分かっている。それでも衣は刀を強く握りしめながら、心の中で助けを求め、叫ぶ。


突如刀から一筋の光が立ち上る。それと同時に道重領からも光が立ち上るのが見えた。
その2本の光が空に浮かぶ満月に届いた瞬間、世界はまばゆいばかりの光につつみこまれた。



続く
843まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/09/27(土) 00:12:06.29 0
あと2回かな、3回かなそんなもんです

長くなりすぎてつじつまが合ってないかも
844名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/27(土) 02:36:23.24 0
乙です
一気に色んな場所で色んな人物が色んな動きをしてるから
全体の状況がよく把握しきれない・・・もう一度読み返してみないと駄目かも
845名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/27(土) 04:39:55.95 0
鞘石なにしてるんだよw
ちょっと細かいこと言えば亜佑美ちゃんより石田かあゆみんかな
846名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/27(土) 06:12:30.39 0
デコピンw
847まーどぅー戦国物語作者@転載は禁止:2014/09/27(土) 08:24:44.09 0
確かにもうちょっとわかりやすいとよかったよね
反省…。
848名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/27(土) 10:52:41.63 0
どんどんどんどんドタバタコメディになっていきますねすごい勢いでw
849名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/27(土) 16:17:17.64 0
ヤシ
850名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/27(土) 18:47:16.62 0
デコピンw小田の『遠い昔に』ってのが気になる
851名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/27(土) 20:13:23.73 0
ここ2カ月で胸の内に溜まりこんだ繭期の成分を払拭するため、
自分の本来のスタイルである、思いついたネタを膨らませて勢いで一気に
結末まで押し切るショートショート形式のお話を1本書いてみました。

リリウム編の裏話はまた改めてまとめたいと思います。

嘆きの先にある光・作者
852えりの知らない物語@転載は禁止:2014/09/27(土) 20:13:57.45 0
――いつもどおりのある日の事 君は突然立ち上がり言った「今夜星を見に行こう」

えりぽんの誘いは、いつも突然でそして強引だ。

夕飯を食べ終え、自室で2人まったりしている時に、
えりぽんはいきなり腰かけていたベッドから勢いよく立ち上がり言った。

「今夜星を見に行こう!」

「今夜って、今から?」

「もちろん!」

「今からって、誰と行くのさ?」

「えりと里保の2人で」

うちが断るはずはないと、ハナから決めつけているような満面の笑み。
それがなんだか悔しくて、うちもせめてもの抵抗をしてみる。

「でも、こんな時間に出かけたら色々五月蠅く言われるんじゃない?」

「だから、2人でこっそり家を抜け出すっちゃよ。ドキドキして楽しかろ?」

結局、一度言い出したら聞かないえりぽんの強引な誘いを断れるはずもなく、
2人してこっそりと家を抜け出すこととなった。
誰にも見咎められることなくすんなりと外出できたのは拍子抜けだったけど、
おそらく当たり前のようにバレていて、ただ黙認されているだけなのかなとも思う。
853えりの知らない物語@転載は禁止:2014/09/27(土) 20:14:24.10 0
2人の目的地は、街の展望スペース。
明かりもほとんどない上り坂を、えりぽんは「バカみたいに」という形容が
ピッタリくるほどはしゃいで歩いていた。

「えりもたまにはいいこと言うと思わん?」

「いやそういうのは自分から言うセリフじゃないし。というか『たまには』って自覚あるんだ」

ツッコミながら楽しげに笑いあう2人。

その時、足元がおろそかになっていたせいか、うちが躓いて転びかける。
そこでえりぽんが、さっと抱きとめて支えてくれた。

「ほら暗いけん里保も気をつけんと」

そして、うちの手を引きながら坂道をずんずんと進んでいくえりぽん。

トクンッ。

その時感じた胸の高鳴りは、きっと転けそうになった焦りによるものに違いない。
そう自分に言い聞かせながら、うちは黙ってえりぽんの後を懸命について歩いた。

家を飛び出した時分にはまだ落陽の名残が残り、ほんのりと青みがかっていた空も、
展望スペースに着いた頃にはすっかりと闇に覆われていた。
ここから一面見渡せるはずの綺麗な山並みも、この時間帯だと影も形も認識できない。
854えりの知らない物語@転載は禁止:2014/09/27(土) 20:14:49.83 0
えりぽんとともに、芝生の上に寝転んで夜空を見上げる。
真っ暗な世界に彩られる一面の星々は、まるで降り注いでくるかのような
圧倒的なインパクトでうちら2人を包み込む。
今この瞬間、この世界にはうちとえりぽんの2人しか存在していないんじゃないか、
そんな錯覚すらおこしそうになる神秘的な光景。

えりぽん。
いつも2人で兄弟のように、いや姉妹のように過ごしてきた。
いつからだろう。うちはずっと、えりぽんの背中を追いかけ続けてきたような気がする。
それは、さっきえりぽんに手を引かれて歩いた時のように、
積極的なえりぽんに引っ張られてきたというだけではなく。
そう、うちの胸の内の想いとしても……。

「あれがデネブ、アルタイル、ベガ」

えりぽんが夜空を指さすその得意げな声で、うちの夢想はあっさりと破られた。
魔道士にとっては、星占術も重要な技能の一つ。
つい最近2人で学んだ星の名前を、嬉しそうに披露するえりぽんが微笑ましい。

えりぽんの指の先にある夏の大三角。ベガが織姫で、アルタイルが彦星。
ベガの輝きはうちもすぐに発見できたけど、アルタイルの姿がよく見当たらない。
これじゃ織姫様が、独りぼっちで取り残されちゃうよ。

そこでまた、うちの思考が夢想の中へと引きずり込まれる。
えりぽんとうちしか存在しないこの世界。
うちのすぐ前には、側には、隣には、えりぽんがいるのが当たり前だと思っていたけど、
もしその姿が忽然と消えてしまったら……。
独りぼっちで取り残されたうちは、一体どうなってしまうのだろう。
この胸の内に閉じ込め続けてきたこの想いを、どうすればいいんだろう。
855えりの知らない物語@転載は禁止:2014/09/27(土) 20:15:16.59 0
閉じ込め続けた想い?
そんなものは何にもない。うちは別にえりぽんに特別な想いなんか抱いていない。

強がるうちは臆病で、そんな時でも興味がないような振りをしていた。
だけど。
それに反発するように増していく、刺すような胸の痛み。

ああそうか。好きになるって、こういう事なんだ。

『どうしたい? 言ってごらん』

不意に響く心の声。

「うちは……えりぽんと一緒にいたい! ずっとえりぽんの隣にいたい!!」

今なら自分自身の想いも全て受け入れられる。今だったら素直に口に出せる。

だけど、真実は残酷だった。
あの日の思い出を最後に、えりぽんはうちの前から姿を消した。


言わなかった。……ううん違う。
言えなかった、この想い。
ずっと側にいたのに。いやずっと側にいてくれたからこそ、
えりぽんに何も伝えることができなかった。

二度と戻れないあの夏の日。煌めく星々。
目を閉じれば今でも鮮明に心に蘇ってくる。
えりぽんの姿とともに。
856えりの知らない物語@転載は禁止:2014/09/27(土) 20:15:42.77 0
笑った顔も、怒った顔も、えりぽんの全部が全部、大好きだったよ。
おかしいよね。そんなこと、ずっと以前からわかってたことだったのに。

えりぽんの知らない、うちだけの秘密。

あの時、もしもえりぽんにこの想いを伝えることができていれば、
えりぽんはうちの前から姿を消すことがなかったんだろうか。

わからない。
今のうちにわかることは、ただ一つだけ。

うちは今後、あの日の後悔を抱えながら、
えりぽんへの想いをずっと胸に秘めて生きていくんだ……。







「里保……里保……!」

誰かに肩を揺さぶられてゆっくりと目を開くと、
そこにはうちの顔を心配そうに覗き込むえりぽんの姿があった。

えりぽん……。
うちの前から姿を消したはずなのに、なんでこんなところに?
わからない。わからないけど、今こそ伝えなきゃ。
あの時の後悔を繰り返さないように、うちの想いを全部えりぽんに伝えなきゃ!!

「えりぽん。うちはずっと、えりぽんのことが……」
857えりの知らない物語@転載は禁止:2014/09/27(土) 20:16:09.55 0
「ちょっとはるにゃんこ歌下手すぎだよ!!」

優樹ちゃんの大きな声に言葉を遮られたうちは、そこでようやく夢から完全に覚醒した。
……そうだ、今日はみんなでカラオケに来てたんだっけ。

「ちょっとまーちゃん、たとえそれが事実だとしてももっと言い方があるでしょ」

「いやあゆみんのその言い方も何気にひどくない?」

「『君の知らない物語』とか、はるなんの歌うやつ知らんのばっかだし。
里保も思わず寝ちゃうくらいやけん相当なもんっちゃろ」

そうか、カラオケの最中に居眠りしちゃったんだうちは。
何か懐かしい夢を見ていたような。そうだ、3年前にえりぽんが突然
うちの前からいなくなった、あの時の夢……そんな気がする。

「良かったよはるなん。さゆみは存分に楽しませてもらったから」

「はい! ありがとうございます。道重さんからお褒めの言葉を頂けるなんて光栄です」

「はるなんがそんな素敵な魔法を使えるだなんて、さゆみも意外だったかな」

「この頃ラブコメ成分がちょっと足りないかなと思っていたので、私なりに頑張ってみました」

道重さんとはるなんが、ニヤニヤしながらうちとえりぽんの方を見てるのが気になるけど、
一体はるなんはどんな魔法を使ったんだろう。
858えりの知らない物語@転載は禁止:2014/09/27(土) 20:16:35.78 0
「えー何はるなん、魔法を使ってうまく歌おうとしてたの?」

「魔法の使えない聖達がいる前で、そんなのずるいよはるなん」

「ずるっ子だずるっ子だ!!」

「でも魔法を使ってもあの歌唱力じゃ、全然効果がないんじゃない?」

「どぅーも十分にひどいよその言葉」

3年前のあの時、いきなりえりぽんがいなくなって、
悲しくて、悔しくて、腹立たしくて、そして……。
もっと何かとても大事な感情を、心の内に封じ込めていたような。
今まで見ていた夢の中に、その答えが零れ落ちていた気もするけど……。

「里保、次はえりの番やけんね」

えりぽんが、カラオケの画面を指さしてうちに話しかける。

今のうちは、3年前に封印した感情を無理にこじ開ける必要なんてない。
だってうちの隣には、こうしてえりぽんがいてくれるのだから。

「さっきみたいに居眠りせんでちゃんと聴いとってね」

「うん大丈夫。うちはもう、えりぽんから目を離さないから。これからずっと……」

――君が指をさす 無邪気な声で


(おしまい)
859えりの知らない物語@転載は禁止:2014/09/27(土) 20:17:01.49 0
【参考】

昨日生田さんとのカラオケでも歌いましたよ
化物語の曲の『君の知らない物語』とか

(中略)

生田さんに、
『はるなんが歌うやつよく知らんのばっか』
って言われました(OvO)
http://ameblo.jp/morningmusume-10ki/entry-11888278682.html


「君の知らない物語」歌詞
http://www.kasi-time.com/item-43855.html
860名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/27(土) 20:44:07.00 0
外伝乙です!
綺麗なショートショートだなあ
861名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/27(土) 23:04:47.65 0
山形コン参戦
エリポン出てないから買う予定の無かったリリウムを
Dマガ買うついでに衝動買いしてしまった orz
862名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/27(土) 23:11:18.80 i
>>861
おつぽん
俺ももうすぐ遠征から帰宅
オープニングVからのあの曲の流れは思い出しても涙が止まらん。・゜・(ノД`)・゜・。
すごく優しくてせつなくていいなあ
ああこのまま時を止められたらなあって思った
863名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/27(土) 23:21:09.63 0
せっかく買ったんだしじっくり鑑賞する事にするよ
864名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/27(土) 23:35:07.85 0
巷じゃほとんど手に入らないんだよ>リリウムDVD
羨ましいわ
865名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/27(土) 23:43:29.19 0
甘いな
8月末に予約してなきゃ…俺のように
866名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/27(土) 23:53:53.21 0
ああ大甘さ
ここ3日間探し回って疲れ果てたw
DマガとEVOとコンサがいっぺんに押し寄せて溺れそう
867名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/28(日) 00:01:20.28 O
>>866
つHMV
868名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/28(日) 00:09:37.99 0
>>867
来週タワレコに再入荷あるとかで予約しちゃったw
869名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/28(日) 00:13:59.96 O
>>868
HMVなら即日発送なのにw
870名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/28(日) 00:30:36.07 0
http://i.imgur.com/7PNtcjH.jpg
まだ届かなくてわろた
871名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/28(日) 01:19:58.09 0
コンの物販で買うと「定価」なので注意
amazonで買うと26%引き 。+゚(*ノ∀`)
872名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/28(日) 05:51:45.84 0
エリリウム
873名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/28(日) 11:39:59.09 0
最初の街はえりぽんの自宅のある都会なんだな?
ハニポンネタでシュワポンに変換したのかー
つーかボエーが2人連続で歌うんかw
874名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/28(日) 12:13:45.50 0
M13地区の展望スペースと見せかけて
実はえりぽんの実家の街の・・・ってことか
875名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/28(日) 12:22:26.38 0
はるなんの歌で気を失っている間に見た白昼夢
3年前の思い出(想い)出でもあるようだ
876名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/28(日) 13:03:55.15 0
魔法で導いたその白昼夢を覗き見て
ニヤニヤしてるさゆとはるなん
877名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/28(日) 13:05:39.87 0
俺はラブコメスキル皆無だから躊躇するなって何もできてませんけどw
878名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/28(日) 13:10:57.70 0
ラブコメもいいね
879名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/28(日) 14:43:38.68 O
確か最初はラブコメだったはずだよなw
880名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/28(日) 16:16:43.58 0
ラブコメだった?そんなわけないやろ・・・

鞘師里保、道重さゆみ主演
ハートフルラブコメディ

ホンマや!!
881名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/28(日) 16:39:54.17 0
えりぽん・・・
882名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/28(日) 17:04:47.99 0
330 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2013/09/10(火) 21:02:35.31 O


さる喰らったので中途半端だけどここまで

今更だけど、りほりほとさゆ主演って書いたけど
えりぽんも主役なんだ、実は
883名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/28(日) 21:07:29.25 0
え?えりぽん主演だと思ってたけど
884名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/28(日) 21:22:51.70 0
そして石田は主席
885名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/28(日) 22:48:22.21 O
本編の続きが待ち遠しいなあ
886名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/28(日) 22:53:15.53 0
うろいてる・・・○○
彼女かな?
887名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/29(月) 01:12:31.32 0
n
888名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/29(月) 06:59:42.53 0
うろつく黒猫
889名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/29(月) 06:59:58.24 0
最近影の薄い主演、主役の皆さんw
890名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/29(月) 12:38:58.56 i
       * ∠\`・* 。
        | /★`、 `*。
       ,。∩______フ *  
      + |||9|‘_ゝ‘) *。+゜保全の魔法っちゃよ
      `*。 ヽ、  つ *゜*
       `・+。*・' ゜⊃ +゜
       ☆   ∪? 。*゜
        `・+。*・ ゜
891名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/29(月) 16:25:12.65 O
|||9|;‘_ゝ‘)<ヤバ
892嘆きの先にある光・蛇足@転載は禁止:2014/09/29(月) 19:46:06.28 0
完結したリリウム編ついてたくさんの感想を頂き本当にありがとうございます。
書き手にとってはみなさんからの感想こそが一番の執筆のモチベーションであり、
今回もこれまでの苦労が報われた心地です。

ここでは、胸の内に溜まりこんだ繭期の成分を完全に払拭するため、
物語の裏話的なモノを書きたいと思います。
自己満足の蛇足な内容ですので、作者の作品語りが嫌いな人は華麗にスルーをお願いします。


・タイトルについて
すっかりリリウム編で定着していますし自分でも使っていますが、最初はタイトルに悩みました。
読んでいる途中で「これはリリウムとのコラボなのか!?」と驚かせたかったのもあって、
あまりリリウムを匂わせるタイトルは使えず、
結局バンシーの嘆きを浄化するというテーマから現タイトルに落ち着きました。
でもやっぱりリリウム編が一番明快でいいと思います。

・リリウム編のきっかけについて
魔法使いえりぽんの世界とリリウムの世界を繋ぎ合わせて何か書いてみたい、
という思いは以前よりありました。
以前1レスネタで書いた続かない予告編(14スレ 476)によって、
リリウムの書物の中に入り込むという構想だけは閃いていたものの、その後が繋がらず。

転機は、たまたま目にしたあるブログの文章によってでした。
それはリリウムパンフレットに記載のスノウの花言葉「あなたの死を望みます」から、
スノウが一体誰の死を望んでいるかという考察で、
その時ふと、スノウが死を望んでいる相手はリリーとファルスで、
しかもそれは2人の不死から解放するためだという妄想が頭に浮かんだのです。
(厳密にはその解釈だと時系列的に噛み合わないのですが)
そこに終盤の激烈な叫び、慟哭から閃いたバンシーの存在が結びつき、
(これも厳密に言えばスノウは叫んでいませんが)
そこから自分の頭の中で一気に物語が動き出しました。
893嘆きの先にある光・蛇足@転載は禁止:2014/09/29(月) 19:46:50.99 0
・リリウム世界の表現方法について
本当はメンバー全員がリリウム世界で自由に動き回り物語を進めていければ最高なのでしょうが、
そこまで手を広げてまとめられるような力量はまったくないのですぐに諦めました。

一番書きたいテーマがバンシーと化したスノウの悲哀とその浄化だったため、
結局スノウに死を望まれた2人にリリウムの物語を基本そのままの形で体感してもらい、
その合間合間に2人の感想や必要な情報、ラストへの伏線などを織り込む形式にしました。
もっとリリウムの魅力を引き出す書き方もあったでしょうが、今の自分にはこれが限界でした。
ただ、ネタバレ抜きではスノウの悲哀は語れないため、完全ラストまでのネタバレの内容になったのは、
やむを得ないこととはいえもう少しどうにかならなかったのかと反省材料です。

・執筆タイミングについて
途中DVD発売後に書けばいいのにといった意見も頂きましたが、
自分の中では、リリウムの舞台を観劇後に胸の内に溜まりこんでいた妄想が熟成されてきた
このタイミングだからこそ書けた内容だと思っています。
これがDVD発売後だと、視覚から入ってくるリリウムの圧倒的なパワーと情報量に
妄想が負けてしまってうまく物語を書き進められない危険性がありました。
それに読み手としてもDVDで視たリリウムの進行とこの作品の間にある諸々の差異が、
あえて意識的にそうしている部分も含めて、粗としてわかりやすく目についてしまい、
集中して読めないのではないかという懸念もありました。

……というのがまあ、改めて考えた後付けの理由です(苦笑)
実際は思いついた勢いでDVD発売まで待つこともできず書き始めただけなのですが、
ただやはりDVD発売後だったら少なくとも同じ内容では書けなかったと思います。

ちなみにDVDでリリウムを再確認して、一番やってもうたと頭を抱えたのは、
スノウがマリーゴールドに刺されて倒れた後のシーンで、
実際は息を引き取るまでずっと目を閉じていたことです。
物語内では死の間際のスノウの瞳からバンシーだと気付くという演出が、
DVD発売後に書こうとすると全てボツになるところでした(苦笑)
894嘆きの先にある光・蛇足@転載は禁止:2014/09/29(月) 19:47:41.20 0
・スノウの謎について
リリウムに残る謎はいくつもあります。
例えば「リリーがファルスにイニシアチブを取れた理由」など。
(正直よくわからなかったので今回は「怒りで能力が高まった」として逃げましたが)
その中でスノウの悲哀を書いた今作では、
「死ぬのが怖かったと言っていたスノウが、そのすぐ後にあえて自ら死を選んだ理由」
について自分なりの解釈を提示してみました。
みなさんがこの解釈についてどう感じたか、違和感なく読んでもらえたか特に気になるところです。

スノウのラストの真相告白シーンは、とにかく話が重くなって大変でした。
もう少し書きようがあるのではとも悩んだのですが、感想のコメントからは
その重さがスノウの悲哀の大きさとして伝わったようでホッとしています。
あと重さを越えて最後ハッピーエンドっぽく終わらせることができたことにも安堵しています。

・ケメコについて
ケメコはアンデッド繋がりで出せそうだと閃いて、つい勢いで登場させてしまいました。
生田の電話の下りでの反応から、出すのがバレバレかと覚悟していたのですが、
多くの皆さんに驚きかつ楽しんでもらえて本当によかったです。
ケメコの饒舌は、久々の活躍でテンションMAXな本人の様子を描写したものですが、
それ以上にケメコを書くのが楽しくて勢いが止まらなかったためでもあります。

また忘れた頃にどこかの話でひょっこりと登場されることもあるかもしれませんが、
その時はまた暖かく受け入れてもらえれば嬉しいです。


ケメコじゃありませんが、書き出したら止まらず長々と書き連ねてしまいました。
でもこれでようやく、自分の中でこのリリウムの物語に区切りをつけることができそうです。
改めて、これだけの長編をわざわざ読んで頂き、本当にありがとうございました。

リリウムを書いている最中に思いついたネタも>>852-859で出し切ってしまい、
今は頭の中がすっからかんの状態ですが、またなにかネタを閃いたら、
短編を中心にこのスレに投下させてもらえたらと思っています。
895名無し募集中。。。@転載は禁止@転載は禁止:2014/09/29(月) 20:15:37.29 0
戦国終了後の投下を希望します。
896名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/29(月) 20:29:22.82 0
リリウム編お疲れ様でした
いい具合にDVD発売まで繭期を引きずりつつ楽しく読ませてもらいました

本編なんですが
話自体も構想は勿論あるんだけど中々まとまらず
12期加入とかさゆ卒とかが続いて俺の精神状態もぐわんぐわん揺れることが予想される現状で
無理に書き進めるのも内容が蛇行するだけな気がしてなかなか形にならんのですすんません
完全に言い訳ですけど!

こんな中途半端な状態で長く放置したくないし書けるときにはどんどん書いていきたいんだけど
繭期のせいでマーガレットの話を書き始めちゃって((
書き上げたら本編に全力投球しようかなとかごめんなさい蹴ってください

外伝作者さん方に本当に感謝!
897名無し募集中。。。@転載は禁止@転載は禁止:2014/09/29(月) 20:48:41.17 0
本編もだけどマーガレット編が楽しみすぎてヤッホータイ!
898名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/29(月) 21:51:08.67 0
リリウム編作者さんあとがき興味深く読ませて貰いました自分的には『真説・リリウム』この話に重ね合わせてDVD観てました

本編作者さんマーガレット編楽しみにしてます!

もちろん戦国編もベリ編も楽しみにしてるんで早く続きを!w
899名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/29(月) 22:01:15.31 0
この頃しばらく更新が止まっていて心配なんだけど
『笑顔』過去編の続きも楽しみに待ってるよ!
900名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/29(月) 22:06:40.49 0
外伝多いのはいいことだと思うんだけど、
最近本編よりメイン化してる気がしてちょっとやりすぎ感を感じてしまうのは僕だけでしょうか
901名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/29(月) 22:09:10.23 0
902名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/29(月) 22:14:15.33 0
本編作者さんの投稿がない日は延々と保全レスが続くだけのスレに比べれば
それ以外の日でも作品が読めてかなり贅沢な状況だと感謝してるけどなぁ
903名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/29(月) 22:15:21.01 0
>>900
俺が書けて無いのが悪いんじゃ
ごめんのう
904900@転載は禁止:2014/09/29(月) 22:20:03.51 0
いや、本編さんが謝ることないっす
てかあれだね、変に出しゃばってごめん
あんまズバッと言い過ぎると治安悪くなっちゃうからこれ以上言わないっす
とりあえずマーガレット編まってます!
905名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/29(月) 22:29:08.87 0
贅沢な悩みだよね〜某スレなんて・・・ここは色んな作品読めて幸せだよ
906名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/29(月) 22:32:22.46 0
>>904 素直にそう思える事は大切だ
それと他の作者さん達も決して
本編の邪魔をするつもりで書いてる訳じゃ無いことは分かってな
907900@転載は禁止:2014/09/29(月) 22:35:58.80 0
>>906
俺だって邪魔だなんて思わないよ
とりあえず俺が悪かったからこの話終わりで頼む
908名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/29(月) 23:16:37.46 0
娘。メンがみんなで飯窪祖母家でパーティーしたとかちょっとこの本編思い出しちゃった
909名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/29(月) 23:29:22.10 0
あっそうかベリ編も戦国も自分かw
今、新しい作品の構想もわいてて凄い書きたくてうずうずしてる←オイw
910名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/30(火) 00:04:38.99 0
911名無し募集中。。。@転載は禁止:2014/09/30(火) 01:03:05.67 0
各作者さんたちのまとめみたいなのまた必要かも
どれとどれがどの方の作品か分かってない自分がおります
912名無し募集中。。。@転載は禁止
自分にその技術がないからお願いしかできないんだけど
まとめサイトで外伝の更新が2カ月以上されてないので
誰かまとめサイトに外伝を更新してほしいです・・・