リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第81話

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1名無し募集中。。。
「朝は必ず来る。誰にでも。どんなときでも」

あの人がそう言ってくれたときが、れいなにとっての夜明けだった。


   第2話 『トンネルと夜明け』

前回のお話はこちら↓
リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第80話
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1364599567/

リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ@wiki
ttp://www39.atwiki.jp/resonant/

第1話から20話までのログまとめ
ttp://resonant.web.fc2.com/

まとめサイト(仮) (1話〜24話までの小説は収録完了。シリーズ作品のリンク作業をまったり進行中)
ttp://www45.atwiki.jp/papayaga0226/

まとめサイト Ver.2(25話〜43話)
ttp://resonanter.blog47.fc2.com/

リゾナントブルーAnother Vers(ry 暫定保管庫(まとめサイト3) (44話〜最新)
ttp://www35.atwiki.jp/marcher/

掲示板 (感想スレ、作品題名申請スレ、あとがきスレ他)
http://jbbs.livedoor.jp/music/22534/

テンプレ>>2-7くらいまで
2名無し募集中。。。:2013/05/14(火) 12:58:00.09 0
3名無し募集中。。。:2013/05/14(火) 12:58:50.93 0
リゾスレ初心者向けQ&A
Q.このスレについて教えて!
A.このスレはモーニング娘。36thシングル「リゾナント ブルー」のPV(Another ver.)から想像に想像を膨らませて生まれたスレです
 作者一人ひとりによって設定は異なりますが、大まかに共通している設定は
 【超能力を持つ「リゾナンター」を名乗る少女たちが仲間同士心を通わせつつ「ダークネス」を名乗る敵の組織と戦う】といった感じです

Q.どの話から読めばわかりやすい?
A.テンプレ>>1の過去ログまとめで第1話(第1スレ)に目を通すことを推奨。
スレの雑談では『蒼の共鳴』の名がよく上がります。但し一大長編ですけどねw
2周年を記念してスレの住人が色んな質問に答えているスレhttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/music/22534/1271246993/も参考になるかと

Q.メンバーのキャラ設定は?
A.作者個々によって違うが多くの作品で共有している設定は以下の通り

 高橋愛…………リゾナンターのリーダーで戦闘も強い実力者。喫茶店のマスターをしている
 新垣里沙………リゾナンターのまとめ役?だがその正体は「ダークネス」から放たれたスパイ。後に真の仲間となる
 亀井絵里………心臓病を患っておりよく入院している。さゆみと親友
 道重さゆみ……絵里と親友。心の奥には「さゆみの姉・さえみ」という別人格が眠っている
 田中れいな……喧嘩最強でリゾナンター屈指の武闘派。愛の喫茶店で住み込み店員をしている
 久住小春………売れっ子芸能人。何も考えていないように見えて案外熱血だったりするかも
 光井愛佳………家庭の内外で孤独を感じていたところを愛に救われた。リゾナンター随一の常識人
 ジュンジュン…パンダに変身する一族の生まれ。変身が解けると裸になる
 リンリン………パンダ一族を守る組織「刃千吏(バッチリ)」の一員。ギャグセンス以外はエリート
 譜久村聖………出てきた設定は、サイコメトラー、譜久村財閥のお嬢さん、変2など
 生田衣梨奈……出てきた設定は、KY、無感情、新垣さん命
 鈴木香音………出てきた設定は、物体をすり抜ける、すごい聴力、数少ないツッコミ要員など
 鞘師里保………出てきた設定は、水軍の家系の末裔、御神刀使い、念動力(水限定)など
 飯窪春菜………出てきた設定は、はう、ラブベリーナ魔法学院最終学年、ジョジョバカ
 石田亜佑美……出てきた設定は、蒼の剣士、ぺったん、貧しさが憎い、石プロ
 佐藤優樹………出てきた設定は、こんちくわ〜、たなさた〜ん
 工藤遥…………出てきた設定は、強い責任感、男前
4名無し募集中。。。:2013/05/14(火) 12:59:49.04 0
【今まで出てきた能力まとめ】

高橋愛:精神感応(リーディング) /瞬間移動(テレポーテーション)/光使い(フォトン・マニピュレート)
新垣里沙:精神干渉(マインドコントロール)/鋼線使い
亀井絵里:傷の共有(インジュリー・シンクロナイズ) /風使い(ウィンド・マニピュレート)
道重さゆみ:治癒能力(ヒーリング)
  さえみ(姉人格):物質崩壊(イクサシブ・ヒーリング)
田中れいな:共鳴増幅能力(リゾナント・アンプリファイア)
久住小春:念写能力(ソートグラフィー) /幻術(ハルシネーション)/発電(エレクトロキネシス)
光井愛佳:予知能力(プリコグニション)/心の浄化(ハート・プリフィケイション) /水守(みまもり)
リンリン:念動力(サイコキネシス)/発火能力(パイロキネシス)
ジュンジュン:念動力(サイコキネシス)/獣化(メタモルフォシス(トゥ・ビーストorパンダ)

譜久村聖 :能力複写(リプロデュスエディション) /残留思念感知(サイコメトラー・オブジェクトリーディング)/液状化(リキュエファクション)
生田衣梨奈:精神妨害(マインドジャミング)/精神破壊(マインドデストロイ)/植物と会話(スピリチュアル・トーキング)/鷹の目(ホークアイ)/空間誘導(スキップ)
 鞘師里保 :水限定念動力(アクアキネシス)/水軍流の達人
鈴木香音 :非物質化(ディマテリアリゼーション)・物質透過(ペネトレイト)/超聴覚(ハイパー・ヒアリング)/獣化(マンティス)

飯窪春菜:五感共鳴(センス・リゾナント)/魔術(マジック)/粘液放出(アドヒア・セクレイト)
石田亜佑美:幻獣召喚(イリュージョナル・ビースト)/小石限定念動力(ペブルキネシス)/加速(アクセレレーション)
佐藤優樹:瞬間移動(テレポーテーション)/死霊魔術(ネクロマンシー)/音響分析(アナライズ)
工藤遥:千里眼(クレヤボンス)/精神??(マインド・ブラスト)

小田さくら:幻獣召喚(イリュージョナル・ビースト)/精神干渉(マインドコントロール)
5名無し募集中。。。:2013/05/14(火) 13:00:26.07 0
ジュンジュン獣化参考画像
http://resonant.web.fc2.com/data/panda.jpg

喰らってくたばれ!
必殺!
http://resonant.web.fc2.com/data/toro17054.gif

【喫茶店リゾナントイメージ】
間取り
http://resonant.web.fc2.com/data/142-1.gif
本日のランチ
http://resonant.web.fc2.com/data/155-1.jpg http://resonant.web.fc2.com/data/thumb/thumb156-1.jpg
タウン誌紹介文
http://resonant.web.fc2.com/data/toro28378.jpg

【TV・映画イメージ】
リゾナンター予告イメージ
http://jp.youtube.com/watch?v=wSVKqpCYrQs
リゾナンター予告編・i914Ver.  ※血液等の映像が含まれますので苦手な方は見ないほうがいいです
http://jp.youtube.com/watch?v=TEsl4BjQ8sA
リゾナンターの予告編パート2/映画風
http://jp.youtube.com/watch?v=9Rvh02cQQoI&fmt=6
リゾナンター/共鳴セヨ
http://jp.youtube.com/watch?v=3m65hxrvduY
リゾナンター予告編/ダークネスVer.
http://jp.youtube.com/watch?v=OkFqDKBJUBg&fmt=6
リゾスレ一周年記念動画
http://www.youtube.com/watch?v=VBgPc_o1u0E&fmt=18
The loneliness of the girls
http://www.youtube.com/watch?v=4IAclB1_-zs
リゾナンターOP
http://jp.youtube.com/watch?v=EXNriFUNuUY
6名無し募集中。。。:2013/05/14(火) 13:02:32.95 0
【まとめサイト(仮)で投稿日順に読む裏技】

裏技などございません。小説に関してはトップページからストーリー:スレ別分類のページに飛んでいただければ投下順に並べております
タグによる分類など作業中ですがいつ完成することやら(遠い目


【まとめサイトVer.2で投稿日順に読むには】

タグでスレごと(第○話)の作品群を見ることができます。
登録日の順になっているのでそこからたどっていけばおk
閲覧できないよという場合は火狐やChromeなどIE以外のブラウザを導入してみて

【暫定保管庫(まとめサイト3)で投稿日順に読むには】
トップページからスレ別分類に飛んで(ry
最近の作品に関しては簡単な解説のページもありますのでそちらも参考に

【代理投稿を依頼するときのお願い】

したらば掲示板のアク禁スレに作品を上げるときは対処方法の指示も書いてください
例えば
・規制食らったので転載してほしい
・レス数多いから掲載を手伝ってほしい
など

転載する人は必ず投下する旨をアク禁スレに宣言していってください
(投下かぶり防止のため。宣言が同タイミングなこともあるのでリロード&しばらく待つのも大事)
7名無し募集中。。。:2013/05/14(火) 13:19:18.28 0
川*’ー’) < テンプレの設定やまとめサイトを参考にして自由に想像するやよ
ノ|c| ・e・) < 登場人物の能力やストーリーの背景・設定は作者さんの自由なのだ
ノノ*^ー^) < シリアル路線でもコメディ路線でもお好きなものどうぞ
从*・ 。.・) < AAを使ったものや1レス完結ものでもOKなの
从*´ ヮ`) < 他の作者さんの設定を流用するのもありっちゃ
ノリo´ゥ`リ < 気に入った話の続きや繋ぎの話を書いてみるのもありカナ☆
川=´┴`) < プロットを書いて他の作者さんにストーリーを書いてっておねだりしてもええで
川*^A^) < アーでも書いてくれるかは作者さん次第ヨ
川´・_o・) < ソッカー

作品投稿の際、10レスを越える場合は連続投稿規制(バイバイさるさん)がかかるので注意。
それから1レス当たり最大32行までしか入らないのでそれも注意。

http://resonant.web.fc2.com/data/toro18266.jpg
君の作品を待ってる

<※初めてスレを訪れた方へ>
 お勧めの作品やわからない用語については遠慮なく質問してみてください
 スレに何人もいるであろう「生き字引」が24時間以内に答えてくれるでしょう(多分)
8名無し募集中。。。:2013/05/14(火) 13:20:17.65 0
以上テンプレ
9名無し募集中。。。:2013/05/14(火) 13:39:26.63 O
スレ立てとテンプレ乙でした
れいな卒業話が増えそうな予感ですね
10名無し募集中。。。:2013/05/14(火) 15:53:53.50 0
11名無し募集中。。。:2013/05/14(火) 19:12:43.37 O
12名無し募集中。。。:2013/05/14(火) 20:47:24.33 0
>>1
13名無し募集中。。。:2013/05/14(火) 22:31:51.77 0
あげあげ
14名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 00:02:55.49 0
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/696.html の番外編です


ダークネスの本拠地の一角に、その建物はあった。
瓦葺の屋根、赤く塗られた柱、そこはまるで神社そのもの。
つまり、その奥には祭られるべき「神」がいる。

本殿へと続く、石畳の道。
少女は、躊躇することなく、その道を歩き続ける。

― 一度、お会いしたほうがいいでしょう。―

Dr.マルシェこと紺野博士は、そう少女に言った。
ダークネスを支える大幹部にして、「不戦の守護者」。
ダークネスがここまで大きな組織となった一因は、彼女の持つ予言能力にあると言っても過言ではなかった。

「不戦の守護者」の予言は常に正確で、そして”正しい”。
彼女の能力によって、その企みを実行に移す前に粛清された敵対組織や身内の構成員は数多い。戦わずして、組織を守る。
二つ名に相応しい、功績。

本殿の、重厚な門構え。
下界と神界を隔てているような重い扉を、少女はゆっくりと押し開いた。
15名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 00:03:47.14 0
奥へ続く、赤い絨毯。
そしてその絨毯を挟むように、白い衣と赤い袴を着た四人の従者が座していた。
そのうちの、面長の女性が少女に問いかける。

「何用でここに来た?ここは一介の構成員が立ち入るような場所ではないぞ?」
「…博士に言われて、来たんです。『不戦の守護者』さんに会いに行けって」

威圧するかのような相手の物言い、しかし少女の心は揺らぎさえしない。
不遜とも思えるその態度に、背の低い、短い髪の従者がしびれを切らした。

「貴様ごときが軽々しく口にするような名前ではないぞ!!」
「待て!今、博士と言ったな」

身を乗り出すのを、制するものがいた。
四人の中で一番年長と思しき従者、彼女は確かめるように少女に問いかけた。
ゆっくりと頷く少女。

「マルシェの差し金か。本来なら『守護者』様には我々神取(かんとり)の取次ぎ無しには決して謁見を許されないしきたり」

だが、その従者も知っていた。
かの奇天烈博士はしきたりなどを気にするような殊勝な人間ではないことを。
指示を仰ぐが如く、絨毯の奥の白い幔幕に目を向けた。
16名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 00:04:43.97 0
「構わない。あなたたちは、下がっていいわ」

幕の奥から、声が聞こえてきた。
優しさと、深遠さを兼ね備えた、不思議な声。
四人の従者たちは深く頭を垂れ、それから大きく四方に散っていった。

それを合図に、幔幕がゆっくりと上がってゆく。
姿を現したのは、幾重にも煌びやかな布を羽織った、長い黒髪の女性。

「はじめまして、じゃないわよね。一度あの会議場であった事があるはずよ」

美しい顔立ち。
しかしその瞳は、少女の全身を捉えている。並みのものならこの時点で脂汗を垂らし、一刻もこの場を離れたいと願うだろう。

「博士に言われて来たんです。あなたに会え、と」
「…紺野らしいね。まあいいや、あたしが見てあげる」

「不戦の守護者」の大きな瞳が、かっと見開かれる。
鬼気迫るその表情に、少女は釘付けになる。
それとともに。一瞬。ほんの、一瞬。
何かが、体を通り過ぎる。そんな感覚を、少女は受けた。

弛められる、眼力。
瞳を休めるように、少し目を瞑り、それから少女を呼び寄せその頭を撫でた。
17名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 00:05:58.14 0
「合格よ。あんたは、組織に害をなす人物ではない。今のところはね」
「『守護者』さんの力で、見たんですか?」
「そうよ。それがあたしの能力だから」

「不戦の守護者」が持つ予言能力。
組織に降りかかる禍を予知によって感知するとともに、個人が辿る運命をも見通すことが出来る。
しかし、そのような高次能力者は全員が与えられる情報を処理できずに精神の異常をきたしてしまう。
では、なぜ彼女はそのような能力を保有しているにも拘らず平静でいられるのか。

能力の規制。
「不戦の守護者」は、自らの予言能力にある規制をかけ、その巨大な力を制御する事に成功した。
その規制とは、組織にとって害となるもの以外の未来予知ができなくすること。
それにより彼女は安定した未来予言をすることが可能となり、同時に組織だけの守護者として君臨するようになったのだ。

「これで用は済んだっしょ?あまり長居すると神取たちがうるさいし、今日はもう帰んな」
「はい、わかりました」

少女は一礼し、踵を返してその場を去ろうとする。
そこへ、背中から「不戦の守護者」が声をかけた。

「紺野に言っといて。研究室に篭ってばかりいないで、たまには菓子折りでも持ってこっち来なってさ」
「わかりました」

少女は少しだけ振り返り、それから再び赤い絨毯に沿って歩きはじめた。
その小さな後姿を見つめながら、「不戦の守護者」は深いため息をつく。
18名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 00:06:49.33 0
紺野。あんたの考えはわかってるよ。あの子をあたしに会わせる事で、あらためて自分は「シロ」であることをアピールしたかったんだろう?

個人の運命を見ることが出来る彼女の能力。しかし。
紺野博士の運命を見ることはできなかった。普通に考えれば、彼女は組織に害をなす人間ではないということを意味する。
だが、「不戦の守護者」は本能で、警戒する。

紺野は、何かを隠してる。

先ほどの少女の運命が見通せなかったのも、「少女が紺野の所有物に過ぎない」ことを証明したに過ぎない。
ただ、紺野は自分が疑われていることを知っている、それだけは確かだが、まだ他に何らかの意図を隠し持っていると「不戦の守護者」は確信していた。

恐らく。
従順のポーズが解かれる時、紺野の隠している事は明らかになる。

紺野。「神」の目からは、逃れられないんだよ。

「不戦の守護者」には、紺野博士は一本道の通路を恐々進んでゆく一匹の鼠にしか見えていなかった。
その行く手に待ち構えている凶悪な罠によって、身を滅ぼす結末。それを楽しみにすることすら「神」のほんのひと時の、戯れ。
19名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 00:08:55.64 0
>>14-18
代理投稿終了
20名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 00:39:56.57 O
>>19
更新代理乙です
マルシェと守護者さんはいずれ対立しそうな感じですね
21名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 02:12:47.19 O
ねるなんと
22名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 06:05:11.01 O
おは
23名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 06:30:56.56 0
>>19
作者さん代行さん共々乙ですた
居住区とか従者とか飯田さんを取り巻く設定の一つ一つが魅力的です予知に制限をかけてるところとかも
今後の展開から目が離せません
24名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 08:26:07.59 0
>>19
飯田さんが破滅へと向かって進む鼠のように捉えた紺野博士の姿がリゾナンターΧの導入部の紺野さんの姿と重なって感じられましたね
個人的には大変好きな描写です

>>14-18
『リゾナンターΧ(カイ)番外編・さくらと守護者と鼠の話』 http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/720.html#id_f2572af3

Χの番外編についてはルート毎に分けるのか一緒くたにしておくか考え中です
25名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 12:49:18.27 O
おっと
26名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 12:55:15.95 0
油断大敵
27名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 15:27:42.15 I
休憩からのほぜ
28名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 16:35:59.15 0
帰る途中もほぜなん
29名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 19:15:34.04 0
あげ
30名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 20:14:47.15 O
よるなんと
31名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 20:29:07.00 0
――――。

田中れいなはぎしぎしと軋む骨の痛みを抱え、内臓が震えているのを感じながら
胃液が競り上がってくるのに耐えている。
神経が自分の思い通りに機能しないのは、今に始まったことではない。
だが、以前の自分であれば体験せずにすむ苦痛が外と中から同時に
襲ってくるのは気持ちのいい事では無かった。
それでも、意識はある。
強制的に与えられる苦痛が田中に気を失わせない手助けをしてくれていたが
痛みよりも身体に圧しかかっている重みこそが、田中を二本の足で
立たせている最大の理由だった。

身体にある重み。
佐藤優樹が自分にしがみついている限り、田中は膝をついて地面に
倒れる事はできなかった。
そして、左の肩を掴まれている感触。

 「れいな!」

強く自身の名前を呼ばれるのと同時に、その感触はそこにあった。
少し骨ばったさして大きくもない手。
長い指が、田中にそっと触れている。―― 後藤真希の顔が見えた。
熱くも冷たくもない指の熱が、服の上からじりじりと伝わってくるのがわかる。
何もかもが頼りないこの空間で、佐藤と後藤が自分のすぐ傍らに存在している。

だから田中は地面を踏みしめて、眼前の女を睨みつけた。

 「i914!」
32名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 20:29:45.81 0
後藤がそう呼んだ女、呼ばれた本人が、動きを止めて笑みを浮かべる。
闇の帝王と呼ばれた【ダークネス】を殺した張本人。
彼が創り出した『異能者』を殺すために生まれたモノに憑かれた、兇人。
そして、そのダークネスによって生み出された破壊者。

そして。
…そして?

立っている女を見つめる。
背が小さく、どこか幼い、猿顔だと笑っていた平坦な唇。
そこに薄く浮かべた笑顔以外に感情の現れは一切ない。

だが何も無い表情に存在するものを、田中は感じ取ることができた。

 空虚。
 女が、i914が発散している虚ろな気配。
 虚無であり空ろであり、空っぽの中の更なる"空"。

不快な汗がじわりと滲みでてくるのを感じて、田中は眉をしかめる。

 「れいな、辛そうだね」
 「…痛いに決まってる」
 「だろうねえ。君としては余計に痛いと思うよ。でも、君はこれまでの戦いで
 精神的にも肉体的にもやわにできないようになってると思ってるんだけど?」

血も出ていなければ、骨が折れているわけでもない。
内臓の痛みを除けば、肉体的な痛みなどは我慢すればいい。
常に痛みと共に生きていた自分自身。
33名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 20:30:35.74 0
 ともすればこの痛みは、きっと。
 
i914が静かに前進してくる。
田中は右足を一歩だけ前に踏み出した。
亀の歩みにも似た速度でゆっくりと進むその両腕。
ナノマシンによって変容した腕には虹色の回路が並び、不気味な美しさがある。
だが手から放たれた光に触れれば、粒子の如く消滅する死への誘い。

i914の頬にもそれは這い並び、まるで機械人形のような風貌だった。

 「のんびり会話してる場合じゃなさそうだけど、とりあえず逃げる?」

その一言で、田中は初めて『逃亡』という選択肢があることを思い出す。
逃げる事は決して苦手ではない。
むしろ得意だと思う、佐藤優樹という【瞬間移動】の異能者もいるのだ。
何故、自分は逃げることを放棄していたのか。

 何故、未だ自分の身体と心はこの場から立ち去ることを拒んでいる?

後藤の静かな、そして普段より力と張りを持って響く声。
自分の混濁していきそうな思考を引きずり上げてくれる。
敵である筈の存在への悲しみは、ここへ来る前に解消されていた。
今は、逃げてもいい時のはず。

だがこうも思ってしまう。逃げ切れる訳が無い。
逃げられる訳がないから、戦うしかない。
戦う。戦う。

そしてi914を ―― 殺す。
34名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 20:32:00.16 0
>>31-33
『異能力 -Dark clouds-』
以上です。

言うのを忘れてましたが、内容は続編というより
完結編に近い仕上がりです。なので続編を期待された方には
申し訳ないものかもしれませんが、どうかお付き合いください。

-----------------------------------------------------------ここまで代理
35名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 22:04:15.55 0
>>34
乙です
もの凄く緊迫した状況だというのは分かった
いきなり決着とかじゃなく背景とか他のメンバーの安否とかも描いてくれるんだよね
36名無し募集中。。。:2013/05/15(水) 23:58:39.03 T!
異能力キテタワー!
転載も乙です
でも今日はもう寝る・・・
37名無し募集中。。。:2013/05/16(木) 00:34:59.37 O
更新さん代理さんお疲れ様です
まーちゃん出てきたのが意外
ともあれ次回も期待
38名無し募集中。。。:2013/05/16(木) 04:05:09.24 O
おやすみなんと
39名無し募集中。。。:2013/05/16(木) 05:59:57.66 0
いきなりクライマックス突入でビックリw
40名無し募集中。。。:2013/05/16(木) 06:55:37.95 O
おはっす
41名無し募集中。。。:2013/05/16(木) 10:14:51.24 T!
ちょっと早いがうええおええ特盛り
42名無し募集中。。。:2013/05/16(木) 13:05:22.27 0
あげとく
43名無し募集中。。。:2013/05/16(木) 15:38:02.05 O
3時あげ
44名無し募集中。。。:2013/05/16(木) 17:58:48.50 0
夕方
45名無し募集中。。。:2013/05/16(木) 18:16:04.76 O
あげ
46名無し募集中。。。:2013/05/16(木) 19:59:32.48 0
下がるの早い
47名無し募集中。。。:2013/05/16(木) 21:15:07.86 O
ほぜん
48名無し募集中。。。:2013/05/16(木) 23:10:41.09 0
あげ
49名無し募集中。。。:2013/05/16(木) 23:31:31.28 0
>>31-33の続きを代行するよ
50名無し募集中。。。:2013/05/16(木) 23:32:18.91 0
 「れいな」

田中の両目が本来の輝きを失っていくのを見て、後藤は声をかけた。
この行為は、女性が自ら任じている傍観者のものではない。
一時は【ダークネス】の組織に加担したりもしたが、それは知り合いに
協力しただけであり、闇の帝王にではなかった。
自分が声をかけなければ、田中の思考は田中れいなではないものに浸食される。

その浸食が終わってしまえば、田中は今のように苦しまず、悲しまず
痛みを感じることもなく、生き、戦い、そして魂は死ぬだろう。

 『i914は意図的に逃がされた、っていう考えは当たってるよ。
 そして次にダークネスが行ったのは、私達の"蘇生"。
 ま、残っていた元の細胞によって創った劣化コピーだけど。
 ヤツが考えていたシナリオにはこの組織に居るだけだと要素が不足し過ぎてたの。
 感情エネルギーを蓄積するためのね。
 この世界は蓄積するための箱庭でしかない、そしてi914は自覚した。
  ―― 調節された元の人格、破壊者としてね』

後藤は過去を一瞬思い返すと、田中の手首を無造作に掴んだ。
田中が持っていたナイフを、ベルトの装着されていた鞘に無理やり収めさせると
田中の両目を覗きこむ。
全てにおいて諦めているようでいて、それでもあがき続けようとする。
そんな複雑な色合いが混ざり合っているはずなのに、あまりにも希薄。

 「まいったな、その腰に抱きついてる子を宥められるのってれいなだけなんだけど」
51名無し募集中。。。:2013/05/16(木) 23:32:58.89 0
後藤は佐藤の【瞬間移動】に頼ろうとしたが、少女は怯えきってしまって使い物にならない。
その時、田中の視線が後藤ではなく正面へ、同時に田中の腕が乱暴に振り回される。
後藤を押し退けたその隙間に、光の粒子がまるで流星のように弾けていった。

そして既に田中の目の前に、虹色の両腕をぶら下げたi914が迫っている。
彼女もまた【瞬間移動】の異能を保持していたが、田中はその動きを想定していた。
それでも胸の中央に強烈な衝撃と痛みを加えられてしまう。
i914は【精神感応】の異能を保持している。

多能者。

複数の異能を持つ者をそう呼ぶことがあるが、並の人間が同時発動ともなれば
神経が焼き切れるような痛みに襲われ最悪の場合、脳死する。

i914の拳がめり込み、骨を打ったごつ、という音が鳴る。
折れてはいなかったが、蹲りたくなるほどの苦しみを与えてくる。
それでも田中は踏みとどまった。
追い打ちはない。
一撃を与えた拳はすぐに引いて、第二撃の構えを見せている。

動きはない、虚ろな瞳で観察するような眼差し。
田中へと打った一撃の痛みが退くのを待つように。
田中は初めて、両目を直視した。

 黄金の燐光を放つ瞳の奥が、蠢く。
52名無し募集中。。。:2013/05/16(木) 23:33:36.56 0
構えを見せていた『i914』の腕が動き、振り下ろされた拳から放たれた
光の粒子の軌道はやや単調で、田中は半歩下がって避けた。
そこで田中は跳躍し、距離をとる。
【共鳴増幅】による身体的強化があったからかもしれない。
だがそう何度も佐藤を巻き込まずに避けられる自信が無い。
今、i914との距離は約五メートル。
もう一度跳躍して本格的に逃げればなんとかなるだろうか。

膝を少し曲げた瞬間、i914が目の前に。

 「…っ!」

瞬きもせずに動きを見ていたはずなのに、田中の目はその速度を完全に追い切れない。
否、そもそも【瞬間移動】を使われては、【共鳴増幅】で視力を強化した所で意味はない。
低い姿勢で突っ込んできたi914は、田中の腹部に下方から抉り込む一撃を喰らわせる。
その衝撃に身体が浮く。
と、同時に腹に横殴りの追撃。
田中の動きが止まる。
殴られ過ぎた臓器達が震え、まだ殴られていない周りにも痛みを与えていく。
だが骨は折れない。
距離を。
そう脳は命令しているのに、田中はついに膝をアスファルトにつけてしまう。

虹色の筋が粒子となって地面に落ちていく。
i914の両腕に並ぶ疑似回路に、田中は憎しみを込めて睨んだ。
戦闘の構えを向けた時。

 「たなさたん…たなさたん…っ」
53名無し募集中。。。:2013/05/16(木) 23:34:32.84 0
佐藤の掠れた声に、田中の意識が晴れていく。
腰にしがみついている小さな命の重さと存在を思い出す。
先ほどまで心は佐藤に向いていたはずなのに、何かの拍子で忘れてしまう。
小刻みに震えているその身体は、これ以上ないほどに"生"というものを
思い知らせているのに。

 「たなさたん…みんなみたいにならないで…」

小さく呟きながら、佐藤が田中の背中に顔を押し付けてくる。
少女の呼吸音がうるさいほどに鼓膜を打った。

 田中は思いだす。
 どうしてこんな事態になってしまったのか。
 そして何故ここに佐藤と二人しか居ないのか。
 "隔離"された世界は後藤による【空間支配】。

あの人は待っている、誰も願っていなかった結末を。
54名無し募集中。。。:2013/05/16(木) 23:36:19.25 0
>>50-53
『異能力 -Dark clouds-』
以上です。

同タイトルは編集の際は全てまとめて頂けると嬉しいです。
お手数をおかけします(平伏

---------------------------------ここまで
55名無し募集中。。。:2013/05/17(金) 01:22:50.72 0
あげとく
56名無し募集中。。。:2013/05/17(金) 06:02:55.68 O
目が離せないね
57名無し募集中。。。:2013/05/17(金) 08:19:59.07 O
おはなんと
58名無し募集中。。。:2013/05/17(金) 08:38:20.15 0
>>54
乙ですた
ナノマシンで腕が形状を変えた高橋さんというかi914がヤバすぎ
このまま破壊者として有り続けるのか否か
続き待ってます
59名無し募集中。。。:2013/05/17(金) 13:09:31.19 0
このまま決着まで一気に突き進むのかな
60名無し募集中。。。:2013/05/17(金) 16:39:39.38 0
あげ
61名無し募集中。。。:2013/05/17(金) 18:47:22.99 0
人稲
62名無し募集中。。。:2013/05/17(金) 20:27:45.35 O
更新代理乙
最後のまーの言葉が気になる……
63名無し募集中。。。:2013/05/17(金) 21:41:44.48 0
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/720.html の続きです




上空を飛ぶ鳥が、空に磔にされる。
周囲から連射されるいくつもの弾丸が、軌道の途中でぴたりと止まる。
まるで流れ出ている液体が、粘性を持ち固まっていくかのように。

「永遠殺し」の周囲の時は、一斉に刻むのを止めた。
64名無し募集中。。。:2013/05/17(金) 21:42:18.07 0
☆ ★ ☆
65名無し募集中。。。:2013/05/17(金) 21:43:16.10 0
これは、ただの交渉のはずだった。
急激に力をつけつつあると噂のあった、とある敵対組織。
「永遠殺し」はそのトップとの対談のため、組織の本拠地に車で向かっている途中だった。
傍らにはおかっぱ髪の、表情に憂いを帯びた少女。

― 武力を使わない「戦い」も、きっと彼女にとって役立つと思いますが ―

本来、大事な交渉の場を社会見学の場にする趣味は「永遠殺し」にはない。
かのi914をモデルに造ったという少女、その保護者がそう進言したのだ。
既に少女に関する「叡智の集積」の指示は絶対、という通達が組織の長から全幹部へと届いていた。

なに考えてんのよ。
その独り言はかつての盟友である首領に向けられたものでもあり、また不可解な動きをする白衣の科学者に対するものでもあった。
特に、後者は。目的がまったく掴めない。
「永遠殺し」は、「銀翼の天使」と並ぶ組織の二枚看板である「黒翼の悪魔」の失踪に彼女が絡んでいると睨んでいた。
「黒翼の悪魔」が持つ空間操作能力ならば、幹部全員に気付かれることなく行方をくらますことなど容易なこと。
ただ、理由もなくそんなことをする人間では、決してない。
基本的に彼女が興味のないことには動かないことを、旧知の仲である「永遠殺し」は熟知していた。

「あの…」
「…何?」
「聞きたいことが、あるんです」

どこまでも潜ってしまえる思案を中断したのは、隣のシートに座っていた少女だった。
この少女も何を考えているのか得体のしれないところはあったが、車での道中、まだ目的地に着くまでには時間がある。
暇つぶし代わりに、「永遠殺し」は少女と会話をすることにした。

「私で答えられるものなら」
「博士は、『今回は、相手を殺さない戦いです』って言ってました。でも、私は敵は必ず殺すものって教えられてきました。その違いが、わからなくて」
66名無し募集中。。。:2013/05/17(金) 21:43:58.95 0
誰よ、そんな物騒な考えを教え込んだのは。
大方「黒の粛清人」か、はたまた「氷の魔女」か。殺人マシーンを育てるのなら、それでもいい。ただ、「永遠殺し」はそん
な趣味の悪い計画に付き合うつもりなどまったくなかった。

「敵とは言え、言葉でわかりあえる場合もある」
「…そうなんですか?」
「私たちは能力者であるとともに、人間でもある。武力では解決できないこと分野を、言葉というものは担っているのよ」

少女は、「永遠殺し」の言葉を咀嚼するかのように、その視線を左右に泳がせた。
そのうち、新たな疑問が湧いたらしい。

「でも、能力を持たない人たちは。私たちのことを『バケモノ』って言います。能力者は、化け物なんですか?人間なんですか?」
「どちらとも言えるし、どちらとも言えないとも言えるわね。ただ…」

「永遠殺し」が、窓の外に目を向ける。

「人は、自分の理解の範疇を超えたものに対し、そう呼ぶことはあるわ。そして、そういうものは大抵社会の中のマイノリティーに過ぎない。私たちは能力者として強者であるとともに、勢力的には弱者とも言えるのよ」
「そうなんですか」
「だからこそ、ダークネスという組織が存在する」

言いながら、予想外の展開に自分で呆れてしまう。
まさか、こんなところで組織の存在意義について語ることになろうとは。
ただ、そういうことを教えても損はないのもかもしれないとも思う。
少女は、i914をベースにして造られているという事実。
つまり、育て方によっては先輩と同じように組織を裏切る可能性があるということ。
それだけは、避けなければならない。
67名無し募集中。。。:2013/05/17(金) 21:45:07.20 0
「さあ、着きましたよ」

運転手に声をかけられ、車を降りる。
しかしそこは、建物の影すら見当たらないただの草原。

「何もないじゃない。本当に着いたの?」
「ええ。ただし、着いたのはあんたたちの人生の終着地だけどな」

運転手が片手を上げる。
草叢から一斉に現れる、黒のニット帽を覆面代わりに被った集団。その数、20以上。
手には、マシンガンらしき銃火器を携えている。
瞬く間に蜂の巣にされるのは、明白だった。

「どういうつもりよ」
「見ての通りだ。あんたたちは、罠に嵌ったんだよ!!」

運転手の顔が、徐々に変容してゆく。
擬態能力者か。しかし彼の能力など、今となってはどうでもいいこと。
それにしても。
傍らにいる少女は、これだけの人数を前にしても眉一つ動かさない。
噂には聞いていたがここまでの強心臓とは。

「これだけの人数相手に、あんたの能力がどれだけ通じるかなあ。『永遠殺し』さんよ?」
「ああ、そう」
「余裕ぶるのも今のうちだ。撃て!!」

男の言葉を合図にして、周りを取り囲んだ男たちの銃が一斉に火を吹いた。
68名無し募集中。。。:2013/05/17(金) 21:46:17.79 0
☆ ☆ ☆
69名無し募集中。。。:2013/05/17(金) 21:47:29.02 0
「永遠殺し」が時を止めていられる時間は、凡そ8秒。
この場にいる全員の息の根を止めるには、時間が足りない。
ただし。
エンジンのかかった車に乗り込むには十分過ぎる時間。

「永遠殺し」は、車のそばにいた運転手を遠くへ蹴り飛ばし、そしてそのまま運転席に入りアクセルを思い切り踏み込む。
蹴り飛ばした運転手が包囲網の中心に転がった気もするが、そんなことは些末なことだった。

車は、敵の本拠地に向けひた走る。
余計な寄り道をしてしまったが、当初予定していた時間には間に合うだろう。

「本当に誰も殺さなかったんですね」
「ええ。だって殺す必要がないじゃない。無益な殺生を避けるのも、仕事の一つよ」

バックミラーに見える、少女。
その視線を感じながら、「永遠殺し」は不可解な思いを抱く。

彼女が時を止めた時。
少女は。少女の姿は。
どこにも存在していなかった。

一瞬で時の支配の及ばない場所へ逃れたのか。
瞬間移動が彼女の能力ならば、後で合流すればいいだけ。
そう思い、車での離脱を実行した「永遠殺し」だったが。
車を走らせた際には、すでにバックミラーに少女の姿が映っていた。

予め私の行動を読んで、車へと移動したのか。
それとも、そもそも私が止めた時の中に少女は”存在していなかった”のか。

答えは、止められた時の中にしか存在しない。
その謎を時ごと置き去りにするように、「永遠殺し」はそのことについて考えるのをやめた。
70名無し募集中。。。:2013/05/17(金) 21:48:58.95 0
>>63-69
代理投稿終了
71名無し募集中。。。:2013/05/17(金) 23:24:59.71 0
>>70
乙でした
さくらちゃんの研修ももう大分進んできましたね
その能力の正体はやっぱ時間系なのか
72名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 01:48:29.12 O
>>70
更新代理乙です
矢口の言われるままに命を奪っていたさくらがこれでどう変わるのか
次の展開が気になりますね
73名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 04:03:33.96 O
おやすみずき
74名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 07:00:28.95 0
おはリゾ
75名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 08:12:58.31 I
>>70 おつです。やっぱ面白いこのシリーズ!先がよめずワクワクします
76名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 08:31:51.29 0
>>70
作者さん代理さん乙でした
ダークネスの多彩な顔ぶれとの修行に影響を受けたさくらがどんな戦士に育ってリゾナンターの前に立つのか
次回も楽しみにしていますう
77名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 10:10:49.39 I
『この地球の平和を本気で願ってるんだよ!』
http://www35.atwiki.jp/marcher/m/pages/775.html?guid=on#id_0fa81747
の続きです。

全スレからのレスです。
80→959
今回描きたかった1つなので、気にしていただけて嬉しいです。
80→961
お待たせしました。更生のきっかけ、お待ちくださいませ。
80→962
今回は工藤さん視点が多いです。果たして本人らしくなっているでしょうか。
80→りほなんたー
りほなんたー道重さんにそう言って頂けて安心しました。枯れ木なりに頑張ります。
また、兼保全作に気付いて頂きありがとうございます。
この時点で該当(http://www35.atwiki.jp/marcher/m/pages/770.html?guid=on)の1レスを
『この地球の平和を本気で願ってるんだよ!』Prologue - スパイ潜入
とさせて頂きます(保管庫にあるタイトルを使わさせて頂きました)。
さらに、直近のりほなんたーを読ませて頂き、『この地球の〜』の展開・結末を変更する事にしました。(リゾナントならぬリホナント? いや、違うな)
とにかく良い意味で影響を受けました。これからも拾える様でしたらぜひお願いいたします。

投下開始↓
78名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 10:11:47.81 I
「ハッピー!」

声がした方を見ると、服の色も肌の色も黒い女が立っていた
テンション高いし、声も高いし、何なんだ

「……あんたか」
「田中さんの知り合いですか?」
「まあ……そうかな」
「こんな道端じゃ話しにくいから、場所変えない?」
79名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 10:13:05.15 I
──



着いた先は、近くの住宅街からスゲー離れた廃工場の中
天井や壁は穴だらけで、特撮ヒーローがよく戦ってる場所みたいな感じ

「で、何の用っちゃ?」
「用があるのはあんたじゃないわ。そっちの子」

え、ハル?

「粛清人R≠ェ子どもに用?」

粛清人!?
もしかして、ダークネスの!?

「答える必要はないわ。あなたはただ、引き渡せば良いの」

ウソでしょ!?
ハル、何も知らないんだけど!
傀儡師様、ハル任務失敗ですか!?
粛清されるんですか!?

ザッ

田中れいなが、ハルをかばう様に前に出る

「渡す訳なかろうが」
「守る≠チて言ったんだからそう答えるわよね。むしろ、そうでなきゃつまらないわ!」
80名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 10:14:31.87 I
粛清人が向かって来る

「工藤、隠れとき!」
「は、はい!」

急いで工場の外へ向かって走る

なんで粛清人が!?
マジで粛清されんの⁉
確かに大した情報は報告できてないけどさ!

新垣里沙は、2つ目の能力を使いこなせてないとか
田中れいなは、究極にバカだとか
新入りの4人は、能力を一度も見てないしほとんど会話してないとか
光井愛佳は、足の負傷で戦闘に参加できないとか
道重さゆみは、自宅で喫茶店用の節約メニューを考えてるとか
高橋愛は、別行動で1度も会った事ないとか

……2週間でこれだけの内容じゃダメだよな
これでも頑張ったのに……チクショー!
81名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 10:15:32.49 I
ガシャーン!

後ろから派手な音がして振り返ると、さっきと同じ場所に田中れいながいて、離れた場所に大量の砂ぼこり

粛清人はどこ?

ガシャン!
ゴロゴロゴロ……

砂ぼこりからドラム缶が転がり出て、粛清人がゆっくり立ち上がる

「……やるじゃない」

鋭い目付きで田中れいなを見る粛清人

恐っ!

廃工場の壁に隠れて様子を視る

──透視──トランスペアレント

「簡単に受け流される様じゃ、れいなには勝てんと」
「言ってくれたわね……あたしを怒らせて、生きて帰れると思うな!」

──獣化──パンサー

粛清人の服が破れ、肌から毛が生える
歯も鋭くなり、牙になる

「ああ、あんたの能力って獣化やったと。忘れとった」
82名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 10:17:15.12 I
粛清人が、真っ黒な豹に変わった

「久々にその姿を見るっちゃん」

真っ黒な豹が走り出した

「やっぱ走るのは速いっちゃね」

真っ黒な豹が、田中れいなを中心に周りながら近づいたり離れたり不規則に走る

「いつまでも走ってて、ヒビってると?」

シュパッ!

「っ!」

真っ黒な豹が突然攻撃してきた
田中れいなの左腕に4本の傷がついた

「……あーあ、乙女を引っ掻くなんて趣味悪いとー」

真っ黒な豹が、走るのをやめた
頭だけが粛清人に戻る

「その為の爪と牙なのに、活用しないでどうするのよ。大体、乙女なんて年齢でもないでしょう?」
「あんたに言われたくないと、オバサン」
「……殺す!」
83名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 10:18:06.07 I
粛清人が再び真っ黒な豹になって、田中れいなに向かって走る

「ホント、単純で助かるっちゃ」

──共鳴出力──コンプレッサー

真っ黒な豹が、段々と粛清人に戻っていく

「え、何? これどういう事!?」

4本足で走っていたのが、2本の足と2本の腕になる

スザザザッ!

うまく走れなくなったのか、もつれてこけた

「いったーい! ちょっと、あんた何したのよ!?」

粛清人が砂だらけになりながら立ち上がる

……っつうかさ

「何したかは言わんっちゃけど、自分の格好は気にした方が良かよ」

確かに

「え? ……あ! ヤダ!」

自分の体を見て、慌てて体を隠す粛清人

そりゃそうだ
84名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 10:18:56.42 I
「真っ裸じゃないの!」
「獣化して戻るって、そういう事やろ」
「確信犯! サイテー!」
「乙女を引っ掛けるのもサイテーって言えるやろ。って言うか、早く消えてくれん? 何かムカつくけん」

確かに
何かハルもムカつく気がする

「覚えておきなさい!」

粛清人が消えた

きっと、ダークネスのテレポーターが転送してんだな

「工藤ー? もう出て来ていいとよ」

廃工場の壁から姿を現し、田中れいなに近づく
一応、礼は言わないとな

「助かりました。ありがとうございます」

っつうか、粛清人があんなんで大丈夫なのか、ダークネス……

「あいつ、何しに来たと?」
「え! さ、さ、さ、さあ? アハハハハハ……」

まさか、ホントにハルの粛清じゃないよね?
傀儡師様にちゃんと確認しなきゃ……

あっ!
さっきの田中れいなの能力って、新しい方の力だったんじゃ!?
せっかく挽回するチャンスだったのに……
85名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 10:22:26.38 I
投下完了↑

>>78-84
『この地球の平和を本気で願ってるんだよ!』6
86名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 11:28:20.26 0
>>85
乙おつ
人面豹状態のRを想像すると笑いが堪えられないw
れいなやRの能力の描写とかリゾナントしたにせよオリジナルにせよイイセンスしてるなあと
87名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 12:58:57.14 O
れいなの能力は何だろう
気になるな
88名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 14:58:35.58 0
>>85

このシリーズはテンポが良くて和むね〜
89名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 15:47:42.91 O
ホゼナント
90名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 18:34:03.57 0
土曜の夕方もほぜなん
91名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 20:09:34.40 O
サタデーナイトもホゼナント
92名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 22:26:31.54 O
あげるのだよ
93名無し募集中。。。:2013/05/18(土) 23:19:18.44 O
おやすみずき
94名無し募集中。。。:2013/05/19(日) 01:04:12.49 I
モーじょわずnkskなう
95名無し募集中。。。:2013/05/19(日) 03:16:34.56 O
寝る
96名無し募集中。。。:2013/05/19(日) 06:01:06.63 O
おはナント
97名無し募集中。。。:2013/05/19(日) 08:27:13.12 0
>>50-53の続き?なのか
代理投稿します
98名無し募集中。。。:2013/05/19(日) 08:27:47.23 0
 「もうすぐ、一つの時代が終わるのかな?」
 「時代なんて、私からしてみれば始まってもないわよ。だから終わりも有り得ない」
 「そう、でも、あの子達にとっても、何かにとっても、とても充実した時代だったと思うよ」
 「…私達が望んでたことが全く叶ってない状態なのに、終わりだと割り切れるの?」
 
今、確かに何かが終わろうとしている。
口に出したくはなかったが、そういう予感めいたものは間違いなくあった。
模倣とは言え、【予知能力】はオリジナルにも劣らない威力を持っている。

 「終わったら次が始まる。カオリン、また始まるんだよ。
 ただその時代の流れから私達は一歩退くだけ、ただ、それだけ」
 「呪いのような因縁が終わるなら、良いことね。
 だけど、あの子達にはあまりにも不運だわ、巻き込まれた子達にはあまりにも惨い」
 「いっそうのこと、全て終わって、また新しいものを作り変えてくれた方が
 まだ救いはあるってものじゃないかい?
 まだ歩いていける力がある子ならきっと、大丈夫」

多少の【言霊】が込められているからなのか強制的に理解させるようなその言動。
だが、納得はできない。

 「意外と私、あの子達のことは嫌いじゃなかったのよ」
 「私もだよ、ガキさんがあんな風に笑ってられたのは、あの子達のおかげだった。
 でも、それを理由にして良い未来を唱えてあげることは出来ない」
 「それは言い訳?」
 「分かってるクセに」
99名無し募集中。。。:2013/05/19(日) 08:28:26.59 0
劣化コピーとしての彼女達ではあるが、人格や記録は全てオリジナルからの
上書きによってその存在を成り立たせている。
i914の抑止力として唱えた【精神干渉】の少女を知っていれば
その育ての親のような存在であった事も記録として残っていた。

新垣里沙と名前を与えたのも気まぐれのようなものだったが、それを彼女は
純粋で素直な笑顔と共に受け取ってくれた。
環境と育成方法によって様々な結果がでるという実験として、最初から
組みこまれていたのかもしれないが、その時期は【言霊】使いにとって
刺激のある楽しい日々だったのかもしれない。

 「結局、組織の中でそれなりにまともだったのは、あの誰よりも
 小さな女の子だけだった訳ね。考えてみれば、あの子もいろんな
 ものが混ざってるけど、唯一のオリジナルだったんだよ」
 「……でもあの子でさえも、i914を止められなかった。
 そして巻き込まれた子供達でさえも足掻いた結果、呑まれてしまった」
 「でもまだ間に合う。それとも、ガキさんはこれを狙ってたのかな」

ダークネスの計画を引っかき回してくれたのも新垣であり、裏を返せば
優秀であった証明のようなものだ。
目的のためにたゆまぬ努力、そして良き協力者とめぐり合えた強運。
次々と倒れていく同胞たちを見ても絶望せずに諦めない行動力。
天賦の才、とも呼べるだろう。

 「ふふ、なんだかんだ言って成長しちゃってるよ。さすがさすが」
 「その様子じゃ、あの子が敵になったことが嬉しいって顔ね」
 「その為に敵側になったこと、忘れてる?」
 「むしろ、あの子にとっても私達は本当の敵と変わらない立場だと思うわ。
 といっても、私達にできることはもう何もない」
 「なら、見ててあげようよ。あの子達がどう生きてどう死んでいくのか」
100名無し募集中。。。:2013/05/19(日) 08:29:14.85 0
 ―― ―― ―

大通りからやや離れた、普通の街路。
道の脇には街灯が定期的に並び、既に日の落ちた夜の世界を照らす。
だが彼女が見ている道の先も人工の灯火が点いているはずなのに、其処には
底の見えない闇が見える。
背後からは、変わらない人の生きる気配が数多く漂っているのに、目の前からは
それが一切伝わってこない。
今、自分の目の前には"隔離"された領域が存在する。

後藤真希の【空間支配】から編み出された『結界』。
そこは彼女も何度か訪れたことのある、優しさと温かさがあった喫茶店。
喫茶『リゾナント』を中心とした一帯。

眉間に皺を寄せ、新垣里沙は傷だらけの身体を奮い立たせる。
通常の空間から拒絶された"中"へと入る術は持っていた。
【精神干渉】と仕組みは同じ。"中"に居る子供達の安否が心配だった。

その重圧は、常に新垣と共にあった。
幼い子供達を家に残して働いている親の心境とはこういうものなのだろうか?
親になどなったこともないし、思ったことすらなかったが。

新垣は思考を振り払おうとする。
まだ死ねない、自分自身と、皆のためにも死ねない。
なのに、明日の朝日を再び見られる自信が沸かなかった。
今までも、いつも生に対して不安はあったが、それは漠然としたものだ。
「明日も生きられていられることが出来るか」という、ありふれた恐怖だ。
101名無し募集中。。。:2013/05/19(日) 08:29:57.70 0
今、新垣里沙は「明日にでも死んでしまいそう」な気がしていた。
それは予感、死の予感。
身体に不調があるわけでも、大怪我を負っているわけでもない。
病気など皆無。
戦いが始まっても、死ぬつもりは毛頭ない。

それでも感じてしまうのは。
生きたいはずの自分の、奥底にある、小さな、声。

 異能者は、自分の死をその前に悟ると言う。
 その原因は、自分の肉体と魂による認識不明の【異能による限界】らしい。

できそこないのまがいもの。
人間ではない自身が、間近に迫る死を伝えるように。
手が、震える。
恐怖が、包む。
これが、本当の死へ直面したことへの感情。
なんて、なんて悲しい。
必死に生きてきた自分が否定される瞬間。
それを懸命に励ましてくれたのが、『リゾナンター』だった。
だがあの頃のように声をかけてくれる者はいない。
 
 生きることはなんて、難しい。

気がつけば足は止まり、手で額を押さえた。特に意味は無い。
ただ、自分が今生きているということへの違和感。
それを抱えてでも、顔を上げることしか出来なかった。
102名無し募集中。。。:2013/05/19(日) 08:30:59.37 0
>>98-101
『異能力 -underdogs-』
以上です。

作品に新メンバーが組まれてもリゾスレの雰囲気は
相変わらずで居心地が良いです。お待ちしてます。

-----------------------------------------------ここまで
103名無し募集中。。。:2013/05/19(日) 09:08:39.59 I
>>102 朝から乙!ドキドキワクワクがとまらない!待ってます
104名無し募集中。。。:2013/05/19(日) 09:32:38.23 0
>>102
乙です
いい意味で突き放しているというか好きなように書くという姿勢に惚れてしまうわw
続き待ってます
105名無し募集中。。。:2013/05/19(日) 12:11:20.57 0
>>104
冒頭の二人の会話はRとRの世界観とも相通ずるものがありますかね
スレの初期から参加していた作者さんがどんな形で共鳴を終焉させるのか
次回の更新を楽しみにしてます
106名無し募集中。。。:2013/05/19(日) 14:29:08.13 O
間違いなくハッピーエンドにはなりそうもないですが世界観に引き込まれますね
107名無し募集中。。。:2013/05/19(日) 16:56:13.85 0
あげ
108名無し募集中。。。:2013/05/19(日) 18:40:48.62 O
夕方保全
109名無し募集中。。。:2013/05/19(日) 20:46:51.43 O
あげるのだよ
110名無し募集中。。。:2013/05/19(日) 22:00:55.32 O
夜もあげるのだ
111名無し募集中。。。:2013/05/19(日) 23:41:25.62 O
おやすみなさやし
112名無し募集中。。。:2013/05/20(月) 02:12:05.01 0
おやすみ
113名無し募集中。。。:2013/05/20(月) 03:09:54.27 0
>>63-69 『リゾナンターΧ(カイ)番外編・永遠殺しとさくらの存在』 http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/720.html#id_923ed4e2
>>72 『この地球の平和を本気で願ってるんだよ!』Prologue - スパイ潜入 http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/770.html
>>78-84 『この地球の平和を本気で願ってるんだよ!』6 http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/775.html#id_78b0577c
>>98-101 『異能力 -underdogs-』 http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/785.html
114名無し募集中。。。:2013/05/20(月) 04:53:53.83 0
おぱよん
115名無し募集中。。。:2013/05/20(月) 09:45:44.32 O
おぱょ
116名無し募集中。。。:2013/05/20(月) 12:57:11.90 0
昼休みが終わってしまう
117名無し募集中。。。:2013/05/20(月) 13:42:03.53 O
遅めの昼保全
118名無し募集中。。。:2013/05/20(月) 15:29:45.42 0
明日は…
119名無し募集中。。。:2013/05/20(月) 17:19:29.54 0
れいにゃあああ
120名無し募集中。。。:2013/05/20(月) 20:11:17.82 O
夜あげ
121名無し募集中。。。:2013/05/20(月) 21:20:09.85 0
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/720.html 番外編です



物体に残された残留思念を読み取る、サイコメトライズという能力。
この能力の派生として、大きく二つの種類が挙げられる。
一つは、読み取った情報を具現化する能力。主に「悪夢使い」と呼ばれる能力者が使役する。
そしてもう一つは。能力者の残留思念から使役能力を読み取り、自らの力とする能力。いわゆる、能力複写と呼ばれる能力だった。

譜久村聖。
あるきっかけから喫茶リゾナントに通うようになって、2年半が経とうとしていた。
今では後輩もできて、ちょっとした中間管理職的存在。しかし今の彼女の前には、それ以上の問題が立ち塞がっていた。

今も通っている高校で配布されたお知らせの裏に、大きな四角を三つ書いて、うんうん唸って考え事をしている。
そのうちの一つ、”亀井さん”と書かれた四角には、大きなバツが。

先日の、キュートとの戦い。
聖は、自らの中で使うまいと決めていた亀井絵里の能力を使ってしまった。勝つためには、仕方なかった。
そう自分に言い訳はできたが、周りはそうはいかなかった。
122名無し募集中。。。:2013/05/20(月) 21:20:51.15 0
「みずきー、何しとう?」

先ほど学校から帰ったばかりのぽんぽんコンビの片割れこと、生田衣梨奈が聖のいるテーブルの向かいに座ってきた。
聖が書いている絵を見て、高校生にもなって落書きとか恥ずかしいとー、と相変わらずKYな言葉を投げかけつつ。

「違うよ。これは、聖の能力をどう生かすか考えてるの」
「そっか。亀井さんの力は禁止令が出たっちゃもんね」

特に二人の先輩からの叱咤は、耳を塞ぎたくなるほど。死んでも知らんとよ。とか。
絵里の力は体に負担が大きいの。フクちゃんの身にもしものことがあったら。水着を着せた時の楽しみとか色々。
最後のは意味がわからないけれど、要するに使うなという意志は伝わった。

複写、とは言えもちろん能力の100%を複写できるわけではない。
聖の場合、能力を三つまでストックできる。ゆえに、能力の威力も三分の一となってしまう。
絵里の能力で言うなら体の負担も三分の一になるが、それでも使わないに越した事はない。

「あーあ、せめてストックが四つに増えたらなあ」
「そんなの亀井さんの枠に別の能力を上書きしたらよかろ?」
「ダメダメ、これは聖と亀井さんの思い出なんだもん」

小さな頃からリゾナントの近所に住んでいた聖は、絵里と顔見知りであった。
聖は、絵里が元気だった頃の思い出を大切にしたいが故に、その時に複写した絵里の能力を今までずっと保有し続けていた。
123名無し募集中。。。:2013/05/20(月) 21:21:24.05 0
からんからん、とドアの鐘が鳴らされる。
店主の道重さゆみは買出しに行っている。田中れいなは愛佳からの依頼で仕事に出ている。つまり、店内は聖と衣梨奈の二人だけ。

「どうしよう、お客さん!」
「ついに衣梨のスペシャルメニューのベールが脱がされる日が来たっちゃん」
「それ大丈夫なの?」

などとやり取りをしている間に、客はすたすたと店内に入ってくる。
その人物は、二人がよく知る顔であった。

「何や、今日はお前ら二人なん?」
「つんくさん!!」

よぉ、と軽く手を挙げる、派手な茶髪の中年。
身に纏った白いタキシードはまるで結婚式場の新郎のようだ。
しかしこの一見胡散臭い男、彼はこの喫茶リゾナントに多大なる貢献を果たした人物だった。

彼は能力者社会において”つんく”と呼ばれている。本名は誰も知らない。
しかし、「能力プロデューサー」を自称するだけあって、能力に対する見識は研究家の領域をはるかに超えていた。
また能力に目覚めていない少年少女の発掘から、能力開発、警察のエージェントまで、その仕事は多岐に渡っていた。
リゾナンターの初代リーダーである高橋愛がリゾナントを出店する時に、多額の資金援助を行ったのも彼だという。
124名無し募集中。。。:2013/05/20(月) 21:22:03.74 0
「道重おらんかったらコーヒーも飲めんわな。またにするか」

諦め顔で店から出ようとするつんく。
そこへ衣梨奈が大声で、

「つんくさん待ってください!!」

と呼び止めた。
不思議な顔をする聖に、小声で聖、つんくさんに相談したら?と衣梨奈。

「えっ、でも悪いよ…」
「なに遠慮してると。つんくさん、聖が相談したいことがあるって!」
「ちょっと、えりぽん!!」
「おっ、青春の悩みか。おっちゃんに何でも相談してや」

しばらくまごまごしていた聖だったが、衣梨奈の押しとつんくの興味本位の好奇心に負け、能力についての悩みを打ち明けざるを得なかった。
125名無し募集中。。。:2013/05/20(月) 21:22:54.65 0


「そしたら枠、もう一個増やしたらええやん」

つんくの出した回答は、単純明快。
ただ、それが簡単に出来たら苦労はしない。口にはしなかったものの、聖の不満は既に顔中に拡がっていた。

「でも…」
「偉い人も言うとったで。やっちゃえ、まずやっちゃえってな」

一体どこの偉人がそんなアバウトなことを言ったのだろう。
深まる聖の不安を他所に、衣梨奈などはそうですよねそうですよね!と妙に乗ってしまっている。
彼女の数分の一でも楽天的なところがあれば、と聖はさらに落ち込むのだった。

「それに、枠をもう一つ増やせても。行使できる力は四分の一になるんじゃないですか?」
「まあそうなるわな。そこで俺の出番や」

つんくはそう言うと、懐から一枚のカードを取り出す。
描かれているハートの絵柄。どう見ても、トランプのカードにしか見えない。

「何ですか、それ」
「これは魔法のカードや。人間の潜在意識に働きかけ、隠された力を引き出す」

言いながらつんくはそれを二本の指で挟み、そして器用に聖に向かって投げ飛ばした。
胸元目がけ飛んできたカード、しかしそれはまるで聖に吸い込まれるようにして消えてゆく。

「えっ?えっ?」
「これで下準備は終わりや。あとは、実戦あるのみ」

目を白黒させている聖が面白いのか、つんくは笑いながらそんなことを言う。
先輩であるさゆみやれいなからは、つんくは能力者ではないと聞いていた。しかし、聖が目にしたこの光景は一体。
横目で衣梨奈の様子を窺うと、別段驚いた様子もなくいつもの人をじっと見る時の顔をしている。
126名無し募集中。。。:2013/05/20(月) 21:23:41.16 0
「ま、大丈夫やろ。ほな、カウンセリングは終了や。頑張るんやで」
「はあ…」
「つんくさんずるい!衣梨にもおまじないかけてください!!」
「よっしゃ。ちちんぷいぷい魔法にかーかれ」
「わぁ、かかっちゃった…じゃなくて!」

絡んでくる衣梨奈を適当にあしらいつつ、つんくは店を後にした。

「ねええりぽん。えりぽんには見えた?『魔法のカード』」

先ほどの一連のつんくの動作が気になった聖が、衣梨奈に訊ねる。
しかし、

「何言うとっと。そんなもの、なかったやん」

とそっけない答えが返ってくるのみ。
えりぽんには見えてなかった?
ハートのトランプ。聖はハートという図形に、大きな思い入れがあった。

それは子供同士の、他愛も無い遊びだった。
聖を含めた、学校の仲良し四人組。そして当時流行していた、四人のトランプの妖精が活躍するアニメ。聖は、ハートの女の子の役だった。
まだ能力に目覚めていなかった頃の、遠い日の思い出。

ただの偶然の一致、なのだろうか。
釈然としない思い。

「そうだ聖、聞いた?昨日里保たちが光井さんから受けた猛獣捕獲の仕事、衣梨だったら…」

しかしそれも、衣梨奈のとりとめない日常会話によって押し流されていった。
127名無し募集中。。。:2013/05/20(月) 21:25:02.12 0


喫茶リゾナントの店の前。
そこに立つ、四人の少女。
身につけるのは赤、青、緑。そして黄色のTシャツ。
里保たちが先輩の光井愛佳から依頼された猛獣捕獲の仕事を強奪しようとしていたグループの残留組。
ただ黄色の少女に関しては回復が早く、既に戦線復帰していた。

「ねえ、今ならたった二人だよ」

緑Tシャツの少女が、意地悪そうな笑みを浮かべて言う。

「いや、待って。不意打ちなんかじゃ、上の人間は評価してくれない。増してや、警視庁の能力者特別部署に登用されるには」

赤いTシャツの少女が、首を振り否定する。
身長は四人の中で一番低いが、年長者ゆえの至極真っ当な意見を述べる。

「だよね。うちら選ばれなかった落ちこぼれだから」

ショートカットの最年少の青Tシャツが、子供ならではの空気が読めない発言をする。

「だからこそ、見せ付けてやるんだ。うちらの、選ばれなかったものたちの底力を」

黄色Tシャツの少女は、リベンジに燃えていた。
確かにあのパンダは強かった。だが、自分達が最初に対峙したあの少女たちとは決着はついていない。リ
ゾナンターである彼女たちを倒すことこそ、自らの評価を上げ、そして雪辱を晴らすことになると信じていた。

「出直そう。あたしたちが動くのは、あの子たちが四人揃った時だ」

赤Tシャツの言葉に、残りの三人が揃って踵を返す。
だが、決戦は近い。
それはその場に居た全員が、確信していた。
128名無し募集中。。。:2013/05/20(月) 21:26:25.81 0
>>121-127
代理投稿終了
129名無し募集中。。。:2013/05/20(月) 22:58:45.80 0
>>128
乙ですた
この展開だとひょっとして譜久ちゃんと黄色Tの人の昔話とかもあるのかないのか
続きを待つ
130名無し募集中。。。:2013/05/20(月) 23:23:03.40 0
フクちゃんの谷間に挟まったカード・・・
131名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 01:11:11.92 O
カードが消えるってことはそれだけ谷間が深いという
132名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 03:12:08.10 0
おやすみちしげ
133名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 04:53:22.40 0
>>98-101の続き
134名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 04:54:39.43 0
顔を上げた新垣の前に『リゾナント』のドアがあり、そのドアが押し開かれた。
漂ってきた血の匂いは、新垣に生を感じさせる。
鉄錆に似た臭いは強烈な生気を放つと同時に、人間であることを感じさせた。

 「やあガキさん、来ると思ってたよ」
 「…皆は?」
 「大丈夫だよ、生きてる。まだ、ね」

組織に所属していた時の名前はDr.マルシェだったが、その【ダークネス】はもう存在しない。
現在は後藤真希と行動を共にしているらしい。
新垣と『M。』の同期であった紺野あさ美、の、劣化コピー。
そんな彼女から放たれる生気は、人間のそれだ。

 「外傷は無いけど、意識が戻らない。起きる意志すらないんだから当然だけどね。
 呑まれた人間の肉体はこうしてただ眠り続けて、そのままだよ。
 エネルギーになるまでそう長くはない、もってあと2、3日だね」

紺野は淡々とそう言って、2階のスペースに寝転ぶ少女達を見つめる。
ベットが人数分ないため、毛布にくるまれた身体が雑に並んでいる。
数は8人。
久住小春、亀井絵里、ジュンジュン、リンリンが居なくなってしまったからの
『リゾナンター』のメンバーとしてはあまりにも幼い子達だ。
手前に眠り続ける生田衣梨奈の治療の痕に触れる。
彼女をここへ招いたのは新垣本人だ。

肌に微かな温もりがある。
他の7人も同じ状態のまま、"肉体を残したまま"なのだ。
一人ずつ、一人ずつ。
新垣は確かめるようにその顔を見て、頭に触れていく。
135名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 04:55:30.24 0
生田と同時期にこの喫茶店へと赴かれた3人。
譜久村聖は亀井絵里によって保護。鞘師里保は道重さゆみによって。
鈴木香音は光井愛佳によって。
ある異能者の構成した組織で傭兵としての養成訓練を受けていた
少女4人を引き取ったのは、それから数ヶ月と経たないある日。
飯窪春菜、石田亜佑美、工藤遥、佐藤優樹。

そこで新垣は、視線を紺野へと戻した。

 「佐藤は?」
 「れいなと一緒にi914へ接触しに行った」
 「そんな無茶なこと…」
 「あの子がついて行きたがったっていうのもあるけど、あの子の
 瞬間移動があれば何かと役に立つだろうから」
 「今のi914がどんな状況か分かってるでしょ?」
 「だからだよ。どんな小さな力でもないよりはマシ。
 れいなの生存の可能性を高めることにもつながる。それにあの子は
 傭兵経験だってあるんだから、臨機応変に動いてくれるよ」
 「……」
 「ガキさん、信用してないの?」

新垣は動揺した。
久住小春の離別、ジュンジュンの暴走、リンリンは彼女と共に国へ帰還。
そして亀井絵里は未だ眠り続けたまま。
高橋愛の言葉が、紺野の言葉と共に頭を揺らす。
136名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 04:56:18.13 0
 「自分の責任だと思ってるなら、それは驕りだよ。
 私達が何もしなくても、この未来はずっと以前から分かっていた。
 ガキさんが居なくなったあとも、さゆが『リゾナンター』をまとめていったのを
 私達は見守り続けてた。
 さすが共鳴のチカラ、ダークネスが求めただけの事はあるよ」

人の願いや祈りは、まさにセカイの命と言っても良い。
セカイを成り立たせるものが「誰か」の夢だと定義づけた学者も居た。
『リゾナンター』を中心に収束された様々な繋がりがエネルギーとして力を
持った時、それがi914の鍵だと闇の帝王は考えた。

闇へ堕ちた【悲しみ】の欠片を抱いて。

 「さてガキさん、君にはまだ、戦う力はある?」

紺野の言葉に、新垣は顔を上げる。
戦う力。それは理由か、意志か、それとも別の事柄か。
i914を消滅させる。
それに対する心情を計るかのよう。

 「ガキさんが一番あの子の闇を知ってる。弱点を知ってる。
 だけど、それが分かっていても、あの子を殺せる覚悟はある?」
 
生まれた闇が消えた今、止められるのは繋がりを生みだした少女達だけ。
そして終わりを告げろとセカイが言っている。
長い時間をかけて紡がれた呪いを解き放てと叫んでいる。
始めてしまったものを、自分達で終わらせろと願い、祈っている。
新垣は息を吐くように、呟いた。
137名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 04:57:09.50 0
 「もう迷わないよ。私は、そのために戻ってきたんだから」

見開かれた両目を見て、紺野は僅かに目を細める。
異能者は目の色素にそのチカラが映る。

遺伝子疾患によって元々目の色素が異常に薄く、血行が
良くなると唇と一緒で血の色が映るのと同じ。
アイコンタクトでも装着すればそんな事実を知られることもない。

だから異能者もまた、いろんな方法でその正体を隠して生きている。

 「…そっか、じゃあ、私はこの子達を部屋に移すよ。
 あそこなら肉体を保存する設備があるからね。
 この子達が死ぬのはあまりにも勿体ない」
 「コンコン」

新垣に昔の愛称で呼ばれ、紺野は顔を向けた。

 「コンコンの願いは、もう良いの?」
 
Dr.マルシェが自身の名前を偽ってまで叶えたかった願いがある。
【異能】の根源を統べていたダークネスに"蘇生"され、『リゾナンター』への
シナリオへの人形として利用されても尚、祈り続けたものがある。
解明の先にあった、紺野あさ美の願い。

 「ガキさんが背負う必要はないよ。これは私の願い。
 たとえ成就しなくてもそれは、私が背負うものなんだから。
 それに私が憎んでたのはチカラだけ。歪められた未来のためにこの子達を
 犠牲にする理由は、もう無いんだ」
138名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 04:57:59.44 0
 「でもコンコンのその研究によって、コンコン達が救われる可能性だって
 作れたはず、それを放棄したのは何故?」
 「何か勘違いしてるみたいだけど、これは私の自己満足だよ。
 それで私が救われようとしているようにガキさんは見えていたのかな?」
 「……コンコンは、本当に」
 「私のことより、ガキさんは自分の願いのために走って。
 時間がないのに、他の人のことまで気にしてるのはあまりにも愚かだよ。
 せっかく目的がハッキリしたっていうのに、バカだね」
 「…」
 「ふふ、ま、バカな私が言っても説得力ないか。行っておいで」

新垣がドアの外へ駆け出して行ったのを見送ると、紺野は溜息を吐く。
自分が思っていた結末とはなんてあまりにも呆気ない。
この日の為にどれだけの時間を費やし、どれだけの血が流れたか。
数ある世界の中で、これほど茶番なものは無いだろう。

 「それでもまだ希望があるというのなら、この世界はまだ続く。
 どれほど憎んで、どれほど悲しんだものだけど、あとは託す事にするよ。
 正直、そんなことに費やせるほど時間も無い」

そう、時間は、無い。
人形として"蘇生"された自身が、これから平穏な生き方が出来るとも思えない。
ダークネス亡き今、彼女達の役目は終わっているのだから。
139名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 04:59:47.40 0
>>98-101
>>134-138
『異能力 -underdogs-』
以上です。

武道館へれいなを見送りに行って来ます。
青い空に包まれますように。

-------------------------------------ここまで代理
140名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 06:45:55.43 O
話の全容が少しずつ明らかになってきたね
141名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 09:38:46.96 0
>>139-140
作者さん&代理さん乙でした
人形たちの奏でる哀しきメロディは何か心に来るものがあった
れいなの旅立ちを見届けて来てあげて
142名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 12:44:32.09 0
143名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 14:50:45.75 0
>>128
フクちゃんがどんなチカラをコピーするかがミソなのかな
(仮)の人たちとの対決が楽しみです

>>139
五期好きとしてはマルシェとガキさんの和解共闘が見られたので満足です
今日は東京の空模様荒れてるんですかね
会場の中は青空が広がっていればいいですね
144名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 14:51:18.27 0
純然たる読みきりです
長いので分割します


「しょーぶです、たなさたん!」

「CLOSED」に看板をひっくり返した途端にかけられた声に、れいなは眉を顰めて振り返る。
本日の営業も滞りなく終了した。
一応、喫茶リゾナントにおける「最後」の営業だったから、いつも以上に気合が入っていた。
客入りはいつもより多めで、忙しかったけど、普段通りに終えることができた。
ふうとひとつ息を吐いてこれから落ち着こうというときにいきなりなんだ?

「これからまーちゃんと勝負してください」
「……ごめん、佐藤。なんの話?」
「だから勝負です!」

腰に手を当て、びしっとこちらを指差してきた佐藤優樹の眼差しは本物であった。
「人を指差すな」とぺしっと手の平を叩いて制し、ドアを閉める。
からんという小気味良い音が響いたあと、すぐに静寂が広がる。喫茶リゾナントは、思ったより広いんだと不意に気付いた。

「たなさたんはだれよりも強いです。もちろん、まーちゃんより強いです」

急に口上を垂れ始めた後輩に、れいなは眉を顰めつつも相手にすることなく厨房へと向かった。
まだ今日の収支報告をしなくてはいけないし、掃除も残っているし、やることはある。
後輩の突拍子もない思い付きに付き合っている暇はない。
145名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 14:51:56.12 0
「でも、まーちゃんがいちばん強いものだってあるんです」

椅子を持ち上げようとしたその手が止まった。
「いちばん」という言葉が妙に引っかかった。
れいなの目標は、リゾナンターで「いちばん」になることだった。
それを揺るがすものがあるというのなら、興味がある。目の前にいるこの後輩が、それを手にしているというのなら聞こうではないか。
れいながくるりと振り返ると優樹と目が合った。
彼女は、漸く真正面に立ってくれたれいなを見て嬉しそうに、だけど挑戦的に笑った。
その姿は、まるで子どもだ。ああ、ちょっとだけ可愛いって思った自分が嫌になる。

「佐藤がいちばん強いってなんよ?」
「だから、それで勝負してください」

優樹はしっかりとれいなを捉えていた。
その姿は子どもから大人へ移行する、成長期のようなものを感じさせた。
優樹はいくつになったんだっけと考えてみた。
ああ、そういえばこの前、14歳になったっちゃっけ。皆でケーキつくって、サプライズでハッピーバースデー歌って。
性懲りもなく優樹は泣いて、連られて工藤遥も泣いて、あれはあれで良い日だったな。

「負けたら、たなさたんはいちばんじゃなくなったから…えーっと……あ、りゅうねん?です!」

だれに入知恵をされたんだとれいなは苦笑した。
「留年」という言葉を彼女が知っているとは到底思えない。
だいたい使い方間違っとーし。ん?間違ってる……よね?

「だから勝負です!」

とにかくこの小うるさい後輩を黙らせるには、勝負するしかないらしい。
「いちばん」という称号は、れいなに相応しいものであって、優樹が有するものではない。
「いちばん」を背負って、此処から出て行こうじゃないか。くだらないものでも良い。なんでも「いちばん」になると決めたのだ。
道重さゆみには「いちばんバカって称号も持って行ってね」なんて笑われたものだけれど。
146名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 14:52:36.81 0
「で、なんで勝負すると?」

重い腰を上げ、その「勝負」に乗ってきたれいなを見て、優樹はまた笑った。
挑戦的で子どもっぽくて、だけどひとりの戦士である彼女は、やっぱり綺麗だった。
彼女はまるで、旅人の為に暗闇に浮かぶ太陽だ。
どんなことがあっても天上に高く居座り、世界を遠く広く照らし続ける、道標だ。

「鬼ごっこです!」

前言撤回。
この前、鞘師里保が学校の宿題で出た四字熟語が不意によぎった。
間違いなく、目の前の彼女との会話にはこれがぴったりだと確信した。
なにを言い出すんだこいつは。

「たなさたんが鬼です!30分捕まらなかったらまーちゃんの勝ちです!」
「はぁ?そんなのするわけないやろ!」
「じゃあいきます!えーっと、10、9、8!」
「待て佐藤!」
「7654321ぜろぉー!」

カウントダウンが一気に早くなったかと思うと、喫茶リゾナント内に風が吹いた。
優樹から発せられたような優しくて強い風、そして淡い光に思わず腕で目を覆う。
少し後ずさりをすると、そこにいたはずの彼女は既にいなくなっていた。
“瞬間移動(テレポーテーション)”か―――とれいなは下唇を噛んだ。
店内の椅子がいくつか倒れている。本当に、彼女は子どもだなと苦笑せざるを得ない。
147名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 14:53:16.96 0
「だから、なんで鬼ごっこやっちゃよ……」

倒れた椅子を机に乗せながられいなは呟いた。
確かに、くだらないものでも良いとは言った。それにしたって限度というものがあるだろう。
なんでも「いちばん」になると決めたものの、よりによって鬼ごっこって……
そういえば優樹は、石田亜佑美や飯窪春菜といっしょになって鍛錬場を走り回っていたっけな。
あれでなかなか捕まらないから、遥が手を焼いていたのをふと思い出す。


―――怒られてる時にいなくならないの!


そうそう、自分の分が悪いと把握するとなると泣きそうな顔をして姿を消していたっけ。
ああいうときに“瞬間移動(テレポーテーション)”は役に立つものだなとれいなは妙に感心したものだ。
しかし、そのおかげで譜久村聖が胃を痛め「どうしたら良いんでしょう」って泣きそうな顔で相談をすることもしばしばあった。
れいなが此処を去ってしまったら、キャリアが長いのは、さゆみに次いで彼女が二番目になる。
聖は自分のことを追い込みやすい性格なので、そこら辺は、「聖、ねえ聞いて聖」と犬のようにうるさい生田衣梨奈がなんとかカバーしてほしいものだ。
とはいえ、どういう未来が紡がれるのか、なんだかいまから楽しみでもある。

椅子をすべて机に乗せ、これから箒で店内を掃く作業に入ろうとする。
なにをしようとしていたんだっけ?ああ、そうだ、優樹との鬼ごっこだ。

「30分で捕まえろってか?」

感傷に浸っているうちにもう3分が経過していた。
タイムリミットまであと27分。さて、どうしたものかなとれいなは眉を掻いた。
以前のれいなならば、話しかけられても必要事項しか答えないか、そもそも話さないか、という二択しか持っていなかった。
まして、「鬼ごっこ」なんて絶対にするわけなかった。そんな子どもの遊びに付き合う意味なんてない、そう、信じていた。
148名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 14:53:58.62 0
それなのに、既にれいなはぐっと背伸びをして、彼女を追い駆ける準備をしている。
ああ、どうやらこの「鬼ごっこ」にれいなは乗り気のようだと自覚した。

「27分やったら余裕やろ!」

箒の柄の部分を振り回しながられいなは走り出した。
後輩の思い付きだというのに、楽しんでいるのか、それとも退屈凌ぎなのか、れいな自身も分からない。
れいなは早速、彼女が行きそうな場所へと走った。


-------

「見つけたぁー!」

喫茶リゾナントの地下にある鍛錬場に乗り込むと、その中心に優樹は佇んでいた。
彼女はれいなの姿を認めるとぎょっとした。

「なんでホウキもってるんですかー!」
「捕まえるより、叩いた方が早いけんね!」

れいなが柄を振り翳し、優樹は慌てて避けた。
ばきっという景気の良い音のあと、床に箒がめり込んだ。

「ほんきでやったでしょー!」
「ガチでやらんとつまらんやろーが。いちばんになるってれなは決めたっちゃん!」
「ちょ、ちょっとたなさたん怖いー!」

箒を手にした分、彼女のリーチは長い。
優樹はギリギリで躱していくが、すぐに壁際に追い詰められた。
ぐあっとれいなが箒を振り上げる。即座に優樹は能力を発動させた。
風と光、直後の沈黙。れいなの箒は空を切った。
149名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 14:54:41.01 0
「…っとにちょこまかとぉ!」

れいなは鍛錬場をあとにし、階段を駆け上がった。
再び喫茶店内を見回す。先ほど片付けたはずなのに、いくつかのテーブルが動いている。
出入り口の扉に手をかけた。
からんという鈴の音。外は曇天。雲の隙間からは微かに光りが射し込んでいた。
外に逃げた、という仮説を、れいなは一瞬で突き崩した。
なんとなく優樹は、「此処」を逃げることのできるエリアと決めている気がした。

「どーすっかな……」

れいなは扉を閉めた。
なんどめかの鈴の音が小気味良く響く。直後に静寂が広がる。
音、か―――。

「鈴木やったら、“超聴覚(ハイパー・ヒアリング)”とかで居場所を突き止められるっちゃろーけどさ」

鈴木香音の有した能力は、相手の心音までも聴き取ることのできる“超聴覚(ハイパー・ヒアリング)”だ。
視界を潰された闇の中などでは、彼女の能力は非常に有効だ。
相手が何処にいるか分からないこういう状況にはもってこいなのだが、生憎れいなは、そんな能力を持っていない。
箒を振り回しながら厨房へと歩く。
業務用冷蔵庫を開けると、今日使い切らなかった水やお茶が入っていた。荒っぽく蓋を開け、呑み込む。

「“瞬間移動(テレポーテーション)”ねぇ……」
150名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 14:55:23.90 0
優樹の能力は、その名の通り、“瞬間移動(テレポーテーション)”だ。
「瞬間移動」には、主にふたつの能力があると聞いたことがある。
ひとつは、時間の超越。
対象者は能力を発動するその地点からはほとんど動けないが、時間を飛び越えることができる。
いわゆるタイムマシンの原理と同じものである。
そしてもうひとつが、空間の超越。
一般的な「瞬間移動」の理解はこちらの方である。
対象者は能力を発動すると同時に、別の地点へと自らの体を飛ばすことができる。
応用すれば、対象者のみならず、対象物を別の地点に引き寄せることも可能になるようだ。

優樹の有している能力は、恐らく後者の方だ。
しかも能力が未熟なため、長時間の解放は、体力的にも難しい。
だから、彼女の設定した30分というタイムリミットは、彼女の能力解放の限界値なのだろう。
実に理に適ったゲームだと、れいなは思う。

「ま、能力が目覚めた当初は3分ももたんかったし、上出来やろ」

水道を捻り、手を冷やした。
そのまま前髪をかきあげる。ぽたぽたと雫が垂れた。
彼女を捕まえるには、“瞬間移動(テレポーテーション)”の能力が閉じられた瞬間を狙うのがいちばん的確だろう。
しかし、闇雲に走って追いかけるのは、どうも非効率的だ。
とはいえずっと此処で油を売っているわけにもいかない。やっぱり、行くしかないらしい。

「おーにさんこっちらー!」

直後、背後から明るい声が聞こえた。
この野郎おちょくりやがって、とれいなは振り向きざまに箒を振り翳す。
鋭い風圧が空を切る。優樹の頬を微かに掠めたのか、彼女は右頬を押さえながら笑って逃げる。
思考に陥るのも良いが、追い駆けなくては意味がない。
行ってやろうじゃないか。れいなは「いちばん」になると決めたのだ。
151名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 14:58:25.61 0
>>144-150
さるさん確実な量なのでとりあえずここまで
後半は一時間後ぐらいで
152名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 15:37:18.14 0

変だなオッサンの目から汗が
153名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 16:14:10.93 0
-------

「鬼ごっこ」開始から早15分が経過していた。
ちょうど折り返しかとれいなは膝に手を当てて息を整えた。
2階のリビングにあるソファーに腰を下ろし、天井を仰いだ。
先日整理したはずなのに、また汚くなっている。机上のメモが散乱し、だれかが此処を走り去ったのは明白だ。
とにかく、この「鬼ごっこ」に勝つには、彼女の能力の欠点を見つけるしかない。
そういえば、優樹をちゃんと捕まえたことがある人物は数少ない。
確かずいぶん前になるが、光井愛佳が彼女の首根っこを捕まえてた光景を見たことがある。


―――なんで分かったんですかー?


―――あんたが跳んでいく地点、全部“予知”したから


ああ、なるほど、その手があったかとれいなは立ち上がった。
愛佳の持つ“予知能力(プリコグニション)”ならば、優樹がこれから何処へ行くかが視えるはずだ。
まあ、これもれいなは有していないので意味がないことに変わりはない。
散乱したメモを集めて机上に戻す。
全く、ホントに子どもやなと思いながら、ふと手を止めた。

「……なんで?」

れいなはいままでの思考をすべて突き崩した。
もしかすると、自分はずっと誤解していたのではないか。
そうであるならば、この「鬼ごっこ」、自分にも勝ち目がある。
メモを机上に叩きつけると同時にそこに乗った。ぐらりと揺れるが、しっかりと両脚に力を込める。
此処は喫茶リゾナントの中心地点。なんて都合が良い。
154名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 16:14:46.86 0
「試してみる、か」

れいなは目を閉じ、深く息を吸った。
闇の中、静かに光を探す。
静寂を切り裂くように、一歩、踏み出した。
空気が張り詰めて、ぱりんと何処かで割れたような気がする。
同時に、どだんと派手な音がした。即座に階段へと向かい、手すりに足を掛けて飛び降りた。

「いったたたた……」

優樹が頭から派手に転んでいる姿を認めた。
どうやら憶測はそこまで外れていなかったようだ。

「つーかーまーえー」
「られませんよ!」

れいなが首根っこを掴もうとした途端、優樹はごろごろと床を転がっていった。
お前はミノムシかとツッコミを入れようとしたが、彼女は即座に立ち上がり、息を整える。
全く、たかが「鬼ごっこ」になにを本気になっているのだろう。れなも、佐藤も。

「あー、たなさたん、あと10分ですよ!」
「え、マジ?」

優樹が壁にかけてあった時計を指差し、れいなも連られて振り返った。
本当だ、あと10分もない、と思ったときには手遅れだった。
れいなの目の前にいたはずの優樹はまた何処かへと消え去っていった。
子ども騙しに引っかかったと肩を落としたれいなの鼻は、微かな匂いを感じ取った。
155名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 16:15:28.33 0
「やっぱ、当たっとったっちゃね」

鼻先を走っていったきな臭さに、思考を突き崩すだけの価値はあったと確信した。
自分の誤解、それは優樹の能力に対するものだ。
れいなは、“瞬間移動(テレポーテーション)”という文字に気を取られて、彼女の能力の本質を見失っていた。
恐らく優樹の能力は、正確には、空間の超越ではない。
それが、れいなの発動した“共鳴増幅能力(リゾナント・アンプリファイア)”によって明らかになった。
れいなは再び店内の中心に佇むと、ゆっくりと息を吸った。
タイムリミットはあと7分。もうすぐ、決着はつく。

「死なんとは思うっちゃけど……火傷したらさゆに頼んどくけん」

れいなは一歩、踏み出した。
再びあの感覚に襲われる。
直後、地下鍛錬場に隣接しているプールへと走った。


-------

れいながプールに辿り着くと、彼女は派手に水浴びをしていた。
そこに跳ぶ意識はなかったのかもしれない。だが、彼女の体は無意識のうちに、プールの真ん中に向いていた。

「今度こそ、っちゃよ。佐藤」

箒を投げ捨て、プールサイドで助走をつけると、れいなは派手にプールに飛び込んだ。
ばしゃっと派手に波が立つ。
優樹は抵抗することなく、プールの真ん中でぷかぷかと浮かんで彼女が来るのを待った。
156名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 16:16:17.65 0
「えへへ。どーして気づいたんですか?」

優樹が前髪をかき上げるのと同時に、れいなに訊ねた。
れいなは優樹の首根っこを捕まえると「たまたまね」と口をついた。

「佐藤が“瞬間移動(テレポーテーション)”したあと、部屋はいつも微妙に荒れとった。メモが飛んだり、机が動いてたり」

そう、それはまるで、子どもが走り抜けたあとと同じだった。
“瞬間移動(テレポーテーション)”が時間の超越と空間の超越であり、優樹の能力が空間の超越であるならば、そんな痕跡が残るわけがない。
そうであるならば、優樹の能力は空間の超越ではないということになる。

「佐藤の“瞬間移動(テレポーテーション)”は、どっちかっていうと、高速移動に近いっちゃない?」
「へへ。せーかいです」

れいなの指摘に、優樹は素直に笑って頷いた。
未熟である彼女の能力は、まだすべてを解放できるわけではない。解放時間だけでなく、能力そのものが、開花しきっていない。
優樹の有している現時点での能力は、物体の高速移動、それはさながら、“韋駄天”のようなものだ。

「たなさたんの“共鳴増幅能力(リゾナント・アンプリファイア)”でチカラが大きくなったんですね」

れいなが発動した能力で、優樹の能力は急激に増幅した。だが、彼女はそれを自由に扱えるほどの術者ではない。
能力の撥ね返りが起きるのは当然だが、それ以上に、強大となった高速移動により、生じる摩擦熱の大きさが許容量を超えていた。
優樹が走り去ったあとに微かに鼻をついたきな臭さは、その摩擦熱で生じたものだった。

「火傷した?」
「いいえ、だいじょーぶです。熱かったから、ココに来ちゃいましたけど」

そうして優樹は「えへへ」とまた笑った。
ずいぶんと、無茶なことをしたなとれいな自身も思った。
一歩間違えれば大事故につながりかねない。摩擦熱で人体が発火することだって十分にあり得た。仲間を危険に曝していることは認識していた。
たかが「鬼ごっこ」のためになにをしているのだろうと思うが、どうしてもれいなは、勝ちたかった。
157名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 16:17:04.42 0
「というわけで佐藤。この勝負、れなの勝ちっちゃよ」

優樹を連れてプールを上がろうとするれいなに対し、彼女は「ちがいますよ」と否定した。
まさかタイムオーバーかと時計を見たが、まだあと2分残っている。まさか負け惜しみ?と思うが、優樹は首を縦に振らない。

「負けてません」
「そういう子どもっぽいことは―――」

瞬間、だった。
れいなと優樹の周囲から水が引いた。それは津波が起きる直前の光景に似ている。
水はまるで柱のように立ち上がり、ふたりはいつの間にか、“水の壁”に囲まれていた。
まさか、と思った瞬間、天井を仰いだ。

「さやしさーーん!」

天井につるされた壊れた照明のすぐ横から、鞘師里保が水柱とともにこちらに飛んできた。
重力の法則。物体は地球上では地面に落ちる。里保も水も、その法則に忠実に従っている。
れいなは舌打ちし、箒で応戦しようとする。が、その手はなにも持っていなかった。
飛び込むときに捨てたことをいまさら思い出す。ヤバい、ヤバい、ヤバい!

「鞘師ぃぃ!!」
「田中さん、息吸って下さい!!」

轟音がプール中に響いた。
派手な水飛沫が上がり、高く積み重ねられていた水柱が水面へと沈み込んでいく。
れいなと優樹は濁流に呑まれ、水深2メートルの地点まで叩き落された。
直後、激しい水流が体を押し上げ、一気に水面まで戻される。
げほっと喉に入った水を吐く。
れいなは強引に腕を引っ張り上げた。その腕の中にはだらしない笑顔を貼り付けた優樹の姿があった。
158名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 16:17:42.62 0
「佐藤!佐藤!」

まさか息をしていないのでは、と心配したが、彼女はすぐに「すごーい!」と笑い声を上げた。
れいなはホッとしたのも束の間、大声で「アホぉ!!」と叫んだ。それはプール中に響き、優樹は思わず両手で耳を塞いだ。
自分たちと数メートル離れた地点で、申し訳なさそうに目を伏せて笑う里保の姿が目に入った。


-------

「どうしても、負けたくないからって言われちゃってつい……」

プールサイドに上がり、里保を問い詰めると、彼女はあっさりと事の顛末を話した。
ある程度予想していたものであったが、優樹が里保に「いざってときに助けてください!」と頼んだのだ。
そもそもこの「鬼ごっこ」も、優樹が里保に相談して実行することになったようだ。「留年」という言葉を吹き込んだのも、彼女らしい。

「鞘師もやっぱ子どもっちゃね…」
「すみませんでした」
「いや、もういいっちゃけどさ」

れいなはシャツの袖をぎゅっと絞った。
下着まで濡れてしまった。替えの服は2階の自室だし、困ったものだと頭を掻く。
とにかく戻るかと立ち上がろうとしたその腕を、なにかがぎゅっと掴んだ。
これも予想できたものであったが、掴んだのは優樹だった。
主人に叱られた犬のように眉を下げ、れいなを見ている。
159名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 16:18:29.19 0
「だめ。やっぱりれなの勝ちっちゃよ」
「……まーちゃんはまけましたけど、さやしさんはまけてないです」
「優樹ちゃん」

駄々をこねる優樹を、里保がそっと制した。
ぽんぽんと肩を叩くが、優樹はまだ、れいなの腕を離さない。
れいなはやれやれとため息をつくと、また改めてプールサイドに座った。

「いっちゃうんですか…?」

右から、れいな、優樹、里保と座る。
里保は静かに息を吸うと、くるくると指で水面をなぞる。
波紋が広がり、プールに色がつく。まるで風が吹いたような景色を見ながら、れいなはひとつ頷いた。

「もう、決めたことやから」

れいなが此処を去ると決めて、もう半年が立つ。
それは当然寂しいのだけれど、彼女の歩みを止める権利はだれにもない。
そんなことくらい、優樹にだってもう分かっている。分かっているからこそ、駄々をこねるのだけれど。
優樹は黙って下唇を噛みながら、その瞳をごしごしと擦った。真っ赤になっているのは、プールの塩素剤のせいだろうか。

「今日の鬼ごっこ、田中さんが、優樹ちゃんを捕まえたんですよね?」

ふと、黙って水を動かしていた里保が呟いた。
れいなは優樹を通り越して彼女に目を向ける。彼女は水面を見たまま、視線を絡ませようとはしない。
里保は柔らかく笑うと、右隣の優樹の頭を撫でてやった。

「じゃあ、鬼が交代だね」
「え?」
「今度は優樹ちゃんが、田中さんを捕まえる番だよ」
160名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 16:19:19.92 0
笑いかけた彼女の目もまた、真っ赤に染まっていた。
微かに鼻を啜る音がする。プールで体が冷えてしまったのだろうか。
里保は今度こそ、れいなと視線を絡ませた。真っ直ぐにれいなを射抜く瞳を、純粋に美しいと思った。

「捕まえてみせますよ、田中さん」

奥二重の切れ長の目が、れいなの心を捉えた。
彼女の言葉の奥に潜んだ真意に気付いたれいなは思わず噴き出した。
なんてことを言い出す後輩がいるものだろう。
圧倒的な力で「いちばん」をもぎ取ったはずなのに、すぐ後ろに彼女が控えている。いや、彼女たち、と言った方が他正しいのだろう。
もうこの背中は、彼女らにしっかりと捉えられているのだなとれいなは気付いた。
静かな焔を宿したその瞳を真っ直ぐに受け止め、れいなは喉を鳴らしながら天井を仰いだ。

「れなは負けんよ。なんでもいちばんじゃないと、気が済まんけんね」

今度の「鬼ごっこ」はいつまでがタイムリミットだろう。
再び、彼女たちとともに最前線に立つ日は、以外とすぐやって来るのかもしれない。
その日まで、捕まらないようにせんといかんっちゃね。
ああ、もう。子どもやって思っとったとにね。

「よーし!まーちゃんがんばります!」
「その前にこの服乾かさなきゃねー」

威勢良く立ち上がった優樹に連られるように里保も立ち上がった。
ああ、やっぱり子どもだ、とれいなが笑うと、里保が右手を差し出してきた。
れいなも素直にその手を取り、立ち上がる。
「いちばん」というものは、思ったよりも大変なんだなとれいなは笑う。
目が少し赤いのは、昨日の寝不足のせいやなと、ぼんやり思った。
161名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 16:20:27.80 0
>>144-160
以上「Running to the top」

改めてれいなさん卒業おめでとうございます!

-------------------------------------------ここまで転載
162名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 16:57:28.87 0
>>161
割り込んじゃってゴメンねw
この展開ハロモニでごっちんの卒業を阻止しようと勝負した回を思い出した俺はオッサンだ
163名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 19:28:54.75 0
楽しそうなおいかけっこだw
164名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 20:07:26.44 O
れいなの旅立ちを中心に据えつつ次世代への期待も感じられるいい話
堪能いたしました
165名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 22:08:36.76 0
あげ
166名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 23:26:57.81 0
167名無し募集中。。。:2013/05/21(火) 23:51:50.06 O
>>161
更新代理乙です
れいなの卒業記念話でありつつもれなまー双方の能力の使い方が上手いなあと
プラス乱入者で某リーダーが嫉妬するメンバー構成になりましたねw
168名無し募集中。。。:2013/05/22(水) 01:00:52.48 0
ほぜ
169名無し募集中。。。:2013/05/22(水) 01:55:36.44 0
>>161
作者も代理も共に乙ですた
卒業式の時もまーちゃんは延期して欲しいというメールをしたとか何とか
そういう背景も合わせると胸がいっぱいになる話でした
170名無し募集中。。。:2013/05/22(水) 06:19:35.97 O
れいなが旅立ったか
171名無し募集中。。。:2013/05/22(水) 08:21:54.48 0
おぱよん
172名無し募集中。。。:2013/05/22(水) 10:42:25.24 0
♪あげあげ
173名無し募集中。。。:2013/05/22(水) 12:53:56.93 0
れいな新たなる旅立ちか・・・
174名無し募集中。。。:2013/05/22(水) 13:04:05.19 0
「田中れいながリゾナントを去ったようです」
「ああ。中澤から報告は受けている」
「国家から、そして裏社会からも見捨てられた能力者の隠れ里”ラベンダー”。その救済のためにリゾナンターを
辞したとか。どちらにせよ、愚かな話です」
「……」
「ともかく、これでリゾナンターの弱体化は必至。治癒の娘とあの子供たちでは、我々が手を下す前にダークネス
に滅ぼされるのは間違いないですね」
「…注視するのだ」
「は?」
「奴らを侮ってはならぬ。あの”天使”を退けた連中だ。用心に越したことはない」
「あなたがそうおっしゃるのなら。では、失礼」

人間は、受けた傷は必ず再生しようとする。
現に、リゾナンターの主力であった高橋愛が抜けた時も。まとめ役の新垣里沙が抜けた時も。
その度に、立ち上がってきた。
監視の目を、決して緩めてはならない。

男の目は、か弱くも力強い、10人の少女たちに向けられていた。


…的な保全
175名無し募集中。。。:2013/05/22(水) 16:15:08.84 0
ウマいな
176名無し募集中。。。:2013/05/22(水) 18:04:10.61 O
ほぜぬ
177名無し募集中。。。:2013/05/22(水) 20:04:02.38 O
あぶにゃーぜよ
178名無し募集中。。。:2013/05/22(水) 21:47:48.68 O
あげるのだよ
179名無し募集中。。。:2013/05/22(水) 22:52:12.22 O
あげますあげます
180名無し募集中。。。:2013/05/22(水) 23:46:34.34 O
今日は早めに寝るナント
181名無し募集中。。。:2013/05/23(木) 00:54:00.56 0
圧縮早いからこまめにあげとこう
182名無し募集中。。。:2013/05/23(木) 03:20:07.23 0
おやすみ日本
183名無し募集中。。。:2013/05/23(木) 07:29:32.57 O
朝だよ
184名無し募集中。。。:2013/05/23(木) 10:14:09.76 O
戦いは終わらない
185名無し募集中。。。:2013/05/23(木) 11:48:01.55 P
ノハ*゚ ゥ ゚)<やっと私の能力(チカラ)をみせる時が来たな
ttp://www.gekipro.com/blog/gogakuyu/wordpress/wp-content/uploads/2013/05/IMG_2742.jpg
186名無し募集中。。。:2013/05/23(木) 13:35:52.80 0
>>134-138の続き

佐藤優樹の腕が、徐々に痺れてきている。
田中れいなが殴られるたびに、その衝撃が重く痛く、佐藤の全身にも伝わる。
皮膚と骨が震える。
いたい、いたい。じわりじわり。
しかしこれぐらいの痛みは、耐えられる。
実際に殴られている田中の方が遥かに痛いのだ。

 佐藤は殴られる痛みを知っている。
 殴られる生活。
 殴られ続け、蹴られ続ける生活を思い知らされていた。
 僅かな食事と水分を、4人で分け合って生きていたあの頃。

苦しく恐ろしく悲しく、痛みしか無い日々だった。
誰かに縋りたくて。
4人の中で同い年の工藤遥は、そんな佐藤をいつも怒っていた。
怒られている理由は、工藤の涙で理解させられる。
石田亜佑美と飯窪春菜が任務から帰ってくると、検査だと言っては
様々な実験が行われて、無理やり【異能】の強化をさせられた。

4人は、脱走を決意した。
だが組織の監視が佐藤達の行動を嗅ぎつけ、『リゾナンター』への
噛ませ犬として差し向ける、洗脳を施された上で。

きっと、自分達はあの時に死んだんだ、と工藤は言う。
組織は傭兵を使い捨てとして思っていない。
優れた【異能】のみを管理し、劣等な者は他の異能者集団にぶつけて
処理を任す、勝ち負けはどうでも良い。
ただ『収集』することが、組織の全てだったのだから。
187名無し募集中。。。:2013/05/23(木) 13:36:39.82 0
だが組織が4人を差し向けた時には、既に結末が決まっていた事を
誰が思い、ボスとして君臨していた傲慢な男が理解していただろう。
リゾナンターのリーダーは、男と対峙してこう言ったという。

 「あなたが持ってたもの、全部貰っていくの。
 だって勿体ないじゃない、女の子の価値すら知らないのに。幼女は正義ってね」

なんとも異能者集団のリーダーを継いだ人物とは思えない自己中心な捨て台詞。
だが飯窪は格好良かったと思い出しては赤面していた。
彼女の好みはよく分からない。

そんな佐藤が目覚めた時に初めて出逢ったのが、田中れいなだった。
思わずしがみついて、田中は固まりながらも、振り払ったりはしない。
3人も初めは警戒していたが、佐藤のその姿を見て、少しずつ解かしていった。

知らない顔がたくさんあったが、佐藤個人としては田中と3人が居れば
あとはどうでも良かったし、異能者集団の仲間入りを果たした所で、状況という
状況は全く関係無かった。

殴られない生活。与えられる美味しい食事。
風呂で身体や髪を洗うことができ、痒くなったりフケが出る事も無い。
夜は布団に入って安らかに眠ることができる。
真新しい洋服や靴を買ってもらえて、清潔な下着に着替えられる。
そして変わらない3人の姿。
天気のいい日には遊びに出かける。
暖かい日の光を浴びて、風に吹かれて、工藤や石田、飯窪と話し明かす。
雨が降ったら、窓から外を見る。
188名無し募集中。。。:2013/05/23(木) 13:37:19.04 0
ソファーには田中が座っていてのんびりと携帯をいじっていたり
食事当番が週に何回か代わり、何人かで料理を作ったりもした。
道重はそんな皆を携帯に収めてはお店の掲示板に貼り付けていた。

喧嘩もした。
佐藤達と同世代の4人、その4人もまた、佐藤達のように保護された4人。
似たような境遇、だがどこか複雑な感情を渦巻く4人と4人。
田中が8人に話し合えと言ったあの日、様々な声が飛び交った。
仲間意識が深くなったのはきっと、あの時から。

それでも佐藤の中で変わったものと言えば、特には無い。
3人がそんな事があっても尚、ここに留まるという答えを出した。
それに疑問を抱くことなど、佐藤にはあまりにも無意味だった。

 そして静かに、時たま激しく降り注ぐ雨をじっと見続ける。

幸せは此処に。そして時間は経ち、永劫は消えた。
189名無し募集中。。。:2013/05/23(木) 13:38:26.37 0
>>186-188
『異能力 -Feel of afterimage-』
以上です。

余韻に浸ってました。サブにフクちゃんは感じ取ってた風。
それに対してはるなんの驚き顔にワロタ。6期最高ー。

-------------------------------------------------ここまで代理
190名無し募集中。。。:2013/05/23(木) 14:13:11.53 0
まーちゃんがれいなの心を開いたんだね
191名無し募集中。。。:2013/05/23(木) 15:23:35.55 O
幼女最強
最早明言ですねw
192名無し募集中。。。:2013/05/23(木) 16:36:02.76 0
とんでもない台詞だけどこの場合カッコいいかも
193名無し募集中。。。:2013/05/23(木) 18:56:01.68 O
>>189
更新代理乙です
れなまーのリアル歴史のトレース具合が絶妙ですね
194名無し募集中。。。:2013/05/23(木) 21:11:53.15 T
幼女最強!パパンパパンパン!
195名無し募集中。。。:2013/05/23(木) 22:18:22.77 O
あげまする
196名無し募集中。。。:2013/05/23(木) 23:29:24.01 0
私も
197名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 00:08:19.08 O
おやすみ前ほぜん
198名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 00:15:21.19 I
>>78-84の続きです

投下開始↓
199名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 00:16:32.54 I
「粛清人Rに襲われた?」
「はい。工藤を渡せって言いよったけど追い返しました」
「氷の魔女といい、粛清人Rといい、工藤を狙う理由は何なのかしら?」

あれからリゾナントに帰って、さっきの事を新垣に話してる田中

氷の魔女の時は、リゾナンターに潜入する為の芝居だったけど
粛清人Rか……
やっぱりハルの粛清なのかな……

カランコロン

「「「「ただいまー!!!!」」」」

リゾナンターの新入り4人が帰って来た

ハァ……
この4人の調査が出来ればなあ……

ブーンブーンブーン

電話?

えっ!?
傀儡師様から着信!
でででで出ないとマズイよな!?

「すみません! 電話が、施設からきてるんですけど、出ても良いですか!?」
「え、うん、別に良いっちゃけど」
200名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 00:17:28.46 I
リゾナントの出入り口に急いで向かう

「一応こっちから見える場所に居てねー」

あーもーイチイチうるさいな!
小姑か!

カランコロン!

ピッ

「もしもし! いいいいえ、別に……あの、何で、しょうか? あ、はい。田中れいなと交戦しまし……そうなんですか? ハルの調査が遅いから……はい……はい、はい! ありがとうございます! 頑張ります!」

ピッ

なんだ
ハルの粛清じゃなかったのか
それどころか期待してるって!
この任務、ゼッテー成功させてやるからな!

カランコロン

「あ、工藤。私と田中っちで出かけてくるから、フクちゃん達と留守番しててね」

って事は、新入り4人が残るんだな
もしかして、いきなりチャンス?

「どこに行くんですか?」
「さゆみんが考えてくれた新作メニューの試食にね。ついでに田中っちの腕の傷も治してもらってくるから」

粛清人の爪にやられた傷か
確か、道重さゆみは治癒能力≠ェ使えるんだったな
201名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 00:18:32.74 I
「ごめんなさい、ハルのせいで怪我しちゃって」
「別に良いとよ。れいながしたくてしてるだけっちゃん。今日はもう狙われないやろうけど、この4人に守ってもらって」
「はい!」

むしろ好都合だし!

「もしダークネスが来ても聖達が守るからね」
「衣梨にドーンと任せるっちゃ!」
「ウチらじゃ心配かもしれないけどね」
「先輩に訓練してもらってるし、
少しは安心してもらえると良いな」
「私たちがいないからって、トレーニングはサボらないでよ」
「「「「はーい」」」」

トレーニングか
これは調査が進むかもしれない
傀儡師様に良い報告が出来そうだ
今日のハル、超ツイてるんじゃね?
やっぱ普段の行いが良いからかな!

「夜には帰るから、それまでよろしくね」
「「「「「いってらっしゃーい!!!!!」」」」」
202名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 00:19:51.16 I
──



「やあっ!」
「えいっ!」

リゾナントの地下1階にあるトレーニングルームで、リゾナンターの新入り4人が1対1の模擬戦中

「もっと腕を伸ばして! 足もしっかり踏み込まないと相手に届かないし威力が軽くなっちゃう!」
「わかったよ聖ちゃん!」



鈴木香音

保有能力は獣化でカマキリになれる
暴走の危険がある事から、普段は両腕のみの獣化に留めているらしい
リゾナンターに入った頃に比べて最も成長したメンバーで、機転をきかせて仲間を救うなど、警戒すべき要素が多い

ダンッ!

「やった当たった!」
「良くなってきたよ! 香音ちゃん、その調子!」
203名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 00:21:47.02 I
譜久村聖

元エッグでリゾナンターに入った裏切り者
エッグやダークネスに関する記憶は消されている
保有能力は、他の能力者の能力を読み取るスキャン
対象に直接触れる必要がある為、戦闘中に使用するのは難しい
エッグ時代に比べて、読み取りに掛かる時間が短縮されている
運動能力が高く格闘戦も出来る事から、トレーニング中は他の新入り3人をリードしている

「よし! 次は衣梨と里保の番っちゃ!」
「えりぽんには絶対負けないよ!」



生田衣梨奈

保有能力は空間を歪める空間干渉系で、飛んでくる物の軌道を変えるなど防御で多用している
ただし、自分の周りの狭い範囲に限られるらしい
運動能力は悪くないがチームワークに難があり、予想外の行動をする事から敵も味方も警戒が必要

ヒュンヒュン!

「ほれほれ、擦りもしとらんやん」
「余裕だね。油断大敵だよ!」
204名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 00:22:54.16 I
鞘師里保

保有能力は水のみを操る念動力で、両手で掬える程度の量なら自由に操れる
それ以上の量になると、コントロールする精度が落ちるらしい
6年前から格闘技術を身に付けていたらしい
リゾナンターの新入り4人の中では、最も戦闘向きのメンバー

バシャン!

「うわっ!」

水球が当たった生田衣梨奈が倒れ込み、その上に鞘師里保が乗っかった

「そこまで!」
「フフン。ウチの勝ちだね」
「また負けた……メッチャ悔しーい! 里保、強すぎっちゃろ!」
「毎日のトレーニングが大事なんだよ、えりぽん」

確かに強い
今のハルじゃ勝てない
少しでも早く傀儡師様に報告した方が良いな

「ハル、電話したいんですけど1階に上がっても良いですか?」
「いいよ。じゃあ休憩にしよっか」
「ほーい」
「サイダー!」
「お菓子ー!」

ガキか!

それぞれタオルで汗を拭いたり、水分補給をし始めた
205名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 00:24:26.13 I
いやー良かった
これなら傀儡師様も喜んでくれるだろ!

「聖も1階に行きたいから、一緒に行こっか」

何だよ、ついて来るなよ、邪魔だよ!
まあ、何か理由つけて1人で外に出れば良いか

「良いですよ」
「やった!」

譜久村がハルの隣に来て手を取る

ギュッ

うお!?
そー言えば、譜久村聖ってそうだったな
しっかり手を握ってくるのは相変わらずか
にしても……

「2人並んでこの階段を上るのは無理ですって。狭いんだから」
「良いじゃん。こうしてくっつけば〜」

いや、危ないだろ
メッチャ嬉しそうだし
小さい子が好きなのも相変わらずなんだな
206名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 00:26:43.46 I
「……あれ?」

譜久村が急に立ち止まった

「どうかしましたか?」
「聖達って、前にもこうして歩いた事ない?」

それって1年くらい前の話……エッグの頃じゃん!
ウソでしょ!?
まさか、記憶が消えてない!?
207名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 00:31:04.36 I
投下完了↑

>>199-206
『この地球の平和を本気で願ってるんだよ!』7



以下返信

>>86
そんな姿で言われてもって感じですね。獣化すると会話が出来ないので、止む無くあの様になりました。
イイセンスなんてもったいないお言葉ありがとうございます。無意識リゾナントな気がするのですが元の作品が思い付きません。どんな作品か興味ありますね。

>>87
いつ明らかに出来るかわかりませんが、お付き合い頂ければ幸いです。

>>88
テンポが良くて和むなんてもったいないお言葉ありがとうございます。維持したいです。

皆様コメントありがとうございます。いつも励みになっています。

そして、
遅くなりましたが、
田中さん、卒業おめでとうございます。
田中さんの未来に幸あれ。
208名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 01:57:06.44 0
>>207
更新乙です
先輩4人の能力も把握してストーリーも一歩進んだ感じですなあ
209名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 03:29:37.34 0
おやすみナント
210名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 06:20:18.15 O
ワクワク
211名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 10:10:06.51 0
おはようさん
212名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 10:14:28.81 0
>>207
いつも楽しみにしてます
ガキさんとか工藤の様子を見て昔の自分とか思い出しそうなものなのだがw
213名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 10:29:58.13 0
>>207
どぅのスパイ活動が順調すぎて何より
しかしこの話どぅ以外の10期も登場してくるとしたらとんでもない大河作品になりそうな気が
次も楽しみにしてますね
214名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 11:28:19.89 0
れいながガキさんに敬語を使ってるところが面白かった
215名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 12:26:46.09 0
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/786.html の続きです


翌日。
たまたま学校が休みだった鈴木香音と手が空いていた飯窪春菜は、愛佳の受けた依頼によって住宅街の路地裏にいた。

「依頼主の人が言ってたのはここら辺だよね」
「はい。間違いないと思います」

辺りを見回しながら尋ねる香音に、春菜が答える。
今回の仕事は迷い猫の捜索。地味な仕事だが、仕事には違いない。
飼い主が心当たりのある場所を数箇所あげ、二番目の場所がこの路地裏だった。

不意にしゃがみ、瞳を閉じる春菜。
アスファルトに手をやり、意識を集中させる。
五感強化。春菜は全神経を聴覚に傾けた。人々の話し声、テレビの音、車のクラクション。そして、ついに探り当てる。

「鈴木さん、ここから東南東50m付近から猫の声が聞こえます!」
「おっけ、まかせて」

今度は香音が能力を発動させる番だ。
春菜が指示した方向に、ダッシュ。目の前に迫る壁、しかしまるで水の中に潜るように香音の体は壁の中に入ってゆく。
物質透化。香音の能力にかかれば分厚い壁も、鉄条網の張り巡らされた金網も、存在しないに等しい。
しかもその力は、至近にいる味方にも及ぶ。春菜は香音に置いていかれないように必死に後を追う。
物質透化中に能力の範囲から外れてしまったら、昔のゲームのネタのように壁にめり込んだまま抜け出せなくなってしまう。
216名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 12:27:30.67 0
ともあれ、二人はターゲットである子猫のいる民家の庭先にたどり着いた。

「この毛色にこの模様、間違いないです」
「やったね。さっそく捕まえないと」
「待ってください。私に、お任せあれ」

春菜が再び、神経を集中させた。
触覚に能力を集中させることで、わずかな風の流れにすら敏感になる。
子猫が逃げようとする方向を把握することなど、朝飯前。

「みゃあ?!」
「ほら、大人しくしなさい。やりましたよ、鈴木さん!」

子猫を抱き上げた春菜が、ガッツポーズ。
頼れる年上の後輩の活躍に、香音は満面の笑みで返すのだった。


迷い猫を飼い主に返した帰り道、香音と春菜は偶然、聖と衣梨奈に遭遇した。

「お、ぽんぽんコンビじゃーん。何やってんの?」
「聖たちは光井さんからの依頼の帰り。えりぽんたちは?」
「こっちも。もう終わったっちゃけど」
「せっかくだから、これからみんなでランチに行きませんか?」

女子も四人集まれば姦しい。
これから街に出て、おいしいと評判のバイキングに行こう。行動派の衣梨奈が提案しかけたその時。
217名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 12:28:12.33 0
「ランチの前にさ、あたしたちに付き合ってくれないかな」

何時の間にか。
四人は、前と後ろを派手な色のTシャツの少女たちに挟まれていた。
Tシャツに、赤チェックのスカート。特徴的な衣装が、衣梨奈にあることを思い起こさせる。

「あ、あんたたち!もしかして一昨日里保たちの邪魔をしたっていう!!」
「仲間たちが世話になったね。その事情を知ってるならうちらが今日何をするか、わかるでしょ?」

どこからともなく、赤いTシャツの少女が日本刀を取り出す。
斬られればもちろん、ただでは済まない。

「何かあんたたちさあ、あずたちが遭遇した四人より弱そうだね。こりゃすぐに片付くか」

背の高い、緑色のTシャツを着た少女が腕撫す。
青いTシャツの少女も、飛びかからんばかりの闘志を見せている。
そんな中、聖は黄色Tシャツがずっとこちらのほうを見ていることに気づく。

「…聖」
「え。もしかしてあなた…明梨?」

聖は黄色Tの顔に見覚えがあった。
幼い頃、一緒に遊んでいた仲良し四人組の一人。それが目の前にいる、明梨と呼んだ少女だった。

「まさかあんたが能力者、しかもリゾナンターになってるなんてね」
「佐保ちゃん、こいつ知り合いなの?」
「遠い昔のね。でも今は、そんなことはどうでもいい」
218名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 12:28:52.10 0
その言葉を形にするように、聖を睨み付ける明梨。
拒絶とも言うべき態度に、続けて声を掛けようとした聖の言葉は止まってしまう。

「聖、ぼやっとしてる場合やないと!!」

そんな聖を、衣梨奈の体当たりが突き飛ばす。
聖がいた場所の地面から、鋭い木の根がアスファルトを突き破る。

「惜しかった!もうちょっとで串刺しだったのに」
「森ティは詰めが甘いんだよ」

地団駄を踏む緑Tシャツを押しのけ、青いTシャツの少女が躍り出る。
主張の激しい目をかっと見開いた瞬間、視線の先にいた春菜が蹲る。

「はるなん!?」
「さ、さ、寒いっ…体が…寒いんです」

がちがちと歯の根を震わせ、ひたすら体を摩る春菜。
青Tの仕業ではあること間違いないが、理由がわからない。
しかし、一人だけその謎を解き明かすものがいた。

「はるなんしっかり!」
「あ、生田さん…」

衣梨奈が声をかけると、それまでの凍えるような寒さが嘘だったかのように、春菜の体に暖かさが戻る。
219名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 12:29:27.78 0
「あんた、精神感応系の能力者やろ。衣梨の目は誤魔化せないっちゃよ?」

青Tシャツの少女の能力。
それは相手の自律神経に働きかけ、体感温度を著しく狂わすものだった。
脳さえジャックしてしまえば、精神的に相手を凍死させることも可能。
ただ、同じ系統の力を持つ衣梨奈には早々と見抜かれてしまう。

「一人一人じゃ埒があかないね。全員でかかるよ」
「了解!!」

一進一退の攻防を嫌ったのか、リーダーらしき赤いTシャツの少女が指示を出す。
赤、緑、黄色、青の四人が一斉に襲いかかってきた。
こうなると不利なのは聖たちのほうだ。相手は全員が戦闘向きの能力を有しているが、こちらはサポート能力に適した能力者が多い。
一対一ではどうしても分が悪くなってしまう。

「そうはいかんけんね!!」

普段はKYキャラで通っているが戦闘ともなると意外と気が回る。
衣梨奈が両手のピアノ線を躍らせ、周囲に結界を張り巡らせた。迂闊に近づけは、ピアノ線に絡め取られ、精神を破壊されてしまう。

「でかしたえりちゃん!」
「今のうちに逃げましょう!!」

さあ反撃だ、とばかりに息巻く香音を春菜が冷や水をかけるが如くの一言。
220名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 12:29:57.97 0
「そうだね。聖たちにはあの子たちと戦う理由なんてないもの」

聖が、春菜の意見に追随する。
彼女たちがなぜ自分達を狙うのかはわからない。ただ、避けられる争いは避けるべきだ。
特に、明梨とは戦いたくない。その言葉は、胸の奥に仕舞われた。
ピアノ線の結界を壁に退避をはじめようとした四人。しかし、それは一陣の風によって遮られた。

「痛っ?!」
「香音ちゃん!!」

通り抜けた風、それは姿を現すことではっきりする。
風のように感じたのは、赤Tシャツの少女が結界を通り抜け、手にした日本刀で香音を高速で薙いだから。
脇腹を斬られ、崩れ落ちる香音に聖が駆け寄った。

慌てて香音の傷口を押さえる聖の左手から、力が溢れる。
リゾナントのリーダー道重さゆみから複写した治癒能力。幸い香音の傷は浅く、すぐに塞がった。

「侍魂、見せてあげるよ」

そんなことを言いつつ、刀を構える赤Tシャツの少女。
日の光を反射し、ぎらついた刀身を見せ付けるかのように。

戦うしか、ないのか。
揺らぎに揺らいだ聖の心、躊躇しつつもそれは戦いへと傾いてゆく。
221名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 12:30:40.31 0
「香音ちゃんとえりぽんはその赤い子を!聖とはるなんは後方の攻撃を迎え撃つから!!」

聖の予測は正しかった。
結界を隔てた向こう側から、何かを掘り進めるような轟音。そして。
らせん状に絡まった複数の根が、地面を突き破り襲ってきた。

「やっぱり!」
「あたしの植物操作能力なら、遠く離れた場所からでも攻撃できるんだよ!!」

結界の向こうで、緑色のTシャツを着た少女がにやりと笑っている。
自らの能力に相当自信があるようだ。

「譜久村さん、私に任せてくれませんか」
「はるなん、大丈夫?」

春菜が、大きく頷く。
そして、結界の向こうに大声で呼びかけた。

「植物を操れるなんて、凄いです!その力を、植樹活動とかに生かしてみたらどうですか?」
「あんた、あたしをバカにしてんのか!!」

何が気に障ったのかわからないが、春菜の言葉は少女を激しく苛立たせた。
次々と春菜に狙いを定めて突き生えてくる木の根。それを触覚強化で巧みに避ける春菜だったが、ついに一
本の根に捕まってしまう。
そしてあっという間に春菜を絡め取った根が、その細い体をぎりぎりと締め付ける。
222名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 12:31:17.40 0
「ざまあみろ!体中の骨を、ばらばらに砕いてやる!!」

しかし春菜は苦しみ悶えるどころか。
涼しい顔をして、緑色Tシャツの少女を見ている。

「次にあなたは、やせ我慢できるのも今のうち、と言う」
「やせ我慢できるのも今のうち…はっ!!」

言葉によって誘った一瞬の動揺を、春菜は見逃さなかった。
自らの五感を低減させる要領で、根へ自らの感覚を伸ばしている少女の五感を、奪う。

「え?暗い?目、目が、見えない!」
「今です、譜久村さん!!」

視覚を奪われうろたえている少女に向け、聖が親指と人差し指で作ったピストルが銃弾を放つ。
念動弾。キュートのメンバーである千聖から密かに複写した能力だ。

念動弾がピアノ線を掻い潜り、緑色の少女に命中する。
避けることもできずにまともに攻撃を受けた少女は、悔しげな表情を浮かべたまま仰向けに倒れた。
223名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 12:32:40.50 0
>>215-222
長すぎるので一旦切ります。
相変わらずのまとめ下手で反省することしきりです

-----------------------------------------ここまで転載
224名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 13:01:58.87 0

目まぐるしい集団戦の中で各々個性が出ていて面白かった
225名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 14:52:44.55 0
木ーを植えたーい
226名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 17:37:20.11 O
続きたのしみ
227名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 18:29:35.27 0
>>223
作者さんも代理さんも乙です
視界を奪った相手にチャカを乱射するとかどこの外道かとw
フクちゃんとおアカリの因縁はどう決着がつくのかスルーなのか
次回を楽しみにしてます
228名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 18:44:34.03 0
>>223
鞘師の強さが突出しているもう一方のチームよりこちらのほうがバランス取れてる気がしないでもないですね
あとは香音ちゃんが一人ずつ敵を地中に誘い込んで放置すればビクトリー
229名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 18:50:34.41 0
>>223
更新と転載お疲れ様です
暫定保管庫をちょっとだけ弄りました

前スレから今スレで更新のあったシリーズや長編作品について個別で分類してます

『この地球の平和を本気で願ってるんだよ!』
『異能力』
『the new WIND―――新しい風』
『リゾナンターΧ(カイ)』
『リゾナンターΧ(カイ) 番外編』
『『リゾナンターΧ(カイ) さくらの修行編』
『共鳴戦隊リゾナンター』

以上の過去作品とかは読みやすくなったと思います
リンクのミスとかあったら言いつけてください
230名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 18:51:32.46 0
読みやすくというよりはページにたどり着きやすくなったっていう方が正確ですかね
231名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 20:41:01.51 O
>>223
更新代理乙です
能力の強弱感がバトルの流れにインパクトを与えてますね
232名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 21:52:00.09 O
ほぜ
233名無し募集中。。。:2013/05/24(金) 23:08:05.63 O
夜も保全
234名無し募集中。。。:2013/05/25(土) 00:54:25.58 0
それではおやすみなさやし
235名無し募集中。。。:2013/05/25(土) 04:31:38.01 0
ヤシ
236名無し募集中。。。:2013/05/25(土) 07:02:59.09 O
よいしょ
237名無し募集中。。。:2013/05/25(土) 07:24:45.11 0
>>215-222 の続きになります

その一方で、香音と衣梨奈は赤Tシャツの能力によって翻弄されていた。
瞬間移動なのか。加速なのか。それとも。目にも止まらない動きによる斬撃に、衣梨奈と香音は防戦を強いられてしまう。

「香音ちゃん、あとどれくらいいけそう?」
「うん、あと1分くらい…」

香音の透過能力により何とか凌いではいるが、限界を超えてしまえば斬られ放題なのは目に見えている。
相手の能力を見抜き、攻略するには1分はあまりにも短い。

「厄介な能力を持ってるみたいだけど、我慢比べでもするつもりかな?」
「う、うるさいっちゃね!衣梨はもう、あんたの能力なんてお見通しやけんね!!」

胸を張り、相手を指差す衣梨奈。

「あんたの能力は、香音ちゃんと同じ物質透過!だから、衣梨奈のピアノ線で捉えられない。図星っちゃろ!!」
「でもそれじゃあの結界を一瞬ですり抜けた理由にはならないって…」
「え?じゃあ、プラス高速移動、アクセラレーションっちゃん!!」

やっぱり根拠のない自信だったか。
香音はがっくりと項垂れた。衣梨奈の言う事が真実ならば、目の前の少女は二重能力者 ― ダブル ― ということになってしまう。

能力は、個人の生い立ちや性質に影響されながら発現する。
その発現の仕方は様々だが、ある事柄においては共通項がある。それは。

一個人において発現する能力は、一つであるということ。

つまり、一人の人間が二つ以上の能力を駆使することはできない。
治癒能力と物質崩壊という二つの能力を持つさゆみは、精神の中に姉人格であるさえみを内包するが故のこと。
しかも、物質崩壊という力は基本的に治癒能力の延長線上にあるものだ。
また、聖が持つ能力複写はあくまでも複写が能力の主体であり、複写した能力を同時に使用することはできない。
238名無し募集中。。。:2013/05/25(土) 07:25:28.87 0
それができるのが、「ダブル」と呼ばれる能力者。
ただし能力者の中にダブルが発生する確率は、限りなく低い。普通に考えれば、目の前の少女がダブルであるはずがない。

「びっくり。まさか、あなたみたいな子に当てられるなんて」

だがその前提をひっくり返す、少女の回答。
つまり、彼女は二重能力者。

「でも、あたしは『作られた』ダブル。詳しくは知らないけど、偶発的に発現した二人の双子みたいな能力者を再現する計画の副産物なんだって。だから選ばれなかったのかな」
「でも、あんたは一人…」
「ううん、あたしは『二人で一人』」

言いながら、高速移動と物質透過の複合技で香音に斬りかかる赤いTシャツ。
物質透過するはずの香音の右足に、薄く刀傷が走る。能力に限界が近づいて来ている証拠だった。

「ごめんね。あなたたちを倒さないと、上の人たちが認めてくれないんだ。あたしたちは『リゾナンターに勝った』勲章を掲げて、もう一度立ち上がる!」

姿を消しつつの、高速移動。
その軌道上には無防備の衣梨奈が。

「えりちゃんっ!!」

身を挺して衣梨奈の前に飛び込んだ香音が、凶刃の前に倒れる。
その行動、そしてその意味。
衣梨奈は自分を押し殺し、標的にピアノ線を絡ませる。

「こんなもの、すぐに物質透過で」

拘束から逃れようと、自らの能力を使おうとする赤い少女。
しかし、うまくいかない。何かが、頭の中に入り込んでバランスを崩している。
239名無し募集中。。。:2013/05/25(土) 07:26:08.63 0
「へえ。あんた、本当に『二人で一人』やったんか」

二人で一人。作られた「ダブル」。
赤い少女は、元々双子だった。それを、科学の手によって「一人に」された。それを実現したのは、双子ならではの和合性。

「でも、衣梨は得意やけん。空気読まんで割り込むの」

衣梨奈が、ピアノ線に力を込める。
線を伝って少女の脳に達した精神破壊の力は、抵抗する暇も与えずに少女の意識を吹き飛ばした。

「みーこ!森ティ!!」
「くっ、この邪魔な結界さえなければ」

結界に阻まれ、二人の仲間が倒れてしまった。
ままならない状況に、歯軋りする明梨。
そんな時。青色の少女が、大声を張り上げて結界に向かって突っ込んでいった。

「まぁな、何を!」
「うおおおおおおっ!!!!」

まさに、捨て身の行動。
張られた糸を掴み、引きちぎり、そしてその糸に絡め取られる。
もちろん、糸に触れた瞬間に衣梨奈の精神破壊能力が走り、少女の脳は焼き切られるような痛みに襲われた。だが、その行動が、道を切り開く。

結界を無理やりな方法で打ち破った後に、青の少女がゆっくり振り返り、微笑む。
やってやったぜ、とでも言いたげな表情、しかしそれは与えられた精神的なダメージの底へと沈んでゆく。あまりにも、大きな犠牲。
240名無し募集中。。。:2013/05/25(土) 07:26:54.95 0
残っているのは、自分一人。
けれど、勝利にたどり着く架け橋を仲間たちは作ってくれた。
その思いが、明梨に力を与える。

電光石火の攻撃とはまさにこのこと。
全速力で向かってくる黄色い影、聖たちは後方の結界に頼っていたせいで防御の体勢が取れない。
まずは厄介なピアノ線を再び張られる前に、衣梨奈の腹に正拳。突き抜けるような衝撃に、膝をつき倒れる衣梨奈。

その隙を突こうと横から襲撃する春菜だったが、正拳の姿勢からの手刀をまともに喰らってしまう。
緑の少女の攻撃により全身にダメージを負っていた春菜は、痛覚を消す間もなく痛みに悶絶し転げた。
弱っていたとは言え、僅かな時間で衣梨奈と春菜を倒してしまった。

「…空手、続けてたんだね」

最早、五体満足なのは自分しかいない。
戦うと覚悟は決めていても、どうしても目の前の相手との幼い記憶が邪魔をしてしまう。
それが、言葉にも表れていた。
241名無し募集中。。。:2013/05/25(土) 07:27:29.06 0
☆ ☆ ☆


「じゃあ、あたしがアミュレットスペード!!」
「いろはねえ、クローバー!」
「えっと、ダイヤがいい」

年齢も学校も違うけれど、四人はいつも一緒だった。
集まると必ずやっていたのが、当時流行したアニメごっこ。トランプの柄を模した四人の少女が活躍するシチュエーション
は、まさにごっこ遊びにはぴったりだった。

「聖は、どうしよう」

裕福な家庭に生まれた聖は、環境のせいかこの三人が最初の友達らしい友達であった。
だからなのか、もともと遠慮気味な性格がさらに加速する。四人の中で一番目立つ、ハート役を自らやるということが言えなかったのだ。

「聖は、アミュレットハートやりなよ。だって何かせくしーだし」
「えっ、そんな…」

そんな聖を見かねて、一番の年長である明梨が助け舟を出す。
聖はと言うと、突如として言われたせくしーという言葉に顔を赤らめていた。

四人は近所の喫茶店の側で、必殺技を出しあったり、喫茶店から出てくる太ももが好きそうなおじさんを仮想敵に見立ててやっつけたりして一日中遊んだ。
242名無し募集中。。。:2013/05/25(土) 07:28:05.27 0
☆ ☆ ☆

「よく一緒に、遊んだよね」
「もう昔の話だよ。あたしは能力研究所に引き取られ『エッグ』とかいう計画の中に組み込まれた。そして何でかは知らないけど、聖はリゾナンターになった。もう、昔の関係には戻れない」

やはり、突きつけられる現実。
覚悟を決めたはずなのに。聖はまだ、自分の心が揺れていることに気づいていた。
それでも、前に進まなければならない。

「なんで。なんで聖たちと戦おうとするの?一体何の意味が」
「意味ならある。リゾナンターと言えば、少人数であのダークネスに立ち向かった伝説の集団。警察の特殊部隊に入り損ねたあたしたちが目指すには格好の目標じゃないか」

問答無用。
その意志が、ヤァ!という掛け声とともに聖に向かってくる。
念動弾で応戦しようにも、その間合いすら与えない。

至近距離から繰り出される、中段蹴り。
咄嗟に腹を庇う聖だが、そのガードごと蹴り飛ばされる。
強烈な痛みと、腕に響く嫌な音。蹴りの威力で両腕が折れたのだ。だが、聖の治癒能力がそのダメージを回復してゆく。

それでも、聖の圧倒的な不利な状況は変わらない。
相手は、肉体強化能力を使用した空手の使い手。鍛え上げられた肉体に対して、近接攻撃に向かない聖が太刀打ちできるはずもない。
彼女に残されている攻撃のカードは、大きな間合いを必要とする念動弾のみ。いや、正確に言えば風を使う能力があるのだが、あくまでも「傷の共有」とセットの危ういもの。
243名無し募集中。。。:2013/05/25(土) 07:29:09.55 0
使わないって、決めたんだから…

それは聖の意地でもあった。
絵里との思い出の絆をなるべくなら、人を傷付けることには使いたくない。

ならばどうするか。
今保有している「念動弾」を、別の能力に書き換える。問題は、何を上書きするかだ。
春菜の五感強化。威力を三分の一にされては意味が無い。衣梨奈の精神破壊。精神系の能力は複写のリスクが高い。
香音の物質透過。防御においては使えるかも知れない。ただ、彼女が倒れている場所は聖の位置から離れ過ぎている。

「もう立ち上がれない?でも、あたしは容赦しない」

こうしている間にも、明梨はとどめを刺そうとこちらへ近づいてくる。
この状況において取れる行動はただ一つ。至近の能力者の能力を複写するしかない。それが例え、敵の能力であったとしても。
聖はゆっくりと、倒れている対象へと手を伸ばした。

明梨が、走り出す。
倒れている聖に、確実に一撃を与えるために。
しかし振り下ろされた拳は聖の体を通過し、地面を抉った。

「なにっ!?」
「…危なかった。もう少し遅かったら、やられてた」

何事もなかったかのように、立ち上がる聖。
土壇場で聖が複写した能力の持ち主、それは衣梨奈に倒された赤Tシャツの少女のものだった。

「物質透過…所詮一時凌ぎの小手先の能力でしょ!」

再び明梨が襲いかかる。
聖の複写能力はオリジナルの三分の一しか威力を発揮できない。
しかし、他の力と連携させれば話は別。
244名無し募集中。。。:2013/05/25(土) 07:29:54.35 0
聖の姿が一瞬、掻き消えたように見えた。
背後に強い衝撃。痛みで倒れそうになる体を、明梨は懸命に支える。
いつの間にか、念動弾を浴びせられていた。
捉えられなかったのだ。聖の、目にも止まらぬ動きを。

「うそ…聖、四つ目の能力が、使えてる?」

聖本人ですら予想がつかなかった、四つ目の枠の開花。
からくりは「作られた」ダブルである赤いTシャツの少女の能力を複写したことにある。
複写した能力は二つで一つのダブルが故の能力である「物質透過」「高速移動」。
本来ならば、そのうちの一つが元から保有している「念動弾」の能力を上書きするはず。
そうならなかったのは、あくまで上記能力が一つ分として聖に複写されたから。

ただ、あくまでも聖の中に入るのは二つの能力。
器は一つだが能力は二つ。必然的に一つは器から溢れ、もう一つの器があればそこに流れ落ちる。

「攻撃が当たったくらいでいい気になるな!!」

ダメージを抱えながらも、明梨の攻撃は止まない。
だが、その腕から放つ剛拳も、繰り出す足技も、聖の物質透過能力の防御を突き抜けることはない。その間も、念動弾による攻撃。
ヒット&アウェイを繰り返すことで、ついに明梨の片膝がついた。
それでも、彼女の闘志が燃え尽きる事はない。

「くそ・・・!!」
「ねえ明梨、もうやめよう?」
「ふざけるな!ここであたしが退いたら、倒れた仲間たちの意志を無駄にすることになる!!」

そんな姿を見て、聖は思い出す。
かつて自らが経験したことを。
心の中の、思い出を。
245名無し募集中。。。:2013/05/25(土) 07:31:07.16 0
>>237-244

代理投稿終了

まとめきれなかったので次回に続きます(汗
246名無し募集中。。。:2013/05/25(土) 08:50:12.51 0

つんくの胡散臭さい魔法からこんな熱い展開になるとは
続き待ってますんで
247名無し募集中。。。:2013/05/25(土) 09:59:54.51 0
>>245
王道ここに極まれりって感じですね
聖の過去の思い出からどんな風に現在に繋がるのかしら
248名無し募集中。。。:2013/05/25(土) 12:35:22.71 0
元ネタの能力設定を使いつつ新たな切り口を見せる
いい仕事してますねえ
249名無し募集中。。。:2013/05/25(土) 13:47:33.18 0
土曜の昼あげ
250名無し募集中。。。:2013/05/25(土) 15:47:51.70 O
3時のおやつあげ
251名無し募集中。。。:2013/05/25(土) 17:39:08.13 0
夕食タイム
252名無し募集中。。。:2013/05/25(土) 19:33:47.39 O
ほぜ
253名無し募集中。。。:2013/05/25(土) 21:30:47.07 0
あぶね
254名無し募集中。。。:2013/05/25(土) 22:57:21.57 O
ねむい
255名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 00:38:22.62 0
あげ
256名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 01:51:25.31 0
おやすみ日本
257名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 02:30:55.13 O
ねるなんと
258名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 06:41:31.29 0
おやすみ
259名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 06:42:30.94 0
おぱよん
260名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 07:41:45.91 O
今日は何が来るかな
261名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 10:00:05.88 O
ひとりの朝
262名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 12:03:22.72 0
>>186-188の続き

 ―― ―― ―

工藤が叫ぶ、焦燥の色を露わにして、佐藤は泣いていた。

 「まーちゃん、田中さんを呼んできて!ハルが引きつけてる間に早く!」
 「ヤダ!くどぅーも一緒に来てよ!」
 「バッカッ!あの人にはこっちの思考が分かるんだよ!
 まーちゃんを追っかけられたら意味ないじゃんか!」
 「ヤダヤダ!くどぅーも居なくなるなんてヤダぁ!」
 「大丈夫、死ぬつもりなんてないから、ほら早く!」
 「くどぅー!」

譜久村聖が【能力複写】によって後方支援、だが"光"の
【精神感応】と【瞬間移動】の二重発動によって全て無効化。
追撃の拳に成す術もなく、その身体を地面に伏した。

 ――どうして

前方の生田衣梨奈は怒りに任せて【精神破壊】を暴発、"光"に幾度か
その砲撃を浴びせたが、肉体的限界を越え、意識を失った。

 ――どうして

鞘師里保が隙を狙って"光"に追撃を試みたが、意識を失った
生田の身体を盾にされ、【光使い】に呑みこまれようとしたところを
鞘師の腕を掴んだ鈴木香音の【非物質化】によって回避。
だが【瞬間移動】によって迫っていた"光"の強襲を喰らい、鈴木は倒れた。

 ――どうして
263名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 12:04:50.49 0
道重さゆみが【治癒能力】で4人の回復を図ろうとした時、"光"が
【光使い】を行使、飯窪が【粘液放出】によって軌道を変え、石田亜佑美の
【加速】によって場所を移動。
工藤遥による【千里眼】で戦果の拡張を試み、"光"の行動を予測する。
これによって佐藤優樹の【瞬間移動】で鞘師の【水限定念動力】を"光"に叩きつけた。
その行動に費やした時間は、約6秒。

 ――どうして

刹那、"光"は、鞘師のチカラを利用して、道重と飯窪、石田の三人へと
【瞬間移動】で水の軌道を"移動"させる。
絶望的な状況下の、彼女達による精一杯の作戦でも【精神感応】を行使されては
それは彼女への有利な結果に書き換えられてしまう。
水圧によって地面に叩きつけられた三人は動かなかった。
鞘師は捨て身とでも言うように刀を引きぬいたが、動揺が刃に震えを起こさせる。
最初の一太刀を浴びせる前に、眼前に現れた"光"の猛攻によって地に伏した。

 ――どうして!!

"光"を見つけたらすぐにその場から逃げろ。
田中にはそう言われていた。
言われていた筈なのに、リゾナンターは挑んでしまった。
裏切りの"光"に、それでも微かな希望を捨て切れずに。

佐藤には関係の無い光だった。
田中には大切な光だった。
それだけ。
それだけの違いの中、その大切だった人達の心が、『リゾナンター』に在った。
264名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 12:05:48.87 0
どうしてこの人は、こんな事をしているのか。
だってこの人はたなさたんの。
片膝をついて下を向いている田中の代わりに、佐藤は見上げた。
 
 心の中が、疼いた。

今の自分の心が嫌いだとか怖いだとかいう感情とは違っていた。
性質からして違う。
"光"には、何も無かった。口元も頬肉もぴくりとも動かない。
歯を食いしばっているわけでも、感情があまりにも、皆無。

 この人は、たなさたんが嫌いなの?でもたなさたんはこの人が。

"光"は田中のことを見下ろしていて、佐藤の方には一瞥もくれない。
佐藤が食い入るように見上げているのに、完全に無視している。
佐藤は思考する、考えて考えて考えて考えた。
何かをしなければ。自分も何か、工藤のように何かしなければ。

 「あ、あの、あのっ……」

唇が震えて、どもる。唇を湿らせて、再び声を発する。

 「どうして、たなさたんをなぐるの?くどぅーやはるなんや、あゆみんが
 そんなに、きらいなの?そんなに…ころしたいほどきらいなの…?」
265名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 12:06:40.91 0
その時初めて、初めて、"光"が、動いた。
田中に向けられていた視線が、初めて、佐藤に向けられたのだ。
血の気が薄い、虹色の線が並んだ白い肌に澱んだ黄金の両目。
その、全く動かない目の下で、頬肉がゆっくりと持ち上がる。

笑った。

声も息も漏らさず、喉も震わせること無く、笑った。
恐ろしい笑顔だった。佐藤は目を見開く。

 「たのしいの?ころすのがたのしいの?
 そ、それならほかの人でもいいじゃない。たなさたんよりも悪い人いっぱいいるよ。
 たなさたんはわるくない人だもん悪くないもん!なんでひどいことするの!?」

田中が探していた『高橋愛』という女性と同じ顔をした"光"を必死で
睨みつけながら、佐藤は叫んでいた。
佐藤は気付かない、自分の存在がどれほど目の前に居る"光"の行動を妨げているか。
笑顔は無かった、だが最初に見た何も無い表情とも違う。
何かが、あるような気がした。
佐藤はそれを読みとろうと瞬きをした時、田中が唐突に立ちあがった。

同時に、田中の腕が異様な感触なのに気付く。
その拳が青い光を放ったまま下から突き上げられ、"光"の顎を直撃。
鈍い音、だが肉体を殴ったものとは違う、田中の腕が変容しながらも
止まらずに振り抜けられ、"光"が一歩後退したところに、田中が一歩踏み出す。
踏みだしながら腰を捻り、直角に曲げられた肘が後方に引かれて打ちだされる。
266名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 12:07:48.58 0
佐藤は地面に座り込んだまま、その光景を見つけていた。
殴られてばかりいた田中が殴り返し、その拳が当たった。
だが、その拳が、佐藤の両目に衝撃なものとして映る。
いつもぶら下がっていた冷たくも暖かいその腕。手を握ってくれたその掌。

 黒。

赤黒い血管を並べた、黒い皮膚の手。
暗闇に溶け込んでしまいそうな黒を彩るのは黒い、滴る水。
黒い水、黒い血。

 「たなさたん…?」

うわ言のように田中の名前を呼ぶ佐藤は、その顔を覗きこもうとする。
頬に触れると、柔らかい肉の感触が返ってきた。
しかし指先に触れたのは、ぬめりのある温かい液体。
驚いて手を引き、指先を見る。
そこには黒い水が付着していた。それは血のような、涙。

 「たなさたん…っ」

青い燐光の瞳から流れる、黒ずんだ涙。

 「れいな、行きなよ。今は生きなきゃダメだよ、その子を生かす為にも」

後藤真希の声が、聞こえた。
田中は佐藤の腕を引っ掴むと、"光"のある場所から反対方向へと走る。
267名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 12:08:49.42 0
 「佐藤、チカラ、使える?」
 「う…はい」
 「じゃ、行こう。佐藤、生きる為に、逃げよう」

声が、響く。
田中は生き延びる為に。佐藤を生かす為に、"跳ぶ"。
強迫観念のようなものは、今では薄くなっていた。
"隔離"されていた場所から、田中れいなと佐藤優樹の気配が消える。
後藤はi914にまるで挨拶するように語りかける。

 「や、久し振りじゃないけど、久し振り。元気だった?
 まあ、会うのは分かってたけど、ずいぶんと進行はあったみたいだね。
 …それもそーとー歪んだらしい。憎悪と愛情の区別ができないくらい。
 君がまだ、そうやってあの子達に固執してる間に、結末が来るのを祈ってるよ」

そう言って、後藤は"隔離"の外へ、姿を消した。
後に残ったのは、人間のような人間ではない存在だけが佇む亜空間。
その存在が呟く言葉は、空虚な世界に溶けるだけだった。
268名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 12:10:50.08 0
>>262-267
『異能力 -Feel of afterimage-』
以上です。

今日(昨日)かられいなのバスツアーですね。
なんでも夕食のときにメイド姿で出て来たらしく
その話を聞いた時にリゾスレを思い出すくらいにはここの住人だとオモタ。

-------------------------------------------------------------ここまで転載
269名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 13:59:08.53 O
>>268
更新代理乙です
現メンがまったく相手にならないi914の圧倒的な力
これからどうなっていくんでしょうか
270名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 16:26:57.51 0
271名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 18:00:31.10 0
>>268
乙です
後藤の立ち位置はどうなんだろう
純粋にれいなを助けようとしてるのか自分の望む終わりを求めてるのか
何にせよ続き待ってます
272名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 19:04:16.61 0
i914(と敢えて呼ぶが)のスペックは元々高過ぎるんだよな
それを発揮するのを阻んでたのが高橋愛の人間性だったんだが
どんな結末が待っているやら
273名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 19:50:08.34 O
全てを無にする光の能力と瞬間移動の二重能力者だしね
ジョジョなんかもそうだけど能力2つ持ってるやつって大抵ラスボス
274名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 19:52:33.28 0
精神感応もあるから三重
(三重県ではない)
275名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 20:21:49.56 0
>>237-244 の続きです


☆ ☆ ☆

ほんの些細な諍いだった。
いつもの遊び場ではじまった、聖と明梨の言い争い。
回りくどい聖の言葉は、かえって相手を苛立たせる。
ついに明梨が大声をあげて飛び出して行ってしまったのだ。
追いかけようとする聖、しかし途中で路上の凹凸に足を取られ、転んでしまう。膝は大きく擦りむけ、血が滲み出ていた。
傷の痛みと、心の痛み。聖は、大声をあげてわんわんと泣き始めてしまった。

「どうしたの?」

すると、背後から声をかけられた。
振り向くと、自分より年上のお姉さんが心配そうな顔をして立っている。
聖は、その女性に見覚えがあった。遊び場の近くにある喫茶店に出入りしている女性だ。

「うわ、膝擦りむいてるじゃん。うちに来なよ、手当てしてあげるから」

言われるままに連れて行かれ、例の喫茶店に入る。
こじんまりとした、けれども雰囲気の良さそうなお店。実は聖も一度この喫茶店に入ってみたかったのだった。
店内の人たちは、連れて来られた珍しいお客さんに興味津々。
276名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 20:22:24.24 0
「絵里。ねえ、その子は?」

カウンターの中で皿洗いをしていた女性が、物珍しそうに聞いてくる。

「えへへ、怪我してるから連れてきちゃった」
「連れてきちゃったって。あんたねー、ちっちゃい子を勝手に攫っちゃだめでしょうが」

カウンター席に座り帳簿らしきものをつけている女性が、呆れ気味にそんなことを言ってきた。

「まっさか。さゆじゃないんだから。って言うかさゆは?」
「お買い物。ちょうど食材切らしててさ」
「道重サンは、料理できナいかラ買出し係ダ」
「食っタラ、腹壊ス」

窓際の席に座っていた、大きい女性と小さな女性。
おかしなイントネーションで、楽しげにそんなことを言っている。

「そっかぁ。じゃあしょうがない。普通に手当てしますか。愛ちゃん、救急箱ー」
「あんた、もしかしてさゆみんの能力使おうとしてたってこと?」

呆れ顔をしている女性、しかしカウンターの中にいた店主らしき女性は店の奥から救急箱を取り出して、聖を助けてくれたお姉さんにそれを渡す。

「ま、そういうのも人助けのうちだからね」
「さっすがリーダー、話がわかるね。そいじゃ2階にいこっか。大丈夫、ドクター絵里に任せなさいって」

このお姉さんの名前は、えりって言うんだ。
小さい聖にとって、突如現れた年上のお姉さんはとても頼もしく見えていた。
それが聖と絵里の、最初の出会いだった。
277名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 20:22:57.54 0
絵里に連れられ、2階に上がる聖。
部屋の真ん中のソファーで、ヤンキー風の女性がヘッドホンで音楽を聴いていた。

「れーな、ちょっとこの子の手当てしたいから」
「…わかった」

ヘッドホンをしてるはずなのに、絵里の言葉はれーなと呼ばれた女性に伝わっていた。
気だるそうにソファーから起き上がり、ベランダへと出て行く。

「どうしてあの人はお姉さんの言葉がわかったんですか」
「んー、仲間だから。じゃないかなあ。あはは」

傷の手当てをされるがままに、聖は自らの身の上を絵里にぽつりぽつりと話してゆく。
絵里の可愛らしい声は、少女の心を開くには十分な魔力を持っていた。

「そっか。お友達と喧嘩しちゃったんだ」
「はい。けんかなんか、したくなかったのに」
「聖ちゃんは優しいんだね」

言いながら、聖の傷を消毒する絵里。
消毒液の、ひやりとした痛みが肌を伝わる。

「痛っ」
「でも本当の優しさは、痛みを伴うこともある」

得意顔で話す絵里。ただ、幼い聖にはそれが何を意味するかは理解できない。
ちっちゃい子にはまだ難しかったかなー、などと絵里が言っている間に誰かが階段を登ってくる音が聞こえてきた。
278名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 20:23:33.14 0
「さゆおかえり」
「絵里ただいまー、って!!何その子、かわいい!!!」

現れた黒髪の女性は、手にしていた買い物袋を放り出して聖にかぶりつく。
うわぁやっぱ子供の肌ってすべすべだねえ。
など妙な触り方をしてくる女性に多少の恐怖を覚えつつも、されるがままにしていると突然絵里が大声をあげた。

「そっか!わかった!!」

そしてやおら立ち上がり、ベランダにいた先ほどのヤンキーを引っ張り出す。

「ちょ、ちょっと絵里何しよう!」
「いいからいいから」

そして今度はもう一人の女性に近づき、無理やりその肩を寄せる。
もう片方の手でヤンキー風を捕らえているので、絵里は三人のちょうど真ん中にいることになる。

「ね、一見タイプが違う絵里たちだけど仲良しでしょ。それはね、三人がそれぞれ痛みの向こう側の本当の優しさを知ってるから」
279名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 20:24:09.14 0
論より証拠。
嫌がる二人を無理やり引き寄せ「俄然強め?」などと悦に入っている絵里は本当に楽しそうだ。
他の二人も迷惑そうな顔をしつつも、満更ではない様子だ。

「だって、うちら最強だもんね」
「うーん、最強かって問われたらそうなのかも」
「ま、れなたち最強やけんね」

きっとこの人たちは痛みを乗り越えて、今の関係を築いてきたのだろう。その関係の中心に絵里がいるように、聖には感じられた。

翌日。聖は明梨にはっきり、自分の考えている事を伝えた。
まっすぐで、不器用な言葉だったけれど。
二人の仲は元通りになった。

それから、聖はことあるごとにその喫茶店に足を運ぶようになる。
ただ、喫茶店に集う女性たちの素性を知ることになるのは、それからしばらく経った日のこと。
280名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 20:24:41.73 0
☆ ☆ ☆


「次で最後だ!あたしは、あたしたちは絶対に負けられない!!」

明梨が、大きく叫ぶ。
そしてその勢いのままに、こちらへと突っ込んできた。
聖は避けることなくその場に立ち、そして。
物質透過で相手がすり抜ける瞬間に、ありったけの念動弾を放った。
体の内側から弾を受けた明梨は、体のバランスを崩してその場に倒れこむ。

地面に横たわってる明梨のそばに近寄り、しゃがみ込み聖。
そして、そっと左手を差し出した。
それを見た明梨が苦しげに、けれども大きな声で叫ぶ。

「何度も、何度も言わせるな!!あたしたちは」
「わかってるよ」

言葉の先を、聖の意志が塞ぐ。
相手の気持ちを受け止めるのもまた、優しさ。

「だから、待ってる。向かってきたら、戦う。でも、この手を握ってくれるまで、聖は待ってる」
「勝手に、しなよ…」

否定なのか、諦めなのか。
答えを出す事すら拒否するかのように、明梨は瞳を閉じた。
281名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 20:25:31.66 0


日が、傾きかけていた。
街に出て優雅なランチだったはずが敵の襲来を受けてぼろぼろの四人。
聖の治癒能力である程度のところまでは回復したものの、本格的な治療は本家本元に頼まなければならないだろう。

「私たちがリゾナンターである限り、名声目当ての人たちも襲ってくるんでしょうか・・・」

春菜の言葉は、現実的な問題を露にしていた。
Tシャツの七人組のように、リゾナンターに打ち克ったという功績を挙げたい団体は恐らく他にもいる。
彼女たちはダークネスという強大な組織に加え、そういった類の連中をも相手にしなければならない。

「それだけ、大きな看板を抱えてるんだろうね」
「大丈夫、大丈夫」

プレッシャーに苛まれる香音を、衣梨奈がお気楽に励ます。
リゾナンターになったばかりの衣梨奈はまだ、精神がひ弱だった。程なくして入ってきた後輩の佐藤優樹に励まされてしまうくらいに。
それから比べると、随分逞しくなった。自らもマイナス思考に走りがちな聖にとっては、そういう意味では非常に頼りになるパートナーだ。
282名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 20:26:11.66 0
「衣梨奈がいれば、リゾナンターは安泰やけんね」

お約束のエーイング。
何でよー、元気に抗議する衣梨奈を見て、笑いが起こった。

「でも、えりぽんの言うとおりだよね。だって、聖たちは最強だもん」
「最強、ですか?」
「聖ちゃん良い事言うじゃん」
「みずきー、おいしいとこ取りすぎ。でも、賛成!」

今は仲間内だけの合言葉に過ぎないのかもしれない。
けれど現に、聖は今回の戦いで少しだけ、自分を成長させることができた。
偉大な先輩たちのように、いつかは胸を張って言いたい。

自分達が、最強だということを。

そんな聖の決意を知ってか知らずか。
下がりかけた太陽は、力強く四人を照らし出していた。
283名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 20:27:02.63 0
>>275-282
代理投稿終了


―――――――――――――――ここまで

番外編のくせに長い・・・
フクちゃんの過去だったりれいな卒業に合わせ6期の絆を書こうとしたりで詰め込みすぎましたw
次回からは「番外編はさくっとシンプルに」を合言葉に頑張ります
284名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 21:39:49.27 0
>>283
更新と代理乙でした
そして番外編完結おめ
……最強なのは五期だからw
285名無し募集中。。。:2013/05/26(日) 23:03:19.87 0
ヤシ
286名無し募集中。。。:2013/05/27(月) 01:08:54.47 O
更新代理乙です
こうなると作者さんの愛ガキも読んでみたいですねw
287名無し募集中。。。:2013/05/27(月) 04:43:23.75 O
ねるなんと
288名無し募集中。。。:2013/05/27(月) 06:31:24.43 0
今回のスレもいい感じ
289名無し募集中。。。:2013/05/27(月) 07:36:53.69 0
>>283
作者様&代理さん乙でした
世代を越えて受け継がれていく熱いモノを感じました
290名無し募集中。。。:2013/05/27(月) 09:11:12.66 0
しかし身体の内部から撃ちまくるとかフクちゃん外道だなw
291名無し募集中。。。:2013/05/27(月) 12:19:31.30 0
お昼
292名無し募集中。。。:2013/05/27(月) 14:43:57.63 0
暑くなってきたな
293名無し募集中。。。:2013/05/27(月) 16:51:09.74 0
ヤシ
294名無し募集中。。。:2013/05/27(月) 17:26:21.12 0
なんでヤシがここにw
295名無し募集中。。。:2013/05/27(月) 20:05:49.15 O
浮上
296名無し募集中。。。:2013/05/27(月) 21:53:29.04 O
梅雨入り保全
297名無し募集中。。。:2013/05/27(月) 23:13:58.68 O
さゆラジオ前ほぜん
298名無し募集中。。。:2013/05/28(火) 00:27:51.20 O
おやさゆみん
299名無し募集中。。。:2013/05/28(火) 02:36:05.51 O
ねるほ
300名無し募集中。。。:2013/05/28(火) 06:07:00.05 O
規制中でもおはよう
301名無し募集中。。。:2013/05/28(火) 07:49:53.89 0
一人の朝
302名無し募集中。。。:2013/05/28(火) 07:51:56.11 0
一通りの準備。
それは"最期の戦い"の準備だけではない、母親への小包を作っていた。
大事なものは、常に自分の側に置いておくか、自分の信頼する誰かに
預かってもらうのが良いと思っている。
しかし梱包して伝票に住所を書き込んだあと、本当にこれを送っていいのか迷った。
小包だけでは心配だろうと手紙も書いたが、下書きしてみたら遺書にしか
見えない内容になってしまったことで苦笑してしまう。

急いで清書をしてみたものの、結局内容は同じだった。
書き直したかったが、これ以上時間をとってもいられないのでそのまま封筒に入れる。

自分が子供らしくない子供であった事を思い出す。

普通の子供よりも大人として"養成"された事によって、早い老成を始めたのかもしれない。
今起こっていることが全て解決し、その時自分が本当に「銭琳」として生きて
いられたなら、母に会いに行こう。そして…父にも。

 "彼女"もやがては親と向き合わなければいけない。
 自分とは違う意味で、その時自分は、何かしてあげることは出来るだろうか?

銭琳は再び日本へ行くことを決意した。
国家権力執行機関『刃千吏』の任務ではない。自身の"業"のようでもあるが
全てにおいて「行かなければいけない」という観念のようなもの。

 李純の暴走は予期していなかった事ではない。
 だがあの人が彼女を止めるのは予想外だった。
 御神体を守る者としての責務は、自身にあると思っていたから。
303名無し募集中。。。:2013/05/28(火) 07:52:41.00 0
i914の表情はまるで、機械の其れ。
全ての感情が拭い落とされているその顔。
無気力に見える黄金の目。
だが、一見虚ろなその瞳には、異様な輝きもまたあった。

視線は真っ直ぐに李純の目を見つめている。
彼女の眼球がめまぐるしく動いて周囲を見ていようとも、ただ静かに。
ぴくりとも動かない瞼に眼球。
瞬きというものをしていないようだった。

 李純の【獣化】による被害者は全てダークネスの構成員だった。
 まがいものの彼らは人間では無い。
 "人間ではないものを彼女は好んで殺していた"。

i914に対して彼女は落ち付かなさそうにしている。
まとわりついている鬱陶しいものを払おうとでもするように、大熊猫
の姿だった李純は笑ったように歯茎を剥きだす。
その虚勢にも似た笑いを浮かべ、彼女は動いた。
四本の足で地面を蹴ると、右手の爪にぐっと力を込めて、それを
i914の首筋に打ち込もうとした。

i914は手を上げてその爪を遮ったかと思うと、腕に巻き込むように掴んでくる。
何をされたのかもよく分からない内に、視界が一回転していた。
李純は自分が投げられており、このままでは脳天から地面に叩きつけられる
ということを理解する前に、背中から足へと力をこめ、無理やり上体を
起こして足から地面へ着地する。
304名無し募集中。。。:2013/05/28(火) 07:53:34.87 0
殴り合い、噛みつき、引っ掻く、そういう戦いしか経験のない彼女にとって
先ほどのような『技巧的』に投げられたことが無かった。
i914が前進する。
歩いてくる。
李純も倣うように前進する、背丈は二十センチも違う二人が対峙する。

思考は無い。考える事の迷いなど、この二人の間には存在しない。
躊躇いは皆無。
大熊猫が噛みつく為に口を開けた瞬間、i914の拳がその中に飛び込む。
牙を突き立てようとしたが、その硬さがヒト型のそれではない。
岩や鉄よりも硬い、顎に力を入れても、その拳が勢いよく空へと掲げられる。
同時に『大熊猫』の肉体も軽々と持ちあがり、呻きが上がった。
腕が大きく後方へ振られる。

 「ジュンジュン!」

銭琳は思わず叫んだ。地面に叩きつけられる行動だったからだ。
その声が合図のように、大熊猫は口を開けるとi914の拳を放し
身体を捻って四肢を地面に向ける。
だがその時にはi914が眼前に入り込み、顎をつま先で蹴りあげられた。

がつ、という音が、顎の骨を伝わって耳に送りこまれる。
脳震盪が起こった様に視界が黒く塗りつぶされた。
そこに今度は肩先に蹴りが入り、更には頬骨を、そしてとどめとばかりに
高々と上がった踵が脳天を直撃し、意識を失いそうになって倒れ込まされる。
だがそれを許さずに胸を軽く掌底で打たれて仰け反る羽目になった。

以前、新垣里沙が見せてくれた運動性能に酷似した動きだ。
筋肉、関節、重心運動――― 人体という機械の性能を限界まで使用した体術。
305名無し募集中。。。:2013/05/28(火) 07:54:37.44 0
大熊猫の頭をi914が掴み上げ、黄金の"光"が身体を包んでいく。
【光使い】と呼ばれた"あの人"の特徴であり、殺意の象徴。

 「i914はチカラを使えば使うほど強くなる。
 それが"経験"として蓄積され、感情エネルギーとなって行使できるからだ。
 田中れいなの【共鳴増幅】はかなり動力源になっただろうさ。
 まさに呪いだよ。原初の呪い、絆は線となり、お前らを縛りつけた。
 "共鳴"のチカラが、お前らを死に近づけて行く」

事実を、銭琳は認識する。
自分が弱く、目の前で李純と対峙するi914が強い。
この目の前に居るi914を、自分が殺すことが不可能に近いという事。
敗北。
死。
他者の死は酷く身近なものだった。ヒト型の存在をその手にかけてきた。
『刃千吏』の歴史もまた、血に汚れている。
i914、"あの人"と同じ顔を浮かべる存在は血に濡れている。

強い。だが、違和感があった。
その強さは、その破壊はどんな願いから生まれている?
人型として、精神を人外のソレまでに進化させ、深化させる為の目的はなんだ?
必ず意味がある。意味のない強さは存在しない。
特にi914が欲したのは、蓄積された感情なのだから。

生みだしたダークネスの心中に隠れた闇は、何だったというのか。
306名無し募集中。。。:2013/05/28(火) 07:55:53.80 0
>>302-305
『異能力 -Soul to return home-』
以上です。

今日久し振りにリンリンのブログを見ました。
コスプレよりもメイクに目が行ってしまった…。

---------------------------------------ここまでしたらばからの転載
307名無し募集中。。。:2013/05/28(火) 08:26:39.68 0
朝から乙
時系列がまだつかめないけど強いな光
308名無し募集中。。。:2013/05/28(火) 09:43:49.02 O
更新代理乙です
この人に勝つ方法なんてあるんでしょうか
それくらい圧倒的
309名無し募集中。。。:2013/05/28(火) 12:21:28.82 0
お昼
310名無し募集中。。。:2013/05/28(火) 12:53:24.99 0
この調子だと小春や愛佳の消息も描いてくれそうかな
311名無し募集中。。。:2013/05/28(火) 14:29:03.09 0
ヤシ
312名無し募集中。。。:2013/05/28(火) 15:39:31.31 0
今日は・・・
313名無し募集中。。。:2013/05/28(火) 18:26:37.66 O
誕生日なのに話書けなくてすまない…
314名無し募集中。。。:2013/05/28(火) 19:09:14.97 O
書こうと思ってたのにまた規制ですよ
315名無し募集中。。。:2013/05/28(火) 19:27:02.49 0
遅れてやって来た誕生日プレゼントも良ーいじゃなーい♪
316名無し募集中。。。:2013/05/28(火) 21:16:54.20 O
うん
317名無し募集中。。。:2013/05/28(火) 23:15:40.36 O
ねるぽ
318名無し募集中。。。:2013/05/28(火) 23:26:19.14 0
319名無し募集中。。。:2013/05/29(水) 01:25:38.04 O
かわいい店員さんやな
320名無し募集中。。。:2013/05/29(水) 04:36:49.41 0
ケーキを食べる。モシャモシャと食べる。
フォークの先についたいちごを食べる。酸味がした。
サイダーを飲む。シュワシュワと小粒の泡が浮かぶ。

第三者の目線。傍観する視線。
何処となく自分は、そういう目をする事が多いのだろうか。
自分の誕生日だから嬉しい部分もあるのに。

生まれた日を大切にする、祝ってくれる仲間が居る。
この世界では、身近にそういう子達がたくさん集まっていた。
それに疑問は持たない。
ありがとう、それを呟けば皆は笑って、自然と空気が温まる。

お皿に詰まれていたケーキが無くなって、テーブルから
別のものを持って、モシャモシャと食べる。
隣から佐藤優樹の声が聞こえた、ゲームをしようと誘ってくる。
先ほどから工藤遥や小田さくらと一緒に遊んでいたのに。
その二人も自分を見て手招きしている。

食べてるから後でね、とやんわり断ると、今度は生田衣梨奈
が隣から話し始めた。
そこに鈴木香音が笑いながら低い声で突っ込んで、譜久村聖
が生田を宥めてそこへ佐藤と小田が皆も遊ぼうと誘ってきた。

隙間がないようにしようとでも言う風に、言葉の風が舞っている。
賑やかしい。うるさいほど騒がしい。
誕生日ではなくても見慣れた光景だ。
視界の中にはさまざまな色が彩る。心地は悪くない。
321名無し募集中。。。:2013/05/29(水) 04:37:55.00 0
食べて、食べて、食べる。お腹がすいていた訳ではない。
大食らいという訳でもない。
ケーキの甘さが口に広がる、感じる。

何を感じたい。何を想っていたい。

 だって、いつでもって訳じゃないから

心の奥でそう呟く誰か。
皮肉な笑顔を浮かべた誰か。サイダーを飲む。
しゅわしゅわとした炭酸が広がる、ぶつぶつと消えていく泡を感じる。
消えていく。面影を消して、また一つ生まれ変わる。

それが自分なんだ。何もない水面の上で、佇んで、生まれ変わる。
それは自分?それとも鞘師里保と名前を付けられた誰か?

 みっしげさあん、やすしさんが寝ちゃいましたー

佐藤の声が遠くの方に聞こえる。
手の中にあった箸だったかフォークだかの感触とお皿の存在が消える。
眠った直後を鞘師は覚えていない。
意識を失うように瞼が落ち、闇が浮かんだ。

 悲しいときや気分が沈んだときは、甘いモノが良いんだよ
 だって、ほら、おいしいケーキやクッキーを食べるとなんだか
 幸せな気分になるでしょ?だから、幸せの味なんだよ
322名無し募集中。。。:2013/05/29(水) 04:39:29.22 0
甘い匂いがする。
ケーキの味がする、自分の存在を祝ってくれた幸せの味がする。
サイダーの味がする。
しゅわしゅわと柔らかく、静かな時間を包んでくれる味がする。
手が伸びる、暗い底で、幸せの味を探るように。

 目が覚めた時、喧騒のあとの静かさがあった。

疲れて眠ってしまった後、寝息がそこら中から聞こえる。
むくりと起きあがって、周りを見渡す。
目が慣れてきて2階の住宅スペースということに考えが至ると
喉が渇いていることに気付き、1階へ降りると、電気がまだ付いていた。

見ると、カウンターの所で道重さゆみがパソコンを見ている。
慣れた手つきで操作する機械音が響く。
手で顔を支えるような仕草で、食い入るように。
途端、道重がこちらに気付いた。

 すみません、途中で寝てしまって
 いいよ、りほりほ、昨日も遅かったしね
 なにやってるんですか?
 撮ってた写真をちょっとね、あとで見せてあげるから寝てていいよ

甘い匂いが微かにした。
残照が残る店内。どこか歴史のある世界。其処は、居るべき場所。
道重が一人で佇む。そうなってしまった世界。
323名無し募集中。。。:2013/05/29(水) 04:40:29.42 0
 道重さん、どうぞ
 え?あ、ありがとうりほりほ
 無理しないでくださいね
 どうしたの?なにかあった?
 いえ、私も、こうやって入れれるようにならなきゃって思っただけです

ココアの匂いが漂う。
生まれ変わるように別の幸せを浮かべる。
浮かべれることが自分のできることなら、やり遂げよう。



 やすしさーん、ほら、可愛く撮れてますよ

翌朝、道重の見せてくれた写真の中で、佐藤の持ってきた一枚。
顔面をクリームで真っ白にさせた自分。なんて不器用な笑顔だ。
口の中にまだ残っているような甘い匂い。
サイダーを一気に飲み干した。
324名無し募集中。。。:2013/05/29(水) 04:41:48.77 0
>>320-323
『Sweet happiness』
以上です。

何故この時に限ってリホナンターが来ないんだ…。

------------------------------------------ここまで
325名無し募集中。。。:2013/05/29(水) 07:18:58.95 O
出勤タイムに読む
326名無し募集中。。。:2013/05/29(水) 10:58:36.36 O
読む前ほ
327名無し募集中。。。:2013/05/29(水) 11:05:00.88 0
淡々と観察してるところが鞘師らしいな

>大食らいという訳でもない。
はい?何ですって?

確かにリホナンターはどうしたんだろう
あらしかと思う程の濃厚&長文をぶっ込んでくるかと思っていたんだけど規制かしら
328名無し募集中。。。:2013/05/29(水) 14:07:02.39 O
保全
329名無し募集中。。。:2013/05/29(水) 15:48:40.65 O
さゆが誕生日にもかかわらず逆に毎日りほりほの写メ送るよう要求したらしいからな
またしても想像の斜め上を行きやがった
330名無し募集中。。。:2013/05/29(水) 16:53:52.36 0
ヤシ
331名無し募集中。。。:2013/05/29(水) 19:14:22.13 O
落とさぬ
332名無し募集中。。。:2013/05/29(水) 20:23:17.89 0
>>324
自分の居場所がある幸せを満喫するやすしさんがかわいかったです
ステキな生誕作品乙でした
333名無し募集中。。。:2013/05/29(水) 21:48:19.85 O
ほぜまる
334名無し募集中。。。:2013/05/29(水) 23:32:28.67 O
あげるのだよ
335名無し募集中。。。:2013/05/30(木) 00:38:01.13 0
>見ると、カウンターの所で道重さゆみがパソコンを見ている。

よからぬ画像を見てておもしろ展開になるのかと思ってしまった
ごめんなさい
336名無し募集中。。。:2013/05/30(木) 00:52:54.87 I
ひゃっほーい
337名無し募集中。。。:2013/05/30(木) 05:57:09.44 0
おはよう
338名無し募集中。。。:2013/05/30(木) 09:17:21.94 0
ウヌ
339名無し募集中。。。:2013/05/30(木) 13:43:28.36 0
落ちるまで後1秒
340名無し募集中。。。:2013/05/30(木) 13:44:18.21 0
間一髪でしたね
341名無し募集中。。。:2013/05/30(木) 15:35:49.80 O
ほぜにゃ
342名無し募集中。。。:2013/05/30(木) 17:50:38.93 0
せふせふ
343名無し募集中。。。:2013/05/30(木) 19:44:34.16 0
ヤシ
344名無し募集中。。。:2013/05/30(木) 21:06:05.07 O
あげ
345名無し募集中。。。:2013/05/30(木) 22:41:10.56 I
>>199-206の続きです

投下開始↓
346名無し募集中。。。:2013/05/30(木) 22:42:21.72 I
「粛清人のあなたが、リゾナンター達を襲ったという事ですが」
「……はい」
「それは、命令による行動ですか」
「……私の独断です」
「ハァ……だろうな」

粛清人Rによるリゾナンター襲撃の件

リゾナンター担当のあたし=傀儡師が、粛清人Rの聴取をしてる訳だが

「だって! 美貴ちゃんが工藤って子を捕まえ損ねたって聞いたから、私が代わりに捕まえて
「ハァ!? 美貴のせい? ありえないんですけどー」

記録係に氷の魔女を就けるとは
うちのリーダーも何を考えているのやら

「そっちこそ! 失敗したくせに開き直る気?」
「失敗なんかしてないし。リゾナンターが来たら少し戦って、工藤って子を置いて来いって指示だったの」
「え、そうなの?」
「「そうなの」」
「なんだ……」

本当に反省して欲しいよ

「で、これからどうするの? 梨華ちゃんのせ・い・で@\定が狂っちゃったんじゃない?」
「ちょっと美貴ちゃん! そんな言い方しなくても
「あー、キンキンうるさい」
347名無し募集中。。。:2013/05/30(木) 22:43:23.91 I
この2人が言い争いをしない日はないのか
とにかく

「工藤に連絡する」
「こっちから連絡して大丈夫なの?」
「……今回は仕方ない」
「ごめんね、よっすぃー……」

プルルルルル

『もしもし!』
「うわ、ビックリした。何かあったか?」
『いいいいえ、別に……」
「あ、そう」
『あの、何で、しょうか?』
「そっちに粛清人が行っただろ?」
『あ、はい。田中れいなと交戦しまし
「それイレギュラーだから。気にしなくていいからな」
『そうなんですか? ハルの調査が遅いから
「違う違う、お前への粛清じゃないから安心しな」
『はい……』
「リゾナンターの事も、無理に聞き出したり調べたりせずに、入ってくる情報を正確に報告すれば良いから」
『はい』
「いずれチャンスが巡ってくるから、気長に待ちな」
『はい!』
「選ばれた事に自信を持て」
『ありがとうございます!』
「じゃあな」
『頑張ります!』

ピッ
348名無し募集中。。。:2013/05/30(木) 22:44:31.59 I
「よっすぃーカッコイイ!」
「良い上司してるじゃーん」
「それはどうも」

……氷の魔女よ
お前、記録簿に何を描いている
……犬? 猫か? 何だ?

「ところでさ、いつまでスパイ続けるの?」
「決まっていない。状況次第だ」
「ふーん。長く居させて、ガキさんみたいに裏切らなきゃ良いけどねー」
「その時はその時

ブーンブーン

なんだ、メールか?

「何か本部からメールが来たよ」
「美貴の所にも」

一斉送信?
349名無し募集中。。。:2013/05/30(木) 22:45:32.70 I
from:D-info
──────────────────
subject:緊急連絡
──────────────────
message:

g923を発見。i914と交戦中。場所は──



「人口密集地の近くで交戦!?」
「しかもごっちんと愛ちゃんだって」
「この2人じゃ、かなり派手に戦うんじゃない?」



幹部メンバー各自、本件の対応に備えよ。



「対応って言っても、美貴達で止められる訳ないじゃん」
「能力の差があり過ぎるものね」
「それを考える為に集まるんだよ」



10分後運び屋≠ノよる強制招集を行う。
以上。
350名無し募集中。。。:2013/05/30(木) 22:47:08.23 I
「準備する時間なくない?」
「しかも強制招集だって」
「それだけ緊急事態なんだよ。いちいち文句言うなって」

と言ってみたものの、時間がないのは確かだ
今のダークネスで出来る事も、たかが知れてる

「ごっちん、どうして今になって動き出したのかしら?」
「あたしが知る訳ないだろう。本人の所へ訊きに行ったら?」
「嫌よ! ペシャンコにされたくないもん」
「だったら大人しく待つしかないさ」
351名無し募集中。。。:2013/05/30(木) 22:47:57.37 I
あの2人が戦っているとなると
早急に対応しなければならない

間に合わせなければ

手遅れになる前に



どちらも世界を破滅させる力を持っている



潰されるか

消されるか



未来は

どちらか

どちらでもないのか
352名無し募集中。。。:2013/05/30(木) 22:59:19.98 I
投下完了↑

>>346-351
『この地球の平和を本気で願ってるんだよ!』8



以下返信

>>208
独自の設定のせいで、説明に時間がかかっていますね。ようやく話が動きました。

>>212
ありがとうございます。思い出さない理由、しっかり描かなければいけませんね。

>>213
大河とかやめてください恐れ多いのでやめてくださいああプレッシャーが。他の3人は果たして。

>>214
もしかして敬語は使わないのでしょうか。本人達に合わせたつもりですが、この時期をリアルタイムで知らないので。リサーチも頑張ります。

先回もコメントありがとうございます。
353名無し募集中。。。:2013/05/31(金) 00:29:46.45 0
あげ
354名無し募集中。。。:2013/05/31(金) 05:05:18.08 0
ヤシ
355名無し募集中。。。:2013/05/31(金) 07:25:03.41 0
面白い
356名無し募集中。。。:2013/05/31(金) 09:27:00.06 0
話のスケールがデカくなってきたな
357名無し募集中。。。:2013/05/31(金) 09:43:37.66 0
>>352
乙です
一つの時間軸で起こってる出来事を双方の視点から描く構造が面白い
次は愛ちゃんとGのバトルですかね?
楽しみだ
358名無し募集中。。。:2013/05/31(金) 10:46:23.02 0
れいなはガキさんに一応敬語だよw
あまりこのスレで敬語使うキャラじゃないだけで
それにしてもあの時期を知らない作者さんまでいるようになったんだなあ
359名無し募集中。。。:2013/05/31(金) 11:47:55.18 0
>>352
おつかれーな
まだ登場してなかった高橋さんがどんな形やら設定で出てくるか
次回を待ってます
360名無し募集中。。。:2013/05/31(金) 14:20:54.23 O
昼保全
361名無し募集中。。。:2013/05/31(金) 17:09:26.12 0
夕暮れリゾナント
362名無し募集中。。。:2013/05/31(金) 18:40:49.35 O
夜ナンデス
363名無し募集中。。。:2013/05/31(金) 20:24:26.56 0
ヤシ
364名無し募集中。。。:2013/05/31(金) 21:44:21.58 O
乳風の人がしばらく来てないね
待ってます
365名無し募集中。。。:2013/05/31(金) 23:02:33.01 0
乳だなんてはしたないですわ
366名無し募集中。。。:2013/05/31(金) 23:37:35.06 O
乳風と書いてニューウィンドか
367名無し募集中。。。:2013/06/01(土) 01:27:49.03 0
あげ
368名無し募集中。。。:2013/06/01(土) 03:11:48.34 O
ねるぽ
369名無し募集中。。。:2013/06/01(土) 03:48:57.27 O
>>364
シリアスが一気に卑猥になるなw
370名無し募集中。。。:2013/06/01(土) 06:18:43.64 0
ヤシ
371名無し募集中。。。:2013/06/01(土) 08:17:51.29 0
おはよう
372名無し募集中。。。:2013/06/01(土) 10:49:29.15 O
373名無し募集中。。。:2013/06/01(土) 13:09:51.57 0
374名無し募集中。。。:2013/06/01(土) 14:33:11.13 0
円筒型の空間が、天に向かってどこまでも、伸びている。
ここは秘密結社ダークネスの地下会議場、通称「蒼天の間」。暗闇には相応しくない僭称だが、この場所を考案した人
間が名前をつけたのだから仕方が無い。もちろん「皮肉が利いててええんやない?」という首領のお墨付きではあるの
だが。

丸く囲まれた空間に配置された、13の席。
先頃復活した転移装置「ゲート」により地下深いこの場所に最初に現れたのは。

「何よ、まだ誰も来てないじゃない」

最初に席を埋めた女性が、厳しい顔をして周囲を見渡す。
時を操るものは、誰よりも時に対し正確である。ダークネスの幹部が一人、「永遠殺し」もまた機械の如くその身に時を
刻み続けていた。

「さすが『永遠殺し』!一番のりですね!!」

と思いきや、先客がいたようだ。ダークネスの幹部の中で一番の、新人。能力は瞬間移動、戦闘能力は取るに足りず、
また特筆すべき特徴も無い。なぜ彼女が幹部になれたのか、組織の七不思議の一つとして構成員の間で語り継がれ
るほどだ。

「あんたは確か…コバヤシ、コトミ?」
「あの全然名前が違うんですけど。小川、小さい川って書いてオガワです」
「そう」
375名無し募集中。。。:2013/06/01(土) 14:33:45.85 0
「永遠殺し」はつまらないものを見た顔をしたあと、自らの席でゆっくりと瞳を閉じた。静寂な時間、しかしそれはす
ぐに破られる事になる。

「キャハハハハ!早いじゃん、『永遠殺し』。早起きが趣味のおばちゃんかよ!!」

彼女の登場によって、場が一気に下世話になる。
甲高い笑い声とともに現れたのは、「永遠殺し」と並ぶ組織の重鎮「詐術師」。だがその小さな体同様、彼女の言動に
は幹部らしい重さはまったくない。

「相変わらずね、『詐術師』。ビジネスがうまくいってるみたいで何よりだわ」
「いやホントホント。おいらが手がけた例の振り込め詐欺集団あるじゃん。あれが予想外に当たっちゃってさあ。上納
金が半端ないってーの!!」

下品に笑う「詐術師」。頭の中は金のことばかり、非常に判りやすい。
だが、彼女の働きが組織の大きな資金源となっていることもまた、事実。

再び、ゲートが開かれる。
現れたのは、黒いボンテージ姿の妖艶な女性。組織が誇る粛清人が一人、「黒の粛清」だ。

「あっ、お二人とも聞いてくださいよぉ!紺野のせいで、あたしひどい目にあったんです!もう頭にきちゃう!!」

言いながら、片方の足をぶらぶらさせる。
巻き付けられた包帯が、過剰なまでの痛々しさを演出していた。
376名無し募集中。。。:2013/06/01(土) 14:34:23.29 0
「聞いたぜ?お前さあ、紺野にいいように利用された挙句待ち構えてたオマメに手酷くやられたんだってな」
「…自業自得ね」
「そんなあ…別にやられたって言うより、卑怯な手で騙されたって言うか。ちょっと何笑ってんのよオガワ!下っ端の
分際でむかつくわね!!」

先輩二人に冷たくあしらわれた腹いせに、下っ端のオガワに怒りをぶつける。
上に弱く、下に強い。ただし、下への当たりの強さはあまりにも苛烈だ。

「急いては事を仕損じる、ってやつ?紺ちゃんの話も聞かないでがっつくからそんなことになるんだよねえ」

そこに現れた、首に巻いた赤いスカーフが特徴的な、もう一人の粛清人。
「赤の粛清」は飄々とした、それでいて明らかに相手を見下した口調でそんなことを言う。
もちろん、言われた側が黙っているはずもなく。

「横からいきなり登場してきて、言ってくれるじゃない。あんただって始末できてないでしょ、勝ったリゾナンターた
ちを」
「そうだね。まあ、元を正せば今回は『リゾナンターへの干渉』は命令違反だけど。にゃはは」
「そ、それは!!」

「黒の粛清」は敗者である「ベリーズ」と「キュート」を。「赤の粛清」は勝者である「リゾナンター」を粛清する。
Dr.マルシェこと紺野博士の前で交わされた盟約はもともと二人の独断。成功すればまだしも、失敗しては声高に
宣言できるような話ではない。
377名無し募集中。。。:2013/06/01(土) 14:34:57.34 0
「それにお前さあ、あのガキどもをよりによって警察に奪われてんだろ。そっちのほうがかなりヤバくね?」
「粛清人が粛清の対象。笑えない冗談ね」

「詐術師」「永遠殺し」に立て続けにからかわれ、黒い顔を青くする「黒の衝撃」。
しかし、

「『黒の粛清』の粛清かあ。あたしが狩っちゃおうかな?」

という「赤の粛清」の一言で頭の血が一気に上る。
先輩である二人に比べ彼女はあくまでも同格、その上同じ粛清人としてのプライドがその言葉を許さなかった。

「へえ。面白いじゃない。狩ってもらおうかしら。あんたなんかに狩れるほど、この首は安くないんだよ!!」
「…粛清しちゃって、よいのかな?」

「赤の粛清」は笑っていない。
目に見えるような殺気と殺気が、衝突する。一触即発の状況を「永遠殺し」は傍観し「詐術師」は面白がりオガワはお
ろおろしている。そんな状況を変えるものが、一人。

「そこまでにしときな。ったく朝から女同士のヒスとか勘弁してくれって」

開いたゲートとともに現れた、金髪の青年、のような女性。
そんなものは見飽きたとばかりに、席にどっかと座る。
378名無し募集中。。。:2013/06/01(土) 14:35:36.13 0
「『鋼脚』ぅ、ひどいんだよ。そこのピンクバカがあたしのこと…」
「それよりも、問題はあいつがうちらを制してまで仕掛けた策をしくじった。ってことだろ」

しなを作り寄り添うが如くの「黒の粛清」を無視し、「鋼脚」が言う。あいつ、とは言うまでもなく組織の「叡
智の集積」Dr.マルシェのこと。

「そんな人間が、再びあたしたちをこの場へ呼び寄せた。納得いかないわね」

「鋼脚」の言葉に重ねるように、不満を述べるのは。
幾重もの着物を重ね着した、長い黒髪の女性。その目で未来を見通す組織の守護神、「不戦の守護者」だった。

「みんなの前で謝罪でもすんじゃねーの?おいらだったら『たぶん何かがあったんだと思います』とか言ってし
らばっくれるけどな!キャハハハハハ!!」

何がおかしいのか、自分の言ったことで更に爆笑する「詐術師」。
お寒い所業ではあるが、室内の温度が急に下がる。ゲートとともに「氷の魔女」が現れたからだ。魔女は開口一
番、あんただったら知ってるでしょ、と言わんばかりの口調でこう訊ねる。

「『不戦の守護者』さんの目で、見通せないんですか?」

「氷の魔女」は知っている。先日、紺野と接触した時に彼女が「次に繋がる良いデータは得られました」と言っ
ていたことを。しかし、あえてそれは口にしない。それは彼女自身がこの場で説明するだろうし、第一面倒だか
らだ。
379名無し募集中。。。:2013/06/01(土) 14:36:28.04 0
「今のところ、見えないね。つまり、あの子は組織にとって有用な物事を進めている。けど…」
「それが何か、ってことだろ」

「鋼脚」がため息をつく。元々彼女は回りくどいことが好きではない。紺野のやり方はいかにも遠回りで、必要
の無い複雑さに塗れているようにしか「鋼脚」には見えなかった。

「だいたい隠し事が多いのよ、あの子」
「どうでもいいけどね。楽しい戦いさえ提供してくれれば」

まるで正反対の意見を述べる、二人の粛清人。
互いの考えを聞くなり、黒はあからさまに顔を背け、赤は侮蔑の笑みを見せる。

「ま、それは本人が来てからゆっくり聞いたらええ」

円卓の中央。
開いたゲートから姿を見せるのは、ダークネスの「首領」。
この大組織を今の形に作り上げた組織の長だ。

「みんな思うところは色々あると思うけど、あの子は無駄なことは決してせえへん。必ず何らかの結果を掴んで
くる。せやから私も、あの子には全権の信頼を置いてる」

形はどうあれ、円卓を囲む9人の幹部が同意する。
それだけの功績を、紺野はあげていた。先代の科学部門統括より引き継いだ人工能力者の育成、転移装置「ゲー
ト」をはじめとした諸機器の開発、そして「銀翼の天使」にかつてのリゾナンターが壊滅寸前まで追い込むこと
を仕向けたこと。
380名無し募集中。。。:2013/06/01(土) 14:37:23.51 0
13の席のうちの、4つの空席。
一つは、隔離施設に収容されている「銀翼の天使」のもの。
一つは、あまりの悪行の為懲罰的措置を取られている「金鴉」「煙鏡」のもの。
一つは、突如として消息を絶ってしまった「黒翼の悪魔」のもの。
そして最後の一つが、今回の会議の、主催者。

ゲートではない、本来の蒼天の間に設置された扉が開く。
気圧差で巻き起こされた風に、白衣が靡いていた。
381名無し募集中。。。:2013/06/01(土) 14:38:15.93 0
>>374-380
更新終了
代理投稿お願いします

今回の更新からタイトルを「リゾナンターЯ(イア)」とさせてください。

――――――― ここまで ――――――――――――――――――――
382名無し募集中。。。:2013/06/01(土) 16:18:18.41 0
読む前ほ
383名無し募集中。。。:2013/06/01(土) 17:58:50.26 O
>>381
更新代理乙です
新シリーズ開始おめでとうございます
タイトルが意味深ですね
384名無し募集中。。。:2013/06/01(土) 20:05:15.15 0
あげ
385名無し募集中。。。:2013/06/01(土) 21:56:46.59 O
386名無し募集中。。。:2013/06/01(土) 23:19:13.13 0
面白くなってまいりました
387名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 00:11:16.38 0
>>381
おつですた
Χ同様会議室から始まった物語がどんな風に展開していくのか
続きを待ってます
388名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 01:53:22.75 O
矢口記者会見ネタ自重w
389名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 04:47:18.73 0
久々にhttp://www35.atwiki.jp/marcher/pages/771.htmlつづきいきます


-------

れいなは鍛練場にひとり佇み、大きく息を吸って、長めに吐いた。
なんどかそれを繰り返し、すっと目を閉じた。
自分の呼吸に集中し、体の中心に己の“気”を集める。
流れるそれを感じるように、耳を澄ませ、開いていた心の扉を閉じる。

徐々に体が熱くなっていくのを感じ、今度は右手に意識を集中させた。
れいなの周囲の“気”が、れいなの右手へと集まってくる。
それを乱さないように、心は閉じたまま、じっと右手のみに感覚をもっていく。

頭の中で、完成のイメージ像をつくる。
最初に浮かんだそのイメージと合致するように、もっと具体的に、太く、濃く線を描く。

不定形だった“気”が、徐々に、ある形を成していく。
れいながそっとそれを握り締めると、確かに感触があった。

深く息を吐き、右手を見つめると、そこには立派な『刀』が握り締められていた。

「物体具象化能力……」

2週間前、右手に宿ったその能力に、れいなはそう名前を付けた。
具象化されたその刀を、れいなは黙って見つめる。
光のような、淡い水色を纏ったその不定形な刀は、それでも確かに手中にあった。
390名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 04:47:55.50 0
未完成で不完全な能力が、いままたれいなの中に出現していた。その理由が分からない。
どうして「いま」なのだろう。
もし仮にこの能力が、あの男が現れるより先に存在していたとしたら、リゾナンターがこのような形になることはなかったかもしれない。
手遅れではないのか。なぜもっと早く出現しなかった。どうしてどうしてどうして―――!

だが、いくら考えてもその答えは頭に浮かばなかった。
れいなはぐっと刀を握り締め、振り上げる。
そのままじっと、動かない。
思考がそれでも先走る。
手が届くはずのない、あり得た未来、存在したかもしれない未来を、れいなは思う。

集中しろ。いまはそれを考えるべきではない。
いま為すべきことは、他にある。
れいなは息を大きく吸って目を閉じ、具象化された刀の重さをしっかりと感じた。
広がった暗闇の中、深く息を吐くと同時に振り下ろすと、刀は一瞬で消え去った。
その手から滑り落ち、物体としての存在をなくしたそれは、再び空気へと混ざって消えた。

「まだ、完璧やない…」

れいなは天を仰いで息を吐く。困ったように頭を掻いて、未完成の能力に笑った。
すべてを投げ出すように四肢を放り出して床に寝転がる。
深く息を吐いて、目を閉じてしまうと、世界が闇に覆われ、自分という存在の確認すらも危うくなる。
それでも、“田中れいな”は確かに此処にいるのだと認識するように、れいなは自分の周囲に気を集め始めた。

ぴりぴりと、空気が震えるのを感じる。
まるで遠雷のようだと感じていると、ふいに小春の笑顔が浮かんで、消えた。
それを皮切りに、ジュンジュン、リンリン、絵里と、此処を去っていった仲間の笑顔が浮かんだ。
愛も、愛佳も、里沙までも居なくなり、もう此処には、れいなとさゆみしかいない。
哀しくて、ツラくて、寂しくて、どうしようもない想いを叫ぼうとしても、それは暗闇に呑みこまれるだけだった。
れいなはそれでも、頭の中で確かな刀のイメージ像をつくる。
集まった光は映像となり、右手に力を込めた。
391名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 04:48:34.18 0
瞬間、右手の中に再びあの刀が現れた。
刀身が真っ直ぐに伸びた綺麗な刀は、何処か蒼みを帯びている。
光と気を集めてつくられたれいなの刀は、“共鳴”という単語がよく似合う気がした。

「……終われんよ、やっぱ」

れいなはぼんやりとそう呟くと、刀を握り締める。
久住小春が異動を告げられたあの日から変わっていった日常は、それでもいまもなおつづいている。
れいなが此処にいる限り、その日常は失くすことなんてできない。
失くしたくないのは、過去と、いまと、そして未来なんだ。
だって、此処を去っていった仲間たちは、だれひとりとして、その未来を諦めていなかったじゃないか。


―――「だから、逃げないんだけどさ」


―――「私が護っているのは、仲間と信念だ」


―――「私は、護りたいんです……この世界を……ジュンジュンを」


―――「世界って―――やっぱ綺麗なんだね」


―――「なにがあっても、リゾナンターは、変わらんよ」


―――「考えたって仕方ないのかもしれません。未来はすぐ、そこにやって来るんですから」


―――「助けるよ、必ず―――」
392名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 04:49:20.65 0
それぞれが、それぞれの信念を持って、自分の正義を信じて闘っていった。
年齢も、身長も、国籍も、考え方も、なにもかも違っていたけれど、たったひとつ、“共鳴”という絆だけが9人を繋いでいた。
そうであるならば、れいなが此処で、その牙を折るわけにはいかない。
圧倒的な絶望の闇が襲いかかってこようとも、理不尽という現実を突きつけられようとも、れいなは膝を折るわけにはいかない。
この手の中には、希望がある。


―――「闘わないで良い世界を見たいっていうのが、絵里の夢なんだぁ」


きっとそれは、途方もない祈りなんだ。
だれもが傷つかない、哀しまない世界をつくることなんて、まるで無謀な話だ。
それでもれいなは、諦めの悪い子どものように、みっともなく足掻くしかない。
みっともなく足掻いて、もがいて、手足をばたつかせて闇の中を駆け回る自分を、彼女は好きだと言ってくれたから。
ないものねだりなんだけどさ。それでも悪くない。

力が抜けると同時に、右手の刀が消滅した。
まだ不安定なその能力は、出現時間が圧倒的に短い。
ちゃんと扱えるようになるまでは、もう少し時間がかかりそうだとれいなはぐっと体を起こした。
もうずいぶん夜も深まったんだなと感じながら立ち上がる。
そのとき、背後に気配を感じた。
振り返らなくても、そこに立っているのがだれであるか、れいなは知っている。
彼女がずいぶんと寂しい想いを抱えていることを、感じ取った。

「どうしたと?」

振り返らずにそう訊ねるが、彼女は答えようとはしなかった。
久し振りの会話だったが、思いのほかに素直に言葉が出てきたことに、れいなは驚いた。
なんだ、ちゃんと喋れるじゃないか、自分。
393名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 04:50:07.97 0
「考えてたの」

ふいに彼女がそう呟いた。

「なにを?」
「どうして、こんなことになったんだろうって」

彼女はゆっくりと言葉を紡ぐ。
れいなが振り返ると、彼女は床の一点を見つめていた。暗いその瞳はなにを映しているのだろうと、れいなはぼんやり思う。
右脚を引きずっていた彼女―――道重さゆみはひとつ息を吐いて、呟く。

「ねぇ、れいな」
「うん?」
「………れいなは、どうしたい?」

唐突な質問に眉を顰めた。どうしたいとはどういう意味か、理解できなかった。
彼女の瞳を真っ直ぐに見つめ返し、意図を測ろうとしたが、その漆黒の闇はなにも語らなかった。
なにかを言おうとしたとき、周囲の空気が変わった。張り詰めた冬の痛みを携えたその空気に思わず息を呑む。

「私は、もう、終わらせたいよ」

彼女の言葉の意図が読めない。
なにを?なにを?なにが?聞きたいことは山のようにある。あるけれどなにも言えない。どうした?どうしたと、さゆ。

「全部、もう終わらせたいんだ―――」

一瞬の静寂のあと、なにかが割れるような音がした。
れいなを、そして世界を呑み込むような暗闇が広がった。
なにが起きているのか瞬時に理解はできなかった。
394名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 04:50:57.65 0
周囲を見回す。
無間の闇とはよく言ったものだが、れいなを包み込んだのはまさにそれだった。
いったいなにが起きているのか、状況を把握するにはあまりに困難だった。

「さゆ……?」

れいなは闇に問いかけるが返事はなかった。
天上を仰ぐが、そこには寿命が尽きそうな蛍光灯はない。
床を見下ろしても、自分がそこに立っていることを自覚するには難しい闇が広がっていた。
いったいなんだ。なにが起きている?

「れいなは、耐えられるの?」
「え……?」
「この闇の中、ひとりで佇んでいられる?だれもいない中、れいなだけの世界で、生きていける?」

さゆみの声が遠く聞こえた。彼女の話す意味が分からない。いったいなにを言っているのだ?
いやそれよりも、れいなを深く包み込んだこの闇はなんだ?
暗闇や夜の闇とは違う。擬似的につくり出されたような感覚ではあるが、どうしてそれが此処に出現しているのか理解できなかった。

「ねえ、れいな。どうする?」

さゆみの声が響いた。
れいなは方向感覚を見失いそうになるが、必死に奮い立たせた。
短くなる息を吐きながら、拳を握りしめる。

「私と、闘う?」

その声はまるで冷たくて、一瞬、さゆみであることを疑うほどであった。
れいなは眉を顰め、恐らく彼女がいるであろう方向を睨み付けた。

「闘うって、なんで、れなが、さゆと……?」
「言ったでしょ、れいな。私は終わらせたいんだよ、全部、なにもかも」
395名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 04:51:34.84 0
長いので一旦切ります
396名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 06:14:57.92 0
ざわりと空気が変わる。濁ったのではなく、張り詰めたのだと感じた。
瞬間、だった。
れいなの右後方になにかを感じる。
飛来物だと悟り、軽く左に避ける。が、即座に右前方より同じものが襲来した。
れいなはステップを踏むように後ろへ下がる。直後、次々にれいなに飛来物が襲いかかってきた。

舌打ちし、左脚を軸にして避ける。
スピードはさほど速くない。が、目でそれがなにか認識できるほども遅くはない。
れいなは、恐らくさゆみがいるであろう方向から目を逸らさずに、右脚で地面を蹴り上げた。
高い跳躍の中で宙に浮き、「闇」全体を把握する。
まるで方向感覚を失うような暗闇に眉を顰める。此処はいったい、何処だ?なにが起きている?
包み込んだ深淵の闇に、れいなは身震いをした。
呼吸が短くなることを感じながらも、必死に自我を保ち、落ち着けと言い聞かせる。

「さゆ、どういうことっちゃ!」

まるで猫のように着地し、再びさゆみに問う。
しかし答えは返ってこない。
「終わらせたい」と彼女は言った。「私と闘う?」と彼女は言った。
その意味が、理由が、真意が、分からない。
理解できないのか。理解したくないのか。それさえも、分からない。

「答えんね、さゆ!」

闇に問いかけても、答えは返ってこなかった。
再び舌打ちし、さゆみがいるであろう方向に駆け出した。
先ほどふたりの間にできた距離は数メートル足らずだった。れいなであれば、一足でさゆみの元に辿り着けるはずだった。
だが、走っても走っても、さゆみを掴むことはできない。
それどころか、此処は室内であるはずなのに、壁やドアにさえ、辿り着けない。
いくら地下の鍛錬場が広いとはいえ、数十秒走っても端から端まで行けないなんて、そんな馬鹿げた話はあり得ない。
とにかく、声の方向さえ分かれば、そこに向かって走れば良い。なんか、言え。なんか、喋れ。さゆ!
397名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 06:15:34.91 0
れいなが痺れを切らしたそのときだった。
左後方から鋭い飛来物が襲いかかってきた。一瞬反応が遅れ、避けきれなかった。
れいなの右脚の脹脛をそれは掠めた。少し遅れて痛みが走ってくる。血が流れ始めた。
動いていた脚が止まる。さほど痛くはないが、思わず蹲った。手の平で脹脛を押さえる。確かに赤い血が流れていた。
不思議だ。暗いのに、色が分かる。ぎゅうと拳を握り締めた。

「此処は“闇の回廊”だよ」

ようやく、彼女の声が聞こえた。
“闇の回廊”、と彼女は言ったが、カイロウという言葉が変換できない。なんだ、カイロウって。

「ダークネスの、たぶんあの科学者がつくった、擬似的な闇だよ」
「科学者って……なんで、さゆが、それを……?」

唐突に聞かされる「ダークネス」、そして「科学者」という言葉にれいなは眉を顰めた。
そんな彼女の足元に、何処からともなくころころとなにかが転がってきた。
こつんと足先に当たったそれを拾い上げると、その小瓶の蓋に「Corrido」と書かれていることが分かった。
血の色が分かる。ラベルが読める。やはり此処は真の闇ではないようだ。

「この前行った廃ビルで拾ったの。使い方は簡単。その瓶の蓋を開けるだけ。それだけで闇が一面に広がるの」

さゆみの声は、すぐ傍にいるような、ずっと遠くにいるような、不思議な感覚を覚えさせた。
彼女の言葉を必死に理解しようとする。「廃ビルで拾った」、「闇が広がる」、なぜ彼女は、そんなものを使っている?

「“闇の回廊”の主人は私。れいなに私が斃せるかな?」

れいなの疑問に答える代わりに、再びなにかが飛来してきた。
慌てて腰を浮かせ、逃げる。今度は一方向ではなく、四方八方から襲い掛かってくる。
闇から飛び出したそれは再び闇に沈んでいく。もしや実体がないのか?いや、そうだとすれば血が流れる理由にはならない。
398名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 06:16:21.99 0
「っ―――!」

思考が止まる契機になったのは、れいなの左足首にそれが突き刺さったことだ。
れいなは叫び声を呑み込み、蹲った。
左足首に生えたそれは、真っ黒な物体だった。ぐっと力を込めて握り締め、奥歯を噛み、引き抜く。
なるほど、“闇の矢”とでも呼ぶべきものかとれいなは下唇を舐めた。

「さゆ……いったいなんがあったと?」

背中に嫌な汗が滲む。
本気なのか。本気でさゆみは、れいなを殺そうとしているのか?
冗談だよと笑って済ませられる状況はもうとっくに過ぎ去っている。れいなは現に、もう2ヶ所も怪我をしている。
だが、仲間だったさゆみが、どうしてれいなを殺す必要がある?
「終わらせたい」と彼女は言った。此処でふたりが闘うことが、「終わる」ということなのか。
「終わる」―――?「終わり」とは、なんのことだ。
なにが「終わり」なのだ。


れいなは走り出した。
闇雲に走ることが得策だとは思わないが、それ以外に成す術がない。
左足首が痛む。止血すれば良かったといまさら後悔した。

「さゆ!」

再び、“闇の矢”が襲い掛かってきた。
避けきれないスピードではない。だがいかんせん、数が多すぎる。
闇の中で、れいなはステップを踏む。踊る。踊る。まるで社交パーティーだ。ラストダンスだ。相手も居やしないのに。
首元を矢が掠めたとき、微かに、その速度が上がった気がした。
この状況はまずい。敵の居場所も分からないのに、さらに攻撃の手が休まらないなんて。
とにかく、敵の狙いは不明だが、まずは相手の居場所を察知しないことには―――
399名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 06:16:54.59 0
れいなはそこでハッとして脚を止めた。
いま、いま、れいなはさゆみをハッキリと「敵」だと認識していた。
なぜだ。今日の今日、いまのいままで、れいなとさゆみは同じ仲間として、肩を並べて闘ってきたじゃないか。
短くなった息を吐いていると、肩に鈍い痛みが走った。
鮮血が飛び散る。
肉が切れ、骨が断たれるような音が聞こえた。

「あ゛っ……!」

鈍い声が口から漏れた。
肩口をおさえ、折れそうになる膝を堪えた。
それでも倒れまいと真っ直ぐに前を見据える。

「なん、でよ……?」

そうしてれいなは再び声を漏らした。
もう何度目の質問だろう。一向に答えない彼女に対して、れいなはそれでも問いかけた。

こんなこと、したくない。
こんなことをするために、此処に来たわけじゃない。

「なぁ!なんでよ!!」

暗闇に叫ぶが返答はない。
そこに確かに聴き手はいるはずなのに、彼女は答えてくれない。
答えないことこそが、答えなのだろうかと天を仰いだ。
400名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 06:17:33.25 0
生まれた意味も、生きる理由も、なにも分からなかったあのころ、れいなに手を差し伸べてくれた人がいた。
此処が自分の居場所だと、此処で生きていて良いんだと、認められた気がした。
信じあえる大切な仲間と出逢い、自らの能力と向き合い、自分の信じる正義とともに、闘いの日々を生きていた。
闘うことを喜んでいたつもりはない。だが、その日々は、否定できるものでもなかった。
れいなにとって、リゾナンターは大切な場所だった。

その場所から、あの夏の終わり、小春がいなくなった。次いでジュンジュンが血の海に沈み、リンリンも後を追うように暗闇へと消えていった。
もうだれも失いたくなかった。もうこれ以上、壊さないでほしいと祈った。
だが、震えるれいなの腕から絵里はするりと抜け落ちた。
哀しげな瞳を有して愛は去っていった。真っ黒な刃を突き立てられた愛佳の膝は折れ、里沙は崩落のビルへ消えていった。


涙なんてとっくに枯れたものと思っていた。
仲間を失って、ぼろぼろに傷ついて、飽きるほどに泣き叫んだのに、それでもまだ、この瞳から雫は落ちる。

人間とは、厄介な生き物だと、唐突に思った。
感情があるから、こんなに悩むんだ。
感情がなければ、もっと素直に行動できた。
なにも考えずに、ただ目の前にあるものを切り裂けば良かった。
欲望のままに、痛みを知らずにただ過ぎ去れば良かったのに。

それなのに。
感情があるが故に、悩み、惑い、震え、涙する。
そんなもの、とっくに捨てたと思っていたのに、こんなにも胸が熱くなる。
まだ、叫んでいる。
此処が、心が、痛いと、必死に叫んでいる。
401名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 06:18:03.71 0
「なんでよ………ねぇ……」

血も、汗も、涙も。
体液はその場に迸り、痛みと哀しみを教える。
それでも彼女は、叫ばずにはいられなかった。心の痛みを、子どものように叫ぶしかなかった。
信じているから。いまのこの瞬間まで、仲間を、さゆみを、信じているから。

「なんでよ、さゆ!!!」

れいなは無間につづく“闇の回廊”の中でもういちど、叫んだ。
名前を呼ばれた彼女は、その闇の奥深くで表情を崩さぬままにれいなを見つめていた。
彼女の瞳に、感情は映らない。
それなのになぜか、確かにその頬に、雫が伝っていた。

「時間が来たんだよ……」

そう彼女は呟いた。
深い哀しみを携えた声は、確かにれいなに届いていた。

「終わらせよう、れいな―――」
402名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 06:18:44.63 0
-------

管理官は報告書を読み終えると深く息を吐いて椅子に掛け直した。
「順調」と言って良いかは分からないが、少なくとも悪い状態ではない。
だが、それはあくまでも「こちら」の話であり、彼女たちはそうとはいかない。

「宜しいのですか……」

ひとりの男が管理官に向かってそう訊ねた。
その言葉は当然、管理官にも届いていたが、彼は首を縦にも横にも振らなかった。

「良いのか悪いのか……善悪を決めるのは私ではない」

彼はそうして立ち上がった。
もし仮に、それを決めるとするならば、それは私たち人間ではなく神でしかない。
そんな不定形な存在に頼ること自体、実に非科学的で馬鹿げた話でしかないのだがなと苦笑する。

「怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ」

静かに、そう吐き出しながら管理官はつづけた。

「おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ―――」

ニーチェの残した言葉を、管理官はそのふたりに送った。
いままさに拳を交えんとする彼女たちは、なにを思っているのだろう。

「“終わり”がなにか、その手で証明して見せろ」

管理官は強く拳を握りしめた。
それは微かに震えていた。これはもはや、神への祈りだと深く息を吐きながら眉を顰めた。
403名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 06:20:23.09 0
>>389-402
以上「the new WIND―――道重さゆみ」
れいな卒業までにラストどころか最終章にも辿り着きませんでした……
ちんたらちんたらと亀の足ですががんばります

---------------------------------------------此処まで
404名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 08:35:04.96 O
読前保
405名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 10:44:38.77 O
あとで読む
406名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 11:40:25.35 O
>>403
更新代理乙です
やっぱり待っているのは悲しい結末なんでしょうか
目が離せません
407名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 13:01:18.82 0
>>403
管理官の言葉が意味ありげですな〜
二人の戦いは普通に考えればれいなが圧勝するのだろうが終わらせる意志の有無がどんな形で作用するか
408名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 14:43:12.46 0
あげ
409名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 15:55:04.30 O
あげ
410名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 17:04:26.52 0
wikiの作者の項目が更新されていたな
411名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 18:15:07.24 O
あれ楽しいなw
412名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 20:41:42.18 O
風が冷たいな
413名無し募集中。。。:2013/06/02(日) 22:23:31.18 0
あげ
414名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 00:00:56.58 0
415名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 00:01:39.71 O
いよいよ終盤
どんな終わりが待つか見届けたい
416名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 01:46:54.09 0
おやすみ
417名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 03:13:27.06 O
ねるなんと
418名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 05:31:51.20 0
おぱよん
419名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 07:09:17.10 0
一人の朝
420名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 07:19:07.44 0
wiki見ますた
自分が3人くらいに分裂しとったw
421名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 07:55:55.85 0
それも楽しみの一つw
422名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 11:06:37.48 O
wiki見ると新しい作者さん増えたなあ
423名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 11:08:27.06 0
>>422
上の人もそうだけど分身の術あるからw
424名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 11:21:57.63 0
作者本人が明言してなければ分けて書いてあるね
実際どれだけかぶってるかは分からんけどw
425名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 12:44:50.19 0
元○○の人で現△△の人&□□の人みたいな感じ
426名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 12:53:51.13 0
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/758.html の続き

(第1話のおさらい)
正八角形のホールと8個の小さな部屋で構成された出口のない舘に閉じ込められた9、10期の8人
工藤の千里眼でも出口は見つからず、なぜか佐藤は眠り続けている
出口を探そうとした8人の元に突如目の前に現れたロボット
【サイサツセヨ】 その言葉に抗うべく、そして生き残るために8人は戦うことを選択する

★★★★★★

【サイサツセヨ  サイサツセヨ】
赤く点滅を繰り返す二つの眼と巨大な体を支える4本の足
ジジジと鳴り響く金属のこすれあう耳障りな音が8人を包み込む

「ど、どうしましょう!くどぅ、逃げる場所本当に見つからないんですか!」
「はるなん、うるさい!今、必死に探しているんだから黙って!!」
「まあちゃん、起きて!お願いだから起きて!」
「・・・」
慌てている仲間達と対照的に鞘師は落ち着いて自分達および敵の戦力を改めて確認する

鞘師自身の武器は水軍流の体術、洞察力、そして水を操る力
他の7人の仲間達の武器は体術および能力、そして共鳴という絆
戦闘に向いた能力者は鞘師自身と石田、それと誰かの能力を『複写』しているであろう譜久村
特に生田の『精神破壊』は機械相手では全く効果を示さないであろう
しかし生田は無駄な動きはあるものの十分な体術を会得している。
少なくとも肉弾戦なら戦力として数えられる

それに対して敵は機械および兵器による武力、圧倒的な制圧力とそれを可能にするであろう電子回路
可動性に長けた4本の足と重厚な装甲、殺戮兵器ならば当然備えられているであろう飛び道具、スタミナと縁の無い生命力
427名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 12:54:27.36 0
まず為すべきことはこの小さな部屋の中から脱出すること
8人が集まったこの小さなスペースでミサイルなり爆弾でも使われたなあひとたまりもない
少なくとも敵が何らかの行動を起こす前に、ここから意識を外す、または抜けださなくてはならない

(まあちゃんが起きていれば・・・)
佐藤の能力―『瞬間移動』で攻撃系の能力者、鞘師か石田と共に脱出し、部屋の外から攻撃する
それが最も理想的かつ効果的な方法だったのだが、その佐藤は眠り続けている
譜久村が動揺しているところを見る限り『複写』にも『瞬間移動』はないと考えざるを得ない

(それならば私があいつの注意をひくしかない)
腰のペットボトルホルダーから飛び出した水は刀の形となり手に収まった
ふぅっと一回吐き、呼吸を整え眼の前のロボットの懐めがけて飛び込んでいく

敵に届くまでのほんの一秒の間に鞘師は脳内で何度もシュミレーションを繰り返す

(リゾナンターで最も速い私に対して精確な射撃は困難であろう
 雨のようにふりしきる弾丸ならば水の膜をはった状態で反射神経のみで避ける
 それは田中さんから学んでいるため、可能だ)

(しかし、それがいきなりミサイルなり火炎放射をを使うことも考えられる
 私が避けるのは容易いだろうが、透過能力を持った香音ちゃんやあゆみちゃん以外は難しいだろう
 特に能力が戦闘に不向きなはるなんは避けようがないはず)

(それならば方法は一つ、脱出経路を確保し、かつ注意を私に向けさせる、しかない
 この刀で胴体部分に傷を負わせ、その衝撃を利用して頭上を飛び越え、センターホールへ道を作る
 敵はまずは私を追うだろうから、その間に他のみんなには部屋から逃げてもらう
 大きな場所に出ればそれぞれの持ち味が活かせる戦いが出来る)
428名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 12:55:00.44 0
「私に任せて」
駆けだした鞘師の姿に12の瞳が向けられる
視線を感じながらあと数歩でロボットに届く、そんな距離で鞘師は大きく跳んだ
目標は赤く光る2つの眼の下50cm、胸の中心部分
両手で鍔をしっかりと握りしめ、大きく両腕を後ろにふるう
刀を振るう瞬間弛緩させていた全身の筋肉を一気に硬直させ、自身が一つの大きな刀となる
大きく描かれた刃の軌道は美しい弧を描き、ロボットの胴体目がけて軌跡を描いた

ガキィィン

金属と金属がぶつかる音が響き渡る
硬度を金属並みに増した水の刃と鋼鉄の体がぶつかりあうその音に思わず鈴木は耳を押さえる
(や、やった!?)

しかし刀を振るった鞘師の眼の前には驚きの光景が
(な、なに?わ、私の刀を受け止めるなんて)
四足歩行型のロボットは二足歩行型に変形し、両腕で鞘師の刀を受け止めた
(やはり、一気に倒すことはできないか。しかしこれは困ったぞ)
キュイィィンと高調な音が響き、砲台と視線が合い鞘師は冷や汗が頬に流れたのを感じた

「里保に何すると!!」
生田の強烈な蹴りがロボットの背中に炸裂した
衝撃で鞘師の刃を掴んだ手が開き、その隙に鞘師は水の刀を解除し脱出した
「ありがとうえりぽん。助かった」
「イヒヒヒ、たいしたことしてないとよ」と部屋の外にいる生田が奇妙な笑みを浮かべる
「さあ、みんな今のうちっちゃ!こっちにくると!」
内心自分の役割を奪われたような気がする鞘師は複雑な心境ながらも、仲間達に声をかける
429名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 12:55:28.82 0
「わかりました、今のうちに皆さん、生田さんのいる大きなホールにいきましょう!」
飯窪、鈴木、工藤と足早に倒れ込んでいるロボットの横をすり抜けホールへと移動する
「ほら、あゆみちゃんもいくよ!」
「あ、まってください。まあちゃんが起きないんです!譜久村さん、肩をかしてくれませんか?」
「・・・いいえ、あゆみちゃんは先に行って、私がまあちゃんを背負いますわ」
そういい譜久村は不安そうな石田を押しのけ、満面の笑みで軽々と佐藤を背負った
「すごい!譜久村さん!同い齢なんて思えない!」
「そ、そうかしら?」

「あ、危ない、ロボットが動き出すよ!!」
眼を向けるとほんのわずかにロボットが震えていた
「二人とも急いでください!」
もともと高い飯窪の声が焦りのためか更に高くなる

「大丈夫よ。私は『知っている』。このロボットは私、聖が部屋を出るまで『起き上がれない』」
そうはっきりと明言する譜久村に佐藤を除いた6人の不思議なものを見るかのような視線が集まった
「譜久村さん、何言っているんですか!そんな格好つけなくていいから急いで!」
興奮する工藤と対照的に譜久村は石田に手を差し伸べ、ゆっくりとロボットの横を通り抜ける
「ほら、そいつ震えています!いつ動き出すか分からないですって!」
「大丈夫よ、くどぅ、私は『知っている』。私があと10歩動くまでロボットは『動かない』から」
1歩、2歩、3歩・・・全くロボットは動かない
そして10歩目を踏み下ろした瞬間ロボットはばねの様に跳ねあがった
「譜久村さんのいうとおりだ!!・・・何で鼻血でているんですか?」

『サイサツセヨ サイサツセヨ』
繰り返される電子音に次いでロボットの肩が大きく開いた
「!! みんな逃げて!!」
開いた穴から放たれる無数の銃弾
「ちょっと まつ っちゃ! はっ!! こんなの 避け 続けるの 無理 っちゃろ!」
「誰か あの 穴を ふさぐか 壊して! はるの 能力で みた 死角を 教えるから」
各々がハチの巣にならないように必死に銃弾から逃れようと足を速める
430名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 12:56:05.30 0
鞘師は逃げながらも飯窪に声をかける
「ねえ、はるなん、いつもどおりにサポートしてくれない?どぅと私の視点をはるなんの能力で繋いで!」
「な、なにいってるんですか?私、そんなことできませんよ!」
「大丈夫!私を信じて銃弾は私が全て弾き返すから、はるなんは能力の行使に集中してくれれば・・・」
「そうではなくて、私にそんな能力はありませんから!!」
「え?何言っているの?だってはるなんは」

そこに飛び込んできた工藤の声
「すごい!だーいしすごい!めっちゃ格好いい!」
いつのまにか止んでいる銃撃は石田の攻撃によるものなのだろう
振り返って眼に飛び込んだのはロボットを包む炎と同じ色の炎を手にまとった石田の姿

「なに?あの色の炎は・・・蒼い炎?」
かつてリゾナンターに所属していた火炎念動力者は緑炎を操っていた
しかし、いま、石田の掌に揺れるは蒼き炎
「譜久村さん!まあちゃんは無事ですか?」
「大丈夫だと思うけど・・・相変わらず起きないの」

「気を抜かないで!まだそいつ何かする気だよ!!」
鈴木の忠告と同時に腹部が大きく開き、ミサイルと思わしきものの先端が明るく照らし出される
「今度はミサイルゥ?やばっ あれは無理っちゃろ!逃げろ〜」
「どこに逃げればいいんだろうね!!無理だって、あれは無理!!避けられないよ!!」
「これは私も『知りません』!」

「だーいし!またさっきみたく炎であれを止めてよ!」
「よーし、この蒼き炎の一族の私が」
「だめ!炎で壊したら爆発で私達木端微塵になってしまいますよ!」
「嘘 嘘 嘘!炎で壊すなんて嘘!やめる!やめる!」
431名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 12:56:48.96 0
慌てふためく6人の姿をみて鞘師もさすがに焦りを感じずにはいられない
(ダメだ、私の水ではあれは止められないし、止めたところで爆発してしまう
 だからといってどうすればいいんだ?水の防御壁?いや、だめだ8人を守るなんて水が足りない)

そうしている間にもロボットの震えは加速度的に増していく

(ダメなのか?)

一陣の風が吹き、次の瞬間、ロボットが消えた
「今度はなんですか?」
「! はるなんあぶない!!」
驚きの声を上げる飯窪の懐めがけ鈴木が飛び、飯窪は衝撃のために一瞬息がつまりそうになる
「かのんちゃん!はるなんになにす」

そこで生田の言葉は遮られた
遥か上から何か大きな物体が落下し、生田のその後の言葉を打ち消したのだ
辺り一面に粉塵が舞い上がり視界が妨げられる
「かのんちゃん、はるなん!!」
二人の安否を確認する声に対して、鈴木の「大丈夫」という声が返って来て他の5人は安堵のため息を漏らす
「鈴木さん凄いな・・・はるの千里眼よりも先に動いたんだもん」

石田は落ちてきた金属の破片を拾い上げ、仲間達に見えるように高々と掲げた
「これ、さっきのロボットの赤い目に見えるんだけどみんなどう思う?」
鞘師は思った−間違いないだろう、と
(しかし・・・一体誰が?そしてどうやって?)
432名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 12:57:33.62 0
その疑問は静かに解決される
「あ〜」と間の抜けたような声が聴こえたのだ
「よかった、まあちゃんが起きましたわ」
「チェッ、のんきに寝ているなんてはる達の気も知らないで」と悪態をつく工藤だが嬉しそうに佐藤の元へと駈け寄る
工藤が駈け寄ったにもかかわらず佐藤はきょろきょろと辺りを見渡してばかり

「まあちゃんどうしましたか?」
「・・・」
返事を返さない佐藤は静かに金属片に指を向け、バンと撃った
譜久村の背中から一瞬背負われていた佐藤の重さが消え、すぐに戻ってきた
幾つかの大きな金属が浮かび上がり、無数の細かな破片となり崩れ落ちた
「イシシシ」
そして笑う佐藤
「じゃあ、さっきのロボットを倒したのはまあちゃん?でも様子がなんだかおかしいんだろうね」
「なんか気味悪いっちゃ」

石田も顔を青ざめながら駈け寄り声をかけた
「まさきちゃん、大丈夫ですか?怪我とかしていないですか?」
「あー、あぬみんだ〜」
間の抜けた声に一同の空気が緩んだものの、次の佐藤から出た言葉はその場を止めるには十分すぎるものだった

「なんで生きてんの?まあちゃんが殺したのに」

「・・・なにいってんのまーちゃん!!だーいしはここにいるじゃん!頭ホントにおっかしくなったの?」
誰よりも早く反応したのは誰よりも一番佐藤といることが多い工藤であった
「そ、そうですよ!まあちゃん、縁起でもありません!あゆみちゃんに謝るべきです!」
「そうっちゃ、あゆみちゃん、こうやって生きとうし、まあちゃんも生きてるっちゃろ」
433名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 12:58:04.27 0
「石田を殺した」という佐藤の発言を悪意のある冗談として捉える飯窪や生田と違う考えを鞘師は抱いていた

そして同様に違う感情を抱いた人物がもう一人
「まあちゃんのいっていることは嘘じゃないみたいだよ」
「? なんでそんなことわかるんですか?鈴木さん嘘はやめてくださいよ」
「だって嘘を言っている『音』がしないもん」
工藤の眼をじっと見ていう鈴木の言葉に今度は石田が反応する

「『音』ってなんですか?」
「鈴木さんの『超聴力』で心臓の音を聞いて、拍動の変化で嘘と本当を判定しているんです」
石田の問いに対して返すは飯窪
「ちょっとまってください!鈴木さんの力って『透過』じゃないんですか?」
「なに言っているの?香音の能力は『超聴力』だよ。そんなことより、あゆみんこその能力は?」

先程の蒼い炎のことを言っているのであろうと察した石田は再び炎を掌に灯した
「これのこと?これは白銀のキタキツネ様を守護する私の一族の蒼炎だよ!
 この力でまあちゃんをお守りするために私はリゾナンターに」
「待つっちゃ!あゆみちゃんの力は幻獣駆使(イリュジョナルビースト)やろ?」
「え?石限定念動力ですよね?」
「高速移動(アクセレーション)だよ!!」
「・・・みんな『嘘』の音はしないんだろうね」

鞘師は考える
全ての人間が真実を話している。にも関わらず事実は必ずしも一致していないのだ
(これを説明するには・・・)
鞘師はゆっくりと壁に近づき、水の刀を棍棒に変形させ思いっきり打ちつけた
力の限り強く打ちつけたにもかかわらず壁はまったくの無傷
先程のロボットの射撃によって開いた穴すら見当たらない
(この舘はおかしい・・・それにふくちゃんも香音ちゃんもあゆみちゃんもはるなんも私の知っている能力と違う
 もしかして・・・みんなは・・・)
434名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 12:58:38.85 0
★★★★★★

そんな8人を見下ろすように天井から送られたカメラの映像を一人の女性が眺めていた
ゆったりとしたソファーに座り、時折琥珀色の液体の注がれたグラスを手に取る
「おや?」
女性は表情を確認すべく、カメラのズームを鞘師にかける
何かを察知したように眉間にしわをよせた鞘師をみてふふん、と笑う
「さすがやな。勘付いたか?『水軍流の』鞘師、といったところやな
 さて・・・あいつらがどうするか、ここからが本番や」
溶けた氷がカランと楽しげな音をたてた
「じっくり調べさせてもらうで」
435名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 12:59:32.74 0
>>426-434
『米』の第2話です。最近スレの他作者様の話が読み応えがあって非常に楽しいです
その一方で自分で書くとなると躊躇してしまうのが恥ずかしい
マイペースにじっくりと書いて行きます

↑ここまで転載
436名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 13:09:55.48 O
待ってましたよ!
不思議な現象に黒幕の存在
続き期待してます
437名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 13:16:57.55 0
>>435
こういうメタテイストな話好きです
マイペースで構わないので次回もお待ちしてます
438名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 15:45:49.31 0
あげ
439名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 16:37:18.79 0
>>435
おもろい
期待作
440名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 16:47:36.20 0
鞘師主観の必然性が上手く出てますな
441名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 17:41:27.81 0
クジュッキーズの設定の揺らぎというかブレを逆手に取って面白い話を作ってきたもんだ
442名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 18:52:38.81 0
それぞれどこの世界から来たかwikiみながら調べてるけど半分もわかんね〜w
443名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 20:09:47.12 O
あげ
444名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 21:10:31.68 0
445名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 21:52:40.91 0
じゅん子カッケーw
446名無し募集中。。。:2013/06/03(月) 23:19:31.19 O
ジュンジュン活躍しテル話ガ読みタいダ
447名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 00:03:45.04 0
りんごじゅーすオイシイオ話シマダデスカ?
448名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 01:58:55.58 0
その話はやめりー!!
449名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 02:54:46.64 0
おやさゆみん
450名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 05:40:26.72 0
>>374-380 の続きです


いつものように、遅れての出席。
しかし、幹部たちがその遅刻を責める事は無い。
今回はただ一点、いつもと違うことがあったからだ。
白衣の女性、Dr.マルシェこと紺野博士の傍らには小さな少女がいた。

「おいおい、何の冗談だよ」

咎を責めることすら忘れてしまう、異常な光景。
「鋼脚」にとって、紺野が小さな子供を連れている姿はそれこそ冗談にしか映らなかった。

「紹介します。彼女の名前は『さくら』。i914のデータを元に作り上げた、人工能力者です」
「よろしくお願いします」

さくら、と呼ばれた少女がぺこりと頭を下げる。
i914、という単語に、その場に居た幹部たちは心のざわつきを抑えることができない。
光を使役する、という強大な能力を保有する、前任科学部門統括の最高傑作。そして、組織を裏切り組織に弓を引いた、最低の失敗作。

「おい、どういうことだよ!お前今i914って言わなかったか!」
「あんたもあいつについてはよく知ってるでしょ、何を考えてるの?」

「詐術師」と「永遠殺し」が紺野を責め立てる。
しかしそんな言葉は耳に入らないと言わんばかりに、話を先に進める。

「みなさんにお願いしたいのは、この子の教育についてです。さくらは、素晴らしい能力を持っています。いずれ組織を
支える大きな力です。そこで、幹部のみなさんにこの子の研修をしていただきたいのです」

突然の、依頼。
通常、ダークネスの一員となった能力者は専門の養成施設に入り、施設の教官によって研修期間を設けられる。
幹部が直接新入りの面倒を見ることはそうあることではない。
451名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 05:41:03.09 0
「めんどくさいから、パス」
「合コンの必勝法とか教えてやりゃあいいのか?キャハハハハ!!」

「氷の魔女」が肩を竦め、「詐術師」が小さな体を揺らし大笑いする。

「別に養成施設のような本格的な研修をしてくれとは言いません。ただ、さくらにはより多くの世界を見てもらいたい。
そのために少しでも力をお貸しいただければと思います」
「その子、力は確かなんやろうな」

「首領」が、確かめるように、訊いてくる。
紺野は「叡智の集積」の二つ名に相応しく、力強く頷いた。

「ほな、みんなもよろしゅう頼むわ」

組織において、首領の言葉は絶対である。
先ほどまで否定的な表情を浮かべていた幹部たちも、上からの命令なら従わざるを得ない。
こうしてさくらの実地研修の契約は、結ばれた。

紺野はさくらにあなたの用事は済んだので先に戻るよう指示する。小さく頷いたさくらはその場にいた幹部たちに一礼す
ると、再び扉を潜り外へと消えていった。

扉の閉まる、ずしりとした重い音。
紺野は、同時に宣言する。

「みなさんもご不満や不安はあることかと思います。しかしながら、彼女は今回の計画になくてはならない存在。そのた
めに、私は彼女を造ったのです」

今回の計画。
それが何を指しているのか知る者は、いない。
顔を顰めるもの、黙りこくるもの、つまらなそうに手鼻をかんでいるもの。だが、それ以前にある事実を問いただしたい
と思う人間が、いた。
452名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 05:41:38.19 0
「あんたの計画はともかく。前回あんたが仕掛けた戦いの顛末について説明が必要なんじゃないか?あたしたちを押しの
けてまで、実行した作戦のさ」

語り口は鷹揚だが、有無を言わせない迫力が「鋼脚」にはあった。返答次第では、ただでは済まさない。その意志が、彼
女の強い視線から感じられる。

先の会議において出されたリゾナンター討伐指令。
我こそはと立候補する「黒の粛清」「赤の粛清」「鋼脚」の三人を自前の理論で退け、その権利を得たのは紺野だった。

「彼女たちは…よく戦いました。結果負けはしましたが」
「勝った負けたはどうでもいい。ついでにそいつらの身柄が警察の手に渡ったこともな。でもさ、あんたが仕掛けた『ち
ょっかい』のおかげでリゾナンターたちが成長しちまった件について、どう言い訳してくれるんだ?」

紺野は答えない。
さらに「鋼脚」の追求は続く。

「先日、新生リゾナンターたちが『エッグ』のあぶれ者7人と交戦し、撃退した。能力自体はもちろん、戦い方に関して
も進歩が窺える。うちの部署の連中からの報告だよ」
「……」
「紺野、あんた言ってたよな。下手に強力な力でねじ伏せようとすると反動が来るって。けど、拮抗した力をぶつけた結
果はこれだ。この責任は、どう取ってくれるんだ?」

紺野は、静かな湖面のような瞳で「鋼脚」のことを見ている。
いささかも揺るがない、その水面。

「責任、ですか。私の記憶が確かならば、責任とは失態を犯した時に取るものだと」
「…何が言いたい?」
「ならば私が責任を取る必要はないですよね。『ベリーズ』『キュート』と彼女たちの戦いによって、貴重なデータを得
ることができた。彼女たちの成長はその代償としては、安い犠牲に過ぎません」

紺野の言葉で、会議場がざわつく。
自らの失態であるはずの襲撃失敗を、データの入手という功績にすり替えた。そう捉えられても、仕方ない。
453名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 05:42:12.71 0
「そのデータって、何なのよ。勿体ぶった言い方しちゃってさ。下らないものだったら、ただじゃおかないんだから!」

ここぞとばかりに、噛みつきにかかる「黒の粛清」。
例の一方的な密約を取り沙汰されるのを恐れていた粛清人に、この流れは渡りに舟。

「貴重、と自ら称するからにはそれなりのものなのよね?」
「まあ、組織に不利益なものではなさそうだけど」

ダークネスの重鎮たちも揃ってそう口にする。

「もし間男がその家のダンナにばったり出くわした場合の統計、みたいな下らないデータだったらおいら腹抱えて笑っち
ゃうけどな!!」

キャハハハハ、と甲高い不愉快な笑い声が吹き抜けの天井まで響き渡った。
もちろん、誰も笑わない。

紺野はふう、とため息を一つつき、それから口を開く。

「いいでしょう。今回みなさんをお呼びしたもう一つの理由をご説明します。私が採ったデータは…リゾナンターが引き
起こす、共鳴現象についてのデータです」

今度は別の意味で、幹部たちが色めき立つ。
それもそのはず、ダークネスが、たった10人程度の能力者集団を注視せざるを得ない事情がそこにあるからだ。

共鳴現象。
リゾナンターたちが心を通わせ、自らの力を共鳴させ増幅させ、そして一気に解き放つ。
個々の能力においては歴然たる実力差をつけていたダークネスの幹部たちが、9人のリゾナンターを前に悉く撤退を余儀
なくされた理由。

「ちっ。忌々しい」
454名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 05:42:47.72 0
「氷の魔女」が、不機嫌そうに掃き捨てる。ただ、彼女だけではない。この場にいるほとんどの幹部が、その力に煮え湯
を飲まされた経験があった。

「私がリゾナンターたちにキッズをぶつけたのには大きく分けて二つの目的がありました。一つは、新生リゾナンターの
戦力把握。そしてもう一つが、先に述べた共鳴現象のデータ解析です。そして『ベリーズ』に与えた擬似共鳴の能力はリ
ゾナンターの共鳴現象を引き出し、比較し、解析するにはちょうど良い存在だったのです」

言いながら、紺野が円卓中央に浮かび上がるモニターを起動させる。画面に大きく映し出されるのは、先代のリゾナンタ
ー9人の画像付き相関図。リーダーである高橋愛とメンバーの田中れいなの間に、太い双方向の矢印が記されていた。

「かつての共鳴現象の仕組みは、高橋愛、つまりi914と田中れいなの存在に大きく依存していました。簡単に言えば、i914が
エネルギー出力装置、田中れいながエネルギー増幅装置です。そして出力装置はその他のメンバー、言い換えるならサブ出力
装置に支えられていました」

言い終わると、愛の画像は消えてなくなり、同時に亀井絵里、ジュンジュン、リンリン。久住小春、光井愛佳。そして新垣里
沙の画像もフェードアウトする。入れ替わるように姿を現す、鞘師里保を筆頭とする8人の若きリゾナンターたち。
れいなとメンバーたちの間に、9つの細い双方向の矢印が結ばれた。

「ところが、i914がリゾナンターを離脱することでメインの出力装置は消滅します。その役割は、田中れいなを除く全員のリ
ゾナンターが力を合わせ、補っているのが現状です」
「つまり、i914がいなくなったところで状況は変わらなかったってことかよ」

「鋼脚」の問いに、紺野は首を横に振る。

「確かに現状でも共鳴の力を引き出すことは十分可能でしょう。ただし、『銀翼の天使』を退けるほどの共鳴現象を引き起こ
すにはi914クラスでないと不可能です。最も、我々としても『天使』の力を常に安全な形で行使することはできませんが」
「おいおい、ってことはナニか?今のガキンチョたちが使う不完全な共鳴能力に対しても今のおいらたちじゃお手上げだって
言うのか?」
「そうですね」

あっさりとした返答。
そうですね、の一言では納得できない面々が立ち上がる。
455名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 05:43:39.79 0
「じゃあさ、共鳴能力を使われる前に皆殺しにすればいいんだよね」
「もっと簡単な方法があるわよ。一人一人孤立させて、一人ずつ殺せばいいわ」
「いや、半分くらい殺っちまえば、共鳴現象の威力は落ちるはずだ」

「赤の粛清」、「黒の粛清」、そして「詐術師」。
許可さえ出れば、即実行に移しそうな三人。しかし紺野は再び、首を横に振る。

「そんなことより、もっと確実な方法があります。共鳴現象を引き起こす両輪、その片方を外すだけで、簡単に我々はその現
象を封じる事ができる」
「田中れいな、か」

首領が、れいなの名前を呟く。
それは、首領自ら「田中れいなの討伐命令」を下したに等しい。

「リゾナンターを打ち崩すには、田中れいなという共鳴現象の両輪を構成するうちのひとつを外さなければなりません。それ
さえ叶えば、彼女たちはたやすく自壊するでしょう」

紺野が、ゆっくりと視線を中央のモニターに移す。
れいなの画像がゆっくり消えてゆくと、他の9人のメンバーたちの画像はまるで散りゆく落ち葉のようにはらはらと画面の外
へと落ちていってしまう。

「なるほど。あたしたちはれいなちゃんを血祭りにあげればいいわけだ」

目を爛々と輝かせ、「赤の粛清」が嬉しそうな表情をする。

「申し訳ないんですが、ただ戦って潰す、というのは今回の計画の趣旨ではありません。あまり派手な動きはスポンサーの方
たちも望んではいないようですし」
「じゃあ、どうすんの?またあんたの極めて個人的な趣味を満たす作戦を実行するわけ?」
「我々は、罠を張ってただ待ち構えていればいい。獲物は勝手に飛び込んで来ますから」
456名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 05:44:24.78 0
「氷の魔女」の皮肉をかわし、紺野が言う。個人的趣味はあくまでも副産物なんですが、という言葉はとりあえずは止めてお
いた。

「もちろん、そのための準備は既に済ませてあります。みなさんにも、ご協力していただければと」

返事を聞くまでも無い。
田中れいなを落とす事。それはダークネスの幹部たちの望みの最大公約数。
そう紺野は確信していた。
自らの計画、「プロジェクトЯ」が必ず、成功すると。



会議は閉会した。
ゲートの作動によって、再び各々の持ち場へと戻る幹部たち。
自らも例の長い廊下を通って帰ろうとする紺野だが、ある人物がまだその場に残っていることに気がついた。

「…どうしました?『赤の粛清』さん」
「ちょっと、聞きたい事があるんだよね」

赤い死神が、にこりと笑顔を作る。
だが、紺野は知っている。彼女の表情、感情、全てがツクリモノであることを。
心を闇に食われたダークネスの幹部たちの中でもさらに異質な、存在。「黒翼の悪魔」が好奇心から、「黒の粛清」が残虐性
から人を殺めるのと違い、彼女のそれはただ単純に強い存在をねじ伏せる事を目的とした殺人行為であることを。

そしてそれは、ある一点の目的へと繋がっているに過ぎないことも。

「何でしょう。答えられる範囲でなら、お答えしますが」
「さっすが紺ちゃん、気前がいいね。じゃあ単刀直入にお聞きします。紺ちゃんの計画がスタートするまで、まだ時間があっ
たりするの?」
457名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 05:45:06.79 0
何を目的としているのか。
判りやすいと言えば、判りやすい。

「『勝者』へのごほうびですか?」
「まあね。『黒の粛清』だけ、ずるいじゃん」

赤いスカーフが、ゆらりと揺れる。
その緋色の軌跡を眺めながら、紺野は思う。
もし今、「赤の粛清」とリゾナンターたちがぶつかったら。
全滅か、あるいは。その結果は、実に興味深い。

ただ、目先の愉しみによって先の計画を棒に振るのはいささか愚か過ぎる。

「好きにしてください。ただし、あまりやり過ぎないようにお願いしますよ」
「りょーかい」

得られた回答に満足するかのように、ゲートの作用によって掻き消える赤い影。
紺野は眼鏡を外し、白衣のポケットに忍び込ませた布でレンズを拭く。

「もちろん、それなりの手は打たせていただきますが」

その言葉は、誰にも届くことなく静かに消えていった。
458名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 05:46:32.20 0
>>450-457

------------------ここまで転載
459名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 05:49:34.19 0
工藤って踊ってみたを公開してる人と繋がってるが
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1370260856/

小田さくらがれいなの卒コンそっちのけで客席観察及びブログで私信のお知らせ 2欲情
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1370271509/
         
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1370274631/
小田さくらがれいなの卒コンそっちのけで客席観察及びブログで私信のお知らせ 3欲情
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1370274631/
        
小田さくらがれいなの卒コンそっちのけで客席観察及びブログで私信のお知らせ 4欲情
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1370277729/

小田さくらがれいなの卒コンそっちのけで客席観察及びブログで私信のお知らせ 5欲情
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1370280629/

小田さくらがれいなの卒コンそっちのけで客席観察及びブログで私信のお知らせ 6欲情
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1370284384/
460名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 07:53:07.88 O
転載おっつー電車で読む
461名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 08:24:33.69 0
>>458
乙っす
今度は赤の粛清とのバトルが待ち受けているのか
依然として謎のままのおださくの能力の正体も含め楽しみです
462名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 09:30:36.71 0
>>458
れいなに的を絞った意味でのЯでしたか
展開が楽しみです
463名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 12:13:51.27 0
464名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 12:43:43.82 O
久々に
ぬぅん!
465名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 15:24:56.92 0
超久々にしゅびしっ
466名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 17:27:47.12 0
夕方
467名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 18:57:51.94 O
>>458
更新代理乙です
全面対決のにおいがしますね
れいなの動向にも注目したいです
468名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 20:34:50.57 O
さゆとれいなが1対1で何でもありの戦いしたらどっちが勝つの?
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1370338023/
469名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 21:57:46.09 0
あげ
470名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 23:15:58.17 0
471名無し募集中。。。:2013/06/04(火) 23:53:45.55 0
472名無し募集中。。。:2013/06/05(水) 00:03:13.85 O
473名無し募集中。。。:2013/06/05(水) 00:56:21.71 O
474名無し募集中。。。:2013/06/05(水) 01:56:04.10 0
寝るなんと
475名無し募集中。。。:2013/06/05(水) 05:30:31.41 0
悲しみがこだまする
476名無し募集中。。。:2013/06/05(水) 08:14:08.11 O
おはようもこだまする
477名無し募集中。。。:2013/06/05(水) 08:27:16.97 0
ひかりを求めて
478名無し募集中。。。:2013/06/05(水) 08:47:56.46 0
のぞみは叶う
479名無し募集中。。。:2013/06/05(水) 10:25:22.56 0
つばさを広げ
480名無し募集中。。。:2013/06/05(水) 10:32:50.92 0
高橋愛と初めて出会ったあの日、銭琳は聞いた。
貴方が追い求めている存在をどうするのかと。
高橋は一瞬、無表情になった。空っぽの中身を見るようだった。

 決まってる。決まってるよ、最初から、決まってる。
 あーしはそれだけに生まれて、それだけに死ぬ。
 この世界はな、そうなるように出来てるんよ。
 だから、リンリン、あーしはその願いを叶える為なら ――

選んでいる。選ばなければ、選んだ先の未来。
偽物の世界。でも誰かにとっては、本物の世界。
これを作り物の悪い夢なら、どれほど良かっただろう。

それでも高橋は笑っていた。笑っている。
自分を隠して、自分を偽って、笑うしかなかった。
狂うよりも笑うことで、自分を肯定したいと願っていた。
自分は人間だと、誰かに想っていてほしかった。

理想。妄想。想像。それでも。
高橋の手は白く、細く、そして、血の温もりを感じた。

 リンリン、あーしに命を預けることはないよ。
 あーしは多分、誰よりもワガママで、弱い人間だから。


だから、誰よりも強い心が欲しかった。
481名無し募集中。。。:2013/06/05(水) 10:34:02.83 0
 ―― ―― ―

 「感情エネルギーを蓄積する、それがi914と呼ばれる疑似精神体だ。
 それをナノマシンと遺伝子操作で作り上げた肉体を合わせて、高橋愛が生まれた。
 だが、それによる人型の維持が出来ずに、最終的には消滅する。
 耐えきれないからだよ、生身にナノマシンを仕込まれて無事だと思うか?
 i914が発動すれば同時に限界値を越えてナノマシンが暴走する。
 これが今起こっている悲劇の引き金だ」
 
あの時、吉澤ひとみと二度目の会話を行った時の記録が蘇る。
生みの親である闇の帝王の心情を、問う。
吉澤は笑みを浮かべて、皮肉そうに答えた。

 「…ダークネスは何故、そんなことを?」
 「言っただろう?お前が言う正義なんてこの世には存在しない。
 するとするなら、それはお前の中にしかない。
 自分が思うことを誰かに共感されたことによって、勘違いしてるだけだ。
 高橋がお前達に声をかけたのはね、お前達がそれに固執してるのを知ったからだ。
 【精神感応】は便利だな、心を見透かし、利用する」
 「…っ、愛チャンはそんなヒトじゃなイ!愛チャンはそのチカラで気付かセテくれタ。
 独りじゃないッテ、私はトテモ、嬉しかったんダ」
 「人は闇を恐れる、人は救われたがっている。
 だから力を求める、だから群れを作りたがる。これは真理だ」
 「私、アナタのことは嫌イダ」
 「あたしはあんた達が嫌いじゃないよ。そうして反抗してくれるだけで
 お前達がまだ諦めてないことを実感する。頑張ってくれよ、自分のために頑張れ」
482名無し募集中。。。:2013/06/05(水) 10:35:25.37 0
銭琳は【念動力】によってi914の身体を大熊猫から引き剥がし
【発火能力】で火球をその身体にぶつける。
が、i914は【瞬間移動】でそれを回避すると、銭琳に視線を向けた。

新緑の炎が纏われた銭琳の瞳は、ただ一つの決意を込める。
死ねない。死ねない。死ねない!死ねるものか!!

――― 重症を負いながらも、二人は喫茶店『リゾナント』へと帰ってきた。

瀕死の李純と同じく道重さゆみの【治癒能力】によって治してもらったが
李純の状態をすべて話し、銭琳は故郷へ帰還する。

喫茶店への常連客にはろくに挨拶もできず、新垣里沙や
田中れいな、道重さゆみ、光井愛佳達に別れを告げた。

 祈りの込められた言葉に包まれて。

二人が帰還した後、李純はすぐに軟禁状態となってしまった。
銭琳への尋問がいくつか行われてからは、また『刃千吏』での
護衛官として任務が始まり、1年ほどが経過する。
銭琳はそのまま流れに身を任せる、ということをする気は無かった。

 終わっていない。まだ何も、終わっていない。

銭琳は感じていた。繋がりを感じていた。"共鳴"が疼く。
李純を連れ出したことによって、もう帰ることは許されない。
だから帰らなければ、第二の故郷、日本へ。

短い旅だ、そしてこれが最後の旅になるのかもしれないと思った。
483名無し募集中。。。:2013/06/05(水) 10:36:13.98 0
 ―― ―― ―

高橋は銭琳に問う。
どうして自分の味方をしてくれるのか。
ダークネスとの関係を何処から入手したのか。

無表情の高橋は言う。それは一歩間違えれば、敵とも捉えられる問い。
銭琳は片言の台詞で、答えた。
自分の組織のことを、自分が知る限りの異能のことを。
味方になりたいという想いが本物だということを。

 「リンリンは、優しい子なんやね」

思わず口走った様な言葉ではなかった。
静かに、落ち着いた口調で、穏やかな笑顔と、差し出された掌。
精神系異能者である高橋愛に嘘は通用しない。
それは組織の人間に褒められたものよりも、"認められた"気がした。

 その心が、あーしにもあったらな。

人間には僅かなチカラがある。異能ではない、誰でも保持しているチカラ。
それは願いのようであり、それは祈りのようでもある。

誰かは【呪い】と呼び、誰かは【共鳴】と呼び。
誰かは【言霊】と呼んでいた。
484名無し募集中。。。:2013/06/05(水) 10:37:42.80 0
>>480-483
『異能力 -Soul to return home-』
以上です。

今個人的に気に入ってるのは>>435さんの作品だったりするんですが
他の皆さんもまだこんなにも文才を持ってる人が出てくるなんてアリガタヤー
やーホントに飽きないスレだなあ。

----------------------------------------------------------ここまで転載
485名無し募集中。。。:2013/06/05(水) 13:31:27.02 O
486名無し募集中。。。:2013/06/05(水) 13:45:44.44 O
>>484
更新代理乙です
久々にリンリンの活躍が読めてよかったです
便乗しますが私も米が今一番続きを楽しみにしてる作品ですw
487名無し募集中。。。:2013/06/05(水) 15:55:22.77 O
読前保
488名無し募集中。。。:2013/06/05(水) 18:52:01.84 0
あち
489名無し募集中。。。:2013/06/05(水) 20:46:24.40 O
490名無し募集中。。。:2013/06/05(水) 20:58:11.93 0
>>484
乙です
中断前の本編と比べれば簡潔な構成であるにもかかわらず書きたいものを書くんやという突き放したような姿勢が不変なのが頼もしい
どんな終章が待ち受けてるんですかねえ
491名無し募集中。。。:2013/06/05(水) 22:05:25.29 0
あげ
492名無し募集中。。。:2013/06/05(水) 22:46:07.91 0
>>484
待ってました!!
存在価値に正面から立ち向かう高橋とそれを意図的に生み出したダークネス
その高橋を信じ続けることを選んだリンリン
登場人物が全て傷ついているのが生々しいですね。
次回更新も楽しみにしています!!
493名無し募集中。。。:2013/06/06(木) 00:10:52.43 O
あげ
494名無し募集中。。。:2013/06/06(木) 02:19:53.22 0
HAHAHA
495名無し募集中。。。:2013/06/06(木) 07:01:35.75 0
読み応えある作品ばかりだ
496名無し募集中。。。:2013/06/06(木) 09:28:35.22 0
ですな
497名無し募集中。。。:2013/06/06(木) 09:45:51.38 0
水の使い手鞘師さんが湿度を操ることで新たな能力を手に入れたようです
498名無し募集中。。。:2013/06/06(木) 10:08:18.19 0
その話はしないであげて・・・
499名無し募集中。。。:2013/06/06(木) 10:40:03.34 0
「水軍流」で接近して
「水能力」で傷をつけて
「水人(ミント)くん」で腐敗させるんですね
500名無し募集中。。。:2013/06/06(木) 11:56:21.63 O
あっあれは水の精ヤシ
501名無し募集中。。。:2013/06/06(木) 12:30:25.86 0
絶望を抱えた少女が一人。
絶望の象徴だった少女が一つ。

少女は自覚していた、自分がいかに罪深く、そして、闇であるか。
だが何処かで違和感も覚えていた。
自分がなぜ【光使い】と称されるようになったのか。

誰かの希望であったのかもしれない、誰かの絶望であったのかもしれない。
それならば、と思っていた。
絶望よりも希望を選んだのは、それがきっと正しいものだと思ったからだ。
誰かが希望を待っているのなら、この身を差し出そう。

そう思っていた。
そう思っていたかった。

 「なんか、意外やな」
 「何が?」
 「自分が、こんなにも長生きやったんやなって」
 「バカなこと言ってないの。これからじゃない」
 「うん…」

 「なぁ、ガキさん」
 「なに?」
 「ガキさんは、このセカイが好き?」
 「…なんで?」
 「あーしがしとる事って、このセカイを守るってことが大前提やんか」
 「まぁ、そうだね」
502名無し募集中。。。:2013/06/06(木) 12:31:08.56 0
 「でも中には、こんなセカイなんかキライやって言う人もおる。
 このセカイが綺麗か汚いかは、その人の価値観で決まるものやからね。
 だから、あーしの相手は時には組織以外の人らとも戦う羽目になっとる」
 「つまり?」
 「つまり、あーしらがこのセカイを守るって事は、そういう人らが現れる
 可能性、確率を高めとるんやないかって、な」

 「でも、私達みたいなのが居ないとこれまでよりもそういう人達が増える可能性だってあるよ。
 それに、愛ちゃんはこのセカイを守りたくてリゾナンターを結成したんだよね?」
 「やと、思う」
 「なに今のあいまいな答え。違うの?」
 「あーしは、今までこのセカイの未来を目指して来てたと思っとった。
 でも、それは皆に会えて、皆とおるセカイが幸せやったから、未来もきっと幸せ
 なんやろうって、思い込もうとしとったんやないかな」

愛は手のひらを擦り合わせ、開いた両手をまじまじと見つめる。
其処に、何を見つけていたのだろう。

 「時々思ってしまうんよ。
 もし、もしな、これからの未来が自分が思ってた未来と違ったものやったら、どうしようって」

一瞬の空白。
それを、その言葉の意味を、彼女は解っているのだろうか。

 「――― 未来が怖いんやない。やり直しが効かんから、進むことに臆病になるんや。
 でも出来ないからこそ、あーしらは未来を目指すことにしたんやもんな。
 あの景色を守るためにも。だから、あーしはこのセカイが、皆が好きやと思いたい」
503名無し募集中。。。:2013/06/06(木) 12:31:52.70 0
酷く優しくて穏やかな声。
明日、失ってしまうかもしれないけれど、歩いていこう。
だって、ここに居るのは事実だから。

 遠くの街が光り輝く。
 クルクルと舞い踊る平穏の象徴。

光が塗り潰した世界。光が塗り替えた世界。
それは、何も無い世界。

 里沙は答えなかった。答えられなかった。
 誰もが望み、誰もが到達するまでに至らない領域への願いなど。
 
それは里沙が、最も強く想い続けていた事だということなど。
504名無し募集中。。。:2013/06/06(木) 12:33:05.98 0
>>501-503
『異能力 -Invitation to the jaws of death-』
以上です。

>>490
突き放してはないんですが、リゾブルの構成を自分なり
に解釈してi914をメインにするとこうなってしまうんです。
ホントどう終わるんでしょうね。

-------------------------------------------------ここまで転載
505名無し募集中。。。:2013/06/06(木) 13:45:02.96 0
>>504
更新&転載乙ですた
回想パートなのか起こり得た可能性の1コマなのか?
思いが同じ方向を向いているがゆえに戦わなければならない二人の運命がかなしいですね
506名無し募集中。。。:2013/06/06(木) 13:46:37.69 O
このまま全てが終わってしまうのか
それとも救いの手が差し伸べられるのか
作者様に委ねるしかありませんがどちらの結末になろうとも続きお待ちしております
507名無し募集中。。。:2013/06/06(木) 16:34:03.25 0
あげ
508名無し募集中。。。:2013/06/06(木) 18:14:39.39 0
夕方
509名無し募集中。。。:2013/06/06(木) 20:08:24.91 O
あげ
510名無し募集中。。。:2013/06/06(木) 21:39:44.10 I
>>502 好きやと思いたい が気になるな。待ってます
511名無し募集中。。。:2013/06/06(木) 23:00:30.21 0
あげ
512名無し募集中。。。:2013/06/06(木) 23:40:10.32 O
ほぜ
513名無し募集中。。。:2013/06/07(金) 00:26:04.08 0
>>450-457 の続きです


都心のとある、高層オフィスビル。
1Fの飲食テナントに行列をなすサラリーマンやOLたち。列の中央にいた管理職らしき中年が、突如掛かってきた携帯を片手
に、自らが手がけたプロジェクトの説明を始める。
先にお目当てのサンドウィッチをゲットした二十歳そこそこの女子社員たちが、エントランスのベンチに腰掛け、昨日の人気ドラ
マの内容について姦しく喋っている。
別のベンチでは、午後の会議に備え、若いサラリーマンが持参したレジュメを穴が空くくらいの勢いで何度も読み返していた。

エントランスの受付に、一人の男が近づいてきた。
受付嬢の一人が、男の顔を見てまたかという顔をする。男は、隣のビルのオフィスに勤めている会社員だった。

「ねえねえ、今暇?」
「勤務中です」
「そんなつれないこと言うなよぉ。俺さあ、この前出張で仙台行ったのよ」
「それが何か?」
「実はさ、買って来たんだよ」

男が、カウンターにみやげ物の袋を置く。
ケーキ生地にカスタードクリームが入った、女子に人気のスイーツだった。

「君のために苦労して買ったんだぜ?」
「まあ、それはそれでありがたく受け取っておきますが」
「その代わりと言っちゃなんだけどさあ、今度の日曜に…」

受付嬢は男の言葉を無視し、袋から箱を取り出す。
ずしりと重いそれは。
袋から取り出した途端に、閃光を放ちながら爆発した。
514名無し募集中。。。:2013/06/07(金) 00:26:51.99 0
男も、女も。
目の前で起こっていることについて、1ミリも理解できなかった。
ただ、事実として。
自らの肉体が爆風によってひしゃげ、歪み、破壊されてゆく。
小さな箱から広がった狂暴な力は、瞬く間に建物全体へと広がっていった。

エントランスを覆っていた窓ガラスが、一斉に砕け飛ぶ。
通りを歩いていた人々はその直撃を受け、全身を切り刻まれながら路上に倒れ伏した。
もちろん、建物の中の被害はその比ではない。
爆心地を中心に、猛烈な炎と衝撃波が人々を襲う。
まるでおもちゃのように吹き飛ばされる、老若男女。

ベンチは座っていた人間ごと飛ばされ、肉体と複雑に絡み合いながら床を転がる。
壁に全身を強く打ち付けるもの、天井まで飛ばされるもの、破壊された床の瓦礫の雨に晒されるもの。共通している事はみなそ
の時点で命を失ったということ。

構内は、悉く破壊され、原型を留めない。
掲示板も、椅子もテーブルも、まるで巨大な生き物になぎ倒されるが如く。
その場にいた人たちも、同様だった。

土煙と、肉の焦げた嫌な臭い。
エントランスの受付は隕石でも衝突したかのように大きく抉れていた。
そこにさきほどの男女はいない。爆発により、肉片すら残すことを許されずに全てが消滅していた。


日常。
普通の人たちに与えられた、当たり前の日々。
それは特定の人物の悪意によって、前触れもなく終わりを告げた。
515名無し募集中。。。:2013/06/07(金) 00:27:31.90 0




爆発事故から、数分後。
警察や救急隊の正規のルートとは別に、都内の警察組織と懇意にしている能力者たちは現場に急行するよう協力を求められる。
目的は、治癒能力を保持する能力者。現場の負傷者の手当てのため、喫茶リゾナントの店主である道重さゆみは後輩たちに店番を
頼むと慌てて店を飛び出した。

「聖も行きます!」
「ダメ、フクちゃんは残ってて。大丈夫、さゆみだけじゃなくて他の治癒能力者の人たちにも声をかけてるらしいから。お店のこ
とはお願いね」
「…わかりました」

さゆみの能力を普段から複写し使用している聖もまた、協力を求められている能力者の条件に符合していたものの、さゆみは万が
一のことを考え店に残るよう指示を出す。
もし、治癒能力を持つものがいない状態でダークネスの襲撃を受けたら。そんな不安がさゆみの脳裏を過ぎったのだ。

都内のオフィスビルで爆発事故があったらしい。
それだけの情報しか与えられなかったメンバーたちは、自然に店内備え付けのテレビをつけることになる。
テレビはどのチャンネルも、都心で起きた爆発事故のために特別体勢でニュースを報じていた。

「うわ、ひどい…」

画面越しに飛び込んできた惨状に、思わず亜佑美がそう口にする。
瓦礫に埋もれた、事故現場。多くの血まみれの人々が、そこに倒れていた。

再び、カメラがテレビスタジオに戻る。
状況から不慮の事故の可能性は薄いことが、司会者から説明された。
コメンテーターが、最近不穏な動きを見せる近隣国のテロリストの仕業ではないかと発言する。また、犯罪評論家として名を売っ
ている別の男性が、不景気を理由にして鬱屈した人格の人間による単独犯なのではないかと断じた。
516名無し募集中。。。:2013/06/07(金) 00:28:55.78 0
「いったい、誰がこんなことを」

春菜が、顔を青くしてそんなことを呟く。
リゾナンターとなってから、いや、能力が発現してから。多くの悪意に触れてきたつもりだった。しかしその経験を辿ってみて
も、ここまでのひどい行為を彼女は知らなかった。

「くそ!犯人がわかってたら衣梨がこの手でとっちめるのに!!」

怒りに任せ、衣梨奈がテーブルを叩く。
ただ、現場に行き残留思念を探るならまだしも、画面越しでは到底犯人の目星などつくはずもなく。聖だけではない。他の三人
も、現場に駆けつけたいのは一緒だった。

しかし、彼女たちは常にダークネスという巨大な組織に付け狙われている。
この時間は学校に通っている年少組が、もし組織の人間に狙い撃ちされたら。その危険性を考えると、学校からほど近いこの喫
茶店で待機するのは最善の策と言えた。

亜佑美の携帯が、鳴る。
画面を見てみると、遥からだった。
手に取るや否や、特有の塩辛い声が響き渡る。

「大変!大変なんだよあゆみん!!」
「え、ちょっと、どうしたのくどぅー」

あまりのことに面食らう亜佑美だが、切迫した遥の声が衝撃の事実を告げた。

「まーちゃんが、まーちゃんが攫われたんだよ!!!」
517名無し募集中。。。:2013/06/07(金) 00:29:46.53 0


ここは、喫茶リゾナントからほど近い中学校。
リゾナンターの中学生組である里保、香音、優樹、遥は一緒にこの中学校に通っていた。

「さーやしっ!」
「あひゃあ!?」

放課後の教室。
掃除当番だった里保の背後から抱きつくクラスメイトの女子。
本来ならばこの程度の襲撃、気配を感じた時に手にした箒で撃退できるのだが、そんなことを学校という平和な空間で披露する
わけにはいかない。
結果、甘んじて背後を取られさらにくすぐられたりしてしまうわけだ。

「もう、集中して掃除できないよ」
「何堅いこと言ってんの。おっ鞘師いい匂い」
「やめてよー!」

さすがに匂いまで嗅がれるわけにはいかない。
一度、冗談で学校でこんなことされてるんです、とリゾナントで話題にした時のこと。「そんなはしたないこと、やっちゃダメ
!」と言いつつ、凄く羨ましそうにしていたさゆみの顔は忘れたくても忘れられない。

「そう言えばさ。あの後輩の子、今日は来ないの?二人組の片割れ」
「まーちゃんのこと?」
「そうそう。いつもだったら『さやしすーん!』とか言って教室に入ってくるのに。面白い子だよね、あの子」

面白いだけならいいんだけどねえ。と里保はひとりごちる。
リゾナンターいちの「問題児」。その面倒を見ることを強いられている二人組のもう一人、遥の心労たるや。

にしても、いつもの光景が見られないのは違和感がある。と言うより。
何か、嫌な予感がする。
里保は自らに去来する胸騒ぎを抑えられずにいた。
518名無し募集中。。。:2013/06/07(金) 00:31:00.06 0


時は少々遡る。
遥のいるクラスより早めに授業が終わった、優樹のクラス。
まるでロケット装置でもついているかのように、優樹は教室を飛び出す。

たなさたん、たなさたん♪

今日はれいなは仕事も特になく、久々に夕方から店のキッチンに立つという。
それを聞いた優樹は自らもれいなの手伝いを買って出た。
早く、喫茶店に行きたい。そのためには、優樹以外の三人ととっとと中学校を出なければならない。下校する時は四人で集団下
校。本来なら一人でまっすぐ喫茶店に向かいたいところだけれど、リーダーの厳命とあらば致し方ない。

となれば、三人の教室に立ち寄って下校を促すのがてっとり早い。
優樹の心は既にここににあらず、喫茶店に向いてしまっていた。

上級生の教室へと続く、廊下。
今は授業中、遮るものは誰も居ない。はずだった。
廊下を駆け抜ける優樹の前に現れた、派手な格好の女性。極彩色に彩られたきらきらとしたそれは、まさにステージ衣装。

「あれ、テレビで見たことある人だ」

優樹が女性に向かって指を指す。
日本に住んでいて、その姿を見たことが無い人間はいない。それほどまでに圧倒的な知名度を誇る、スーパーアイドル。

「えーと、何だっけ名前。そうだ、ばつうらあやさん!」
「微妙に違うんだけど、まいっか。お嬢ちゃんさあ、あたしにちょっと付き合ってくんないかな」

さっきまで決して絶やさなかった笑みが、消えた。
この人、怖い。
本能で優樹はそう感じる。けれど、それはあまりにも遅すぎた。
519名無し募集中。。。:2013/06/07(金) 00:32:07.45 0


「時の皇帝、タカーシャイ・ハヨシネマは騎士団を率い、勇敢に戦った。これが201年の出来事な。『ニオイが嫌なの』の語
呂合わせで覚えるように」

歴史の授業。
多くの生徒たちが真面目に授業を聞いている中、机に顔を伏せている少年の頭のようなショートカットが、一人。
工藤遥は、完全に眠りの世界に落ちかけていた。
歴史など兄を救うために敵の本拠地に乗り込んだ海賊の話だけで十分、寝る子は育つのだ。頭の中で狸みたいな鹿が一匹、二匹
と横切り始めたその時だった。

・・・まーちゃん?

リゾナンターたちは、互いに共鳴しあう。思念に関しても、また然り。
ここは大勢の人間が集う学校であり、心の叫びがダイレクトに届くような場所ではない。しかし遥は優樹の助けを求めるかすか
な声を、聞いた。

「せっ、先生!はる、トイレに行きたいですっ!」
「しょうがないなあ、漏らすなよ?」

先生の軽口に生徒からの笑いが起こる。
遥はデリカシーのないじっちゃんをひと睨み、脱兎のごとく教室を出て行った。

声が聞こえた方向に、「千里眼」を発動させる。
壁の向こう、校庭の先。真向かいの民家の屋根を、軽快な動きで飛び移り移動する女の姿が見えた。脇に抱えている少女は、間違
いなく優樹。
520名無し募集中。。。:2013/06/07(金) 00:33:00.43 0
「まーちゃん!ちくしょう、あいつ!!」

女が何者か。何のために優樹を攫ったのか。
わからないが、阻止すべきことには変わらない。ただ、今から校舎を出て到底間に合う距離ではない。見えるのに、何もできない。
そんなもどかしい思いを汲むものがいた。

「くどぅー、方向はこっちでいいの?」
「鞘師さん、鈴木さん!!」

異変に気づき、駆けつけた二人の先輩。
里保は香音に目配せし、それから壁に向かって走り出した。
香音の「透過能力」により、里保は壁をすり抜けて校舎の外へと大きくジャンプする。

「え、嘘だろ…」

遥が絶句するのも無理はない。
壁の向こうは確かに外だが、ここは校舎の3階。飛び降りて無事で済む高さではない。しかし里保は弧を描くように綺麗に着地し、
人攫いの女を追いかける。

「ほらくどぅー、あたしたちも追うよ。もちろん階段を降りてね」
「は、はいっ!」

香音に促され、遥は慌てて階段に向かって駆け出した。
521名無し募集中。。。:2013/06/07(金) 00:35:15.98 0
>>513-520
以上
転載完了
522名無し募集中。。。:2013/06/07(金) 02:25:20.65 O
>>521
更新代理乙です
展開はシリアスですがさりげなく入れられてる小ネタも気になりますw
523名無し募集中。。。:2013/06/07(金) 07:27:13.95 0
あげなんと
524名無し募集中。。。:2013/06/07(金) 10:29:27.41 O
さらにあげ
525名無し募集中。。。:2013/06/07(金) 12:07:29.44 0
>>521
乙です
闇の方もいろんな思惑がありそうで展開が読めませんな
赤の粛清vs水軍流に期待
526名無し募集中。。。:2013/06/07(金) 14:02:38.70 O
昼あげ
527名無し募集中。。。:2013/06/07(金) 16:03:03.42 O
また規制だ
528名無し募集中。。。:2013/06/07(金) 17:14:21.52 O
シャイ娘。からマーサー王まで幅広いのう
529名無し募集中。。。:2013/06/07(金) 18:40:39.83 0
夕方
530名無し募集中。。。:2013/06/07(金) 20:44:02.79 O
緊急浮上
531名無し募集中。。。:2013/06/07(金) 21:49:45.94 0
ねむねむ
532名無し募集中。。。:2013/06/07(金) 22:18:02.58 O
はやっ!
533名無し募集中。。。:2013/06/07(金) 23:26:08.13 O
おやすみ前のあげあげ
534名無し募集中。。。:2013/06/08(土) 00:49:23.91 0
天下統一
535名無し募集中。。。:2013/06/08(土) 03:10:54.09 O
おやすみなさやし
536名無し募集中。。。:2013/06/08(土) 06:11:03.84 0
ヤシ
537名無し募集中。。。:2013/06/08(土) 08:53:48.09 0
ヤシ
538名無し募集中。。。:2013/06/08(土) 10:14:08.79 0
 ―― ―― ―

人間と異能者の間には、深くて広い溝がある。
その溝に橋を架ける事はできるかもしれないが、あまりにも脆い。
異能者にとってこの世界は、生きるためだけに生きることのできる世界ではない。
目的が無ければ生きてはいけない、という訳でもないが、重要な部分でもある。
生かすも殺すも、自分で考えなければいけない。
考えなければ、生きていけなかった。

異能者はどこかで人間を嫌わなければいけない、という節がある。
好きでも、自分とは違うからと線を引く。
同じ人間のはずなのに。

そんな二つの存在に共通するものがあるとすれば、覚悟。

命を失くす覚悟。
一時の勢いで生まれただけの覚悟であっても、それがどんなに
難しいものかを理解することが出来る。
異能に対峙する人間はある意味で恐ろしい。

特に子供の異能者。
命を危機に晒され続ける人生を歩んできたわけでもない。
ごくごく普通の生活を送ってきたであろう少女達。
普通に学校に行って、部活などをして、それなりの学校生活を
謳歌していた彼女達の日常の歯車を狂わせるきっかけ。
539名無し募集中。。。:2013/06/08(土) 10:15:30.47 0
人間界での葛藤もあっただろうが、その中で異能者という存在を知り
出逢い、そして触れあってきた事による、理解。

信じてきたことも何度かあったが、それと同じくらいの裏切りもある。
その裏切りを絆として抱いている者はあまりにも救えない。

 「正直、あたしのところに来るなんて思ってなかったです」
 「それほど私も、なりふり構ってられなくなっちゃったって事よ」
 「あたしは自分で決めたんです、それは後悔してないですよ」
 「うん、分かってる。咎める理由もないよ、だからあんたを行かせた」

久住小春がリゾナンターを離反したのは、高橋愛が
失踪してから約半年後のこと。
光井愛佳と行動を共にしていたが、i914と遭遇した事によって
全てを理解した上で、自ら離れることを決意した。

その後は安倍なつみに拾われるように【ダークネス】の組織へ。
リゾナンターのメンバーとの間には溝が生まれてしまったが
久住本人は、何も言わなかったし、何もしなかった。
皮肉を言う者もいたが、久住は気にも留めず、それから半年が経過する。

 「あんたはまだあっちでの生活だって出来る。
 リゾナンターが何でできたのかが分かってる今、小春は
 もうこの世界に居なくてもいい、だけど狙われてるのは変わらないからね」
 「…何が言いたいんですか?」
540名無し募集中。。。:2013/06/08(土) 10:16:38.14 0
i914によってダークネスを打ち倒され、組織が壊滅してからは
安倍や飯田と共に別の場所へと隠れ住んでいた。

芸能界での「月島きらり」も失踪中という扱いでメディアにも
報道され続けている上に、両親からも警察への捜索届が提出されている。
だが今i914の問題が片づかなければ、彼女は日陰者としての
日常を送り続けるしかない。

 「あんたはいろいろと手間がかかったけど、あたし達以外を
 巻き込もうとしたことは一度も無かった。
 だから皆、内心では分かってるのよ。事実を知った今、小春の行動はむしろ正しい」
 「…まさか、安倍さんに?」
 「あの人はただ、見守ってくれるだけ。小春も選べるのよ。
 だけど私にはこれ以上のことは言えない。
 それはあんたの為にならない。あんたの思うことじゃない。
 だから選んで、小春、私に、協力してくれるか、どうか」

久住小春はもうリゾナンターではない。
ただ、光井愛佳には離反するときに一度だけ、声をかけた。
その表情は久住を責めるわけでもなく、安心したようでもない。
ただ、見ていた、自分を。久住小春を見ていた。

新垣里沙は裏切り者だった。
リゾナンターという道具を使って人を蒐集し
エネルギーの媒体として利用されていた事実。
自分のためというのは偽善だった。
ただ"共鳴"のチカラによって高め、強化された異能だけが必要だった。
541名無し募集中。。。:2013/06/08(土) 10:17:42.57 0
【ダークネス】の目的。シナリオ。
全てにおいて許さない。許さないのに。

 「あたしは協力しない。だけど、このままじゃ自由になれない。
 だから小春は、小春のために動く。
 光でも闇でも、あたしはあたしのままで居続けてやるんだ」

イメージなど関係無い。認識なんてものは自分の目で十分。
見守るなんて真っ平ごめんだ。
信じるも信じないも、全て自分で決めて来たように。

 「…分かった。でも、私達がこれからやる事と、場所だけ教えておくわ。
 きっとあの子も追いかけてくるだろうから」
 「新垣さん」

久住に名前を呼ばれて、新垣は思わず顔を見る。血のような燐光。

 「あたしは、きっと殺せますよ。あの人を、殺せる」
 「分かってる。分かってるよ、小春。私もきっと、そうするだろうから」
 「うそつきですね」
 「そうだね、私はずっと欺き続けて来た。
 けど、やっぱり私も、私のために動いていたい、これは嘘じゃないよ。
 もう隠す必要も、ないしね」

携帯電話が鳴る。表示をみて、新垣の表情がいっそう険しくなった。
それは絆が覚悟へ、変わる瞬間。
542名無し募集中。。。:2013/06/08(土) 10:18:47.28 0
>>538-541
『異能力 -Invitation to the jaws of death-』
以上です。

最近は哲学やSFに対しても厨二病と罵る発言が増えてて悲しい。

--------------------------------------------------------ここまで転載
543名無し募集中。。。:2013/06/08(土) 13:01:47.53 O
読む前ほ
544名無し募集中。。。:2013/06/08(土) 15:39:19.94 0
>>542
更新転載お疲れさまです
パズルの断片が埋まっていくというか止まっていた時計の針が動き始めた感がありますな
545名無し募集中。。。:2013/06/08(土) 18:04:06.27 O
静かな夜
546名無し募集中。。。:2013/06/08(土) 19:27:42.24 0
今夜は投稿ラッシュ来るか
547名無し募集中。。。:2013/06/08(土) 19:55:25.36 O
規制がネックなのさ
548名無し募集中。。。:2013/06/08(土) 21:04:18.25 O
549名無し募集中。。。:2013/06/08(土) 22:29:16.41 0
支援あげ
550名無し募集中。。。:2013/06/09(日) 00:03:18.68 O
明日から本気だすからのあげ
551名無し募集中。。。:2013/06/09(日) 01:36:52.72 O
おやすみずき
552名無し募集中。。。:2013/06/09(日) 05:42:28.38 0
作品ラッシュやなあ
553名無し募集中。。。:2013/06/09(日) 09:05:35.36 O
おは
554名無し募集中。。。:2013/06/09(日) 11:07:45.02 0
昼前保
555名無し募集中。。。:2013/06/09(日) 12:25:42.10 O
お昼ご飯何食べてるんだろ
556名無し募集中。。。:2013/06/09(日) 14:31:42.43 O
暑い昼
557名無し募集中。。。:2013/06/09(日) 16:15:10.21 O
あげ
558名無し募集中。。。:2013/06/09(日) 18:21:55.58 0
夕方
559名無し募集中。。。:2013/06/09(日) 20:02:53.10 0
あげとく
560名無し募集中。。。:2013/06/09(日) 21:20:14.30 0
あげ
561名無し募集中。。。:2013/06/09(日) 22:31:48.42 0
ダークネスが集結したようですな
562名無し募集中。。。:2013/06/10(月) 00:00:11.43 0
詐術師の危機をどう救うかの会議ですかなw
563名無し募集中。。。:2013/06/10(月) 00:00:47.51 I
待つ保ミジメックス
564名無し募集中。。。:2013/06/10(月) 00:01:55.71 0
>>562
幹部解任決議だと思うわw
565名無し募集中。。。:2013/06/10(月) 01:54:16.71 0
おやすみ
566名無し募集中。。。:2013/06/10(月) 03:09:41.40 O
解任されたら鉄砲玉として飛ばされるな
567名無し募集中。。。:2013/06/10(月) 05:48:24.60 0
568名無し募集中。。。:2013/06/10(月) 05:49:13.13 0
譜久村聖と出会ったのは、亀井絵里が眠ってからだった。
とある経緯で譜久村と亀井が接触し、亀井が負傷の末に眠りにつき、それによって
もうかれこれ1年が経ち、道重さゆみは『リゾナンター』のリーダーになっていた。

譜久村は多く語らなかったが、自分の事や、亀井が助けてくれたことを
微かな声で説明してくれたのは覚えている。
謝罪の言葉もあった。
だがそれに対して道重は、責めることは出来なかった。
責めたところで現実は変わらない。
どこかで変えようと思っても、もう出てしまった結果は変えられない。

変えられない、代えられない。

亀井が居ないという現実、在るのに、有ると思えない。
空虚。なんて切なく、悲しく、寂しい。
ジュンジュンやリンリンが故郷へ帰ってしまった時も悲しかったが
それ以上になにか、心の底が欠けたようで。

譜久村は道重のことを尊敬してくれている。
尊敬の眼差しを受けていると、心の何処かで微かな違和感を覚えた。
落ちてしまった欠片が、小さく、割れる。

 「やー久し振りだねえ、焼肉なんてさ」
 「愛ちゃんのご飯も良いけど、やっぱりたまにはこういう油っぽさも大事だと思うの」
 「ま、日々の頑張りによるごほーびですよ?」
569名無し募集中。。。:2013/06/10(月) 05:49:57.95 0
その出来事がある前、亀井がまだ元気だった頃に二人で焼肉屋へ向かった記憶。
その店は食べたい肉を自分でとってくるビュッフェ方式であり、九十分以内なら
とる肉の量に制限が無い。
それを良い事に、二人は大量の肉を盛っていた。
種類はそれなりに考えたが、一度皿に持ってしまえば、それを残すことは
マナー違反となって追加料金を取られる。シビアな世界だ。

葱タン塩を食べている彼女が言葉を呟く。
彼女は食事制限もそれなりにある為、こうしたものは控えるようにと
念を押されている、だから数ヶ月に一度、というペースを約束していた。
もちろんその反動は大きい。

道重も網の上で何度もひっくり返してから、タンにネギを載せてレモンを
かけて、ご飯と一緒に食べる。
カルビをサンチュに巻いてみたりもしながら、一口ごとにしっかりと噛んで。

二人は食べ続け、最終的には全部平らげてしまった。
顔をつき合せて焼き肉を食べるという色気も何もない状況ではあるが
好きな人と食事をして、会話をして、というのはとても楽しい。

 「ん、このアイス美味しー」
 「デザート食べるとなんか、シメって感じがするよね」
 
嬉しいのも、落ち込むのも、悩むのも、それによって自分の心が
揺れ動くたびに、その思いが大切になっていく。
この思いがいつか終わる時が来たとしても、それでも道重は断言できた。

 なんて、幸せなんだろう。
570名無し募集中。。。:2013/06/10(月) 05:50:44.16 0
食欲が満たされているからなのか、それとも亀井との会話と久し振りの
外食に心が躍っているからなのかは定かではない。
だが、楽しい。全てにおいてこの瞬間は、幸せだったのだ。

 「うへへ、さゆ、また食べに来ようね。今度はお酒も飲めたらいいな」
 「うん、楽しみにしてる」

今の自分は、どこにでもありふれた幸せを思っている。
それは普通の女の子と対して変わらない。
"今"が大切だと痛感する。

 ――― その幸せの先にあるモノを、道重は遠くない未来に知った。

それは知りたかった事実であり、知らなければいけない事実であり
知らなければ良かった事実であり、そして知りたくない事実だった。

―― ―― ―

夢を、見ていた。
亀井絵里と焼き肉を食べる夢。

食べる夢というのは良いのか悪いのか分からないが、以前に
歯が抜ける夢を見た時は、起きた直後、恐ろしくて仕方が無かった。
縁起が良いと言われたが、二度と見たくない。
571名無し募集中。。。:2013/06/10(月) 05:53:03.76 0
しかし『夢を見ていた』と今認識している自分は、目を醒ましているのかもしれない。
起きているにしてはやけに意識がぼんやりしているし
寝ているわりにはずいぶんと客観的に物事を考えている。

 (…そうだ。私は…)

瞼がやけに重い。
目を開けるという単純なことが、すぐに出来ないなんて。
やはり自分は夢を見ているのだろう。
寝ているから、目を開けられないのだ。起きたい、と思っているのに。

 「う……」

呻き声が聞こえた。やけに掠れた、小さな声。
自分の声だという自覚はあるが、これは夢の中で発したのか、寝言か。

 (私、は…)

本当に目を覚ました、気がする。やはり今までのことは全て夢だったらしい。
夜なのか、視界は薄暗い。その暗い視界の中で、誰かが寝ている自分を
見下ろしているのが見えた。

 「やあ、おはようさゆ、といってももう夜なんだけどね」

すぐ近くから聞こえる女性の声、まだ目が暗闇に慣れないのか
しっかりとは見えないが、聞き覚えがあった。まるで笑っているようなその声を。
572名無し募集中。。。:2013/06/10(月) 05:54:20.25 0
>>568-571
『異能力 -Battlefield at the back of the chest-』
以上です。

スレ内でも雑談してくださいね。
過去の思い出話だったり、今のメンバーの事だったり。

--------------------------------------------ここまで転載
573名無し募集中。。。:2013/06/10(月) 08:09:48.58 0
>>572

夢と現実の狭間でさゆに声をかけたのはカメなのか
さゆみはどっち側にいるのか
最後の戦いに参加するのか
続き待ってます
574名無し募集中。。。:2013/06/10(月) 10:49:04.11 0
あげ
575名無し募集中。。。:2013/06/10(月) 12:24:55.28 0
>>572
更新転載乙です
各々の事情が出揃いつつあるのが最終決戦が近いことを物語ってるのかどうなのか
完結したら一から読み返してみないとなあ
576名無し募集中。。。:2013/06/10(月) 15:50:53.38 0
577名無し募集中。。。:2013/06/10(月) 17:39:28.46 O
完結したらまとめて読もうかな
578名無し募集中。。。:2013/06/10(月) 19:45:22.16 0
あげなんと
579名無し募集中。。。:2013/06/10(月) 20:09:44.29 I
>>572 雑談ってことで
オリメン9人は高校生以上だったけど今は中学生もいると。そのメンバーで命を賭けたバトルはいくらかもの悲しさを感じる
580名無し募集中。。。:2013/06/10(月) 21:35:45.06 O
便乗して…

作品によって違うかもしれないけど常に死と隣り合わせなんだよな
だから切なくて美しいんだけど
581名無し募集中。。。:2013/06/10(月) 22:56:01.85 O
だから日常のエピソードとかも重要
582名無し募集中。。。:2013/06/10(月) 23:22:08.44 O
>>572
やはり今の段階では910期メンにリゾオリメンの重苦を背負わせるのは難しいですよね
描写としては二つの世代の断絶をいかに埋めていくかにかかっているのではと思います
583名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 01:36:11.90 0
あげ
584名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 03:36:08.60 I
なん
585名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 05:09:20.12 O
586名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 07:29:03.67 0
新しい朝
587名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 09:22:52.95 O
おはなんと
588名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 10:47:05.96 0
>>513-520 の続きです


喫茶リゾナント。
優樹が攫われたと亜佑美に一報を入れた遥だが、攫った人物を追うとしてそのまま電話を切ってしまった。
それと同時に爆発事故の現場を報じていたテレビの画面が、ふっと暗くなる。
次の瞬間にテレビが映し出したのは、煌びやかな衣装を身に纏ったアイドルが歌い踊る姿だった。

「ちょっと、誰ですか!?テレビのチャンネル変えたの!」

しかもこんな時にアイドルの番組だなんて。
亜佑美は先輩である聖を反射的に見てしまう。が、聖は自分ではないと言いたげに首を大きく横に振った。

「この人、松浦亜弥やん」

聖と同じくアイドル好きな衣梨奈が、言う。
チャンネルを変えたのはこっちのKYか。と思いきやそうではなさそうだ。いや、それ以前に。

「おかしいです。どこのテレビ局も爆発事故を報じているはずなのに」

そう言う春菜の指摘は、正しかった。
ついさっきまで、ザッピングしながら他の報道番組を見ていたばかり。いつもは重大な事件が起きているのにアニメを放送している
あの局ですら、特別報道番組に切り替えていたはず。

「それにこの時間はこんな歌番組、やってません」

きっぱりと言い切る春菜。
すると、画面の中でおかしなことが起こる。それまで歌い踊っていた松浦亜弥が、カメラにゆっくり近づき、そしてまるで画面を隔て
たこちら側に向かって話しかけてくるような態度を取ったのだ。
589名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 10:47:46.43 0
「いやいや、鋭いね。そう、これは喫茶リゾナントだけで見ることができる特別番組」

カメラにアップで映るその顔は、既に国民的アイドルのそれではなかった。
まるで月が雲に隠れるかのように、表情の闇が増してゆく。

「はじめまして。芸能人『松浦亜弥』は世を忍ぶ仮の姿」

ぱちん、と指を鳴らす。
きらきらした衣装は、瞬く間に処刑人のローブへと姿を変えた。
手に持つ桃色の刃を携えた大鎌は、死神のそれによく似ている。

「あたしはダークネスの粛清人、『赤の粛清』」

テレビを見ている全員の背筋に、寒気が走る。
先輩の話でしか聞いた事のなかったダークネスの幹部が、ついに姿を現したのだ。

「まず説明します。あなたたちの仲間を攫った人物は、あたしです」

カメラが、「赤の粛清」がいる場所の背後に焦点を合わせる。
柱に縛られ、ぐったりしている少女は。

「まーちゃん!!」
「そのとおり。ま、気を失ってるだけだからそういきり立たないの」

まるで、こちら側の様子が見えているかのように。
優樹が捉われの身となっている事実に憤る四人を窘める、「赤の粛清」。

「で、ここからが本題ね。これから、あなたたちは道重さゆみと田中れいなを除いた7人で、あたしが待つ
この撮影スタジオに来て貰います」

にこりと笑みを見せつつ、そう説明する粛清人。
590名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 10:48:33.36 0
「どうして道重さんと田中さん以外で」
「明らかな罠です!!」

敵が提示した条件に疑問を持つ聖に、春菜が強く牽制する。
だが、次に「赤の粛清」が取った行動により選択肢は消滅した。

画面に向け、翳した大鎌の刃。
桃色の刃が、まだらに光る。何かが、滴り落ちている。
刃の上には、毛の生えたボールのような物体が、数個。よく見ると。
それは見知らぬ中年たちの生首だった。

「安心して。スタジオの責任者のおじさんたちはもう口が利けません。堂々とスタジオに乗り込んできてく
ださい。でも、あたしの誘いを断わったり、先輩たちにこのことを知らせた場合」

「赤の粛清」が、鎌を背後の優樹に向ける。
勢いで生首が転げ落ち、バウンドしながら床に赤い染みを作った。

「生首がひとつ、増えることになるけどね」

その台詞が、最後まで語られることはなかった。
衣梨奈が、手にしたピアノ線をテレビに巻きつけ粉々に破壊したからだ。

「行こう、聖」
「うん」

衣梨奈の呼びかけに聖が、力強く頷く。
最早一刻の猶予も無い。罠だろうが、何だろうが、手をこまねいていては優樹の命が危ない。
591名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 10:49:05.05 0
「道重さんや田中さんには…」
「優樹ちゃんのことを考えるとそれはできないよ。大丈夫、優樹ちゃんを助けたら逃げればいい」

春菜の提案を、やんわりと否定する聖。
相手はダークネスの幹部だ。普通に考えればとてもではないが太刀打ちできる相手ではない。
ただ、相手の虚を突きその隙に場を離脱することくらいなら可能なはず。

さゆみ、れいなに続き聖はリゾナンターでも三番目の年長者になっていた。
状況を考え、最善の手を打つという考え方は、新しいリゾナンターたちのまとめ役である彼女の中にも育ち
つつあった。

ただ、それでもやはり聖の考えは甘かったと言わざるを得ない。
592名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 10:49:41.07 0



まるで忍者漫画に出てくる忍者のようだ。
人攫いは民家の屋根を飛び、電信柱を足場にして、さらにマンションの屋上へと飛び上がる。
しかし、追いかける里保もまた、「水軍流」によって鍛えられていた。故郷の切り立った崖や谷に比べれば、
都会のコンクリートジャングルなど比ではない。

追跡していた赤いスカーフが、大きな建物に入る。
建物の玄関に降り立った里保はそこが、テレビ撮影に使用されているスタジオらしき場所であることに気づく。

誰か人がいるかもしれない。

しかし、躊躇している時間はない。
里保は息を大きく吸い込み、それから意を決してスタジオの中に乗り込んでいった。

実に奇妙だった。
受付、建物の中。まるで人の気配がしない。そもそも、こういった類の場所の玄関ににいそうな警備員すら見当たらなかった。
既に敵の手がこの建物に伸びている、と考えるのが自然。とすればこれから先どんな罠が張られているかわからない。
里保は自戒の念を込め、ゆっくりと探るように建物の内部に入ってゆく。

「こっちだよ」

不意に、声が聞こえてくる。
第五スタジオ、と書かれたスタジオの入口が開放されていた。
周囲に最大限の注意を払いつつ中に入ると、声の主が大鎌を立てかけて待っていた。

「あたしの足について来れるなんて。なかなかやるじゃん」

頭上の照明に照らされているその顔に、里保は見覚えがあった。あのTVによく出ているアイドルか。
ただ、今はそんなことはどうでもいいことだ。
593名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 10:50:20.08 0
「まーちゃんは?」
「そういうのってさ、お約束でしょ」

言いつつ、大鎌の切っ先を里保に向けた。
力づくで聞けか、ならば望むところだ。
腰の刀の鍔にかけていた親指を弾き、ゆっくりと刀を抜いた。

「お、水軍流ってやつ?見せてよ」
「言われなくても!!」

両手に構えた愛刀「驟雨環奔」を片手に持ち替え、空いた手を懐に忍ばせる。
水の入ったペットボトルの封を切り、あふれ出した水でもう一本の刀を作り出した。

二刀流。
本来ならば里保の切り札である流法を真っ先に出した理由は、相手の得体の知れなさ。
誰にも気づかれずに、優樹に接触し、攫ったやり口。侮れない。
走りながら刀を交差させ、ぎりぎりまで溜めた力を相手の前で解放する。

「さすがリゾナンターの次期エース。けど、ダークネスの幹部を相手にちょっと舐めすぎなんじゃないの?」

交差した刀の先には、大鎌。
行き場のなくなった里保を、前蹴りで弾き飛ばした。
その威力を最小限に抑えるかのように、後ろに飛び、再び間合いを取る里保。

この人、ダークネス。それも、幹部って言ってた…

心臓が跳ね上がりそうになるのを、努めて冷静に抑える。
普通に考えれば、到底自分が相手になるような状況ではない。
ただ、そんなものは実際にやり合わないとわからない。能力の相性もあれば、戦略の有利不利もある。
名前で物怖じするなど、水軍流の名前に泥を塗る行為に他ならない。
594名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 10:50:59.85 0
再び、「赤の粛清」に正対する。
体を半身にし、「驟雨環奔」を持つ手を相手に向ける。俊敏さを優先した、水軍流剣術の構え。

「いいね、その表情。ぞくぞくするよ」
「いざ、参る!!」

里保が飛び出した。
「赤の粛清」が、向かってくる相手の首を薙ごうとその凶刃を振り上げる。
勝負は一瞬。鎌の軌跡が自らに届くより前に、相手を斬らなければならない。

桃色の刃が、弧を描く。
その軌跡上を、里保が駆け抜けた。

「ぐあああああっ!!!!!」

叫び声とともに、得物を取り落とす音。
斬られたのは、「赤の粛清」だった。
胸を十字に斬られ、鮮血が赤いスカーフをさらに赤く染め上げる。

あっけない結末。
相手の奢りがあったからか。それとも里保の実力が上回るほどに成長していたのか。

「くっ…舐めてたのは、あたしのほうだったか」

大鎌を拾いあげ、息も絶え絶えに「赤の粛清」が言う。
その表情にはもう、余裕はない。

必死の形相で襲いかかる粛清人。
鎌の持ち手を短くし、斬撃のストロークを短縮する。
だが里保もふた振りの刀を器用に使いこなし、凶刃を捌く。
左からの刃を「驟雨環奔」で弾き、返す刀をさらに水の刃で止める。
595名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 10:51:36.92 0
鎌の一撃をかわしながらも、里保の本能が必死に訴えかける、違和感。
何かがおかしい。
足元を掬う鎌の刃をジャンプで回避した時に、それは起こった。

「もう、いいよ。大体『わかった』」

「赤の粛清」が発した言葉ではなかった。
むしろ彼女自身、声の主を探そうと、スタジオの方々に首を向けていた。

「誰?出てきなよ!」

「赤の粛清」が睨みつけた先の空間が、歪む。
暗黒の虚、ゲートの出口から出てきたのは。

「だから言ったじゃん。大体わかったんだってば」

里保は目を疑う。
そこには、「赤の粛清」に寸分違わず同じ造形をした、「赤の粛清」がいた。

「あんた…クローン?」
「いいから。あんたの役目は終わったの。さっさと交代」
「クローンの分際で生意気な!!」

赤き粛清人の言葉は、そこでぷつりと途絶える。
いつの間にか首を攫われていた「赤の粛清」は、自分が何をされたかすらわからないまま、永遠に意識を失った。

「はい、ご苦労さん。て言うかあんたがクローンでしょうが」

目にも止まらぬ動きで、たった一撃で相手を死に至らしめた。
先ほどから里保を襲っていた違和感。今なら理由がわかる。
後からやってきた女性こそが、本物の「赤の粛清」であると。
596名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 10:52:45.34 0
>>588-595
『リゾナンターЯ(イア)』

以上転載
597名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 13:39:09.41 0
中学校組と喫茶店組どっちのが付くのが早いんだろう?
598名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 14:18:50.40 0
松浦さん一人で七人を相手するのか他の誰かも絡んでくるのか
今後の展開に期待ですな
599名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 14:58:49.09 0
まあしかしコンスタントに更新できるなあ
600名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 17:35:30.44 0
夕方
601名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 19:37:44.83 O
602名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 20:31:19.87 0
ヤシ
603名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 22:18:36.72 O
へるみー
604名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 22:47:56.78 I
>>346-351の続きです

投下開始↓
605名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 22:50:37.45 I
「これで全員、揃ったな」

あたしと粛清人Rと氷の魔女3人は、ダークネスの会議室に転送された

円形の卓を囲む様に、10人の幹部が席に着く

「急にすまんな。連絡した通り、行方不明だったg923が現れた。現在もi914と交戦中や。しかも、場所は住宅密集地に近いときた」

リーダーが場所を懸念するのも当然だろう
能力者の存在が世界に知られるには時期が早いからな

「……どうして今なのかしら」
「あの子の考える事は、よくわからないわ」

不戦の守護者≠ニ銀翼の天使≠ェ疑問を口にする
ダークネスを抜けた理由もわからないままだしな

「とにかく早急に対応しましょう」
「そうは言っても、何をどうするのさ?」

詐術師≠ヘともかく刹那の考察者≠ヘ事の重大さを理解している

「まさか……倒しに行くの?」
「えーっ!? 勘弁してくださいよー!」
「お前らに行けなんて誰も言わないっつーの」

粛清人Rも運び屋≠焜rビり過ぎだろう
氷の魔女の言葉に同意はするが

「ここはミラクル・ルーキーの出番ですね!」
「「「「「「「それはない」」」」」」」
606名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 22:51:51.44 I
実力は認めるが、お前1人でg923と渡り合えるとは思えない

「落ち着くんや。あたしらの目的は?」
「「「「「「「「「能力者の理想の世界を創る」」」」」」」」」

だが、その為の準備が足りない
だから、今の段階で能力者の存在を広めてはならないんだ

「i914はともかく、g923は周りを気にせず戦うやろ。相当な範囲に被害が出るはずや。あたしらの目的にも影響が出てしまう。さて、どうしたものか」

あの2人を止めるには、今のダークネスでは力不足だからな
あのi914でさえ、g923を止められるとも思えないが

「あんたの意見は? 傀儡師」

あたし自身に考えがあるとわかった上での質問だな

「僭越ながら。2人の戦いは止めなければならない。しかし、今のダークネスには止める戦力は無い。銀翼の天使ですら手こずるでしょう」
「だから、このミラクル・ルーキ
「黙って聴きな」
「今のあんたの目付きなら、g923も少しは怯むかもしれへんで、氷の魔女」

冗談はさておき

「内に無ければ、外で用意する」
「成る程ね。あの子達か」

刹那の考察者は理解が早い

「リゾナンター≠ぶつけるんか」
「そうです」
「バカじゃないの。あんなガキばっかになった集団が相手になる訳が無いじゃん。呼び名と一緒に脳みそも変えたんじゃないの」
607名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 22:53:36.15 I
あなたの脳みそよりはマシだと思いますよ
詐術師さん

「リゾナンターがg923を倒す必要は無い。最終的に止められれば良い」
「確かにそうや。具体的な作戦は?」
「まずはg923とi914を住宅密集地から離します」
「え? そんな事が出来るんですか?」

運び屋、考えてから発言しろよ

「お前の能力を使うんだよ」
「あ、なるほどー……って、えーっ!? g923と鉢合わせするじゃないですかー!?」
「我慢しろ」
「そんなー……」

今にも泣きそうな顔でこちらを見る運び屋

「気にせんでええから、続けてくれ」
「はい。住宅密集地から離すにしても、移動先が戦える場所でなくてはならない。そこでB.D.K.の使用許可を頂きたい」
「Bud-Dock-Can≠ナすって!」
「本気なの?」

騒ぎ出す幹部達

Bud-Dock-Canは、能力が開花していない者を修練する施設だ
能力が暴走しても、外部に影響が無い様に出来ている

「冗談にも程があるわよ、よっすぃー。一度ダークネスが解体した場所でなんて……」
「あの戦いでも耐えた施設だ。それに、無能力者に見られる心配もない。これ以上に最適な場所は他にありません」

そもそも選択肢が無いんだ
結果は
608名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 22:54:49.05 I
「ええやろ」
「「「「裕ちゃん!!!!」」」」

決まっているさ

「縁起が悪い気もするけど仕方ないやろ。決断が遅くなる程、戦いを見られる危険があるしな。英断やと思うで」
「ありがとうございます」
「作戦の指揮は傀儡師、あんたに任せる。幹部なり構成員なり好きにしてええよ。必要ならあたしも出るし」
「わかりました」

主に戦うのはリゾナンターだ
また工藤と接触するか
新しい情報があると良いが

その前に

「運び屋はB.D.K.に移動し、g923とi914を転送せよ」
「……はーい」
「刹那の考察者と詐術師も、B.D.K.に移動、別命あるまで待機してください」
「「了解」」

この2人のサポートは必要になるだろう

「他はここで待機。状況次第で順次転送します」
「「「「「了解」」」」」

さて
次は工藤だな

「運び屋、頼む」
609名無し募集中。。。:2013/06/11(火) 22:59:14.77 I
投下完了↑

>>605-608
『この地球の平和を本気で願ってるんだよ!』9



以下返信

>>355
最近も名作続きでとても肩身が狭いですが。

>>356
自分で驚いています。少しずつ首が絞まっていく様です。

>>357
未だでした。すみません進みません。

>>358
回答ありがとうございます。安心しました。リサーチ継続していきます。

>>359
テンプレ無視なので差異の説明をしていけるか不安です。

皆様いつもコメントありがとうございます。

>>保管庫様
更新毎にあらすじを書いて頂き感激しました。手間を掛けるに値する作品に成る様に頑張ります。
610名無し募集中。。。:2013/06/12(水) 00:32:17.09 0
あげ
611名無し募集中。。。:2013/06/12(水) 02:24:04.69 0
おやすみ
612名無し募集中。。。:2013/06/12(水) 02:46:42.99 O
ミラクルルーキーうざすぎるw
613名無し募集中。。。:2013/06/12(水) 07:51:47.30 0
浮上
614名無し募集中。。。:2013/06/12(水) 09:57:46.58 O
ほぜ
615名無し募集中。。。:2013/06/12(水) 10:05:23.08 0
>>609
乙です
傀儡師の視点がクールでかっけえです
この話の時点でのリゾナンターはどうやって最強決戦に関わってくるのやら
616名無し募集中。。。:2013/06/12(水) 12:45:20.64 O
ヒルナントデス
617名無し募集中。。。:2013/06/12(水) 13:38:03.69 0
>>609
ΧというかЯではリゾナンターサイドのミラクル・ルーキーがこっちの話ではダークネスサイドなのが面白い
起こり得る可能性の一つを垣間見た感じというかw
ミラクルさんの勇姿を拝める日は来るのかな
618名無し募集中。。。:2013/06/12(水) 13:38:20.53 0
刹那の考察者という二つ名は初出かな
619名無し募集中。。。:2013/06/12(水) 15:57:38.88 O
恐らくギラギラしたカメラ目線が得意なあの人でしょう>刹那の考察者
620名無し募集中。。。:2013/06/12(水) 18:15:58.08 0
夕方
621名無し募集中。。。:2013/06/12(水) 20:03:24.84 0
夜保
622名無し募集中。。。:2013/06/12(水) 21:56:40.15 0
あげ
623名無し募集中。。。:2013/06/12(水) 23:10:47.78 0
624名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 00:18:53.29 0
あげ
625名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 00:34:40.74 I
626名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 00:37:37.07 0
>>568-571の続き

 大多数の認識とは違って、世界は歪んでなどいない。
 ただ、人間の意思とはまったく関係なく荒れ狂う熱力学第二法則と
 混沌係数増加の法則があるだけである。
 我らは局所的に係数を減らす。それだけを愛と錯覚できるからだ。

―― ―― ―

科学者は人間ではない。
そう言ったのは誰だったかは忘れてしまったが、似た様な考えは彼女にもある。
理論とは、画家が使う絵の具の様なものだ。
いかに日々の研究を積み重ね、光沢の絵の具を作り出そうとも
どのような絵を描くかは其れを手にした者の自由だ。

そうして描かれた絵によって誰かの人生が変わったからと言って
責任の一端でも作った職人に求める事は出来ない。
ところが、そんな当たり前の理屈が人々には理解されないでいる。

科学技術を毛嫌いして自然回帰を訴える連中の中には、人類の歴史を引き合いに出し
有史以来多くの時代でその時々に生まれる最新の科学技術が戦争の為に
利用された事実を根拠として、科学技術を邪悪な物と主張する愚か者さえ存在する。

科学の理論。
自然界の法則はいかなる存在理由も無く、ただそこに「在る」物だ。
仮にその理論を最初に見つけた科学者が兵器としての利用を目指して研究を
積み重ねていたのだとしても、彼等が見出したその数式のどこかに
「この理論は人殺に行使する」と書かれていた訳ではない。

新たな技術を平和目的ではなく兵器として利用する事を選択したのは
最終的には世界であり、其処に生きる人間自身。
理論や、其れを生み出した科学者に責任を求めること自体が筋違いにも良い所だ。
627名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 00:38:19.26 0
「夢」や「ロマン」と言った俗物根性が抜けきらない人間ではあるものの
例えば自身の基礎理論が誰かの手で応用に応用を重ねて巡り続けた結果
新型の爆弾を生み出すきっかけになったとしても。
その爆弾で死んだ人々の墓に参ろうなどとは思わない。

齢二十歳を過ぎた女性に言わせれば
功罪の「罪」どころか「功」まで完全に突き抜けてしまうだろう。
彼女の研究を元にして生み出された画期的な脳外科治療術によって命を救われた
患者団体の表敬訪問を、あろう事か「スウィーツの時間なので」と一蹴した事がある。

 少なくとも彼女にとって、そういう代物なのだ、科学とは。

例え他人に無責任に罵られようと、自分の発見した理論の行く末。
その理論によって生み出される数多の罪など知った事ではなかった。
逸脱した人間。
世間の評価や大衆の声などには毛ほどの価値も見出しては居ない。

だが、人類の最先端に立つ科学者とはそうあるべきだと思う。
誰も知らない、全く未知の理論を発見すれば、それは良い結果だけを生まない。
相対する悪い結果は必ず現れる。

人類はそうやって発展してきた。
そしてこれからも、立ち止まっている時間など何処にも無い。
時間など止めて見せよう。幾らでも。

 だが、それを敢えて自身で拒んだ。
 絵の具職人の本分を踏み越えて、自らの力で美しい絵を描く事を望んだ。
628名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 00:38:57.17 0
世界の常識を塗り替え、全てを変える画期的な理論の創始者に成りたいと。
思えばそれは、科学者としての本能ではなかった。

 ――― 彼女の科学者になっての最大の不幸は、ただの人間だという事だった。

―― ―― ―

 「無理して喋んなくていいよ。貴方の"半分"が奪われてる状態なんだから。
 君達の共存は解離性なんてもので説明できる代物じゃない。
 なるほど、学者が異能者を"生き物"と捉えるなら、科学者は"現象"とも捉えれる。
 【言霊】による具現化がそれを証明してるんだ、不可能なわけがない。
 特にこの子達は共鳴者なのだから」

白衣の女性が何かを話していたが、道重は全てを思い返していた。
地面に叩きつけられる身体。
その前の刹那、飯窪が【粘液放出】で道重をカバーし、石田亜佑美が
【加速】で水の速度を弱めたのを視界に収めている。
だがそれでも二人は倒れ、道重も全身の痛みに苛まれた。

飯窪と石田に近寄ってきたi914が頭を掴んで何かをしていたが
そこで自分も力尽きた事で何が起こっていたかは分からない。
一つだけあるとすれば、止められなかった、という事実だけ。

幼い子供達を巻き込んでしまった罪悪感もある。
道重に協力してくれた少女達、何も関係のない8人を。
i914に一方的に攻撃された譜久村。
亀井が自分の命を賭けてまで救った彼女。
独りになった自分に尽くそうとしてくれた彼女を、守れなかった、事実。
629名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 00:39:36.00 0
 「人工的なんてものじゃない、人為的な一種の呪詛だよ。
 制約という言霊の下で抑えられてなければ、それは神域に値する。
 全く、君達は私の考えをことごとく突き破ってくれるねさゆ……さゆ?」

道重は全身打撲だけで済んでいた上に、【治癒能力】による
自然治癒によって既に完治しかけている。
彼女は静かに泣いていた。
紺野あさ美は慰める事はしない、彼女は掌で視界を隠して泣いている。

悲しんで生き続けていた道重。今はただ、泣かすだけ泣かすのが良い。
そう遠くない未来、道重には悲しい未来が待っている。繰り返される。
それが"共鳴"の制約だ。

 悲しみは強さを呼び、強さは繋がりを呼ぶ。

感情論の中で悲しみは喜びよりも継続性が高い。
世界において希望よりも絶望が多いように。
それがリゾナンターと呼ばれる所以、"共鳴者"はだからこそ強い。

 自身の命を削る強さ。

紺野が果たしたい願いは既に、世界へ還元されていた。
劣化コピーとしての自分には、とうてい到達することは出来ない領域だ。
だが。

 「…さゆ、亀井絵里を起こすことは可能だよ。そしてあなたの行動で
 この子達を救うこともできるわ」
630名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 00:40:24.29 0
道重は腕を上げて、紺野の顔をみつめた。
 
 「今からある人に連絡させる、その答えでやるべきことが決まるはずよ。
 起きなさい、そして、この子達を助けるために走りなさい、リーダー」

それはいつか、あの子に言ったことのある言葉だな、と思った。
道重の輝きが強まったのを見逃さない。
紺野は静かに口角を歪めて、笑った。

―― ―― ―

無慈悲な傷跡が君と私の街角に横たわっている。
だからといって、君の哀しみが癒されるわけでもない。
君の哀しみは、どこまでも君自身にしか属さない、属せない。
だからこそ私は哀しく、愛しいのだ。
631名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 00:41:52.59 0
>>626-630
『異能力 -Battlefield at the back of the chest-』
以上です。

なんて真面目な雑談なんだろう…w
便乗と言わずにわいわいしてくださいな。

>>580
やっぱり美少女戦士とか魔法少女のイメージが強いんじゃないですかね。
今の娘。も死と隣合わせではないですが、自分の肉体と精神を
削って活動してる訳ですし、その姿が被るのも理由の一つかなと。

>>582
断絶しなくても、当時のメンバーも織り交ぜてもいいんじゃない
かというのが個人的な意見です。だってリゾスレだもの。

--------------------------------------------------------------ここまで
632名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 02:11:15.13 0
おやすみ
633名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 06:53:19.97 0
お( `.∀´)
634名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 07:08:25.25 0
>>631
乙です
異能節ここに極まれりって感じでなかなか
635名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 08:25:07.57 0
おは

>>631
科学者である紺野の作品世界における存在意義が明確に形になっているような
ラスボスでも黒幕でもないこんこんというのも久しぶりかなあ
636名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 11:58:05.71 0
あげ
637名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 12:52:43.98 0
帰ってから読む
638名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 13:38:26.68 O
読む前ほぜん
639名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 16:30:00.33 0
夕保
640名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 19:46:04.75 0
冷やしうええおええ丼ちょうだい
641名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 20:04:10.47 I
油断できない
642名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 21:48:32.97 0
あげ
643名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 22:45:42.80 O
リゾナンターオリジナルメンバー(道重田中除く)と2011年以降の新メンバーの共演って難しいんだろうか
どちらかと言えば血なまぐさいイメージの前者に比べて後者の明るいイメージを合わせるのが難しいのかな
644名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 22:58:52.24 0
共演してる作品も多々あると思うけど?
645名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 23:09:31.43 O
あるにはあるけど凄惨な感じはあまりしないかな
646名無し募集中。。。:2013/06/13(木) 23:21:11.91 0
別に初期が凄惨だったわけでもないんじゃw
そういう作品自体避ける傾向にあったよ
647名無し募集中。。。:2013/06/14(金) 01:12:22.53 0
あげ
648名無し募集中。。。:2013/06/14(金) 01:35:28.23 O
おやす眠眠打破
649名無し募集中。。。:2013/06/14(金) 04:37:00.49 O
650名無し募集中。。。:2013/06/14(金) 07:41:11.50 0
安芸
651名無し募集中。。。:2013/06/14(金) 12:18:05.41 0
ほげ
652名無し募集中。。。:2013/06/14(金) 13:15:27.52 O
ホゼナンター
653名無し募集中。。。:2013/06/14(金) 15:40:04.15 0
あげ
654名無し募集中。。。:2013/06/14(金) 18:21:13.01 0
暑くてダレるわねえ
655名無し募集中。。。:2013/06/14(金) 19:49:21.10 0
暑すぎる
656名無し募集中。。。:2013/06/14(金) 21:16:11.96 0
凄惨といえば黒い羊
657名無し募集中。。。:2013/06/14(金) 22:13:40.38 0
上げておこうかしらね
658名無し募集中。。。:2013/06/14(金) 23:57:42.10 O
あついのでもうねる
659名無し募集中。。。:2013/06/15(土) 01:03:39.72 0
あげとく
660名無し募集中。。。:2013/06/15(土) 07:19:01.34 O
やば
661名無し募集中。。。:2013/06/15(土) 10:03:26.20 0
それは少女の過去。
未来よりも過去に悔いを残し、やり直したいと求めていた過去だ。
その方法や手段を持っていたが、それ以上のことは想わなかった過去。
神を否定し、未来を抱いてそれでもなお歩み続けようとする信念。

 だからこそ、少女は気付かない。誰も囁かない。
 その未来に希望があるかは、誰にも分からないからだ。

――― 毎日顔を突き合わせていれば、色々なことが起きる。
諍いだってよくあること。
それがすぐに治まることもあれば、長引くことも無論珍しくはない。

特に少女は母子家庭でもある。
その上、幼少時代の事件によって母親との折り合いは悪い。
だが世間体を考ると母親は娘である少女を放置することも出来ない。
そんな母親に対して、娘もまた悩みを抱えていたが、通っている学校
での出来事を含めると、少女の方があまりにも悲惨な状態だっただろう。

 「出て行って!」
 「出て行くわ!」

などと叫んで部屋を出た後に、外が大雨で雨具も財布も持っていない
事に気付くのは、よくある事では無かったが。
様々な要因と共に少女は家を飛び出したが、早々に後悔していた。

 (…………あーあ)
662名無し募集中。。。:2013/06/15(土) 10:04:09.97 0
少女は心の中だけで、大きくため息を吐いた。
口に出したところで、雨の音にかき消される。
屋根があるから雨はしのげるが、それでも時たま吹き込んでくる水滴は冷たい。
このままほとぼとりが冷めるまで立ち尽くしていたら、風邪をひいてしまいそうだ。
暦の上では既に夏とはいえ、梅雨の季節であるこの時期はまだ肌寒い。

 (もっと用意してから出てくれば良かった…)

戻って、着替え直して、傘と財布を持って出て行き直すというのも
馬鹿らしい話である。
たいていこんな喧嘩は、二、三時間ほど間をおけば済んでしまうものだ。
"普通の関係"なら。

 「そこで何しとお?」
 「あ、えっと、あ、雨宿りです」

そこはアパートの屋根であり、住人かもしれない女性が立っていた。
傘をさして買い物袋を持っているところを見ると、今帰ってきたばかりだろうか。
制服を着込んだまま、しかも夕刻を過ぎた時間に見知らぬ学生が
突っ立っていれば、誰もが怪訝な顔をする。

 「傘、持ってないと?」
 「あ、はい…くっ」

少女はくしゃみが出そうになるのを必死で堪える。
そんな彼女の心情を知ってか知らずか、女性は空を見上げた。
少女は濡れた地面が、ひどく寒々しく見える。
663名無し募集中。。。:2013/06/15(土) 10:05:00.86 0
 「天気予報だとまだまだ降るみたいやけん。
 もしかしたら雷も鳴るかもしれんね。…れな、部屋に戻るけん」
 「あ、はい、私もすぐに帰りますから…」
 「でも一人でおっても暇やけん、付き合いいよ」
 「はい?」

女性の言葉につられて、アパートの一室へとお邪魔する。
間取りは、玄関を開けた左に小さな台所、右に洗面所と
ユニットバス、ささやかな廊下の先には八畳の部屋とロフト。
そこには驚く要素など何も無い。

驚く要素としては、室内の物品だ。
テーブルの上に置いてある電話と数台の家庭用ゲーム機。
少し離れたところに置いてあるテレビと、小さな本棚と衣装ケース。
クッションが一つ、座椅子が一脚。
あとは部屋の隅に寄せてある漫画など。
一言で表すなら、とても殺風景な部屋だった。

 「そこら辺に座って、あ、座布団いる?」
 「あ、はい」
 「んー…ちょっと余りモンっちゃけど、これでも食べり」

そう言って女性が出してきたのは、スーパーで298円の袋詰め
で売っていたようなミカンを数個、テーブルに置いた。
女性が買いこんできた袋からは夕食だろうか、レトルトや惣菜やら
を取り出して、そういったものもテーブルへ乱雑に並べていく。
ふと、何か違和感を覚えた。
664名無し募集中。。。:2013/06/15(土) 10:05:57.20 0
 「あの、ここには一人で住んではるんですか?」
 「んーん、もう一人おるっちゃよ。って言っても、あんまり帰ってこんけどね。
 なのにさっき急に帰るって電話入ったっちゃん、こんな日に買いものに
 行きたくなかったんやけどねーま、しょうがないっちゃよ」
 「あの、私が居てもいいんですか?」
 「何が?」
 
少女の言いたいことが何となく分かったのか、女性は「あぁ」と呟く。

 「言うとくと、親じゃないよ。それにれなも勝手に住みついてるだけやけん」
 「…はい?」

女性が言うには、孤児院に住んでいるらしく、何かがあるとここの家主
を頼って、熱が冷めたら帰るということを何度かやっているらしい。
呆気ないほどシリアスな内容を挟んできたような気もするが、女性は
あまりそういった所を気にしない性格なのだろう。

そんな女性に対して、少女も、呟くように自分の経緯を話し始めた。
励ましてほしいからではない、ただ、誰かに聞いてほしかった。

女性、田中れいなは、少女、光井愛佳の言葉をただ聞いていた。
頭を撫でるでもなく、励ましの言葉をかけるでもなく。
それだけでも光井には有り難かった。

 彼女にはそれだけの友達も居なかったから。
665名無し募集中。。。:2013/06/15(土) 10:07:32.12 0
>>661-664
『異能力 -Afterglow of wing-』
以上です。

>>643
難しいと思うのは卒業したメンバーと現実で交流してる姿を
見てないから想像しづらいように感じる部分があるのかな、と。
当時のリゾスレもコミカルなものが多かったですよ。
リゾブルの世界観は書き手のイメージなので。

---------------------------------------------------ここまで転載
666名無し募集中。。。:2013/06/15(土) 11:28:20.65 O
読む前ほ
667名無し募集中。。。:2013/06/15(土) 13:51:14.80 0
また更新キテた嬉しい
668名無し募集中。。。:2013/06/15(土) 16:11:22.21 0
あげ
669名無し募集中。。。:2013/06/15(土) 17:52:14.37 0
670名無し募集中。。。:2013/06/15(土) 19:24:54.48 O
あげ
671名無し募集中。。。:2013/06/15(土) 21:08:50.03 0
672名無し募集中。。。:2013/06/15(土) 22:31:58.27 0
あげ
673名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 00:09:09.29 0
age
674名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 01:19:00.04 O
675名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 01:22:30.88 0
あげ
676名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 01:31:27.54 0
【教えてホゼナンター!】
『異能力』のように再開して欲しい未完の大作と言えば?
677名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 03:28:30.77 0
リホナンターヤシ
678名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 04:32:29.50 O
俺シリーズ
679名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 07:22:24.88 0
■■って完結してたっけ?
680名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 09:24:11.36 O
■■は完結してないね
681名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 09:46:11.70 0
長編というより自分の中にある世界を断片的に描いた感じだった■■
10期ではだーいしだけ出てるんだよな

再開して欲しいシリーズは……インフィニティーーーーーー
682名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 12:10:45.54 0
お昼
683名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 12:21:39.42 0
よそで見っけた

          ノハヽ☆
          (^〈_^*リ
  r:、_,.. -ー;;:-─-⊂  )、
  /~ {;;|   l;;;;`i  (__ノ  \
  ,.! l:}    ,l;;;;;;;;l       ヽo
 ‘ーz..__,.-,-;;l;;;;;;;;;l、__.,; .: /;:../'
     l;;;;;/"ヾ;;;;;;;} {;;;;;;/、;;;〔
     .,l;;:/   ゞ,,' ;:;;;/  ゞ;;/
684名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 12:30:35.12 0
何故ヤシがw俺■■■早速読んでみます。Jまー可愛い
685名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 14:58:03.44 O
タイトル忘れたけど悪夢のやつ読みたい
686名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 16:11:43.99 O
間賀時雄の奇妙な冒険の続きが読みたい
687名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 18:08:12.14 O
とりあえずあげるのだよ
688名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 19:51:01.93 0
>>681
またお前かよ
689名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 19:52:13.40 O
ごがくゆう観てきた
だーちゃんが「リオン!」言うのはアレだな
690名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 20:19:13.11 O
イリュージョナルビーストは能力で言うと何系になるんだろ
召喚?
691名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 20:29:25.59 O
具現化のような気もするし
692名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 20:41:35.76 0
>>689
『リオン』って狼(犬?)の名前だっけ?だとしたら、脚本家このスレ見てたのかな?

テンプには幻獣召喚(イリュージョナル・ビースト)って、なってるけど?
693名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 20:53:41.66 O
>>692
L・I・O・N リオン!
694名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 21:12:53.38 0
だーいしの「ドロシー」から連想した「リオン」だったんだよね■■のイリュージョナルビースト
695名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 21:58:39.40 0
>>676
未完の方が多い気がw
完結したのっていくつくらいあるんだろ
696名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 22:09:52.31 0
>>676
蒼の共鳴
697名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 23:11:39.63 0
闇棲が読みたいです
698名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 23:27:59.47 0
未完のものは大作とは言わん
699名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 00:37:33.46 0
>>696
『蒼の共鳴第二部』って完結してる?
700名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 04:33:19.70 O
してない
701名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 06:33:02.05 0
XOXOとか復活してほしい
702名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 10:04:10.39 0
あげ
703名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 10:41:06.07 0
大抵の作者は未完のシリーズ持ってるか
704名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 12:03:11.10 0
ノリo´ゥ`リ<みかんいきます!
705名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 12:28:15.39 0
作者たちはまだ遠くはてしない男坂をのぼりはじめたばかりだからよ・・・
706名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 13:38:41.16 O
車田先生と違って読者の熱い支持は得られてるからすぐにでも続編は書けるはず
707名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 14:33:25.91 0
少し前に某スレで出てきて何が元ネタだろうってググって知ったw
708名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 17:52:01.13 O
ほぜ
709名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 18:20:42.50 O
なん
710名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 20:13:42.47 0
とぅ
711名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 20:28:19.40 0
ホゼナンター推参!
712名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 21:40:51.20 0
あげ
713名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 22:03:56.86 0
新作きてますよー
714名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 22:10:03.40 0
作品名を挙げてもらえると素直に嬉しいです 保全代わりにどんどん挙げてくださいw

もう自分の作品なんて忘れられて需要がないかな? と思っている作者さんもいると思うので・・・

私は『Variable Blade』を待っています

そして私は大丈夫です・・・ 待っている人がいなくてもきっと書きます・・・ 明日から本気出すぜ!?
715名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 22:15:05.18 0
「あの、簡単にできそうなのってどれですか?」
 「えーと、魔法を使って敵を倒すのとか、天下統一とか
 全国争覇とか、正義の味方とか」
 「…全部勝ち負けが多いヤツですね」
 「盛り上がれるヤツが好きっちゃからね、あと簡単なヤツ」

沸いたお茶を茶碗に注ぎ、冷めるのを待ちながら光井は
棚にあったゲームソフトを選んでいた。
田中がゲームをしようと言ったからだったが、それにしては
どこか戦闘系が多い上に、光井はあまりゲームをした事が無い。

いくつか電源をつけてやってみたが、コントローラーの使い方が
分からないのを理解すると、二人はテレビ番組に専念することにした。
雨が降りしきる音、テレビが流す番組が、空々しく聞こえる空間。

 「なあ、愛佳」
 「はい?」
 「愛佳は今、寂しい?」

唐突な発言に、光井は目を丸くした。
どうして、と聞き返せなかったのは、何故だろうか。
その時に光井はどう返答したのだろう。

 田中はただ、「愛佳は優しいっちゃね」と笑っていた。

その出来事が過去になる頃に、二人はまた、再会する。
あの頃のような寂しい空間ではなく、人間らしい、温かい気配の中で。
716名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 22:16:16.12 0
―― ―― ―

鈴木香音との出会いはそれからの未来。
光井にとっては来てほしくなかった未来の中で生まれた少女だった。
久住小春が居なくなり、ジュンジュンが暴走し、リンリンと共に故郷へ
帰り去ってしまってからの未来。

光井が見る世界は全てが"結末"への軌跡。
それは結末を知るには十分な要素が詰み込まれていて、正直に言えば。

 あまりにも無慈悲。

欺くことも隠すことも出来ない、純粋な真実。
足掻くことを否定され、絶望ですら肯定する。

 「だけどこれには一つだけ欠点があるねん。
 『このチカラの保持者の"結末"は見えない』
 多分これが、新垣さんが言ってた制約なんやわ」

鈴木香音は光井愛佳が『リゾナンター』という組織に入っていた事を
知ると、自分も入りたいと志願した。
異能者である彼女が入ることを新垣里沙は承諾するだろう。
だが、光井自身はそれで良いのかと思っていた。

自分が触れ、感じ、想ってきたことを今度は鈴木が思い知ることになる。
それがリゾナンターだ。
全てが同じものではないにしても、自身が命を削るという事実に鈴木は
ちゃんと向き合う事が出来るだろうか。
717名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 22:17:28.97 0
 「あんたの"結末"が分かっても、それをあんたが受け止められるとは限らへん。
 あの時の私が決められへんかったように、だからどうしても
 耐えきれなくなったら、その時はすぐに逃げな。
 諦めるんやない、その時だけ、自分が生きる為に、逃げるんやで」

自己犠牲なのは自覚していた、少女だった自分。
それがどれだけ周りの人間に迷惑をかけていたか気付かなかった自分。
自分を大切にしてくれた人間に対する裏切りを行っていた自分。

久住小春は正しくなかったけれど、正しかったと思う。
【ダークネス】へと歩んでしまった彼女に対して呟く言葉が見つからなくて。
久住の後ろ姿に触れることも出来なかった。

 それから間もなくして、"あの人"が現れた。

リゾナンターのリーダーであり、突然の失踪を遂げたあの人。
あの人の"結末"を視てから、10ヶ月もの時間が経過していた。

 高橋愛と呼ばれたあの人は、両手を血に染めて、佇んでいた。

誰の血かは分からない。誰の命かは分からない。
ただ、誰かが死ぬかもしれないほどの致命傷を受けたのは解った。
高橋の足元に倒れ込むのは、倒れ込むのは…。

 「鈴木!あの子を助けて逃げるんや!亀井さんはうちが助ける!」
 「愛ちゃん、私、言いましたよね?死なないでって。
 なのに、なんで、"こうなってしまはったんですか"」
718名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 22:18:25.08 0
 「解ってたんじゃないの?高橋愛、いやi914が
 仲間を殺そうとする未来を、視てたんじゃないのかい?
 だから言ったんだろ死ぬなってさ」

 心を殺すなってさ

―― 氷の魔女の言葉が、心臓を貫く。
"予知夢"の残像が見せた光景が思い出されたその時
i914が無面のまま、自身の眼前に立っていた。

鈴木の叫び声が上がる。
光井は最後の力を振り絞るように、高橋愛に呟く。
血に染まった両手が、光井の顔を掴んだ。
温かくぬめった、人の、気配。喰らうのは黄金に煌めく瞳の鬼。

 「ごめんなさい、うちは、愛ちゃんを ――」

―― ―― ―
719名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 22:19:58.94 0
意識を失った譜久村聖を喫茶『リゾナント』まで抱きかかえてきたのは、鈴木だった。
身長差のある譜久村を背負うのは容易ではなかっただろうが
何かに気付いたように飛び出した鞘師と生田が【非物質化】を解いた鈴木の姿を
見つけ、途中から三人で店まで抱えてきた。

鈴木の言葉に田中と道重が飛び出し、倒れ伏す光井と亀井を発見。
すぐに救急車に運び込まれたが、二人の意識は既になかった。
亀井は吐血し、心臓へ重度の負担をかけ、光井は片足に重症を負って。
光井の母親と亀井の両親が駆けつけ、何があったかと問いただされたが
その瞬間、新垣里沙が、現れる。

 「さゆみん、私は、愛ちゃんを追うよ。
 だからリゾナンターをお願い、勝手なことだけど、ごめん」
 「待つっちゃんガキさん!なんで、愛佳が狙われたと?」
 「…あの子が最初に欲しかったのは、未来だった。
 そして仲間だった。ただ、それだけだったんだよ」

膨大な【精神干渉】の操作のあと、新垣里沙も、失踪した。
様々な記憶の改ざんの中で、田中れいなと道重さゆみは
残された"未来"の中で、生きるしかなかった。

誰かを救いたくて"未来"を肯定したかった光井愛佳。
そんな彼女がもう一つだけ、夢を見ていた。
田中れいなへの微かな想いだったのかもしれない。

それは絶望に彩られた、小さな欠片の夢だった。
720名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 22:24:41.27 0
>>715-719
『異能力 -Afterglow of wing-』
以上です。

ズラッと並べてもらうと、ほぼ未完に近いですね皆さん。
何人か作者さんの生存を確認してますが、お早い復帰を願ってます(微笑み
個人的にはXOXOお待ちしてます、インフィニティは言わずもがな。

*** *** *** 

以上代理投降。申し訳ありませんが>>718で冒頭の改行がペーストされず消えてしまいました。↓下記に訂正お願い致します。
721名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 22:27:05.21 0
 「解ってたんじゃないの?高橋愛、いやi914が
 仲間を殺そうとする未来を、視てたんじゃないのかい?
 だから言ったんだろ死ぬなってさ」

 心を殺すなってさ

―― 氷の魔女の言葉が、心臓を貫く。
"予知夢"の残像が見せた光景が思い出されたその時
i914が無面のまま、自身の眼前に立っていた。

鈴木の叫び声が上がる。
光井は最後の力を振り絞るように、高橋愛に呟く。
血に染まった両手が、光井の顔を掴んだ。
温かくぬめった、人の、気配。喰らうのは黄金に煌めく瞳の鬼。

 「ごめんなさい、うちは、愛ちゃんを ――」

―― ―― ―
722名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 22:30:03.74 0
あれ? ダメだ・・・ 今回は改行入れたのに反映されない・・・ 

冒頭に11行の空白があります すみませんが脳内補完お願い致します 作者さんごめんなさい
723名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 22:44:54.92 0
転載乙です
1行目にスペースを入れてから改行すれば空白行を作れます
2行目からはスペースを入れなくても大丈夫だったかと
724名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 22:45:27.28 0
 




ね?
725名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 22:46:50.85 0
 









なるほど
726名無し募集中。。。:2013/06/17(月) 23:10:59.11 0
転載お疲れ様です。愛佳と香音のからみって、意外とこのスレだと少ないかも?現実では香音があれだけ愛佳をリスペクトしてるのに。。。

>>714
作品楽しみにしていますw
727名無し募集中。。。:2013/06/18(火) 01:07:22.22 0
うええおええ
728名無し募集中。。。:2013/06/18(火) 05:19:12.80 0
とう
729名無し募集中。。。:2013/06/18(火) 06:16:15.16 0
>>720
更新転載共に乙です
元々「異能力」の世界に存在しなかった香音が愛佳という視線の担い手によって見事に融合したかなと
まだ語られていない部分が明らかになった時最後の戦いが始まるのか
730名無し募集中。。。:2013/06/18(火) 08:14:41.64 0
>>720

欠落した部分が埋まって前の話と繋がっていく様が壮観ですなあ
心を殺すなっていうのはカッコいい台詞だ
731名無し募集中。。。:2013/06/18(火) 11:55:17.30 0
お昼
732名無し募集中。。。:2013/06/18(火) 12:54:46.70 0
異能力作者さんが生田の精神破壊を描いたらどうなるのだろうか
733名無し募集中。。。:2013/06/18(火) 15:32:13.58 0
けっこう凄惨な描写になるかもねん
734名無し募集中。。。:2013/06/18(火) 16:09:07.52 O
次の更新もまた楽しみですなあ
735名無し募集中。。。:2013/06/18(火) 18:46:43.96 O
うむ
736名無し募集中。。。:2013/06/18(火) 20:38:17.32 0
あげ
737名無し募集中。。。:2013/06/18(火) 22:17:33.80 O
風がほしい
738名無し募集中。。。:2013/06/18(火) 23:32:50.10 0
739名無し募集中。。。:2013/06/18(火) 23:48:29.01 T
 
   ム〜ン
     ∋oノノハヽ                
      (・o_・`川         
      ⊂ ⊂  )   ブッ!!    
       ( (  (   =3    (((〃〜
        (_(__)        (>>737*)
740名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 01:01:10.64 0
あげ
741名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 01:01:54.85 0
新作きてますよー
742名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 04:55:45.38 T
あげ
743名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 07:05:13.61 0
風よ吹け風よ吹け〜
744名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 08:43:18.49 O
>>739
その風じゃないw
745名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 09:16:16.95 O
新しい風だな
746名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 10:30:21.36 0
>>588-595  の続きです


一方、ここは爆発のあった都心のオフィスビル。
建物の周囲は関係者以外立ち入り禁止のテープで囲われ、さらにその周りを野次馬やマスコミたちが取り囲
んでいた。
そんな喧騒を余所に、建物内では必死の救助活動が行われる。

警察関係者である「瞬間移動」の能力者の手によって、次々と現場に送り込まれた治癒能力者。
数はさほど多くはないが、すぐに駆けつけることができた人数としては妥当なところ。救急部隊が到着するまで、
数分の時間差がある。さゆみたちの仕事はそのタイムラグの間に落としてしまう命を、救うことだった。

崩れた壁、粉々になった窓ガラス、そして血まみれで倒れている人々。
まだ先代リーダーの愛が在籍していた時。さゆみはニューヨークのとある場所で発生した爆弾テロ事件の負傷
者を治療する機会があった。あの時は異国の地ということもあり、状況をいまいち呑み込むことができなかった。
しかし、いざ自分と同じ日本人が血を流し苦しんでいるのを目の当たりにすると。その凄惨さはよりリアルに、さ
ゆみの心に刻みつけられるのだった。

フクちゃんを連れてこなくてよかった…

さゆみは心からそう思う。
いかにリゾナンターとは言え、彼女はまだ16歳だ。もちろん、さゆみやれいなを含めたかつてのリゾナンターた
ちも同じような年齢でこの世界に飛び込んでいるという事実はある。しかし、その経緯やアフターケアなどは今
とは比べものにならないほど劣悪だったのもまた、事実。免疫の少ない聖、いや今の若いリゾナンターたちを
できればこのような現場には連れて行きたくはない。

さゆみの目の前に倒れている女性の肩口の傷に手をかざしながら、過去のことを思い出す。
運命に導かれ、集うこととなった9人の仲間。それぞれが抱えていた心の傷は、容易には癒せないほど深かっ
た。愛に声をかけられるまで、各々が過酷な道を歩んできた。中には、その手を血に染めたものも。
747名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 10:30:57.34 0
― リゾナンターは、殺人集団やないんやよ ―

愛がかつて残した言葉が、いつまでもさゆみの胸の奥には残っている。
ダークネスとの争いが激化する中、思いがけず敵の命を奪ってしまうこともあった。若い小春や、秘密組織に身
を置いていたリンリンやジュンジュン、そして甘さが死を招くような環境にいた里沙は「仕方ない」と割り切った。
それを覆したのが、先の愛の言葉だった。

自らの内包する「i914」と戦い、打ち克ったものの、同時に「i914」の犯した過去の罪を共に背負うこととなった愛
だからこそ、その言葉は誰が発するものよりも、重かった。

「…あの、大丈夫ですか?」

不意に、声をかけられる。
見ると、自分より5、6歳は年下のように見える少女が傍らに立っていた。
黒髪の、色白な少女。黒目がちな瞳と首のほくろが印象的だ。おそらく警察関係者が招聘した治癒能力者の一人な
のだろう。

「あ、ごめん。考え事してて」

手当していた女性の傷口は既に塞がっていた。過剰な治癒は、肉体を傷つける可能性がある。
さゆみは慌ててその場を離れ、近くに倒れていた人のところへ移動する。

が、間の悪いことにその人間は一目見て死んでいることがわかるくらいに、損傷が激しかった。
爆風で飛び散った瓦礫をまともに受けたのだろう。無事なのはすすけた顔のみで、その下は首や胴体が千切れかけ
ていた。

「…こんな若い子まで」

浅黒い肌に、意志の強そうな顎。
生前はきっと活発な少女だったのだろう。
748名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 10:32:50.04 0
亡骸に手を合わせていると、

「もう、いい加減にしてよ!」

と、特徴的な声が。
先ほどさゆみに声をかけた少女だった。

「え?どういう…」
「ごめんなさい。この子、うちの子なんです」
「うちの子?」

意味が呑み込めないでいるさゆみを尻目に、少女が遺体に向かって話しかける。

「ほら、お姉さんが困ってるでしょ!早く起きて!!」

すると、死んでいたと思っていたその肉体がやおら動き出す。
千切れかけていた首や胴体が、急速に成長する血管や筋組織によって繋がれ、再生してゆく。そして常人と変わらぬ状態で、少女がゆっくりと起き上った。

「憂佳は頭固いなぁ。もうちょっと『死んで』たかったのにさ。被害者だったのは事実なんだし」
「だって紗季ちゃんが『死んでる』と紛らわしいでしょ。お仕事の邪魔になるし」

さゆみの頭が混乱する。
あれ?ちょっとこの子さっきまで死んでたよね?何で起き上れるの?ゾンビ?って言うかもう一人の子かわいいな
あ。色も白いしお人形さんみたい。どさくさに紛れて抱きつこうかなでもこんな場所でそんなことしちゃだめ…

「あの、お姉さん?」
「えっあっ別にやましいことなんて全然考えてないよ!!」
「何のことですか?まいいや、自己紹介しますね。この子は、小川紗季。そして私は前田憂佳。警視庁が新設した
能力者部隊の一部署『スマイレージ』のメンバーです」

能力者部隊「スマイレージ」。聞いたことのない名前。
さゆみはしばらく二人の顔を交互に見て、それからまた混乱するのだった。
749名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 10:33:27.84 0



圧倒的な絶望感。
里保自身、ダークネスの手のものと相対することは初めてではない。
しかしながら、「幹部」という肩書きがついただけでこれほどまでに差があるものなのか。

「ごめんね鞘師ちゃん。時間調整が必要だったからさ」

里保の恐れなどどうでもいいとばかりに、そんなことを言う「赤の粛清」。
すると、後ろから複数の足音が押し寄せてきた。

「里保ちゃん!!」

指定されたスタジオへとやって来た聖、衣梨奈、春菜、亜佑美。それに、途中から合流した香音と遥だった。

「予想以上に鞘師ちゃんの動きが早かったからさ。クローン使って時間稼ぎをしてたってわけ。他の子たちが到着するまでのね」
「何言ってるかわからないけど、まーちゃんをどこへやったんだよ!!」

相手の都合などどうでもいい。
まずは優樹の安否、と遥が大声で叫んだ。

「あの子なら無事だよ、ほら」

「赤の粛清」が頭上を指す。
照明のケーブルに絡め取られているかの如く、優樹が天井から吊るされていた。
そこには、聖たちが喫茶店のテレビで見た、そして里保が「赤の粛清」を追跡している時に見た優樹。ただ。

「まーちゃん…?」

吊るされていた体が、二つ。
まるで双子のような優樹「たち」が、気を失ったまま縛られていた。
750名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 10:34:09.27 0
「どうしてまーちゃんが二人も」
「大丈夫はるなん、片方はきっとクローンだよ」

動揺する春菜を、里保が落ち着かせる。
里保は目の当たりにしていた。さっきまで本人と見分けのつかないくらいに酷似した粛清人のクローンが、自分の
前に立ちはだかっていたのを。だが、その推測を否定するように「赤の粛清」は空っぽの笑みを見せた。

「ちょっと違うんだよね。ま、さっきのを見たらそう思ってもしょうがないかな」

言いながら、手にした大鎌を。
天井の優樹に向けて投げつけた。

誰も、動く事ができなかった。
里保の洞察力でも、春菜の超聴覚を持ってしても、彼女の行動を読むことはできなかった。
結果。鎌の刃が、優樹の胸を刺し貫く。

拘束していたロープごと断ち切られたせいで、ずるりと、落下してゆく優樹。
そこではじめて亜佑美が走り出す。間一髪で床面に墜落するのを防いだものの、傷口から噴き出し、着ていた制服
を染め上げる血の量が命に関わる傷を負っていることを証明していた。

「まーちゃん!!」
「そんな…約束が、ち、が…う…」

腕に抱きかかえられた優樹はそれだけ言うと、糸が断たれたかのように事切れた。

「…嘘でしょ」

悪夢のような出来事。遥は、目の前で展開された事態が呑み込めない。
しかし亜佑美は仲間たちの懸念を払拭する。
751名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 10:34:54.39 0
「この子、まーちゃんじゃないです」

その言葉のとおり、少女は優樹ではない見知らぬ少女だった。
胸に刺さっていた大鎌が独りでに引き抜かれ、再び「赤の粛清」の手に収まる。

「その子は、擬態能力者。さすがにあんたたちのクローンはまだ作れないからね。譜久村ちゃんたちが見たあの映
像あるじゃん。あれ、あたしのクローンとその子だったんだよ」

ダークネス。心を闇に食われたものたち。
さゆみから、そしてれいなから。遡れば、里沙や愛佳、そして愛から。どんな連中かは、聞いてはいた。だが、聞
くのと実際にその所業を間近でみるのとでは、わけが違う。

人が簡単に、死んでゆく。
用済みとあらば、何の躊躇もなくその命を奪う。
春菜と遥は、元々は能力者を教祖とした新興宗教組織に攫われた子供たちだった。後にその組織自体がダークネス
の息がかかった存在だと知るが、その悪辣な教義、行動原理。
今となれば納得できる。

「てめえ、何か昔のことを思い出してムカつくんだよ」
「あなたのしたこと、許すわけにはいきません」

ずっと育ってきた組織の中で日々体を蝕んでいた、不快感。
それは、目の前の女が放つ闇の吐息と寸分違わず重なっていた。

「にゃはは。ボルテージ、上がってきた?いいよ、全員でかかっておいで」

二人が放つ敵意を、そよ風を受けるが如く気持ちよく受け流す「赤の粛清」。
亜佑美が体勢を低く構える。香音と聖が全員のバックアップのために後方に下がる。衣梨奈が両手から伸びるピア
ノ線を靡かせ、里保が愛刀を握り直した。
752名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 10:35:40.48 0
「みんな、優樹ちゃんを確保して、逃げるよ!!」

聖の叫び声。
そう、最初から戦うつもりなどなかった。
まずは、全員無事でリゾナントに帰還すること。聖はそのことを最優先としたのだ。

衣梨奈が、相手の大鎌にピアノ線を巻き付ける。さらに高速移動の亜佑美と素早さを持ち味とする遥が相手の目を
撹乱。その隙に、聖が屈み床に手をつける。床張りのリノリウムが大きく裂け、飛び出してきたのは太く堅い木の
根。聖が自分達を付け狙っていた能力者の一人から複写した植物操作能力だ。

俄かに作られた足場を器用に辿り、里保が天井に吊り下げられている優樹を拘束するロープを一閃のもとに断ち切
る。落下地点には香音が。

「みんなに透過の力をかけたから、壁をすり抜けて脱出して!!」

優樹を抱え、最初に壁をすり抜ける香音。
だが。

勢いよく壁に突入した香音が”何か”に阻まれて、壁から弾き出される。
床に転がり、蹲る香音。その顔には、血の気がまったくない。
753名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 10:36:17.49 0
「ダメだよ、逃げちゃ。あたしがこの状況をお膳立てするのにどんだけ苦労したと思ってんの。どっかの知らない
オフィスビル爆破までして、あんたたちと先輩二人を引き離したのに。そうだ、ちなみに壁の中は零度以下の超低
温になってるらしいよ」
「入ると、その子みたいに全身凍傷になるから」

その声と共に姿を現す、ゴスロリファッションの女。
「氷の魔女」が、底意地の悪い笑みを浮かべる。

「ここに誘い出された時点で、あんたたちの命運は決まってるの。だったら、精々全力出してさ、あたしを楽しま
せてよ」

血をたっぷりと吸った鎌の刃を、「赤の粛清」が突きつける。
何もかもが、全てが綿密に仕組まれた、策略。
聖は自らの至らなさを、激しく後悔した。
754名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 10:37:20.47 0
>>746-753

代理投稿終了
755名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 13:47:02.12 O
756名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 14:07:21.87 O
757名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 15:16:41.77 O
758名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 16:05:14.87 O
759名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 17:41:08.34 0
>>754
乙おつ
スマイレージにあやみき最凶タッグ
盛りだくさんな内容面白いです
760名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 19:07:52.79 O
あげ
761名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 20:46:57.05 0
うえうえ
762名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 21:58:23.63 0
763名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 23:02:13.93 0
>>754
作者さんも代行さんも乙です
■■でのダークヒロインぶりが印象的なスマイレージが登場ですか
この話ではリゾナンターと共闘するのか敵に回るのか
続き待ってますねん
764名無し募集中。。。:2013/06/19(水) 23:42:59.93 0
さゆはどんな緊迫した状況でもやましいことを考えるんだなw
765名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 00:36:39.68 0
■■ではあやちょが無双状態だったがЯ(イア)ではどうなんかな
766名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 00:48:06.26 0
作者さん不良スレに出張中?w

320 :名無し募集中。。。:2013/06/16(日) 16:41:47.16 0
保全6話終わり
さゆのバトルを描くのはリ○スレだろうが何だろうが難しい。。。

あっちも楽しみです。
767名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 01:17:15.57 0
おやすみ
768名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 03:48:11.10 0
からあげ
769名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 05:55:50.01 0
新垣里沙が知るi914の弱点。
それはヒト型であるが故に、【光使い】の使用を不可能に
させるには絶好の領域というものが存在する。

それは―― 海だ。

【瞬間移動】を保持する彼女ではあるが、標的はi914ではない。
i914は「蓄積」する事に特化した疑似精神体であると同時に
そのヒト型に形成した人格『高橋愛』の情報を持っている。

新垣里沙が知る高橋愛の弱点、それは「水」だ。
川や湖だと行動不能に陥るまでにそれなりの時間を要するが
深海に浸けてしまえばそうもいかない。
ヒト型が最も恐怖する空間に放り込むのが、新垣の目的だった。

その状態に持ち込むことが出来れば、そこから自分にとって有利な
体勢に向かうことが可能、これは何よりも大きい。

だが彼女を"放り込む"という行為は、恐ろしく至難の業だ。

その場所にまで誘導することは出来る。
彼女の目的が自分達だとすれば、否が応にもやってくる。
人目を避けるために最も効率的な海は近辺にないため、事後処理の
ことを考えると遠方へと思っていた。

『結界』を張るのも手だが、相手の能力に頼って今後の方針を
決定するわけにはいかない。
―― この期に及んで事後処理のことを考えている自分に苦笑する。
770名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 05:56:32.26 0
誰かに丸投げしてしまえば楽かもしれない。
それが解っていても、それが出来ないのが新垣里沙だった。

 「それで、どこに行くと?」
 「今日と明日は晴れらしい、夜景を見に行く人がいるかもしれないけど
 でも人が一番少ないところを狙うとすれば、埠頭しかないと思ってる」
 「そこはガキさんのチカラでっちゃろ?」
 「…そうだね、確かにそっちの方が簡単か」

田中れいなの言葉に、新垣里沙は同意する。
再会したのは、約4ヶ月ぶりだった。
携帯の表示に驚きはなかったが、どんな挨拶をすればいいかは迷った。
だが田中に会ったとき、言葉よりも先に拳が眼前に向かって振り抜かれる。

新垣はそれを素直に受け入れ…なかった。
それなりに全力だったストレートパンチを難なく受け止める。
乾いた音に佐藤がビクリと肩を震わせたが、新垣と田中は互いを睨む。

 「残念だけど、今は怪我をするのも惜しいから、今度受けるよ」
 「今度、そうやね、今度、これよりももっと強いのをおみまいしてやるけん」

田中はそれだけで一歩身を引いた。
いつもはしつこいぐらいの拳の連撃が来るはずだが、新垣はその違和感と
彼女が"何度も腕の調子を確かめている"ことに思考を巡らせる。
時間がない。
そう、時間がなかった。だけど田中にとって、新垣に対しての反抗は
しなければいけないものだった、そうしなければ自分ではないとでも言いたげに。
今思えば、普段通りの自分を保とうとする咄嗟の行動だったのかもしれない。
771名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 05:57:31.82 0
新垣はそこまで思い返すと、田中に言った。言わなければいけなかった。

 「田中っち、佐藤、覚悟はいい?」

田中は視線だけをこちらに向けて静かに佇んでいたが、佐藤優樹は
何処か戸惑いを見せるかのように視線が揺らいでいる。
新垣が口を開く前に、田中が動いた。

 「佐藤優樹、あんたをどこか安全なところに逃がしてやりたいけど
 あん人にはもう顔を見られてるし、別行動をとったらあんたが先に
 狙われるかもしれん。だからあんたも来るんよ。いい?」
 「…わたしはくどぅーに言われました。たなさたんを呼んできてって。
 だからたなさたんを呼んで、くどぅーのところに戻らなきゃいけないから。
 くどぅーが呼んでるから、はるなんもあゆみんも。だから、戻ります!」
 「…よく言った」

田中の笑顔に、ようやく佐藤にも笑顔が浮かんだ。
そのまま佐藤は甘えるように田中へ抱きついたが、彼女は拒まなかった。
新垣はその光景に、微かに口角を上げる。
そして顔を引き締めると、二人を背に歩き出した。

 進路は一つ。退路は、もはや何処にも無い。

 ―― ―― ―
772名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 05:58:26.73 0
―― 少女の瞳の奥には、強化ガラス製の培養槽に注がれた新緑の液体が輝く。
液体には、人間が浮かんでいた。
意識があるのかは分からない。分からないが、とても苦悶の表情を浮かべている。
その群れ、数十の培養液全てに人間の姿をしていた。

人間の肉体を改造し、遺伝子を弄り、作り上げられてしまった異能者という人間。

何重もの生命維持装置がついている。
それはつまり、この異能者は今現在、生きている事だ。
狭い狭い、濁った液体の中でただ漂っている。
そこには感情も、意志も、無い。

だが、狂気の産物でもない。
怜悧な頭脳の理性と理論をもって生み出され、正確な分類札を貼られ
整然と並べられている。つまり、これは、正気の沙汰なのだ。

解剖刀を体に突き立てられた実験体が泣き叫ぼうと、苦痛に身を捩ろうと
醜い姿にされて哀しもうと、関係ない。
実験者たち自身の身体と心は、なにひとつとして痛くも悲しくも無い。

その答えは唯一つ。
知能に優れ、知識に溢れても、彼らには心と想像力が存在しなかったのだから。

自分たちの崇高な目的の前には、仕方のない犠牲として。
使命感に燃えて行った実験だったのだから。

 組織的かつ計画的に非道をつくすには
 むしろ燃え上がるような使命感や正義感がなくてはできない
773名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 05:59:16.51 0
少女の目からは、感情の一切が消えていた。
少女が見つめるのは、中央の手術台。
無残な死体、ではない。少女と同じ、少女が拘束されて横たわっていたが
その周囲に居る医師達の手には禍々しい器具が握られている。
機械から伸びた電極、解剖刀に鉗子。

そこで扉が閉じた。
其処で何が起こっていたかは分からない。
底で何を思っていたかは分からない。

少女にはただ、現実しかなかった。

液体の中で漂う日常。非日常とは思わなかった。
感情の発達と育成が施されていない人間にとって、それがどれほど
この世界の法則と常識から逸脱されたものか分からないからだ。

だが異能者はどこまで言っても人間、やがては気付く。悟る。
恐怖を、畏怖を、苦痛を、静寂を。
自滅する。犯される。劣位。失敗。欠陥。

水に浸けられる。漬けられる。
人ではなく、物のように。心は殺され、壊された。
一人だけ、少女だけは、其処に居た。

中央の手術台を囲うように、血の海と斑点が彩られている。
裸身に電極や針が差し込まれていたが、その表情には何も無い。
流れでる死者の血潮が、少女の素足に触れ、熱さを感じたかのように跳ね退く。
熱病に犯されたように全身が震えだす。
774名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 06:00:24.36 0
 「神経系を支配して自滅させた、か。これはまた、怖い子が生まれたわね」
 「でも実際、こういう子を待ってたんだよ、私達は」

二人の話し声が聞こえ、本能的に憎悪と殺意の膨大な【精神干渉】が
全身から放たれ、目も眩むような爆光が、二人に襲いかかる。
自滅へと追い込む為に。
だが、一人が言葉を紡いだ。

 ≪止めなさい≫

ビタリと音が鳴った様に、爆発が突如、止まった。
途端、少女の頬に誰かの手が添えられる。
微笑んだ女性が次に言葉を紡ぐと、少女の目から水が溢れた。
感情が分からない。だが溢れだす水は、培養液の濁ったそれではなく
熱を帯びた人間の、涙と呼ぶそれだった。

水に漂う、何も感じず、何も想える事のできない世界。
女性は、安倍なつみは言った。

 「ガキさんが井戸の底の蛙のように世界を知らなければ
 こうなることは無かったのかもしれない。けれど、あの子もまた
 それを拒んだ一人だったんだよ、あの凄惨な実験の中で生まれた、君と同じ命だ。
 水面に見える自分を掻き消すように生きるあの子を、頼んだよ、ガキさん」

水面に映された新垣里沙の瞳が蠢く。
全ての意志を抱いた其処に、数多の命を抱えるように。
775名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 06:01:46.66 0
>>769-774
『異能力 -Night comes. Inky night comes-』
以上です。

>>732
生田なら打撃系のイメージですね、あの筋肉なら頭部ごと
破壊できるんじゃないですかHAHAHAおや誰か来たようだ。

>>733
凄惨に描けというのあればそうできたらいいですね。
でも、ガキさんよりは弱いっていう。
776名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 07:46:14.99 0
怒濤の更新で朝から興奮
777名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 07:52:27.05 0
>>775
朝から乙
殺伐とした和解に全俺が泣いた
いよいよラストバトルなのか
778名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 08:25:40.65 0
ガキさんたちの危機を救うために小春やリンリンが駆けつけるとしたら熱い展開なのだが相手が相手だけにかなしくもあり
779名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 12:07:50.17 0
お昼
780名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 12:56:40.86 0
昼保
781名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 15:13:04.08 O
かつての仲間を討たなければならないのは悲しいけどそれがリゾスレの真髄なのかなとも思う
悲しみ抜きでは得られない読後感
782名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 18:31:18.01 0
あげ
783名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 19:59:28.35 0
784名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 20:56:27.18 O
ほぜ
785名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 22:35:22.95 0
思い出した!未来から来たフクちゃん復活してほしい…
786名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 22:35:29.41 O
787名無し募集中。。。:2013/06/20(木) 23:39:48.38 0
あげ
788名無し募集中。。。:2013/06/21(金) 01:21:21.84 0
おやすみ
789名無し募集中。。。:2013/06/21(金) 04:56:11.66 O
おはよう
790名無し募集中。。。:2013/06/21(金) 07:32:26.18 0
悲しみの夜明け
791名無し募集中。。。:2013/06/21(金) 12:13:42.60 0
空腹の昼間
792名無し募集中。。。:2013/06/21(金) 14:27:17.82 0
憂鬱な午後
793名無し募集中。。。:2013/06/21(金) 15:33:50.98 0
ウキウキな週末
794名無し募集中。。。:2013/06/21(金) 17:16:37.64 O
雨だな
795名無し募集中。。。:2013/06/21(金) 19:00:56.09 O
796名無し募集中。。。:2013/06/21(金) 21:03:10.60 0
うええおええ
797名無し募集中。。。:2013/06/21(金) 22:13:22.64 O
上へ追え
798名無し募集中。。。:2013/06/21(金) 23:04:50.86 I
>>605-608の続きです

氷の魔女がOAされていますが、
投下開始↓
799名無し募集中。。。:2013/06/21(金) 23:07:59.33 I
「聖達、前も一緒にいた事がある様な気が……」

ハルと譜久村が一緒にいたのは、今日を除いてエッグの頃だけ
譜久村の記憶は消してあるはずじゃないのか?

「き、気のせいじゃないですか。譜久村さんと会ったのは2週間前ですし、ハルは今日まで大抵は田中さん達といましたし……」
「でもこの手を繋いだ感じ、懐かしい感じがするの!」

譜久村が強く手を握ってきた

まさか、記憶が戻りかけてるのか?

「あのね、聖はリゾナントに来るまでの記憶がないの。でも、記憶がなくても、手の感覚? が何か覚えてる感じがするの。遥ちゃん、何か知らない? 聖の事。何でも良いの! 思い出す手がかりになりそうな事!」

冗談じゃない!
思い出されたらハルは調査が出来なくなる
スパイをクビになるだろ!
エッグからダークネスに入れるチャンスなんだ
思い出されてたまるか!

思いっきり腕を振って、譜久村の手を振りほどく

カランコロン!

リゾナントのドアを開けて飛び出す

「遥ちゃん! 待って!」

バレる前に譜久村から離れないと!
一緒にいたら思い出すきっかけをつくりかねない!
800名無し募集中。。。:2013/06/21(金) 23:09:38.51 I
──



あんな逃げ方したら、後ろめたい事があるって言ってる様なもんじゃね?
これはマズイ……
ちょっと落ち着こう

近くの花壇に座る

今気付いたけど、ここって氷の魔女様に襲われた公園じゃん

ハルの任務はここから始まったんだったっけ

スパイを始めて2週間
こんな形で終わる、なんて事にならないよな
あーもーどーすればいいんだ!

足元の小石を拾って、目の前の噴水に向かって投げる

チャポン

「噴水に物を投げちゃ駄目だよ」

声がした方を見ると、鞘師里保と鈴木香音がいた

「1人になっちゃ危ないよ」
「まだ狙われてるかもしれないんだから」
801名無し募集中。。。:2013/06/21(金) 23:11:40.58 I
とりあえず、まだバレてない?

「すみません」
「フクちゃん、怖かった?」

ん?

「強引に聞き出そうとしたって言ってたから」

ああ、そういう事になってるのね

「そうですね。何か必死だったって言うか、あんな譜久村さん見るの初めてだったし。そもそも、ハルがわからない事は答えようがありませんし」
「それは気にしなくて良いよ。フクちゃんの事、嫌いになった?」
「いいえ、大丈夫です」

でも、本当に思い出されても困るしな……
少しくらい牽制? 突き放す? みたいな事しても良いよな

「でも、今すぐ会うのはちょっと怖いです」

これくらいなら言っといても大丈夫だろ

「そっか」
「でも……聖ちゃんの気持ち、少しで良いからわかって欲しいな」

鈴木が少し下を見ながら呟いた

気持ちって、何だよ

「どう言う事ですか?」
「聖ちゃんね、リゾナントに来るまでの記憶がほとんどないんだ」
802名無し募集中。。。:2013/06/21(金) 23:16:53.21 I
まあ、それは知ってる

「だから、自分の過去がわからないの。自分の事がわからないって、きっとすっごくすっごく不安になると思うんだ」

記憶をなくした事がないからわかんねーし

「あたしも記憶がないって経験がないから、聖ちゃんの事をわかってあげられてないかもしれない。だけど、聖ちゃん見てると、時々寂しそうな顔をする時があるんだよね」

うーん、あったかな?

「いつも口には出さないけど、やっぱり記憶を取り戻したいんだよ。だから、必死になる気持ち、わかって欲しいな」

……ふーん
裏切り者に同情する気はないけど

「わかりました、大丈夫ですよ」
「本当? 良かった!」
「良い子だね、遥ちゃんは」

喜んで跳びはねる鈴木香音
笑顔でハルの頭を撫でる鞘師里保

子ども扱いするな!
お前らと1コしか違わないんだぞ

「あー、仲良いところ邪魔して悪いんだけど」

急に後ろから声がした

「「ダークネス!!」」
「え!?」
803名無し募集中。。。:2013/06/21(金) 23:17:48.75 I
2人の視線を追って振り返る

傀儡師様!
何でここに!?

「こいつ、貰って行くから」

傀儡師様がハルの腕を掴む

え?
まさか任務終わり?
急に?

──精神干渉──ダイブ

(工藤、あたしの声が聴こえたら心の中で返事しな)

傀儡師様?

(繋いだ腕からあたしの精神を送っている。リゾナンターの調査、進んだか?)

はい
新入り4人のトレーニングを見学しました

(その時の事を思い出してくれ)

わかりました

(……OK、大体わかった)

はい?
804名無し募集中。。。:2013/06/21(金) 23:19:01.98 I
「その手を離しなさい!」
「遥ちゃんを返して!」

2人が構える

「子ども2人であたしとやり合う気? いいよ、来な」

(下がってろ、巻き込まれない様にな)

「うわっ!」

傀儡師様がハルを突き飛ばした

「行くよ、香音ちゃん!」
「うん!」

鞘師と鈴木が向かって来る

──水念動力──リキッド

鞘師がかざした右手の前に、拳くらいの大きさの水が飛んで来た

噴水から呼び寄せたのか

「行けー!」

ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!!!!!

水が5つの球に分かれて傀儡師様に向かって行く

「同時に5つか。やはり成長しているな」
805名無し募集中。。。:2013/06/21(金) 23:19:49.16 I
傀儡師様が右脚で回し蹴りを繰り出す

バシャーン!!!!!

5つの水球が一瞬で飛び散った

「今だっ!」

鈴木が傀儡師様を避けてハルに向かって来る

「遥ちゃん、こっちに来て!」
「甘い」

傀儡師様が走り、鈴木に追い付く

「早い!?」

傀儡師様が鈴木の腕を掴み後ろに投げた

「うおっ!?」

鞘師の方に飛ばされる鈴木

ドサッ

「うっ!」
「香音ちゃん!」

鈴木に駆け寄る鞘師
806名無し募集中。。。:2013/06/21(金) 23:20:36.38 I
傀儡師様スゲー……
ハルじゃ叶わないと思ってた2人が太刀打ちできないなんて
これが、ダークネス幹部の力なんだ

「大丈夫?」
「平気。あの人、強いね」
「けど、ウチらは諦めない」
「そうだね」

2人が立ち上がる

──部分獣化──マンティス・アーム

鈴木の両腕がカマキリの腕に変わった

まだやる気かよ
勝てる訳ないだろ

「勇ましいお嬢さん達だ」

傀儡師様が左手でハルの腕を掴み、右手で携帯を取り出す

「もしもし、運び屋か。頼む」
807名無し募集中。。。:2013/06/21(金) 23:21:36.97 I
投下完了↑

>>799-806
『この地球の平和を本気で願ってるんだよ!』10



>>615
他の作者様が魅力的な鋼脚を描いているので、負けじと自分も。

>>617
ΧというかЯを挙げられるとクオリティの違いがあり過ぎて困ります。自分の中でBest5に入る作品ですね。

>>618
保有能力の都合で刹那の考察者≠ノしました。

>>619
きっとギラギラしたカメラ目線が得意なあの人です



感想ありがとうございます。本当にありがとうございます。
今更ですが、恐らく自分宛であろうコメントでレスの数字が無い方に返信しても良いのでしょうか?
808名無し募集中。。。:2013/06/21(金) 23:33:27.67 0
.>>807
乙ですた
相変わらずテンポが良いねえ
書くことの取捨選択が出来てるのは話を脱線させたことが多かった自分には眩いです
続き待ってますんで
809名無し募集中。。。:2013/06/22(土) 01:18:35.44 0
おやすみ
810名無し募集中。。。:2013/06/22(土) 01:32:43.05 0
フクちゃんの記憶の件はちょっと切ないかねえ
その悲しさを判ってる鞘鈴は優しいな
811名無し募集中。。。:2013/06/22(土) 05:55:34.14 O
812名無し募集中。。。:2013/06/22(土) 07:12:17.41 0
スパイの話は面白い
813名無し募集中。。。:2013/06/22(土) 10:18:18.94 O
814名無し募集中。。。:2013/06/22(土) 13:03:28.36 0
815名無し募集中。。。:2013/06/22(土) 15:23:23.52 O
816名無し募集中。。。:2013/06/22(土) 17:21:04.05 0
あげ
817名無し募集中。。。:2013/06/22(土) 18:02:11.00 0
りほなんと
818名無し募集中。。。:2013/06/22(土) 19:44:08.95 0
りさなんと
819名無し募集中。。。:2013/06/22(土) 19:51:18.01 0
>>807
傀儡師様がどぅの思考を一瞬で読み取るとことか何気にイカしてると思った
今度はi914とg923の戦いをどう収めるのか
次も楽しみにしてます
820名無し募集中。。。:2013/06/22(土) 21:20:13.04 0
あげ
821名無し募集中。。。:2013/06/22(土) 22:54:55.52 O
浮上
822名無し募集中。。。:2013/06/23(日) 00:18:45.87 0
あげ
823名無し募集中。。。:2013/06/23(日) 02:07:21.35 0
おやすみ
824名無し募集中。。。:2013/06/23(日) 04:51:34.68 O
まぶしい光
825名無し募集中。。。:2013/06/23(日) 07:42:59.57 0
おはよう
826名無し募集中。。。:2013/06/23(日) 08:17:10.22 O
あさ
827名無し募集中。。。:2013/06/23(日) 11:05:04.68 0
しょう
828名無し募集中。。。:2013/06/23(日) 12:05:07.49 0
戦士たちの別働隊は昨日に続いて関西ですか
829名無し募集中。。。:2013/06/23(日) 13:33:11.62 0
誰か観に行ってる人はいるかな
830名無し募集中。。。:2013/06/23(日) 16:11:51.91 0
あげ
831名無し募集中。。。:2013/06/23(日) 18:18:59.55 O
なんと
832名無し募集中。。。:2013/06/23(日) 19:17:50.67 O
ほぜ
833名無し募集中。。。:2013/06/23(日) 21:11:40.42 O
あげるのだよ
834名無し募集中。。。:2013/06/23(日) 22:31:18.90 0
あげ
835名無し募集中。。。:2013/06/23(日) 23:46:04.14 0
あげとく
836名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 00:59:20.44 0
おやすみ
837名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 02:01:29.47 0
新作きてますよーしかも2作
838名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 04:56:28.17 0
おぱよん
839名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 06:10:29.86 0
両腕が―― 肘の先で千切れていた。

そして、首が有り得ない方向に捻じれ、血だまりの中で、死んでいた。
見知った顔だ。何度か一緒に現場に赴いたことのある顔だ。
笑顔を浮かべていた口は赤く染まり。
希望を輝かせる瞳には生気がない。
血の破片。血だまり。
あの矮躯のどこにこれだけの血が溢れていたのか。
たっぷりと、たゆたう矮躯。
骨が覗く腕。腕はどこだ?千切れた腕はどこに。
こまぎれて、血だまりのあちこちに肉塊と、肉片と、捻じれた首と。
邪悪そのものを見たかのように瞳孔は開ききって、だが表情は恐怖に
歪むでもなく悲壮に凍るでもなく虚ろそのもの。
伸びた髪が乱れてなんて無残。無残。無残。
神話級の獣にでも蹂躙されたかのような征服と、冒瀆さ。

それは生贄の様に。それは餌食のように。それは暴食のように。
凌辱され、破壊され、破壊され、破壊されて。
殺戮。血、肉、骨、血、肉、肉だ。
肉の破片、血の匂い、血だまり。肉、肉、肉、肉、肉肉肉肉肉!

 笑顔が可愛かった彼女。

生い立ちは平凡と簡単に片づけられるものではなかったが
自分の異能者としての自覚は誰よりも強く、それを誇りに思っていた。

純粋な彼女には悪趣味も悪興味も満たせるほどの物語はない。
語って聞かせるほどの物語は無く、聞き耳をたてられるほどの物語も
そこにはない。
840名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 06:11:24.37 0
思わず駆け寄り、血だまりに脚を踏み入れた。
まだ微かに乾ききっておらず、びしゃりと音がする。靴が汚れた。
汚れた?
人の血が付着することを、汚れたなんて言うなど。血だ、血なのだ。
人間の一部分だ、それを冒瀆するのか。

『M。』の先代である自分が、人間を冒瀆することはあまりにも惨い。
ならば受けて立とう。
仲間を殺した存在が誰であっても、異能者の前に人間なのだ。
死など恐れない。
畏れない。怖れない。
だがその心が覆るほど、濃度の高い【闇】が其処には在った。

 拷問だった。牢獄だった。断頭台だった。
 何の希望もない、絶望だらけの暗闇だった。

劣化コピーになって初めての夢を見た。
それはあの頃、あの時、自分達に破滅がやってきたあの日の夢。
涙が血の色に変わるまで泣いた、地獄の情景だった。



 「…そうか。ああ、分かったで。なっちも、元気でな。
 矢口はそれなりにアンタのこと、気にしてたんや。
 ああ、そうやな、うん。まあ、ほんでな。
 あの子がなっちに言うといてっていう伝言があるんや。
 『今までありがとう』―― だ、そうや。はは、自分で言えってなあ。
 ああ、また会えたら…」
841名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 06:12:22.57 0
安倍なつみから連絡を受けた中澤裕子が
最初にしたのは、目を閉じ、自身の額に手をやった事だった。
椅子の背もたれに全体重をかけ、これまでを思い返す。
視界が滲んでいるのは、年のせいだと、思った。

【ダークネス】によって"蘇生"された者達。
そしてこれまでに再び闇へ還された者達は数知れず。
あとは"寿命"を待つ者の一人として、中澤は現在も生き続けている。

"蘇生"された者達は否応なく自覚している。
だが、前以て死が訪れることを知ったら平静ではいられない。
慌てふためくか、周囲の人間に当たり散らすか。
事実、自身の生を嘆き、自身の創造主を恨み、自身の死に恐怖し、それらの
感情を上手く扱う事ができずに操られるがまま人類への反抗を見せた者も居た。
それなのに、それなのに、と、想う。

これがダークネスが想ってやまなかった救済への願望か。
皮肉にも、違う道を辿った所で自分達への救いは変わらなかった。

―― それを覚悟した上で、中澤達は行動していたが、いざその時に
 なったと思うと、酷く悲しくなった。

この悲しさがどんな感情によるものなのかは分からない。
他人の死に悲しむことなどないと思っていた。
自分の死さえもはや悲しくないと思っていた。

中澤裕子がアサ=ヤンとして、『M。』としての活動をしていた過去。
今の国家の法律では裁くことのできない異能者達。
被検体として生死を分かたれる異能者達。
842名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 06:13:09.79 0
自分達は一体、何の為に正義を掲げ、向けて来たのか。
しかし、全て自分の中心にあった組織は瓦解し、ダークネスと呼ばれた存在は
自身が生み出した我が子によって殺された。

しがらみは、無くなった。自分の居る存在意義が、無くなった。

中澤は静かに、声を押し殺して泣いた。
こんな涙など何の意味もない。
自身で満足するためだけに泣いているのだ。
何と心の籠らない、どうでもいい涙なのだろう。

もう素直に泣くこともできないのだ。
年を取れば幼稚になるともいうのに、自分はこんな時でさえ
泣くのを拒もうとしている。
こんな時に限って年齢で突っ込まれていたのが嫌だった自分が
年齢の所為にしていることが可笑しく思えた。

そう考えたあと、中澤は自分がもう十何年も異能者をしてきた事に気付く。
劣化コピーでも人格の情報は"元"の自分なのだから。
自分達の最期が来ても、この世界は回り続けるという事実にも。
 
 存在よりも確かに感じていたかったものが、あった。

あの頃には残せなかった"何か"に縋る自分達のエゴを、中澤は
密やかに笑う。泣くよりは、笑っていたかった。

 それはあの時、高橋愛が覚悟を決めた時のように。
843名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 06:13:53.48 0
絶望はとうに見飽きている。
どんな"結末"であろうと、信じてみようと思ったのだから。

泣きながら笑おうとしていた中澤の行為を中断させたのは、卓上に
置いてある電話から流れて来た静かなメロディだった。
中澤に対して連絡をする人物はそう多くはない。
液晶画面に並んでいる電話番号。

普段ならすぐに出たであろう電話に、中澤はしばし迷ったが
自分の声が震えないよう細心の注意を払ってから声を発する。

 「誰や?」
 『………』
 「この電話は特定の人間にしか教えてへん。
 そもそも普通の回線すら使ってないからな。…紺野か?」
 『中澤裕子さん…ですか?』

その声に、中澤は今までの出来事よりも驚愕した表情を浮かべた。
同時に、この電話の意図が掴めない。
何故今頃、しかもこのタイミングでコンタクトを取る必要がある?
 
 『お願いします。私を、ダークネスのいた場所に連れてってほしいんです。
 …i914が生まれた場所へ、海上の孤島へ!』

道重さゆみは叫ぶように懇願する。
全てが生まれ、全てが終わった場所。

誰かの命を救うために、自分の命を削る為に。
844名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 06:15:05.27 0
>>839-843
『異能力 -Night comes. Inky night comes-』
以上です。

>>829
偉大なる第1話を立てた人が行ってるみたいですよ。

皆さんは舞台とか観に行ったことはあるのかな?

---------------------------------------------ここまで代行
845名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 09:05:09.60 0
朝から乙
矢口散々な目に遭っとる
846名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 11:51:12.01 0
矢口ェ…
847名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 11:56:52.27 0
>>844
更新代行乙です
ダークネスと高橋愛との血の繋がりとかスレ初期の頃の作品にありましたねえ
冥界から蘇った者たちがどんな終焉を迎えるのか
次の更新待ってます
848名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 12:17:29.97 0
「しくじったぜ……」

簡単な任務のはずだった。
ダークネスの幹部である矢口真里は、諜報部の吉澤からそう聞いていた。

敵組織の機密文書を取ってくるだけです。能力者は2、3人いるみたいですが、あんたなら簡単でしょ?

その言葉を真に受けて矢口は護衛もつけずに敵の本拠地に単身乗り込んだ。
が、待っていたのは徒党を組んだ能力者の集団。
お得意の能力阻害も全員をカバーする万能なものではなく、みじめな敗走を選択せざるを得なかった。

「吉澤のやつ、ガセでおいらを動かしやがって」

下手したら死んでいた。
冗談じゃない。こんなどうでもいいことのために命を落とすなんて、馬鹿げている。
このツケは必ず払ってもらう。
とは言え、金に換算できるようなものではなくては意味がない。
とにかく、金が必要だ。矢口は組織のいち幹部で終わるつもりなど、さらさらなかった。
849名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 12:27:08.96 0
追っ手を逃れるべく、街はずれの工場跡へと逃げ込む矢口。
たしかあそこなら”ゲート”が使えるはず。
ダークネスの本拠地、絶海の孤島まで移動すれば最早誰も彼女を追うことはできない。

工場跡とは言え、機材は全て片づけられ、中はただの打ちっぱなしのコンクリートに囲まれた空間。
矢口は、ゲートの痕跡を探るために意識を集中させた。

「お待ちしてましたよ、矢口さん」
「誰だ!!」

今の矢口は、能力者との交戦で消耗していた。
敵に襲われれば、一たまりもない。
跳ね上がる心臓を抑えつつ、懐から護身銃を取り出す。が、それを再び仕舞い込んだ。

「なんだお前かよ、脅かすんなっつーの」

矢口を待ち受けていたのは、ダークネスの「叡智の集積」Dr.マルシェであった。

「脅かすつもりはなかったんですが。ずいぶんお早い帰還のようで」
「うっせ!あれはおいら向きの仕事じゃないね。あんなもんはGとか氷の魔女にやらせる仕事だろ」

マルシェの嫌味に、露骨に嫌悪感を顔に出して毒づく矢口。
とは言え、わざわざお出迎えしてくれた相手を邪険に扱い過ぎるのも問題だ。
850名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 12:38:25.41 0
「とにかく、激務でおいらは疲れてんだ。さっさとゲートで本拠地に送って……」

そこで矢口は、妙なことに気付いた。
ダークネスが誇る空間転移装置、通称「ゲート」は、ダークネスの根城に設置された本体を操作させることではじめて機能する。
そしてその装置の特殊性故に、組織において操作できる人間はただ一人。
目の前にいるDr.マルシェだった。

「おい、何でお前がここにいるんだよ。お前がここにいたら転送できないじゃんか」

マルシェは答えない。
それどころか、腕時計のほうに目をやっている始末。

「お前何無視して……」
「そろそろ、時間ですか」

一体何のことを言っているんだ。
訝しがる矢口は、そこではじめて気づく。Dr.マルシェの横に、もう一人の人物がいることを。

「……R?」
「気付かなかったんですかぁ?消耗してるとはいえ、ずいぶん気を抜いてるんですねえ」

ボンテージスーツに身を包んだ粛清人が、薄く微笑む。
その笑みは、明らかに矢口を嘲笑するものだった。

「どういうことだよ!何でRが」
「お金のことにはずいぶん聡いのに、こういうことにはまったく鈍いんですね。矢口さん、あなたは消されるんですよ」

眼鏡の奥のマルシェの瞳は、すでに矢口を映してはいなかった。
851名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 12:49:55.63 0
「は?わけわかんねえよ。おいらが何をしたんだよ」
「さすがは『詐術師』の二つ名を持つだけのことはありますね。しかし、これを見てもまだお得意の舌先三寸が通用しますかね」

言いつつマルシェが取り出して見せたのは、日付と数字の羅列。
ダークネスが管理している外国の銀行口座から、巨額の資金が抜き出されているデータだった。

「おい、それは」
「中澤さんの許可もなく、よくもこれだけの資金を横領できましたね。下手すれば、組織が傾きかねない」
「お分かりになりましたか?矢口さんが粛清される、理由」

まさかこんなに早く足がつくとは。でも。
動かぬ証拠を突きつけられながらも、矢口の心は追い込まれていなかった。

「お前ら、おいらを誰だと思ってるんだよ。アサ=ヤンの時代から組織を支えてきたオリメンだぞおいらは。おいらが残してきた
功績に比べればこんなもんはした金じゃん。裕ちゃんだって目をつぶってくれるはず」

矢口には自信があった。
組織が本気で自分を粛清するつもりなどないことを。
ダークネスをここまで大きくしてきたのは自分たちオリジナルメンバーだ。
自分がそれだけの功績をあげてきたことを。
しかし、その自信はすぐにRの言葉で崩される。

「その中澤さんが命令を下したんですよ。矢口さんを粛清しろってね」
852名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 13:03:22.80 0
矢口は、Rの言っていることが呑み込めずにいた。

嘘だろ。裕ちゃんがそんなこと言うわけないじゃんか。
今までおいらがどれだけ組織に貢献したか一番知ってるはずなのに。
例の災厄の二人組を育てたのも。闇事業を成功させ組織に巨万の富をもたらしたのも。
全部全部、おいらがいたからできたことなのに。

「くそ!こんなのインチキだ!デタラメだ!そうだ、お前ら単独で動いてんだろ!!」
「残念ながらこの決定は中澤さんと『天使』『永遠殺し』『不戦の守護者』の合意で下されています」
「認めねえ!おいらそんなの絶対に認めねえ!!」

矢口が、自らの能力を一気に解放する。
Rの念動力さえ封じれば、相手はただのきしょい女だ。増してやマルシェはただの科学者。
おいらの早撃ちで、間髪置かずに頭を撃ち抜いてやる。
だが、それよりも早く、Rの念動力が矢口を吹き飛ばした。

「がはっ!な、何で……」

全身の骨が軋み、矢口は吐血する。内臓にまでダメージが入った証拠だ。
能力阻害を展開したのもかかわらず、なぜRは念動力を使えるのか。答えは。

「どうですか矢口さん、能力阻害をかけられる気持ちは。新鮮でしょう」
「な、何だよそれ」
「うちの部下が小型化した能力阻害装置です。おもちゃみたいな出来ですが、消耗しきったあなたには効果があったようですね」

Dr.マルシェが眼鏡を弄りつつ、言う。
状況が、言葉が頭に入らない。混乱している矢口をよそに、黒い粛清人の足音が確実に矢口へと近づいてゆく。

矢口の小さな頭に、手が添えられる感覚。
チェックメイトだった。
853名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 13:10:26.33 0
「矢口さん、言い残すことはないんですかぁ?石川が聞いてあげますよ?」

何で、何でおいらがこんなところで!
こんなくだらないことで命を失うような存在じゃないはずなのに!!
矢口は、最後まで事実を認めようとはしなかった。

「うるさい、この半ケツ女。キンキンしたアニメ声、吐き気がすんだよ」

そう言って、矢口はわざわざおぇぇ、と口に出して吐くジェスチャーをする。
気の短いRの導火線が、一気に爆発した。

鷲掴みにされた矢口の頭は、まるで花火のように、脳と血を周囲にまき散らし、爆ぜた。

「きたねえ花火だぜ。って一遍言ってみたかったんだよねえ」

Rは返り血を浴びつつ、ご満悦の表情。
先輩に対する敬意など、欠片もなかった。

「残念ですよ、矢口さん」

マルシェはそれだけ言うと、踵を返し工場を後にした。
854名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 13:12:02.12 0
>>848-853
「詐術師の最期」

やぐっちゃんよ永遠なれ
855名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 13:14:10.47 0
リアルタイムで読んでたがリガちゃん怖えええええええええええええええええ
856名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 13:16:28.12 0
すげー残酷なのにすげー痛快なのは何故だろう
(-人-)ナムナム
857名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 13:17:19.94 0
いくら矢口でも哀れだわ
858名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 13:21:19.95 0
何気に登場人物がタンポポメンバーなのか
現実にリンクさせてる(ミニモニやバラエティの活躍)のもうまいやね
ただそれだけに悲惨な読後感が
859名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 14:51:43.30 O
>>844
更新代理乙です
ダークネスの残党たちは舞台から降りた感じでしょうか
i914とリゾナンターの最終決戦楽しみにしてます
860名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 17:50:08.29 O
あげ
861名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 19:54:04.39 0
おっと
862名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 21:35:18.67 0
夜保
863名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 23:20:32.35 0
あげ
864名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 23:24:16.29 0
規制が解除できたと思ったら忍法帖…。
というかこれっていつまであるの?
865名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 00:47:56.38 0
あげ
866名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 01:17:48.46 0
おやすみ保全
867名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 03:54:15.85 O
寝るのだよ
868名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 06:18:01.41 0
起床
869名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 08:07:18.57 0
>>746-753 の続きです

さゆみの前で、死んでいたはずの少女、小川紗季。
偶然現場に居合わせ、そして爆発に巻き込まれたのだという。彼女が持つ「不死能力」がなければ本当に死んでいたところだ
った、と当の本人はあっけらかんと話した。

「そうなんだ。あなたたちが、『エッグプロジェクト』の」

道重さゆみは、爆発事故で偶然出会った二人の少女。紗季、そしてもう一人の前田憂佳から話を聞き、そのプロジェクトの名
前を思い出した。

確かPECTの任務遂行能力に限界を感じた警察の上層部が、若い能力者を集めて育成するプロジェクトだったはず。

そういう動きがあることはさゆみも知ってはいたが、まさか実戦投入されるまでになっていたとは。警察も、各地で犯罪者の人
材バンクと化している反社会的能力者集団への対策に本腰を入れ始めたということなのだろうか。

「私たちも道重さんのこと、知ってますよ。リゾナンターって有名じゃないですか」

活発そうな少女・紗季が、笑顔で言う。
後ろでもう一人の少女である憂佳が、失礼だよぉ、と嗜めた。

「でも、憂佳たち、研修期間中ずっと聞かされてたんです。リゾナンターさんたちは、たった9人でダークネスに立ち向かった英
雄だって」
「そんな、英雄だなんて」

憂佳の言葉に、さゆみは照れくささと同時に居たたまれなさを感じる。
870名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 08:08:15.35 0
確かに自分達はダークネスという巨大な組織に対抗してきた。たった9人の能力者に対して、数百、いや末端組織まで含める
と数千の戦闘要員を抱えるダークネス。まるで巨象に立ち向かう小動物のような状況。それでも、諦めず、戦ってきた。

全ては、二度と自分達のような悲しい人間を生み出さないために。

「でも、『銀翼の天使』には負けちゃった」
「ちょっと紗季ちゃん!」

鋭い、紗季の一言。
闇に抗う意思が、砕かれたあの日。
一度は、目的を見失った。絵里が倒れ、小春や愛佳が能力を失い、ジュンジュンとリンリンが故郷に帰っても。リゾナンター
が解散しなかったのは、リーダーの愛の存在があったからだ。
その意志は、受け継がれる。

「そうだね。確かに負けちゃった。けど、1回の負けなんかでさゆみたちは終わらない」

さゆみは言いながら、強い光の宿る瞳で二人のことを見つめた。

「なるほど。さすがはリゾナンターのリーダーですね」

憂佳が、得心したように言う。そして。

「でも。ダークネスを倒すのは私たち『スマイレージ』ですから」
871名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 08:09:00.09 0
さゆみの視線を、挑戦的な態度で返す、紗季。
あえて言うなら、それは敵意にも似ていた。

「紗季ちゃん、ほら、お仕事お仕事」
「忘れてた。それじゃ私たち、負傷者の治療の続きをしてきますね」

展開された空気を収拾するように声をかける憂佳に、何事も無かった風な口調で紗季が挨拶をして立ち去る。それが逆に、先
ほどの時間の異質さを際立たせていた。

なんなの、あの子たち…

さゆみの胸に、いつまでも違和感が纏わりつく。
それを振り払うように、再び負傷者の救護活動に専念するのだった。
872名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 08:09:47.12 0
「もう紗季ちゃん、あんなこと言わなくてもいいのに」

崩壊したロビーの瓦礫の陰。
非難めいた憂佳の言葉だが、紗季はものともしない。

「かにょんだったらきっともっとひどいこと言ってたと思うよ。それに、どうせいずれは敵対することになるんだから」
「それはまだ、わからないよ」

憂佳は否定するが、その表情には暗い翳が差していた。

「そう言えばさ、『エッグ』の落ちこぼれたちがリゾナンターの子たちにちょっかい出したんだってさ」
「ほんとに?でもなんで…」
「さあ。どうせ手柄あげて復帰でもしたかったんじゃないの?みっともない話だよね」

紗季の、明らかに悪意のある口調。
「エッグ」と名づけられた若い能力者集団は、警察組織に登用されるに当たって、一種の篩い分けをされた。結果、紗季や憂
佳は残留し、7人の少女は組織から切り捨てられた。リゾナンターに奇襲をかけたのは、再評価してもらうための一手だった
のだ。

「よしなよ。昔の仲間のことを悪く言うのは…」
「憂佳は綺麗ごとばっかり。つまんないよ」

顔を顰め、苛立ちを見せる紗季。だが、すぐに笑顔になる。
873名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 08:10:28.89 0
「でも、これからはきっと面白くなる。名ばかりのリゾナンターなんかよりも先に、あたしたちがダークネスを倒すから。邪
魔をされたら、あいつらごと潰せばいい」

言いながら、紗季は足元の瓦礫を思い切り蹴飛ばす。
砕け散った建材の破片が、耳障りな音を立てて飛び散っていった。
874名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 08:11:45.59 0
>>869-873
以上代理投降終了
875名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 08:23:14.79 0
>>874
乙おつ
意味ありげな幕間劇ですな
スマ軍はダークネスとの戦いに参入してくるのか
目が離せませんな
876名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 09:28:35.95 O

サキチィ黒いわぁ
877名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 11:40:14.45 0
こういう三つどもえの構図好き
878名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 13:44:51.32 0
>>874
第三の勢力の対立も面白いですね。
この黒さは個人的に好きだ。
879名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 15:38:03.08 0
規制解除祝いに上げるのだよ
880名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 17:12:08.18 0
あげえ
881名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 18:59:54.39 0
最近のリゾスレは静かだね。
882名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 20:49:03.09 O
規制で携帯からしか書けない
883名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 22:15:10.34 O
俺も携帯族
884名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 22:22:03.19 0
一時期からネタ保全が完全に無くなったからね・・・ まだネタ保全が許せない人いるのかな?w
885名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 22:44:14.39 0
>>884
そんな人が居たの?
全然やってくれても良いと思うけどなあ。
他のスレでもAA使ったりしてるし。
886名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 22:44:59.59 0
うむ
むしろ待ってる
887名無し募集中。。。:2013/06/25(火) 23:49:05.48 0
>>766さんが言ってた不良スレが気になって
検索したら面白いですね、やー製作意欲がくすぐられるというか。
漫画が見れなかったのは残念。
888名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 00:09:29.63 0
>>887
ここで落とせるみたいですよ

780 :名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 02:14:13.24 0
ハロプロDDろだはどうですかね一番古いファイルは半年前ぐらいの残ってます
781 :名無し募集中。。。:2013/06/24(月) 02:26:02.41 0
>>780
そこにあげときました
3104zipです
889名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 00:14:43.40 0
>>887
作品が乱立して混沌としてる感じは初期のリゾスレを感じさせる(当時リアルタイムに見てないけど)
890名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 01:44:20.90 0
>>888
おおホントだ、ありがとうございますっ。
なんだか当時のリゾスレで書いてた絵描きさんを思い出す…(しみじみ

>>889
懐かしい思いになりましたね。
ネタ仕込みでとても楽しめました、でもこの書き手さん
時々ここに来てる人かなあ。
891名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 04:41:25.06 O
不良スレ参加したいけど向こうは代理制度がないからに…
892名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 07:26:03.04 0
おはリゾ
893名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 07:49:05.70 0
まとめサイトや代理投稿みたいなシステムか構築されたリゾスレってすごいよなぁ…初代まとめちゃんに感謝ですなぁ
894名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 07:51:37.50 0
>>884
ガキさんとダークネスの漫才復活してほしいw
895名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 08:34:32.71 O
リホナントとか闇に哭くとかのネタシリーズも読みたいね
896名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 08:41:18.12 0
おはリゾー

>>893
代理システムが凄く有り難いですよね。
サボちゃんのおかげだよホントに、基盤が出来てるから
今でもリゾスレは成り立ってると思ってます。

>>895
誕生日投稿待ってたのになあ、何処に行ったんだリホナンター…
897名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 11:09:27.19 O
あれだよ
さゆの誕生日まで温存してるんだよ
898名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 12:20:47.40 0
ネタ書いてた作者さんたちが去った印象はあるね
899名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 14:55:27.51 O
大丈夫
スレがある限り必ず帰ってくるさ
そう信じてる
900名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 17:05:11.50 O
あげ
901名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 17:44:43.38 0
だね
読んでる側ですら倦怠期みたいなのがある
どんなお話でもあまり響かないというか特に何も思わない
後からまとめて読むと一気に引き込まれて睡眠時間が減ってしまったりw

インフルエンザブレード待ってます!
902名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 18:42:45.32 0
>>901
作者さんインフルなのかな?w

倦怠期は書き手だと長編になったりすると症状が出て来ますね。
別の設定で短いのをwordに書きなぐったりとか、舞台のDVDを
見たりしてテンションを上げたりするとマシになったり。
903名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 18:54:21.40 0
したらば掲示板の被害が凄いんだが、これは削除することは出来ないのかな?
904名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 19:18:20.92 0
見て来た
グッチとかゴヤールとか無関係なスレが立ってるね
管理人さんは削除できるだろうけどなぁ
905名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 19:21:27.05 O
ダークネスの妨害工作か
906名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 19:55:17.33 0
ジュンリンが輸入してきたパチもん屋だったりして(泣)
907名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 21:45:20.46 0
したらばの管理人ってやっぱりサボリンさん?
908名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 21:59:59.84 0
そう
909名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 22:13:27.71 0
>>895
またのき・・・いや何でもない
910名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 22:25:16.45 O
また規制された
3日しかもたなかった…
911名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 22:40:18.78 0
>>907
あれ、そうなの?
まとめサイトが閉鎖されるのは聞いてたけど
そのときにしたらばの引き継ぎは無かったのかな。
912名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 22:41:21.34 0
繋がりのある住人がもういないのでは
913名無し募集中。。。:2013/06/26(水) 23:53:07.65 0
あげ
914名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 00:35:24.42 0
i914ゲットw
915名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 00:46:05.94 0
>>903
しかもよく見ると全部違う内容…ある意味凄いが、何したいかわからん

代理スレももうすぐいっぱいになりそうですね
916名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 00:57:53.16 0
しかしこのままだとしたらばがもっとカオスになってしまう。
どうしたものか。
917名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 01:21:39.38 0
1サボリンに直談判
 迷惑ですね
2新たに作成する
 誰が?
3管理人が気付くのを待つ
 気まぐれにの見てくれるのを祈る
918名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 01:28:51.00 0
直談判できる人がいるならしてもよいのでは
919名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 05:01:51.04 O
ぽぜなんと
920名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 05:52:56.45 0
銭琳は船の甲板で思いに耽っていた。
正規ルートでは故郷に居場所が知れてしまう可能性がある為だ。
違法ではあるといえど、信頼をおける故郷の仲間による手引きで
この船は並の人間、異能者ですらも認識されないようになっている。
そういった異能保持者が船乗りだから、というのもあるが。

李純は自室で眠っている。というよりは、この船に乗るまでの間
彼女の意識は戻っていない、まるで赤子のようになっていた。
肉体を変容させる異能を保持する李純が、以前の様に動くかは分からない。

それほど彼女の肉体に傷痕を残してしまった『i914』という存在。

だが、そんな非情な存在が、瀕死の状態だった銭琳と李純を
追ってでもとどめを刺そうとしなかったのは何故だったのか。
【瞬間移動】は相手の位置を把握し、座標を知らなければ行使は難しい。
だがあのi914であればそれを推測することは容易かっただろう。

もしかしたら、とは思う。
『蓄積』という行動原理によって、"何か"を得た疑似精神が多少なりとも
"情"というものを悟っているのだろうか。
だが、肉体は分かっていてもi914の本能に抗えるとは思えない。

あの強く、たくましく、だが人の悲しみを誰よりも感じてくれた人。
そんな中で、心の底から湧き出て、全身を支配する畏怖に抱かれる時。
きっとそれが、彼女の中に眠っていたi914だったのかもしれない。

今でも、逃げる事を考えている自分が居た。
しかし逃げずに真っ当ではない方法で戦うことも模索し続けている。
死の予感をいつの頃からか抱いてしまってから。
921名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 05:53:35.37 0
それでも予想以上に、冷静だ。
自棄になっているのかもしれない。自身の心情を、今一つ理解できない。
生への執着。死への覚悟。
目的を達成するまで生きていたいと思うと同時に、命を賭けて
戦うことを厭わない自分も居る。
そしてあの人も。



―― 高橋愛と『i914』は対極のようで、同極だ。

片方は人を愛し、守り、生きてほしいと思う。
片方は執着し、征服し、蹂躙したいと思う。
矛盾しているようで、あまりにも最も過ぎる感情。そして根源は同じ。
それが同時に影響を与え続けている。本来ならば理性に抑制されるはずの本能。

暴力的な衝動。
蓄積された事による機械人形には無かった状況判断。
生かさず殺さず、ただただひたすらに殴り、痛めつけ、圧倒し
踏み躙り、自身の破壊的衝動をぶつける。
そのi914としての本能が優先された時、高橋愛の本能は歪んだ。

全て推測。
だが、彼女の温かみを直に触れて来たからこそ、想う。
自分がいつか、本当に壊れてしまうことを自覚した時。
"仲間でさえも縋れなくなった彼女に残ったのは、たった一つの拠り所"。

 (…もっと話をすれば良かったな)
922名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 05:54:25.22 0
そんな事を今更ながらに思う。
それが何の解決にもならなかったとしても。
もう一度、会って、話をしたかった。
他愛の無いものでも構わない。好きなアニメや、好きな食べ物。
それを笑って、喜び合ってみたかった。

i914の干渉がある前に。これも多少の執着が込められるのだろうか。
高橋愛が求めていたものは、あまりにも自分達とは変わらない。
それをただ人よりも【蓄積】するに特化した存在というだけで、こんな
事態へと追い込んでしまった。

銭琳は考える。考えなければいけない時だった。
逃げない為に、戦う為に、そして出来る事なら高橋愛を。
もしもを考える、ただただ考える。
 
 "if"なら、救いがあるような気がしたから。

―― ―― ―

久住小春が立ち止まったのは、隠れ家を後にしてから十分経った頃。
音と色と命が恐ろしく薄い空間が、騒音と色彩と存在が溢れた
ものに変わっている、大きく吸って、大きく吐く。
走り続けた身体がもう限界の兆しを見せている。運動不足。
久住は体重が増えたかな、なんてことを心配してみた。

心配することはいくらでもあったが、自分で言って失笑しか出ない。
失敗か、と思ってようやく笑みが浮かんだくらいだ。
923名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 05:55:07.73 0
あまり見覚えの無い、だが通った事があるような気がする路地裏。
大通りの喧騒が僅かに伝わってくるこの道には、それなりの人通りがある。
だが久住は【念写能力】で自身を景色と同一化することで、視界には見えない。

 誰かに見つかっては厄介だ。
 仮にもこの街では有名人としての自覚はある。
 だから見つかってしまってはいけない。
 ――巻き込んではいけない――

新垣が提示した埠頭までは時間にすると約30分かかる。
今なら大通りへ行けばタクシーでも捕まえて最短距離を走れば
10分は早く到着できるだろう。
電車でも良い。とにかく新垣や、田中れいなよりも早く着きたい。

ズクリと、腕に痛みが走る。
怪我は完治している腕が、過去を引きずる。
らしくないと、舌打ちをした。
過去ではなく、未来があることを告げてくれた仲間の顔が浮かぶ。

まだ眠っている仲間の顔が浮かんでは消えた。
―― 違う。
これはそういった類の衝動ではない。
自身の中から湧き出る衝動は、自身の想いでしかない。

自分の為に。
自分の為の決着を。結末を。

―― ―― ―
924名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 05:55:50.41 0
腕が疼く。目尻からじわりと黒い"血"が滲み出ているような気がして。
田中れいなは包帯の上から押さえる。
表面は乾いていた。
だが瞼の下で何かが蠢いている様な気がした。

抉りだしたい衝動に冒されながらも、それが出来ないことを悟る。

 「田中っち!」

新垣里沙の言葉でハッと顔を上げる。
大通りの車道にまで歩みを進めていた田中を、新垣が制したのだ。
隣に居た佐藤が服を引っ張ってくれなければ、そのまま突っ込んでいた。

 「ご、ごめん。ちょっとどっか行ってたけん」
 「…田中っち、身体、大丈夫なの?」

新垣の言葉に、田中の表情が固まる。
佐藤にはそれが先ほどの戦闘によるものだと思っていただろう。
だが新垣は、確信を持ってしまった。
田中の身体が今にも"崩れてしまう"寸前だということに。

緊迫した空気の中、佐藤の腹から小さな音が発せられた。
二人の視線が彼女に注がれ、しまった、という表情を浮かべる佐藤。
そういえば、夕食を食べていなかったことを思い出す。

 「あ、あの、おなかすいたんですけど、おなかすいてないんです」
 「こんなときだけそんな下手な言い訳せんでいいけん。
 れなもお腹に入れときたいっちゃけど」
 「そうだね…多分まだ時間はあるから、佐藤、なにが食べたい?」
 「いいと?そんなにのんびりしとって」
 「大丈夫だよ、ほら、なんでも言ってみな。好きな食べ物とか」
925名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 05:56:26.09 0
 「えと、ラーメン以外のめん類、です」
 「あはは、なにその言いまわしー。ラーメン以外って、うどんとかそばとか?」
 「う…はいっ」
 「そっかそっか、田中っちも良い?」
 「…しょうがないっちゃね」

田中が折れた。
彼女は佐藤にとってはどこか甘くもあり、厳しい。
年下の子との壁が厚かった田中だが、これまで出逢ってきた中で
今の『リゾナンター』に参加する佐藤達とは気が合うのかもしれない。

新垣自身との関係は、正直良くは無かった。
今も共同戦線を張っているだけで、心を通わすことは無いのだろう。
そんな人間と食を囲むというのだから、佐藤が空気を緩和してくれているような気もした。

 彼女がいなければきっと、こうして落ち着けることもなかった。

田中の話では、後藤真希の【空間支配】に"隔離"されたとあった。
自分達へ全てを預けているのだとすれば、あの亜空間から
出るにはまだ時間がかかるはずだ。
気まぐれな人ではあるが、自分達が不利になるようなことはしないだろう。

喫茶『リゾナント』でご飯を食べていたあの頃を思い出す。
生涯最後の食事になるかもしれないということは、考えないようにした。
926名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 05:57:45.45 0
>>920-925
『異能力 -Restart each-』
以上です。

前回の冒頭は特に人物は決めてなくて、仲間の
誰かってことだったんですけど、小さい人のイメージ恐るべし。

----------------------------------------------------ここまで代行
927名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 06:32:41.75 0
朝から乙
最終決戦に向けて高まってく感じですねえ
928名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 09:24:12.38 0
あげるのだ
929名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 11:16:00.02 0
SSP
930名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 12:57:20.79 0
後藤なら単独でi914と渡り合えそうだがリゾナンターでないとダメなのか
クライマックスが近づきつつあるね
931名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 14:36:36.51 O
ダークネスはあくまでも添え物だからね
原点に帰ればリゾナンターだけの話に帰結していくのは自然な流れかと
932名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 16:14:32.95 0
>>926
更新&代行乙です
離ればなれになっていた仲間が集まっていく過程に胸が熱くなったり
でもラストバトルが始まったら凄惨な描写で肝を冷やすんだろうなきっと
933名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 17:36:23.41 O
わくわく
934名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 19:18:02.04 O
夜あげ
935名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 20:12:57.07 I
「暇だねぇ」
「そうですね」
「雨だねぇ」
「そうですね」
「……2人きり≠セねぇ」
「え? は、そ、そうですね」
「ねぇ、はるなん」
「な、なんですか?」
「さゆみと、2人きりなんだよ?」
「ハイ?」
「何か、言う事、ないの?」
「エ?」
「ほ・ら」
「えっとー、あのー……」
「目の前にはるなんの憧れのさゆみが居るんだよ?」
「そそそそそんな近付かれても、きききき緊張ちょちょちょちょ」
「しないの? こ・く・は・く」
「えー!?」

カランカラン

「そんなに顔を寄せる程、親密な人が居たんだね……はるなん」
「え!? どどどどどうしてお店に!?」
「……さよなら!」

カランカラン

「だーれ、今の?」
「おおおおお友達です! 待って! しょうこさーん!」


──駄保全作
936名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 21:38:22.23 T
絵画と仏像が好きな人だったら大変だったなw
937名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 21:45:53.47 0
観覧車のアレかw
9期10期はこの手の話が好きだなって思う。
938名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 21:57:48.41 O
絵画仏像マニアの人だったらきっとはるなんは■■シリーズの後藤さんみたいに……
939名無し募集中。。。:2013/06/27(木) 22:41:29.44 I
>935 部外者まで登場したw だからかしらんが今回は兼保全作じゃないね
940名無し募集中。。。:2013/06/28(金) 00:02:34.68 O
ほぜ
941名無し募集中。。。:2013/06/28(金) 00:04:53.94 0
一応喫茶リゾナントでの会話っぽいね>カランカロン
942名無し募集中。。。:2013/06/28(金) 02:41:47.77 O
寝るのだよ
943名無し募集中。。。:2013/06/28(金) 04:46:51.25 0
SSP
944名無し募集中。。。:2013/06/28(金) 07:29:24.66 0
寂しい朝
945名無し募集中。。。:2013/06/28(金) 09:18:50.14 0
オハヨー
めざましライヴに出演するみたいね。
朝はコーヒー牛乳を一杯。
946名無し募集中。。。:2013/06/28(金) 10:36:48.59 0
SSP
947名無し募集中。。。:2013/06/28(金) 13:10:33.62 0
swswpn?
948名無し募集中。。。:2013/06/28(金) 17:02:46.89 0
あげ
949名無し募集中。。。:2013/06/28(金) 18:48:17.84 O
週末あげ
950名無し募集中。。。:2013/06/28(金) 20:47:44.71 0
あげ
951名無し募集中。。。:2013/06/28(金) 22:49:15.55 0
1000までもうすぐ後少し!
952名無し募集中。。。:2013/06/28(金) 23:56:14.79 O
週明けには次スレだな
953名無し募集中。。。:2013/06/29(土) 00:08:11.90 0
新作きますかね?雑談で埋めるのもありですが…昔のログ見るとスレ総括ときしてたみたいですけど?
954名無し募集中。。。:2013/06/29(土) 00:15:23.90 I
>>953 今回は異能力とか大作ラッシュだったな
955名無し募集中。。。:2013/06/29(土) 00:32:45.43 0
>>954
異能力、Χ→Я、地平本願、れなまー鬼ゴッコ…大作続きでしたねーあと、ちっちゃい人の災難とかw
956名無し募集中。。。:2013/06/29(土) 00:54:43.62 O
トピックス風に…

・異能力最終章スタート
・×の人新章スタート
・米待望の第2回
・れいな卒業につき関連作品投下
・矢口災難
・地平本願とNewWindの続き投下
・鞘師誕生日なのにリホナント来なくて遺憾
957名無し募集中。。。:2013/06/29(土) 01:02:47.50 0
一体リホナンターはどこに?『闇に(つДT)』も最近来ませんね・・・
958名無し募集中。。。:2013/06/29(土) 01:13:56.86 O
規制がきついからね
わざわざ代理頼んでまで載せるものでもないと作者さんたちが遠慮してるに違いない
959名無し募集中。。。:2013/06/29(土) 01:37:46.36 0
確かに保全で代理投稿は難しいですね…じゃあ、規制解除後新作ラッシュに期待しますか
960名無し募集中。。。:2013/06/29(土) 06:40:23.55 0
おはよう
961名無し募集中。。。:2013/06/29(土) 09:37:52.71 0
962名無し募集中。。。:2013/06/29(土) 10:43:45.62 0
963名無し募集中。。。:2013/06/29(土) 14:00:50.16 O
964名無し募集中。。。:2013/06/29(土) 16:08:24.25 0
水落
965名無し募集中。。。:2013/06/29(土) 16:29:38.74 O
里保全
966名無し募集中。。。:2013/06/29(土) 18:22:51.47 0
967名無し募集中。。。:2013/06/29(土) 20:57:03.78 O
サタデーナイトもほぜなんと
968名無し募集中。。。:2013/06/29(土) 22:53:58.07 0
あげ
969名無し募集中。。。:2013/06/30(日) 01:15:31.81 0
新作の予感…
970名無し募集中。。。:2013/06/30(日) 03:38:07.23 O
ねるなんと
971名無し募集中。。。:2013/06/30(日) 08:10:16.50 I
喫茶リゾナントのモーニングはいかがでしょうか
972名無し募集中。。。:2013/06/30(日) 10:09:35.95 0
モーニングセット1つ下さいな
973名無し募集中。。。:2013/06/30(日) 12:21:42.32 0
名古屋のモーニングみたいなのが出てくるのか
974名無し募集中。。。:2013/06/30(日) 14:22:54.44 O
香音の分野だに
975名無し募集中。。。:2013/06/30(日) 16:34:00.61 0
あげ
976名無し募集中。。。:2013/06/30(日) 17:13:00.90 0
今さらだが、鞘師のミント君がカビにやられたのは……水限定念能力が無意識に発動してたから?
977名無し募集中。。。:2013/06/30(日) 17:47:15.00 0
梅雨の時期だからいつも以上に能力が発動しやすかったのかも
もしくは梅雨の時期だから無意識のわずかな能力発動でも効果抜群だったとか
978名無し募集中。。。:2013/06/30(日) 18:06:34.81 O
水使いたるもの常に湿気の多い場所に身をおくべしというじいさまの言葉が
979名無し募集中。。。:2013/06/30(日) 18:42:07.38 0
食器洗いとかお風呂掃除とか上手に出来るようになったのだろうか
980名無し募集中。。。:2013/06/30(日) 20:29:24.09 O
水を使う掃除はお手のもの
逆に水を使わない掃除は以下省略
981名無し募集中。。。:2013/06/30(日) 21:59:25.89 O
982名無し募集中。。。:2013/06/30(日) 23:02:47.09 0
したらばに新作きてるけど、投稿は次スレかな?
983名無し募集中。。。:2013/06/30(日) 23:59:04.33 O
ぎりぎり行けそうだが果たして
984名無し募集中。。。:2013/07/01(月) 00:15:10.88 0
代理投稿やりたいけど、ただコピペすればいいのかと思ったら色々ルールがあって難しいんですね…
985名無し募集中。。。:2013/07/01(月) 04:12:30.16 0
おやすみ
次スレどうするのかな
986名無し募集中。。。:2013/07/01(月) 09:13:50.92 O
おはよう日本
987名無し募集中。。。:2013/07/01(月) 10:29:58.07 0
昨日はひさびさに愛ちゃんの歌うリゾナント聞けて満足した
自分的にはやっぱりいろいろ原点だな
988名無し暫定さん。。。:2013/07/01(月) 12:56:31.97 0
いつも立ててくれる方がいないなら自分が次スレを立ててもいいですが夕方になるかもです
次スレのURLを貼りに来るのでちびちび保全しといていただけるとありがたい
…それと独断ではありますが保管庫で使ってる@wikiで掲示板の避難所を作って過去ログをインポートしてます
そちらを使用するか現在の掲示板のアカウントを管理人さんから譲渡していただくかは次スレで議論して決めていただくという線で
989名無し募集中。。。:2013/07/01(月) 15:14:24.30 O
保全は任せろ
990名無し暫定中。。。:2013/07/01(月) 18:08:00.63 0
需要があるかどうか定かでないけど次スレ立ててきますかね
991名無し募集中。。。:2013/07/01(月) 18:11:09.83 0
992名無し募集中。。。:2013/07/01(月) 18:33:23.65 0
あげ
993名無し募集中。。。:2013/07/01(月) 20:51:39.27 O
埋保
994名無し募集中。。。:2013/07/01(月) 22:22:20.97 O
つまり土里保
995名無し募集中。。。:2013/07/01(月) 23:24:53.63 0
新スレまで後少し…残りスレはリゾナント新メニューの案でも考えるか。
『しゅわしゅわミントクリームソーダ』
泡がまるで…
996名無し募集中。。。:2013/07/01(月) 23:33:01.64 O
食中毒で営業停止になるからやめてほしいの
997名無し募集中。。。:2013/07/01(月) 23:52:05.31 0
異能力楽しみだなー
998名無し募集中。。。:2013/07/02(火) 00:02:51.94 O
埋めるついでに新しい風待ちと書いとこう
999名無し募集中。。。:2013/07/02(火) 00:25:03.74 O
じゃあおれは米とR-infinityの更新に期待だな
1000名無し募集中。。。:2013/07/02(火) 00:32:40.21 0
今スレ何も書けなくてすみま1000
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