生田「道重さんスパゲッティーを食べませんか?」3

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362名無し募集中。。。
>>200 年表ありがとうございます
今年の初めに某国営放送の番組で興味を持ち出した超ド新規なんでとても助かります
では、>>113のお目汚しの続きをば・・・

楽屋に戻ると、メンバー達は食事の真っ最中だった。
箸が転がっても笑い転げる年頃の中高生がメインとあって、ワイワイガヤガヤと賑やかな食事風景である。
先刻さゆみに甘えていた年少組の3人など、既に口の周りをべたべたにしながら何かを頬張っている。さゆみや飯窪といった年長組が彼女らに話しかけながら世話を焼いている姿を見ると、幼稚園児じゃあるまいし、と、微笑ましい反面腹立たしくも呆れてしまう。
「えりぽん、私達も食べよ」
「そうやね」
聖と二人、食事が並んでいるテーブルに行き、思い思いに料理を取った。
野菜が苦手な衣梨奈の皿の上は、肉料理と主食のご飯物が殆どを占めている。
これからまたステージだし、スタミナを付けるには丁度良いか。
ステージ上で息切れしては様にならないからな。
「あ!またえりぽんお肉だけじゃん」
隣で聖が呆れたような声を出す。
「良かったい。ステージに備えてスタミナ付けるっちゃもん」
口を尖らせて反論しながら席に着くと、会話を聞きつけたさゆみがこれもまた呆れ顔でやって来た。
「生田、あんたまた野菜食べてないの?」
「スタミナ付けるのにはお肉が一番なんです!」
「駄目駄目、野菜も食べないとスタミナ付かないって聞いたよ。ちょっと待ってて」
すっとさゆみは席を離れ、皿に何かを載せて、またこちらに来た。
見ると、皿の上には、野菜炒めやサラダなどの野菜料理が満載である。
「ほら、食べられるだけで良いからこれも食べな」
「いえ、別に良かです。食べるモン充分ありますけん」
363名無し募集中。。。:2013/02/11(月) 10:57:53.61 0
「良くないから言ってるの!長崎じゃちゃんぽんも食べてたじゃない」
「あれは、野菜ばっかりだったから仕方が無くって・・・」
「それなら食べられない訳じゃ無いんでしょ?いいから少しでも食べなさい」
「え・・・でも・・・」
皿の料理が勿体無い、と反論をしかけた途端
「これならちょっとお肉入ってるから良いでしょ。ほら」
なんとさゆみが箸で野菜炒めを取り、衣梨奈の口元に持ってきた。
これでは年少組よりもっと子ども扱いである。膨れ面を仕かけた途端
「生田、ちょっとあーんして」
え?
この台詞・・・。
あのとき、キスの前にも・・・。
どきっとした。
深く重ねられた柔らかい唇。口腔内を撫でていった舌。初めての、感触。
あのときの記憶がまざまざと甦り、頭の中がごっちゃになる。
思わず顔を赤くしながら開けた衣梨奈の口に、すかさずさゆみが箸を突っ込む。
口の中に野菜が入ってしまった以上、観念して噛んで嚥下するしかない。
「良し。あとは自分で食べるんだよ」
にっこりとしてさゆみは先刻着いていた席に戻る。勿論、野菜料理の皿は衣梨奈の前に残されたままである。
ふと気が付くと、じとーっとした視線が隣から注がれている。
「えりぽん・・・道重さんに構って貰おうと思って・・・」
「そういう訳じゃなかとよ、聖」
慌てて隣の聖に言うが、時や遅し、聖はひどく不機嫌な顔をしている。
ああ、これは、しばらく愚痴られるんだろうな・・・。
364名無し募集中。。。:2013/02/11(月) 10:58:46.01 0
唐突に着信音が鳴った。
「あれ、メール?何だろ??」
さゆみが携帯を見る。メールを読んでいるうちに、さゆみの顔が曇る。
「道重さん、どうしたんですか?」
「れいなから。今日も出られないって」
「田中さん、どうかしたんですか?」
「うん。この間の検査の結果が出てね、十二指腸潰瘍だったんだって」
「えーっ!」
全員の驚きの声が、思わぬユニゾンを奏でる。
「だ、大丈夫なんですか?田中さん」
里保がさゆみに詰め寄らんばかりに問う。
「お医者様にかかってるし、大丈夫だと思う。れいなから“迷惑かけてごめんね”って」
「そんな、病気じゃ仕方無いですよ」
「うん。だから鞘師、今日はれいなの分もお願いね。・・・ちょっと返事打つね」
テーブルに背を向けて返信を打つさゆみの背中は、それまでと違って小さく弱く見えた。
ズキンと、衣梨奈の胸が痛む。
あのときのように、抱き締めることができれば良いのに。
傍に寄り添って力付けることができれば良いのにな。
(そりゃ、えりなにはそんな資格も無いっちゃけどさ・・・)