生田「道重さんスパゲッティーを食べませんか?」5

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30名無し募集中。。。
ヤシさん、スレ立てありがとうございます
御礼とお詫びを兼ねて前スレ648-652の続きをば・・・


舌を絡ませあい、互いの甘い唾液を味わう。口付けも、一度じゃ足りない。もっと、もっとと角度を変えながら何度も口付けを交わす。
流石に息が苦しくなって顔を離すと、さゆみが衣梨奈の頭を抱えて自分の胸に導いた。
そう言えば、前のときもそうだったっけ、と思い出す。
心臓の近くに顔を寄せると、先刻の余裕ぶった態度とは裏腹に強く速い鼓動が感じられた。雪のように白い胸元を強く吸い、小さな跡を残す。
片肘で体を支え、もう片方の手で柔らかな胸の丘に触れた。ふわふわとしたそれは、衣梨奈の指をやんわりと捉え、ゆっくりと跳ね返す。
衣梨奈の呼吸が荒くなってきた。自分の胸の鼓動が痛い。
ふと気付くと、さゆみの声はおろか、呼吸も衣梨奈には聞こえてこない。訝しく思い、頭を押さえられている手の力に逆らって顔を上げた。

・・・・・・え!

さゆみは、指をしっかりと噛み締めていた。噛んでいる指の鬱血が見える。
表情は、快感ではなく、苦しさを堪えているのがありありと解る状態だ。
「な、何してるんですか!道重さん」
衣梨奈は慌てて体を離し、さゆみを抱き起こした。
無理やりに口を開けさせ、指を離させる。余程強く噛んでいたのだろう。歯の跡がくっきりと指に残り、血がうっすらと滲んでいる。
「どうして・・・こんな・・・」
さゆみの手を取り、指の傷に口を持ってい・・・こうとしたところで、さゆみは怯えたようにビクッと体を強張らせた。同時に、強い力で手が引かれる。
「もしかして・・・」
「・・・」
「道重さん、えりなとこんなコトしたくないんじゃないですか?」
「そんなこと・・・」
「だって、嫌がって怯えてるじゃないですか!」
「違う・・・」
「じゃ、今のは何なんですか!!」
31名無し募集中。。。:2013/03/10(日) 00:12:38.33 0
思わず声を荒げる。そんなに自分と居るのが嫌なのかと少し傷ついたのかもしれない。
それを見たさゆみは、衣梨奈の剣幕に怯えて目を伏せた。
衣梨奈は、我に返ってハッとした。
違う。自分は道重さんにこんな目をさせたいんじゃない。
二人の体から剥がしたバスローブを羽織らせようとするが、乱暴に放ってしまった所為か絡まって取れそうもない。
仕方がないので、さゆみの体を押して少し移動させ、掛布団をめくってさゆみの体に掛けた。
「道重さん、どうしてこんなこと・・・自分を傷つけて・・・」
「・・・て、だって・・・」
漸くさゆみが口を開きかけた。衣梨奈は黙ってさゆみの言葉を待つ。
「・・・たは、ガキさんの・・・」
さゆみの目にみるみる涙が浮かんで溜まっていった。言葉も不明瞭で途切れがちだ。
「い、生田、は、ガキさん、が好き、でしょ?」
「・・・」
「だから、本当は、こんなコト、しちゃ、いけない、の、分かってるのに・・・」
「・・・」
「みんな、行っちゃう。絵里も、ジュンジュンも、リンリンも、愛ちゃんも、ガキさんも、今度は、れいなも・・・」
「・・・」
「だから、淋しくて・・・」
ああ、やっぱり自分は淋しさを埋める道具だったのか。
一瞬、衣梨奈は落ち込んだ。このひとは、自分を見てくれていたのでは無かったのだと。
転瞬、それでも良いと思い直した。
あの淋しげな眼は二度と見たくなかったから。
自分とこうすることで、少しでもこのひとが安らげるのならば・・・。
そう思った矢先、さゆみは衣梨奈の手を取って頬擦りした。
「・・・道重さん?」
「生田が、ガキさんを好きで、ガキさんのものだって、分かってる。だけど、さゆみも、安心できるの、生田の傍だけなの・・・」

・・・・・・え?今、何て??
32名無し募集中。。。:2013/03/10(日) 00:15:09.00 0
「だから、あんたが、抱いてるの、ガキさんじゃ、無いって、醒めるのが、怖かった」
「え・・・」
「あんたが、気付いちゃうのが、怖くて、声も、殺してたの」
「あの・・・」
「他人のものを、掠めてるって、泥棒猫だって、分かってるけど・・・」
「み、みち・・・」
「さゆみも、この手が、欲しかったの」
「道重さん・・・」
「生田の、温かい手が、欲しかったの!」
そう言って、さゆみはしゃくり上げた。握りしめたままの衣梨奈の掌にキスをする。
衣梨奈の手にさゆみの涙が降り注ぐ。泣きながらさゆみは言葉を紡ぐ。
「もう、二度と、言わない、から」
「・・・」
「嫌って、二度と、傍に、来なくても、良いから」
「・・・」
「今だけ、想い出を、頂戴、生田」
「・・・」
「今だけ、さゆみで、が、我慢して・・・」

ああ・・・このひとは・・・・・・。

衣梨奈は、さゆみの頭をそっと抱き寄せた。
冷静になれと自分に言い聞かせながら小さくひとつ息を吐く。
「道重さん・・・」
「・・・」
「新垣さんには何もかも話をしました」
さゆみの体がビクッと強張った。
「新垣さん、言ってくれたんです。親離れできたねって」
「・・・え?」
33名無し募集中。。。:2013/03/10(日) 00:16:18.30 0
「えりなは、道重さんに笑ってて欲しいっちゃ」
「・・・」
「えりなが好きなのは、道重さんっちゃ」
涙に濡れたまま、さゆみは驚いた顔を上げる。
「道重さんが笑っててくれるなら、えりなが持ってる何もかも、えりな自身も全部あげます」
「生田・・・?」
「そんとき、道重さんの中に、えりなが居る場所があれば良かねって思っとーとです」
静かに話しかけながら、衣梨奈は、さゆみの額に頬を寄せてそっと頬擦りした。
えりなが堪えていた涙を流してしまったのも、さゆみに気付かれたかな。
「生田ぁっ!」
さゆみがしがみ付いてきた。

そのまま二人は抱き合って泣いた。
子どものように声を上げて泣いた。
涙が枯れて声が出なくなるまで。

漸く泣き止んだときには、泣き過ぎて頭痛がする程だった。体も疲れ切っている。
衣梨奈は、ゆっくりとさゆみの体を横たえた。
そのまま自分も横になり、さゆみに寄り添う。
「道重さん・・・」
呼びかけたが、自分の嗄れ声に驚いた。こんなに泣いちゃったんだ。
「疲れちゃいましたね・・・」
「うん・・・」
「今日は、このまま眠りましょうか?」
さゆみは、ゆっくりと顔を上げ、衣梨奈の目を見詰めた。
さゆみに真っ直ぐな目で見詰められるのは初めてで、思わずドキドキする。
「生田・・・」