「年収100万円の豊かな節約生活」(山崎寿人著)を読んでみた

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いわゆる節約テクニック本とは一線を画す、著者の人生哲学を著した本である
そして私は彼の哲学に強く共感する

彼は両親の遺した遺産である年間100万円(税抜き後)の不労所得と無料である自分の頭をフルに稼働させて、いかに人生を楽しめるかという「ゲーム」に没頭している
「生まれてきたからには何か仕事をして名を上げなければならない」「妻子を持ち家庭を持たねばならない」「金持ちになって勝ち組にならねばならない」と言った旧態依然の思想から自由である

一流大学に入り、一流会社でも働いていた著者は極めて優秀な頭脳を持っている
しかし、その頭脳を資本主義経済や社会貢献に捧げなければならないと言う義務はない
彼はその豊富な知的リソースを「自分の幸せ」のために捧げた
もし人に天職というモノがあるならば、彼の天職は「プロのプーターロー」だったのだ

100万円という縛りの中で、1日3食500円という縛りの中で、いかに自分が幸福を感じられるかというゲーム
本人が美食家というだけあって、本書に掲載されているレシピは格安とは思えないほどのクオリティに見える
単純に金をケチるだけならもっとケチることが出来るだろう
しかしそれでは意味が無い
年間100万円と言う金と優秀な頭脳と有り余る時間を最大限に利用すれば、人間は十分に充実した人生が送れるというモデルケースとなっているのだ
本書での著者の語り口はいわゆる経済的に優位に立っている勝ち組たちが自らの成功譚を語る時のそれと同じく自信と充実感に溢れている
近代化という目的地に到着してしまった日本国の民はもっと早く、彼のようにお金以外の価値観を見つけなければならなかったのだろう

ただ、それでは私自身が今の仕事を辞め彼のような生活を送るかと問われれば否である
1つは私には100万円の不労所得が無いこと、もう1つは将来への不安である
彼は執筆当時50歳で健康である
節約生活には最低限の条件である健康を維持するために努力も欠かしていない

ではその先は?
今の日本では病気と老化に対して多額のお金が掛かるシステムになっている
そのために私たちは若い頃に働いて、現在の生活の糧を得るとともに、さらに金の掛かるであろう老後に備えているという面がある
しかし、この節約生活では彼ほどの優秀な人間が全ての時間と頭脳を注ぎ込んでも資産的には「トントン」に過ぎないのである
つまり現在の幸福な生活は維持されているが、将来の蓄えは殆ど無い

もしかしたら本書の発行こそがそれに当たるのかもしれないが・・・