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>>315続き:
事務所を出ると夕暮れが終わろうとしていた。強いビル風がさっきまであれほど火照っていた体を急速に冷やしていく。
「もうこんな時間になっちゃいましたね。」
「そうだね・・・」
虚脱感が見える表情で道重は力なく答えた。
「道重さん大丈夫ですか?ご飯どうします?帰りにスパゲッティーでも食べていきます?w」
あざ笑うかのように誘う生田を一瞥するとクビを横に振る。
「さゆみもう無理だよぉ また抱かれたら壊れちゃうよ・・・」
「道重さん体力なさ過ぎっちゃw」
「生田があり過ぎるんだよ、あんなにしたのにまだしたいなんて」
「ふふふw 道重さんがかわいいからですよ」
言われて悪い気などするはずもなく、ただただ顔を赤らめながらそれじゃまた明日ね、と言い残して立ち去った。
なんかすっかり生田のペースだなぁ・・さゆみワガママだから付き合ったら主導権握れると思ったのに・・・。
もしこの関係が他の子達にバレたらきっとさゆみのいる場所は無くなっちゃう。それだけは絶対に避けないと。
タクシーを待つ間に今日の出来事を思い出しニヤケながら、なにやら力強く一人頷く道重を遠目に生田は再び事務所へと入っていった。
目的の人物のいる場所は何となくわかる。真面目な子だからきっとレッスンの復習をしているに違いない。
生田は何の迷いもなくダンススタジオへと向かった。
「あ、えりぽんまだ残ってたの?帰ったと思ったのに」
「お疲れ様でーす」
生田の予想は半分は当たっていたが、半分は外れていた。部屋には多くのメンバー達がいた。
キョロキョロと周りを見回していると背後から肩を叩かれた。
「なによ生田ぁーあんたも真面目になったわねぇ!居残り練習するなんてw」
「あ、新垣さん!お疲れ様です。今日はお仕事ですか?」
「そうよ、舞台の打ち合わせで来てんの。あんたは練習でしょ?そのカッコウで良いの?」
「あ、はい、着替えてきます。まだ帰りませんよね?衣梨奈のダンス見てくれませんか?」
「しょーがないわねー ホントはそーゆーのはさゆすけか田中っちに頼んで欲しいんだけどねぇ」
嬉しそうに愚痴をもらす新垣にペコリと頭を下げ、すぐに更衣室に向かった。
何だろう・・・スタジオに入った途端何か違和感を感じたっちゃ・・・。何かがいつもと違う・・・。
普段KYと言われてはいるが、実は周囲の動向に敏感なんだと自負している。誰も信じないけど。
更衣室のドアを開けて電気をつけると、また先ほどダンススタジオに入ったときと似たような違和感を感じた生田は、
すぐさま壁際においてあるホワイトボードに目をやった。
そこには「リーダーと生田は付き合っている 許せない」と書かれていた。