リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第93話
【リゾスレ初心者向けQ&A】
Q.リゾスレって?
A.モーニング娘。36thシングル「リゾナント ブルー」のPV(Another ver.)から想像に想像を膨らませた作品を投稿し共有するスレです
作者によって異なりますが、大まかに共通している設定は→超能力を持つ「リゾナンター」を名乗る少女たちが仲間同士心を通わせつつ「ダークネス」を名乗る敵の組織と戦う
Q.最初に読むとしたらどの作品?
A.まずはテンプレ
>>1の過去ログまとめで第1話(第1スレ)に目を通し、まとめサイトにある初期の一大長編『蒼の共鳴』や最近の一大長編『リゾナンターΧ』を読んでみては?
Q.作品や用語について質問するには?
A.遠慮なく書き込めばスレに何人もいるであろう「生き字引」が24時間以内に答えてくれるでしょう(多分)
【リゾブルのオリメンより】
川*’ー’) < テンプレの設定やまとめサイトを参考にして自由に想像するやよ
ノ|c| ・e・) < 登場人物の能力やストーリーの背景・設定は作者さんの自由なのだ
ノノ*^ー^) < シリアル路線でもコメディ路線でもお好きなものどうぞ
从*・ 。.・) < AAを使ったものや1レス完結ものでもOKなの
从*´ ヮ`) < 他の作者さんの設定を流用するのもありっちゃ
ノリo´ゥ`リ < 気に入った話の続きや繋ぎの話を書いてみるのもありカナ☆
川=´┴`) < プロットを書いて他の作者さんにストーリーを書いてっておねだりしてもええで
川*^A^) < アーでも書いてくれるかは作者さん次第ヨ
川´・_o・) < ソッカー
【作品投稿の注意】
1レス32行まで→そういう設定(エラー:改行が多すぎます!)
10レスまで→連続投稿規制(バイバイさるさん)
勝負の年だぞ。ホゼナンター'14
【リゾナンターの能力設定】
高橋愛…………精神感応(リーディング)/瞬間移動(テレポーテーション)/光使い(フォトン・マニピュレート)
新垣里沙………精神干渉(マインドコントロール)
亀井絵里………傷の共有(インジュリー・シンクロナイズ)/風使い(ウィンド・マニピュレート)
道重さゆみ……治癒能力(ヒーリング) さえみ……物質崩壊(イクサシブ・ヒーリング)
田中れいな……共鳴増幅能力(リゾナント・アンプリファイア)
久住小春………念写能力(ソートグラフィー)/幻術(ハルシネーション)/発電(エレクトロキネシス)
光井愛佳………予知能力(プリコグニション)/心の浄化(ハート・プリフィケイション)/水守(みまもり)
リンリン………念動力(サイコキネシス)/発火能力(パイロキネシス)
ジュンジュン…念動力(サイコキネシス)/獣化(メタモルフォシス(トゥ・ビーストorパンダ)
※9期以降の新メンバーの能力に関しては、
【用語】@wiki (
http://www39.atwiki.jp/resonant/)
を参照ください。
以上、
>>1-4テンプレ
5 :
名無し募集中。。。:2014/02/26(水) 19:01:33.87 0
ほー
6 :
名無し募集中。。。:2014/02/26(水) 19:14:22.23 0
7 :
名無し募集中。。。:2014/02/26(水) 19:35:16.29 0
新スレ乙!そしてまさかの前スレ名言『 守れ。ホゼナンター'14 』w
採用してくれてありがとうww
8 :
名無し募集中。。。:2014/02/26(水) 20:00:34.20 O
おつです!
9 :
名無し募集中。。。:2014/02/26(水) 20:57:04.97 0
いーぬは喜び庭かけまわり♪
∧,,,∧
. 〃ノノハヽ. オオカミダッツウノ…
ハo´ 。`ル <雪だ〜!うぉりゃ〜!
ねーこはコタツでブチ切れる〜♪
バン バン
ノノハヾヽ
バン ∩*` ロ´)
/_ミつ / ̄ ̄ ̄/
/\ \/___/ \
ノ*゜。\_______\
~\*。/* 。* 。** 。゜。ヽ
ヾノ* ゜。*゜・ 。.・゜* 。ヽ,
~⌒~~~⌒~~⌒~~~⌒⌒~
10 :
名無し募集中。。。:2014/02/26(水) 21:11:25.98 0
>>7 スレが4話連続未完走なのでホゼナンター頑張ろうよってことで
11 :
名無し募集中。。。:2014/02/26(水) 21:15:46.15 0
おお立ってたか
12 :
名無し募集中。。。:2014/02/26(水) 21:22:06.99 0
さりげにさゆが隠れてるな
13 :
名無し募集中。。。:2014/02/26(水) 22:19:05.02 0
闇の圧縮が早い
14 :
名無し募集中。。。:2014/02/26(水) 22:26:21.12 0
なまものか
15 :
名無し募集中。。。:2014/02/26(水) 22:27:39.49 O
新スレ乙
現スレは前スレのラストみたいにバラエティー豊かな内容にしましょうw
16 :
名無し募集中。。。:2014/02/26(水) 23:06:32.43 0
前半に投稿してくれた人全否定
17 :
名無し募集中。。。:2014/02/26(水) 23:08:28.41 0
前スレこそは完走出来ると思ったんだけどなぁ…ダークネスの工作員が余計なことするからorz
18 :
名無し募集中。。。:2014/02/26(水) 23:56:42.92 O
19 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 00:03:46.00 0
いつの時代もコンスタンスに作品上げてくれる作者さんがいるからリゾスレも長く続いてるんだよなぁ…とシミジミ
20 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 00:14:03.55 0
シミジミをシジミと空目したw
21 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 00:15:12.26 0
誰がシジミ目ヤシ!
22 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 00:16:23.68 O
りっりほちゃんの目は大きいよ!(ブログコメント風)
23 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 00:38:38.06 0
シパパと空目しなくて良かったw
24 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 01:17:10.22 0
おやすみなんと
25 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 02:01:44.43 0
おやすみずき
26 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 04:57:03.95 0
おぱ
27 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 05:13:37.01 0
い
28 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 07:14:05.24 0
ばいんばいん
29 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 07:19:57.18 0
30 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 07:35:36.31 0
31 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 08:43:44.02 0
ホゼナンター
の代わりに
くさい犬
32 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 09:49:15.10 0
ホゼナンター
出勤前に
保全なう
33 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 10:18:42.75 0
34 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 11:49:21.87 O
ホ
35 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 12:49:45.12 0
あげときますかな
36 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 14:56:13.71 O
新スレうえうえ
37 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 15:36:20.07 0
>>30 そうなのか…
そしてジュンリンの中華料理屋はどこかは結局分からないんだっけ
38 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 17:02:43.84 0
いわゆる聖地が失われるのは悲しいものだな
39 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 17:11:10.81 0
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/794.html の番外編 続きです
●
真夜中。
港の脇にある倉庫街を、梨華は一人で歩いていた。
黒のボンテージは闇に溶け込み、上層部から与えられた仕事をこなすのに丁度良い。
建物の隙間を縫うように吹く、生ぬるい潮風。だが、その流れが急に変わる。
「梨華ちゃん」
梨華が振り向くと、そこには見慣れた顔があった。
「どうしたの柴ちゃん。悪いけど、今は仕事中だから」
「梨華ちゃんに、聞きたいことがある」
しかしその顔に、いつもの愛嬌はない。
冷たく醒めた、サイボーグの表情。
「なに、藪から棒に」
「梨華ちゃんの持ってる能力って、何?」
今度は梨華の表情が変わる番だ。
咄嗟に出した笑みも、どこかぎこちない。
「え?何でそんなこと聞くの?」
「答えて」
「柴ちゃんは知らないかもしれないけど、幹部同士でさえお互いの能力は秘密にするようにって。ほら、この前の市井さんの一件もあったし」
「いいから。答えてよ」
無表情ながらも、勢いを感じさせる瞳。
その勢いに押されたのか、ついに梨華は口を割った。
40 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 17:12:32.34 0
「柴ちゃんは親友だから…特別だよ。あたしの力は、肉体強化。何度か手合せしたことがあるからわかるでしょ?ほら、今日だって」
「そっか。そうなんだ」
納得したように、瞳を閉じるあゆみ。
その瞬間。
梨華に向かって、フルパワーの「紅那恒緋」。
放出された大量の赤い燃焼物質は梨華の体に纏わりつき、一気に炎上した。
激しく燃焼する、黒のボンテージスーツ。
いかに強化された服とは言え、この業火の中では原型を留めることができない。
炙った飴細工のように糸を引き、垂れ下がり、融けてゆく。
「ひどいじゃない。いきなりこんなことするなんて」
「ごめんね。でも、強化服ですら焼き尽くす炎の中、あなたはどうやって生き延びたの?」
梨華は。
まるで闇に生きる獣のような。
首から下を剛毛に覆われた姿は、獣人族のものと酷似していた。
「あんた、最初からあたしに当たりをつけてたんだ。親友だと思ってたのに、ひどい」
悲痛な表情を作り、涙さえ浮かべ、訴えかけるような目をする梨華。
その表情に、自分自身が彼女と重ね合わせてきた年月を思い出す。
41 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 17:14:38.25 0
「できれば…信じたかった。けど。梨華ちゃんしか。梨華ちゃんしかいないのよ。メロンの三人を、事もなく葬り去ることのできる人物は」
メロンのメンバーたちがその体に刻みつけられていたのは、まさしく獣の爪。
犯人が獣人族の力を持つものであることは疑いようがなかった。
ただでさえ絶滅が危惧される獣人族の力を持つものなど、組織ではたかが知れている。ゆえに、ダニ=ルルが浮上したわけだが、彼女はメロン
の手練れたちを倒すにはあまりにも力が足りなかった。
「何の根拠があって…仮にあたしがメロンの三人を殺してなかったら、どうするつもりだったのよ!」
「ダニ=ルルが言ってたわ。実行犯は『黒の粛清』を名乗る幹部だって」
「嘘、それだけの理由で!?あんた、脱走した裏切り者の言うことを鵜呑みに…」
「それだけじゃない!!」
あゆみの叫び声が、はっきりと梨華を拒絶した。
「もし。梨華ちゃんが獣人族の力を持っているのだとしたら。色んなことが説明つくの。あなたの俊敏な動き、そして剛毅な鞭の振るい方。ど
こか、ちぐはぐな気がしてた。でも、あなたが獣人族の力を使うとしたら…」
「ようやくそこまでたどり着いたのね」
そこで、梨華は、いや、「黒の粛清」は泣き真似をやめてにやりと嗤う。
今までの芝居が、退屈だったとばかりに。
「わざとよ。わざと、ヒントを残してあげたの。あんたがあたしに疑いを持つようにね」
「…どういう、こと?」
「確かに。あんたのお仲間を葬ったのはこのあたし。しょうがないじゃない。そういう命令が下ったんだもん。仕事は意外と簡単だったわよ?
でも、あんたの場合は、ちょっと面倒なプロセスを組まざるを得なかったんだよね」
42 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 17:16:03.22 0
目の前にいる梨華が、最早梨華ではないように感じられた。
今の彼女はもう、ダークネスの冷徹な幹部。「黒の粛清」なのだ。
「悔しいでしょ?親友に裏切られて。ここに来るのも色々葛藤したんでしょ?だったらぶつけてみなさいよ、その感情をぜーんぶ、あたしにね
!!」
すっかり闇に豹変した「黒の粛清」があゆみを嘲笑う。
そこに見出したのは、倒れていった友たちの、最後の表情。
「許さない。あなたは絶対に…許さない!!」
全身に「紅那恒緋」を纏い、赤いフリージアが走る。
真っ赤な軌跡を描きながら、一直線に「黒の粛清」のもとへ。
「言っとくけど。あんたの炎なんて効かないわよ。あたしの獣毛は、そんなやわな炎じゃびくともしないんだから」
「うおおおおっ!!!!」
あゆみの鋼鉄の拳が、粛清人のボディを穿つ。
一撃では終わらない。二発、三発。さらに連撃が続く。
「ねえ人の話聞いてる?そんななまくらパンチ何発放っても…」
後ろに大きく跳び、間合いを取ったあゆみが、両手を合わせ”狼の牙”を作る。
そこからの、急襲。赤い燃焼物質は魔狼の形を描いて「黒の粛清」を焼き刻んだ。
43 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 17:17:31.96 0
乱羅魔天狼(みだらまてんろう)。
機械化された五指を狼の牙に見立て、握力と噴出する炎によって相手を切り刻むあゆみの必殺技。これを受けて立ち上がったものなど、今まで
いない。はずだったが。
「さすが陸自の特殊部隊仕込の格闘術、あたしの自慢のボディに傷がついたわ。でもね」
「ぐっ!!!!」
剛毛を毟り取り、皮下にまでダメージを与えたはずの狼の牙だったが。
代償として、あゆみの両の指がずたずたに引き裂かれていた。
「もうさっきの技は使えないわよね?さあ、どうする?『あれ』使っちゃいなよ」
粛清人の言葉を聞き、表情を変えるあゆみ。
まさか、そのことを知ってるなんて。驚愕を禁じえない。
それは、あゆみにとって最後の切り札だからだ。
「誰から…それを?」
「この際だから言っちゃうけど、あたしの最終目的ってそれのことなんだよね。元々メロン処刑の目的自体が『陸自の人間兵器からの、技術回
収』なわけだけど」
「黒の粛清」の慈悲のない目が、細くなる。
無念にも倒れていった友たちの。瞳の、めぐみの、雅恵の顔が浮かんでは消える。全て、全ては、目の前の相手が。
「ねえ、梨華ちゃん」
「何?命乞いなら無駄よ?」
あゆみは。
一縷の望みを託し、かつて友だと思っていた女に呼びかける。
44 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 17:18:40.13 0
「あたしに近づいたのも、その『技術回収』のため?」
「え…」
沈黙。
瞳を閉じた「黒の粛清」は額に手をやり、髪をかき上げ。
そして、嗤っていた。
「そんなこと、どうでもいいじゃない。あんたはどの道、他のメロンたちの後を追うんだから」
もう、迷いはなかった。
あゆみは、最後の切り札を起動させる。
駆け巡る機械の電流、強烈な過負荷。引き換えに手に入れるのは、戦車部隊すら圧倒する、驚異の戦闘力。
粛清人があゆみに意識を向ける間もなく。
吹き飛ばされていた。胸の中央が、べっこりと陥没する。
剛毛の鎧を突き抜ける掌底、陥没した部分からは勢いよく火の手が上がっていた。
「な、な、な?」
「せめて、後悔する暇もなくあの世に送ってあげる」
全身から赤い燃焼物質と蒸気を噴出させ、あゆみはとどめの一撃を見舞うべく構えをとる。
これが彼女の最後の切り札、A-MAX。
全身に過大な負荷を与えることで、通常の10倍の力を行使することができるシステム。その代わり、10秒が限界活動時間。だが、あゆみの10倍
の力を受けて立っている生物など理論上は存在しないも同然だ。
45 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 17:19:35.60 0
「9・・・8、7、6!!」
自らカウントダウンを呟きながら、さらに「黒の粛清」に攻撃を仕掛ける。
赤熱した蹴りが、吹き付ける豪雨のようにヒットし、肉を抉り骨を破壊してゆく。
「そん…な…こんなの…聞いてな」
「5、4、3!!!」
喋る隙さえ与えない。
A-MAXの後に転がるのは破壊しつくされた肉の塊りだ。
防戦一方で辛うじてガードするその隙を、あゆみの10倍化した拳が、蹴りが、炎が襲う。
「2」
粛清人の喉元に、あゆみの掌が押し付けられた。
首の骨を押し潰し、一気に命を奪う。
「1…さよなら。『梨華ちゃん』」
ぼきり。
太い何かが、へし折れる音。
だがそれは「黒の粛清」の首の骨ではなかった。
46 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 17:20:24.00 0
バランスを崩し、倒れるあゆみ。
0。A-MAXは完全に終了する。あゆみの鋼鉄の足の、膝から下が完全に折れていた。
「これは…」
「残念でしたポンコツさん。今度サイボーグに生まれ変わる時は、きちんと痛覚機能をつけてもらうことね」
膝の関節に自然と目がいく。
石。石が、詰められていた。これが膝を破壊し脚部の断裂に繋がった原因。
しかしそんなもの、いつ。
あの、手合わせの時か。
修練場での、「黒の粛清」との手合わせ。
闇雲に振るわれていた鞭から、飛ばされた床の瓦礫。
その本命が、膝の間接にこれを挟み込むこと。
あゆみの側に、「黒の粛清」がしゃがみ込む。
その目は、A-MAXを発動させる機関を探していた。
「たぶん、ここだと思うのよね。親友のよしみで、後悔する暇もなくあの世に送ってあげる。さよなら、『柴ちゃん』」
指先の爪が、あゆみの胸を抉る。
心臓に伝わる、ひんやりとした金属のような感触。
生命を感じない冷たさを感じつつ。
あゆみの視線が、空を彷徨う。
ごめん、みんな…
わずかに口をそう動かしたかと思うと、あゆみの瞳から急速に光が失われる。
サイボーグである柴田あゆみは、完全に機能を停止した。
47 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 17:25:06.44 0
●
物言わぬあゆみの亡骸。
既に金属と肉の塊になったそれを、「黒の粛清」は眺めていた。
「首尾は上々、といったところですか。一度内蔵されているパワーを全て出し切ってからでないと、『それ』の摘出は難しい。柴田さんのフル
パワーを凌ぎ切った戦い方は実に見事でしたよ」
背後から現れる人影。
確かめるまでもない。
「紺野じゃない。驚かせないでよ」
「別に驚かせに来たわけじゃありませんよ」
白衣を纏った少女は、肩を竦めつつ視線で何かを催促する。
「あんたの目的は『これ』でしょ?」
言いながら、何かを弧を描き投げる「黒の粛清」。
それは紺野を慌てさせることもなく、すっぽりと彼女の掌に納まった。
「私はこういう形での摘出は反対だったんですが。上司の命令とあらば仕方ありません」
「ああ。あんたね。最後まで柴ちゃんの始末に反対したのは」
「そうですね。絶大な効果を使用者に与える『A-MAX』の高機能性に対し、使用者となる柴田さんの肉体はあまりに脆い。使いこなせないのな
ら壊して取り出せ、がうちの上役たちの総意ではあったんですが」
薄暗い倉庫街に、光が射す。
雲に隠れた月が姿を現したせいだった。
紺野の眼鏡が、光を乱反射させる。
48 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 17:27:13.81 O
ジュンリンの中華料理屋はみんなの心の中に
49 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 17:28:18.62 0
「あたしは専門外なんで、よくわからないんだけど。そんなポンコツを無理くり使うより、新たな被検体に投入したほうが理に適ってるんじゃな
い?」
「確かに。しかし、そういう困難な状況においていかに事態を打開するか。そこに科学の本質があるのだと、私は思ってます。まあ、単純に柴田
さんが亡くすには惜しい人格者だったということもありますね。誰かよりはよっぽど」
「そういう冗談は時と場所を選んだほうがいいわ。この状況なら、死体がもう一つ増えようがあたしは一向に構わないし」
強烈な殺意を向けられ、紺野は肩を竦めるしかない。
「それでは、確かに『A-MAX』は受け取りましたから」
「ねえ。それ、一体誰に移植するつもり?」
「『A-MAX』は人間の血流に甚大な効果を発揮する機械機構です。柴田さんは自らの血液を燃焼物質とすることでその機能を使役していました。
新たな使い手には、やはり血液に特殊な性質を持つ人がいいでしょうね」
踵を返し、闇の中へと消えてゆく紺野。
「そうだ。曲がりなりにも、柴田さんはあなたの親友でしたよね。どうです?任務で親友を殺めた感想は」
「聞いて、なんになるの」
「いえ、ただの好奇心です。科学者としての本能なのかもしれません」
「黒の粛清」は少し考えて。
こう、言った。
「知ってる?あたしの心臓は、鉄でできてるのよ?」
50 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 17:30:39.70 0
>>39-47 >>49 「リゾナンターЯ(イア)」番外編「赤いフリージア」
これにて終了です
『A-MAX』の設定は「絶対解ける問題シリーズ」よりいただいておりますw
51 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 18:34:19.23 0
更新乙!さり気なく伏線はいってるなぁA-MAXは一体誰に組み込まれてるんだろ?普通に考えれば原作の持ち主なんだろうけど…
52 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 19:37:10.62 0
あげ
53 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 20:29:35.52 0
ホゼ
54 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 20:40:01.84 0
ホゼナント
ああホゼナント
ホゼナント
55 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 21:26:52.96 0
あげ
56 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 21:54:20.70 0
川c ’∀´)<A-MAX!(あゆみんテンションマックス)
57 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 22:34:21.24 0
58 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 23:36:45.30 0
ホゼナントブルー
59 :
名無し募集中。。。:2014/02/27(木) 23:36:46.91 0
60 :
名無し募集中。。。:2014/02/28(金) 00:18:02.42 0
>>30 何のことかと思ったらMVの遊園地だったんだ…ジュンジュン・リンリンが居候してた(設定)の中華屋さんも閉店している可能性もあるんだな……
61 :
名無し募集中。。。:2014/02/28(金) 00:36:33.69 0
寝る前のホゼナント
62 :
名無し募集中。。。:2014/02/28(金) 01:57:44.91 0
さ明日も頑張ろう
63 :
名無し募集中。。。:2014/02/28(金) 03:12:45.43 0
おやすみ
64 :
名無し募集中。。。:2014/02/28(金) 05:38:02.88 O
夜明け
65 :
名無し募集中。。。:2014/02/28(金) 06:09:17.37 0
譜ぱょ
66 :
名無し募集中。。。:2014/02/28(金) 16:32:15.78 0
復活
67 :
名無し募集中。。。:2014/02/28(金) 16:42:07.25 0
リボナンター
68 :
名無し募集中。。。:2014/02/28(金) 18:03:53.86 O
復活してたか
69 :
名無し募集中。。。:2014/02/28(金) 19:06:58.89 O
あぶない
70 :
名無し募集中。。。:2014/02/28(金) 19:40:41.68 0
デカ
71 :
名無し募集中。。。:2014/02/28(金) 20:27:07.57 0
リゾナント殺人請負事務所の事件を追っている刑事か?w
72 :
名無し募集中。。。:2014/02/28(金) 20:37:39.54 0
リゾナント デカー
73 :
名無し募集中。。。:2014/02/28(金) 21:49:10.15 0
純情派
74 :
名無し募集中。。。:2014/02/28(金) 22:35:08.51 0
はぐれリゾナンターがあらわれた!
…はぐれリゾナンターは逃げ出した!
コッハー
75 :
名無し募集中。。。:2014/02/28(金) 23:32:25.24 0
コッハーw
76 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 01:07:26.76 0
あぶない
77 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 01:34:10.59 O
おやすみずき
78 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 05:50:28.58 0
週末ホゼナント
79 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 05:58:00.38 O
おはなん
80 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 07:24:51.43 0
コッハー
81 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 08:22:36.74 0
おはるなんと
82 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 09:37:15.23 0
お〜お〜さ〜か〜いこうかの〜♪
83 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 10:35:56.48 0
84 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 12:18:13.69 0
ホゼナンターがいない…
85 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 13:33:17.81 O
いるよ!
86 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 14:42:22.39 O
ここにいるぞぃ!
87 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 14:43:18.96 0
日中のレスの半分は私です!
88 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 15:56:33.19 0
里保ちゃんと昇降口を出て校門に向かう
「早く歩いてよ里保ちゃん。あたし達2人、結構遅れてるよ」
「えー、そうかな?」
「里保と香音ちゃん、遅ーい!」
校門前で腕を組み、あたし達に叫ぶ衣梨ちゃん
「ほら」
「えりぽん、なんか怒ってる?」
「そりゃそうでしょ。15分も待たせてるし」
「そんなにゆっくりだったつもりはないんだけど」
いやいや
あたし達が教室を出る頃は誰も残ってなかったから!
「「おまたせ」」
「遅い!」
「ゴメンゴメン。でもさ、優樹ちゃんもどぅーもまだ来てなくない?」
確かに
いつもくどぅーが優樹ちゃんを引っ張って来るのに
「さっき職員室に寄るってメールが来たと」
「あ、そうなんだ。じゃあウチ達もゆっくり来ても良かったんだ」
「里保は反省するところやろ! 衣梨1人で待っとったけんね!」
「遅くなった原因は、里保ちゃんが宿題のプリントをなくして探してたっていうね」
「はあ? どうしたら直前の授業でもらったプリントをなくせると?」
同感
「お待たせしましたー!」
「しましたー!」
くどぅーと優樹ちゃんが走って来た
「遅い! 何してたと?」
「え、まさし言えません」
「「「誰だよまさし≠チて!!!」」」
「つーか待たせたんだから言えよ! すみません。実はですね、まーちゃんが配られたプリントを鞄にしまった時にビリビリに破って、新しいプリントをもらいに職員室へ行ったら先生に叱られて遅くなりました……」
こっちもプリント絡みか!
「遅くなると衣梨が田中さんに叱られるっちゃん!」
衣梨ちゃんはこの中で最年長だからね
「早くリゾナントに行きましょう。お店を手伝わないと──
(助けて、誰か)
え、今の……
「みんな聴こえたと?」
「これって共鳴≠セよね?」
って事は能力者の声?
「助けてって言ってた」
「場所は……ここからちょっと遠かったみたいだけど」
「道重さん達に知らせて指示を
「いや、衣梨達だけでやろう」
「なんで!?」
は!?
衣梨ちゃん何を言ってるの!?
「道重さんと田中さんはリゾナント、高校生組はまだ学校やろ?」
「動けるのはハル達5人、ですね」
確かにそうだけど……
「ハル達だけでも行きましょう! 迷ってる時間が惜しいんで! 生田さん、声がした場所まで繋げられますか?」
「どぅー、誰に言ってると? 世界一の能力者を目指す衣梨に不可能
「ドヤってないで早くしてください!」
「はーい」
──空間誘導──スキップ
衣梨ちゃんが作った黄緑色の光の壁をみんなで通る
「倉庫がたくさんっちゃね」
「人影はないみたい」
誰もいないって事は、使われてないのかな
潮風?
海が近いのかな
「港に近い倉庫か」
「悪い事をするには持ってこいの場所っすね」
──透視──トランスペアレント
「いた! あの倉庫の中、男が5人と女の子が1人いますね。女の子は柱に縛られて動けないみたいです」
聴こえてきたのはきっとその子の声だね
「男が女の子に話しかけてるな」
「優樹ちゃん、会話の内容を教えてくれる?」
「任せてくださーい!」
──音響分析──アナライズ
「えーっと……それにユーカイした目的はミニシロキンだけではない=v
「ミニシロキン≠チて何?」
「多分身代金≠カゃないっすか?」
「ああ、なるほどね。さすが優樹ちゃんの通訳ったいね」
「どーして自分の思ったことが伝わっているのか=c…聴きながらしゃべるのムズカシーなーう」
確かに
聴きながら話すのって頭を使うよね
「あと、シーセンカーノンの人がいるんですって」
「優樹ちゃん? なんて言ったと?」
「香音ちゃん?」
へ、あたし?
いやいや、違うでしょ
「……それ精神感応≠フ事だろ」
「あ、そーそー。さすがDoどぅー」
「バカ! 全然違うじゃんかよ!」
「全然じゃないもん! ちょっとしか違わないし!」
「とにかく、能力者が能力者の女の子を誘拐して身代金を要求しているのは間違いなさそうだね」
他にも目的はありそうだけど……
「中に入りましょう。あいつらの近くに空のコンテナがあるので、そこからならハル達も聴けると思います」
「向こうは精神感応が使える。気持ちの乱れに気付かれないようにみんな集中して」
「なんで里保が仕切ると? 最年長は衣梨なのに……」
「いいから、移動しよう。えりぽんお願い」
「はーい」
──空間誘導──スキップ
全員で光の壁を通り暗い場所に出た
多分ここはコンテナの中だね
『俺達の目的は、能力者が正統な存在と認められる世界を創る事だ』
あ、声が聴こえる!
これで状況がわかるね
『能力者の存在が認められれば、自分が自分として、能力者として堂々と生きていける。今までの人生をやり直せる』
(これってどこかで聴いた内容だよね?)
(まず間違いないでしょう。どうします?)
(他にも能力者がいるかもしれない。ウチ達5人で対抗出来るか知りたいから、あいつらの能力を把握しよう)
(あーもー我慢出来んと!)
衣梨ちゃん?
(あいつらをこらしめる! 里保! このコンテナ、吹っ飛ばすったい!)
((((えー!!!!))))
『できる。その為には資金が必要だが、もっと重要なのは仲間を、能力者を集める事だ。お前も
「そうはさせんっちゃ!」
こいつ声を出しやがった!
(……こうなったら仕方ないね。みんな行くよ!)
──水念動力──リキッド
ドカーン!
95 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 16:05:23.64 0
投下完了↑
>>89-94 Rs『Help me!!』1 side R-Suzuki
時間があれば読んでみてくださいませ。
96 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 16:08:58.71 O
更新乙
あとで読むよー
97 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 16:28:55.46 0
なるほどあの裏側はこんな感じだったんですねw
98 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 16:31:50.90 0
更新乙です
併せて読むと構造が見えてきていいですね
99 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 18:17:02.55 0
ミニシロキンとシーセンカーノンはまーちゃんが実際に間違えそうw
100 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 19:22:58.37 0
あげ
101 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 20:02:03.83 0
おお!別目線いいね!ついでにリゾナントで一人お留守番してたさゆも書いて貰えたら嬉しい!
102 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 20:24:14.83 0
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/983.html の続きです
●
雨が、降っていた。土砂降りの雨が。
消える間際に「黒翼の悪魔」が放った「空間裂開」により、れいなが落とされた場所は。
闇のように黒い雲と、降り注ぐ雨と、天を支える摩天楼の世界。
超のつく高層ビルが林立している姿は、どこかの異国の首都のようでもあったが、濡れた路地には人一人すら見当たらない。
そう言えば。
れいなは思い出す。
ダークネスの放った刺客「ベリーズ」「キュート」のうち、キュートと対峙することになった若きリゾナンターたちが、突如現れた栗色の髪の女
によって変な場所に飛ばされたという話を。
よくよく考えれば、その時見せたという強さの片鱗。そして、使役する能力。いずれも、「黒翼の悪魔」のそれにぴったりと合致する。
「つまりここは…」
「そう。ごとーの作った『異世界』ってわけ。でももう『返しちゃった』から、あんまりもたないけどねー」
濡れ鼠になったれいなを見下ろすかのように、背中の黒翼をはためかせている悪魔。
「あんた!れいなをこんなとこに連れてって、どういうつもりと!!」
「決まってるじゃん。誰にも邪魔されずに、戦うためだよ」
音すら立てず、ゆっくりと「黒翼の悪魔」が降りてくる。
れいなは知らない。彼女が使役していた、仮初の「空間裂開」を持ち主に返却したことを。
そして、自らの本来の力を取り戻したことを。
103 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 20:25:53.97 0
けれど、本能的に感じていた。
こいつ…さっきとは、違う。
雨が激しさを増してゆく。
路面に作った大きな水たまりの上に、悪魔は降り立った。
摩天楼を彩るネオンに照らされ、鏡のように彼女の姿を映し出している。
「お待たせ。ここから、最終ラウンドのはじまりだよ」
悪魔は器用に翼を折りたたみ、そして、その切っ先で自らの手のひらを掠めた。
真一文字に刻まれた傷、そこからあふれ出す黒い血。
その血が、まるで生きているかのように形を変えてゆく。象られたのは、一振りの刀だった。
「ナノマシンの技術、恐るべしだよねえ。この刀の名前は【蓮華】。あらゆるものを切り裂く、魔性の刀」
「それがあんたが見せたい言うとった『いいもの』? 御託はいい。とっととかかって来い」
「それじゃ、お言葉に甘えて」
【蓮華】を握り締めた「黒翼の悪魔」が円を描くように、斬撃を飛ばす。
一瞬の判断。それは正しかった。
跳躍したれいなの下を通過した衝撃波が、文字通りのあらゆるものを切り裂き、なぎ倒す。
「…あんた、ルパンに出てくる石川なんちゃら?」
驚愕を通り越して、呆れてすらいた。
悪魔が放った斬撃は、周囲の高層ビルを根元から切断していたからだ。
刀は、その刀身を大きく超える物体を切断することはできない。そんな当たり前の話が、あっさり無視される。
104 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 20:27:20.50 0
「ま、ここはごとーの世界だからね。何でもありってことで」
そんな事を言いつつ、悪魔は【蓮華】の刃先をれいなに向けた。
それを合図に。信じられないことが起こる。
切り落とされた高層ビルが。
地面を転がりながら、れいな目がけ飛んできたのだ。
巨大建造物とも言うべき物体が、回転しながら襲ってくる。
重量に耐え切れず、窓を、壁を崩壊させながら、それでもれいなのいる場所へと吸い寄せられるように。
「いくらなんでも、何でもありすぎっちゃろ!!」
もともとが、ありえない世界。
なら、その流れに乗るしかない。
腹を括ったれいなが、まっすぐに高層ビルだったものに向かって走り出す。
跳躍し、ビルの壁に飛び乗り、そこからさらに走り続ける。
目指す場所はただひとつ、「黒翼の悪魔」のいる場所へ。
「おーすごいすごい。ハリウッド映画みたいだよ」
「あんたが…言うな!!」
大きく飛び上がり、地表に立つ悪魔の懐に飛び込んだ。
落下する勢いのままに、体を捻っての回転回し蹴りが悪魔の肩に打ち込まれる。
黒血を活性化されたれいなの蹴りの威力は凄まじく、「黒翼の悪魔」は転がってくる後続の高層ビルに窓から突っ込んでいった。
105 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 20:29:43.00 0
「逃がすか!!」
その軌跡を追い、れいな自身もビルの中に突入する。
建物内部で磔にでもされたかのように、壁か床かもわからないコンクリートにめり込んだ、「黒翼の悪魔」。その姿を認めるとさ
らに追撃を与えるべく、れいなは床から柱に飛び移り悪魔に近づく。
二人の距離が至近まで近づいた時。
笑っていた。黒い翼を持つ悪魔は確かに、笑っていた。
「いいね。いいよ、さすがはごとーが見込んだだけのことはある。じゃあこっちも、本気で…いくよ!!!!!」
激しく、空気が震える。
その瞬間、激しいエネルギーが「黒翼の悪魔」の外へと放出された。
衝撃にも似たそれは忽ちのうちに建物の内外を破壊する。
外部を覆うコンクリートが弾け飛び、鉄骨の骨組みだけになった建造物。
すっかり脆くなってしまったのか、回転のエネルギーも加わり、ばらばらになってゆく鉄骨たち。
れいなは。
その破壊の嵐の中で、「黒翼の悪魔」だけを見据えていた。
吹き飛ばされて転がる巨大な鉄骨の上に乗った、悪魔。地面に突き刺さり、斜めになった瞬間にれいなはその坂を駆け昇る。
吹き付ける雨を弾き、まっすぐに。
「れいなは、ずっと!本気やけん!!」
全力で走り来るれいなを、黒血の刀を構えて待ち受ける悪魔。
106 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 20:31:13.63 0
「だから。熱くなると隙が出来る。戦いはクールに徹しろって」
「うっさい!!」
斜めに構えた【蓮華】を、れいなに向けて振り降ろす。
瞬間、手に伝わる硬い衝撃。
「黒い血と黒い血やったら…互角なはずっちゃろ?」
「確かにね」
れいなが翳した腕の先から、大きく湾曲した黒い刃が伸びていた。
激しく火花を散らす刃と刃。そこからさらに、れいなはもう片方の腕を伸ばす。そこにも、黒い刃。
「黒翼の悪魔」は先の一刀を受け流し、二刀目をさらに刃の背で受け止める。
「二刀流、か。考えたね」
「れいなには、このスタイルが合うけんね」
「黒翼の悪魔」は。
自らの【蓮華】を見せた時に、れいなもまた刀のようなものを作ってみせると思っていた。
しかし、あてが外れる。れいなは、「黒血の先輩」を模倣することなく、自らの戦闘スタイルに合った変化をさせてみせた。
面白い。久しぶりに、全力で戦えそう。
意識せず、ふっ、と鼻で笑う。
「何笑いようと」
「癖なんだよね。うれしい時のさ!」
107 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 20:32:42.24 0
言いながら、「黒翼の悪魔」の渾身の前蹴り。
れいなとの間合いを無理やり広げた悪魔は、天に手を翳す。
背後から二人を追うように転がってきた高層ビルが、手前で大きく跳ねた。
「全力を出せる。お互いに、ね」
宙を舞う、巨大なコンクリートの塊。
それが、悪魔とれいなの頭上で、大きく爆ぜた。
必然的に雨に交じり、瓦礫や破断された鉄骨やらが地上に降り注ぐこととなる。
悪魔が、空の闇に溶け込むかのような真っ黒な翼を広げた。
翼は大きくはためき、そして飛び立つ。
落ちてくる破材を器用に避け、高く、天高く昇ってゆく。まるでれいなを誘うかのように。
天かける悪魔を追うように、れいなも空を目指す。
飛来する瓦礫に飛び乗り、そこからさらに頭上の落ちてくる鉄骨に跳躍した。
驚異の身体能力が、重力の世界を凌駕する。
駆け昇り、飛び移り、さらに駆け昇る。
そしてついに、辿り着いた。
悪魔の舞う虚空へ。腕の刃を双剣のように構えて、空を切り裂き一気に迫る。
右を、左を刀の背で弾き勢いのままに袈裟懸けに太刀筋を走らせる「黒翼の悪魔」。
しかしれいなもまた両刃を器用に交差させて防御する。
二人は、絡み合いもつれ合いながら空を降下していった。
黒き刃を交えながら、悪魔が話しかける。
108 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 20:34:47.60 0
「ねえ。あんたはさ。何のためにここまで来たの? あの小さな女の子のため? 自分自身のため? それとも、正義とかい
う曖昧なもののため? 正義なんて言葉はかの大国のために作られた胡散臭い階念だよ。そんなものに振り回されてたらこの
世界は何世紀ももたないよ。この宇宙に人類ってイカした生物がいたって証拠はお月様の上に立ってる星条旗だけになるだろ
うね。そんなもののために、動いてるの?」
「うっさい!れいなにはそんな小難しいことはわからん!!ただあんたをこの場で叩きのめす!」
自らの言葉に、力を。
そう願うかのように、れいなは右の刃を斜に思い切り叩き付ける。
唸る刀身、切り裂かれる雨粒。
迅い。「黒翼の悪魔」は認識するかしないかぎりぎりのところで、何とか【蓮華】を正面に構えてそれを凌ぐ。が、勢いまで
は殺ぐことができず。原型を留めている高層ビルの壁に猛スピードで叩きつけられた。
「そうこなくちゃね。正義とか。未来も過去も光も闇も支配とかも、どうでもいい。そんな縛りは邪魔なだけ。だよね?」
瞬間。
めり込んだ壁面から、槍のような形に変えた両翼が飛び出す。
いち早く気づいたれいなは、近くを落下していた大きな瓦礫を蹴り飛ばした。それを発砲ロールが如く、楽々と突き抜ける槍翼。
「一応。『鋼翼の悪魔』って異名もあるんだよね」
「そんなん、ポッキーみたいにバラバラにしてやるけん」
つまり、今の彼女は二刀流を超える、三刀流。
黒の血を受けた二人の戦いは、最終章へと突入していった。
109 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 20:46:40.39 0
>>102-108 「リゾナンターЯ(イア)」更新終了
田中さんと後藤さんのラストバトルなので色々ネタを詰めてます
許してにゃん
110 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 20:52:42.11 0
更新乙です
読んでて手に汗握るバトルですなぁ
「そうこなくちゃね。正義とか。未来も過去も光も闇も支配とかも、どうでもいい。そんな縛りは邪魔なだけ。だよね?」
このセリフ熱い!
111 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 20:58:03.28 0
>>109 乙です
ネタがわかりませんが熱い!
盛り上がってますね!
112 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 21:46:29.63 O
あげ
113 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 22:06:16.28 0
114 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 22:40:55.75 0
凄いな…作者どんだけまとめ読んだんだろ?しかもそれをさらっと出してくるホゼナンター…もう凄すぎて言葉出ませんわw
115 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 23:05:20.79 0
後から参加した作者さんたちみんな昔の作品も読んでてすごいな
116 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 23:55:51.10 0
新しい作者さんも昔からいる作者さんもホント凄いわ
117 :
名無し募集中。。。:2014/03/01(土) 23:59:21.55 0
歴史を学び
歴史となれ
118 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 00:12:36.05 0
我らホゼナンターは決して歴史表舞台に立てないが歴史の一部としてこの身を捧げようではないか!
119 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 00:27:26.19 0
>>109 【蓮華】の花言葉は「幸福」って意味があるよね。
120 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 02:03:16.67 0
ホゼナント
121 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 02:19:08.33 0
なんか見覚えのある構図とセリフだと思ったら殺戒か
懐かしいな
122 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 05:10:13.63 0
>>119 それで思い出した
原典は共鳴者作者さんがよそで書いてたあれかw
123 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 06:51:34.43 0
サンデーホゼナント
124 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 07:51:55.52 O
今日も何か投稿あるといいね
125 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 09:05:43.35 O
ほ
126 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 10:31:34.29 O
ぜ
127 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 10:51:50.43 0
さすがに初期の作者さんは書かなくなって久しいか
128 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 12:03:15.84 O
希望はあるさ
129 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 12:23:12.46 0
初期の作者さんもたまにここ見に来ることあるのかな?
130 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 13:07:46.91 O
昼なん
131 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 13:43:32.90 0
初期がいつまでかは分からないけど割といると思います
132 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 15:15:54.32 O
ありがたいねー(ガキさん風に)
133 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 16:45:44.04 0
アリガトゴザイマース!
134 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 17:39:40.95 0
未完は未完のままで
135 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 18:14:25.18 0
未完の話も多いねえ
136 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 18:29:41.19 0
大好きだった殺人請負シリーズがまさかの未完になっても許してにゃん宣言
死にたい……
137 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 19:19:45.28 O
そんなん言うたらこっちなんてもう随分インフィニティ待ってるんやで
138 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 20:28:45.40 0
俺もだよ・・・
あんなとこで切るとかないだろう!
139 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 20:48:00.14 0
まぁ作者さんが書いてくれるまで気長に待つしかないよね…
140 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 21:03:09.87 I
141 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 21:54:48.78 0
あんなとこ
こんなとこ
あったでしょう
142 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 22:32:23.96 0
書けない作者が一番辛いんじゃん?
143 :
名無し募集中。。。:2014/03/02(日) 23:20:56.78 0
ぐぬぬ
144 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 00:21:52.26 0
最近したらばの代理投稿もないね?規制で書けないとかじゃないって事か…
145 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 00:22:01.34 0
時間さえあれば書きますよ…
146 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 00:31:43.01 0
147 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 00:50:51.83 0
普通の投稿頻度ってどれくらいなんだろう?
148 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 00:53:23.34 0
Яの人とかがすごすぎるだけだよw
149 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 03:58:15.34 0
娘。小説に未完はつきものだもの
150 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 06:03:10.64 O
みかん
151 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 06:48:42.33 0
長編書く人って構成考えるのにどれ位時間かけてるんだろ?
152 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 07:00:07.38 0
人それぞれじゃろ
入念にプロット練る人ととにかく書き始める人とでも違いそう
153 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 10:09:43.85 0
待つ時間が長いほど投下された時の喜びは大きいもんさ
154 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 12:07:26.69 O
ホゼナントしながら気長に待とう
155 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 14:14:30.03 0
30分でできる場合もあるしね
156 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 15:45:01.52 0
週末までにはなんとか…そう思いながら書いてるんですが遅くて申し訳ない
157 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 16:19:20.92 O
よーし今日こそは書くぞ
158 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 17:50:04.66 0
桃の節句
159 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 19:00:45.29 0
ひな祭りの夜
160 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 19:17:20.90 0
なんだか作者さん達がちょっとやる気出してる?!これは…期待しても良いのか?w
りぞ
162 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 20:45:09.76 0
桜が咲いたら
163 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 21:21:17.72 0
来月楽しみにしてますw
164 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 21:40:38.90 0
北国の人なら再来月だぞw
165 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 22:40:45.26 0
うええ
166 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 22:54:53.76 O
おええ
167 :
名無し募集中。。。:2014/03/03(月) 23:14:02.14 0
ビシィ!!
Σ从´’v’リ9m<どーん!!
168 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 00:23:28.14 0
ノハ´’v’ソ<心のスキマ お埋めします☆
169 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 00:24:51.62 0
从´’v’リ<ホーッホッホッホッ☆
170 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 00:39:58.50 0
そういや喪黒福造って小田急沿線在住だったな…
171 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 02:13:10.21 0
ぐふっ
172 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 05:09:08.44 0
ざく
173 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 06:13:18.36 O
おハロ
174 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 07:18:36.69 0
リゾナントモーニングセット
『うおええぇ丼+フルーチェ盛り合わせ+冷めたコメダ珈琲』
オススメです!
175 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 08:13:27.89 O
おいくらですか?
176 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 09:14:29.53 O
シジミ目の看板娘にちなんで384円ヤシ
177 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 10:06:29.34 0
安いなオイ
178 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 11:26:55.82 0
うおええぇ丼 …これはまた違うんだなw 正体が知りたいw
179 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 11:58:28.88 O
ヒント
前の晩に飲み過ぎたガキさん
180 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 13:37:40.32 O
よいしょ
181 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 14:53:24.55 0
うお=魚
ええぇ=AAA
トリプルAランクの魚を用いた海鮮丼…無いな
182 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 15:11:28.34 0
フグまるごと丼
183 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 15:43:58.40 O
当たってしまう!
スベリーズの滑り力で回避しないと
184 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 17:53:09.99 O
ほ
185 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 18:19:53.43 O
ぜ
186 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 18:44:04.99 0
舞台「ステーシーズ」を手がけた末満さんがまた娘。で
舞台やるみたいね、題材が「ヴァンパイア」らしい。
187 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 18:50:14.33 O
今FCで受け付けてるやつ?
188 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 19:47:21.42 0
リリウムかなり期待してる
189 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 20:07:04.31 0
お金あんまり無いけど1公演くらい入ってみるかな
190 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 20:12:54.74 0
ヴァンパイア関連縁があるねw
191 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 20:17:42.03 0
フクちゃんの名前が最初にあるんだが・・・ハアハア
192 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 21:23:02.63 0
いやそれは…まあいいや
193 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 22:41:58.46 0
194 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 23:16:19.81 0
落ちるの早いよう
195 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 23:44:51.35 0
ついに皆様の要望にお応えして人気メニューの夢のコラボ!期間限定発売。
『だけど うええおええ うおええぇ丼セット(うぉうお汁付き)』
どちらも好きだけど丼二杯はきついとお考えのあなた!この機会に是非お試し下さい
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196 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 23:51:00.07 0
>>102-108 の続きです
●
研究所内部に最初に辿り着いたのは、里保たち後発組。
亜佑美たちがダークネスの放った「戦獣」に手間取っている分、早く到着できたようだ。
しかし内部は入り組んでいる上に、複数の研究室に分かれていた。
さくらやれいなが居る場所の見当はつきそうにない。
「こんな時、どぅーがいてくれたら」
「フクちゃん、そんなこと言ってもしょうがないよ。とにかく、探そう」
「やけん、片っ端から漁る!香音ちゃんよろしく!!」
「え?しょうがないな・・・」
里保の言うとおり、とにかく探すしかない。
暗に物質透過を使えと言わんばかりの衣梨奈の物言いに憮然とするも、この状況では自らの能力が生きるのは間違いない。とい
うわけで、まずは香音が近くの壁に向かって突進。
「がっ!?」
しかし香音は、まるで何かのコントのように壁に激突しひっくり返る。
「ちょっと香音ちゃん何遊びようと」
「遊んでない!能力が通じないんだって!!」
ぶつけた額を摩りながら、涙目で訴える香音。
試しに聖が壁に手をやると、何らかの力が壁全体に張り巡らされているのを感じた。
197 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 23:53:14.03 0
「…もしかして、能力を遮るような何らかの仕掛けがされてるのかも」
「じゃあ、例えくどぅーの能力でも無理だってこと?」
一様に考え込んでしまう四人。
ここは敵陣、不用意に部屋を開けまくって不測の事態に窮するのは避けたい。
つまり、振り出しに戻ってしまったということ。
「仕方ないね。あの大きそうな部屋から調べてみようよ」
聖が、比較的間取りの広そうな部屋のドアを指す。
「わかった。うちが先に行くから、みんなは後に続いて」
四人の中で一番戦闘力の高い里保が先導し、衣梨奈、香音、聖と続く。
慎重にドアノブに手をかけ、ゆっくりと回す。異常は無い。一気に踏み込んでも問題ないようだ。里保は正面を見据えたまま、
後ろ手で仲間たちに突入OKのサインを出した。
ドアを開け放ち、部屋に四人がなだれ込む。
「動くな!抵抗しなければ危害は加えない!!」
言いながら叫んだ里保だったが、見渡す限りの大きな空間には人はいない。
ただ、複雑そうな機械と、彼女たちの背丈をゆうに超える硝子の培養ポッドが並んでいるだけの部屋。恐らくこの部屋で何ら
かの実験がされていたのだろう。
198 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 23:54:41.13 0
「はずれっちゃね。次、行くと」
「待ってえりぽん…」
別の部屋に移動しようとする衣梨奈を、聖が遮る。
指差す方向には、件の硝子ポッドが。
自然に三人の視線は、そこに集まる。
薄緑色の培養液に浸されたそれ。
思わず、全員が小さく叫び声を漏らす。
「そんな…これって」
「もしかして、『戦獣』」
聖が絶句しながら、口に手をやる。
彼女たちが見たものは、「戦獣」の失敗作。
人間に無理やり獣人族の擬似遺伝子を組み込んだ末の、成れの果てだった。
御丁寧にも体の崩れた人と獣の融合体は、奥に行くに従って融合段階が若いものになっていた。それはあの恐ろしいバケモノ
が元は人だったという、何よりの証拠。
199 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 23:55:25.16 0
「…ひどい」
「これを、この人たちをうちらが」
非人道的な実験内容もさることながら。
彼女たちの心に暗く陰を射すのは、元は人だった存在を斬り捨て、葬ったという事実だった。
絶海の孤島に突入する前の事。
八人の若きリゾナンターたちは、島についてのあらゆる情報を里沙から叩き込まれていた。
「戦獣」についても、能力や習性について教えられていた。その中で彼女が強調したのは。
― ”彼ら”に出会ったら、躊躇わず殺しなさい ―
ということだった。
里沙の前のリーダーだった高橋愛から、徹底的に叩き込まれた「不殺」とは真逆の言葉。
200 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 23:56:43.69 0
★
「どうしてですか!!」
飛行船「アルマカミニート」の作戦会議室に大きな声が響く。
里沙の放った「殺す」という言葉に真っ先に反応した、聖の叫びだった。
「だって…だって高橋さんは言ったじゃないですか!うちらは人殺しの道具じゃないって!その教えに、反しろって言うんで
すか!?」
普段物静かなほうである聖の、豹変とも言える態度。
だが他のメンバーたちも、里沙の言葉には疑問を抱いていた。
「違うよフクちゃん。私たちが『不殺』を、愛ちゃんの志を護っていかなきゃならないのは変わらないよ。けど」
「何がけどなんですか!!」
「ちょっと聖!新垣さんは先輩やろ、先輩に対して何言いよう!?」
それを見て立ち上がる衣梨奈に、里沙はゆっくり首を横に振る。
聖は、肩を震わせながら下を向いたままだ。
「フクちゃんの言いたい事もわかる。でも、『戦獣』は。あの子たちは、私たちが終わらせてあげなきゃいけないんだよ」
「つまりそれって、亀井さんや久住さん、ジュンジュンさんリンリンさんがいた時のリゾナンターに戻るってことですか?」
冷静に意見を投げかけたのは香音だ。
201 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 23:58:23.59 0
愛が「不殺」を説く以前の時代。リゾナンターはダークネスという巨大な組織と戦うために、止むを得ず向かってくる者の命
を奪うことがあった。相手に手加減できないほどの厳しい戦いが続いていたし、彼女たちの力もまた加減の効くものではなか
った。仕方ない、では済まされないが、結果としていくつかの命をその手で消してきたことは紛れもない事実だった。
「確かに。うちらは今まで誰の命も奪うことなくリゾナンターとして活動してきました。だけど、それはたまたま幸運なだけ
だったのかもしれない。いつか、その時が来たら。『不殺』なんてことは言ってられないのかもしれない」
「りほりほ…」
後輩の逞しさ、そして覚悟を目の当たりにして思わず涙ぐむさゆみ。
それでも、言わなければならない。あの時代を生きたリゾナンターとして。そして、今のリゾナンターのリーダーとして。
「あなたたちは今まで、本当の厳しい戦いを経験したことがない。それでも、さゆみたちはまだその手を失われた命の血で汚
されてないみんなに、敢えてそれをさせたくない。それだけはわかって。けど、『戦獣』は違う。あの子たちは、苦しんでる」
「苦しんでる?」
「そう。『戦獣』は、悪魔のような実験の果てに生み出された、人としてはもう生きられない生き物。人だった頃の人格に関
係なく、殺戮を繰り返すだけの存在。もう、元には戻らない」
さゆみは少しの間沈黙し、それから、卓に着く若きリゾナンターたちを見た。
それは指令と言うより、懇願に近いものがあったのかもしれない。
「だから、お願い。『戦獣』に遭ったら。あの子たちを助けてあげて。その歪められた命を、終わらせることで」
202 :
名無し募集中。。。:2014/03/04(火) 23:59:50.48 0
★
歪められた命。
それは培養ポッドの中に浮かぶ「彼ら」の姿を見れば、一目瞭然。
生物の本来あるべき形に手を加えられ、さらに「戦獣」として扱われることすら叶わず、今もこの薄緑色の液体の中に漬かっ
ている。
さゆみは、不運な命を救ってくれと言った。
ならば、今、何をするべきなのか。
突然、三人の耳が鋭い音を捉える。
音のしたほうを見ると、そこには培養ポッドに手を突っ込んだ香音がいた。
物質透過で硝子の中に手を突き入れ、途中で解除したことにより硝子自体が破壊されたのだ。もちろん、彼女自身の手もただ
では済まない。溶液に漬かった手からは、ゆらゆらと赤い糸のように血が漂っていた。
「香音ちゃん!!」
「かのたちは、こうするしかないんだよ。こうするしか」
言いながら、再び手を引き抜く。
穴の開いたポッドから、勢いよく培養液が流れ出した。それは、中にいる生命の終わりを意味していた。
「…そうだね。救える力があるなら、うちらは使わなきゃいけない」
203 :
名無し募集中。。。:2014/03/05(水) 00:01:06.69 0
里保は。それだけ言うと。
全速力で培養ポッドの並ぶ場所を駆け抜けた。
光の筋のように、走る切断面。
失われた時が戻ってゆくかのように、硝子の容器は斜に切られ、そしてずり落ち砕け散る。
聖は、両の拳をぐっと握り締める。
わかっていても、辛いものは辛い。それでも、歩いて行かなければならない。
なぜなら、それがリゾナンターと言う存在なのだから。
その気持ちを汲むが如く、後ろからそっと衣梨奈が寄り添った。
「さくらちゃんも。元を辿れば高橋さんも。きっとこういう実験から生まれたっちゃろね。やけん、高橋さんが救われたよう
に。さくらちゃんも必ず救い出せる。この子たちみたいには、させんとよ」
さくらが一体どのようなことをされるのか。彼女たちはまだ知らない。
だからこそ、急ぐ。取り返しが付かなくなってしまう前に。
204 :
名無し募集中。。。:2014/03/05(水) 00:04:23.73 0
205 :
名無し募集中。。。:2014/03/05(水) 00:22:02.92 0
辛く悲しい決断だな…戦獣達の冥福を祈ろう
206 :
名無し募集中。。。:2014/03/05(水) 01:16:11.94 O
更新キテター
207 :
名無し募集中。。。:2014/03/05(水) 03:03:38.01 O
ねるなんと
208 :
名無し募集中。。。:2014/03/05(水) 05:59:30.64 0
静かな朝だ
209 :
名無し募集中。。。:2014/03/05(水) 07:18:17.47 0
出社前のホゼナント
あースマホ規制解除されて欲しい…昨日のリゾナントメニューの会話入りたかったw
210 :
名無し募集中。。。:2014/03/05(水) 09:10:53.44 0
ドンマイw
211 :
名無し募集中。。。:2014/03/05(水) 09:13:03.33 0
上へ
212 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 11:13:08.09 0
尾ええ
213 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 11:15:53.49 0
ビシィ!!
Σ从´’v’リ9m<丼ー!!
214 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 12:22:26.05 O
転載禁止とな
215 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 12:42:24.13 0
なんかがちゃがちゃして見づらい
216 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 13:50:20.14 O
落とさぬ
217 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 13:57:31.42 O
なんだこれ
218 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 14:07:40.38 0
wikiにも転載禁止なのか?
だったらやだなあ
219 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 15:19:46.26 0
ハルーチェ
220 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 16:39:45.79 0
不器用
221 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 17:54:56.74 O
保全る(ほぜる)
222 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 18:50:15.32 0
ああっふっふう
223 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 20:03:49.60 0
帰宅のホゼナント
224 :
止禁載転@転載禁止:2014/03/05(水) 20:12:09.36 0
議論中は作品は来ないかな?
225 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 20:19:16.80 0
wikiへのまとめも禁止されそうな感じ
226 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 20:22:54.35 0
wikiへのまとめは許してくれっていう主張で議論スレで騒いでるんだがw
なかなかうまくいかないw
227 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 20:29:27.98 0
よそへ移住しちゃったシリーズ多いからね
みんな呼んできて主張しないと無理かもね
228 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 20:31:31.39 0
なんだか面倒な話しになってきてるなぁ
229 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 20:33:14.26 0
移住して過疎ってるのよく見るからなんとかしたくて騒いでるんだけども
230 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 20:34:37.00 0
はるか昔のまとめも遡って禁止なのかね
231 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 20:35:41.29 0
それはおかしくね?
ルールって言うのは基本的に不遡及が原則だと思うんだけれども
232 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 20:38:14.65 0
議論スレ見たけど理屈が通る感じじゃないよね
233 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 20:39:32.23 O
別に営利目的じゃないしスレ住人が転載に反対してるわけでもないから問題ないような気がするんだけどなあ
それすら禁止とかあまりにも暴挙が過ぎるかと
234 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 20:39:41.51 0
そうなんだよね
ほとんど煽りあいばっかりで議論してないw
235 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 20:39:43.97 0
少なくとも遡って禁止はまずありえないよ
236 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 20:42:30.97 0
最悪全部したらばに一旦上げるようにすれば問題ないよねw
面倒すぎw
237 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 20:44:16.77 0
狼に転載って形か
過去物問われないならそれがいいかもね
238 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 20:44:27.26 0
似たような話に某エ□ッキスレでもなってるけど
めんどくせーよなw
239 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 20:46:01.95 O
wikiに書かれている文章は狼にあるリゾスレの書き込みに酷似しているが管理人が自ら書いた文章なので別物であり転載ではない
という形でなんとか逃げられんかな
240 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 21:03:45.15 0
それは管理人さんに盗作疑惑が浮上してしまうのでお勧めできないなw
241 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 22:12:53.76 0
本当に禁止になったらしたらばに投稿して感想もそっちでするの?
242 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 22:14:15.55 0
アフィ目当てじゃないのは見逃してくれよん
243 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 22:31:57.92 0
全面転載禁止派というダークネスとの煽りあいに疲れました
244 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 22:48:03.85 0
ここは明らかに性質が違うと思うんだけどねえ…
245 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/05(水) 23:50:41.30 0
暴風雪警報
246 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/06(木) 00:14:56.04 0
どちらのホゼナンター支局の方?
247 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/06(木) 00:33:34.88 0
東北でがんす
248 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/06(木) 02:08:46.12 0
上げるとよ
249 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/06(木) 03:44:12.08 O
おやすみずき
250 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/06(木) 04:54:42.70 0
おぱ
251 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/06(木) 08:04:24.44 0
おはよう
252 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/06(木) 10:04:25.54 O
ねむい
253 :
忍法帖【Lv=39,xxxPT】(1+0:8) @転載禁止:2014/03/06(木) 12:44:12.45 O
お昼のホゼナント
254 :
名無し募集中。。。@転載禁止@転載禁止:2014/03/06(木) 13:03:44.25 0
結局wiki転載もダメになっちゃうのかな・・・。
255 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/06(木) 13:05:34.74 0
長い間ご愛読、ありがとうございました
次週より保田圭先生の「ハートキャッチ☆お圭さん」が連載開始となります
ご期待下さい
256 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/06(木) 13:05:41.27 0
取り合えず投票が始まってるから反対票入れに行くしかないのかなっていう感じ
正直この先の展開が読めない
257 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/06(木) 13:57:32.03 0
小説文化の危機すなあ
258 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/06(木) 14:24:00.31 0
・「転載禁止」なのでアフィかアフィじゃないかは関係ない
・ルール違反のペナルティはそのまとめサイトの広告剥がし
・なのでアフィブログじゃなかったら実質何の害も無くこれまで通りになる模様
問題ナッシング
259 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/06(木) 15:37:24.25 0
すごい考えやな!
260 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/06(木) 16:18:14.36 0
何にせよ管理人さん次第だと思う
誰が何人転載OKって言ったところで保管する人がそう思わないなら強制なんてできないよ
261 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/06(木) 17:07:19.62 0
ほ
262 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/06(木) 18:32:01.18 0
ぜ
263 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/06(木) 19:01:49.20 0
ぬん
264 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/06(木) 19:41:53.45 0
今度はつんく♂さんが…毎日狼荒れてる感じ保全頑張らないとまた落ちそうだよ
265 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/06(木) 20:08:53.31 0
試練だ
266 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/06(木) 21:05:33.99 0
オリジナルリーダーあげ
267 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/06(木) 22:03:40.44 0
やはり勝負の年なのか…
ここで共鳴を途絶えさせてはならない!
268 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/06(木) 23:06:35.71 0
ガラケーが謎の規制に巻き込まれた
ダークネスの仕業か
269 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/07(金) 00:05:22.40 0
NOw
270 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/07(金) 02:02:03.04 0
|||9|‘_ゝ‘) <上へ!!
271 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/07(金) 02:02:47.63 0
川c ’∀’)<尾ええ!!
272 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/07(金) 02:05:17.81 0
从 * ´ ◇ ` )<どーーーん!!
273 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/07(金) 02:11:22.28 0
ガラケー使えないとなると保全作業に支障が
なんやねん海外なんとかとか意味不明やっちゅうの
274 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/07(金) 04:53:51.07 0
ねむ
275 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/07(金) 07:09:07.91 0
おはようなんだろうね
276 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/07(金) 07:47:43.34 0
今日もホゼナンター
277 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/07(金) 09:11:20.14 0
やよー
278 :
転載禁止@転載禁止@転載禁止:2014/03/07(金) 11:00:04.29 0
負けずに保
279 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/07(金) 13:49:52.67 0
ひるほー
280 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/07(金) 16:14:47.91 0
帰ってきてよ携帯ホゼナンター
281 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/07(金) 18:24:06.19 0
れいながガラケーの社長になるまてお待ちください
282 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/07(金) 19:32:27.85 0
FRIDAYホゼナント
283 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/07(金) 20:38:28.08 0
今度はにいがきさん…別の人だけど
ホゼナンターの試練は続く
284 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/07(金) 20:58:51.21 O
285 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/07(金) 21:43:38.67 0
おかえり!携帯ホゼナンター
286 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/07(金) 22:42:11.47 O
ガラケー規制解除されたのか
287 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/07(金) 23:19:40.77 0
そんなことあるわけ…
ほんまや!
288 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 00:12:47.34 O
ほんまや
明日から保全し放題だぜ
289 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 00:23:36.55 0
>>196-203 の続きです
●
悪夢だ。
でなければ、何かの冗談だ。
福田花音には、そうとしか思えなかった。
圧倒的優位に立っていたはずの自分達が、今やまともに動けるのは花音一人。
彩花は、紗季は。そして憂佳は。生きているのか、死んでいるのか。あれだけの爆発をまともに受けてしまえば、死んでしま
うのが当たり前。そうでなくても、もう手遅れなのではないだろうか。
いや、人のことを考えている余裕などない。
赤き死は、確実に自分にも手を伸ばしているのだから。
「あんた一人だけになっちゃったねえ」
夕陽を背に、「赤の粛清」が語りかける。
ぼろぼろになった外套を靡かせ、にっこりと微笑む姿。
彼女は、アイドル「松浦亜弥」として、テレビに出ない日はないというくらいの活動をしていた。ある意味、見慣れた顔。だ
からこそ、怖い。彼女の漂わす、非日常の「死」が。
「さて、どうする? 超加速の子も、不死を謳った子も。切り札を隠してた光を扱う子も、みーんな死んじゃったよ? 残った
のは、自分では決して動かなかったあんただけ」
粛清人は、いつの間にか手にした大鎌を花音の首元に突きつける。
命を刈り取る、まさに死神のそれだ。
290 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 00:25:02.68 0
「外にいるお仲間さんに助けを求める?それともお得意の洗脳で何ものをも恐れない狂戦士にしちゃうとか。にゃはは」
本人が玩具として扱っていた鎌で、弄ばれている。
「エッグ」のエリートとしてのプライドがずたぼろにされる瞬間。ただ、目の前の死に対して誇りなど何の意味も持たない。
「あたしを…舐めるな」
「この期に及んでまだそんなことを言えますか。ごりっぱですな」
今に見ていろ。
花音は不遜な態度を取っている粛清人を、腹の底で嘲笑う。
こいつはあたしの本当の力を知らない。その気になれば、半径数十メートルに存在する全ての人間を洗脳し操ることだってで
きる。勝算などどうでもいい。そう、あたしが逃げる事のできる時間さえ稼げれば。
密かに生まれた希望。
それはすぐに。いとも簡単にひっくり返せる程度のものしかない。
「もしかして他所の誰かをけしかけて、あたしの足止めに使うつもりだったりする?」
「さあね」
「そう。ところであんた。その首が胴体からさよならしちゃっても、能力が使えるの?」
だから、途端に青ざめた。
こいつ!最初からそのつもりで!!
歯軋りをするも、どうにもならない。
291 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 00:26:20.93 0
「いいねいいね。そういう表情、好きよ?どっかのクロンボさんが恐怖を司る死神だとしたら、あたしは。絶望を司る、
死神。どんなに強かろうが、どんなに頭が回ろうが。最後にはみんな、絶望の表情を浮かべながら死んでゆく」
裁きの刃が、ゆっくりと引かれる。
勢いをつけて、首を刎ねる。そのための動作。
やがてその動きは花音の首筋を捉えて。
「ふ、福田さんっ!!」
甲高い声が聞こえる。
これは。
「…タケ?」
まさか、結界を解いて助けに来たのか。
横目で「赤の粛清」を見ると、鎌を止めたまま声のしたほうをじっと見ている。
その隙に場を離脱し、花音は結果内に入ってきた朱莉のほうへと駆け寄った。
「タケ駄目じゃん結界を解いたら」
「違うんです福田さん」
朱莉は、顔を引きつらせ首を振った。
様子がおかしい。
それに「赤の粛清」も。こちら側ではなく、その少し先に視線が注がれている。
292 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 00:27:18.95 0
「待たせたやよ」
「遅かったから、ちょっと遊んでた。待ちぼうけは嫌いだから」
少し変なイントネーション。
軽くウエーブのかかった、栗色の髪。
間違いない。花音はその人物を見て、苦悔を顔に滲ませる。
リゾナンターの元リーダーにして、警察が対能力者戦の切り札として絶大な信頼を寄せる女性。
その名は、高橋愛。
「何しに来たんですか。花音たち、これから反撃しようと」
悔し紛れに言いかけた言葉が遮られる。
軽くて、それでいて強い音。
焼け付く熱さが、後から追いかけてきた。
花音は愛に頬を、叩かれていた。
「な…!?」
「あんたさっき、悪いこと考えてたやろ。これは、その分」
293 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 00:29:26.25 0
愛は読心術を使ったわけではない。その能力は既に失われてしまっている。
それでも、強い意志を感じることはできた。先ほど花音が考えていた、多くの人を犠牲にしようとする心。それが、どうして
も許せなかったのだ。
「仲間連れて、帰れ。あいつは、あんたの力が通用するような相手じゃない」
「……!!」
侮辱。いや、聞きたくない真実。
どちらにしても、耳を塞ぎたくなるような言葉。
花音は朱莉に指示し、倒れていた彩花と憂佳を担ぎ出しその場を離れる。紗季については、跡形すら見当たらないので諦めざ
るを得なかった。
彩花を背負い、愛とすれ違う。
その際。
「あたしは、あんたに借りができたなんて…思ってないから」
「それならそれで、ええよ」
悔し紛れに吐いた言葉すら、相手にしてもらえない。
それがさらに花音を苛立たせた。
けれど、今は撤退することしかできない。恐らく、この女でないとあの赤い死神を倒すことはできないだろうから。
諦めにも似た感情を抱きながら。
294 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 00:32:29.49 0
>>289-293 「リゾナンターЯ(イア)」更新終了
やっぱこの人がリゾスレの物語の真打なんだなと書いていて思います
295 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 01:55:32.78 O
ほやすみ
296 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 02:29:55.97 0
真打ち登場!なんだろう…この愛ちゃんの悟空的な存在感w
297 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 04:29:00.62 O
待ってました!
298 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 05:53:45.95 O
おはなんと
299 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 08:48:07.76 0
コッハー
300 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 10:33:52.77 O
300!
301 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 12:15:52.82 O
ほぜ
302 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 13:23:07.60 O
まだまだ保全
303 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 14:41:20.18 0
ほぜなんたー参上
304 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 15:22:08.07 O
携帯ほぜなんたーも参上
305 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 16:54:13.76 O
保
306 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 17:17:00.29 0
さゆりほなんと
307 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 18:13:48.65 0
保全の助けになればと一作上げます
ただし、後味があまりいい話じゃないことはあらかじめご了承ください
308 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 18:14:44.62 0
「そのこ、どうしたんですか?おじさんのねこさん?」
そう声をかけると、ふり返ったおじさんは少しこまったような笑い顔をした。
「いや、違う。首輪もついてないから野良猫だろうね」
「死んじゃったの?」
「…ああ、そうみたいだ。昨日の夜か…夜中のうちだと思う」
しゃがんだおじさんの前で丸まったようになっている、黒いねこさん。
ねているだけのようにも見えるけど、手をのばしてさわってみると、かちこちだった。
口のところには、血のまじったあわみたいなものがついている。
「ここのところ、近所で続いてるんだよ。こんな風な猫の不審死が」
「ふしんし?」
「僕の知る限り、これで10匹目だ。どれも目立った外傷はなく、こんな風に血を吐いて死んでる。おそらく毒物だろう」
「どく?だれかに殺されたってことですか?」
「猫が死に至るほどの毒物が、偶然そのあたりに落ちていることは考えにくいからね。誰かが故意にやっているんだろうな」
「…ひどいことするね」
「そうだな。酷いことをする」
こわい顔でそう言って、おじさんはビニールのふくろを出して、ねこさんをその中に入れた。
「ねこさん、どうするんですか?」
そう聞くと、おじさんは何かを言いかけたあとまた少しこまったような笑い顔をして、そして言った。
「このままにしておいたら可哀想だからね。どこかに埋めてあげようと思って」
「まいそうするんだね」
「ん?…ああ、そうだ。埋葬してあげようと思う。…ところで君は――」
「死ぬって…どういうことなのかな。生きてるのと死んでるのって、何がちがうのかな」
そう言うと、おじさんの顔がまじめになった。
309 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 18:15:53.10 0
「よかったら、ちょっとあそこに座って話さない?」
おじさんが指さしたのは、何メートルかはなれたところのベンチだった。
うなずくと、おじさんはねこさんの入ったふくろをだっこして歩き出した。
「座ってて」
ベンチの脇にねこさんの入ったふくろをそっと下ろすと、おじさんはそう言って、となりにある自動はんばいきの前に立った。
「温かいのはコーヒーしかないな…。コーヒーは飲める?」
「う〜ん……のんでみます」
「はは、飲んでみます、か。わかった」
ちょっと笑うと、おじさんはおかねを入れてボタンをおした。
「はい、一番飲みやすそうなやつにしといたよ。飲んでみて」
「あ、はい。ありがとうございます、おじさん」
ベンチにもどってきたおじさんがわたしてくれたコーヒーをうけとって、おれいを言う。
「あのさ、そのおじさんっての……なあ、ちなみに何歳に見えてる?」
「おじさんのこと?えっと、30さいくらい?」
「あ。うん、ほぼ正解。だけど……そうか……それでもおじさんなんだな……。君は?いくつか聞いていい?」
「まさは14さいです」
「14か……。ま、中学生からすればおじさんか」
「まさ、中学校行ってないよ」
「……ん?」
おじさんの顔がまたまじめになって、ちょっとしまったと思う。
言わない方がよかったかな。このこと言うとたまにおこり出す人いるし。
でも、おじさんはおこらなかった。
310 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 18:16:26.99 0
「冷めちゃう前に飲まないと。ほら君……まさちゃん?も」
「あ、優樹です。じゃあ、いただきます」
「優樹ちゃんか。どうぞ、いただいてください」
ぷしゅっとどうじにふたを開けて、笑いあう。
あけ口から出てきた白いゆげは、ちょっとにがくてあまいにおいがした。
「僕は森っていいます。森憲人。おじさんじゃなくてもりさんね」
「まさ知ってますよ、もりさんちゅうさん」
「いや、森三中ではないけど」
「コーヒーいがいとおいしい」
「そりゃよかった。…マイペースだね、優樹ちゃん」
おじさん…じゃなくて、もりさんちゅうさん…じゃなくて、もりさんはそう笑ってコーヒーをのみ、ちょっとだけにがそうな顔をする。
「優樹ちゃんはこんな朝早くから何してたの?」
さりげないかんじで、もりさんがそう聞いてきた。
ほんとうのことは言えないので、うそをつく。
「う〜ん、おさんぽ?というか何もしてない。目がさめちゃったからぶらぶらしてただけです」
「そっか。お父さんやお母さんは大丈夫?心配しない?」
「うん、だいじょうぶです。だって父も母もいないもん」
「…いない?旅行でいない…ってことじゃ…?」
だまって首をよこにふると、もりさんは「そうなのか」とだけ言った。
どじょう?…どうじょう?…のことばはめんどうくさいので、ありがたい。
「あのさ、優樹ちゃんがさっき言ったのって…どういう意味?」
「さっき?」
そのかわりに聞いてきたことばに、くびをかしげる。
311 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 18:17:17.98 0
「うん、言ってただろ。『生きてるのと死んでるのって、何がちがうのか』って」
「ああ、そのこと」
「最初に聞いたとき、この子は生きてるのが苦痛なのかなって思ったんだよ。だから話に誘った」
そう言って、もりさんはまたコーヒーを一口のんで、ちょっとだけにがそうな顔をする。
「でも……そうじゃないみたいだね。色々と複雑な事情はあるみたいだけど、生きるのが辛いわけじゃなさそうだ」
「うん、つらくはないよ。たいへんなこともいっぱいあるけどたのしいこともあるし」
「はは、それなら安心だ。それこそが生きることだからね。優樹ちゃんはちゃんと生きてる」
「それこそが生きること……。じゃあ死ぬことは?どういうことなんですか?」
「死ぬことはどういうことか……か。難しいな」
もりさんはうでを組み、う〜んとうなる。
そして言った。
「どうしてそんなことを聞きたいの?まあ、優樹ちゃんくらいの年の子は、誰でも一度は考えることなのかもしれないけど」
「まさね、よくゆめを見るんです」
「夢?」
「そのゆめの中でね、まさがししゃをよみがえらせる力をもってることがあって」
「ししゃをよみがえらせる…?死んだ人を生き返らせることができるってこと?」
「そういうことです。ヘンですか?ヘンですよね」
「まあ……夢だからね。そんな夢を見ること自体はそこまで変でもないと思うけど」
「ゆめの中では、ヘンじゃなくてとくべつっていうんだよ、って言われました。優樹ちゃんはとくべつなんだよって」
「ん?ああ、夢の中で誰かに言われたってことだね」
「よみがえった人にありがとうって言われたこともあるけど、まわりの人にやめなさいって何度も言われたり、まさもこわくなったり」
「…なるほど。まあ確かにそれはきっとやっちゃいけないことだからね。でもそんな夢を見るってことは、優樹ちゃんも心の深層では分かってるんじゃないかな」
「どういうことですか?」
「人は皆、いつかは死ぬ。つまり生と死は誰もが必ず経験することなんだ。案外、そう違いはないのかもしれない。隣り合った世界に移るというだけで」
「生きてるのも死んでるのもおなじ…ってこと?」
言いながら、ベンチの下におかれた白いビニールのふくろに目をやる。
もりさんも、おなじようにふくろを見た。
312 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 18:17:56.02 0
「いや、それは違う。例えばこのコーヒー。互いに見えないけど、缶の中と外はすぐ隣り合ってる。生の世界と死の世界のように。でも…同じじゃないだろ?」
ふくろから目をはなし、もりさんはこんどはコーヒーを顔の前にもちあげる。
「そとだったらコーヒーがこぼれちゃうってことですか?」
「ん?ああ、はは、そうだね、その通りだ。そういうことなんだよ、きっとね」
「ん〜……よくわかんない」
「はは、何が何だか分からないような話でごめんね。だけど、僕自身も今まで考えたことがなかったことを考えられた気がする。ありがとう」
そう言って笑ったあと、もりさんはまたまじめな顔になった。
「人は…いや、生きているものは皆、いつかは死ぬ。僕も、君も……この猫も」
そしてまたふくろをちらっと見る。
「だけどね、生と死の世界を移るタイミングは誰にも決められない。決めちゃいけない」
「せかいをうつるタイミング?」
「優樹ちゃんは夢の中で言われたんだろ?死んだ人を生き返らせるのはやめなさいって」
「うん、言われたことある」
「それは、生と死の世界の壁を勝手に越えさせることになるからだよ。このコーヒーの缶の、中と外の世界の壁を」
「あー、コーヒーがこぼれるはなしだ」
「そう、コーヒーはこぼしちゃいけない。死んだ人を生き返らせちゃいけない。そして……生きているものを死なせちゃいけない」
座ったまま、もりさんはそっとふくろに手をのばして、ふくろの上からねこさんをなでる。
カシャカシャと音がした。
「僕はこんなことをした犯人を絶対に捕まえるよ。必ず見つけ出す」
「けいじさんって、人殺しだけじゃなくてねこさん殺しのはんにんもつかまえるんですね」
いがいだったのでそう言うと、もりさんの顔がかたまった。
ちょっとしまったと思う。
また言ったらいけないことを言ってしまったのかな。
313 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 18:18:31.76 0
「僕が刑事だってどうして知ってるの?言ってないはずだけど」
ああ、しまったそれかー。
ふくぬらさんに知らないふりをしておくように言われててだからそうしてたんだけど、だってわすれてたんだもんいまは。
でもまあ、どうせたぶんもうすぐだし。
「優樹ちゃん、君は――」
何かを言いかけたもりさんの口から、こえのかわりに赤いものが出てくる。
もっていたカンが手をはなれておち、ズボンの上でひっくりかえる。
あーあ、コーヒー、こぼれちゃったね。
「まさ…き…ちゃ……まさ…か…きみ…が……?」
ベンチのせなかのところにつかまって、もりさんはひっしにこっちを見てくる。
いっしゅん、その目がビニールのふくろをむいて、もりさんの言いたいことがわかった。
あわててくびをふる。
「ううん、ねこさんを殺したりなんかはしてないよ。まさはけいじさんを殺すように言われただけ」
「どう…し…て……」
「けいじさんのこと、きらいな人がいるんだって。いい人だし、まさは好きだけど……ごめんね、おしごとだから」
もりさんが、口をパクパクとさせる。
だけど、もうこえは聞こえず、ひゅーひゅーという音がなるだけ。
そしてそれをさいごに、もりさんの首はがくりとおれた。
「あとは、えーっと…あ、このいしょだ」
ふくの内がわにはってあったいしょを、もりさんのふくのポケットに「てんそう」する。
これでいいはず。じぶんでどくをのんで死んだことになる……はず。
あとはしらない。
314 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 18:19:14.79 0
わすれものがないか見まわしたところで、ねこさんのことをおもい出した。
ちょっとまよったあと、しゃがんでふくろをだっこする。
このままだと、ヘンにおもわれるかもしれない。
それに……
「まいそうしてあげないとね」
ふくろの上から、つめたくてかたいねこさんの体をなでる。
カシャカシャと音がした。
「あっ!そうだ。どくのつつみもだった」
さいしょにもりさんのコーヒーの中に「てんそう」したどくをつつんでいたかみも、いっしょにおいていかないといけないんだった。
あぶないあぶない。
もういちど「てんそう」をすませて、ためいきをつく。
こんどこそわすれものはない……はず。
人がこないうちに……と、あるき出して、ふりかえる。
ベンチの上で死んでいるもりさんが目に入った。
つい、言った。
「かってにとなりのせかいに行かせちゃって…ごめんなさい」
殺すあいてにあやまったことはあっても、殺したあいてにあやまったのははじめてだね。
どうしてかはじぶんでもわからない。
はるなんがよく言ってる「人を殺してはいけないりゆう」が、ちょっとだけわかったからかもしれない。
それとも、ただそういうきぶんだっただけかも。
こぼれたコーヒーは、いまも少しずつひろがりつづけていた。
315 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 18:21:18.44 0
316 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 19:30:35.21 O
緊急保全
317 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 19:54:20.28 0
>>315 リゾナント殺人請負事務所録更新乙です
生と死を考えさせられる作品ですね…
318 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 21:30:56.66 0
319 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 22:29:56.71 0
>>71 まさか本当に刑事が出るとはw
今度は森刑事の自殺を不信に思った同僚が リゾナント殺人請負事務所の事件を追っていく…と言うサイドストーリーも希望w
320 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/08(土) 23:35:04.66 0
おやすみなんと
321 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 00:32:09.44 0
ラジオ聞きながら寝るんだろうね
322 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 01:35:11.02 0
323 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 02:42:03.93 0
ノノ刀e _l‘)<ブルンブルンと上げますわ
324 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 03:17:28.66 0
ひさぶりにスレ覗いたら殺人請負さんキテタ!!
黒まーがとてもいい感じですね
続きも期待してますよw
325 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 03:45:20.67 0
326 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 03:52:07.85 0
おいおい…
リゾスレまとめ系該当してるやん
327 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 04:39:02.20 0
∧,,,∧
. 〃ノノハヽ.
ハo´ 。`ル <がおー
328 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 08:31:17.36 0
つまりどゆこと?
329 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 09:01:04.06 0
・今atwikiがハッキングされ放題になってるからよく分からない人はatwikiしばらく見ないほうが無難
・atwikiに登録した管理人はメアドやパスワードなど情報漏れの被害にあっている可能性がある
330 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 10:11:40.34 0
転載禁止といいもうまとめは終わりだろうか
331 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 10:42:33.71 O
ノンアフィの転載はOKという結論だった気がする
332 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 10:47:22.84 0
管理人さんの結論じゃないように思ったけど
333 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 12:49:19.06 0
どうなんだろうね
334 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 14:08:09.70 0
>>289-293 の続きです
●
「ここに来たってことは。覚悟を決めてきたって思って、よいのかな?」
夕陽を背にして、粛清人。
所々から血を流してはいるが、それが大きなダメージとなっている様子はない。
つまり、ほぼ万全の体制。
「約束。果たしに来たで」
「へえ。あたしとは戦いたくなかった、なんて言ってたのに。やっぱあれ?このままじゃ自分の後輩たちにまで危害が及ぶ、なんて
考えちゃった?」
愛に向かって、見透かしたような笑顔を見せる「赤の粛清」。
彼女の言うとおりだった。目の前の女は、目的を果たすためなら何でもする。若きリゾナンターを血祭りにあげることも、警察組織
の後輩たちを餌に自分をおびき寄せることすらも厭わない。
ならば、これ以上犠牲を増やすわけにはいかなかった。
「今度はもう邪魔者はいない。だから…見せてよ。全てを光へと還す、至高の力を!!」
「赤の粛清」の叫びが、そのまま爆発となる。
周囲の瓦礫が飛散し、広範囲に煙が立ち込めた。粛清人にとっての、対光能力者戦の定石。
しかも今回は撮影スタジオの時よりはるかに煙幕の濃度が高い。ということは光を遮る力もそれに比例する。
335 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 14:09:24.30 0
最悪の視界の中、愛が動いた。駆け出し、距離を詰める。
こちらにとっての不利は、相手にも同様。そして彼女にはかつて読心術を使っていた時の影響か、相手の気配を読むことに長けてい
た。
「甘いね。組織の幹部たるものが自分の力で自滅するとでも思った?」
右足での回し蹴り、だがあっさりとかわされる。
連撃で繋げた左足の蹴りもまた、空を切った。粛清人は。
周囲の瓦礫の踏み砕かれる音によって、愛の位置をほぼ完璧に把握していた。
「さすがやね。そう簡単に倒れてくれんわ」
愛は目の前の相手の実力を十分に理解していた。
先の戦いにおいて、光の目くらましを使って戦線を離脱せざるを得なかったほどの実力を。
次は「赤の粛清」が攻める番だ。
高温の爆風を撒き散らしながら、愛に襲い掛かる。
通常ならば、光を打点に纏わせる事で衝撃の瞬間の爆発を吸収できる。しかしこの立ち込める煙の中では効果は期待できそうにない。
「お利口さんだね。前回の轍は踏まないって?」
「当たり前やろ」
赤いスカーフが、舞う。
体を屈めての突進、素早い動きでの足払いを放つ。
避けようとして体勢を崩した愛を、粛清人の追撃が襲った。
身を捩って瓦礫の上を二転、三転。拳が抉った場所はまるで大砲でも打ち込んだかのような大きな穴が空いていた。
336 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 14:11:09.80 0
最後の一撃を回避しざまに、光の矢を投げつける愛。
体を仰け反らせて直撃を粛清人が避けている間に、間合いを取るべく後方に大きく下がった。
あれだけの運動量にも関わらず、息一つ乱れていない「赤の粛清」が愛に視線をやる。
「歴代リゾナンター最強の名は伊達じゃないね。だったら」
「だったら?」
「そろそろ本気出しても良いんじゃない?」
刹那の動きだった。
自らの付近で爆発を起こし、その爆風に身を任せた状態で愛に急接近する。
その状態で繰り出された脇腹への拳。咄嗟の事に防御すら間に合わず、骨が撓む音が脳を直撃した。
「っ!!!!」
声にならない呻き。
意識さえも吹き飛ばす爆拳の威力。だがこんな程度で倒れるわけにはいかない。
鋭い激痛をこらえつつ、間合いを大きく取った。
「あたしは。i914と戦いたいんだよね。あの日の、愛ちゃんと。本気出す前に死んじゃうとか、やめてくれないかな」
「……」
愛は改めて、自らの吹っ切れなさを痛感する。
割り切った。割り切った、つもりでいた。
けれど彼女と対峙し拳を交えるたびに、幹部候補生として共に過ごした日々が思い起こされる。
埋もれてしまう、思い出に。
337 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 14:12:04.14 0
「でも、容赦しない。だってこの日を、楽しみにしていたんだから」
再び粛清人が距離を詰める。
爆発の力を帯びた拳が、蹴りが容赦なく愛を襲う。
立ち篭める煙によって弱められた光の防御を、じわりじわりと打撃が侵食していく。
いずれこのままでは時間の問題。
風を切るハイキックが愛のガードを大きく崩す。
がら空きになった上半身を狙い済ますかのような、「赤の粛清」の二撃目の蹴り。
しかし。
咄嗟の判断だった。
「赤の粛清」は蹴り上げた足を即座に引っ込め、右手を前に翳す。
結果。突然生まれた無慈悲な光が。
彼女の右肩から先を、飲み込んだ。
「組織が愛した、全てを消し去る至高の光か」
肩口から、大きな血飛沫が上がる。
土煙など物ともしない強烈な光が、「赤の粛清」の肩から背後へと打ち下ろされていた。
彼女の後ろには、人の力で空けたとはとても思えないような大きな穴。
338 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 14:12:45.92 0
「約束。剣はスペード、ハートは心臓。覚えてるよ」
愛は、あの頃のi914ではない。
自分の内に封じ込めた破壊の化身に怯え、孤独に戦っていたか弱き少女ではない。
愛には、仲間がいる。共に戦った8人の仲間が。
愛には、後輩がいる。愛が切り拓いた道を歩もうとする若き後輩たちが。
「ハートとスペードの形をひっくり返すと、スペードとハートになる。あーしは。道を外れたあんたの心臓を…刺し貫く」
「それ。その、強さだよ。ずっと待ってたんだ。お帰り、『アイちゃん』」
沈みゆく夕陽が空を朱く染めるが如く、赤い粛清人は血を流し続けていた。
それでも、彼女は笑っている。
今の状況が、楽しくて仕方がないとでも言わんばかりに。
339 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 14:14:01.45 0
340 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 15:26:27.96 O
ほ
341 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 16:48:46.11 0
おぉっ…!どうなる?
342 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 17:13:25.09 0
343 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 18:09:22.61 O
保全
344 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 18:51:02.42 0
新曲のタイトルがまたカッコ良さそうw
345 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 18:53:48.67 0
@
56枚目のシングルが4/16発売。「パスワードイズゼロ」「時を超え空を越え」の両A面。時を?はミドルテンポの曲。
@****
ちなみに「時空(とき)を超え 宇宙(そら)を超え」の時空とか宇宙の漢字は近くの取材陣が持ってる紙で見えました。超えなのか越えなのかは見えず。
346 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 18:54:58.36 0
完全にΖガンダムだなw
347 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 20:09:03.23 0
もめてる中うぃきが更新されてるね
348 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 20:19:06.41 0
ニュースで見てたらまとめの2と3のウィキは大丈夫だったのかな
349 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 20:21:36.80 0
某スレみたいにしたらば→本スレって順番じゃなくて
普通に本スレに投下して良い感じかな?
350 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 20:26:05.39 0
LRが変わったわけでもないしまだ大丈夫なんじゃないかな
351 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 20:34:31.68 0
ありがとうございます
近いうちにアップすると思います
352 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 21:14:55.65 O
誰か殺人請負さんに続く人はおらんのか
353 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 21:44:12.11 0
ガラケーさんそんなにЯが嫌いなの?
いつもЯのすぐ後一言保全だけど
354 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 21:58:35.29 O
そういうことを言うべきじゃないね
好みは人それぞれだしそんなこと言ってたら他の話題振ってる人にまで迷惑かかるぞ
355 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 22:03:59.66 0
だけど上がってる作品をわざと無視するような言い方は嫌だな
一言保全の話じゃなくて352の話ね
356 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 22:21:41.53 O
久しぶりの殺人請負さんの更新だったからその後に続けってそんなに悪い内容か?
いちいちそんなの気にしてたらレスなんかつけられないよ
357 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 22:26:56.81 0
まぁまぁ感想も保全も人それなんだろうね
358 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 22:30:23.23 0
「殺人請負」のあとに「Я」が上がってるのにあの書き方はいやらし過ぎるな
死んだ方がいいと思う
359 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 22:44:27.67 O
Яがあがってるのはいつものことじゃん
無視するな感想書けってのはちぃと横暴な話じゃないかい?
360 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 22:51:00.04 O
保全ついでに感想書くひと
保全したいけど読んでないから「ほ」「保全」と書かざるを得ないひと
保全ついでに他の話を振って話題を広げようとするひと
保全ついでに滞ってる期待作を待つひと
みんなそれぞれの事情で保全しているんだよ
361 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/09(日) 22:52:41.43 0
>>359 誰がそんなことを書いてる?
「殺人請負」のあとに「Я」が続けて書いてるのに それをわざわざ無視して
「誰か殺人請負さんに続く人はおらんのか」とか書くやつは死ねという話だ
別に感想なんて書かなくていいよ 死ぬか消えれば
362 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 00:04:36.96 O
浮上
363 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 00:17:54.00 0
また自分のせいで荒れてしまって申し訳ないです
私のことを快く思わない方がいるのも分かってはいます
ただ 以前に一度言いましたがもう一度言っておきます
Яのような作品が上がり続けているからこそあんなイレギュラーな話を書けると思っています
少なくともイアの作者さんには分かっていていただきたいです
イアの作者さんはこんなくらいのこときっと慣れっこでしょうけどw
364 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 01:18:23.75 0
せいってわけじゃないと思うが…
365 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 01:24:14.89 0
366 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 01:55:46.45 0
おやすみずきだぜえ
367 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 06:11:24.65 O
よいしょ
368 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 06:48:43.87 0
369 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 08:47:00.52 O
下痢が止まらねぇ・・・
370 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 10:24:48.03 0
从´’v’リ<あなたの腹痛を
>>372さんに飛ばしますっ
371 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 10:37:47.56 0
結局at wikiはまだ踏まない方がいいの?
372 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 10:52:07.22 O
うっ
373 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 11:37:58.48 0
飛ばされてんじゃねえw
374 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 11:42:16.48 0
atwikiは流出発覚後管理側が一斉に強制パスワードリセットかけてる
流出被害は全部じゃなくて限定的みたいだがリゾスレのがそこに当たるかどうかはまとめの人しかわからん
375 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 11:48:51.09 0
376 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 12:15:23.64 0
ぐぬぬ
ЯとRとRシリーズが比較できないではないか
377 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 13:39:05.37 O
昼保全
378 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 15:00:55.67 0
三時の保全
379 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 15:45:42.30 O
ほ
380 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 16:02:41.60 0
>>334-338 の続きです
●
ダークネスが一部隊「ダンデライオン」に奇しくも所属していた、「黒の粛清」と新垣里沙。
メンバーだった柴田あゆみの死により「ダンデライオン」は解散となったものの、今度は粛清人と裏切り者という新たな縁が絡みつく。
「腐れ縁よね…あたしたち。でもそれも今日で、おしまい。粛清してあげる、生きてたことを後悔するくらいの圧倒的な恐怖を味わわ
せながらね!!」
獣と化した「黒の粛清」が里沙に止めを刺そうと、眼前に大きく躍り出た。
獣人族の特性を持つ自らの肉体に絶大な自信を持っているからこその、防御をまるで考えない攻撃。間合いに入られれば、強靭な十指
に引き裂かれるのは必至だ。
もちろん、里沙も避けるだけではない。
少しでも相手の隙を誘おうと、回避しながら鋭いピアノ線を投げつける。
「あんたってほんとバカねえ。そんな柔な糸なんか、獣化したあたしに通じるわけないじゃん」
しかし糸を掴んだ剛力に引っ張られ、懐まで手繰り寄せられる。
待っていたのは、強烈なボディーブロー。
「ぐばっ!!」
「ちょっと、また吐かないでよ?ゲロみたいなのは、あんたんとこの喫茶店のメニューで十分」
強い。伊達に幹部を、粛清人を名乗っているわけではない。
里沙は一瞬だけ、この黒き死神に立ち向かおうとしたことを後悔した。
それでも。彼女は気持ちを奮い立たせ、立ち上がる。
381 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 16:03:54.79 0
「いい加減しつこいわね。そんなにあたしの爪で引き裂かれるのがお望み?裏切り者」
俄かに苛立つ粛清人。
だが、次の言葉は彼女の残虐性に火をつける。
「裏切り者は…あなたのほうだ。柴田さんを殺し、ダンデライオンを解散に追いやった」
「……」
「あなたを信頼していた柴田さんを。それこそ、裏切りだ」
「……知った風な口利いてんじゃねえよ!!」
獣の咆哮。
風を切り飛びかかった黒豹の、拳が、爪が。里沙に降り注ぐ。
その眼は赤く、視線は赤い痕跡を残すほどに。
「裏切り者の!泥臭い豆の分際で!ふざけんな!!あたしは!よっすぃー以外の誰も!信頼なんかしてないんだから!!!!」
ピアノ線を束ね防御をするも、容赦なく粛清人の攻撃は里沙を打ち据えた。
甲高い寄声とともに、強い衝撃が肉体を容赦なく傷つける。
所々で骨が軋み、砕ける音がする。その激痛に悶絶する間すら与えず、馬乗りになった「黒の粛清」は容赦ない攻撃を与え続けた。
獣の一撃一撃が、荒々しく里沙の意識を削り取ってゆく。
粛清人の吐いた言葉は、必然的に里沙にある人物を思い出させていた。
382 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 16:05:13.12 0
「鋼脚」。
里沙がダークネスに入り、すぐに戦闘の手ほどきを受けることになった、言わば「先輩」。
その先輩と「黒の粛清」は、幹部入りするのも同時という間柄。里沙が「鋼脚」に師事しておきながら結果的には組織を裏切ったこと
は、「黒の粛清」の大きな怒りを買うこととなる。
「そろそろ終わりにしてあげる。痛いでしょ?苦しいでしょう?あんたの大好きな『銀翼の天使』みたく廃人になる前に、殺してあげ
るわ!!!」
その時。
深淵の底へ沈みかけた里沙の心が、浮上した。
そうだ。私はまだ死ぬわけにはいかない。
だって、「あの人」を助け出していないんだから。
心臓を抉り取ろうとした鉄の爪が、止まる。
寸前のところで里沙がピアノ線を巻きつけ、左右に引き絞っていた。
「あんた、まだそんな力が」
「感謝しますよ。私の心を奮い立たせてくれて」
そう言うと、わずかに残された力で「黒の粛清」を蹴り上げる。
そしてピアノ線を舞わせ、ぼろぼろの体を支えながら間合いを取った。
相変わらず戦況は里沙にとって不利ではある。
だが、先ほどのやり取りの中で妙に引っかかる言葉があった。
もし、仮にそれが本当だとしたら。今までのことに矛盾が発生する。
確証は無い。けれど。
足元の感触を確かめる。
じり、じりと動くたびに枯れ草の擦れる音がする。これなら。
覚悟を決めて、里沙はピアノ線を展開した。
383 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 16:06:21.84 0
「またあやとりごっこ?その手は通じないと何度言ったら!!」
再び里沙を刈り取ろうと、黒豹が走る。
ピアノ線が何度も地を舐め、草原を掠めていった。
捉えられない。標的を失った糸は地面を摩擦するだけ。
「通じない?果たしてそうでしょうか」
「何が言いたいのよ」
「前回、私はあなたの足を切断した。それはあなたのことをいつかは同じように切断できるということじゃないですか」
「いいわ。あんたみたいなバカには、奇跡は二度起きないってこと…その命をもって教えてあげるから!!」
言葉で「黒の粛清」を挑発しつつも、里沙は少しばかり焦っていた。
体力が尽きるか、それとも。
一度粛清人の攻撃の洗礼を浴びてしまった里沙は、確実に消耗していた。
再び獲物を狙う、黒豹の双眸。
その動きがさらに俊敏になったような気がした。
明らかに、一撃で仕留めるための、動き。
ピアノ線は、彼女に届かない。
いたずらに地を擦り、草原を切るだけ。
何度も。何度も。
里沙の肩が、激しく上下しはじめていた。
384 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 16:07:42.80 0
「疲れてきたようね。そろそろ、引き裂かせてもらうわよ!!」
狙いを定め、一瞬、粛清人が立ち止まる。
体を撓らせ、力を溜め、一気に開放する姿勢。
ところが、次の瞬間に彼女の瞳に映ったそれが。
燻っていたそれは、ぱちぱちと音を上げながら一気に炎上する。
枯れた草むらから、火の手があがり、一瞬にして周囲に燃え広がっていった。
「あんた、最初からこれを狙って…!!」
里沙はただ闇雲に「黒の粛清」を狙っていたわけではない。
この場所に踏み込んだ時から気づいていた、枯れ草の存在。それに、強力な摩擦力で火をつける。表向きは攻撃を装いつつも、本当の
目的はこの場所の炎上だった。
周囲は一気に炎と煙が渦巻く地獄と化していた。
獣化能力者と言えども、生き物には変わりない。ただ。
「でもこの炎はあんたにとっても脅威のはず。マメェ…やっぱあんたってバカだったのねえ!!」
「黒の粛清」の言うとおり。
この状態は里沙にとって決して有利には運ばない。下手をすれば、相手を倒すどころか自らが焼け死んでしまう。
これは賭けだ。
もし里沙の目論見が外れてしまった場合、それはそのまま死へと繋がる。
それでも、やらなければこの黒い死神には勝てない。
意を決し、里沙がピアノ線を走らせながら「黒の粛清」へと突っ込んでゆく。
385 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 16:08:50.85 0
「やけくそってやつ?それとも恐怖で頭がおかしくなったの?哀れね!!」
「黒の粛清」には、自らに向かってゆく里沙の姿が日の丸特攻隊のそれにしか映らない。
それこそ最後の攻撃に出るはずだ。例えば、ピアノ線はフェイクで、本命は。
体勢を低くし、構えた里沙の掌底。
いや、肉弾戦を得意としない里沙の腕力などたかが知れている。
敢えて粛清人は、その攻撃を胸部で受け止めた。
「どうせあんたの目的は攻撃に見せかけた精神干渉でしょ!!」
そう。里沙の本分はあくまで「精神干渉」。彼女がサイコ・ダイバーと呼ばれる由縁だ。
ただ、「黒の粛清」へのサイコダイブは一度失敗している。だから。
「違いますよ」
「!?」
思い切り押し付けた右手を軸に、体を宙に浮かせる。
意表を突かれた動きに反応できない「黒の粛清」を他所に、後ろを取った里沙はピアノ線を粛清人の首に巻きつけた。その片方は里沙
自身の腹部にも巻いてある。
その状態で、片足を背中に思い切り押し付けた。
つまり、標的の首に掛かる負荷は里沙の腕力に加え、全体重。
「む、無駄だって言ったじゃない!こんなもの、あたしの獣化した体には効かないって」
「そうかもしれません。ただし、あなたが”本物の”獣化能力者ならね」
「!!」
386 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 16:10:01.78 0
「それ」に気付いたのは、「黒の粛清」が激昂して里沙を乱打していた時のこと。
同僚である「鋼脚」以外を信頼していないと言う言葉。そこに強い違和感を覚えた。
ならば、説明がつかない。自らの獣化能力を隠すために、二人の従者を利用していたことが。
利用するということは、言い換えればその二人に自らの秘密を打ち明けること。
あの二人は「鋼脚」に匹敵するほどの信頼を置ける存在なのか。
否。ならば、真実はどちらにあるか。里沙の導き出した答えは。
「黒の粛清」は、獣化能力者ではない。
つまり、獣化能力に見せかけた別の能力者。
彼女が獣化ではなく別の能力を保有しているとすれば、全てのことに説明ができる。
ただ、それがどんな能力なのか。それを確かめるための、炎。そして攻撃を装い粛清人の体に触れることで知る。
まるで獣になったかのように体型を変え、金属のように硬く、そして鋭くすることのできる能力。そして。
「あなたの能力は…『鋼質化(ハーデニング・スティール)』。全身を鋼鉄にできれば、体を鋼鉄の硬さにも、鋼鉄の鋭さにもできる。
もちろん、鋼鉄だから熱も伝わりやすい」
後ろを取られ、ピアノ線を引き絞られている「黒の粛清」は。
突然、体を痙攣させ始めた。
「あははははっ!その通りよ!!バカにしては頭が回るじゃない。でも、能力がわかったからってなんなのよ。あたしの鋼鉄の体があ
んたのチンケな糸じゃ切断できないことには変わらないわ」
「それは」
「それに、こんな状況で力比べなんかしてる場合かしらねえ?」
確かにその通りだった。
燃え盛る業火の中、先に燃え尽きるのは生身の里沙のほうだ。
現に高熱によって空気すら焼け付き、服を焦がしはじめていた。
387 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 16:11:16.22 0
「裏切り者の末路に相応しい状況ね!このまま真っ黒に焼け死ね…」
だが、そこで「黒の粛清」の表情が変わる。
何物をも通さないはずの鋼の肌が。巻きつけられたピアノ線が。
ずぶり、ずぶりと沈み込み始める。
「うそ…なに、これ」
「高熱によって、鋼質化が制御できないんじゃないですか?全身を覆う鎧に、ムラができはじめてる。熱伝導率の違いによってね」
里沙の声が、地獄の亡者のような響きを持って、足から「黒の粛清」の全身に伝わってきた。
粛清人という立場の元、何十、何百の能力者を葬ってきた彼女。もちろんその中には炎を操る能力者もいたが。
このような大規模な火災が発生した場合、中心温度は1000℃にも達するという。そのような高温下に晒される経験は、なかった。
糸が首を通り切ってしまえば、待っている結果はただ一つ。
黒い死神が、初めて「死」というものを意識する。
粛清人となり、自ら命を取捨選択できる地位についてから久しく感じていなかったもの。
「くそっ、こんな…こんなもの!!」
必死に首に巻かれた糸を引きちぎろうとする「黒の粛清」。
しかし手ごたえはない。既に糸は彼女の内部にまで侵入しているのか。
「…終わりです。石川さん」
「ふざけるなぁあぁぁ!!!!!!」
恐怖。死。そして恐怖。
死を司るはずの、恐怖を相手に与え嬲り殺すはずの自分が、今その感情に押し流され呑み込まれてゆく。
これ以上の恐ろしいことがあるだろうか。
それは、決して揺らぐことのなかった粛清人の鉄の心とて例外ではなかった。
388 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 16:13:05.16 0
今だ!!
手に伝わる、「黒の粛清」の感情。
里沙はここぞとばかりに、精神干渉の触手を線を這わせて滑り込ませた。
これこそが、彼女の真の目的。
燃え上がる火を見て、本能的にそれを恐れない動物はいない。人間とて例外ではなく、「黒の粛清」が元は石川梨華という一人の人間
だった以上はその恐怖から逃れることはできない。それを里沙は利用した。
熱伝導率のくだりは当てずっぽう、首に沈み込んだように見えたのは、あらかじめ鋼線とともに巻きつけていたピアノ線が高温で溶け
始めていただけのこと。
だが、効果は覿面だった。
粛清人の心の奥に滑り込んだ精神の触手は、ありったけの力でその鋼鉄の心を強く押す。
ただ、それだけでよかった。里沙の後輩を思う心、そしてこれ以上の犠牲を増やしたくないという強い願いが。「黒の粛清」の鋼の要
塞をついに凌駕した。
そしてついに、粛清人の首に血の首飾りが咲き狂う。
鮮やかに美しく、そして悲しげに。
389 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 16:14:31.42 0
「おっと、そこまでだ」
だがそこで「黒の粛清」ではない誰かの声が聞こえてきた。
聞き覚えのある、そして忘れることのできない声。
「黒の粛清」を解放し、その人物と対峙するために立ち上がる里沙。
やっぱりだ。そこにあるのは懐かしさよりも、新たな危機。
燃え盛る炎に照らされ、その女は立っていた。
鋼鉄の脚の異名を持つ、金髪のライダースーツ。
「まさか梨華ちゃんを倒すなんてね。ずいぶん成長したじゃん、新垣」
「…吉澤さん」
里沙は絶望的なまなざしを、かつての師匠に向ける。
「鋼脚」は里沙があの頃いつも見ていた時のように、涼しげな笑みを浮かべていた。
390 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 16:16:19.07 O
里保全
391 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 17:03:11.48 O
>>380-389 「リゾナンターЯ(イア)」更新終了
殺人請負シリーズいつも楽しみにしています
392 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 17:16:13.53 0
>ゲロみたいなのは、あんたんとこの喫茶店のメニューで十分
www
精神干渉の能力故かガキさんの戦いは頭脳戦が多いですね
RとRとはまた違った緊張感のあるバトルでした
393 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 17:42:55.99 0
ガキさんが熱伝導率とか難しい言葉を知ってるわけない!と思ったらw
394 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 18:17:35.25 0
>>391 乙です
能力の力押しかと思いきや相手の裏をかく頭脳戦だったという構造がいいですな
絶望的な状況に陥ったガキさんが自力で活路を見出すのか
誰か助けに来るのか
他の戦いも含めて楽しみです
395 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 18:19:53.32 0
鈴木愛理最新写真集『共鳴』
え?
396 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 18:34:07.75 O
なんとw
397 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 19:10:43.88 0
新展開だなw
398 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 19:52:48.29 O
愛理はあまりリゾスレには馴染みがないけどどうしたものか
Яと■くらいか
399 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 20:43:40.04 0
残念ハズレ
400 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 21:36:11.49 0
愛理とリゾナント
401 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 21:44:42.70 0
657 名無し募集中。。。@転載禁止 2014/03/10(月) 17:40:27.43 0
フフフフそうやって永遠に私の幻術の中でさ迷い続けて下さい、鞘師さん
ってここはリゾスレか
658 名無し募集中。。。@転載禁止 2014/03/10(月) 17:43:26.90 0
ここにあのスレの住人が自分以外にもいたとはw
402 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 21:57:37.79 O
どこだ?w
403 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 22:19:19.03 0
ピンポンダッシュスレで見たような…?w
404 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 22:26:33.97 0
405 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 22:36:00.88 0
これから投下するものは人によっては不快な描写もあるかと思います
苦手な方はスルーお願い致します
ポテンシャル【potential】
「可能な」「潜在する」の意
@潜在する能力。
A[理]力の場を大局的に表現する量。粒子が力の場の中にあるとき、その位置エネルギーを位置の関数として表わしたもの。
せん‐ざい【潜在】
表面にあらわれず、ひそみ隠れていること⇔顕在。
‐いしき【潜在意識】
自覚されていない意識。二重人格などの場合の分離意識。
‐てき【潜在的】
外面にははっきりあらわれず、内面に存在するさま。「潜在的能力」
広辞苑第三版
―――――――
406 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 22:36:54.04 0
鼻をつく紫煙に咳払いをし、左足首に纏わりついた金属に触れた。
鎖の先端は壁と直結している。立ち上がり、一歩踏み出したところでその長さはいっぱいになる。
なんどか引っ張ってみるが金属特有の冷たい音がするだけでびくともしない。
壁を壊すほどの力もないうえに、どうも自分の能力が封鎖されていることも感じ取っていた。
舌打ちしたい気持ちを抑え、壁に背を預けて座り込む。
紫煙が全身に纏わりついてきた。
意味はないだろうと思いながらも右腕を大きく回し、空気の流れを変えてみる。
「煙草は嫌いですか?」
自分の数メートル先でパイプ椅子に座っていた男は、手にした文庫本を閉じてそう話しかけてきた。
右手の人差し指と中指に挟まれたそれはずいぶん短くなっていて、灰がぽたりと床に落ちる。
路上喫煙はマナー違反ですよ、なんて口に出せるほどの余裕はない。そもそも此処は路上でもない。
男の身に纏った空気は、自信が対峙してきた能力者の中でも、かなり「上」の部類だと直感した。
下手なことを口にすれば、即座にこの首が刎ねられることは容易に想像できる。
「喫煙者も肩身が狭くなりましたね。いまじゃ喫茶店に入るのにも苦労しますよ」
この男の不思議な点は、纏った空気は有数の能力者のそれであるのに、口数は多い方で、しかも柔らかい物腰であることだ。
油断させるためか、こちらを見くびっているのか、それともこれが男の天性なのか、計り知れない。
いずれにせよ、瞳の中が笑っていないこの男に恐怖心を煽られる。
407 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 22:38:10.36 0
「煙草を吸うと肺がんになると世の中の大半は信じてますけど、実際のところ、そこに明確な科学的根拠はないんですよ」
男はポケットから携帯灰皿を取り出し、そこに押し付けた。じりっという音のあと、煙が収束する。
なにも言わずに男を睨み付けると、彼は大袈裟に肩を竦め「あなたは興味ありませんか?」と訊ねた。
「自分の信じていたものが、実は全く違う様相を携えていることに」
携帯灰皿をしまうと、今度はコインを取り出した。
親指で弾き、ぱしっと手の平と甲で挟む。
「なんの、話ですか?」
震える声でそう訊ねると、「そのままの意味ですよ」と平然と返した。
コインが宙を舞う。すぐに手の甲へと収まる。弾ける。収まる。弾ける。収まる。弾ける。収まる。
弾ける。
落ちる。
コインが床を回る。くるくる。くるくる。
そのうち力をなくし、止まる。
コインは、止まる。空を仰いだのは、剣を携え馬に跨った勇者だ。
「たとえば、最も信頼している人物が、実はとんでもない怪物であったりする、とかね」
男はコインを拾い、再び高々と放り投げた。
金属音が室内に響き、また床に落ちる。
ころころと転がったコインは、壁に当たって止まる。
コインは、止まる。空を仰いだのは、翼を携えた、魔王だった。
408 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 22:38:28.20 0
思い出した!リゾスレ住民がピンポンスレに誤爆したのだw
409 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 22:39:32.68 0
「意味が、分かりません」
「すぐに分かります。いや、嫌でも分かることになりますよ、道重さん」
そう口にした男は立ち上がり、彼女―――道重さゆみへと近づいてきた。
思わず逃げようと一歩踏み出すが、すぐに左脚の鎖がそれを阻む。
じゃらりという冷たい金属音が響く。男とさゆみの距離は50センチもない。
「人は所詮、コインの表と裏のようなものなんです。あなたの中に、もうひとりのあなたがいるようにね」
男はそう言うと、右手でさゆみの髪を撫でた。
悪寒が全身を駆け巡り、咄嗟に逃げようとする。しかし男は左脚をさゆみの腰のあたりに押し付け、彼女の行動範囲を狭めた。
必死に体を捩るが、なぜか、自分の思うように動かない。恐怖で竦んでしまったのか、あまりにも動作が緩慢だった。
「考えたことはありませんか?彼女の中にも、もうひとりの彼女がいることを」
男はその手を鎖骨から首筋へと滑らせ、脇腹までなんどか往復するように撫でた。
冷たい手に触れられ、必死に息を殺す。
指が胸のあたりに触れた瞬間、さゆみは両腕を精一杯に伸ばした。が、即座に手首を掴まれ、左手一本で頭の上で拘束された。
背中と両腕から壁の冷気を感じる。相反するように、胸元と腹部そして顔面に男からの熱気を感じた。
喫煙者を差別する気は毛頭ないが、紫煙の香りに吐き気を催す。
「コインの表と裏、どちらが表なのか裏なのか、実際はだれにも分からない。そしてそれは、簡単にひっくり返るんですよ」
男は熱い息を吐きながら耳元でそう囁くが、その言葉はほとんどさゆみの耳には入らなかった。
ただ、毛虫が全身を這いずり回るような嫌悪感と必死に闘いながら自我を保つことしかさゆみにはできない。
ぎゅうと目を閉じ、口元から漏れそうになる声を堪え、震える膝に鞭を打って立ちつづける。
410 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 22:40:42.00 0
そんなさゆみの反応を楽しみながら、男はなんどもさゆみの頭から頬、首筋、そして体のラインをなぞっていく。
微かに胸元に指先が触れ、顔を背けて声を堪える。
男の唇が耳朶を咥えようかという刹那、ばん!と勢い良く扉が開いた。
さゆみははっと目を開く。
涙で滲んだ視界の向こう、息を荒くした彼女が目を見開き、即座に腰に手を回した。
「道重さんっ!!」
“水の刀”を手にした鞘師里保は一足でさゆみの元へと飛び込んできた。
男は里保に振り返りもせずに、さゆみから離れ、距離を取った。
脅威から逃れたさゆみはその場にしゃがみ込んだ。慌てて里保が支えるが、さゆみはもはや、人の力を借りても立つことはかなわなかった。
「だいじょうぶですか?!道重さん?道重さん?!」
「っ……あ、あ……さや、し……」
さゆみは、そこに里保がいることを感じつつも、彼女の顔を見ることはなかった。
ただ顔を下げ、彼女の腕にしがみつき、なんどもなんども「鞘師」と名を呼ぶしかできなかった。
後輩の手前、取り乱してはいけないと分かっていたが、見知らぬ男が体に触れたこと、しかも女性として凌辱されかけたことが、さゆみの心を掻き乱した。
里保には、自分が来る直前になにがあったかなど知る由もない。
しかし、目の前で震えるさゆみを見て、一気に怒りが沸点に達する。
411 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 22:41:16.84 0
「貴様ッ!!」
しがみつくさゆみの腕を振り解き、里保は右脚で踏み切った。
大きく刀を振り上げ、そのまま振り下ろす。男も即座に腰に下げた刀を抜き、噛み合った。
独特の色合いと刃文に、日本刀だと理解する。ただの日本刀なのか、能力が仕込まれた物なのかまでは分からない。
だが、同時に途方もない負の感情が湧き上がってきた。
「早かったですね、さすがです」
さゆみは短く息を吐きながら衣服の乱れを整えた。
顔を上げると、自分の視界の先で、里保と男が刀を合わせている。数メートル先のふたりの会話が聞こえる。
「道重さんになにをした…?」
「なにもしていませんよ、まだ、ね。あと数分遅かったら、私の太くて硬いもの、咥えてもらおうと思ってたんですけど」
その言葉に、さゆみの胃の中のものが逆流してくるのを感じた。
慌てて口をつぐんで吐瀉を堪えたが、喉の奥に物が閊える感覚が拭えない。
刀を噛み合わせていた里保が怒りのままに右脚を蹴り上げるが、男は一歩早く後退し、距離を取る。
さゆみは口元を拭いながら、ふたりの戦況を見つめた。
恐怖と嫌悪に支配されるが、目を逸らしてはいけない。彼女が此処に来たのも、私を助けるためなのだから。
そう理解したところで、妙な感覚に襲われた。
そもそも、さゆみはどうして此処に居るのだ?
412 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 22:42:10.75 0
思考の沼に入りかけたとき、里保が視界の先でその顔面を鷲掴みにされていた。
名前を呼ぶ間もなく、彼女はそのまま地面に叩きつけられた。
ごきぃっと鈍い衝撃音のあと、声にならない叫びが里保の口元から漏れた。
思わずさゆみも両手で口を覆う。明らかに、無事では済まないような音が部屋に響いた。
床に血だまりはできていない。頭部からの出血はないようだが、脳が揺れたことに違いはない。
「あれ。もう終わりですか?」
男は里保の顔から手を放し、彼女を見下ろした。
長い髪を床に泳がせ、両腕を投げ出したまま動かない。
まさか。と一瞬さゆみは息を呑む。
直後、腰が浮いたかと思うと、それをばねに両脚がぐんと男へと伸びてきた。
「おっと」と男は避け、すぐさま里保も立ち上がった。
「鞘師!」
恐怖で竦んでいたさゆみだが、そこで漸く彼女の名前を呼べた。
ぐあんぐあんと脳と視界が揺れる中、里保は眉間に深く皺を刻んで立ち上がる。
“水の刀”からは手を離さずに、奥歯を噛みしめて射抜くような視線を送りつける。
「イイ目ですね、鞘師さん。でももう少し、欲しいですね」
なにが「もう少し」なのか分からないまま、柄を握る手に血が零れた。
やはり出血したかと眉を顰めたが、それが額や頭部からではなく、鼻血だと気付き、そっと指先で拭った。
413 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 22:42:43.67 0
男はくすっと笑ったかと思うと、再び一足で懐に入ってくる。
自分の領域を荒らされるのは好きではない。しかし、この男の侵入を、分かっていても止められない。
刀を翻して防御するが、隙間を拭うようにして男に右手首と“水の刀”の柄を同時に掴まれる。
そのまま捻りあげられ、宙に躍り出てる格好になる。
回る視界を正しながら大きく右腕を振って斬りかかるが、空を切っただけで感触はなかった。
空中でバランスを保とうとすると、今度はその左足首を捕まえられた。
まずい、と体重を右脚に乗せて踵から振り下ろす。
男は慌てて脚を解放し、距離を取った。焦点の合わない視界を必死に立ち上がらせ、里保は両脚で自身を支える。
既に息が上がっている。際どい、と首に汗が滲んだ。
「ポテンシャルって言葉、御存知ですか?」
男はそう語りかけるが、当然のように里保は答えない。
代わりに左脚で地面を蹴り上げ、一足で男の間合いに入る。刀を引いて防御されるも、下から振り上げた“水の刀”が微かに男の鼻先を掠めかけた。
口笛を吹きながら「凄い能力ですね」と笑う男は、なぜか余裕を漂わせていた。
「ポテンシャル、可能性や潜在能力という意味合いが強いですよね」
話すのをやめる気はないのか、男は刀を構え直して言葉をかける。
里保は奥歯を噛みしめ、再び地面を蹴る。
414 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 22:43:20.01 0
常に冷静であれとなんども言われてきた。そんなことは百も承知だし、理解しているつもりだった。
しかし、いまの里保にそんな理屈は通用しない。
自分の大切な人が傷付けられようとしている状況を前にして、平静を保つ余裕なんてなかった。
ただ怒りに身を任せ、刀を振り翳す。
「だれの中にも等しく潜在しているチカラ、あなたの場合はそれが“水限定念動力(アクアキネシス)”、そうだと理解していませんか?」
里保の怒りの原因はそれだけではない。
先ほど激しく湧き上がった負の感情。それは憎しみや怒りを超えた先にあった、深い色を纏う絶望という名の感情だ。
さゆみを傷付けようとした相手は、圧倒的に里保よりも強い。先ほどから数度刀を触れ合わせただけで分かる。
里保は完全に、弄ばれている。男の口数が減らないことが良い証拠だ。
相手の有する能力がなんなのかまだ理解できないが、圧倒的な差が厳然として存在し、歯が立たないことは理解できる。
一応「戦闘ごっこ」をさせてもらえているが、男が本気を出せば、この場で四肢をもがれることも覚悟していた。
それなのに男は即座に里保を殺す気はないようにも見えた。こいつはいったい、なにを考えている?
「それはひとつの真理です。但し、正確に言えば、それだけではない」
刀を弾かれ、直後に腹部に鈍い痛みが走る。男の右脚をもろに喰らい、膝を折ることはなかったが数メートル後退した。
「鞘師!」とさゆみはまたその名を呼ぶ。
どうして私は、こうやって彼女の名前を呼ぶことしかできないのだろうと心が軋む。
あの日もそう。月から魔物が下りてきた夜、私は彼女の背中を見ていた。
本当は私が、彼女より前に立たなければいけないのに。
あの子はいつだって、私の前で私を護ってくれる。冷たい水の底に沈められそうになった、あの日だって―――
415 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 22:44:21.15 0
>>405-414 ひとまず以上になります
つづきは上手くいけばまた明日に
なんかいろいろすみません
416 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 22:48:58.19 0
途中割り込んでしまった…申し訳ないorz
久しぶりの絶望的な展開
目覚めてしまった負の感情がどうなっていくのか…続き待ってます
417 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 23:34:52.33 0
読ませますね
続きが読みたくなくてすごく読みたい…!w
そう感じさせられました
418 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/10(月) 23:40:03.09 0
∧,,,∧
. 〃ノノハヽ.
ハo´ 。`ル <がおー
419 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 00:01:33.86 O
更新乙です
戦闘描写が深いなあ
420 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 01:04:40.27 O
おやすみなさやし
421 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 03:23:09.01 0
>あの日もそう。月から魔物が下りてきた夜、私は彼女の背中を見ていた。
これは『your side』からの引用かな
>冷たい水の底に沈められそうになった、あの日だって
これもどこかで見たような記憶が
422 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 05:39:21.46 O
ほぜ
423 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 06:43:29.09 O
>>421 後半は『your side』にリゾナントした『名無しサユリホナント・救出編』かな
424 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 07:50:18.92 0
相変わらずの生き字引がいるな
425 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 08:12:03.71 0
ほんとだ!
書いた本人気付いてなかった!w
嬉しいです他に覚えててくれた人がいたことも
『your side』の作者さんですよねこの話も多分
426 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 09:39:44.96 O
また作品待ってますよw
427 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 12:26:21.62 O
ほ
428 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 13:27:46.21 0
ぜん
429 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 14:46:05.34 0
3年
430 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 15:00:45.67 0
3年か早いな
431 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 15:44:52.52 0
432 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 17:16:16.95 O
リンリンおめでとう
「どぅ〜っ!ほいっ!」
「え?だっ!?わっ!?毛虫!!」
「ヘッヘヘヘwww」
「待てやコノヤロー!」
騒がしく山道を駆け出す2人。
その様子を見て談笑しながら、続いて歩く春菜と亜佑美。
今日はこの4人で、少し遠出をしてハイキングにやってきたのだ。
“山ガール”なるものがトレンドになっている昨今、トレッキングウエアも多種多様でお洒落なものが出回り、それを着たいが為に登山を始める女性も少なくない。
そしてこの4人も、そういった女性達の一部である。
「うわ〜いい景色〜」
「ね、ここでお弁当にしよ?」
「賛成ー!」
今回は、穴場とされるコースの山にやってきた一同。
はしゃいでも、誰の迷惑にもならない。
自然に囲まれた中で、普段の緊張が続く日常から逃れ、開放的な気分になっていた。
「あゆみん…何それ?」
「え?敷き物って言ってたじゃん」
「ブルーシートwしかもでっかいしw」
「これじゃお花見じゃん、会社のw」
他の面々が可愛らしいレジャーシートを持ってくる中、普通のブルーシートを持参した亜佑美。
散々な言われように、次第にむくれていく。
「敷くだけじゃないからね!ほら!こうやってくるまればあったかいし!」
「あ、鳥だ」
「いや、聞いてよ」
「ホントだ、大きな鳥」
「ワシかな?タカかな?」
見ると、空中を飛び回るイヌワシの姿。
「すごーい、野生の初めて見た」
感嘆の声を上げていると、イヌワシの後を追うように何かが飛んできた。
「…何あれ?」
「飛行機…にしては小さいし。ラジコンの飛行機?」
しかしそれが近付くにつれ、その飛行物体の異様さが明らかになってきた。
人が、飛行機の翼を背負ったような形。ハングライダーなどの、レジャーでよくあるものではなく、まるでアニメや特撮に出てくるような強化服に見える。
そしてそれは網を放出し、追っていたイヌワシを捕まえたのだ。
「何あれ!?人!?それかロボット!?」
「ワシ捕まえてったよ!?」
「密猟だよ!密猟!」
「追っかけよう!こらしめてやる!」
4人は、後を追った。
【フライングスーツ】
軍事用に秘密裏に開発が進められている、人間が装着してジェット推進で自在に飛行することが可能な強化服。
これまでに製作された試作品が裏ルートで出回っており、種類によっては武器等の装備を搭載する事も可能。
実用化に向け様々な試験運用が行われており、その1つとして稀少動物等の密猟を行い資金を得ているとの証言も。
フライングスーツが飛び去った方向を辿っていた4人は、あるものを見つけた。
「ねぇ、なんか建物あるよ?」
「…山小屋?みたいだけど」
「地図にないよ、あれ」
「あいつのアジトだよ、きっと!」
確信し、接近を試みたその時。
ドン!!
音とともに、建物からフライングスーツが飛び出した。
そして急降下し、低空飛行で4人へと向かってきた。
「ヤバい!!見つかってた!!」
4人はひとまず逃げようと走り出した。しかし──
ドシュッ
「うっ!」
倒れ込む春菜。
麻酔銃を撃ち込まれたのだ。
「はるなん!」
「はるなん大丈夫!?」
それに気が付き、駆け寄ろうとするあとの3人だったが。
ドシュッ
ドシュッ
「あっ!」
「うぅっ…」
優樹にも、遥にも、麻酔が命中してしまった。
「みんな!」
“来ないで!”
「えっ…?」
“来ちゃダメ!”
“あゆみんだけでも逃げて!”
「でも…」
“逃げて、みんなに知らせて!”
「…うん、わかった!」
その時、こちら目掛けて網が放たれた。
亜佑美は素早く逃れて身を潜める。
3人はそのまま捕らえられ、連れ去られてしまった。
(みんなっ…!)
その様子を、今はただ見つめることしか亜佑美はできない。
アジトとみられる建物に3人が入っていったのを見届け、携帯の電波が届く場所まで走った。
リゾナントの仲間とも連絡が取れ、なるべく早く向かうとの言葉に、亜佑美は一安心していた。
しかし、やはり3人の事は気掛かりだ。
とりあえず、荷物を置きっぱなしにしている、弁当を食べようとしていた場所に向かった。
(大丈夫かな…ひどい目にあってないかな…)
思案しながら、山道を歩く。
すると、頭上を飛び交う小さな気配を感じた。
「ん?鳥?」
木々の中を、目を凝らす。
亜佑美の目は、1つの影を捉えた。
「ムササビ…!」
イヌワシと同様、野生のものを見るのは初めてだ。
貴重な自然と、それを脅かす人間の存在。
「大丈夫、怖くないよ。私達が守ってあげる」
まるでその言葉を理解したかのように、ムササビは留まっていた木からまた飛び始めた。
そして亜佑美も再び山道を歩き出し、目的地へ到着した。
「…っ!」
見晴らしの良いその場所。
そこを見張るように上空を旋回しているフライングスーツ。
明らかに目的は自分であると気付いた亜佑美は、迂闊に物陰からは出られない。
ただこのまま、仲間の到着を待つしかないのか…?
しばらく、息の詰まる時間が続いた。
十数分後、ようやくフライングスーツは建物の方向へと引き返していった。
「ふぅ…」
一息つき、ビニールシートにへたり込む亜佑美。
だがこの間にも、3人はどうしているのか、心配はつきない。
その時、空を横切る影が視界に入った。
一瞬身構えるが、それはイヌワシだった。
キャッキャッキャッキャーン キャッキャッキャッキャーン
イヌワシの名の通り、小犬のように甲高い声で鳴く。
その声は、どこかもの悲しげに聞こえる。
きっと、あの捕まったイヌワシとつがいなんだ。
心配なんだね。私も同じだよ。
すると、それまでゆっくり飛び回っていたイヌワシが、突然速攻で降下した。
再び飛び上がってきたその口元には、何かをくわえていた。
エサを見つけ、一発で仕留めたようだ。
心配事を抱えていても、生きる為に大事なことも忘れない。
自分も、できる限りの事をしなければ──
そういえば、あいつはなぜ引き返していったのだろう?
あきらめた?それだけとは思えないが…。
それに、動力はどうなっているのだろう?
あの、わりとスマートな装甲の中に多くの動力や燃料を持てるとも思えない。
おそらくの、弱点は目星がついた。
ただ、空を飛ぶ相手にどうやって…?
飛ぶ…!。
亜佑美が思い出したのは、山道で出会ったムササビ。
翼を持たないのに、空中を舞うことができる。
そういえば、忍○ま乱○郎とか、忍者にムササビの術ってあったよね…。
「…これだ!」
自分が今敷いている、ブルーシート。
おぼろげな記憶を頼りに、ムササビの術の装備をブルーシートでこしらえる。
ドドドドド…
「来た!」
自然の静寂を打ち破る飛行音。
あいつがまたやってきた。
「みんな…待ってて!」
相手も亜佑美の姿を認識したらしく、まっすぐこちらへ向かってくる。
チャンスは一度きり。
ブルーシートを握る手に力を込め、亜佑美は地を蹴り、宙に舞った。
予想外の行動に、フライングスーツは一瞬怯んだ素振りを見せた。
しかし、本来翼を持たぬ人間は空中では自在に身動きはとれない。絶好の的である。
麻酔銃を装備した右腕の、狙いを亜佑美に定めた。
“今だっ!!”
亜佑美は、高速移動で空中を駆けた──
「おりゃああああああああああ!!!!!!」
ドガッ!!!!
亜佑美の体当たりで動力部を損傷したフライングスーツは、コントロールを失い落下してゆく。
「やった…!」
亜佑美は無事地上に降り立った。
そこに丁度、駆け付けた仲間達が合流した。
「あ、亜佑美ちゃん!」
「何?そのブルーシート」
「ブルーシートじゃないですよ、これはムササビですよ」
「へっ?」
会話もそこそこに、まだ残されている3人や鳥たちを助けに、亜佑美達はアジトの建物へと向かっていった。
442 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 18:36:05.11 0
>>433-441 「絆(きづな)」
当初これを思いついた時はだーいし生誕話にするつもりでしたが、
この日にした方がいいような気がしたので生誕話は別のものを上げさせて頂きました
なお、イヌワシの英名はGolden Eagleです
443 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 19:35:25.69 0
ブルーシートのムササビカッケーw
444 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 20:32:27.65 0
>>442 ブルーシートを使うのがだーいしらしいと言うかなんというかw
445 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 20:39:56.36 0
>>442 更新乙
最後の台詞をどや顔で言ってる石田さんが想像つくね
446 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 21:47:31.34 O
おつ!
447 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 22:32:12.57 O
10期話もいいもんですな
448 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 22:35:27.21 0
>>415つづき投下します
さゆみの思考などよそに、里保は刀の柄を握る力を込めただけで彼女の声に答えない。それどころか、視線さえも、渡さなかった。
聞こえていないのか、返す余裕がないのか、それさえもいまの状況からは計り知れない。
「理解できませんか?あなたの中に眠っているポテンシャルというものを」
そうして男が指を弾いた瞬間、里保の視界からその姿が消えた。
見えなかったのではない。文字通り「消えた」のだ。
弾かれたように振り返る。既に男は里保の背後に回り込み、刀を振り翳していた。
避ける余裕はない。そのまま“水の刀”を胸の前に構え、振り下ろされた日本刀を受け止めた。
インパクトのあと、大きく後退する。
膝を曲げて必死に堪えるが、あまりにも大きな衝撃を受け止めきれない。
衝撃―――それはまさに「衝撃」だった。
いま、奴は、なにをした?
「そんな顔をするな。焦りが目に見えて無様ですよ」
男は数メートル先で刀を肩に乗せ、軽く足でステップを刻んでいた。
里保は必死に思考を巡らせる。
いま、里保の目の前から男が一瞬消えた。物理的に人が消えるなどあり得ない。だが、それが男の能力だとすれば合点がいく。
「vanish」か。あるいは消えたと見せかけて「teleportation」の類なのか。
いずれにせよ、発動の瞬間を見失えば、次こそ斬られると覚悟する。
柄を持つ手が震えていた。恐れるな、臆すなとなんども言い聞かせて必死に呼吸を整える。
449 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 22:36:49.24 0
「鞘師……」
掠れた声でさゆみは名を呼ぶ。彼女は男と正対したまま、動かない。
これまでの闘いを見て、さゆみはひとつの違和感を覚えていた。
里保の動きが妙なのだ。
確かに男が強いことはさゆみにだって理解できる。里保が振り回されていることも、遊ばれていることも分かる。
だが、それにしては里保の動きに異変がある。ほんの少しだけ、いつもより遅いのだ。
彼女の振るう“水の刀”がいちども男の体を斬れないなど、あり得ない。
それほどまでに男が迅いのならまだ理解できる。実際迅いのだが、里保が追えないほどの速度ではない。
いざと云うとき、斬りつけるその一瞬、里保の動きが微かに「遅れている」。
いまも、そう。
男が背後に回ったとき、里保の視線は空を切っていた。確かに迅い動きだったが、彼女は明らかにその姿を見失い、あっさりと背中を取られた。
「まさか……」
さゆみが此処に拉致された理由をもういちど思い出す。
今日、さゆみはひとりで喫茶「リゾナント」にいた。夕方、子どもたちの声が徐々に小さくなり、夕陽がゆっくりと影を落としたあの時間帯。
カランと「リゾナント」の扉が開いた。まさにそれが、逢魔が時に現れた魔物だった。
いらっしゃいませと声を掛けると、この季節に似合う黒いトレンチコートを纏った男は、迷わずカウンターへ歩き、メニューを手にした。
いつものようにさゆみがグラスを置くと、男はさゆみの手に触れた。
「え?」と声を出そうとした直後、さゆみの記憶が途絶えた。
次に目を開けたとき、彼女は此処に居た。
左足に鎖を巻かれ、壁を背にした冷たい空間にただひとり置き去りにされていた。
あの男は大股に脚を開いてパイプ椅子に座り、文庫本を片手に煙草を吹かしていた。
なにが起きたのかを理解するより先に、恐怖が心を支配した。
450 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 22:37:29.35 0
そしていま、さゆみの中に、ひとつの仮説が浮かんだ。
「ところで鞘師さん、それがあなたの本気ですか?」
刀をぶらつかせながら、男が里保に問いかけた。
その言葉に切っ先がぴくっと撥ねた。動揺を悟られたことは目に見えているが、それでも里保は応えない。
「確かに15歳にしてよくやってると思いますよ。戦闘能力はいちばん高いし、状況判断もできる。
切り込み役として現在のリゾナンターを牽引している。だけど、逆に言えば、それがあなたの限界ですか?」
「どういう、意味です…?」
里保は初めて、男の問いかけに答えた。
はっとさゆみは里保の目を見る。怒りと、憎しみと、絶望とに彩られた負の瞳が、男を射抜いている。
呑まれている、と思った。あの冷静な里保が、この状況に呑み込まれている。
その一因が自分にあることくらい理解している。
相手にどんな能力があったにせよ、男に拉致され、鎖で繋がれ、そしてあんな瞬間を目の前で見せてしまったのだ。
未遂とはいえ、15歳の女の子の前で晒して良い姿ではなかった。あまりにも無様であまりにも惨めだ。
しかし、だからこそ里保には止まってほしい。
お願い。お願いだから、待って。待って鞘師―――
「あなたはまだ、こちらの能力を理解しきれていない」
「なに……」
「つまり、こういうことですよ」
男はそう言うと、右手の中指と親指を弾いた。
ぱちんという小気味良い音のすぐあとだった。さゆみの呼吸が、止まった。
451 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 22:38:56.82 0
「――――――!」
異変に即座に気付いた里保は男から斬られるかもしれないことも厭わずに駆け出した。
「道重さんっ!」とさゆみに駆け寄り、その肩を抱く。
「道重さん!どうしたんですか!?道重さん!?」
まるで子どものようにさゆみを揺さぶるが、さゆみの呼吸は戻ってこない。
なにかがつっかえているかのように、喉から肺へと酸素が入り込まない。
肺が止まったわけではない。だが、その器官としての役割を果たそうとはしない。
喉を掻き毟り、床を叩き、汗を滲ませてもがく。酸素が、呼吸が、息ができない。
「道重さん!道重さんしっかり!!」
里保の声が徐々に遠くなる。
汗が床に落ち、頭が真っ白になっていく。
落ち着け・落ち着けとなんども自分に言い聞かせる。人間の呼吸は2分程度なら止まっても死なないと本で読んだことがある。
だいじょうぶ、さゆみだって2分なら止められるはず。無様に、取り乱しちゃだめ。そうしないと、また、この子が……
「道重さん!しっかりして下さい!道重さん!」
里保の瞳から、怒りが消え、代わりに哀しみが現れる。絶望の色が濃くなって、いまにも光を失いそうだった。
だめ。だいじょうぶ。だいじょうぶだから、鞘師。だから、だからそんな目をしないで。
そう言いたいのに声が出ない。息が止まった状態ではなにも伝えられない。
辛苦の痛みに耐え、歯を食いしばって顔を上げた。男は相変わらず笑ったままこちらを見ていた。
452 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 22:40:01.55 0
その手が微かに動き、再び指を弾いた瞬間、忘れていたように肺が通常の動きを取り戻した。
「はあっ!」
直後、むせ返るような咳を吐く。滞っていた酸素たちが全身を巡り始める。
脳が一瞬割れかえるような痛みを覚えるが、堪えた。
「道重さん!!」
「あ………っ、かはっ……」
また、先ほどと同じように声が枯れてしまった。
心配ないよと彼女に手を伸ばす。里保は泣きそうな目でさゆみの右手を握った。震える手から痛みや切なさが共鳴してくる。
だめ。だめだよ鞘師。お願い、そんな顔しないで。
「理解、しましたか?」
心配ないよ、そう伝える前に男が里保に言葉を投げた。
ああ、やはりそういうことかとさゆみは理解した。この男の能力は―――
「“時間操作(タイム・トリック)”……いや、もっと限定的な、“時間遅延(タイム・ディレイ)”か」
「御明察。ただもう少し早く気付いてほし……」
男の声は最後まで音になることはなかった。
風圧が眼前に襲い掛かり、瞬時に過ぎ去っていった。
ぷつっと皮膚が裂けた音がしたあと、左頬に斜めに傷跡が生まれる。そこを綺麗になぞるように血の線が浮かんだ。
できあがったひとつの筋を親指でなぞり、「ほう…」と血液を指に擦り付けた。
453 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 22:40:32.98 0
「イイ、ですね」
これまで掠めることはあっても、皮膚が避けるほどの衝撃を受けたことはなかった。
いわば初めての打撃にもかかわらず、男は冷静に笑うだけだった。
親指をべろりと舐め上げると、左足で地面を蹴る。
いつの間にか男の懐に飛び込んでいた里保もまた同時に跳躍する。
刀が中空で噛み合い、衝撃で弾かれる。間髪入れずに二刀目を翳す。一瞬、切っ先が男の左肩を捉える。肉に入り込みかける刀身を右脚で蹴り上げられる。
再び距離ができる。里保は地面に落ちるのを待つことなく次の一手に入った。
「なにっ…?」
さゆみも男も、ほぼ同時にその言葉を口にした。
里保は自らの“水の刀”を二分していた。平たく言えば「二刀流」というものだが、それをさゆみが目にするのは、初めてだった。
着地と同時に腰を大きく捻り、半ば背中を見せるように構え、円盤投げのように右手の中にあった短刀を投げつけた。
男は舌打ちし、刀を正対させる。
“水の短刀”は日本刀に裂かれ、文字通り水となって弾けた。水が目に入り、男の視界が遮られた。
怯みながらも男は指を鳴らす。構うことなく数歩先に里保が飛び込み、下から斜めへと斬り上げた。
大きく体を反らして切っ先を避けられる。ひとつの機会を逃したことに対し、里保はあからさまに舌打ちをした。
さゆみは呼吸を整えながら、あと数ミリで男の顔はまっぷたふつになっていたことを理解した。
先ほどより里保のスピードが上がっている。
あの男の能力を理解したからか、それとも発動の瞬間を見抜いたからかは分からない。
ただ、彼女への妙な違和感がまだ拭いされていない。
先ほど感じた速度のことではなく、もっと本質的な「なにか」、その「なにか」がおかしい。
454 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 22:41:21.65 0
「さっきよりもイイ目になりましたね」
男はトレンチコートの内ポケットに手を伸ばし、黒い鉄の塊を手にした。
それが拳銃だと気付いた里保はすかさず物陰に身を顰める。
一発、銃声が響き、壁にめり込む。
厄介だなと再び舌打ちした。
「良いんですか、そんな場所に隠れても。まるで袋の鼠ですよ」
男は右手に日本刀、左手に拳銃を携え一歩ずつ里保に近づき言葉を吐いた。
先ほどの呼吸困難を経験し、さゆみは、この男の能力が時間停止ではなく遅延だと気付いた。
恐らく、さゆみの肺機能を遅めたことにより酸素を全身に巡らせる速度が著しく損なわれ、呼吸が止まったように錯覚した。
発動は恐らく、指を鳴らしたその瞬間だ。
いまこの場で指を鳴らされ、里保が“時間遅延(タイム・ディレィ)”に囚われれば、それこそ彼女は蜂の巣になってしまう。
「自分が目視できる範囲で発動し、その対象は自分の手がスキャンした場所」
物陰からの声に、男の脚が止まる。
「さっき水が弾けて目を細めたとき、指を鳴らしても“時間遅延(タイム・ディレィ)”は発動されなかった。
つまり、指を鳴らすだけでは発動条件には満たされない。
あなたのスピードが上がったと錯覚したのは、私の両目が光を需要する速度が遅くなったから。
打撃が当たらないのは、あなたに触れられた右手がインパクトの瞬間に遅れているから。
道重さんの肺機能を遅らせることができたのは、あなたがその汚い手で道重さんの体…上半身に触れたから」
455 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 22:42:05.13 0
演説を終えると、里保は物陰からすっと左手だけを伸ばした。
発動させてみろと言わんばかりにひらひらと挑発されたにもかかわらず、男は満足そうに称賛する。
「予想以上ですねこれは」とわざわざ銃をしまい、手を叩いた。
あの一瞬でそこまで見抜いたのかとさゆみもまた感嘆に近い感情を抱く。
「ですが、あなたに発動できなくても、先ほどのようにこちらの彼女に発動すれば良いだけのこと」
男はそうしてさゆみに視線を向ける。狙われていると理解するが、恐怖で体が竦んでなにもできない。
もっとも、脚に錠を掛けられた以上、この場から逃げることなど不可能なのだが。
「その前に、その手を刈るまでだ」
里保は口元の血を拭い、べっとりと汚れた手のひらで地面を叩いた。
すると、手の平の血がぬるりと動き出し、まるで細長い蛇のように意思を持ち、男の足元へと走っていった。
「これは……!」
“血の蛇”は男の左足首に絡みつくと、獲物を締め付けるようにとぐろを巻いた。
そのまま蛇は里保の元へと戻ろうと走り出す。男は強烈な痛みに足をすくわれ大きく仰け反った。
一瞬の隙を逃すことなく物陰から飛び出し、振り上げる。
虚を突かれた男は即座にコートの中の拳銃を取り出す。
銃声が響き、肩を貫かれる。構わずに“水の刀”を振り下ろす。里保の刀身が綺麗に男の右手を捉えた。
日本刀の柄と里保の刀に挟まれ身動きできなくなった指が吹っ飛ぶ。
ぼたぼたっという重苦しい音のあと、男の右手人差し指と中指、そして親指の第一関節が血の海に浮かんだ。
456 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 22:42:35.39 0
「っ……!」
支えを失った日本刀が落ちた。
男の右手からは指が3本失われ、辛うじて薬指が半分千切れかかった状態でぶら下がり、小指だけが綺麗に直立していた。
左手の中には相変わらず小型の銃が握られているが、痛みからかその銃口は揺れている。
短く息を吐きながら「迅いじゃないですか」と男は片頬を上げた。
「それがあなたの本気ですか?」
「関係ない。さっさと此処から消えろ」
冷徹で黒色のその言葉は、そのまま彼女の心を映しているようにも思えた。
ぴりぴりと肌に感じていた違和の正体は、里保の有した激情なのだろうかとさゆみは思う。
激情の要因はただの憤怒ではない。
もっと深い、根幹にある、憎しみや哀しみが滲み出ているのが目に見える。
―――あなたの中に、もうひとりのあなたがいるようにね
真っ黒な感情を剥き出しにする里保を目に映すと、なぜか、先ほど男が放った言葉が頭をよぎった。
相変わらず床に落ちたコインは真っ直ぐにさゆみを見つめている。
男の手がさゆみを撫で回したあのときの言葉は、いったいなにを意味していたのだろう。
457 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 22:44:07.31 0
458 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 23:30:13.75 0
wktk!
459 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 23:38:25.95 O
おお
続きが!
460 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/11(火) 23:39:44.77 0
>>457 こちらの肺も機能が麻痺したような感覚です
なんて息詰まるやりとり…
さゆ×りほを密かに推している身としてもたまりません…!
実はどちらの話も私でして…だからすごく嬉しいですありがとうございます
461 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 00:01:39.73 0
>>457 更新乙です
強くなるりほりほですがその分危うい?
次回も楽しみです
462 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 00:24:17.92 0
最近投稿がまた増えてきた
春休みだからか?
463 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 01:23:18.27 0
おやさゆみん
464 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 01:37:25.25 0
さくらっきょおめでとう
465 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 06:02:58.28 O
夜明け
466 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 08:09:04.82 0
467 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 08:23:12.57 O
確かに学生休みの時期になると投稿増える気がする
468 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 08:50:20.90 0
リゾスレ始まったの6年くらい前だからその当時中高生だった人たちが今の作者さん…?
…ほんとか?w
作品たくさんに見えても実は2人くらいで回してるのかもしれんけどw
469 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 11:24:14.54 O
ほぜ!
470 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 11:25:18.54 0
若さ溢れるホゼナンター
471 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 12:57:59.37 O
若さゆえー
472 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 14:01:46.27 O
2人ってそんなわけないやろw
473 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 14:52:36.81 O
少なくとも比較的常時書いてる作者さんは5人くらいはいる
ソースは俺
474 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 14:54:58.40 0
そうだよな
自分以外におそらく2人はいるようだから少なくとも3人はいるぜ!
475 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 15:17:29.84 0
ただ思わぬ作品が同一作者さんってことは実際ありそう
476 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 15:23:49.33 O
サユリホナントと請負事務所とか意外だったけど
皆気付いてた?
477 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 16:09:25.83 0
よほど特徴的な文体じゃない限りなかなか難しいね
478 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 16:49:45.26 O
Яさんとみずπまんも同一人物とは思わなかった
479 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 17:43:29.79 0
悪ふざけ系は大体Яの人じゃないのかなw
480 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 18:11:01.22 0
シパパ
481 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 19:03:43.03 O
ホゼゼ
482 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 19:55:49.30 0
オダダ
483 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 20:52:06.34 O
シジミ
「フランソワーズちゃ〜ん!よかったわね〜!はい、これはお礼ざぁます」
「あ、ありがとうございます」
町の、とある豪邸。
その玄関先に、さくらは居た。
「1、2…3万円か。家の大きさにしてはまあまあかな」
受け取った封筒の中身を確認。
迷い犬を見つけ、届けたお礼である。
さくらはこうやって時々、小遣い稼ぎをしている。
見つけさえすれば、あとは能力を使って捕まえるのは簡単。ちょろいものである。
豪邸の門を出て、帰途につこうとしたその時。
「す、すいません」
「はい?」
「あの、道を教えてもらえませんか?く、区役所ってどっちですか?」
見知らぬ、若い男に声をかけられた。
背が高くやや陰気な男だが、さくらは全く臆することなく応対する。
「う〜ん、ここからだとちょっと分かりにくいんですよね…。私時間ありますし、近くまで案内しますよ」
「は、はいお願いします。路地とか、どんどん近道通っていいですから」
「…?あ、はい」
男の言葉通り、近道になる路地も通っていく。
そのような道で、他に人通りがなくなった、その時。
「おとなしくしろ!声を出すな!」
突然男は、さくらの首にナイフを突き付けた。
「…え?」
「誘拐だ!お前と引き換えに、身代金を貰う」
「誘拐…ですか?」
「そうだよ!さあ、お前ん家に電話しな」
「私の家ですか…?」
「焦れったい奴だな!電話しろって言ってんだろ!」
「はい…」
男の言う通り、自宅に電話をかけるさくら。
「よこせ!」
携帯を奪い取る男。
しかし、コール音が鳴り続けるだけで一向に誰も出ない。
「なんだよ、誰もいねーのかよ」
「この時間はいつもいませんよ」
「はぁ!?先に言えよ!」
「だって聞かなかったじゃないですか」
言葉に詰まる男。
「ぐっ…、じゃあ、仕事場でもなんでも誰かいる所にかけろよ!」
「なんでもいいんですか?じゃあ…」
プルルルルル プルルルルル
「はい、喫茶リゾナントです」
「おい、お前んとこの… おいお前名前何てんだ」
「さくらです」
「もしもーし?」
「オホン、お前んとこのさくらちゃんを預かっている。無事に返してほしければ、明日までに1000万円用意しろ」
「はぁ?いたずら電話はやめて下さい」
「いたずらじゃねーよ、おいお前代われ」
「はい、もしもし?」
「…もしもし?本当に小田ちゃん?」
「あ、道重さんですか?私、誘拐されました」
「いやいやいや、ちょっと待って、冗談だよね?」
「冗談じゃないですよ、本当です」
「え?今どこにいるの?」
「ここですか?え〜っと、区役所から…」
「バカヤロ! とにかく!そういう事だからな!詳しい事はまた電話する!」
ガチャン プー プー プー
「どうしたんですか?」
「小田ちゃんが、誘拐されたっていうんだけど…」
「ええっ!?」
「ただ、本人に緊張感が全然ないんだよね」
「なんでですかw」
「まあ、小田ちゃんならすぐ逃げたりできるから大丈夫でしょ」
「そうですよね」
事実、リゾナンター達の多くは自らの能力をもってすれば、大抵の拘束から逃れる事は容易い。
「…お前なんでそんな緊張感ないんだよ」
「お兄さんが、本当は悪い人じゃないって分かるからですよ」
「は、はぁ!?ふざけんなよ!?」
男は再び、さくらの首元にナイフを突き付けた。
「お兄さんは、それ以上は、それで本当に刺したりとかはしないですよ。分かってます」
「うるさい!だ、黙れ!」
「それに──」
「──ほら、私はこういうことができるんです」
男が持っていたナイフを、いつの間にかさくらが奪い取り、逆に男に向かって突き付けていた。
「…は、はぁ?なんで…?お前、何なんだ…?ただの金持ちん家の子供じゃ…」
「え?金持ちの家?」
「○○町の家だよ、俺はお前がそこから出てきたのを見て…」
「ああ、あのお家はワンちゃんを届けただけですよ」
「ワンちゃん…?」
力が抜けた男は、その場に座りこんだ。
さくらはナイフを男に返そうとする。男は受け取ろうとするも、地面に落としてしまう。
「何やってんだ俺…。やっぱり何やってもダメだ…」
「どうして1000万円必要なんですか?」
「元々借金があったんだけどさ…、その上うっかり保証人になっちまってさ…」
「ん?こんなところで何してるんだ君達」
2人のもとに、自転車に乗った警官が現れ、声を掛けてきた。
もうダメだ…。男が覚悟したその時。
「あ、小銭を落としちゃって拾ってたんです。ね?」
「え?あ、ああ、うん。そうなんです」
警官はやや怪訝な顔をしながらもその場を去っていった。
「なんで…俺を庇ったんだ?俺はお前を誘拐しようとしたんだぞ?」
「しようとしただけで、まだ誘拐してないじゃないですか。私は道を教えてるだけですから。さぁ、区役所へ行きましょう」
「もう、いいんだ、区役所は…」
「えっ?」
「すまなかった、怖い思いをさせて!」
男はそう言い、駆け出そうとしたその時。
ドシン!!
男は出会い頭に人とぶつかり、尻餅をついて転んだ。
「す、すみません!」
「あ〜!痛たたたた!これは腕折れたぜ!?おう兄ちゃん、どうしてくれんだ?」
ぶつかった相手は、絵に描いたようなチンピラ達だった。
胸ぐらを掴まれ、凄まれる男。
「ひっ、ひいっ…」
「しっかり治療費払ってもらわねぇとな!! ん?何だあのガキは」
「あ、あいつは…」
男は恐怖で、うまく舌が回らない。しかし──
「──!?」
次の瞬間、いつの間にか男はチンピラから逃れてさくらに連れられて走っていた。
「なっ!?あ、あれいつの間に?クソっ、待ちやがれ!!」
チンピラ達も2人を追いかけて走り出す。
「な、なんで俺を…?お前だけ逃げてればよかっただろ…」
「私に出来る事であれば、困ってる人を助けるのも私達の使命ですから」
「使命…?」
「あっ!さくらちゃん!」
「あ!生田さん!工藤さんも!」
「道重さんに言われて様子見に来たっちゃけど…」
「待ちやがれ〜!!」
そこに、チンピラ達も追い付いてきた。
「お前らだな!?小田ちゃんを誘拐したのは!」
「はっ!?ゆ、誘拐?」
「とぼけても無駄やけんね!」
「いや、それは俺…」
「覚悟しろ!」
「たっぷりお礼させてもらうとよ!」
顔を見合わせる男とさくら。
「まあ、いっか」
さくらはそう言うと、衣梨奈と遥に加勢していった。
誤解されたままの、哀れチンピラ。
結果は言うまでもない。
「これ、借金の足しにはならないでしょうけど、よかったらこれで何か美味しいものでも食べて下さい」
「え?それって君が貰った…」
「いいんです、別に。得意だからいつでも出来ますし」
迷い犬を届けたお礼の金を、男に渡すさくら。
「い、いいのか、本当に?」
「ええ。あ、そうそう。区役所はあとはそこの桜並木をまっすぐ行けば着きますから」
「だから、区役所はもういいんだって…。君の名前、さくらだっけ?」
「はい」
「いい名前だな。君と会えて良かった、ありがとう!」
男は、桜並木を歩いて行った。
「小田ちゃん、あれ誰?」
「ちょっと道を教えてあげたんです」
───明日輝くために息も切らさず走り抜けた
過去を 未来を 自分を 遠回りしてた昨日を越えて
桜の花、舞い上がる道を───
492 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 21:30:36.85 0
>>484-491 「桜の花、舞い上がる道を」
ストーリーは分かる人には分かる元ネタw
小田ちゃんのネタスレが立つと「犯罪に巻き込まれてそう」と言われる不名誉なイメージから昇華しましたw
とにかく小田ちゃんおめ
493 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 21:43:33.32 O
乙です
あとでゆっくり読みますよ
494 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 22:20:22.04 0
元ネタは分からないですけどおもしろかったです
495 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 22:44:58.13 O
じんわりと温かくなる
春の訪れが待ち遠しくなる素敵な作品ありがとう
496 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 23:28:01.23 0
面白かったです
さくらちゃんがそれっぽかった
497 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 23:56:47.75 0
>>457つづき投下します
「私の手を刈るのではなかったのですか。手ではなく、指先、しかも3本だけしか落とせていませんよ」
「指でも手でも大差はない。言いたいことは、それだけか」
男の言葉を受け、改めて刀を構え直す。
さゆみにも、そして里保自身にも勝算があった。
男の能力発動条件である指鳴らしだが、少なくとも右手は防げている。能力を行使するには左手に持った銃を持ち直すか落とすかしかない。
互いの距離は遠くはない。左手を動かした瞬間、里保が一足で懐に飛び込めば、殺せはしなくとも致命傷は与えられる。
里保の左肩が撃たれているとはいえ、明らかに有利なのは、こちらだ。
「……残念ですよ、その程度が本気なんて」
男はゆっくりと銃を構え直した。
銃口は真っ直ぐに里保の眉間を捉えている。しかし、彼女の速さなら避けられないことはない。
「憎しみを身に纏って迅くなったは良いですけど、所詮はそのレベルなんですね」
男の口から放たれる言葉は、到底追い詰められた人間のそれとは思えなかった。
確信めいた余裕が何処から立ち現れるのかさゆみには理解できない。
まだなにか隠し玉があるのだろうか。だが、右手がほぼ機能しない中で里保が負けるなど、それこそ想像できない。
里保は応じることなく男を睨み返し、柄に込める力を強めた。
男の指先が引き鉄にかかる。ゆっくりと力が入っていき、微かな金属音が空気に触れた瞬間、里保は左足で地面を蹴り上げた。
498 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 23:57:47.70 0
なにが起きたのか、里保も、さゆみも、分からなかった。
一足で懐に飛び込むはずだった。
だが、里保は未だにその場に居たまま、一歩も動けないでいる。
左足は地面から数センチ浮いた場所で止まり、右手は刀を握りしめたまま、ほんの少しも機能しない。
「鞘師!」
里保は焦りを目に映しながらも、必死に腕と脚を動かそうとする。
が、自分の意思に反し、まるで石像のようにそれらはびくともしない。
正確に言えば、微かに前に進もうと動いては居るが、あまりにも遅い亀の足は、紛れもなく“時間遅延(タイム・ディレィ)”の効力だった。
「まず発動条件の指摘からしましょうか」
男は銃口を下げると、出来の悪い生徒に諭すように語り出した。
「水が弾けて目を細めたときには発動されなかった。その着眼点は良かったのですが、あなたの意識はやはり指と音から離れていなかった」
「なに……?」
「指はフェイク。本当は目の奥にある視神経からの伝達が能力の発動条件なんですよ」
その言葉に、里保は目を見開いた。
判断を見誤ったと痛感すると同時に、嫌な汗が背中に落ちる。
その判断ミスは、とてつもなく、取り返しのつかないものではないかと。
「発動を止めるには目を刳り貫くしかない。指なんかどうでも良いんです」
だらしなく指がぶら下がった男の右手を一瞥すると、絶え間なく垂れ流されていた血液が止まった。
失血が遅くなっていると理解したとき、男の言葉が嘘ではないことを同時に理解した。
499 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/12(水) 23:59:09.11 0
「次に発動範囲。確かに範囲は、私が目視でき、手がスキャンした場所ですが、それは有機物に限りません。
実際、あなたの“水の刀”はもう、遅延されているでしょう?」
里保はハッとして手中にある“水の刀”の形状を変えようとするが、能力が発揮されないことに気付いた。
形状は徐々に変わりつつあるが、自分の手足の動き同様に、あまりにも遅すぎる。これでは遠距離から砲撃することもできない。
「そして遅延の速度。それに考えが及ばなかったのは意外ですね。まさか通常の1秒が10秒程度に遅くなる、なんて思っていたわけじゃないでしょう?」
男は左手で軽く引き鉄を引いた。
ばん!という重い音のあと、里保の右膝が射抜かれる。苦痛に顔を歪めるが悲鳴を奥歯で噛み殺した。
さゆみはもう、そんな彼女の名前を呼ぶことすら敵わなかった。
胸が張り裂けそうになった。どうして、どうしてこんなことになっているのだろうと後悔がせめぎ合う。
「10分の1・100分の1と刻めますが、いま、あなたの右手と左足の時間は、約1万分の1秒の速度で動いています」
その言葉に、さゆみも目を見開き、里保は息を呑んだ。
咄嗟の計算が出来なくとも、1分が60秒であり、100分でも6000秒だと理解できれば、いかに鈍足であるかは分かる。
いま能力をかけられた里保は、手足が1秒で動かせる範囲の動作に、2時間46分40秒もかかることになる。
「以上3点の見過ごし。お分かりいただけましたか」
「貴様ッ……!」
「そこで黙って見ておけば良い。呪うなら、自分の無力さを呪って下さい、鞘師さん」
銃をコートにしまうと、「ではつづきをシましょうか、道重さん」とさゆみに向き直った。
冷笑という言葉があまりにも似合う目の前の存在に、全身の毛が逆立つ。
脱兎の如くもがくが、当然のように冷たい鎖がさゆみの動きを阻害する。半径1メートルから、動けない。
500 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 00:01:44.81 0
里保の中を焦燥が駆け巡る。手足があまりにも鈍重で、骨が悲鳴を上げる。
だめだ。いけない。早く。道重さん。逃げて!
「道重さんっ!」
右手と左脚を“遅延”された里保が叫ぶ。しかしその声はさゆみには届かない。
男は全身を舐め回すように眺めると、「スタイル良いですね」と笑った。
さゆみは悪寒と恐怖に抗いながら必死に男を睨み付ける。そうしない限り、自我が崩壊しそうだった。
「さっきは触っただけですからね、せめてキスくらいさせてくれませんか」
「舌を、噛み切られたかったら、いつでもどうぞ」
凛とした佇まいでそう返したいのだが、言葉尻が震え、あまりにも情けなくなる。
男の背中の向こう、数メートル先で里保が必死にもがいているのが見える。せめて里保が打開策を見つけるまで時間を引き延ばしたい。
だが、それがなんの解決にもならないことはさゆみがいちばん理解していた。
能力封鎖されているとはいえ、そもそも自分がこの鎖に繋がれている以上、あり得る未来は限られているのだから。
「あなたの目的はなんなの?」
肩や鎖骨に触れられながら、さゆみは初めて男に問うた。
「あなたを犯すことのその先に意味がある、と言えば分かりますか?」
引き延ばしにしては杜撰な質問だったが、意外にも男はその問いに答えた。
その先とはどういうことだとさゆみは眉間に皺を刻む。
一瞬「結果」という生々しい考えが浮かぶが、即座に排除した。そんな理由ならば、さっさと能力を使って済ませれば良いだけのことだ。
501 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 00:02:33.70 0
「地球上に水がどれほどあるか、ご存知ですか?」
急に理科の授業が始まったような発言にさゆみはまた眉を顰めた。
ころころ変わる話題で攪乱させようとしているのか、と思考を巡らせ始めたとき、男は言葉を紡いだ。
「約14億立方キロメートル。想像もつかないような数字ですが、地球の表面の約3分の2は水です。
お分かりですか?鞘師里保の“水限定念動力(アクアキネシス)”を本気で解放すれば、地球上の生物を一瞬で死に絶えさせることも可能なんですよ」
一気に吐き出された言葉に、さゆみも、そして里保も目を見開いた。
地球上の生物を?一瞬で死に絶えさせる?
「先の震災での最大の被害は津波でした。
人々が油断していたのもありますが、あの怪物は一瞬のうちに街を呑み込みました。彼女はそれを操る術を持っている」
その言葉の意味を理解するまでの時間はあまりにも必要だった。
「鞘師里保はその気になれば、この世界を滅ぼすことすらできる。いわば、神にも悪魔にもなれる存在なんですよ」
鞘師が、この世界を滅ぼす悪魔?
確かに里保の能力は、身近な水を刀のように形状化したり、砲弾のように固めて撃ち抜いたりするものだ。
先ほど初めて目にした「二刀流」や「血の蛇」も、その能力の延長線上にあるものだとは理解している。
だけど、その能力範囲は考えたこともなかった。
鞘師里保のチカラ―――“水限定念動力(アクアキネシス)”―――いったい、どれほどの量の水を、どれほどの威力で操作できるのだ?
「たとえばアメリカに雨が降ったとしましょうか。その雨が刀や針のようになったとしたらどうです?」
男の言葉を、想像する。
万物を潤すはずの天からの恵みが、一瞬にして凶器に変わる。覆いを斬り裂いたそれは、大地に血の雨を降らせる。
それはまさに、911の再来。世界地図を書き換える狂気だ。
502 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 00:03:12.82 0
自分たちの能力は国家権力を超えるほどの危うさも有している。分かっているはずだったのに、忘れてしまいそうになる。
ダークネスとの殺戮により、死と隣り合わせな日常を過ごしているにもかかわらず。
死ぬことよりももっと大きく、計り知れないほどに広がる“闇”の存在に。
「そんなこと、あの子は、しない」
光を呑み込もうと大口を開けた闇に、抗いを突き立てる。それが愚直な蟻のひと噛みでも、さゆみに口を閉ざすことはできない。
彼女が無意味に能力を解放して、信念を曲げて殺戮に走ることなどあり得ない。そんなことくらい、さゆみがいちばん知っている。
「空腹は最高の調味料、と聞いたことはありませんか?」
再び、男の口から語られる言葉の趣が変わった。
今度はなにを言おうとしているのか、やはり思考を巡らせるより先に男が話す。
「人を最も強くするものは、正義感でも、まして希望でもない。絶望ですよ」
「絶望……?」
さゆみの反復に満足そうに頷いてつづけた。
「それは人生最高のエッセンスです。先の震災で人々が生き延びた術は、深淵に立ち、真の絶望を見たからです。
一切の光のない闇に孤独に立つ自分を見て、人は立ち上がるのですよ」
さゆみが着ている喫茶「リゾナント」の制服であり淡い水色のワイシャツに男の手がかかる。
思わず両手で跳ねのけようとするが、先ほどと同様に左手一本で頭上に固定された。
遅延された両手は、そのまま壁に張り付いたように動かなくなる。
まさしく「絶望」がさゆみに襲い掛かってきた。どう足掻けば、この不利を逆転できる?どうもがけば、最悪の結末から外れられる?
503 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 00:04:05.35 0
「だから私は見てみたい。正義の味方を気取る彼女ではなく、絶望というエッセンスを得た彼女を」
真っ直ぐにさゆみを見つめながら言葉を突き立てる。
男の向こうがわ、“時間遅延(タイム・ディレィ)”を打ち砕こうとする里保は必死になってさゆみの名前を叫んでいた。
それは、道に迷った幼子が、母親を求めて探す姿とよく似ていた。
「破壊と絶望を振り翳し、世界を統一するための、狂気を」
シャツに手がかかる。
抵抗の術はなにひとつない。
だめだ、動けない。このままじゃ。私……私―――
「彼女の中に眠るポテンシャルを。潜在能力を解放した、鞘師里保を」
シャツのボタンが弾け飛び、胸元まで強引に開かれる。
里保が叫ぶ。さゆみは覚悟と絶望を感じながら唇を噛む。
さゆみが下に着ていたグレーのインナーに男は大袈裟に肩を竦め、滑稽なピエロのように顔を歪ませた。
「このインナーは、あなたにはいささか不格好ですね」
「寒いからね……冬の水作業はキツいの。洗い物、あなたもしてみる?」
「では温め合いましょうか。挿れて腰を振るだけで良い汗がかけますよ」
虚勢を張って言葉を並べるが、男はなんの興味も示さずにそれを蹴り倒していく。
インナーに手がかかり、力が込もるのを感じる。
「やめろおお!!」と里保は力の限り叫び、右膝からの出血を針に変えて男へと飛ばす。
男はその動作を予期していたかのように、振り返りざまに“血の針”を刀で斬り落とした。
カランと意識を失くした針に里保は絶念する。唯一の、たったひとつの突破口になりうるチャンスを逃した。
対照的に男は笑い、そのままさゆみに向き直ると、一気にインナーを引きちぎった。
504 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 00:04:47.13 0
「いやっ!!」
ぎゅうと目をつぶって叫んだ。
情けないと思ったが、我慢できなかった。
家族以外、異性に見せたことのない、己の姿。
シャツを引きちぎられ、上半身に下着一枚の姿は、あまりにも頼りなく、あまりにも惨めで、あまりにも憐れだ。
「道重さん!!くそっ!動け!!動いてよ!!」
髪を振り乱し、突進する獣の如く右脚でなんども地面を蹴り上げ、渾身の力で前進しようとする。
だが、遅延された右手と左脚は空間に張り付いたまま、一向に自由にならない。
いっそ手足を斬り落とそうにも、“水の刀”自身も同じく遅延されているために役に立たない。
里保は必死に頭を働かせ、遅延を解除する術を見つけようとするが、焦りと怒りで思考もままならない。
その間にも、さゆみの真っ白な体を男の左手が這っていく。
やめろ、やめろ。頼むから、やめてくれ。
声の限り叫び、男を罵り、手足をばたつかせ、それでも現状は変わらない。
里保の目の前で、尊敬してやまないあの人が、傷付けられていく。そんなもの見たくない。
助けなければ。護らなければ。私が、道重さんを。
―――信じとーよ、さゆも、絵里も。そして、鞘師のことも
―――約束する。絶対、鞘師はだいじょうぶだから
―――めっちゃドヤ顔じゃん、鞘師
505 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 00:05:36.59 0
なにが、なにがだいじょうぶなんだ。
田中さんに信じていると言われて。道重さんにだいじょうぶと言われて。
自惚れていたわけじゃない。
あのときだって道重さんを助けることができた。だから、だから今日だって。今回だって絶対に道重さんを―――
「やめてっ!!やだっ!!」
男の左手が、さゆみの下着を鷲掴みにした。彼女の悲鳴の色が濃くなっていく。
じわじわと広がる絶望が、真の闇となって里保を呑み込んでいく。
さゆみが男の毒牙にかかろうとしている現実が、里保の自我を奈落へと叩き落とした。
護らなきゃ。護らなきゃ。私が、道重さんを。護るんだ。道重さんと、あの日、約束したんだ。
道重さんは、道重さんは、私の傍に居てくれるって―――!
「道重さぁん!!」
里保の奥底からなにかが湧き上がり、すべてを呑み込んだ。
大きく心臓が撥ねたその瞬間、遅延された右手と左脚から鋭い光が溢れた。
男は肩越しにその光を感じ、落ちていた日本刀を素早く拾い、光と正対させた。
直後、光と音が激しく集散した。
爆発だと気付いたときには、既に地鳴りがさゆみに襲いかかってきた。耳を塞ぐことは叶わず、顔を逸らし、衝撃を回避する。
しかし、衝撃は彼女の全身を包み込み、背後の壁を破壊した。
ガラガラと音を立てて崩れ落ち、さゆみもまた爆風に押され、地べたに叩きつけられた。
506 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 00:06:58.16 0
>>497-505 ひとまず以上になります
>>460 密かにではなく大々的に推していきましょうw
>>492 小田ちゃんおめでとう!
彼女の名前に相応しい優しいお話素敵です
つづきは上手くいけばまた明日に
507 :
名無し募集中。。。@転載禁止@転載禁止:2014/03/13(木) 00:51:07.75 0
>>506 いいねいいね、面白くなってきた。
作者さんの色合いがたくさんあって最近読んでると楽しいよ。
読み手になって随分になっちゃったけどね。
508 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 01:06:08.92 0
>たとえばアメリカに雨が降ったとしましょうか。その雨が刀や針のようになったとしたらどうです?
これは盲点だった
凄い着眼点だな作者さん
509 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 02:47:52.65 O
おやすみなさやし
510 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 06:13:58.90 0
リゾナント
511 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 08:37:34.26 0
>>506 >鞘師里保はその気になれば、この世界を滅ぼすことすらできる。
ここには衝撃を受けました
思いもしてなかったけど言われてみればどうして気付かなかったんだろうと
他の方も言われていますが本当にすごい着眼点だと思います
昨日の放送でさゆりほが手を取り合って楽しそうにしているところを見ながらこの話を思い出していましたw
512 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 10:52:58.26 O
おはよう
513 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 12:30:36.68 0
こんにちぱ
514 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 12:56:25.47 0
>>506 さゆりほ!さゆりほ!
しっかしこの能力者強すぎですね
りほりほは勝てるんだろうか……
515 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 15:01:01.89 0
ノハ´’v’ソ<480ほどスレを上へ飛ばします☆
516 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 15:56:05.87 0
ああっふっふぅ
517 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 16:20:46.68 0
>>511 広域型への進化って実は登場したときからすでにあった設定なんだよね
■世界では国家レベルで水源をすべて奪うみたいなことが示唆されてる
518 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 16:27:44.89 O
広域化は下手すると最強能力になりかねんからね
ただアクアキネシスの広域化よりマインドデストロイの広域化のほうがしんどそうだけど
519 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 17:28:50.09 0
atwikiが危険が危ない状態じゃなければ該当話を引用する所なんだが
520 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 18:07:34.17 O
ポックポーン
521 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 18:52:32.94 0
広域ナマタ波攻撃
522 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 19:44:58.65 O
はー
523 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 19:54:51.80 O
まー
524 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 20:43:10.92 O
ちゃん
525 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 21:39:04.46 0
なー
526 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 22:41:39.61 0
ビシィ!!
Σ从´’v’リ9m<上へどーん!!
527 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 23:05:41.08 0
>>506つづき投下します
しばしの沈黙のあと、耳の奥がジンジンと痛むのを堪えてゆっくりと目を開く。
先ほどまでいた場所に黒煙が立ち上っている。床には所々炎が立ち込め、瓦礫が散らばっていた。
いつの間にか両手の遅延から解放されていた。痛むこめかみを押さえ、目を細くする。
「なに、が……」
「次元震、ですよ」
さゆみはハッと顔を上げる。男は日本刀をぶんと振り、刀身についた瓦礫や土埃を払っていた。
相変わらず右手から血が緩慢に滴り落ち、左腕に擦り傷、頬にいくつかの傷を新たにつくっている。
いまの爆発を受けても大きく負傷していないのは、やはりその能力ゆえだろうかとさゆみは思う。
「時間の歪みを正せるのは能力者だけ。無理に戻そうとすると、時間軸が大きく揺らぎ、爆発するんです」
男の言葉を噛み砕く。
次元震。時間軸が揺らいだ結果の爆発。その原因なんて、目に見えている。
「彼女が強引に遅延を正常に戻そうとした結果、でしょうね。まあもう生きてはいないでしょうけど」
「そん、な……」
さゆみは打ちひしがれそうになりながらも、黒煙の中を見る。
先ほどの爆発―――次元震の影響は凄まじく、部屋を派手に吹き飛ばし、見る影もなくなっていた。
528 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 23:06:31.37 0
天井は崩れ落ち、下弦の月の下、夜の闇が広がっている。
四方を囲んでいた壁はほとんど地べたに斃れ込み、わずかに柱が数本、痩せこけて立っているだけだ。
さゆみを拘束していた足枷も、衝撃によって粉々に砕け散っていた。
いまなら逃げることも可能だが、そんなことを思う余裕はない。鼻をつく妙な匂い、人肉の焼けた匂いに、男の言葉が現実味を帯びてくる。
鞘師…鞘師、鞘師……鞘師!!
「さや……!」
彼女の名を呼びかけたときだった。
さゆみも、そして男も、その黒煙の中に人影を見つけた。
男は口笛交じりに「凄いですね」と笑ったが、そこに立つ彼女を見て、瞳の色を変えた。
さゆみはもういちど彼女の名前を呼ぼうとしたが、思わず、躊躇った。
背後で火柱が立ったあと、彼女は一歩踏み出した。
遅延されていたはずの右手と左脚は真っ赤に染まっている。
次元震の影響か、纏っていた服はちぎれ、隙間から見える肌はいずれも火傷を負っている。
だが、さゆみを躊躇わせた理由は、そのどれでもなかった。
彼女の瞳が、真紅に変わっていたのだ。
―鞘師……?
血走っているわけでもない。彼女はまるでカラーコンタクトを入れたかのように深い赤の瞳を有していた。
自慢の長くて艶のある黒髪も、その毛先数センチが赤く染まっていた。
男は左手の中の刀を構え、「お目覚めですか?」と一歩踏み出した。
529 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 23:07:43.68 0
瞬間、彼女の姿が視界から消えた。
さゆみも男も息を呑む。
慌てて男が振り返るが、背後を取られたわけでもない。
「何処を見ている?」
その声に導かれ天井を仰ぐ。
彼女は天高い位置に座標を取ると、そのまま重力の法則に従いながら、手中の“水の刀”を迷わずに男へと振り下ろした。
即座に刀で応戦しようとするが一歩遅く、男はその右手首を撥ね落とされた。
悲鳴を上げる間もなく後退するが、彼女は間髪入れずに攻撃をつづけた。
流れるように刀を振り翳す彼女に対し、男もまた応戦する。
刃が噛み合い、交錯する。
ギシィっと悲鳴を上げた刀を振り払い、距離をつくる。
「やっと逢えましたね……サヤシさん」
彼女―――鞘師里保は、無表情のまま男を見つめた。
つい先刻までそこにあった黒い感情は何処へ集散したのか、いまの彼女には、あまりにも色がない。
対照的に、手首を落とされたにもかかわらず男は楽しそうに笑う。
「なるほど……そう来ましたか」
男はにたっと見下しながら、遅延されていた手足を見た。
さゆみも連られてそこを見る。
530 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 23:08:33.43 0
「―――!」
彼女の右手首と左足首は、なかった。
そこには真っ赤な血で固められた擬似的な手足が存在していた。
先ほどの次元震で骨が砕けたのか、筋肉や神経が爛れたのかは分からない。
だが、失った手足に変わり、溢れ出した大量の血を固め、手足の代わりとして繋ぎとめていた。
自らの血であるために抗原抗体反応も起きない。
神経を通っていないがために完全に自由な動きを取ることはできないが、
“水の刀”―――いや、“血の刀”の柄はその形状を変え、里保の“血の右手”に絡みつき、多少の振動ではずれないよう固定されていた。
同様に、左足首もしっかりと脛に巻きつき、バランスを取っている。
「全く……驚かされますね」
不可抗力かもしれないが、遅延されていた箇所を断つことで里保は自由に動くことが可能になった。
手中の“水の刀”が“血の刀”に変わったのも、同じ理由だろう。
男は心からの感嘆を述べると、左手に日本刀を持ちかえた。
斬り落とされた右手首からの血がゆっくりと落ちる中、バランスを取るかのように軽く腰の位置に下げた。
構えが、変わった。
「あれは……」
何処かで見たことのある構えはその手の中にあるものが日本刀でなければ、紛れもなくフェンシングのそれだった。
レイピアを片手に持ち、素早く突きを繰り出す西洋剣術。
単に右手を落とされたがために構えを変えたのか、それともこちらが男の本領なのかは分からない。
いずれにせよ、さゆみの意識は、男が素早く一歩踏み出し、里保の右頬を掠めたところで強引に引き戻された。
531 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 23:09:23.78 0
テンポ良く突きをつづける男を丁寧に払いつつも、里保は徐々に後退する。
“時間遅延(タイム・ディレイ)”が発動されているかどうか定かではないが、男は、迅い。
里保は刀身を丁寧に払うと、刀を滑らせ、下から掬い上げた。
鋭い音のあと、男の日本刀が高々と宙に舞う。
落ちてくるまでの隙に懐へ飛び込む。
だが、狙っていたかのように男は拳銃を取り出す。
スライドさせることなく、引き鉄を引いた。
連続で2発。撃ち込まれる。
1発が脛を、もう1発が首元を掠める。それでも怯むことなく振り下ろす。
“血の刀”の切っ先が眉間を微かに斬り裂く。
とろっと溢れた血が男の目に入った。視界が霞み、すかさず拭う。
「遅い」
その言葉の直後、里保は宙から落ちてきた日本刀を左手に持つと、両手の刀を振り下ろした。
想定になかった攻撃が男を襲う。
両肩口から刀剣が入り、深々と斬り裂かれた。
「ぐっ……!」
男は里保の左手首を掴むと、強引に捻った。
が、先ほどとは違い、彼女は宙に舞うどころかびくともしない。
間髪入れずに右脚で腹部を蹴り上げると、里保は日本刀からその手を離して後退する。
カランと日本刀が落ち、距離ができたのも束の間、再び里保が間合いに入ろうとする。
舌打ちし、男は目を見開く。
532 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 23:10:16.95 0
“時間遅延(タイム・ディレィ)”だと気付いたさゆみは息を呑む。
が、彼女は男が能力を発動させたその瞬間、再び構え直した“血の刀”で「空間」を斬り裂いた。
「なにっ?!」
果たしてその能力は行使されなかった。
まるで“水の刀”が男の能力そのものを斬り裂いたかのように、遅延が起きない。
虚を突かれた男の懐に飛び込み、その両太腿を一文字に斬りつける。
痛みに思わず膝をついた男と対照的に、彼女はしっかり両脚を地に着けて立ち、男を見下ろした。
抜け落ちた天井から下弦の月が顔を出す。冷たい夜風が里保の赤髪を撫で去っていった。
「斬撃による“能力払拭”なんて……さすがに反則じゃありませんか?」
「…………」
「……イイですね。実にイイですよ、鞘師さん」
答えない里保に対し、負け惜しみのように、心からの感嘆のように呟いた男は再び引き金に力を込める。
間髪入れずに、引く。乾いた音のあと、床がなんどかめり込む。
里保は銃弾を受けることなくさらりと躱し、“血の右手”から、少しの血を拝借し、小さな弾のように固めた。
そのまま左手で銃の形をつくったかと思うと、お返しとばかりに“血の弾”が連射され、男に襲いかかっていく。
まるでマシンガンのようなそれを回避しつつも、遂には男の右肘にいくつかの楔が撃ち込まれた。
「くっ…」と男が呻いたのも束の間、里保は静かに、呟いた。
「喰い尽くせ―――」
その言葉の直後、“血の弾”は連続して肘から肩口へと、男の体内を奔り出した。
533 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 23:10:47.36 0
「うあ゛あ゛あああ!!」
右腕の筋肉、骨、血管、それらを悉く破壊しながら“血の弾”が肩へと上っていく。
内部からの激痛が濁流の如く襲いかかり、男はそれを止められない。
なんども“時間遅延(タイム・ディレィ)”を行使しようとするが、全く発動しない。
激痛のあまり、所構わず発砲する。
銃弾が床や柱にめり込み、最後の1発がさゆみの足元近くに突き刺さる。
がきんという鈍い音がなんどかつづき、弾切れだと理解する。
足元が覚束ない。腕を抑えても、なにをしても、腕の中を這いずり回る“血の弾”の動きは止められない。
滑稽に踊る男を見ながら、里保はすっと左手を広げ空に向けた。
下弦の月が雲に呑まれ始める。ゆっくりと大気が動いていくのが分かった。
ハッとしてさゆみは空を仰ぐ。月の周辺に黒雲が集まり始めていた。
今日は綺麗な月影が望まれると天気予報は伝えていた。あんな黒雲、先ほどまで存在していなかったはずだ。
「まさか……」
さゆみの耳に遠雷が届いた
確実に、雷雲が発生している。
月を覆い隠している雲に手を翳し、里保はなにかを詠唱し始めた。
雷・雲・雨・水。
その条件は、揃った。
「轟き落ちろ―――」
遠隔操作の如く、里保が上から下へ手刀を斬った。
直後、天から鋭いなにかが男の右肩のみを目がけて滝のように流れ落ち、見事にぶち当たって削ぎ落とされた。
534 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 23:11:22.33 0
「あ゛あ゛あ゛ああああ!!」
ごきごきと骨が悲鳴を上げて砕け散り、ぶちぃっと神経が千切れる音がする。
さゆみは口元を押さえ胃の中の逆流を防ぐ。喉元に上がった酸味を堪える。
ぼとりと落ちた右腕は血の海に浮かび、肩口から何本かの神経と筋肉がだらりとぶら下がる。
地面には男の血液どころではない大量の水が溢れ散っている。なにが起きたのか、さゆみの脳は処理しきれない。
はぁ・はぁと短く息を吐く男を、冷たく里保は見下ろしていた。
「“雨の刃(レイニー・ソード)”ですか……雨雲を呼び寄せ、大気中に浮かぶ雨粒を凝固し、斬撃する……」
男の言葉に、さゆみは深くしわを刻む。
大気を動かし、雨雲を呼ぶことが可能なのか?
だがしかし、さゆみの目の前で起きていることはもはや現実以外の何物でもない。
これを受け入れない限り、前には進めない。
処理を諦めることなく、能を必死に働かせる。
雨が1時間に10ミリ降った場合、地面一面に水たまりをつくるほどの水が発生するのだと聞いたことがある。
暴風雨や台風の際、雨量は1時間に100ミリにのぼり、息苦しさをともなう圧迫感があるという。
100ミリという数字は、重圧に換算すると、0.1トンほどになる。
その力をなんらかの形で凝縮し、一点に集中させることができたとしたら。
いま、目の前で起こっている現実がその凝縮の形だとしたら―――?
先ほどまでの闘いが嘘のように防戦一方となった男と攻勢に転じた里保を交互に見つめる。
背筋が凍るほどの思考を、それでもさゆみは止めない。
535 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 23:11:58.85 0
「それが、あなたの、ポテンシャル、ですか」
乾いた笑みを浮かべた男に対し、答える必要がないと言わんばかりに睨み付ける。
周辺に溢れた雨水を呼び寄せ、再び里保は“水の刀”を形成した。
そして“血の左脚”を見つめると、詠唱のあと、先ほどと同様に血を拝借し、固め終えた。
「絞めあげろ―――」
それが合図のように脚から走り出た血は一直線に男の首元へ伸びた。
左手で日本刀を拾い上げて再び応戦しようとするが、刀身をするりと躱し、男の首元へと巻きつき、勢いそのままに男を柱へと押し付けた。
「ぐはっ…!」
“血の縄”が男をぎりぎりと締め上げていく。拘束を解こうともがくも、手に触れようとした瞬間に縄は液体に戻る。
戻ったかと思えば再び縄のように形状化し、男は翻弄され、成す術もなく締め上げられる。
そのうち力なく刀を落とし、半ば諦めたように、「っ……す、さまじい……ですね」と笑った。
「狂気が、よく…似合います」
「…………」
「それ、が、あなたの……本性、ですよ」
男の言葉が気に食わなかったのか、里保は首の拘束を緩め、直後に床に叩きつけた。
脳が激しく揺れ、一瞬意識が飛びそうになる。いっそ気絶できた方が楽なのだろうと直感する。
気絶させないようにしているのだとしたら、まさに鬼畜の所業だと男は片頬を上げた。
里保は地面に溢れ返った雨水を中空で固めると、躊躇いもなく、左手首と両脚に楔を打ち付けた。
もはや大声を出すことは叶わない男は空っぽの咳を吐き出した。
536 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 23:12:58.22 0
「……虫みたい」
里保の口から出てきた言葉にさゆみは声を失くした。
言葉そのものの意味も、彼女がそこに携えた笑顔も。これまで里保が見せたことのない姿がさゆみの瞳に映し出されていた。
里保は本来、感情の起伏が激しい人ではない。
普通の15歳が持つ感情と同じく、楽しければ笑うし、哀しければ泣く。
しかし、波を立て、激情に任せて闘うような人間ではないとさゆみは知っている。
そんな彼女がいま見せる姿は、憤怒とも、怨嗟とも、哀愁とも、憎悪とも、絶望ともかけ離れていた。
里保はいま、愉しんでいる。
標本のように男を磔にして、ぴくぴくと動く筋肉を見て、息も絶え絶えになる姿を見て、愉しんでいる。
―――考えたことはありませんか?彼女の中にも、もうひとりの彼女がいることを
―――私は見てみたい。潜在能力を解放した、鞘師里保を
男の言葉が壊れたレコードのようになんども巡る。
床に落ちたコインの裏、翼の魔王はさゆみを真っ直ぐに射抜いている。
これが、これが彼の話す、里保の本気、ポテンシャルを解放した狂気だというのか?
信じがたい現実がさゆみの目の前で繰り広げられる。引きちぎられたシャツの胸元を隠すこともなく、ただ里保を真っ直ぐに見つめていた。
真紅の瞳と赤みがかった髪を携えた彼女は、男の胸に右脚を乗せてせせら笑う。
嘘でしょう?とその目を疑っても、事実は変わることなく厳然と佇んでいる。
いったい里保になにが起こっているのか、理解しようとする暇すら、現実は易々とは与えてくれなかった。
537 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 23:15:36.83 O
>>527-536 ひとまず以上になります
昨日の放送はまた今度ゆっくり見ますw
つづきは上手くいけばまた明日に
538 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/13(木) 23:51:40.80 0
>>537 おもしろい!…と言っていいのか分かりませんがw
とにかく今はそれだけを口にして続きを楽しみに待ちます
凄いもの書くなあ
539 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 00:06:17.05 O
絶句
久しぶりの強烈な読後感だな
confortAtion以来か
540 :
名無し募集中。。。@転載禁止@転載禁止:2014/03/14(金) 00:41:01.72 0
>>537 「ごがくゆう」を思い出す作風ですね。
なかなかりほりほのキレる所とか見ないから新鮮だなあ。
541 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 00:52:24.81 0
>>537 更新乙です
文章に凄みやちょうどいい引きがあってぐいぐい迫ってきますね
ここからどうエンディングにおさめるのか……
542 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 00:56:56.79 0
なんかちょっとキリトさんっぽい強引な能力インフレを感じないではないが・・・
エンディングへ向けてということならば仕方が無いのかな
543 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 01:17:01.49 0
キリトさんて誰?
544 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 01:54:38.64 0
ここ最近のアニメ最強のメアリースー
545 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 03:34:55.38 0
∧,,,∧
. 〃ノノハヽ.
ハo´ 。`ル <超狼戦士シパパライザー見参!
546 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 04:57:14.30 O
「汁播播の刃(シパパソード)」の能力
547 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 07:20:14.03 0
┐┌
548 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 08:02:16.87 0
从・ゥ・从<転送戦隊ノーパンオムライサー見参!
549 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 09:58:42.07 0
どの作者さんか分かった気がする
550 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 10:12:10.79 0
∬ *бωб*) <水晶戦隊ローズクォーツ見参!
551 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 11:49:24.61 O
変態もとい戦隊がいっぱいだなw
552 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 11:50:04.14 0
从*´◇`)<重量戦隊パイレーツ!
553 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 13:14:32.37 0
変態
554 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 14:40:03.67 0
川c ’∀’)<超瓜戦隊スイカップァー!見参
555 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 15:33:24.92 O
だーいしは胡瓜戦隊ノーカップァーの間違いだろ
556 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 16:49:09.30 0
从´’v’リ<スレあげ戦隊サクラッキョ!
557 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 17:17:04.25 0
<泥猫戦隊の間違いヤシ
558 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 17:21:01.28 0
ノリ*´ー´リ←蜆目戦隊サヤッシー
559 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 17:24:51.68 0
語尾にヤシなどつけて鞘師を装ってもバレバレだぞハルちゃん
560 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 17:56:49.84 0
从´’v’リ人(^〈_^*リ
ハo´ 。`ル
561 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 18:50:49.65 0
∧,,,∧
. 〃ノノハヽ.
ハo´ 。`ル <ぐぬぬ
562 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 19:53:57.34 O
よいしょ
563 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 20:57:19.50 0
どっこらせ
564 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 22:05:32.90 O
ほっ
565 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 22:18:59.59 0
川* ^_〉^)<なしじるぷしゃー
566 :
名無し募集中。。。@転載禁止@転載禁止:2014/03/14(金) 22:27:27.08 0
>>565 さっきまでの流れでそれ言われるとなんか卑猥なの
567 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/14(金) 23:11:12.30 O
リーダー早く寝てください
568 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 00:00:23.16 0
川*’ー’)<おやすみやよー
569 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 00:19:12.22 0
>>380-389 の続きです
●
闇の摩天楼を落下してゆくれいな。
それを狙い済ますかのように、黒い二本の槍。
「黒翼の悪魔」が自らの翼を変化させたものだ。
「チィッ!!」
襲い掛かる黒槍を腕の両刃で弾き返すも、今度は槍の持ち主が闇より黒い日本刀を携えて飛んできた。刀を下段に構え、斜めに切り上げよ
うと空気を唸らせる。
「いいよ、田中れいな。でも、まだ足りない。もっと、黒血の力を使うんだよ」
「黙れ!あんたなんかに指図されん!!」
刃と刃の噛みあう音。
右腕を構えて悪魔の太刀筋を遮ったれいな。
そこへまたしても翼が形を変えた槍が刺し狙う。片方の突きは左腕で受け流したものの、ノーマークとなったもう片方の切っ先がれいなの
腿を突き刺した。
脳に弾ける、痛みの信号。
けれどその伝達のままに声を上げている暇はない。
突き刺されたまま落下してゆくのを利用して、先に落下し続けている大きなコンクリートの塊に両腕の黒刃を食い込ませる。
衝撃により、突き刺さっていた槍は「黒翼の悪魔」ごとれいなより先に落ちていった。
だが、それで終わりではない。
この空間は、まやかしの空間。はるか下方に見える地面ですら、本当に地面なのかすら定かではない。つまり、落下点までに決着をつけた
ところでそこが本当の落下点なのか、わからないということだった。
570 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 00:20:26.73 0
それでもやるしかない。
空間は虚構のものでも。降り注ぐ雨や瓦礫や鉄骨、そしてこの突き刺された腿の傷口は真実だ。どくどくと流れてゆく黒い血が、雨と混ざ
り複雑な模様を描いてゆく。その模様と呼応するような天を一瞬仰ぎ見、それかられいなは「黒翼の悪魔」を倒すため、下方へと勢いをつ
けて落下する。
「うおおおおおっ!!!!」
喉が裂けんばかりの大声を上げ、悪魔目がけ落ちてゆくれいな。
両腕を交差させ、ぎりぎりまで力を引き絞る。十字の形に標的を斬る。そんな強い意志を携え。
れいなを上に見つつ、「黒翼の悪魔」が【蓮華】を上段に構えて迎え撃つ。
再び、強烈な鍔迫り合い。
黒血によって生成された物質同士が擦れる衝撃が、互いの腕を伝わった。
落下しながら互いに上になり、下になりと体勢を目まぐるしく変えてゆく二人。
「じゃあ、じゃああんたは!何のためにここまで来たと!何のために戦うと!!」
「こんな状況でごとーにそんなこと聞く?」
「うっさい、さっきあんたも聞いたっちゃろ!!」
日々、ダークネスと戦ってきたれいな。
中には自らの戦う目的を御丁寧にも教えてくれる輩もいた。
能力者たちによる、理想社会の建設。
最終的には、皆そこに行き着いた。
弱者を虐げて何が理想社会だ、と当然のことながられいなは憤る。
ただ。目の前の女には、そのような高慢な姿勢は見られない。
ならば、なぜ彼女はダークネスという組織に属し、戦うのか。
当然の疑問、とれいなは思っていた。
571 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 00:22:11.84 0
「ごとーは…そうだなあ」
刀をれいなのほうに押しつつ、涼しげな顔で「黒翼の悪魔」は思案する。
そして。
「ずっと、さ」
「?」
「ずっとごとーは、戦ってたいんだよね。それがごとーの生まれてきた運命だと、思ってるから」
答えとともに繰り出された、蹴り。
刀に集中しすぎてしまいそれをまともに喰らったれいなが、吹き飛ぶ。
近くを落ちてきていた建材にまともに突っ込み、全身に耐え難い衝撃を受けてしまった。
何とかさらに下方の鉄骨に飛び移るも、かなりのダメージを追ったのは明白だった。
「戦うのやめちゃったらさ、ずっと家でモンハンばっかやってるような生活になっちゃう」
「そんなん知らん!みんなを巻き込むな!!」
苦しそうに喘ぎながら叫ぶれいなを他所に、悪魔がれいなと同じ鉄骨に降り立つ。
間合いを計り、【蓮華】を引きつつ構えの姿勢。一歩踏み込めば、すぐさま両断できるのではないかと思わせるほどの気迫がれいなを襲っ
た。
その勢いは肌を刺し、焦がすほどに。
れいなは能力者として、これほどまでに強烈な敵と会いまみえたことがなかった。確かに「銀翼の天使」は恐ろしい敵だった。しかし、
そこには軸となるものが感じられなかった。空虚な穴が、ただただすべてのものを吸い込み尽くすのに似ていた。
「黒翼の悪魔」は違う。自らを支える、大きな意志の柱を持っている。それが逆に、恐ろしい。
現に、こうして刃を向け睨み合っているだけでも汗がじんわりと滲んでくる。
まるでれいなが一歩踏み出した先の出来事、あの禍々しい黒い刀にばっさりと斬られてしまう。そういう未来を絶えず見せつけられている
かのような。それはれいなの、幾多の戦闘経験が生み出す予測でもあった。
572 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 00:23:06.57 0
「来ないの?じゃあこちらから…」
「させるかっ!!」
足場の鉄骨を踏み割る勢いの、れいなの一歩。
あのころのれいなではない。思いつつも、どこかでかつての敗北を心に残していた。
その時に刻み込まれた、怒り、悔しさ。
憧れ。
いつまでも獅子の背中を追いかけているわけにはいかない。
牙を剥き、爪を研ぎ澄ませた猫は、やがて新たな獅子へと姿を変える。
「今日!!れいなは!!あんたを、超える!!!!」
「頼もしいねえ」
体勢を低くし、下段からの斬撃。
に見せかけて、れいなは前のめりに鉄骨に両手をつく。
上から斬り降ろしにかかった悪魔の目論見は外れ、不穏な刃は空を切った。
「フェイントか」
「まだまだこれからっちゃよ!!」
手をついた場所を支点にハンドスプリングのように飛び上がり、弧を描いて「黒翼の悪魔」の目の前に迫る。
咄嗟に【蓮華】を寝かせ正面に構えるも、がら空きの胴が薙がれた。
「遅い!!」
いくつかの筋を断つ感触。
傷口から漆黒の闇にも似た血が噴き出す。
孤高の悪魔は、笑っていた。
573 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 00:24:02.22 0
その状態から、悪魔が反撃に出る。
【蓮華】を下に降ろしてからの、袈裟切り。
防御の取れないれいなはその太刀をまともに受けてしまう。
いや、あえて防御を選ばなかった。
斬り合い。
ボクシングで言うところの、ノーガードの打ち合い。
左の肩を斬られれば、右の肩を斬り返す。
右の腿を突かれれば、左の腿を突き返す。
落下してゆく鉄骨が大量の黒血をあたりにまき散らしていた。
息が荒い。雨が目に入る。
最早、雨と黒血が入り混じった何か別のものだった。
それでもれいなは瞳をそらさない。悪魔を見据え、貫き、刃を走らせる。
防御に回る余力があるなら、その分を攻撃に回す。
れいなが悪魔に呑み込まれたのか、悪魔がれいなの力に引きずられたのか。
それはもう、当人自身にすらわからない。
肉を斬り、刃同士が噛み、また肉を斬る。
いつ終わるともしれない、狂気の沙汰。だが、わずかに。
「ぐふぁっ!!」
脇腹の骨を刃に引っかけられ、れいなが怒涛の勢いで倒される。
強制的に伏せられたれいなを支えていた鉄骨が、ついに真っ二つに斬り降ろされた。
重力の支えどころを失ったれいなは再び、不安定に落下してゆく。
574 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 00:24:56.00 0
天が、見えた。
闇と雲に覆われた、空。
そこから降り注ぐ雨とともに、「黒翼の悪魔」が【蓮華】を携えて急降下してくる。
れいなの体は動かない。
先程の斬り合いで既に限界を迎えてしまったらしい。
腕に神経をやっても、毛ほども動かなかった。このままでは、あの黒い刃に断ち切られてしまう。
落下していきながらの戦闘。
ぼんやりと、ベリーズと名乗る7人の少女たちとの戦いを思い出していた。
あの時は、さゆみがいた。けれど今は一人だ。
もちろん後悔はしていない。こんな個人的な戦いに彼女を巻き込みたくはなかった。
そうしているうちに、ぐんぐんと黒い影は近づいてゆく。
二つの影が重なった時に、全てが終わる。
あーあ、れいな、結局口だけだったやん。
「黒翼の悪魔」を超える、などと言っておきながら結局は超えられなかった。
口だけ番長、れいなの一番嫌いなタイプだ。だがれいな自身が今、その口だけ番長になりつつある。
その不名誉な称号を抱えたまま死んでゆく。仕方のないことだと思った。
唐突に、後輩たちの顔が浮かんでくる。
勝手に一人で行動して、こんな結果を迎えてしまう。まさしく、合わす顔がない。
なぜか最後は、優樹が「たなさたーん!!」と顔をぐしゃぐしゃにして泣き叫ぶ顔だった。
こんな状況にも関わらず、思わず苦笑してしまう。
そして、最後にずっと戦ってきた同期の顔。
さきほどの甘ったれた後輩は彼女に託すしかない。
そして、リゾナンターの未来も。
575 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 00:26:23.39 0
― そんなの、勝手に決めないでよ ―
さゆみの顔は、そう言いたげに怒っていた。
それもそうか。勝手な話っちゃもんね。言いかけたれいなの言葉が、止まる。
そうじゃない。勝手に決めてたのは。
この勝負の、結末。
「うおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!!」
一瞬だけ。ほんの、一瞬だけ。
腕に、力が甦った。そんな気がした。まるでさゆみが側にいて、治癒の力で腕を治してくれたかのように。
そうだ、終わりじゃない。帰るんだ、リゾナントに。
れいなが渾身の力で腕の刃を振るった時。
「黒翼の悪魔」は既にれいなの目の前にまで接近していた。
【蓮華】を上段に構え、そのまま一刀両断する射程圏内にまで。
火花が飛び散りそうな、鋭い音。
れいなが差し出した右の腕の刃が、【蓮華】の斬撃を止める。
そんなれいなを背後から襲うものがあった。悪魔の翼が変化した、黒い槍。
れいなは。
まるでダンスでも踊るかのように、悪魔の刃を上に跳ね上げながらくるりと回転した。
向かってくる二本の槍を、斬り伏せながら。
そして再び悪魔に正対した時に、円を描いて彼女の胴を斬った。
手から、【蓮華】がこぼれ落ちる。
「ごとーの…負け、か」
口から大量の黒血を吐きながら、落下してゆく「黒翼の悪魔」。
鮮やかな金髪はれいなの足もとを通り過ぎ、やがてはるか下方へと消えていった。
576 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 00:27:45.93 0
そんな姿を目にしてなお、自分が勝ったなどとは思えない。
孤高の獅子が立っていた場所に、自らも立つ。それはあくまでも彼女の背に追いついただけの話で、超えたなどとはれいなの口からはとて
もではないが言えないものだった。
言うなれば、勝ったというよりも、終わった。
そんなれいなの心情を反映するかのように。
闇に覆われた空に、光が挿す。
黒いインクが溶けてゆくように、その場所からじわじわと光が広がり、世界が壊れてゆく。
黒を基調に描かれていた、暗く沈み込む町並み。
光の白が、それらを最初からなかったもののようにしていった。
雨は上がり、空間は避け、聳え立つ摩天楼は砂糖菓子のように消えてゆく。
上も、下も。天も地もない終わりゆく世界の中で。
帰ろう。リゾナントに。
れいなはそのことだけを、考えていた。
577 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 00:29:33.37 0
>>569-576 「リゾナンターЯ(イア)」更新終了
さゆりほさんの緊迫した戦闘描写には及びませんが、それなりに。
578 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 00:33:06.15 0
いやいやいや!じゅうぶん手に汗握る展開でしたよ!これでれいなパートは一区切りかな?
579 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 02:14:25.63 0
おやさゆみん
580 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 02:36:27.83 O
れいなと後藤さんがここまでガチでやり合うのは珍しいかな
他の作者さんが書くガチのれなごまバトルとかあれば読みたいです生き字引様w
581 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 04:40:40.78 O
おは
582 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 06:03:16.86 0
>>577 乙
リゾナントへの思いで死闘を制したれいなの姿が目に浮かぶようですよ
次はどの戦いが描かれるのか
更新を待ってます
583 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 08:52:17.16 O
あげ
584 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 10:33:56.46 0
共鳴の旅'14春
585 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 11:07:04.60 O
土曜日だねえ
586 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 12:24:38.61 0
昼ですな〜
587 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 12:59:54.71 0
>>537つづき投下します
里保は“水の刀”を喉元に構える。少しでも動かせば血の雨が降るほどに切っ先を近づけ、「どうされたい?」と訊ねた。
選択肢を与えているようで与えていないその問いに、さゆみの全身が震え上がる。
「首を刎ねるか、四肢を削ぎ落とすか、はらわたを抉り取るか…好きなのを選んでいいですよ」
その発想も、実現可能な範囲の残虐性も、まるで子どものそれだった。
虫と人間の区別もつかぬまま、バッタや蝉の脚をもぎ、羽根をむしり取る幼子は、喉仏に切っ先を立てて微笑みかけた。
「目を……最後に、して…くれれば、いいです」
「…………」
「狂気を、最後まで、見て、」
言葉尻を捕らえることなく、里保は左手を男の眼球へと突っ込んだ。
「うあっ゛あ゛あああああ!!!」
男は叫び、仰け反った。
全身を走り抜ける激痛に耐える。右目の中で蠢く指を掻き出そうとするが、四肢に打ち付けられた楔がそれを赦さない。
目の前に広がる圧倒的な現実が、さゆみの脳を揺るがす。目を逸らしたいのに逸らせない。背くことを、だれかが、赦そうとしない。
「やめっ…が、あ゛っ…あ゛ああ!!!」
そのまま指はぶちぶちっと眼球を抉り出した。
588 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 13:00:38.01 0
「あ゛あ゛あ゛あ゛あああああ!!!」
目の窪みから噴水の如く血が溢れ出す。
刳り貫かれた右目を興味なく投げ捨て「片方で充分ですよね」とその目を踏む。
ぐにゅり、と、柔らかく音が落ち、男の目がカエルの死体のように地面に張り付いた。
それでもプライドゆえか、闘いを放棄する気はないのか、左目をカッと見開くと、里保が構えていた腕が中空でその動きを止めた。
“時間遅延(タイム・ディレィ)”が漸く発動されたが、男は右腕以外の四肢に楔を打ち込まれ、もはや形勢の逆転は不可能とも思えた。
遅延を解除できなかったとしても、その前に男の生命が途絶えるのが先だ。勝利は里保の方に与えられている。
それはだれの目にも明らかなはずなのに、里保はその手を緩めるつもりはなかった。
乾いた唇を舐めたあと、「展延しろ」と呟く。
男が応えられないでいると、溢れ返った雨水がぬるりと立ち上がった。
触手のように動き出したそれを認めた瞬間、全身の毛が逆立ったのは、さゆみだけではないはずだ。
雨水はうねうねと動いて形を変え、薄い膜のように広がった。
「趣味、わる、い、ですね…」
と、男が口にした途端、その膜はふわりと浮き、鼻と口を覆い尽くした。
「っ……!」
“水の膜”によって酸素の通り道を狭めていく。
酸素が回らなくなり、楔を打ち込まれた両脚で地面を叩いく。その度に足首から血が撥ねる。
589 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 13:01:13.00 0
「っ……!、っ!!」と絶え絶えになる息を吐き出すも、それはぶくぶくと泡となって消えていく。
左手首の楔をなんとか断ち切り、“水の膜”の覆いを外そうとするが、水はあっさりと指を浸透し、外すことが叶わない。
脳に酸素が行きわたらず、意識が朦朧としていく。
“死”という闇の中へ引き摺り下りる寸前、里保はふいっと指を上げ、膜が鼻と口から数センチの箇所に浮かんだ。
「がはっ!…はぁっ…はぁ……ぁ……」
漸く酸素を取り戻した男を見下ろし、里保は小さくなにかを呟いた。
聞き取れないほどの声に耳を傾けると、それがカウントを取っていることに気付いた。
いったいなにを…と思考させる間もなく、「サン・ニィ・イチ」と数字を失くした直後、膜は再び男に落ちた。
腰が撥ね、先ほどと同様の苦しみが襲いかかってくる。
右腕と右目を失ったうえ、能力の多用と出血により体力は残されていない。いまの男には数秒の呼吸困難でさえ致命傷となりうる。
「嘘、でしょ……」
途端、恐ろしい考えがさゆみに浮かぶ。
男の体力を鑑みると、もはやあと数回の打撃で死に至る状態だ。
それなのに、里保はとどめを刺すこともなく、口と鼻を塞いだり、外したりを繰り返す。
先ほど口ずさんでいたカウントダウンの意味を理解してしまうことが、あまりにも恐怖だ。
生命を弄んでいる、としか、理解のしようがないのだから。
「ひぁ…」
3度、膜によって呼吸を失わせられ、擬似的に溺れさせられた男から情けない声が漏れた。
失禁しているのか、ズボンの股上が微かに濡れていた。
“時間遅延(タイム・ディレィ)”はとっくにその効力を失い、里保は“水の刀”をそこへと向けていた。
590 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 13:02:11.06 0
「さ、さや……」
なにをしようとしているのか、さゆみは理解を諦めたかったが、脳はここぞとばかりに想像を膨らませる。
それをすることは、いくらなんでも、非道だ。リゾナンターとして、女性として、ひとりの人として。
カラカラになった喉で彼女の名前を呼ぼうとするが、恐怖ゆえか、へばりついて最後の一文字が声にならない。
里保はひとつ息を吐くと、“水の刀”を振り上げ、左手首を刈り取った。人参が切れるように、いとも簡単に手が落ちた。
もはや痛覚が麻痺してしまっているのか、男は悲鳴も上げずただ短く息を吐き出すしかない。
「……あとは、何処だ?」
小さく、暗い闇の中から囁く声をさゆみは確かに聞いた。
血に塗れながら男の全身を切っ先でなぞり、「何処だよ……」ともういちど訊ねる。
「何処で道重さんに触れたんだ?」
彼女の言葉に目を見開いた。
刈り落としたのは、男の両手と目。そしていま、股間を斬り裂こうとしている。
里保が狙っているのは、男がさゆみに触れた場所だ。まるで触れたという事実を消そうとせんばかりに斬り落としていく。
首を絞めた理由も、“時間遅延(タイム・ディレィ)”の発動により、呼吸を失ったさゆみに対する、仕返しとしか思えない。
「だめ……」
さゆみのせいだと思った。
591 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 13:03:45.72 0
そもそもさゆみが捕まらなければ、さゆみが蹂躙されそうになる現場を見せなければ、さゆみが逃げる方法を見つけていれば、
さゆみが里保に助けを求めなければ、彼女はあんなことをする必要はなかったはずなのに。
あんな、あんな風に生命を弄び、人を虫けらのように扱う彼女なんて。
彼女をそこまで追い込む必要なんてなかったはずだ。
―――その音が聴こえるまで、傍に居て下さいね
―――だってわたし、道重さんの命の恩人ですから
―――道重さん!道重さん!!
里保の笑顔が好きだった。
子どもっぽくて、可愛くて、歳相応の、15歳の笑顔の彼女が。
里保の大人びた行動が好きだった。
外界からの悪意や敵意必死に受けとめて、刀を地面に突き刺して斃れないように立とうする彼女が。
「ころし、て、く……」
男の口から漏れた声に答えるように、里保は刀を振り上げた。
下弦の月が世界を照らし、血に塗れた刀身が闇夜に光る。
すうっと息を漏らし、柄に力を込める。
スローモーションのように、振り下ろされる。
592 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 13:04:30.08 0
「だめ……だめ、だよ……」
里保が、鞘師里保が、好きだった。
等身大の笑顔も、大人びた口振りも、まるで幼子のような手も、黒くて長い髪も、だれよりも仲間を信頼して自らを奮い立たせる姿も。
いつだってさゆみより前に立ち、すべての悪意から護ろうとするその背中も。
それなのに。それなのに。それなのに!!
「やめて!!りほりほ!!!」
振り下ろされ、喉を斬り裂きそうにそうになったまさにその瞬間、“水の刀”はその形状を失った。
切っ先は男の体に触れることなく砕け散り、カラカラと水の球体となって床へとばら撒かれた。
ころころとビー玉のように転がった球体は、さゆみの足元に落ちていたコインに触れ、ぴちゃんと弾けた。
刀を構えていた里保は、その手中から消え去った存在に眉を顰めたが、ゆっくりと顔をさゆみに向けた。
初めて、さゆみと里保が目を合わせた。
真紅の瞳に射抜かれ、全身が震え上がった。血よりも紅いその色を、なんと表現して良いのか分からない。
深淵を覗き、奥に潜む闇に貫かれたような錯覚を覚える。
「………」
彼女は男から離れ、一歩ずつさゆみに近づいてくる。
なにも言わない彼女に、さゆみもまた、声を掛けない。喉を絞り上げられて声を奪われたような感覚だ。
593 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 13:05:11.74 0
1メートルに満たない距離に入ったが、逃げることをしなかった。
ただ彼女の深淵をさらに覗き込む。もしそこに怪物がいるとしても、深淵が等しく覗き込んでいたとしても。
「っ………」
里保の“血の右手”がさゆみの頬に伸びる。
体液の生温い感覚と、特有の臭みに肩がびくっと撥ねる。
怖くて堪らない。いまこの場で心臓を抉り取られるかもしれないという不安もあったが、それでも逃げない。
彼女の瞳がちゃんと、さゆみを捉えているという保証はなかったけれど。
「………みっ、しげ、さん?」
ふいに、瞳の色が落ち着いた。
真っ赤に燃えていたそれは冷静さを取り戻し、はっきりとさゆみを映し出す。
刻まれた憎しみが少しずつ消えていくのを感じた。
剥がれた仮面の向こうにいたのは、あどけなさの残る、15歳の少女だった。
「私、は……」
彼女の意識は、引きちぎられたさゆみの服と、自らの血が固まった擬似の手に向けられた。
あまりにも受け入れがたい情報が一気に流れ込んでくる。
「おかえり、りほりほ……」
だから、さゆみはそれを断ち切った。
汚れることも厭わずに、“血の右手”を強く握り、もういちど、その名前を呼ぶ。
自分だけが呼んでいた、鞘師里保の、名前を。
594 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 13:05:46.07 0
その呼び名を認識し、里保の色は完全に落ち切った。髪を染めた「赤」も消え去り、もとの艶のある黒に戻っている。
里保は、まだ現実をうまく理解できないでいるが、それも強引に理解させられることとなった。
「滑稽ですね」
男の声を聞き、里保は即座に振り返る。
相変わらず、両脚に楔を打たれ、体内の血をほとんど放出し、ボロ雑巾のように横たわっていた。
「これ、は……」
「あなたが、やったんですよ…」
「私、が……?」
その言葉にさゆみはハッとし、彼女の手を一層強く握りしめた。
が、まるで緊張が解けたように擬似的な手足が一瞬で弾けた。
バランスが崩れ、右脚一本で体を支える。
自分が男をそんな目に遭わせたことを、里保は認識できていない。
あの瞬間の記憶が欠如しているのだろうか。困惑と混迷の中、それでも彼女は男から目を離せない。
「凄まじい、ポテンシャル、見せて、いただきましたよ……」
「私が……」
「それでこそ、サヤシリホですよ。まさ、か…すぐ、引き戻されるとは……思いませんでしたが」
男は自嘲気味に笑い、さゆみを見た。窪んだ右目の空洞が堪らなく怖かった。
さゆみ自身、なにも分かっていない。どうして里保がああなったのか、どうして里保が、また戻って来れたのか。
595 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 13:06:42.97 0
―――コインの表と裏、それは簡単にひっくり返るんですよ
男が最初に言っていた話を思い出す。
ポテンシャルという名の怪物を引きだしたサヤシは、コインの裏側だったのだろうか。
簡単にひっくり返ったコインは、再び表へと戻った。
“本当に?”
「最後まで、見て、おきたかった、ですね……あなたが、壊す、さまを」
「そんなこと、この子は、しない」
絶え絶えに呟く男にかぶせるように、さゆみは声を出した。
先ほどと同じように、先ほどよりも力強く。
「そんなこと、鞘師は、しない」
596 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 13:07:48.96 0
深淵を覗き込んだ。そこには翼を携えた魔王がいた。
だけど、その深淵のさらに向こうがわには、彼女がいた。
どちらも、鞘師なんだ。
斬り捨てられない、置いていけない、どちらも必要な、鞘師里保なんだ。
コインは表だけでも、裏だけでも存在するものではない。表裏がそれぞれ意味を成してひとつのコインを形成する。
「鞘師は……鞘師里保だから」
震えるさゆみの言葉を聞き、男は乾いた笑いを漏らした。
戯言だと、綺麗事だと思ったのかもしれない。理屈で語れるほど、現実は甘くはない。そんなこと、さゆみにだって分かってる。
だが、男にはもう反論する力は残されていなかった。
なにも言わずに、すうっと息を吸った。
それが最後の合図のように、男はこと切れた。
597 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 13:09:41.12 0
>>587-596 ひとまず以上になります
>>577 意志の力というか帰還や仲間への想いを携えたれいなの闘いに震えました
まさに「死闘」だと思います
つづきは夕方ごろに
598 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 13:16:34.91 0
>>597 リアルタイムで読ませてもらいました
コインの表と裏…
それが確かな説得力で怖いくらいに伝わってきました
>“本当に?”
さゆみの自問が読み手にも迫ってきますね
599 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 13:33:35.85 O
連日の更新乙ですよ
次はいよいよラストでしょうか……
600 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 15:20:14.02 O
ノリ*´ー´リ
601 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 16:21:33.97 0
川* ^_〉^)<DoDoばいびー
602 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 17:28:55.99 0
>>597つづき投下します
暫くの沈黙のあと、里保は脚を引き摺りながら歩き出そうとする。
一歩踏み出した左脚から剥き出しの骨が削られ、床にべったりと血の線をつくっていく。
さゆみは今度こそ振り解かれないように里保の左手を強く握った。
里保はハッとし、振り返る。交錯する視線は、なにも言わないふたりの感情を繋いでいた。
言葉を発することなく、里保は視線を外し、歩き出す。さゆみも連られて立ち上がり、男の死体へと歩み寄る。
穏やかな死に顔とは到底言えないほど、ボロボロになり、もがき苦しんだその姿を、ただ真っ直ぐに見下ろした。
多くの情報が錯綜する。
断片的な記憶をなんども手繰り寄せる。
さゆみが拉致されたと知り、此処へ来た。
拉致した男と刀を交え、能力に押されたうえに判断を誤り、“時間遅延(タイム・ディレィ)”によって動作を奪われた。
その間にさゆみが凌辱されそうになった。
護らなきゃと思った。助けなきゃと思った。
道重さんを。大切な仲間を。
そうしたら。
そうしたら―――?
「鞘師」
対岸へと泳ぎかけていた彼女を、さゆみが引き戻す。
603 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 17:29:50.59 0
里保はまだ彼女の言葉には応えず、床に散った水の玉を見回した。
遠い遠い向こうがわ、形状を失いかけていた遅延の手足が転がっているのを捕捉する。
ひとつ息を吸い、神経を集中させる。“水”に意識を渡し、左手に力を込める。
水はゆっくりと里保の手の中に集まると同時に、まるで意識を持っているかのように、里保の手首と足首を運んできた。
右手首を手にすると、ぎゅうっと粘土のように切断面を押し付ける。
さゆみはそれを見て慌てて手足に“治癒能力(ヒーリング)”を施した。
淡い色を纏って神経を繋ごうと力を込めるさゆみを、里保はそっと制した。
流れ落ちる血を橋のように渡し、辛うじてぶら下げるにとどめる。
先ほど呼び寄せた雲により、下弦の月が半身を隠した。闇に包まれた世界にふたりは立つ。
沈黙の空間がつづいたあと、彼女は震える声で「この人を…」と漸く口にした。
「こんな風に殺したのは、私ですよ」
「………」
「あのとき、道重さんを護りたいって思ったら、奥から、体の奥底から、なにかがせり上がって、呑み込んで……気付いたら、血の海の中に……」
そして言葉が、途絶えた。
コインの裏を知ることは、恐怖だ。
コインの表しか知らなかったなら、人はもっと楽に生きられたのかもしれない。
だけど、いちどひっくり返ったものを見ない振りして生きていくことなど、できやしない。
斬り捨てられないものなら、排除できないものなら、それらを受け容れていくしかないんだ。
「でも、戻ってきたよね?」
「それは……」
彼女がなにか言う前に、その腕を引き寄せた。ふわりとさゆみの胸の中に抱き寄せる。
604 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 17:30:30.59 0
途端、感じたことのない鋭い痛みがさゆみを貫いた。だが感触がない。
確かな、物質的な痛みを伴うが、その実態が分からない。
「み、道重さん!離して下さい!!」
「なん……で?」
「分かんないっ……抑え、られないんです!」
まるで鋭利な刃物に刺されたような痛みを覚える。なんどもなんども、さゆみの腕や肩、太腿を斬り裂き、貫く痛みだ。
まだ完全には戻りきれていないのか、能力の暴走が起きていた。
ああ、これこそが、彼女の痛みと哀しみだと直感する。
「抑えなさい……」
「だ、だからっ!」
だけど、だからこそ。
激しく雪崩れ込んでくる共鳴を、弾くことなく受け容れたい、そう願った。
「ちゃんと自分で抑えなさい、鞘師」
どうやら感情と能力の蛇口が全開になっているようだ。
急にコインをなんどもひっくり返したために、軸がブレたらしい。
あの男の云うように、遅延の時間軸を戻せるのが能力者だけだとするならば、自らの精神の軸を戻せるのもまた、鞘師だけだ。
ざくざくと、里保の感情と能力が鋭い刃となってさゆみの全身を斬り裂いていく。
徐々に物理的な損傷が出始める。頬に、腹部に、腕に切り傷が生まれ、血が滴り落ちる。
605 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 17:31:05.92 0
それでもさゆみは里保を強く抱きしめる。
必死に腕を伸ばして距離を取ろうとする里保だが、腕の中から逃げられない。
怖い。イヤだ。道重さん。道重さん。傷つけてしまう。私の、私のせいで。また、道重さんが!!
「鞘師が居たから、さゆみは此処に居るの」
ふいに腕の拘束が弱くなった気がした。
泣きそうになりながら顔を上げると、さゆみはぎゅうと強く目をつぶり、痛みを堪えながら言葉を紡いだ。
彼女の姿を、彼女の心を、彼女の闇を、受け容れて、そしてともに歩いて行くために。
「いつだって、あなたが、前に立ってくれたから。後輩、なのに、頼ってばかり…だったよね」
「そんなこと…!」
「だから……だからね、鞘師」
風が啼き、下弦の月が再び顔を出す。
夜の帳の中、さゆみの声だけが聞こえる。透明で、真っ直ぐで、繊細で、心強い。
鞘師里保を奮い立たせる、その声が。
「今度は、私が、鞘師を護るよ」
血よりも紅く、焔よりも青い刃がさゆみの心臓を貫く。
ぐさりと突き刺さったそれは、さらに深々と突き進んでいく。
頬から流れた血が、顎へと到達し、零れ落ちる。
それはさながら、涙のようだった。
606 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 17:32:15.97 0
「鞘師のこと、信じてるから」
痛い。痛い。痛い。
暗闇がさゆみを呑み込んでいこうとしている。
だけど不思議と、怖くない。
だって、もう、だいじょうぶだから。
「――――――」
里保がなにか口にした言葉を、音としてとらえることは叶わなかった。
だが、さゆみの心臓を貫いた刃は、そのまま霧のように消え去り、さゆみの体内の傷を塞いでいった。
痛みが、消えていく。闇が、過ぎ去っていく。
「やれば……できるじゃん」
さゆみはそう言うと、膝をがくんと折った。
慌てて里保が支えるが、やはりもう、自分ひとりで立っていられるほどの力は残っていなかった。
「道重さんっ……!」
「っ、疲れたの……お姫様抱っこしてほしいの」
漸く感情の波が静まり、能力の暴走が収まった。
自分の生命を懸けてさゆみは里保を護ろうとした。仲間としては当然かもしれない。だけど、いまの里保には、それがなによりも尊かった。
すべてを賭してくれた人に、精一杯に応えたかった。
それが結果的に蛇口を閉める契機となったのだと理解できた。
607 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 17:33:05.03 0
「ごめんなさい……ごめんなさいっ…!」
泣くことも厭わずに里保はさゆみを抱きしめた。
たくさん傷付けた。たくさん泣かせた。たくさん困らせた。
だけど、最後まで、最後まで私を信じてくれた。
感謝と後悔とがせめぎ合う。絶望と一筋の希望が相対する。
私は、私はどうすれば良いんですか?
「……早く、帰りたいんだけどなぁ」
軽口を叩きながらもさゆみは里保の背中に腕を回した。
涙は零さない。弱音は吐かない。後輩の前でみっともない姿はもう見せない。いままさにこの瞬間がみっともないけど。
―――破壊と絶望を振り翳し、世界を統一するための、狂気を
再度、男の言葉が甦る。
もしこの子のポテンシャルが狂気だとしたら。
解放された能力が、世界のすべてを闇に帰すほどの絶望を孕んでいるとしたら。
紅を纏ったサヤシリホが、再び目の前に現れることがあったとしたら。
だとしたら、私は。私は。
「眠いよ、りほりほ」
意識が少しずつ遠のいていくなか、神経が千切れたままの彼女の傷口に触れる。
温かい色を纏ったその傷口がゆっくりと塞がっていく。
608 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 17:34:22.61 0
ああ、もう、さすがに限界。
緊張から解放され、泥のような眠気に苛まれ、素直にそこに手を伸ばした。
里保はそれでもさゆみの体を離さない。
「道重さん……」
彼女の声が遠く聞こえる。
分かってるよね、鞘師。
あなたにしかできないことがある。受け容れるのも、乗り越えるのも、最後はあなた自身だから。
自分でちゃんと、答えを見つけるんだよ。
その代わり、その代わりね。
あの日交わした私とあなたの約束、ちゃんと果たしてあげるから―――
月影が夜の空に浮かぶなか、乱れた呼吸を整えながら里保は涙を乱暴に拭う。
鼻をすすり、「道重さん……」ともういちど呟く。
「……抱っこはしませんよ」
「えー…ケチぃ…」
答えが返ってきたのに安心したのか、里保はさゆみの体を背負った。
春の訪れを思わせる暖かい夜風が髪を撫でていく。
頭の中を巡る思考に恐怖しながら、ひとまずこの人を無事に帰さないとと歩き出した。
彼女が呼んだ黒雲は、静かに風が押し流した。
遠雷が微かに耳に触れる。だけどもう、その姿は見えなくなっていた。
609 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 17:35:58.07 0
610 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 17:53:19.11 0
>>609 素晴らしかった…!
「DAWN〜」とはまた異なる種類の胸の震えを感じる作品でした
今は多くの言葉が出てきません
密かなさゆ×りほ推しとしても大変満足ですw
611 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 18:04:51.15 O
さゆりほものとしても能力バトルとしても良作だった
ごちそうさまでした
612 :
名無し募集中。。。@転載禁止@転載禁止:2014/03/15(土) 18:13:52.02 0
>>609 この二人でこんな濃厚なのが読めるとは思わなかったw
凄く面白かったよ、乙でした。
613 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 18:44:54.65 0
「時間編集」自体がチートな能力だからねえ
一部とは言えそのチートな力をふるう敵に対抗するにはやはりチートな能力でないと
ってのもやむなしだと思う
614 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 19:54:07.60 0
ノハ´’v’ソ<スレを470ほど上へ飛ばします☆
615 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 20:50:01.20 0
ありがとうおださくありがとう
616 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 21:57:45.12 O
ほ
617 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 22:17:37.59 0
>>609 能力が暴走している鞘師を抱きしめ続けるさゆみの箇所がたまりません
叱咤して受け容れて謝って包み込んでそして信じて…
ひとたび裏返ってまた元に戻ったコインの比喩もストンと胸に落ちてきました
ラストがまたいいですね
さゆりほを大々的に推していきたくなりましたw
ただ……こんな素晴らしいもの書かれると自分では書こうとしても絶望しそうです
殺し屋鞘師も赤眼サヤシを越えるのは一生無理そうw
素晴らしい作品でした
618 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/15(土) 22:58:01.84 O
あげとく
619 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 00:16:21.86 O
飲み会帰りにつき後で読む!
620 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 01:08:32.72 0
>>609 もしかして『鞘師』って姓はただの刀鍛冶ではなく巨大な力を封印し守り続けてきた一族なのではないだろうか?
そして数百年に一度その力を宿し生まれてくる娘…両親はその力を破壊ではなく守る事に使って欲しいとの願いをこめて『里保』と名付けた…
なんて妄想して読んだらなお楽しかったw
621 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 01:54:07.08 0
>>617 殺し屋鞘師には殺し屋鞘師の良さがある!
私は楽しみにしてますよ!!
622 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 04:50:55.97 0
623 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 06:25:42.90 O
さっそくリゾナントやで
624 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 08:59:25.52 0
>>622 ピコーン!ってw
では何故道重は暴走する鞘師を止めることが出来たのだろうか?
『道重』家とは医者や高僧等人格者を多く輩出した山口では知らぬものがいない名家である。その名の通り『道を重ねてく』…リゾナンター(プラチナ)が歩んだ道を新生リゾナンター(現娘)へと繋ぐ役目を担いリーダーとなったのは必然だったのだろう。
そして『さゆみ』…真の名は『紗癒美』…美しき癒やしの女神…糸を紡ぐようにバラバラなりかけた鞘師の心を繋ぎとめ癒すことが出来たのだろう。
…と言う妄想
625 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 10:08:56.04 O
イイヨイイヨー
626 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 10:37:21.44 0
今日は人少ないね〜みんな現場かな?
627 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 11:04:33.55 O
現場あってのリゾナント
628 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 11:04:34.37 0
んなわけない
629 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 12:34:25.74 0
お昼だよ
630 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 14:10:06.50 0
>>620,624
なにも考えずかいてましたが
そういう背景をつくっていたらもっと話に説得力ありましたねw
631 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 15:52:47.89 O
南風
632 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 16:58:06.75 0
南東風
633 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 18:19:25.96 0
ノノ*^ー^)<今日の風は温かいですよ
634 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 19:58:06.22 0
温風
635 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 20:04:18.77 0
636 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 20:54:32.62 O
千の風に
637 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 21:59:06.69 0
ほぜ
638 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 22:50:20.47 0
千のホゼになって
639 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 22:52:18.09 0
私の保全の前で泣かないでください
640 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/16(日) 23:44:56.69 0
そこに私は居ません
641 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 00:36:55.88 0
千のホゼってなんだ?w
642 :
名無し募集中。。。@転載禁止@転載禁止:2014/03/17(月) 00:57:40.49 0
人数かな?w
643 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 01:57:21.04 0
千人もホゼナンターいたの?!w
644 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 02:18:15.52 0
干のホゼ
645 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 02:34:35.95 0
やっぱりホゼナンターだ
1000人保全しても大丈夫
646 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 05:41:56.27 O
物置かw
647 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 07:06:58.68 0
1000人保全を達成した伝説のホゼナンター
648 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 07:54:31.23 0
すべてのレスを保全で埋めろホゼナンター!
それはもはや荒らしだぞホゼナンター!
649 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 11:01:09.53 O
ほ
650 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 12:44:04.04 O
お昼なんと
651 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 13:38:35.70 O
花粉辛い保全
652 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 15:39:57.14 0
花粉を発生・増幅させる能力者…
653 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 16:33:00.81 0
カフナント・アンプリファイヤ
…ちょっとした飽き時間に保管庫の過去作読めなくなって寂しい
654 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 16:57:06.90 O
騒動はいつ収まるんかねえ
655 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 17:07:52.19 0
あ、@wikiから感染や改竄は無かった旨のメールがユーザには来てますよ
↑
不良スレまとめ者
656 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 18:20:13.95 0
自分も保管庫管理人さんではないですが
3.14付けでこんな↓メールが来てましたね
【お詫び】ウイルス/JS改ざん疑惑 及び ユーザ情報流出に関するお知らせ【第6報】
1.ウイルス疑惑について
事件発生以後、調査をして参りました。
念のため、@wiki全サーバに対してウイルススキャンを行いましたが、
ウイルスは確認されませんでした。
2.Javascriptの改ざん疑惑について
事件発生以後、調査をして参りましたが、Javascriptの改ざんはないと
確認できました。
(以下略)
だからといってこれで解決なのかどうなのかは分かりませんね
657 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 18:30:39.25 O
まとめサイト1は相変わらず見れないの?
658 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 19:37:32.06 0
どうなんだろうね
659 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 20:50:04.31 0
どぅーなんだろうね
660 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 21:13:29.42 O
まーなんだろうね
661 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 22:25:04.60 0
なんだろうね
662 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 22:33:50.29 0
まとめサイト1って閉鎖したでしょ?で親切な人が移設先に作品移してくれたんじゃなかったっけ?
663 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/17(月) 23:29:24.77 O
ほ
664 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/18(火) 00:28:29.06 0
風
665 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/18(火) 00:50:45.73 0
亀
666 :
名無し募集中。。。@転載禁止@転載禁止:2014/03/18(火) 01:33:00.15 0
まとめサイト2も火狐じゃないと見れなかったけど
新しく移動してくれたよね。
667 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/18(火) 02:32:14.02 0
おやさゆみん
668 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/18(火) 05:35:56.40 O
よいしょ
669 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/18(火) 07:03:20.02 0
本当にまとめナンターの方々にはお世話になっております
670 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/18(火) 09:40:33.40 O
ほ
671 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/18(火) 10:19:53.95 O
ぜ
672 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/18(火) 10:34:01.87 0
>>666 その台詞を言いながら名前欄で「転載禁止」を2回言ってるのがw
673 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/18(火) 13:20:41.84 O
あぶね
674 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/18(火) 15:09:49.51 0
保
675 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/18(火) 16:19:39.72 0
あ、まだ名前欄修正してなかったスマソ。戻ったかな?
676 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/18(火) 16:48:12.53 0
test
677 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/18(火) 18:36:20.27 0
春の珍事
678 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/18(火) 19:46:29.91 0
ホゼナント
679 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/18(火) 20:55:34.60 0
ハル一番
680 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/18(火) 21:02:09.65 0
>>655 なんと!不良まとめスレの人もいるとは…ホゼナンター凄いなw
681 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/18(火) 21:59:06.37 0
もうすぐ春ですね
682 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/18(火) 23:13:21.12 0
早いけどねるなんと
683 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/18(火) 23:13:46.76 0
684 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 00:21:56.23 0
おやすみなんと
685 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 00:27:07.46 0
むぅホゼナンター恐るべし…俺が徘徊しているSSスレやネタスレにも知らずに話してる人いそうだなw
686 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 00:29:46.84 0
新曲の『時空を超え宇宙を超え』はリゾスレ的に小田ちゃんイメージ
687 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 02:08:14.37 O
スレを超え板を超え
688 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 05:56:21.51 O
おはなんと
689 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 07:11:31.15 0
スレを超え板を超え最終的にはどこへ?
690 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 07:33:50.48 0
あなたの心の中へ
691 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 07:58:31.10 0
胸の高鳴る方へ
692 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 09:57:14.63 O
高鳴る胸はなく
693 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 11:59:32.07 0
共鳴に胸のサイズは関係ないって昔の人が言ってた
694 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 13:31:06.27 O
大きさは関係ない
695 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 15:13:22.53 0
むしろえぐれてるほうがパラボラアンテナの原理で共鳴するのだ
する☆カナ
するけん
するヤシ
しますよ(甲高い声)
696 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 16:47:35.19 0
保
697 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 17:28:07.02 0
「AUビル。5階。ACT企画」
一つ一つ確認するように里保が呟く。
釣られるように、香音も傍らの雑居ビルを仰いだ。
取り立てて特徴のない、白い壁。
窓は通りに面したこちら側にしかなく、そのすべてに地味な色のカーテンやブラインドがかけられている。
5階分の高さしかなく、その割に横幅がそこそこあるため、ややずんぐりとした印象を受ける。
そう、まるであたしみたいに…ってうっさいよ!
「香音ちゃんさ、高置水槽と高架水槽の違いって知ってる?」
「ん?こうちすいそう?」
一人ボケツッコミをしていたところに急に話しかけられ、首を傾げる。
一瞬、漢字が変換できなかった。
「あれ」
「ああ、水槽」
里保の指差す先を見て、ようやく先の言葉が漢字に置き換わる。
目指す5階のすぐ上、すなわち屋上に置かれた円筒形の物体の上半分が見えている。
その白いFRPタンクは、ビル本体と同様にやや赤茶けていた。
「さあ、別にどっちも同じじゃないの?」
屋上に置かれた水槽には、その名前の通り当然ながら水――水道水が入っている。
高さなどの関係で、水道管からの直圧では給水に必要な圧力を満たせないときは、いったんタンクに貯水してから給水を行なう。
こんな風にタンクを高所に設置する場合は、そこからの給水圧力は重力によって確保されることになる。
ただ…そのタンクの名称を気にしたことは特にない。
確かに高置水槽と高架水槽、どちらも耳にしたことあるような気がするけど。
698 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 17:28:45.56 0
「えー、同じじゃ答えにならないじゃん。違いを聞いてるんだからさー」
…めんどくさっ!
不満げな顔の里保に対して口にしかけた言葉を、香音は辛うじて心の中で留める。
でもほんとたまにめんどくさいんだよなー里保ちゃんのこういうとこ。
たまにね。
「じゃあ、置いてあるだけのやつと、架台がついてるやつの違い?」
若干投げやりに答えた。
このビルのタンクは屋上に基礎を打って直に置かれているが、鉄骨などで組んだ架台の上に乗せてあるものも見る。
重力給水方式ゆえに、高低差を確保したい場合などはそうしているのだろう。
読んで字のまんまのひねりのない答えなので、また里保のお気には召さないかもしれないけど、そこまで構っていられない。
「うん、そう。そう思いがちなんだけど」
あ、この答えが“正解”だったんだ。
里保の嬉しげな顔に、香音は心の中でそう思う。
こういうとこ、かわいいっちゃかわいいんだけど。
「っていうかそれが間違いってわけじゃないんだけど、明確な違いってないらしいよ」
「…は?何?結局どういうこと?」
「どっちをどう呼んでも特に間違いじゃないってこと」
「…それって要するにどっちも同じってことだよね?あたし最初にそう答えたじゃん」
「違いがあると分かった上で同じって答えるのと、何となく同じって答えるのは違うよ」
「めんどくさっ!」
今度は声に出た。
だってほんとめんどくさいよ何この人。
…でも、ちょっと傷ついたような顔をされると悪いことをしてしまった気になる。
そういうとこもめんどくさい。
699 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 17:29:23.84 0
里保の仕事の腕は、間違いなく「店」でもトップクラスだ。
今回のように何度か仕事を共にしたことがある香音にとっても、それは疑いようもない。
この「業界」全体を見渡しても、少なくとも里保の齢であそこまでの腕を持つ者はまずそういないだろう。
…なのに何なんでしょ、この、そうはとても思えない感じは。
ただ、そのことを他のみんなに言ってみても、大抵あまり共感は得られない。
どぅなんて、「鞘師さん超強いし、いつもクールにキメててめっっちゃ憧れます」とか本気で言ってたし。
案外、里保がこんな風なのは自分の前だけなのかもしれない。
そう思うと……ね、まあかわいいんですけど。
「香音ちゃん」
そんなことを考えていると、再び名前を呼ばれた。
「今度は何だよ」と言いかけたが、里保の顔が真面目になっていたので、香音は黙って続きを待つ。
「今回の件さ、できるだけうち一人でやらせてもらえないかな」
「里保ちゃん一人に?別にいいけど…なんで?」
今回の「仕事」の対象は、AUビルの5階にある「ACT企画」の事務所内にいる人間全員ということだった。
対象が多人数であることと、いわゆる「普通の会社」ではなく、刃物や飛び道具も常備された「危険な会社」であるということもあり、一応2人体制で来ている。
…が、実際のところ、チンピラヤクザが多少の武器を振り回してきたところで、里保一人で簡単に片は付くだろう。
だから、別に一人でやりたいという分には全然構わない。
殺し屋なんてやってるけど、人を殺したくて仕方ないわけじゃないし。
ただ、里保にしたってそれは同じはずで、わざわざこんなことを言い出したことは今までなかったのが気になった。
「…うまく言えない」
しばらく「どう言おうか」という感じで思案をしていた里保は、結局それだけを言った。
なんだよそれと思ったが、里保の胸から聞こえる“音”に嘘はなかったので、「そっか」とだけ返す。
本人にもよく分からないのなら仕方がない。
700 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 17:29:58.26 0
…とはいうものの、何となく見当はつく。
道重さんから今回の仕事についての説明を受けた際、里保は何かを知っていそうだった。
多分、そのことが関係しているはずだ。
要するに、ものすっごく単純に言い換えると……道重さんにいいところを見せたいんだよね、絶対。
いや、というよりも気持ちの問題…かな。
「私が一人でやりました!」なんてドヤ顔で報告したりはもちろんしないだろうけど、その事実が自分の中できっと大事なんだろうなというか。
…なんか、そんな言い方するとまるであたしがお邪魔虫みたいでちょっと腹が立つけど。
「この間の女子小学生連続監禁殺害事件知ってるよね?」
「え?知ってるよ、もちろん」
一言だけでは悪いと思ったのか、里保が言葉を重ねてくる。
「その本当の犯人の男がいてさ、そいつが便利に使ってるのがこの『会社』なんだって」
「あの……だから知ってますけど。それ全部道重さんがさっき言ってましたけど」
「あ、そっか。そうだった。その宗玄洸って男がうちらの『店』を潰そうとしてることは?」
「いや、それは初耳だけど。なんで?」
「うちらの『店』に依頼に来たんだけど、道重さんが怒らせちゃったから」
「あ、そうなんだ。だからやられる前にやっちゃえーってこと……じゃないよね?」
「当たり前だよ。多分、こっちの予定の方が元々先にあったんだと思う」
「だろうね」
少なくとも、さゆみは自分の失敗の尻拭いをこっそり誰かにさせるような人間ではない。
そもそも、依頼主を不必要に怒らせるような初歩的なミスなどまずしないだろう。
「ま、いいよ、その辺の細かい事情は。とにかく今回は一人でやりたいんでしょ?好きにやんなよ」
「ありがとう、香音ちゃん。大好きー」
「そりゃどうも」
…何そのきらきら輝いた笑顔。
かわいいじゃないか。
701 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 17:30:31.36 0
「じゃあ、いこうか」
だが、その一瞬後には完全にスイッチが切り替わる。
声も、表情も、そして体内から聞こえる“音”も、瞬時に「仕事モード」になっていた。
このあたり、さすがは里保だといつも感心するところだ。
神様のような殺し屋センスだとしばしば尊敬の念さえ抱いている。
…まあそれが褒め言葉になるのかは分かんないけどね。
顔を引き締めて頷きを返し、一応身を隠していた建物の陰から出て、目指すビルの前へと向かう。
裏通りに当たるためか、日中だというのに先ほどから誰一人の姿も目にしない。
そういった立地が好都合でここに「会社」を作ったのだろうが、そのおかげで今は香音たちにとっても都合がよかった。
素早く入口の前まで移動する。
雨避けのためだろう、少し奥まったところにガラスの押し戸がある。
ビルがくり抜かれた形で存在するポーチには、左手に自動販売機が、右手に郵便受けが設置されている。
郵便受けには、1つだけネームプレートが入れられていた。
本来、このビルは2階から5階までの4フロアにオフィスやテナントが入れるようになっているが、現在は5階のACT企画しか入っていない。
とはいえ、正確には他の階も契約上は埋まっている。
だが、“不思議なことに”無人のままで放置されている。
人通りの少ない、そして部外者のいないビルでどういった類のことが行われているのかを想像するのは、素人でもそう難しくない。
ま、ロクなことじゃないよね。
殺し屋のあたしたちが言えたことじゃないんだけど。
「監視カメラ…ダミーだって話だったけど」
「うん、ニセモノ。機械の“音”はしない」
ポーチの上部に付けられたカメラに視線をやる里保に答えてから、ふと思う。
こういう“手出し”(口出しか)は別にしてもいいのかな?
ほんとの意味で一人でやりたい…ってことなら、今のもアウトだと思うんだけど。
里保の様子を見る限り、何も気にしてないみたいだからいいのかな、多分。
702 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 17:31:05.30 0
エントランス部は、1階と2階をぶち抜いた吹き抜けになっていて、ビルの規模からすれば結構広めになっている。
それに付随して玄関のガラスもかなり大きく、香音や里保の倍以上の高さがある。
扉は、その大きなガラスを切り抜くような形でつけられている。
ガラス越しに中を伺い、その扉を開ける。
するりとビルの中へ入っていく里保を追うように、香音も体を滑り込ませた。
天井に埋め込まれたダウンライトは点いておらず、外の明るさに慣れた目にはしばらく少し薄暗く感じられた。
吹き抜けとなった部分は入ってすぐのホールだけで、すぐに天井は低くなる。
短い廊下を、香音たちは静かに進んだ。
左手には機械室や管理室等への扉があり、もちろん締め切られている。
右手には、パイプシャフトらしき部分に並んでエレベーターがあった。
ランプは「5」の部分が点灯している。
それを確認し、さらに奥へと向かう。
目指す階段がそこにあった。
言うまでもないが、エレベーターを使うわけにはいかない。
そりゃ使いたいけど。
ボタンを押したい衝動に駆られるらしい変わった人もいるが、そうじゃなく普通に。
滅多に使われることがないだろう階段は、照明も灯っておらず、なお薄暗い。
「足元気を付けてよ」
そう囁くと、ちょっとムッとしたような頷きと声が返ってきた。
「…分かってる」
だって実際よく転ぶじゃんか。
あ、でも仕事のときはさすがに見たことないか。
703 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 17:31:38.22 0
その後は無言で5階を目指す。
里保は転ぶことなく、淀みのない足取りで階段を上がっていく。
「やっぱりすごいなあ、里保ちゃんは」
少し先を行く里保の姿を見ながら、聞こえない程度の呟きを漏らした。
見ていて、その後ろ姿にまったく隙がない。
例えば今、香音が後ろから突然攻撃を仕掛けたとして、それが成功する気がまったくしない。
あっさりと返り討ちにされるイメージしか浮かんでこない。
加えて、足音や気配の消し方が常人離れしている。
香音の能力を以てしても、意識していなければ気付かないかもしれない。
本当に神様のようなセンスだと改めて思う。
「感心してる場合じゃないや」
若干置いて行かれ気味になっていることに気付き、慌てて里保の背中を追う。
いつまでも背中を見ているだけのつもりはない。
尊敬はしながらも、もちろん対抗心も持っている。
里保と同じにはなれなくても、里保と並ぶことはできるはず。
そう自分に言い聞かせながら、一段一段上がって行く。
里保の背中が、少し近づいた。
………気がした。
704 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 17:33:01.07 0
>>697-703 『リゾナント殺人請負事務所録』
FILE.2〜タイトル未定〜
ダラダラともう少し続きます(多分)
「Interlude」と「FILE」の違いは、短い読み切りものか、無駄な描写や会話で引き伸ばしたものかの違い……なの?
自分でも分かりませんすみませんw
>>319 すみません非常に遅レスですが
>>71のレスは気付いていませんでした(ゴメンナサイ
なのでまったくの偶然?リゾナント?ですw
あまり多くを期待せず読んでくださいね…
705 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 19:35:30.32 0
706 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 20:59:31.41 0
707 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 21:06:41.28 0
708 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 21:24:18.50 0
>>704 期待してます!いや…刑事の件はただの妄想なんでお気になさらずw
りほかの良いですね〜りほりほが香音ちゃんにだけ心を許してる感じとか好きです
709 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 22:32:21.12 0
最近鞘師がきてるねえ
710 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/19(水) 23:31:18.32 0
たまに立て続けに話が出るときあるよね〜作者さんが無意識にリゾナントするんだろうか?
711 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/20(木) 00:03:53.98 0
>>704 更新乙です
高架水槽の話みたいなセンテンスの使い方がいいですね
712 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/20(木) 01:06:29.43 O
おお殺人請負さんきてる
あとで読もう
713 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/20(木) 02:13:33.28 0
おやすみなさやし
714 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/20(木) 06:05:38.11 0
早いけど起きてみるヤシ
715 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/20(木) 07:15:03.36 0
コッハー
716 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/20(木) 10:08:01.85 O
雨ダ
717 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/20(木) 10:47:35.65 O
保全のないスレでは愛せないだろう
718 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/20(木) 12:03:42.12 0
保全請負升
719 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/20(木) 14:05:46.97 O
保全が目立ってなぜイケナイ
720 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/20(木) 16:19:47.13 0
only 保全
721 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/20(木) 17:37:26.27 O
保全でスカスカ
722 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/20(木) 19:19:45.20 0
ああ
723 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/20(木) 19:42:51.56 0
果てしない
724 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/20(木) 20:48:38.33 O
夢を
725 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/20(木) 21:45:50.05 0
追い続け
726 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/20(木) 22:21:38.19 0
それでもきっと
727 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/20(木) 22:51:04.06 O
ほーぜんさん
728 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/21(金) 00:08:41.69 0
ほぜにゃんと
729 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/21(金) 00:09:34.29 0
ミッドナイト清純保全交遊
730 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/21(金) 00:41:14.53 0
ハァハァ…
もう我慢できないよわかってんだろ?
731 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/21(金) 01:01:40.88 0
なんちゅう禁断症状だよw
732 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/21(金) 01:31:46.57 0
atwki問題って解決したの?
733 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/21(金) 02:47:25.30 0
おやすみずきー
734 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/21(金) 03:43:34.78 0
結局「調査はしてます」レベルでその後の情報はなしか
.
【 全スレ共通 真野ネット工作 】
「ヲタが論争してる」 とかふざけたこと言いながら
名無しで全方位叩きして 全く叩かれない 真野恵里菜
平気で「真野ちゃん真野ちゃん」 しまいには「マネティ」とか言い出す
全方位叩きネット工作メン 真野恵里菜
● どのスレも 全部同じ文体で 24時間「自演」 ●
真野恵里菜に 気をつけろ
.
736 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/21(金) 06:19:24.30 O
警戒
737 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/21(金) 06:41:16.08 0
738 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/21(金) 09:15:58.58 0
未来で待ってます
739 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/21(金) 10:59:51.14 O
風の一人言
740 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/21(金) 12:24:57.90 0
光の願い
741 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/21(金) 14:08:35.70 O
神聖ガキさん
742 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/21(金) 14:35:41.58 0
744 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/21(金) 16:47:53.18 0
ほ
745 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/21(金) 18:07:52.04 0
ぜ
746 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/21(金) 18:11:04.53 0
神聖ほぜってちゃん
747 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/21(金) 19:25:29.28 O
ガキさんほぜ
748 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/21(金) 20:44:03.95 0
749 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/21(金) 22:09:17.09 O
e・)
750 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/21(金) 23:36:43.32 O
これもスパイ活動
751 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 00:18:42.93 O
まだスパイ活動してたのかw
752 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 00:46:15.90 0
>>569-576 の続きです
●
日が、落ちかけていた。
背にした夕陽が自身の血で塗り込められたものであるかのように。
「赤の粛清」は、抉られた肩から大量の血を噴き出し続けていた。
その奔流のような激痛、徐々に薄れゆく意識。
全てが、彼女にとって喜びを齎すものでしかない。
「やればできるじゃん、アイちゃん」
一瞬にして「赤の粛清」の右肩を吹き飛ばした、至高の光。
一度戦場に立てば後には屍すら残らないと味方にすら恐れられていた、生体兵器「i914」の能力そのものだった。
「じゃあ、あたしも本気…出しちゃってよいのかな?」
「あんた、まだ…」
その瞬間に、愛は感じた。
予感、というよりも動物的な本能。
すなわち、自らの生命の危機。
753 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 00:47:40.74 0
粛清人が流した血。
瓦礫を流れ落ち細部にまで染み込んだその血が。爆発する。
それまでの爆発とは、桁が違う。瓦礫の山が抉り取られるのではないかと思わせるほどの、凄まじい爆炎が立ち上っていた。
舞い上がる炎がうねり、風を焦がし、愛の頬を撫でてゆく。
襲い掛かる焼け付く空気に、思わず目を細める。そんな中。
天に向かって燃え盛り、夕陽の色と一つになる奔流の流れが、急に変わった。
炎のカーテンを分け入って、愛に急接近するもの。
超高温が髪を焦がすことも、服を溶かすことさえも厭わない。炎と血の色をした粛清人は愛の目と鼻の先の近さにまで迫っていた。
「10秒。10秒、凌ぎ切ったら…アイちゃんの勝ちだよ」
その言葉を口にした次の瞬間には、粛清人の姿は空に掻き消えていた。
違う。あまりの迅さに、動いたという事すら認識できない。
神速のスピードで懐へと飛び込んだ「赤の粛清」が、残った左腕で愛のボディに猛烈なインパクトを叩き込んだ。
「がっ?!!!!」
条件反射で腹部を光で護ったにも関わらず。
爆発の衝撃がダイレクトに愛を襲う。千切れる肉、軋み折れるあばら骨。破壊力が波のように全身を駆け抜けた。
754 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 00:49:35.28 0
A−MAX。
「赤の粛清」の、文字通りの切り札だった。
元々はダークネスに在籍していた、元ダンデライオンのメンバーだった柴田あゆみに搭載されていた能力増幅装置。心臓に直接作用
する事で、心肺能力はもちろんのこと、血に由来する能力。つまり「赤の粛清」の爆発性の血液の効果までも高める。有効時間はわ
ずか10秒。だが、そのわずかな時間を経過してなお立っていられる生物が地上に存在するのか。
粛清人は、そんな生き物を見たことが無かった。
腹への一撃で、体ごと後方へ吹き飛ばされる。最初から足が大地の一部であるかのように踏ん張り、転倒を免れた愛をさらに赤い死
神の追撃が畳み掛けた。
あたしは、失敗作。
至高の光の能力を求めて生み出された生命体、という出自から、陰で何かと比較されていたのを赤い少女は知っていた。その気にな
れば世界をも滅ぼすことができる能力からすると、自らの力のなんとちっぽけなことか。
A−MAXを発動した時から、粛清人の頭の中にはデジタルな数字がぼんやりと浮かび上がる。10の数字が、9に。8に。カウン
ト数が減る度に、マシンガンのように打ち出された「赤の粛清」の拳が愛を容赦なく叩きのめす。
愛は、防御すらままならない。
脇腹にめり込んだ拳を払おうとすると、今度は逆の死角から鋭いキックが飛んでくる。
それを腕で防御すると、鉈のような下段蹴りが愛の腿を粉砕する。
止まらない、攻撃の連鎖。インパクトの瞬間に爆発の衝撃波が発生し、深刻なダメージを与える。愛が光の能力の使い手でなければ、
この時点で確実に命を失っていただろう。
755 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 00:50:56.54 0
「こんなもの?こんなものなの?違うでしょ!!」
流れるままに蹂躙される愛を見ながら、「赤の粛清」の振るう拳は決して弛められない。
馬乗りになり、吹き荒れる爆風とともに愛を殴りつける。
もちろん愛とて何もしていないわけではない。
光を携えた右手で、左手で防御を試みようとする。けれど、叶わない。
護りに回った右が弾かれ、左が打ち払われる。その一撃が、彼女の両手を粉砕していた。
赤き死神の心臓が、極限まで押し潰され、反動で限界まで拡張する。
その絶え間ない繰り返しが彼女に絶大な力とジェット噴射のような血流を与えていた。
本来は人体を機械改造したものにしか扱えないA−MAX、それを「赤の粛清」は生身の生体である自らの体に導入した。
効果は絶大、だが反動もまた凄まじい。
そのことを、粛清人は自らの身をもって経験していた。
限界が近い、か。それでも、構わない。
あまりの血の流れに、スマイレージとの戦いで付けられた傷から、そして血流の過負荷が起きている箇所から激しく出血し始める
「赤の粛清」。流れ落ちた爆発性の血は地面に流れるたびに小規模の爆発を起こしていた。
この子を葬ることができるのなら、この命…いつでもくれてやる。
愛を倒すこと。
それ自体が「赤の粛清」の存在理由となっていったのはいつの頃か。
「銀翼の天使」に愛を殺されそうになった時か。愛の脱走を許してしまった時か。それとも、培養ポッドの中で研究員たちが「失
敗作」と呟いていたのを耳にした時か。
756 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 00:52:12.12 0
その、いずれでもなかった。
恐らくは、「赤の粛清」が「a625」として生を受けた時から。
決まっていたことなのだ。それはまるで愛が買ってきた小箱のうち、愛がハートを、そして粛清人がスペードを選んだ時のように。
― こんなことばかりするために、生まれてきたんだよ ―
何故か。何時の日か「氷の魔女」が粛清人に言った言葉が蘇った。
彼女の言葉が正しいのなら、今、持てる限りの力を振るっているこの瞬間こそが。
「赤の粛清」、いや、亜弥として生きてきたことの唯一の証明。
カウントは少しずつ、けれど確実にゼロまでの時間を刻んでゆく。
炎と土煙の中、「赤の粛清」は殴りつけている物体が愛であるかどうかすら認識できなかった。
ただ、めり込む拳から伝わる。消えゆく温度、そして消えゆく命を。
さあ、フィナーレだ。
カウントがゼロになった瞬間に、残りの全ての力を愛の心臓に叩き込む。
それで、本当に終わりだ。
徐々に晴れてゆく視界、眼下には全身を痣だらけにして倒れている愛の姿があった。
「終わりだよ。アイちゃん」
「ほやの」
命の源を粉砕しようと拳に力を込めたその時。
愛の打ち砕いたはずの右手が、ゆっくりと「赤の粛清」に向けられているのが見えた。
そうか。この瞬間を狙っていたのは自分だけではなかったんだ。
757 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 01:01:25.83 0
例えば。
息継ぎなしでプールを泳ぐとする。
ラストスパートをかけるその直前に。顔を出して一呼吸をするその一瞬。
それは、好機であると同時に危機にもなり得る。
一呼吸のためにあげた顔を外的な力で水面に押し付ければ、たちまち泳ぎは崩れてしまうだろう。
ある時はコインの表裏に、そしてある時は糾える縄に例えられる事実の、表裏一体。
愛は、その一瞬の機会を決して見逃さなかった。
いや、最初から狙っていたとすら言えよう。
特に彼女の使うような、力を一点に束ねれば束ねるほど威力を増す、光の力にとって、一瞬だけを狙い撃つというのはむしろ好都合。それを、最後の最後で「赤の粛清」は思い知らされる。
たった1秒にも満たない時間なのに。
粛清人には、その時間がひどくスローモーションのように思えた。
愛がゆっくりと手のひらを正面に向け、そしてそこからゆっくりと柔らかな光があふれ始める。
比喩ではなく、彼女はその光景に見とれていた。
美しいとさえ思った。
もしかしたら、自分はこの光景をずっと見たかったのかもしれない。
全てを悟った瞬間。
まばゆい光が矢となって、粛清人の胸を一直線に貫いた。
758 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 01:03:43.01 0
〇
スペードの剣が、心臓を切り裂く。
この世で最も醜いものを小箱に閉じ込めた時に、願いは叶う。
愛もまた、「赤の粛清」と同じように望んでいたのだ。彼女の死と引き換えに訪れる、彼女自身の平穏を。
あふれ出す血液がまるで空を染め上げたかのように、見渡す限りの赤で覆い尽くされていた。
日は沈み、その残骸だけがいつまでも宙を漂い続けている。
地に崩れ落ちた、かつて粛清人だった亜弥を、愛が座り込み抱き上げる。
その表情には、微塵の悔恨すら残っていなかった。
あれほど望んでいた、愛を葬ること。
それが今では、燻りさえ残っていない。
自らが命を失うことで、その願いが叶わないからか。
もしかしたら、望んでいたのは愛の死ではなく、自らの死なのかもしれない。
消えてゆく命の中で、亜弥はそんなことを思っていた。
「赤いね」
愛は空を見上げたまま呟く。
「知ってる」
亜弥が耳元で囁く。
彼女自身が存在したという証のような空の色に、思わず目を細めた。
「だって、血の色だもん」
急に、眠気が襲った。全ては、終わったのだ。
愛は、くたびれた身体をぐったりと亜弥に預けた。
ゆっくりと、温もりが消えてゆくのを感じながら。
759 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 01:08:16.76 0
760 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 02:39:32.33 0
hozen
761 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 03:51:50.94 O
おやすみずき
762 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 06:14:17.82 O
763 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 09:07:21.59 0
>>759 同時並行でいろんな場面を書けるのがすごいですねえ
あと広い世代にわたって色んなネタを織り込みつつ書けるのも
764 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 11:18:52.84 0
おは
765 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 13:18:35.95 O
昼
766 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 14:40:50.86 0
時空を超え
767 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 15:36:27.98 O
スレを超え
768 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 16:53:57.88 0
超えて〜 超えて〜 超えて〜
769 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 17:42:09.18 O
週末ホゼナンだゼーット!
770 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 18:05:54.70 0
ももクロだっけそれw
771 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 20:06:31.87 0
落ちるわよ
772 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 20:28:19.92 0
休日だけど人が居ないね
773 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 20:54:32.67 O
逆に考えるんだ
休日だから人がいないんだ
774 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 21:46:03.95 0
浮上
775 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 22:48:47.38 O
さくスレ400上
776 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 22:52:54.25 0
'14の中で近距離戦が似合うのって誰だろう。拳で語り合うみたいな。
777 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 23:01:59.48 0
778 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 23:25:41.91 O
ダンスの得意な鞘師や石田
あと細マッチョな生田なんかは適役かと
工藤もイメージだけは合うけど実情は貧弱ヘタレチワワ……
779 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/22(土) 23:26:42.60 0
>>777 えりぽんカッケーw
ナイフ投擲が似合う子とかでも良いかな。
780 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 00:31:21.84 0
ぽんぽんの徒手対決を想像すると楽しいw
781 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 00:37:52.64 0
片方のぽんには前面に鉄壁の防御が……
782 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 02:02:07.32 0
絶壁の防御?
783 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 02:15:03.05 0
リアル山おんな壁おんな
784 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 02:52:55.38 0
連休だし手つけてなかった長編でも読んでみようかな
785 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 06:23:50.11 O
まだ読めてない作品たくさんあるわ
786 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 07:37:24.38 O
おは
787 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 08:10:02.81 0
リゾスレあるある
昔の話を読みきれていない新参と
新しい話を読みきれていない古参
788 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 08:29:43.23 0
あるあるw初期と最近分読んでるけど中期(小春卒業前後)が読めてないんだよなぁ
789 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 09:33:27.36 0
古参と新参と中間管理職(?)それぞれのおススメシリーズを聞いて読めばいいねw
790 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 10:42:57.18 0
中間管理職求むw
791 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 10:53:18.38 O
一更新完結型は読んでるけど長期連載は読む時間ないのよ
Яとか完結したら読もうかなとは思ってるけど
792 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 11:06:46.84 0
それもまたあるあるですなw
そう思ってて完結したのに読めてないシリーズもあったり
793 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 12:46:54.58 0
お昼なんと
794 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 12:48:35.14 0
逆に短編はいつでも読めると後にしたら…未だに読めてないとかw
795 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 14:19:25.52 0
分かるw
796 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 14:32:14.37 0
あと短編は期間空くとどこまで読んだか忘れちゃうwスレ毎に読んでるんだけど量が多すぎて…なんかオススメの読み方あるかな?
797 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 15:49:38.72 0
どうなんだろうね
798 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 16:21:45.87 0
短編だったら更新されたら即読みってのが一番いいと思う
2〜3分で読めるしね
799 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 18:36:00.06 O
ほぜ
800 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 18:52:10.25 0
短編は懇切丁寧に保管庫さんがあらすじ等書いてくれてるから気になるのを読んでもよいのでは
801 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 19:49:39.88 0
なん
802 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 20:59:20.55 0
でん
803 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 21:58:02.58 O
よん
804 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 22:19:02.31 0
でん
805 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/23(日) 23:20:04.86 0
なんでんよんでん?
806 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 00:09:08.29 0
なんでん○んでん風の新メニューか
807 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 01:32:18.77 O
おでんか
808 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 02:29:34.64 0
タケちゃんおやすみ
809 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 05:00:58.32 0
おぱ
810 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 09:11:07.80 0
ぉぱよ
811 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 11:06:00.36 O
さあ今日からまた一週間はじまるよ
812 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 11:55:10.66 0
保管庫管理人さんからの業務連絡来てますね
813 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 12:47:12.45 0
これから先は生ログたどって検索する不便な方法でしか作品閲覧できないのか
よそから来たバカな嫌なんとかとかいう連中のおかげで飛んだとばっちりだわ
814 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 12:57:45.48 O
まあ今まで編纂していただいただけでもありがたいと思わないと
色々お疲れ様でした
815 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 14:03:03.65 0
ほぜ
816 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 14:57:08.68 0
あ、という事はもう記載は無くなるのね・・・。
まとめ主さん今までお疲れ様でした。
817 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 15:20:28.39 0
色々と言葉の裏も読めそうではありますけどw
とにかく現状の方式ではまとめは難しいというのが「公式発表」ということでしょうね
何はともあれひとまずこれまでの作業へのお礼を改めて
本当にありがとうございました
818 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 17:09:33.33 0
保全
819 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 18:09:03.70 0
いつか転載禁止が解ける日を願って…再見
820 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 18:12:58.17 0
てことは次スレからは続き物を書くときはまとめサイトのリンクを貼るんじゃなくて
過去ログそのまま貼ればいいのかな
821 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 18:36:14.17 0
その辺含めて色々とスレ次第なのかなあ
転載禁止に対抗する策を講じるのか…とか
822 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 19:20:38.20 O
うぇ
823 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 19:45:13.63 0
おぇ
824 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 20:50:41.22 0
業務連絡ってどこに書いてあるんだろう?まぁ何はともあれ…まとめさん今までありがとうございました!あなた方のおかげでリゾスレに出会えた
825 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 21:57:37.73 0
826 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 22:10:25.28 0
サンクス!なるほどね〜残念だけど仕方ないね…でも転載禁止ルールもなんかあやふやだよなぁ
827 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 22:26:12.58 0
とりまオイラは 必ずしたらばに同時に上げて行こうと思うんだが…
そしたらまとめていただけるのかしらん
828 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 22:42:58.07 0
どうだろうね
狼にも同じ内容のものがあれば転載には変わらないことになってしまうから
管理人さんの気持ちを汲むと難しいところだなあ
829 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 22:48:54.31 0
この際だからお引っ越しする?まぁ狼以外だと寂れてしまう気もするけど…
830 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 22:54:34.86 0
まずしたらばから狼へ転載という建前にするんだがね
831 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 23:12:01.59 0
あくまで投稿先はしたらばでそこに上がった作品をまとめ収録している
そして狼にも転載……って体裁だね
832 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 23:20:54.89 0
うわーなんかややこしいな
そこまでして書いてくれる作者さんいるのかなぁ…
833 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/24(月) 23:37:25.02 0
つまりしたらばの巻き添えスレとかにも同じヤツを載せれば
何とか言い訳はつくのかな?
834 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 00:03:03.18 0
まあ代理投稿については完全に問題ないわけだし
最近あまり書いてない作者だけど したらばと本スレを同時に開いて順次投下していくくらいはするよ
面倒な作者さんは今まで通りしたらばに上げてくれれば別にいいでしょ
…それでまとめの人が納得するかだけど
835 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 00:23:37.41 O
そうね
まとめの人次第だわな
836 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 01:19:10.06 O
あるスレでは斧にテキスト上げてから狼に投稿という形をとってるね
これだと書きためたやつそのまま上げるだけだから負担少ないかなぁ
837 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 05:09:09.90 O
おはなんと
838 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 08:08:18.33 0
収録自体はしてもらえるみたいだからあとは作者さんや住人の考えかもね
839 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 09:48:33.53 O
あたらしい朝がきた
840 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 11:26:13.96 0
続きをどうするか…
841 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 12:56:28.21 O
ほ
842 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 14:16:12.68 0
昼だ
843 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 15:29:18.05 O
3時だ
そろそろ落ちるよ
845 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 18:21:10.18 0
あぶね
846 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 19:43:53.71 0
ノハ´’v’ソ<スレを470ほど上へ飛ばします☆
847 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 20:21:16.08 O
ありがとうさくら
848 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 20:29:48.33 0
したらばから転載↓
本スレでも議論中のことに関して・・・
もしこの板からの転載という体裁をとるのであれば、このスレタイはまずいですよねw
↓こんなスレを新たに立てますか?
【転載】リゾナントな作品を上げてみるスレ【許可】
書いたお話や描いた絵等を上げてみるスレです。
・上げた作品は誰かがどこかにまとめてもよし、某板某スレに転載してもよし…という方はお使いください。
・むしろ某板某スレへの転載は、可能な限り自分で即座にやっちゃいましょう。
・自分ではできなくて誰かに頼みたい場合は、その旨をきちんと明記しましょう。
・アンカーをつけるなり、作品ごとの切れ目を分かりやすくしておきましょう。
・作品にタイトルをつけたい人は、それもこちらでちゃんと付記しましょう。
他に書いておけばいいこと(及びこれ書いちゃまずいんじゃない?)ということがあれば…。
※今の保管庫管理人さんに対して「これでいくから今まで通りまとめてね」という意味ではなく、先のことも考えてとりあえずこうしときますか?ということです。
849 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 20:31:27.73 0
ようは今まで通りって事かな?
850 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 21:11:42.80 O
転載許可のタイトルは変な連中に難癖つけられそうだが
851 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 22:04:24.69 0
本スレにそのまま貼っちゃダメでしょ
わざわざ向こうに書いたんだろうし
話が通じなくなってる
852 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 22:12:20.20 0
方向性が決まるまで投稿してよいものか迷うね
853 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 22:19:12.03 0
迷う方はとりあえずしたらばにどうぞ こちらへ転載しますよ
854 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 23:17:33.90 0
ほぜー
855 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 23:25:14.44 0
すみません代理依頼用スレに貼ったらそりゃ転載した方がいいのかなって思いますよねw
こっちで大々的に話すのもあれかなーとしたらばに書いたのですがどんなものでしょうね
作者さんたちの中にはそこまでして収録してもらわなくてもいいよという方もいるでしょうけど
読者にとってみればやっぱりまとめられていてほしいですし・・・
856 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/25(火) 23:36:12.24 0
作者だけど収録はありがたいよ
自分じゃデータ保存できない環境だから
857 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 00:21:55.12 0
やっぱりまとめサイトが無くなるのはつらいなぁ…
自分みたいにリゾナントブルーが好きになる→動画漁っていたらなんか小説がある?→読んでハマる→リゾスレにたどり着く→ホゼナンターになるって変わり者もいるしw
逆にまとめサイト出会わなければ狼中毒になる事もこんなにハロプロにはまることもなかったなぁw
858 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 01:53:19.17 O
おやすみなさやし
859 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 03:19:56.57 0
ああっふっふう
860 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 05:53:09.00 O
おはようだーいし
861 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 07:14:08.15 0
がんばっていくたー
862 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 09:39:48.55 0
全国同時リゾナント
863 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 09:49:17.96 O
全国同時ああっふっふう
864 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 11:05:58.79 0
>>857 こんな人もいてくれるんだ
古参としては嬉しいw
865 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 12:06:19.58 O
ヒルナントデス
866 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 12:12:48.23 0
>>857 すごいね これまでの作品どれくらい読めたのかな?
867 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 13:53:54.53 O
歴代のまとめさんには感謝しかない
868 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 15:31:27.62 O
収録作品数が1000を超えるって実は飼育以上なんじゃないか
869 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 15:41:22.34 0
1000どころか2000超えてる
時空と宇宙も超えていきそう
870 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 17:21:46.90 0
ちょっと今から上げてみます
したらば行ってから
871 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 17:35:35.04 0
>>704の続きです
※一部不愉快な描写がありますゴメンナサイ
「ACT企画の社員6人。宗玄洸。計7人」
再び、一つ一つ確認するように里保が呟く。
その視線の先にある事務所の扉を、香音も壁の陰からそっと窺う。
何の変哲もない…という言葉が似合う、ごく普通の片開き戸。
クリーム色の扉に銀色のドアノブ。
上部が四角く切り取られ、そこに嵌め込まれたすりガラスには、社名を切り抜いた塩化ビニルのフィルムステッカーが貼られている。
セキュリティめいたものは一切取り付けられていない。
「無防備だね」
「だね」
半分呆れたように言う里保に、頷きを返す。
表の監視カメラの件といい、「危機管理」への意識が低いのだろう。
「まあ、あのおぼっちゃんならこんなものだよね。いかにもって感じしない?」
「あたしは直接会ってないから分かんないけど」
呆れの向こう側に覗く冷笑めいたトーンに、あれ?珍しいなと思う。
どのような場合にも「標的」を客観的に俯瞰するのが里保のスタンス……と、香音は感じている。
故に、こういった、相手を見下すような発言を聞くことはあまりない。
ただまあ…今日は相手が相手だけにね。
このような「業界」に身を置いていれば、(人殺しを職業にしている自分のことを棚に上げて)眉を顰めたくなる人間に会うことも多い。
そんな中にあっても、今回の「標的」である宗玄洸は、もし「眉顰めさせランキング」なんてものがあればきっと上位を争うに違いない。
872 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 17:36:06.23 0
宗玄洸。26歳。O型の牡牛座。
ソウゲン貿易 代表取締役 宗玄幸(みゆき)の跡取りドラ息子。
そして……最悪最低の変態性犯罪者。
「女子小学生連続監禁殺害事件」として世間を騒がした事件がある。
その名の通り、小学生の女の子が不定期に拉致され、監禁され、暴行され、そして殺害された事件。
報道に堪えない部分も多く、大部分のメディアでは明らかにされていないが、犠牲になった女の子たちは、それは酷い有り様だったらしい。
「その名の通り」とは言ったものの、実際にはそんな名称では到底表せないほどに。
山林に、廃倉庫に、埠頭に――無造作に打ち捨てられていた遺体は、そのすべてが全裸だったという。
全身は、打撲の跡、擦過傷、切り傷、火傷等、その時々によって、異なる傷で埋め尽くされていたらしい。
その中にあって共通していたのは、下腹部の裂傷。
すなわち―――
小児性愛――いわゆるところのペドフィリア。
そちらの方面はあまり詳しくないのでよくは分からないが、洸がそういった性的嗜好を持っているのは確かだろう。
それも、ただの小児性愛ではなく、虐待や殺害を行なうことで性的興奮を得る類の。
少なくとも、香音にとって誰かの命が奪われ喪われるのは日常であり、だから、そこにさしたる感情は湧かない。
その感情が、死者の年齢や性別によって左右されることもない。
里保にしても、そしてこの「業界」に身を置く者の多くにとっても、それはおそらく同じだろう。
それでもなお、この件にはやはり不快感を覚えずにはいられない。
一般的な観点から見た「正義感」や「倫理観」などといったものは、職業上、もちろん香音は持ち合わせていない。
だからきっと生理的、本能的なものに近いのだろう。
さすがの里保も、同じような嫌悪感を知らず覚えているのかもしれない。
……と思ったけど、それだけじゃないかな?
結局はこれも道重さんに繋がってきそうな気がする。
アイツが事務所に来たとき、道重さんに向かって何らかの暴言を吐いたことに腹を立てているのか、それとも他に……?
まあ、あんまり根拠はない、ただの勘なんだけど。
873 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 17:36:39.10 0
「事務所内には全員居る?」
「…うん、いるね。7人」
里保の問いかけに、“音”を探ってそう返した後、また思う。
あ、また普通に手伝っちゃったよ。いいのかよ。
まさかあたしのことただの便利な道具と思ってないだろうね?里保ちゃん。
「よし、行こう」
「うん」
特にこだわる様子のない里保に小さく頷き返し、ドアの前まで移動する。
すりガラス越しに影が映らないよう身を低くしたまま、室内の様子を改めて読み取る。
椅子の軋み。キーボード打鍵。めくられる紙束。
話し声、咳、呼吸音。
様々な“音”が集まり、香音の頭の中でぼんやりとした景色として構築されていく。
正面右奥に1人。一人掛けソファらしきものに座って(ふんぞり返って?)いる。
これがおそらく洸だろう。
その隣に、1人が立っている。
すぐ近くで、3人が対面して座り、紙束を回しながら会話している。
その傍らに立っているのが1人。
最後の1人は、少し離れてパソコンを操作している。
「あ、香音ちゃん、さっきも言ったけど、今日はうち一人でやるから」
「…どうぞ」
ここへきての念押しに、内部情報の報告はやめ、ただ手の平を上に向ける。
あたし、あなたの線引きが分からないです、鞘師さん。
874 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 17:37:10.92 0
まあどちらにしろ、相手が戦闘態勢で待ってでもいるならともかく、現在の室内の状況を知ることにさほどの意味はない。
ドアを開ければすぐに分かることなのだから。
香音がそう思うのと同時に、里保はゆらりと立ち上がり、ドアをノックした。
返事を待たず、ノブを捻ってドアを押し開ける。
そのまま流れるような動作で事務所内へと入っていく里保の後に、香音も続いた。
室内の状況は、香音が思い描いていた景色にほぼ合致していた。
そのことに一人満足しながら、成り行きを見守る。
「なんだぁ?ここはガキの来るところじゃねぇぞ?どっから迷い込んだ」
苛立ちと困惑の混ざり合った表情を浮かべながら、立っていた一番下っ端らしき若い男がこちらへと歩み寄ってくる。
うん、やっぱり「危機管理」の能力ゼロだねこれは。
立地からして、誰かが迷い込むような場所じゃ絶対にないんだからさ。
「お前…?あんときあの事務所にいたやつじゃねーか」
ソファにだらしなく座って煙草をふかしていた洸が、そう言いながら机の上に乗せていた脚を下ろす。
そこまで気付いていながら呑気なことだ。
なるほど、里保が「あのおぼっちゃんなら…」と言っていたのも無理はない。
「ちょうど今、お前らの話してたとこだ。…おい、見せてやれよ」
顎をしゃくるようにされ、一人がテーブルの上に置かれていた紙を手に取り、にやけた顔で突き出してくる。
内容は見えないが、何段かに分けられて文字が並び、左上には写真がクリップ留めされている。
「お前らんとこの情報だよジョーホー。俺クラスになると、こんくれーすぐ調べられんだわ」
その言い回しに失笑しかけ、辛うじて噛み殺す。
先ほど“聞”こえていた会話からしても、書かれているのはせいぜい「宣材」レベルの情報でしょうに。
875 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 17:37:43.87 0
「で?ワビでも入れに来たのかよ?」
続いて発された一言に、今度は笑いを通り越してある意味感心する。
なるほど、そういう考え方も存在しているのかと、目からウロコの気分だった。
「それがいいぜ、お嬢ちゃんたち。この人、怒らせるとこえーから」
「土下座な、土下座」
「もちろん全部脱いでからな」
「ぎゃはは!こんなガキの裸見て誰が得すんだよ。あ、若か」
「あぁ?俺からしたら年増だっつーのこんなの」
「マジっすか。筋金入りっすね」
里保は黙ってそれらの雑言を受け流している。
もちろん、ただ立ち尽くしているのではなく、計っているのだろう。
ひとたび動き始めてから、全員を無駄なく確実に倒せる手順とタイミングを。
「つーかよ、ワビ入れるにしてもお前らじゃ話になんねーだろ。こいつに来させろよ、このオバサンによ」
だるそうに移動し、“情報”の書かれた紙をつまみ上げながら、洸は煙をさゆみの写真に向かって吹き付ける。
同時に、水面のように静かだった里保の心音が、僅かに揺れた。
おい?里保ちゃん……?道重さんのこと、もしかして割と本気だったりする?禁断の恋ですよ、それは。
「あーこの子の全裸土下座ならちょっと見てーわ」
「いいね、俺も俺も」
「ま、土下座じゃ終わんねーけどな」
「しばらく飼って、ヤリたい放題のオモチャコースだな」
「若、例のクスリまだあるんでしょ?」
「クスリ?ああ、あんぜ。パパに言えばもらえる」
ソウゲン貿易(裏)がメインで取り扱っているのは、そういえば非合法の怪しげな薬類だったなとその言葉で思い出す。
ちなみに他には、銃器であったり、臓器であったり、それから人間そのもの…なんてこともあるようだ。
876 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 17:38:15.53 0
「ま、そんなわけだからよ、とりあえずあのオバサンとっとと連れてこいよ」
言いつつ、洸は手にした煙草を写真に押し付ける。
写真が熱で溶け、歪む。同時に里保の心音も。
…ちょっとちょっと、この程度で?マジですか、鞘師さん。
きっと本人にはあんまり自覚はないのだろうし、恋愛感情とはまた違う気もする。
ただ、こんな程度のことで(僅かとはいえ)乱れる里保を見るのは驚きだった。
表面上はまったく動じていない里保に、洸は手にした煙草を向ける。
「お前はここ残れ。おい、後ろのぽっちゃり。お前がこのオバサン連れてこい」
この野郎!誰が……ぽっちゃりならまあ許す。
里保ちゃんの心音もピクリともしなかったしね!(泣)
「おら、来いよ」
立ち止まっていた“下っ端”が、洸の無言の指示を受け、里保へと手を伸ばす。
「あのとき、道重さんが言われたことを覚えていますか?」
「あぁ?」
伸びてくる手を自然な動作ですっと避けると、里保は初めて口を開いた。
その口調と表情は穏やかで、とても静かだ。
だけど、香音はよく知っていた。
「私、こう見えて……いい腕してるんですよ?」
それが、“豪雨の前の静けさ”であるということを。
877 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 17:39:55.83 0
>>871-876 『リゾナント殺人請負事務所録』
FILE.2〜タイトル未定〜 第2回
今さらですが作中の「おぼっちゃん」については
>>457で挙げていただいた話参照です
したらばが少し重くて手間取りましたすみません
878 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 18:37:50.54 0
恋愛とは異なるにせよさゆへの感情が揺れる鞘師さんが素敵です
仲間がぽっちゃりと言われたのに一切乱れない鞘師さん素敵ですw
879 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 19:44:32.85 0
「私、こう見えて……いい腕してるんですよ?」
この一言に鳥肌たった! 鞘師って本当に道重のこと好きなんだな!w
880 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 20:37:47.35 0
>>864 73話からロムナンター81話からホゼナンターやってますw
>>866 残念ながらそんなに読めてないです…まとめ1の長編と73話以降をリアルタイムで読んでたって感じです
881 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 21:41:19.43 0
ほぜ
882 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 21:47:03.02 O
宗玄洸って
宗 玄洸 かと思ってたw
883 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 21:51:27.16 0
光井嫌いなんでメンバーから外して欲しい
884 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 22:46:09.31 0
何だ急に?ここの作品読んでたら光井嫌いなんて人いないと思ったけど…読んでもいないのに文句付けにきたのか?
885 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 22:52:42.59 0
以下相手するレスは自演だと思いましょう
886 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/26(水) 23:05:57.41 0
>>877 さゆりほが熱い!
ってだけじゃただの萌え感想なので
このあと凄惨な目に遭うチンピラ君たちが哀れでならないw
887 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 00:12:14.07 0
↑
888 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 00:17:29.22 0
>>877 更新乙です
悪党がゲスであればあるほどその先のカタルシスに期待してしまいますね
889 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 00:23:38.93 0
まあ光井に関しては好きな人ばかりじゃないんで
ある程度慎重な取り扱いするに越したことはないだろう
890 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 01:00:12.89 O
殺人請負さん人気凄いなあ
891 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 01:27:24.35 0
自演じゃない事を祈る
892 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 03:20:48.93 0
おやすみなんと
893 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 05:06:49.04 O
>>891 さすがにその書き込みは神経疑うわ
他の作者さんだって4つ前後はレスあるのに
894 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 07:43:42.19 0
おはようです
895 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 09:08:20.23 O
おはなん
896 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 10:25:09.81 O
と
897 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 11:27:02.60 0
お昼だ
898 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 12:12:48.19 O
めし
899 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 12:28:27.16 0
>>891 www
私も自分で無意識のうちに自演してないかずっと不安ですw
あと誰かが気を遣って大人数を装ってくれているんじゃないかと
900 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 13:55:54.46 0
どんな気遣いw
901 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 14:16:20.67 O
考えすぎだわw
一週間から二週間のスパンで常時作品あげてくれる作者が三人程度
たまに書く程度の読者寄りの作者が三人程度
ここんとこご無沙汰だけどスレはチェックしてる読者が三人くらい
そう考えればレスが5つくらいついても何ら不思議ではないと思うけどねえ
902 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 16:17:06.56 0
あげとく
903 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 18:12:03.67 0
あげるのだよ
904 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 19:13:05.21 0
905 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 20:23:45.65 O
緊急ほぜなんと
ホゼナント。
907 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 22:04:11.99 0
落ちるぞ
908 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 22:59:31.49 0
アラザシがなんだって?
909 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/27(木) 23:22:53.52 0
>>891とか少し前からいるバカだろ スマだのベリキューだの9期10期の話だけが好きなんだよ
そっちだけが好きなら勝手に自分でスレ建ててそっちを伸ばせばいいのにw
910 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/28(金) 00:13:27.93 0
>>909の脳内では殺人請負に9期10期は出ていないことになってるらしい
911 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/28(金) 01:22:05.22 O
よいしょ
912 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/28(金) 01:37:23.94 i
保つ!
913 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/28(金) 03:25:39.47 O
おやすみずき
914 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/28(金) 04:20:15.00 0
おやすみ日本
915 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/28(金) 07:50:43.90 0
おはよう世界
916 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/28(金) 09:13:20.44 O
おはよう宇宙
917 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/28(金) 11:50:03.78 O
ほ
918 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/28(金) 12:48:36.06 0
ぜ
919 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/28(金) 13:35:50.07 O
ん
920 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/28(金) 16:13:04.01 0
バス
921 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/28(金) 17:40:29.22 0
どんなバスや!
922 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/28(金) 18:12:00.78 0
ホゼナンターがたくさん乗ってるのか
923 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/28(金) 18:15:37.23 0
風呂かも
924 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/28(金) 19:34:25.56 O
夕飯かも
925 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/28(金) 20:41:56.94 0
泣いちゃうかも
926 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/28(金) 21:34:17.99 0
Beyond the time and space
927 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/28(金) 22:19:52.47 0
トキソラが想像以上に良かった
928 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/28(金) 22:59:50.41 0
時空はMVもっと頑張って欲しかった
929 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/28(金) 23:30:04.07 O
略称はトキソラなのか
時超空超かと思ったのに
930 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 00:17:41.93 0
次長課長みたいに言いなさんな
931 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 00:19:36.41 O
ノハ´’v’ソ<スレを400ほど上へ飛ば…あれ?
932 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 01:25:14.97 0
>>752-758 の続きです
●
襲い掛かる「戦獣」たちを撃退し、建物の潜入に成功した春菜・亜佑美・優樹・遥の四人。
鉄製のドアを潜り抜けた途端に、遥は自分の体が引き攣るように硬直するのをいち早く感じていた。似ているのだ、この場所は。
「どうしたの、どぅー?」
「い、いや。何でもないから」
気丈に振舞う遥、しかしその異変にいち早く気づくものがいた。
ともにあの施設で過ごし、多くの見たくないもの、忘れたいものを見てきた仲間。
「思い出してるんだね。あの日々のことを」
「はるなん…」
白いローブに身を包み、質素を美徳に掲げた新興宗教団体「FACE」。
しかしそれはあくまでも仮初であり、真の姿は能力者の子供達をかき集め、苛烈な人体実験の対象にする事で上部組織、つまりダー
クネスから利益を享受する機関に過ぎなかった。
春菜と遥もまた、「FACE」の能力者スカウト部の手にかかり、長い監禁生活を強いられた。それは、高橋愛が率いるリゾナンターによ
って組織が壊滅するまで続くことになる。
だからこそ、本能的に感じるのだ。
この研究所と「FACE」の、類似性を。
突然、乾いた音が数度、建物内に響く。
遥が自らの頬を両手で叩いたのだ。
「ちっくしょう!!!」
それは、遥自身の苛立ち。
過去を振り返り気弱になっている心への、叱咤。
933 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 01:26:00.60 0
「関係ねえよ!ったく、行くぞ!!」
勇んで先陣を切る遥の姿に、春菜はどうしても危うさを感じてしまう。
自分が「FACE」に攫われた時は、既にある程度の年齢を重ねていた。だからこそ、異常な場所への耐性が少なからずあったのか
もしれない。けれど、遥は。
「こらぁ!先走るんじゃないよ、DOどぅ!!」
駆け出す遥を見て、優樹が後ろから強烈なタックルをぶちかます。
華奢な遥は不意を突かれたこともあり、ばったりと優樹もろとも倒れてしまった。
「いってーな、何すんだよまーちゃん!!」
「さくらちゃんを助けるんだよ!みんなで!!」
「わかってるよ!わかってるからどけって!重いっつーの!!」
サンドイッチになりながら、口論を始める二人。
ただ、下の具になってる遥の表情からは、先ほどのような険は消えていた。
「なーにしてんの、はるなん」
「あゆみん」
思いつめていた春菜を気にかけていたのか、亜佑美が並んで声をかける。
そうだ。何も心配することはないじゃないか。亜佑美、優樹、遥。そして自分がいる。四人の先輩が、道重さんや田中さんもいる。
そう、思い直す。
「ううん。何でもない」
もしかして危うかったのは、自分だったのかもしれない。
首を横に振り、通路でじゃれあっている二人の子供を追って走り出そうとしたその時。
934 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 01:26:36.40 0
「あゆみん、待て!!」
遥の「千里眼」が、何かを捉えたのだ。
「どぅー?」
「そっちの角の向こうから、誰かが来る!人数は…くそ、この建物、すっげえ見づらい!!」
しかし、建物自体にかけられている能力の効果を弱める力が「千里眼」の効果を阻害する。
誰かが近づいてきているのは確実だが、詳細が掴めない。
やおら臨戦態勢に入る四人。
ただの研究員なのか、それとも能力者か。どちらにせよ、警戒はすべき。
行動に移したのは相手方。
突如、角から姿を現したのだ。
「出たなダークネス!くらえ、まーちゃんパンチ…」
「ここで会ったが百年目!えりの精神破壊で頭ん中焼き尽くしてやるけん…」
互いの目が、相手を視認する。
だがそれより前に、優樹の元気なグーパンチが衣梨奈の顔面にヒットしていた。
935 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 01:27:39.57 0
○
「もう、優樹ちゃんいきなり殴ることなかろ!」
「イヒヒ、うぃくたさんごめんちゃい!!」
あまり反省のない優樹を前に、衣梨奈も怒る気が失せていた。
そんな二人を先頭に、合流した8人のリゾナンターたちが研究所内を進んでゆく。
互いの心の声が聞こえなくなるくらいの、強い阻害力。
それが、建物全体に及んでいる。
恐らく後からやって来るさゆみたちと意思疎通を図るのは不可能だろう。
「道重さんを待ってる時間はない。田中さんとさくらちゃんを、助けないと」
自らの意志を示すように、里保が一歩前に出る。
いつまでも先輩たちに護られているわけにはいかない。自分たちだけで難敵を相手にしなければならない場合は、これからもやって
くるであろう。例えば、「赤の粛清」と対峙した時のように。
通路を右に曲がり、左に曲がり、さらに右に曲がる。
迷路のような構造は外敵の侵入を防ぐためか、それともこの建物に改築を施した主の気まぐれか。
「さすがに、目が回ってきた…本当にこの先に田中さんとさくらちゃんがいるのかなあ」
「でも、何となく近づいてるような気がします。そう感じるんです」
根を上げる香音に、春菜がそんなことを言う。
「五感強化」された春菜の感覚が、訴えている。この先に”危険な何か”が待ち受けていることを。
936 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 01:28:38.63 0
「はるなんが言うんなら間違いないよ。みんな、いつでも戦闘に入れるように準備だけはしておいて」
いつになく気合の入った聖の言葉とともに見えてくるのは、無骨な鉄の扉。
鉄の板にドアノブがついただけのシンプルな扉、だがその奥から漏れ出る異様な空気。全員が、この奥に何かがあることを確信した。
「ここ、明らかに怪しいね」
「…一気に行くよ」
亜佑美と里保が扉の両側に陣取った。
能力が抑えられている状況では衣梨奈のピアノ線が文字通り、戦闘の生命線となる。彼女が扉を開けて糸を張り巡らすのと同時に、
今のリゾナンターの攻撃の両翼が先頭に打って出る。という算段だ。
「…新垣さーん!!」
何が起こるかはわからない。神頼みならぬ愛しの先輩頼み、意を決して衣梨奈がドアノブに手をかけ勢いよく開く。床を這うよう
に、天井を伝うようにピアノ線が繰り広げられるのと同時に飛び出す、亜佑美と里保。
「…あ」
だがそこで、二人の動きが止まる。
彼女たちの目に映ったのは、大小様々な機械・計器とチューブで繋がれたさくらの姿。
さくらを覆う機械そのものが、この部屋全体を巡るケーブルやパイプと繋がれている。研究室と言うよりも、もはや工場という言
葉のほうが似合うのではないかという様相。
937 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 01:29:21.63 0
部屋の中央に鎮座する、機械の塊。
さくらを内包する機械の隣にある、双子のようにそっくりな構造をしたもう一つの機械。
そこにも、さくらと同じように電子機器に取り憑かれている人物がいた。
「田中…さん?」
思わず遥が、口にする。
機械に繋がれて、安らかな顔で眠ったように瞳を閉じているれいな。
だが、普段彼女が喫茶リゾナントで見せている顔とは、様子が違っていた。
その表情には明らかに、生気がなかった。
「たなさたん!!!!!!」
「待って優樹ちゃん!!」
大好きなたなさたんがひどい目にあっている。
そう思うといても立ってもいられず前に飛び出そうとした優樹を、聖が必死に抱きかかえて止める。機械の傍らに、一人の女性が立っ
ていることに気づいたからだ。
「お利口さん。その子が飛び出してきたら、ばっさり斬っちゃうとこだったよ。消耗しててもそれくらいの余力はあるからねえ」
リゾナンターたちは。
その女性の顔に、見覚えがあった。
ダークネスが一組織「キュート」と対峙した時に、全員を異空間へと誘った張本人。柔らかそうな金色の髪、やる気のなさそうな顔。
なのに、凄まじいまでのプレッシャーを放っているアンバランスな存在。
「どうして。どうしてこんなこと!!」
「その質問には私がお答えしますよ」
声を張り上げる亜佑美に呼応するように。
金髪の女の横に突如現れる、白衣姿の女性。
938 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 01:30:42.59 0
「私はダークネスの科学部門を統括している紺野と申します。Dr.マルシェ、のほうが通りがいいとは思いますが」
「ではマルシェさん、改めてお聞きします。さくらちゃんと田中さんをこんな目にあわせて、あなたたちの目的は…一体なんなんですか」
務めて冷静に話そうとする春菜。
だが、顔見知りの少女を、そして先輩への仕打ちを目の当たりにして落ち着いていられるはずもない。自然と、拳に力が込められていた。
「いいでしょう。今回の『実験』の観客にわざわざ志願していただいたんです。実験の概要についてお教えしましょう。まずはさくらを
あなたたちの元へ行かせた理由、からでしょうか」
紺野が眼鏡を手で弄りながら、思い出すかのように言葉を探す素振りを見せる。
「さくらをあなたたちリゾナンターの元へ誘導し、そして時間を共有させた理由。それは彼女が愛ちゃん…あなたたちの先輩である高橋
愛のデータをベースに造られたことと関係しています。まあ、さくらにあなたたちと交流を持たせ、苦悩のうちに離脱させるという副次
的な目的もあったんですが、それは別の機会に。話を戻しますが。リゾナンターと交流させることで、彼女のもう一つの特性である『反
共鳴(アンチリゾナント)』をより顕著な形で引き出すこと、それが今回の『実験』における主目的の一つです」
まるで、勝手にあふれ出す水のように。
すらすらと言葉を紡いでゆく白衣の科学者に、その場に居たリゾナンター全員が困惑と怒りの感情を抱いていた。
もちろん紺野は話の主目的にまで辿り着いていない。にも拘らず問答無用で伝わる、決して良いものではない意図。
「では、なぜさくらの『反共鳴』を引き出さなければならなかったか。それは、我々が『共鳴』の力を手に入れるために必要な要素だ
ったから」
キョウメイノチカラヲテニイレル。
言葉が、頭に入ってこない。誰もがそう感じていた。
「共鳴の力は大まかに言えば、発信側と増幅側が呼応して発するもの。かつては愛ちゃんと田中れいな。今はあなたたちと田中さん、
でしょうか。その愛ちゃんの役目を、『反共鳴』の特性を持つさくらに置き換えるとどうなるでしょうか」
言いながら、紺野が左手を挙げた。
それを合図に、さくらとれいなを取り囲んでいた機械が激しく唸りだす。
939 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 01:32:02.84 0
建物全体が揺さぶられるような感覚。だがそれを引き起こしているのは地震の類ではない。がたがた、がたがたと機械全体が揺れて
いる。まるでこれから始まることを恐れているかのように。
機械に取り付けられたアナログの、デジタルのメーターの数値が乱高下し、そして。
凄まじい風が、吹き荒れた。
高温を伴わない爆発、とでも呼べばいいのだろうか。
機械に繋がれている二人が起こした何らかの反応は衝撃波を伴い実験室を駆け抜ける。
吹き飛ばされまいと、身を屈めるリゾナンターたち。
激しく金色の髪を靡かせつつ、平然とした顔をしている「黒翼の悪魔」。
その横で、白衣すらはためかせていない紺野が嬉しそうに話し始めた。
「今。まさに。田中れいなの『共鳴増幅能力』は、さくらに向かって流れはじめています。分かりやすくコンピューターに例えるとインス
トールしているということです。そしてそれが完了した時、我々は念願の『共鳴の力』を手にすることができる」
荒れる突風が収まるのと、一陣の風が紺野に向かって鋭く迫るのはほぼ同時だった。
風を切り裂き、間に立つもの全てを斬り伏せる刃。
里保の下段からの切り上げ、その刃先が紺野に届くぎりぎりのところで、黒い刀身が阻んでいた。
「そのまま斬られちゃってもよかったんですけどね。どうせ立体映像ですし」
「まあ、こんこんを守るのはごとーの役目だし。にしても。剣士はいいねえ。やっぱ同質の人間と戦うのとはわけが違う」
刀と刀の鍔迫り合い。
少しずつ押されてゆく里保ではあったが、気合が、内から溢れる怒りがそれを凌駕していた。
「お前は…お前らは!!人の命をなんだと思ってるんだ!!!!!」
「あなたとリゾナンターとの交戦は許可してませんが。それに、今の消耗した状態でこの子たちとやり合うのは得策ではないと思いますよ」
「はいはいっと」
940 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 01:33:43.18 0
不服そうに里保の刀を弾き、後ろに下がる勢いで背後に発生した黒い闇に身を預ける「黒翼の悪魔」。紺野が操作する空間転位装置「ゲー
ト」によって、悪魔は研究所から痕跡すら残さず消えていった。
「くそっ!!」
刀を鞘に納めることも忘れ、両拳を床に叩きつける里保。
彼女は、悔しかったのだ。狂った科学者の手によって生み出された、哀れな命を救ってやれなかったことを。そしてかつてのリーダーだっ
た愛や、さくらへの仕打ちについても。
「里保ちゃん、落ち着いて」
「フクちゃん…」
そんな中、聖が項垂れる里保に近づき、声をかける。
聖だけではない。リゾナンター全員が、その場に立っていた。
「あの女の人はいなくなった。そこの科学者さんはホログラムだそうで。つまり」
「ここにいるのはあたしたちと田中さんにさくらちゃん。あとはその物騒な機械しかない!!」
春菜が事実を突きつけ、亜佑美が得意げに機械を指差す。
「その機械のバケモノぶっ壊したらそれで終わりだ!!」
「まさがそのへんてこなやつ、どっかにふっ飛ばしちゃうんだから!!」
続いて、遥と優樹が。
その瞳は二人の奪還という揺るがない未来しか見えていない。
「透過能力があるからどんな妨害も通用しないし!!」
「邪魔しようもんなら、ぶっ飛ばす!ふぐ面科学者!!」
ふぐ面科学者と衣梨奈に罵倒され、困った顔をする紺野。
もちろん、言い得て妙なそのネーミングセンスに対してではない。
941 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 01:34:21.53 0
「そこのちょっとふくよかな子。あなた、透過能力があるからどんな妨害も通用しない。そう、言いましたね?」
「い、言ったけど確かに」
今度は香音がむっとする番だ。
だがそんな余裕などなくなる台詞を紺野は言う。
「じゃあ試しに。その二人を助けてみてください。私は何の邪魔もしませんので」
その言葉で、八人の心がひとつになる。
全員が。一斉にれいなとさくらが囚われている機械に向かって、攻撃を放った。
一瞬の、出来事だった。
紺野が一呼吸する間に、全てが終わっていた。
目の前に広がる八つの無残な死に様。
飛び出した刃に額を貫かれた屍。
弩に喉元を撃ち抜かれた屍。
槍で心臓を貫かれた屍。
5.56ミリのライフル弾で身体を蜂の巣にされた屍。
火炎放射器に焼き尽くされ墨と化した屍。
貴金属すら溶かす激酸を浴びせられ骨だけになった屍。
鉄球に砕かれた脳天から脳漿を撒き散らした屍。
レールガンで胴体が消滅した為、頭と手足しか残っていない屍。
研究室の中央には、機械に抱かれたれいな。そしてさくらが。
意識はないはずなのにその表情は、絶望に沈んでいるように見えた。
942 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 02:12:31.18 0
943 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 06:32:02.53 0
更新キター
944 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 07:26:58.07 0
こ…これは!?まさかあのシーンのリゾナントか!!さくらの能力が違うのにどうやって切り抜けるんだ?
945 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 09:27:21.33 O
ほ
946 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 11:59:24.55 0
wktkするやつきてたー
947 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 11:59:26.97 0
あげ
948 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 12:46:01.86 O
ほ
949 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 13:54:44.69 0
ぜ
950 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 14:37:14.73 0
そろそろ次スレのことを考えんとね
951 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 15:34:20.14 0
ほい
952 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 17:12:03.56 0
ああぁっふっふぅ
953 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 18:34:10.44 O
ぅぇぉ
954 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 18:47:19.95 0
土曜日だし筆がうずきませんか?
955 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 19:40:34.32 0
土曜は休む日だ!!
956 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 20:45:03.11 0
休みたいぜ
まず仕事休みたいぜ(切実)
957 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 21:46:52.98 0
頑張れw
958 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 22:13:11.54 0
しばらく時間ができたから何か読みたいんだけどЯってどうなの?
あんまり話題に上がらないからちょっとキツい話だったら別の話読もうかと
959 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 22:19:39.78 0
読み方は人それぞれ
960 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 22:31:28.15 0
結構話題も出てるし俺は面白いと思うけど?Яは過去の色んな作品をリゾナント(リスペクト)してるから気になるエピソードがあったら元になったら話を読むのもあり
でもЯ読むなら先にXを読んだ方が話がわかると思う
まぁ好きなように読むのが一番
961 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 22:41:44.54 0
>>958 他の話と比べてレスが少ないのは長編を敬遠してのことだろうと思うけどね
まあ俺もいつか読もうと思っててもなかなか手が出ないw
962 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/29(土) 22:59:13.37 0
Я(Χ)のシリーズはもうスレ史上でも断トツの長さになってるだろうなw
話は王道というか正道というかだと思う
963 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 00:11:24.77 0
.从´’v’リ<スレを460程王道上げします♪
964 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 00:14:18.85 0
Яが王道とするなら■■は何道だろ
965 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 00:21:26.20 0
何道だろうね?「新たな境地を切り開く道」…イメージ的にはそんな感じなんだけど良い言葉が見つからない「新道」じゃ飲み屋街みたいだしなぁw
966 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 00:47:28.81 0
逆にЯは王道に見えて邪道
■■や殺人請負は邪道に見えて王道な気がする
あくまでも外敵との関係より仲間同士の関係を重視する殺人請負や
敵が必ずしも敵ではなく曖昧模糊としている■■は従来のリゾスレの作品群に倣った話
一方Яは外敵との関係を強調しダークネスを絶対悪として扱っているという意味では従
来のリゾスレにはなかった異端な話なのではないだろうか
967 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 00:52:58.33 O
つうかそもそも何を持って王道としてるのかわからんな
世間一般の王道とリゾスレの王道は違うような気もするし
968 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 01:04:42.52 0
確かに初期の頃って能力者としての心の葛藤や仲間との出会いで心が救われたといったような心理描写の話も多かったしね
色んな話が一つのスレで楽しめるってのがリゾスレの魅力
969 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 01:05:23.88 0
最初のリゾスレは王道らしさで戦隊モノの雰囲気があったけど
いつからかシリアスな作品が増えたりコミカルなのが
増えたりしてて、王道とは呼べないものにはなってきたねえ。
970 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 01:08:49.83 0
作者さんもだいぶ入れ替わったんだろうしなぁ…初期の頃の鬱になりそうな重い話もたまに読みたくなる
971 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 01:17:05.91 0
>>967 邪道を王道に引き上げた?みたいな?
そもそも9期メンや℃出した再初期作って意味ではマイノリティだったはずだもんね
972 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 02:40:18.14 0
リゾスレの王道と言えばまあそもそもが「リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ」だから
ダークな雰囲気とか悲しみみたいなものを内包してるという意味では実は殺人請負のほうがリゾスレ的王道だったりする
リゾナンターしか登場しないという構成も含めてリゾスレ住人好みの話だと思う
973 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 03:52:31.36 0
雰囲気がダークなのはいいけど
殺し屋設定ってのがある以上王道にはならないと思う
974 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 04:44:18.45 0
殺し屋であることは別に王道の足かせにはならんでしょ
むしろ殺し屋という境遇から生まれる悲哀はリゾスレによく馴染む気さえする
975 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 05:19:17.82 0
さすがに強引すぎ
976 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 08:39:35.74 0
落ちるぞ
977 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 09:29:19.96 0
でも一つのテーマでこれだけ多種多様な作品があると王道だとか邪道だとか読み手の主観でいくらでも変わってくると思うw
978 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 11:11:07.08 0
雨だな
979 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 12:24:09.84 0
■■さんとか実は初期作者だったりしないのかな
980 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 13:28:00.79 0
初期テイストを感じるよね
殺人請負さんとかも
981 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 13:49:33.44 0
殺人請負の人は勝手にぺっぱあの人と思ってたけど…違うのかな?
982 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 13:49:34.55 O
>>975 そう?
リゾスレを語る上で悲しみってすごい大事な要素だと思うけど
983 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 14:15:07.08 0
真実は100話記念チャットにて!!
984 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 14:24:54.40 0
おーまたチャット大会するのか!?前回はROMってたからなぁ…レジェンド作者さんが多くてただのホゼナンターとしてはビビって入れんかったw
985 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 14:56:25.71 0
以前はブログとかやってる作者さんも割といたから
スレで公表されてなくても分かったりしたんだけどなあ
986 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 16:16:47.81 O
なんだかんだで完走しそう
987 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 17:45:23.64 0
なんとか単発を2本投下できましたが続き物には手がつかず…
988 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 19:01:25.50 0
ノハ´’v’ソ<スレを450ほど上へ飛ばします☆
989 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 19:32:26.51 O
ありがとうタイムトリッカーさくら
990 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 20:24:12.26 O
ほ
991 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 21:12:06.71 0
次スレ
992 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 21:51:48.06 0
分かった
993 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 21:55:28.03 0
レジェンド作者って誰や
994 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 21:56:12.15 0
知らん
995 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 22:05:45.00 0
梅
996 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 22:28:11.72 0
梅さん
997 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 22:30:08.19 0
たなさたん
998 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 22:43:38.24 O
レジェンド作者=創世記からの作者
999 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 22:58:47.46 0
梅
1000 :
名無し募集中。。。@転載禁止:2014/03/30(日) 22:59:17.79 0
株
1001 :
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