生田「道重さんスパゲッティーを食べませんか?」10

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浅い眠りから、フッと目覚めた。
途端に、目の前の真っ白な肌に、少し困惑する。

・・・・・・一体、何が、あったんだっけ?

転瞬、眠りの前の記憶が浮かんだ。
同時に、体の隅々にまで、先刻の掌の感触と快感が甦った。
恥ずかしさに、顔が紅潮する。頭の中も沸騰しているみたいだ。

ふと、視線を上げてみた。
滑らかな顎の線と、それを彩る紅い唇と、脇にぽつりと黒子が見える。
恥ずかしくて、恥ずかしくて、恥ずかしくて。
それ以上顔を上げることは出来なかった。

「起きたの?」
いつの間にか見とれていた唇が動き、くぐもった声が聴こえる。
「何か言ってよ」
微笑と感傷を含んだ声で、言葉が紡がれる。
ああ、この声をいつまでも聴いていたい。
自分の声に邪魔されるのすら、嫌だ。

不意に、細い指で顎を摘まれ、顔の向きを変えさせられた。
そこにあったのは、恥ずかしくて見られなかったけれど、一番見たかった、そのひとの瞳。
熱く潤み、どこか淋しげで悲しげな瞳に吸い込まれていきそうだ。
先刻の情事で、ふたりの肌は未だ湿り気を帯びている。
ぴったりと寄り添うと、自分の体が吸い込まれて離れないような気がする。
心地良さに陶然とする。離れたくない。このままこの感触に包まれていたい。

不意に瞼が閉じられ、長い睫が目に入った。
同時に、記憶の中のものでは無い、熱い掌の感触と快感が体を駆け巡った。
思わず発した啼き声は、重ねられた唇とねっとりとした闇の中に溶けていった。