生田「道重さんスパゲッティーを食べませんか?」2

このエントリーをはてなブックマークに追加
712名無し募集中。。。
ふと目が覚めた。
部屋の中はまだ暗い。窓の外にはぽっかりと月が出ていて、まだ深夜といえる時間だとわかる。
肌には仄かな温もり。でもその温もりに触れていない部分が酷く寒い。月明かりの中に生田の寝顔が映る。綺麗であどけない寝顔。
さゆみが勢い上体を起こしたせいで、二人を覆っていた毛布の隙間に冷たい風が流れ込んで
素肌を冷やされた生田が顔を顰める。
それから手が温もりを求めるようにもぞもぞとさゆみの肌を這った。さゆみは毛布から抜け出す気にもなれなくて、生田の柔らかい肩に手を回す。
温もりが戻ったはずなのに、生田の寝顔はまだどこか不安げで
その表情は暗闇で母の温もりを求めるような、別の誰かを探しているような覚束無いものだった。
まるで先程まで情事にふけっていたとは思えない幼い顔を眺めながら肩にかかる空気の冷たさに一つ身震いする。
いったい自分は何をやっているんだろう―――情事の最中には一切吹き飛んでいたその思考が
また小波のように押し寄せてきた。
生田の手が求めているのは自分ではない、そんなこと分かりすぎるくらいに分かっている。
「ねえ、生田……ここにいるのはさゆみだよ…?」
返事がない代わりに、さゆみの身体に回された手に少し力がこもった。
「怒ってくれていいんだよ?突き飛ばしてくれたっていいのに、なんであんたは笑うのよ…」
腕力ならきっと敵いっこないのに。

さゆみは本当に嫌な人間だと思う。全部自分のせいで、生田には何の非もないのに、まるで生田が悪いみたいに考えてしまう。
そうでないと、あまりにも汚い自分とあまりにも綺麗な生田との対比に押しつぶされてしまいそうで。
ふと自分の目から涙が溢れていることに気付いた。
その涙の意味はさゆみ自身よくわからなかったけれど、なんて汚い涙なんだろうと思う。

「ごめん…ごめんね…」
何についての謝罪なのかさえ分からない、微かな言葉が口から漏れる。
その時月明かりの中に伏せられていた生田の長い睫毛が静かに動いた。
「………道重さん?」
腕の中からの突然の声にさゆみの思考は停止した。



勝手に書いた
寝るのであとよろしく