「棋士・先崎学の青春ギャンブル回想録」(先崎学著)を読んでみた

このエントリーをはてなブックマークに追加
1 【中国電 72.4 %】 ◆fveg1grntk
将棋指しは根っからの勝負師である
本職である将棋で血の小便を絞り出すほど熾烈な勝負を行っているにも関わらず、彼らは私的な時間までも勝負を追い求める
麻雀、パチスロ、競馬、競艇、大貧民、チンチロリンといった基本から、ライヤーズダイスやたぬきと言った棋士内独特の遊びまでありとあらゆるギャンブルを愛する
そして彼らはゲーム解析の天才集団でもある
パチンコパチスロでは徹底的に情報をかき集め分析し、独自の理論を打ちたて、勝利を目指す
ゲーセンの麻雀ゲームですら、COMの癖を見抜いて、攻略法を発見する
そこが単なる博打打ちとは違うところである

近年、話題になっているプロ棋士と将棋ソフトの戦い
現状すでに将棋ソフトが人間を追い抜き、これからは離していく一歩である、と一般的には見られている
しかし、私はもしかしたら将棋ソフトの進化をプロ棋士の対将棋ソフト解析の進歩が凌駕するのでは無いかと期待している
もしプロ棋士が本気で将棋ソフトへの対策を研究したら、将棋ソフトの悪癖を的確に突いて、プロ棋士が勝てるようになるのではないかと
もちろんそのような研究は彼らの本職である対人間将棋には全く活かせず、単なるプログラムのバグ出しに過ぎないため、彼らが本気で対策研究をすることは無いだろうが・・・

本書で個人的にもっとも印象に残ったのは、森内俊之のジャンケン研究である
かつて先崎周りの棋士同士の食事の会計はジャンケンで負けた者が一括で支払う習慣があった
そこで圧倒的な勝率を誇っていたのが森内俊之だった(ちなみに弱かったのは佐藤康光)
「大金が掛かると人間はグーを出しにくい」「あいこの後にその人の実力が出る」と言った独自のジャンケン格言を生み出し
さらにおそらくではあるが、個々人の癖、傾向まで分析していたのであろう
あまりに森内俊之がジャンケンに強いために勘定を掛けたゲームはジャンケンからコイントスに変更された
技術や知識の入り込む余地がなく、完全に運否天賦で決まる、もっとも基本的な勝負であるジャンケンも、天才森内俊之の手にかかれば、解析可能なゲームとなってしまうのだ