リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第83話
リゾスレ初心者向けQ&A
Q.このスレについて教えて!
A.このスレはモーニング娘。36thシングル「リゾナント ブルー」のPV(Another ver.)から想像に想像を膨らませて生まれたスレです
作者一人ひとりによって設定は異なりますが、大まかに共通している設定は
【超能力を持つ「リゾナンター」を名乗る少女たちが仲間同士心を通わせつつ「ダークネス」を名乗る敵の組織と戦う】といった感じです
Q.どの話から読めばわかりやすい?
A.テンプレ
>>1 の過去ログまとめで第1話(第1スレ)に目を通すことを推奨。
スレの雑談では『蒼の共鳴』の名がよく上がります。但し一大長編ですけどねw
2周年を記念してスレの住人が色んな質問に答えているスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/music/22534/1271246993/も参考になるかと Q.メンバーのキャラ設定は?
A.作者個々によって違うが多くの作品で共有している設定は以下の通り
高橋愛…………リゾナンターのリーダーで戦闘も強い実力者。喫茶店のマスターをしている
新垣里沙………リゾナンターのまとめ役?だがその正体は「ダークネス」から放たれたスパイ。後に真の仲間となる
亀井絵里………心臓病を患っておりよく入院している。さゆみと親友
道重さゆみ……絵里と親友。心の奥には「さゆみの姉・さえみ」という別人格が眠っている
田中れいな……喧嘩最強でリゾナンター屈指の武闘派。愛の喫茶店で住み込み店員をしている
久住小春………売れっ子芸能人。何も考えていないように見えて案外熱血だったりするかも
光井愛佳………家庭の内外で孤独を感じていたところを愛に救われた。リゾナンター随一の常識人
ジュンジュン…パンダに変身する一族の生まれ。変身が解けると裸になる
リンリン………パンダ一族を守る組織「刃千吏(バッチリ)」の一員。ギャグセンス以外はエリート
譜久村聖………出てきた設定は、サイコメトラー、譜久村財閥のお嬢さん、変2など
生田衣梨奈……出てきた設定は、KY、無感情、新垣さん命
鈴木香音………出てきた設定は、物体をすり抜ける、すごい聴力、数少ないツッコミ要員など
鞘師里保………出てきた設定は、水軍の家系の末裔、御神刀使い、念動力(水限定)など
飯窪春菜………出てきた設定は、はう、ラブベリーナ魔法学院最終学年、ジョジョバカ
石田亜佑美……出てきた設定は、蒼の剣士、ぺったん、貧しさが憎い、石プロ
佐藤優樹………出てきた設定は、こんちくわ〜、たなさた〜ん
工藤遥…………出てきた設定は、強い責任感、男前
【今まで出てきた能力まとめ】 高橋愛:精神感応(リーディング) /瞬間移動(テレポーテーション)/光使い(フォトン・マニピュレート) 新垣里沙:精神干渉(マインドコントロール)/鋼線使い/熱制御(ヒート) 亀井絵里:傷の共有(インジュリー・シンクロナイズ) /風使い(ウィンド・マニピュレート) 道重さゆみ:治癒能力(ヒーリング) さえみ(姉人格):物質崩壊(イクサシブ・ヒーリング) 田中れいな:共鳴増幅能力(リゾナント・アンプリファイア) 久住小春:念写能力(ソートグラフィー) /幻術(ハルシネーション)/発電(エレクトロキネシス) 光井愛佳:予知能力(プリコグニション)/心の浄化(ハート・プリフィケイション) /水守(みまもり) リンリン:念動力(サイコキネシス)/発火能力(パイロキネシス) ジュンジュン:念動力(サイコキネシス)/獣化(メタモルフォシス(トゥ・ビーストorパンダ) 譜久村聖 :能力複写(リプロデュスエディション) /残留思念感知(サイコメトラー・オブジェクトリーディング)/液状化(リキュエファクション) 生田衣梨奈:精神妨害(マインドジャミング)/精神破壊(マインドデストロイ)/植物と会話(スピリチュアル・トーキング)/鷹の目(ホークアイ)/空間誘導(スキップ) 鞘師里保 :水限定念動力(アクアキネシス)/水軍流の達人 鈴木香音 :非物質化(ディマテリアリゼーション)・物質透過(ペネトレイト)/超聴覚(ハイパー・ヒアリング)/獣化(マンティス) 飯窪春菜:五感共鳴(センス・リゾナント)/魔術(マジック)/粘液放出(アドヒア・セクレイト)/土念動力(ウォール) 石田亜佑美:幻獣召喚(イリュージョナル・ビースト)/小石限定念動力(ペブルキネシス)/加速(アクセレレーション) 佐藤優樹:瞬間移動(テレポーテーション)/死霊魔術(ネクロマンシー)/音響分析(アナライズ) 工藤遥:千里眼(クレヤボンス)/精神??(マインド・ブラスト) 小田さくら:幻獣召喚(イリュージョナル・ビースト)/精神干渉(マインドコントロール)
【まとめサイト(仮)で投稿日順に読む裏技】 裏技などございません。小説に関してはトップページからストーリー:スレ別分類のページに飛んでいただければ投下順に並べております タグによる分類など作業中ですがいつ完成することやら(遠い目 【まとめサイトVer.2で投稿日順に読むには】 タグでスレごと(第○話)の作品群を見ることができます。 登録日の順になっているのでそこからたどっていけばおk 閲覧できないよという場合は火狐やChromeなどIE以外のブラウザを導入してみて 【暫定保管庫(まとめサイト3)で投稿日順に読むには】 トップページからスレ別分類に飛んで(ry 最近の作品に関しては簡単な解説のページもありますのでそちらも参考に 【代理投稿を依頼するときのお願い】 したらば掲示板のアク禁スレに作品を上げるときは対処方法の指示も書いてください 例えば ・規制食らったので転載してほしい ・レス数多いから掲載を手伝ってほしい など 転載する人は必ず投下する旨をアク禁スレに宣言していってください (投下かぶり防止のため。宣言が同タイミングなこともあるのでリロード&しばらく待つのも大事)
7 :
名無し募集中。。。 :2013/07/31(水) 13:25:07.70 0
ラーメンつけ面
8 :
名無し募集中。。。 :2013/07/31(水) 13:25:31.14 0
カメラの正面
9 :
名無し募集中。。。 :2013/07/31(水) 13:25:48.73 0
る揖斐
10 :
名無し募集中。。。 :2013/07/31(水) 13:31:16.65 0
川*’ー’) < テンプレの設定やまとめサイトを参考にして自由に想像するやよ
ノ|c| ・e・) < 登場人物の能力やストーリーの背景・設定は作者さんの自由なのだ
ノノ*^ー^) < シリアル路線でもコメディ路線でもお好きなものどうぞ
从*・ 。.・) < AAを使ったものや1レス完結ものでもOKなの
从*´ ヮ`) < 他の作者さんの設定を流用するのもありっちゃ
ノリo´ゥ`リ < 気に入った話の続きや繋ぎの話を書いてみるのもありカナ☆
川=´┴`) < プロットを書いて他の作者さんにストーリーを書いてっておねだりしてもええで
川*^A^) < アーでも書いてくれるかは作者さん次第ヨ
川´・_o・) < ソッカー
作品投稿の際、10レスを越える場合は連続投稿規制(バイバイさるさん)がかかるので注意。
それから1レス当たり最大32行までしか入らないのでそれも注意。
http://resonant.web.fc2.com/data/toro18266.jpg 君の作品を待ってる
<※初めてスレを訪れた方へ>
お勧めの作品やわからない用語については遠慮なく質問してみてください
スレに何人もいるであろう「生き字引」が24時間以内に答えてくれるでしょう(多分)
11 :
名無し募集中。。。 :2013/07/31(水) 15:13:13.71 O
スレ立ておつですよ〜
12 :
名無し募集中。。。 :2013/07/31(水) 15:28:33.78 O
リゾスレキタキタキタキター 落ちてる間生きた心地がしなかったわ ともかくスレ立て乙です
13 :
名無し募集中。。。 :2013/07/31(水) 17:58:09.75 0
14 :
名無し募集中。。。 :2013/07/31(水) 20:05:22.56 0
北の国から英気を養って帰還あげ
15 :
名無し募集中。。。 :2013/07/31(水) 21:17:17.14 0
腹パンまち
16 :
名無し募集中。。。 :2013/07/31(水) 22:20:43.54 0
新スレ乙 やっぱりここないと落ち着かないわ…いつの間にやらリゾナン病
あぼーん
18 :
名無し募集中。。。 :2013/07/31(水) 22:43:30.81 0
19 :
名無し募集中。。。 :2013/07/31(水) 22:44:14.75 0
なんだまだやってたのか糞スレwww
20 :
名無し募集中。。。 :2013/07/31(水) 23:12:41.25 0
おースレ立て乙です! まだ作品も来てるからねー今度は落さないように。
21 :
名無し募集中。。。 :2013/08/01(木) 00:49:20.88 T
うええおええ
22 :
名無し募集中。。。 :2013/08/01(木) 01:02:16.94 O
ネタというか作品が途切れないのが凄いなといつも思う ネタなくて落ちるならまだしも作品あるなら保全していきたい そんな酔っぱらいホゼナンター
23 :
名無し募集中。。。 :2013/08/01(木) 04:31:45.40 O
おはようホゼナンター
24 :
名無し募集中。。。 :2013/08/01(木) 06:39:51.66 0
ホゼナンター到着っ
25 :
名無し募集中。。。 :2013/08/01(木) 08:42:32.64 0
26 :
名無し募集中。。。 :2013/08/01(木) 11:41:27.90 O
昼休み前あげ
27 :
名無し募集中。。。 :2013/08/01(木) 13:59:04.17 O
昼休み後あげ
28 :
名無し募集中。。。 :2013/08/01(木) 14:20:02.03 0
「なあ、小春。小春はなんで、リゾナンターになってくれたん?」 「別に、面白そうかなあって。それにイマドキ正義の味方とか どんな人達が集まるのかなって見てみたくて」 「そうか。そうやな、あーしもなんで結成したんやろ。 ホントに、イマドキ正義の味方なんて流行らんわな」 「……愛ちゃんって、冗談も通じないですよね」 「冗談やったの?」 「……」 「愛ちゃんはなんで、リゾナンターを作ろうなんて思ったの? チカラがあるだけで、誰かも知らない人の助けになろうなんて。 お人好しを通り越して、世間知らずもいいところですよ。 利用されるだけされて、愛ちゃんが得られるものなんてないのに」 「なんか今日はよく喋るね。気にしてくれとるんやな」 「……」 「ごめんごめん、真面目に答えるからそんなにぶすくれんといてよ。 …得られるもんはあるよ。こうして自分のやりたい事もしてるし とりあえず、皆がおるっていうのはあーし的には一番大きいな。 正義の味方なんてもんを助けてくれるあんたらは、ホントに良い子やよ」 「ならもし、小春達がその良心を利用しただけの人間なら、どうします? 良い子ぶった顔をして、愛ちゃんを笑ってる人間なら、今までどおり接してくれます?」 「小春、そこが、良い子なんやよ」 「え?」 「あんたは自分がやりたい事をしたらええんよ。 あーしが自分のやりたいように正義の味方をしてきたように。もちろん皆もな。 自分が信じた力、それが一番のチカラになるんよ」
久住小春がタクシーで移動していた時、異様なほどの震えが襲った。 全身を覆うような震えは心臓に達する。鼓動が荒い。 呼吸がしにくい、この状態は以前にもなったことがある気がする。 『i914』と対峙した、あの時のよう。 感情が高ぶる。これは恐怖、いや、むしろ戦う場所へ身を投じる時のような興奮。 悔しい。悔しい。悔しい! 何故こんな想いをするのか分からない、感情が混濁する。 乱される、掻きまわされる、ぐちゃぐちゃに。 何かが違う、これは、自分の心なのかどうかがハッキリしない。 どうしてここまで自身の心を縛るような事態になっているのかが分からない。 分からない。 分からないが。きっと、理解している。 自分のこの手で終わりにする。そうしなければ何も進めないならば。 「ここで降ります」 「お客さん、すごい汗だけど、大丈夫かい?」 「おじさん、すぐにここから離れた方がいいよ。出来るだけ遠くに」 サングラスを掛け直し、久住は運転手の言葉を聞き流しながら 財布から紙幣を取り出して足早に外へ飛び出した。 そこは公園の一角であり、真上にはモノレールの高架がある。 その先は運河へと続き、歩いても10分はかからずに辿り着く。 線路の下に公園があるというのも不思議な景色ではあるが 昼間であれば憩いの場としてそれなりの人も居ただろう。 普段なら人々の心をいやす公園内に生えている木々。
それが今は空恐ろしく感じるのは気のせいだろうか。 ざあっと風が吹き、木々の葉を騒がしく揺らした。 その木の葉のざわめきが、唐突に途切れる。 それはとても、薄い世界。 虚ろな殺意と殺気に支配された世界。 そして、ほんの数メートル先にいる小さな影 こんなに接近されるまで気が付けなかった。感覚の衰えを痛感する。 相対する鬼の容姿を見た。 あれが、本来の姿なのだろう。 戦闘衣装を纏った全身に回路のような筋が這いまわり、それが 不気味な虹色の燐光を発している。 異能を保持する証として瞳には黄金が煌めき、金髪が燃えるように逆立つ。 もはや人間ではないあの人の命が煌々としている。 あの命を奪うか、奪われるかのみの関係。 ただ殺し合うのみの関係へと堕ちてしまった自分達。 言葉は通じるのかは分からないが、あの状態ではもう無意味なのかもしれない。 久し振りに会えたというのに、感動も何も無い。思い出話さえ浮かばない。 相手が何故、久住を選んだのか、その理由を本人は知らない。 i914が空虚な笑みを浮かべてきた事によって、考えることを止めた。 「――――ッ」
【瞬間移動】で眼前に現れ、脳天を砕こうとでも言うように拳が打ち落とされる。 だが、遊具に【念写能力】を付与させた久住の姿が破壊されただけに過ぎない。 地面の砂ぼこりから飛び出す影。 久住は乾電池を挟んだ拳を握り、低く構えて半歩前進、同時に拳を打ち上げる。 狙ったのは顎。サングラスに光の筋が煌めく。 【発電】を付与させたこの一撃で、脳が揺れるという人間の常識が 通じてくれるかは分からない。 電流による火花を散らせながら、そのまま勢いを殺さずに打ち抜く。 その一撃は【精神感応】で既に把握され、i914は回避しつつ右手を腰にまわしてナイフを抜いた。 狙ったのは腹。内臓を引き裂こうとする金属の刃は、磁力操作の下で回避した。 瞬間、足で踏ん張り、膝と肘を上下からi914の手に正確にぶち当てた、指から嫌な音が鳴る。 そして一瞬だけ片足を下ろすと、そのまま大地を蹴って前蹴りを敢行する。 鳩尾への狙いはあっさりと跳躍で避けられ、その軸足をナイフで刺された。 激痛に呻き声が上がり、サングラスが地面に落ちる。だが一瞬の隙も与えてはいけない。 一つでも見せれば命は無い。死。死ぬくらいなら! 唇を噛み締めながら、久住は紫電で囲んだ頭突きをi914に喰らわせた。 体勢を崩すi914の視界から抜け、サングラスを拾うと【念写能力】で風景に紛れ込み 遊具の影へと隠れると、刃を手で思いっきり引き抜いた。傷口から大量の血が吹き飛ぶ。 「っ…ホント…面倒くさいなあ…」 久住が取り出したのは、以前、道重さゆみから預かっていた【治癒能力】 が付与されている消毒液だ。 もしもの為にとメンバーに一人ずつ渡していたもの。 【ダークネス】には道重のような異能者はおらず、これに頼るのは三度目。
靴を脱いで吹きかけると、みるみる傷痕が癒えていく。 細胞の再生による痛みはあるが、それさえ我慢すればあっという間に完治する。 まるで魔法のような異能だ。靴の穴は直せないのは惜しいが。 道重の顔が浮かんで、一瞬、想う。だがすぐに消えて、周りの様子を伺った。 i914は久住の光景をただ見つめていた。 現在進行形で【念写能力】を行使する久住の姿がどこにあるか知っているように。 余裕だとでも言いたげに、苛立ちを思える歪んだ笑みに、久住は口を開く。 「こんな情けない小春が可笑しい?愛ちゃん」 それは親しげな人間に対しての呼び名。 思わず、という訳ではない、意図的に、意識的にそう呼んだ。 眼前の人物がどんなっだったのかを確認するように。 自身の胸中にある本人だと認識するために。 「だけど、こんなあたしでも、意地ってのがあるんだよね」 久住はサングラスを掛け直し、自分の掌から紫電を生みだす。 ただ一発。渾身の一撃を与えれば、勝てる。 心臓を止める為に、この雷霆があるのだから。
33 :
名無し募集中。。。 :2013/08/01(木) 14:24:25.29 0
>>28-32 『異能力 -That's why murder of-』
以上です。
前スレ
>>363 りりりリホナンター待ってたよリホナンター!
規制だと思ってたけど核爆弾(カビ事件)抱えて帰ってきてくれると思ってた!
朽ち果てよ鞘師腐乱(サヤシンランドール)!!とか何それカッコいい!
-------------------------------------------------------------ここまで代行
34 :
名無し募集中。。。 :2013/08/01(木) 14:56:58.10 0
更新代行乙 小春が一矢を報いることができるか 次回の更新も待ってます
35 :
名無し募集中。。。 :2013/08/01(木) 17:13:15.78 0
作者も戻ってきたね
36 :
名無し募集中。。。 :2013/08/01(木) 19:37:01.87 O
おっと
37 :
名無し募集中。。。 :2013/08/01(木) 21:19:03.43 O
夜保全
38 :
名無し募集中。。。 :2013/08/01(木) 21:34:44.88 0
>>33 乙です
覚悟を決めた小春の姿が某コミックの雷神アドルフさんと重なって見えてしょうがない
i914と小春の刃はどちらも速いが対決の行方が気になる
39 :
名無し募集中。。。 :2013/08/01(木) 21:35:22.26 0
つまんねーな
40 :
名無し募集中。。。 :2013/08/01(木) 22:40:49.00 I
さ保全だ
41 :
名無し募集中。。。 :2013/08/01(木) 22:45:58.86 O
あまり主人公じゃない人間が二種類も三種類も能力使うのは好きじゃないがこの小春はいいね 続き待ってます
42 :
>>1です :2013/08/01(木) 23:53:48.29 0
さっそく作品がきてよかった!良作が豊作で良かった
初めてスレ立てて思ったのはテンプレ最新版を掲示板に残してほしいなと
今回能力設定とか更新したけどもれがありそうな気もするし
あと修行不足でテンプレを最後まで書き込めず他の方の助けをいただいたのもあり(
>>10 さんに感謝!)
ずっと続いたテンプレだけど内容を整理してレス数を減らすとか駄目なんでしょうかね
長文失礼!
43 :
名無し募集中。。。 :2013/08/02(金) 01:23:14.37 0
>>42 何気に能力更新されてるんですね〜忘れてたのもあるので助かります
確かにテンプレ長い気もするけど…今までの作者さんやスレ住民の歴史が詰まってる事を考えると…100スレいったら、記念に会議してみては?
44 :
名無し募集中。。。 :2013/08/02(金) 01:50:17.18 O
今度の新曲の衣装(愛のジョーク)が戦闘服ぽいな リゾブルの衣装の継承形みたいで悪くないね
45 :
名無し募集中。。。 :2013/08/02(金) 04:57:53.54 O
ねるなんと
46 :
名無し募集中。。。 :2013/08/02(金) 06:03:33.41 0
進化するスレ
47 :
名無し募集中。。。 :2013/08/02(金) 07:41:25.76 O
おはナンター
48 :
名無し募集中。。。 :2013/08/02(金) 07:49:43.92 0
繁華街から少し離れた、雑居ビル。 ぎらついた光と色の洪水から逃れるように、その小さなバーはビルの地下に佇んでいた。 闇に潜るように、還るように。 「永遠殺し」は、地下へと続く階段を降りてゆく。 世間から隔離されたような、場所。 扉を開けると、寡黙なマスターが静かにシェイカーを振っているのが見える。 カウンターには、女が一人。銀色のファーを纏った、ショートカットの女性だ。 「遅いじゃないですか、姉さん」 「待たせたわね。でも、組織の『茶番』の参加をかわすために、これでも色々と苦労したのよ」 言いながら、ショートカットの隣に座る「永遠殺し」。 テーブルには、華奢なグラスに満たされた青い液体、同じものを、とだけ言いそして再び女に向き直る。 「ダークネスのほうは、順調なんですか?」 「おかげさまで。飛ぶ鳥を落とす勢いのあんたのとこほどじゃないけど」 「実入りはいいけど、うちの『先生』は姉さんのところを恐れてる」 女が、戯れに懐からけん玉を出して弄びはじめた。 剣先から大皿へ玉を移動し、中皿へと動かそうとしたところで、玉が宙に止まる。 「よしなさい。今日はそんなことをするためにあたしを呼び出したんじゃないでしょう?」 時を止められた、けん玉。 女は小さくため息をつき、それから。 「組織を、抜けることになりました」 「意外ね。『後輩に席は譲らない』んじゃなかったの?」 「来たんですよ、そういう時代が。この前の組織編成で、成り上がりがトップに立った。支店の連中も獣化能力者の取引がどうのこう のって話で大きく序列を上げた。あの場所での私の役目は終わったんです」
女の表情に見えるのは、寂しさかそれとも次世代への期待か。 「永遠殺し」にはそれはわからなかったし、理解するつもりもなかった。 「あたしたちはそう簡単に退かないわ。能力者にとって理想の国家を作る、その願いが叶うまではね」 「そういうのは、私にはわかりません。私は、私たちは理念よりも本能で行動しますから。姉さんのところの『a625』のように」 アルファベットのaから始まる型番を持つ、人造人間。 ダークネスと女の所属する組織がクローン技術を互いに共有している、ただ一つの揺ぎ無い証拠。 文字通り、流れることのない時の中で二人が佇む。 誰にも遮られることのない空気を、言葉にならない意思が交わされた。 だが、永遠さえ死に至るその場に、いつまでも浸っているわけにはいかない。 女が青色のカクテルを飲み干したのが、時の終わりの合図だった。 「そろそろ行きますよ。何か助けが必要だったら、声をかけてください。組織から離れるとは言え、それくらいの力はあるつもりです から」 そう言い残し、女はファーコートを翻し店を後にした。 その背中を見送りながら、「永遠殺し」はふと彼女の言う「先生」とダークネスの先代科学部門統括の間に親交があったことを思い出した。 片や子供を庇護し、片や自由のために子供を手放した、か。 庇護は束縛でもあるし、それが本人のためになるとは限らない。 だが、女の言うところの「a625」は、いなくなった親の代わりに自らの友を生きる指針とし、生きる目的に摩り替えた。結局どちらが 幸せなのかは、誰にもわからない。 出す事のできない答えを求めるように、「永遠殺し」もまたグラスに揺れる青を喉に流し込むのだった。
● 「もう、本当に…本当に心配したんだから!!」 喫茶リゾナントに戻った面々は、予想通りさゆみに叱責を受けることとなった。 さゆみが任務から戻って来ると、壊れたテレビと不機嫌なれいなの姿。後輩たちの身に尋常ならざる何がが起こっているのは明白だっ た。 訪れる不安、焦燥、想像したくない結末。 無事な姿を見せることで緊張は緩み、同時に溜まっていたものが一気に噴出するのも、また仕方がないこと。 「『赤の粛清』と戦ったって、何でそんなこと…せめてさゆみやれいなにどうして一言かけてくれなかったの!!」 避難先の廃屋で愛に言われたことと、同じ。 返す言葉もなく項垂れている後輩たちの中で、ただ一人さゆみをまっすぐ見据えるものがあった。 「でも、でも! 敵は、優樹ちゃんを人質にして、先輩たちに話したら殺すって!!だから、だからしょうがなく…!!」 新しく入ったリゾナンターたちのまとめ役として。 聖は、言わないわけにはいかなかった。確かに見通しは甘かった。けれども、その時点での自分達では他に取る方法が見当たらなかっ た。やり場のない気持ちを抱えているのは彼女たちも一緒だったのだ。 「…じゃあ、敵が死ねって命令しよったら、フクちゃん死ぬと?」 さゆみの後ろで、それまで黙ってやりとりを聞いていたれいなが口を開く。 「えっ…そんなことは」 「敵に弱みを握られて、仲間の一人を殺せって言われたら、言うとおりにすると?」 れいなの強い眼光が、聖を射抜いた。 答えられない聖は涙を浮かべ、その場に泣き崩れてしまった。
「れいなは。ここでみんなを待っとる間、ずっとみんなのことを信じてた。やけん、みんなもれいなやさゆのこと、信じてるって思ってた」 「それは…」 「互いに信じあうのが、リゾナンターっちゃろ? それができないなら、リゾナンターやめり」 何かを言いかけた春菜だが、「リゾナンターを辞める」、その一言で言葉を発する事ができなかった。春菜だけではない。遥も、亜佑美も、 香音も、衣梨奈も、里保も。優樹でさえも。それだけ、れいなの言葉は重かった。 「…今日はもう帰り。一晩休んで、それから、もう一度リゾナントの玄関に入る覚悟があるやつだけ、来たらいいけん」 れいなの言葉に頷く後輩たちだが、どことなく力がないように見えた。 「これからリゾナンターとして、ダークネスと戦わなきゃならないこと。厳しい戦いになると思う。だから、自分達の胸に、もう一度だけ 問いかけてほしい。成り行きじゃなくて、本当にあの恐ろしい人たちと戦う事ができるのかって」 れいなの言葉を継ぎ、さゆみが全員に問いかける。 ダークネスの幹部クラスと戦った経験があるからこそ、その言葉には真実があった。
● 新しいリゾナンターたちが出て行った後の、喫茶店。 キッチンに入り込んでいたさゆみが、小さなコーヒーカップを二つ携えて戻ってくる。 カウンターに佇むれいなの前にカップを置き、さゆみもれいなの向かいに座った。 「ごめんねれいな。本当はさゆみが言わなきゃいけない言葉だったのに」 申し訳無さそうに言うさゆみに、れいなは手を振り否定する。 「れいなが言いたかったから言っただけやけん。別にさゆのポジションを奪おうと思ったわけやなかよ」 「ううん、さゆみだったら、きっとあそこまで言えなかった。ありがとね」 さゆみは。 若い後輩たちにこれからの戦いについての覚悟を正すことができなかった。 組織随一の実力とは言え、たった一人の能力者にまるで歯が立たなかった自分達が、偉そうに後輩に決意を問うことをしてもいいのか。 思いは逡巡する。 それにしても、れいながまさかあんなことを言うとは。 かつての9人だった頃なら、きっとれいなは我関せずの態度を取っていただろう。 リゾナントを襲った悲劇から、数年が過ぎた。 後輩の育成に力を注ぎつつも、さゆみは、そしてれいなは。あの時よりも強くなった。それでも、再び「銀翼の天使」クラスの実力者の 襲撃を退けられるかどうかはわからない。 「あの子たちが、形はどうあれダークネスの幹部クラスに接触した。ある意味、ピンチだったかもしれんけど、逆にチャンスなのかもし れん」 れいなが最初に気づいたのは、無事に戻ってきたはずの後輩たちの顔色が一様に冴えないことだった。ダークネスとの戦いの中で、自分 を含めた仲間たちが時折する表情にそれはとてもよく似ていた。ぎりぎりの死線を辛うじて潜り抜けてきた時の、表情に。
彼女たちには、その壁を乗り越えて欲しい。 だからこそ、れいなは敢えて厳しい言葉をぶつけた。敵に与えられた恐怖に、リゾナンターとしての使命や心の繋がりが打ち克つように。 「あの子たち、大丈夫かな」 言いながら、カップに口をつけるさゆみ。 湯気の向こうには、頼もしい同期の顔。 「れいなは、あの子たちのこと、信じてる。だってれいなの後輩やけん」 「さゆみの後輩でもあるけどね」 「もちろん、さゆのことも信じとうよ」 れいなが、いなくなった後も。 その言葉は口にすることなくれいなの中に消えてゆく。 自分のいない、喫茶リゾナント。そんなことを自然に考えるようになった。この体にあの忌々しい黒い血が流れている限り、その未来図は確 実なものとしてれいなに差し迫っている。 怖くはない。けど。 徐に啜ったカップの中の液体は、思いのほか、苦かった。
55 :
名無し募集中。。。 :2013/08/02(金) 07:55:18.91 0
56 :
名無し募集中。。。 :2013/08/02(金) 08:10:55.73 0
>>44 同じ事考えてる人発見wあれ見て最初の印象がそれだった
57 :
名無し募集中。。。 :2013/08/02(金) 10:32:05.09 O
>>55 更新そして朝から代理乙です
何だか今回の話の軸が見えてきました
イアを逆から読んだらアイですもんねw
58 :
名無し募集中。。。 :2013/08/02(金) 11:59:25.05 0
>>55 段々世界の全体像が形を為してくるのがワクワクしますね
多くの登場人物それぞれが向かう先も気になります
>>57 パロディでそのネタ使おうと思ってたのに先越されたw
59 :
名無し募集中。。。 :2013/08/02(金) 12:56:02.82 0
いろんな物が繋がりつつある感じだね
60 :
名無し募集中。。。 :2013/08/02(金) 15:20:12.54 O
読む前保全
61 :
名無し募集中。。。 :2013/08/02(金) 17:12:51.53 0
>>42 古参だけどテンプレの整理するの賛成です
これまでも何度か整理してきましたし
62 :
名無し募集中。。。 :2013/08/02(金) 19:46:37.37 O
ほぜっ
63 :
名無し募集中。。。 :2013/08/02(金) 21:19:36.63 0
どう
64 :
名無し募集中。。。 :2013/08/02(金) 21:44:22.93 0
65 :
名無し募集中。。。 :2013/08/02(金) 22:50:10.27 0
上げとくんだろうね
66 :
名無し募集中。。。 :2013/08/02(金) 23:14:50.14 O
うむ
67 :
名無し募集中。。。 :2013/08/03(土) 00:27:18.39 O
おやすみずき
68 :
名無し募集中。。。 :2013/08/03(土) 01:01:22.68 0
83話かあ すごい
69 :
名無し募集中。。。 :2013/08/03(土) 03:32:14.16 0
就寝前にホゼナント
70 :
名無し募集中。。。 :2013/08/03(土) 04:55:27.78 O
起床後にホゼナント
71 :
名無し募集中。。。 :2013/08/03(土) 08:24:39.40 I
72 :
名無し募集中。。。 :2013/08/03(土) 09:25:21.37 O
さあ大量投稿の週末がやってきましたよ
73 :
名無し募集中。。。 :2013/08/03(土) 11:42:20.40 0
自分の場合週末に色々考えるので投稿は週明けっすw
74 :
名無し募集中。。。 :2013/08/03(土) 13:05:48.79 O
楽しみにしています
75 :
名無し募集中。。。 :2013/08/03(土) 14:41:41.97 0
あげ
76 :
名無し募集中。。。 :2013/08/03(土) 16:53:20.49 0
よう
77 :
名無し募集中。。。 :2013/08/03(土) 17:07:52.91 O
ぜ
78 :
名無し募集中。。。 :2013/08/03(土) 19:12:41.41 0
あげ
79 :
名無し募集中。。。 :2013/08/03(土) 20:35:20.69 O
上
80 :
名無し募集中。。。 :2013/08/03(土) 23:00:51.41 0
げ
81 :
名無し募集中。。。 :2013/08/04(日) 00:04:38.32 O
寝る前にほぜなんとしとく
82 :
名無し募集中。。。 :2013/08/04(日) 02:52:53.74 0
おやすみ
83 :
名無し募集中。。。 :2013/08/04(日) 06:34:58.90 O
おはよう
84 :
名無し募集中。。。 :2013/08/04(日) 08:49:35.91 0
物語は、新宿で起きた通称「歌舞伎町マル暴ビル火災事件」の数ヶ月前へとさかのぼる。 深夜の渋谷。曲がりくねった、細い「ビルの谷間」とでも言えそうな暗い路地裏を、疾走する一人の女がいる。 華奢で細身な肢体に、ゴスロリ系・・・とでも言うのか、フリルの付いた黒のノースリーブのトップスに、白いフリルの付いた黒のミニスカートを纏い、右のふとももにだけ、やはりフリルの付いた黒いガーターリングをしている。 指先の見える、オープンフィンガータイプの黒革の手袋のハードさは、ややコーディネートとしては不釣合いかも知れない。 履いている爪先まで厚底のハイヒールブーツは相当走り辛いはずだが、その走るスピードは異常なほどに速い。 走りながらふと女は振り返り、ウェーブのかかった茶髪の隙間から猫のような鋭い眼を覗かせ、口角を微かに上げる。 路地を追ってくるのは5〜6人の柄の悪そうな男たちだ。ド派手なシャツやらジャージやら…。『ヤクザ』というより『チンピラ』に近い、そんな連中が手に手に得物を持って一人の女を追いかけている。 得物といっても鉄パイプ、ナイフといったものから、拳銃、はては日本刀らしきものを抱えた者までが、必死の形相で足場の悪い裏路地を駆け抜けていく。 追われていた女が路地を急速度で左へと曲がり、すっと姿が見えなくなる。 先頭を走っていたチンピラの一人が慌てて拳銃のトリガーを起こすと、ダッシュして細い路地へと駆け込んで行った。少し遅れて他の男たちも後に続こうとした、その時…。 ゴンッ…!!っという音と共に、先に駆け込んだ男が、棒のように硬直した姿で路地から倒れこんでくる。 路地のコンクリの地面に脳天を打ちつけた男は、両脚をピンと伸ばして硬直させ、ビクビクと痙攣する。
その右の眼球には、アイスピックを長くした様な…長く太い『針』のような得物が深々と突き刺さり、その先端は後頭部まで貫通して、飛び出していた。 「ち、畜生ッ!!」「あの野郎ッ!!やりやがったな!!、」 口々に叫びながら男たちが路地へ飛び込んでいくと、そこは20m四方程の、ビルに囲まれた暗い袋小路のスペースだった。 ドラム缶やら木箱やらが無造作に積み上げられた雑然とした空間。周囲のビルの照明も既に消え、一本の常夜灯だけがポツリと闇を照らしている。 …女の姿は見えない。 「野郎… どこへ行きやがった?」 一人の男が叫んだ瞬間…。 パンッ!!という音が響き、男の眉間にきれいに丸い穴が穿たれ、男は崩れ落ちるように倒れる。 男たちが慌てて見上げると、すぐ横のドラム缶の上に女が腰掛け、足をぶらぶらさせながら、先程の男が抱えていた拳銃を構えていた。 「て、てめえは拳銃(ハジキ)は使わねえって…」 …パンッ!! 言い掛けた男の眉間にも銃弾が炸裂する。 「拳銃は好かんっちゃけど…。使わないなんて言った事はなかとよ…」 女は言いながら次の標的を探す。 男たちは慌ててドラム缶や木箱の陰に、飛び込む様に身を隠す。 標的を見失った女は顔をしかめると、指で耳をほじる様なしぐさを見せ、 「…やっぱれいなはうるさいのは好かんと」 そう言って、拳銃を男たちの隠れたあたりの空中に高く放り投げた。 「うおっ!?」「…おお!?」 近くに隠れていた男が2人飛び出すと、空中をくるくると飛んでくる拳銃に手を伸ばす。
ちょうど拳銃の落下地点近くにいた男が「確実に取れる…!」 そう思った瞬間には、恐ろしいほどの俊敏さを見せた女が、既に男の足元に飛び込み、屈みこんでいた。 眼にも留まらぬスピードでガーターリングから『針』を引き抜くと、立ち上がりながら男の顎の下の柔らかい皮膚に突き刺す。 『針』は口内の上顎を突き抜け、脳を突き刺し、最後に女が皮手袋の掌底を『針』のエンドに叩きつけると…。 ガコンッ!! 鈍い音が響き、男の頭頂部から頭蓋骨を打ち抜いた『針』が飛び出す。 男は手を伸ばした姿のまま、人形のように固まってばったりと倒れた。 「て、てめえっ!?」 飛び出したもう一人の男が硬直している前で、女は落下してくる拳銃を自らキャッチして見せ、そしてそのまま素早く拳銃を男の顔に向けた。 男も慌てて自らの拳銃を引き抜き、同時に女の顔へ向ける。 「う、動くんじゃ…」 …パンッ!! 言いかけたまま、男は額を打ちぬかれて崩れ落ちた。 「…アホとちゃう?動くに決まっとろう?」 女が嘲笑う。 「野郎!!」 怒りに駆られて、隠れていたもう一人の男が思わず飛び出す。 パンッ!! …女が振り向きざまに拳銃をぶっ放すが、これは的を外した。 顔をかすめる弾丸に我に帰った男が逃げ惑うのに向け、パンッ!!パンッ!!っと無造作に女は弾丸を放つが、すべて外れ、周囲のビルのコンクリの壁に白い煙が上がった。 ガチッ…!ガチッ!! 回転式の拳銃は6連発だったらしく、弾が切れ、激鉄が空しく音を立てる。 「ハッハーッ!!弾が切れやがったな!!」 逃げ惑っていた男がやにわに勢いづいて女のほうへ向き直る。…しかし。
ブンッ!! 風を切る音が響き、猛烈な回転を与えられた拳銃が、恐ろしいスピードで男の額に激突する。 …ドゴォッ!! 赤いアザミの花でも咲いたかのような血飛沫が派手に飛び散り、男は体ごと吹き飛ぶと、ビルの壁に激突して動かなくなった。 しん… と静まり返る空間。 ザシッ… コンクリートを踏む音が響き、一人の男が物陰から姿を現わす。180cm程の痩躯。赤い革のロングコートを羽織り、質素な黒鞘の日本刀を携えている。 こけた頬に薄い唇。オールバックに撫で付けられた髪の下の眼光は、これまでの「チンピラ」どもとは桁の違う殺気を放っていた。 *** *** *** アイツも逝ったな…。頭蓋骨がヤラレちまってやがるぜ、あのザマではよ…。 あの女、なんてェ腕力だ…?ゴリラかよ…。 俺はそんな事を考えながら、ゆっくりと女の前に姿を現す。 俺が連れてきた舎弟はみんな死んじまったようだな…。 …だが不思議と腹も立たねえよ…。この女はヤベえ。 コイツを相手にしようと思った時点で、アイツらは身の程知らずだったってこった。 俺は自慢のダンビラを鞘から抜き放つと、鞘を放り投げた。 カラーン… と乾いた音が響く。 鞘を捨てて勝負に負けたヤツってのは誰だっけな…? 巌流島の小次郎か…?
俺は基本に忠実に…、正眼に刀を構える。この女相手には遊んでいる余裕はなさそうだ。 こんなに真面目に刀を構えるのはいつ以来だ…?そう、俺がこのヤクザな道に入るきっかけになった、「あの日」以来かも知れねえ…。 *** *** *** ヤクザの家に生まれた俺は、幼い頃から「後ろ指を指される人生」を送ってきた。 だが俺には「天分」があったらしい…。高校のときに剣道に“はまった”俺は、あっという間に腕を上げ、一時は「天才高校生剣士」などともてはやされたもんだ。 そして「あの日」…、俺は高校総体の個人戦決勝に臨んでいた。 …しかし…。俺が何度技を決めても「一本」にならねえ。どうも妙な雰囲気だった…。 …真相は今もわからねえ。 だがな、剣道の世界には警察関係者が多いんだよ…。それまでも俺はオヤジの素性を知る警察関係者に、競技場で嫌味を言われたりする事は珍しくなかった。 俺はそれを、俺の素性を知る審判員たちの偏向ジャッジと理解した。 そして… 俺は「試合に勝つ」事よりも「勝負に勝つ」事を選んだ。 ダンッ…!! 激しく音を立てて右足を踏み込む。まずは「面」撃ちだ。決まった…!だがそんな事は関係ねえ。どうせ判定は取れない。 俺はそのままさらに激しく踏み込み、打ち込んだままの体制で相手に思い切り体当たりをかます。 そして俺はバランスを崩し吹っ飛ぶ相手の喉元に、追い討ちの「突き」を全力で叩き込んでやった。
狙い通り…! 相手は宙を飛ぶように吹き飛び、床に叩きつけられる。…これでいい。もうヤツは起き上がってはこれねえよ。俺は危険行為で判定負けだろうが…。 俺は「勝負」には勝った。そう思った。 …だが、それは間違っていたらしい。 ヤツは本当に起き上がっては来なかった。 …永遠に。 この件以来、剣道界も追放となった俺は、お約束のように「この道」に入った。 最近はあまり泥臭いシノギも流行らなくなったこの業界で、いまだにダンビラ振り回して暴れているのは、俺なりのこだわりなのか…? それとも、真剣を「人切り包丁」として使うことで逆に貶めてやりたい… という俺なりの意趣返しなのか…?それは自分でも良くわからねえ。 …おっと。 …何だよこの「走馬灯」シーンは…? 女と向き合ったほんの一瞬の内に、俺はそんな過去の情景を見た。 やべえな…。「死亡フラグ」立っちまってんじゃねえのか? …まあいい。こいつは「あの日」以来のまともにやり合える相手かも知れねえ。 *** *** *** 「…来な」 …俺がその言葉を発し終わるより先に、既にあの女の顔が俺の眼の前にあった。 猫のような大きな眼が、長い睫毛の下でキラキラと輝いている。 息遣いさえわかる… 吐息も掛かりそうに思える距離で、小振りな唇が艶々と光っているのがはっきりと見えた。 気のせいか…? 俺は女の発する芳しい雌の香りさえ嗅いだような気がした。 ギィンッ…!!
金属音が響いた。 眼の前わずか数ミリを『針』の先端がきらめきながら通り過ぎる。 この女の超高速の一撃をかわせたのは、俺自身にもどうしてかわからない。一時は「天才」とも呼ばれた俺自身の反射神経のおかげか、それとも昔の反復練習が身体に染み付いていたのか…? とにかく、俺は自分でもよくわからない内に真剣をなぎ払い、俺の左の眼球を目指して飛び込んできた、女の『針』の一撃を凌いでいたらしい。 …いや。凌げてはいなかった。 左の頬に激痛が走る。…やべえ。相当深く抉られてるぜこいつは。 頬の肉が骨までも達しそうな勢いで、深く切り裂かれているのがわかる。血が盛大に頬を流れ落ちてシャツを汚していく。 だが、それを気にしている暇はない。いつ第二撃が飛んでくるかわからねえ。 目ン玉をぶっ刺されなかっただけ運が良かったってこった。 女は既に先程と同じ… 数メートル先の暗がりに佇み、こちらを伺っていた。 信じがたいほどに高速のヒットアンドアウェイ…。 それがコイツの戦法だ…!ほんのわずかの隙も見せるわけにはいかねえ。次はかわせるかどうか…! 全身が総毛立ち、心臓がバクバクと音を立てる。 ヤベェぜコイツは…!! 「ふぅん…」 女が感心したようにつぶやく。 「…れいなが一発で仕留められんかったのはアンタがはじめてっちゃよ」 「…はぁ…!? …ンなこたぁ知るかよ」 俺はことさらにさりげなく応えるが…。 …そうだろうともよ。俺も正直何でかわせたかワカラねェよ。 …眼を外すな…!焦りを悟られるな…!落ち着け…!
92 :
名無し募集中。。。 :2013/08/04(日) 08:56:14.96 0
93 :
名無し募集中。。。 :2013/08/04(日) 09:58:05.98 0
「…アイカが言ってただけの事はあるっちゃね…」 …アイカ…? 誰の事だ…? ギンッ…!! 金属音が響く。 「うおおおおお!!」 思わず叫び声が出る。またしても眼の前に女の顔があった。異常なほどのスピードで飛び込んできた女は、ほんの一瞬俺と眼を合わせてニヤッと笑うと、またあっというまに間合いの外へと飛び去る。 …またしても紙一重で払いのけた『針』は、今度は顔面をかばった右手の甲をザックリと切り裂いていった。血がボタボタとしたたる。 ふざけんなっ…!!なんなんだあのスピードは!! わけがわからねえ…!どんな鍛え方をすればあんな動きが出来るんだ…!? 闇の中に立つ女の脚は頼りないほどに細く、少女のように華奢な、むきだしの肩や腕は、鱗粉でもまぶしたような…、鈍い、しかしきめの細かい輝きをまとっている。 コイツはあれか…?軍流れかなんかの…「身体能力増幅薬」でも使ってやがるのか? そうしたらコイツは“疲れ知らず”な可能性もあるぜ…?マズい…!マジでマズイ…! このまま続けられたら確実に俺もお陀仏だぜ…!! タンッ…!! 軽やかな靴音を立てて、再び女が動いた。 …見える…!! 初めて女の初動が見えた。 女の顔はあっというまに眼の前に迫っていた。マスカラで纏められた睫毛が3本、くっきりと見えている。
ガッ…!! ガッ…!! ガキィッ…!! 女は逆手にもった『針』を俺の顔面へ… いや、眼球をめがけ、今度は3連発で叩き込んできた。 …畜生!!ふざけんなッ…!! 「だあああああ!!」 気合とも悲鳴とも付かない声が出る。 …受け切れた…!信じられねえ…! 俺はほとんど夢中で刀を振るっていた。そして俺は初めて女の攻撃を無傷で凌いだ。 「うおおおおお!!」 反撃だ!…俺は全力で女めがけ横殴りに刀を振るう。 …ブンッ!! 俺の人生の中でも最高に力の乗った一振りは、だが空しく風を切った。 …女は既に数メートル離れた位置で、何事もなかったかのように、軽くダンスのステップを踏むような動きを見せている。 …ふざけやがって…! 頭に血が昇る。 …女の攻撃は恐ろしく速い。そして腕力も十分に強い、だがいかんせんヤツは軽い。 だからこそ、『針』でその力を一点に集中させ、骨の無い、抵抗の少ない「眼球」を貫くという戦法を選んだのだろう。 けっこう考えてやがる…。やべェぜ。このままじゃあジリ貧だ…。確実にやられちまう…。 刀を握る手が汗ばんでいる。しかし汗を拭く隙さえも今は無い。 …どうする? …どうすれば良い? 「こりゃあ…。 …ひょっとすると“あたる”んかいな…?」 女がポツリと何事かつぶやく。 その顔が、何か決意をするかのようにひきしまった。 …来る…!!
タンッ!! 女が軽やかにダッシュする。 いちかばちかだ…!! 女がスタートした瞬間、俺は右脚を思い切り右斜め前方へ踏み出し、身体を思い切り左に回転させると、“たったいま自分がいた空間”を全力で切りつける。 賭けだった。 女の攻撃は、カウンターを取りようもないほどに速い…。だが、ヤツは必ず俺の眼ン玉を狙ってきやがる…。 ならば、いっそヤマカンで…!ヤツの飛び込んでくる空間を薙ぎ払ってやるぜ…!! ブンッ…!! 俺は渾身の力で刀を振るった。 …狙い通り…!!飛び込んできた女の顔が間近に見える。 極限状態まで研ぎ澄まされた俺の眼に、スローモーションのように女の表情が見えた。 …畜生ッ…!! 女の喉元を襲う俺の刀に、女は確かに虚を衝かれたはずだった。…だが、女は「おや?」とでも言うような表情を微かに見せ、次にはあきらかな微笑を浮かべながら俺のダンビラの切っ先を紙一重でかわして見せた。 …だが、次の瞬間、突然女がガクリとバランスを崩して腰を落とす。ブーツの紐が何かに絡んだのか…!?…理由はわからない。 だが俺はもう一度全力で踏み込む。左から右へ。しゃがみこむ女へ、袈裟懸けに切りつける。
女は冷静な表情を微塵も崩すことなく、再び俺の切っ先を紙一重でかわそうとした。 だがその瞬間…!! 踏み込んだ俺の革靴が、石畳の上を激しくスリップする。 俺は体勢を崩し、ほとんど飛び込むように女の方へと倒れこんだ。 それが俺の…、 そしてヤツの、予想を越えた刀のスピードと到達距離、そして角度の変化を生んだ。 女の喉元をかすめるはずだった切っ先は、グィッと方向を変え、女の細く、白い左の肩口に食い込む。 「うぉぉぉぉぉおおおおおーッ!!」 身体を投げ出すような不安定な体勢で、俺は両手に全体重をかけて刀を振るう。 ゴリッ… という骨を捕らえる感触。 俺のダンビラの切れ味は伊達じゃねえ…!! バシュッ…!!という肉を切る鈍い音が響き、眼の前に赤い血飛沫の霧がかかる。 宙を飛んだ女の白い腕が、ボトリと目の前に落ちた。 もらった…!! 俺の、勝ちだ…!! この先の光景は、もう俺には見えている…! 「…ぁぁぁぁぁ…」 女の口から細い、悲鳴とも付かない声が漏れる。 女の顔から見る見るうちに血の気が引き、蝋細工のように真っ白になっていく。 血がボタボタと溢れ出る肩の傷口を押さえながら、女はコンクリートの床に弱々しく膝をつく。 …もうこの女にたいした時間は残されて無いだろうが…。 殺られちまった舎弟達の分もいたぶって、苦しめて殺してやるべきか…?それともその強さに免じて、ひとおもいに殺してやろうか…。
…だが。それは、俺の油断が見せた一瞬の幻だったらしい。 気付いた時には、女は流れ出る血を流星の尾のように振り撒きながら、俺の眼の前に飛び込んできていた。 数センチの距離で女の蒼ざめた顔が見えている。微かに汗ばんだ肌。やや色を失った艶やかな唇。そして大きな瞳…。 ガコンッ…!! 鈍い音がバカでかく響く。 それは、俺の左眼球を貫いた『針』が、俺の後頭部の頭蓋をぶち抜いた音だった。 …クソ野郎が…ッ!! …片腕切り落とされて… 一瞬も怯まねェヤツなんてアリかよ…!! …そして俺の意識は、完全な闇へと堕ちた。 *** *** *** 女は暗闇の中で ほうっ… と息をつく。 もとより白かった肌の色が、みるみるうちに、さらに透けるように白く変わっていくのが見える。 操り人形の糸が切れるように、カクリと女の膝が折れた。 膝が地面につくと、上半身もふにゃりと崩れ落ち、女はその頬を地面にぺたりと付けて横たわる。 女はお尻を持ち上げたままの、猫が「伸び」をするような態勢で地面に伏し、眠そうに瞳を閉じた。剥きだしの太腿が暗闇の中に白く浮かぶ。 地面を流れる血が、女の頬を汚していった。
「…ィ… チャ…」 暗闇の中にかすかな女の声が響く。 …そして静寂が訪れた。 夜の闇が次第にその色を深めていく。 女の肩がわずかに動いたように見えた。 「…ァィ… チャンッ…!!」 女はかすかに頭を上げると、再び小さな声で、しかしはっきりと叫ぶ。 再び静寂が訪れた。 …永遠に続くかのような静寂。しかしそれは実際にはほんの一瞬であったらしい。 横たわる女の背後の「闇」に変化が現れた。 …「闇」がその色をさらに、さらに深く、濃く変えていく。 「真の闇」にも見えるその空間は、そして急速に人の型を形作っていった。 そして… 闇の中に、突然白い女の顔が浮かび上がる。 闇の中から歩み出た漆黒の衣を身に纏った女は、横たわる女を認めると、気忙しく周囲を見回す。 そして落ちている「腕」を見つけた女はすばやくそれを拾い上げ、再び横たわる女に歩み寄っていった。
今は乾いて艶を失ったように見える、女のボサボサに見える茶髪の頭を撫でると、 「…無茶したらあかんよ…」 小さな声でつぶやく。 次の瞬間、2人の女の姿は漆黒の闇につつまれ、忽然と消えた。 闇の中には、男たちの遺骸と、静寂だけが残っていた。 *** *** ***
100 :
名無し募集中。。。 :2013/08/04(日) 10:03:18.05 0
101 :
名無し募集中。。。 :2013/08/04(日) 10:17:39.65 O
久しぶりのシリーズキタァーーーーーーーー 相変わらずの戦闘の激しさとグロさ恐れいります 次回作も気長に待ってますのでよろしくおねがいします
102 :
名無し募集中。。。 :2013/08/04(日) 10:31:10.62 0
すげー!頭の中で、状況がリアルに再現された…最後までいつギャグになるのか疑っててごめんなさいw
103 :
名無し募集中。。。 :2013/08/04(日) 13:23:39.81 0
あげ
104 :
名無し募集中。。。 :2013/08/04(日) 14:56:57.81 0
>>100 更新代理共に乙です
夏にふさわしい凄惨な話でしたw
さゆえり編やジュンリン編ではあまり活躍しなかったれいなの勇姿堪能させてもらいました
105 :
名無し募集中。。。 :2013/08/04(日) 17:42:50.74 0
夕方
106 :
名無し募集中。。。 :2013/08/04(日) 18:17:01.96 0
前に第一話の過去ログを読んでたら正義の味方リゾナンターが夜になったら死刑執行人という設定をプッシュしてる人がいた その彼が闇棲を見たら大満足だろうなと思いながらホゼナン
107 :
名無し募集中。。。 :2013/08/04(日) 19:00:34.34 O
リゾナンターはMVからしたらやっぱ正義の味方ってよりダークヒーローのほうがしっくり来るなあ
108 :
名無し募集中。。。 :2013/08/04(日) 20:53:56.46 0
必殺仕事人的な
109 :
名無し募集中。。。 :2013/08/04(日) 22:41:23.12 0
おやすす
110 :
名無し募集中。。。 :2013/08/04(日) 23:22:06.52 O
好きなシリーズきてたあ
111 :
名無し募集中。。。 :2013/08/05(月) 01:26:55.53 0
>>100 乙です こうやってたまに更新されると最初から読み返したくなるね。だからこんな時間にホゼナント!
112 :
名無し募集中。。。 :2013/08/05(月) 04:48:49.65 0
期待の朝ホゼナント
…です。お忘れ物のございませんようお降り下さい。 ――…ン… …ハッ!! ヤバっ!降りなきゃ! プシュー バタン あちゃー、乗り過ごしちゃったよ。 …やっちゃうか。 スッ ガタンゴトーン ガタンゴトーン… 「ふぅ」 「鈴木さん」 「え?あっ、小田ちゃん一緒の電車だったんだ」 「ダメですよ、人前で能力使っちゃ」 「あーwゴメンゴメン」 「…もしかして、何回かやってますね?」 「…うん、実は」 「私だってそれができるんならやりたいですよー」 「だよね、うん」
「でも、電車降りるくらいならいいですけど、今まで例えば、お店とかに忍び込んだりとか…」 「う〜ん…、小さい頃にさ、凄く欲しかった人形があってさ」 「はい」 「誕生日にね、買ってもらったんだけど、1つだけって言われて」 「はい」 「もう1つ欲しかった人形があって、それも凄く欲しくて。次の日の夜にね、おもちゃ屋さんに行ってさ、それを持ってきたんだ」 「あー…」 「でもさ、おもちゃ屋さんのお姉さんと仲良くしてたんだけど、その次の日に行ったらお姉さんがすごく困ってて」 「はい」 「あっ、私はすごく悪い事をしたんだって気がついて」 「はい」 「その日の夜に戻しに行ったんだ。んで、その後で田舎のおじいちゃん家に遊びに行ってさ」 「はい」 「おじいちゃんとおばあちゃんからお小遣いもらってさ、帰ってからそれでちゃんと人形を買ったんだ」 「ああ〜、よかったですねぇ」
「だから、もうこの力を使って悪いことはしないって決めたんだ。お姉さんが困ってたのを見て、これで同じようなことをしたら、同じように人を困らせちゃうって」 「でも、走り出してる電車から降りるのは危ないですよ」 「おおっとw うん、やめます。はい、やめます」 「だけど、もし鈴木さんが、泥棒というか、怪盗みたいな事をしてたら、大活躍しちゃいますよね」 「うん、そうだと思う。でも私には出来ないな〜。泥棒にあって困ってる人を想像しちゃう」 「言ってましたね」 「でもさ」 「はい?」 「例えばさ、誰かのせいで困ってる人を助ける為とかなら、その為にこの力を使いたいと思うし」 「はい」 「困ってる人を助けたい、困ってる人がいなくなってほしい。そういう人がいることを想像できる限りは、私にできる事を頑張っていきたいなぁ、って思うんだ」 「へぇ〜、素晴らしいですねぇ」 「そんなたいしたことじゃないよ!」 「でも、鈴木さんらしい考え方だなって思います」 「そう?」
「あ、メールだ」 From 道重さん Sub 鈴木と Text 今どこ?鈴木と会った? To 道重さん Sub Re:鈴木と Text 今、鈴木さんと一緒に駅を出たところです 「誰から?」 「あ、道重さんです」 「あっそうだ!このお店寄ってこ!新しいケーキが出たんだって」 「う〜ん…今日じゃない方がいいと思いますよ」 「え?」
117 :
名無し募集中。。。 :2013/08/05(月) 07:05:16.61 0
118 :
名無し募集中。。。 :2013/08/05(月) 07:39:36.79 0
朝からええ話…泣かせて頂きました
119 :
名無し募集中。。。 :2013/08/05(月) 08:16:28.40 0
>>117 2人の会話の流れがいいなあ
最後もすごくいい
読み手の想像力に委ねているところが素敵です
闇棲とこういう話が並び立つのもこのスレのいいところですねw
120 :
名無し募集中。。。 :2013/08/05(月) 11:17:32.76 0
あげ
121 :
名無し募集中。。。 :2013/08/05(月) 13:10:41.79 O
読む前保全
122 :
名無し募集中。。。 :2013/08/05(月) 16:32:17.64 0
ぐぉ
123 :
名無し募集中。。。 :2013/08/05(月) 18:40:13.39 0
あげ
124 :
名無し募集中。。。 :2013/08/05(月) 18:46:22.72 O
>>117 日常に根ざした能力のあり方みたいなものが描かれてて好きな話です
125 :
名無し募集中。。。 :2013/08/05(月) 20:24:16.27 O
夜もホゼナント
126 :
名無し募集中。。。 :2013/08/05(月) 21:56:30.53 O
なにも書けそうにないが香音おめでとう
127 :
名無し募集中。。。 :2013/08/05(月) 22:21:14.40 O
なあに俺も何も書けないさ
128 :
名無し募集中。。。 :2013/08/05(月) 23:36:33.66 O
ほぜ
129 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 01:28:17.82 0
ん
130 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 01:30:28.33 O
おやすみずき
131 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 01:57:23.14 0
フクちゃん、新たな能力が開花してリホリホにあんなことを…きっとリホナンターが黙っていないはず!!w
132 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 06:04:02.90 O
落ちちゃいますよ?
133 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 07:06:45.89 0
朝なんだろうね
134 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 08:15:09.39 O
おぱょナント
135 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 11:10:24.50 O
昼前保全
136 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 12:50:02.22 O
昼休み保全
137 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 13:34:54.83 O
携帯ホゼナンター
138 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 13:35:42.97 0
昨日からの携帯占拠率すごいねw 乙ナンターです
139 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 15:27:03.12 0
暑いっていうか熱い
140 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 18:14:22.27 O
絶賛規制中だからしょうがない といいつつ自分も携帯
141 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 19:32:53.89 O
作品きてるのに代理できない残念なホゼナンターで申し訳ない
142 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 21:03:55.76 O
支援保全
143 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 22:12:54.34 O
ケータイホゼナンター
144 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 23:32:48.51 0
トゥルトゥルホゼナンター
145 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 23:48:03.90 0
代理します(初挑戦)
146 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 23:49:22.22 0
>>48-54 の続きです
●
桜田門。
東京の中枢とも言うべきこの地に、正義の番人然として屹立する建物がある。
その建物の中の、組織でも上層部の人間しか出入りできない区画に存在する小さな会議室。
対能力者部隊「PECT」に代わり、警視庁の新たな能力者への切り札となる部署。今日はその部署の会合の日であった。
「集まりが悪いな」
会議室のテーブル。
三人の部下を前に指揮官と思しき中年の男が、言いながら肩を窄める。
「まったく、何で俺が代理とは言えこんなクソガキの世話をしなきゃならんのか。って思いましたよね?」
「なっ…勝手に人の心を読むなっ!!」
後退した額に脂汗を浮かべ明らかに動揺している男を見て、可愛らしいドレスを着た女が厭らしく微笑む。
真野恵里菜。通称サトリと呼ばれる、読心術(リーディング)の能力者。
「ほら真野ちゃん、おっさんのか弱き心を弄ばないの。というわけでさっさとはじめちゃいましょーよ。きっかおなかすいたん
で手短に終わらしたいんすけどー」
「だ、誰がおっさんだ!!」
フォローしてるようでフォローしてないのは、適当な性格ゆえか。
吉川友。相手の心の傷を形にし、使役する悪夢召喚(サモンナイトメア)の能力者。
「二人ともやめなよ。主任さん、困ってるじゃない」
「ゆうかりんは優等生だねえ。でもさー、お友達の三人が来てない時点で説得力ないよ。って感じ?」
友の指摘に顔を赤くする、色白の少女。
前田憂佳。部署内で唯一、治癒(ヒーリング)能力を保有する能力者。
147 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 23:50:54.07 0
「能登と北原は別任務に出ているからな。数は少ないが仕方ない。これより定例会議を始める。吉川、報告を頼む」 主任がそう促すと、一歩前に出た友が立ち上がり、 「んじゃ報告ー。『赤の粛清』が単独行動してるみたい。しかも本拠地を発ってから、一度も戻ってないんだってさ」 と話す。 「もしかして、離反?」 「そこまではわかんないけど、部下も同僚もつけずに一人で行動してるっぽいね」 「さとります。これは幹部崩しのチャンスだって、思いましたね?」 「だから勝手に心を読むなっ!!」 再びの不意打ちに、主任が口角泡飛ばし抗議。 まったく食えない奴らだ、能力者ってのは。この中で唯一非能力者である彼は心の中で毒づきつつも、会合の本題を切り出す。 「我々の目的は、異能力を悪用し世の平穏を乱す連中を取り締まること。中でも『ダークネス』は最も警戒すべき組織だ。だ が、上層部の能力者たちを除けば大した連中じゃない」 「つまり、上の人間を崩せば組織は自壊する。その手始めとして粛清人Aとして恐れられた『赤の粛清』を的にかけるという わけですか」 恵里菜が、薄く微笑んだ。 心を読む必要はない。ダークネスの壊滅は、彼女達にとって大きな目標の一つなのだから。 「ああ。そこでだ。今回の『赤の粛清』の討伐をスマイレージにやってもらう」 「私たち、ですか」 憂佳が、困惑した表情を見せる。 スマイレージ。憂佳を含めた四人の少女たちによって構成される、対能力者部署の一部隊。
148 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 23:52:00.83 0
「物理攻撃、精神攻撃、そして治癒。今うちで一番バランスのとれている部隊だからな。不服か?」 「いえ、そんなことは」 「なら問題ないな。具体的な作戦は追って連絡する。戻って、他のメンバーに伝えるがいい」 「…わかりました」 一礼をしてから、憂佳が会議室を出る。 その儚げな後姿を見ていた友が、 「つーか主任、増員まだっすか? 正直うちらだけじゃ手が回らないって感じ。さっさとカリンとかあそこらへんを昇格 させちゃえばいいのに」 と言い放った。 その言葉の真意は。 「年少メンバーはまだ最前線に出られるほど育ってないんだ、無理を言うな」 「えー。さっきのゆうかりんの顔、見ました? わたし、戦いたくないんですぅ、そんな感じ? あれじゃ『赤の粛清』 に返り討ちに遭うのがオチじゃない?」 「課長の指示だ。嫌でもやらせる」 主任の横で、心を読み取った恵里菜が歪な表情をする。 なるほど、そういうことね。 もちろん、口にはしない。こういうことは後でのお楽しみに取っておくものということを、彼女は知っていた。
149 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 23:54:11.82 0
★ 完敗だった。 生まれて初めての、そして言い訳ができないくらいの。 れいなは、惨めにも地面に這いつくばっていた。 手も足もでない、とはこういう事を言うのか。 そんなことを考えられるくらいに、心が戦闘から離れていた。 「ねー、そっちから喧嘩売っといてさあ。この体たらくはないんじゃない?」 「う…うるさい…」 相手からの挑発とも取れる言葉で、自らの闘志を奮い立たせるれいな。 だが、立ち上がった先に見えるのは、圧倒的とも言うべき実力の差。間違いなく、今まで出会ったどの人間より、強い。 地を噛み泥を被りながらも、腕を突き立てれいなは立ち上がる。 黒のジャケットを羽織った、金髪の女が気だるそうにこちらを見ていた。気の抜けたような表情は余裕から来るものなのか。 それが、気に食わない。 もともと、れいなが目の前の女に喧嘩を仕掛けたのもそんな単純な理由から。 彼女は既に内なる能力を自覚し、駆使することで街に屯する不良たちのリーダー的立場に立っていた。周りにはいつも、ご機嫌 伺いの舎弟たちが取り巻いてはいたが。
150 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 23:55:56.44 0
孤独。 周りに人がいるからこその孤独。どうあがいても分かち合えない感情をぶつけるが如く、れいなは己の拳で立ちはだかる者を ねじ伏せていった。そして。目の前の金髪の女も、その一人になるはずだった。 それが、手も足も出ない。 れいなの体の倍はあろうかという大男も、徒党を組んだ集団も。さらには異能を身に着けたものですら。打ち倒してきたはず の彼女が、何もできずに地に伏している。 子分たちは既にのびている。にしてもこの状況は、屈辱。 ただ。れいなは、戦ううちに彼女の中に孤高の崖に立つ金色の獅子を見ていた。 言うなれば、容易くは辿り着けない王の領域。 踏み越えてやる、という思いとともに添えられる密かな感情は。 全てのごちゃ混ぜの感情を束にするかのように、再び拳を握り締めたその時だった。 空き地の塀を破壊しながら、巨大なトラックがこちらに向かって突っ込んできたのは。 ★
151 :
名無し募集中。。。 :2013/08/06(火) 23:58:57.43 0
● 目を覚ます。 れいなは、頭を振り、自らの中の夢の断片を振り払った。 リゾナンターになる、ずっと前の出来事。それがなぜ、今になって鮮明な夢として蘇るのか。 きっと、黒い血のせいっちゃね。 一人ごちつつ、胸に手をやった。 黒血。成すすべもなくトラックに押し潰されたれいなを助けた、あの金髪は。 出血多量で瀕死のれいなに自らの血を分け与えた後に、その血の正体について語った。 ― 分子レベルで特殊な回路を組み込まれたげんけー細胞のしゅーごーたいの産物? とにかく、すごい血らしいんだよね。 その力であんたは、死の淵から戻ってこれたわけ ― ついさっきまで鬼神のような強さでれいなを叩きのめした人物とは思えない、間の抜けた発言。だが、その言葉には続きが あった。 『ただし、ごとーにしか合わない』 女が言うには、元々その黒い血は自分のためだけに開発されたもので、他人に分け与えるようなものではないと言う。普通 の人間なら身に取り込んだだけで血に取り込まれ、滅ぼされるとも。 では、なぜれいなに女は血を分けたのか。 「なんかさあ、あんたなら大丈夫だと思ったんだよね。なんとなく」
152 :
名無し募集中。。。 :2013/08/07(水) 00:00:02.77 0
一見無謀な賭けが成功したかに見える結果。しかしそこには大きな瑕疵がある。 れいなの血は赤い。けれど、それが黒くなった時。それはれいなが黒い血に取り込まれる兆し。ある意味、緩慢な死刑宣告 だった。 けれど、れいなはそれでも構わなかった。 どの道死ぬ筈だった自分。それ以前に、拳を振るうことでしか満たされない毎日。いつ、どこで死んだところでそれはどう でもいいこと。 ある時までは、本気でそう思っていた。
153 :
名無し募集中。。。 :2013/08/07(水) 00:01:20.03 0
「たなさたーーーーーん!!!!!!!!」 背後からの、元気なタックル。 振り返らずともそれが誰なのかはわかっている。 「こらぁ、佐藤!!」 言いながら、引っ付いてきた頭をくしゃくしゃと撫でた。 優樹はその間、嬉しそうにぐりぐりと自分の頭をれいなに押し付ける。 「たなさたん。まさはあんな奴らに絶対に、負けませんから」 そうかと思いきや、突然の決意表明。 基本的には子供過ぎるくらいに子供なのだが、時折こうやって意外な面が飛び出す。 「そりゃ頼もしいっちゃね」 「がってんしょうちのすけですぜ」 返しの意味はよくわからないが、優樹なりのやる気の表れだとれいなは解釈した。 彼女だけではない。あの日、れいなが後輩たちに覚悟を問うた日の翌日から。恐らく、悩み、考え、そして結論を出したのだろう。 早々と世界一の能力者を目指してますから!と言い切った衣梨奈を筆頭に、次々と喫茶リゾナントに顔を出す若きリゾナンターたち。 言葉を尽くす春菜、空元気も元気のうちの遥、真面目なことを言えば言うほど寒い空気を醸しだす亜佑美。希望を胸に前進する香音、 簡素な言葉とともに目標を口にする里保、そして最後に店を訪れた聖。 優樹だけは、いつもの調子でイヒヒヒと笑いながらやって来た。まさかあの話を聞いても何も感じるものはなかったのでは、と心配 しかけたが杞憂に終わったようだ。彼女もまた、立派なリゾナンターの一員なのだ。 あの女の言葉通りなら、この身はそのまま呪われた血に飲み込まれ滅びるのを待つだけ。 そんなものは、怖くない。けど。
154 :
名無し募集中。。。 :2013/08/07(水) 00:03:03.30 0
会いにいかな、いけんね。 それが具体的な解決策である根拠など、どこにもない。 ただ、黒き血の繋がりの先が、あの女であることもまた事実。 れいなは、決意を固めつつあった。 「銀翼の天使」と並び称されるダークネスの最強能力者である、黒き翼を携えし悪魔と会う決意を。
155 :
名無し募集中。。。 :2013/08/07(水) 00:06:30.57 0
156 :
名無し募集中。。。 :2013/08/07(水) 00:37:55.78 0
>>155 初代理乙です。初とは思えぬ程読みやすかったです
ついにエッグが動き出しましたねぇ〜普通に考えればあっさり返り討ちでしょうがw黒い血の真相も少し明らかになりますます目がはなせないです
157 :
名無し募集中。。。 :2013/08/07(水) 00:39:43.35 0
おっさんがくだらねーことしてやがるwww
158 :
名無し募集中。。。 :2013/08/07(水) 02:17:05.83 O
>>155 第三勢力の動向もさることながられいなのほうも気になりますね
159 :
名無し募集中。。。 :2013/08/07(水) 06:57:38.08 0
面白くなってまいりました
160 :
名無し募集中。。。 :2013/08/07(水) 10:52:28.81 O
あついなんと
161 :
名無し募集中。。。 :2013/08/07(水) 12:53:13.29 O
昼休み終わりなんと
162 :
名無し募集中。。。 :2013/08/07(水) 15:05:52.47 0
暑くて溶けそうですわ
163 :
名無し募集中。。。 :2013/08/07(水) 16:49:13.22 0
(…ゴクリ)
164 :
名無し募集中。。。 :2013/08/07(水) 17:01:28.16 O
乳も滴るいい女ですね
165 :
名無し募集中。。。 :2013/08/07(水) 19:20:14.64 0
誰がミル姉さんやねん
166 :
名無し募集中。。。 :2013/08/07(水) 19:41:47.24 O
聖ねえさんや
167 :
名無し募集中。。。 :2013/08/07(水) 20:55:11.98 O
あげ
168 :
名無し募集中。。。 :2013/08/07(水) 21:56:31.49 O
うえ
169 :
名無し募集中。。。 :2013/08/07(水) 22:48:02.77 0
170 :
名無し募集中。。。 :2013/08/07(水) 23:52:45.49 0
>>169 大丈夫リンク上手くいって…ってなに書いてんだあんたいいぞもっとやれw
171 :
名無し募集中。。。 :2013/08/07(水) 23:57:22.37 O
リゾスレではももちや亀井との絡みがなく残念なフクちゃんであった…
172 :
名無し募集中。。。 :2013/08/08(木) 00:23:20.44 0
ピコーン
173 :
名無し募集中。。。 :2013/08/08(木) 01:41:20.42 0
174 :
名無し募集中。。。 :2013/08/08(木) 02:38:51.16 0
エロナント乙ですの
175 :
名無し募集中。。。 :2013/08/08(木) 05:09:50.42 O
おはナンター
176 :
名無し募集中。。。 :2013/08/08(木) 07:54:51.07 0
おぱよう
177 :
名無し募集中。。。 :2013/08/08(木) 09:40:30.47 O
今日も暑い
178 :
名無し募集中。。。 :2013/08/08(木) 11:48:14.15 0
いきなりですが問題です 歴代リゾスレ作者の中で1番若い人は何歳でしょう ・・・答えは知りませんw
179 :
名無し募集中。。。 :2013/08/08(木) 12:01:43.67 O
まったく知らないけど当時高校生の作者とかいたんじゃないかな
180 :
名無し募集中。。。 :2013/08/08(木) 12:54:47.48 0
文章に勢いがありますね、若い人なのかな(若くなかったらごめんなさい) と言われたことを思い出すw
181 :
名無し募集中。。。 :2013/08/08(木) 15:18:10.96 O
共鳴に年齢なんか関係ない…よ?
182 :
名無し募集中。。。 :2013/08/08(木) 15:20:10.84 0
プラチナメンと同世代くらいの作者さんは割といた(いる?)みたいね
183 :
名無し募集中。。。 :2013/08/08(木) 17:39:16.12 O
ほぜ
184 :
名無し募集中。。。 :2013/08/08(木) 18:47:54.36 0
カランコロン 「ただいまー!もー雨凄かった〜」 「おかえり・・・って、びしょ濡れじゃない!?」 「今日傘忘れちゃって…」 「風邪ひくから、お風呂入っちゃいなさい。あ…今フクちゃん入ってるから」 「じゃあ、譜久村さんあがったらお借りします」 (あゆみちゃん?この次入るのね・・・) ピコーン! (これはチャンスですわ!) ガチャ 『道重さーん、シャワーありがとうございましたー』 「あ、フクちゃん上がったみたいね?石田もさっさと入っておいで」 「はーい」 (これでOKですわ) (あとは・・・この力・・・) 「久しぶりすぎて忘れてないかしら?」 【液状化】発動! ガチャ 「あれ?お風呂にお湯入ってる?」 「しかもほのかに香る良い香り・・・譜久村さんの事だからきっと高級な入浴剤ね!」 「私も入らせてもらおっと♪」 (キター!今ですわ!!) 【液状化−変態−】発動!! 「ふ〜あったまる〜♪」 「さすが高級入浴剤!肌にしっとりとからみ・・・って、あれ?」 (ウフフ) 「え・・・何?体が・・・ヤダ・・・ぃや・・」 (逃がさない・・・お楽しみはこれからですわ) 「いやぁ・・水が体にまとわりついて・・ヌルヌルして・・」 (あゆみちゃん・・・ハァハァ) 自主規制ホゼナント〜ご想像にお任せ〜(何か最近方向性が間違ってきたような気がするw)
185 :
名無し募集中。。。 :2013/08/08(木) 20:02:11.97 0
あげ
186 :
名無し募集中。。。 :2013/08/08(木) 20:29:13.44 0
間違っていますな このまま間違ったままでいきなさい
187 :
名無し募集中。。。 :2013/08/08(木) 21:43:52.94 O
サブリーダーが悪の手先に見えてきましたw
188 :
名無し募集中。。。 :2013/08/08(木) 23:18:54.21 0
あげ
189 :
名無し募集中。。。 :2013/08/09(金) 00:43:02.15 0
>>186 良いのか!?だがもうネタが…wホントここの作者さん達って凄いよなぁよくあれだけネタ出てくるだろ?
>>187 だってフクちゃんから醸し出されるエロスがハンパないんだもの
190 :
名無し募集中。。。 :2013/08/09(金) 01:39:13.63 0
おやすみずき
191 :
名無し募集中。。。 :2013/08/09(金) 04:13:07.40 O
おやすみなんと
192 :
名無し募集中。。。 :2013/08/09(金) 04:39:15.13 O
おはよう
193 :
名無し募集中。。。 :2013/08/09(金) 06:20:06.48 O
早起きだなw
194 :
名無し募集中。。。 :2013/08/09(金) 09:32:51.16 0
遅起きな俺がホゼ
195 :
名無し募集中。。。 :2013/08/09(金) 10:50:49.74 0
スマホの規制解けてる!
196 :
名無し募集中。。。 :2013/08/09(金) 13:03:21.02 O
昼休み終わり保全
197 :
名無し募集中。。。 :2013/08/09(金) 15:40:34.71 0
スマホ全(ドヤ
198 :
名無し募集中。。。 :2013/08/09(金) 15:54:09.39 O
お願いPCの規制も解いて
199 :
名無し募集中。。。 :2013/08/09(金) 18:13:21.12 0
解けてるかな
200 :
名無し募集中。。。 :2013/08/09(金) 20:13:02.93 O
規制解けてる人は代理よろ
201 :
名無し募集中。。。 :2013/08/09(金) 20:38:46.46 0
純然たる読みきりです 鈴木香音は頬杖をつき、窓の外を見ていた。 夏の夜空には星が輝いている。 こと座のベガ、わし座のアルタイル、十字形に並ぶはくちょう座のデネブの3つを結んだ「夏の大三角形」が夜の海に浮かんでいた。 中学校の理科で習った知識が早くも役に立ってなんだか嬉しくなる。 確か、ベガを「織姫星」、アルタイルを「牽牛星」と呼ぶということを理科の先生は言っていた。 そうか、あの星が織姫さんで、あの星が彦星さんなんだと香音はゆっくりと腕を上げて指を伸ばした。 窓ガラスをなぞるように指を動かし、「さーさーのーはー、さーらさらー」と七夕の歌を唄う。 「七夕」といえば、7月に祝うものであるが、まあ夏ということに変わりはないだろうと気に留めずに唄った。 それと同時に、七夕といえば生田衣梨奈の誕生日じゃないかと思い出した。 あの鬱陶しいKYはひとつ歳を取ったのだし、もう少し落ち着いてくれないだろうかと苦笑する。 とはいえ、その鬱陶しさが彼女の良いところなんだけどと思いながら「おーほしさーまー、きーらきら」と唄ったところで、彼女の「耳」は、その音を聴き取った。 唄うのをやめて、ゆったりと頭を擡げる。 地下の鍛錬場から階段を登ってきたのは、いつも通りのよれよれのシャツとパンツを纏った鞘師里保だった。 彼女は黙って右手を挙げてこちらに挨拶をしてきた。香音も素直に右手を返し「おつかのん」と冗談交じりに笑いかける。 「新作メニュー、決まった?」 里保は鍛錬で乱れた前髪を整えながら香音に訊ねてきた。
その言葉に肩を竦めつつ、香音は手にしていたメニュー表とノートを広げてみせる。 「しょーじき、微妙です」 「微妙ってなんだよ。微妙って」 「美味しいけど売れる気がしない」 「ダメじゃんそれ」 里保は顔をくしゃっと崩して笑うと、香音の書きかけのノートに目をやった。 彼女は「喫茶リゾナント」の売れ筋メニューを分析しつつ、オリジナリティある夏の新作をつくろうとしていた。 斬新さや目新しさは、一瞬は人々の目を引くものの、長くはつづかない。もっとずっと愛される定番・看板メニューをつくりたいと考えていた。 もちろんそれは一朝一夕でできるものではないから、香音は悩んでいるのだけれど。 「やっぱ、真面目だよね、香音ちゃんは」 里保はタオルで額の汗を拭うと、鎖骨あたりまで伸びた黒い髪をひとつに結った。 夏は暑い。切りたくはないけれど、思わず切りたくなる。いや、でも、切りたくない。 「里保ちゃんだって真面目じゃん。鍛錬ばっかかと思えば厨房入って野菜切ってるし」 「だって前に田中さんに、鞘師ってできるように見えてなんも出来んって笑われたんだもん。マジ、子どもって」 「でも玉子焼き褒められてたじゃん。子どもじゃんか」 香音はからかうように笑うと、厨房の奥にある冷蔵庫からサイダーを取り出し、グラスに注いだ。 夏らしい清涼感溢れるサイダーがグラスに満ちていく。里保は自然とグラスの中の炭酸の泡を見つめていた。 泡はしゅわしゅわとグラスに浮かび、そしてぽんっと表面で消えていく。 「しゅわしゅわぽん」という音は、夏らしくて、可愛らしいのだけれど、ふいに何処か切なくも感じる。 浮かんで・消えて。浮かんで・消えて。 それはなんとなく、私たちをそのまま表しているような気がするから、自嘲気味に笑いながら、それを飲み干すしかない。 泡のように浮かんで・消えて。浮かんで・消えて。
その一瞬の中で、それでも輝きたいと願う。 「子ども」だけど子どもじゃない。瞬間に「大人」にはなれないけど、それでも追いつきたい。 自分が目指すその場所まで、必死に走り抜けたい。 なんて、何処かの詩の一説みたいだと苦笑しながら里保はグラスを手に取った。 「いただきます」 「はい、いただきます」 そう言うと、香音とグラスを合わせた。 チンという明瞭な音がだれもいない「喫茶リゾナント」に響く。昼間は客で賑わうこの場所も、閉店後は静寂が満ちている。 この静けさが里保は好きだ。だれにも邪魔されない、リゾナンターだけの空間。 静かな音が香る空間だけが、里保の心を満たしてくれる。 「って、里保ちゃん、サイダー控えてるんじゃなかったっけ?」 「えっ。香音ちゃんが出しといてそういうこと言うかな?」 「だって、飲みたそうな顔をしてたし」 香音はそうしてからかうように笑い、グラスを呷った。 里保は困ったように目を伏せて眉を掻く。 「サイダー」は自分の好きな飲み物であるが、最近飲み過ぎのせいか、腹部周りが、まあいわゆる「ぽにょっと」してきた。 簡単に言ってしまうと、脂肪分が増えてきたのだ。 年頃の女の子にはありがちかもしれないが、それにしたってこの「ぽにょっと感」はなんだか納得いかない。 後輩である佐藤優樹には「隠れポニョなんです」なんて笑ってからかわれるようになった始末だ。 なんてことを言うんだ、なんてことを!と思ったけれど、反論できないから仕方ない。
里保は、闘うときに両脚で体を支える癖があった。 それが悪いとは言わないけれど、全身の中心、いわば体幹で支えないことには、脚をさらわれたときにすぐに倒れてしまうのは明白だった。 体幹で支えればお腹の筋肉も発達して脂肪も燃焼するはず、なので、私はできるだけ、体幹を鍛えるようにしていた。 とはいえ、それこそ一朝一夕でいくはずもなく、まだまだ「発展途上」という段階なのだ。 それでもサイダーを飲みたい欲求は収まらず、腹部の「ぽにょっと感」は、一向に治らない。いや、炭酸を控えようとはしているのだけれど。 「真面目なのか子どもなのか、分かんないよねー」 「うっさいうっさい。良いじゃないか、もう」 「はいはい」 香音と笑いながらサイダーを飲む。 夏の匂いと夏の味がする。 これだからサイダーはやめられない。なんて言い訳する気はないけど。 やっぱ私、子どもだなーなんて思っていたとき、ぴりっと空気が張り詰めたのを感じた。 嫌な、空気。なにかが通り過ぎるような感覚。そこには確かに「だれか」いると即座に判断した。 その「だれか」が私たちにとって圧倒的な不快感をもたらす存在であることも、分かった。 カンっとグラスを置き、腰のホルダーに左手を伸ばす。 が、ふいにテーブルに置いていた右手を彼女に握られた。 「え?」と思わず顔を上げると、香音は優しく、だけど何処か寂しそうに笑って首を振った。
「だいじょうぶ。もう、だいじょうぶ」 「なに、が……?」 「あの人、もう、死んじゃう。意識だけ、残ってるけど。もう、闘う力はないよ。このまま、向こうで、死んじゃう」 香音の言葉の意味が、一瞬では理解できなかった。 だが里保は必死にその真意を噛み砕き、彼女の深淵を覗こうとした。 そうして見えてくるのは、得体のしれないほどの暗い闇と、哀しみと、そしてどうしようもない切なさだった。 里保がなにか言おうと口を開こうとしたが、結局それは言葉にならず、香音はまた笑った。 どれくらい沈黙がつづいたかは分からない。 10秒か、1分か、5分か、それとも10分か。気付いたときには、香音はカウンターを回り、ドアを開けて外に出ていた。 そのまま香音は暫く戻って来なかったが、里保はその間も、その場から一歩も動けなかった。 どうして私は、此処で一歩踏み出せないのだろう。 死にかけである敵に対し、情けをかけることも、花を手向けることも、とどめを刺すことも、なにひとつできないのだろう――― 里保は手持無沙汰になり、テーブルに置きっぱなしのサイダーのグラスをくるくると回した。 それからすぐに香音は戻ってきた。 香音はすっかり目の座ってしまった里保を見て困ったように笑った。 里保はその視線から逃れるようにグラスを空ける。どうしよう、アルコール入ってないはずなのに、私、酔っちゃったのかもと苦笑した。 「死にたくないって、音が聴こえたんだ」 「え……?」 「あの人。私たちを殺したいけど、でも自分も死にたくないって。生死の狭間で、必死、だったと思う」
香音はまるでひとり言のように呟くと、カウンターの中に戻り、サイダーを飲んだ。 「喫茶リゾナント」の前までやって来た男が、抗争相手であるダークネスであるとか、それ以外の刺客であるとかは、里保には分からない。 ただ、目の前に佇む彼女の話を聞く限り、彼の生命への執着は本物だったのだと気付いた。 死なないために生きていて、生きていくために死なずに闘っていく。 それはある種、人間の根源とも似ている気がした。 人はだれだって死にたくないんだ。それが戦場であれ、平和の国であれ。 人はだれだって生きていたいんだ。それが平和の国であれ、戦場であれ。 「ちゃんとさ、聴こえると思うよ」 里保は唐突に、そう呟いた。 香音は「うん?」と問い返す。 きっと、明確な答えにはならなかったが、それでも里保は必死に紡ぐ。 「そんなに、切羽詰まったようなやつじゃなくて、もっと安息の、優しい音がさ、いつか―――」 里保は言葉を切りながらも、必死に音を紡いだ。 手持無沙汰になりながらもサイダーが半分入ったグラスをくるくる回し、香音の目から逃れる。 彼女はそんな里保を見て、クスッと笑った。 思考は大人っぽいくせに、いつも言葉足らずで誤解を生む彼女の不器用さが、香音は好きだった。
たぶん、本質的に里保は子どもなんだと思う。 だれよりも純粋に平和を願うし、だれよりも純粋に死を避けたがる。 建前上は先陣を切るけれど、その手の平に溢れた血の涙を一生背負っていく覚悟を持つがために、里保は常に自らと葛藤し、自らを殺してしまう。 だから、一瞬の静寂に「すべて」を委ねる。 その「すべて」の中で、なんども生を願い、なんども闘争を嫌う。それが彼女の、子どもっぽさであり、大人っぽさだ。 圧倒的に矛盾したその15歳の里保の葛藤を、香音もまた、背負いたかった。 同じ痛みを背負った仲間として。同じ痛みを抱えた15歳として。 「だいじょうぶ。ちゃんと聴こえるよ」 「……ホント?」 「うん。ちゃんと、聴こえるよ。安息の、優しい、そう、“平和の音”みたいなやつがさ―――」 それはまるで、途方もない祈りだ。 確証も保障もない、ある意味では懸けのような、言葉だった。 それでも里保は、彼女の声に、頷きたくなった。 彼女の言葉は、心の底から信じてみたくなるような、音だった。 自分の陳腐で安っぽい心情を、彼女はそれでもその両の手の平に掬ってくれる。 だから私は、香音ちゃんを信じたい。そう、心の底から、願うんだ。 「香音ちゃん……」 「ん?」
里保はサイダーが半分になったグラスを右手に持った。 きっと、上手には笑えていないかもしれない。 これからつづいていく未来に対し、どんな顔をして歩いていけば良いのかも、分からない。 だけど里保は、震える手を必死に堪えて、香音の想いをしっかりと胸に受けとめながらグラスを傾けた。 「誕生日、おめでと」 香音はその言葉に一瞬きょとんとした目を向けた。 だが、里保の真っ直ぐな目と、どうしようもないくらいに情けなくて必死な笑顔を見て、困ったように笑いかえした。 「はいはい、ありがとね、里保ちゃん」 15歳の夏。香音は同い年に追いついた里保に対し、三日月のような柔らかい瞳を向けて、笑った。 香音の声は静寂に満ちた「喫茶リゾナント」の中空に浮かぶと、一瞬の間に溶けていった。
209 :
名無し募集中。。。 :2013/08/09(金) 20:45:55.19 0
>>201-208 以上「平和の音」
ホントは誕生日に投下したかったのですが遅くなって申し訳ないです
お気付きになった方はお手数ですが転載お願いしますm(__)m
改めて香音ちゃん誕生日おめでとう!
----------------------------------------------------------ここまで転載
210 :
名無し募集中。。。 :2013/08/09(金) 21:04:18.66 0
>>209 転載おつですよ
所々に噛み噛みラジオで聞いたことがあるようなネタがあって楽しかったです
何はともあれすーずきさん誕生日おめでとうですね
211 :
名無し募集中。。。 :2013/08/09(金) 22:29:55.57 0
>>209 転載ともども乙です いい話だ!
懐かしい空気を湛えながら新しい時代だなと感じさせてくれる話でもありました
2人の関係性やそれぞれの考えがすごく沁み渡りました
いや……足りないかも
もう一度読んでみますw
212 :
名無し募集中。。。 :2013/08/09(金) 23:48:50.17 0
喫茶店の訓練所。 飯窪春菜は正面に据え置かれた姿見の前で、くねくねと妙なポーズを取っていた。 決して、ふざけているわけではない。 田中さんは新しく結成された能力者のチームに合流してしまわれた。 もう、あたしたちはリゾナンターの主力にならないといけない。 春菜の気合を現すかのように、背後から黄色い液体が噴出する。 春菜の能力「粘液放出(アドヒア・セクレイト)」だ。 ついこの前まで、ただの汗っかきの能力として、同僚からも何となく白い目で見られていたような気さえする この能力。しかし、つい先日のダークネスが差し向けた戦闘員との戦いで、彼女は発見した。
213 :
名無し募集中。。。 :2013/08/09(金) 23:59:28.39 0
この黄色い妙な液体は、春菜の意思により硬化することができる。 それだけではない。ある程度は動かしたりすることもできる。 そこで春菜は思いついた。 こッ、この動きッ!そして自由な可塑性ッッ!!!まさに…スタンドそのもの!!!! スタンドとは、春菜の愛読書であるバトルマンガに登場する能力のこと。 その能力と実際に春菜が保有している能力の共通点に春菜は気付いたのだった。 試しに、彼女は鏡に向かって大きく叫ぶ。 「出でよ、スタープラチナッ!!!」 叫び声とともに、黄色い液体が人の形を成す。 それでは物足りないのか、春菜はズッギュウウウウウンッ!と自分の口で効果音を発する。 こうなるともう彼女を止めることはできない。 「やれやれだぜ」 「「悪」とは てめー自身のためだけに弱者を利用し ふみつけるやつのことだ!!」 「てめーは俺を怒らせた」 体をくねらせながら意味不明の台詞を呟く春菜。彼女は完全に自分だけの世界に入っていた。 「はるなん…今日はいつもに増してきもいね」 「見なかった、見なかったことに」 「さーてハルはあっちでも自主練すっかな」 先輩や同僚の白い目もなんのその。 今日も飯窪春菜は自らの能力の限界に挑戦するのであった。
214 :
名無し募集中。。。 :2013/08/10(土) 00:01:06.37 0
215 :
名無し募集中。。。 :2013/08/10(土) 01:15:46.97 0
あげ
216 :
名無し募集中。。。 :2013/08/10(土) 01:23:45.58 O
寝るなんと
217 :
名無し募集中。。。 :2013/08/10(土) 03:47:27.60 O
>>209 15歳の祈りというか願いが切ないけど綺麗
218 :
名無し募集中。。。 :2013/08/10(土) 07:41:54.62 O
おっつー
219 :
名無し募集中。。。 :2013/08/10(土) 08:34:54.16 O
おはぽん
220 :
名無し募集中。。。 :2013/08/10(土) 11:13:46.22 O
あげ
221 :
名無し募集中。。。 :2013/08/10(土) 12:26:14.10 0
222 :
名無し募集中。。。 :2013/08/10(土) 12:26:56.08 0
愛ちゃんと幽霊
223 :
名無し募集中。。。 :2013/08/10(土) 13:34:22.02 O
猛暑
224 :
名無し募集中。。。 :2013/08/10(土) 14:19:48.27 0
猛者
225 :
名無し募集中。。。 :2013/08/10(土) 14:30:02.91 0
くだらねースレだな
226 :
名無し募集中。。。 :2013/08/10(土) 16:43:52.40 O
夕方あげ
227 :
名無し募集中。。。 :2013/08/10(土) 19:09:36.63 0
あげ
228 :
名無し募集中。。。 :2013/08/10(土) 19:59:21.25 O
熱帯夜保全
229 :
名無し募集中。。。 :2013/08/10(土) 21:12:07.02 O
土曜の夜
230 :
名無し募集中。。。 :2013/08/10(土) 22:49:45.75 0
あげ
231 :
名無し募集中。。。 :2013/08/11(日) 00:13:06.39 0
日曜日
232 :
名無し募集中。。。 :2013/08/11(日) 00:33:19.64 0
佐藤が青森で握手会…恐山でネクロマンシー能力発動させたら大変!とか妄想するのはリゾナン病末期でしょうか?w
233 :
名無し募集中。。。 :2013/08/11(日) 01:08:53.92 O
立派なリゾスレ病です 治療法はそれを作品にすることのみですよ
234 :
名無し募集中。。。 :2013/08/11(日) 02:53:57.42 0
作品書ける腕があれば…誰か書いてくれるの気長に待ちます
235 :
名無し募集中。。。 :2013/08/11(日) 06:26:31.74 O
おはよう
236 :
名無し募集中。。。 :2013/08/11(日) 08:23:16.51 O
また規制された 1日もたなかった悲しい
237 :
名無し募集中。。。 :2013/08/11(日) 10:43:44.17 0
あげ
238 :
名無し募集中。。。 :2013/08/11(日) 11:50:07.85 0
「ママー、いちご食べたーい」 どこにでもある住宅街の、一軒家。 いちご柄のカーテン。いちご模様のベッド。いちごのクッション。 まるでおとぎの国に迷い込んだかのような部屋の中で。 その少女はベッドに腰掛け、執事やメイドに接するかのような口調で「母親」に命じた。 「はいっ!只今持ってまいります!!」 「パパー、肩揉んで」 続いて傍らの「父親」にもそう命令する。 一礼してから、少女の背後に回り肩をもみ始める。そんな光景を見ながら、もう一人の少女が、 「いいなあ、かにょんは。紗季もそういう『能力』がよかったな」 と羨望の言葉を呟いた。 「いいじゃんサキチィ。何度殺しても死なない能力者なんて、そう居ないよ?」 「確かずっと昔にいたダークネスの幹部も似たような能力者だったっけ。仲間内の争いで殺されちゃったらしいけど」 「へえ。じゃあサキチィもうまくやれば『殺せる』んだ?」 「はぁ?紗季の力はそいつのとは根本的に違うし」 何がおかしいのか、けたけたと笑いはじめる紗季。 そこへ、会議帰りの憂佳が入ってきた。 「ゆうかお帰り。どうだった会議は」 「『赤の粛清』討伐指令が下りたよ」 憂佳の言葉に、紗季や花音が沸き立つ。 いよいよダークネス攻略に着手することができる。これまで小さな仕事しか与えられなかった鬱積を晴らす、いい機会。だが、当の 憂佳の表情は冴えない。
「どしたの憂佳、元気ないよ」 「そんなんじゃない。けど」 人一倍子供な紗季はともかく、憂佳の様子がおかしいのは花音にでもわかる。が、憂佳はそれをはぐらかすかのように、 「またよそ様の家を借りて一人娘ごっこ?やめようよ、そういうの」 とだけ言った。その眼差しは、一心不乱に花音の肩をもみ続ける「父親」へと注がれている。 「だってしょうがないじゃん。能力は有効に使わないと」 「そうそう。シンデレラレボリューションっていうらしいよ、これ」 悪びれずに答える花音と、尻馬に乗る紗季。 やがて花音によって洗脳された「母親」が恭しくいちごの積まれた皿を持ってくると、憂佳は諦めに似た思いを乗せてそれっきり 黙ってしまった。 「やった!いちごだぁ、いっただきまーす」 「ちょっとサキチィ食べすぎ!これは花音のいちごなんだから」 紗季がぽいぽいといちごを口に放り込むとともに広がる、甘酸っぱい香り。 食欲の化身をいちごのクッションで制しつつ、花音が思い出したように、 「そういえばあやちょは?一緒じゃなかったの?」 と憂佳に訊ねた。 「彩花ちゃん、道の途中にあった美術展の看板見たら『あーっこれ、あやが見たい絵がある!!』って言って、そのまま」 「うちのリーダーは自由ですこと、ほんと」
そんなことは織り込み済み、と言った納得の表情をする花音。 紗季も、彩はわけわかんないことばっかり言ってるからねー、と言いまたけらけらと笑いはじめた。 「ま、あやちょのことは憂佳に任せたから。あの子、憂佳にしか心開かないし」 「ミステリアスだよねえ、彩は」 違う。そうじゃない。 それは、あの子を理解してあげようという気がないだけだ。 憂佳はその言葉を胸に閉じ込める。口から先に生まれたような二人を相手にすると、溜め込むことが多くて困る。それもまた、胸 の奥へと消えていった。
● スクランブル交差点を中心に、広がる街並み。 ひっきりなしに走り交う、大小の車。信号待ちで屯する、人の群れ。 携帯を絶えずいじる女子高生、耳に挿したイアホンに身を任せる若い男。憂鬱そうに手提げ鞄をぶら下げるスーツ姿の中年。 信号が、青になる。われ先にと、対岸へと歩き出す人々。スクランブルの十字が、あっという間に人で溢れ返った。 そんな日常とも言うべき光景の中で、白いワンピースを着た少女はいかにも、浮いていた。 ― これが最後の研修です。あなたに自由外出を許可します。期間は3日間、その間は何をしても構いません ― 白衣の女性、Dr.マルシェはそう言った。 研修と言うには、あまりに大雑把な内容ではあったが。 圧倒的な人の波に、さくらは言葉を失っていた。 こんなにも多くの人間が、この世には存在している。ダークネスの本拠地で過ごし、必要な時だけ外に出るような環境では知りえ なかった、事実。 どん、と背中に強い衝撃を受ける。 振り返ると、不機嫌そうな中年の姿が。 「ったく。こんなとこでぼさっと突っ立ってんじゃないよ!」 「あっ、す、すいません」 どうやら自分が彼の進路を塞いでいたらしい。 それだけ言うと、その中年はすたすたと向こう側へと歩いていってしまう。
さくらの頭の中で迅速に構築されるシミュレーション。 踵を返す中年の肩を掴み、引き倒す。 無防備になった腹に、致命傷の一撃を加える。 だが、それが実行に移されることはない。不用意な争いは得策ではない。そう説いたのは、組織の重鎮である「永遠殺し」だった。 さくらは雑踏に立ち尽くすのをやめ、周りの人々と同じように歩いてみる。 たったそれだけのことで、自身を包む疎外感が薄れたような気がした。最もそれはやはり「気がした」だけで、現実は何も変わら ない。 さくらが能力者であり、その他の人々が非能力者であるという、現実。 この国を形作る現代社会は非能力者に支配された世界である。 さくらがこの世に生を受けてまもなく、そう教えられた。そして、ダークネスという組織の存在意義は、その雁字搦めの構造をひっ くり返すことにある、とも。 そういった世界に、さくらは突如として放り出された。3日間の限定ではあるが、何をすればいいかは何も教えてくれなかった。世 界を体感することで世界を学べということなのか。にしても、何をどうすれば学ぶ事ができるのかは、わからなかった。 答えを探すように、さくらは街を歩き続ける。 まるで誰かに、助けを求めるかのように。
● 本日も通常営業、喫茶リゾナント。 味はそこそこ、客足はちらほら。 一部の常連客の熱い支援によって支えられていると言っても過言ではない有様だが、先代、先々代から続く喫茶店の灯を消してはなら ない。店主さゆみとメインシェフれいな、それと高校を卒業しフリーとなった春菜の三人が中心となり今日もリゾナントは元気に営業 していた。 とは言え。 調理の要であるれいなは「本業」で忙しく毎日リゾナントに居られるわけでもなく。店主のさゆみにしても、料理のほうはからっきし。 残る春菜にして料理が得意というわけでもなく。 必然的に調理場ではレンジでチンが主力になってしまっていた。 ただ、客もまばらなこの状況は春菜自身都合が良くもある。 あの絶望的な「赤の粛清」との戦い。一度は心が折れかけもしたが、春菜自身のポジティブシンキングもあり再びリゾナントに立つ決意 ができた。 それでも、不安が全て消えたわけではない。「赤の粛清」のような実力者と手合せしなければならない状況など、これからいくらでも起 こりうるからだ。 能力者同士の戦いは。力の強弱だけでは決まらない。 そう教えてくれたのは、かつてのリゾナンターのリーダーである新垣里沙だった。 それは春菜が日頃愛読しているバトル漫画でも同じ。要は、どう能力を使いこなすか。 春菜の能力は、五感強化。自らの五感を自在に操る力は五感の共鳴とも称される特殊な能力だ。
ああ、承太郎さんみたいにクールに戦いを展開できたらなあ。 彼女の敬愛する漫画の主人公に思いが行きかけた、その時。 からんからん。 来客を知らせるドアベルの音に、思考を遮られた春菜は反射的に席を立つ。 「いらっしゃいませ!!」 後ろめたさを覆い隠すように声を張り上げる春菜。 が、甲高い声質もあってかどうしてもひょろくなってしまう。 「何や飯窪、そんなんやったら客も帰ってまうで」 「つんくさん!」 来客の正体、それは白いタキシード姿の胡散臭そうな金髪の中年。 自称「能力プロデューサー」ことつんくであった。 「今日も田中も道重もおらんのか。こらメシについては期待できひんなあ」 「え、そんなことは…」 「まあええわ。アイスコーヒー、頼む」 食い下がろうとする春菜を片手であしらいつつ、カウンター席に座るつんく。
「そう言えば飯窪、お前ら『赤の粛清』とやりあったんやって?」 「さすがはつんくさん、情報が早いですね」 「ま、お前らを発掘した俺としても鼻が高いわな」 そう言えば、私たちがいた宗教団体の存在を高橋さんたちにリークしたのがつんくさんだったっけ。直接自分たちを救出したのはリ ゾナンターなのに、と思いつつもその経緯を考えればつんくの言う事にも一理あるのだろうか。 差し出されたアイスコーヒー(インスタント)を一気に飲み、一息つくつんく。 やっぱリゾナントのコーヒーは最高やな、という適当な感想を流し、春菜はつんくに訊ねる。 「前からお聞きしたかったんですけど」 「おう、俺が答えられるもんなら、何でも答えるで?」 「つんくさんは能力者ではないのに、どうやって能力者を見つけるんですか?」 春菜の疑問は。 能力者同士ならば、互いに相手が能力者であることを感知できる。だが、普通の人間にその術はないはず。そこに注目するのは当然 の話だった。 「それはな…これや」 つんくがどや顔で出して見せたそれは。 大きさはちょうど、ボールペンくらい。先には、くたびれた中年の顔を模した装飾がついている。それはどことなく、つんく自身に 似ていた。 「何ですか、これ」 「能力者探知機。論より、証拠や」 訝しがる春菜の前にその妙な道具を突き出したつんく。すると、小さな中年の顔がくるくると回りだし、春菜の正面で止まるとともに。
247 :
名無し募集中。。。 :2013/08/11(日) 11:56:50.52 0
ピコーン!! 間抜けな擬音とともに、中年の頭の上に電球マークが浮かび上がった。 「つんくさん、これは?」 「探知機がお前の能力に反応したっちゅうことや」 凄い。ちょっとデザインが気持ち悪いけど。 春菜はその道具の存在に素直に感嘆した。 「つんくさん凄いです!こんなのどうやって発明したんですか?」 「それは企業秘密っちゅうやつや」 言いながら、口に人差し指を当てるつんく。 恐らくどこかの企業に外注しているのだろう。そんなことを春菜が思っていると、つんくの懐の携帯がけたたましい音を立てた。 「もしもし、俺や。ほう。そらええな。よっしゃ、いっちょ俺自ら出向いて確認するか」 電話の向こうの相手と一通り会話をした後、つんくは残りのアイスコーヒーをひと飲み。 「急用が入ってもうた。もうちょっとゆっくりして他の新メンの話とか聞きたかったんやけど。まあ、また寄るわ。道重と田中によ ろしく言うといて」 それだけ言うと、慌てて店を飛び出してしまった。 慌しい人だ。それに比べこの喫茶店は。 先ほどから一向に客の来ないリゾナント、思わずため息が出てしまうほど。でも。 今日、喫茶リゾナントにちょっとしたハプニングが起こるのを春菜が知るのは、まだ先の話。
248 :
名無し募集中。。。 :2013/08/11(日) 12:05:44.38 0
>>239-247 以上代行
行数の関係で
>>240 の冒頭のマークを削らなくてはなりませんでした
保管庫収録の際にはお手数ですけど原文もチェックのほどを
249 :
名無し募集中。。。 :2013/08/11(日) 13:36:52.68 O
>>248 代理投稿乙
ついに小田ちゃんが動き出しましたね
250 :
名無し募集中。。。 :2013/08/11(日) 15:05:14.19 O
読む前ほぜ
251 :
名無し募集中。。。 :2013/08/11(日) 15:44:47.89 0
>>248 乙ですた
基本シリアスな話だけど随所にちりばめられた小ネタがいいアクセントになって面白かったです
252 :
名無し募集中。。。 :2013/08/11(日) 16:46:03.22 0
この後さくらをスカウトしに行ったつんく♂がヒドい目に遭うのかな
253 :
名無し募集中。。。 :2013/08/11(日) 18:14:58.70 O
ほぜにゃー
254 :
名無し募集中。。。 :2013/08/11(日) 20:04:21.34 O
あげ
255 :
名無し募集中。。。 :2013/08/11(日) 22:03:32.38 0
ぽよ
胸騒ぎがした。 雑踏の中を、さゆみは息を切らせ必死に走る。 夕闇迫る中、照明が消えたままのリゾナント。 何が…?一体、何が…? 慎重に、恐る恐る、扉を開く。 沈みかけの夕陽の光と、唯一つけっ放しのテレビの明かりが、室内をぼんやり照らす。 その目に映ったのは、傷ついて倒れている仲間たち。 ショックの余り、膝から崩れ落ちるさゆみ。 凍りついた空気の中、テレビはのんきに喧騒を映し出していた。 “こゆビーム!” そんな喧騒も、放心状態のさゆみの耳には届かない。 その時、一番手前に倒れていた聖が、わずかに身動きをした。慌てて四つん這いで駆け寄り、聖を抱き上げる。 「フクちゃん!?」 薄目を開いた聖はさゆみを認め、柔らかく微笑んだ。 「ゴメン…なさい…ダメ…でし…た…」 「何言ってるの!?しっかりして!」 しかし、再び目を閉じた聖はそのまま動かなくなってしまう。抱きしめたまま、涙を流すさゆみ。 ひとしきり泣いた後、テレビがつけっ放しである事に気がつき、テレビに目を向けた瞬間―― バリン!! 画面が突如として破裂した―――
―――ハッ!!?? ベッドの上で目を覚ますさゆみ。 「夢か…よかった…」 凍りつきそうな悪夢から目覚め、ホッと胸を撫で下ろす。 窓からは、陽光が差し込む。 でも、なんでこんな時間に寝てたんだっけ…? ややスッキリせず、両手を見つめしばし思案顔。 思案しながら階下へ降り、リゾナント店内へ。 「あ、道重さん!もう体調大丈夫なんですか?」 「え?」 「そうですよ、気分が優れないって。あれ、なんかまだ顔色悪いですよ?」 店内で思い思いに過ごしている、仲間たち。 いつもの光景なのだが、それがとっても嬉しい。 「あ、うん大丈夫、ちょっと嫌な夢見ちゃって」 「え?どんな夢ですか?」 「んーっとねー、さゆみ以外みんなやられちゃってる夢」 一瞬、空気が止まる。 「そりゃないっすよー」 「それは聞き捨てなりませんねぇー」 そして、口々に仲間たちがさゆみの方へやってくる。
その時、窓際の席に客が1人いる事に気がついた。 外を向いていて顔は見えないが、特徴的な髪型をした女性。 「ちょ、ちょっと、みんな通して!」 仲間たちの輪の中から、女性客のもとへ歩むさゆみ。その時、女性客が振り向いた。 「!?」 さゆみは驚いた。 その女性とは、アイドルとして活躍し、テレビにも多数出演する嗣永桃子。 ニコッ 桃子が微笑んだ。 その瞬間、さゆみの背後でしていた喧騒が止んだ。 振り向くさゆみ。まるで時間が止まったかのように、そのままの体勢で動かなくなった仲間たち。 「貴方…!みんなに何をしたの!?」 「フフッw」 ただ笑うだけの桃子。そして、口を開いた。 「あっさり片付けちゃったら面白くないから、遊んで あ・げ・る♪」 「はあ!?」 その言葉の意味がわからず困惑するさゆみの前で、桃子は指をパチンと鳴らした。 「ああッ!!!?」 その瞬間、さゆみの足元が突如として崩れ、地中へと吸い込まれていった―――
―――ザブン! ハッ!!?? そこはバスルーム。 湯船に浸かりながら、いつの間にか寝ていたのか。 「え?今のも…夢…?」 釈然としない気持ちで、乳白色に濁った湯を見つめる。 ブクブクブク その時、水面がにわかに泡立つ。 湯の中から、長い髪の頭が浮かび上がってくる。 ザバァーーーー まるで貞子のような姿の女が水中から姿を表す。 「イヤあああああぁぁぁぁ!!!!」 驚き叫ぶさゆみを、女は水中へと押し込む―――
―――ハッ!!?? 気がつくと、そこはタクシーの車内。 何がなんだかわからなくなってきたさゆみ。状況を把握しようと、周囲を見回す。 ふと、バックミラーに目が止まった。そして、運転手と目が合った。 その運転手は―― 桃子だった。 さゆみの方へ振り返る桃子。 「貴方、何なの!?私を一体――」 さゆみが言い終わらないうちに前を向き直った桃子は、途端に急激な蛇行運転を始める。 後部座席で、左右へ激しく振り乱されるさゆみ。 「やめてっ…!やめてっっ…!」 その時、こちらへ向かってくる大型トラックが目の前に! “ぶつかる!” 目を覆うさゆみ―――
―――さゆ?さゆ? ハッ!!?? 名前を呼ばれ、揺り起こされるさゆみ。 その声の主は、絵里。 「あ…?え、絵里…?」 「もう、なに寝ぼけてんの?もうすぐ開店だよ?」 小洒落た内装の店内。ショーケースに並ぶたくさんのケーキ。 そうだ、2人の夢だったケーキ屋さんを開いたんだ。 窓に向かい、ブラインドを上げながら絵里が聞いてくる。 「さゆ何かうなされてたよ?どうしたの?」 「ん〜、何かすっごい変な夢見てさ〜」 「変な夢?どんな?」 「あの女が…あれ?誰だっけ…?」 「さゆ」 「え?」 「こんな顔でしょ?」 振り向いた絵里の顔は―― 桃子だった。
一気に血の気が引くさゆみ。 刹那、桃子はさゆみの胸ぐらを掴み上げた。微笑んだまま。 「結構遊んだから、そろそろ終わりにしちゃおっかな〜」 「さゆみを…私を一体…どうするつもり…!?」 「どうせもう何もできなくなるから教えてあげよっか」 「!?」 「ももちね、夢を食べるの。夢を食べてエネルギーにするの。ボリュームがある夢ほど、Buono!なの。芸能界って、ボリューミーな夢が渦巻いてたんだけど、最近はボリュームに乏しくてさ。味も似たようなもんばっかだし」 「…!」 「そんな時たまたま貴方を見かけてさ、稀に見るボリュームと新鮮な味に、どうしても夢を食べたくなっちゃったわけ」 「私は…あんたになんか…負けない…!」 「無・駄・よ♪ももちは、夢の中を、ももちの思い通りに出来るの。誰でもね。夢の中で、ももちに勝てるわけがないから」 「私には…やらなきゃいけない事がある…!」 「おお〜、この期に及んでもまだ夢が膨らんでるね〜、イイよイイよ〜w」 「もし私が倒れても…夢を受け継いでくれるみんながいる…!」 「う〜ん、それを聞いて安心しちゃった。またこんな夢が食べられるんだね♪」 「!!」 「夢が萎まないうちに、いただきま〜っす♪」
どしゅん さゆみの身体を、衝撃波が貫いた。 口から血を吐き、倒れるさゆみ。 さゆみ、もうダメみたい…。こんな最期やだな……やだよ…!! 大量の血を流しながら倒れているさゆみ。 その姿と意識が、次第にブラックアウトしてゆく。 薄れゆく意識の中、さゆみは宙に手を伸ばそうとする。 「みんな…お願い……」 そして、さゆみの意識は完全に途絶えた。
264 :
名無し募集中。。。 :2013/08/11(日) 22:45:05.92 0
265 :
名無し募集中。。。 :2013/08/11(日) 22:48:16.04 0
>>264 淡々としながらなかなかの恐怖ですね
ももちってのが怖いw
ちなみに今朝の戦隊ものがちょうど悪夢ものでしたw
266 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 00:38:05.42 0
あげ
267 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 00:48:33.60 0
フクらむ夢をガブリンチョ!
268 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 02:28:27.61 O
269 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 04:56:39.74 0
>>264 おつつ
引きの強い終わり方ですなあ
悪夢から醒める時が来るのか後半待ってます
270 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 07:40:20.05 0
ケーキ屋設定が通だねw
271 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 09:51:38.95 0
桃子の正体はムジナか
272 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 10:40:44.33 0
明日を捜せ
273 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 14:11:01.37 O
ほ
274 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 15:47:14.06 O
あげ
275 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 16:10:34.51 0
暑いなあ ひんやりする作品の紹介を誰かプリーズ
276 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 17:06:40.61 0
>>275 安易だが氷の魔女が登場すればいいのか?
277 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 17:46:46.87 0
スベリーズでもいいのでは
278 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 18:10:46.97 O
だーいしがひたすら加速で風を送り えりぽんがちちんぷいぷい魔法にかーかれ!あっ涼しくなっちゃった! という連携プレー
279 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 18:20:20.78 O
連携プレーなら地下プールの話の方がw
280 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 19:02:19.64 0
怪談物とか
281 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 21:19:18.08 0
今まで会談ちっくな話ってあったっけ?ホラーならネクロマンシー系の話であったけど…教えて!ホゼナンター!!
282 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 21:19:46.31 O
うむ
283 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 21:46:18.78 0
怪談的なものをネタにした話はあったけど怪談そのものの話はないかもね
284 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 21:52:35.76 0
そっかー超能力と幽霊って絡めるの難しそうだもんなぁ…くどぅーが怖がって漏らす話位しか思いつかんw
285 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 22:14:28.47 0
リンリンが人魂を作って雰囲気を出す メンバーが順番に怖い話しをする ラストはズン子 というのがあったような
286 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 22:26:02.64 0
くどぅーが怖がって失神する話は書きましたw
287 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 22:26:39.22 0
288 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 22:31:39.55 0
289 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 23:02:43.79 0
>>287 懐かしいー最初読んだとき腹筋壊れるかと思ったw今のメンバーで続き読んでみたいな
290 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 23:28:18.34 0
リゾナントホラー書いた作者さん最近はご無沙汰だけどどうだろね
291 :
名無し募集中。。。 :2013/08/12(月) 23:36:58.78 0
そうなんですか?残念です…でもこうやって過去の作品語るのは楽しいですね
292 :
名無し募集中。。。 :2013/08/13(火) 01:55:20.61 0
寝るんだろうね
293 :
名無し募集中。。。 :2013/08/13(火) 04:31:10.17 O
起きたんだろうね
294 :
名無し募集中。。。 :2013/08/13(火) 06:24:26.94 0
おはなんと
295 :
名無し募集中。。。 :2013/08/13(火) 08:54:05.22 0
生まれた世界は違っても 見た目や言葉が違っても 願いは繋ぎ合える
296 :
名無し募集中。。。 :2013/08/13(火) 09:57:51.23 O
朝から名言ですね
297 :
名無し募集中。。。 :2013/08/13(火) 11:15:46.22 0
スキップ♪(加速) スキップ♪(加速) スキップ♪(加速) ♪ランランラン♪ 【加速ー音速突破ー】発動! パリン!パリン!パリン!パリン!パリン! 「きゃーガラスがー!」 「あちちち!」 「あゆみん燃えてる〜w」 ホゼナント(お粗末です)
298 :
名無し募集中。。。 :2013/08/13(火) 13:23:14.35 O
炎天下に相応しい暑いお話ですね
299 :
名無し募集中。。。 :2013/08/13(火) 15:49:18.67 O
ほ
300 :
名無し募集中。。。 :2013/08/13(火) 17:09:10.79 O
久々のシリーズがあっちに来ててうれしい件
301 :
名無し募集中。。。 :2013/08/13(火) 18:32:15.46 O
夜保全
302 :
名無し募集中。。。 :2013/08/13(火) 21:02:22.73 0
「…今、道重さんの意識が途絶えました。何も感じない…」 リゾナント店内のソファーに横たわるさゆみ。 その額に手を当てる聖。 その周りを囲む仲間たち。 聖は自らの残留思念感知と、愛から複写した精神感応の力で、さゆみの意識を読み取っていた。 「嗣永桃子…。ももち、か…」 「相手は分かったけど、どうやって会うの?」 「ももちのスケジュールを調べればいいんだろうね」 「そっか!テレビとかラジオとかの生放送や、イベントとか!」 「検索してみるんじゃ」 「あ、明日生のテレビ出るよ!」 「この時間…ハル行けないよ…」 「まさも」 「じゃあ…私達7人で…」 「やだ!」 「え?」 「ちょっと、まーちゃん…」 「まさもどぅーも、みんなで一緒にみにしげさんを取り返しに行くの!」 「そっか、それもそうだね」 「あさっても、生ラジオあるよ」 「さすが売れっ子」 「この時間は…みんな大丈夫?」 うなずく一同。 「じゃあ、あさってだね」 「道重さんの夢も、私達の夢もかかっている、大事な日ですね」
――2日後。 ラジオ局の正面玄関に張り込む、里保とさくら。 通用口に張り込む、春菜と香音。 タクシーを待たせ、車内で待機する聖と亜佑美。 自転車に跨がり待機する、衣梨奈・優樹・遥。 各自、携帯等でラジオを聴き、生放送終了を待つ。 “それでは、本日のゲストは嗣永桃子ちゃんでした〜!また来週〜!” 番組が終わる。それぞれの緊張が高まってくる。 十数分後。桃子は通用口に姿を現した。 「譜久村さん、出ました!車です、シルバーのワゴンです、大通りに出ます、ナンバーは…」 「えりちゃん、出てきた!シルバーのワゴンに…」 追跡組が動き出す。
「運転手さん、あの車を追って下さい!」 「あ、それドラマや映画のセリフみたいですねぇ」 「うん、一度言ってみたかったのw」 速度で劣る自転車組も、遥の千里眼を駆使し、近道や先回りで桃子の乗るワゴン車を追いかけ続けた。 十数分走行したのち、ワゴン車はとあるコンビニの前で停まった。桃子1人が降り、コンビニ店内へ。ワゴン車は走り去っていった。 その様子を見届けた追跡組。張り込んでいた4人も、別のタクシーで追い付いた。 「お待たせ!」 「あ、ちょうど出てきた!」 歩き出す桃子の後ろを、目立たぬようそれぞれ距離をとって後をつける9人。 やがて桃子は、近くの公園へと入っていった。日暮れを迎え、人気はない。 その中心付近まで歩みを進めた時、おもむろに桃子が振り向いた。
「あのさ、バレてないとでも思ってる?局出た時から分かってたから。気配感じさせすぎ」 たじろぐ9人。桃子は話を続ける。 「そうじゃないかとは思ってたけど、やっぱりこないだ夢をいただいた人のお仲間さんね。言ってた通り、みんないい夢持ってるね〜w これだけ食べられたら、お腹いっぱいで2、3年は夢食べなくてもいいかも〜ウフw」 「事情は分かってるようですわね…だったら話が早い、道重さんの夢を返していただきますわ!!」 聖は桃子へ飛び掛かり、拳を繰り出す。しかし、桃子はなんなくそれを受け止めた。 「何これ?蚊でも刺したかと思っちゃったw」 受け止めた掌から衝撃波を発し、聖は突き飛ばされた。 そして、指先から光線を発し、それは9人それぞれの首筋に命中した。 「それを受けたら、たちまち夢の世界にレッツゴーよ。夢の中ではももちの力は何倍にもなるから。ゆっくり楽しんであ・げ・る♪ う〜ん、誰から食べちゃおっかな〜」 次々に倒れ込む一同。 「…道重、さん……」 聖は切なそうに呟き、そして力尽きた。 「夢で逢いましょうw よし、じゃあ貴方から!」
―――ハッ!? 気がついた聖は、映画館に1人で座っていた。照明が暗くなり、上映が始まる。 スクリーンに現れたのは―― 桃子だった。 両手に拳銃を構えたカウガール姿の桃子。その銃が実際に火を噴き、聖に襲い掛かる。 堪らず客席を飛び出す聖――― ―――飛び出した先は、何故か崖っぷち。 眼下に広がる海から目を背けようと振り返ると、背後に桃子が立っていた。 「やっぱり貴方達、能力者なのね」 「だったら…何なんですか!?」 「世界の平和を夢に頑張ってるのね、立派立派w でも、自分の快楽の為に使った方が人生楽しいよ〜」 「そんな事ないッ!!」 「ま、もう無駄だけどねっw」 桃子の腕がルフィのように伸び、崖から突き落とされる聖。 海へと、真っ逆さま―― その時、手足に鎖が絡み付き、落下が止まった――― ―――いつの間にかそこは、学校のグラウンド。 そこのサッカーのゴールポストに、聖は鎖で拘束されていた。 すると突然、グラウンドにブルドーザーが乱入してきた。方向転換し、ゴールポストに一直線に向かってくる。 それを運転しているのは、やはり桃子。聖に迫りくるブルドーザー。 「貴方も恐怖に震えながら、夢を食べられるのよッ!」 恐怖の余り、目を閉じる聖――
308 :
名無し募集中。。。 :2013/08/13(火) 21:17:59.89 0
夢でもしー遭えたらー
「――なんちゃって」 怯えた表情を一瞬で消し去った聖は、なんと気合いで鎖を引きちぎった! 更に目の前に迫ったブルドーザーを、拳で撃破!! ブルドーザーは消滅し、地面に尻もちをついた桃子だけが残った。 焦りの表情を見せる桃子に、聖は言い放った。 「恐怖に震えるのは、嗣永さん貴方のほうよ!」 「…ど、どうして?ももが支配できる夢のはずなのに…」 「これが聖の実力ですわ! …なんてね♪」 聖は微笑みながら、桃子に掌を向ける。 予想だにしない事態に、腰が抜けて動けない桃子。 容赦なく聖は、愛から複写した“光”を放った―――
―――ハッ!? 気がついた桃子は、元の公園にいた。外傷の様子もない。 焦って周りを見回すと、眠らせたはずの9人が自分を見つめていた。 「ど、どうなってるの!?なんで…なんでももが…」 「聖が最初にパンチしたでしょ。わざと軽いやつにしたんだから。それにあれは攻撃じゃなくて、あの時に貴方の力を複写させて頂きましたの。そしてその瞬間、貴方に夢を見させたの」 「可愛い寝顔でしたよw」 「そんな…そんな事が…」 「その間に、道重さんの夢も取り返させて頂きましたわ。ね、はるなん?」 「…それがその〜、ちょっと手違いがあったといいますか…」 「手違い?」
「よくも、さゆみに恐怖を与えてくれましたわね…」 エ?ミチシゲサン? コレハヒョットシテ… アノ、サエミサン… ナンダロウネ ワタシハジメテミマシタ… 「ちょっと、ヒソヒソうるさいんですけれど。黙っていて下さらない?」 「は、はいッ!」 「あ、それと、しばらく目をつむっていることをお薦めします」 「は、はい…」 「では、さゆみをいじめてくれたお礼をたっぷりさせてもらいましょうか」 「なっ…何なのこの人!?」 「あっ、ご挨拶が遅れました。私、さゆみの姉のさえみと申します」 そう言った瞬間『さえみ』の目が光った。 「…ぎゃあああああああ!!!足が…足がぁあああああああ!!!」 足元から崩壊してゆく桃子の身体。 力を発動させながら『さえみ』は言葉を続ける。 「人は皆、いつかは死ぬものです。そしてまた生まれる。破壊と創造は…」 「・・・」 「何だ、もう崩壊しつくしてしまったのですか。あの黒衣の方よりも脆かったですね。さて、少し疲れました。眠るとしますか」
「…終わった?」 「…みたいだね」 「それにしても、ももち明日からの仕事どうするんだろう…」 「私達はここまでするつもりじゃなかったんだけど…」 「…知ーらないっと!」
313 :
名無し募集中。。。 :2013/08/13(火) 21:32:17.23 0
「野球部カッコいい」
314 :
名無し募集中。。。 :2013/08/13(火) 21:37:59.63 O
>>303-307 >>309-312 「変な夢〜THOUSAND DREAMS〜」
後編・完結です
>>171 から思い付きましたが、結果亀井さんはチョイ役な上に絡みもありませんがw
色んなリゾナント(オマージュ)元に愛と敬意を込めて
315 :
名無し募集中。。。 :2013/08/13(火) 23:16:22.04 0
あげ
316 :
名無し募集中。。。 :2013/08/14(水) 01:22:41.17 O
寝るのだよ
317 :
名無し募集中。。。 :2013/08/14(水) 01:57:27.83 0
ある意味ホラーwやっぱりさえみさんは最恐だと思う…
318 :
名無し募集中。。。 :2013/08/14(水) 05:28:05.72 O
お早うなのだよ
319 :
名無し募集中。。。 :2013/08/14(水) 05:37:30.46 O
>>314 更新乙です
ふくちゃんの駆け引き上手とさえみお姉ちゃんの恐怖が印象に残りました
320 :
名無し募集中。。。 :2013/08/14(水) 08:06:58.44 0
うえうえ
321 :
名無し募集中。。。 :2013/08/14(水) 08:22:39.56 0
落とさん
322 :
名無し募集中。。。 :2013/08/14(水) 11:30:25.15 O
猛暑やね
323 :
名無し募集中。。。 :2013/08/14(水) 13:11:16.71 O
新参で申し訳ないのだけど黒衣の方って誰ですか?
324 :
名無し募集中。。。 :2013/08/14(水) 13:58:26.60 0
|ノハヽ |VvV) |o つ |―u'
325 :
名無し募集中。。。 :2013/08/14(水) 16:12:34.80 0
あげ
326 :
名無し募集中。。。 :2013/08/14(水) 17:11:15.90 O
>>324 なるほど氷の魔女魅帝様でしたか
どこかに対決エピソードがあるんですねちょっと探してきます
327 :
名無し募集中。。。 :2013/08/14(水) 17:37:04.35 0
328 :
名無し募集中。。。 :2013/08/14(水) 18:35:40.53 0
『HELP!!』 〈少し考え始めると〉 1−1 田中れいなは意識を取り戻した。 「……み、……水……」 道重さゆみがペットボトルの飲み口をれいなの乾いた唇にあてる。 れいなは懸命に飲もうとするが、咳き込んでしまい、半分以上の水が口から溢れだした。 水を飲み終え、少し落ち着くと、れいなはかすれた声で尋ねた。 「……さゆ、……ここ、どこ?」 「どこって、ここはダークネスの秘密研究所だよ。れいなが10分前までおったとこ」 「10分前……あれから、10分しか……経ってないと?」 《さゆ〜、れいなは戻ってきた?》 スクリーンにマルシェの顔が現れる。 《あのねえ、脱水症状には、電解質を含むスポーツ飲料の方がいいんだよ》 「マルシェ!れいなに何をしたの!」 《れいなは、Uの能力で異次元に飛ばされてたの》 「異次元?」 《あの子の能力、ほんと面白いの!私が研究したところによるとね、……》 マルシェの話では、その「異次元」では、時間が約500倍の速さで流れるらしい。 こちらの世界で10分経過したとする。 すると、その世界では、5000分、すなわち80時間以上も経ってしまう。 また、飛ばされる場所は、海に浮かぶ小さな無人島で、そこには水も食料もない。 《そんなとこに三日以上もいたんだから、れいながそうなっちゃうのも当然よね》 さゆみは、れいなのやつれた顔を改めて見た。
1−2 さゆみの特殊能力は治癒能力だ。 ただし、それはあくまでも外傷を治す力である。 今のさゆみにできるのは、れいなの頬を撫でることだけだ。 生田がれいなを背負い、闘技場から運び出した。 工藤は、れいなの顔をじっと見つめ、口をへの字にしている。 マルシェの声がスピーカーから響いた。 《じゃあ、実験を再開しましょ!次はタッグマッチ。さゆ、二人選んでちょうだい》 「道重さん、ハルに闘わせて下さい!」 工藤がさゆみに訴えた。 「うん……」 さゆみは、膝の上のれいなの顔を見つめたまま、生返事を返す。 鉄の扉が開き、二人の少女が出てきた。 一人は、植物を自由に操る少女、森咲樹。 もう一人は、暑苦しい分身を作り出す少女、古川小夏。 先ほどの佐藤綾乃と同じく、二人の頭には、銀色のヘッドギアが嵌められている。 関根梓が二人の能力を解説する。すると、譜久村が、さゆみの前に出て言った。 「道重さん、聖が行ってもいいですか?」 さゆみは依然としてれいなを見ながら、ずっと何かを考え込んでいる。 気まずい空気を壊すかのように、生田が譜久村に言った。 「みずき、えりも闘う!この前みたいに精神破壊波であいつをやっつけてやる!」 それを聞いた梓が、すまなそうに言った。 「あの……生田さんの精神波はたぶん効かないと思います。 あの二人からは感情が感じられません。さっき闘った綾乃もそうでした。 おそらく、あのヘッドギアが、闘争心以外の感情を消してるんだと思います」 工藤が生田の前に走り出た。 「生田さん、ハルに行かせて下さい!ハル、絶対にやっつけてみせますから!」
1−3 譜久村は工藤とともに橋を渡り、闘技場に立った。 譜久村の脳裏にさゆみの顔が浮かぶ。 譜久村と工藤を見送るさゆみの表情は、どこか上の空だった。 戦いが始まると、譜久村と工藤はすぐに自由を奪われた。 マルシェの開始の合図とともに、洞窟の天井を突き破って太い木の根が二本伸びて来た。 それらは大蛇のように譜久村たちに巻き付き、二人を床から3m程の高さに持ち上げた。 もちろんそれらの木の根は、森咲樹が操作している。 一方、古川小夏は、高熱を発する、自分に瓜二つの発光体を作り出した。 ピンク色に光る小夏の分身が、空中にふわりと舞い上がり、工藤の正面で静止する。 そして、輝度を増しながら、工藤の方へジリジリ近づいていく。 高熱によって顔や腕に痛みを感じ、工藤は下唇を噛んだ。 「うう……」 汗を流し、苦悶の声をもらす工藤。 その様子を、譜久村はじっと見つめていた。 譜久村は、この状況をある程度予測していた。 小夏の分身は、直接攻撃が出来ない。 前回は狭い空間に閉じ込められていたので逃げ場が無かったが、今回の戦場は広い。 もし、小夏の力を使うのなら、まず自分たちを動けないように拘束する必要がある。 その役目を担うのが、森咲樹なのではないか。 そして、その予測は、見事に当たっていた。 「譜久村さん!まだですか!」 工藤は、戦いが始まる前、最初は敵の動きを見るようにと譜久村から耳打ちされていた。 (それじゃあ、反撃といきますか) 譜久村は、あらかじめ左手に持っていた一枚の生写真に意識を集中した。 そこには、ある少女の、青空のような笑顔が写っていた。
〈怖い気持ちが芽生えるよ〉 2−1 その写真は、工藤が動物園で大鷲に襲われた、あの夜に撮影したものだった。 戦いの後、佐藤優樹に連れて来られたさゆみは、工藤の治療を終えると佐藤に言った。 「まーちゃん、フクちゃんをここに連れて来てくれない?」 譜久村は、他の能力者の持つ力を一時的にコピーすることができる。 これは、残留思念を読み取る能力を発展させた技だ。 ただし、コピーするには二つ条件がある。 一つは、コピー対象者が、その能力を十分にコントロールできているということ。 当人でさえ制御できない力を、一時的に借りる譜久村が使いこなせるわけがない。 もう一つは、譜久村が、対象者の体の直接触って読み取らなければならないということ。 この二つ目が、問題だった。 他者の能力を使用できるのは、接触直後の数分間だけである。 これでは、極めて使い勝手が悪い。 そこで、猛特訓の末に完成させたのが、生写真を使うという方法である。 コピーの対象となる能力者を撮影した生写真に、その人物の思念を染みこませておく。 その生写真を引鉄として、好きな時にコピーした力を引き出せるようになったのだ。 以上の条件から、現在譜久村が使えるのは、リゾナンターの先輩たちの力だけであった。 ただし、光井愛佳の予知能力は、余りにも特殊すぎるためか、コピーできなかった。 また、高橋愛の能力のうち、瞬間移動と光の力は使えない。 もし、譜久村がリンリンの能力を使えるようになれば、今後の戦闘で大いに役立つ。 譜久村が到着すると、さゆみはリンリンと握手するように言った。 譜久村の右手がリンリンの右の手のひらを、左手がリンリンの右手首を強く握り締める。 (あーん!リンリンさんが、聖の中にどんどん入って来る!あ゛あ゛あ゛……) 「道重サーン!この子、チョー鼻血出テルよ!?」 「それ、いつものことだから気にしないで」
2−2 譜久村は写真を見つめた。リンリンの思念が全身に充満していく。 譜久村の右手が、体を締め付けている根を握る。 (リンリンさん!力をお借りします!) 譜久村の体がエメラルドグリーンに輝く。 同時に、譜久村の右手の近くに、小さな緑炎が生まれた。 その炎は、根の表面を滑るように移動し、5mほど上ったところで爆発的に巨大化した。 爆炎の触手が工藤を縛っている根まで届き、やはり同じように燃え上がる。 根は瞬く間に黒く炭化してちぎれた。 二人は、闘技場の床にほぼ同時に降り立った。 「譜久村さん、さっき、ハルの苦しんでる姿を見て、楽しんでませんでした?」 「ごめん、気付いてた?」 譜久村は、口を尖らせている工藤に笑みを見せてから、咲樹と小夏を睨みつけた。 スクリーンのマルシェが、感心したように言う。 《譜久村ちゃんは中国娘の力も使えるんだ。やるわね〜。でも、勝負はこれからよ!》 マルシェは、手に持っているリモコンのスイッチを二つ続けて押した。 二人の頭に嵌められているヘッドギアの赤いランプが灯る。 直後、咲樹の体が膨張し始め、着ている服が内側から裂ける。 露わになった白い肌が黒く変色し、ひびが入っていく。 腕は枝に、足は根になり、十秒も経たないうちに、咲樹の体は一本の大樹へと変身した。 一方、小夏は、宙に浮いていた分身を呼び戻し、それと一つに重なった。 小夏の全身が、ピンク色の太陽のように輝き出す。 その輝度は、分身単体の数倍になり、発熱量も比べ物にならなかった。 「どぅー、暑いでしょ?そのTシャツ、脱いじゃったら?」 「死んでも脱ぎません。譜久村さんの前では、靴下も脱ぎません」 「あ〜ん、そのツンな感じ、可愛い!」 そう言いながら、譜久村の頬には、暑さによるものではない汗が流れていた。
2−3 年齢とキャリアからいって、自分は、今のリゾナンターで、上から三番目の位置にいる。 譜久村は、そのような意識を常に持っている。 しかし、自分がリゾナンターを引っ張っていくということは、まだ考えられない。 それは、上の二人が、絶対的な「強さ」を持っているからである。 だが、れいなが戦闘不能になってしまった。さゆみも、表情が明らかに普段と違っている。 こうなると譜久村は、自分が担うべき責任の重さに、気付かざるを得なかった。 16才の少女には過酷なその重圧に、譜久村は怯えていた。 それでも、いや、だからこそ譜久村は、いつも通りの自分でいようとつとめた。 いま、自分が怯えていることを、誰にも悟られたくなかった。 敵にも、隣にいる後輩にも、そして、戦いを見守っている仲間たちにも。 何よりも、譜久村自身、弱い自分を認めたくなかった。 譜久村は余裕の笑みを無理に作り、再びリンリンの生写真を手にする。 それを見た咲樹が、譜久村の方へ、太い枝と化している両手を伸ばした。 枝の先端から、大量の水が噴き出す。譜久村の全身が、瞬く間にずぶ濡れになった。 (ヤバい……。今の聖の力じゃあ、こんなにたくさんの水を蒸発させられない……) 譜久村は止むを得ずリンリンの生写真をしまった。 咲樹は、水の放出を止め、太い腕を高々と振り上げた。 一方、自ら発熱体と化した小夏は、工藤に襲い掛かった。 小夏の打撃は、速い上に正確だ。 さらに全身からは、先程より激しい熱が放射されている。 直撃は何とか免れているが、その小さな体に、ダメージが蓄積されていく。 工藤は助けを求めようと、譜久村を見た。 知らないうちに分断されていたらしく、譜久村とは30m程離れていた。 (譜久村さん?) 咲樹の猛攻を受けている譜久村の顔つきが、これまで見たことがないほど青ざめている。 工藤の胸に、恐怖が沸き起こった。
〈本当に大丈夫なのかな〉 3−1 小夏の発熱量が凄まじい。50m以上離れている鞘師にすら、その熱が届く。 全身に汗のべたつきを感じた鞘師は、着ているパーカーを脱ぎ、床に放り投げた。 不安と焦燥に押し潰されそうになった譜久村は、無意識のうちにリーダーを見る。 さゆみは、闘技場の方を見ていない。俯いてじっと足元の床を見つめている。 (道重さん、何見てるんだろ?) さゆみの視線の先を辿ると、そこには、乱雑に脱ぎ捨てられた鞘師の服があった。 (里保ちゃんの服だ……。そう言えば道重さん、脱ぎたてがいいって力説してたな…… ……え?……あれ?てことは、道重さんは、いつも通りってこと!?) さゆみがいつものさゆみに戻っている。そのことが、譜久村に落ち着きを取り戻させる。 (良かった!道重さん、全然大丈夫なんだ!) 譜久村が、目を細めてさゆみを見ていると、さゆみの頬が、微かに緩むのが見えた。 (あ、笑った。道重さん、服から湯気でも上がったんですか?……ん?……湯気!?) 譜久村が、何かをひらめく。 「どぅー!こっち来て!」 譜久村は改めてリンリンの写真を取り出し、先程自分を縛っていた根を拾って着火した。 呼ばれた工藤が、譜久村の方へ走る。そのすぐ後を小夏が追う。 譜久村が緑色に燃える根を咲樹に投げつける。咲樹は、消火のために再び水を放つ。 譜久村は、写真を持ち替え、ポケットからワイヤーを取り出す。 ワイヤーが黄緑色に光りながら、咲樹の手首だった辺りに巻き付いた。 譜久村は、ワイヤーを引き寄せつつ、工藤の方へ走る。 枝の先端が曲がり、水流が、譜久村の方へ伸びていく。 譜久村は、工藤と合流すると、そのままその小さな体を押し倒して床に伏せた。 水流がその上を通過し、工藤の背後に迫っていた小夏を直撃する。 大きな爆発音が洞内に響きわたった。 そして、闘技場全体が、瞬く間に濃密な湯気の霧に包まれた。
3−2 視界0mの濃霧の中を、一つの小さな影が自由に駆けまわる。 水を浴びて温度の下がった小夏の頭部に、工藤は、渾身のハイキックを見舞った。 小夏が倒れるのを「見」届けると、工藤は、すぐさま咲樹へ襲い掛かった。 咲樹は譜久村の緑炎を警戒し、四方へ闇雲に水を放っている。 隙だらけの幹に工藤は拳を撃ち込む。だが、硬い木質の肌がそれを跳ね返す。 攻めあぐねている工藤に向かって、譜久村が大声で叫んだ。 「どぅー!根っこの中に、他と違ってるやつは無い?」 木の根と化した咲樹の足は、複数に枝別れして闘技場の床に広がっている。 「え?根っこですか?えっと……。あ!一本だけ、すごく汗をかいてるのがあります!」 「それだ!どぅー、聖をその根っこのところに連れてって!」 工藤が譜久村の手を引いて、水滴が多量に付着している根のところへ連れていく。 譜久村はその根にワイヤーを巻き付け、一気に回転させた。 おがくずが大量に飛び散り、続いて、水しぶきが上がった。 咲樹が放出した大量の水は、地中からその根で吸い出したものだった。 樹木に変身した咲樹は、複数の根をホース状にし、その先端を地中に潜り込ませた。 そのうちの一本が、地下水脈に到達し、大量の水を咲樹の体内へ流し込んでいた。 高温多湿な闘技場において、冷たい地下水が通るその根だけは、表面温度が極めて低い。 そのため、空気中の飽和状態に近い水蒸気が、その根の表面に触れ、結露したのだ。 譜久村は、咲樹の放つ大量の水の出どころをずっと考えていた。 植物が根から水を吸い上げるということは、小学校で習った。 また、冷たいグラスの表面に水滴がつくということも、経験で知っていた。 結露という現象の原理はよく分かっていないが、結果として譜久村は正解に辿り着いた。 根は完全に切断され、断面から地下水が溢れ出す。 咲樹の手から出る水の勢いが、急速に衰え、止まった。 水が出せなくなった咲樹は、破れかぶれに腕を振り回す。 その腕の先端を工藤が捕まえ、譜久村に手渡した。
3−3 緑色の炎に包まれながら、咲樹は床に崩れ落ちた。 黒焦げの大樹が、みるみる少女の姿へ戻っていく。 白く美しかった肌が、赤黒く焼けただれている。 譜久村は急いで駆け寄り、さゆみの生写真を取り出した。 (聖の力じゃ完全に治すことはできないけど、痛みは軽くなると思います) 咲樹の体が、ピンクの光に包まれた。 《ねえ!ぼうっとしてないで、早くNo.2とNo.3を回収しなさいよ!》 マルシェの怒鳴り声がスピーカーから響く。 鉄の扉が開き、数名の戦闘員が出てきた。 小夏と咲樹が運び出されるのと入れ違いに、久住小春と、Uと呼ばれる少女が現れた。 「シゲさ〜ん!小春、帰りますね〜」 さゆみは険しい顔で小春を見つめたまま、何も答えない。 「あ、そこでだらしなく寝てる田中さんにも、よろしく言っといてください」 「黙れ!」 工藤が叫んだ。小春を睨み付ける瞳が、怒りで血走っている。 「えっとー、工藤ちゃん、だっけ?うわさ通り、元気がいいね〜。 でも、あんたみたいなガキんちょは、まだまだ小春の敵じゃないカナ」 「ハルは、お前みたいな裏切り者、絶対に許さない!」 「裏切り者……」 小春の瞳が曇る。 が、またすぐに、人を小馬鹿にしたような目つきに戻った。 Uが小春の前に進み出た。 「久住さん、あのガキ、生意気ですね。きっかがちょっと懲らしめてやりますよ」 Uはスッと右手を上げ、指先を工藤へ向けた。 「危ない!」 隣りにいた譜久村が工藤に覆い被さった。
〈Ending:僕らは大丈夫なのかな〉 黄色い光が二人を呑み込んだ。 「フクちゃん!どぅー!」 鞘師が無人の闘技場に向かって叫ぶ。 小春が半笑いで言う。 「ちょっと、きっか〜、あんまり勝手なことしないでよ〜」 「すみません。なんか、あのガキの態度にムカっときちゃったんです」 「ほんと、きっかは自由人なんだから。教育係の小春の身にもなってよ〜。 ……でも、おかげで何かスッキリしたカナ。きっか、サンキュ!」 二人は楽しそうにおしゃべりをしながら、鉄の扉の奥へ消えて行った。 それから十分後、譜久村と工藤が異次元から戻ってきた。 さゆみ達が二人を介抱していると、スクリーンにマルシェの顔が現れた。 《さゆ、怒ってる?でも、Uのやったことは、私の責任じゃないからね。 それでさあ、実験がもう一つ残ってるから、できれば最後まで付き合ってくれない?》 さゆみが立ち上がって、静かに言った。 「マルシェ……、一つお願いがあるの……」 《ん、なあに?》 「小春と戦わせて……」 《え?》 「さゆみ、もう小春を許せない!」 「道重さん!?」 鞘師が、驚いたようにさゆみの顔を見る。さゆみの瞳は、憎悪の色に染まっていた。 ―おしまい― ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 以上、『HELP!!』でした。半年以上中断していましたが、『愛の炎』の続きです。 このシリーズは、あと7話で完結します。
338 :
名無し募集中。。。 :2013/08/14(水) 18:53:14.84 0
339 :
名無し募集中。。。 :2013/08/14(水) 18:55:18.27 O
>>337 更新代理投稿乙です
久々のシリーズ復活で夏の夜にむせび泣いておりますw
340 :
名無し募集中。。。 :2013/08/14(水) 20:45:39.31 O
読む前保全
341 :
名無し募集中。。。 :2013/08/14(水) 21:32:37.37 0
>>338 乙です
前に何本か話を書いたこともあるからもの凄く手が込んでるってことがわかる
あと7話楽しませてもらいます
342 :
名無し募集中。。。 :2013/08/14(水) 23:23:50.00 O
リゾスレ内のふくちゃんの活躍が目ざましいな サブリーダー就任効果なのか
343 :
名無し募集中。。。 :2013/08/14(水) 23:36:08.93 0
前サブリーダー同様おっぱい効果だな
344 :
名無し募集中。。。 :2013/08/14(水) 23:51:42.33 O
どこまで遡ればいいかわからないけどどの道結成当初からダウト
345 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 00:22:47.90 0
前サブリーダー?ガキさんだよな? と考えこんだが確かに何も悩むことはなかったなw
346 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 01:01:51.32 O
だな リーダーサブリーダーは巨乳でないと務まらないから
347 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 02:27:05.63 0
なんか初期の頃のガキさん○乳いじりの流れ面白かったな〜過去ログ読んでた腹抱えて笑ったw
348 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 04:54:27.63 O
ガキ乳保全
349 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 07:01:30.66 0
こはπは正義
350 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 08:53:01.24 O
れなπも正義
351 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 10:35:18.26 0
はうπは正義?
352 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 11:08:18.16 0
どぅπが正義
353 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 11:43:09.40 0
貧しきπに共鳴せよ
354 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 13:04:15.89 0
お前ら…
355 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 13:17:22.62 O
ちょうど凹んだ形が共鳴にいいらしい
356 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 15:39:48.56 0
あげ
357 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 16:59:01.22 O
ペタンコがリゾナンターの特性だったのがたった1人のイレギュラーがひっくり返しましたね
358 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 18:42:34.39 0
一人って…もう一人いるんだろうね
359 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 18:58:44.85 O
<うちらはリゾナンターとちゃうってか! <腹立たしい話デスネ!
360 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 19:06:53.01 0
ミンナバナナタベロ オオキクナルゾ
361 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 19:09:17.58 0
あなたは言うほど大きく… うわ何をす(ry
362 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 19:11:44.29 0
363 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 19:14:15.09 0
「あたしはね、この地球上で最も不要なモノを消したいんだ」 黒翼の悪魔が遠くを見つめる 最も不要なモノって何だろう…… 「あんたはどう思う?」 「え、聖?」 聖ちゃんが怯えた様子で黒翼の悪魔を見る 「あんたが、この地球上で最も不要なモノって何?」 「……悪い人?」 「どうしてそう思う」 「悪い人が居なければ、良い人ばかりになるから……」 「ふうん。じゃあ、あんたはどう思う?」 衣梨ちゃんに問いかける黒翼の悪魔 「悪い心やなか? 憎しみとか妬みとか……」 「なるほどね。次、あんたは?」 次は里保ちゃんに問いかける 「戦争。誰かが傷付くから、無くなって欲しい」 「あんたは?」 あたし?
364 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 19:17:47.77 0
「……差別かな」 能力が使える事で辛い思いをした 能力だけじゃなくて、他の事でもそう 他人と違う事で傷付け合うのは嫌だ 「嬉しいよ、あたしが求めていた答えで」 嬉しそうに笑顔で話す黒翼の悪魔 求めていた答えって、どう言う事? 「それらは全て人間の事だよね」 悪人 悪い心 戦争 差別 確かにそうだ 人間の……悪い所 「能力者が平和に暮らせないのは無能力者が悪い、そう思ってた。だから、以前はダークネスに居て、世界を変えようとしてた」 あたしも、望んで能力者になった訳じゃ無いのに、周りは受け入れてくれなかった それで生きてるこの世界が嫌になった時もあった 「でも、世界を視て回って色んな事を知って、考えが変わった。無能力者も能力者も、違いはたった1つ。能力が使えるか否か。他は変わらないんだよ」
365 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 19:27:03.85 0
ほーほけきょ
366 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 19:27:57.61 0
あたし達もリゾナントに来て知った リゾナントに来るお客さんも、あたし達も同じ人間 話をすれば盛り上がれるし、美味しい物を食べれば笑顔になれる 能力の存在が引っ掛かってただけで、ちゃんと心は繋がるんだ そうだよ! リゾナントのみんなが共鳴するみたいに きっとこの人、黒翼の悪魔とも 「気付いた時は衝撃だった。人間は、自分の欲望の為に他者を犠牲に出来る。富を、材を、国を、土地を、民を、名声を手に入れようと邪魔なモノは排除する強欲で自分勝手な存在」 犠牲? 排除? ……何? 「従わない者を殺め、気に入らない者を殺め、時には自らをも殺める。組織、国で争い勝ったら支配する。欲望の対象は人間だけじゃない。食糧や娯楽、文明発展の為に絶滅した動植物は数知れない。 科学の発展と引き換えに、水を汚し、空気を汚し、土を汚し、地球を汚した。命を弄び、新たな種を生み出し、生命を汚した。人間は自らの為に、果てない犠牲を生んでいる。そして、あたしもそんな人間の1人なんだって」 戦争とか環境破壊…… 学校で習った 人間がしてきた事 「じゃあ、あたしが持つこの能力は何の為にあるのか。地球が生んだ人間が、知恵を付けて、能力を身に付けて、地球を汚しながらも、ここまで進化したのは一体何の為なのか」 黒翼の悪魔の表情が険しくなってる 「そして理解した。この地球を守る為に、地球が人間を滅ぼす為に能力者を生んだんだって。人間が居なくなれば、地球は平和になる。人間が築いたモノだって1つとして遺さない。人間は滅ぶ事で地球を救える」 そんな……
367 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 19:33:01.58 0
「でも、成し遂げるには、あたし1人では時間が掛かり過ぎる。それに、誰かが必ず邪魔をする。だから、あんた達の能力が要るんだ」 あたし達を見回す黒翼の悪魔 「高橋愛の全てを消す能力、田中れいなの能力を増強する能力、この2つは欲しい。他にも使える能力者が居るなら連れて行く 「ふざけんな!」 突然声がした方を見る 「「「「愛佳!?」」」」 「「「「光井さん!?」」」」 1階の入り口から光井さんが松葉杖を使ってゆっくり近付いて来る 光井さんもここに連れて来られたの? 「予知能力者? あんた、怪我してたんだ」 「それがなんや! みんなが危ない目に遭ってるのに、1人だけじっとしてられるか!」 「勇ましいね。ねえ、さっきの話、聴いてたでしょ。あんたの能力、あたしの目的を円滑に進める為に必要だね。付いて来なよ」 「誰が行くか! あんた、何様のつもりで愛佳達の日常を奪うんや!」 そうだ やっと掴んだ日常 失いたくない! 「それが強欲で自分勝手だっていってるの。そんな人間が支配する地球は要らないんだよ。小さな店で客と笑ってのんびりと過ごしてるあんた達が、今のこの地球の何を知ってるって言うの?」 「全てを知るなんて出来へん。やけど、愛佳達だって、この地球が平和になれば良いって本気で願ってるんや!」 あたしだってそう思う この思いは嘘じゃない!
368 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 19:37:10.43 0
「それで、これまで何をしてきたの? これから何ができるの? 願ってるだけでは、何も成し遂げられない」 「だったらこれからするだけや! 人間は、考えて行動して失敗して学んで、明日に繋げていくんや。人間を、未来を信じられへんあんたに、愛佳達の未来は絶対渡さへん!」 「愛佳、よく言ったぁ!」 強い重力に抗いながら立ち上がる高橋さん 「手に入れた仲間を、失いたくないのは……あたしも一緒だよ!」 新垣さんも必死に立ち上がろうとする 「だから、さゆみ達は……」 「絵里達と守った世界をもう一度……」 道重さんと田中さんも踏ん張ってる 先輩たちが守ってくれた世界 今、あたし達が生きてる世界 今はあたし達も一緒に 「「「「守るんだ!!!!」」」」 みんなで踏ん張って立ち上がる 「そう簡単に従ってはくれないか……。もう戦って決めるしかないね。生命の真理は、弱肉強食。強い者が勝者。あたしの力で、あんたらを引き寄せてあげるよ」
369 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 19:40:53.17 0
投下完了↑
>>363-364 >>366-368 『この地球の平和を本気で願ってるんだよ!』13
前スレで頂いたレスの返信は次回させてください。
今日どうしても投下したかったので慌てて書きました。
目に余る箇所もあるかと思いますが、ご容赦くださいませ。
370 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 20:20:01.88 O
更新おつかれさまです タイトルがここで出てくるか!って感じです 話はいよいよ頂上対決に進みそうですねー
371 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 20:29:22.51 0
>>369 今日どうしても…そうか終戦記念日か。。。そう思って読むと言葉の一つ一つが色々と考えさせられる
372 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 21:49:16.30 O
リゾナンターはダークヒーローであるという見方がある一方でこういう考え方もある 幅がひろいってのは素晴らしいことだね
373 :
名無し募集中。。。 :2013/08/15(木) 22:37:38.04 O
読む前保全
374 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 00:07:40.02 O
最近お盆だからかもしれないけどコンスタントに作品投下があってなんだかいい気分
375 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 00:39:57.35 0
もうひとつおまけにでっかい大作が来そうな感じ♪
376 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 00:41:28.63 0
池田先生ならお亡く(ry
377 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 00:57:38.29 O
378 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 01:28:09.84 0
読みたいなそりゃ
379 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 02:49:15.85 O
おやすみ日本
380 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 07:33:30.86 O
おぱょ
381 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 09:20:35.26 O
今日も暑いすなあ
382 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 11:15:39.24 0
最近ちょいちょいキャプがいるなw
383 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 11:21:54.68 0
『VariableBlade』 『-Qualia-』 『the new WIND―――』 『R-Infinity』 『XOXO - Hug and Kiss』 『米』 この作品の続きを本気で願ってるんだよ!最近更新なくて寂しい・・・
384 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 11:40:49.05 T
『VariableBlade』待ってます
385 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 11:58:42.01 O
俺シリーズ ■■シリーズ お待ちしてます もちろん共鳴戦隊とリホナントも!!
386 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 13:37:35.41 O
昼保
387 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 13:49:17.09 0
書けないんじゃなくて途中で飽きて投げ出したって分かりきってるのに律儀に待つヤツの意味が分からん
388 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 14:28:26.42 0
作者がやめたって言ったなら諦めるけど忘れた時に来るときもあるからねぇ〜待つだけならタダだしw
389 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 15:39:07.27 0
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/794.html の番外編です
大海原に浮かぶ、孤島。
切り立った崖の上に、その建物はあった。
見るものを畏怖させ、迂闊に近づくことさえままならない。
まるで、建物の主のように。
建物の中枢に、「首領」の部屋はあった。
彼女の興した「ダークネス」は、今や新進気鋭の組織として闇社会において恐怖の対象となっていた。その原動力となるのは、能力者、
とりわけ高度な能力を持つ者たち。だが、その高い能力がゆえに問題点も抱えていた。
「ああ、あんたか。久しぶりやな。用件はわかってる。例の件で何人か巻き込まれた件やろ。そんなん知らんわ。それくらい、あんた
の力でいくらでももみ消せるやん。こっちは普段から色々世話してるんやから、それくらいしてもらわんと。ほな、また」
デスクに受話器を置くと、「首領」はふう、と深いため息をつく。
問題点。それは組織が抱える能力者の力があまりに強く、スマートな任務遂行が難しいこと。先ほどの電話も、組織の一員である「黒
翼の悪魔」に指示した要人殺害。その巻き添えで多数の一般市民が死傷していた。
逸材揃いっちゅうのも、考え物やな。
贅沢すぎるぼやき。
だが、組織の幹部たる能力者による不協和音は無視できないレベルにあるのもまた事実だった。
近い内に幹部会議がある。そこで、綱紀を正さなければならない。
何かに急かされる様な、ドアのノック。 「…入り」 「失礼いたします!!」 勢いよく入ってきた男。彼は首領直属の構成員だった。 「急用みたいやな。手短に言いや」 「はっ!実は、例の『二人』が」 ひどく抽象的な物言い。 だが、「首領」はすぐに感づく。それほどまでに、「例の二人」については頭を悩ませていた。 「わかった。場所まで案内してや」 「はっ!!」 席を立ち、黒の外套を靡かせて男の後を追う。 今度は何をやらかしたのやら。 「首領」の頭には既に、「例の二人」に落とすべき雷が蓄積されていた。
● 建物の地下。 訓練所と呼ばれるその場所は、通常その名の通り、ダークネスの構成員たちが自らの能力の研鑽に励む場所。だが。 今、この場所は血で血を洗う戦場と化していた。 「はははっ、やっぱお前の教え方が悪いんやろな。こっちは残り66人、お前んとこは残り65人。どう見てもうちの勝ちや」 大人数を背にして勝ち誇る、お団子頭の、背の低い少女。 その視線の先には。 「はぁ?お前の目は節穴かよ!内容じゃこっちのほうが勝ってるっての!」 地団駄を踏みながら大声で喚く、ポニーテールの少女。彼女もまた、小柄な体つきをしていた。 肉食獣のような目で、向こう側のお団子頭を睨み付ける。 「お前アホやろ。数も数えられへんのか」 「だから戦闘の質で勝ってるって言ってんだろうがよ!!」 「うちの勝ちや」 「ふざけんな!ブッ殺す!!」 そんな時。舌戦がヒートアップする中、お団子頭の少女の後ろにいた群衆の中の一人が、弾けたように叫んだ。
「もっ、もうこんなの嫌だぁ!!!!」 恐怖からか、青ざめた顔を震わせていた男。 踵を返し、全速力で出口のほうまで走り始める。 だが、出口に向かって走っているはずなのに、景色は相変わらず震える群集を映し出していた。 あれ、俺、逃げてるはずなのに。 それが、男の頭に浮かんだ最後の思考。 強烈な念動力によって首を180度捻られた男は、そのアンバランスな格好のまま地に伏した。 「これで65対65ね。イーブンじゃん」 「ちょ、おま、ふざけんなや!何手ェ出してんねん!!」 形勢逆転、今度はお団子頭の少女のほうが顔を紅潮させた。 二人の間には、暗い色の血溜まりが横たわる。 その中に沈む、様々な形の、死。 刺殺。絞殺。撲殺。焼殺。互いの体を掴み合ったまま悶絶している死体もあった。 全て、訓練所の中心にいる二人の少女が仕向けたこと。 「お前顔がゆでだこみたいに真っ赤だな。あんまカッカしてると薄い頭がさらに薄くなるぞ?」 「うっさいボケ、やったらもう一度や!そのゴリラみたいなツラ、すぐに青ざめさせたるわ!!」 互いににらみ合い、それぞれが群集の中から選んだ一人を前に蹴り出す。 それが、殺し合いの合図。
「しっかり気張りや!負けて帰ったらうちが殺したるさかいな!!」 「絶対勝てよ、負けたらマジ殺す!!」 哀れ選ばれし戦士たち、その顔は恐怖で引きつっていた。 たかが訓練で命のやり取りをしなければならないという理不尽。そして何よりも理不尽なのが。 この殺し合いの発端が、夕食に出るハンバーグの奪い合いから来ているということ。 首謀者の二人よりもはるかに年上の男たちが、ナイフ片手に脂汗を垂らしていた。 殺さなければ、殺される。 背後からの強烈なプレッシャーが、男たちを意味のない殺し合いへと駆り立てる。 「もうそこまでにしたらどうです」 群集の中から聞こえる、少女の声。 少し訛りのあるその言葉を、二人の暴君は聞き逃さなかった。 「今言うたの誰や」 「出てこいよ」 先ほどまでいがみ合っていたのが嘘のように、二人が並び、そして声のしたほうを睨めつける。 群集がその威圧に耐え切れず四方に散っていく中、ただ一人視線の中央に立つものがいた。
「もう、ええでしょう。『金鴉』さん、『煙鏡』さん」 ストレートの、黒い髪。目にかかるかかからないかくらいの長さで切り揃えられた前髪、そこから覗かせた強い瞳。後に組織 を裏切りリゾナンターを結成することになる少女は、正面からの異様な重圧に屈することなく二人を見据えていた。 「お前は確か、アルファベットのなんとか」 「研究所が作った『人造人間』」 「煙鏡」が、人造人間、の部分を強調する。 明らかに、彼女を見下す言い方で。 「お人形さんがどういうつもりや。うちらに意見しようなんて、ええ度胸やないか」 「あーしは。これ以上の無意味な殺し合いはやめてほしいだけです」 「うるせえよ、ばーか!」 その瞬間、少女の華奢な体が宙に舞う。 「金鴉」の拳で殴り飛ばされたのだ。 飛ばされながらも体勢を整え、前かがみに着地する少女。 もちろん、これだけで済むはずもなく。 「『煙鏡』!ひとまず休戦でいいよな!!」 「当たり前や『金鴉』。うち、前からこいつのこと、めっちゃ嫌いやってん」
悪魔の申し子たちが、一歩ずつ、少女に近づきはじめた。 それを見て、暴虐の場で高らかに反旗を翻したジャンヌダルクは、覚悟を決める。 彼女たちに意見をした瞬間から、こうなるのはわかっていた。けれど、それでも。 我慢がならなかった。目の前でこれ以上、罪の無い人間たちが死んでゆくのを、見ていられなかったのだ。 高速移動と、リーディング。 自らの身体能力と絡み合って初めて効果を発揮する高速移動と、心の力の延長上でしかないリーディング。「二重能力者(ダ ブル)」と呼ぶにはお粗末な能力ではあったが、組織は彼女を幹部候補生と看做すほど、その素質を買っていた。 それでも、目の前の強敵を相手にするには心もとない材料。 「金鴉」と「煙鏡」。準幹部でありながら既に二つ名を所持している彼女たちは、組織の中でも指折りの実力者だった。しか も、彼女たちの実力はタッグで真価を発揮する。あまりにも分の悪い、戦い。 だが、その戦いの火蓋が切られることはなかった。 訓練所に現れた、黒い外套の女。「首領」が、姿を現したからだ。
「げ、おばちゃん登場やん」 「やべえ、逃げるぞ」 そそくさとその場を立ち去ろうとする二人を、 「ちょい待ち、逃げたらしばくぞ」 という「首領」の声が足止めする。 さっきまでの威勢はどこへやら、しおらしい花のようになった「金鴉」と「煙鏡」。つかつかと近寄った「首領」が、項垂れ た頭二つに拳骨を落とした。 「がっ?!」 「い、痛え!!」 「お前ら勝手な真似しくさって。ひいふうみい…何人殺せば気ぃ済むんや?」 頭を押さえつつ、抗議の眼差しを送ろうとする二人。だが、「首領」の圧倒的眼力は二人に言葉を発する事すら許さない。 「とにかく。次の会議には、お前らも出席してもらう。それまで、おとなしゅうしとけや」 会議への出席。 それは、正式に幹部として承認される証であった。 それまで殺意さえ滲み出ていた二人の顔つきが、ぱっと明るくなる。
「ほ、ほんまか?」 「さっすがおばちゃん、わかってるね!!」 子供らしくはしゃぎ出す二人の少女。 「首領」は腰を屈め、にこりと微笑みつつお団子とポニーテールの頭にそっと手を置く。 「…次は、ないで?」 表情を変えぬまま。 「首領」は冷えた瞳で二人を捉える。 少女たちは首が取れそうなほど、上下に振るしかなかった。 「ほな、解散や!あんたら、今日遭った事は口外したらあかんで?」 組織のトップの言葉に、おとなしく従う組織員たち。 仲間が理不尽に惨殺されたことよりも、自分の命が救われたという安堵。自分達は、たまたま運が悪かっただけで、その悪運 の中で幸運を拾っただけなのだ。そう言い聞かせることしか、彼らの選択肢は存在しなかった。 人があらかた掃けた後、「首領」は訓練所を見回す。 血の海、と表現してもいいくらいの流血量。そこに身を漬からせている、哀れな亡者たち。軽く黙祷し、自らもその場を立ち 去ろうとした「首領」の視界に。一人の少女が入る。
「何や、まだおったんか」 「……」 少女は言葉を発しない。 ただ、伝わる。無言の抗議。身を挺しての、行為。 「首領」は先ほどやったのと同じように、少女の頭に手をやる。 ただし、相手を威圧するようなことはしない。 「目先の感情に流されたら、あかん。せやないと、もっと先の未来まで失う。あんたも組織の未来を担う一員なんやから、心得とき」 そう言いながら、ぽんぽんと軽く頭を撫でる。 それでも何かを言いたそうだった少女は、やがて諦めたように踵を返し訓練所を出て行った。 人の手により造られし人造人間、か。 培養液を父とし、培養ポットを母とする少女。 彼女はやがて組織を裏切り、リゾナンターとして組織に反旗を翻す。 彼女にはまだ名前がない。周りのものは、生を受けたロットナンバーで彼女を呼んだ。 i914、と。
399 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 15:51:34.75 0
400 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 16:26:41.42 0
乙おつ 愛ちゃんの闇と相入れない面が描かれてて良かった 本編の続きも待ってます
401 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 18:06:30.30 O
>>399 乙です
何やら話の続きがありそうですね
次回も期待してます
402 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 20:55:27.65 0
熱帯夜
403 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 21:46:50.43 O
読む前保
404 :
名無し募集中。。。 :2013/08/16(金) 23:01:03.80 O
更新代理乙 辻加護出演とは珍しいですね
405 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 00:11:58.56 O
寝る前保
406 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 01:51:11.23 O
おやすみずき
407 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 02:48:30.53 0
ホゼナンターさん おつかのん 寝るんだろうね
408 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 06:05:13.52 0
おはよう
409 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 07:38:08.41 O
おはっす そういや辻加護出る話自体久しぶりな気がする なんか他にあったっけ
つまんねースレwww
411 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 10:11:07.13 0
412 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 11:56:40.08 O
くるよ
413 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 12:14:22.80 O
>>409 モブキャラみたいな形では出たことあるけどただそれも稀
リゾスレ内での登場がタブーみたいな感じになってる
414 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 12:18:38.81 0
タブーなんてないだろ ミティ様や粛清人Aなんていう魅力的なキャラがあるのにわざわざ使いづらいお子様を出す理由がないだけの話
415 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 13:16:36.04 0
タブーということは別にないはずw 2人がセットで出ているのは今のところ多分このシリーズだけだったかな 別々でなら過去に何度か
416 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 13:42:39.08 0
>>409 たぶん初期のまとめに出てる話だけだと思う
小春に変装してリゾナントに潜入ってのとれいなの先輩って設定のやつ
417 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 13:59:14.38 0
>>416 もうちょいありますよ
かなしみ戦隊とか六等星とか
418 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 14:51:27.05 O
六等星ってなんだっけ まとめサイトにある?
419 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 16:11:49.38 0
間違ったその話じゃなかった
420 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 16:13:37.96 0
421 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 16:17:19.10 0
422 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 16:40:14.45 O
>>420 ありがとうありがとう
ただ職場なので家に帰ってから読むのだ
423 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 18:04:46.04 O
夜保全
424 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 19:21:10.55 0
速攻で答てくれるなんてイイスレじゃないか 完走頑張りな
425 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 19:27:36.94 0
質問に答えるのはテンプレにうたわれてるからねw
426 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 21:02:38.87 O
サタデーナイト保全
427 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 21:31:57.94 0
加護がれいなの義姉で怪物に改造された話もなかったっけ?あの二人って味方にしても敵にしてもろくな扱いされない事が多いような…w
428 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 21:47:52.21 0
429 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 22:09:04.50 O
430 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 22:17:39.13 0
431 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 22:20:29.76 0
>>428 早速の回答ありがとうございます…あなたは一体何者?
432 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 22:50:52.53 0
通りすがりのホゼナンターだ
433 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 22:54:17.16 0
答えたのお前じゃないだろw
434 :
名無し募集中。。。 :2013/08/17(土) 23:23:31.26 O
ホゼナンターはアールフォーワンでワンフォーアールの精神だよ
435 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 00:21:12.62 O
モー女。前保全
436 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 01:37:42.87 0
モー女。後保全
437 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 01:43:00.86 0
>>432 ディケイドかよwフクちゃんはディエッグだったな…あれも生写真使ってたからそういう力を連想しやすいのかな?
スレ違いですまん
438 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 01:58:21.15 0
仮面ライダーイクタw フクちゃんの能力複写の設定自体がディエッグからのリゾナントって可能性もあるけど もともと写真収集癖があるからどうだろう
439 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 02:04:10.85 0
>>438 てっきりフクちゃん→ふくしゃん→複写かと思ってた
あと先輩敬愛思考で真似して成長するとか
まさかヲタ気質からの設定とはw
440 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 02:43:10.60 0
さて寝るか
441 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 03:03:52.44 0
アディオス
442 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 04:17:07.54 0
>>439 上手い!それは気付かなかった…でもなんかすげー納得w
>>438 時系列的にはリゾナンの方が早いような?実は仮面ライダーイクタの作者が隠れてるとか?
443 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 07:50:57.44 0
フクちゃんの能力は元々サイコメトリー それを膨らませて能力複写にしたのが■シリーズじゃなかったかな
444 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 09:49:51.25 O
サイコメトリーをより戦闘特化にしたのが能力複写というわけですか
445 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 09:57:43.01 0
みなさんお詳しい! テンプレ通り生き字引サマサマです
446 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 10:01:39.59 0
( ・e・)<ありがたいねー
447 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 10:50:37.08 0
当初910期の能力は戦闘に向かない能力が多い印象だったけど作者さんの工夫でどんどん成長していくのは現実の成長とリンクして読んでて楽しい
448 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 12:10:51.50 0
今日は新作来ないかな・・・・
449 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 12:34:26.37 O
したらば来てるよ
450 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 13:26:25.42 0
>>389-398 の続きです
●
「あいつらを幹部にするって、正気ですか!?」
首領の私室。
珍しく、組織の重鎮が声を荒げる。
時を自由に操り、永遠さえも殺してみせるというダークネスの古株。珍しく彼女が取り乱したのは、それだけ「首領」の決断が危うい
ものだったからだ。
「簡単なことや。いくら狂犬言うたかて、エサさえ与えれば大人しくなる」
「あいつらがただの狂犬じゃないことくらい、わかってるでしょ!!」
興奮のあまり、口調がかつて同僚だったころのものになってしまう「永遠殺し」。それに気づき、咳払いを一つ。
「私は反対です。あいつらは、組織に混乱しかもたらさない。それに、カオリ…『不戦の守護者』は何て言ってるんですか?」
「『運を天に任せる』んやって。あいつの見えない未来は、組織にとってはプラスになること。のはずやろ?」
「不戦の守護者」の言葉であれば、いかに「永遠殺し」と言えど口を挟む事はできない。
彼女の予言が組織をここまで大きくしてきたのは、最早疑いようのない事実として存在していたからだ。
「大体。教育係の制度が機能してません。あたしが面倒見た石川や『詐術師』の下についた吉澤はまだしも。『金鴉』『煙鏡』がああ
いうモンスターに育ったのは、明らかに教育係のせいなのでは」
「せやな。『煙鏡』の教育係、『黒翼の悪魔』もあんな調子やしな」
「そうそう」
「で、その悪魔の教育係は誰やったっけ」
「え」
それまで滑らかだった「永遠殺し」の口が止まる。
「あんたにも責任の一端はあるんやで?」 「ちょっと!『黒翼の悪魔』の教育係は『蠱惑』でしょ?私は…」 思わぬ水の向けられ方に、慌てふためく「永遠殺し」。 「首領」が「永遠殺し」をからかっているのは明白だった。 「とにかくや。決定したもんはしゃあない。『首領』の命令は絶対、やろ?」 「…はい」 表面上は大人しく引き下がる「永遠殺し」だが、その表情の裏は。 「首領」は何かを、考えている。だが、それが見えてこない。ただ先ほどの会話の中で、意図的に「彼女」の名前を出してきた。おそ らく鍵はそこに、あるはず。 時の支配者を気取っていても、所詮は盤上の駒の一つか。 「永遠殺し」は駒を操るゲーム・マスターのことを少しだけ恨めしく思い、あとは悟りでも開いたかのようにそのことを頭の隅へと追 いやった。
そして、会議の当日がやって来る。 既に、「詐術師」以外のすべての幹部が席についていた。 席の中央に陣取る組織の長である「首領」。そして、彼女の両脇には。 「あの子たちが幹部になる日が来るとはねえ」 まるで保護者のようなことを呟く、童顔の少女。 ダークネスが誇る二枚看板が一人、「銀翼の天使」だ。 「どうでもいいけど、眠くなってきた。遅いなあ、グゥ…」 天使と対照の位置に座る、緊張感のない金髪の少女。 年は若いが、彼女こそが二枚看板のもう一人「黒翼の悪魔」。 「それにしても遅いわね。何を手間取っているのかしら」 「もうじき来るわ。それとも「詐術師」は虫みたいに小さいから、もう来てるけど見えないだけなのかも」 訝る「永遠殺し」にそう答えるのは、ダークネスを栄光へと導いてきた立役者。 未来を見渡す能力で戦わずして組織を守ってきた、文字通りの「不戦の守護者」。 「おいおい、あいつと虫を比べたら虫が可哀想だ。にしてもあいつらがどんなツラしてやって来るか、待ち遠しいじゃないか」 そこへ、一人の女性が話に割り込んでくる。 ざっくりと乱雑に切った栗色のショートカット。ミリタリースーツを着こなし、涼しげな目元を三日月のように細めている彼女の名前は。
「ご機嫌だねえ。いちーちゃん、じゃなかった。『蠱惑』が楽しそうだとごとーも楽しいよ」 「だろう?噂に聞きし新人たち、生意気そうな奴らだったら叩きのめしてやるよ」 『蠱惑』。 ここの所急速に力をつけている成長株の幹部。 好戦的な性格、そして確かな実力。 さらに教育を施した「黒翼の悪魔」が組織随一の能力者となったことで、必然的に彼女の組織内の地位は向上していた。 兎にも角にも。 この日を持ってこの幹部たちと席を同する四人の新人を、「詐術師」が連れてくる手筈。その到着は、なぜか遅れている。 その理由は、すぐに明らかになった。 「おいっ!お前ら!!大人しくついて来いっつーの!!」 甲高い声が、会議室の外から聞こえてくる。 少しの静けさの後、ドアから蹴りだされたのは小さな二人組だった。 「いってーな、このドチビ!!」 「お前うちらよりおばさんなくせにちょっと調子こいてんのと違うか!!」 床に転がり悪態をつく少女たち。 連れて、軽くソバージュがかかった髪型の小柄な女が部屋に入ってきた。 「まったく手こずらせやがって。いつまでもガツガツ飯食ってんじゃねっつーの!」 手を腰に当て、「詐術師」が小さな体で二人を見下ろす。 悪童たちが抵抗すらしないところを見ると、既に「能力阻害」が発動しているようだった。 遅れて、二人組の少女たちが会議室に現れる。 一人は、さらさらの短いショート。白い肌を持つ少年のような容貌をした、少女。 もう一人は、さらにその後ろで眉を八の字にしている。黒肌の少女。 四人の新幹部となる少女たちが、ここに揃った。
「あー、みんな聞いてや。今日からこいつらを、うちらの新しい幹部として迎え入れる。ま、最初は頼りないかもしれへんけど、その うち慣れるやろ。慣れへんと困るんやけど。ま、そういうことでよろしゅう頼むわ」 「首領」からの簡素な開会のあいさつ。 しかしそれは同時に、ここに集まった四人の新幹部が幹部として正式に任命されたと言うこと。 その意味をいち早く理解した、のちに粛清人となることを運命づけられた少女。今はまだ小鹿のように震えながら、その黒い肌を青くしていた。 一方で、のちに「鋼脚」と呼ばれることになる白肌の少女は、顔色一つ変えず。強心臓ぶりを発揮していた。が。 「はぁ。何や。わざわざ呼び出しといて、この程度か。ダークネスの幹部っちゅうのも、ずいぶん安いんやな」 「しょっぱい連中だぜ」 あからさまに悪態をつく、団子頭の「煙鏡」とポニーテールの「金鴉」。 その悪意ある視線が席上の幹部たちをなぞる様に動いた。 「安いかどうか判断するのは、一緒に働くようになってからでも遅くはないわ」 「…せやな。そうさせてもらうわ」 あくまでも冷静に言い放つのは、組織の重鎮「永遠殺し」。 生返事をしつつ、「煙鏡」が新しく用意された席に着こうとしたその時だった。彼女にとって見過ごす事のできない事実に気づいたのだ。 テーブルに近い、年長の二人の少女が先に席につく。すると、残りの空席は。 一つ。 「煙鏡」は、喜び勇んで席に着こうとする「金鴉」に足をかけ、転ばす。 突然の行為に憤る相方を無視し、「首領」に向かって言い放った。 「これはどういうことや。席が、一つしかあらへんやん」
「どういうことも何も、見たまま判断すればええ」 だが、「首領」はその抗議を難なくかわす。 彼女が言葉に込める意図。それにいち早く気づいた「煙鏡」が、肩を震わせる。 「そういうことか。あんた、うちらのことを『二人揃ってようやく一人前』言うてたもんなあ」 「は?どういうことだよ、『煙鏡』!!」 「つまり。うちらは一人じゃ半人前、だから幹部としての席も一つしかないっちゅうわけや」 「煙鏡」の言葉は、頭の足りない「金鴉」にその事実を理解させ、そして一気に激昂させるには十分すぎるほどであった。瞬時に沸点 に達した暴君の片割れは固めた拳を、背後の壁に思い切り突き立てる。 「ふざけんな!バカにしやがって!!」 衝撃と共に、会議室が揺さぶられた。 穿たれた穴から、放射状に皹が入ってゆく。 幹部にすると言いつつ、用意されたのは二人で一つの席。 「金鴉」と「煙鏡」は自分達が逆に安く見られていたことに気づき、憎悪の炎を燃やし始めた。 「…さっきから黙って聞いてりゃ、うるせえチビどもだな」 一人の人物が、すっと席から立ち上がる。 月下に立つ麗人のような冷たさを表情に浮かべる、ダークネスの幹部の中でも武闘派で鳴らす彼女。その名を「蠱惑」。 「何か用かよ。席を譲るために立ったんなら、話聞いてやってもいいけど」 「…こりゃ、あたしが直々に『教育』してやらないといけないみたいだなあ」 あくまでも不遜な態度を取る「金鴉」。 さらにその次の「煙鏡」の一言が「蠱惑」の心を深く抉る。
「『教育』?笑わせんなや。後輩に追い越された挙句その後輩のおこぼれで手柄立ててるようなカスに『教育』なんかできるわけないやろ」 「てめえ…」 それは。 「蠱惑」にとっては禁句とも言うべきこと。 自分より後に入ってきた「黒翼の悪魔」に追い抜かされ、さらには彼女の活躍によって自らが引き上げられる形で今の地位に就いた。プライ ドを支えるのは、かつての師弟関係のみ。それを、巧みな言葉で突かれたのだ。 「『首領』、ちょっと荒療治になりますが、いいっすよね?」 「……」 沈黙を了承と捉えた「蠱惑」が、二人の前に歩み出た。 受けた恥は、きっちり返す。それに。 ここで列席している幹部全員に自らの力を見せつけることで、改めて今の地位が後輩の手を借りて得たものではないことを証明できる。 「この程度で死んじまって、がっかりさせんなよ?」 どこからともなく、ガサゴソという奇妙な音が聞こえてくる。 「蠱惑」の周りに群がる、黒い塊。 「でっ、出たぁ!!おいら、『蠱惑』のこの力だけは好きになれないんだよぉ!!!」 虫嫌いの「詐術師」が、通常の倍の甲高い声を上げて飛び上がる。 黒い塊を構成するは、蜘蛛、ムカデ、サソリ、ありとあらゆる種類の毒虫たち。 「あはっ、久しぶりに見れるんだねえ。いちーちゃんの戦い」 「戦いはいいけど、後で掃除するのが大変だべさ」 悪魔と天使がのんきなことを言っている間にも、黒い塊は徐々に膨れ上がる。 「蠱惑」の能力、それはありとあらゆる虫を意のままに使役する「蟲の女王(インセクトクイーン)」。 やがてその黒い波が、二人の悪童に向けて押し寄せ始めた。
「きったねえ虫なんて使ってんじゃねえよ!!」 毒虫の波に怯むことなく前に進むは、「金鴉」。その恐怖を知らない両足が、次々と虫たちを踏み潰してゆく。不快な音を立て、毒液 を撒き散らして潰される毒虫たち。 「さすがバカは先のことを考えないってか。じゃあ、こういうのはどうだい?」 歯を見せ笑う「蠱惑」が、左手を翳し、そして「金鴉」に向けて何かを投げつけた。 条件反射でそれを叩き落す「金鴉」だが、その時に右の拳に鈍い痛みが走るのを感じた。 拳を見ると、何かで穿たれたような、小さな穴。 「何したんだよ、これ」 「今あたしが飛ばしたのは、人に自分の卵を産み付けるハチの一種さ。一時間もしないうちに全身に卵がまわって、体中を食い尽くす」 「はぁ?ふざけたことしてんじゃねーぞ!!」 突然の死の宣告に怒り狂った「金鴉」が、「蠱惑」を急襲した。 目にも止まらぬフットワーク、力強く踏み込んだ先の「蠱惑」の体を、激しい剛拳が打ち貫く。 確実に心臓が潰された。 しかしその予測は、当人の笑顔をもって否定される。 「残念。その手の攻撃は、あたしには効かないんだよ」 「なにっ!!」 一瞬の隙を突く、「蠱惑」の前蹴り。 まともに喰らった「金鴉」は勢いを殺す事もできず、そのまま「永遠殺し」が座る席まで飛ばされていった。紙一重でそれを避ける「永遠殺し」。 「ちょっと、変な争いに私を巻き込まないでよ!!」 「悪い悪い、同期のよしみってことで許して」 「同期って言うならおいらにも配慮しろよ!!」 「詐術師」がテーブルの真ん中で丸くなったまま、大声をあげて抗議する。 既に会議室は女王の眷属たちにより埋め尽くされていた。
そんな状況下で、胸に大きな穴を開けながら豪快に笑うミリタリールックの女というシュールな絵。地に伏した「金鴉」が忌々しげに それを見上げる。 「ちっくしょう…何なんだよお前、不死身かよ…」 「まあ、大まかに言えば、な」 先程の一撃のダメージによる苦痛に顔をゆがめ、「金鴉」が皮肉を言う一方で。 笑顔を絶やさない「蠱惑」、胸に開いた穴が徐々に塞がってゆく。 その傷口の中に、無数の蟲が蠢いていたのを「煙鏡」は見逃さなかった。 「体に飼ってる寄生虫による体組織の急速修復、ってとこか。バケモンやなあ、あんた」 「酷い言い草だな。あたしはこれでもまだ人間のつもりなんだけど」 言いながら、徐々に「煙鏡」に近づく蟲の女王。 その体が、今度は急にくの字に曲がった。四肢から噴出す鮮血、目の前が、硝煙に煙る。 「詐術師」がテーブル上に逃げた際に落とした拳銃を目ざとく拾っていた「煙鏡」が、弾倉内の銃弾を全て「蠱惑」に食らわせたのだ。 「だからさ、無駄なんだって」 「ちっ、やっぱバケモノやないか」 バケモノねえ。苦笑いを浮かべるしかない「煙鏡」。 だが。彼女は待っていた。反撃の瞬間を。 「金鴉」の飛ばされた方向。 小さな影が、ゆっくりと立ち上がった。 「そう来なくちゃ。さっきので終わりなんて、あまりにもあっけないからな」 視線を「煙鏡」から、「金鴉」へと移す。 楽しそうににぃ、と笑う金の鴉。口元から見える特徴的な八重歯が、血に染まっていた。
459 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 13:35:59.92 0
460 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 14:40:35.89 O
>>459 更新代理乙
あの方登場はあとは■シリーズくらいでしょうか
戦いの行方期待してます
461 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 14:45:34.76 0
この場で決定的な何かをしでかしたから問題児たちは現在幽閉されてるのか 完結編待ってます
462 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 16:13:18.70 0
>>459 乙です
闇サイドの書き込み創り込みはぺっぱあさんの能力者の新世界を彷彿させるものがありますな
興味を持つ人沸かない人両極端に分かれそうですが自分は好きです
悪ガキたちがどんな戦いっぷりを見せるか次回が楽しみです
463 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 17:38:37.62 0
しかし凄い執筆量だな
464 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 19:05:44.22 O
読む前保全
465 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 20:04:39.49 O
これまであまり触れられなかったOGの代表格みたいな三人ですね これからどうなるのやら
466 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 22:04:51.52 0
あげ
467 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 22:23:06.71 0
>>463 同感です。いつ考えていつ書いてるんでしょうか?
468 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 23:07:48.98 0
469 :
名無し募集中。。。 :2013/08/18(日) 23:51:39.86 O
また治療と言う名のセクハラですかリーダー
470 :
>>1です :2013/08/19(月) 00:39:44.92 0
471 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 01:19:00.95 0
神々は頭を悩ませていた。 何に? 彼らが受け持つ世界の「道重さゆみ」たちに。 「最近俺が書くさゆのセクハラがひどいんだよね」 「マジで?俺の書くさゆもなんだけど。治療とか言いつつ後輩の体を触りまくり」 「みなさんもですか。実は私の道重さんも」 「まったくひどい話だな。誰が彼女の能力設定を『治癒』にしたんだ。無法地帯じゃないか」 「こうなったら設定を変えるしかないな」 「どうするつもり?」 「まとめwikiのさゆの項に書き加えるんだよ。こうやって」カタカタカタッ 「おお!」 「これで安心だな。喫茶リゾナンターに平和が戻った」 「リゾナンターの真の敵はダークネスじゃなくてリーダーのセクハラ行為だからな」
472 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 01:20:24.23 0
※ ※ ※ 道重さゆみ (Sayumi Michishige) この項目は『リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ』(以下、リゾスレ)に発表された小説の登場人物、道重さゆみに関する事実を記述していきます。 (略) 3.能力 主として以下の能力が設定されている。 治癒能力(ヒーリング)怪我を癒すことができる能力。治癒能力の項参照。作者・作品ごとに捉え方は多少異なっていると思われる。 手かざしによりその効力を最大に発揮するというのは前作共通。直接触れてしまうと力が強すぎて対象の肉体が損傷してしまう。
473 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 01:21:25.97 0
※ ※ ※ 道重さゆみは、突如頭の中が大いなる力によって書き換えられるような感覚を受ける。 あれ?今の、何? 確かめるように、自らの手のひらを見つめるさゆみ。見た目は何の変化もない。しかし、決定的に何かが変わっていた。 さゆみの、さゆみの能力が残念なことになっちゃった!! 街中だというのに思い切り叫んでしまうくらいの衝撃。 さゆみの能力は、手かざしによってのみ治癒の能力が発揮される。そういうことになってしまったのだ。 なんてことなの!これじゃりほりほほっぺたに傷があるじゃない、さゆみが治してあげる!ぷにぷに。ぷにぷに。とか。 くどぅーどうしたのそんな傷だらけで!!さゆみが治してあげるから上着を脱いで。ほら、恥ずかしがらずに全部脱いで!スー とか。 フクちゃんちょっと肌触らせて。ほら夏の日差しはそれだけでダメージだから。すりすり。そうだ、凝ってない?肩とか、胸とか。フッフフフ。 そういうのが一切合切できなくなっちゃう。そんなの、そんなの耐えられない!!!!!!!!! さゆみは嘆いた。 全世界のさゆみが、泣いた。異能力のさゆみも、米のさゆみも、闇に棲むさゆみも、Яのさゆみも、HELPのさゆみも。 もちろん、リホナントのさゆみも。みんなみんな。 その途轍もない負のエネルギーが、奇跡を起こした。
474 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 01:22:40.54 0
※ ※ ※ 「はぁーあ、最近作品投下してねーなー。まいっか。Яの人がいっぱい書いてくれるし」 「どうも、こんばんは」 「は、はぁ?!さっさっさゆ?何でおれの部屋に……そうかこれは夢だ、ええい早く覚めてくれ!!」ごっごっごっ 「頭をぶつけてもだめよ。だって私はリゾナント世界のさゆみなのだから」 「そっかなーんだ。安心したよ…って、えええええええ????????」 「びっくりしてる場合じゃないわ。早くあなたが行った過ちを正しなさい」 「ちょっと何言ってるか意味がわからないんですけど」 「さっき、wikiを改変しましたよね」 「あーあれか。それは無理な相談だな」 「なんでですか」 「これ以上リゾスレを変態スレにしてはいけない、そういう良心が働いたんだ。最近じゃ 「真性レズビアンでロリ愛好の変態アイドル道重さゆみをこれ以上野放しにしてもいいのか?」スレと大して変わらな……」 「そうそう、言い忘れたけど」 「はい?なんですか?」 「わたし、今、さえみですから」 「はぁ!?」 「人は皆、いつかは死ぬものです。そしてまた生まれる。破壊と創造は…」 「わー!!!!ちょちょチョトマテクダサイ!!崩壊は嫌だ!!直す!元に戻します!!だから、崩壊は、崩壊だけわぁ!!!!!!!」
475 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 01:23:26.42 0
こうしてwikiはまた元通りになり、今日も全世界のさゆみは治療と称したセクハラ行為に勤しむのだった。 めでたしめでたし。
476 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 01:25:21.52 0
>>471-475 「神罰」
ちなみに作中に登場する作者さんたちははフィクションであり、実在の人物·団体·事件などとは一切関係ありませんw
477 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 01:34:37.70 0
>>476 何やってんだあんたこんな時間でも読んでしまったじゃないかw
おれらを寝かせろw
478 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 02:23:47.26 O
おやすみずき
480 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 07:02:25.15 O
おはリゾナント
481 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 07:16:54.18 0
>>477 残念ですわ。ついに私の時代がきたと思いましたのに
482 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 09:59:51.33 O
そういえばあなたも接触系能力者でしたねw
483 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 10:27:39.67 0
休み明けからぶっ飛ばしてますなw
484 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 11:54:04.38 0
能力の複写にもう少し時間がかかりますわ この辺を触った方がうまく複写できるかもしれませんわ どうやら両手でやった方がよさそうですわ
485 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 13:41:47.76 O
ふくちゃんといいさゆといい能力設定した人の先見性は恐れ入るな
486 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 14:53:07.81 0
暑いなかリゾナンターたちが頑張ってるね 俺も頑張ろう
487 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 15:26:38.54 I
接触会リゾリーゾ開催なう。
488 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 15:44:50.58 0
幼き鞘師に水軍流の手ほどきをしたのは祖父である『じぃちゃま』であった ―といっても、道場のような場で仰々しく伝えたことは一度たりともなかった 普通と変わらぬごく日常的な生活を送る中で、知らず知らずのうちに身についていた 『こりゃ里保。そんな風に筆を扱ったら半紙が怒るじゃろう。もっと優しく文字を書くのじゃ』 『お米はこうやって一粒、一粒包み込むように持つのじゃ。心に波風立ててはならんでの』 じゃれあって遊び、交わした何気ない会話の端々に水軍流の真髄が込められていた 鞘師は踊るのが好きであった 決して誰かに言われたわけでも学んだわけでもなく、自然とリズムを刻み、踊っていた 跳ね、廻り、揺れ、そして舞う そんな踊る鞘師を眺めてみせるじぃちゃまの眼を細めた笑顔も大好きであった 『本当に楽しそうじゃのう。里保は踊るのが大好きなんじゃろう?』 「うん!大好き!」 『そうかい、そうかい、それはいいことじゃ。続けるんじゃ』 鞘師の父の仕事は不動産屋であったが、じぃちゃまは刀鍛冶を営んでいた 現代という御時世では鍛冶屋などは到底儲かる職業ではないものの、誇りを持っているじぃちゃまの姿を鞘師は好きだった 夏だろうと冬であろうと一年中、熱気のこもる作業場でただ黙々と一人紅く輝く刀を打ち続ける じぃちゃまに鞘師は決して作業中は話しかけなかった。刀鍛冶に魅せられ、じぃちゃまの姿に魅せられ言葉を発するのを忘れていた 完成した刀を電灯に照らし笑顔を見せるまで鞘師は作業場の椅子にただじっと座り、背中を見ていた じぃちゃまの『おいで』という声と共に、急いで刀の元に駈け寄り、その美しさに心を奪われるのであった 『水軍流』という存在、それを教えられたのはいつだったのか−鞘師は覚えていない ただ、昔話を読んでくれたときに、もののついでといった感じでじぃちゃまが口にしたのは確かであった 水軍流―それは戦うためではなく生き抜くために受け継がれてきた古武道 斬られる前に断つ、投げられる前に落とす、撃たれる前に弾く 視線、筋肉の動き、息遣い果ては空気の流れまでも利用し、行動を予測し、制する 全ては肉体も感情も支配するために培われた柔なる技術
じぃちゃまは悲しそうな顔をして『鍛冶屋はわしで終わりじゃのう』と呟き、サイダーを飲む鞘師の頭をくしゃくしゃとなでた じぃちゃまの本心は推し図れなかった。本当に終わってもよいのか、鞘師に期待してたのか分からない 鞘師は特段変わったことではなかった。平均的な日常を夢み、実際、じぃちゃまと遊ぶ以外は、ごくごく幸せな生活を送った 日常が日常で無くなったのは中学にあがろうとする少し前―彼女の両親とかわいい妹弟たちが不慮の事故で亡くなったのだ 鞘師は自分自身でも呆れるくらいに冷静だった。子供らしくないな、なんて自嘲気味に一人で笑うくらいに 突然のことで感情が壊れたのではないかと、危ぶむ親戚もいたが、それに気付いた鞘師は涙を作り、強くふるまって見せる演技をみせた 別れの儀式が終わり、鞘師は一人、じぃちゃまの家に呼び出された 『里保、これからのことだがのう・・・』 鞘師はじぃちゃまと一緒に暮らすことを望んでおり、てっきりそうなるだろうと思っていた 『・・・東京でいろいろ勉強しておいで』 そう発した当人のじぃちゃまの顔はこれまで見たこともない表情を浮かべていた 説明もなくそう勧めるじぃちゃまの声は僅かに震え、特段の事情があるのだと察した鞘師は頷いた 怒りと悲しみと・・・そして恐れ。色々な感情が入り混じった目をじぃちゃまは空に向けていた 『東京まではこの者達が護衛として同行するが、気を抜いてはならぬ』 庭先に現れた老人達は鞘師家に代々仕える守護者の一族と紹介された じぃちゃまと別れを告げ、広島駅に着いた車から辺りをうかがうように老人達は降りる 「いいですか、里保様、東京に着きましたら、すぐにこちらに向かわれるのですぞ」 そして地図と数枚の写真が手渡される。写真には小さな喫茶店の姿が 「もし、我々の身に何かあっても・・・気にせず逃げるのじゃ」 「何があってもって・・・何かに狙われているのですか?」 「ダークネス。闇の集団じゃ。説明せずともいずれお分かりになるでしょう」 その存在を鞘師は東京で厭というほど知ることとなる 命を狙われ、生死の狭間で生まれた『水限定念動力(アクアキネシス)』、そして高橋愛との出会い
鞘師と同じように特殊な力を有し、奇妙な運命を辿ってきた仲間達との出会い 常識を超え、恐ろしいほどの数々の能力を有したダークネスとの死闘、改めて知る怒りという感情 自分を見つめるために旅に出た高橋、新垣といった諸先輩との別れ、自分の内なる弱さ 多くのことを経験することになることを当時は何も知らなかった 時に辛いときにはじぃちゃまの言葉が呼び起こされ、それは大きな支えとなった 『大事なことは受け止めることではない、受け入れることなのじゃ』 そう、受け入れるのだ ★★★★★★ 「なんであゆみんが炎を操れると!おかしいっちゃろ!」 すごい剣幕で生田に問い詰められても石田に動揺の色は浮かばない 「だってこの蒼炎は代々石田家に伝わる聖なる炎なんだから、操れるも何も当然なんです」 むしろ胸を張って誇らしげにドヤ顔を決める 「ニシシ、まさはその炎の色、好きなう!」 へらへらしている佐藤に褒められ、石田は嬉しそうにその場に崩れ落ちながら、悶え喜ぶ 「香音ちゃんは小さい音が聴こえるの?」 「うん、フクちゃんのドキドキしている音も聴こえるよ。不安の音なんだろうね」 「だからさっき鈴木さん、はるの千里眼より先に落ちてくるロボットに気がついたんだ」 「おかげで私もあまり怪我しないですみました!鈴木さん、ありがとうございます でも、これはいったいどういうことなんでしょうか?」 痛そうにわき腹を摩りながら飯窪が問いかける 「なんであゆみんや鈴木さんの能力を皆さんご存じないんですか?」 「あのさ、はるが思うに、これは誰か嘘ついているんじゃないかって」 「え〜なんのためわず?」 工藤の背中に絡みつく佐藤 「いてててて、まぁちゃん、痛いって!髪の毛、引っ張らないで!ハゲるだろっ」
それは誰しもが一辺は頭をよぎったものの・・・状況を全て説明するには至らない不十分な解答 「でも、くどぅーさ、嘘ついてどうするの?仲間割れでもさせるっていうの?それとも後ろから刺すの?」 「そうにきまっているじゃん!こんなおかしい状況作るのって、あいつらしかいないじゃん」 『あいつら』、佐藤を除く6人は敵対する組織の存在を同時に思い浮かべる 「ん〜まあ、そうなんだけどさ・・・こんな単純な答えを安易に導かせる状況を作るかな?」 「でも、それはおかしいと思いませんか?ダークネスっぽくない気がします それに、もし誰か一人が偽物だとしたらあとの7人はお互い見知っていることになりますよね?」 「でも、あんなケタケタ笑うまさきちゃんや蒼い炎を扱うあゆみちゃんは誰も知らないんだよ」 石田、飯窪、譜久村と年長組三人に説明されて思わず工藤は口ごもる 「偽物が複数いるってことはないのかな?」 鈴木の問いに答えるは譜久村 「それは考えましたわ。でも、仮に8人中3人が偽物だとしても残る5人は味方。 数としては5対3でダークネスに取って不利なことに変わりはありません」 「じゃあ、4人以上が敵なら的に有利になるっちゃない?」 「・・・考えられなくはないけど、そのためにこんな建物わざわざ作るかな? もし、私がダークネスならこんな建物作らないで暗闇で一気に奇襲かけるよ。 さっきのロボットだってなんていうか手が込み過ぎているというか・・・らしくないんだよね」 「そんなことより、はるが知ってるみんなとなんで能力が違うのか説明してよ!!」 精神的にはまだまだ未熟な工藤のいらいらが募っていく中、ぽつりと鞘師が呟いた 「『鏡の世界』」 「え?里保ちゃん、今なんて言ったんだろうね?」 「ああ、ごめん。あのね、私がリゾネイターとして戦った相手に鏡の世界に入り込める敵がいた そいつに私達は鏡の世界に連れ込まれた。まあ、なんとか倒したんだけどさ」 「(リゾネイターっていったよね?)じゃあ、この世界も鏡の中っていうと?」 「違う、そうじゃなくて、違う世界なんじゃないかって思うんだ」
「ありえないことじゃないですよ!いろんな漫画には違う世界を作る能力者が描かれること大いにありますし!」 飯窪はお気に入りの格闘漫画のキャラの名前をいくつかあげて鞘師を援護する 「そういえば、はるも前に鏡の世界を作る中島っていう女と戦ったことある! そのときによくわからない関西弁の女に変な空間に引っ張り込まれたんだ!あいつがやったなら・・・」 「でも、それならえり達の能力が合わないことが説明つかんよ!別の世界に連れられてきたっちゃろ?」 「いや、別の世界だからこそ辻褄が合うんだよ。おそらく、みんな、それぞれ別々の世界に存在していたんだ そして、別の一つの世界、すなわちこの世界に連れられてきたと思う。いわば並行世界に連れられてきたんじゃないかな」 「「並行世界!!!」」 「「「「へいこうせかい?」」」」 「なるほど、それならば納得ですわ」と言葉の意味を理解できたのは譜久村、飯窪の二名のみ 他の4人はその言葉すら知らずクエスチョンマークが浮かんだまま 「へいこうせかいってなんですか?」 「それは私が説明しますね!並行世界というのは同じ時間軸の中に世界が複数あるという仮定のもとになりたった考えです そこには同じ顔の人がいるんですが、その世界の出来事は互いに独立していて、干渉はしないんです 例えば二人のくどぅがいるとします。二人ともリゾナンターだとしても、別々の性格や能力を有している可能性があるんです そして、そのことをお互いのくどぅは知ることはないし、片方のくどぅが怪我しても、それはもう一人には影響しないんですよ」 飯窪の説明が終わっても「う〜ん、よくわかったような、わからないような」と石田は首を傾けたままだ 「まあ、要は向かい合わせの鏡のようにたくさん世界があって、その中から私達は一つの別の世界に連れて来られたってことですわ」 「とにかく、これならみんなの能力が違うこともまあちゃんがあゆみんを殺した事実も説明がつくんだ」 「・・・でも、なんでそんなことするんだろうね?めんどくさいと思わなかったのかな?みんなどう思う?」 それは確かにそうなのだ。わざわざここに連れて来るほどの価値があったのだろうか、鞘師達は思案するが、 「え〜えり考えるの苦手やけん、難しいことは里保に任すと」と生田が両手を挙げた 「・・・他の世界でも生田は生田なんだろうね」 他の6人が笑った 「ホントだ、えりぽんはえりぽんだ」「この生田さんもKYですね」「新垣さん命なところも変わらないのかな?」 みんなクスクス笑い、緊張が解ける 「な、なんね・・・みんな何がおかしいと!」
「ウフフ・・・いえ、なんでもありませんわ。変わらないなって思っただけです。そうだ、えりぽん能力教えて」 譜久村に能力を見せてと言われ、戸惑う生田 「え?なんで?」 「なんでって、あゆみんみたいにえりぽんの能力が違ったら、万一の時に困るでしょ?」 「そうですね、生田さんの力が精神破壊じゃないかもしれませんしね」 「え?くどぅーの世界ではえり、精神破壊で攻撃するの?新垣さんと同じ精神系能力で??めっちゃ格好いいやん♪」 (KYだ。そして性格・好みは変わってない)だれしもが心の中で小さくため息をつく 「でもざんね〜ん、えりの力、違うんだもんな〜そっちのほうがいいのにな〜 よし、じゃんじゃじゃ〜ん、世界一の能力者を目指す生田、いっきま〜す」 そしてふっと、生田の姿が消えた 「! 生田さんが消えた!」「瞬間移動?透明化?高速移動?」 「あ、生田さん、はっけ〜ん、あゆみんの後ろ!イヒヒ・・・」 慌てて石田が振り返るとほぼ0距離で無表情で立っている生田の姿が 「ぎゃああああああああ」と叫びながら石田は尻餅をついた 「なに?そんなにえりの顔が怖いと?」と眉間にしわを寄せながら、倒れた石田に手を差し伸べる 「誰だってそんな無表情で音もなく立たれたら怖いですよ!」 「これ、瞬間移動ですか?」 工藤が尋ねるが生田は首を横に振る 「違うと。えーと、新垣さんが名付けてくれたっちゃけど〜『空間跳躍(スキップ)』っていう能力やって 瞬間移動ほど遠くまで移動できんけど、好きなタイミングで好きなところに現れることができると」 (そういえば、さっき)鞘師は先程の場面を思い出す。 8人全員が部屋の中に閉じ込められていたにもかかわらず、生田は入口をふさいでいたロボットの背中に蹴りを加えていた それはすなわち、いつの間にか部屋の『外』に生田が出たという事実に繋がる 一瞬覚えた違和感の正体は能力による跳躍であったのだ 「すごいっちゃろ?ねえ、あゆみん、驚いた?驚いた?」 「・・・二度としないでください」 「・・・それ、フリっちゃろ?」 「フリじゃありません!」
漫才を始めるすべりコンビを無視しながら、鞘師が腰のペットボトルを手に取り、仲間達に見えるように掲げる 「一応私も説明します。私の力は水限定念動力。でも、水はあとこれだけしかないからあまり役に立てないかもしれない」 ペットボトルに残された水は先程の戦闘で半分程度にまで減っていた 「私の世界でも鞘師さんは水刀で戦っていました」 どうやら鞘師の力は石田の世界以外では共通のようだった 唯一違う石田の世界では鞘師は治癒の力を持っていたという 「水を操る力か・・・私の蒼炎と戦ったらどっちが強いのかな?」 「あゆみちゃん、状況をわきまえて!」 「鞘師さん、ここを出たらお手を合わせ願います!だって、炎対水、燃えるじゃないですか」 付き合いきれないと仲間達は小さく首を振るなか、一人、やれやれだぜ、と呟いた 鞘師と同様、工藤の千里眼、佐藤の瞬間移動も多くの世界で共通のようだった また同じくして大抵の世界でも性格、好みがおおまかには一致していることも判明した 「じゃあ、どの世界もまぁちゃんはちょっと変わった子なんですね」 工藤にまとわりついて離れようともしない佐藤を必死に押し返しながら工藤が苦笑いを浮かべる ついでに生田の世界の佐藤は『瞬間移動』に加えて『死霊使い』という霊を操る力も有していたらしい 本来ならば目の前にいる佐藤にもどういう能力を持っているのか把握するべきだろうが、それは行わなかった 一つにはこの佐藤は先程から工藤に戯れてばかりで十分な解答を期待できないから もう一つは、危険だからだ。この並行世界説が正しいのならば、佐藤は元の世界で味方を手にかけたことになる 奇妙な笑い声は先程から狂気の調べのように聴こえてならず、変に力を使われるものなら仲間達に危害を加えかねない 残るは譜久村、鈴木、飯窪、石田の4名 とはいうものの鈴木の超聴力、石田の蒼炎はすでに披露されているので実質あと2人 「はいは〜い、じゃあ、私から先に能力披露しますね!」 元気良く手を挙げて一歩前に出たのは飯窪 「う〜ん・・・どうやって説明したらいいんでしょうか?・・・あ、そうだ」 飯窪は破壊されたロボットのもとへと駈け寄り、数センチ程度の残骸を二つ手に取り仲間の元へと戻ってきた
破片の面と面を合わせ、その接着縁にそって指で一周なぞる 接着縁にハニー色の光が差し込んだ。指でなぞった跡には破片の境界線は見てとられない 仲間達に見えるように掌にのせながら飯窪が説明を始める 「能力名は『粘液放出(ハニートラップ)』。接着する能力がまず一つです。それからくどぅ、この破片を剥がしてください!」 「え?無理でしょ?こんなの・・・ふんっ・・・あれ、案外簡単に取れそう?その力、未熟なんじゃないっすか?」 力一杯引き離せばどうやら破片は二つに戻りそうだ。うすら笑いをうかべて工藤は力を込める 飯窪が工藤に見えないように仲間達に伏せろと合図を送る 完全に継ぎ目が割れたと同時に、小さな爆発が起こる パァァァァン 「なにすんだよ、めしくぼ!」 工藤は怒りの表情で飯窪に詰め寄った 「これがもう一つの能力です。接着物を破壊した瞬間に破壊するのに要したのと同程度のエネルギーを爆発として開放する。 もちろん接着の程度は好きなように調整できますし、接着の威力が大きければ大きいほど剥がれた時の破壊力は増します」 「だからってはるで実践すんなよ!血がでてるじゃん」 「そこでこうやって傷口に触ると、血が止まる。痛みまでは止められませんが」 「なるほど、治療にもはるなんの能力は仕えるんだ!便利だね」 「便利じゃない!口で説明しろ!人一倍おしゃべりなその口で!!」 工藤がギャーギャー騒ぎ出したので、工藤の口先に指を近づける飯窪 慌てて工藤は口をみせまいと手でしっかりとガードした 「じゃあ、最後にミズポンの番やね」 「え、ええ・・・あのですね、私はね、みんなとちょっと違って、みんなのように能力は持っておりません」 「え?でも、さっきロボットの動き止めたんだろうね。私は知ってる、とか言いながら」 「あれは能力とはまた別の次元のことなんです ・・・みんな違う世界から来たからこそ告白するんだけど 私の名前はフクムラミズキ。2021年、未来から来たリゾナンターです」
496 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 15:53:12.05 0
>>488-495 『米』 第三話でした。
これを書くために作品群を改めて読むと、■■シリーズ、完成度高いなって・・・続き書いて欲しいな〜
飯窪さんの能力名新たに解釈しましたが、元作者の話並行して続いているので拡大解釈で申し訳ないです
フクちゃんは・・・お待たせしました(?)あの設定です。
さて、2話投稿時に宣言しました、各キャラの元々の世界は以下の通りです
譜久村:聖なる者 鞘師:■■シリーズ 鈴木:共鳴ハンター
飯窪:3×3+1 石田:箱庭の少女たち 佐藤:DAWN OF A NEW DAY、工藤:リゾナンターχ
生田さんは、設定だけメモしててタイトルなんだったかのか・・・保管庫で見つけられなかった(汗
他人のふんどしで相撲取っている作品なので、書いていて時折奇妙な罪悪感とオリジナリティの無さに苛まれてしまう(汗
ここまで代理
497 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 16:08:39.64 O
米キテター 生田さんのスキップは地平本願の能力だったかと フクちゃんの告白からどう話が転がっていくのでしょう 期待して次回も待ちます
498 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 17:59:13.91 O
帰ったら読む!
499 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 19:40:59.94 O
読む前保全
500 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 20:28:50.08 0
未来のフクちゃんキター!能力未発表だったからどんな能力か楽しみ …このフクちゃんは変2じゃないよね?w
501 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 21:13:52.93 0
>>496 色んな世界から持ち込まれた能力の披露に何だか高まりましたw
これをどこに持って行ってどう着地させるのか……作者さんのお手並みをしかと拝見させていただきます!
502 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 21:29:51.43 0
>>500 いや、性格と性癖はどこも変わらなっぽいから、、、
503 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 22:35:11.23 0
聖なる者読み直したけどまだ変2覚醒してないみたいwところでまとめ見たけどコレって完結してたっけ?『10/1日』以降見つけられない…
504 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 23:26:56.58 O
>>496 更新代理乙
全メンバーの能力が出揃いましたね
「さあ、行こうか」に期待です
505 :
名無し募集中。。。 :2013/08/19(月) 23:28:57.27 0
確かそこで止まってるね 案外この話で続き書くつもり?w
506 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 00:54:59.22 0
おー!それは期待ですね!!ってあまり作者さん困らせないようにしないとw
507 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 02:02:14.50 O
おやさゆみん
508 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 06:15:10.56 O
おぱょ
509 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 07:41:55.79 0
ぬん
510 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 08:19:54.91 0
床に、壁に、そして天井に。 異形の蟲たちが、全てを埋め尽くす。 だが、主である「蠱惑」が敵ではないと認識する人間には寄り付かない。逆に言えば、敵と看做された「金鴉」「煙鏡」には 容赦なく襲い掛かるということ。 「うらあああっ!!!!!」 黒い塊を掻き分け、火のついた弾丸のごとく一直線に「蠱惑」に向かってゆく「金鴉」。 だがその単調な動きは、悉くかわされてしまう。 大振りな拳をバックスウェイで回避する「蠱惑」、そこへ空振った拳が砕いた床材の礫が襲いかかる。それに気を取られてい る間に、相手の接近を許してしまった。 「いっただきぃ!」 「ちっ!!」 元々力の強い「金鴉」、その上この近距離からの拳には相当の力が加えられていた。 「蠱惑」が防御の手を翳すも、鉄拳がその掌を突き破り頭部を打ち砕こうとする。が。 「な、何だよこれは!!」 「言ったろ?その手の攻撃は効かないってな」 「金鴉」の拳は、「蠱惑」の手のひらを貫いたままの位置で止められる。 手の位置から湧き出た大量の毒虫たちが、「金鴉」の拳に噛み付いて勢いを殺していたのだ。
自らの手を引き抜こうとする「金鴉」を、再び蹴飛ばし引き離す。 穴の開いた掌はやはり、寄生虫による超回復で傷が塞がりつつあった。 「おい、そっちのお団子頭はかかって来ないのか?何なら二人がかりでやってくれたって、構わないんだぜ?」 胸の傷もすっかり修復され、「蠱惑」が余裕を態度に出す。 事実、彼女の中では戦闘はほぼ終了してるも同然だった。「金鴉」の能力は、顔と体を自在に変える事ができる「擬態(ミミックリィー)」。 そして相方の「煙鏡」は。 「遠慮しとくわ。直接攻撃はそこのバカの担当や」 寝そべった格好のまま、宙に浮いていた。 念動力の中には、その強大な力によって様々なものから身を守る種類のものがある。「煙鏡」は自らの念動力を駆使し、自らの外にあ るものを拒絶することで一種のバリヤーのようなものを構築していた。その能力の名は「鉄壁(プロテクション)」。その効果は使用者の精 神力が尽きるまで持続する。ちなみに現在宙に浮いているのは、彼女が重力の影響を「拒絶」した結果の現象である。 使いようによってはいかなる攻撃も通用しない文字通りの鉄壁だが、攻撃に転用することはできない。攻防一体、さらに驚異的な回復 力まで持つ「蠱惑」の相手にならないのは確かだった。
勝負あったわね。 「永遠殺し」は、目の前の戦況をそう判断した。 ただ気がかりなのは。二人組が得意としてるというコンビネーションプレイが、まだ一度も披露されていないこと。それと。 左手の甲を見る。甲のちょうど真ん中に、何かに噛みつかれたような小さな傷。先ほど「金鴉」が蹴飛ばされたのを避ける 時についた傷だと思い捨て置いたのだが。 「まあいいや。そこのポニーテールのチビがぶっ倒れてから、かかってくるか、白旗振るか。今のうちに決めておくんだな」 「その時が来れば、な」 鼻で嗤う「煙鏡」を見て、「蠱惑」の苛虐心に火が点く。 だったら、徹底的にやってやるよ。 おぞましい毒虫たちを引き連れ、座り込んだままの「金鴉」に一歩ずつ、近づいた。 「金鴉」の顔が、そして姿が変化しはじめたのに気がついたのは、「蠱惑」が完全に彼女を攻撃の射程距離の中に入れた時。 何だこいつ。今更誰に擬態しようってんだよ。こいつの能力は、誰かの姿形をそっくり真似ることだけで、能力に関しては コピーできないはず。 「蠱惑」が抱いた、微かな疑問。結果から言えば。 そんなことを考える暇など、あってはならなかった。
全身を突き抜ける、衝撃。 夢でも見ているかの光景。 俄かに景色がくるくると回転し、視界が収まったあとに「蠱惑」が見たものは。 ミリタリー服を着た女が、背を向けて立っていた。 見たことのある、体型、背格好。よく見るとその女の迷彩服は。 真っ赤に濡れていた。激しく噴きだす血の雨によって。 「あ、あ、あああアあああアアアッ!!!!!!!!!!!」 そこで初めて、「蠱惑」は気づく。 迷彩服の女の、本来あるべき首から上の部分がそっくりなくなっていることに。 そしてそれが、紛れもなく自分自身であることに。 「前言撤回。あんた、やっぱ人間やったんやなあ。まあ、安心したわ」 宙に浮かんでいた「煙鏡」が、侮蔑の視線とともに自らの身を地へと降ろした。 生首だけになった「蠱惑」は、激しく狼狽する。 自分が首を跳ね飛ばされた過程や、嬉しそうにこちら側を見ている「永遠殺し」そっくりの女のことなど、どうでもよかった。 「し、し、死ぬ!!首を、早く首を!!!!」 いくら体内の寄生虫が体組織を修復してくれるとは言え、肝心の首が胴体と離れてしまっていては何の意味も無い。目からは、 血とも涙ともつかない液体が流れ始めていた。
「・・・しまいや」 「煙鏡」が、自らの靴底を「蠱惑」の頭に乗せる。 自分が何をされるのか。間近に迫る死の恐怖が、首だけの「蠱惑」に必死の命乞いをさせる。 「頼む、やめてくれころさないでくれ、お願いだから…」 「ほな、さいなら」 スイカ割りの踏むように。 あっけなく、「蠱惑」の頭は踏み潰された。 頭蓋は割れ広がり、中の髄液と血液のミックスが飛び散る。破壊された骨の隙間から、灰色の組織がだらりと物悲しげに流れ落ちた。 「これで、席が一つあいたな」 「て言うか…オエエエエエエッ!!!!!」 「永遠殺し」そっくりの女、彼女はその顔を徐々に元の「金鴉」のものに変化させると同時に。 吐いた。体を屈ませ、痙攣させ、激しく嘔吐を繰り返す。 「ちっくしょ、おえええ、あの血クソ不味!!もう二度とおばちゃんの力は、おえええ、使わないっ、げろおおおっ!!!!!」 「ははは、体がもたんのやろ?あんま調子こいて身の丈に合わん技、使わんほうがええで」
降って湧いたような、惨劇。 居合わせた幹部の誰もが、目を疑う。 まだ尻に殻がついたひよっ子幹部が、組織の古参をあっという間に葬り去ってしまった。その事実を、受け入れられずにいた。 特に、「蠱惑」に育てられ、可愛がられた人物は。 「え、あれ。いちーちゃん、死んじゃった…?」 放心したように遠くを見つめていた、「黒翼の悪魔」。 頭の中がうまくまとまらない。蠱惑、問題児の二人、毒虫、毒の飛沫、鮮血、穿つ銃弾、そして、生首。死。どうして? 時の流れ が、繋がらない。 彷徨う視点、しかしそれはやがて一つのところに落ち着く。 一仕事を終え、まったりとしている二人の少女のところに。 「あんたたちが、いちーちゃんを」 すうっと、音もなく立ち上がる「黒翼の悪魔」。その背中には体に流れる禁忌の黒い血の片鱗である、蝙蝠の翼が大きく張り出していた。 「裕ちゃん、まずい!!!」 それをいち早く見つけた「詐術師」が、大きく叫ぶ。 だが、「首領」は自らのかつての名前が呼ばれるような緊迫した事態にも関わらず。例の二人に話しかけた。
「なあ、あんたら」 「な、なんやねん」 強がりつつも、「煙鏡」は怖気づいていた。そして、知っていた。 あらかた吐き終えた「金鴉」もまた、本能的に何かを察知していた。 「言うたはずやろ。次は、ないってな」 鈍い、それでいて空間を揺るがす音。 「首領」と「金鴉」「煙鏡」の間の空間に、黒く大きな亀裂が走る。 あらゆるものを飲み込む、空間の裂け目。「首領」の持つ能力、「空間裂開(スペースリパー)」が発動したのだ。 強烈な吸い込みが、二人の悪童を黒の彼方へ引き寄せる。 もう、逃れる術はない。 「ちっくしょおおおおおお、ババア、覚えてろよおおおおおお!!!!!!!!!!」 「くそ、こないなことして、ただで済むと思たら、大間違いやで!!!!!!!!!」 見えない手が二人を捉えて引きずり込むかのように。 「金鴉」と「煙鏡」は、ここではないどこかへと消え去ってゆく。 再び空間全体を揺さぶるような音とともに亀裂はゆっくりと閉じていき、そして何事もなかったようにその存在を消した。
しんと静まる会議室。 おいそれと口を開けるような状況ではないことは、誰もが理解していた。 そんな中、ただ一人、冷静に事の成り行きを見守っていた「不戦の守護者」が訊ねる。 「『首領』。会議は」 「…解散や。次回の日程は、追って伝える」 それで、全てが終わりだった。 首領の言う事は、絶対。それが、ダークネスという組織においての不文律。 「黒翼の悪魔」は。怒りの行き場をなくしたまま呆然とその場に立ち尽くし。 「銀翼の天使」は。目の前で行われた殺戮劇に組織への不信を深め。 「詐術師」は改めて「首領」の恐ろしさを実感し。 「永遠殺し」は、短時間の間に自らの力と同種の力が働いたことに感づいていた。 後に「鋼脚」「黒の粛清」と呼ばれることになる二人の少女たちは。 組織の闇の深さを知る。彼女たちが心を闇に食われるまで、そう時間はかからなかった。 会議室に渦巻いた様々な感情。 それらは、「首領」が率先して部屋を出ることで、霧のように散りそして消えていった。
● 首領の部屋。 先ほどまでの惨劇をまとめ終えた、組織の長。設けられた重厚な長椅子に座ると、思わず深いため息が出た。 「なんかおばさん臭いなあ」 部屋の中には、「首領」と。煌びやかな幾重にも重ねられた着物を身に着けた黒髪の女性。全ての未来を見渡す、「不戦の守護者」。 「うっさいわ。あんな見世物見せられたら、誰でも老けるっちゅうの」 「『蠱惑』を見殺しにしたの、わざとっしょ?」 おどける「首領」に、守護者が核心を突く一言。 あんたにはかなわんわ、とでも言いたげに「首領」は肩を竦めた。 「『蠱惑』は組織からの独立を画策していた。確かそれは裕ちゃんには伝えたよね。そこで裕ちゃん、いや、『首領』は。速やかに、 それでいて『合法的に』彼女を消す方法を考えた。それが、問題児二人の幹部昇格」 「ああ。全てはうちの読みどおりやった。気の短い、見栄張り。それと歯止めの利かないクソガキども。アホみたいに、うまくいっ たわ…」 守護者がそっと、目を伏せる。
「圭ちゃん…『永遠殺し』には本当のこと、言ってもよかったのに」 「あかん。あの子は事のほか『蠱惑』を可愛がってたから。それに会議の中で公開処刑なんて、真面目なアレが聞いたら鬼瓦みたい な顔して抗議するに決まってるわ」 「下手したら組織を二つに割りかねない事態。その選択は正解。カオにも、『蠱惑』が『銀翼の悪魔』を引き連れて組織に反旗を翻 す未来が見えてたからね」 「そうなったら、血で血を洗う抗争の幕開けや。理想を叶えるどころの話やない」 「首領」はその体を長椅子に埋める。 何かの為に別の何かを犠牲にする、そんなことは何度もやってきた。だが、いつまで経っても、慣れることはできない。 「…血で血を洗う抗争、ね。まるで、どこかで見てきたみたい」 ぽつりと、そんなことを漏らす「不戦の守護者」。 「首領」は、もたせ掛けた体をゆっくり起こして、言う。 「まさか。未来視やあるまいし」
520 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 08:38:09.04 0
● その後、ダークネスの本拠地は海上の要塞から別の場所へと移された。 本拠地跡は、直後に就任した二代目科学部門統括によって専用の研究所として再利用されることとなる。 一方。「首領」によって放逐された二人の問題児は。 時空の狭間で気の遠くなるほどの長い時間を過ごした後、関東近郊の隔離施設に幽閉される。不意打ちに近いものはあったとは言え、 幹部を抹殺したその能力。だがそれは組織によって必ずしも有用なものとは言えなかった。そして今日まで、誰一人として彼女たち の解放を唱えるものはいない。 隔離施設の地下深くから、嘆きの声が木霊する。 昏く、黒い。魂を引きずり込むような、叫びが。
521 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 08:44:29.92 0
522 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 12:35:09.49 O
>>521 更新代理乙
最後の中澤さんの言葉がまた伏線になったりするんでしょうか
本編も楽しみにしてます
523 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 14:41:14.38 O
読む前保全
524 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 15:51:14.61 O
ほ
525 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 17:20:41.11 0
さあ、いこうか。
526 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 18:55:57.38 0
あげ
527 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 19:45:36.00 O
ほぜ
528 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 20:15:42.03 O
先代サブリーダーと永遠殺しが大乱闘
529 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 20:48:01.35 0
上体反らしはガキπの出番
530 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 21:10:53.89 O
いやーガキπでかすぎていろいろ不利だわぁ 高飛びのバーに引っ掛かるし
531 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 21:28:18.03 0
『ワクテカ Take a chance』 〈どれが本気で〉 1−1 《さゆ、小春と戦いたいって、本気なの? 小春、そっちにいた頃より、かなり強くなってるよ》 スクリーンの中のマルシェが、怪訝そうな顔で道重さゆみに問う。 さゆみは、眉を吊り上げ、黙っている。 《どうやら本気みたいね……。分かった。小春に聞いてみるから、ちょっと待ってて》 数分後、闘技場の中央で、さゆみと久住小春が対峙した。 「シゲさ〜ん、そんなにカッカしないでくださいよ〜。 二人を飛ばしたのは、きっかが勝手にやったことっすから。 小春に八つ当たりするの、やめてくれませんかね〜」 さゆみは何も言わず、右足を前に踏み出す。 「……しょうがないっすね」 小春はやれやれという顔で、右手をピンと前に伸ばした。 開いた五本の指の間を、蒼白い光が遊ぶように跳ねる。 「シゲさんを殺すと上の人から叱られるんで、その一歩手前でやめといてあげますね」 余裕綽々の小春を睨みながら、さゆみは白い指先をポケットに滑り込ませた。 取り出されたのは、お菓子が入っているらしい小さな袋。 「……!?」 小春の瞳に動揺が走る。 さゆみは袋を破り、中から溶けかかった小さなチョコレートを取り出した。 袋が床に無造作に投げ捨てられる。 小春の目が、そこに書いてある文字を確認した。 「いやあああ!!」 小春は突然しゃがみこみ、両手で頭を抱えた。
1−2 「小春?」 指令室のマルシェは、カメラをズームアップして袋の文字を読んだ。 (そういう……ことか……) そこにはポップな字体で「ウイスキーボンボン」と書いてあった。 さゆみはチョコレートを奥歯で美味しそうに咀嚼しつつ、小春にゆっくり近づいていく。 小春の特殊能力が暴走を始めた。 小春の体が蒼白く光り、眩い電光を四方へ発射する。 一方、さゆみの体もピンク色の光を放ち始めた。 《小春!落ち着きなさい!》 マルシェの叫びは、雷鳴の轟音に掻き消され、小春の耳に届かない。 次々と放たれる稲妻の一筋が、さゆみの体を直撃した。 だが、その青白い光は、桃色の光の表面を滑り落ち、床へ抜けてしまった。 さゆみと小春の距離は、すでに5mを切ろうとしている。 「子どもみたいに怯えちゃって、スー、小春、可愛いの、スー」 「ヒ、ヒイイイイイイ!」 小春を包む蒼白い光球が、さらにその直径と輝度を増大させる。 稲妻はその数を増し、その一本一本が龍のように洞窟内をのた打ち回る。 壁が、床が、天井が、龍の牙によって、黒く焼かれていく。 電光は、鞘師たちにも襲い掛かった。 鞘師がれいなを、生田が譜久村を、石田が工藤を背負い、それぞれ必死に躱す。 スクリーンの下にいるUも、俊敏に電光を避けつつ、小春を心配そうに見つめている。 マルシェのいる指令室では、あちこちからアラーム音が鳴り響いていた。 小春の放電が、様々な精密機器に深刻なダメージを与えている。 マルシェは焦った。 (まずい……、このままじゃあ、テレポートジャマーにも影響がでる……) マルシェは、マイクを握った。
1−3 《U!小春を飛ばして!》 Uは、待ち構えていたかのように、すぐに右手を前へ伸ばした。 「きっかり、10秒ちょっとー!」 Uの指先から、れいなや譜久村たちを消したあの光が放たれた。 闘技場の小春とさゆみが、黄色い光に包まれる。 光はすぐに収束したが、そこに二人の姿は無かった。 鞘師がれいなを床に下ろして息を整えていると、光とともに二人が戻ってきた。 ただし、その様子は、消える前とは全く違っている。 小春は、疲労困憊といった顔つきで、闘技場の中央に棒のように突っ立っている。 一方、さゆみは、小春の足元にうつ伏せで倒れていた。 「道重さん!」 鞘師の声に、さゆみの右手の指先がピクッと反応した。 マルシェが小春に尋ねる。 《小春、大丈夫?どうやってさゆを倒したの?》 「小春は無事です……。あっちでのことは、後で報告します……。 とにかく、疲れました……。今日はもう帰らせてください……」 《……そう、分かったわ。じゃあ、今度ゆっくり教えてちょうだいね》 「はい……。それじゃあ、失礼します……」 そう言うと、小春は橋を渡って闘技場から出た。 Uが慌てて小春に肩を貸す。小春はそのまま、扉の奥へ消えて行った。 さゆみを介抱している鞘師達に、マルシェが声をかける。 《次が最後の実験よ。代表を一人決めて》 鞘師が立ち上がり、スクリーンに向かって言った。 「申し訳ありませんが、これ以上実験には協力できません」 関根梓が目を大きく見開き、鞘師の顔を見た。
〈どれを信じる?〉 2−1 《そっか……、さゆとれいながこうなっちゃったら、さすがに不安よね……。 分かったわ。あなたたち、もう帰っていいわよ。最後の実験はNo.6を使うから》 「里保ちゃん、ちょっと待って!」 鈴木が鞘師の前に立つ。 「最後の一人って、あのみーこっていう人だと思う。私、あの人と闘いたい!」 「香音ちゃん……。香音ちゃんの気持ちは分かるよ。でも、今の状況を考えてみてよ」 「里保ちゃん、お願い!私、あの人にどうしても勝ちたいの!」 鈴木の懇願する姿を、鞘師は困り顔で見つめている。 結局鞘師は、鈴木の志願を受け入れた。 鈴木は、最後の実験相手として残ることになった。 また、石田も、鈴木を心配して、そこに残ることを申し出た。 さらに、壁に背を預けて座っていた譜久村も、応急処置のために残ると言ってくれた。 一方さゆみは、戦いで負ったダメージが大きいらしく、生田の背中でぐったりしている。 また、工藤とれいなも、目を閉じて全く動かない。 この秘密研究所は、日本近海のとある無人島にある。 鞘師達が帰るには、船で海を渡るしかない。 マルシェは鞘師に、入り江に泊めてある船を使うように言った。 船の操舵室にある赤いボタンを押せば、自動操舵で近くの港へ向かうらしい。 だが、鞘師は、瞬間移動で帰ることをマルシェに願い出た。 れいな達を早く病院へ連れて行きたいというのがその理由である。 実験を早く再開したいマルシェは、ごねる鞘師の申し出を、渋々受け入れた。 マルシェは、関根梓に、いったん洞外に出て鞘師達を送り帰すように命じた。 《No.6はすぐに戻って来るんだよ。じゃないと、粛清人に処分されちゃうからね》 鞘師が工藤を、生田がさゆみを、飯窪がれいなを、それぞれ背負って帰途についた。
2−2 《それじゃあ、最後の実験を始めましょ!》 スクリーン下の扉が開き、一振りの日本刀を持った少女が現れた。 頭には鈍色のヘッドギアが嵌められている。 「鈴木さん!頑張ってください!」 石田の声援を背中に受けながら、鈴木は緊張した面持ちで闘技場へ向かった。 戦いが始まった。 日本刀の少女、仙石みなみは、鞘を投げ捨て、鈴木に猛然と斬りかかった。 鈴木はすぐに物質透過能力を発動し、仙石の斬撃をすり抜ける。 そして、わずかな隙を伺い、強烈な打撃を繰り出す。 もちろん、仙石もダークネスの研修生として、厳しい戦闘訓練を受けてきている。 一撃必殺の鈴木の重い蹴りを、舞うようにかわし続ける。 両者とも一歩も引かないまま、時間が3分、4分と過ぎていった。 鈴木の肩が大きく上下する。 もう体力が限界のようだ。 鈴木が退院したのはつい昨日のことである。 闘技場を見つめる石田の目つきが、険しくなっていく。 さらに数分が過ぎ、とうとう鈴木の足が止まった。 それを見た仙石は、高速の斬撃の準備に入る。 鈴木は両腕を胸の前に構え、右手首の腕時計をちらっと見た。 鞘師は、仙石が集中し始めてから10秒後に加速攻撃が発動すると言っていた。 鈴木は透過能力を最長で3秒間ほど持続できる。 ということは、8秒過ぎに透過能力を発動すれば、斬撃は完全に躱せる。 文字盤と仙石、両方を交互に見つつ、鈴木は心の中で数を数えた。 (…………4、…………5、……!?) 鈴木の視界から仙石の姿が消えた。
2−3 鈴木は慌てて透過能力を発動した。 直後、左後方に仙石の気配が現れる。 鈴木のTシャツの左脇腹辺りが、ゆっくりと大きく口を開けた。 《香音ちゃん、驚いた?No.1には最初から薬を投与してあったの。ごめんね〜》 スクリーンのマルシェは、楽しそうにそう言うと、顔を横へ向けた。 鈴木は、腹部から血を噴き出しながら、前へ傾いていく。 確かな手応えが闘いの終了を確信させたのか、仙石は鈴木の方を振り返らない。 だが、鈴木は倒れなかった。 右足を大きく前へ踏み出して体を支えると、後ろを振り返って猛然と駆け出す。 そして、仙石へ背後から跳びかかり、右腕で仙石の頭部を抱え込んだ。 鈴木は、そのまま全体重を乗せ、仙石の額を大理石の床に叩きつける。 鈴木の腕の中で、何かが砕けた。 一方、マルシェは、傍らに置いたノートパソコンの画面の数値を夢中で分析していた。 「ほう、6秒を切ってる!かなり縮まったわね。でも、加速度は変わらないのか……」 データを確認し終わると、マルシェは、ふたたびメインのモニターへ視線を向けた。 そこには、奇妙な場景が映っていた。 仙石と鈴木が、縦に並んでいる。 鈴木は黒く滲んだ緑色のTシャツの脇腹を抑え、スクリーンの少し下を睨んでいる。 その後ろに立つ仙石は、鈴木の背中へ体をぴったり押し付けていた。 「何……してるの……?」 よく見ると、仙石の額にヘッドギアは無く、その残骸と思しき物が床に散乱している。 右下の別の小さなモニターには、黄色く輝く譜久村の姿が見える。 マルシェの頭脳が、瞬時にこの状況を分析する。 (しまった!) だが、すでに遅かった。 仙石の姿が消え、同時に鈴木が超高速で前へ跳びだす。 マルシェが衝撃に備えて身構えるのと、意識を失うのとは、ほぼ同時だった。
〈誰が本気で〉 3−1 (みずきちゃーーーーん!) 仙石の加速能力によって射出された鈴木は、心の中で絶叫しながら洞窟の側壁へ飛んだ。 そして、透過能力を発動し、厚さ20m程の岩盤を時速100kmの速度ですり抜けた。 暗転した視界が、すぐまた明るくなる。 光の中に、白衣の女性が見える。 透過能力を止めた鈴木の体が、その女性を突き飛ばした。 それでも、鈴木の速度は低下しない。 指令室の奥の壁が眼前に迫る。 突然、鈴木の体が、強く後ろへ引っ張られる。 Tシャツの背中に入れておいた小石を、石田が遠隔操作したのだ。 だが、まだ鈴木の体は止まらない。 石田の小石限定のサイコキネシスも、これだけ距離があると、力が落ちてしまう。 結局、鈴木の体は、奥の壁に激しくぶつかった。 数秒後、目の前の状況をやっと理解した戦闘員たちが、慌てて鈴木に銃口を向ける。 鈴木は、激突の痛みをこらえ、急いで透過能力を発動させる。 その直後、無数の銃弾が鈴木の体を透過し、大理石の床を抉った。 鈴木は高速で匍匐前進し、指令室のコンソールへ向かう。 そして、何十個もあるスイッチに目を走らせる。 (あった!) 鈴木の目が輝く。 同時に、鈴木の背中に衝撃が走る。 透過能力を持続できる3秒間が、終わってしまった。 銃弾によって肉と骨を砕かれながら、鈴木は、必死に右手を伸ばす。 人差し指と親指で、工藤が教えてくれた、銀色のスイッチをつまむ。 指先に力を込めて90度ひねると、カチッという手応えがした。 そこで、鈴木の意識は、完全に途切れた。
3−2 「………………!か…………!」 (……ん?……) 「…のんちゃ…!しっ……して!」 (……あったかいなあ……なんか、日向ぼっこしてるみたい……) 「香音ちゃん!目を開けて!」 (えっ!?私、寝坊しちゃった!?) 鈴木は、瞼を開けた。 ピンク色の光が眩しい。 ぼやけた視界の中に、二つの大きな瞳が浮かび上がった。 「ありがとう!かのんちゃん!ほんとにありがとう!」 (あ……、道重さんだ……) 鈴木は、ようやく状況を理解した。胸に安堵の思いが湧き上がる。 「道重さん……、道重さあああん!」 普段滅多に出さない黄色い声を挙げ、鈴木はリーダーの胸にしがみ付いた。 さゆみも、力一杯その体を抱きしめた。 あの時、鈴木が命を賭して回したのは、瞬間移動妨害装置のスイッチだった。 スイッチ上のOFFの文字が光るやいなや、それを千里眼で「見」ていた工藤が叫んだ。 「切りましたっ!」 さゆみ、生田、鞘師、工藤、そして関根梓の5人は、8匹の犬が作る円の中にいる。 さゆみが梓を見ると、梓はすでにボス犬のチョッパーへ合図を出していた。 鳴き声とともに、さゆみ達は鈴木のいる指令室へ飛んだ。
3−3 指令室に着いた5人は、それぞれ、自分の為すべきことを行った。 鞘師は一陣の旋風のように駆け回り、戦闘員を次々と殴り倒していく。 生田は、精神破壊波を放って、鞘師を援護する。 さゆみは、鈴木の治療に全力を傾ける。 工藤はコンソールを操作し、闘技場の譜久村たちを指令室へと誘導する。 梓は、新井愛瞳の拘束具を外し、傷だらけのその体を優しく抱きとめた。 暫くして、譜久村、石田、そして日本刀を手に持った仙石が、指令室へ駆け込んできた。 すでに、ダークネスの戦闘員は、全員が床に倒れて呻き声を上げている。 さゆみは、愛瞳を治療していて、梓がそれを見守っていた。 「香音ちゃん!」 譜久村の声が聞こえると、鈴木は寝たまま、愛嬌のあるいつもの笑顔を見せてくれた。 気絶していたマルシェが目を覚ました。さゆみ、生田、鞘師の三人が見下ろす。 「マルシェ、あなたの負けなの」 「……やるわね……、完全に騙されたわ……」 「梓さんの仲間を解放しなさい。そしたら命は助けてあげる」 マルシェの血の滲んでいる口角が上がる。 「……さゆ、これで私に勝ったつもり?」 「え?」 マルシェの指がベルトのバックルに触れる。 すぐに鞘師がマルシェの手を払う。 だが、マルシェの頬の笑みは消えない。 「マルシェ!何をしたの!?」 「切り札はねえ、最後まで取っておくものだよ」 マルシェの言葉が終わるのと同時に、鞘師が床に崩れ落ちた。 続いて、譜久村や石田たちも次々と倒れていく。鈴木もゆっくりと瞼を閉じた。 薄れゆく意識の中、さゆみが最後に見たのは、立ち上がるマルシェの姿であった。
540 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 21:38:04.46 0
〈Ending:誰を信じる?〉
静まりかえる指令室、立っているのはマルシェと梓の二人だけだった。
梓の瞳からは、理性の光が失われている。
「No.6。No.1とNo.7を連れて、A−1ラボの実験室へ行け。
着いたら、そこにいる他の験体を全て支配し、次の指示があるまでそこで待機」
梓はコクリと頷き、倒れている仙石と愛瞳に手をかざす。
二人は目を開け、無表情で立ち上がり、梓とともに指令室から出て行った。
梓に向かって懸命に吠えていた八匹の犬も、諦めたように三人について行った。
マルシェは脇腹をさすりながらつぶやいた。
「いてて、あばら折れてるかな?……。しかし、すっかり油断しちゃってたわ……。
No.6の脳に細工しといて、ほんと良かった……。」
マルシェは床に寝ている戦闘員の一人の頭を蹴とばした。
「ねえ、いつまで寝てんのよ!さっさと起きなさいと、殺すわよ!」
戦闘員が一人、また一人と、よろよろ立ち上がる。
「そんな体じゃもう役に立たないから、とっとと本部へ帰りなさい。
後は私一人でやるから。……あ、言っとくけど、全員懲罰だから覚悟しといて!」
戦闘員たちは、傷の浅い者が重傷者に肩を貸し、ぞろぞろと部屋から出ていった。
指令室には、マルシェと意識の無いさゆみ達だけが残った。
マルシェは、足元に倒れているさゆみを見下ろした。
「さて、と……。せっかくだし、さゆからも頂いておこうかな……」
そう言って、マルシェは目を細めた。
そして、口元に垂れている血を、真っ赤な舌でぺろりと舐めとった。
―おしまい―
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
以上、『ワクテカ Take a chance』でした。
>>328-337 『HELP!!』の続きです。
次回は、異次元に飛ばされていたときの、フクちゃんとどぅーの様子をお送りします。
541 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 21:42:50.61 0
香音大活躍!ここまで全面的に戦闘してるのって初じゃない?てか久しぶりにピンクの悪魔が…w
542 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 21:48:16.43 O
透過能力の使い方が絶妙だな ふくどぅーの様子も気になる
543 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 23:17:58.49 0
やっぱバトルが盛り上がると面白いな 作者さん乙でした!
544 :
名無し募集中。。。 :2013/08/20(火) 23:57:28.05 O
>>540 意外な活躍と意外な展開ごちそうさまでした
良質な話が来るとレスも増えるしありがたいね
545 :
名無し募集中。。。 :2013/08/21(水) 00:24:16.68 0
自分におつかのん!頑張ったんだろうね
546 :
名無し募集中。。。 :2013/08/21(水) 01:18:19.20 O
寝るナント
547 :
名無し募集中。。。 :2013/08/21(水) 02:33:21.21 O
おやさゆみん
548 :
名無し募集中。。。 :2013/08/21(水) 07:01:03.81 0
おはよう諸君
549 :
名無し募集中。。。 :2013/08/21(水) 08:02:47.34 O
ねみー
550 :
名無し募集中。。。 :2013/08/21(水) 11:25:58.44 0
昼前保全
551 :
名無し募集中。。。 :2013/08/21(水) 13:25:52.05 O
暑いね
552 :
名無し募集中。。。 :2013/08/21(水) 15:45:11.10 O
ぬうん
553 :
名無し募集中。。。 :2013/08/21(水) 17:17:19.19 0
ほ
554 :
名無し募集中。。。 :2013/08/21(水) 20:28:53.98 O
夜保全
555 :
名無し募集中。。。 :2013/08/21(水) 21:38:10.18 O
まだまだ保全
556 :
名無し募集中。。。 :2013/08/21(水) 22:24:07.98 0
週の中だるみ保全
557 :
名無し募集中。。。 :2013/08/21(水) 22:52:57.62 O
良作は週末にやってくるのさ
558 :
名無し募集中。。。 :2013/08/21(水) 22:59:59.75 0
したらばに新作とテンプレきてるよ
559 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 00:22:01.81 O
ねるなんと
560 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 01:21:35.21 0
♪テレポーテーション 心の翼が ♪テレポーテーション 今 時間(とき)を飛ぶ ♪私だけが 私の恋を Ah 未確認 「コラー!人様んちの屋根で遊ぶんじゃなーい!!」 「エスパー○美ですか!?」 「・・・なんで知ってるんだろうね?」 (あんたもな) 『イヒヒ!』 【瞬間移動〜恋の未確認〜】発動中! ホゼナント(年齢ばれるなこりゃw)
561 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 02:30:21.51 O
保全乙 関係ないけど某所にエスパー舞美なんて話が転がってたのを思い出した
562 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 07:23:36.22 O
おは
563 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 07:29:11.02 0
エスパー真希も聞いたことある
564 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 09:00:17.01 O
娘。能力バトルの原点だよね>エスパー真希 そんなこんなでおはよう
565 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 11:00:01.59 O
ほぜなん
566 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 11:30:11.93 0
能力バトルねえ・・・
567 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 11:51:12.61 O
最近勘違いしてる人がいるけどリゾスレって能力バトルの話じゃなかったんだよね ちょっと苦言を呈してみました
568 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 12:57:25.15 0
何言ってんだこいつ
569 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 13:06:41.56 0
>>564 バトルしてたっけ?
読んだの十年近く前だからあんまり覚えてないけど
570 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 13:18:26.67 0
>>569 バトル的な要素もあった気がするけどそれは全然メインじゃなかったような
571 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 13:21:40.60 O
>>567 またスレの最初はどうのこうのってやつですか
リゾスレはこうであるって定義なんかないと思うけど
>>566 さんもそういう意味で言ったんじゃないだろうに
572 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 13:36:26.59 0
>>570 ggったらでてきた
2001年家はまだテレホだったなー
573 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 14:43:53.12 0
まずテンプレに超能力設定いれるなよ
574 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 14:48:55.92 0
超能力の先入観あるから広がりがない =マンネリ =自己満足 =面白くない
575 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 15:43:15.41 0
>>572 テレホwあったねえ
したことはないけど
たった10年ちょい前のことなんだね
今のネット環境がなきゃファンやれてなかったろうなあ
576 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 15:55:12.71 0
>>575 たった10年て・・・
生田と同い年の俺からしたらすんごい昔のことだよ
577 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 16:05:07.71 0
そんな相対的な話してるんじゃないよw
578 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 16:56:29.75 O
生田と同い年のリゾスレ住人がいることにまず驚いた
579 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 17:10:23.39 0
5年半くらい続いてるスレだから始まったときは小学生だね
580 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 17:16:29.34 O
じゃあじっちゃんホゼナンターが老骨に鞭打ち保全だぞい
581 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 19:13:22.77 O
ほ
582 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 20:12:46.21 O
支援
583 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 21:17:42.11 0
>>239-247 の続きです
●
さくらは。
吐き気さえ催すような外界の空気に苦しめられていた。
平然として街を歩く、能力を持たない人々。
自分との明確な違い。街を歩けば歩くほど、埋めがたい溝を自覚する。
自然と、足が人ごみを避けるように向いてしまう。
なぜ、博士はわたしをこんな得体の知れない場所に放り出したのか。考えれば考えるほど、答えは思考の迷宮へと迷い込んでゆく。
「やあ、お嬢ちゃん」
そんな時だった。
スーツ姿の男に声をかけられたのは。
「え、あの」
「どうしたの?迷子にでもなったのかい?」
髪をぴっちりと分けた、眼鏡の男性。
その表情は微笑を湛えている。
「この街ははじめて?歩き通しで疲れたろう、おじさんいいところ知ってるんだ。ちょっと休憩しようか」
だが、その薄い硝子の向こう側は。
肉食獣の、目。嫌悪感さえ覚えるような、濁った瞳。
「いや、けっこうです」
「遠慮しないで。悪いようにはしないから」
柔らかな言葉とは裏腹に、男はさくらの細い腕を強引に掴む。
その瞬間、さくらの中で強烈な殺意が芽生えはじめた。
男の手を振りほどき、左足に強烈なローキック。 痛みに屈んだところを、狙い澄ましたような鋭い中段蹴り。標的にされた頭が受ける、致命的なダメージ。 男をいかに手早く殺害するか。その過程が素早く頭の中に構築される。 黒い意思が、全身を包み込んだ。 だが一方で、それに抗う思いもある。 むやみに人を殺めてはいけない。命を奪うのは簡単だ。けれど、一度奪えばそれはもう元には戻らない。 せめぎ合うそれは、徐々に黒のほうへと傾きはじめる。 思わず、心の叫び声をあげた。 助けてお願い、これ以上わたし……!! ぎりぎりとさくらの細腕に込められていた力が、ふっと抜ける。 何事かと思い、さくらが見たものは。 「おじさん、こんなところで何してるの?」 男の腕を捻り上げている、少女の姿。 斜めに梳かれた前髪から覗く、冷静な瞳がそこにはあった。 「な、何をって!俺はただ、この子が!いて、いててっ、その腕をは、離せっ!!」 男の必死の叫びに、あっけなく腕を離す少女。 勢いあまって男は派手に路上に転がり込んだ。 「大丈夫?怪我はない?」 「はい、大丈夫です…」 少女がさくらに声をかける。 さくらは直感で少女に、何かを感じる。 もしかして、この人。
「くそ、予定変更だ。お前ら、こっちに来い!」 男が立ち上がるとともに現れた、数人の柄の悪そうな男たち。 その数、ざっと四人ほど。 「まあいいじゃん。攫うガキが一人増えただけだ」 「最近うちの組もシノギが少なくてね。心配するな、ちょっとエッチなビデオを撮るだけだ」 「ロリものは裏で高くサバけるからなあ、ひゃはは」 「お前の場合はその手の趣味入ってんだろ?」 「俺たちも事を荒立てたくないんだ。おとなしくついて来な」 リーダー格の男が眼鏡を外し、髪をかき乱す。 緩めたネクタイ、ワイシャツの襟元からは禍々しい模様の入れ墨が覗いていた。 ついさっきまで貼り付けていた偽善の笑みはもうない。男本来の、凶悪な人相。 少女二人に、大の大人が五人がかり。 普通なら、抵抗する気さえ失せるような状況。 だが。少女はふう、とため息をつくと手にしていた竹刀のような何かに手を添え始めた。 「剣道少女ってか?そんなガキの遊びが俺たちに通用するとでも!!」 少女は、力強い一歩を踏み出すと同時に、先頭に立っていたリーダー格の頭を上段から叩く。 一撃で気絶した男がゆっくりと崩れ落ちるその間に。 流れる水のように緩やかな、それでいて目に止まらない動きで。 左に立っていた男の足を薙ぎ、それから背後に回り最後尾の男の胴に強烈な一撃を叩き込む。 怒涛の攻撃に気づいた二人の男。その手は自然と懐に忍ばせた短刀に伸びていた。
だが、それを出す間もなく。 懐に当てた手が、少女の持つ得物による一撃の餌食となる。粉砕された手骨、あまりの痛みに立つこともできず、絶叫を上げて蹲った。 最後に残された男は、短刀を抜くのが間に合った。 ぎらついた銀の刃を、少女に向ける。 しかしながら、全てが遅かった。曲がりなりにも広域暴力団指定組織に属する者としてのプライドを本能が押さえ込んだ、その瞬間に。 武器は叩き落とされ、そして首筋に剣戟が打ち込まれていた。 最初に攻撃を受けた男が地を這ったその時に、全てが終わっていた。 いかに男たちがやくざと呼ばれる武闘派の集団とは言え。 戦乱の世から、こと海上では千の兵にも匹敵すると謳われし「水軍流」。 その水軍流を操る、「鞘師」の名を継ぐ少女の前では赤子同然とも言うべき結果。 鮮やかな、立ち回り。 里保は、愛刀を鞘を抜かない状態で自分よりはるかに大柄な男たちをねじ伏せた。 さくらは自分の直感が正しかったことを確信する。 この人、能力者だ。 何の能力かはわからない。けれども、目にした身のこなしはさくらに強くその事実を訴えかけていた。 しかし今は。そんなことよりもまず。 里保がさくらの前に姿を現し、男たちを相手にした瞬間から渦巻いていた疑問。 それは、そのまま里保の問いかけとなる。 「どうして、助けてくれたんですか?」 里保は一瞬びっくりしたような顔をしたが、すぐに微笑みながら、 「心の叫びが、聞こえたから」 とだけ言った。
● 人を助ける。 さくらの中にはない、行動原理だった。 先ほどの里保の言葉は、彼女にとってまったく答えになっていない。だからと言って、それを問いただすのは相手に不審がられる可能性 がある。 駅に向かって、下り坂の坂道。 顔を下に向け考え込んでいるさくらを見て、里保はさくらがチンピラに襲われ精神的にショックを受けているものと理解した。 こんな時、他のみんなならどうしてるだろう。 戦闘能力ではれいなや、さえみ覚醒時のさゆみに次ぐ実力を持つ少女も、ことメンタルケアに関しては下から数えたほうが早い。 香音ちゃんなら笑わせて和ませるのかな。はるなんもそういうのは得意そうだ。フクちゃんはよく泣いている小さい子を抱きしめてるし。 えりぽんの寒いネタも1周周って効果的かも。けど、うちは…… 「赤の粛清」に喫した、苦い敗戦。 しかし新たな意志を胸に、里保はリゾナンターとして再び立ち上がった。 それからは、精力的にリゾナンターとしての仕事を全うしている。目の前の問題をひとつひとつ、解決すること。それが先に進む道だと 信じていた。そういう意味では今のこの状況も、解決すべき一つの問題。 「ねえ」 「何ですか?」 「名前、何て言うの?私は里保。鞘師里保って言うの」 そう言えばまだ名前も名乗ってなかった。 お互いに自己紹介してないのに、メンタルケアも何もあったものではない。 それとともに。ある妙案が浮かんだ。
「私、さくらって言います」 「さくらちゃん。かわいい名前だね」 道を照らすオレンジがビルの陰に遮られ、そのタイミングで里保は大きく腕を伸ばして背伸びする。そして、その体勢のままくるりと振り返った。 「あのさあ。うちが知ってるいい喫茶店があるんだけど。寄ってみない?」 「喫茶店…ですか?」 里保が導き出した結論。 それは、さくらを喫茶リゾナントへ連れて行くこと。 あそこならば、きっと彼女を笑顔にすることができる。今の時間なら、仲間たちも帰って来ているはず。ここから場所も近い。 問題は、そんな里保の申し出をさくらが受けてくれるかどうかだけ。さすがに会ったばかりの女の子を喫茶店に誘うなんて、どうなんだろう。 だが、あっさりと問題は解決する。 「いいですよ」 「えっ、ほんと?」 さくらは躊躇せずに答えた。誘った里保のほうが拍子抜けするくらいに。 その意図。さくらを助けた里保。人を何の見返りもなしに助ける人間の心理。 さくらはそれをただ、知りたかった。
589 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 21:21:57.43 0
590 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 21:41:59.72 O
おお ついに出会ったか
591 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 22:16:15.89 0
ついに出会いましたねぇ〜喫茶リゾナントでもどんな出会いが待っているのか楽しみ♪(冒頭某小田スレを想像した自分はホゼナンター失格です…)
592 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 22:59:30.25 0
593 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 23:13:32.08 0
昼間スレ伸びてたなぁって思ってたら…
594 :
名無し募集中。。。 :2013/08/22(木) 23:27:48.84 0
>>589 乙です。さくらっきょの心情が良いですな
(5人のおっさん…まさかね)
595 :
名無し募集中。。。 :2013/08/23(金) 00:20:21.32 O
ほぜ
596 :
名無し募集中。。。 :2013/08/23(金) 01:00:05.94 0
なんと
597 :
名無し募集中。。。 :2013/08/23(金) 02:24:31.45 O
寝るのだよ
598 :
名無し募集中。。。 :2013/08/23(金) 07:02:54.69 0
おはよう
599 :
名無し募集中。。。 :2013/08/23(金) 08:36:47.08 O
おはなんと
600 :
名無し募集中。。。 :2013/08/23(金) 11:16:11.98 O
昼前保全
601 :
名無し募集中。。。 :2013/08/23(金) 13:54:16.51 0
あげ
602 :
名無し募集中。。。 :2013/08/23(金) 13:54:39.74 O
保全しかできないホゼナンター参上
603 :
名無し募集中。。。 :2013/08/23(金) 16:18:35.13 0
一雨来そうな空模様
604 :
名無し募集中。。。 :2013/08/23(金) 17:30:56.84 0
保全が出来るオレはホゼナンター(誇)
605 :
名無し募集中。。。 :2013/08/23(金) 19:22:19.68 0
あげ
606 :
名無し募集中。。。 :2013/08/23(金) 19:57:45.20 0
夜しか出来ない俺はホゼナンター半人前
607 :
名無し募集中。。。 :2013/08/23(金) 20:44:10.11 0
Mステ騒ぎに負けるなホゼナンター
608 :
名無し募集中。。。 :2013/08/23(金) 21:27:24.31 0
Mステ嬉しいけど落ちちゃいそうだよね
609 :
名無し募集中。。。 :2013/08/23(金) 21:27:58.12 0
あげ
610 :
名無し募集中。。。 :2013/08/23(金) 21:59:25.63 0
ガキさんがクルクルして以来のMステだもんなあ
611 :
名無し募集中。。。 :2013/08/23(金) 23:05:03.39 0
週末の投稿を待つために落とさせないホゼナンター
612 :
名無し募集中。。。 :2013/08/23(金) 23:18:39.78 O
ほぜ
613 :
名無し募集中。。。 :2013/08/24(土) 00:26:23.15 0
Mステ良かった保全
614 :
名無し募集中。。。 :2013/08/24(土) 01:19:39.84 0
新作来てるのだ!落とすわけにはいかんのだよ!!
615 :
名無し募集中。。。 :2013/08/24(土) 02:59:47.48 O
新作期待おやすみ保全
616 :
名無し募集中。。。 :2013/08/24(土) 06:44:00.73 0
おはようね 転載できなくてごめん
617 :
名無し募集中。。。 :2013/08/24(土) 07:51:40.51 O
ぬん
618 :
名無し募集中。。。 :2013/08/24(土) 09:50:40.32 O
おは
619 :
名無し募集中。。。 :2013/08/24(土) 12:08:46.70 0
忙しいねみんな
620 :
名無し募集中。。。 :2013/08/24(土) 12:09:26.22 O
あちー
621 :
名無し募集中。。。 :2013/08/24(土) 13:58:28.27 O
ほぜ
622 :
名無し募集中。。。 :2013/08/24(土) 15:14:11.27 O
ほぜ
623 :
名無し募集中。。。 :2013/08/24(土) 17:50:43.24 0
夏バテ注意
『ひょっこりひょうたん島』 〈苦しいこともあるだろさ〉 1−1 譜久村聖と工藤遥は、真っ白な砂浜の上に並んで座っている。 燦々と降り注ぐ太陽。 雲一つない青空。 頬を撫でる爽やかな潮風。 バカンスで来るには最高の場所である。 だが、二人の心は、暗く沈んでいた。 古川小夏と森咲樹を倒した譜久村と工藤は、Uによってここへ飛ばされた。 黄色い光に包まれた次の瞬間、二人は、砂浜の上に立っていた。 周囲を見回すと、そこは、青い海に囲まれた無人島であった。 ただし、「島」と言っても、広さは野球場程度しかない。 そのほとんどが砂浜で、中央にわずかな草地と数本のヤシの木があるだけだ。 川はもちろん、泉のようなものも見当たらない。 マルシェは、ここでは時間が500倍の速さで流れると言っていた。 譜久村達と同じ様にここに飛ばされた田中れいなは、10分後に戻ってきた。 譜久村は、砂の上で、5000を60で割ってみた。答えは83で、余りが20だった。 さらに、83を24で割ると、3余り11という答えが出た。 「譜久村さん、ハル達、あと三日はここにいなきゃいけないんですよね……」 「うん……」 「食料も、水も無いんですよね……」 「うん……」 海の水が飲めないことぐらい、譜久村にだって分かる。 譜久村は、工藤がいなかったら絶対泣き出しているに違いないと思った。
1−2 落ち込んでいても仕方ない。二人は生き抜くための努力を始めた。 工藤は、千里眼の能力を使って島の周囲の状況を探った。 しかし、どれほど遠くへ「目」を飛ばしても、青い海しか見えない。 一方、譜久村は、島のあちこちで立ち止まり、思念が残っていないか探ってみた。 すると、砂浜の一角に、れいなの思念を見つけた。 譜久村は工藤を呼び、その手を握って、読み取った思念を共有した。 (吉澤あああああああ!!) (あれ……、吉澤!どこいったと!?……ていうか、ここ、……どこかいな?) (きっとマルシェの仕業やろ。あいつ吉澤との戦いを止めようとしとったし……) (ごちゃごちゃ考えとってもしゃあない!さゆがなんとかしてくれるやろ!) (……おなかすいたなあ。……のど、渇いたなあ) (……おえっ!ぺっ、ぺっ!からっ!まずっ!) (もう!さゆ、早くなんとかしいよ!れいながこんなに困っとるのに!) (すっかり夜になりよった……。いま何時かいな……) (ふわあ……。あれ?れいな、なんで砂浜におると?……そっか、そうやった……) (れいな、何でこんな目に合わないけんと!何かちょー腹立ってきた!) (……わかっとう。自分のせいやね……。さゆが止める声、聞こえとったのに……)
1−3 (愛ちゃんやガキさんにもよく叱られたなあ……) (「れいな、皆の意見も聞かなきゃ!」……「田中っち!落ち着いて!」……) (えりは滅多に怒らんけん、キレられたときは、ちょー怖かった……) (愛佳は、どんな時でも笑ってれいなのそばにいてくれよったなあ……。) (ジュンジュン、リンリン、元気にしようかな……) (さゆ……、さゆぅ…………) そこで思念は終わっていた。工藤が深々と溜息をつく。 「どぅー、どうしたの?」 「……田中さん、ハル達の名前、全然言ってくれませんね」 工藤が悲しそうな表情をする。、譜久村も胸が苦しくなる。 「ハル達、そんなに頼りないのかな……」 二人は、俯いて黙り込んでしまった。 夕暮れの浜辺は、波音がやけに大きく響く。 夜空には、新月から十三番目の月が浮かんでいる。 気温はあまり下がらない。これなら野宿しても風邪を引く心配はないだろう。 ただ、喉の渇きが耐え難い。 譜久村は気を紛らわせるために散歩を始めた。 島の中央にヤシの木がある。しかし、残念ながら実は一つもついていない。 れいなはヤシの実を採れたのだろうか。 譜久村はふと気になって、木の幹に左手をついた。 集中して残留思念を探り始めると、そこから、意外な声が聞こえた。
〈かなしいこともあるだろさ〉 2−1 (おー、やっぱり「きっかワールド」は最高だな〜) (どれどれ……蓋を開けた様子はないな。やっぱり田中さん、これに気付かなかったか) (ここに非常用のカプセルが埋めてあるなんて、教えられなきゃ絶対わかんないよなあ) (さてと、まだ一時間以上あるな。ちょっと昼寝でもしちゃおカナ) 譜久村がパッと顔を上げ、草地で横になっている工藤へ声をかける。 「どぅー!起きて!ここに何か埋めてあるみたい!」 工藤は跳び起きて、譜久村のもとへ走ってきた。 そして、「視線」を木の根元付近の砂の中へ向けた。 「譜久村さん!ここに何かありそうです!」 工藤が指し示したところを、譜久村が手で掘り始める。 工藤もすぐにしゃがんで一緒に掘り進めていく。 50�ほど掘ると、大きなカプセルのような物が現れた。 中には大きなコーヒーメーカーのような機械が入っていた。 「ここ、太陽光パネルですよね。譜久村さん、そこに書いている英語、読めます?」 「えっと……、シーウォーター……デサリ……ナチオン……システム?」 「……『シー』は海、『ウォーター』は水ですよね……。 もしかすると、これ、海の水を飲み水に変える機械じゃないですか!」 「そっか!このタンクに海の水を汲んで……、このコップに飲み水がたまるのかな?」 「きっとそうですよ!とにかく明日太陽が昇ったら、すぐに試しましょう!」 さらに、カプセルをよく調べてみると、底の方から大量のビスケットが出てきた。 月の光が、二人の笑顔を明るく照らした。
2−2 翌朝、二人は、日の出とともに、その装置の電源スイッチを押してみた。 すると、モーター音が鳴り、タンクの中の海水が減って、コップに水が溜まっていった。 譜久村が恐る恐るその水に口をつけてみる。案の定、それは真水であった。 生ぬるくて少しカルキ臭かったが、それは、過去に飲んだどの水よりも美味しかった。 譜久村と工藤は、十数時間ぶりに渇きと空腹から解放された。 元気を取り戻した二人は、他にも何か隠されていないか、改めて島の探索を始めた。 「どぅー!来て!」 ヤシの木から少し離れたところで、譜久村が叫ぶ。 「ここにも久住さんの思いが残ってた!」 「どんな内容ですか!?まだ他に何か隠してあったんですか!」 「ううん。でも、とっても大事なことが分かった!」 譜久村は工藤の手を取り、感じ取った思念を再生した。 (……それにしても、シゲさん、田中さんがあの状態なのに、なんで帰んないんだろ?) (瞬間移動ができなきゃ、あの子らを逃がすなんて絶対ムリだよ……) (コンソールにある銀色のスイッチをひねれば、瞬間移動できるようになるけど……) (マルシェに気付かれずにスイッチを切る方法なんて、きっと無いだろうしなあ) 工藤が目を輝かせる。 「確かに、いっぱいスイッチがあるところに、一つだけ銀色のがありました!」 「スイッチを切って瞬間移動ができるようになれば、一気に形勢を逆転できる!」 「はい!」 「……でも、誰が、どうやってそのスイッチを切るか、だよね……」
2−3 二度目の朝が来た。 元の世界へ戻れるのは、おそらく明日の夜だろう。 マルシェの目を盗んで瞬間移動妨害装置を止める妙案は、まだ思いつかない。 だが、皆で知恵を出し合えば、きっと何か良い方法が見つかるはずだ。 二人はとにかく、元の世界へ帰るその時を待つことにした。 改めて周囲を見てみると、とても快適な環境である。 食糧の心配はもうない。 知らず知らずのうちに、二人の心にゆるみが生じ始めていた。 「ふっくむっらさん!」 工藤に呼ばれて譜久村が振り向く。 工藤は、ヤシの木の下でニヤニヤしていた。 譜久村が近づいて行く。すると、工藤がスッと右手を出した。 「きゃあああ!」 譜久村が絶叫して逃げ出す。 工藤の手のひらの上には、虫の抜け殻のようなものが乗っていた。 「うへへへへ」 工藤は手を前に伸ばしたまま、譜久村を追いかける。 「どぅー!やめて!お願い!」 譜久村の悲鳴が、工藤少年の悪戯心を掻き立てる。 「キャッ!!」 逃げ回っていた譜久村が突然転んだ。 「譜久村さん!大丈夫ですか!?」 「いててて……、もう、どぅーのせいだよ……。聖、何に躓いたんだろ?……あっ!」 譜久村は絶句した。 海水浄化装置が倒れていて太陽光パネルが割れている。 慌てて電源スイッチを押したが、全く反応しない。 二人の心が、悲しみに沈んでいく。
〈だけど僕らはくじけない〉 3−1 二人は、夕暮れの砂浜に並んで座っていた。 工藤が、譜久村の方をちらちら見ながら、消え入りそうな声で言う。 「本当にすみません……、譜久村さん……」 「もういいよ……、ちゃんと足元を見てなかった聖も悪いんだし……」 そう言いながらも、譜久村は工藤の方に顔を向けてくれない。 工藤は下を向き、意味もなく両手で砂を掻いた。 「……ねえ、どぅー」 工藤が譜久村の顔を見る。 顔が真っ赤だ。夕映えのせいだろうか。 「……どぅーって、口は堅い方?」 「え?」 唐突な質問に工藤は戸惑った。 「どっちかといえば、軽い方だと思いますけど……」 「……あのさあ、今から聖がすること、誰にも言わないって約束してくれる?」 俯いた譜久村の瞳がじっとりと潤んでいる。 (この目は、ヤバい……) 譜久村は大きい。 工藤もだいぶ成長したが、譜久村とは体のボリュームが全然違う。 もし譜久村に力ずくで来られたら、工藤は抵抗しきれないだろう。 もちろん、そういうときに何をされるのか、幼い工藤にはよく分かっていない。 ただ、譜久村との寝技の訓練時に感じた本能的な恐怖が、まだ体の芯に残っている。 「……どぅー、……私のおっぱい、飲める?」 譜久村はそう言うと、両手を交差させてTシャツの裾を掴み、一気にまくり上げた。 工藤は目を大きく見開き、固まっている。 譜久村は立ち上がり、無言のまま着ているものを次々脱いでいく。 そして、全て脱ぎ終わると、覚悟を決めた目つきで工藤を見つめた。
3−2 夕空と海の緋色を背景に、紅桃色の譜久村の全身が灼灼と浮かび上がる。 残照が描く滑らかな陰翳の濃淡が、瑞々しい肌艶と張りのある起伏とを饒舌に語る。 濃褐色の髪の一縷一縷は、浮気な潮風をも虜にして、刹那の輪舞を楽しんでいる。 工藤は、美術の授業で見たギリシャ彫刻の女神像を思い出した。 その時は、最高の美と称されるその幅のある裸像の魅力が、全く理解できなかった。 だが、今は分かる。 眼の前の譜久村の裸体と、記憶の中の女神の彫像とが、寸分のずれもなく重なっていく。 母性と処女性を併せ持つこの聖なる美は、太陽の光と海風に抱かれることで完成する。 あの女神も、展示ケースの檻の中では、本来の姿を見せることができなかったのだろう。 (すげえ……) 工藤の胸に、すでに恐怖は無かった。 「うめーーー!」 工藤は、半日ぶりの水分を口にした。 喉の渇きが落ち着くと、舌に残る芳醇なコクとほのかに感じる甘みに、工藤は驚いた。 「すっごくうまいですよ!いま譜久村さんにも飲ませてあげます!」 笑顔でそう言う工藤を見て、譜久村も目を細める。 工藤は、海水浄化装置に付属していた金属のコップを、再び地面に置いた。 そして、四つん這いになった譜久村の乳房の真下にくるように、位置を調整した。 小さな手がピンク色の突起を掴む。譜久村は目を閉じ、低い声と吐息を漏らした。 「譜久村さん、変な声出さないでくださいよ!」 そう言いながら、工藤の指が白い液体を勢いよく絞り出す。 「うわー!どんどん出てくる!」 「もう!」 そう恥じらう声にも、悦楽の響きが濃厚に混じっている。 譜久村の右の鼻孔から、赤い糸が垂れ落ちた。
3−3 二人の体力は完全に回復した。 譜久村が獣化能力を使って、乳牛に変身してくれたおかげだ。 リンリンと握手したあの夜、譜久村は、ジュンジュンの能力も手に入れることができた。 その翌日、譜久村は、大きな鏡の前で早速獣化能力を試してみた。 だが、鏡に映っていたのは、譜久村が思い描いていた姿とは全然違っていた。 (……どうして、……牛なの?) 皆に笑われるのが嫌だったので、譜久村はこの能力を封印することに決めた。 さゆみとれいなには、獣化能力は習得できなかったと嘘をついてしまった。 「譜久村さん、しつこいですよ!ハル、絶対に誰にも言いませんから」 「絶対だからね!……ちょっと、何でにやけんてんの!」 譜久村が声を荒げると、工藤はギャハハと笑いながら逃げ出した。 そんな元気な工藤の様子を見て、譜久村は顔では怒っていたが、心の中では笑っていた。 その次の夜。空には、ここで見るのは最後となるであろう月が、まるく光っている。 譜久村と工藤は、月光に満ちた明るい砂浜に俯せになっていた。 いつ元の世界に戻れるのか、正確な時刻は分からない。 そのため、倒れた姿勢のままで、とにかくその時を待つことにした。 「譜久村さん」 「ん?」 「道重さんたち、ハルたちが元気だって知ったら、きっとびっくりするでしょうね」 「そうだね。きっとすごく喜んでくれると思う」 「……ハル、嬉しいです」 「どうして?」 「だってハルたち、元気じゃないですか。それってあいつに勝ったってことでしょ? 田中さん、これでハルたちのこと、少しは認めてくれるかな……」 譜久村が笑顔で頷こうとしたとき、辺りが黄色い輝きに包まれた。
〈Ending:泣くのはいやだ笑っちゃお〉 譜久村と工藤が戻って来た。 譜久村は、高橋愛の生写真を手にとり、周りを囲んでいる全員の心に話しかけた。 (皆さん、そのままの姿勢で聞いて下さい!どぅーも聖も無事です!) さゆみ達の安堵の思いが、譜久村の心に届く。 譜久村は、異次元世界で起こった出来事を全て話した。 久住小春の残留思念を読みとったこと、海水浄化装置と食料を見つけたこと、 おかげで二人とも無事であること、そして、銀色のスイッチのこと。 ただし、自分が牛になったことだけは、言わなかった。 スイッチの話を聞いた時、鞘師の顔色が変わった。 さゆみはそれを見逃さなかった。 さゆみは譜久村の手に自分の手を重ねる。譜久村を介して、さゆみは鞘師に尋ねた。 (りほりほ……、愛瞳さんを救う方法、思いついたのね?) 鞘師は驚いたようにさゆみを見る。 (多分、りほりほが考えていることと、さゆみが考えていることは同じだと思う。 ……でも、危険な賭けだから、りほりほは言うのをためらってる。……そうでしょ?) 鞘師の沈黙が、さゆみの推測が当たっていることを教えてくれる。 《さゆ、怒ってる?でも、Uのやったことは、私の責任じゃないからね……》 マルシェの声が洞内に響き渡る。 (みんな……少し待ってて。さゆみ、確認しておきたいことがあるの) そう告げると、さゆみは立ち上がった。 そして、スクリーンを睨みつけて、静かに言った。 「マルシェ……、一つお願いがあるの……」 ―おしまい― ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 以上、『ひょっこりひょうたん島』でした。『ワクテカ〜』の続きです。 次回は、さゆと小春のお話です。
634 :
名無し募集中。。。 :2013/08/24(土) 19:11:37.43 0
635 :
名無し募集中。。。 :2013/08/24(土) 19:14:30.69 0
>>624-633 更新&代理乙でした
工藤が乾きを癒す場面では何が始まったのかと思いましたが終わってみれば納得の展開です
一つ一つの戦いが大きな流れに繋がってるのがちょい熱いです
636 :
名無し募集中。。。 :2013/08/24(土) 19:52:47.11 O
わかります 乳だけ獣化ですよね
637 :
名無し募集中。。。 :2013/08/24(土) 21:07:01.72 O
乳吸い保全
638 :
名無し募集中。。。 :2013/08/24(土) 22:28:09.61 O
331さんおつ! フクちゃんの発言に吹き出しましたが獣化と知って一安心でしたw
639 :
名無し募集中。。。 :2013/08/24(土) 22:42:01.35 O
獣化って言っても体に牛柄のペインティングしただけで実際すっぽんぽんなだけなの
640 :
名無し募集中。。。 :2013/08/24(土) 22:49:25.46 0
>>635 シリーズ第1作を思い出させるような「どこに向かうんだよ」感が素敵でしたw
ほんと構成上手いなあ
641 :
名無し募集中。。。 :2013/08/24(土) 23:05:36.34 0
乳牛変身ってw すげぇなぁ話はシリアスなのにネタは笑えるって
642 :
名無し募集中。。。 :2013/08/25(日) 00:43:45.42 O
あげ
643 :
名無し募集中。。。 :2013/08/25(日) 01:27:53.20 0
リゾナンターに新しい仲間が加わるのはまだ先か…
644 :
名無し募集中。。。 :2013/08/25(日) 02:34:09.94 0
残念です…でも12期はいっても小田みたいになかなかリゾナンターとして合流しない可能性も…9期10期はすんなり加入してたイメージ何だが
645 :
名無し募集中。。。 :2013/08/25(日) 05:01:57.15 0
スパイのマンネリ化
646 :
名無し募集中。。。 :2013/08/25(日) 06:07:32.48 O
おは
647 :
名無し募集中。。。 :2013/08/25(日) 08:36:29.91 0
ガキさんのスパイ新作読みたいっす朝
648 :
名無し募集中。。。 :2013/08/25(日) 10:48:02.84 O
ガキさんのスパイ設定はなあ 当時のメンバーでないと書けないよね
649 :
名無し募集中。。。 :2013/08/25(日) 12:45:45.34 0
古参が頑張るしかっ
650 :
名無し募集中。。。 :2013/08/25(日) 13:40:37.63 O
いや逆にスパイがバレずにメンバーチェンジを迎えるガキさんてのもありかもよ 生田だけがその秘密を知って揺れる気持ちとかさ
651 :
名無し募集中。。。 :2013/08/25(日) 14:15:03.80 0
652 :
名無し募集中。。。 :2013/08/25(日) 15:41:26.36 O
653 :
名無し募集中。。。 :2013/08/25(日) 16:40:46.01 0
ガキさんのおっぱい設定は無理ですか
654 :
名無し募集中。。。 :2013/08/25(日) 17:30:25.80 O
ないものは設定できません
655 :
名無し募集中。。。 :2013/08/25(日) 17:33:29.48 0
656 :
名無し募集中。。。 :2013/08/25(日) 19:09:03.67 O
てす
657 :
名無し募集中。。。 :2013/08/25(日) 20:21:01.66 0
あげ
658 :
名無し募集中。。。 :2013/08/25(日) 21:37:53.94 0
>>650 すげー読みたいんですが!作者さんに期待
659 :
名無し募集中。。。 :2013/08/25(日) 22:45:40.23 0
あげ
660 :
名無し募集中。。。 :2013/08/25(日) 22:54:49.71 0
みんな
>>650 に期待しすぎ
忘れた頃に投下されるだろうから
みんな今すぐ忘れろ!
661 :
名無し募集中。。。 :2013/08/26(月) 00:02:52.48 0
あげ
662 :
名無し募集中。。。 :2013/08/26(月) 01:26:12.30 0
>>660 だってーなんかピコーン!的なワクワク感が止まらないだものw『米』を読んだときのあのやられた!感に近い感じでポクポクが止まらないwもちろん気長に待ちますとも!!頑張って保全するのだ!
663 :
名無し募集中。。。 :2013/08/26(月) 03:58:31.35 O
おやすみずき
664 :
名無し募集中。。。 :2013/08/26(月) 06:50:15.08 0
おぱ
665 :
名無し募集中。。。 :2013/08/26(月) 07:46:40.44 0
悲しみのホゼナント
666 :
名無し募集中。。。 :2013/08/26(月) 11:06:44.93 O
空腹のホゼナンター参上
667 :
名無し募集中。。。 :2013/08/26(月) 12:19:16.03 O
昼休みホゼナンター
668 :
名無し募集中。。。 :2013/08/26(月) 15:06:32.42 0
さゆが獣化したらウサギで れいなは猫だろうけど 愛ちゃんやガキさんは何かね
669 :
名無し募集中。。。 :2013/08/26(月) 15:34:35.78 0
愛ちゃんは猿だろうなあ ガキさんは何だろ一反もめんかな むしろペッタン揉めんかな
670 :
名無し募集中。。。 :2013/08/26(月) 16:35:29.71 0
高→猿 新→ペッタン揉めん 亀→亀 道→ウサギ 田→猫 久→ 光→虎 純→パンダ 琳→ロデオ 譜→ベルーガ 生→ 鞘→ 鈴→虫 飯→ 石→猫2 佐→ 工→チワワ 小→
671 :
名無し募集中。。。 :2013/08/26(月) 16:39:19.81 0
なんとなく小田ちゃんは爬虫類な気もする
672 :
名無し募集中。。。 :2013/08/26(月) 16:57:08.16 0
673 :
名無し募集中。。。 :2013/08/26(月) 17:28:59.41 0
>>672 これ見ると爬虫類になるというよりは爬虫類を出しそうな感じだな
674 :
名無し募集中。。。 :2013/08/26(月) 17:44:12.64 0
蛇遣いさくらコワイ
675 :
名無し募集中。。。 :2013/08/26(月) 19:28:56.02 0
シャイナさん…
676 :
名無し募集中。。。 :2013/08/26(月) 20:14:39.77 0
どっかでアザラシかなんかのモノマネを習得した見たの読んだぞ
677 :
名無し募集中。。。 :2013/08/26(月) 21:32:02.55 0
あげ
678 :
名無し募集中。。。 :2013/08/26(月) 23:20:14.36 O
よいしょ
679 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 01:03:19.24 0
寝るんだろうね 噂の狼消滅…ここどうなるんだろうね
680 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 01:46:16.32 0
おお書ける書ける 今のうちに何か書いとくかな
681 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 01:53:17.72 0
仮面サイダー・鞘師里保は改造人間である。 彼女を改造したダークネスは、 世界征服を企む悪の秘密結社である。 仮面サイダーは、人間の自由のためにダークネスと戦うのだ。
682 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 01:54:21.63 0
恐怖・ピコーンおじさん ― 12期は該当なしでした イェイ!の巻 ―
683 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 01:57:10.18 0
またSATOYAMAがないがしろにされた! 3次審査の様子を発表した舌の根も乾かぬうちに該当者なしのアナウンスは無慈悲の極み。 「研修生からレッスン料も搾り取れるし一石二鳥やなぁ」 もうこのへっぽこプロデューサーの暴走を止める手立てはないのか? こんな時、正義のヒーローがいたら! 誰か、ヘルプミー!!
684 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 02:06:03.63 0
「……て言うか誰もがこのシリーズ忘れかけてますって」 「そんなことを言っちゃだめなのりほりほ。リゾスレには執筆の自由が保障されてるの」 「そうですわ。執筆の自由、そして幼女を愛でる自由!アゥゥン……」 「いつもより犯罪者具合が増してますね道重博士にフクちゃん助手」 「言い忘れてたけどさゆみたちの能力の源は幼い子供の笑顔なの」 「幼ければ幼いほどディ・モールト!!」 「ジョジョかよ!てかそれはるなんのキャラじゃん!!」 「とにかくこれでしばらくは幼女のリゾナンターは誕生しないし、合法ロリのりほりほで我慢するの」 「何か凄く中継ぎ扱いされた気が!しかもうち合法じゃないし!!」 「細かいことを気にしたら負けですわ。さあ服を脱いで」 「何でだよ!もうリゾスレ関係ないんじゃないのこれ!」 「ところがどっこい関係大ありなの。さゆみが今から治癒の力でりほりほの体を隅々と」 「絶対治癒じゃなくて痴愉な気がする!もうだめだ!!」
685 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 02:07:54.06 0
>>681-684 保全作
今だけ規制が解けてると聞き勢いで書きました
ネタの質については反省してません
686 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 06:52:31.71 0
朝なので
687 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 07:57:36.52 0
688 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 11:33:29.17 0
昼なので
>>583-588 の続きです
ダークネス本拠地の、研究所。
研究所の最高責任者である紺野は、久々にとある実験の最終確認のためにこの地へ赴いていた。
実験に要すべき時間の細かい指定、段取り。記憶媒体への録画指示。自室にて電話一本で済ますのは簡単だが、場合によっては直接指
示したほうが効率がいいことを彼女は知っていた。
「…実験前段階における数値があまり良くないようですね。例の器具の調整をお願いします」
「はい!」
「それと、この実験タームはもう少し短縮できるはずです。検討してください」
レポート片手に研究員たちに細かい指示を出していると、白衣の群れの向こう側にいる鮮やかな金髪が目に入る。研究所では見ない髪
色がゆえに、その自己主張度は半端ではない。
「よう!Dr.マルシェ」
「『詐術師』さんですか。こんなところまで、何か用ですか?」
「『氷の魔女』がお前を探し回ってたぜ?」
「そうですか。特に会う理由もないんですが、頭に留めておきましょう」
魔女の用件はおそらく一つだろう。
彼女の出方次第では、おもしろいことになる。
不穏当な笑みを浮かべつつ、もう一つの「面白い種」にその視線を向ける。
「まさか、そんなことを知らせるためにわざわざここまで来たわけじゃないでしょう」
「まあな、いい情報が入ったんだ。例の『s312』が、リゾナンターに接触したぜ?」
「さくらが。そうですか」
「何だよ、もっと驚けっつーの」
紺野にとって。
さくらがリゾナンターに接触するのは計算のうち。そのために、彼女を下界に放ったのだから。
690 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 12:31:29.26 0
「別に驚くことはありません。計画が順調に進んでる証拠ですから」 「計画ぅ?お前そんなこと言って、なんかの拍子でs312がリゾナンター側に寝返ったらどうすんだよ。”これ”どころじゃ済まないん だぜ?」 そう言いながら、自らの首を掻き切る真似をする「詐術師」。 「心配ありません。さくらは、3日後に必ず帰ってきます」 「はー、大した自信だねえ」 「当たり前のことです。12の位置から離れた時計の針が、必ず12の位置に戻ってくるようにね」 さて。本題に入らなければ。 何も用があるのはそちら側だけではない。 紺野は研究員たちから離れた場所に移動し、「詐術師」に手招きをする。 「何だよ、急に」 「ときに『詐術師』さん。最近、警視庁のほうで『PECT』に代わる対能力者部隊を結成したとの話がありますが」 「ああ。『鋼脚』から聞いてるよ。ようやく『目には目を、能力者には能力者を』って結論にたどり着いたみたいだけど、遅すぎじゃ ね? ま、どの道大した連中じゃないさ」 薄笑いすら浮かべつつ、「詐術師」が言う。 そう、これはただの雑談。ここまでは、ですが。 紺野の眼鏡が、鈍く光る。 「ではこの話は知ってますか?その能力者集団が、『エッグ』の名前を名乗っていることを」 「…何が言いたいんだよ」 「我々の研究所から『キッズ』に続く次世代能力者たちの卵、すなわち『エッグ』が盗み出されたのは1年前。そして、噂によると警 視庁の新しい対能力者部隊の構想が持ち上がったのも、1年前らしいですよ?」 そこで、はじめて「詐術師」の顔色が変わる。 紺野は、素直にここまで持ちこたえた彼女の面の皮の厚さに感嘆する。しかし、平静でいられるのも、ここまで。
691 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 12:37:15.59 0
「…エ、エッグを盗み出した奴が、警察に売り飛ばしたんじゃねーか?」 「そうですね。その可能性が高いでしょう。ただ…」 「おい、なんだよ」 「いや、『首領』がぽつりと漏らしてるのを聞いてしまったんですよ。『エッグ』の件で、矢口にはケジメ取って貰わんとな。って。 これは、どういうことなんでしょう」 「なっ!!」 「詐術師」は。体中の汗腺から嫌な汗が滲み出るのを感じていた。 それは、本能的な危険。急に自分を包み込む霧、それが晴れた時に気づく。自らがのっぴきならない崖っぷちに立っていることに。 ばれてはいけない人間に、ばれてしまった。 顔は青ざめ、唇がひとりでに震える。 必要も無いのに、何度も、何度も瞬きをしてしまう。 敢えて言葉にするならば、動揺していた。 「ご安心下さい。私があなたにいい策を授けましょう。無論、そんなものが必要ないというのなら、それまでの話ですが」 「少し…少し考えさせてくれ」 「わかりました。ただ、残された時間は少ない。賢明なご判断を、お待ちしてますよ」 それだけ言うと、紺野はゆっくりと研究所を後にした。 突如訪れた緊張が緩和されるとともに、思わず「詐術師」の口から舌打ちが漏れる。 あの野郎、いったいどういうつもりなんだ。 紺野の言う事が確かならば。それは「詐術師」が過去に行った悪行が「首領」の知るところとなってしまったということを意味して いた。その行為とは。
「エッグ」の、売却。 警察組織が「大量の若い能力者」を求めていることを知った「詐術師」は、とある人物を仲介人として、盗難を偽装して「エッグ」 たちを彼らに引き渡した。もちろん仮の窃盗集団、仮の取引相手は全て向こうが用意したが故に、事実が露見することはなかった。 組織もダミーの主犯者たちを始末した後に「エッグ」の所在が不明になったことを知ると、次第にその存在すら忘れていった。 だが。 その「エッグ」たちが生きていて、さらには警察の手足となって動いているとあれば話は別。それが、組織内の人間による手引きだ ったと知ったら。ただで済むはずが、ない。 ちくしょう、こんなとこで終わるわけにはいかないんだ。マルシェの野郎が何を考えてるか知らないけど、おいらには奴に頼るしか 道はないってことか。 背に腹は替えられない。 差し伸べられた手を取るか。それとも無視するか。 「詐術師」の中では既に、結論は出ていた。
693 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 12:41:39.19 0
● 喫茶リゾナント。 里保とさくらが店に到着した時には、大半のメンバーが集まっていた。 「里保おかえりーっ、って、あれ?」 迎えに出た衣梨奈が、すぐに里保の後ろの見慣れない少女の存在に気づく。 じろじろと相手の顔を見る、彼女らしい確認の仕方。 「この子、誰?」 「えっと。さっき変なやつらに絡まれてたのを助けた子で、うちが連れてきたの」 玄関でそんなやりとりをしていると、窓際のテーブル席でじゃれあって遊んでいた最年少コンビが里保たちの存在に気づき寄って来る。 「やすしさーんおかえりー!!誰ーその子ー?」 「だから、絡まれて助けた子を、連れて」 「もしかして鞘師さん、ナンパっすか?」 遥が発した「ナンパ」というキーワードが店内に響き渡る。 「な、なんてことを言うんだ、なんてことを!!」 慌てて否定する里保だが、この状況をカウンターにいたお姉さん組が黙っているはずもない。 たちまち玄関口に人だかりができてしまった。 「里保ちゃん、ナンパなんてハレンチな」 「鞘師さんがそんなことをするなんて!もしかして道重さんの悪い病気が移ったんじゃ…」 「これってもしかして百合!萌えです!!」
694 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 12:43:15.51 0
ハレンチと言いつつ何故か嬉しそうな聖、何気に失礼な発言の亜佑美、そして一人悶えている春菜。話はいよいよ収拾がつかなくなっ てくる。
695 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 12:45:06.17 0
「あのね、そういうんじゃなくて!ただ困ってた女の子を助けたついでに喫茶店へ」 「やっぱナンパじゃないですか」 「ちょ!つ、強すぎる…」 遥の突っ込みの強さに冷や冷やする里保。 そんな折、助け舟かどうかはわからないが、あの二人が帰って来たのである。 「ちょっと、こんなとこで何溜まってんの?」 「邪魔やけん、あっち行った行った」 ボーダー柄のシャツと、髑髏のイラストがプリントされた黒いパーカー。 あまりにも対照的な格好の、リゾナンターの最年長たち。 「たなさたん!みにしげさん!!」 いち早く二人の姿を発見した優樹が、れいなに猛タックル。 あーもう帰って来たばかりなんだから、早く離れろ、と言いつつ優樹の頭をくしゃくしゃと撫でるその姿は満更でもなさそうだが。 「あれ、その子」 さゆみが、里保の背後に立つ少女に目をやる。 見たこと無い子だけど、りほりほのお友達かな? 探るような視線に気づいたさくらが、 「あの、私。さくらって言います。さっき、鞘師さんに助けてもらって」 と説明した。
696 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 12:47:05.82 0
ようやく濡れ衣が晴れたか、と胸を撫で下ろす里保。 そんな時だった。再び店の扉が開かれたのは。 「いらっしゃ…」 言いかけた春菜の言葉が止まる。 店に現れた客とおぼしき中年男性。だが、明らかに様子がおかしい。 髪は乱れ、目つきはまるで白昼夢でも見てるかのように空ろ。半開きの口からは、涎が垂れかけていた。 「ウッ…グ…コ…殺ス!!」 男が叫び、上着のポケットからダガーナイフを取り出す。 店内にいる全員に、緊張が走った。 「なんだ、こいつ」 「ともかく、ナイフを取り上げないと!」 前に出ようとする遥を制し、香音が男の前に立ちはだかる。 見たところ能力者でもなさそう、ということは必要最低限の力を持って制圧しなければならない。そういう意味において、香音の力は最 適解に近かった。 「殺ス!殺ス!!」 男が刃を振り上げ、香男に襲いかかる。 戦い慣れていない、本能に赴くままの、切れのない攻撃。もちろんそんなものでも、ナイフに掠ってしまえば傷を負ってしまう。だが、 香音の能力「物質透過」の前にはただの素振りと化す。 「さくらちゃんはうちの後ろに隠れてて」 里保は、リゾナンターではないさくらの身の安全を確保するため、隣にいるはずのさくらに声をかける。そこには、さくらはいなかった。
697 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 12:50:32.18 0
「えっ…?」 さくらは、最もいてはいけない場所に立っていた。 香音の真後ろ。つまり、男のナイフの軌道上。 「香音ちゃん、ダメ!!!」 「なっ、どういうこと?」 里保の声に振り返った香音が、さくらの存在に気づく。 しかし遅すぎた。男は、香音目がけて凶刃を振るう。もちろん、このままいけばナイフは香音をすり抜けてさくらを切り裂いてしまう。 亜佑美が高速移動で。 衣梨奈がピアノ線を使って。 優樹が瞬間移動で。 さくらをその場から離そうとする。 れいなは、敢えて動かなかった。 男とさくらの距離。三人の行動の早さ。問題なく、さくらを救助できる。 その考えを改めたのは次の瞬間。男が、急速にさくらに向かって間合いを詰めたのを見たからだ。 まずい!! 身体能力を「共鳴(ブースト)」させ、さくらを全力で救いにかかるれいな。 銀の刃が少女の肌に届く前に、れいなの右手が伸びる。 結果から言えば。 男は、れいなによって店の玄関のはるか向こう。つまり、店の外へと殴り飛ばされた。 だが、さくらは。
698 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 12:52:41.59 0
「さくらちゃん!!!!!」 聖が、絶叫する。 さくらの白いワンピース。その肩口のところが、紅く染まっていた。 苦痛に顔を歪め、さくらは膝を落とす。 さゆみが駆けつけ、傷の部分に手を添えた。 「ちっくしょう、許さねえ!!」 さくらの血を見た遥が激昂し、外に転がってる男に向かって飛びつき馬乗りになる。 「いたっ!あ、あれ、私は一体…」 「てめえ、よくも!」 いくら非力な遥の拳とは言え、そこら辺にいる中年相手なら十分に通用する。 次第に顔が膨れ上がってゆく男、しかし男のある変化に春菜が気づく。 「待って!この人何かおかしい」 「え?」 「ちょ、痛っ、いきなり何を、いてて、ここはどこだ、いたっ、な、殴らないでくれ!」 遥流ゴムゴムのガトリングを受けている男が、殴られながらも必死に抵抗する。 そこには、ここに現れた当初の狂気的な姿はなかった。 「とにかく、警察を呼ぶけん。話はその後っちゃね」 わけがわからないが、さくらが刺されたのは紛れもない事実。 れいなは、ため息を吐きながら携帯に手を伸ばした。
699 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 13:00:11.78 0
700 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 17:11:06.86 0
読む前保
701 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 19:17:13.77 i
加入当時のはるぼうのガトリングをくらってみたい 今のはるぼうは大きいからすげえ痛そう
702 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 19:24:39.99 0
ラジオネタがいつも満載ですねw
703 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 21:38:35.24 0
>>699 更新乙
小田ちゃんも心配だけど小さな大人も何か妙な動きしてるなあと
704 :
名無し募集中。。。 :2013/08/27(火) 23:26:31.70 0
あげ
705 :
名無し募集中。。。 :2013/08/28(水) 00:42:22.39 0
☆ノハヽ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ つ =つ≡つ =つ≡つ ハ#´ 。`ル<ゴムゴムのガトリングぅぅぅぅぅうううううう!!!!!!!!!! (っ ≡つ=つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ つ =つ≡つ =つ≡つ / ) =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つつ =つ≡つ =つ≡つ ( / ̄∪ ババババ ババババ ババババ ババババ
706 :
名無し募集中。。。 :2013/08/28(水) 01:57:25.22 0
いつからゴムゴムの能力者にw
707 :
名無し募集中。。。 :2013/08/28(水) 03:48:57.88 O
怖いわw
708 :
名無し募集中。。。 :2013/08/28(水) 05:10:31.09 O
おはなんと
709 :
名無し募集中。。。 :2013/08/28(水) 07:51:05.11 0
早起きなのね
710 :
名無し募集中。。。 :2013/08/28(水) 09:07:18.53 0
老人の朝は早い
711 :
名無し募集中。。。 :2013/08/28(水) 09:11:20.75 O
じっちゃんだからな
712 :
名無し募集中。。。 :2013/08/28(水) 11:02:50.32 O
昼前保全
713 :
名無し募集中。。。 :2013/08/28(水) 13:32:29.41 O
ぬぅん
714 :
名無し募集中。。。 :2013/08/28(水) 15:22:19.30 O
ほぜにゃんぱにゃにゃんだー
715 :
名無し募集中。。。 :2013/08/28(水) 16:57:43.04 O
ケータイホゼナンターがんばるのぉ
716 :
名無し募集中。。。 :2013/08/28(水) 17:05:22.89 0
ここにもいるぞぃ
717 :
名無し募集中。。。 :2013/08/28(水) 18:39:03.82 0
支援
718 :
名無し募集中。。。 :2013/08/28(水) 19:57:35.00 O
あげ
719 :
名無し募集中。。。 :2013/08/28(水) 21:26:47.91 0
ほ
720 :
名無し募集中。。。 :2013/08/28(水) 23:02:19.31 0
あげ
721 :
名無し募集中。。。 :2013/08/28(水) 23:23:38.74 0
週の中だるみ保全
722 :
名無し募集中。。。 :2013/08/29(木) 00:45:17.04 0
寝る前のホゼ
723 :
名無し募集中。。。 :2013/08/29(木) 02:43:42.26 O
リゾナンター達が朝から鬼ごっこ…いや鍛練してたな 暑い中大変だ
724 :
名無し募集中。。。 :2013/08/29(木) 04:42:24.59 O
おやすみ
725 :
名無し募集中。。。 :2013/08/29(木) 07:38:27.58 O
一人の朝
726 :
名無し募集中。。。 :2013/08/29(木) 11:42:17.44 0
昼
727 :
名無し募集中。。。 :2013/08/29(木) 13:02:49.27 O
昼休み終わりホゼナンター
728 :
名無し募集中。。。 :2013/08/29(木) 14:40:57.76 0
ぽ
729 :
名無し募集中。。。 :2013/08/29(木) 17:24:16.26 0
夕方
730 :
名無し募集中。。。 :2013/08/29(木) 19:49:27.82 0
夏の終わり〜
731 :
名無し募集中。。。 :2013/08/29(木) 21:14:45.88 0
あげなんと♪
732 :
名無し募集中。。。 :2013/08/29(木) 21:14:49.01 0
あげ
733 :
名無し募集中。。。 :2013/08/29(木) 22:50:15.19 0
ほ
734 :
名無し募集中。。。 :2013/08/29(木) 23:17:24.86 0
『米』作者ですが、設定ミス発見しました(汗 331さんの世界のズッキ、透過能力じゃん(汗 二話目直さないと(汗
735 :
名無し募集中。。。 :2013/08/29(木) 23:22:56.87 O
どんまいw
736 :
名無し募集中。。。 :2013/08/29(木) 23:28:48.32 0
気付かなかったw
737 :
名無し募集中。。。 :2013/08/29(木) 23:36:31.62 0
シリーズたくさんあるからごっちゃになるときあるよねw 331の作者さんはでも度量広いね もちろん気付いてただろうにw
738 :
名無し募集中。。。 :2013/08/30(金) 00:09:00.59 O
米は設定が複雑だもんなあ 米もそうだけど長編を破綻なく書くって難しいよね
739 :
名無し募集中。。。 :2013/08/30(金) 00:55:12.87 0
完結してない話から人物を引っ張ってくる勇気なんてないぜ 米さんスゲーよ
740 :
名無し募集中。。。 :2013/08/30(金) 01:00:00.01 0
何を言ってるだ きっと完結するに違いないって信頼を置いてるんだろうが それが仲間ってや(
741 :
名無し募集中。。。 :2013/08/30(金) 01:16:29.89 0
リゾナントはこのスレに欠かせないからな
742 :
名無し募集中。。。 :2013/08/30(金) 05:01:46.40 0
おぱ
743 :
名無し募集中。。。 :2013/08/30(金) 06:56:39.11 O
ょ
744 :
名無し募集中。。。 :2013/08/30(金) 10:59:07.94 0
あげ
745 :
名無し募集中。。。 :2013/08/30(金) 13:29:29.59 O
猛暑あげ
746 :
名無し募集中。。。 :2013/08/30(金) 15:38:06.77 O
ほぜ
747 :
名無し募集中。。。 :2013/08/30(金) 18:53:08.28 0
2ch閉鎖しちゃうのかな
748 :
名無し募集中。。。 :2013/08/30(金) 20:11:13.34 O
ヨルナンデス
749 :
名無し募集中。。。 :2013/08/30(金) 20:24:54.20 0
閉鎖したらどこ行きます?したらば?
750 :
名無し募集中。。。 :2013/08/30(金) 20:28:15.46 0
どこにもいかないよ ここにいる
751 :
名無し募集中。。。 :2013/08/30(金) 21:28:36.16 O
したらばの代理スレが実質的に本スレになりそうね
752 :
名無し募集中。。。 :2013/08/30(金) 22:37:10.22 O
あげ
753 :
名無し募集中。。。 :2013/08/30(金) 22:40:43.04 0
でも荒れまくってるんだよなぁ…これを期に管理人さん戻って来ないかな…
754 :
名無し募集中。。。 :2013/08/30(金) 23:13:27.92 0
この83話もあと少しで完走というのに…
755 :
名無し募集中。。。 :2013/08/30(金) 23:17:35.23 0
まぁガセであることを祈るしかない
756 :
名無し募集中。。。 :2013/08/30(金) 23:19:11.28 0
始まりがあれば終わりがある 仕方ないことは仕方ないと受け入れねば
757 :
名無し募集中。。。 :2013/08/30(金) 23:21:12.75 0
そんな寂しい事いわんで〜
758 :
名無し募集中。。。 :2013/08/30(金) 23:27:24.40 O
別に狼なくなったからって作者さんたちの執筆意欲までなくなるわけじゃないから
759 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 00:15:58.03 0
とりあえず自分は今構想中の大作を形にしないことには終われない それと平行して単発作のアイディアも浮かんでくるし
760 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 00:28:32.30 0
その才能が羨ましいw俺なんてしょうもないネタしか思い浮かばん
761 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 00:41:25.91 O
そのしょうもないネタこそがリゾスレには不可欠なんだよ というわけで待ってますw
762 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 01:45:45.19 0
「はるの目に見抜けない事なんてない!」 【千里眼ー親父目線ー】発動! (90G…さすが譜久村さんバインバインなだけはあります) (76AA…同じサブリーダーでも、こっちはメシクボなだけに窪んでるんじゃないか?w) (こっちは…86の…C!?) (・・・・・) 「どうしたのDoどぅー?」 (負けた…) ホゼナント(サイズとカップは妄想です wこんなネタしか書けない自分が情けない)
763 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 02:27:59.51 0
>>762 保全乙
変態リーダーが欲しがりそうな能力ですねw
764 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 02:42:27.86 0
川c ’∀´)<敗北を知りたい・・
765 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 07:04:17.06 0
おはよう
766 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 07:52:04.08 0
リーダーすでに持ってそうな能力だなw
>>762 スレをにぎわせてくれてありがとう!
767 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 08:48:52.28 0
>>762 リーダーならきっと…あーダメだ!こんなの書けねーw
768 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 09:25:44.34 0
769 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 09:33:59.27 0
770 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 10:00:45.24 0
生田さんなら能力使わずとも「神眼(πルッキング・アナライズ)」でありとあらゆるπを調査分析済み
771 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 10:12:40.81 0
772 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 10:14:47.88 0
某スレかここはw
773 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 10:58:00.98 0
某スレなら調査分析に加えあんな事やこんな事までしてますが?wある意味最強だな…
774 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 13:10:09.43 0
あげ
775 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 13:25:19.91 0
寄せて上げたのを確認
776 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 13:29:25.15 0
さすがどんな場面でも見逃さない連πハンターですね
777 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 15:57:21.03 0
あぁ今日が終わってゆく
778 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 17:31:45.12 0
夕方
779 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 19:12:24.52 O
あげ
780 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 20:44:01.71 0
781 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 22:25:09.75 0
あげ
782 :
名無し募集中。。。 :2013/08/31(土) 23:16:09.62 O
ほぜなんた
783 :
名無し募集中。。。 :2013/09/01(日) 00:31:26.01 0
>>780 さえみのふりしていたずらし放題ですねわかります
784 :
名無し募集中。。。 :2013/09/01(日) 01:31:30.40 0
おやすみなさやし
785 :
名無し募集中。。。 :2013/09/01(日) 02:12:03.38 0
寝るんだろうね
786 :
名無し募集中。。。 :2013/09/01(日) 05:11:04.27 O
おぱ
787 :
名無し募集中。。。 :2013/09/01(日) 07:59:35.88 0
ガブリンチョ
788 :
名無し募集中。。。 :2013/09/01(日) 10:37:57.24 O
ほぜ
789 :
名無し募集中。。。 :2013/09/01(日) 12:08:38.51 0
ホゼリンチョ
790 :
名無し募集中。。。 :2013/09/01(日) 14:25:08.34 0
保全の軍団
791 :
名無し募集中。。。 :2013/09/01(日) 16:25:38.91 0
頭がいてえ
792 :
名無し募集中。。。 :2013/09/01(日) 18:01:37.39 0
キープスマイリングよ
793 :
名無し募集中。。。 :2013/09/01(日) 19:40:22.41 0
たああもおおたああれええたああああああいぇっ
794 :
名無し募集中。。。 :2013/09/01(日) 20:19:32.87 0
795 :
名無し募集中。。。 :2013/09/01(日) 20:22:40.75 0
黒翼の悪魔は、人間を滅ぼすためにダークネスを抜けたのか (みたいだな) 傀儡師様も知らなかったんですか? (理由は聞いてなかったからな) 「リゾナンターをぶつけたのはまずかったわね」 「もしもあいつらが協力したら、かなり厄介な事になるでしょ。どーすんの?」 吊り目のオバさんとチビの女が現れた 傀儡師様に対して馴れ馴れしい態度だな 「確かに。まさか、リゾナンターの能力が目的だったとは」 「結果、全員集めちゃったからなー。傀儡師の立場も危ういかもねー」 「矢口、やめなさい。まだ修正できるわ」 うっとーしーチビだな! 隣のオバさんも、傀儡師様が失敗したみたいに言うな! (この2人はダークネスの幹部、刹那の考察者と詐術師だ) ……え? (あたしを持ち上げてくれるのは嬉しいが、どちらもあたしの先輩だからな) ヤベー……
796 :
名無し募集中。。。 :2013/09/01(日) 20:25:25.80 0
(ちなみに、お前の声は聴こえてないから心配無いぞ) いえ、失礼しました…… 「どうするの? このままリゾナンターに戦わせておく?」 「あいつらが手を組む前に手を打たないとね」 あいつらなら従わないような気がするけど さっきもひたすら反抗してたし 「もうしばらく待ちましょう。少しでもg923を疲弊させたいので。幸い、まだこちらに気付いていない様です。ダークネスで奇襲をかける事も可能です」 「いいわ、そうしましょう」 「詐術師はg923の能力阻害の準備をお願いします」 「はいはい」 さすが傀儡師様! ところで、黒翼の悪魔をg923って呼んでるのは何ですか? (昔の管理番号だ) 管理番号、ですか? (ダークネスが結成する前、ある研究施設に能力者が集められた) 能力者が集められたって、ハルが居るエッグみたいな感じですか? (まあ、そうだな。当時はアルファベットのグループに分けられ、1人ずつナンバーを振られた。それが管理番号だ) じゃあ、g923はgグループの923番目≠チて事ですか? (そうだ。グループは違うがあたしらも居たんだが……そう言えば)
797 :
名無し募集中。。。 :2013/09/01(日) 20:28:36.00 0
「運び屋はどうしました?」 「ああ。あの子なら」 刹那の考察者様が振り返り、2階席の最後列を指す 「……何をしている」 最後列の座席から顔を覗かせている女 よーく見ると震えてる? 「恐いからって姿を隠してるのよ」 運び屋って名前が付いてるなら、きっと幹部だよな 失礼だけど、ビビり過ぎじゃね? 「フィフス≠ェ聞いて呆れるわ」 フィフス? なんだ? 「あいつは放っておきましょう。必要になれば引っ張り出すだけです」 「そうね」 「ねえ、ちょっと見なよ! リゾナンターが圧されっぱなしなんだけど!」 詐術師様の声で全員が1階を見る リゾナンターはほとんど動けず殴られたり蹴られたりしてる 「重力制御……あれに抗うのは相当難しいわね」
798 :
名無し募集中。。。 :2013/09/01(日) 20:31:19.28 0
立ち上がったて言っても、身体が重いのは変わらないんだもんな 相手に向かって行く足取りなんて亀より遅そうだし 「相手が自由に動けるんだからな。このハンデはキツイって」」 使えそうな飛び道具も、新垣のワイヤーか鞘師の水くらいしか (無理だ。ここには水場は無い。公園の時の様に能力は使えない筈だ) そうか って事は、リゾナンターに勝ち目ないじゃないですか! (……今はな) 「あたしの能力、使った方が良いんじゃない?」 詐術師様の能力……さっき能力ソガイとか言ってたな ソガイって何だ? 「まだ待ちましょう。g923もリゾナンターを引き入れる為に、手加減するでしょうから」 「焦れったいなー。手遅れになっても知らないからな」 傀儡師様には、何か考えがあるみたいだけど 全く勝てそうな気がしない…… そもそも、あいつらリゾナンターにそんな強さがあるのか?
799 :
名無し募集中。。。 :2013/09/01(日) 20:34:03.60 0
投下完了↑
>>795-798 『この地球の平和を本気で願ってるんだよ!』14
(82)485
破裂したら現リーダーにちゃゆしてもらってください
(82)489
スピーディー……当初は10回くらいで終わると思っていました。思惑はいかがでしょうか
(82)522
ネタは活きている(合っている)でしょうか。リアルタイムを知らない事が辛いです
>>371 気付いて頂きありがとうございます。永遠に記念日が変わらない事を願います
短いですが今回はここまでです
今月中には 終わらせたーい 終わらせたーい です
800 :
名無し募集中。。。 :2013/09/01(日) 22:09:02.62 O
ほ
801 :
名無し募集中。。。 :2013/09/01(日) 22:12:12.48 0
>>799 更新乙様です
三勢力の思惑なんかが見えてきて楽しいです
完結に向けてがんばれーw
802 :
名無し募集中。。。 :2013/09/01(日) 22:59:01.61 0
2期(1人除く)揃い踏みですね リアルではもう実現できないかと思うと・・・
803 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 00:06:39.95 0
ほぜむ
804 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 01:54:40.76 0
寝るなんと
805 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 02:38:56.92 O
おやすみずき
806 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 07:42:55.81 0
おはよう
807 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 11:12:21.50 0
おはなんと
808 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 11:38:39.55 0
もう昼ですよ
809 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 14:00:32.77 O
あげ
810 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 16:14:01.19 0
青の軍団!
811 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 18:32:41.80 O
ぽ
812 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 19:44:23.95 0
『I miss you』 〈夕映えにとけてゆくような〉 1−1 気が付くと、道重さゆみは、白い砂浜の上に立っていた。 「小春!」 さゆみがそう叫ぶと、うずくまっている久住小春は、放電を止めた。 「……ふう、疲れた……」 さゆみが小さな声で尋ねる。 「ここ、盗聴器とかないよね?」 「大丈夫ですよ。……それより、道重さんこそ、大丈夫なんすか? ウイスキーボンボン、間違いなく食べてましたよね」 「あれ位で酔っぱらったりしないよ。それで、ここにはどのくらい居られるの?」 「一時間半くらいです。きっか、『10秒ちょっと』って言ってましたから」 「ふーん……。ねえ、あのきっかって子、ここに飛ばす時間を自由に調節できるの?」 「……どうでしょうね」 「え、小春も知らないの?」 「知ってますよ。……でも、道重さんには教えられないっす」 「どうして?」 「だって、道重さんは、敵ですから」 さゆみの眉がゆがむ。 「……小春。それ、どういうこと?」 「『どういうこと』って当たり前じゃないすか。小春はダークネスのメンバーなんすよ」 「うそ!さゆみ、知ってるよ!小春は今スパイとしてダークネスに潜入してるんでしょ? さっきだって、キレたれいなを飛ばさせたり、思念を残しておいてくれたりしたじゃん。 あのアホな小春が、こんなに気が利くようになったんだって、さゆみ感心してたんだよ」 さゆみは、最後の一言を、敢えてからかうような口調で言った。 だが、小春の唇が昔の様に尖ることはなかった。
813 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 19:44:59.13 0
1−2 小春は、夕映えに溶けてゆくヤシの木を見つめていた。 「ちょっと、小春、何か言ってよ!」 感情の見えない視線が、さゆみへ向けられる。 「道重さん。小春がリゾナンターを離れた時のこと、どこまで聞いているんですか?」 「……ガキさんが愛ちゃんを探す旅に出る前の日の夜、全部聞いた」 さゆみの脳裏に、新垣里沙の暗い表情がよみがえる。 二年前、亀井絵里が、さゆみの別人格「さえみ」の暴走によって消滅した。 最愛の親友を殺してしまった。 さゆみは絶望し、自ら命を絶つことさえ考えた。 だが、仲間たちの優しさが、ゆっくりとではあるが、さゆみの深い傷を癒していった。 絵里が消えてから数日後、リンリンが急に中国へ帰りたいと申し出た。 リンリンのもとに、「刃千吏」が崩壊の危機にあるという知らせが届いたらしい。 ジュンジュンも、リンリンが心配なので一緒に帰国したいと願い出た。 引き留めたい思いを堪え、6人は、かけがえの無い仲間を、笑顔で送り出した。 リゾナンターが急速に弱体化していく。 新垣は、ダークネスの強大さを知っているが故に、他の誰よりも焦っていた。 新垣がスパイを辞めてからは、当然のことだが、ダークネスの情報は入らなかった。 ダークネスが、いつリゾナンター壊滅に本腰を入れて来るのか。 新垣の胸には、常に不安が渦巻いていた。 そんな新垣を、高橋はいつも陽気に励ました。 しかし、新垣の焦燥は、高橋の心にも徐々に感染していった。 ある夜、小春が、高橋と新垣を、喫茶リゾナントの近くの公園に呼び出した。 辺りに誰もいないことを確認してから、小春は二人に小さな声で言った。 「小春、ダークネスにスパイとして潜り込みましょうか?」
814 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 19:45:44.28 0
1−3 もちろん、高橋と新垣は、その申し出を即座に却下した。 だが、小春が続けて発した次の一言が、二人の心を強く揺さぶった。 「亀井さん、生きてるかもしれませんよ」 小春はそれまで、念写能力を使って、定期的にダークネスの状況を探っていた。 しかし、ダークネスの防御は堅牢であり、大した情報は入手できていなかった。 「……ところがですね、昨日撮った写真に、こんなのが写ってたんです」 そう言って小春が見せた写真には、風に揺れる薄絹のように、橙色の光が写っていた。 これは、絵里がダークネスに囚われていることを告げているのではないか。 二人の胸は、久しぶりに明るく高鳴った。 思慮深い二人は、このことを、他のメンバーにはしばらく伏せておくことにした。 まだ乾ききってないさゆみの心の傷口を、確証の乏しい推測で徒に刺激したくない。 さゆみやれいな、愛佳に教えるのは、決定的な情報を入手してからで良いだろう。 この二人の意見に、小春も賛同した。 その上で、先ほどより強い口調で、改めて言った。 「だから、亀井さんの情報を手に入れるためにも、小春、スパイになりますよ」 小春を帰したあと、二人は長時間話し合った。 そして、条件付きで小春の提案を受け入れることにした。 その条件とは、三ヶ月経ったら必ず仲間のもとへ戻って来ること。 それは、絵里の消息が掴めなかったとしてもである。 また、小春がスパイになることは、3人だけの秘密とした。 それは敵を完全に欺くためであり、小春の安全を守るためでもあった。 それから数日経った夜、小春は消えた。 やがて、約束の三か月が過ぎた。 だが、小春は、帰ってこなかった。
815 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 19:46:26.22 0
〈姿がなつかしいあの頃〉 2−1 「小春、リゾナンターに戻っておいでよ。 絵里の消息が掴めないから、小春は今までスパイを続けてくれてたんでしょ?」 だが、小春の表情は依然として変わらない。 「……道重さん」 「ん?」 「道重さんは、何のためにリゾナンターやってるんですか?」 「え?」 「ダークネスの人達って、それぞれ、自分の夢を持っているんです。 たとえば、Dr.マルシェの夢は、特殊能力のメカニズムを完全に解明することです。 そのために、物理学や、心理学、化学、医学……色々なことを絶えず勉強してます。 もちろん、マルシェが人の命を軽く見ているところは、小春も好きじゃないです。 でも、あの人、研究のためなら、自分の命だって捧げるつもりですよ。 この前も一歩間違えば死ぬっていう状況だったのに、すごく楽しそうに実験してました」 「……」 「吉澤さんもそうです。 あの人の夢は、最強の戦士になることです。 そのために毎日トレーニングを積んでますし、危険な戦いにも喜んで身を投じます。 吉澤さんにとっては、命を懸けて戦うことが、生きる喜びなんです。 そんな吉澤さんを見てると、たまにですけど、すごく羨ましくなるときがあるんです」 「小春、なに言ってんの?もしかして、ダークネスに洗脳されて……」 「いいえ。実は小春、リゾナンターにいた時から、ずっと悩んでたんです」 「悩んでた……?」 「リゾナンターが困っている人を助ける。それが良いことなのは分かります。 でも、そうやって助け続けても、きりが無いじゃないですか? リゾナンターが救ってあげられる人たちなんて、世の中のほんの一握りに過ぎません。 それって、自分の人生を賭けてまで、やる価値があることなんですか」
816 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 19:47:12.19 0
2−2 「じゃあ小春は、ダークネスがたくさんの人を苦しめてることを、どう思ってるの!?」 「多少の犠牲はやむを得ないって思ってます」 「そんな……やむを得ないって……」 「やむを得ないですよ。だって、ダークネスは『戦争』をしているんですから」 「『戦争』……?」 「……ダークネスの上の人たちは、能力者が統治する世の中を作ろうとしてます。 でも、まだまだ力が足りません。 だから、ダークネスは、これまで政府との衝突を極力避けてきました。 それどころか、政府に擦り寄って、汚い仕事を代行することもありました。 ところが、ここ一、二年で、状況が変わったんです。 二年前、政府のある研究機関が、特殊能力者の『量産』化に成功しました。 政府は、汚い仕事をさせるコマを自前で作れるようになったんです。 それからは、政府のダークネスに対する態度が急に変わりました。 今の政府は、ダークネスを危険視し、隙あらば壊滅させようと狙っています。 現に、政府の手の者と思われる刺客が、これまでに何度かダークネスを襲ってきました。 おそらく近い将来、政府とダークネスの全面戦争が始まるでしょう」 「……」 「その時のために、ダークネスは、優秀な能力者をできるだけ確保しておきたいんです。 今までダークネスがリゾナンターを潰さずに放っておいたのは、そのためです」 「……じゃあ、ダークネスは、さゆみ達が味方になるって思ってるの?」 「そうみたいっす。もちろん、小春はそんなことありえないって分かってますよ。 新垣さんも、道重さんも田中さんも、みんなものすごく頑固ですからね。 ……でも、もし、ダークネスが壊滅したら、次は道重さんたちの番です。 政府は、忠実な『犬』となる能力者だけを残し、あとは一人残らず処分するでしょう。 リゾナンターも、政府の『犬』になるのを拒めば、きっと皆殺しですよ」 小春の眼が、水平線に沈みゆく黄色い太陽へ目をやった。 「人間は、自分よりも優れている存在が許せない生き物なんですよ。 それは、道重さんだって、よく分かってるでしょう?」
817 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 19:48:11.42 0
2−3 しばらく沈黙が続いてから、さゆみが小春に尋ねる。 「それじゃあ小春は、これからもずっとダークネスとして生きていくの?」 「……分かりません。……小春、自分が何をしたいのか、よく分かんないんです」 小春の顔に、昔の面影が見える。 「だから小春、聞きたかったんです。 道重さん……、道重さんの夢って、何ですか? 道重さんの夢って、リゾナンターを続けていれば叶えられることなんですか? 道重さんは、いつまでそうやって、正義の味方ごっこを続けるつもりですか?」 さゆみは、太陽がわずかに黄色い光を残している水平線へ目をやった。 「小春。さゆみはね、愛ちゃんが好きなの」 「え?」 「ガキさんも絵里もれいなも、愛佳もジュンジュンもリンリンも、みんな大好き! もちろん、今、向こうでさゆみを心配してくれてる、あの可愛い仲間たちも大好き。 さゆみがリゾナンターを続けてる理由は、それだけ」 「……」 「みんなが好きだから、みんなと一緒に歩いて行きたい。 もし、みんなの進む方向とさゆみの進む方向がずれちゃったらその時はしょーがないよ。 でも、今は、リゾナンターのみんなが同じ方を向いている……。 少なくとも、さゆみにはそう思える」 「……」 「これから小春が歩いていく道がどこへ向かってるのか、さゆみには分からない。 でも、いつかその道が、またさゆみの歩く道と重なったらいいなあって思う。 だって、さゆみ、……小春のことも、大好きだから」 さゆみは茜色の空を仰いだ。小春が口を尖らせる。 「……道重さん、それ、小春の質問の答えになってないですよ」 「そっか。ごめんね、さゆみ、頭悪いから」 さゆみが小春を見て微笑む。 小春は、その柔らかな笑顔が、腹立たしくもあり、懐かしくもあった。
818 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 19:48:56.03 0
〈つないだ手のぬくもりが〉 3−1 「とにかく、小春、これからしばらくはダークネスとしてやっていきます。 能力者が治める世界がどういうものになるのか、今より良い世の中になるのか、 ちょっと確かめてみたい気もするんです」 少し間をおいてから、小春が突然大きな声を上げた。 「……あっ!大事なことを言い忘れてた!道重さん。亀井さん、生きてますよ」 さゆみの目が大きく開く。 「えっ!?本当!!本当にえり、生きてるの!?」 「どこにいるかは分からないですけど、ダークネスに囚われてるのは間違いないです」 大粒の涙が、さゆみの瞳からあふれ出る。 「……良かった、……本当に良かった……」 「でも、亀井さんを助けに行こうなんて思わないでくださいよ。 ガード、かなり堅いみたいですから、道重さん達の力じゃ、絶対返り討ちに遭います」 そう言いながら、小春は、ポケットからゼンマイ式の機械時計を取り出した。 「……もうそろそろ時間ですね……。道重さん、今から道重さんの体に電気を流します。 激しく闘った感じを出したいんで、少し強めに流しますけど、我慢してください」 さゆみは黙って頷き、涙を拭いて目を閉じる。小春はさゆみに近づき左手を掴んだ。 小春の二の腕に電光がはじけ始める。その時、さゆみが口を開いた。 「小春」 小春がさゆみの顔を見る。さゆみは眼を閉じたまま微笑み、小さな声で言った。 「ありがとう」 さゆみの笑顔が映っている小春の瞳が、わずかに揺れ動く。 小春は、その瞳に、静かに瞼を覆い被せてから、蒼白い光をさゆみに流し込んだ。 さゆみの体が、赤い砂浜に崩れ落ちる。 月が無いせいか夜が早い。さゆみの白桃色の頬が、闇に呑み込まれていく。 小春はそれを見つめながら、数年前のある日の出来事を思い出していた。
819 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 19:49:38.11 0
3−2 その日、リゾナンターは、行方不明になった能力者の少女を、全員で捜索していた。 少女の両親は、例によって娘の異常さを激しく嫌悪し、もはや真剣に探す気がない。 警察も、よくある不良少女の家出と断定し、調書を一枚書いて任務を切り上げた。 高橋に頼まれた小春は、ポラロイドカメラを使用して、自宅で念写を行った。 何枚かの写真が、鮮明な映像を写し出した。それらを見て、小春は絶句した。 そこには、数人の男に嬲られ、苦悶の形相で死んでいく少女の姿が写っていた。 小春は猛烈な吐き気を催し、トイレに駆け込み、便座にしがみついた。 胃の中のものをすべて便器の中にまき散らす。胃液が食道とのどを容赦なく焼く。 数十分後、小春は、這うように部屋に戻った。 ベッドに上がり、壁に背をあずけて座る。 小春の疲れきった心身を、黒い情念が浸蝕し始める。 写真の中で醜く笑っていた、ケダモノ以下の人間への殺意。 異質者の排除と、自己の保身とに必死なこの社会全体に対する憎悪。 それら負の感情の澱が、小春の心の襞に固くこびりついていく。 ふと、窓に目を向ける。 夜の闇がガラスを鏡に変えている。そこに、自分の顔が鮮明に映っていた。 ぼんやり見つめていると、その顔が、突然、あの少女の無惨な死に顔に変わる。 小春は悲鳴を上げ、枕元にあった携帯を掴んで逃げるように毛布にくるまった。 震える指が、小春にとって最も気を遣う必要のない先輩を呼び出す。 「……もしもし、小春です。……今から……カーテン……閉めに来てくれませんか……」 いつの間に眠ってしまったのだろう。 気がつくと小春は、薄暗い自分の部屋の天井を眺めていた。 毛布の外に出ている右手が、何か暖かくて柔らかいものに包まれている。 体を起こして見てみると、それは、ベッドに凭れて眠っている人の左手であった。 寝顔の白桃色の頬が、黄色い豆電球の灯りを反射して、微かに輝いている。 小春は、そこにそっと触れてから、自分の頬も触ってみた。 どちらも、同じように、しっとりと濡れていた。
820 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 19:50:43.75 0
3−3 さゆみが闘技場に戻ってきた。 生田がさゆみを背負って運び出す。鞘師達は、さゆみを心配そうに取り囲んだ。 カメラの死角をついて、さゆみの手が、横で寝ている譜久村の手を掴む。 さゆみは譜久村を介して、仲間たちと関根梓に、自分の思いを伝えた。 (みんな、心配かけてごめん。さゆみは大丈夫) 全員が、暗い表情は崩さず、視線だけで喜び合う。 (りほりほ。スイッチの件は間違いない。だから愛瞳さんを助ける方法を、皆に話して) 全ての視線が鞘師に集まる。しかし、鞘師は、その視線を避けるように下を向いた。 さゆみは、それを見て、心の中で小さくため息をついた。 鞘師は、人並み外れた強さと、優しさを持っている。 だが、時にそれらは、仲間の力を過小に評価させ、決断を鈍らせることにも繋がる。 (鞘師。さゆみは皆の強さを信じてる。だから、鞘師も、鈴木の強さを信じて!) 鈴木は、急に自分の名前が出てきたので目を丸くした。 しかし何かを感じ取ったのか、顔を上げて自分を見ている鞘師に、瞳の奥で笑いかけた。 それでも、鞘師は躊躇し続ける。 親友の命が再び危険に曝されるだろうその策を、口にすることがどうしてもできない。 そんな鞘師の苦悩する姿に、さゆみの優しさが、ついに耐えられなくなった。 (……みんな、ちょっと聞いてくれる?) さゆみは、全員の心に語りかけた。話が進むにつれて、鈴木の表情が引き締まっていく。 (……以上が、さゆみの考えた案なんだけど、みんな、どうかな?) 全員の心がさゆみに賛成の意を示す。その中に、鞘師の声も小さく混じっていた。 さゆみが薄目を開けて鈴木を見る。鈴木が小さく頷く。 (香音ちゃん、ありがとう。みんな、力を合わせて、梓さんの仲間を救い出そう!) さゆみは、視線を鞘師に移した。 (りほりほ。マルシェに気付かれないように、しっかりお芝居してね) 鞘師の瞳が、ようやくさゆみを見つめ返した。 その直後、マルシェの声が洞内に響きわたった。 《次が最後の実験よ。代表を一人決めて》
821 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 19:51:39.11 0
〈Ending:私 今、切なくて胸が苦しいよ〉 闘技場を出た小春とUは、ヘリポートへ向かう通路を並んで歩いていた。 「……ねえ、きっか。きっかはさあ、小春の今日の行動、怪しいと思わないの?」 「怪しいって、何がですか?」 「だってさあ、いろいろきっかに頼んだじゃん」 「何とも思ってませんよ。きっか、久住さんの命令なら、何でも聞きます」 小春は視線を廊下に落とし、声を低めて言った。 「……じゃあ、もし、小春がダークネスの敵になったら、どうする?」 Uは、相変わらず能天気な口調で答える 「もちろん、久住さんについていきますよ」 「そう……」 二人は扉の前についた。 「ねえ、きっか。きっかには、自分の夢ってないの?」 「え?夢ですか?う〜ん、そうですねえ」 扉の横の液晶パネルを指で叩きながら、Uは言った。 「大好きな人とずっと一緒にいること、ですかね。例えば……久住さんとか!」 そう言って恥ずかしそうに笑うUの顔の前で、鉄の扉がゆっくりと開いていく。 だだっ広いヘリポートの奥の方に、背の高い少女が立っている。 「あっ、さぁやだ!おーい、さぁやーっ!」 Uは、嬉しそうに叫びながら、その少女のもとへ駆けていった。 全身に包帯を巻いているその少女も、笑顔で手を振っている。 そんな二人の姿を見ているうちに、小春は、なんだか胸が苦しくなった。 (……きっか、それ、小春の質問の答えになってないじゃん……。 ん?……なってる……のカナ……) ―おしまい― ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 以上、『I miss you』でした。『ひょっこりひょうたん島』の続きです。 次回は、飯窪さん大活躍!※前作の「50」の次は「cm」でした。すみませんでした。
822 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 21:52:12.66 0
あげ
823 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 22:10:38.14 O
リアルを巧みに使ったさゆこはエピソードよかったです
824 :
名無し募集中。。。 :2013/09/02(月) 22:29:22.58 0
更新&転載乙です 真の主人公は小春かな☆
825 :
名無し募集中。。。 :2013/09/03(火) 00:04:06.65 0
あげ
826 :
名無し募集中。。。 :2013/09/03(火) 02:02:50.89 O
一筋縄ではいかないねぇ…
827 :
名無し募集中。。。 :2013/09/03(火) 07:25:30.20 0
おはようね
828 :
名無し募集中。。。 :2013/09/03(火) 08:04:40.70 0
さえみさんが2ch板を次々に消滅させていたようですがさゆみの力でまた復活してきてると考えてしまう自分はリゾスレ病ですか?
829 :
名無し募集中。。。 :2013/09/03(火) 08:54:35.84 O
ダークネスの陰謀ではなかったか
830 :
名無し募集中。。。 :2013/09/03(火) 12:15:25.24 0
昼
831 :
名無し募集中。。。 :2013/09/03(火) 14:40:27.71 0
あげ
832 :
名無し募集中。。。 :2013/09/03(火) 15:35:39.41 0
>>821 どちらかというとお気楽な話だと思ってたけど結構ヘビーな世界観なんですね
この世界でカメの奪還がかなうか
この先も期待してます
833 :
名無し募集中。。。 :2013/09/03(火) 17:45:49.09 0
上げの軍団!
834 :
名無し募集中。。。 :
2013/09/03(火) 19:22:03.83 0 蒼の 蒼の 蒼の軍団!