394 :
名無し募集中。。。:
『入学式の日』
カフェに入ってバッグから携帯を出すと、生田君からのメールが届いていた。
「入学式行ってきたよ!制服かっこいいやろー」
という簡潔な本文に写真が1枚。
真新しい制服に身を包み桜の下でポーズを決める生田君が写っていた。
つい2週間前の卒業式の日には「見て見て〜」とやはり写真付きで髪を染めた報告をしてきたばかりだ。
中学の制服は学ランだったが高校ではブレザーだ。中性的な顔と茶髪が紺のブレザーによく似合っている。
ちょっとひいき目だが学園もののドラマに出てきそうな感じだ。
「なにニヤニヤしてるの?彼氏?」
向かいの席からあゆみちゃんが声をかけてくる。
「なんでもないよ」とごまかして携帯をしまった。
「同じ学校に行けないやん」
今の高校に入ることになった1年と少し前、ふくれっ面の生田君に言われた。
聖が通っているのはお嬢様校と呼ばれる女子校で、親の勧めもあり推薦で入学した。
一つ年下の彼氏は1年後に聖を追いかけて同じ高校に入るつもりだったらしい。
「しょうがないじゃん。休みの日には会えるんだし大丈夫だよ」
たしかそのときはそんな風に答えた気がする。
395 :
名無し募集中。。。:2013/04/01(月) 22:48:22.05 0
待ち合わせて手をつないで登校したり一緒に帰る途中に制服のまま寄り道したり。
写真の中の生田君とのそんな高校生っぽいつきあいを妄想してちょっとときめく。
1年前よりぐっと大人びてきた生田君に同級生の女の子がちょっかいをかけないとも限らない。。
「共学に行っとくんだったかなあ」
もっとも、聖が共学校に入ったとしてもちょっと頭の足りない彼氏が同じ高校に入れたとは思えないので多分叶わぬ夢だろう。
つきあい始めた中学の頃はやんちゃで空気の読めない弟みたいに感じていた。
そこは今も変わらないのだが、どんどん筋肉がついて大きくなる体や低く落ち着いてきた声にドキッとさせられることが増えた。
唇と唇のキスはもう何度もしている。最近、キスの後の沈黙がだんだん長くなってきた。
その先の知識だってないわけではないし興味はある。生田君も年頃の男の子なんだからなおさらだろう。
396 :
名無し募集中。。。:2013/04/01(月) 22:49:49.05 0
この前も結局聖から「そういえばさ」と関係ない話を始めてしまった。
やっぱりちょっと怖い。
それに自分から求めるのははしたない女の子みたいで嫌なので、そこは年下でもリードしてほしい。
でも、やんちゃなのに肝心なところでヘタレな彼氏はなかなか求めてこないだろう。
目の前に座るあゆみちゃんに相談しようかと思ったが、運ばれてきたガトーショコラにテンションMAXでしばらくはまともな会話になりそうにない。
「ま、そのうちね」
ここで考えていても仕方ない。
悩みとは無縁そうな親友にならい、聖もテーブルの上のチーズケーキにフォークを入れた。
(次回『2人の出会い』に続く・・・かも)