生田「道重さんスパゲッティーを食べませんか?」4

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375223 ◆SADnxmDU52
(誰だろう・・・?)

道重がバッグから携帯画面を見ると、「れいな」の文字。

(れいながこんな時間に電話? 珍しい。どうしたんだろう??)

「もしもし・・・?」
「あ、さゆ?いまどこにおると?」
「いま収録の帰りだよ。タクシー乗ってる。」
「そう、今からちょっと出てこれる?ちょっとはなししたいことがあるけん。」
「話したいこと?なんかあったの?」
「会ってから話す。大事なことだから早く話したいっちゃ。」
「(こんなこと初めてだな・・・どうしたんやろ?)分かった。どこ行けばいい?」
「あのね、麻布十番のカイオンっていうバー。住所はね・・・。」

住所をメモし、電話を切る。
そして運転手に行き先の変更を告げる。

「すいません、麻布十番に行ってもらってもいいですか?」
「分かりました。」

運転手は怪訝そうな素振りも全く見せず、返事をする。
乗ってきた時から、道重が芸能人なのには気づいていたが、電話している道重のただならぬ雰囲気に、
芸能人って大変なんだな、と思ったぐらいで、行き先変更にも疑問をいだかなかった。
376223 ◆SADnxmDU52 :2013/02/28(木) 17:30:16.89 0
これまでにれいながこんな誘い方をしたことはない。
何かあったのだろうか?そういえば、若干声がうわづっていたような感じもした。
なにか良くないことが起こったのだろうか?
だとすれば、心の準備はしておいたほうがいいかもしれない。

30分ほどでタクシーは目的地に到着した。
そして、指定されたバーに入り、店員に案内され個室に通される。

「あ、さゆ、ごめんちゃ。こんな時間に呼び出して。」
「大丈夫だよ、それよりどうしたの?初めてじゃない?こんなふうに呼び出したの。」
「うん、実はちょっと話しづらいことなんやけどね・・・。」

道重は思わず唾を飲んだ。やはり良くないことなのか・・・。

「さっきまで、ガキさんとご飯食べとったとよ。」

ガキさん!?予想もしなかった名前に道重は心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
ただ、それをれいなに悟られまいと冷静を装い返事をする。

「へえ、れいなとガキさんが二人で食事なんて初めてじゃない?
 そこまで仲良く慣れたんだね。」
「まあね、ガキさんが卒業してちょっとしたわだかまりがなくなったかな。
 それはいいんだけど、そこでガキさんに訊かれたことがあるとよ。」
「なに・・・?」
377223 ◆SADnxmDU52 :2013/02/28(木) 17:31:34.44 0
道重はこの場から今すぐ逃げ出したい衝動にかられた。
誰から質問されたとしても、普通はこんな気持ちにはならないだろう。
だが、今出てきた名前は新垣里沙なのだ。いやでも自分が愛する彼女とリンクする人なのだ。

「ガキさん・・・、さゆと生田のこと気づいてるよ・・・。」
「私と生田?なんのこと・・・?」
「ごまかさんでもええよ。別にれいなは何とも思っとらんし。」

ごまかしの言葉はいくつも浮かんだ。
だが、れいなに何を言っても見透かされる気がした。
なんだかんだ言って、田中れいなは自分の最大の理解者なのだ。
表面上、仲が良かったのは亀井絵里だが、田中れいなは最高のビジネスパートナーであり、
ある意味、絵里以上に道重さゆみという存在を理解している気がするのだ。
そう考えた時、道重はごまかす気が全くなくなっていた。

「ガキさんはなんて・・・?」
「否定しないんだ。」
「れいなに嘘はつけないでしょ・・・。」

「ガキさんは生田のちょっとした態度で気づいたみたい。
 なんだかんだ言って、ガキさんも生田のこと大好きやけんね」
「そっか・・・、それで?」
「ちょっと言いづらいけど・・・、15歳の女の子をそんな歪んだ恋愛に引き込むなんておかしい、って」
378223 ◆SADnxmDU52 :2013/02/28(木) 17:33:00.34 0
道重は深い穴に吸い込まれるような気持ちに襲われた。
自分が感じていた罪悪感、目を背けていた事実を他人からそのまま突きつけられたのだ。

「そうだよね、ガキさん怒るよね・・・。大事な後輩にそんなことされたら・・・。
 そう、さゆみが全部悪いんだよ・・・。」
「そこまで分かってるならなんで? あの時・・・さゆ、石川さんの時、あれだけ辛い思いしたやん??
 生田がその時のさゆと同じ辛さを味わうかもしれないのになんで?さゆらしくないよ・・・。」
「そうだね、あの時は辛かったね・・・。」

つづく。