生田「道重さんスパゲッティーを食べませんか?」12
うわ、さっきまでずっと規制されてたのに書き込めてしまった。
この隙にSS投稿させてください。こういうの初めて書いたのでお見苦しい文章かと思います。すみません。
さゆが若干病んでます。すみません。
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メンバーカラーを引き継いだからなんだっていうの?
馬鹿馬鹿しい。
同じメンバーカラーだからって
プライベートの服や小物までその色に揃えたからってなんだっていうの。
ほんとに、ほんとにほんとに馬鹿馬鹿しいったらない――――――。
そう思ってるのに。
「しょい!」の時に手が重なったとき
歌割や台本なんかで名前が並んで書かれているとき
差し入れから同じアイスを選んでたとき
マジックで名前を書いた紙コップがすぐ隣に置いてあっただけでも
なんだか胸がギュッとなる。
こんな些細なことしか、ないんだもん。
あの人と違って「大好きです!」って言われることも嬉しそうに名前を呼んで貰えることもないんだもん。
でも、今モーニング娘。として一緒にいるのは私。
辛いことも嬉しいことも。今を共有して過ごしているのは私。
日々の小さな小さな幸せの破片。幸福な人にはきっとゴミのような欠片。
それだけを支えに、誰にも見せることのない想いを募らせていった。
でもそんな支えに頼るには、いつのまにか私の気持ちは重くなりすぎていた。
もうきっと私、限界だったんだ。
「道重さぁ〜ん!聞きました?聞きましたぁ?」
ハイテンションでいつも以上にニヤニヤしている締りのない顔。
「今年の24時間テレビ、OGと共演とは聞いてましたけど!新垣さんも一緒に出るんですよぉ〜〜!」
「知ってるよ。私も一緒に聞いてたじゃん」
近頃はいつだって、生田との会話は気を遣う。
いかに自然に、道重さゆみらしく返せるか。
KYな生田に対しては、ちょっと冷たく、毒を含ませつつ、でもリーダーとしての愛情は平等に。
この気持ちを誰にも気づかれないように。
後から上手く言えていたか、不自然じゃなかったか不安に駆られることも多い。
24時間テレビの件だって、マネージャーからの報告を聞いて、胸が苦しくて苦しくてしかたなかった。
だけど、とにかく何を言われても平静を装わなきゃって。
生田は喜ぶんだろうなって。
嫌だなって。
嫌だなんて思ってる自分も嫌だなって。
ううん、そんなこと考えてちゃいけない、とにかく自然に、上手く、うまく、うまく・・・。
私が生田の事を想ってるなんてこと、誰も思わないだろう。
ヒガイモーソーに近いとはわかっていても
いつ不自然な態度をとって気づかれてしまったらと思うと怖くって、ノイローゼ気味になっていた。
「ちょぉお嬉しいんですけどー!久しぶりにテレビで一緒に歌えるんですよぉ!」
「はいはい、よかったね。でもどうせ生田は歌割ないでしょ。私と一緒で。」
いつも通りのノリで軽くあしらうつもりだったけど、無意識に『私と一緒で』なんて言ってしまったことは
言い終えてから気づいた。
大丈夫?不自然じゃなかった?
「いいんですー!もう今回は一緒に出れるだけで嬉しいんですよ!最近のテレビの仕事で一番嬉しかったかも!」
「へえ。私と出るMステよりも?現メンで初だし、これからの足がかりになる放送だよ。
それよりもって、向上心ないんじゃない?ほんと何考えてんの?ガキさんガキさん言ってる場合じゃないでしょ!!」
流石に一瞬むっとする生田。
だめ、冷静にならなきゃ。また『私と』なんて、こんなこと言ったら嫉妬むき出しだ。
それを誤魔化すかのようにきつい言葉を重ねてしまう。声も大きくなりすぎてしまった。
でもさすがKY極まれりというか。
「もぉ〜、冗談ですよ冗談!その辺はちゃーんとわかってますから!」
調子の変わらない生田に、少しほっとしたのも束の間
「あっもしかして道重さん、ヤキモチですか〜?もぉ、ダメですよ、えりは新垣さん一筋なんですから!」
コノコノー!みたいなジェスチャーをつけて生田が言う。
言葉が出なかった。
ヒュッ、っと息を吸ったまま、声を出せず固まってしまっていた。
きっと顔はどうしようもなく強ばっていたと思う。
だめ、だめだよ。いつも通り、言わなくちゃならない。
バレてるわけじゃない。隠さなきゃならない。
でも本当は気づいて欲しい。ムカつく。なんで私を見てくれないの。
ヤキモチとかバカじゃないの。一筋ってなんなの。私があんたを好きな気持ちはどこへやればいいの。
嫉妬と矛盾でぐちゃぐちゃだった。
いつも通りに、ちょっと冷たく、でも嫌われないくらいに、不自然じゃないように、上手く、上手く、上手く
「えと、道重さん?」
流石の生田も空気を察したのか、不安そうに私の顔を覗き込んでいる。
「あの、すみません冗談です!嬉しくって調子乗っちゃったっていうか、あの、その」
「ヤキモチとかありえないのわかってるからこそ言えるっていうかなんていうか!」
でも、生田が発言すればするほど私の心は惨めになっていく。
だめ、爆発させてはいけない。
今までのことが無駄になる。
ううん、いままでのことだけじゃない。
これからの関係は?
私はモーニング娘。のリーダーなんだから。
こんな勝手な感情で全てを壊すことになる。
言ってはいけない。言ってはいけない。言ってはいけない。
ドン!!
生田の手首をつかんで、そのまま壁に体ごと押し付ける。
「痛っ!え、み、道重さん!?」
「ねえ、あんたほんとになんなの!?なんで私の前でばっかり新垣さん新垣さんいうの!?いい加減にしてよ!
ムカつくのよ!人の気も知らないで!それともわかってて言ってんの!?馬鹿にしてんの!?」
止まらなかった。わたし、滅茶苦茶なことを言っている。
生田は、怯えた目で私を見てる。
いけないって頭ではわかっていても、コントロールできなかった。
自分が自分でないように感じた。
「ねえ生田。わかるよね?お願い、わかってくれるよね?」
震える声で言う。
奥底の理性がそうさせるのか、決定的な言葉は出なかった。
生田を押さえつけているのとは逆の手で、そっと生田の頬を撫でる。
「生田。生田。生田。わたし、もう、限界なの」
涙があふれた。
放心状態の生田衣梨奈は
背中を壁につけたまま、ずるずると座り込んだ。
先ほど撫でられた頬に手をやる。
どういうこと?今、なにが起こってた?
頭を整理するより早く
「えりぽーん」
1つ年上の同期がひょっこりと顔を出した。
「なんか道重さんの声が聞こえたんだけど・・・ってえりぽん、何でそんなところに座ってるの」
手を差し出し、よいしょ、っと私を起き上がらせる。
「ねーえ、また道重さん怒らせたでしょー。何言ってるかまでは聞こえなかったけどさ」
どう答えていいかわからず俯く私を見て、多分聖は勘違いしたんだと思う。
「え、ごめんそんなに真剣に怒られてたの?もうっえりぽんなにやったの・・・。あんまり道重さん困らせちゃだめだよ」
一人にしておいたほうが良いと判断したんだろう。
じゃあね、と手を振り聖は去っていった。
椅子に座り直し、テーブルに突っ伏す。
あんな道重さんは初めて見た。
「信じられんのやけど・・・」
『わかってくれるよね?』
道重さんの言葉がリフレインする。
あんなに感情をぶつけられたのは人生で初めてだ。
そして、あんなに切ない表情を向けられたのも。
「・・・。」
KYな自分でもわかる。
「そういう、ことやんね?」
道重さんが、えりのこと好いとるってことよね?
改めて言葉にして頭に思い浮かべる。
カーッと体が熱くなった。
えりの新垣さんに対する好きと
道重さんの好きは違うと思う。
自分でいうのも恥ずかしいけど、あの、あれやろ?
Like と Love の違いやろ?
あの道重さんが?えりを?
あああ、なんかえりなんかがすみません!おこがましい!
でも、でもそういうことっちゃろ!?
ひゃー!!告白されたんなんか初めてやし!どーしよー!
えー、今までそんな素振り全くみせんかったやん。
それだけずっと隠していたってことか。
・・・そんな道重さんの前で、えり、何度新垣さんの話をしたっけ。
体の熱が一瞬で引いていくのがわかる。
何をのぼせとるの?自分。
「道重さん、泣いてたな・・・」
自分が泣かせたのか。胸が痛かった。
8月17日 ハロコン控え室にて。
あれからしばらく経ったけど、道重さんと会話らしい会話はできていない。
みんなでいる時すら、こちらを向こうとしない。
一瞬目があっても直ぐに目を伏せられてしまう。
はーーー。
今日のハロコンは新垣さんが来てくれるらしいのに、気分が上がらん。
いやいや、新垣さんのことを考えるなんて失礼・・・
ん?新垣さんのことはLikeやねんから別に罪悪感覚えることでもないやろ。
ん?そもそも、別に道重さんと付き合っとぉわけでもないし・・・関係ないっちゃね・・・。
よくわからんくなってきた。
近くでは聖とあゆみちゃん、かのんちゃんが、差し入れのフルーツゼリーを食べながら
『メンバーを果物に例えると!?』なんて話をしている。
いや、ほぼ一方的に聖が話をしているの間違いか。
「道重さんはね、絶対いちごだと思うの。アイドルの王道っていうかぁ」
えりは、道重さんは桃じゃないかななんてぼんやり思う。
黄桃じゃなくて白桃。
メンバーカラーがピンクだからとかそんな理由じゃなかよ?
白に、ほんのりピンクがさして。薄い透明なうぶげ。
ほんのりと甘く香って。
触れたくなるけど、少し触っただけでも痛めてしまいそうで触れることのできない、完熟の白桃。
柔くみずみずしく、甘い汁があふれ。
・・・どろどろとした果肉がぎっしり詰まっている。
女性を体現したかのような果物。
まるで、道重さんそのものだ。
「―――生田さん、生田さーん」
はっと顔を上げるとどちらかというと黄桃、な雰囲気の年下の後輩が私を呼んでいた。
「あ、ごめんはるなん、どうしたと?」
「差し入れのフルーツゼリー、もう残り1つずつなので生田さん先に選んで頂こうと思って」
はい、と差し出された箱には果肉たっぷりのフルーツゼリー。
「白桃とメロンとオレンジなんですけど。どれにしますぅ?」
白桃、美味しそうだなと思ったけど先ほどの妄想がちらりとよぎる。
「そこはえり的にはやっぱりメロンっしょー!黄緑やもんね!」
から元気で箱からメロンのフルーツゼリーを取り出そうとする私に、はるなんがそっと囁いてきた。
―――――いいんですか?本当にそれで。
「えっ!?」
「え?」
思わず大声を出してしまった私に、はるなんは
ただでさえ大きな丸い目を、さらに大きくさせている。
「な、な、なんで?」
「いえ、白桃じゃなくていいのかなって」
「え!?ななななんで」
もしかして、えりの妄想がダダ漏れやったと!?
「いえ・・・ほら白桃が一番果肉たっぷりで美味しそうですし、カラーなんかで選んじゃっていいのかなーと思って。
今が旬ですしね。オレンジはいつでも食べられますし。」
あ、そ、そういうことね。びっくりした。
「うん、メロンでよかよ。確かに美味しそうやけど、今は白桃って気分じゃなくって」
「そうですか。じゃあ白桃は私が頂いちゃいますね。」
そして、もう一度こっそりと囁く。
――――――あとからやっぱり食べたい、って言っても遅いことだってありますからね?
含みのある言い方に、思わず立ち上がる。
椅子が音を立て、聖たちが怪訝な目で見ている。
「ほら、今が旬ですから。白桃。」とにっこり笑いながら、平然というはるなん。
はるなんの真意がわからんと、無言で立ち尽くす。
当のはるなんは、残ったフルーツゼリーが入った箱を持って、さっさと戻ってしまった。
「あーー、まってはるなん!ハルが白桃食べる!」
・・・まあ結局白桃はくどぅーに奪われて、はるなんはオレンジを食べることになったみたい。
何故かほっとしている自分に気づく。
なんで?はるなんが白桃を食べなかったから?
はるなんが白桃を食べなかったらなんでほっとするの?
無意識にまた、白桃と道重さんを重ねている自分に赤くなる。
道重さん。
どこかさばさばとした男性的な部分もある私や新垣さんと違って、あまりにも女性そのものすぎて。
触れるのが怖かった。
少しでも触れると傷つけてしまいそうで。
触りたい。でも触れない。
話すときも、冗談めかした言葉でしか会話できない。
本気の言葉でぶつかっていくのがなんだか怖かった。
道重さんを特別視していた自分に気づく。
あの時の道重さんを思い出す。
道重さんに触れたい自分を自覚する。
はるなんの言葉を思い出す。
今更、あの時抱きしめていたらよかった、なんて思った。
あの時はただただ驚いて、そんなこと思う余裕はなかったけど。
結局メロンのゼリーは食べずに、まさきちゃんにあげた。
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一旦はここまでで。続きます。
読んでくださった方ありがとうございます。ほんとすみません。