生田「道重さんスパゲッティーを食べませんか?」4

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648名無し募集中。。。
・・・済みません、>>641さんではなく>>620の続きですが・・・


新垣さんと話をしてから、衣梨奈は、新垣さんからの連絡をひたすら待った。
勿論、気は逸る。が、子どもの自分と違って道重さんや新垣さんは大人だ。自分には未だ分からない都合などもあるのだろう。
そう自分に言い聞かせなければ、待つ時間があまりにも長くて気が狂いそうだ。

この頃は、さゆみの不調は誰の目にも明らかになっていた。
同期や後輩メンバーは、心配はするものの体調の所為だとしか思っていないように見える。
れいなだけは何かに気が付いていたかもしれない。が、何せバンドとの掛け持ちだ。忙しくあちらこちらを飛び回っていて、さゆみと過ごす時間すら作れない有様だった。
新垣さんも、舞台稽古が佳境に入っているのだろう。また、他の舞台が入って更に忙しくなったこともあるのだろう。会社に顔を出すことも無くなっていた。
心配で、愛しくて、掛け替えの無いひと。
自分が傍に居られて、安らいだ笑顔を見せてくれたらどんなに良いだろう。
そう思いながらも何もできない自分が歯痒くて悔しかった。
今は、待つしかないと解ってはいるけれど・・・。

夜中に突然かかってきた電話で、緊張が破られた。
相手は勿論新垣さん。
「生田、ごめんね、連絡が遅くなって」
「いえ、新垣さんも忙しいでしょうから・・・」
「気にはなってたんだけど、私も動けなくってさ。ところで、この間の話だけど、やっと目途が立ったから」
「あ、ありがとうございます。良かった・・・」
「さゆみんもさ、どうも他所さんのスキャンダルが気になって用心深くなってるみたい。だから誘うのに苦労したけどさ、やっと明後日、OKさせたから」
「はい」
649名無し募集中。。。:2013/03/08(金) 23:22:21.40 0
「ホテルの予約は私の名前で取ったから、あんたはフロントで“予約した新垣の連れの者ですが”って言ってチェックインして」
「はい」
「じゃあ、今からメモ取って。ホテルの名前と場所言うから。電話番号もあった方が良いよね」
「お願いします」
「ホテルの名前は・・・」
新垣さんの言葉を聞き漏らすまいと、衣梨奈は全神経を集中させて電話を聞き取る。メモは、一言一句違わぬよう、小さな字でびっしりと書き込んだ。
「・・・どう、分かった?もう一度言わなくても良い?」
「多分大丈夫だと思いますけど、えりなが読むの聞いて間違ってたら教えてください」
「うん、分かった。どうぞ」
「じゃ、読みます。○○ホテルっていうところで、場所は・・・」
衣梨奈はメモを読み上げた。ひと言読む毎に想いが溢れて声が震える。
「うん、上等。じゃ、後はしっかりやりな。あ、支払いは済ませといたから心配しないで」
「はい。・・・新垣さん、本当にありがとうございました」
「何よぉ、他人行儀に。ま、上手くいかなかったら泣きにおいで。慰めるくらいはしてあげるからさ」
「・・・はい」
やっぱり新垣さんも不安っちゃね。何たって、相手は衣梨奈やけん。
これが飯窪あたりだったらそんなに心配はしないっちゃろうか?何せ彼女は後輩だけど衣梨奈よりはずっと大人だから。
・・・こんなこと思ってるから新垣さんにも心配されるんやろうな。

ホテルへの道のりは、気ばかりが急いている為か、やけに遠く感じた。
自分の足取りがもどかしい。
それでも、歩いているうちに、当然ながらちゃんとホテルに到着した。
650名無し募集中。。。:2013/03/08(金) 23:23:57.38 0
早速フロントへ向かい、新垣さんに教わったとおりのことを言った。
「予約した新垣さんの連れの者です」
「あ、新垣様、2名様ですね。お待ちしておりました。では、こちらがルームキーでございます。ところで、新垣様ご本人様は後程ご到着ですか?」
子どもの衣梨奈一人なのだから当然の問いであるが、それに対する答えは聞いていなかった。内心冷や汗をかきながら、衣梨奈は懸命に考えて答える。
「はい。先に待っているように、って言われました」
「然様でございますか。では、ご案内いたします。お荷物をどうぞ」
ベルガールさんに連れられて、ホテルの部屋に行く間、衣梨奈は誰にも気付かれないよう、小さく安堵の息を漏らした。

新垣さんの取ってくれた部屋は、パーティーをする、という触れ込みの所為なのだろうか、ツインのスイートルームだった。
地方でのコンサートがあるのでホテルには慣れた心算だったが、こんなに広い部屋に入るのは初めてで気後れがする。
ベッドルームも見てみたが、どう見てもいつも泊まるホテルよりもベッドが大きい。二人で寝てもまだ余りそうだ。
・・・なんてことを考えていると、ただ一度だけ、さゆみに触れたあの日のことを思い出して頭がボッと熱くなった。鏡の中の衣梨奈も顔が真っ赤だ。
こんなことで、今日は本当に大丈夫なんだろうか…?

リビングルームに戻り、ソファーに腰を下ろしてさゆみが来るのを待った。
心臓の鼓動が激しくなる。胸が痛いくらいに脈打っているのが分かる。
時計も、止まってしまいそうなくらいゆっくりと動いているように見える。
実際はそれほど時間が過ぎていた訳でも無いのだが。
コン、コン。
「ガキさん?着いたよ」
不意にさゆみの声がドアの向こうで聞こえた。思わず飛び上がりそうになる体を必死で落ち着ける。
走り出したくなるのを堪え、ゆっくりとドアに向かい、開けた。
651名無し募集中。。。:2013/03/08(金) 23:28:12.94 0
さゆみは、衣梨奈を見ると、驚いた顔をした。
「あれ?生田?ガキさんは?」
「あの・・・話をしたくて、新垣さんにお願いしました。そうしたら、新垣さんが此処を用意してくれて・・・」
「話?何だろ」
「あの・・・」
「ま、ドアのところで立ったまんまでも何だからさ、部屋に入ろ。落ち着いて、座って話しよっか」
さゆみに背を押されてリビングルームに戻った。

「で、話って?」
「・・・」
「あのさぁ、違ってたらごめんね。もしかして、あのときのこと気にしちゃってる?」
・・・え?どうして道重さん、そんな風に軽く言うんですか?
「だったらごめんね、気が付かなくて。さゆみってさあ、ソッチもイケるヒトだからさ、急に泊りになっちゃったし、朝まですること無くなっちゃって退屈だったから生田のこと巻き込んじゃったんだよねぇ」
・・・あのことは、道重さんにとってはその程度だったんですか?
衣梨奈は泣きたい気分に駆られた。・・・のだが、そこで新垣さんの言葉を思い出した。
(肝心なとこが抜けてるよ。あのコが素直じゃないってコト)
(多分、最初はあんたが傷つくことも言うかもしれない。でもね、そのときは私の今の言葉を思い出して)
衣梨奈は気を奮い立たせ、じっとさゆみの目を見詰める。
「何よぉ、そんな目しちゃってぇ。ま、そういうコトだからさ、野良犬にでも噛まれたって思って気にしないで。じゃ、ガキさん来ないんだったらさゆみも帰るね」
そう言って立ち上がりかけたさゆみの手首をしっかりと握り締める。
652名無し募集中。。。:2013/03/08(金) 23:30:55.06 0
「どうしたのよぉ、生田」
「・・・」
「あれぇ?もしかして、生田もソッチに目覚めちゃったのかなぁ?」
悪戯っぽく言うさゆみの言葉に、衣梨奈は答えない。そんな衣梨奈に対し、苛立つような口調でさゆみは言葉を紡ぐ。
「じゃ、仕様が無い、さゆみが責任取らなくっちゃねぇ。それじゃ、先にシャワー浴びといで。さゆみも後で入るから。服はすぐ脱いじゃうんだからバスローブ羽織るだけで良いよね」
さゆみの早口に不自然さを感じたものの、それを問う暇も無く、衣梨奈はバスルームに追い立てられた。
ガラス張りのシャワールームでシャワーを浴びながら、何度も落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせた。
バスローブを羽織り、ベッドルームに行くと、入れ違いにさゆみがバスルームに入っていく。ベッドに腰掛けてさゆみを待つ。
程無くしてさゆみがシャワーを浴びて戻ってきた。
二人で並んでベッドに腰掛けると、あの時に戻ったように感じる。
あの日と違うのはただひとつ。衣梨奈の気持ちがしっかりと固まっていることだけ。
衣梨奈は、さゆみをじっと見詰めた。その視線から逃げるように、ふっとさゆみは目を逸らした。
「キスの仕方は、教えたよね」
そう言って、さゆみは目を瞑り、唇を薄く開いた。もう、こうなると話も何も無い。
衣梨奈はさゆみの肩に手を置き、唇を割るように舌を入れながら口付けた。
さゆみもそれに応えながら、衣梨奈の背中に手を回し、自分の方に引き寄せて仰向けに倒れた。必然的に、衣梨奈はさゆみに覆い被さることになる。