生田「道重さんスパゲッティーを食べませんか?」3

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111名無し募集中。。。
>>20

「みっちしっげさぁーん!」
突如、素っ頓狂な声が聞こえた。と同時に、バタバタっという足音が近づいてくる。
驚いて振り向いたさゆみに、天真爛漫な笑顔で佐藤が飛び付いた。
「きゃっ!佐藤、危ないでしょ」
あまりの勢いに受け止めきれなくて、さゆみがよろめいた。
何とか転ばずに済んだものの、ひとつ間違えば大怪我をする。
思わず叱り付けようとして衣梨奈は腰を浮かせたが、次の瞬間、さゆみを見てはっとした。
さゆみは佐藤を叱りながらも柔らかい顔で笑っている。叱る声も、何だか嬉しそうに聞こえる・・・いや、あれは叱ってないな。
さゆみの笑顔に機先を制されて、衣梨奈は呆けた表情を顔に貼り付ける。
「あーっ、佐藤さん、ずるーい!」
「まーちゃん、道重さん捕まえてて!」
小田と工藤まで駆け寄ってきた。二人は、走りながらも正面から抱き付いている佐藤を器用に避け、それぞれ左右から抱き付く。
「もーっ、あんたたちまでぇ」
「えへへ」
「道重さん、ケータリング来ましたよぉ。ゴハン食べましょー」
「はいはい。だけど、これじゃ動けないからちょっと離れようね、三人とも」
「はーい」
体を離しはしたものの、佐藤と小田はさゆみの両側でしっかりと手を繋ぐ。工藤はさゆみの背後に回る。
手を繋いだ二人はさゆみの手を引っ張り、思わず及び腰になったさゆみを工藤が後ろから押しながら歩く。
何だかなぁ・・・あれじゃお母さんが子どもに甘えられているみたいだ。そりゃ、確かに年齢差はあるんだけど。
112名無し募集中。。。:2013/02/07(木) 21:52:26.18 0
ふと、傍らを見やったさゆみが衣梨奈と聖に気が付いた。
「フクちゃん、生田、あんたたちも早くおいで。この分だと食べる前に無くなっちゃうよ」
「あ・・・はい」
(えりなを呼ぶのはやっぱり後回しっちゃね・・・)
少し面白くない顔をしながらも四人に続いて歩き出そうとした衣梨奈の背後で、聖がぽつりと呟いた。
「良いなぁ・・・何か」
「は?何が??」
「あんな風に道重さんと居られて、さ」
「そう?佐藤なんか急に飛び付いて危なかったっちゃろ」
「それはそうだけどさ、道重さん、怒ってなかったじゃん」
「あー、そうやったねぇ」
「あんなに甘えられるなんてやっぱり羨ましいよ」
「うーん・・・そうかいねぇ・・・」
「考えてみれば私もあんまり年は変わらないけど・・・」
「うん、それはえりなもそうったい」
「でも、えりぽんもあんな風に道重さんに甘えられないでしょ?」
「うん、それはそうやろうね。あれが新垣さんやったらまた別かもしれんけどさ」
「・・・そうなんだよね、えりぽんは」
「そうそう」
113名無し募集中。。。:2013/02/07(木) 21:53:40.71 0
「でもさ、えりぽんだって羨ましいんだよ、私」
「何で?」
「インフルに罹った工藤は可哀想だったけどさ、えりぽん、道重さんと九州に行って、そのまま二人だけで過ごしてたじゃない」
「え?でも、えりなは実家に・・・」
「嘘。打ち合わせが長引いて、お家に帰ったのは夜遅くだったって聞いたよ」
・・・そう言えば、そういうことにしたんだった。
あの後、浅い眠りから目覚めて、それから親に迎えに来て貰ったんだっけ。
夜になったばかりなのを幸いに。
「あーあ、聖もああやって道重さんに甘えてみたいなぁ・・・」
「・・・」
「二人っきりでさ、きゅって抱き付いて、よしよしって頭撫でて貰うだけで良いからさぁ」
うっとりとした目付きで語りだす聖を横目で見ながら、衣梨奈は内心冷や汗をかいていた。
これは、道重さんとキスもエッチもしたなんてバレたら聖に殺されかねないな。
お互いの平和の為に、このコトは絶対にバレないようにしよ。
「そういえばもうすぐ田中さん卒業しちゃうんだよね。そうしたら、あんな風に甘えられるのは道重さんしか居なくなっちゃうんだよね・・・」
そうだった。道重さんは、一人だけ、残るんだった。
そう思った瞬間、胸の中がチクリと痛んだ。
同時に、帰る為に実家に連絡を入れようとした衣梨奈を引き留めたさゆみを思い出した。
はっきりとは言わなかったけど、淋しそうでちょっとだけ泣きそうだったあの表情。
(やっぱり、忘れられそうに無いっちゃねぇ・・・)