では、こちらも
>>60のお目汚しの続きなど・・・
新垣さんの腕の中で、泣くだけ泣いたからすっきりしたのかもしれない。
そのときから、衣梨奈は“道重さんと話ができる日”が待ち遠しくてたまらなかった。
その日のことを考えると自然に顔がにやけてくる程だ。
(何だか遠足を楽しみにしてる小学生みたいっちゃね・・・)
ふと我に返ると、自分のことであるというのに呆れてしまったりもする。が、そんな自分を考えるだけでも楽しい、と思ってしまうのだ。
新垣さんからは、ふたつのことを言われていた。
「始め、あんたは黙っときなよ。さゆすけ、素直じゃないから」
「多分、喋るだけ喋ったら出ていこうとするから、そのときはちゃんと引き留めなさいね」
自分の話をするのはそれからだという。
何だか随分面倒くさい気もするが、何、それはそれで楽しみのひとつになってしまうのだから、我ながら始末に負えない。
そんな折、里保と一緒に食事をすることになった。
同期ではあるが、まだ中学生同士、二人で食事をするなんて珍しい。久し振りのことに、最近の浮かれ気分も相まって、キャッキャッと騒ぎながら食事をした。
もっとも、いくら中学生とはいえ、仕事仲間である。話題は、自然に仕事のことに移っていった。
始めはイベントのことや次に出す新曲のこと、ダンスレッスンのことなどで盛り上がっていた。そのうち、先輩達のことにまで話題が及んでいった。
「田中さんの卒業ももうすぐだね」
「そうやね。体のことは心配っちゃけど、田中さん、バンドのことで楽しそうやしね」
「そうそう。ボイトレとかレッスンのときにも結構バンドの話、出るよね」
「うんうん」