リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第72話

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1名無し募集中。。。

川=´┴`) ―――本当は、あなたの病気を共有したかった

ノノ*^ー^)<「そんなことしたら、愛佳ちゃんとは絶交だからね!」


「リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第71話『ひと粒のリンゴ』

前回のお話はこちら↓
リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 71話
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1341613952/

リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ@wiki
http://www39.atwiki.jp/resonant/

第1話から20話までのログまとめ
http://resonant.web.fc2.com/

まとめサイト
http://resonant.pockydiary.net/index.html

まとめサイト Ver.2
http://resonanter.blog47.fc2.com/

リゾナントブルーAnother Vers(ry 暫定保管庫(まとめサイト3)
http://www35.atwiki.jp/marcher/

掲示板 (感想スレ、作品題名申請スレ、あとがきスレ他)
http://jbbs.livedoor.jp/music/22534/

テンプレ>>2-8くらいまで
2名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 12:54:36.75 0
3名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 12:55:06.55 0
リゾスレ初心者向けQ&A

Q.このスレについて教えて!
A.このスレはモーニング娘。36thシングル「リゾナント ブルー」のPV(Another ver.)から想像に想像を膨らませて生まれたスレです
 作者一人ひとりによって設定は異なりますが、大まかに共通している設定は
 【超能力を持つ「リゾナンター」を名乗る少女たちが仲間同士心を通わせつつ「ダークネス」を名乗る敵の組織と戦う】といった感じです

Q.どの話から読めばわかりやすい?
A.テンプレ>>1の過去ログまとめで第1話(第1スレ)に目を通すことを推奨。
スレの雑談では『蒼の共鳴』http://resonant.pockydiary.net/index.cgi?field=44の名がよく上がります。但し一大長編ですけどねw
2周年を記念してスレの住人が色んな質問に答えているスレhttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/music/22534/1271246993/も参考になるかと

Q.メンバーのキャラ設定は?
A.作者個々によって違うが多くの作品で共有している設定は以下の通り

 高橋愛…………リゾナンターのリーダーで戦闘も強い実力者。喫茶店のマスターをしている
 新垣里沙………リゾナンターのまとめ役?だがその正体は「ダークネス」から放たれたスパイ。後に真の仲間となる
 亀井絵里………心臓病を患っておりよく入院している。さゆみと親友
 道重さゆみ……絵里と親友。心の奥には「さゆみの姉・さえみ」という別人格が眠っている
 田中れいな……喧嘩最強でリゾナンター屈指の武闘派。愛の喫茶店で住み込み店員をしている
 久住小春………売れっ子芸能人。何も考えていないように見えて案外熱血だったりするかも
 光井愛佳………家庭の内外で孤独を感じていたところを愛に救われた。リゾナンター随一の常識人
 ジュンジュン…パンダに変身する一族の生まれ。変身が解けると裸になる
 リンリン………パンダ一族を守る組織「刃千吏(バッチリ)」の一員。ギャグセンス以外はエリート
 譜久村聖………出てきた設定は、能力複写、サイコメトリー、譜久村財閥のお嬢さん、未来から来た24歳など
 生田衣梨奈……出てきた設定は、無感情、植物と会話できる、KYの空気感染など
 鈴木香音………出てきた設定は、物体をすり抜ける、すごい聴力など
 鞘師里保………出てきた設定は、水軍の家系の末裔、御神刀使い、念動力(水限定)など
 飯窪春菜………出てきた設定は、はう、ラブベリーナ魔法学院最終学年、ジョジョバカ
 石田亜佑美……出てきた設定は、幻獣使役、蒼の剣士、ぺったん、貧しさが憎い
 佐藤優樹………出てきた設定は、ちょっと不思議
 工藤遥…………出てきた設定は、強いリーダー志向、千里眼(クレヤボヤンス)
4名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 12:55:40.06 0
<よくわかる!? リゾナントスレの世界観図説>


リゾナンター派(多数派)─┬─ダークネスと闘う超能力少女たちだよ派(鉄板路線派)
               │  ├ダークネスは悪の組織の名前だよ派(暗闇=敵だよ派)
               │  │ └ラスボスの名前でもあるよ派(ダクネチュ様派)
               │  ├実は前身となる正義の組織があったんだよ派(OGメンはかつての味方だよ派)
               │  │ ├方針転換して悪の組織になったので新組織を立ち上げたよ派(見解の相違派)
               │  │ └組織はつぶされ現メン(の一部)が生き残ったんだよ派(正義の組織再興派)
               │  └前身はなく愛ちゃんが一から始めたんだよ派(OGメンは最初から敵だよ派)
               │    ├最初に見つけた仲間はれいなだよ派(同居人優先派)
               │    ├最初に見つけた仲間はガキさんだよ派(娘。加入順優先派)
               │    ├最初に見つけた仲間はガキれな以外の子だよ派(基本にとらわれないよ派)
               │    └愛ちゃんは美少女コレクターだよ派(百合愛好派)
               │
               ├─モーニング娘。をやりつつ敵と闘うよ派(鉄板路線派「かなしみ戦隊」系)
               │
               ├─政府直属の能力者集団だよ派(独自路線派「共鳴者」系)
               │
               └─その他(各種独自路線派)

リゾナンダー派(少数派)─┬─戦隊モノのヒーローなんだよ派(特撮愛好派)
            │   ├各自のイメージカラーが個人の戦隊カラーになってるよ派(LLはどうなったの派)
            │   └リゾナンカーとセットで使いたいよ派(とことん特撮派)
            │
            ├─スレが始まった時はこっちだったんだよ派(原理主義)
            │
            └─その他(各種独自路線派)

“ター”でも“ダー”でもどっちでも派(穏健派) ─┬─面白ければなんでもいいよ派(内容重視派)
                              │
                              └─シリアスとギャグで使い分けるよ派(こだわり作者派)
5名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 12:56:18.32 0
【今まで出てきた能力まとめ】

高橋愛:精神感応(リーディング) /瞬間移動(テレポーテーション)/光使い(フォトン・マニピュレート)
新垣里沙:精神干渉(マインドコントロール)
亀井絵里:傷の共有(インジュリー・シンクロナイズ) /風使い(ウィンド・マニピュレート)
道重さゆみ:治癒能力(ヒーリング)
  さえみ(姉人格):物質崩壊(イクサシブ・ヒーリング)
田中れいな:共鳴増幅能力(リゾナント・アンプリファイア)
久住小春:念写能力(ソートグラフィー) /幻術(ハルシネーション)/発電(エレクトロキネシス)
光井愛佳:予知能力(プリコグニション)/心の浄化(ハート・プリフィケイション) /水守(みまもり)
リンリン:念動力(サイコキネシス)/発火能力(パイロキネシス)
ジュンジュン:念動力(サイコキネシス)/獣化(メタモルフォシス(トゥ・ビーストorパンダ))

譜久村聖 :能力複写(リプロデュスエディション) /残留思念感知(サイコメトラー・オブジェクトリーディング)/液状化(リキュエファクション)
生田衣梨奈:精神妨害(マインドジャミング)/精神破壊(マインドデストロイ)/植物と会話(スピリチュアル・トーキング) 
鞘師里保 :水限定念動力(アクアキネシス)/水軍流の達人
鈴木香音 :非物質化(ディマテリアリゼーション)・物質透過(ペネトレイト)/超聴覚(ハイパー・ヒアリング)

飯窪春菜:五感共鳴(センス・リゾナント)/魔術(マジック)
石田亜佑美:幻獣召喚(イリュージョナル・ビースト)
佐藤優樹:瞬間移動(テレポーテーション)/死霊魔術(ネクロマンシー)
工藤遥:千里眼(クレヤボンス)/精神??(マインド・ブラスト)

6名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 12:57:04.25 0
ジュンジュン獣化参考画像
ttp://resonant.pockydiary.net/file/panda.jpg

喰らってくたばれ!
必殺!
ttp://resonant.pockydiary.net/file/helpme.gif

【喫茶店リゾナントイメージ】
間取り
ttp://resonant.pockydiary.net/data/upfile/142-1.gif ttp://resonant.pockydiary.net/data/upfile/784-1.jpg ttp://resonant.pockydiary.net/data/upfile/785-1.jpg
本日のランチ
ttp://resonant.pockydiary.net/data/upfile/155-1.jpg ttp://resonant.pockydiary.net/data/upfile/156-1.jpg
タウン誌紹介文
ttp://resonant.pockydiary.net/data/upfile/383-1.jpg

【TV・映画イメージ】
リゾナンター予告イメージ
http://jp.youtube.com/watch?v=wSVKqpCYrQs
リゾナンター予告編・i914Ver.  ※血液等の映像が含まれますので苦手な方は見ないほうがいいです
http://jp.youtube.com/watch?v=TEsl4BjQ8sA
リゾナンターの予告編パート2/映画風
http://jp.youtube.com/watch?v=9Rvh02cQQoI&fmt=6
リゾナンター/共鳴セヨ
http://jp.youtube.com/watch?v=3m65hxrvduY
リゾナンター予告編/ダークネスVer.
http://jp.youtube.com/watch?v=OkFqDKBJUBg&fmt=6
リゾスレ一周年記念動画
http://www.youtube.com/watch?v=VBgPc_o1u0E&fmt=18
The loneliness of the girls
http://www.youtube.com/watch?v=4IAclB1_-zs
リゾナンターOP
http://jp.youtube.com/watch?v=EXNriFUNuUY
7名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 12:57:48.37 0
【初代まとめサイトで投稿日順に読む裏技】

まとめサイトの[検索]で「(1)」とか指定すると、第1話(1スレ目)の作品が投稿日順に並びます(降順)
(投稿日=まとめサイト掲載日時であり、スレ投下日時ではありません)

ただし、次回予告についてはシングルの順序と合わせるために
順番に並ぶように投稿日をいじってあるのでこの限りではありません

このスレに初めて来たから様子がわかんないよ、って人にはイイかも

※時々検索結果に違うスレの作品が混じりますが、本文中に張ったリンク(例:(01)123)を拾ってしまうためです


【まとめサイトVer.2で投稿日順に読むには】

タグでスレごと(第○話)の作品群を見ることができます。
登録日の順になっているのでそこからたどっていけばおk


【代理投稿を依頼するときのお願い】

したらば掲示板のアク禁スレに作品を上げるときは対処方法の指示も書いてください
例えば
・規制食らったので転載してほしい
・レス数多いから掲載を手伝ってほしい
など

転載する人は必ず投下する旨をアク禁スレに宣言していってください
(投下かぶり防止のため。宣言が同タイミングなこともあるのでリロード&しばらく待つのも大事)
8名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 12:58:42.25 0

川*’ー’) < テンプレの設定やまとめサイトを参考にして自由に想像するやよ
ノ|c| ・e・) < 登場人物の能力やストーリーの背景・設定は作者さんの自由なのだ
ノノ*^ー^) < シリアル路線でもコメディ路線でもお好きなものどうぞ
从*・ 。.・) < AAを使ったものや1レス完結ものでもOKなの
从*´ ヮ`) < 他の作者さんの設定を流用するのもありっちゃ
ノリo´ゥ`リ < 気に入った話の続きや繋ぎの話を書いてみるのもありカナ☆
川=´┴`) < プロットを書いて他の作者さんにストーリーを書いてっておねだりしてもええで
川*^A^) < アーでも書いてくれるかは作者さん次第ヨ
川´・_o・) < ソッカー



作品投稿の際、10レスを越える場合は連続投稿規制(バイバイさるさん)がかかるので注意。
それから1レス当たり最大32行までしか入らないのでそれも注意。



ttp://resonant.pockydiary.net/file/template/r_coming.jpg

君の作品を待ってる



<※初めてスレを訪れた方へ>
 お勧めの作品やわからない用語については遠慮なく質問してみてください
 スレに何人もいるであろう「生き字引」が24時間以内に答えてくれるでしょう(多分)

9名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 14:37:26.32 0
立ててくれた人おつです
10名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 15:09:51.97 0
>>1おつつ
スレが立ってなんか落ち着いたわw
11名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 15:36:43.75 0
>>1
スレ立て乙
12名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 15:46:08.83 O
新スレおつ!
13名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 15:50:22.95 0
いちおつですありがとう!
14名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 17:48:18.51 0
スレ立ておちゅ
15名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 18:55:36.42 0
前スレ>>924-926 http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/662.html の続き。

以下代理投稿まいります
16名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 18:56:17.86 0
あの人に報告をして眠ろう、明日も学校だ。
勉学が面倒に感じたりもするが、それ以外は楽しい日々を過ごしている。
そういえばかのんちゃん、数学のテストが悪くて落ち込んでたな。
算数の応用なのだから、それほど難しくはないと思うけど。

それでもヒトには得意不得意がある訳で、この前、給食で苦手なものを
食べてくれたのだから、何かお返ししないといけないな。
携帯電話を取り出す。
あの人によれば通信履歴が一切残らない代物らしく
早速使ってくれと来る前に持たされたものだ。

――― あの人には本当に感謝している。
 自分のような人間に優しくしてくれたし、何よりもこれまで何不自由なく
 やらせてくれたのはあの人の存在があってこそだとも思う。
 …少しだけ過保護のように感じるのは気のせい、じゃない。

学校に入学すると言ったらいろいろと仕入れてくれたのだが、セーラー服
だと知るとそのサイズや生地などのデータを全てパソコンに取り込んでは
"カスタム制服"の基本骨子や構成材質の変更や補強などを念入りにしてくれた。
あの人的には多分、相当好みだったらしい。
メガネ着用も促されたが、壊しそうなので断った。
視力は常人並以上にあるのだから、必要がなかったのもある。
少し寂しそうにしていて、悪い事をしたかなとは思ったのだが、その後に
また何かを取り出してきた事でその場を逃げてしまった。全力で。
17名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 18:58:17.98 0
建物の壁に横たわらせて、少女はその場を後にする。
小さくあくびをした。
よく吠える近所の犬もすっかり寝息を立てている時間。
少女―― 鞘師里保もすでに意識は早く帰って寝たいという方向に進んでいた。

 「そういえば桜も散っちゃったな」

鞘師が転校して数日が経った頃、臨時の大掃除が行われた。
咲き過ぎた桜の花びらを竹ぼうきで丁寧にかき集めるというもの。
中等部の敷地で、鞘師は鈴木とたくさんの生徒に混じって懸命に掃除をした。
鈴木と仲の良い同級生がデッキブラシを振りまわしていたが、すかさず鈴木は
それを注意して掃除に加わるように促していた。

何気にしっかりしている彼女。面白いけど、いつも堂々としていて、笑っていて。
食べることが好きで、時々コントをしようと言ってくる。
鞘師自身とはきっと、真逆の人なんだと思うけど、少しだけ、羨ましい部分でもあった。

 だけどきっと、望んじゃいけない部分でもあるんだと、思う。

それに彼女との繋がりは別の目的がある、本人には言えないけれど。
言う事はできないけれど…きっと、彼女は、"彼女達"は怒るだろうから。
確信がない今は。
今はまだ、この関係のままで。

鞘師の瞳は朱色に混じり、水のような透色が漂っていた。
18名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 19:00:00.10 0
ゴールデンウィークを過ぎれば梅雨を待つだけ。
気付けば春は何処かへ行ってしまい、夏の前っぽい気配を汗のにじむ
首筋にひしひしと感じる。

もう半袖でも良いかな?と思えば、雨は降らずとも湿気と共に気温が下がり
長袖で良いかと思えば、からりと晴れる。
五月晴れ、天晴れだ。
間を取って半袖の上にカーディガンを羽織ったり。
そんな事をしている内に五月は終わろうとしていて、あとは梅雨入りを待つだけ。

 「香音、空から降ってくるカキ氷ってなーんだ?」
 「氷って言ってる時点で答えになってるじゃん」
 「あ、思わず心の声が」
 
彼女の残念な質問に、鈴木香音は残念そうに答えた。
入学して2ヶ月近くにもなると、もうすっかりお馴染の光景になっている。
ソフトボールの部活もそれなりに頑張っているが、レギュラーになるには
まだまだ道のりは長い。

 「そういえば里保ちゃんは?」
 「んーなんか先輩に呼ばれて行っちゃった」

転校生として注目を浴びていた鞘師は、上級生から部活の誘いを何度も受けていた。
意外と身体能力もあったり、器用だったり、何でもそつなくこなすという事もあり
運動系と文科系どちらとも適応すると見えたらしく、連日教室に先輩が顔を出すといった
ことなども少なくは無い。
ただ細身の体型ということもあって、鈴木に勧誘を任される事はなかったが。
19名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 19:01:11.66 0
正直に言えば、帰宅部の方がいいんじゃないかとも思うけれど。
あの日から、静かな時間が過ぎていた。

昨日は今日にかき消されていく。
日常は、日常でしかいられなくて。
日常は、日常にかき消されていく。
そうして世界は今日も変わらずに、変われずに其処に在って。
ただ、なんとなくの日々が、なんとなく過ぎていく。

あくびをしているうちに、通り過ぎて行く時間。
知らない筈の空は、今日も同じように見える。
明日も、同じ。
世界は変わっていない、変わっていない。


呼吸をしている間に、六月へ。
20名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 19:04:47.56 0
>>16‐19

以上です。
この話は戦闘面というよりは生活面重視になってます。
少しこんな感じに続くと思うので、ご了承のほど(平伏

---------------------------------------

以上代理投稿いたしました。『-Qualia-Y』となるのでしょうか?
21名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 20:26:08.42 0
読む前保
22名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 21:41:06.61 O
夏バテほ
23名無し募集中。 。 。:2012/08/15(水) 21:44:17.34 O
『声を奪われたカナリア』

前スレの続きなの。
24名無し募集中。 。 。:2012/08/15(水) 21:45:22.63 O
彼女が傷付けられた。

彼女から血が流れた。

彼女が消えそうになった。

彼女がいなくなってしまう。
もう、私のそばに彼女はいない。

私の安心感のある生活がなくなってしまう!

彼女がいないと私は自分を保てない。

本当の自分でいられなくなる。

あいつが…、ダークネスが、彼女を奪ったんだ!!
25名無し募集中。 。 。:2012/08/15(水) 21:46:31.77 O
私は石川の左胸の下を握り潰そうとした。
残った右手で石川の首をギリギリと締め上げる。

彼女を捕まえている石川の腕にもサイコキネシスが発動するようにチカラをこめる。
すると石川の左腕からバキッという音とともに石川は、また悲鳴をあげる。

石川が怯んだ瞬間、彼女は私に近づいた。

何だよ。邪魔すんなよ。
私はアイツを殺りたいんだ。

私のサイコキネシスで石川を吹き飛ばし、後ろにあった柱に叩きつけられる。
石川の目は、すでに虚ろで焦点が合っていない。

あわれな石川を見た私はニヤリと口の端を上げた。

「だめだよ!明日香ちゃん!だめ!」
26名無し募集中。 。 。:2012/08/15(水) 21:48:02.30 O
彼女が叫ぶ。

かまうもんか。

私は手のひらを倒れている石川の頭に狙いを定めた。

「やめて、明日香ちゃん。お願いよ…」

彼女は私に懇願するようにしがみつきながら破れた上着を掴んだ。
その小さな手は震えている。
石川に向けた腕が、ゆっくりとおろされる。
これは彼女の懇願からなのか私の意志か、よく分からなかった。
27名無し募集中。 。 。:2012/08/15(水) 21:49:47.97 O
彼女が私を見上げて瞳を見つめる。
おそらく今の私の瞳は、まだ変色したままだ。
私の瞳は、きっと懇願する彼女に動揺したのか、たゆたうように泳いでいるだろう。

私は彼女の顔を見た。

頬から血が流れている。

私は彼女に、ゆっくりと近付き彼女の頬を舐めた。

にがい血の味がした。

彼女は動かなかった。

動けなかったの方が正しいのかもしれないが、彼女は強引な私を振り払わなかった。

振り払うどころか私の胸の谷間に顔をあずけてきた。
28名無し募集中。 。 。:2012/08/15(水) 21:51:33.55 O
「明日香ちゃん止まったね」

彼女が顔を上げてニコリと笑った。

「目の色も戻ってるよ」

再び彼女は私の胸に顔をうめた。
上着とニーソはボロボロだけど、かろうじて下着の上に着てあるキャミは無事だった。
腕に付けていたブレスレットは、いつの間にか無くなっていた。
衝撃波が来た時に引きちぎられたのかな?

ていうか、暴走が止まった?
瞳の色も戻ったって…、
石川は!?

私は焦って周囲をキョロキョロして石川を探した。

「もういないよ」

彼女が言った。

いない!?どういうことだ。
私が自分を忘れている時にもしかして…。

「大丈夫だよ。明日香ちゃんは人を殺さなかったよ」
29名無し募集中。 。 。:2012/08/15(水) 21:52:44.49 O
「アイツいついなくなったんだ?私覚えてないんだ」

「猫さんになって、どっか行っちゃったよ?」

逃げたのか…。

でも取りあえずほっとしたよ。
こちらとしては、もう二度と会いたくないな。
私が変わってしまうほどチカラを引き出さないといけない相手だったんだから。

でも、彼女は怖くなかったのかな?
私の正体がバレた時は泣かせてしまったけど今の彼女は泣いていない。

「あんたは怖くないのか?」

「何が?」

彼女は、きょとんとしている。
そんな無邪気な彼女がかわいい…、じゃなくて!

「変わっただろ?カッとなったり、チカラを使って暴走したら目ぇが変わったんだ!怖いだろ?引くだろ普通!?」

「びっくりはしたけど怖くはないし、逆に分かりやすいよ」


「明日香ちゃんが、例えばこれから怒ったり今日のようにキレたとしようよ」

「うん…」

「そうなったらさっきみたいに緑色に変わるんでしょ?それなら色が変わった!明日香ちゃんを止めなきゃ!って、今日は猫さんにさらわれたけど、また明日香ちゃんのことが分かって嬉しいよ」
30名無し募集中。 。 。:2012/08/15(水) 21:56:09.14 O
「でも私は普通の人間じゃないし…」

「明日香ちゃん!」

彼女は、いきなり私のほっぺをつねった。

「い、いひゃい…」

「明日香ちゃんがまた自分を否定するからだよ!」

「だ、だって…」

「だってじゃない!明日香ちゃんは、こないだ私が公園でパニックになった時に落ち着かせてくれて、責め立てた私を許してくれたもん!明日香ちゃん、本当は強くて優しいんだよ!?」

「で、でも…」
いい加減離してくれよ、痛いじゃないか…。
31名無し募集中。 。 。:2012/08/15(水) 22:00:46.79 O
「でもも、だってもないよ!今日だって、いつかさらわれた時だって、明日香ちゃんは人を殺さなかった。
暴走も自分で止められたんだよ!?だからもう手袋はいらない。明日香ちゃんは人の痛みが分かったんだ。
そこから自分を否定しないで過去の失敗を二度としなかったらいいんじゃない」

「いきなり一気にはできないよ…」

「少しずつでいいんだよ?私も明日香ちゃんのそばからいなくならないし一緒に進んで行こうよ」

「うん。ありがとう」

「カーッとなってキレるのも明日香ちゃん。
強くて優しいのも明日香ちゃん。
控えめで恥ずかしがり屋だけど頑固な明日香ちゃん…、色んな明日香ちゃんをひっくるめて明日香ちゃんなんだよ?」
32名無し募集中。 。 。:2012/08/15(水) 22:02:36.93 O
何なんだろう?この訳わかんないイライラする気持ち。
でも不思議と嫌じゃなくて、なんていうか、くすぐったくて、あったかいな…。

「ヨリコ…」

私は彼女の手を取った。
今の私は手袋をしていない。
彼女の手のひらをまたプニプニしてみた。
やっぱりクセになる。

彼女が微笑んだ。

「明日香ちゃん、ここ好きだよね」

「ん?」

「落ち着くの?」

「うん…」

「もう目も戻ってるし明日香ちゃんから殺気は感じられないよ。ピリピリーッ!な感じ!」

「ん」

「明日香ちゃん…」

彼女が私の肩に寄りかかってくる。

「ゆっくりのんびり自分を受け入れたらいいんだよ…」

「ありがとう…」
33名無し募集中。 。 。:2012/08/15(水) 22:04:54.11 O
―――カナリアは天使に全てをさらけ出しました。
―――カナリアは人の痛みは自分へ帰って来ることを知りました。
―――カナリアは自分を受け入れるということは過去の自分を受け入れて反省をすれば前に進めることを知りました。

彼女は、マネージャーの私から、いつか離れて独立をすることを考えているらしい。
その時期はまだ分からないけれど今の私なら、何となく分かる。
きっとその時は、本当の意味で私が過去の呪縛を乗り越えて私自身が精神的に自立した時だと思う。
その時なら彼女がそばにいなくても、離れていても心が繋がっているから安心と思えるだろう。

―――いつか、そんな日が来ても自立出来るように私は偶然と必然を大切に生きていこうと思う。

おわり

おまけ

「よっすぃ〜!負けちゃったあ〜!あたしより老けてるクセに!同い年なんだよ!?」
「関係ないよ…。次は私が行くからさ、落ち着いてよ梨華ちゃん」
「きぃー!!」

こんどこそおわり
34名無し募集中。 。 。:2012/08/15(水) 22:05:53.05 O
以上です。
『声を奪われたカナリア』

スレ立ての人、まとめの人、読んでくれる人達、紹介文を書いてくれる人、いつもありがとうございます。
しばらくROMに戻りますが、また落ち着いたら投下させていただきます。
ありがとうございました。
35名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 23:24:16.95 0
36名無し募集中。。。:2012/08/15(水) 23:36:44.00 0
やっと見つけたっ。>>1さん乙ですっ。
37名無し募集中。。。:2012/08/16(木) 01:04:02.81 O
立った早々落とすなよっと
38名無し募集中。。。:2012/08/16(木) 01:53:22.36 0
次回予告
                メンバー達は謎の物体による衝突爆発を辛うじて回避する!
ttp://resonant.web.fc2.com/data/toro6215.jpg
  『あぁ そうそうお前等が騒いでいたあのテロ事件 それはこいつの能力だよ 重力・引力操作素晴らしいチカラだ』
      マキは言う『今まで自分達が空に出した ゴミの量はどれだけあるか知っているか?教えてあげる
     現在もスペースデブリだけで4500トンある 遊んだオモチャは元の箱に戻せと母に言われたでしょう?
                    それを私が戻してやっているだけ 元の星に』
『先程のは極少デブリだが 全てのスペースデブリに大量の隕石 衛星 ステーションを1つにして落とせばどうなるかな?
       ククク 衝突で巻き上がったチリはやがて星を包み 太陽を遮り…そう 氷の世界の出来上がりだ
  その為には最大インパクト 最高の効果が望める速度 形状 突入角度で設定座標へ確実に落とさねばならない
            だから今までは小型のデブリを使い細かく落下地点を修正していたのさ
      …ハイパースペースデブリ… 自分達の出した この星の周りを汚したゴミで 最後を迎えるなんて
        面白いとは思わんか?特別に占師が今日の天候を占ってやろうか 流星のち人類滅亡で
    きっと全てをリセットできるステキな氷河期が 永遠を思わせる時間訪れるだろうよ… ヤレ…どうした?』
『!?ミティ様…ズレが生じました このままでは最大インパクト望めません 落下地点への誘導修正まで 後10分…』
   『な… 動いている この島が動いているだと?チッ!後藤お前も欠陥品か!修正しながら私を援護しろ!』
                -キュィィィーーーーーーーーーィン!ドン!ドン!ドン!-
           揺れる うねる波の中の様に体を内側から揺さぶられる引力と重力の驚異
       円の様にアスファルトの地面が陥没していくGのチカラと魔女の氷の矢がメンバーを襲う
              『私の能力の前では物が下だけに落下するとは限らない…』
      地面に刺さった氷が 引力操作で 今度は上に向かって飛び上がる 敵の凄まじい 連携攻撃
      陣形を掻き乱されたリゾナンター 魔女の鋭い氷の手刃が孤立した里沙の胸を貫くのだった


次回かなしみ戦隊リゾナンターV「Loving you forever」

ttp://aewen.com/momusu/niigaki/img/aewen10755.jpg
                        「ぬ!!ッ ヌヴッ!ンンッ……」
ttp://resonant.web.fc2.com/data/toro6215.jpg
  『集めた者の数だけ かなしみを味わえ さあ まずは1匹 お前の愛する者達が永遠に凍りつく様を見よ!』
39名無し募集中。。。:2012/08/16(木) 02:07:00.60 0
次回予告
             里沙に突き刺さった魔女の刃…しかし傷口は黒い闇が渦巻いている
ttp://resonant.web.fc2.com/data/toro6215.jpg  ttp://aewen.com/momusu/niigaki/img/aewen10640.jpg
              『ま まさかッ!!??』「そうよ あなたがさっき教えてくれたじゃない
             闇の者は同族を傷付ける事が出来ないと」『貴様ッ闇の血を引いて…』
           里沙は魔女の腕を掴んだ『そんな力で私を抑えようと言うのか?……ッ!?』
         その時 地面から伸びたもう一対の腕が魔女の足を掴むと地面へと引きずり込んだ
ttp://resonant.web.fc2.com/data/toro17448.jpg
                   「いいぞ香音ッ!今よ皆 リゾナントバスター!」
         しかし後藤が2人を突飛ばすと魔女の身代わりとなる 後藤は吹き飛び気を失うが…
ttp://resonant.web.fc2.com/data/toro6215.jpg 
                『マキ お前がいないと計画が…』後藤へと接近する魔女
          その魔女ミティを謎のチカラが押し戻す そのチカラとは?能力者は?それは…
ttp://aewen.com/momusu/kusumi/img/aewen988.jpg
               小春が押す車椅子に乗った絵里だった 最高の友が集った
「ふふ みんなが呼んでくれたんだ…声が聞こえたんだ…」「亀井さんはもう大丈夫カナ☆彡」風は此方に吹いている
ttp://aewen.com/momusu/group/img/aewen4728.jpg
              「ミティ…私を利用し 今まではあなたの企画通りかもしれない
         でも 2つミスを犯したようね それは 闇が残した愛の結晶と共鳴の本当のチカラ」

         【ありがとう あなたがくれた能力は 私にこんな沢山の頼もしい仲間を 生んでくれた
      あなたが私を選んでくれたから こんなにも沢山のかけがえのない友を生んでくれた ありがとう】


次回かなしみ戦隊リゾナンターV「友」

ttp://resonant.web.fc2.com/data/toro17448.jpg  ttp://aewen.com/momusu/group/img/aewen6592.jpg
  ≪さあいくよ!これが 多き友の力だ!喰らってくたばれ! リゾナントォ バスタァッーー ヴィクトリー!!≫
40名無し募集中。。。:2012/08/16(木) 04:01:04.02 0
新スレ早々に大量の作品が投下されて追いつかない・・・w
あとで全部読むよー
41名無し募集中。。。:2012/08/16(木) 04:57:35.86 0
追いつかないという嬉しい悲鳴
42名無し募集中。。。:2012/08/16(木) 07:24:44.11 0
朝なんと
43名無し募集中。。。:2012/08/16(木) 07:56:23.15 0
かなしみ戦隊超熱い!
クライマックス感パネェ!
44名無し募集中。。。:2012/08/16(木) 10:09:51.71 0
Loving you foreverと友とかそれだけで泣ける
45名無し募集中。 。 。:2012/08/16(木) 12:25:29.95 O
保全なのおおお!
46名無し募集中。。。:2012/08/16(木) 13:38:57.20 0
ようやっと追いついたw

>>20
鞘師に色々便宜を図ったあの人はやっぱあの人なんですかね?
原点の九人と鞘師たちが顔を合わせる時が待ち遠しいあるいは来ないか

>>34
次回は彼女に振り回されてる者どうし対決ですね
ところでゲームの話はw

>>42-43
占い師から与えられたチカラに感謝するリーダーの姿に大きさを感じる
どんな決着を見るのか楽しみです
47名無し募集中。。。:2012/08/16(木) 15:59:20.17 0
ふぅ
48名無し募集中。。。:2012/08/16(木) 18:26:54.13 0
へぇ
49名無し募集中。。。:2012/08/16(木) 19:07:03.23 O
ほぅ
50名無し募集中。。。:2012/08/16(木) 23:26:18.99 0
不可視?
51名無し募集中。。。:2012/08/16(木) 23:26:58.12 0
おかえりなさい
52名無し募集中。。。:2012/08/16(木) 23:28:10.11 0
戻ったね
53名無し募集中。 。 。:2012/08/17(金) 00:06:32.32 O
保全ですよ?
54名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 00:07:53.08 0
おお
新スレ乙
55名無し募集中。 。 。:2012/08/17(金) 00:11:08.60 O
みなさん新スレに移動できましたか?
56名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 12:42:46.04 0
復活?
57名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 13:26:58.22 0
どうやら復旧したのかな
58名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 14:33:26.06 0
門をたたく音
59名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 16:23:57.84 0
元通りってことでいいのかな
60名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 17:17:51.28 0
今度こそ大丈夫そうかな
61名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 17:41:29.92 0
スレの総数が700越えてるから大丈夫じゃないの
62名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 19:30:28.59 0
『超・戦慄迷宮』

〈One 構って欲しくて〉

1−1

「むり〜!むり〜!みずき〜、引き返そうよ〜!」
「もう、えりぽん!次の脱出口までは頑張ろう!田中さんに怒られるよ!」
「いや〜〜ん!」
生田は譜久村の背中にぴったり貼りついていた。
二人はれいなの命令でとあるお化け屋敷に来ていた。
生田と工藤のお化け嫌いがあまりにもひどいため、鍛え直そうという狙いだった。
だが、一緒に来た工藤は泣きじゃくって嫌がり、柱にしがみついて離れなかった。
譜久村はそんな工藤の様子を十分に堪能した後、生田を引きずりお化け屋敷に入った。
「おかしいおかしい!なんでくどぅーは入らなくていいとー?」
「くどぅーはまだ可愛い子供でしょ?
えりぽんは来年高校生になるんだからもうしっかりしないと!」
「もう!くどぅーとは二つしか変わらんのに!」
お化け役の人が物陰から飛び出すたびに、生田は絶叫を繰り返した。
生田が怖がれば怖がるほど、譜久村はそれがおかしくて逆に怖くなくなっていった。

しばらく歩いて行くと、なぜかお化け役の人がぱったり現れなくなった。
不思議に思いつつさらに進むと、廊下の先が壁で行き止まりになっていた。
(おかしいなあ…コースを間違えちゃったのかなあ)
譜久村が首を傾げる。生田は目をきつく閉じたままだ。
(少し「読みとって」みようかな)
譜久村は、能力を使ってみた。
63名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 19:31:07.98 0
1−2

譜久村には残留思念を感じ取る能力がある。
譜久村は壁に触れ、様々な思念を読み取った。
するとその中に懐かしい思念があるのを感じた。
(あれ?これ、新垣さん?)
譜久村は驚いた。
新垣は数か月前からリゾナンターを離れ、単独行動している。
思念とはいえ、久しぶりに新垣に触れ、譜久村は嬉しくなった。
(新垣さんもここに来てたんだ〜。ふふっ、新垣さんもお化け怖がってる。
ん?「カメをたあすけにきましたあ」って、亀井さんもいらしたの?)
譜久村がリゾナンターに入った時、亀井絵里はもういなかった。
しかし、さゆみから写真を見せられた譜久村は、一瞬でその可愛さの虜になった。
譜久村は絵里の思念を捜し当て、恍惚の表情でそれをむさぼった。
(亀井さ〜ん、こんなところであなたの心に触れられるなんて、みずき、幸せです〜)
「ねえ、みずき〜、どうして進まないの〜?」
立ち止まって動かない譜久村に疑問を抱いた生田が質問する。
譜久村は絵里の思念を辿るのに夢中で答えない。
「ねえ!何で構ってくれんと〜!みずき!みずきー!」
生田に揺さぶられようやく譜久村は我に返った。
そして、口元にたれているよだれを拭いながら生田に謝った。
「ごめん、ごめん。ところでえりぽん、私達、コースを間違えちゃったかも?」
「えっ、みずき、間違えたの〜!?」
「間違えてないよ!」
突然、聞きなれない声が響いた。
64名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 19:31:47.81 0
1−3

「誰!?」
二人が声の方を向くと、行き止まりの壁の前にピンクに光る一人の少女がいた。
少女は意地悪そうな笑みを浮かべつつ言った。
「誰って、お化けに決まってるじゃない。お化け屋敷だもん」
「ギャーーーーー!」
生田が叫ぶ。少女は続ける。
「私、あなたたちを殺さなきゃいけないの、ごめんね」
そう言うと、少女の体が明るさを増す。
同時に周囲の温度が急激に上昇し始めた。
「暑っ…」
「苦しい…」
譜久村と生田の顔が歪んだ。
ふと見ると、少女の近くの壁の張り紙が黒くなり始めている。
少女の体からものすごい熱が発せられているらしい。
二人は少女から遠ざかろうと、進路を逆走した。
10歩ほど進んだ時、譜久村は新垣の思念の中にあった言葉を突然思い出した。
(ギブアップはだめ!)
「えりぽん!」
譜久村が先行する生田の手を掴み引き戻す。
ガラガラッ!
生田の鼻先を掠めて、上から数本の鉄骨が落ちてきた。
65名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 19:32:43.28 0
〈Two 触って欲しくて〉

2−1

少女が感心したように言う。
「ふーん、罠に気付くとはなかなか勘が鋭いみたいね」
「みずき、サンキュ」
「うん。…でも、みずきたち、閉じ込められちゃった」
折り重なった鉄骨は完全に退路を塞いでいた。
二人が戸惑っているその間にも少女の放つ熱は激しさを増す。
命の危険を感じたせいなのか、それとも「キレた」のか、生田の目つきが急に変った。
「みずき、二人であのお化けを倒すしかないっちゃ!」
生田の能力は精神破壊。
リゾナンターに入る前、生田はその力を無差別にまき散らすだけだった。
しかし、精神系のスペシャリスト新垣との鍛錬が生田を成長させた。
今では破壊する方向をある程度制御できるようになっている。
「えええい!」
生田は目の前の少女にありったけの精神破壊波をぶつけた。
しかし、少女には何の変化も起きない。
「あれ〜、効かんと!?」
「えりぽん、お化けにそういう攻撃は効かないのかもしれない」
おバカ、もとい天然な譜久村は目の前の少女をお化けと信じてきっている。
66名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 19:33:53.32 0
2−2

二人は顔を見合せ、無言で頷いた。
こうなったら高橋やれいなに鍛えてもらった体術で勝負するしかない。
打撃程度の接触なら、少女の熱にも耐えられるかもしれない。
生田と譜久村は少女へ突進した。
だが、その考えは甘かった。
二人の攻撃は当たらない。
いや、当たっているはずなのだが、全く手ごたえがなかった。
その間にも猛烈な熱さが二人の体力を急速に奪っていく。
力尽きた生田がその場に倒れた。
「ハアハア、…。」
譜久村ももう限界に近かった。
その場に膝をつき、コンクリートの床に手を付いた。
その時、コンクリートから新垣の思念が譜久村に入り込んだ。
(お化けは触んないよ。絶対に、絶対触れない約束になってるから!)
確かに少女のお化けは一度も直接攻撃してこない。
譜久村たちが今受けているダメージは彼女の発する熱によるものだ。
「こっちの攻撃が当たらないだけじゃなくて、向こうも触れないってこと?」
その時、譜久村の脳裏に疑問が浮かんだ。
67名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 19:34:36.70 0
2−3

物に触れないお化けが、なぜ鉄骨を落とすことができたのか?
鉄骨を落とすには、何かに触れなければならない。
ということはこのお化けには仲間がいるんじゃないか。
物に触れることができる、お化けではない仲間が。
その仲間を倒せば、何か攻略の糸口が見えるかもしれない。
譜久村はポケットから一枚の生写真を取り出した。
譜久村の持っている生写真には一枚一枚先輩たちの能力が染みこんでいる。
譜久村はその能力を読み取って、性能は劣るが一時的に使用することができた。
いま譜久村が手にしたのは高橋の生写真。
瞬間移動の能力は、譜久村にはまだうまく使いこなせない。
読み込んだのは精神感応の力。譜久村は外で待っている工藤に語りかけた。
(くどぅー!聞こえる?)
「ん?譜久村さん?」
工藤が、ポップコーンをほおばる手を止めた。
(くどぅー、今、お化けに襲われてて大変なの!助けて!)
「えーーーっ!お、お化けですか!ど、ど、どうすればいいんですか?」
(くどぅーの能力を使って見てほしいの。
 みずきのいる場所の近くに誰か人が見えない?)
工藤の能力は千里眼、離れた場所を「見る」力だ。
譜久村の口調に緊迫したものを感じ、工藤は何とか勇気を振り絞った。
泣きはらして腫れぼったくなった目を閉じ、譜久村の周囲を探った。
「えっとー……、あっ、見つけた!
譜久村さんのいるところの天井裏に女の人がいます!」
(くどぅー!ありがとう!)
68名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 19:35:26.76 0
〈Three 笑って欲しくて〉

3−1

お化けじゃないなら倒せる。譜久村は生田の肩を掴んで叫ぶ。
「えりぽん、起きて!」
しかし、生田は生気を失った表情で、ぐったりとしたままだ。
譜久村は新たに生写真を一枚取り出した。それはれいなの生写真。
れいなの能力は共鳴増幅。
譜久村は自らの能力を増幅させ、新垣の思念を自分の体に染みこませた。
譜久村の顔つきが変わる。
そして、新垣そっくりな声色と口調で叫んだ。
「コラー!生田ー!こんなところで寝ない!」
「えっ!新垣さん!」
生田はパッと飛び起きる。
意識は朦朧としているが、満面の笑顔できょろきょろ周りを見渡す。
「新垣さん、えりなを助けに来てくれたんですか!?
 やっぱり、二人は固い絆で結ばれてるんですね!」
譜久村は新垣の声で続ける。
「生田ー!天井に向かってKYパワーを放出しなさーい!」
生田はその声が譜久村のものだと気付いていない。
「はいっ!ぐふふふっ…」
生田は気持ち悪い笑い声を漏らしながら真上を向いた。
「新垣さんとえりなの愛のコラボレーショーン!!」
生田は両手を上に広げて「愛」とは程遠い恐ろしい能力を解き放った。
「ギャーーー!」天井裏から響く断末魔の声。
同時に、ピンク色に光っていた少女のお化けの姿が消えた。
69名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 19:36:30.57 0
3−2

生田は攻撃を止めない。
天井裏の誰かがのた打ち回る音がバタンバタンと響いていくる。
バリバリッ!ドサッ!
暴れる衝撃に耐えきれなくなったのか、天井板が割れ、少女が落ちてきた。
「えりぽん、もういいよ!」譜久村に制止され、生田は攻撃を止めた。
少女は落下の衝撃で意識を失ったようだ。
「…あれ…みずき!新垣さんは?」
「新垣さんはいないよ。あれはみずきが物まねしただけ」
「えー!新垣さんいないの〜?助けに来てくれたと思って超嬉しかったのに〜!!」
「それよりえりぽん、みずきたち、何だかよく分からないけど勝っちゃったみたい」
「ホント!?やった〜!イエーーイ!」
お化けの少女が居なくなったことを確認し、生田は譜久村と飛び跳ねて歓喜した。
落ち着きを取り戻すと、二人は改めて目の前の少女をよく見た。
その少女は先ほどまで戦っていたお化けと全く同じ姿をしている。
「みずき〜、これ、どういうことかいね?」
「う〜ん、多分だけど、これ、生霊ってやつじゃないかな。」
「いきりょう?」
「うん、みずき、前に聞いたことあるんだけど、
生きている人でも恨みが強いと、幽霊になることができるんだって」
「じゃあ、えりなたちが戦ってたのは、この人のいきりょうってこと?」
「たぶん、間違い無いと思う」
「ふ〜ん、みずきは物知りっちゃねえ」
生田は尊敬の眼差しで、照れながら少しドヤ顔をしている一歳年上の同期を見つめた。
70名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 19:37:14.85 0
3−3

「大間違いだよ!」
カメラとマイクでこの様子を監視していた白衣の女性が突っ込む。
「生霊なんてあるわけないでしょ!
 自分の分身を作り出せる能力者がいることぐらい想定できないの!?
 比較的まともそうな譜久村って子でもこれかあ…。
 新生リゾナンター、これから大丈夫なの?
 まあ、私が心配することじゃないんだけど…」
白衣の女性はコーヒーを一口飲み、独り言を続けた
「…それにしても、この子もミッション失敗かあ。
 三人とも中々の能力を持ってるし、良い所までいったんだけど、
 詰めが甘いというか、運がないというか…」
「今回もダメですかー?」
「小春?もう!入る時はノックぐらいしてよね!」
「ほーい。でも今回はかなり周到に準備してましたよね〜
 あの子たちがお化け屋敷に行くって話しているのを盗聴して、
 前もってお化け屋敷のコースにも細工して…」
「うん、あれだけバックアップしてあげても勝てないってことは、
 やっぱりあの子たちは使えないってことかもね」
「あと四人残ってますけど、上はどうするつもりなんすかね〜。
…でも、どうして自分でお化け屋敷に行って監視しなかったんすか?
 面白い能力だって興味津々だったじゃないっすか?」
「…私、前にあそこねぇ、行ったんだけどねぇ、泣いて入口に戻って来たよ…」
「…そーっすか…。その気持ち…、すんごくよく分かります…」
71名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 19:38:50.64 0
〈Endingでーす〉

決着がついた直後、三人の様子を見にれいなが工藤の前に現れた。
工藤が状況を説明していると、譜久村が高橋の能力を使いそこに加わってきた。
事情が分かると、れいなは金魚のフンのようについてきていた佐藤に指示した。
おかげで譜久村と生田は容易に外に出られた。
「生霊!?何それ、こわっ!」
「たなさたん、むしだけじゃなくて、おばけもこわいんですか〜?ぷふっ」
「うるさいなあ!本物のお化けやろ?佐藤だって本物は怖いっちゃろ」
「まーちゃんもこわいですよ〜、でもまーちゃんはくどぅーよりおねえさんだから〜」
「なんでよ!同い年でしょ!」
精神年齢が近い三人の言い争いをよそに、譜久村と生田はお化け屋敷を眺めていた。
「新垣さんもここに来てたっちゃね」
「うん。先輩たちの思いに触れて、みずき、なんかすごく安心したし嬉しかった」
「えりな、新垣さんたちがおらんくなって、どうなるんかなって思ったっちゃけど、
 何てゆうとかいな、先輩たちがいてくれたっていうことで頑張れる気がするんよ。
先輩たちにいろいろ教えてもらったことだけじゃなくて、
先輩たちもうちらみたいに一生懸命頑張ってたんだなって思えることが、
自分の力になっとる気がするっていうか…」
「そうだね…、それがリゾナンターの「歴史」っていうものなのかもね……」
「フクちゃーん!生田ー!ドドンパ乗りに行こー!」
「「はーい!」」
れいなの呼び声に、二人は笑顔で返事をし仲間のもとへ駆けだした。

―おしまい―
72名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 19:40:26.35 0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
以上、『超・戦慄迷宮』でした。パニック娘最高!
なお、敵の少女のモデルは(仮)の暑苦しい人です。


>>62-71 代理投下終了
最後3行だけミスって作者さんの言葉入れられず申し訳ないですm(__)m
73名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 20:07:26.03 0
ガキさんの名言で吹いたww
まさにリゾナントの歴史だなとしみじみ
74名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 20:20:09.08 0
>>72
今回に限らずドシリアスな作品にすることもできる内容なのに敢えてこの路線ってとこがすごく好きですw
生写真を能力の補助にするフクちゃんがいかにもなとことかそこらじゅうで笑わせてもらいましたw
75名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 21:36:41.17 0
PONPONコンビの迷走だなww
76名無し募集中。。。:2012/08/17(金) 22:49:25.10 0
ほぜんなのおおおおお
77カナリアの人:2012/08/17(金) 23:09:19.94 O
>>46
読んでくれてありがとう。
最後何故か、いしよしになってしまってすいませんw
このシリーズでは明日香の心の成長を描こうと思っています。
ゲームの話は収集つかなくて放置していますが、また落ち着いたらゲームの話か、同い年シリーズを投下したいと思います。
78名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 00:11:30.85 0
次回予告
                  リゾナントバスターにより 海の中へと沈められた魔女ミティ
ttp://resonant.web.fc2.com/data/toro6215.jpg
             『クッ深い!ここは日本海溝か……こんな場所に島が移動していただと!?
           だめだ…私は終わらせる 私が終わらせる為に存在した…だから計画を…必ず…』
              執念か 無数のアブクと共に 闇が溶け出した姿で浮かび上がろうとする
             海面が凍り始める 魔女が浮上する …その時だったリゾナンターの背後で
                        -キュィィィーーーーーーーーーィン-
             正気を取り戻した後藤が叫ぶ『私のチカラを使うのよ!下へ押し戻す!』
ttp://resonant.web.fc2.com/data/toro17448.jpg  ttp://aewen.com/momusu/group/img/aewen6592.jpg
        『『『最後だ 喰らってくたばれ!! リゾナントォ バスタァッーー ヴィクトリーG!!!』』』
              いくつものチカラを束ねた共鳴の光が 海に大きな窪みを作り出すと…
                 魔女の体は もう二度と 浮かび上がる事は 無かった………

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

ttp://resonant.web.fc2.com/data/toro6215.jpg
            「………ここは…私の計画は?…私は消滅?死んだのか……っ!?兄さん」
    『遅かったな 直接会うのは初めてだったか 何と呼べばいい?』「……」『そうだったな…神 魔人 闇の王
名前などどうでもいい事だ…ところで お前の目に溢れて来るものは何か解るか?その涙が何故止まらないか解るか?
…お前は お前のするべき事をしただけだ 間違いなどこの世界には存在していない』『あの者達により この大地へ迫る
 お前の大きなかなしみは やがて無数に流れる涙へと変わるだろう 溢れる涙は その涙は かなしみの涙ではない』
   「そうか兄さん…私が世界を操作していると思っていた 違う… リゾナンター… いつの時かお前達が中心に
 世界を巻き込んでいたのか」「兄さんあなたには娘が…では人との?」『ああ…そうだな その事はいずれ話そう』
『お前は人と人を繋ぐチカラを与えた それゆえにお前は今まで一人ぼっち 辛かっただろうな………そろそろ 帰ろうか』
                      「何処へ ですか…これが…死…なのか」


次回かなしみ戦隊リゾナンターV「涙ッチ」

                   『いいや… ………闇に…還るだけだろう………』
79名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 00:19:04.15 0
いつもあたたかい感想ありがとうございます そしてまとめの方もありがとうです
次回最終予告です よろしくお願いしますm(__)m
80名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 01:03:28.70 0
ついに最終回かぁ…
言いたいことはたくさんあるけど最終回までとっておきます
毎度お疲れ様です!!
81名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 02:30:49.35 0
最終回を楽しみにしつつおやすみなんと
82名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 04:29:34.61 0
ぐぅ
83名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 05:29:34.16 0
>>79
なんか壮大な叙事詩の終幕みたい
全ては闇に還るだけなんだよな
84名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 07:23:37.31 0
蒼き闇に共鳴せよ
85名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 10:06:33.90 0
昨日のかなしみが明日への希望に繋がる
その橋を架けるのは
今日を生きるあなた
86名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 12:01:05.66 0
87名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 12:39:01.78 0
>>86
俺もその画像みてこのスレ思い出した
衣装のイメージ的にはごっちんだが
88名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 12:41:10.85 0
このスレではジュンジュンのデフォルトは全裸だからな
89名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 14:34:35.82 0
デフォ
90名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 16:10:30.50 0
>>86
こりゃ凄いww
全裸っていうのもけっこー酷いものだが、昔はそれに
食いついてた人も少なからずいたしね。
91名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 17:33:04.49 0
い、今でも食いつくっちゅうねん
92名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 17:36:26.86 0
あれはちゃんと必然性のある裸だからなっ
93名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 19:11:44.77 0
お前ら・・・w
94名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 19:44:55.95 0
次回最終話予告
               雨さえも降らぬ 凍りついた惑星を望んだ 魔女の壮大な計画
           その 終末計画をも巻き込み リゾナンターは 今 温かい大地を 踏みしめる
           ゆっくりと島は移動を開始する 未だにノイズだらけのテレビとラジオからは
            繰り返される 外出禁止解除と もう1つ とびっきりの情報が流れてきた

                 -今夜…は 皆さん 是非 空… を 見上げて…下さい-

             リゾナントには 以前より随分と増えたコーヒーカップが並んでいる
        マスターが今 自慢のコーヒーをカップに注ぐと 表面にキラキラと映り込んでいく星達
ttp://aewen.com/momusu/kusumi/img/aewen988.jpg  ttp://aewen.com/momusu/kusumi/img/aewen770.jpg
「何ダ?ドヤ顔ダナ!」「ね!小春が言った通りカナ☆彡」「ほぇ!?」「え〜?ん〜なに?なに〜?」「えへへ〜☆」
ttp://aewen.com/momusu/takahashi/img/aewen10348.jpg
               『さあ 早く早く!もう始まってるよ!』 あの子達の呼ぶ声

     その日 真希の能力を失い 細かく散り散りとなったスペースデブリは 無数の星の雨を降らせた
             その終わらない星降る夜に リゾナントの屋根上でメンバーが誓う

                  【こんな 雨の降らない星では愛せないだろう】


次回かなしみ戦隊リゾナンターV最終話「雨の降らない星では愛せないだろう?」

ttp://aewen.com/momusu/takahashi/img/aewen10356.gif
             今夜は特別にみんなへ 私からの 星いっぱいのコーヒーを奢る
               とめどなく流れる 空からのトッピングに 目を這わせると

     ………私が持つコーヒーカップの茶色い大地に また1つ 光る雨が降り注いでいった………
95名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 19:47:52.61 0
こんばんは かなしみです今回も何とか無事最終話を迎える事が出来ました
これも読んでくださった方 感想を頂いた方 まとめの方 Wikiの方という沢山の皆さんの
おかげです!本当にありがとう御座いました
もし もしもまた次回予告を作るなら
次回かなしみ戦隊リゾナンターU【遥1/2Darkness】というのを書きたいです
思念体となったミティは兄ダークネスにより ある目的の為 無理やり現世に戻される
入り込んだ体は 訓練中溺れ仮死状態だったリゾナンター研修生の工藤遥
未だに冷徹でいやいや兄の頼み事を聞いているミティだったが
本体である優しき心を持つ遥との共同生活 リゾナンターや同期との交流で心に変化が…
そしてダークネスから頼まれた内容とは??(声がハスキーな時と強気な時は
ミティが体を支配している時とか面白いかなと…)……てな感じです;

それでは〜…いつかまた〜m(__)mありがとうございました!
96名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 21:26:21.94 0
次回にも期待ホゼナント
97名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 22:18:00.75 0
完結乙でした!
是非また新シリーズお待ちしてます!
98名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 23:47:11.24 0
おやすみホゼナンター
99名無し募集中。。。:2012/08/18(土) 23:53:57.01 0
今度のシリーズも面白そう!
くどぅーとミティの年齢差のギャップとかも見れる訳ですね(サラッと
楽しみにしてます。
100名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 00:30:10.13 0
突如一輪車を勧めだすくどぅー
101名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 01:55:34.34 0
(;・e・)なんだかくどぅーが変なのだ
102名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 04:33:40.54 O
ねるなんと
103名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 07:52:14.80 O
104名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 09:52:21.71 0
同じ人じゃないよね
105名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 12:30:00.81 0
暑いなあ
106名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 12:30:40.22 O
新メンとオリメンのからみが楽しみ
107名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 14:13:58.19 0
亀井さんとみず…譜久村さんの絡みがハァハァ…楽しみ…ンゥ
108名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 14:16:23.22 0
ほぼオリメンさんの出番はあるのだろうか
109名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 14:42:25.12 0
>>94
今更ながら完結お疲れさまです
毎日楽しませていただきましたがあえて文句を言うなら常連客の保田さんの活躍が見られなかったことでしょうか(嘘
ダークネスとガキさんの母親との馴れ初めが明らかになる日が来ることを願っております


110名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 16:38:28.58 0
まだまだあちぃな
111名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 18:30:00.12 0
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/652.htmlつづきです


刀を自由に振りまわすだけでも、れいなは相当の体力を消耗していた。
この刀はあくまでも、れいなの気を集中させて具象化させたものであり、現実の物体ではない。
気を散漫させず、かつ出来る限り鋭利な刃物にするには、相当の集中力を要する。必然的に、体力も早く消耗する。

「99ッ・100ッ!」

それでもれいなはプライドがあるのか、100まで素振りをつづけた。
終わった瞬間、倒れ込むように床に寝そべると、刀はあっさりと消え落ちた。
やはり気を具象化された刀であるが故、持ち主であるれいなと呼応することは確かだ。
恐らくれいなが死ねば、この刀は二度とつくられないんだろうなとぼんやり思う。

寝転がって天井を見上げた。
いまでもときどき、あの日に聞いた、彼女の夢というものを思い出す。
闘いたくないと話した彼女は何処か寂しげで、その瞳から逃げるようにれいなは病室を出た。
それからジュンジュンに、夢ってなに?と質問をぶつけてみた。
彼女の夢というのは、バナナをたくさん食べるという実に彼女らしいものだったけど、本当にそれが彼女の夢だったのかは分からない。

「闘わんで済む方法って、あるっちゃろか……」

先ほどまで右手の中にあった刀を思う。
この刀もまた、闘いの道具でしかない。
本当に、闘わない平和な世界をつくることはできるのだろうかと、れいなは絵里の言葉を思い出していた。
112名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 18:31:13.37 0
-------

昨晩、リンリンは深夜に病院を抜け出し、ひとりで闘いを挑みに行った。
幸いにも、愛とさゆみが現場に急行し、彼女の命は助かったものの、かなりの重傷を負った。
そのまま彼女はジュンジュンとともに異動が決定した。例によって異動先を知ることはなかった。

「ガキさん……」

病院から帰ってきた里沙をれいなは出迎えた。愛も厨房から顔を出し、彼女に近寄る。
里沙は帽子を脱ぎ、上着を椅子の背もたれにかけながら「難しいね…」と口を開いた。

「リンリンを止められなかったのは自分のせいだって責めてる。違うって頭で分かっても、心が納得しないんだね」

彼女の言葉をれいなはゆっくり噛み砕く。
最後にリンリンと会ったのはさゆみだった。だが、彼女はさゆみの制止を聞かずにひとり、闘いに挑んだ。
それは別にさゆみのせいではない。さゆみが力づくで止めたとしても、リンリンは闘いに行っただろう。
神獣を護る立場であるリンリンにとって、ジュンジュンを護れなかったことはどれほどの意味をもつかはれいなにだって分かる。
たぶん、それと同じほどの痛みを、いまのさゆみも感じているのだろうと感じた。

「それでも……」

愛はそっと口を開き、背を向けた。
113名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 18:31:54.99 0
「それでも、前に進まんといかんよ……」

そうして愛は厨房へと戻った。
れいなは酷い物言いだとは思わなかった。愛もまた、後輩が何人も倒れていく現実に心を痛めている。
膝を折りそうになりながらも、彼女は必死に自我を保って耐えている。
この言葉は、彼女が彼女自身に言い聞かせている言葉なのだと、れいなは思った。

―明日は、れなも病院行こう

れいなはそう思い、エプロンをつけ直した。
ズレた歯車を修正しようと、躍起になっていた。


-------

ジュンジュンとリンリンが異動し、2週間が経過していた。
愛や里沙、絵里、れいな、愛佳がなんどか交代で見舞いに行くことで、さゆみは漸く普段の生活に戻ることができた。
それでも、時折影を落としたような瞳を携え、ひとり遠くを見ることがあった。
あまり過剰に声をかけることは控えていたが、それでもれいなは、彼女をなんとか助けたかった。
もうこれ以上、仲間が減るのは嫌だった。

「田中っちー」

カウンターでひとり甘ったるいココアを飲んでいたれいなのもとに現れたのは里沙だった。
里沙はいつものようににこっと笑うと、れいなの隣の席を指差した。
れいなはその意図が分かり「どーぞ」と返すと里沙も素直に座った。
114名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 18:33:09.93 0
「なんか飲む?」
「ん?んー、じゃあ、ウーロン茶」
「喫茶店やっちゃけん、珈琲とか頼んで下さいよ」

れいなは苦笑しながら立ち上がり、厨房にある冷蔵庫へと向かった。
グラスにいくつかの氷を入れたあと里沙しか飲まない黒烏龍茶を注ぎ、再び戻ってくる。
お目当てのドリンクを見た里沙はぱあっと顔を明るくした。

「はい、お待ちどおさま」
「あーりがたや〜」
「昭和すぎやろ」

れいなは里沙の少しだけ古臭いリアクションに笑いながら席に座る。
美味しそうにお茶を飲む姿はとても自分より年上には見えない。これで現場に立つと人が変わったような目をするのだから驚きだ。
だが本来里沙は、あのような殺伐の現場ではなく、こうした静かな空間でお茶を飲む方が似合っている気がする。
だれだって、闘いの現場に身を投じることは気持ちの良いものではない。

そんなことを言い出せば、リゾナンターのだれもが、普通の女の子なのだとれいなは思う。
普通に学校に通って、友だちといっしょに遊んだりして、テレビで見たアイドルがカッコいいとか、クラスメートに恋をしたとか
他愛のないお喋りをして、デートのためにアルバイトをがんばったり、喫茶店で静かに本を読んだり、手を繋いで家へ帰ったり。
何処にでもある平凡な日常を過ごす、普通の女の子なのだ。
この能力さえ、なければ―――

「でも、それがあるかられなは、此処におる」

れいなはひとり言のようにそう呟いた。
その声は隣に座る里沙にもはっきりと届いていたが、彼女はお茶を飲む手を止めただけでなにも言わない。
れいなの考えていることを理解しようとするように、グラスをなんどか傾けながら、思考を回す。
たとえばそれが不条理なのか、たとえばそれが運命なのか、それは分からないけれど。
115名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 18:34:16.47 0
「……なあ、ガキさん」

里沙がぐっと伸びをした直後、れいなは低く呟いた。
それはいままでの彼女のどんな言葉よりも重苦しくて、思わず息を呑む。

「れなたち、どうなると?」

喫茶リゾナントには重苦しい空気が流れた。
れいなは里沙のその口から、次に出てくる優しい言葉を待っていた。なにか明確な答えを示してくれることを期待していた。
小春、ジュンジュン、リンリンと3人もの仲間が離脱し、リゾナンターをめぐる状況は一変した。
この現実は、何処まで続いていくのだと、れいなは問うた。

だが、里沙はその問いに答えようとはしなかった。言葉を探しているようにも、なにも言えずにどう切り抜けようか模索しているようにも見える。
れいなはいよいよ、里沙や愛、はては上層部がなにを考えているのか分からなくなる。
もう二度と、仲間を疑うようなことはしたくない。でも、信じることは、思った以上に難しい。

「私は今日は愛ちゃんと東方部に出る。ダークネスの残党が動いてるみたいだから、それを止める。田中っちは―――」
「そんなこと、聞いとるんやないっちゃよ」

低く苦しい言葉が口の端から漏れた。
怒りを堪え、悲しみを背負い、それでもなお立ち上がり、前へ進もうとするれいなの姿を里沙は認める。

「……分かってよ、田中っち」
「そんな、大人やなかよ、れなは……」

決して、彼女を責めることをれいなはしなかった。
リゾナンターをまとめるべき存在の愛や里沙が“上”とリゾナンターとの間で板挟みになっていることは分かる。
彼女には彼女の信念があるが、それを貫き通せない現実があることも分かっている。
分かっているから責めない。だけど、分かっているけど、れいなは、耐えられない。
116名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 18:35:28.51 0
「もう誰も、傷つかんでほしいと……」

常に強気で、一匹狼で、孤高に戦うれいなは、誰よりも誇り高く、強さを誇示していた。
だから、これほど弱気に、これほどなにかに怯えているれいなを見たのは初めてだった。
それが結局のところ、彼女の本音であり本心であり、たったひとつの願いだった。

「だいじょうぶだよ」

里沙は柔らかく笑ったかと思うとそっとれいなの肩に手を置く。
その姿は先ほどよりもずっと大人びていて、光に満ち溢れていて、れいなには眩しすぎて目を細めた。

「みんな、此処にいるから」

里沙の言葉は決して、上っ面なものではなかった。
誰もが皆、確かに此処にいることを知り、再確認していた。独りじゃない、仲間は此処にいるともういちど呟く。
不安が拭い去れずにそこに存在していたとしても、引き返すことはできない。それが彼女たちの選んだ道だったから。

里沙はなんどかれいなの肩を叩いたあと、彼女の髪をぐしゃぐしゃにした。
急に髪を弄られたれいなは「にゃぁー!」と猫のように抵抗するが、それも楽しいのか、里沙は笑ったまま髪を弄る。

「へっへー、どうだ!どうだ!」
「なんすっとかー!髪が乱れるっちゃ!!」

里沙は散々好き放題に髪を遊ぶと、ひょいと椅子から降りた。
117名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 18:36:19.50 0
「おー、田中っち、無造作ヘアでイケメンですよぉー」
「だれがそんなこと頼んだかぁ!!」

れいなが殴り掛からん勢いで迫ってきたので、里沙は慌てて喫茶店の入口へと走った。

「じゃあ、なんかあったら対応よろしくねっ!」

それだけ言い残すと、頼れる小姑は脱兎のごとく走り去った。
珍しい彼女なりの慰め方に、あんなことするようなタイプだったっけ?とれいなは大げさに肩を竦めた。
里沙の飲み干したグラスと自分の半分も残ったココアのカップを持ち、厨房へと戻る。
今日は何事もなければいいなと、れいなはさゆみの帰りを待った。


-------

絵里の体調は時間を追うごとに悪くなっていった。
朝から妙に胸に痛みが走ると思っていたが、数時間前からさらにそれは悪化していた。
最後の直線に入った競走馬のように、心臓は走り、痛みを全身に伝える。

「今日は絶不調だなぁ……」

そうやってごまかすように笑ってみたが、どうも笑って済ませられる状態ではなかった。
呼吸は短くなり、脂汗を額にべっとりとかいている。
118名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 18:37:40.86 0
一応、10分ほど前に薬を飲んだのでそのうち安定してくると思うが、日に日に薬の量も多くなり、効果の持続も短くなってきている。
季節の変わり目は特にそういうことが多いのだが、それにしても最近のは異常ともいえる。

―いよいよヤバいかな、絵里……

自嘲気味に笑ってベッドに横たわる。
こんな姿、仲間に見られたら心配をかけるに決まっている。
愛と里沙は東方部に仕事に行っているし、れいなとさゆみは喫茶リゾナントで営業中なので、見舞いは来ないだろうが。
いちばん可能性があるのは同じ病院にいる愛佳だが、彼女はその能力のせいか、絵里の状態に気付いているのかもしれない。
それを口にしないのは優しさか、それとも言えないほどにひどい状態なのか―――

「……寝よう」

こうして体が弱っているときは思考も嫌な方向へと走る。
負の連鎖に呑まれる前に寝てしまった方が得策だと、絵里は強引に思考を切断した。

瞬間、だった。
凄まじい轟音の直後に病室が大きく揺れた。絵里は思わずベッドから落ちそうになるが手すりに捉まって堪える。

「な、なんの音……?」

間髪入れずに、ぱん・ぱんと銃声が聞こえた。
慌てて耳を澄ませると、音の方向が下の階、待合室からだと分かる。
絵里は点滴を支えながらベッドを降り、病室の外へと出る。
そのとき、彼女の額に銃口が突きつけられた―――
119名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 18:41:17.70 0
ひとまず此処までです
前スレ>>987さんの予想と違ったら恥ずかしい・・・w
大して上手く書けないのであまり期待しないで下さい・・・w
ではまた
120名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 20:14:04.58 0
あとで読む!
121名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 21:26:14.41 O
ガキさんとれいなの会話にほっこりしてたらまた事件が…
崩壊の歯車が止まるのか否か、続き待ってます
122名無し募集中。。。:2012/08/19(日) 22:51:41.55 0
お休み前のホゼナント
123名無し募集中。。。:2012/08/20(月) 00:20:48.18 0
史実通りに進んでしまうのかな……
124名無し募集中。。。:2012/08/20(月) 02:04:16.73 0
おやすみなんと
125名無し募集中。。。:2012/08/20(月) 04:43:45.27 O
从;` -´)。oO(無造作ヘアってなんやっちゃ…)
126名無し募集中。。。:2012/08/20(月) 07:58:25.58 0
うええおええ朝食
127名無し募集中。。。:2012/08/20(月) 09:26:45.43 0
せつないねえ…
128名無し募集中。。。:2012/08/20(月) 10:44:33.35 0
(T_T)
129名無し募集中。。。:2012/08/20(月) 13:43:43.25 O
ほっ
130名無し募集中。。。:2012/08/20(月) 15:56:23.69 0
うおっと
131名無し募集中。。。:2012/08/20(月) 17:41:42.54 0
132名無し募集中。。。:2012/08/20(月) 18:57:13.16 O
カメはんご無事で…
133名無し募集中。。。:2012/08/20(月) 20:35:11.44 0
>>16‐19の続き

 「ふあぁ〜〜……」
 「この時期ってアレだよね、多分さ、半端に眠いんだろうね」
 「分かる、なんかそういう時ってあるよね。無性にっていうか」
 「そういえば今度席替えするんだっけ、後ろの方だったら寝てもバレないのに」
 「ご飯が取られないかと思うと安心するよ」
 「逃げられると思うなよ?」
 「返り討ちだね」

時間の流れと言うのは、そのときそのとき、さまざまな速度で進む。
あるひとには光速のようで、あるひとには時が止まって見えるらしい。
もしかすると、時間は平等ではないのかもしれない。
何処かでは激流のように時間は流れ、何処かでは時は停止しているのかもしれない。

窓の外は、青空。
何処までもつづく薄い水色に、やけに眩しい純白の雲。
最後に雨が降ったのはいつだったか。
少し考えても思い出せないくらい、ずっと晴れの天気が続いている。
気温は下がっていても、気配はあっても、晴れている。梅雨入りの話は何処に?

今は数学の授業中。
教師が黒板にゆるい字で数字を羅列している。退屈だ、特に不得意な教科なほど。
鈴木はため息を呑み込むのといっしょに、窓の外、空を泳ぐ真っ白な雲を
ぱくんっ、と食べるような仕草をしてみせる。

ふと教室に視線を戻すと、休み時間ギリギリに帰ってきた鞘師がノートに
黒板の内容を写すのに奮闘している。
彼女は数学が強いらしく、クラスでは教えてもらおうと囲まれてたりするのだ。
眠たそうに目を擦っている。
134名無し募集中。。。:2012/08/20(月) 20:36:12.41 0
そういえば、また、夢を見た。

登場人物はいつも同じで、自分の目線もまた、同じ人。薄紫色の彼女。
戦う、夢だ。
あの赤色の少女も居て、変化と言えば、人数が増えている。
藍色の女性と、緑色の女性。
顔は日系だが、言葉が多分、中国語だったと思う。
片言で話す藍色の瞳はとても真剣だった。緑色の瞳も鋭さを増して行く。
薄紫色の彼女は赤色の彼女に強く頷く。まるで何かを示すように。

【ダークネス】に囲まれた状態で、誰かの声が上がる。

 「んー20対4か、ま、楽勝じゃん?」
 「皆の背中はワタシが守るヨ」
 「ひゅージュンジュン男前、でも足引っ張るのはなしだからね」
 「久住サンが一番心配ダ」
 「じゃあいつく潰せるか勝負する?」
 「久住さん、今は真剣になってください!」
 「ほら怒られた。リンリン、ミッツィーのことお願いね」
 「バッチリでスヨ!最大出力!」
 「うわあっち、リンリンフライグ過ぎー!」

どこかギャグめいた言葉と共に、辺りが一気に出火不明の緑色に『炎』を噴き上げる。
その驚きと共に、鈴木は目を覚ました。

戦い。

夢の中で繰り広げるのは、ゲームのように実感の全くない戦い。
自分が知らない世界で、国と国とが争いを続けているように。
135名無し募集中。。。:2012/08/20(月) 20:36:50.23 0
この街、もっと大勢、この国で『平和』に暮らす人間はきっと、知らない。
戦争がなんなのか、誰と戦ってるのか、どうして戦わなければいけないのか。
誰も、きっと。
しかし、それでどう困ると言うのだろう?

 なにしろこの国は、どうしようもなく平和なのだから。

だけど、鈴木は小さな戦いを知っている。知らされた。
鞘師里保。
彼女が現れて、「きょーめいしゃ」だとか「だーくねす」だとか
そういうのが居て、「だーくねす」は人を醜い姿にして、それと「きょーめいしゃ」が
戦いを繰り返しているという事を思い知らされたあの日。

だけど、それは何の為?鞘師は、誰と、何の為に戦ってるのか。
そしてあの9人の戦いは終わったのか、続いているのかは、判らない。
それこそ、自分達には関係がないとでも言うように。

 (夢っていうかやっぱり、過去の話、とかなのかなあ)

鈴木には『共感覚 -シナスタジア-』と呼ばれるチカラがあった。
だがあれは音の振動音波で相手のオーラを「色」で知るというものであり
本来は風景イメージといったものは見ない。
鞘師によればそれに対して「ヒカリ」と呼ばれる物質が作用してうんぬんかんぬん…。
鈴木的にもよく判らない間に、そういったものが見えるようになった、らしい。
 
 (でもこの世界にあんなモノがいるなんて聞いたことがない)
 (正直、こんなものが見えたからってどんな意味があるのか全然判んないんだろうね)
136名無し募集中。。。:2012/08/20(月) 20:37:41.82 0
シャーペンでノートに書くのはオリジナルキャラクター。
そこに誰かさんを書いてみたり、消しゴムで消してみたり。
諦めたように視線を窓に向けてみる。

 (あの女の人の名前、ミッツィーって言ってたから、ミッツイ…みつい、さん?)

薄紫色の女性、みついの視点で広がる世界は、此処ととてもよく似ている。
だからこそ戦う選択肢が当たり前のような光景に、鈴木は恐怖よりも
寂しさが込み上げた。何故か?何故か。

 (それにしても、お腹すいたな…)

鈴木は頬に手を当てて肘を置く、チャイムが鳴るまでずっと空を見ていた。
137名無し募集中。。。:2012/08/20(月) 20:38:49.77 0
>>133-136
以上です。
今スレに入って一番手恐縮です。

>>72
ネタが満載で面白かったです。
(仮)のメンバーは残念ながら判らないんですが、フクちゃんの
能力仕様が上手いなと。
138名無し募集中。。。:2012/08/20(月) 21:57:44.95 O
ほっ
139名無し募集中。。。:2012/08/20(月) 23:03:22.37 0
1時間程で600番台か
140名無し募集中。。。:2012/08/20(月) 23:15:42.50 0
川*’ー’)<夏もそろそろ終わりそうやし、新メニュー考えてみたがし
从*´ ヮ`)<愛ちゃん、れーなも賛成っちゃ!ここでまた人気メニュー
ノ|c| ・e・)<うん、私もいいと思うな。名前が相変わらず気になるけど・・・

川*’▽’)<これが!秋の新メニュー!!「うえあえあ丼」
ノ|c|; ・e・)<・・・はい?
川*’▽’)<だ・か・ら「うえあえあ丼」
ノ|c|・e・)<・・・
从*´ ヮ`)<さ、さすが愛ちゃん!まさか「うえあえあ」を作るなんて
川*’▽’)<フフフ・・・当たり前のすぎて気がつかなかったこのアイデア!どうかね?
从*´ ヮ`)<愛ちゃん、天才やね!さっそく、メニューに・

ノ|c|・e・)<うん、却下
柏*’ー’)Σ 从*´ ヮ`)<え!?なんで!?
ノ|c|・e・)<・・・愛ちゃん、これなに?
川*’ー’)<これはガキさんが頼んだ「うええおええ丼」
ノ|c|・e・)<じゃあ、これは?
川*’▽’)<秋の新作「うえあえあ丼」
ノ|c|・e・)<区別付くかぁぁ!!

从*´ ヮ`)<ガ、ガキさん待つっちゃ!「うえあえあ」っちゃろ?「うええおええ」と違うとよ
ノ|c|・e・)<うん、田中っち、いくら主張しても文字の上で説明には限界があるから
川*’ー’)<で、でも「うえあえあ」やよ!あの幻の「えあ」が入ってきたのに
Σノ|c|・e・)<え?切れ目そこ?「えあ」で切るの?「うえ」「あえあ」ではなくて?
从*´ ヮ`)<そうっちゃ!あの苫小牧産の生まれたての「えあ」を使っているとよ
Σノ|c|;・e・)<え?なに?「えあ」って何?生き物?というか「あの」って何よ?
川*’ー’)<この川昇りをしてきた脂ののった「えああ」の子供やよ
ノ|c|・e・)<「えあ」って出世魚?
从*´ ヮ`)<なにいっとると?「えあ」は「あえあ」の第一形態に決まっていると!
ノ|c|・e・)<いや、気持ち悪いから。なに?第一形態って?ライダー?ライダーなの?
141名無し募集中。。。:2012/08/20(月) 23:17:26.54 0
从*・ 。.・)<待つの!その「うえあえあ丼」の魅力はそれだけじゃないの
ノ|c|;・e・)<さゆすけ!?
从*・ 。.・)<あの「えあ」だけではなくて本場の揺れたて「あえあ」も使っているの!
Σノ|c|・e・)<「あえあ」もあるのかよ!それから本場ってどこよ!そもそも「揺れたて」って何よ
ノノ*^ー^)<ガキさんには永遠に分からないことですよ〜エヘヘ・・・
(バキッ)
ノ|c|#・e・)<なんかむかつくのでとりあえずカメは縛っておきます
从*´ ヮ`)<ニヒヒ、ガキさんの団子が揺れてると!
从*・ 。.・)<・・・れいなは全く揺れないの

ノ|c|・e・)<とにかく「うえあえあ丼」はわかりにくいからダメ!
川*’ー’)<仕方ないがし・・・諦めるがし・・・
从*・ 。.・)<ちょっと待つの!今日はさゆみも考えてきたの!
从*´ ヮ`)<さゆが?楽しみたい!
从*・ 。.・)<自信作、秋の新作「おえあおえあ定食」
ノ|c|#・e・)<コラーーーーーー全く同じでしょうがーーーーー勉強しなさい〜〜〜

川;*’ー’)<ど、どこで天然の「えああえあ」を手に入れたがし?
ノ|c|・e・)<いや、愛ちゃん間違っているから「えあおえあ」だから
从*´ ヮ`)<そうっちゃ、愛ちゃん、「えおおえあ」っちゃよ!
ノ|c|・e・)<いや「えあおえあ」だから

从*・ 。.・)<親の「えあおえあ」から抜き取った「えおあえあ」。だから「御えあおえあ」なの
Σノ|c|・e・)<「お」って「御」なの?というか何?親子で種類違うの?
ノノ*^ー^)<「りさ」みたいなものですよ「えあおえあ」って
ノ|c|・e・)<え?名前なの?というか何でみんな知っているの?常識なの?
ノノ*^ー^)<小学校で育てましたよね?雄の「えああえあ」と雌の「えおおえあ」を
ノ|c|;・e・)<育てるかーーーー

・・・結局秋の新メニューはお蔵入りとなった
ちなみに川´・_o・)<中国では一家に一台いるダ。常識ダ
142名無し募集中。。。:2012/08/20(月) 23:20:18.31 0
>>140-141
保全作「上へ追えぇ(うええおええ)」です。
ノリで書いてしまったw
143名無し募集中。。。:2012/08/20(月) 23:26:57.54 0
ワロタw
144名無し募集中。。。:2012/08/21(火) 00:11:10.84 0
おまえらうるせえw
145名無し募集中。。。:2012/08/21(火) 01:19:05.80 O
不覚にもワロタw
146名無し募集中。。。:2012/08/21(火) 02:04:00.44 0
理解が追い付かんww
147名無し募集中。。。:2012/08/21(火) 03:31:00.73 O
おやすみなの
148名無し募集中。。。:2012/08/21(火) 06:31:23.55 0
朝だす
149名無し募集中。。。:2012/08/21(火) 09:36:26.07 O
ハイハイ
150名無し募集中。。。:2012/08/21(火) 10:30:52.76 0
リンリンがいるな
151名無し募集中。。。:2012/08/21(火) 10:47:48.26 0
152名無し募集中。。。:2012/08/21(火) 12:08:38.75 0
>>137
オリジナルキャラクターってあれかw
こうした日常が丁寧に描かれるからこそ非日常が際立つのだなと
続き待ってます
153名無し募集中。。。:2012/08/21(火) 12:39:07.35 0
リンリンがパイパイなのはわかってるよ
154名無し募集中。。。:2012/08/21(火) 15:07:42.23 O
155名無し募集中。。。:2012/08/21(火) 16:52:17.33 0
パイパイありがとうさようなら〜♪HAHAHA
156名無し募集中。。。:2012/08/21(火) 19:23:24.14 0
寄せて上げ
157名無し募集中。。。:2012/08/21(火) 21:05:37.09 0
うえあえあマシマシ
158名無し募集中。。。:2012/08/21(火) 22:21:19.67 0
熱帯夜ですなあ
159名無し募集中。。。:2012/08/21(火) 23:31:36.27 0
寝苦しいです・・・
160名無し募集中。。。:2012/08/22(水) 00:27:08.91 O
おやすみなんと
161名無し募集中。。。:2012/08/22(水) 00:45:03.21 O
今夜はどんな夜ですか?
162名無し募集中。。。:2012/08/22(水) 01:09:51.72 0
暑っつい暑い夜ですよ?
163名無し募集中。。。:2012/08/22(水) 06:34:07.34 0
割と涼しい朝ですね
164名無し募集中。。。:2012/08/22(水) 08:09:59.54 0
最近盛り下がりぎみの波がきてるなあ
165 忍法帖【Lv=3,xxxP】 :2012/08/22(水) 10:16:31.29 0
レベル下ってしまったのかな
166名無し募集中。。。:2012/08/22(水) 10:17:32.09 0
下がってしまってる・・・orz
167名無し募集中。。。:2012/08/22(水) 11:59:23.95 0
この愛を重ねてを聴きながら
168名無し募集中。。。:2012/08/22(水) 13:39:07.21 0
>>164
暑すぎるっていうのもあるかもね
自分もだけどw
169名無し募集中。。。:2012/08/22(水) 13:55:37.58 0
>>133-136の続き。

六月だ!海開きだ!プール開きだ!
そんな声が小さく大きく聞こえてくるようになった中旬。
何処までも続く薄水色のやけに遠い空を見上げて、梅雨が来なかった事に首を傾げて。
いつか降るだろうと結論づけた。
この空が果てしなくつづいていることは知っているはずなのに、『水不足』だと言えば
何処か遠い国の出来事に感じる誰かさん。
だから。

 「冷た!」

鈴木の悲鳴が上がる。
上空二メートルのところから、大雑把な粒の雨が降って来たからだ。

 「あははははははは!」

大笑いする彼女がホースを撒き散らし、放たれる水は弧を描いて
鈴木たちクラスの女子めがけて降ってきた。
はしゃぐ女子たちは、水しぶきから逃れようと小走りになる。

 「おーい走るなー、遊びじゃないんだぞーっ」

何度目かの教師の注意する声が飛ぶ、短パンとTシャツの格好で。
昼休みが終わり、本来なら五限目の現国の時間だ。
だが鈴木は体操着で今、プールサイドに素足をさらして立っている。
理由は簡単。

 今年もプール開きのため、昨日から始まった『プール清掃』だ。

170名無し募集中。。。:2012/08/22(水) 13:56:14.84 0
この学校にはプールがある。しかも無駄にデカい共同プールだ。
今日は中等部の1年から3年までが受け持つことになっていた。
清掃など、業者に任せればいいんだろうと誰かが言う。

 「業者に金払うより、身内でやっちゃった方が安上がりってことでしょ?」

生々しい回答、デッキブラシを手にプールサイドのタイルをごしごしと擦る。
水不足など頭の片隅にもないような豪快さで水をまく彼女。
底に溜まった得体のしれない何かしらに足を取られながら眉間にしわを寄せて
デッキブラシなどで丹念にさらい続ける男子。
午前中もほかのクラスや学年の生徒達が清掃を行っているとはいえ
まるまる一年放置されたプールのデンジャラスな汚れっぷりは衰えを知らない。

男子がプールから葉っぱや何かしらが大量に盛られたバケツを女子に渡すと
「きゃあ!」とか「きもいっ!」とかいちいち悲鳴が上がる。
嫌がっている半面、どことなくこの状況を楽しんでるような気もする。

口では「めんどい」なんて言っていても、眩しい太陽光線、むせかえる気温
真っ白い雲に何処までも青く澄んだ空。
これでもかというくらい「青春せよ」と誰かが言っているようで。

 「単純だなー」

デッキブラシと自分の腕を支えにして、鈴木はだらんとアゴをつく。
瞬間。

 「――― ひゃあぁぁ〜〜〜〜!!」
171名無し募集中。。。:2012/08/22(水) 13:56:55.48 0
隣で誰かの悲鳴が上がった。
真夏並みの気温とはいえ、水道の真水だ。頭から全身をまともに浴びれば
さすがに思わず声を出してしまうほど冷たい。

 「ほらやらかしたっ、誰かタオル貸してあげてっ」
 「鞘師さん、大丈夫?」
 「ごめんね里保ちゃんっ」

彼女の他にもホースを手にした女子が二人。
どうやらお互いに水をかけあって遊んでいたところ、運悪く鞘師に
向けられて放水されたらしい。
全身ずぶぬれの鞘師は手渡されたタオルで顔を拭いている。
鈴木はホースを取ると、とりあえず原因の彼女の顔面に思いっきり放水した。

 「こら男子こっち見るな!」

先ほどの鞘師の悲鳴でプールの中から覗いていた男子が頬を赤らめている。
全身がずぶぬれになった事で、鞘師の体操着が思いっきり透けていたからだ。
そんな熱視線に女子がホースを向けた、まさに冷や水。
怨念めいた断末魔の悲鳴をよそに、当の本人はきょとんとしている。

 「とりあえず着替えた方がいいよっ、替えの体操服あるか聞いてくるから」
 「あ、あぁえっと、大丈夫だよ」
 「大丈夫って……え?」

そういった鞘師がふいと、無造作に体操着のシャツを捲る。
ぎょっとしたが、体操着の下はスクール水着だった。いつの間に。
濡れた髪を後ろで結びながら、鞘師は小さく笑ってみせた。

172名無し募集中。。。:2012/08/22(水) 13:57:42.06 0
 「ちょっとビックリしただけだから」
 「はぁーさすが里保ちゃんだ」
 「元はと言えばあんたのせいだけどね」
 「うーんとあ、そうだ。
 明日の給食の時間に里保ちゃんの好きなヤツあげるからそれで一つ!」

周りで心配していた女子は安心したのか笑顔を浮かべる。
先生の注意の声が上がるなどをしている内に、鞘師が鈴木の方に近寄ってきた。

 「りほちゃんってあんな風に叫ぶんだ」
 「叫んでないよ」
 「叫んでたじゃん」
 「叫んでないってば」
 「…それって指定のじゃないよね?」
 「うん。でもこういう事があるからって聞いてたから、着て来てよかったよ」
 「ふーん」
 「早く入りたいね、プール」
 「りほちゃん好きなの?」
 「うん。もう夏になるしね」
 「夏かあ」

あと1ヶ月も経てば中学生最初の夏休み。
その前の期末テストを思い出して遠い目を浮かばせる鈴木だった。

173名無し募集中。。。:2012/08/22(水) 13:59:19.45 0
>>169-172
以上です。
酷い真夏のときに書いていたので少し涼しい日常など。

-----------------------------------------------ここまで。

以上したらば掲示板からの転載です

ちょっとだけ涼しくなったような気がする
174名無し募集中。。。:2012/08/22(水) 14:00:23.42 0
乙です
スク水キター
175名無し募集中。。。:2012/08/22(水) 17:01:38.64 0
ハアハア
176名無し募集中。。。:2012/08/22(水) 17:40:15.68 0
>>173
乙です
鞘師の知らない一面を垣間見た香音ちゃんの様子が目に浮かびました
次は香音ちゃんのダイナマイトボディのお披露目ですねw
177名無し募集中。。。:2012/08/22(水) 19:11:30.54 O
なんかキュンキュンしたw
178名無し募集中。。。:2012/08/22(水) 20:50:00.54 O
揚げるのにゃん♪
179名無し募集中。。。:2012/08/22(水) 22:28:18.19 O
ほっ
180名無し募集中。。。:2012/08/23(木) 00:07:48.39 0
おやすみ〜
181名無し募集中。。。:2012/08/23(木) 02:15:02.04 0
182名無し募集中。。。:2012/08/23(木) 03:43:42.73 0
ねるなんと
183名無し募集中。。。:2012/08/23(木) 05:21:39.62 O
朝の風が気持ちいいな
184名無し募集中。。。:2012/08/23(木) 07:51:21.57 0
いい天気だね
びしょ濡れ美少女見たいくらいいい天気だね
185名無し募集中。。。:2012/08/23(木) 08:14:41.89 0
186名無し募集中。。。:2012/08/23(木) 11:00:54.70 0
いちおう保存
187名無し募集中。。。:2012/08/23(木) 13:22:14.32 0
りほりほぞん
188名無し募集中。。。:2012/08/23(木) 15:05:14.28 0
あんどぅとぅあ!は水軍流の掛け声なんじゃ
うそじゃ
189名無し募集中。。。:2012/08/23(木) 17:30:30.88 0
やれやれだぜ
190名無し募集中。。。:2012/08/23(木) 19:15:36.75 0
あっついあつい
191名無し募集中。。。:2012/08/23(木) 20:31:58.84 0
保全短編投下しようとしたけど作ってる間に落ちるw
192名無し募集中。。。:2012/08/23(木) 20:43:53.81 0
あるあるw
193名無し募集中。。。:2012/08/23(木) 21:02:32.86 0
良かった同志がいたw
194名無し募集中。。。:2012/08/23(木) 22:25:35.00 0
おっとと
195名無し募集中。。。:2012/08/23(木) 23:26:46.37 O
夏だぜ
196名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 00:59:15.38 0
寝るかな
197名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 02:10:10.78 0
おやすみっちゃんいい子なのにね
198名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 02:14:32.48 O
あっついあつい・・夜だよねぇ!?
199名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 06:07:24.96 0
朝ですね
200名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 08:16:07.06 0

ただもっと、強くなりたかった―――


連日のように猛暑が列島を襲っている。
コンクリートに覆われた都会の夏はじっとりとしていて苦手だ。
こういう暑い日には冷たくなりたいと思うのはだれもが同じで、プールに入りたくなるのも仕方のないことかもしれない。
喫茶リゾナントには、本来、体力づくりや鍛錬をするために設置された地下プールがある。
水を扱う私のような能力者は此処を使うが、それ以外の人はあまり寄り付かない場所でもある。
それを良いことに私はひとりでこのプールを独占している。

深く深く水の中へと潜り、水と会話をし、戯れ、流れを読む。
水の中は不自由だけど自由だった。
何処にでも行けそうで、何処にでも行けなくて、負荷が軽くて、重い。
201名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 08:17:01.21 0
自分自身の能力を理解しない限り、強くなることはない。
リゾナンターたちの持っている能力は様々で、なにひとつとして重なるものはない。
だから、リゾナンターたちはひとりひとり、闇の中に佇んで、自分の能力と真摯に向き合い、その箱を打ち破る。
私は果たして、この水の空間を自在に操れるのだろうかと最深部まで潜り込んだ。
水が体のすべてを満たした瞬間に右手を突き上げると、水泡が撃ち上がった。

「ひゃっほーい!」

高く上がった水飛沫を見ながら私は叫んだ。
コンディションはさほど良くないせいか、水泡はいつもと同程度の威力だった。
だが、それに気落ちしていてはどうしようもない。自分を鼓舞するように、ある意味でやけくそになって叫んだ。
水中で体をぐるぐると回転させ、ザバッと勢い良く水面に撥ねる。
その行為だけでどうしようもなく気持ち良くて、私は思わず笑う。

鍛錬用のプールは、25メートル×7レーン、水深は最深部では2.5メートル近くある。
私の身長では到底足がつかなくて、水をちゃんと理解していなければ溺れてしまいそうになる。


そういえば小さいころ、両親と初めて海に行ったときのことをぼんやり思い出す。
私は水に慣れるのが早かったらしく、父親に連れられ、浅瀬で浮き輪に浮かんで遊んでいた。

「お母さーん!」

浜辺で手を振って私を呼ぶ母親に声に応えた。
その瞬間に母の顔が真っ青になり、絶叫が響いた。
急にやって来た高波を認めた父親は私の腕を引っ張ろうとしたが間に合わなかった。
私の体は高波に呑まれ一瞬にして攫われた。
202名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 08:17:52.47 0
世界が一気にぐるりと回転した。
口や鼻から大量の海水が流れ込む。目に酸性の水が直撃して痛い。
肺から多くの空気を吐き出し、視界が泡となって見えにくくなる。
どんどんと遠くなっていく水面の光が恋しくて手を伸ばす。届かなくて、切ない。

―お父さん!お母さんッ!

深く深く沈んでいく中、私は必死に叫んだ。
漠然と、しかし圧倒的に明瞭な形を成して襲ってきた死の深淵に包まれる。
イヤだ!怖い!だれか!だれかだれかだれか!!

瞬間、だった。
暗い海の底から“なにか”がせり上がってくる。その“なにか”に押されるように、私は水面に戻された。

「だいじょうぶかっ?!おい!里保!里保!!」

砂浜で両親が叫んでいる。
私の目に飛び込んできたのは青い空と白い雲、そして両親の涙だった。

私は溺れたのだとそのときには理解していたが、不思議とその経験を怖いと感じたことはなかった。
溺れたくせに水を怖がらないなんて、と両親は後々になって私に言ったものだ。
そのときはまだ分からなかったけれど、最初に自分の能力を意識したのはあの日のことだった。
203名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 08:18:36.43 0
-------

「ぷはぁっ!」

水面に顔を出して犬のようにぷるぷると頭を振った。
水の中に潜っているのは楽しい。水を操る能力を持っているせいか、息を止めて水の中にいる時間も徐々に長くなっていった。
このままずっと水と戯れたまま、水とひとつになってしまうのだろうかと少しだけ苦笑した。

「元気だねぇきみは」

唐突に聞こえてきた声に私は振り返った。
プールサイドに立っていたのは大先輩の彼女で思わず背筋を伸ばした。
水に濡れて髪もぺったりと貼り付いている姿は、たぶん、というか絶対に情けないと思う。

「水も滴る良い女って感じですよ」
「あ……え?」

彼女はクスッと笑って水面をなぞるように指先を軽く動かした。
無風の空間に微かに風が流れ、水がざわめき、小さな波をつくった。

「おかげで濡れちゃいましたけど」

そうして彼女は笑って一回転して見せた。
確かに彼女は綺麗に左半身だけに水がかかり、その白い服からは水を滴らせていた。
204名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 08:19:26.70 0
私はさらに慌てた。だれもいないと思っていたらまさか彼女がいたなんて―――
そうすると彼女がずっと此処にいて、私を見ていたことになるが、いったいなぜ?
そんな疑問も微かに浮かんだのだが、そんなことよりまずは謝ろうとプールサイドまで泳いだ。

「すみません亀井さん!全然そんなつもりなくて!」

水から上がった私の姿を見ると、彼女―――亀井絵里はくすくすと笑った。
柔らかい微笑みは何処となく儚げで、だけど綺麗で、瞬間に言葉を失くしてしまう。

「許してあーげないっ」
「え?」
「へへ、うーそっ」

おどけるように話しながら、亀井さんは水に足をつけた。
先天的に抱えた心臓病のために、亀井さんはプールに入ったことはあまりないらしい。そんな彼女が此処へ来るのは少し予想外だった。
亀井さんは、ぱちゃぱちゃと脚で水を弾いた。光りに反射する水が妙に綺麗だった。

「きみはどれくらい泳げる?」
「……は?」
「絵里は25メートル泳いだことないなぁ……小学生以来だもん。プールに来るの」

そう言うと亀井さんは立ち上がった。
てくてくとプールサイドを歩き、スタート台へと昇る。
その姿はどう考えたって嫌な予感しかしない。光井さんのように先見予知能力なんて備わってなくても分かる。
亀井さんは「よーしっ」と両手を挙げて「せーのっ」と膝を折った。
205名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 08:20:32.91 0
なんて言うべきか、止めるべきだったのか、なにをするべきだったのか、私には正直分からなかった。
彼女の考えていることは、いつも私の予想の斜め上を行く。そういうハチャメチャなところは、えりぽんこと生田衣梨奈にも共通している。

気付いたときには、亀井さんは水の中に飛び込んでいた。
華麗な飛び込みなんてできず、小学生がやるような腹打ちで痛そうだった。

「か、亀井さんっ!」

冷静に分析している場合じゃない。心臓病を抱えた人がプールに飛び込むなんて論外すぎる。
私も頭から飛び込み、亀井さんのいる場所まで一気に泳ぐ。
さほど距離がなかったためにすぐに彼女は見つかった。水中の彼女は、だらしない笑顔を携えていた。
その笑顔が妙に綺麗で、それでいて哀しくて、何処となく優しくて、やっぱり理解できないと思う。

私は両手で水を掬うように円を描き、ふわりと持ち上げる。
亀井さんと私の周囲の水がうねりを上げ、一気に水面へと打ち上がった。
ふたりして水面に顔を出して呼吸をする。亀井さんは相変わらず「うへへぇ」と笑っていた。

「な……な、な、なにしてるんですかっ!」
「ん〜、飛び込み」
「あ、危ないですよ!急にそんな」
「へへ、少しはきみのことが分かるかなぁと思って」

亀井さんはそうして水で濡れた前髪をかき上げた。その仕草は少しだけ大人っぽい。いや、十分に。
フクちゃん―――譜久村聖は亀井さんを敬愛している。その声とか、笑顔とか、仕草のひとつひとつとか。
そんなフクちゃんの話す亀井さんと、いま目の前にいる亀井さんがどうしても結びつかない。
亀井さんって、こんなことするような人だっけ?
206名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 08:21:40.78 0
「私のなにが知りたいんですか?」
「んー、いろんなことが知りたいですよ?」

そうしてまた笑うと、亀井さんはすいーっと手を広げてぷかりと水面に浮かんだ。
漂う姿はその名の通りの「カメ」というよりもクラゲに似ているが、そんなことを言おうものなら風で吹き飛ばされそうなのでやめにしておく。
彼女の体が沈まないようにゆっくりと水面を揺らすと、彼女はそれに気付いたのか「良いよ、そんなことしなくても」と笑った。

「絵里はカナヅチじゃないですよ?」
「……25メートル泳げないのに?」
「あー、そうとも言うね」

亀井さんは腰を沈めて再び立ち泳ぎの格好になる。
顎を突き出して犬掻きの要領でプールサイドまで泳ぎ、ザバッと水から上がった。
ぺったりとワンピースが体に貼り付き、ラインがくっきりと分かる。私よりも大きな胸やお尻に思わず目がいってしまい赤面する。
やっぱり亀井さんは大人だ。外見もそうだけど、たぶん、中身も。
私も彼女に倣うように水から上がった。用意しておいたタオルを亀井さんに差し出す。

「へへ、ありがとね」
「……結局、なんで飛び込んだんですか?」
「ん?だから知りたかったんですよ、きみのことを」

大きめのタオルで顔を拭きながら彼女は言う。
いったいなにが知りたいんですかと聞き返そうとしたが、堂々巡りになりそうだった。
207名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 08:22:36.04 0
「私だって……亀井さんのことが知りたいです」
「おー、じゃあ絵里といっしょじゃん」
「いきなり飛び込むような理由が知りたいです。真面目に」

皮肉を言ってみたのだけれど、通用しなかったみたいで彼女は笑った。
亀井さんはあまり使っていないタオルを私に返すと指先をくるりと回し、風で髪を靡かせた。

「体、拭かないと風邪引きますよ?」
「これはきみのタオルでしょ?私のはちゃんとあるから」

そうして再び指を回すと、何処からか強い風が吹き、それに乗ってタオルがやって来た。
なんというミラクル。なんという能力の無駄遣い。なんて言おうものならやっぱり風で吹き飛ばされそうなのでやめにしておく。

「水を理解したかったら、自分もちゃんと水に曝け出さなきゃダメだよ」
「え?」
「風を読むことも、水を読むことも、たぶん、本質はいっしょだから」

それだけ言うと、亀井さんは頭をガシガシとタオルで拭き、出口へと歩いた。
呆気にとられながらも、彼女の言葉をゆっくりと反芻する。


―――「水を理解したかったら、自分もちゃんと水に曝け出さなきゃダメだよ」


もしかして、それを伝えるために?なんて思ったが、私はどうも腑に落ちない。
それだけのために水に飛び込むだろうか。自分の心臓に負荷がかかるという危険まで冒して?
私を理解したいと彼女は言った。理解するとはどういうことだ。知りたいって、なにを知りたいんだ。
208名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 08:23:34.19 0
「………だったら、亀井さんももっと曝け出してください」

私はそう呟くとタオルを投げ捨て、プールに飛び込んだ。
派手な水飛沫を立てたあと、深く深く潜っていく。
「曝け出す」とは、透明になるということだろうかとなんとなく私は解釈し、最深部で揺れた。
不思議と心が、楽になった気がした。

―亀井さん……着替え持ってるのかな?

最後に浮かんだ疑問を打ち消すように、私は右腕を突き上げた。
今日いちばんの水泡が撃ち上がったかと思うと、プールの天井に直撃した。

「あ……」

天井に設置されていた蛍光灯のひとつがバチバチと火花をつくり、そのまま消えていった。
勢いが強かったせいか、どうやらお亡くなりになられたらしい。
まずい。道重さんにバレたら怒られると、水泡の勢いが増したことなんて忘れて血の気が引いていく。
私は脱兎のごとく水から上がり、タオルを鷲掴みにし一目散に更衣室へと走った。
そこには亀井さんもいて、人目も憚らずにワンピースを脱ぎ始めているものだから私は思わず目を逸らした。

「……あの」
「うん?」

私はタオルで体を拭きながら、すぐ隣で着替えをしている亀井さんに話しかけた。
この場にフクちゃんがいたら大変なことになっているんだろうなと頭の片隅でぼんやり思った。
やっぱり着替え持ってたんだ。なんて冷静に分析している自分がなんとなく、バカみたいだった。
209名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 08:24:17.68 0
「……今度、いっしょに泳ぎませんか」
「え?」
「泳ぎ方、教えますよ、ちゃんと」

心臓病抱えている人間になんてことを言うんだと私は思った。
随分と身勝手で、随分と冷徹な発言だと自覚していたけど、それくらいしか、御礼できそうになかった。
それだけ言ってちらりと亀井さんの方を向くと、彼女は一瞬驚いた表情を見せた。
だが、そのあとすぐに目を細めて柔らかく笑ったかと思うと、「じゃー水着買っちゃおうかなぁ」とおどけて見せた。

たぶんこういうところが、私は子どもで、亀井さんは大人なんだと理解した。

「さゆとかガキさんとかダメ!って怒るだろうなぁー…いっしょに謝ってくれる?」
「これからのことをなんで謝るですか?」
「うーん……ごめんなさいの前借り?」

やっぱり意味が分からないなぁと思いながら私も服に着替え始めた。
ああ、そうだ亀井さん。

「いっしょに道重さんに謝ってくれますか?」
「えー、なんで?」
「……ごめんなさいの前借りです」

蛍光灯のこと、バレませんように。
210名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 08:44:31.41 O
猿さん食らったので携帯から…
>>203>>204の間に以下の会話を追加してください…抜けていて申し訳ない

「え、え?い、い、いつですかっ?!」
「さっきだよー。きみが派手に水泡を打ち上げたときから此処にいたんですよ?」

-------
>>200-209 「水と風の宴」
なんとなく書きたくなったふたりで暑気払い保全です
少しは涼しくなったでしょうか?w

ちなみに参考画像はこちらです
http://i.imgur.com/g0Wvu.jpg
http://aewen.com/momusu/kamei/img/aewen802.jpg
http://aewen.com/momusu/kamei/img/aewen2230.jpg
211名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 10:53:27.44 0
>>210
うむ、夏向きの話だ
しかし今日も暑いw
212名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 10:56:46.16 0
いいえりりほ
213名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 11:13:42.48 0
乙です
フクちゃんいたら鼻血どころじゃすまないw
214名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 11:31:17.48 0
現実では交わらなかった2人の交わりを堪能させていただきました
すごく涼しげな作品ですね
風と水というそれだけにとどまらず

なんとも素敵な話を書くなあ…
215名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 15:11:52.85 0
しかし地下に25メートルプールがあるとかどんな構造なんだw
216名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 16:38:23.26 0
もはや秘密要塞だねw
217名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 18:33:00.92 O
えりりほと聞いて生鞘かと思いきやまさかの組み合わせw
あり得た未来を描けるのもこのスレならではですね
素敵なお話でした
218名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 19:14:45.61 0
じゃま代理投稿などさせていただこうか
219名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 19:15:23.50 0
>>169-172 の続き。

 「すみませーん、こっちにデッキブラシあまってないですか?」

三年の女子生徒のひとりがやってきてそう言った。
二人もその声の方に振り向くと。

 「フクちゃん?」
 「みずきちゃん?」

同時にその生徒の名前を呼んだ。
こっちにやってきた譜久村聖に男子がまた騒ぎ始めている。
譜久村はジャストサイズじゃない身体のラインがでないくらいの体操着(上)に
濡れないように短パンを脱いだのか、体操着(上)に下はスク水というスタイルだった。

 「あれ?香音ちゃんもこの時間だったんだ」
 「ということはみずきちゃん達も?」
 「うん。更衣室とか部屋の掃除。まあ水泳部っていうのもあるしね。練習も始まるから」
 「みずきちゃん泳げるんだ。ちょっと意外」
 「スポーツは好きだよ。里保ちゃん水泳とか興味あるなら入ってみる?」
 「うーん、考えとく」

よいしょ、鈴木はフェンスに立てかけてあったデッキブラシを三本ほど抱えて持ってきた。
その時に不意に、視線を感じる。
鈴木がその異変に気付いたのと同時に、鞘師と目が合う。
無言。無表情。
じわりと、鞘師の目が朱く。

 「みずき、ブラシあった?」
220名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 19:16:01.29 0
突然聞こえて来た声が上がり、鈴木が感じていた視線が消えた。
この声はまさか。

 「あれ、1年のクラスは里保達のところやったと?」

後ろから出て来たのは紛れも無く、生田衣梨奈だった。
髪を後ろで結び、体操着で両手には手袋をはめている。
まるで計ったような組み合わせに「誰かの陰謀か!?」とか皮肉めいたことも言いたくなる。
誰かさんに。

 「えりぽんのところは外側の掃除なんだって」
 「もうさー不法投棄反対!変なゴミが多すぎるけん、選別したくないっ」
 「まあ1年も放置してればね。でも皆でやったらすぐに済むからがんばろっ」
 「あーあ、えりなプール係の方が良かったなあ」
 「こっちもこっちで大変だけどね、ね、かのんちゃん」

鞘師が言って指さす方には大量に積まれた得体のしれないものが入ったゴミ袋。
生田は思わず「うわあ」と漏らす。

 「じゃ、私達も行こっか。ブラシありがとー」
 「よーし、こうなったらめっちゃくちゃ綺麗にしてやるっちゃんねっ」

譜久村聖はデッキブラシを片手に手を振り、生田は気合いを入れ直して去っていった。
その後、二人はまたプールサイドの掃除に戻り、黙々と作業を行う。
ふと、鈴木は先ほどの出来事を鞘師に問い掛けてみた。
221名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 19:16:36.50 0
 「りほちゃん、さっきの気付いた?」
 「かのんちゃんも気付いたなら間違いないね」
 「また"アレ"?」
 「うーん、ちょっと違うかな。でも放ってはおけないね」
 「あれってさ、りほちゃんにしか倒せないものなの?」
 「どうかな。でもその手段はあるよ」
 「どういうこと?」
 「かのんちゃんにはもう渡してあるけどね」

鞘師の言葉が理解できずに、鈴木は口を開こうとした。
だがまた、背筋に冷たい感触が走る様な、視線を感じる。
思わず振り返ってみるが、視覚に"色"を知ることはできなかった。

 「ねえかのんちゃん。もしもさ―――」

キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ―――ッ!!

悲鳴のような音があたりに響き渡る。
例えるなら、金属でできた風船を鋭く尖った爪で引っかいた様な。
酷く耳障りで不快な音。
そして間髪いれずに。

 ――― パァァァァァァンッ!!

風船が破裂したような、大きな音が聞こえる。

 「……んぬぇっ!?」
222名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 19:17:19.68 0
鈴木は思わず両手で耳を塞ぎ、頭上から大粒の雨。
ではなく、大量の"水"を降り注いでいることに気付く。
すっかり全身ずぶ濡れだった。
鞘師がぼんやりと空を見上げる。
空は、晴天。
遠く高く何処までも水色が続いている。
だから、雨じゃない。
原因は、プールサイドにある手洗い場、消毒プール、シャワー。
そして、プールに水を張るための巨大な蛇口、その全てから水が噴き出し
あたり一面は大雨に降られている様な状況になっていた。

 「す、水道管が破裂した!?」

突然のことに動揺を隠せない教師が、声をひっくり返しながら叫んだ。
確かに、水道という水道から蛇口をひねってもいないのに、流れ続ける。
それもかなりの勢いで。

 「と、とにかくプールから離れろー!」

教師の声で、プールサイドの女子生徒達が小走りに、プールの中に居た
男子達もあがってきて、逃げるようにぱたぱたと出口へ駆けだす女子たち。
悲鳴のように口々に飛び出す言葉。
鈴木も避難しようとして、鞘師が来ていないことに気付く。
呆然と立つ鞘師が何かをつぶやいた。
しかし、豪雨のような降水の音にかき消されて聞こえない。

鞘師の手を取ると、ようやく彼女は歩き出した。
223名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 19:19:23.71 0
>>219-222
以上です。
何かでりほりほはプライベート水着を
持ってないとかなんとか。

-------------------------------ここまで。
224名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 20:11:59.89 0
>223

日常と非日常の隙間がほころびたって感じですかね
次はスク水レンジャーたちのバトルですねw
225名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 21:46:46.48 0
おっとっと
226名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 22:50:35.11 0
>>210
>>223
プールの話が続いたのでもし喫茶リゾナントの地下にプールがあったら
水道代はいくらくらいになるかざっと計算したところ
田中れいなの給料の約17年分という恐ろしい結果が出てしまった

鞘師さんには学校のプールか市民プールで腕を磨くようお勧めしたい
227名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 23:02:13.73 0
从;` ロ´)
228名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 23:07:10.78 0
れーな17年タダ働きさせればいいじゃん(亀井絵里談)
229名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 23:10:34.84 0
バイト代は現物支給(CD)かな・・・w
230名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 23:14:39.24 0
>>228
鞘師には優しいくせにお前・・・w
231名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 23:20:37.03 0
さすがれいなにはドSなえりりん
232名無し募集中。。。:2012/08/24(金) 23:23:34.21 0
ノリ;´ー´リ<亀井さんはやっぱりよく分からん…
233名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 00:20:49.52 0
『あなたのハニー!みんなのハニー!』

〈One ちょびっといじけて〉

1−1

石田は勝利を確信していた。
目の前の少女は強い。
れいなにしごかれる前の石田だったら、負けていたかもしれない。
だが、今の石田は、約一年間の鍛錬によって戦士として急成長している。
石田の優勢を裏付けるかのように、少女は苦しそうに肩で息をしていた。
さらに、全身からは異常な量の汗がしたたり落ちている。
「あゆみちゃん、まーちゃんに誰か連れて来てもらわなくても大丈夫?」
「大丈夫!私一人で倒せる!」
「でも、その人、なんかただ者じゃないっていうオーラが出てるよ。
とっても可愛らしいんだけど、たくさんの修羅場をくぐってきた凄味を感じる!」
「なんで敵をヨイショしてんの!?はるなんはそこで大人しくしてればいいから!」
「…はーい」
叱られてちょびっといじけている飯窪を無視し、石田は目の前の敵に集中した。
そして、次の一撃で勝負を決めようと一歩踏み出した時、石田は体の異変に気付いた。
(足が痺れてる!?)
「どうやら効いてきたみたいね」
蒼ざめる石田の顔と対照的に、敵の少女の口元が緩む。
「な、何をした?!」
「汗は武器!」
少女は、自らの汗を瞬時に化学変化させる特殊能力を持っていた。
石田の脛や拳には、攻撃の際の接触によって少女の汗が付着している。
その汗を、少女は化学変化させた。
皮膚から染みこみ、運動神経を麻痺させてしまう恐ろしい猛毒に。
「うそだ、うそだ、うそだ…」
石田は徐々に感覚が無くなっていく手足を見つめた。
234名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 00:21:22.67 0
1−2

飯窪石田佐藤工藤の四人は同時にリゾナンターに加入した、言わば「同期」である。
約一年前、四人は高橋愛によって「闇」から救い出された。
四人の境遇はほぼ同じだった。
もともと彼女らは「普通」の女の子だった。
ところが、ある日突然、特殊能力が発現する。
平凡だった日常が、それによっていとも容易く崩壊してしまう。
自分の娘が「異常」であると知った両親は、現実を受け入れられず困惑する。
彼女らは家族や友達から疎まれるようになり、体と心の置き場所を失っていく。
そこに現れる黒服の男たち。
彼らが差し出した名刺には、「国立能力開発センター」と印字されていた。
両親は大喜びで娘を彼らに預けることを決める。
両親に見放された彼女らは、その男たちについていくしか選択肢がなかった。
彼女らが連れて行かれた先は人里離れた研究施設。
その施設は「国立…」などではなく、ダークネスの秘密研究所だった。
哀れなモルモットとなった彼女らは、過酷な実験で心身がぼろぼろになっていく。
しかし、一年前のあの日、彼女らに救いの手が差し伸べられた。
高橋率いるリゾナンターが秘密研究所を襲撃したのだ。
四人は無事保護され、地獄の日々から抜け出した。
自由になった彼女らは、全員がリゾナンターに加わることを志願した。

高橋はその日の戦いが原因で行方不明になってしまい、新垣が次のリーダーとなった。
四人の思いを受け止めた新垣は、すぐに彼女らの両親たちに連絡した。
そして、彼女らが施設を出たこと、彼女らを自分に任せてほしいことなどを伝えた。
ダークネスについては、到底理解できないだろうと考え、説明しなかった。
新垣の申し出に対する両親たちの反応は、判で押したように同じだった。
「そちらで預かっていただけると、助かります」
235名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 00:22:00.54 0
1−3

喫茶リゾナントの近くにある安い賃貸マンションで、飯窪たちの新生活が始まった。
飯窪・佐藤・工藤の家は比較的裕福だったため、毎月多額の仕送りが振り込まれた。
それに対して石田の家庭はごく平均的であり、仕送りは滞りがちだった。
高校生になった石田は、生活費の足しにしようとアルバイトを始めた。
踊るのが大好きな彼女が選んだのは、某球団のチアリーディングチームのメンバー。

その日も石田はチアリーディングの練習に行っていた。
遅くとも夜9時には帰宅するはずなのだが、その日は深夜になっても帰って来ない。
心配した飯窪は、練習場のある野球場に石田を迎えに行った。
屋外にある練習場の鉄の扉を開けると、チアリーダー姿の石田が少女と戦っていた。

石田の動きが止まった。飯窪が慌てて声を掛ける。
「あゆみちゃん!どうしたの?」
「体がマヒして動かない!どうしよう!」
飯窪は慌てて扉の陰から飛び出した。
そして、自分の背後に石田を隠し、少女の前に立ちはだかった。
ただし、飯窪は弱い。
現時点ではリゾナンター最弱である。
華奢な体に穏やかな性格。戦闘には全く向いていない。
一応飯窪にも特殊能力がある。
だがそれは、手のひらから茶色のネバネバした物体を出すというもの。
どのような使い道があるのかも分からない、気味が悪いだけの能力だ。
戦闘になると、飯窪はいつも先輩や同期が戦う姿を物陰から「見学」しているだけで、
全くと言っていいほど戦力になっていなかった。
そんな飯窪の実力を見抜いたのか、少女が余裕の表情で挑発する。
「ねえ、あんた、やるの?」
(どうしよう…、あゆみちゃんがかなわない相手に、私が勝てるわけない)
自分の体が震えているのを、飯窪は感じた。
236名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 00:22:41.08 0
〈Two ぷくっとほっぺを〉

2−1

しかし、飯窪は逃げなかった。
飯窪は全力で前へ走り出した。
「オラオラオラオラオラオラーーーーーー!」
猫パンチを繰り出しながら、甲高い声を上げて敵の少女に突進した。
れいなから伝授された戦闘術は、残念ながら飯窪の体には全く染みこんでいなかった。
少女は、突っ込んできた飯窪の顔面に、無造作に拳を当てる。
ボコッ!
飯窪は仰向けに倒れ、全く動かなくなった。
「はるなん!」
石田は自由に動かない自分の四肢にいら立った。

石田にも特殊能力がある。
それは「小石」限定のサイコキネシス。
手のひらに収まるサイズの石なら、石田は重力を無視して自由に動かすことができた。
石田はこの力をとても気に入っており、自らを「石プロ」と称していた。
だが、いま戦場となっている屋外練習場は、とてもきれいに整備されている。
念動力で動かせそうな適度な大きさの小石はどこにも見当らない。
急な戦闘に備えて、石田はいつも制服のポケットに小石を携行している。
しかし、今石田が着ている服はチアリーディングのユニフォーム。
制服は更衣室の施錠されたロッカーの中だ。
石田は、自分の不用意さを呪った。
237名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 00:23:19.32 0
2−2

「リゾナンターなんて大したことないじゃん」
嘲笑う少女。石田は痛くなるほど強く奥歯を噛みしめた。
「こんなショボい奴らに、なんでみんな負けたんだろ?」
「…今、何ておっしゃいました?」
突然後ろから甲高い声がした。少女は振り向き、声の主に言った。
「何だ、あんたか…。まだやる気なのか?」
「あなた、今、『ショボい』っておっしゃいませんでしたか?」
飯窪は仰向けになったまま、丁寧な口調で再び尋ねる。
少女はその態度に苛立ち、飯窪に向かって怒鳴った。
「ああ、言ったよ!お前らがショボいからショボいって言ったんだよ!」
「ショボい…、ショボい…、ショボい…、ショボい…、
 ハ、ハ、ハウーーーーーーーーーーーーーーーーーーン」
飯窪は眼を見開き、両手を地面と垂直に掲げた。
細長い十本の指がパッと開くと、手のひらから茶色の物質があふれ出す。
その物質は黒く変色しながら、ワンピースとなって飯窪の体を包み込む。
また、物質の一部は飯窪の頭の上で固形化し、二本の角となった。
飯窪は立ち上がって、モデルのようにポーズを決めた。
全身黒ずくめのその姿は、まるで悪魔のコスプレをしているかのようだ。
「なんだ、その恰好は?」
少女の問いかけに、飯窪がにやりと笑う。
「小悪魔ですって?いいえ、大悪魔よっ!」
「……誰も『小悪魔』なんて言ってねーよ!」
少女の突っ込みを無視し、飯窪が前方に両手をまっすぐ伸ばす。
二つの手のひらから、今度は大量の蜂蜜色の液体が噴出した。
「うわっ!」
叫んだのは、石田だった。
238名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 00:24:20.79 0
2−3

蜂蜜色の液体は、全て石田に降りかかった。
避けようとした石田は、バランスを崩して地面に這いつくばった。
「ちょっとはるなん!何するのよ!」
石田は、ぷくっとほっぺを膨らませて飯窪を責める。
「あんた、寝返ったの?勝ち目がないから私の味方になろうってわけ?」
呆れる少女に対して、飯窪はゆっくりとこう言った。
「そうだ、味方だぜ。
 ただし、正義の……味方だ…」
「ウザっ!」
少女は飯窪に近寄り、その顎を下から強烈に殴り上げた。
「ゴボオォッ!」
飯窪は変な声を出しながら数メートル後ろに吹っ飛んだ。
再び仰向けにのびてしまった飯窪を見ながら、石田は思った。
(はるなん…、一体何がしたかったの……。
 それにしても何よこれ!ベタベタして気持ち悪い!
 うわっ、土がくっついて取れない…)
石田は土まみれの両腕を見つめた。
(…ん?!)
石田は不自由な右手で地面の土を掴みとり、最後の力を振り絞って固く握り締めた。
一方、余裕綽々な敵の少女は、石田の様子を見てこう言った。
「ハハハッ!土を掴んで悔しがるなんて、テレビドラマの一場面みたい。
 それじゃあ、クライマックスといきますか!」
ザッ!
少女は最後の一撃を撃ち込むため、大地を蹴って夜空高く舞い上がった。
そして、地面に横たわる石田めがけて、急降下してきた。
ゴギッ!
骨を砕く鈍い音が響いた
239名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 00:25:02.71 0
〈Three ふくらませてる〉

3−1

「な、なに…!?」
少女は何が起こったか理解できなかった。
自分の体が地上約1.8メートルのところで鋭角に折れ曲がって静止している。
腹部には、槍のように突き出された石田の拳がめり込んでいる。
「…ウグッ!」
少女は食道の奥からこみ上げてきたものを口腔内に溜め、頬を膨らませた。
石田が静かに言う。
「クライマックスには、大逆転が起こるもんなんだよ」
「…ブハッ!」
堪え切れなくなったのか、唇から大量の真っ赤な血を吐き出し、少女は意識を失った。
右拳が降ろされるのと同時に、石田は地面に崩れ落ちた。
一瞬遅れて少女も落下し、練習場に静寂が訪れた。

「はるなん…、大丈夫…?」
石田は不自由な四肢を懸命に動かし、這って飯窪に近づいていく。
仰向けの飯窪は、顔だけを石田の方に向けて、ゆっくり目を開けた。
「…う、…うん。あゆみちゃんこそ、…大丈夫?」
石田はようやく飯窪のもとにたどり着き、覆い被さるように抱きついた。
「はるなん、ありがとう…」
飯窪は朦朧としつつも、微笑みながら石田の頭を優しく撫でる。
石田の瞼はもう涙の重さに耐えられなかった。
240名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 00:25:41.64 0
3−2

四肢の自由を奪われた石田が攻撃できたのはなぜか。
飯窪の出した蜂蜜色の液体。
それはまるで瞬間接着剤のように、物質を強力に結合する性質を有していた。
少女が最後の一撃を見舞おうと空中から襲い掛かったあの時、
石田の右の掌の中には、一掴みの土が握られていた。
その土の一粒一粒が蜂蜜色の液体によって結合され、瞬時に泥岩のように固まった。
石田は握った拳ごと、泥岩と化したその「小石」を操ったのである。
「石プロ」たる所以の、自らの特殊能力を使って。

意識を取り戻した飯窪は、佐藤に電話をした。
佐藤はすぐに「飛んで」来た。同行者は道重さゆみ。
石田の四肢には麻痺が残っていたが、特に大きな外傷は無い。
体に付着していたあの物質も、10分も経つときれいに消滅してしまった。
石田の無事を確認したさゆみは、飯窪の傷の治療にとりかかった。

飯窪の治療が終わったちょうどその時、背後から叫び声が聞えた。
「キャー!」「まーちゃん?」
さゆみが振り向くと、さっきまで走り回っていた佐藤が棒立ちで夜空を見上げている。
佐藤の視線の先には、猛スピードで降下して来る巨大な鳥がいた。
その鳥は倒れていたあの敵の少女のところへ舞い降り、彼女を両足で掴んだ。
そして、すぐさま夜空に舞い戻り、漆黒の闇に消えていった。
それはほんの数秒間の出来事で、さゆみたちはどうすることもできなかった。
飯窪がさゆみに話しかける。
「道重さん、あの大きな鳥も敵なんでしょうね?」
「そうね…。いつ襲ってくるか分からないから、用心しないとね…。
はるなん、今回みたいな状況になったら、すぐ私達に連絡しなきゃだめだよ」
「はい…、心配かけてすみませんでした」
頭を下げる飯窪に、さゆみは笑顔で応じた。
241名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 00:26:30.51 0
3−3

「あゆみん、少し聞きたいことがあるんだけど、話せる?」
「はい、大丈夫です」
さゆみは、飯窪が豹変した際の様子を石田に尋ねた。
石田の説明が終わると、さゆみは改めて飯窪に聞いた。
「ねえ、はるなん、茶色のあれが接着剤みたいになるって知ってたの?」
「道重さん、茶色じゃなくてチョコレート色です。
 私、全然知りませんでした。…それに、さっきのことも全く覚えてないんです。」
「そう…、もしかすると何かがきっかけではるなんの中の別人格が現れたのかもね。
 石田の話だと、そっちのはるなんは、茶色のアレを上手に使いこなしてたみたいね」
「そうですね。チョコレート色のジェルにあんな使い道があったなんて…。」
「コスプレはともかく、茶色のアレを接着剤にすること、今もできる?」
「チョコレート色のジェルを接着剤にすることですか?やってみます」
飯窪は手のひらに集中した。すると、あの蜂蜜色の液体が滾々とあふれ出た。
「道重さん、できました!きれいなハニー色ですね〜。」
喜ぶ飯窪。だが、液体の噴出はすぐに止まった。
「あれ?出なくなっちゃいました…」
さゆみは地面に落ちた蜂蜜色の液体に触れ、その強力な接着力を確かめた。
「……これ、使い様によっては、かなり役に立つと思う。
 はるなん、この薄黄色のベタベタしたヤツ、上手に使いこなせるようになってね!」
飯窪は嬉しそうに答える。
「はい!私、このハニー色のクリームを必ず使いこなせるようになります!
 いつも皆の足を引っ張ってばかりで、これまで私、何の役にも立ってなかったから、
この能力で、みんなの力になれるように頑張ります!
あなたのハニー!みんなのハニー!って、ちがうかっ!ちがうかっ!」
242名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 00:27:09.09 0
〈Endingでーす〉

おどける飯窪を見ながら、さゆみはその笑顔の裏にある陰を感じ取っていた。
(「これまで私、何の役にも立ってなかった」…か。)
両親から捨てられ、友人達から避けられ、新しくできた仲間の役にも立てない…。
自分の存在意義に最も疑問を感じているのは、この飯窪かもしれない。
「はるなん、気持ち悪いよー!」
さゆみは声を上げて笑い、湧き上がってくる切なさをごまかそうとした。

そんな二人のやり取りを見ていた佐藤が、飯窪に近づいてきて話しかける。
「はるなーん、てからせっちゃくざいだせるようになったの〜?
それってさあ、はるなんにぴったりののーりょくだね〜」
「えっ、どうして?」
「だって〜、まーとどぅーとあゆみんがけんかしたとき、いっつもはるなんが
 なかなおりさせてくれるでしょ〜?
 はるなんのおかげで、まーたちはなかよしでいられるんだよね〜。
 ほんと、はるなんって、みんなのせっちゃくざいみたい」
「……ありがとう、まーちゃん」
飯窪はそう言って佐藤を強く抱きしめた。
佐藤は驚いてキョトンとしていたが、すぐに笑顔で飯窪のか細い腰に両手をまわした。
そんな佐藤を見つめながら、さゆみはある人の笑顔を思い出していた。
超天然で、何も考えてないようで、それでいていつも大切なことを気付かせてくれた、
あの大親友の笑顔を……。

―おしまい―

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
以上、『あなたのハニー!みんなのハニー!』でした。
飯窪と石田の特殊能力を新しく考えてみました。
なお、敵の少女のモデルは(仮)の紫の人です。
243名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 00:34:20.67 0
>石田の家庭はごく平均的であり

ダウト!
244名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 00:48:55.13 0
乙です
チョコレート色www
245名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 01:42:46.48 0
それは、私が足のケガで検査入院した時の事でした。



次第に戦いの前線に立つようになっていた亜佑美と遥だったが、まだ身体の出来上がっていない2人にとって、それは負担が大きかったようだった。
共に身体能力も高く、負けず嫌いでもある2人だけに、いつしか無理をしてしまっていたのだろうか。
足の痛み・違和感を訴えた2人は、愛佳の紹介した病院に行くことに。検査と経過を見る為に、2人は一晩入院することになったのだが…

「ほら、くどぅーが悪いんだよ」
「何で?意味分かんない」
「まーちゃんが悪いけどさ、きつく言うから。まーちゃんくどぅーに教えようとしてるだけなのに」
「別に遥そんなん教えてほしいって言ってないもん」

また始まったね…と言うかのように、少し苦笑いで顔を見合わせる春菜と亜佑実。
ここは病室。4人部屋だが、ベッドを使っているのは2人だけでもう2床は空いている。
246名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 01:43:49.15 0


「5時で面会は終わりますからねー」

病室を覗いた看護師が声を掛けた。
まだ言い合っている二人を尻目に、荷物をまとめる春菜。ベッド脇の台を整理する亜佑美。

「ねぇ、いい加減にして」
「いやそうだけど」
「ねぇ、うっさい」
「ねぇ聞いて」
「よかった、よかった、よかった、ああよかったねー」

まだお互い言いたそうな二人だったが、春菜が多少強引にその場を収め、優樹を連れて病室を後にした。
静寂が訪れた病室。しばらく無言の時間が流れた。
先に口を開いたのは亜佑美だった。
247名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 01:44:53.85 0


「ねぇくどぅー、知ってる?」
「なに?」
「光井さんから聞いたんだけどさ、この病院の噂」
「え、ちょ、そーゆーのやめて」
「夜中にふと目が覚めると、脇に女の子が立ってるんだって。笑いかけてくると、病室を出ていくんだって」
「やめて、やだ」
「気になって追いかけていくと、階段の所にいるんだって。それで階段をずっと下まで降りていくんだって。」
「やだ、やだ」
「一番下まで行くとそこには女の子はいなくて、1つの扉があるんだって。そこを開けると―― 霊 安 室 って」
「やーーー!!もうバカ!」
「ふふ、くどぅー可愛い」
「あーーバカ!もうみんなバカ!」

何だかんだ言って、優樹とケンカして落ち込んでいたのだろう。
少しはいつもの遥に戻ったようで、亜佑美は安心していた。
248名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 01:46:00.68 0



病院の夜は早い。9時には消灯だ。普段寝ない時間に眠ろうとしてもなかなか寝れるものではない。
一度は眠ったものの、遥は目が覚めてしまった。目を開けると、横向きに寝ていた視線の先では亜佑美が寝息を立てている。

いいなー、寝れて…。今何時だろう。

ベッド脇の台に置いておいた携帯を取ろうと、遥は反対側を向いた。その瞬間――

シュン!

目の前に人影が現れた。

“夜中にふと目が覚めると、脇に女の子が立ってるんだって”

今日の亜佑実の言葉を思い出す。急速に早くなる胸の鼓動。
その時、人影の手元がぼうっと光った。人影の顔が下から照らし出された。
照らし出されたのは女の子だった。女の子は遥に微笑みかけた。

!!!!!!!!!!

悲鳴を上げる遥。それに驚き飛び起きる亜佑美。
249名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 01:47:54.55 0


「あれ?くどぅー?くどぅー?」

聞き覚えのある声の主が、遥の体を揺すっていた。亜佑美は枕元の電気スタンドをつけ、その方向を照らした。

「まーちゃん!?」

遥の傍らにいたのは優樹だった。
その時、こちらに来る足音が聞こえた。おそらく当直の看護師だ。

「ここに隠れて!」

亜佑美は優樹を自分のベッドの下に匿った。
そこに、病室のドアが開き看護師が現れた。

「どうしました!?」
「あ、あの、なんかこの子が寝ぼけてたみたいなんです、すみません」

遥を差す亜佑美。看護師は1つため息をつくとドアを閉め戻っていった。

(まーちゃん、なんで来たの?こんな時間に!?)
(だって、くどぅーが退屈かなって思って、まーちゃんのiPad貸してあげようって思って)
(だからってこんな時間に…何時?1時じゃん!ダメでしょ!こんな時間まで起きてて!)
(だって、くどぅーが心配なんだもん…)
(私は心配じゃないのかよ)

亜佑美の的確な突っ込みに、優樹は思わず笑った。つられて亜佑美も笑った。
250名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 01:48:58.29 0


(じゃあ、私が朝起きたらくどぅーに渡しておくから)
(うん!)

2人は遥を見ると、顔を見合わせ微笑んだ。そしてそれぞれ、遥の顔を撮った。

(じゃーね、すぐ寝るんだよ。おやすみ)
(おやすみなさーい)

シュン!

優樹はその場から消えた。優樹から預かったiPadの画面には、驚きのあまり失神して目も口も半開きの遥のだらしない顔が写っていた。

またケンカになるな…。

ニヤけながら亜佑美は再び眠りについた。
251名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 01:50:37.66 0
>>245-250
「ほんとにあった怖い話?」でした
2人が早くよくなりますように
252名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 03:02:06.50 0
ちょいちょい挟まれた小ネタににやけたw
早期回復を願ってます
253名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 07:01:28.92 O
朝だよ
254名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 09:02:40.52 0
さゆはヒーリングでどぅーいしの足早く治せよ
255名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 10:19:57.75 0
目に見えない傷は難しいの
256名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 11:08:23.51 0
尾を引かないように治してほしいな
257名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 11:40:35.94 0
>>242
小ネタジョジョネタ満載すぎて最高でしたw
>「そうだ、味方だぜ。ただし、正義の……味方だ…」
>「ウザっ!」
ここ特に大好きですw
でもバトルの内容はアイディアが凝ってるとこがまたいい

>>251
まーちゃんw
iPad貸してあげようって発想がいいw
ほんと2人には早くよくなってほしいですね
無理のないように
258名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 13:17:38.94 O
住人がみんな優しいねぇ
259名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 15:20:17.30 0
優しさは 癒しを運ぶ リゾナント
260名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 17:33:34.87 0
ホゼナンターも何かを運ぶぜ
261名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 18:24:23.67 0
ズン子は懐かしい匂いのする風を・・・
262名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 19:31:32.45 O
やめろww
263名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 21:02:57.67 0
川´・_o・)<よんだカ?
264名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 22:05:01.13 0
来なくていいw
265名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 22:07:21.97 0
今さらと言うか此処で聞くべきじゃないかもしれないが
なんでジュンジュンはそういうキャラになったんだ?w
266名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 22:29:17.95 0
いっぽうリンリンは乾ききった世界に潤いを・・・
267名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 22:31:05.72 0
ジュンジュンは何でだっけなぁ
リンゴジュースは何の脈絡もなかったみたいだけど
268名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 22:33:36.91 0
川*^A^)<呼ばれましタ、ハイハイ
269名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 22:38:32.02 0
突如ガス会社スレがたったような気がする
270名無し募集中。。。:2012/08/25(土) 23:47:09.05 O
突如なんだw
271名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 00:47:45.80 0
バナナは繊維質が多いから食いすぎるとやたらオナラが出るよな という話からだよw

川´・_o・)<4714
272名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 02:54:16.98 0
なるほど
みんなありがとうw
273名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 06:32:18.77 0
住人がみんな優しいなw
274名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 06:40:52.66 0
その優しさに支えられて今のリゾスレがあるんだな
275名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 07:45:11.05 0
ガキさんの胸も優しさに支えられているよ
276名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 10:04:06.65 0
支えるほどあったっけ・・・?w
277名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 10:06:17.49 0
ワイヤーの音がした気がするんだが>>276の姿が見えないな
278名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 10:08:59.66 0
     /0\
     ||   \
     ||    \
   ∧||∧    \
   <./⌒.ヽ     \
    | |  |>>276   \
   .∪ ノ.ノ        \ノノハヽ
    | |.| |         ||\ ・e・)|
    .∪∪         .(つと )
               (⌒)  ヽ
               (_)て___)
279名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 11:55:56.46 0
ひでぇww
280名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 12:06:17.65 0
今日は165分割うええおええステーキ丼が10食限定なんだな
新メニューかな?
281名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 12:42:25.46 0
新メニューというか材料が入荷したときの限定メニューというか…
282名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 12:48:52.55 0
今日の材料は>>276ですか?w
283名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 14:09:35.97 0
もう許してやれw
284名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 15:16:05.77 0
もう捌いちゃいましたぁ
285名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 16:25:44.75 0
>>276の罪に斯くて神の捌きが
気にしないで誰も悪くないわ
286名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 18:16:27.03 0
神様の気まぐれなんだから
だれも悪くないのよ
287名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 20:05:51.35 0
ノノ*^ー^)<165分割にしたの食べちゃいましたよ
288名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 21:20:47.81 0
お前がかいっ!!w
289名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 21:58:35.19 0

     ☆ノハヽ
     从*^ー^) =3  
      /  ⌒ヽ  
      ⊂ソゝ_⌒)^)
           ̄ 
             
290名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 22:55:25.77 0
えりりんの血と肉になれるなら本望だろうw
291名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 22:57:44.62 0
勘弁してよw
292名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 23:14:39.70 O
口は災いのもととはよく言ったものだなw
293名無し募集中。。。:2012/08/26(日) 23:23:10.33 0
亀の血となり肉となり
純子の瓦斯とリンゴジュース
294名無し募集中。。。:2012/08/27(月) 00:38:06.60 0
最近はワイヤーだけではないのだ
http://aewen.com/momusu/niigaki/img/aewen12941.jpg
295名無し募集中。。。:2012/08/27(月) 02:51:16.13 0
リボンを辿って上昇
296名無し募集中。。。:2012/08/27(月) 06:01:42.61 O
朝!
297名無し募集中。。。:2012/08/27(月) 08:45:49.55 0
リーボーン リーボーン
298名無し募集中。。。:2012/08/27(月) 10:53:04.97 0
どれあげておきますか
299名無し募集中。。。:2012/08/27(月) 12:21:00.71 0
>>294
ちょっと木村さおりんぽいな
おっとそれ以外のことを言うのは禁止だ
300名無し募集中。。。:2012/08/27(月) 14:05:05.24 O
保全なのだ
301名無し募集中。。。:2012/08/27(月) 16:54:55.51 0
さんまるいち
302名無し募集中。。。:2012/08/27(月) 18:15:13.28 O
ノノ*´ー`)眠いですよ
303名無し募集中。。。:2012/08/27(月) 19:57:52.53 0
時差ボケなんだろうね
304名無し募集中。。。:2012/08/27(月) 21:19:46.33 O
305名無し募集中。。。:2012/08/27(月) 22:46:21.43 0
川*’ー’)<リゾナンターとしてみんなにはまだまだ学んで欲しいことがあるんよ
||c| ・e・)|<うん、それはその通りだね
ノノ刀e _l‘)<大事なことですよね、正義でしょうか?
|||9|‘_ゝ‘)<わかった!愛嬌っちゃね♪えりなが新垣さんを愛するように
ノリ*´ー´リ<何言うとるんじゃ?必要なのは強さにきまっとるじゃろう?
从*´◇`)<常識も必要なんだろうね
川*’ー’)<うんうん、みんないいね。もちろん大事だけどね。それだけじゃないの。

ハo´ 。`ル<え〜高橋さん、教えてくださいよ〜
川*’ー’)<教えられない。だって、それはみんなが考えることが必要だからね
||c| ・e・)|<与えられるだけでは成長しない。考える過程にこそ価値があるのよ
川*’ー’)<・・・でも、ただ考えろっていうのも難しいがし。だからヒントはあげるから。れいな
从 ´ ヮ`)<は〜い、愛ちゃん、持ってきたと〜

川*’▽’)<今日から八人にはこれを育てて成長してもらう!名付けて『あえあ育て選手権』
Σ||c| ・e・)|<待て〜い!またそれ?結局何よ、なんなのよ、「あえあ」って?
川* ^_〉^)<わ〜まーちゃんの好きな『グリーンもふもふサイドバック川崎あえあ』だ。もふもふだぁ
川c ’∀´)<私は『清涼カレーあえあ』が好きでした
ノハ*゚ ゥ ゚)<私は道重さんが好きです
||c| ・e・)|<え?品種たくさんあるの?サイドバックって何よ?川崎って誰?というか何?
カレーな時点で清涼感ないよね?それに飯窪に至っては生物が違う
ノハ;*゚ ゥ ゚)<飼われたいです
Σ||c| ;・e・)|<しかも、そっち?

川*’ー’)<とにかくみんなにはそれぞれ好きな『あえあ』を育ててもらうがし
ノノ刀e _l‘)<で、でも私見たことないからどうしたらいいかわからないですわ
||c| ・e・)|<やった!いたよ、愛ちゃん、とうとう常識人発見だよ
ノノ刀e _l‘)<私の家では『あえあえあ』がたった四台しかおりませんでしたので
Σ从*´◇`)<さ、さすが聖ちゃんなんだろうね。あのあえあえあを四あえあしてるなんて
||c| ;・e・)|<あえあえあって何?そして数え方おかしいよね?あえあしてるって何?
306名無し募集中。。。:2012/08/27(月) 22:48:27.50 0
川c ’∀´)<食事も自分たちで選ぶんですよね?
从 ´ ヮ`)<もちろんっちゃ♪
川c ’∀´)<昔を思い出してずんだにしてみようかな?
ノリ*´ー´リ<サイダーじゃな
|||9|‘_ゝ‘)<・・・ダブった新垣さん生写真っちゃね
||c| #・e・)|<コラ〜生田〜あたしを餌にするな。不意に真顔になるな
川* ^_〉^)<まーちゃんは乾燥あえあにする〜
Σ||c| ;・e・)|<なんか残酷っ

ハo´ 。`ル<それで勝負ってことっすけど誰が判定するんすか?はるは負けたくないんで
川*’ー’)<そりゃあ、愛佳や。なんたって実家お寺やし
||c| ・e・)|<え?寺、関係あるの?信心深いと違いあるの?
ハo´ 。`ル<あ〜それなら納得っすね。有名な琵琶あえあもいますもんね
||c|: ・e・)|<滋賀県産?

川*’▽’)<さあ、みんな好きなあえあを取りに来てね
川* ^_〉^)<まーちゃんは川崎♪
ハo´ 。`ル<はるは『ぐぬぬあえあ』だな。背中の羽が綺麗なんだよね
川c ’∀´)<シンプルに『振り返りあえあ』かな。
ノハ*゚ ゥ ゚)<はうはうあうあで、ハウハウします
ノノ刀e _l‘)<ぷくぷくあえあにしますわ。この桃色がたまりませんわ
|||9|^_ゝ^)<あえあけーわいマークUにすると
ノリ*´ー´リ<しゅわしゅわあえあじゃ
从*´◇`)<AERAにするんだろうね

||c| ;・e・)|<…
川*’ー’)<(ひそひそ)ガキさん!仕事して!ほら、ガキさんの出番やよ
从 ´ ヮ`)<つっこみのないガキさんは角のぬけたあえあえあみたいなに揺れないと!
||c| #・e・)|<ねえ、突っ込みどころ増やしたよね。天然?違うよね?故意だよね
307名無し募集中。。。:2012/08/27(月) 22:50:19.95 0
||c| ;・e・)|<はぁ・・・するか・・・そんなに品種いるの!?
     佐藤の省略方法おかしいから!生田のは外国産?石田のシンプルってどこ基準?
     工藤のは飛ぶの?背中に羽って?確か揺れるんだよね?羽が揺れるの?
     それからハウハウって何?擬音?ジョジョなの?
ノハ*゚ ゥ ゚)<ジョジョですよ
||c| #・e・)|<違うよね?ただ反応しただけだよね。言いたいだけだよね。言わせたいだけだよね?
     桃色の生き物って気持ち悪いから、フクちゃん!鞘師はつっこむとこ逆にない!
     鈴木に至ってはもう原型ないから!ただの雑誌だから!
     !! みんな、拍手しない!なにこれ?つっこませるために意図的に選んだの?
川*;ー;)<これこそが本当のあえあの魅力がし
Σ||c| ・e・)|<どれよ!突っ込み人間を惑わすして楽しむのが魅力なの?

川*’ー’)<さて、ガキさんの仕事終わったからしっかり育てるんだよ」
「「「「「「「「は〜い」」」」」」」」
川*’▽’)<そして最後はみんなでおいしく食べましょう
||c| ;・e・)|<流行りの食育?しかも選択権なしぃ?
308名無し募集中。。。:2012/08/27(月) 22:52:18.24 0
>>305-307
保全作「上へ追えぇ(うええおええ) (中盛)」です
後悔はしていない
309名無し募集中。。。:2012/08/27(月) 23:04:01.95 0
徐々にガキさんの声のトーンが高くなっていくのが想像できる
310名無し募集中。。。:2012/08/27(月) 23:27:42.89 0
楽しいw読んでてニコニコしてしまったw
311名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 00:42:05.69 O
ガキさんの苦労が絶えんなww
312名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 03:47:52.58 O
疲れたから寝るのだ…
313名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 06:58:49.97 0
朝だから起きるのだ
314名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 08:43:28.82 0
朝からうえあえあ
315名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 12:15:11.55 0
あぶない!はなれろ!
316名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 14:24:54.91 O
夏バテほ
317名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 16:10:56.00 0
『What’s Up?愛はどうなのよ〜』

〈愛の力〉

1−1

秋晴れのある日、高橋愛の心に、助けを求める少女たちの叫び声が突き刺さった。
高橋は精神感応の力を使い、その叫び声の出所を探った。
瞬間移動を繰り返し、その出所を突き止めると、そこは山奥にある建造物だった。
正門には、「国立能力開発センター」という大きな看板が掲げてある。
高橋は建物から洩れ出す思念を探った。
そして、そこがダークネスの秘密研究所であることを確認した。
高橋はいったん喫茶リゾナントに戻り、仲間を集めて状況を説明した。
そしてその夜、高橋は新垣たち四人と共にその建造物に突入した。
高橋は先頭に立ち、少女たちの居場所を探りつつ、行く手を阻む戦闘員をなぎ倒す。
れいなは縦横無尽に動き回り、圧倒的な強さで敵を一掃する。
後方にいる愛佳は予知能力を駆使し、仲間たちに様々な情報を送り続ける。
同じく後方担当のさゆみは、キャーキャー騒ぎながらも敵の攻撃を巧みに躱し続け、
負傷した仲間が近づいて来れば瞬時に治療してしまう。
中心にいる新垣は、鋼線を操ってさゆみと愛佳を護りつつ、五人の連携の要となる。
歴戦の戦士たちは、完璧な陣形で敵の防衛ラインをいとも容易く突き崩していった。

譜久村・生田・鞘師・鈴木の四人は建物の外で待機している。
「少人数の方が動きやすいけん、あんたらはここで待っとり」
れいなにそう言われた譜久村は、まだ自分の実力に自信がなかったため少し安堵した。
五人の突入を見届けると、鞘師はすぐに草叢に寝転がり、うとうとし始めた。
「りほちゃん、起きていようよ。何かあったらどうするの?」
「あの人たちの力で対処できないような『何か』なんて、そうそうないと思うよ。
それに、もしあったとして、私たち四人の力じゃどうにもできないでしょ?」
睡魔に弱い鞘師は、譜久村に子供のような屁理屈を言うと、すやすや寝始めた。
318名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 16:11:45.57 0
1−2

侵入から約30分後、高橋たちは囚われていた四人の少女を見つけ出す。
新垣に精神干渉された初老の研究員が、虚ろな目で鋼鉄の扉の鍵を開ける。
中に入ると、飯窪・石田・佐藤・工藤の四人が奥の方で肩を寄せ合っていた。
高橋は、怯えた表情で見つめる少女たちに、ニコリと笑って声を掛けた。
「私は高橋愛。
あなたたちの声が聞こえたから、ちょっと来てみたの。
一緒に外に出る?」
四人は逡巡していたが、「愛」と名乗るその女性の澄んだ瞳を見て安心したのか、
まず、佐藤が立ち上がって高橋にしがみ付いた。
すると三人も次々と高橋に駆け寄り、その小さな体を取り囲むように抱き着いた。
「ゥオゥケィ!」
高橋は中途半端にネイティブっぽい発音で明るく叫んだ。
そして、まるでこれからカラオケにでも繰り出すかのように言った。
「じゃあ、行こっか!」

部屋から出てきた高橋に、さゆみがもたれかかり、甘え声で言う。
「ねえ、愛ちゃん、やっぱり瞬間移動できないの〜?さゆみ、足つりそう〜」
しかし、瞬間移動は不可能だった。
この研究所には瞬間移動を妨害する強力な装置が設置されているようだった。
ここに来るまで様々な機械を壊してきたが、その妨害機能は持続していた。

高橋たちが来た通路を戻り始めると、突然前方に一人の少女が現れた。
身構える五人と、慌てて後ろに隠れる飯窪たち。
その少女は、九人から二十メートル程前方に立ち、澄んだ声でこう言った。
「i914、私と戦って下さい」
「…あなたは?」
「私はi-Reproduced412。あなたと同じ、殺人兵器です」
319名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 16:12:20.47 0
1−3

「えっと、あいりぷろづ、どっ、どゅー…」
「愛ちゃん、ここで噛む〜?」
新垣は高橋に突っ込んでから、少女の方を向いて言った。
「あのぉ、省略して『アイリ』さん…でよろしいですかね?
アイリさん、こっちは五人、あなたは一人。
こっちの方がどう見ても有利だと思うんですけど…」
「私はi914の能力をわしゃわしゃわしゃ…。
さらに、全ての能力の性能が、i914のわしゃわしゃわしゃ。
 あなたたちが一度にわしゃしゃっても、おそらく一分もわしゃわしゃわしゃ…」
「…滑舌悪くてところどころうまく聞き取れないんだけど…」
さゆみは愛佳に耳打ちする。
「わたしもです…」
「みんな、逃げて。私がこの子を食い止める」
高橋は少女を睨みながら、意を決したような口調で言った。
「はあ?愛ちゃん、なんでよ!?」
れいなが高橋にくってかかる。しかし高橋はれいなを宥めるように諭した。
「私には分かる。この子はダークネスが作った殺人兵器。
多分、私と同じか、それ以上の力を持ってる。
もし光の力を使ってきたら、私たち全員、一瞬で消滅させられてしまうかもしれない。
 せっかく救えたあの子たちの未来を、ここで終わらせるわけにはいかない」
「へー。やっぱり愛ちゃんには分かるんだね〜」
少女の後ろに、白衣を着た女性のホログラム映像が出現した。
「コンコン!またあんたのしわざなの?」
「お久しぶり、ガキさん。私もここは愛ちゃんの言う通りにした方がいいと思うよ。
 あ、その子達はもういらないから、連れて帰っても全然かまわないよ」
「ふざけんな!じゃあ、何のためにこの子達に辛い目を合わせたと!?」
激昂するれいなに、マルシェは平然と言う。
「そんなの愛ちゃんをおびき出すためのエサに決まってるじゃん」
320名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 16:13:14.82 0
〈愛の行方〉

2−1

マルシェの言葉が終わると、「アイリ」は右手を上げ始める。
数秒後を「見た」愛佳が叫ぶ。
「みんな跳んで!」
新垣が佐藤を、愛佳が飯窪を、れいなが工藤を、高橋が石田を抱きバラバラに跳ぶ。
一人で跳んださゆみも含めて九人が移動した直後、ピンクの光球が襲い掛かる。
光が消えると、九人の居た場所の床が、大きな蟻地獄の巣のように抉られていた。
映像のマルシェが言う。
「私はこの自信作の性能を確認したいだけ。全滅したいんならそれでもいいけどね」
「ガキさんお願い。皆を連れて逃げて。私、力を解放して全力で戦う!」
「…愛ちゃん。分かったよ」
「ふふっ!そう来なくっちゃ!」
嬉しそうにそう言うと、マルシェの映像は消えた。
新垣は、悔しそうに唇を噛むれいなの肩を掴み、静かに言った。
「ここは、愛ちゃんに任せよう…」

高橋を除く八人は秘密研究所を脱出した。
途中、敵の戦闘員による攻撃は全く無く、数分で外に出られた。
外で待っていた譜久村たちは一瞬安堵の表情を見せたが、すぐに顔を曇らせた。
「高橋さんは…?」
鈴木が尋ねると、愛佳は中で起こったことを説明した。
説明が終わると、生田が新垣に聞いた。
「…そのアイリさんっていう人、高橋さんより強いんですか?」
「そんなわけないやろ!」
れいなが声を荒げる。生田はまたもやKYな質問をしてしまった自分を悔いた。
新垣がれいなを宥めようとしたとき、突然辺りが明るくなった。
振り向くと、研究所がピンク色と黄色の入り混じった巨大な光球に飲み込まれていた。
321名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 16:13:55.13 0
2−2

十二人は思わず後ずさりしながら、その恐ろしくも美しい光球を呆然と見つめる。
数秒後、光が収束すると、そこにはクレーター状の巨大な穴だけが残っていた。
「愛ちゃん…」「高橋さん…」
八人はそれぞれの思いを込めて、同じ人の名を呟いた。

高橋が消えた。
新垣はすぐさま譜久村に高橋の精神感応の力を使って探すように指示した。
譜久村は慌ててポケットから高橋の生写真を取り出し、その力を使った。
しかし、譜久村の心に、高橋の精神は感じられなかった。
その後、新垣たちは朝までその付近を捜索したが、結局高橋の姿はどこにも無かった。

喫茶リゾナントに戻ると、救出された四人全員がリゾナンターに入ることを志願した。
新垣は何度も断ったが、行く当てがない四人を無責任に放り出すことも出来ない。
「私達の仲間になったら、いつ敵に襲われるか分からないんだよ。それでもいいの?」
「はいっ!」
「自分の身を自分で守れるようになるために、きつい訓練に耐えなきゃいけないよ?」
「はいっ!」
「うーん…。しょうがないかあ…。じゃあ、明日から特訓だよ!」
「やったー!」
四人が手を取り合ってはしゃぐのを見つめながら、新垣は思った。
(ほーんと無邪気だねー。…昔の私と愛ちゃんもこうだったのかな…)

新しく加入した四人と、先輩とはいえまだまだ未熟な四人。
合計八人の「新人」たちの、厳しい訓練の日々が始まった。
322名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 16:14:49.62 0
2−3

体術はれいなが教官となった。指導はそれまでにも増して厳しくなった。
だが、その甲斐あって石田がその才能を開花させ、目覚ましい成長を遂げた。
そして、数か月後には、あの鞘師がてこずるほどの戦闘技術を身につけた。
もちろん、訓練で新人たちが負傷すれば、さゆみがすぐに治療してくれた。
「りほりほ、ほら、服を脱がなきゃ傷が確かめられないの!こっちにおいで!」
「…私、全然大丈夫ですから。それよりはるなんを治してあげて下さい」
「はるなんはそこで少し横になってれば大丈夫なの!」
「あのー…、道重さん、…私の腕、明らかに折れてるみたいなんですけど…」

精神系の訓練は新垣が担当した。
新垣は、新人の中では貴重な精神系能力者、生田の指導に力を注いだ。
また、敵からの精神攻撃に対する防御の方法は、全員に習得させる必要があった。
「コラー!生田!なんでこっちばっか見てんの!ちゃんと精神を集中させなさい!」
「ぐふふふっ、新垣さんがいけないんですよ、そんなに綺麗な瞳で私を見つめるから」
「もう、えりぽん!真面目にやらないと新垣さんに失礼でしょ!」
「あれ〜?ふくむらさ〜ん、はなぢでてますよ?そのてにもってるのなんですか〜?」
「ちょ、ちょっと、まーちゃん、やめて!」
二人がもみ合っているうちに落ちた写真を、工藤が拾い上げる。
「うわっ!これ、私が着替えてるときの写真じゃないですかぁ!キモっ!」
「……あんたら、いい加減にしなさーい!」

その間にも、異常な事象はしばしば発生した。
新垣リーダー率いるリゾナンターは、これまで通りその解決に尽力した。
新人たちも実戦訓練もかねて一緒に出動することが増えていった。
若い彼女らは、戦いの場を踏むごとに目に見えて成長した。
(この子達、もう大丈夫みたいね…)
あれから数か月が経ち、新人たちの成長ぶりに満足した新垣は、ついに決意した。
リゾナンターを離れ、一人で高橋愛の行方を探す旅に出ることを。
323名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 16:15:50.01 0
〈愛の形〉

3−1

新垣は喫茶リゾナントに全員を集め、自分の意志を告げた。
「えーー!?新垣さん、いなくなっちゃうんですか!嫌です!そんなの絶対に嫌!」
泣き喚く生田を、譜久村が困惑した顔で抱きしめる。新垣が呆れ顔で言う。
「コラ、生田!落ち着きなさい。これが今生の別れっていうんじゃないんだから」
「…あの〜、こんじょーのわかれってなんですか〜?」
佐藤が首を傾げる。
「こんじょうの別れっていうのは、我慢するのに根性が要る別れってことだよ」
「へー、工藤は中一なのによく知っちょうね。れいな、そんな言葉初めて聞いた」
「あのー、それ、違うと思うんですけど…。今生って言うのは…」
幼い三人への飯窪の説明が始まるなか、さゆみは小声で新垣に尋ねた。
「ガキさん、探す当てはあるの?…っていうか、愛ちゃん、…生きてるの?」
「…正直、分からない。でも、私、行かなきゃいけない気がするのよ」
「ガキさんの気持ちは分かるの。でも、ガキさんまでいなくなったら、さゆみたち…」

さゆみが不安がるのも当然だった。
その数日前、愛佳も自らの病気を理由に離脱したいということを皆に告げていたのだ。
「皆に迷惑を掛けたくない」という愛佳の思いを、さゆみ達は止むを得ず受け入れた。
愛佳が離脱するだけでも大変なのに、そのうえ大黒柱の新垣まで去ってしまったら…。
さゆみは黙り込んでしまった。

「あの…、新垣さんがそうしたいなら、ぜひそうしてください」
鞘師がおもむろに口を開いた。
凛とした鞘師の表情に、皆の視線が集中する。
「高橋さんはいまもきっとどこかで生きていると思います。
 探しに行くなら、一日も早い方がいいです。」
324名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 16:16:41.80 0
3−2

新垣の目を真っ直ぐ見つめ、鞘師が続ける。
「新垣さんなら、絶対に高橋さんを見つけ出せると思います」
その鞘師の言葉に続いて、両頬を涙で濡らした譜久村が話し出す。
「新垣さんがすぐに高橋さんを探しに行きたいって思ってるの、分かってました。
 でも、聖たちが頼りないから、それを我慢してるんだってことも…」
「私たち、まだまだ未熟だけど、田中さんや道重さんに迷惑をかけないように
 これからもっと、もっと、もーっと頑張ります!」
鈴木が満面の笑顔と潤んだ瞳で、精一杯明るく言う。飯窪の甲高い声がそれに続く。
「私たち、まだ高橋さんに、ちゃんとお礼を言えてないんです…
 ぜひ、直接高橋さんに感謝の気持ちを伝えさせてください」
涙もろい石田も懸命に言葉を紡ぐ。
「新垣さん…、必ず高橋さんを見つけ出して、…一緒に帰って来て下さい。
 私、高橋さんから…いろんなことを教わって、もっと強くなりたいです…」
「高橋さんにいただいた未来を、私たちがいま一生懸命生きているっていうことを、
 ぜひ、直接見ていただきたいです」
中一とは思えないほどしっかりと話す工藤とは対照的に、ようやく状況が飲みこめた
佐藤は、泣き顔のまま何も話せなくなっていた。
もちろん、佐藤の気持ちは、そこにいる全員が十分に分かっている。
愛佳は、にっこり笑って新垣に語りかける。
「新垣さん、何か『見えた』ら、愛佳、すぐに連絡しますからね」
「ガキさんのしたいようにすればいい。こっちはれいながおるけん、心配はいらん!」
れいなは腕組みしながら、いつも通り自信満々に言う。
一方、さゆみは、いつもとうってかわって、しっかりと力強く新垣に告げる。
「ガキさん。ガキさんが愛ちゃんと一緒に帰るまで、皆で力を合わせて頑張ります」
「…みんな、…ありがとう!」
新垣は両瞼に涙を溜めながら、仲間たち一人一人の顔を笑顔で見つめた。
ただ、生田だけは、譜久村の胸に顔をうずめて肩を震わせ続けていた。
325名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 16:17:36.13 0
3−3

新垣の旅立ちは、その翌朝だった。
その日は休日だったため、全員で新垣を見送ることができた。
喫茶リゾナントの前に並ぶさゆみたち。しかし、生田の姿はそこになかった。
「あいつは本当にしょーがないねー。…じゃ、そろそろいくね」
「ガキさん、いってらっしゃい!」
「新垣さん、お気をつけて!」
左手に落ち着いた緑色の旅行鞄を持った新垣は、何度も皆の方を振り返り手を振った。
もうこれで最後にしよう、そう思って新垣が振り返ったとき。
叫びながら猛然と迫ってくる人影が目に入ってきた。
「大好き、大好き、世界一〇×□△ーー!!!」
「うわーっ!」
新垣はあまりの迫力に思わず数歩後ろに逃げた。
しかし、すぐにそれがあの困った後輩であると気付き、立ち止まり優しく抱き止めた。
抱き合う二人のもとに、笑顔で駆け寄る十一人の仲間たち。
少しずつ暖かさを増していく朝の陽ざしの中、晴れ渡る五月の空に笑い声が響き渡る。

しばらくして、改めて駅へ歩き始めた新垣は、皆の方を最後にもう一度振り返った。
そして、仲間たちの顔一つ一つを目に焼き付けた。
泣きはらした目で、懸命に笑顔を作ろうとしている生田。
生田の肩をしっかり抱き、手をちぎれんばかりに振っているさゆみ。
そんな二人の両脇に立つ、いつも通り元気なれいなと、人懐っこい笑顔の愛佳。
そして、初めて会った時と比べて見違えるように頼もしくなった可愛い後輩たち。
新垣の脳裏に、昨夜の一人一人の姿が改めて浮かび上がる。
表現方法は様々だったが、それらは全て新垣や高橋への思いが表された愛の形。
もちろん、一番心配な後輩がさっき見せてくれた、幼子のような感情の爆発も…。
新垣は、みんなの方を見ながら、噛み締めるように言った。
「リゾナンター。大好き」
326名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 16:18:37.94 0
〈Ending:愛のかけら〉

仲間のもとを離れた新垣は、とりあえず高橋にとっての思い出の地を巡ることにした。
光が氾濫したあの時、高橋が消滅する前に瞬間移動妨害装置が壊れてくれていれば、
高橋には「飛ぶ」チャンスがあったはずだ。
1秒、いや、0.1秒でもいい。たとえ一瞬でも、その時間があれば…。
また、紺野は、あの「アイリ…」という少女を「自信作」と言っていた。
であれば、紺野はその大切な自信作を、消滅する前に何らかの方法で回収したはずだ。
向こうに回収する時間的余裕があったとすれば、それは高橋にとっても同じはず…。
だが、高橋がうまく脱出できていたとして、なぜ数か月経っても連絡をくれないのか。
身体に大きなダメージを負っているのか。それとも、記憶をなくしたのか。
いずれにせよ、生きていたとしても通常の状態ではないということなのだろう。
「今助けに行くから…。待っててね、愛ちゃん」
新垣は、高橋があの時とっさに選んだ可能性のある行先を虱潰しに当たろうと決めた。
たとえそこに高橋本人がいなくとも、生存していたという証拠があるかもしれない。
(愛ちゃんの足跡の一かけらでもいい、残っていてほしい…)
新垣は心の底からそう願った。

♪どっんっなっばーめーんーでもっにっげっなーいー♪
新垣の携帯のメールの着信音が鳴った。
「ん?ま〜た生田だよ。なんでこう毎日毎日送って来るかね〜、なになに…」
新垣は列車に揺られながら、大した内容の書かれていない文面を目で追った。
もうウンザリといった態度だったが、その頬は、誰が見ても分かるほど緩んでいた。

―おしまいー

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
以上、『What’s Up?愛はどうなのよ〜』でした。
『「リゾナンター。大好き」』以降の四作品の、少し前に起こった出来事を描いてます。
皆さんの感想、本当に嬉しいです。なお敵の少女のモデルは…、いわずもがなですね。
327名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 17:04:10.23 O
おつおつ!
328名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 17:15:59.38 0
>>317-326 『What’s Up?愛はどうなのよ〜』
レス番抜けてしまって申し訳ないですm(__)m
いつも楽しみにしてますよー
329名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 17:26:41.79 0
>>328
乙です
これまでになくシリアスにガキさんの旅立ちを綺麗に描いてるな
いつか再会の時がくればいいな
330名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 17:39:53.00 0
>わしゃわしゃわしゃ
クソワロタ
331名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 18:36:25.21 0
>>328
真剣な話でも笑いを忘れないんですねw
次の話も待ってる
332名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 19:06:43.10 0
>>326
マルシェの傑作も言語能力だけは・・・
333名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 20:37:44.85 0
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/665.htmlつづき


-------

「こうして会うことは異例中の異例だ。統制部に感謝しなさい」

愛は東方部へは向かわずに、都内某所の会議室に佇んでいた。
室内は薄暗く照明が落としてあり、何人の人間がその場にいるかは判別できない。まして人の顔など、全く分からない。
此処がリゾナンターたちへダークネスの情報を与え、指示を出している“上”、上層部、すなわち、統制部だった。
愛たちを管理し、監視している彼らと接見することは赦されていないが、今回は特別に許可が下りた。
というのも、1ヶ月前の久住小春の移動直後から、愛がしつこく“上”に連絡し、なんとか直接会うように言ってきたからだった。

「高橋愛、前へ出なさい」

統制部の誰かがそう口にする。声を聴くのは初めてだなと思いながら、愛は一歩前へ出た。
瞬間に、何処からかライトが光り、愛を照らす。さながらスポットライトか見せしめかと苦笑した。

「用件を簡潔に述べよ」

先ほどと同じ声がした。
愛が今日、此処へ来た理由、仲間であるリゾナンターにも黙って、里沙と東方部へ行くという嘘までついて此処に来た理由を口にする。

「先月からつづく久住小春、李純、銭琳への不可解な異動についてお聞きしたい。彼女たちは何処へ、どのような理由で異動したのですか?」
「それは連絡した通りだ、お前たちの知る必要のないことだと」

冷たい声が返ってくるが、愛は引き下がらない。
334名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 20:38:34.70 0
「納得のいく説明をいただけるまで帰りません」
「なんども言わせるな。お前たちには関係のないことだ」
「仲間が欠けたのに関係ないことなどありません!」

語気を荒くする。
良い子の仮面をかぶり、聞き分けの良いリーダーを演じてきた。ときに不条理な“上”の命令であっても、愛は受け入れてきた。
そうすることでしか、リゾナンターを、みんなを守れないと思っていたから。
だが実際はそうではないのかもしれない。
いま、此処で上層部の考えを問いたださなくては、今後の仲間との共鳴に罅が入る。
いったいなにが起きているのか、なにを考えているのか、上層部はなにを狙っているのか、知る必要があった。

「すべて必要なことだ、いまは分からなくとも、きっと分かるときが」
「なぜ説明責任から逃れるのですが。責務を果たしてください」

別の男が諭すように話しかけたが、愛はそれをあえて無視し、自分の言葉をつないだ。
それが相手の心象を悪くし、男たちが一斉に怒声を上げた。

「だれに向かって口をきいているんだ高橋ッ!」
「一介の手駒が、我々に歯向かうなど言語道断。いますぐ連れ出せ」
「黙って持ち場に戻れ」

徐々に大きくなる怒声に愛の怒りも沸々と湧き上がる。
やはり彼らは、こちらのことを下に見て、ただの戦闘の駒としか扱っていない。異能力者を化けもの扱いしているのは、敵だけでなく、上層部も同じだ。
もっとも、彼らにそんな期待など最初からしていなかったのだが。
335名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 20:39:39.99 0
このままこいつらに反旗を翻してやろうかと口角を上げた。
どうせいまの発言で愛の立場は非常に微妙なものになった。“上”の考えは相変わらず読めない。分かったのは、彼らも敵とさほど変わらないということだけだ。
ならばいっそ、会議室の前で待っている里沙とともに、彼らをバラバラに刻んでも悪くはないだろう。
今後は“上”に縛られずリゾナンターだけでダークネスと闘っていけば良い。もしくは、この闘いも放棄してしまおうか。
世界なんて、もう、どうでも良い―――

「黙りなさい」

手の中に光を掌握させようとしたとき、ひとりの男の声が響いた。
瞬間に先ほどまでの雑言がぴたりとやみ、静寂が広がった。愛は無意識に掌の中の光を放散させた。

「久住小春、李純、銭琳の異動について説明しよう」
「し、しかし管理官―――」

男の声は途中で途切れた。おそらく、管理官と呼ばれた男が相当なにらみを利かしたのだろう。
まるで蛇ににらまれた蛙のように動けなくなり、そのまま口をパクパクさせながら体を小さくさせた。

「高橋愛」
「……はい」
「久住小春は北に、李純は南、銭琳は西へと異動した。具体的な配置は言えないがね。
3名とも今回の一件がなくとも異動してもらう予定だったんだが、例の男の襲撃を経て、このような措置になった」

管理官という男の言葉を愛は冷静に噛み砕く。
“今回の一件がなくとも異動してもらう予定だった”……?どういう意味だ?
336名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 20:40:53.37 0
「……近いうちに、新垣里沙にも異動してもらう」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「質問は受け付けない。君の質問には答えた。以上だ」

管理官はそう言うと、手でなにかを合図した。
すると、周囲にいた男たちが愛を取り囲み、羽交い絞めにして、部屋から退去させようとした。

「ま、待って!なんで里沙ちゃんまで…!」
「すべてのものがひとつとなる。いずれお前たちにも分かる」

まるで他人事のように呟く管理官に遂に愛の堪忍袋も切れた。
全身に力を込めて一気に吐き出すと、周囲の男たちが瞬時に吹き飛んだ。
ざわりと部屋の空気が変わる。“光使い(フォトン・マニピュレート)”としての能力を吐き出した愛に統制部が狼狽えた。

「貴様ッ!!」

だれかがそう叫んだのも束の間、愛は右手に宿した光球を地面に突き立てた。
地鳴りがしたあと、部屋全体が揺れる。地を通じて響いた力が男たちの足元を危うくさせた。
ああ、もう、反逆罪も良いところだと覚悟しながら、愛は管理官に狙いを定める。この距離なら外さない。
337名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 20:41:40.26 0
「生徒諸君―――」

管理官はそう呟くと右手を翳し、さっと掌で一閃を引いた。
瞬間、愛の中からなにかが失われる。いままであった大事なものが瞬間に消え去った。

「諸君はこの颯爽たる、諸君の未来圏から吹いて来る、透明な清潔な風を感じないのか」

この感覚、前にもあったと記憶を掘り起こすと、いつだったか、8人で闘った、“能力封鎖(リゾナント・フォビット)”だと思い当たった。
だが、それが分かったところで愛にはどうすることもできない。
即座に男たちに羽交い絞めにされ、出口へと引きずられた。

「離せぇっ!!」

叫んだ声は空しく反響するだけでだれもなにも答えてはくれなかった。

「それは一つの送られた光線であり、決せられた南の風である」

扉が開き、ごみのように放り出された直後、管理官の声が聞こえた。
詩のような響きを持った言葉の意味を掴みとる前に、扉は閉められた。

「説明しろぉ!」

愛は扉を叩いて説明を求めたが答えは返って来なかった。
瞬間に、体に異様な重さがかかる。膝を折ったそのときに、再び自分の中に能力が戻ってきたことを感じた。
訝しげに眉を顰め、二度と開かない扉を見つめた。
338名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 20:42:37.15 0
「愛ちゃん、だいじょうぶ?!」

扉の前で彼女の帰りを待っていた里沙は、慌てて愛を支えた。
愛は短く息を吐きながら、先ほどの会話を脳裏にめぐらせた。
もし管理官の言うことが本当だとしたら……と、愛は里沙の顔を見た。

彼女はきょとんとしたままこちらを見る。つぶらな瞳に映る自分の顔はひどく青ざめていた。
愛はなにも言えず、そのまま彼女の肩を掴み、ぎゅうと抱きしめた。自らを落ち着けるように呼吸をなんどか繰り返し、体の震えを抑えた。
里沙もなにか言おうとしたが、それ以上問い詰めることはなく、愛の頭をなんどか撫でた。


-------

「まずいって、一般人に対しての能力解放は禁じられてるんだから!」
「やからってこのまま黙って見とけっていうとや!?中には絵里も愛佳もいるっちゃよ!」

さゆみとれいなは警察やマスコミ、そして野次馬でごった返している病院前に立って口論していた。
絵里と愛佳の入院する病院で立てこもり事件が発生したことをれいなはニュースで知った。
店を閉めて現場へ向かおうとしたとき、さゆみがちょうど店内に入ってきた。
彼女の瞳にはまだ若干の迷いや不安もあったが、此処に残しておくのは危険だと判断した。

「あとで説明するけん、さゆも来て!」

れいなは半ば強引にさゆみの腕を掴み、ふたりで現場へと走り出した。
到着したときにはすでに、警察が病院外を囲み、マスコミが我先にと報道合戦を繰り広げていた。
339名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 20:43:38.61 0
現段階で分かった情報を集めると、犯人たちは4人組、全員覆面をつけていて拳銃を所持している。
彼らの狙いは、現在入院中である大物民政党議員の命であった。
「大物」と名のつくものには大抵裏があり、この議員も例に漏れず、汚職や献金問題など黒い噂は絶えず、敵も多い。
彼らもまた、この議員の敵のひとりなのだろう。

「でも、中に入る手段なんてないよ。さっきの情報だと正面玄関とかの出入り口は封鎖されてるし、地下にはSIT入ってるみたいだし…」
「そこをなんとかするのがれなたちの仕事やろうが」
「そんな仕事じゃないでしょリゾナンターは…だいたいダークネスに関わりがない一般人の犯罪に手を出すことはダメなんだから」

さゆみの言うことはれいなにも分かっていた。
リゾナンターは対ダークネスにおける戦闘要員である。ダークネスが関係している事件の捜査をすることはあっても、一般犯罪に関渉することはない。
そもそも能力者であることを一般人に知られてはいけないことが暗黙の了解であり、能力の開放など以ての外だ。
今回の立てこもり事件も、“上”からの連絡が入っていない以上、犯人はダークネスではない。
したがって、れいなたちリゾナンターが建物に侵入することは許されない。

「納得できんって…絵里も愛佳も万全やないのに……」

れいなは不条理な状況に下唇を噛む。
どうすることもできず、此処に立って解決を待つしかない自分が歯痒かった。

「まぁ犯人の目的は民政党の議員さんらしいし、反抗しなければ解放されるよ。逃走手段もなさそうだし、早めに解決するって」

そうしてさゆみは手にしていたパソコンをシャットダウンし、耳からイヤモニを外す。
警察の無線を傍受していたが、犯人たちは素人らしく、さほど難しい事件ではなさそうだ。
340名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 20:45:01.43 0
確かに大勢の人質はいるし、銃器も保持しているが、ただ議員が殺せればそれで良いという考えしか持っていない。
金銭要求があったが、受け渡し時に逮捕される確率が最も高い。なんの策も講じずに金銭を受け取るのはあまりに不確実だ。
議員には悪いが、解決するのも時間の問題だろう。先に警察かSITが突入すればそこまでだが。

「日本の警察もそこまでバカじゃないでしょ」

れいなが落ち着かないように脚で地面を蹴ったその瞬間だった。
一発の乾いた銃声が響いた。
何処までも綺麗なその音に、警察やマスコミの目が病院内に向けられる。

れいなとさゆみは同時にイヤモニをつける。
電波状況が悪いのか、雑音が大きくなっていく。
人ごみから離れ、建物の陰に隠れる。さゆみは再びパソコンを起動させ、チャンネルを切り替えた。


「――――発砲―――7階―――民政――」
「本部―――議員は―――病院にはいませ―――」
「―――報告―――SIT突入――射殺許―」
「――議員の無事―――認―――院内の患者た―――」


ふたりはほぼ同時に顔を見合わせる。
聞こえてきた情報をつなぎ合わせれば得られる結果なんて、ほぼひとつしかない。

「議員さん…おらんやってこと?」

民政党の議員は此処にはいない。
退院したのか、それとも先に情報を入手して逃げたのか、この病院内にはもう存在しない。
341名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 20:46:24.68 0
それだけなら犯人の目的は達成できず残念で終わるだけの話だが、先ほどの発砲を聞くと問題はそう簡単ではない。
「SIT突入」と「射殺許可」、そして最後に聞こえた「院内の患者たち」という言葉が頭に残る。

「まさか逆上して見境なく発砲したとか…」

さゆみが自分の考えを不意に発した途端、れいなの顔色が変わる。
真っ先に駈け出そうとした彼女の腕を掴んで必死に止めた。

「さゆっ!もう止めんな!」
「ちょっと待って!まだ確定じゃない!情報が足らなすぎる!」
「能力使わんけりゃ良いっちゃろ?さっさと侵入して5,6発殴って気絶させたら良いっちゃ!」
「お願いだから待ってって!警察幹部に入った情報聞いてるから!」

さゆみは怒鳴りつけるように言うと、イヤモニに全神経を集中させる。
雑音に交じって聞こえる声に耳を澄ませ、パソコンを叩きながらなにかを計測している。
れいなも少しずつ頭が冷えてきたのか、彼女の答えを待つことにした。

「SITだけなら良いけど、警視総監出てきたらSATも動くかも…」

パソコン音痴なれいなは、彼女がなにをしているのかは理解できなかった。
ただ、多くの情報が画面上で行き来し、すぐさま院内の地図がでてきたことには感嘆した。
見取り図とセキュリティのチェック、電気水道の状況、そして患者たちの人数が大まかに示される。

「地下のセキュリティが厳重すぎる…だとすると……」

さゆみの指先が小さなパソコンの上で走り出す。
いったいどのような文字列を打っているのかれいなにはさっぱり見当がつかない。
342名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 20:47:02.04 0
さゆみはなんとか侵入できないか、あらゆる角度から病院内のセキュリティを解除しようとしていた。
もっとも、外部の人間に素早く解除できるようなセキュリティなど無意味なのだが。

―もう、絶対、傷つけない

さゆみはなんども心の中でそう唱えていた。
リンリンを行かせてしまったことがどうしても消えない。
だれもが私のせいじゃないと優しく包み込むのだが、できることなら、責めてほしかった。
責めて責めて責めて責めて責めて責め抜いて、それを乗り越えて、もう二度としないという決意に変えたかった。
どんな手段を使ってでも、仲間を止める義務があるとさゆみは思いたかった。

だが、仲間はだれも責めなかった。
さゆみのせいじゃないと口をそろえて言うのだが、じゃあいったいだれのせいでリンリンは瀕死の怪我を負ったのだ?
あの男は物理的な危害を与えた。しかし、その危害を与える手段を与えたのは間違いなくさゆみだ。
それは疑いようのない事実であり、認めざるを得ない。

「だからもう、傷つけない」

さゆみはなんどもパスコードを入力し、ロックをこじ開けようとする。
なんども弾かれるが、その度に新しい可能性を模索する。
それが自分にできる、唯一の贖罪なのだから。

「射殺許可―――」

聞こえてきた声に目を見開く。
もう時間がないとさゆみはパソコンを閉じ、天を仰いだ。見据えた先に映ったのは、晴れ上がった青い空だった。
さゆみが走り出したのを見て、れいなも慌てて追いかける。出入り口があるとすれば、もうその一点しかなかった。そこに懸けるしかない。

頼むから、頼むから無事でいてくれと、天に祈るようにふたりは走った。

その先に待ち受けるのが、破滅かどうかなど、分かりもしないで―――
343名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 20:54:48.84 O
>>333-342 「the new WIND―――fate of resonant」

またまた猿さんなので携帯から失礼します
作中の管理官の言葉は、宮沢賢治「生徒諸君に寄せる」です
つづきも早めにがんばります
344名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 22:10:40.64 0
おっつー
敵の輪郭があぼろげに見えてきたような
345名無し募集中。。。:2012/08/28(火) 23:32:32.63 0
まったく読めんw
次々に襲い掛かる脅威にどう対抗するかは気になるな
346名無し募集中。。。:2012/08/29(水) 00:53:34.49 0
寝る前ほぜなんと
347名無し募集中。。。:2012/08/29(水) 03:07:47.15 0
眠れないナント
348名無し募集中。。。:2012/08/29(水) 06:40:11.43 0
アロハ〜
日本からのアロハ〜…
349名無し募集中。。。:2012/08/29(水) 07:02:13.03 0
ピコーン
Σ川*’ー’)<あろはおええ丼ってどうや!?
||c| ・e・)|<単なるロコモコじゃないよね
350名無し募集中。。。:2012/08/29(水) 08:44:57.03 0
>>328
「こんじょうの別れ」の解釈が目からウロコでしたw
やり取りはコミカルながらシリアスに進んでいくストーリーがどこに向かうのか楽しみにしています

>>343
伊坂幸太郎の『魔王』を思い出しました
徐々に明らかになりつつも深まる謎の行く末をこれまた楽しみにしています
351名無し募集中。。。:2012/08/29(水) 11:44:44.74 0
昼飯前にあげておくか
352名無し募集中。。。:2012/08/29(水) 12:25:19.75 0
>>349
ピコーンすんなw
353名無し募集中。。。:2012/08/29(水) 15:09:55.41 0
川*’ー’)<新メニューのあろはおええ丼やよ〜
||c| ・e・)|<うん、やっぱりロコモコだね
354名無し募集中。。。:2012/08/29(水) 17:01:59.36 0
>>219-222 の続き。

 どうせ、私はこんなだ。
 どうせ―――私だから。

蛇口を捻る。冷たい水に手のひらは痛いくらいの温度。
体温。冷えた手。冷たい。冷たい。冷える、ココロ。
冷たい、何もかもが冷えていて、優しさも、温もりも無い。
水の無いプール。薄汚れた底。其処。

 でも満たされれば、なんて穏やかな世界だろう。
 此処はあまりにも醜いものが多過ぎると言うのに。

あの転校生は何故こんな場所に来てしまったのか。
こんな場所に居るのは苦痛でしかないのに。まるで牢獄だ。
可哀想に。
可哀想に。
でも一番可哀想なのはきっと、私。
いじめられても周りの人間は何もしてくれない。
だけどあの時に手に入ったチカラと一緒にかけられた声。

 「なら全部、沈めてしまえばいいじゃない。
 二セモノの世界を、そうすれば浮き上がってくる。貴方だけの世界が」

転校生が他の女子に囲まれている。友達と微笑んでる。
最初からあの子は特別だったんだ。私とは違う、別の人間。
羨ましい。
355名無し募集中。。。:2012/08/29(水) 17:02:42.04 0
羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい。
ウラヤマシイウラヤマシイウラヤマシイウラヤマシイウラヤマシイウラヤマシイ。

  ―――……。

結局、プールの掃除は途中終了になった。
プールでは未だ水が噴き出し続けていて、それは大雨のようになり。
見る見る水のないプールを溜めていってしまった。
原因は不明。
水道管の破裂かどうかを学園側から要請を受けた専門業者が調査にやってきた。
ただ何となく、無駄なんだろうなと、思う。

水道がどうのこうのとかいう話ではないだろうから。

 「――― じゃ、行ってくるね」
 「行ってくるって、どこに?」
 「水を止めに、部活頑張ってね」

そう言って鞘師はどこかに行ってしまった。
プール清掃が途中で終了となったことで、午後はいつもの時間割。
蛇口からどんどん水が沸きだしていたとしても、授業を止める訳にはいかない。
たった今本日最後の授業が終わって、生徒達はめでたく放課後に突入した。

鈴木は部活の準備をするために鞘師とは別の方向へ歩いて行く。
彼女がどんなことをしているのかは判っていたものの、それに無理に付き合うことは
ないと言われてしまい、あれから怪異な出来事に遭遇していなかった。

 ただ何となく、嫌な予感が過る。

356名無し募集中。。。:2012/08/29(水) 17:03:18.12 0
ふと、鈴木は廊下の向こう側から来る女子生徒と目が合った。
リボンではなくネクタイだと気付き、先輩だと思って挨拶をする。
 
 「こんにちわー」

軽くお辞儀をしてからその傍を過ぎようとした時、香水の匂いが漂う。
ハーブティーの、匂いだ。

 「――― 此処に居ていいんですか?鈴木さん」

先輩は、小さく呟くように言った。

 「へ?」

その意味を理解できず、だが訊き返そうとしたときにはもう。

 「あ、ちょ、ちょっとっ」

先輩は長い黒髪をなびかせ、廊下を階段の方へと曲がった後だった。
鈴木はまつ毛を揺らし、残像を見送るしか無かった。
瞬間。もわあ、とした空気に包みこまれる。

 「なにこれ…湿気…?」

途端、パシャリと液体か何かを踏んだような気がしたかと思うと
どこかで悲鳴が上がった。

 「え!み、みず…っ?」

357名無し募集中。。。:2012/08/29(水) 17:04:04.18 0
廊下が水浸しになっている。
とくに生徒達がやいのやいのと騒いでいる辺りでは、手洗い場の水道が
ものすごいイキオイで水を噴射させていた。
それが原因で酷い湿気が起こっている。

 あの時に聞こえた前兆のような『不快な音』はなかったのに。

周りでは、面白いように生徒達がつるつると足を滑らせ、廊下で転んでいる。
だが何かが変だ。普通の水ではない。
もう一層、"透明な水"の水かさが増しているのだ。

 「ど、どうしよう、りほちゃん居ないし…っ!」

ぱしゃぱしゃと"音"が鳴る。濁る様なそれに生徒達が足を取られている。
これでは業者もお手上げだろう。
しかもこれは、鈴木にしか"視えていない"。

 「かのんちゃん!」

すると何処からか見知った声が上がる。
譜久村がぱしゃぱしゃと視えない水を跳ねさせながら走ってきた。
鈴木は助け舟とばかりに譜久村の腕を掴む。

 「大丈夫?怪我してない?」
 「うん。みずきちゃん、やっぱりこれって」
 「りほちゃんはっ?」
 「それがさっきどこかに行っちゃって、水を止めに行くって」
 「水を止めに…かのんちゃん、りほちゃんがどこに居るか判らない?」
358名無し募集中。。。:2012/08/29(水) 17:04:38.64 0
譜久村の言葉に一瞬考えたが、鈴木は意を決したように視線を上げる。

 「……多分、判ると思う」
 「えりぽんのクラスにも行ったんだけどあの子居なかったの。
 とにかく私達だけでも捜そっ」

刻一刻と、見えない"被害"が拡大していた。
鈴木は鞘師が何処に居るかは判らなかったが、"それを知る術"は在る。

あの感覚を思い出す。
鞘師の姿を見る度に感じた、あのオーラの"色"。
朱、血、鬼、寂、冷――― イメージを焼き付けるような概念。
全ての"音"が鈴木の耳に入り込み、脳内で変換され、目に収束する。

 鈴木が両目を見開く、濃緑色の閃きが左右に瞬いた。
 
その異変に彼女は気付かない。気付く前に彼女は走りだしていたのだから。
359名無し募集中。。。:2012/08/29(水) 17:06:16.52 0
>>354-358
以上です。
スク水レンジャーな展開にはなりませんでしたごめんなさい。
そういう展開にするなら「ドキッ!女だらけの〜」みたいなものを
書かなくてはいけませんね(真顔

------------------------------------ここまで。

投下される作品が見るもの見るもの面白くて楽しいです。
作者さんのレベル半端ねえ…。
360名無し募集中。。。:2012/08/29(水) 18:18:02.94 0
ウホッ!ホゼナンターだらけの水泳大会 〜モロリもあるよ♪〜
361名無し募集中。。。:2012/08/29(水) 19:21:31.44 0
>>360
ねぇよw
362名無し募集中。。。:2012/08/29(水) 20:28:58.80 0
>>359
おつです
次回は香音ちゃんのラリアットが炸裂するのですね(違
いろんな色のきらめきがどのように展開するのか
続きを待ってます
363名無し募集中。。。:2012/08/29(水) 21:39:25.15 0
829
364名無し募集中。。。:2012/08/29(水) 23:00:55.03 0
風呂行く前にあげとく
365名無し募集中。。。:2012/08/29(水) 23:07:04.02 0
乙でした
モロリにも期待してるぜ(違
366名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 00:23:52.40 0
夜だな
367名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 02:35:30.95 0
透明な清潔な風がほしい…
368名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 05:01:14.47 O
朝の風は気持ちいいよ
369名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 08:10:02.85 0
まだちょっと熱い日が続きそうだ
370名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 10:35:52.54 0
もろりあげ
371名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 12:06:13.90 0
もろり禁止の新ルール制定を提唱するっ!
372名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 14:22:38.18 O
だが断るッ!
373名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 17:18:08.24 0
やばいよ
374名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 19:00:08.23 0
ヤバいよ
375名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 19:54:27.48 0
出川がいるな
376名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 20:19:53.68 0
そしてどぅーが蹴るんですね
377名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 21:53:48.73 0
あげ
378名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 21:54:18.24 0
俺を蹴っていいよ
俺が犠牲になるよ
379名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 21:58:28.71 0
      \、
   \
      ハo´ 。`ル <まだ膝本調子じゃないんですけど
        と    つ
        (  、 ヽ
         `ーヘ,,_,,)从/
            <  >
            /Yyヘ
                     _ ∩ ;. ;.,;.;.∵
                  ⊂/  ノ ;. ;
                  /   / >>378
                  し'⌒∪ 
380名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 23:11:35.21 0
>>378
生きてる?
381名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 23:11:44.50 0
ハルww
382名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 23:14:19.90 0
至福の失神タイムなう
383名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 23:45:00.26 0
『Be Alive』

〈君と共に〉

1−1

「うおっ!でかっ!工藤、佐藤、こっちこっち!」
れいなが呼ぶと、工藤と佐藤は笑顔で駆け寄ってきた。
「うわっ!本当だっ!」「ひゃーっ、でっかいですねー!」
二人はれいなの両脇に並んだ。
三人は、特殊アクリル製の透明な板の向こうにいるゴリラを食い入るように見つめた。
薄暗い部屋の中で、そのゴリラはまるで休日のおっさんのように寝そべっていた。
「えー、皆さん、今晩はこちらで寝ることになります。
保護者の方は、人数分の寝袋とマットを取りに来てください」
動物園の職員がメガホンで数十人の親子連れに語りかける。
「ええっ!こんなところで寝ると?」
「田中さん、パンフレット見てなかったんですか?
寝る場所はゴリラの飼育室の前って書いてあったじゃないですか」
「そうやったと?ちょっと、佐藤、パンフレット貸して」
れいなは佐藤の背負うリュックのジッパーに手を伸ばす。
「こちょぱい!」
「うるさいなあ!動いたら取れんやろ!」
「田中さん、私、寝袋とってきます」
「おー、サンキュ」

三人はその日、U野動物園に来ていた。
工藤と佐藤の夏休みの自由研究を終わらせるため、夜の動物園見学会に参加したのだ。
中学生が参加するには、20歳以上の保護者の同伴が必要だった。
道重はその巧みな話術をフルに駆使して、二人のお守りをれいなに押し付けた。
れいなは動物園に着くまでふてくされていたが、園内では一転して大はしゃぎだった。
384名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 23:46:03.92 0
1−2

はしゃぎ疲れたせいか、れいなは就寝時間になるとすぐに深い眠りについた。
「すみません……、すみません……、田中さん……」
工藤がれいなの体を揺する。
心地よい眠りを邪魔されて、れいなの機嫌は最悪だった。
「もう、…なによ!」
珍しくもじもじしながら工藤が小声で言う。
「あの、本当に申し訳ないんですけど…トイレ、一緒に行ってくれませんか…」
「はあ?れいなは今超眠いと!佐藤と一緒に行けばええやろ!」
「それが、まーちゃん、もっといろんな動物を見たいって『飛んで』っちゃって…」
「あいつ…、帰ってきたらビシッといわないけんな…。
それにしても工藤、そのビビり癖、早くなんとかしいよ。
こないだも結局、お化け屋敷に入らんかったやろ?」
「はい…」
「自分の弱点を克服しようっていう根性は無いんか!
そんな根性無し、れいなの仲間には要らん!もうリゾナンターやめりっ!」
「……。」
工藤は泣きそうな顔で黙り込んだ。
れいなが顔を逆方向に向けると、工藤はとぼとぼと暗い廊下を歩いて行った。
「…ちょっと言い過ぎたかな…」
れいなは少し心が痛んだが、睡魔には勝てず、また目を閉じて眠りについた。

トイレはゴリラの飼育舎には無く、本館に行かなければならない。工藤は外に出た。
ひと気のない夜の動物園。その非日常的な空間の不気味さが、工藤を涙目にする。
工藤は勇気を振り絞って、100mほど向こうにある本館入り口を目指して走る。
「はあ、はあ、なんでこんなに遠いんだよ…」
あと20m、10m…、ゴールまであとわずかに迫ったその時…。
ガツッ!
「ウッ!」工藤の両肩に突如激痛が走った。
385名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 23:47:54.45 0
1−3

次の瞬間、バサバサッという羽音がした。工藤は自分の体が浮くのを感じた。
上を向くと、巨大な鷲が工藤の肩を文字通り鷲掴みにして羽ばたいている。
「おいっ!放せーっ!ガブッ!」
工藤は鷲の足に思いっきり噛みついた。
鷲は痛みで鉤爪をパッと開いた。
「うわーっ、放すなー!」
ドサッ!地上約10mの高さから落下し、衝撃と痛みで工藤は動けなくなった。
「…ち、ちくしょー…、足、折れてるかな…」
落ちたところは、さっきの場所から数百メートル南にある広場の芝生。
鷲は、夜空に半円を描いて、再び猛スピードで向かってくる。
工藤はうつ伏せのまま、両手で頭を守るしか無かった。
鷲は真っ直ぐ急降下してきて、工藤の背中を鋭い爪で引き裂き、また空に舞い戻る。
「い、いてー…」
脇腹に背中から暖かい血が垂れてくるのを感じた。
鷲のヒットアンドアウェイは執拗に繰り返される。
それは、猫が鼠を嬲りものにしているかのようであった。
工藤は額を地面に付けていたが、千里眼の特殊能力によって鷲の姿は見えていた。
(あいつ…なんで止めを刺さないんだ?ハルをエサに田中さん達をおびき出す気か?)
近くのコンクリートの上に落ちている携帯を見ると、大きなひびが入っていた。
だが、たとえ携帯が壊れていなくても、工藤はれいなに助けを請うつもりはなかった。
れいなに言われたあの言葉が、工藤の心にのしかかっていた。
(やっぱり、こんな鳥にも勝てないハルは、リゾナンターに必要ないのかな…)
工藤がそう思った時、目の間の空間が歪み始めた。
「まーちゃん!?」
それは、佐藤が瞬間移動するときに必ず生じる現象だった。
歪みはどんどん大きくなり、ついにキリリと引き締まった表情の佐藤が現れた。
大きなパンダに乗って。
386名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 23:50:03.68 0
〈友と共に〉

2−1

「はああああ!?」工藤は目を疑った。
だが、佐藤が跨っているのは、間違いなくあのジャイアントパンダだ。
闇空を舞う鷲は、新たな敵に気付いたらしく、向きを変えて佐藤とパンダに迫る。
「ぱんださん、おねがい!」「ガオ」
猛スピードで突っ込む鷲。パンダは立ち上がって鷲に右前脚を叩きつける。
「ギャッ!」鷲は妙な鳴き声をあげながら左に吹っ飛んだ。
「パンダ強っ!」工藤が思わず声を上げる。
しかし、鷲はすぐに体勢を立て直して飛びあがり、闇に溶けていった。
パンダの背中にくっつき虫状態の佐藤が、工藤に大きな声で言う。
「どぅー!あのとりさんはてきだよ!まー、まえにみたことあるもん!」
「敵なのは分かってるよ!それよりそのパンダ、どうしたの?」
「まーもよくわかんない!どぅー、このぱんださん、だれ?」
「知るかああ!」
「そうだよねー、それより、どぅー、あのとりさんどこにいったかみえる?」
「もう、訳が分かんないよ………ええっと、あっ!見つけた!あそこの裏!」
鷲は、そこから100m程離れた木の、死角になっている枝に潜んでいた。
パンダがすぐさま工藤の指す方へ走り出す。
佐藤は騎手のようにパンダを巧みに乗りこなしている。
バッ!パンダが跳ぶ。
そして、地上5m辺りのかなり太い木の幹を右前脚でぶん殴る。
バギッ!「ギェエエエエエッ!」
木の幹もろとも鷲が吹っ飛ぶ。
そして、そのまま地面に落ち、ピクリとも動かなくなった。
「やったー!ぱんださん、ありがと〜」
佐藤は背中から降り、パンダの首に抱き着いた。
パンダは優しい目で佐藤を見つめた。そこに、一瞬の隙が出来た。
387名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 23:50:50.65 0
2−2

突然、パンダの体がびくっと動いた。
そして、ゆっくりと地面に這いつくばる。
「あれ?ぱんださん、どーしたの?」
佐藤が屈んで顔を覗き込むのと同時に、暗闇から十数人の全身黒ずくめの男が現れた。
「ゼンマザイジャアル?(何でこんなところに?)」
「…ハオバ、ザイジャアルシャーバ。(…まあいい、ここで始末してしまおう。)」
「…グルルル」
男たちの会話の内容が分かるのか、パンダが弱々しく唸る。
佐藤は、パンダの背中に吹き矢が刺さっているのを見つけた。
(どく!?)
佐藤の推測通り、その矢には神経を麻痺させる猛毒が仕込まれていた。
佐藤は、愛佳に教わった毒抜きの方法を思い出した。
急いで吹き矢を抜き取り、傷に口を付け、血ごと毒を吸いだしてペッと吐き出す。
黒ずくめの男たちは、半月刀を構えて、パンダと佐藤を半円状に取り囲んだ。
佐藤は一心不乱に、毒を吸って吐き出す作業を繰り返す。
「ジャーガニューハイ、ゼンマバン?(この娘、どうします?)」
「…シャー(殺せ)」
彼らのリーダーらしき長髪の男が言うと、二人が前に出て佐藤とパンダに近づく。
「待て!」
工藤は、超人的な精神力で全身の激痛に耐え、立ち上がって叫んだ。
「ハルの親友に手を出すな!」
長髪の男が工藤の方を向いて、思わず声を漏らす。
「オオ、ジェンクーアイ…(おお、超かわいい…)」
鼻の下を伸ばしたその長髪の男は、舌なめずりをしながら工藤に近づいていく。
(ちくしょう、…ハル、どうする?)
工藤は落下の衝撃と鷲の攻撃によるダメージで、立っているのがやっとだ。
「モンア〜(萌え〜)」
気持ち悪い声を出しながら、男が手を伸ばして工藤に触れようとした。
388名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 23:51:52.42 0
2−3

ゴギッ!
鈍い音とともに長髪の男の動きが止まる。
「大切な後輩に、なにしよう…」
「田中さん!?」
工藤が叫ぶと、男の顔面に拳をめり込ませたれいなが静かに答える。
「ごめん、遅くなった」
言い終わると、高速で体を半回転させ、左足で男の胴を蹴り上げた。
「グエッ」
長髪の男が後ろに吹っ飛ぶ。
だが、男もプロらしい。すぐに体勢を立て直し、立ち上がって部下に向かって叫ぶ。
「シャー!(殺れ!)」
黒ずくめの男たち全員がはじかれたように動き出した。
一人がパンダ、一人が佐藤、残りの十人と長髪の男がれいなに、それぞれ襲いかかる。
「「ギャーッ!」」
れいなが先頭の男に蹴りを見舞った時、佐藤とパンダを襲った二人が同時に絶叫した。
崩れ落ちる二人の男の背中からは、緑色の炎が上がっていた。
その炎に照らされて、闇の中に一人の少女の姿が浮かび上がる。
少女はれいなの方を向いて言った。
「田中サン、手助けはいるカ?」
「いらん!」
「そういうと思タヨ」
少女と話している間にも、れいなは次々と敵を仕留めていく。
そして、最後に長髪の男に全力の拳を打ち込み、早々と戦いを終わらせた。
「田中サン、ますます強くなタナ。まるでバカものみたいダ」
「はあ?それをいうなら『化け物』やろ!リンリン、日本語下手になったんやない?」
れいなはかつての戦友を見て、汗一つかいていない顔に子供っぽい笑みを浮かべた。
389名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 23:54:12.99 0
〈夢と共に〉

3−1

れいなは佐藤に、さゆみを連れて来るよう指示した。佐藤はすぐに「飛んで」いった。
パンダは、佐藤の応急処置が功を奏し、大事には至らなかったようだ。
黒ずくめの男たちの後始末は、リンリンの仲間がしてくれるらしい。
一方、工藤を襲ったあの大きな鷲は、例のごとくいつの間にか消えていた。

工藤は鷲に襲撃されたことをれいなに報告した。
それを聞き終わるとれいなは、その夜起こったことを皆に説明した。

工藤が一人でトイレに向ってしばらくして、れいなの携帯に愛佳から電話がきた。
「田中さん、今、どこにいます?工藤が危険です!」
れいなは慌てて寝袋から飛び出した。
そして走りながら、自分と工藤佐藤がU野動物園に来ていることを愛佳に伝えた。
それを聞いた愛佳は、自分がその夜見た「夢」の内容を話し出した。
その夢の中で、工藤は大きな鳥に襲われ血だらけになっていた。
背景の看板には、U野動物園南広場という文字が見える。
そして、そこには佐藤と、なぜかジュンジュンと思われるパンダの姿もあった。
目覚めた愛佳は急いで工藤に電話をしたがつながらない。
佐藤に電話すると、ちょうどパンダの見学中だった。
愛佳は、佐藤にそのパンダを連れて工藤のところに「飛ぶ」ように指示した。
さらに次の指示を出すために佐藤に電話をかけたが、それに出たのはリンリンだった。
そこで、リンリンにも事情を話し、南広場に向かうよう頼んだ。
以上のような話を愛佳から聞いたところで、れいなは南広場に到着した。
同時に、別方向から走ってくる見慣れたシルエットの少女に気付いた。
れいなは電話を切って、工藤に近づく長髪の男に全速力で突進した。

「ところでリンリンとジュンジュンは何で日本におると?」
れいなにそう尋ねられ、今度はリンリンの説明が始まった。
390名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 23:54:48.49 0
3−2

リンリンとジュンジュンは、「刃千吏」の極秘任務でU野動物園に来ていた。
数日前、ある犯罪組織がU野動物園のパンダ暗殺を計画しているという情報が入った。
どうやら、外交カードを増やしたい中国政府が裏で関与しているらしい。
そこで、その暗殺を阻止するために、リンリンとジュンジュンが急遽来日した。
ジュンジュンは、獣化能力を使い、狙われているパンダの影武者となった。
獣化状態を持続させるために、最低でも12時間は元に戻れなくなる薬を飲んだ。
敵の襲撃を待ち構えていると、どこから入ったのか突然檻の中に一人の少女が現れた。
少女はパンダ、すなわちジュンジュンに駆け寄り、嬉しそうにピタッとくっつく。
その少女は、どう見ても暗殺者には見えなかった。
困ったジュンジュンはとりあえずそのままパンダとして振る舞うことにした。
少女はジュンジュンにまたがり、キャッキャッと楽しそうに笑った。
ジュンジュンも、少女と一緒に遊んでいるうちに、だんだん楽しくなってきた。
「ジュンジュン、ニイザイガンシェンマ…(ジュンジュン、何してるの…)」
隣室のモニターで監視していたリンリンが呆れていると、突然少女の携帯が鳴った。
少女はジュンジュンから降り、携帯にこう言った。
「みついさ〜ん、こんちくわ〜、どうしたんですか〜」
(光井サン?)
その名前を聞いて、ジュンジュンは驚いた。そして、電話の内容に聞き耳を立てた。
愛佳が何か指示を出している。しかし、少女は全く状況を飲み込めていないようだ。
「う〜ん、よくわかんないですけど、いまからみなみひろばにいけばいいんですか?」
「そう!ジュンジュン…いや、そこのパンダと一緒にや!佐藤、パンダに代わって!」
「はーい。ぱんださん、おでんわですよ〜」
「ガウ」
携帯を受け取って愛佳の話を聞き終わると、ジュンジュンは少女を再び背中に乗せた。
そして、少女が何か叫ぶと同時に、少女とジュンジュンの姿が忽然と消えた。
慌ててリンリンが檻の中に入る。
それと同時に、うっかり忘れていったのか、床に落ちていた少女の携帯が鳴り出す。
リンリンは平仮名で「みついさん」と表示されている画面の着信ボタンに指で触れた。
391名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 23:55:25.53 0
3−3

れいなはテディーベアのように腰かけているジュンジュンの肩にもたれかかった。
ジュンジュンは、リンリンからもらった薬が効いてもうほとんど回復している。
「やっぱりジュンジュンの隣が一番落ち着くな〜」「ガウ」
れいなはあまりの心地よさにうとうとし始めた。

リンリンは工藤に痛み止めを飲ませ、背中の傷の応急処置をしながら話しかけた。
「はるかチャンはまだ中学一年生カ。よくこの傷に耐えられタナ。すごい精神力ダ」
リンリンの天真爛漫な笑顔を見て、工藤はこの先輩になら何でも話せる気がした。
「…いいえ。ハルは本当にダメです…。さっきも田中サンに言われました。
ハルは根性無しだから、リゾナンターをやめろって…」
「アハハハハッ!」
「リンリンさん、笑うなんてひどいですよ〜」
「ゴメン、ゴメン。でも、田中サン、変わらナイなって思ったカラ…」
「えっ?変わらないってどういうことですか?」
「ワタシも、前にソレ、言われたことあるヨ」
「リンリンさんも田中さんにやめろって言われたんですか?!」
「ワタシもジュンジュンも言われタヨ。あのときの田中サンの顔、鬼みたいに怖かタ。
 でも、そのアト敵と戦っタとき、田中サンはワタシタチ庇ってボロボロになっテタ。
 そのトキ、思っタヨ。田中サンは、ワタシタチにもっと強くなって欲しくて、
 厳しいコトバ言っタ。強くなれば、ケガしたり、死んだりしなくなるカラ」
「……」
「田中サンはムカシ一人ぼっちだタカラ、やっと出来た仲間が傷つくノ本当に嫌がル」
「……」
「はるかチャン、田中サンが心配いらなくなるくライ、強くなって下さイネ!」
工藤はジュンジュンにもたれかかっているれいなを見ながら、元気に返事をした。
「はい!」
392名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 23:56:02.51 0
〈Ending:汗と共に〉

「おまたせしました〜」空間が歪み、そこに佐藤が現れた。巨大なサイに跨って。
「はあああああ!?」工藤はまたもや自分の目を疑った。
れいなが立ち上がって怒鳴る。
「佐藤!なんでサイなんか連れきよったと!?」
「だって〜、たなさたん、すぐにさいをつれてこいっていったじゃないですか〜」
「れいなが言ったのはサイじゃない!さ!ゆ!」
「がびんぼよ〜ん」
サイは草食動物だが、非常に気が荒い。
豹柄の服を着て大声を出すれいなの姿は、サイの闘争心を激しく喚起した。
ドドドドドドッ「うわわわっ!サイがこっちに来ようっ!」
れいなは慌てて逃げ出す。それを追うサイの上で、佐藤が無邪気に言う。
「たなさたんもさいさんといっしょにあそびましょ〜」
そのとき、リンリンのポケットの中の佐藤の携帯が鳴った。
「おー、光井サンだ!もしもーし、リンリンでーす。こっちは無事解決しましタ。
 みんな大丈夫ダ!バッチリンリンでーす!」
工藤が少し心配そうに言う。
「…田中さん、大丈夫ですかね」
「心配ない。あの人、バカものだカラ」
「ガウ」
れいなは、人間の限界を超えたスピードで両脚を動かした。
そして、先程の戦闘では全くかかなかった汗を全身に感じつつ、大声で叫んだ。
「さあああとおおおおおお!あんたああ、りぞなんたああ、やめりいいいいいいい!」

―おしまい―



393名無し募集中。。。:2012/08/30(木) 23:57:29.12 0
>>383-392
以上、『Be Alive』でした。
夏休みも終わりということで、こんな作品はいかがでしょう。

------------------------------------------------ここまで代理投稿
394名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 00:20:26.14 0
これはもはや長編に分類でも良いかもですなw
れいなの冷たくも優しい先輩像が綺麗ですね
懐かしいメンバーの参戦に思わず胸が熱くなりました
395名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 00:52:06.86 0
ジュンリンが出てくるとはうれしいね

从 ´ ヮ`)<おっさんやん!
懐かしいw
396名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 02:08:49.82 0
作者さんいつもおつ!!
397名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 04:26:03.36 O
おやすみなんと
398名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 07:16:10.63 0
あげておいてから
399名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 10:02:23.27 0
>>393
まーちゃんが乗馬得意とは聞いてたけどまさかパンダやサイにも乗れるだなんてw
400名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 10:09:27.00 0
オチワロタw
401名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 12:08:25.28 0
毎回メンバーへの好き度がアップする作品だなあw
402名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 14:34:03.50 O
ほぜ
403名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 15:25:33.11 0
スレ的には中途半端ですが8月終わりということで…

リゾスレINDEX 2012夏〜ワクテカリゾナント〜
http://www1.axfc.net/uploader/Sc/so/374456.xls&key=resonant

↑ご入り用の方があればどうぞ。
もはや単にタイトルが並んでいるだけのシロモノですが…
要するに、登場人物の記入を完全に諦めるなど、いろいろおざなりになっております、すみません。
また、保管庫にまとめて収録されている分については、最初に当たる分のみの掲載であったりしています。

「作者名を入れて欲しい」「分類名を変えてほしい」等のご要望がもしあれば、遠慮なくお寄せください。
404名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 17:38:37.35 O
帰ったらDLします
405名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 17:39:13.96 0
>>403
いつもすまないねぇ
406名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 18:02:50.08 0
>>403
おちゅちゅ
407名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 19:47:40.92 0
いまだに増え続けてるのが凄いわ
408名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 21:43:22.72 0
もらいますか
409名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 22:28:11.18 0
二時の方向にダークネスの反応があると聞き、リゾナンターは現場へ急行した。
現場は、地下鉄「萌えーお江戸線」の某駅前だ。
迷ったり乗り継ぎでミスしたりして「地下鉄は複雑過ぎるわっ!」とツッコミを入れながらも、なんとか某駅に辿りついたメンバーたち。
だが、時すでに遅し。
そこはもう、ダークネスの悪意によって支配されていたのだった。

「キャハハハハ!いらっしゃーい、東京デカイツリー×3開業でーす!今ならオープン記念で入場料がお安くなっておりまーす!」

駅前で道行く人に宣伝のうちわを配っている、ちっちゃくてうるさい女がいた。
良くも悪くも耳につく声だ。
チキンのチェーン店のCMなどを任されてもおかしくないかもしれない。

さて、駅を出ると真っ先に目に入るのがこの女なのだが、よく見るとその背後がまたすごかった。
数百メートル先にそびえ立つ三つの塔。
2012年に開業した東京下町の新名所に似ていなくもない。
っていうか、そのものじゃね?

「ダークネスめ!何を企んどると!」

れいなが勢いよく前に出る。
まだまだ若いもんにセンターは譲らん!といった気概が見えた。
410名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 22:28:51.13 0
「あー?・・・なんだおめーらかよ。ほら帰った帰った。商売の邪魔だ」
「商売?」
「みなさーん!下町タワーは混んでて入場券買うのも一苦労ですよー!こっちのツリーに昇ったほうがおトクですよー!」

ちっちゃい女はれいなを相手にせず呼び込みを再開した。
女の宣伝の甲斐あってか、夏休みで暇そうにしている通行人がぞろぞろと下町タワーもどき×3に向かって歩いていく。

「どうも、下町電波塔の営業妨害を狙ってるみたいですね」
「まーちゃんもデカイツリー昇りたい!」
「バカ。ダークネスの作戦に乗っかってどうすんだよ」
「とにかくまずはポーズ決めましょう!戦隊ヒーローモノの基本ですよっ!」
「それもそうだね。じゃあ」

「やらせるかぁ!」
「わー!!」

ダークネスのちっちゃい女が全身でツッコミをかます。
さすが黄金期のツッコミ担当、と言わんばかりのキレと素早さだった。

「こっから10行も使わせるわけないだろ!全員分の決め台詞考えるほうの身にもなってみろ!」
「えー・・・・・・」
411名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 22:29:38.34 0
ヒーローモノの定番である登場シーンは都合によりカット。
ガッカリした顔をしているメンバーもいるが、これはそういうものだと思ってあるがままに受け入れてもらうしかないのである。

「れいなが先走って声をかけなければ、邪魔されずにできたかもしれないのにね」
「ちょ!れいなのせい!?」
「これでは、このお話のメンバー構成が読んでる方に伝わりませんわ。シクシク」
「今のリゾスレはそこを明示しないと、いつの時代の話なのか混乱するヤシ。グスグス」
「うっさい!あいつが10行って言いよるけん、2012年夏現在の10人ってわかるやろ!ってかそこ!嘘泣き!」

話を戻そう。

ダークネスという組織は、営業・広報力に定評のありそうなちっちゃい女を使って墨田区の営業妨害をしている。
その目的はいったいなんなのだろう。

「こんなものまで売ってましたからね。向こうは本気みたいですよ」

香音と春菜の二人がすっと前に出る。
香音の腕に抱えられているのは、焼きそば、たこ焼き、りんご飴、チョコバナナなど。
さらに春菜の左手首にかけられたビニール袋の中には、ツリーのマークが入ったクッキーや饅頭の箱などが入っていた。
412名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 22:30:20.31 0
「みんながコントやってる間に偵察してきました。この食べ物類は、その辺の屋台で売っていたものです」
「そこの“東京ホラマチ”っていうお店の中では、キーボルダーなんかも売ってましたよ。
 全10色だからみんなの分も買ったんですけど、やっぱりチョコレート色はないですね・・・」
「こここ、こんなに買い物するなんて・・・。二人のお小遣い、月いくらなんですか・・・」
「大丈夫だよ亜佑美ちゃん。全部経費で落とすから」
「私も!私もちょっと偵察に!!!」
「いや、もう充分だし」

今にも駆け出しそうな亜佑美を生温かい目で見守りながら、さゆみはダークネスの狙いを分析する。
これだけ多様な店を出店料の高そうな「萌えーお江戸線」の駅前に集めたのだ、連中も遊びでやっているわけではない。
そうだ、女は先程「商売」と言っていた。
ということはつまり。

「やいダークネス!おまえたちの狙いはなんだ!」
「ちょっと!そんなはっきり!」

さゆみが真面目に考えてる横から、衣梨奈が単刀直入に疑問をぶつける。
リーダーらしくシリアスな顔でキメてるところだったのに。
空気読めよこのKY、とさゆみは口の中で毒づいた。

「ふん。我がダークネスは“萌えーお江戸線”と業務提携してるんでな。あっちの沿線にばっか人が集まるのは面白くないんだよ」

しかも、あっさりと狙いを教えてくれるっていう。
413名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 22:31:11.26 0
「いくつか催眠をかけてあるからな。客は東京デカイツリーに昇ったつもりで、実は333m塔に昇ってるって寸法だ。
 帰りに“ホラマチ”でお土産のデカイちゃんグッズでも買ってくれたら、言うことないね!」
「この悪党!」
「邪魔するなら容赦しねーぞ。あそこに見えるデカイツリー×3は完全な幻ってわけじゃないんだ。行け!一号、二号!」

ちっちゃい女の合図で、三つの塔のうち左右の二つが動き出した。
ズシン、ズシンとこちらに迫ってくる。

「頑張れ、ダーリン!やっちゃえ、モトコサン!」

“ダーリン”と呼ばれた一際大きな木偶の坊と、“モトコサン”と呼ばれたジャイアントがリゾナンターに襲いかかった。
二つのデカイツリーに手が生えて、右パンチ左パンチ右アタック左アタック。
あまりに長大なそのリーチに、リゾナンターはただ逃げ回ることしかできない。

「うわわわわ!怪獣映画かよ、くっそー!」
「キャー!まだりほりほのスク水写真集完成してないのに潰されるのはイヤー!」
「ダメじゃダメじゃー!フクちゃんのありとあらゆる肌に頬ずりするまでは死ねーん!」
「私の最期は道重さんの腕の中って決めてるのに・・・!それが無理なら、ハアハア、小学5,6年生くらいの、女の子たちに囲まれて・・・ハァハァ」
「いろんな意味でもうダメだ!!」

絶望感に包まれるリゾナンター。
しかし、まだ諦めていないメンバーが一人。
414名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 22:31:58.48 0
「諦めるにはまだ早いっちゃん!この10人だからこそできる必殺技があるやろ!」

木陰に隠れて顔だけ出したれいなが凛々しく叫ぶ。
そうか、その手があったか。
他のリゾナンターもれいなにならい、木陰に隠れる。
そしてデカイツリーの手が届かない奥のほうで、10人は最新のフォーメーションを組んだ。



「リゾナントバスター改変版!“リゾナント・カラフルキャラクター”!!!」



※モーニング娘。の最新アルバム『(13)カラフルキャラクター』は、9月12日(水)発売です。

「「グワァァー!!」」

新必殺技“リゾナント・カラフルキャラクター”が見事に決まった。
崩れ落ちるデカイツリー一号と二号。
するとあら不思議、それまでデカイツリーだったものが見る見るうちに人型に変化していく。
どうやら催眠幻覚で必要以上に巨大に見せていただけで、ベースは正真正銘の人間であったようだ。

「ああ!ダーリン!」
415名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 22:32:45.84 0
ちっちゃい女が、恋する姐さん女房顔で元デカイツリー一号に駆け寄る。
倒れた男と介抱する女。そのカットだけ切り取ってみれば、まるでドラマのワンシーンのようだった。
ちなみにその隣では元二号も倒れていたが、新婚さんがそっちを振り向くことはないので以下省略。

「ツリーの横に333mタワーが見える!まだ戦いは終わってない!まさかあのツリーも催眠をかけられた人間なの!?」
「おそらくそうです!聖の持つ聖なるパワーで、くまくました可愛い女性が視えます!」
「聖にそんな能力設定あったっけ」
「そこは空気読んでください、生田さん!」

デカイツリー×3ということで、敵はまだあと一塔残っている。
しかし、最強の必殺技を放ってしまったリゾナンターに力はもう残されていなかった。
このままでは、夏休みの最後を安近短で済ませようとする人たちのお金がダークネスの手に堕ちてしまう・・・!

「ねー、くどぅー。夏休みの宿題終わった?」
「え。いやまだ数学と美術が残ってるけど」
「まーちゃんはねー、英語が終わったんだよー」
「英語“が”?まさか終わってるの英語だけ!?」

「・・・・・・宿題?」
416名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 22:33:21.44 0
最年少コンビの和やかな会話。
それに反応を示す声が、上空からひらり。

「くまくまー!!!」

奇声を発し、最後のデカイツリーが人間の姿に戻っていく。
だがリゾナンターは何もしていない。
ちっちゃい女も、傷つき敗れたダーリンと愛を語らうことに必死で、何かした様子は見られない。
いったいデカイちゃんの身に何があったというのか。

「ふう。弟の夏休みの宿題見てあげる約束をすっかり忘れてたよ。お姉ちゃんが約束やぶっちゃダメだよね」

綺麗な女子大生風のお姉さんの姿になったデカイちゃんは、そのまま何事もなかったかのように去っていった。
きっと彼女はこれから家に帰って、約束どおり弟さんの宿題を見てあげるつもりなのだろう。
真面目だ。実に真面目な性格だ。
故に、「宿題」の一言で我を取り戻したのかもしれない。
夏休みの終わりに聞く「宿題」という言葉は、学生であればあるほど結構ビクッとする。
彼女も例外ではなかったのだろう。
417名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 22:34:01.13 0
「えっとー・・・一件落着ってことでいいのかな、れいな」
「れいなに振らんでよ。れいなはリーダーの判断に従うけん」
「ずるーい。こういう時だけさゆみのことリーダー扱いして」

「じゃあ早く本部に帰りましょう!まーちゃんに宿題やらせないと!」
「でも〜、今日の出動報告書、まーちゃんが担当だからぁ〜」
「そんなもんだーいしが代わりにやってくれるって!ねっ!」
「・・・うん。それは別にいいけど・・・・・・」
「あゆみん、屋台への未練が視線に表れてるよ」

「別に宿題なんかやらなくても高校生になれるのに」
「聖って案外アホっちゃんね〜。数学のテスト6点やったっけ?」
「その後は42点に上がったもん!っていうかそうじゃなくて、学校なんておじいちゃんに頼めば大丈夫ってことを聖は言いたかったの!」
「うわぁ・・・」
「ああ香音ちゃん!そんな残念なものを見るような目で見ないで!」
「アハハハ!」
「・・・他人事だと思っとるみたいじゃけど、香音ちゃんはえりぽんにも結構そういう顔しとるよ?」

何はともあれ、悪の手は退けた。
酷暑だろうが酷ネタだろうがオチてなかろうが、リゾナンターは今日も往く。
今日も往くのだ!


おしまい
418名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 22:35:36.89 0
>>409-417
『カラフルリゾナンター 〜VSデカイツリートリオ〜』

オチなんていらねえよ、夏
小ネタに関してはふざけてるだけで悪意はないのであしからず


――――

酷い話ですがせっかく思いついたので
よろしくお願いします


以上代理投下終了
419名無し募集中。。。:2012/08/31(金) 23:55:02.49 0
夏休みを締めくくるのにふさわしい怪作だw
イイゾモットヤレ
420名無し募集中。。。:2012/09/01(土) 00:58:20.19 0
ともかく平和が護られて良かったよww
421名無し募集中。。。:2012/09/01(土) 03:08:04.13 0
寝るのだよ
422名無し募集中。。。:2012/09/01(土) 07:22:28.39 0
朝なの
423名無し募集中。。。:2012/09/01(土) 09:39:22.65 0
>>418
モトコサンって誰だよと思ってたら今ふと分かったw
カラフルなキャラクターたちの活躍ぶり堪能しました
新アルバムの宣伝も乙ですw
424名無し募集中。。。:2012/09/01(土) 11:18:12.21 0
いいように利用されて打ち捨てられたモトコサンが不憫だw
もう秋だね〜
425名無し募集中。。。:2012/09/01(土) 14:08:27.79 0
ほっ
426名無し募集中。。。:2012/09/01(土) 15:54:03.73 0
久しぶりの保全
427名無し募集中。。。:2012/09/01(土) 17:30:37.56 0
夏の宿題まだ終わってないぜ保全
428名無し募集中。。。:2012/09/01(土) 18:44:19.32 0
宿題・・・何もかもがみな懐かしい・・・
429名無し募集中。。。:2012/09/01(土) 19:55:50.87 0
リゾナンターは絶対終わってなさそうだな
430名無し募集中。。。:2012/09/01(土) 21:22:27.71 0
愛佳なら終わってたろうけど現代のリゾナンターは何人か怪しいなw
431名無し募集中。。。:2012/09/01(土) 21:31:18.47 0
ハo´ 。`ル<宿題終わった?
川; ^_〉^)<………写させて
432名無し募集中。。。:2012/09/01(土) 22:19:52.15 0
じゆうけんきゅう 1−A さとう まさき

こんちくわ〜このなつ、まーちゃんは〜あえあさんをそだてることになりました
きっかけはしりあいのおねえさんがあえあさんをそだてたら?といってくれたことです
むかし、ほっかいどうにいたころみたいで、なんだかぽくぽくして楽しかったです

まーちゃんがそだてたのは「グリーンもふもふサイドバック川崎あえあ」です
とうきょうではあまりみかけないものですが、ほっかいどうではのやまのあちこちでゆれています
夕焼け空にむれになってとぶあえあさんたちはとてもきれいです

えさには「乾燥あえあ」をかんがえましたが、おねえさんからかわいそうといわれてかえました
「乾燥あえあ」は添加物一切なしの自然食品ですが、ま−ちゃんはかえました
くどぅーにそうだんして、えさは「ちょこれーと」というとうきょうにきてしったあまいおかしにしました

えさをあげるとあえあさんはまーちゃんのゆびをつついてきて、こちょぱいです
でも、あえあさんのざわざわしたしたがまーちゃんのゆびについた茶色をなめるのでかわいいです
せなかにはねがけいこうとうにてらされるとみどいいろのひかりをだすのがきれいです
それから、もふもふしたゆびさきもかわいいです
ごはんのあとにゆびさきについたちゃいろをひっしにとろうととげとげがこするんです

ほっかいどうにいたときのあえあさんには「乾燥あえあ」の天然ものをあげていました
そのときはあえあさんのせなかのはねはさんかいひかりました
こんかいはにかいひかりました

以上から考察するに「川崎あえあ」の成長にはグリコーゲン成分の関与は低いと判断されます
エネルギー生産過程において糖分は必要ですが、成熟には糖分以外が関わっていると考えるのが自然と考えました
「あえあ」が乾燥されることにより生体内における水分減少及び蛋白成分比率が上昇がみられます
これにより蛋白摂取比率が上昇し、背中の発光機関の成熟度に個体差が生じ、「あえあビブルース効果」が増強されます
これは1978年のNAJ(Neo Aea Journal)9月号にも報告されている論文に示されています
自由研究という機会を用い、それがin vivoなものであることを報告することが出来た一例と思われます

いじょう、ま−ちゃんでした〜
433名無し募集中。。。:2012/09/01(土) 22:22:39.85 0
>>432
「上へ追えぇ(うええおええ) (小盛り)」
>>431見て、一時間で書いてみたw うん、あんま面白くないな
434名無し募集中。。。:2012/09/01(土) 22:30:01.09 0
以上から〜の件で焼酎噴いたじゃねぇかww
435名無し募集中。。。:2012/09/01(土) 22:31:54.23 0
まーちゃんワロスwww
436名無し募集中。。。:2012/09/01(土) 22:54:53.76 0
まーちゃんいきなり変わりすぎww
437名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 00:00:17.37 0
面白い
カメがいきなり数学の難問を解き明かす話を思い出した
438名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 01:22:37.78 0
>>437
新参に詳しく教えてください
439名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 03:40:26.16 O
440名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 07:59:48.52 0
カメのやつあったな
441名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 09:48:46.00 0
>>438

寝落ちした古参が教えて進ぜよう

(39)452 名無し募集中(天才カメちゃん) http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/125.html
442名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 11:33:02.05 0
紙一重感は通じるものがあるかもねカメまーw
443名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 14:05:23.70 0
あげあげ
444名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 14:43:03.30 0
>>441
感謝です!
唐突に天才が現れるんだなw
445名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 16:43:07.75 0
夕方なのだよ
446名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 18:32:12.70 0
帰宅中のホゼ
447名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 19:52:54.65 0
突然の雨―――
448名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 20:58:35.61 0
アメノキオク
449名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 22:10:17.73 0
雨は嫌いじゃないけど、その向こうの空を仰ぎたかった―――


水の中は心地良かった。
あの日以来、ほぼ毎日のようにこのプールに来ては深く潜って水と会話をする。
以前よりもずいぶん、水が柔らかく感じるようになった気がする。
「気のせい」じゃないと良いなと思いながら、私は水面に顔を出した。

「15分23びょ〜。昨日より伸びてますねぇ」

そして、この人がプールに来るのも日課になっていた。
何処かの水泳部の顧問のように、白いシャツを着てメガホン片手にストップウォッチで計測している。
相変わらず、この人のことが私は掴めない。

「どこかのマジシャンは18分くらい潜っていられるんだって。もうすぐ追いつきそうじゃん!」
「……別に争うつもりはないんですけど」
「いーんだよ、目標があることは大事ですよッ!」

彼女―――亀井さんはそうして笑ってノートになにかを書き込んだ。
あの日以来、頼んでもいないのに亀井さんは私のマネージャーのような顧問のようなことをしてくれる。
それは、心臓病のために一戦を退いた彼女なりの優しさなのだろうと私は思う。
同じく脚の怪我のために後方支援に回った光井さんと似たようなものを、ぼんやり感じ取った。
450名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 22:11:18.45 0
「ねーねー、私思ったんだけどさ」

私がプールから上がり、タオルで頭を拭いていると亀井さんはこちらにてとてと歩いてきた。
何処かで見たことのある動きだと記憶を掘り起こすと、いつか水族館で見たペンギンだと思い当たった。
そんなことを言おうものなら風で吹き飛ばされるのは目に見えていたのでやめにしておく。

「きみは水でしょ?んで絵里が風でしょ?なんか合わさったら強そうじゃない?」

唐突になにを言い出すのだろうこの人はと思うが私は口に出さない。
亀井さんは自分で「良いアイディアだ!」と思ったのか、水面を見つめたあと、指先で円を描いた。
風に撫でられたプールの水が騒ぎ出し、静かに波を立てていく。

「きみが水泡撃って、それが風に乗って飛んでったら、なんかカッコ良くない?」
「……竜巻、みたいなイメージですか?」
「そうそう!そんな感じ!あ、なんだったられーな連れてきて“共鳴増幅能力(リゾナント・アンプリファイア)”でガーッとさ!」

亀井さんはなにが楽しいのかニコニコ笑ってノートに書き込み始めた。
いまの説明でなんとなくのイメージはついたが果たしてそんなことは可能なのだろうか?
理屈は分からないわけでもないが、亀井さんと違って私はまだ完璧に水を操れるわけではない。
田中さんの“共鳴増幅能力(リゾナント・アンプリファイア)”だって、無制限に際限なく、だれにでも使えるわけではない。対象となる能力者同士の信頼関係が絶対になる。
果たして、そう上手くいくのだろうか。
451名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 22:12:13.87 0
「いーじゃん、暇だったんでしょー!」
「暇って……さっきようやくリゾナントの休憩入ったばっかやったとに…」

私がそう考えているのも束の間、亀井さんは田中さんを連れてきた。
エプロン姿であることを見ると、田中さんは喫茶リゾナントの仕事の合間であるようだ。
ああ、なんか巻き込んじゃってごめんなさい……

「……というわけで“共鳴増幅能力(リゾナント・アンプリファイア)”よろしくッ!」
「いやいや、よろしくとか言われても…」
「えー、できるでしょ?」

思い立ったら即実行するのが良くも悪くも亀井さんの特徴だと思う。
なにも考えずにぽんぽん発言する点でいえば、田中さんと似ているのかもしれない。
道重さんの話によると、亀井さんは田中さんに対してだけは遠慮がないそうだ。
年下だからだろうか、私にはよく、分からなかった。

「ムチャクチャやん。そもそも絵里と鞘師のその…合体技?それやったことないっちゃろ?」
「だぁーいじょうぶ!絵里と里保ちゃん、やればできる子ですから!」

どうやら私の意見は関係なく、その「合体技」とやらをやることに決まったらしい。
先輩の言うことは絶対だ。なんて何処かの部活動のように私は呟き、水へと飛び込んだ。まとわりつく水が心地良い。
452名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 22:13:28.58 0
「理屈は分かるっちゃけん、結構難しいっちゃないと?」
「うーん……愛佳ちゃんがむ〜っかし光学迷彩とか体感重力とか言ってたから、それからちょ〜っとは勉強したんだけどね」

亀井さんはこめかみを人差し指で押さえてその場をゆっくりと歩き出した。
それは先ほどまでのふざけた色ではなく、深く思慮し、光明を見出そうとする色を見せている。
こうして、ふとした瞬間に真剣さを滲ませる表情が、私は好きだった。

「私が此処から気流……風の道をつくるから、それに里保ちゃんの水泡を乗せたら、水が走るんじゃないかと思うんだけど」
「それ、鞘師の方が難しくない?」

田中さんのツッコミに対し、亀井さんは「そーんなことないですよ?」と笑って見せた。
私もなんとなく、田中さんの意見には同意するが、風で飛ばされるのは勘弁してほしいので黙っておくことにした。

「んー、じゃあ、れなもやってみるけんね」

田中さんは私の方を向くと「ニシシっ」と子どものような笑顔を見せた。
いたずらっ子のようなその笑い方に、私も思わず目を細めて笑う。
453名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 22:14:09.41 0
亀井さんのつくる風の道に、なんとか水を乗せられれば……と私はいちど水中に潜った。
難しいかもしれないが、できない気がしなかった。いまの私たちなら、できないものなんてない気がする。
不思議なことに、いつの間にか、亀井さんのペースにいちばん乗せられている。私も、田中さんも。

―うまいなぁ……風のつくり方が…

私はなぜだか柔らかく笑い、右手の中に水をゆっくりと集めていく。
頭の中で思い描いたイメージ通りにはいかないだろうけど、なんとなく、上手くいく気がする。
水面に顔を出すと、ふたりとも目を閉じてなにかに集中していた。
亀井さんの右手の中にはゆっくりと周囲の風が巻き起こりはじめている。
田中さんは亀井さんの数歩後ろに下がり、なにかを詠唱しているようにも見えた。

「―――いくっちゃよ」

だれにともなくその言葉が放たれた。
田中さんは深く息を吸い込んだあと、目を開き、右脚を一歩踏み出した。
瞬間、空気が張り詰めて、割れる。心に膨らんだ風船が破裂し、中から溢れ出たものがしっかりと浸透していく。
なにかに、体中が満たされていくような感覚を覚えた。

風を掌握した右手で大きく円を描いた亀井さんは、一呼吸おいたあと、それを解放した。
目に見えないはずの風の流れを、私はしっかりと感じ取った。
真っ直ぐと、大粒の雨を降らせる窓の向こうの黒い雲を動かすように、風の道が出来上がっている。

私は迷わずに右腕を突き上げた。
感じたことないような能力の解放に、思わず震えた。
放たれた水が真っ直ぐに亀井さんのつくった気流に乗る。瞬時に水と風が混ざり合って走り出す。
454名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 22:15:14.17 0
私はその瞬間に、思った。そして、理解した。
“水龍”が天へと昇るのだと―――

「あ……」

まさに水龍は天へと昇った。
亀井さんの風の竜巻、そして私の巻き起こした水泡、そして田中さんの“共鳴増幅能力(リゾナント・アンプリファイア)”という合わせ技。
それは予想以上に凄まじいものだったらしく、地下プールの窓を破壊した。
派手な音を立ててガラスが割れたかと思うと、そのガラスすらも巻き込んで水龍は天上へと走った。
水龍は大粒の雨を降らす巨大な黒雲に呑みこまれていく。自分の巣に帰ったような、そんな風にも、見えた。

「ってなに窓ぶっ壊しとっちゃよ!!」

田中さんの声で私は我に返った。
まずい。前回の蛍光灯に引き続き、今度は窓まで破壊してしまった。
確かあの窓、対ダークネスの急襲に備えた防弾ガラスだったような……と私はぼんやり思い出す。

「あっちゃ〜。壊しちゃいましたねぇ」

亀井さんもさすがにヤバいと思ったのか、その笑顔が若干ひきつっている。
壊れた窓をもういちど見た。空を覆っていた黒雲に、光の隙間が生じている。微かな青を覗かせた空に、私は目を見開いた。

「じゃ、れーな謝っといてね」
「な、なんでれなが謝らんといかんちゃ!」
「ほら。ごめんなさいの前借りですよ?」

予想以上の能力に私は体が震えているのを感じた。
でもそれ以上に、道重さんの怒りが怖くて、どうかバレませんようにと体を震わせた。
455名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 22:18:47.54 0
>>449-454 「水と風と猫の宴」
テキトーにテイクオフしたら着地に失敗したような話ですみませんm(__)m
水道代で給与17年分なのに窓まで壊した田中さんは今後20年くらいタダ働きかと…w
456名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 22:33:39.82 0
乙です!!
れなえり+りほりほのかけあい素敵でした

えりりんドSだなぁwww
457名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 23:37:39.25 0
道重さんどんだけ怖いんすか?w
前回に引き続き素敵な空気感のお話ですね
458名無し募集中。。。:2012/09/02(日) 23:56:17.96 0
弁償にとりほりほが狙われるからじゃないか?w
459名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 01:37:28.52 0
从*☆ 。.☆)<お代は体で払ってもらうの!
460名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 04:19:40.68 O
ノリ;´ー´リ
461名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 06:43:02.88 0
おは
462名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 10:38:26.27 0
463名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 12:09:20.40 0
さん
464名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 14:37:58.79 O
にっ
465名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 14:45:31.94 0
リゾナンター 残り1人
466名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 16:09:26.91 O
それでも最後の1人がいる限り…
467名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 18:10:53.44 O
諦めない
468名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 19:40:44.45 0
その思いごと闇は飲み込む
469名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 21:24:50.10 0
うええ
470名無し募集中。 。 。:2012/09/03(月) 22:11:06.47 O
あえあ
471名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 23:25:49.14 0
『女子かしまし物語2012』

〈WOW WOW WOW 青春〉
1−1

「ハァ…」生田衣梨奈は机の上の携帯を見つめながら、また、ため息をついた。
生田は休み時間になると、新垣里沙からの返信メールを、いつもこうして待っている。
生田がこれほど新垣に魅かれるようになったのは何故か。
リゾナンター加入前、生田の憧れの存在はTVに出てくる流行りのアイドル達だった。
加入後も、特に先輩の誰に憧れているということはなく、皆同じように尊敬していた。
生田が新垣に対して明らかに特別な感情を抱くようになったのは、去年の今頃からだ。

その頃から生田は、新垣から感じる「安心感」に魅了されはじめた。
高橋がいなくなってから、新垣の指導は急に厳しくなった。
何度も何度も叱られ、何度も何度も泣かされた。
だが、新垣からのアドバイスは、全てが分かりやすく、納得できるものだった。
また、ほんの少しでも成長すると、新垣は母のような笑顔を見せ、頭を撫でてくれた。
戦場での新垣からも、絶対的な「安心感」を感じた。
高度な技術、無尽蔵のスタミナ、冷静な判断、的確な指示、仲間や周囲への配慮…。
皆が安心して戦うことができるのは新垣がいるからだ。生田はそう感じていた。
いつも自分に対して不安を感じている生田にとって、その「安心感」は眩しかった。

生田はいま、一日も早く新垣のようになりたいと、心の底から思っている。
だが、自分がその目標に向かって前進しているという実感が、生田には全く無い。
そもそも自分は、リゾナンターに入ってから、何か成長できたのか。
確かに、精神破壊波を制御できるようにはなった。しかし、そんなのは些末なことだ。
もっと本質的なところで、自分は何も変わっていないのではないか。
こんな成長の無い自分が、あの人の域に達する日なんて、本当に来るのか。
そんな不安に苛まれる度、生田は無意識のうちに新垣の「安心感」にすがろうとする。

新垣里沙という人間の凄さに気付き、憧れ、そして、目標と決めたこと。
それこそが生田の「本質的な」成長の証しだということに、本人はまだ気付いていない。
472名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 23:26:16.50 0
1−2

佐藤優樹は、隣りでスポーツ飲料水をがぶ飲みする工藤をボーっと見ていた。
佐藤は工藤が好きだ。本当に大好きだ。でもその理由が、自分でもよく分からない。

リゾナンターの同期だから?
違う。もちろん同期はみんな好きだ。飯窪も石田も、かけがえのない存在だ。
でも、工藤に対して抱く感情は、もっと特別なものだ。

叱ってくれるから?
それも違う。佐藤はリゾナンターのメンバー全員から叱られている。
メンバーといる時、佐藤は感情のままに笑い、泣き、甘え、叫び、だだをこねる。
佐藤が自分の感情を抑えないのは、みんなを本当の家族だと思っているから。
みんなは自分を叱るけど、見捨てることは絶対にない。
だから、安心して、心を開け放つことができる。

(じゃあ、どうしてどぅーはとくべつなんだろ〜?)
佐藤は、自分がいつも工藤に抱いている思いを、一つ一つ確認してみた。
工藤のそばにいたい。工藤に自分の話を聞いてほしい。
工藤に自分の思いを共感して欲しい。工藤を自分のものにしたい。
できることなら、工藤を自分の体の一部にしてしまいたい…。

「まーちゃん!冷蔵庫あけっぱなしにするなって言われてるじゃん!」
(あっ、どぅーがこっちむいた!)
佐藤の心が躍る。
(おとなになればわかるのかな?)
佐藤はもうそれ以上考えるのをやめた。
そして、工藤に駆け寄り、いつものようにその背中にくっついた。
決して離れないように、ぴったりと……。
473名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 23:26:54.90 0
1−3

工藤遥は、黒ずくめの男たちを倒していく田中れいなの勇姿を思い出していた。
れいなの動きは美しい。その四肢は、きまった型にはまらず、自由奔放な動線を描く。

争いに満ちた人類の歴史は、幾多の戦闘術を生み落してきた。
それらは、無数の先人達が生命を賭して創造し、継承してきた技術の結晶だ。
そして、一つ一つが時と血によって磨かれた、揺ぎない理論によって構築されている。
では、れいなの戦闘術はどうか。
彼女に自らの戦闘術が如何なる理論に基づいているのか尋ねたら、こう答えるだろう。
「リロン?何それ。国の名前?ドイツ?」

高橋愛を知る前のれいなは、私闘で明け暮れていた。
自信家でわがままで口が悪く、筋の通らないことは認めず、阿諛追従を嫌う。
まさに一匹狼にしかなりようのない性格だった。
争いの種を毎日まき散らし、その収穫に追われる日々。
類まれなる天賦の才は、そのような自学自習のスパルタ教育によって磨かれ続けた。
仮に彼女の戦闘術に理論があるとすれば、それはこの一言で説明できるだろう。
「強気」
自分は強い。もし負けたら、それは相手が自分より強いからではない。
自分がミスなく戦えていれば、負けるはずがない。
ミスを無くすためには、身体が意思の従順な僕になるまで鍛え上げなければならない。
れいなは真面目だ。勝つ為ならば、どんな努力も惜しまなかった。
自分の思い通りに戦うことができれば、誰にも負けるわけがないのだ。
なぜなら、自分は、田中れいなだから。

生死のかかった一瞬一瞬を自信満々に躍動し、戦場という「舞台」で誰よりも強い輝き
を放つれいなは、工藤の理想そのものだった。
自分も、いつかあんな風になれるかな…、 いや、なる!絶対に!
憧れが目標に変わる年頃、すなわち青春と呼ばれる季節に、少女はさしかかっていた。
474名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 23:27:41.49 0
〈いろいろあるさ〉

2−1

ある夏の昼下がり、譜久村聖は工藤の写真をじっとりと見つめていた。
二時間前、一緒に訓練をしていたときの工藤の姿が、脳裏に蘇ってくる。
工藤は幼い体を懸命に動かし、れいなの動きを少しぎこちなくトレースしていた。
その額が、首筋が、二の腕が、太ももが、子供特有の甘い匂いのする汗で光っている。
真剣な眼差し、端正な顔立ち、細く小さな体、漏れ出る低い声。
すべてが中性的な魅力に満ちていて、もはやそれは、芸術作品としか思えなかった。
抱きしめたい…、抱きしめたい…、この体でその全てを包み込みたい…。
譜久村は、全然悲しくないのに、自分の瞳が涙で潤んでいるのに気づく。
(どうして涙が出てくるんだろう。聖、やっぱり変なのかな…)
譜久村は、突然、自分の心を分析してみたい衝動に駆られた。
工藤を見ていたあの時に渦巻いていた思念を、胸に手を当ててリロードしてみる。
激しく、無心に動き続ける工藤の姿態を、このまま永遠に見ていたいという幸福感。
一方で、このまま続けてはその華奢な体が壊れてしまうのではないかという不安。
この場ですぐ押し倒して、嫌がる工藤を思いのままに汚してみたいという欲望。
それとは逆に、工藤には永遠に純潔無垢なままでいて欲しいという祈りにも似た思い。
矛盾しているのに完璧に嵌まり合い、延々と回転を続ける二対の思念の螺旋運動。
読み取ったそれらの思念に体が支配され、心臓の鼓動が激しくなっていく。
上気した頬に水滴が二筋走り落ちるのを感じながら、譜久村は写真を唇に運んだ。

「ふう…」事が済んだ譜久村は、ケースのフタをあけ、そこに工藤の写真を戻した。
そして、新たに一枚、無作為に取り出し、そこに写っている人物が誰か確認した。
「ほう、お次はこうきましたか…」
そこには、最近可愛さと美しさに一段と磨きのかかったリーダーが微笑んでいた。
譜久村の眼差しが、再び妖しい湿り気を帯び始めた。
475名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 23:28:25.78 0
2−2

鈴木香音は燃えていた。
「お笑い」なら、誰にも負けない。
リゾナンター加入当時から、それだけは自信があった。
鈴木が笑いを取りにいけば、みんなが爆笑し、褒めてくれた。
ところがある人物の登場で、その自信が脆くも崩れ去った。
その人物とは、飯窪春菜。
突然現れた四つ年上のその後輩は、恐るべき笑いのセンスを持っていた。
佐藤のような天然ならば良い。それは笑わせているのではなく笑われているのだから。
飯窪は違う。彼女は計算し、狙いを定め、確実に「笑い」という獲物をハントする。
リゾナンターの「お笑い担当」という栄光の玉座が、彼女に奪われてしまった。
鈴木はショックだった。自分の存在を全否定されたように思えた。
みんなといる時も、鈴木は真剣な顔で考え込むことが増えていった。
そんな鈴木を立ち直らせたのは、近所に住む、ある男の一言だった。
鈴木は、喫茶リゾナントの近くにある公園で、ペリーの物まねの練習をしていた。
すると、ベンチに座っていたチャラい男が、笑いながら近づいてきて、こう言った。
「それ、嫌いじゃない」
知らない人に褒められた!鈴木はとても嬉しかった。鈴木の闘志が、蘇った。

「田中さん、私、公園で練習してきます!」
「もう夜やけん、気い付けぇよ!………ねえ、さゆ。このごろ鈴木気合入っとらん?」
「確かに。最近の鈴木って、闘志に満ちてる感じがするし、なんか迫力を感じるよね」
一時期やたら真剣な顔して何か悩んでたけど、『戦士』として目覚めてきたのかな?」
「さゆもそう思う?!れいなもそう思っとったと!鈴木はきっと強くなりよるよ!」
「後輩をこんなにちゃんと分かってるさゆみ達って、とってもいい先輩なのかもね!」
二人はニヤニヤしながら、「「イエーイ!」」と叫んでハイタッチした。

その頃、ひと気の無い夜の公園では、努力家鈴木の練習が始まっていた。
「飯窪春菜です!石田あ・ゆ・みです。さとうまさきでぇす。ぐどうはるがですっ!」
476名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 23:29:00.47 0
2−3

(どうしよう…、あゆみちゃんがかなわない相手に、私が勝てるわけない)
自分の体が震えているのを、飯窪春菜は感じた。
そして、以前、道重さゆみもこのように震えていたことを、ふと思い出した。

それは、リゾナンター全員で敵と交戦していたときのことだ。
戦いは、敵味方入り乱れての総力戦となっており、文字通り「乱戦」状態だった。
さゆみと飯窪は安全のため、近くの岩陰に隠れていた。
二人で戦場を見ていると、突然さゆみが「あっ!」と声を上げ、岩陰から跳び出した。
さゆみの走っていく方向を見ると、生田が血を流して倒れている。
「やなのやなの!さゆみやなの!」「まって!まって!」「ハッ!?ハッ!?ハッ!?」
さゆみは、敵に攻撃される度に絶叫しながらも、生田のもとへ前進していった。
そして、ほんの数秒で生田を治療して、再び叫びながら一目散に岩陰に戻ってきた。
飯窪はそれまで、堅固な陣形によって守られているさゆみしか見たことがなかった。
新垣やれいなに守られっぱなしの彼女は、とても弱々しく見えた。
事実、さゆみは、先輩たちの誰よりも弱い。攻撃力はゼロだ。
そのさゆみが、一瞬の躊躇もなく、あの乱戦状態の中へ跳び込んでいった。
攻撃手段を一切持たない人間が戦場に飛び出す。それがいかに恐ろしいことか。
現にさゆみの体は、さっきから微かに震えており、目には涙がたまっている。
飯窪は思い知らされた。
さゆみは戦っている。臆病で、弱気で、泣き虫な自分と、いつも懸命に戦っている。
自分の弱さと戦いながら、恐怖と緊張の中、仲間の為にさゆみは前へ跳び出し続ける。
飯窪の脳裏に、ある物の映像が浮かびあがった。
それは、数日前、さゆみがうっかり床に落とした一冊のノート。
拾おうとした飯窪がたまたま目にしたページには、丸っこい文字でこう書いてあった。
「前へ、前へ」

(道重さん!私、あなたのようになりたいです!)
飯窪は全力で前へ走り出した。「オラオラオラオラオラオラーーーーーー!」
477名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 23:29:56.38 0
〈2、3人集ったら〉

3−1

道重さゆみは、鞘師里保、石田亜佑美と都内のとあるカフェに来ていた。

さゆみは、愛しい鞘師の横顔を盗み見ながら、ある「記憶」を蘇らせる。
それは、欲望の塊となって鞘師を抱いた、あの夜の「記憶」…。
そもそもさゆみは、ピンクの悪魔になったときのことを覚えていない。
だが、あの夜の「記憶」だけは、繰り返し見る淫夢によって、少しずつ復原された。
もちろん、それはただの妄想かもしれない。
さゆみの願望が生み出した蜃気楼にすぎないのかもれない。
しかし、さゆみは、その「記憶」が、妄想でも蜃気楼でも構わなかった。
その「記憶」の中には、縛られたまま身をよじり悶える鞘師が、確かにいる。
さゆみは、鞘師を見ながら、あの夜の「記憶」を、五感全てで味わい始める。

触覚。まだ誰も触れていない薄絹のような肌に、自分の指先の皮脂が染み込んでいく。
上下に撫でさするたびに、うぶ毛以外に摩擦のないなめらかな表面が桃色に火照る。
嗅覚。湿り気を帯びた胸元から漂う鞘師そのものの匂いが、本能に強く爪を立てる。
鼻先にかかってくる熱く淫らな吐息に、微かに残る自制心の欠片も砕き潰されていく。
視覚。服を首まで捲りあげられ、羞恥のあまり微かな蠕動を続ける、あどけない体。
ただそこには確かに凹凸が生まれつつあり、この年頃特有の危険な色気に満ちている。
聴覚。こらえきれず鼻から洩れ出る声が、鞘師の混乱している心を教えてくれる。
それは、泣いているようであり、責めているようであり、誘っているようでさえある。
味覚。首筋の汗、頬を伝う涙、拒む唇へ無理に舌先を押し込んで舐め取った唾液。
その全てに、芳醇さと、甘美さと、熟す直前の果実が持つ淡い酸味が感じられる。

「道重さん、アイスクリーム、溶けちゃいますよ」
石田の声で、さゆみは突然現実に引き戻された。
「あっ、そうだね…。なんか、おなか一杯になっちゃった。あゆみん、これ食べる?」
「えっ、いいんですか!?」
さゆみは頷くと、急いで「記憶」の世界に戻ろうと、再び鞘師の横顔を盗み見た。
478名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 23:30:38.78 0
3−2

「じゃあ、これ、私、食べちゃいますよ。鞘師さん、半分コしませんか?」
石田亜佑美のその言葉が、鞘師里保の心をかき乱す。
(『食べちゃいますよ……、鞘師さん……』)
「私は大丈夫。あゆみん、全部食べなよ」
(そう…、食べなよ…、この私を…、全部……)
……自分は一体何てことを考えているんだ!?
自らの心の声に激しい嫌悪感を抱きながら、鞘師は見たくもない天井を見た。
上を見たのは、そうしないと、自分の目がある場所に集中してしまうからだ。
そう、あのプルンとした石田の唇に…。

鞘師が石田の唇の魅力に気付いたのは、半年ほど前だ。
写真を撮ろうと石田の顔をじっと見ているうちに、鞘師はその美しい唇に魅了された。
彼女の肉感的な唇は、この世で最も美味なるものに思えた。
心地よさそうな弾力、瑞々しい艶、健康的な色。全てが完璧で理想的だった。
鞘師は、「見とれる」という言葉の意味を、そのとき初めて理解した。

スプーンが石田の唇に運ばれる。上下の唇が、鈍く光る金属の棒を優しく包み込む。
その棒が引き出されると、上下の唇それぞれを横切って、細い線が一本ずつ生まれた。
それらの線は、唇の柔らかさを如実に物語りながら深さを変え、そして消滅した。
もし、あのスプーンが、自分のこの人差し指だったら…。
熱く淫らな欲情の奔流が、鞘師の体の中心部を駆けあがった。
(ハッ!)
鞘師は、また自分が石田の唇を見つめていることに気付いた。
慌てて目の前のグラスを掴み、のどにサイダーを勢いよく流し込む。
鞘師は、自分の心を汚している、いやらしい情念をきれいに洗い流したかった。
炭酸の刺激による痛みを感じながら、鞘師は思った。
(私、道重さんやフクちゃんみたいに、変態さんになっちゃったのかな…。
 …じいさま、瀬戸内の海は、今も青くきれいですか?里保は…里保は、もう…)
479名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 23:31:32.27 0
3−3

石田亜佑美は道重からもらったその高級なアイスクリームの味に愕然としていた。
(嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ!こんなに美味しい物が、この世に存在するわけがない!)
石田は、新たな味覚との出会いに心を震わせた。
思い起こせば、石田のこの一年間は、驚きの連続だった。

以前、「スターバックス」という喫茶店に同期みんなで行った時も、そうだった。
石田はそれまで、その高級な喫茶店に入ったことがなかった。
一方、工藤と佐藤は、まだ中学一年生のくせに生意気にも経験済みらしい。
プライドの高い石田は、二人に馬鹿にされたくなくて、初めてだということを隠した。
工藤が「フラペチーノ」というものを注文し、佐藤と飯窪もそれにした。
当然、石田もそれを選ぶしかない。他のものを注文すれば、ボロが出る可能性がある。
石田は、「フラペチーノ」とは、フラッペをフランス風に言い換えたものと解釈した。
だが、注文後、カウンターの上に乗せられたものは、石田の想像とは違っていた。
それはカキ氷ではなく、冷たいコーヒーの上にソフトクリームが乗ったものだった。
その飲み物の容器には、透明なドーム状のプラスチックの蓋がついていた。
蓋には小さな穴があいていて、長めのストローが突き刺してある。
(ハハ〜ン、これでアイスクリームをすくって食べればいいのね)
石田はさも慣れているような手つきで、ストローを抜いた。
めまいがした。(先が、スプーンみたいになってない…)
石田は、動揺を誰にも悟られないように笑顔を作りつつ、飯窪の方をさりげなく見た。
飯窪はストローを回した。コーヒーが白濁していく。それを飯窪はストローで吸った。
石田は慌てて、その行為をぎこちない手つきでまねて、コーヒーを吸い出してみた。
(嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ!)
それは、苦みと甘みとが絶妙に調和した、信じられないほど衝撃的な美味しさだった。

鞘師を盗み見ながら恍惚としているさゆみ。石田の唇にまた心を奪われている鞘師。
あまりにも美味しすぎるアイスクリームを凝視し、テンションMAXの石田。
三人の心が共鳴することは…なかった。
480名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 23:32:26.27 0
〈Ending:かしましかしまし〉

田中れいなは、喫茶リゾナントの二階の自室で新しい陣形をノートに書いていた。
その陣形は、5人ずつ2チームで構成されている。
左から順に、石田工藤さゆみ生田鞘師。もう一つは、田中鈴木譜久村飯窪佐藤。
それぞれ、さゆみと譜久村は後ろに下がり、石田と鞘師、田中と佐藤は前に出ている。
つまり、両方とも、さゆみと譜久村のところで折れ曲がるV字型になっていた。
左のVは本隊。司令塔であるさゆみの隣に千里眼の工藤を置き、情報を収集させる。
新人ツートップの鞘師・石田が攻撃を担当。生田は精神破壊波で彼女らを支援する。
右のVは遊撃隊。飯窪の薄黄色の接着剤と、鈴木の物質透過能力で敵を攪乱。
さゆみの能力が使える譜久村は、負傷した仲間の応急処置を担当する。
また、譜久村は高橋の能力も使えるため、本隊との連絡係も担う。
攻撃はれいなのワントップ。
佐藤の役目はメンバーの移送係なので、その配置についてはあくまで形式的なものだ。
「ふぅ、疲れた〜。やっぱ頭使うのは性に合わん。
愛ちゃんとガキさんがおったら、こんなことせんでいいのに。早く帰って来んかな〜」
さゆみがコーヒーカップを二つ持って部屋に入ってきた。れいながノートを見せる。
「どれどれ…、うん、これでいいんじゃない?」
「右が少し不安やけど、飯窪が特殊能力を使えるようになったし、まあ、大丈夫やろ」
「そうだね。フクちゃんもさゆみの能力をだいぶ使えるようになってきてるもんね」
下が騒がしくなってきた。時計を見ると、集合時間を3分過ぎていた。
「じゃあ、あの賑やかな後輩たちに、見せに行きますか」
「ああいうの、『かしましい』って言うっちゃろ?れいな、うるさいのは好かん!」
そう言いつつ、二人の顔には笑みがこぼれ、階段を降りる音はとても軽やかだった。

―おしまい―

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
以上、『女子かしまし物語2012』でした。
今回はオムニバス形式にしてみました。皆さんのお気に召す話があれば嬉しいです。
なお、最後の「陣形」は「What’s Up?…」の動画が元になってます。
481名無し募集中。。。:2012/09/03(月) 23:36:43.79 0
>>471-480
『女子かしまし物語2012』

以上したらばからの転載でした

>保管庫管理人様

1レス目の冒頭は行数の関連で間隔を詰めちゃってます
収録の際には御手数ですが修正していただけませんか


〈WOW WOW WOW 青春〉
1−1              (誤



〈WOW WOW WOW 青春〉

1−1              (正

482名無し募集中。。。:2012/09/04(火) 00:06:24.04 0
>>481
乙です
「リゾナンター大好き」を彷彿させる艶めかしい描写がたまりませんw
いろんな傾向の話がてんこ盛りの作品ごっつあんでした
483名無し募集中。。。:2012/09/04(火) 00:35:02.08 0
乙です
濃いネタもりだくさんでした
もったいないので明日もういちど読んでみます
484名無し募集中。。。:2012/09/04(火) 01:47:21.90 0
読めば読むほど贅沢な話ですなあ
熱い飯窪さんも好きだけどだーいしの唇を見つめる鞘師の話はもっと発展させて別のスレでw
485名無し募集中。。。:2012/09/04(火) 06:22:40.04 0
おはよう
後で読むぜ!
486名無し募集中。。。:2012/09/04(火) 07:30:19.81 0
>>481
描写はもちろん構成がうまいなあ
十人十色な「物語」を堪能させてもらいました
フクちゃん…w
487名無し募集中。。。:2012/09/04(火) 09:51:06.79 0
2人の変態に気付かない鈍感なだーいし
逃げてー!
488名無し募集中。。。:2012/09/04(火) 12:31:51.72 0
ワオ!
489名無し募集中。。。:2012/09/04(火) 12:40:41.46 0
>>354-358 の続き。

黎明学園中等部の校舎および敷地内の関連施設すべてにおいて
原因不明の水漏れが発生していた。全ての水道から。
けれど、実害は、見えざる部分で出ていた。

 カチカチカチカチ。

携帯の画面を見続ける。

 カチカチカチカチ。

文字を打つ手はまるで楽器でも弾いてるかのようにリズミカルに叩く。
彼女は微笑みを浮かべて打ち続ける。
周りでは悲鳴や、水の流れる音や、そういうものは一切無い。
彼女が居る場所は学校の校門前。
高等部からの生徒が何人か通っている、中等部の異変は一切無い。

 一切無い。

異変に気付く者は誰一人として存在しない。
平穏な平和を謳歌する生徒達は笑って帰って行く。

  なにしろこの国は、どうしようもなく平和なのだから。

まるで義務のように幸福を抱いたまま。



490名無し募集中。。。:2012/09/04(火) 12:41:22.97 0
 "共鳴者"だけが持つ『位相空間』を形成する技術。

どうなった所で、誰もこれを打ち破る事は出来ない。
彼女は着信通りに事を進めていた。

 カチカチカチ、ピ。

そしてまた着信通りの行動を開始する。彼女はただ行動するだけなのだ。
それが行動原理であり、"あの人"に対する愛情表現である。
生田は微笑んで校門の中にあるグラウンドを踏みしめた。

 「i914の反応を知ったら凄く嬉しそうにしとおっちゃね。
 嫉妬してしまいそうやけど、でもあれを渡したらもっと喜んでくれるかな」

まるで恋する乙女のように身体を軽くさせて"ある物"を手に校舎へ入る。
ばしゃん、と水が跳ねる音。
目には見えない、だが生田には視えている。
"透明な水"は、彼女の膝下にまで溜まってきていた。


 「これ、そろそろ泳げるんじゃない?かのんちゃん平泳ぎできるんでしょ?」
 「この浅さだとまだ泳げないよ。というかそっちより浮き輪がほしい」
 「確かにそうだね。転ばないようにしないと」

"透明な水"は水圧の抵抗は感じるものの、服が濡れたりだとか体温を
奪うといった本来あるべき働きを持っていない。
つまりこれは、直接神経や精神に作用するなんらかのチカラ、という事になる。
491名無し募集中。。。:2012/09/04(火) 12:42:05.75 0
だが具体的にこれがどういうものなのかは、あまりにも情報が不足していた。
鈴木が目撃している【ダークネス】とはまた別のもの、という事だけ。
唯一知っていると思われる鞘師は居ない。
"音"は聞こえている。
ただ静かに聞こえるのは、何故?

 「ハアハア、西棟が二階からしか行けないのがこんなに辛いなんて…」
 「明日筋肉痛だねきっと」
 「それだけなら良いんだけどねー」

二人はざぶざぶと見えない水の中をウォーキングする。
感覚的にはほとんど抵抗を感じないが、逆に、あるようでないという感覚は
走りにくくて仕方が無い。
通常の三倍は遅い気がして、さらに腰のあたりまで見えない水位が上がっている。

階段を上っていると、ふと、鈴木は何かを感じ始めていた。
鞘師の"音"とは別の何か、誰?誰か居るのか?
鞘師と一緒に。

 「――― どうして学校に【闇】が蔓延してるか、知ってますか?」

向こうから、静かに声が上がった。
鈴木と譜久村は瞬間的に身構えたものの、譜久村がその人物を呼んだ。
ハーブティの香りに嗅ぎ覚えがある。
492名無し募集中。。。:2012/09/04(火) 12:42:43.39 0
 「亜佑美、ちゃん?」
 「知ってるの?みずきちゃん」
 「何度か朝の挨拶で会ってるけど、覚えてないですか?鈴木さん」
 「中等部の生徒会をやってるんだよ」
 「あ…」

鈴木は思い出したように声を漏らす。
風紀委員が学園の生徒を監督する立場なら、生徒会は、生徒が
生徒のために立ち上げた、正しい黎明学園の生徒としての生活を送ってもらおうと
自身が模範となって生徒を導く立場にある。

あの不定期に行われる「あいさつ合戦」でもその二つの組織がまとめているが
思えば何度か挨拶を交わした記憶があった。
だがそんな人が、よりによってこんな事態にどうしてこんな場所に?

 「人の想いは強ければ強いほどカタチを作るもの。それがきっと
 ダメなことを判っていたとしても、想わずにはいられない。それが、【闇】を
 呼ぶんです、【闇】は人の悪意に"狂鳴"するモノだから」
 「亜佑美ちゃん、もしかして、知ってるの?何が起こってるのか…?」
 「だけど、それだけです。私にはそのためのチカラは与えられてないから」
 「どういうこと?」
 「早く行ってあげてください。手遅れになる前に、鞘師さんが危ないですよ」
 「あ、待って。亜佑美ちゃん!」

そう言って、石田はまた廊下の死角へと消えて行く。
譜久村が追おうとしたが、"透明な水"で階段を上手く上れず、結局見失ってしまう。
ハーブティの匂いは徐々に薄くなり、消えていった。
493名無し募集中。。。:2012/09/04(火) 12:44:14.04 0
>>489-492
以上です。
当初は登場させる予定はなかったんですが、だいぶ
某舞台の影響を受けた結果がこれです。

---------------------------------------ここまで。

したらばからの転載だよん
494名無し募集中。。。:2012/09/04(火) 15:00:37.46 O
ほっ
495名無し募集中。。。:2012/09/04(火) 15:46:22.28 0
川c ’∀’)<ハーブティーの香りだ!
496名無し募集中。。。:2012/09/04(火) 17:41:05.59 0
>>493
乙です
ナマタが慕う「あの人」とか「あれ」とか伏せられている事実が明らかになる時が待ち遠しい
497名無し募集中。。。:2012/09/04(火) 19:19:28.53 0
>>493
ミステリアスなだーいしの唇が素敵

川c ’∀’)<唇関係ない…
498名無し募集中。。。:2012/09/04(火) 20:46:53.47 0
何人くらい作者がいるのか知ってる人はいる?
499名無し募集中。。。:2012/09/04(火) 22:02:17.37 0
とりあえず連載中の作品を数えるのが手っ取り早いかな?
500名無し募集中。。。:2012/09/04(火) 22:26:44.83 0
>>497
ワロスw
501名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 00:03:09.10 0
夜の闇
502名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 01:31:50.33 0
>>498
>>403のファイルに明記されてる作者を数えたり空欄を自分で補完してみるとか
503名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 01:50:23.03 0
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/665.htmlつづき


それを人は罪だと呼んだ。
だから人は罰を受けろと言った。

罪と罰は常に表裏一体にあるのだとだれかが言っていた気がする、


寝転がって見る天井は真白く、何処かこちらを嘲笑っているようにも見えた。
れいなはため息を吐いて立ち上がる。
生きていることは、罪だろうか。
それとも、生きていることが、罰なのだろうか。

大勢の人間を殺してもなお、死ぬことも許されず生きることは罰だろうか。
贖罪という名の人生の先に、果たしてなにが見えるというのだろうか。
そしてその中で、闘わないで良い明日を見つけることなどできるのだろうか。

「なあ、絵里はどう思う?」

此処にはいない彼女に向かってれいなは呟いた。
リゾナンターとして生きる道を選んだあの日から、十字架を背負うことなど決めていたはずなのに、それでも時々迷う。
それこそが、自分がまだ、人間であることの証明のような気がしていた。
弱気な自分も嫌いじゃないと思えるようになったのはいつからだろうと、ぼんやり思った。
504名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 01:51:38.47 0
-------

「何処にいんだよぉ、その議員はよ!!」

男は苛立った様子で院内の柱を蹴った。その様子を見て患者や看護師らはびくっと肩を震わせる。
愛佳は痛む右足首を抑えながら現状を把握した。
此処にいる犯人は3人。全員銃やナイフを所持していて覆面をしている。
本人たちも見分けがつくようにか、覆面は色分けされているが、赤・緑・黒という至って単純なものだ。
愛佳は緑色の覆面に銃を突き付けられ、半ば強引に病院の1階にある待合室に放り込まれた。
既に待合室は患者たちで溢れ返っていて、何処か凄惨な死の匂いを感じた。

リーダー格と思われる男が銃を構え、用があるのは708号室の議員だけだと叫んだ。
大人しくしてれば命は助けると叫び、監視役にひとりを残し、全員が7階へと向かった。
愛佳は人目につかないようにそっと動き、同じく人質となった絵里と合流し、いまに至る。

「落ち着け。既に警察とは交渉済みだ」

もうひとりの男、紫の覆面をしたリーダー格が戻ってきた。
高貴な紫色を纏った男の風格に思わず息を呑みながらも、これで全部で4人かと愛佳は判断する。
現状をまとめると、犯人たちの目的は民政党議員の命だが、肝心の議員は此処にいないと判明した。苛立つのもムリはない。
あの男は恐らく頭が切れる。それも想定内で動いているのだろう。警察と交渉済みとは、議員を引き渡せということだ。
問題はそれに警察が応じるわけがないということだが。

「もし向こうがアイツ渡さなかったらどうすんだよ」
「そん時はこいつらぶっ殺すぞ!」
505名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 01:53:59.48 0
赤い覆面の男が拳銃をこちらに向けてきた。
患者たちは口々に叫び、震えるように体を抑えた。

「やめろ」

紫色の男が銃を下ろさせる。
どうも赤い男は癇癪持ちの短気で辛抱が利かないようだ。キレたらなにをするか分からない。
彼らは警察に議員の裏金2億円を要求しているようだが、それが通るわけもない。
ふたつの要求が通らなかったとき、真っ先に犠牲になるのは此処にいる患者たちだ。

「っつ―――!」
「愛佳ちゃん、だいじょうぶ?」
「……平気、です」

そう言ったものの、右脚の痛みは酷くなっていく。
本来なら数時間前に鎮痛剤を打つべきだったのに、この一件でその機会を逃してしまった。

「おいそこ!なにコソコソ話してんだ!」

愛佳が痛みに耐えていると、赤い男がこちらに近づいてきた。
一気にふたりの周りから人が離れる。
絵里は愛佳を気遣いながら、男を睨み返した。

「んだぁ、その目は?」
「……鎮痛剤を打たせてください」
「あ?」
「愛佳ちゃんだけじゃない。患者さんはみんな苦しんでる。早く解放してよ!」
「だれに向かって口聞いてんだお前?」
506名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 01:55:23.05 0
痛みを堪えながら、愛佳は絵里の肩に手を置いて「ダメですって」と声を絞った。
確かに痛みを抱えるのは愛佳だけではない。絵里もまた、心臓の爆弾のスイッチがいつ入ってもおかしくない。
だが、此処で反抗しては撃たれる可能性もある。この男はあまりにも危険すぎる。

「やめろと言ってるんだ」

拳銃を構えようとした男の手を、再び紫色が制す。

「どちらにせよ、決着はつく」

男がそう言ったとき、受付の電話が鳴った。一斉に視線がそちらに向く。
緑の覆面の男が足早に向かい、未だに鳴り響く電話を見る。男が頷いたのを確認し、受話器を取った。

「約束の時間だ」

愛佳と絵里は同時に耳に神経を集中させる。
なんとか電波を拾って相手の声を聞けないかなんどか試しているのだがうまくいかない。
今回も結局は、なにも聞き取れなかった。

「言い訳はどうでも良いんだよ」

早速雲行きが怪しくなってくる。
議員と2億円という大金、どちらも手に入らないことは此処にいるだれもが分かっている。
そんな無謀な賭けに出たのはなぜだ?人質を全員殺したところでそれは手に入らない。
だとすると……
507名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 01:56:27.39 0
「最初から別のだれかを殺すつもりやった……?」

愛佳の呟きに絵里はハッとする。
議員は囮で、狙いは別のだれかだというのか?

「交渉決裂だな。ひとり殺すぞ」

相手が電話口で叫ぶが男は躊躇せずに電話を切った。人質たちが死神を見るような目で怯え始める。
絵里はなんとか状況を打破したいが、暗黙の了解があるために、“風”は使えない。

「院長先生、あなたに犠牲になってもらいます」

男の声で一斉に視線は病院長へと向く。
まさか自分が指名されると思っていなかったのか、白衣の院長は目を見開き、腰を抜かした。

「雨の降る夜でしたね、あの日は」

男は急に遠くを見るような目で話を始めた。

「私の娘が死んだ夜も、あいつの弟が死んだ夜も、みんな不思議なことに雨でした」

話が見えない。いったいなんのことだと思うが、男たちはすでに院長を取り囲んでいた。
四方向から銃を突きつけられ「ひぃっ!」と声を上げる。だれもが惨劇を見ないように肩を震わせ、目を閉じ、耳を塞ぐ。

「1ヶ月前、通り魔に襲われた娘の手術、失敗しましたね?」
「俺の弟のときは、あの議員の手術優先させて見殺しにしたな」
「ち、違う!あの時は仕方なかった!人手不足で、傷の重篤を考慮すれば仕方のない判断だった!」

漸く大筋が見えた。どうやら犯人たちは院長に娘や弟を「殺された」遺族だ。
それが果たして手術ミスか逆恨みかは判別できないが、彼らにとっては十分な殺害動機になり得る。
508名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 01:57:26.26 0
「とりあえず、さよならです」
「ま、待て!待ってくれ!」

引き鉄に手がかかり、だれもが目を覆う。
絵里は右手の中に風を呼び込む。いち早く気付いた愛佳は瞬間、その手を押さえた。

「なんでっ―――!」
「いま発動させたらあなたの体が―――!」
「でも、あの人―――」

ぱん・ぱん・ぱん・ぱんと、4つの音が綺麗に並んで消えた。
院長の体はぐらりと揺れ、そのまま後方に倒れた。ぐしゃりという音のあと、血の海が流れ出す。

「きゃああああ!!」
「うわあああ!!」

院内が騒然とした。だれもが出入り口に殺到し、封鎖された扉をこじ開けようとする。
しかし、セキュリティ対策の講じられた扉が開くはずもなく、ただ空しく悲鳴が木霊する。

「黙れ貴様らッ!!」

男が天井に発砲した。
鋭い音のあと、人々は静まり返る。だが、それでも完全にパニックが収まったわけではない。
子どもたちは涙を堪えきれずにしゃくり上げる。老人たちは心臓を押さえながら神に祈る。若者は状況を打破しようと考えるが術がない。
509名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 01:58:22.43 0
「ふぇぇっ……お母さぁん……」

徐々に静まり返る中、ひとりの少女の泣き声が響いた。
肩を震わせ、その瞳から流す大粒の涙を拭うが、それでも涙が止まることはない。
赤い男はまた苛立ちを隠せないように脚を動かすが、ほかの3人は気にせずにすでに肉塊となった院長をどこかへ運ぶ。
そしてリーダー格は電話を取り、警察へと掛けた。

「院長は死んだよ。次はだれかな?」

瞬間、どさっという鈍い音がしたあと、外から悲鳴が聞こえた。
窓から投げ捨てたのかと絵里は絶望を感じる。愛佳も悲痛の色を隠せずに天井を仰いだ。

「15分後までに議員と2億用意しろ。まただれか死ぬぞ」

電話はそれきり切られた。
この連中は人殺しなんて厭わない。次のタイムリミットまであと15分しかない。

「ダークネスより、こういう人間の方が厄介だよ……」

絵里は頭をかきながら必死にどうするか考えた。
可能性があるとすれば、攻撃能力の高い仲間だけが頼りだと絵里は締め切られた扉の向こう、見えない青空を臨んだ。
510名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 02:02:34.71 0
>>503-509 ひとまず此処までです
紫色はシショクとお読みいただけるとちょっとカッコいいですw
あとがきに書こうと思ったのですが
作者が魔王好きなため作中詩も被る場合がありますのでご了承下さいm(__)m
511名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 06:23:35.14 0
ガンガンきてるなあ
512名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 07:17:51.29 0
絵里と愛佳の苦悩だな…
どんな結末が待ってるんだろ
513名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 10:41:54.74 0
>>510
ノノ*^ー^) < 試食?
川=´┴`) < そのシショクやないです・・・

ハラハラする展開に引き込まれます
514名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 10:47:34.45 0
これまで襲ってきたのとは別口なのか?
それによって対応も変わってくるんだろうが
515名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 11:56:15.89 O
犯人は一般人なのかな…
物事が複雑に絡み合ってるな
516名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 14:18:52.00 O
ノノ;^ー^)<プール入りたいですよ
517名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 17:18:56.50 0
ほぜなん
518名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 17:28:30.23 0
>>513
一瞬違うスレ開いたかと思ったw
519名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 18:34:41.34 O
>>518
どこと勘違いしたんだい?w
520名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 19:36:57.28 0
>>519
記憶りんと先生
これで察してくれw
521名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 21:03:17.22 0
>>513だけど分かんないですw
522名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 21:18:45.85 O
519だが分からん…w
523名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 21:30:35.62 0
>>517デスガワカリマセン ハイハイ
524名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 22:00:14.83 0
お前ら・・・w


俺もわからんw
525名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 23:05:32.63 0
>>520の正解待ちになってるじゃんかw
526518:2012/09/05(水) 23:12:31.34 0
エロスレなんでこれ以上は御勘弁を
527名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 23:35:09.14 O
探してくるw
528名無し募集中。。。:2012/09/05(水) 23:41:27.63 0
もしやエ□ッキスレ?w
あれもまだあるのかな
529名無し募集中。。。:2012/09/06(木) 01:15:09.67 0
光のさす方へ〜
530名無し募集中。。。:2012/09/06(木) 06:33:55.58 0
531名無し募集中。。。:2012/09/06(木) 08:40:16.18 0
ふとログ遡って見たら9月6日は4年前に第15話スレが立った日だった
遠いとこまで来たもんだ
532名無し募集中。。。:2012/09/06(木) 11:23:13.74 O
4年て流れもスゴいな
533名無し募集中。。。:2012/09/06(木) 11:38:58.61 0
>>528
最近は後輩も顔を出して凄いことになってるw
エロは解禁してないけどw
534名無し募集中。。。:2012/09/06(木) 13:26:00.39 0
4年遡っても15話なんだね
535名無し募集中。。。:2012/09/06(木) 16:04:21.97 O
雨のほぜなんと
536名無し募集中。。。:2012/09/06(木) 18:13:21.15 O
雷ほぜなんと
537名無し募集中。。。:2012/09/06(木) 20:09:29.48 O
よるなんと
538名無し募集中。。。:2012/09/06(木) 21:44:27.61 0
>>489-492の続き。

 「――― 譜久村さん、鈴木さん、お二人には"共鳴"のチカラを
 使えるようになってもらわないと困るんです。きっとあの子もそれを望んでる。
 そうじゃないとこの世界は消えるしかないんですよ。
 主軸が歪み始め、バランスを失いつつあるこのセカイ。
 そのチャンスを前にして、何もせずに消される気ですか?」

ゆらり、ゆらり。
水面が揺れて、斜陽に透き通って、光を揺らす。

水の中で、ヒトは呼吸をすることは出来ないが、これは本物の"水"ではない。
全身を絡めて動かすことを許さない、閉じ込めるための空間。
視えない"透明な水"の中。
魚も泳いでいない水の世界。

まるで、プールの底。
鞘師はゆっくりと目を開ける。身体がダルさを訴える、動かない。
口から気泡が生まれる、だが息が出来る。本物ではない。
何故このまま生かされているのかは分からなかった。

 「皆、止まっちゃった。でもキレイだわ。全部沈めてあげたの。
 時間だって止めてあげられるわ、ほら見て。ずっと綺麗なままなのよ。
 必要としなくてもこんなに綺麗なものが出来るの、凄いでしょっ」

見覚えの無い女子生徒が視界に入る。
覚えている限りでは、背後から何かに包みこまれたのが最後だ。
多分、この"透明な水"に囚われたのだろう。
539名無し募集中。。。:2012/09/06(木) 21:45:04.45 0
「ねえ、なんで貴方は此処に居るの?自分が決めたの?
 私はね、親が無理やり入れたの、この学校に。それも勝手によ。
 "バケモノ"を傍に置いておきたくないって顔に書いてあった。
 学校なんかどこでも良かったけど、ここは最悪だわ。
 全てが醜いの、あいつらも、全部、全部全部全部全部全部!!」

ぐわっと、水圧が呼応するように重くなる。鞘師の表情が歪んだ。
気泡が幾つも上がっていく。まずい。

 「貴方は水みたいね。透き通った水面の雫のよう。
 羨ましい、私もそんな世界が欲しい。自分が自由にできる世界。
 ねえ鞘師さん、どうすれば行けると思う?貴方なら分かるでしょ?
 だって私と同じ感じがするもの。ねえ、ねえってば」

女子生徒は、答えが欲しい子供の様にぐずる。
鞘師は口を開くが、そこから溢れるのは気泡だけ。
両肩を掴まれて押し込まれると、重力に逆らわずにどんどん底へと落ちていく。
堕ちて行く。

光が遠くに見える。
光が遠くになっていく。遠のいて行く、意識の向こう側。

寂しさが、込み上げて来る。
途端、鞘師の視界に見えたのは、微かな光。暖かい光。

 「――― 」

その名前を呼んで、鞘師は微かに、口角を上げた。
540名無し募集中。。。:2012/09/06(木) 21:45:55.03 0
「――― ハア…ここ!間違い、ない…!」

息を整えない間に鈴木が指で示して叫ぶ。
教室の上に取り付けられたプレートには『美術室』と書いてあった。
西棟の端の端にあるこの教室は、移動授業か部活でしか使用される事が無い。
それも今日は部活が休みだ。

 「ダメ、鍵がかかってるっ」
 「今から職員室行ってもかなり時間かかるよ、どうしよう…」
 「こうなったら何かで割るしか…」

ドアがピクリとも動かない為、消火器でも良いから何かないかと探す。
その時、鈴木はゾワリと背筋を感じた。

 「二人とも、ちょっとそこ離れといた方が良いっちゃよ」

背後からパシャパシャと水が跳ねる音。
振り向くと、廊下にゴツゴツと何かをぶつけて生田が近寄ってきた。

 「えりぽんっ、もおどこに行ってたのよっ」
 「ちょっと用事があったっちゃん。でもなんか凄いことになっとおね。
 ここに犯人がおると?」
 「判んない、でも里保ちゃんがここに閉じ込められてるみたいで」
 「マジで?よぉーし、思いっきり振りあげるけんね、ホールインワンったい」

生田が構えたのは、ゴルフクラブだった。
ゴルフヘッドが鉄製で、鈍く光る。
大きな窓に狙いを定め、大きく振りかぶり。
541名無し募集中。。。:2012/09/06(木) 21:46:27.79 0

 ――― バアアアアアアアアアアアアアァン!!!

切り裂かれるように割れたガラスから身を守るように体を屈めたが、その
裂け目から"透明な水"がドバッと流れ出てくる。

 「ねえなんか、水かさ増してない!?」
 「んーこれはけっこーヤバイかも☆」
 「ヤバイかもってちょ…!」
 
割れてしまった部分は元には戻らない。
三人は"透明な水"の奔流に飲まれてしまい、ついには天井まで到達してしまう。
息はできる。
だがどんどん体が重くなっている事に気づき、譜久村は鈴木と生田を探す。
鈴木はすぐに見つかったが、生田が水の逆流で美術室に入り込んでしまった。

 どうしよう。どうしようどうしようどうしよう。

焦る。鈴木を離さないように抱きしめ、譜久村は焦りながらも考える。
彼女を助けなければ、この子も、助けたい。助けて、誰か。


 誰か、ねえねえ、誰か。

探るように手を動かす。揺れるスカート。揺らめく視界。
次の瞬間、あたりは、光の中だった。
542名無し募集中。。。:2012/09/06(木) 21:47:24.78 0
>>538-541
以上です。
今のメンバーはどんどん道重さんによって変t(ryの王国に
なっている時点でネタの宝庫ですね、>>471-480さんとか。
当時の「ピンクの悪魔」がこの状況を予期していたらなにそれ怖い。

------------------------------------ここまで。

以上代理投下終了
543名無し募集中。。。:2012/09/06(木) 22:32:05.07 0
>>542
乙です
本来ならフクちゃんの救いを求める声に感応してマスターが来るんだろうがこの話は先が読めん
続きを待つほ
544名無し募集中。。。:2012/09/07(金) 00:02:06.81 0
>>542
「水」が不思議な不気味さを出していますね
物悲しさのようなものが伝わります
545名無し募集中。。。:2012/09/07(金) 01:25:34.48 0
おやすみなさやし
546名無し募集中。。。:2012/09/07(金) 03:10:21.61 0
おやさゆみん
547名無し募集中。。。:2012/09/07(金) 06:41:47.60 0
おはようさちゃんぴーす
548名無し募集中。。。:2012/09/07(金) 08:39:48.24 0
おぱよんなのだ
549名無し募集中。。。:2012/09/07(金) 09:13:58.92 0
川c ’∀’)< お前の仇は必ず取る……!

http://live2.ch/jlab-maru/s/maru1346950877275.jpg

の図
550名無し募集中。。。:2012/09/07(金) 11:40:43.22 0
そういう風にしか見えなくなったw
551名無し募集中。。。:2012/09/07(金) 12:53:22.07 0
愛ちゃんがエビ剥くのおもしろかったな
552名無し募集中。。。:2012/09/07(金) 15:22:21.60 0
何ですっけそれ
553名無し募集中。。。:2012/09/07(金) 16:24:36.57 0
>>552
けっこう前のDマガじゃなかったかな
エビむきながら「かわいそうに〜」とか大騒ぎしてた
554名無し募集中。。。:2012/09/07(金) 17:56:11.88 0
愛ちゃんぽいw
555名無し募集中。。。:2012/09/07(金) 18:09:12.29 0
>>553
2チームに分かれてカレーを作る時だったような
モーニングカレーだっけ
556名無し募集中。。。:2012/09/07(金) 19:24:40.48 O
そんなのあったねー
557名無し募集中。。。:2012/09/07(金) 20:57:24.83 O
558名無し募集中。。。:2012/09/07(金) 22:48:11.17 O
559名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 00:00:05.80 0
π
560名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 00:42:55.96 0
パイパイ
561名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 02:58:14.17 0
おや?
562名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 06:46:19.14 0
すみ?
563名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 06:55:29.64 0
manko
564名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 10:05:04.25 0
大地に感謝
命に感謝
保全した私に感謝
565名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 12:10:32.63 0
謝謝
566名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 13:36:50.50 0
昼下がり
567名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 13:51:46.89 0
の代理投稿などしてみよんかしら
568名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 13:52:31.08 0
『好きな先輩』

〈今日の私美人ですか〉

1−1

生田衣梨奈は、学校から喫茶リゾナントへ向かう途中だった。
毎日少しずつ訪れるのが早くなる夕暮れ。もう秋が始まっている。
「もう5時か…新垣さん、今日も返信くれんかった…。えりな、泣きそう…」
誰もいない路地を歩きながら、生田は携帯を見つめる。
「ワンワン」「ワン」「ワオーン」「クーン」「バウワウ」「ウー」「キャン」「オン」
突然、たくさんの犬の鳴き声が耳に入ってきた。
生田が顔を上げると、リードの束を握った一人の少女がこちらを見ている。
歳は生田と同じくらいに見えるが、胸が大きく、鼻筋が通った美人さんだ。
少女の足下では、8匹の犬がこっちを見ている。
少女は微笑んでいたが、その目は明らかに笑っていなかった。
「こんばんは」
少女が生田に声をかける。
同時に、犬たちが尻尾を振りながら駆け寄ってきて、生田を円状に取り囲む。
「生田衣梨奈さん…ですよね?」
「…はい。えっと…、どちら様ですか?」
生田が警戒しながら答えると、少女の微笑が消える。
それを合図に、犬たちが生田の方を向き、同時に吠える。
「「「「「「「「ワン!」」」」」」」」
次の瞬間、生田の姿が消えた。
犬たちに囲まれた場所には、生田の通学鞄だけが落ちている。
「…行くよ」
少女がそう言うと、犬たちはすぐに少女のもとへ駆け戻る。
そして、さっき生田にしたのと同じように少女を取り囲み、一斉に吠えた。
今度は、少女だけでなく、犬たちも一緒に消えた。
569名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 13:53:13.69 0
1−2

生田は、薄暗い森の中に立っていた。
「一体、何が起こったと〜!?ここ、どこ〜?」
携帯を見ると、表示には「圏外」の文字。
生田は、とにかく森から抜け出そうと、低い方へ向かって歩き出した。
すると、水の流れる音が聞こえてきた。
「川だ!」
生田は音のする方へ急ぐ。
視界が急に開け、白い砂地が広がる川原に出た。
もう日が沈んでいるとはいえ、夕空の明るさで、辺りはまだよく見えた。
「川に沿って下って行けばいいっちゃろ。えりな、さえてるー!」
生田はそう言うと、川下の方へ顔を向けた。
そこには、信じられない光景があった。
「新垣さん!?」
数10m先に、大きな岩に座って川面を眺めている、生田の大好きなあの先輩がいた。
生田は子猫のような笑顔で新垣のもとへ走り出す。
しかし、生田の足はすぐに止まった。
新垣の後ろから、さっき路上で会ったあの少女が顔を出したのだ。
少女は、生田をじっと睨みつけている。
少女のその目には狂気が感じられた。
「あんた、さっきの…」
少女は、目つきを柔らかく変えてから新垣を見て、もたれかかり甘えるように言った。
「新垣さん、あの人知ってます〜?」
新垣が生田の顔をじっと見つめる。
生田の胸が、新垣に久しぶりに見つめられたトキメキで高鳴る。
しかし、新垣はすぐに少女の方を振り返ってこう言った。
「ううん、…知らない」
生田の顔と心が凍った。
570名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 13:53:55.75 0
1−3

「…にっ、新垣さん!私です、生田です!」
生田の必死の呼びかけに、新垣がまたこちらを向く。
そして、戸惑いの色を浮かべてすまなそうに答える。
「…ごめんなさいね。ちょっと私、あなたのこと、記憶にないのよ…」
その斜め後ろにある少女の視線は、生田を刺すように冷たかった。
「ねえ、…あずちゃん、この人、知ってるの?」
新垣が少女の方を再び向く。
「あずちゃん」と呼ばれた少女は、瞬時に表情を変え、穏やかに微笑む。
「いいえ、知りません。…新垣さん、ここで少し待っててくださいね」
そう言うと、少女は新垣の顔に手をかざす。
新垣は壊れたマリオネットのように岩の上に横になった。
生田の怒りが爆発する。
「新垣さんに何をした!」
少女は生田の方に歩を進めながら答える。
「新垣さんは私の精神干渉の力によって眠っている。
私の指示に従いなさい。さもないと、新垣さんは永遠にあのまま。
ちなみに、私が死んでも効果は消えないから、変な気を起こさないでね」
生田は、その不気味に落ち着いた声色から、少女の本気を感じた。
「あんたの狙いは何だ!?」
少女は生田の目の前で立ち止まり、静かにこう言った。
「生田衣梨奈、私と勝負しましょう。どちらの方が新垣さんへの思いが強いか…」
「はあ!?」
怪訝そうな生田に、少女は言う。
「勝負は三回勝負。先に二勝した方が新垣さんの正式な後継者となれる。いい?」
生田には、少女の狙いがいまいちよく分からなかった。
だが、「どちらの方が新垣さんへの思いが強いか」という少女の言葉に、生田の闘志が
メラメラと燃え上がった。
「新垣さんへの思いなら、えりな、絶対に負けん!」
571名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 13:54:27.90 0
〈今日の私色っぽいすか〉

2−1

「じゃあ、まずは第一回戦。『仲良し写メ対決!』」
「写メ対決!?待って、待って!えっと、えっと…、よし、えりな、これに決めた!」
生田は、新垣と笑顔で頬をぴったり寄せ合っている写メを見せた。
「この新垣さんの笑顔、たまらんやろ〜!」
「…ふ〜ん、確かにいい笑顔ね…。でも、この勝負は私の勝ちね。私のは、これよ!」
「こ、これは…」
生田は、言葉を失った。
「ふふっ、どう?私、新垣さんと一緒の布団で寝ちゃったの」
少女が出したのは、パジャマ姿でピースサインをしている新垣と少女の写真だった。
「もちろん、精神干渉で洗脳する前に撮った写真よ。あなた、こんな経験ある?」
「……ない」
「ふふっ、この勝負、私の勝ちね!」
口惜しさで声が出ない生田を見て、少女は勝ち誇ったように言う。
「次は第二回戦。今度はそっちが勝負の内容を決めていいわよ」
「……じゃあ、『いま身につけているもの対決!』」
生田は制服のシャツのボタンをささっと外し、前をはだけた。
中に着ている黄緑色のTシャツ、それは新垣からもらったものだった。
「どう!あんた、新垣さんからもらった服はあると?」
少女が下唇を噛む。少女の着ているTシャツは自分のものだ。
「…私だって、…私だって、新垣さんの服、欲しかったわよ…。
 でも…、着てみたらどれも入らなかったの!…胸が…きつくて…」
確かに、その少女の胸はとても豊かだった。
生田は少女の色っぽい体つきを見て、勝負には勝ったのに、強烈な敗北感を味わった。
「と、とにかく、これで1対1っちゃ!次は何で勝負すると?」
少女の顔が、それまでとはうってかわって、急に引き締まった。
「ここまではただのお遊び。次が本当の勝負よ」
572名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 13:55:00.40 0
2−2

少女は続ける。
「私には精神干渉の力がある。あなたは、精神破壊よね。
つまり、二人とも精神系の能力者。
どちらが新垣さんの後継者としてふさわしい力を持っているか、勝負しましょう!」
そういうと、少女は両手を前に出した。
「望むところたい!えりな、絶対に負けん!」
生田も両手を前に出す。
一瞬の間を置き、二人は叫び、ありったけの精神波を放出した。
「ハアアアアア!」「ウリャアアアア!」
少女は生田の精神を支配すべく、生田は少女の精神を壊すべく、全力を注ぎ込んだ。
二人の間の空気が震える。
力はほぼ互角だった。
しかし、時間が経つにつれ、徐々に生田が押され始める。
精神波の力は、集中力の高さが大きく左右する。
生田の集中力は、明らかに低下していた。
少女は自分が押している手応えを感じた。
あと一歩で自分の勝ちだ。
少女がそう思った時、突然、生田がその場を離れ、全速力で走り出した。
(逃げた!?)
少女は精神波を止めた。
しかし、生田は逃げたのではなかった。
生田が走っていったのは、新垣がいた方だ。
(何をする気!?)
少女は新垣がいた大きな岩を見る。しかし、そこに、新垣の姿は無かった。
直後、バシャーンと何かが跳びこむ水音が響く。
水音のした方を見ると、穏やかな川面の中で、そこにだけ波が立っている。
数秒後、そこから生田が出てきた。
右脇に、新垣を抱えて…。
573名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 13:55:33.40 0
2−3

あかあかと燃える焚火の前で、少女は生田の言葉を聞いていた。
「新垣さん、寝相が悪いけん、岩から落ちるんやないかとずっと気になっとんたんよ」
「…あなた、だから、途中で集中力が切れたのね?」
「そんなのは言い訳にならん。新垣さんは、いつも集中力を切らさず周りをみとった。
もし新垣さんが起きてたら『生田ー!修行が足らーん!』って、叱られとったと思う。
それに、あんたの精神波は、本当にすごかった」
少女はうつむいてしまった。
自分は、新垣と一緒に寝た。だから、新垣の寝相の悪さはよく分かっている。
それなのに、自分は新垣が岩から転げ落ちることなど全く想定していなかった。
一方、生田は、一度も一緒に寝たことがないのに新垣の寝相が悪いことを知っていた。
そして、あの激しい戦いの最中でも、新垣の身を案じ続けていた。
(私の…負けか…)
「よし、だいたい乾いた!とにかく、今回の勝負はあんたの勝ちでいい。
だから、お願いやけん、新垣さんを元に戻して!
超悔しいけど、新垣さんの後継者の地位は、今日のところはあんたに譲る!」
生田はそう言いながら、立ち上がって少女に握手を求める。
少女は生田を見上げながら尋ねる。
「あなた、私のこと、憎くないの?」
「えりなのいいところは、『すぐ許す』やけん。
それに、新垣さんを好きな人に悪い人はおらん!」
少女は吹き出した。そして、生田の手を握った。生田も少女につられて笑い出した。
二人の少女の楽しそうな笑い声が、静かな夜の森にこだまする。
しばらくして笑いがおさまると、少女は、新垣に向って静かに手をかざした。
生田がそれを見ていると、急に少女の手が自分の方へ向けられた。
「えっ!?」
少女の精神干渉の力が、無防備な生田の心に入り込む。
まるでマネキンにでもなったかのように、生田の動きが止まった。
少女が口笛を吹くと、闇の中からあの8匹の犬が現れ、生田を囲んで一斉に吠えた。
574名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 13:56:17.11 0
〈今日の私元気ですか〉

3−1

精神系能力のスペシャリストである新垣が、なぜ少女の力に屈してしまったのか。

新垣は、高橋愛を捜索する旅に出ると、すぐにブログを始めた。
ブログには、「超能力を持つ女性の情報求む」と書き、謝礼を出すこともつけ加えた。
何がしかの情報が得られるかと期待したが、何の反応もないまま、数か月が過ぎた。
ブログを閉鎖しようか迷っていたある日、携帯に見知らぬ人からのメールが届いた。
タイトルは「精神干渉と瞬間移動」、本文には、住所だけが記されていた。
捜索が手詰まり状態だった新垣は、藁にもすがる思いで急いでその住所へ向かった。
そして、その日の夜遅く、一棟の古びたアパートにたどりついた。
明かりの点いている部屋は一つしかなく、新垣はそこのチャイムを鳴らした。
ドアが開いて出てきたのは、高校生くらいの年頃と思われる純朴そうな少女だった。
新垣が事情を話すと、やはりその少女があのメールの差出人であった。
少女は、自分には特殊な能力があると言う。
申し訳ないと思いつつ、新垣は彼女の心を覗こうとした。
すると、驚くべきことに、その少女は、新垣の精神干渉を完全に防いだ。
そして、「ほらね」と言うかのように、愛敬のある顔でにっこり笑った。
話を聞くと、その少女は、新垣と同じく精神干渉の能力者だった。
ちなみに、瞬間移動の能力があるのは、少女が飼っている8匹の犬だった。
いずれにせよ、高橋とは関係がないと分かり、新垣は落胆し、少女に別れを告げた。
すると、少女は満面の笑顔で新垣を引きとめた。
「今夜はもう遅いからここに泊まっていって下さい」
新垣は、その少女の屈託のない笑顔の奥に、暗い影があるのを感じた。
この子は私と同じ力を持っている。ならば、私と同じ苦しみを経験してきたはずだ。
望んでいない「異常」な力によって、この子もつらい思いをしてきたのだろう。
アパートで一人暮らしをしているのも、家族がこの子を遠ざけたかったからか…。
少女への同情心が芽生えた新垣は、一晩だけその少女の家に泊まっていくことにした。
575名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 13:56:47.75 0
3−2

少女は、新垣にべったり甘えてきた。新垣は、甘えてくる年下の子が大好物だ。
初めて同じ力を持つ人に出逢えて、この子本当に嬉しいんだな。新垣はそう解釈した。
新垣は、その天然気味の少女とたくさん話をし、思う存分つっこみ、そして、笑った。
捜索の旅で心身ともに疲れていた新垣は、その少女の元気な笑顔に、心から癒された。
仲間と離れた寂しさに凍えていた心が、切ないくらいのぬくもりで溶けていった。
少女を見つめる新垣の目に、戦士の鋭さはもはや残っていなかった。

新垣の滞在は延びていった。
毎日の食事は、新垣の好物ばかりを、少女が一生懸命作ってくれた。
幸福感におぼれていた新垣は、全く気付いていなかった。
その食事には、特殊能力を抑制する、マルシェ特製の薬物が混入されていたことに。
新垣の能力は徐々に弱まっていき、五日後、新垣の心はその少女に完全に支配された。
少女は新垣を山奥の川原に連れて行き、自分は犬と一緒に生田のもとへ「飛んだ」。

その少女、関根梓の正体は、ダークネスの元「研修生」である。
梓は幼い頃から、その異常な能力によって、家族や周囲から疎外され続けた。
自殺を考えていた梓に、ある日、闇の組織からの使者が声を掛ける。
自分の力を正当に評価してくれるその組織に、梓はすがりついた。
組織に加入すると、そこには、彼女と同じような境遇の仲間がいた。
彼女たちは、一人前の戦士となるべく、「研修生」として特殊能力を日々鍛え続けた。
だが、「研修生」の中には、その能力が、組織の要求するレベルに達しない者もいた。
そのような少女は、落伍者とみなされ、一定期間が過ぎると組織から追い出された。
梓も、そんな落伍者の一人となった。同期で落伍者となった者は梓の他にも6人いた。
ある日、ついに組織から最後通達が下された。しかし、梓たち7人は諦めなかった。
彼女らは組織に対して、もう一度自分たちの力を試してほしいと直訴した。
組織はそれを了承し、彼女ら一人一人に、過酷なミッションを与えた。
そして、それをクリアすれば、彼女らをダークネスの正規メンバーにすると約束した。
梓に与えらえたミッションは、同じ能力を持つ新垣里沙を廃人にすることだった。
576名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 13:57:26.22 0
3−3

梓は、新垣里沙について研究するため、ダークネスの資料室に篭った。
新垣が以前ダークネスの一員だったこともあり、データは質量ともに充実していた。
能力、性格、行動など、新垣を知るために、あらゆる書類や映像に目を通した。
梓は、ある意味「先輩」である新垣について、膨大な知識を手に入れた。
その結果、梓の心に意外な感情が生まれた。梓は、新垣を好きになってしまったのだ。
その戦闘能力はもちろん、優しさ、可愛さ、心の強さ、全てが梓を魅きつけた。
梓は、自分の感情にとまどった。

感情の整理がつかないうちにミッションが始まった。梓は予定通り新垣を罠にはめた。
自分が組織から認められるには、そうするしかなかった。
梓は、せめて、新垣と一緒にいられるそのわずかな時間を、心から楽しもうと思った。
ただ、その楽しい時間に水を差される瞬間があった。
新垣が、困ったような笑顔で「生田衣梨奈」という後輩のことを嬉しそうに話す時だ。
梓はその幸せな後輩に激しく嫉妬した。梓は、どうしても生田と勝負したくなった。
自分の方が新垣を深く愛しているということを、生田に知らしめたかった。

焚火が、燃え尽きた。
月明かりがやけに明るく感じられる。
予定の時刻が来て、腕時計型通信機から声が響く。「No6、結果を報告せよ」
梓は表情をひきしめ直して立ち上がる。(とうとう、この時が来ちゃったか…)
長年に渡る血の滲むような訓練の日々を振り返り、梓は、非情になる決意を固める。
眼前に眠る新垣の心を完全に抹殺すべく、梓は両手を正面に向け、指を広げた。
その時、月の光に照らされた両手の指先が、キラキラと輝いた。
突然、梓は膝から崩れ落ちる。そして、冷たい川砂に両手を着いた。
頬に涙を走らせながら、梓は静かに言った。「…No6、…ミッション失敗です…」
白い砂の上に並ぶ爪の一枚一枚には、美しいラピスラズリで文字がかたどられていた。
「あ」「ず」「ち」「ゃ」「ん」「あ」「り」「が」「と」「!」
それは、洗脳前の新垣が、もんじゃ焼きの御礼にと施してくれたネイルアートだった。
577名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 13:58:09.03 0
〈Ending:LALALA…先輩〉

生田は、夜の路地にぼーっと立っている自分に気が付いた。
「あれ〜、…えりな、何しとるんやろ…?うわ!もう8時だ!」
携帯の時刻表示は、ミーティングの集合時間を2時間も過ぎていることを示していた。
生田は、地面に落ちている鞄を拾い、喫茶リゾナントへ走り出した。
携帯メールの着信音が、繰り返し鳴る。
「うわっ、みずきから一杯メールが来とる!もう、一体どうなってんのー!?」
それまでの3時間分の記憶が、生田の脳からきれいに消し去られていた。

「…ここ、どこ?」
一方、新垣も、とある駅の前で呆然としていた。
新垣は、時間を確かめようと、携帯を見る。
そして、そこに表示されている日付を見て、さらに目を丸くする。
「はあ!?9月7日!?ウソ!ウソ!ウソ!何でよ!今日は3日でしょ!?」
状況が全く理解できない新垣は、携帯を両手で握り、足をばたばたさせた。
周囲にいた数人が、そのオーバーで時代遅れな新垣の動きを、珍しそうに見ている。

そんな新垣の様子を、物陰からじっと見つめる一人の少女がいた。
少女は小さく呟く。
「大好きです、先輩…」
そして、少し寂しそうに微笑みながら、夜の街の雑踏の中へ消えて行った。

―おしまい―

578名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 13:59:57.41 0
>>568-577
以上、『好きな先輩』でした。
敵の少女のモデル、関根梓ちゃんは(仮)のメンバーで、ガキさんの大ファンです。
とってもグラマーで、ガキさんとは大違…、あれ?なんか首が冷たあbぽしhそg

-------------------------------------------------------------------ここまで代理ったよん

579名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 14:37:40.59 0
おつおつ!
そうか胸がきつかったのかww
580名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 14:45:53.76 0
代筆乙です
そういえばフクちゃんも亀さんの衣装着られなかったな・・・。・゚・(ノД`)・゚・。
581名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 15:19:16.79 0
>>578
泣ける話ですねえ
胸のくだりといい…w
582名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 17:21:08.04 0
おっと
583名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 19:06:36.52 0
夜が始まる
584名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 20:43:00.29 0
闇がつつむ
585名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 22:08:57.18 O
誰か ねえねえ 誰か
586名無し募集中。。。:2012/09/08(土) 23:14:47.83 0
一人の夜を数えていたあの頃の私はもういない
587名無し募集中。。。:2012/09/09(日) 00:23:08.66 0
ほっ
588名無し募集中。。。:2012/09/09(日) 00:59:27.89 0
>>538-541の続き。

 な、なに……っ!?

圧倒的な光の量に戸惑いながらも、コハクのヒカリが溢れ出す。
譜久村自身からそれが放出されている事に気付く。
包まれるような感覚。暖かさ。不意に手がポケットへ。

 「フクちゃんに預けておくね。きっと大事なものになる筈だから」

放出されるヒカリがもっと広がりを増す。
手のひらに置かれた箱がひとりでに蓋を開け、その中から浮力で現れた、砂時計。
コハクの光が"透明な水"に水面を作り、波紋が生まれる。
その波紋の中心から水が隆起し、まるで生き物のように砂時計の周りを
グルグルと螺旋状に囲み始める。

目の前には、巨大な水の空洞が出来ていた。

譜久村の指が自然と動き、水が自由に、上下左右と操る。
優しい風が、強い風が、暖かい風が流れた。
旋風を形成したかと思うと、その真空から鋭い爪の様な疾風(かぜ)が無数に飛び交う。

――― パアアアアアアアアアアンッ!

"透明な水"を切り裂き、粒がシャボン玉のように壊れて、消えた。

 「エッ……?」
 「ハア…ハア…ッ、里保ちゃんを返して!」
589名無し募集中。。。:2012/09/09(日) 01:00:12.47 0
譜久村の声に応えるように疾風(かぜ)が唸る。
教室全体を包んでいた筈の"透明な水"を、女子生徒を巻き込んで
窓ガラスをブチ破り、校舎の外へと放り出された。
女子生徒は何が起こったのか判らず、だが浮遊感と共に一気に恐怖を抱く。

 落下。それは死へ沈む刹那。

 「きゃああああああああああ」

見上げる夕暮れの景色がある其処は、海よりも真っ青な空があった。
譜久村は窓から身体を出し、女子生徒の手を掴むように腕を伸ばす。
落下する身体に緩やかな気流が包み込むと同時に、女子生徒の意識は途絶えた。




 ――― コハクのヒカリに抱かれていたあの瞬間。
 薄紅色の閃きが過る視界に譜久村が見ていた記憶が在る。
 彼女に映るのは夢ではなく現実。それも欠片では無く、水面を見るように。
 だからきっと、これは誰かの記憶なんだと、雫が跳ねた。

 「何してんの?そんな思いつめた顔してぼーっと立っちゃって」

女性は、命の選択を迫られていた。
相手も自分も同じ立場なのだと気付いたときに、曖昧だった道が
少しずつ、それでも確かに其処にあることを知らしめる。
590名無し募集中。。。:2012/09/09(日) 01:01:13.83 0
女性は自分の命が、世界の命が儚いことを始めから知っていた。
それを受け入れていた筈なのに、それを寂しいと感じるに至った
理由が確かにあったのだ。

 微かに生きる希望を見つけてしまったからだ。

女性がまだ少女だった頃、年季の入った木目のターンテーブルで
レコードに針を落とす老人に出会う。
老人は古ぼけた音に耳を傾け、少女は向かうように立ってその姿を見つめる。

 「笑ってしまえば良いのさ。風景の違いに気付かないヤツらなど
 いくらでもいるからね。眺める景色がいい加減なのだよ」
 「でもみんな、みえるものしかしんじないよ」
 「見えるモノ、見えないモノ、今になってそれが判るなんてね」
 「おじいちゃんはこのきょくがすきなら、えりも、すきになっていい?」
 「ああ、今思えば、私は好きだったんだな。どんなに嫌っても、結局は
 元に戻ることを信じてた、信じてたんだよ」

老人と少女の会話は一度も噛み合わないままだった。
だけど少女に対して向けられた視線と、頭を撫でるその皺と一緒に残る暖かさが
両親の優しさを十分に受け止められない少女にとって、何か、かけがえのない
ものになって行くのを感じていた。

陽が落ちるまで続き、古ぼけたレコードが老人の手によって自然と音を
止むまで、少女は、永遠とも思える時間に身をゆだねていた。

 病室で居る独りとは別の、傍に在るという安心感に漂いながら。
591名無し募集中。。。:2012/09/09(日) 01:02:26.54 0
>>588-590 以上です。

>>578
動物に能力が備わってるというのもビックリですが、現実に8匹も
飼ってる事実にw 大量飼いして放置してる人ぜひ見習ってもらいたい(犬好き

ガキさんが出てくる作品には大半が胸をイジられてるというこのスレ独特の風習に涙。

-----------------------------------------ここまで。

代理投下終了
592名無し募集中。。。:2012/09/09(日) 02:24:35.44 O
明日読むっす
593名無し募集中。。。:2012/09/09(日) 02:31:10.48 0
代理投下乙でした

>このスレ独特の風習
。・゚・(ノД`)・゚・。
594名無し募集中。。。:2012/09/09(日) 08:01:45.52 0
うお
595名無し募集中。。。:2012/09/09(日) 10:05:54.30 O
リゾナンターに休みはない
596名無し募集中。。。:2012/09/09(日) 11:04:40.78 0
>>591
懐かしい台詞だ…
あれから随分経ったことを改めて実感します
597名無し募集中。。。:2012/09/09(日) 11:06:08.62 0
>>591
あいかわらず視覚的な表現が冴えてますな
個人的には異能を顕現した瞬間にフクちゃんが垣間見ていた「えり」の記憶の部分が好き
命の儚さ、通わない心、在るだけで救われる存在みたいな
…続きを待ってます
598名無し募集中。。。:2012/09/09(日) 13:03:14.66 0
ほほほ
599名無し募集中。。。:2012/09/09(日) 13:03:56.62 0
心は繋がり明日を紡ぐね
600名無し募集中。。。:2012/09/09(日) 15:20:15.50 0
アチぃな
601名無し募集中。。。:2012/09/09(日) 17:07:17.19 0
夕焼けがまぶしい
602名無し募集中。。。:2012/09/09(日) 17:46:51.90 0
オレンジの光がもたらす安らぎの時間
603名無し募集中。。。:2012/09/09(日) 18:16:38.54 0
ブルーが解き放つ神秘の香りに包まれる
604名無し募集中。。。:2012/09/09(日) 19:42:49.36 0
そして共鳴が伝わっていく
605名無し募集中。。。:2012/09/09(日) 21:02:01.26 0
途切れない重い想いは今もなお
606名無し募集中。。。:2012/09/09(日) 22:34:12.63 0
>>603
それってもしかしてズン子の・・・・・
607名無し募集中。。。:2012/09/09(日) 22:56:53.72 0
バカ言ってないで早く続きを書いてください
608名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 00:01:33.75 0
9.10
609名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 01:16:03.36 0
寝るのだよ
610名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 03:04:00.00 0

私の先輩たちは変な人ばかりだ―――


「これは派手にやらかしましたねぇ……」

私が水から顔を出すと、プールサイドには苦笑した光井さんが立っていた。
松葉杖なしでしっかりと両足を地につけているその姿に、私は思わずホッとする。
以前にダークネスと闘ったときに左脚を痛め、結果的にその傷がもとで、光井さんは戦線から離脱することとなった。
長期にわたり車椅子、松葉杖と付き合い、左脚を庇うその姿は痛々しかった。なにもできない自分が、腹立たしかった。
私でさえそうなのだから、“治癒能力(ヒーリング)”を持つ道重さんはもっと傷ついているのだろうなと思った。

「いやー、絵里のせいじゃないですよ?れーなが能力増幅させすぎたせいで」
「え、れなのせい?最初にやれって言ったんは絵里やろ?」

プールサイドではさらにふたりの先輩が言い合っている。
最近はずっと私に付き合ってくれている亀井さんと、その亀井さんに無理やり呼ばれた田中さんだ。
先日、私の“水限定念動力(アクアキネシス)”と亀井さんの“風”、そして田中さんの“共鳴増幅能力(リゾナント・アンプリファイア)”を合わせた技を発動させた。
水砲と風の竜巻、それらの力の増幅は、予想以上に大きなものとなり、対ダークネスの急襲に備えた防弾ガラスを破壊した。

「で、どうするんです?これ…」
「なんとかバレないような方法ないかなーと思って」
「いや、ムリですよ亀井さん…」

どうもあの窓が破壊されたことをどうにか誤魔化せないかと亀井さんは光井さんに相談しているらしい。
そういうことなら、ついでに私も相談したいことがある。
先日水砲で壊してしまい、未だに点かない天井の蛍光灯、あれもどうにかなりませんかね、光井さん。
611名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 03:05:16.24 0
「でも、この窓壊すって凄いことですよ、普通に」
「そうやねぇ…絵里と鞘師って案外、相性良いっちゃない?」
「うへへぇ、そう思う?」

なぜか照れ始めている亀井さんはさておき、私は水から上がる。
3人の先輩たちに混ざって改めて破壊してしまった窓を見た。確かに見事にガラスが割れ、そこには格子しか残っていない。

「亀井さんがいまでも戦線に立ってたら、かなりの武器になったと思いますよ」
「……いや、そうでもないんじゃない?絵里がいなくても充分に……」

光井さんの言葉に亀井さんが反論した。というより思案しているようにも見える。
黙ってこめかみを叩きながら歩く姿は以前にも見た気がする。
あれ?デジャビュ?と私は何処か嫌な予感がした。それは田中さんも同じようで、ガシッと私の肩を抱いた。

「鞘師、帰るっちゃよ」
「え?」
「絵里、前にもあんな風に考え出して窓ぶち壊したやん。絶対今度もなんかいらんこと言うって!」

残念ながら、田中さんの予想は的中してしまう。
亀井さんは大きな声で「やっぱ実験あるのみでしょ!」と叫んだ。
ふたりしてその声に振り替えると、亀井さんはなにやら光井さんに対して力説している。

「前回は風に乗って水が走ったんだけど、水そのものに力を込めて吹っ飛ばせば、そこそこの力になるとは思うんだよね」
「えーっと……どういう意味です?」
「なにも絵里がいなくても、れーなと里保ちゃんだけでもそこそこの技にはなると思うんだ。
絵里が気流で風の道をつくらなくても、里保ちゃん自身が道をつくれるくらいに水を操れればさ」
612名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 03:06:28.13 0
その言葉をかみ砕きながら、私はなるほどと納得していた。
確かに前回は、亀井さんのつくった風の道に私の水を乗せて吹き飛ばした。風と水が合わさり、能力は増幅され水龍として天へと昇った。
しかし、そもそも私自身が水をもっと自在に操れれば、技の幅も広がる。
真っ直ぐに飛ばすだけでなく、曲げたり、捻ったり、遠くまで飛ばすことができれば……

「というわけでれーなっ」

亀井さんはニコニコ笑って田中さんの肩をポンと叩いた。
彼女は授業中に指名された生徒のように顔を歪め、これからなにをすべきかを瞬時に把握した。

「イヤやってー!またなんか怖しそうやもん!」
「だいじょぶ、だいじょーぶ!さゆにバレなきゃ良いんだってー」
「いやいや、バレんために愛佳呼んどぉのになんか違くない?」

田中さんの言うことは最もだった。
道重さんにバレないためにどうするかという議題は、いつの間にか、新たな実験の種を蒔いている。
でも、先輩の言うことは絶対だ。なんて何処かの部活動のように再び私は呟いて、水へと飛び込んだ。
実際、試してみたくなった。
先輩たちの力ばかり借りるのではなく、根本的に、私自身の能力を伸ばすために。

「もー、鞘師やる気になっとぉやん!」
「ハイハイ、じゃーがんばってね田中さん」

亀井さんはヘラヘラと手を振り、田中さんも諦めたように肩を落とした。
諦めたように田中さんはため息をついてプールの水を掬い、手首へ流して落とした。

「ま、興味はあるけんさ」

そうして田中さんは子どものように笑って目を閉じた。静かに詠唱が始まり、周囲の気が張り詰めていく。
私も再び深く深く水の中へ潜り、水と体を一体化させていく。透明になった身体の奥底まで、水が満たしていく気がした。
右手をぶらぶらと動かし、静かに波をつくっていく。頭の中で、確かにイメージしていく。すべては、想像力の勝負だ―――
613名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 03:07:50.47 0
-------

「良い、先輩やないですか」
「うん?」

プールの中で気を高めていく里保とプールサイドに立つれいなを見ながら愛佳は言った。

「最近此処に来ては付き合ってたんでしょ?鞘師の練習に」
「んー、まあ暇だからねー、病室でジッとしてるの」
「ホンマにそれだけですか?」

愛佳はそうして湿気で重くなった前髪をかき上げた。
じっとりと粘っこい汗をかくが、破壊された窓から流れる風が心地良かった。

「鞘師と同時期に入ったフクちゃん、生田、鈴木はそれぞれ能力持ってます。直接的に攻撃できる能力を持ってるンは鞘師。
本人もそれを分かってるからストイックに鍛錬するけど、ある意味、それが無理に繋がっていることにも気づいてたんちゃいます?」

愛佳の言葉を絵里は黙って聞いている。
鞘師ら4人がリゾナンターに加入してもう1年半が経とうとしている。その間にも数々の敵と闘い、彼女たちは確実に成長してきた。
しかし、小春、絵里、ジュンジュン、リンリンが欠け、加入半年後には愛、さらにこの春には里沙と愛佳が一線を退いた。
激動の1年半は過ぎ去り、中核を担うものとしての責任を求められる。直接打撃系の能力を有した里保の責任は、重い。
だから、一刻も早く強くなりたかった。力がほしかった。仲間を護れるくらいの、強さが―――
614名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 03:08:50.05 0
「ほんで、その焦りを解消するために、かつ能力を伸ばすために、亀井さんが付き合っている、ように私には見えますけど」

傷を抱えた絵里と愛佳が選んだのは、後方支援という仕事。
直接戦場に赴くことはできないが、一戦で闘う彼女たちをフォローし、ケアする仕事は、地味だが、誇りだ。
そして絵里は、その後方支援の一環として、里保に実践しているように愛佳には見えた。
ふざけているようにも、ただの暇つぶしのようにも見えるけど、なんとなく、そう思った。

「絵里、そこまで良い人じゃないですよ?」
「そうです?」
「ただの、気まぐれですよ」
「プリンセスですか」
「そう、わがままお姫なの、絵里は」

絵里は肩を竦めて笑って見せた。
そのいたずらっ子のような、それでも優しい笑顔に、敵わないなぁと愛佳は思う。

「だからほら、れーな巻き込んでるし」
「はは、そうですね」

愛佳は絵里とともにプールへと視線を戻す。水面下から顔を出した里保とれいなは目配せし合い、頷いた。
優しくふたりを見つめる絵里のその視線に、田中さんのためでもあるんでしょ?と言いたくなったがやめにしておいた。
あのふたりの能力を伸ばすことは、そのまま未来への光へと繋がるんやろうなと愛佳はぼんやり思った。
615名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 03:09:44.95 0
-------

田中さんと目配せしあい、私は頷いた。
ゆっくりと、右手の中に水を集めていく。

「―――いくっちゃよ」

あの日のように、その言葉が解き放たれ、田中さんは深く息を吸い込んで、右脚を一歩踏み出した。
張り詰めていた空気がぱりんと音を立てて割れた。
膨張したものが破裂し、溢れ出したものが音のように染み込んでいくのを感じた。
あの日よりも深く浸透したように思いながら、私は迷わず、右腕を天上へと突き上げた。

放たれた水は真っ直ぐに天井に設置された蛍光灯へと走る。その速度は、以前よりも格段に速い。
ぐっと腕を曲げる。動けと念じ、水へ想いを伝える。
瞬時に水砲は折れ曲がった。直角に横へと走り、まずいと私はさらに捩じった。
水は走り続ける。形を成した水龍は苦しむように螺旋を描き、逃げる。
勢いを止めることなく水龍はプールへと飛び込んできた。激しく波立って水が揺れる。ぐるんと視界が回転した。

「鞘師!」
「里保ちゃん!」

予想外のことに先輩たちの声が遠くで聞こえた。
私の視界はぐるぐる回り、プールの奥へと沈んでいく。
だけど、此処で終わりたくなかった。まだ、まだ、まだ、強くなれると、私は両腕を突き上げた。
616名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 03:10:54.70 0
「な―――!」

先輩たちの驚愕した声が聞こえた気がした。
私の体は水とともに勢いよく撥ね上がり、一瞬だけ、宙に浮いた。
再び息を吹き返した水龍は居場所を求めてうねり、もがき、走った。
支えをなくした私は、そのまま垂直にプールへと落下する。落ちる、落ちる、落ちる、怖い!

「世話の焼ける後輩ですよ」

瞬間、私の体は風に乗った。
亀井さんの発動させた“風”が私の体を支え、ふわりと空中に浮いたままになった。
上空数メートルから見る世界は何処か新鮮だった。田中さんと光井さんはホッと胸を撫で下ろしている。

「あ……」

別に忘れていたわけではない。
しかし、“水限定念動力(アクアキネシス)”は文字通り、念じることで水を動かし、操ることができる。
当然、その念が乱れれば水もどういう動きをするかは予想がつかない。
結果的に、空中に舞い上がり、心まで舞い上がった私は、水を制御することが不可能になり、水龍は勢いそのままにシャワーへとぶち当たった。
ガシャガシャと派手な音を立ててシャワーが蛇のように撥ねたかと思うと、壁に亀裂が入り、そこから水がちょろちょろと流れ始めた。

「……これ、水道管が壊れたんちゃいます?」
「そう、とも言うかもね」
「あり得んっちゃー……」

風の毛布がゆっくりと下がっていき、私は水中へと戻された。
水面に顔を出し、先輩たちと同様にぽかんとして壊れたシャワーを見る。
まさか壁に亀裂が入ったのは予想外だった。いくら田中さんの能力で増幅されたからと言って、そんな破壊力が生まれるのだろうか。
617名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 03:11:54.23 0
「じゃー、やっぱれーな、謝っといてね」
「また?!つか今回のってれなのせい?!」
「後輩の失敗は先輩が責任取るもんですよ?」

随分とムチャクチャなロジックが展開されているのを聞きながら、私は水を掬った。
完璧ではないが、一瞬だけでも、私は水を自在に操れた。
それは田中さんの能力のおかげかもしれない。でも、そうじゃないかもしれない。

「鞘師」

そのとき、光井さんから声をかけられた。
未だになにか言い合いをしているふたりを尻目に、こちらに手を伸ばしていた。
私は素直にその手を取り、プールサイドに上がった。髪がぺったりと貼りついているが、どうしようもなく気持ち良かった。

「成長、できた?」

その言葉に私はしっかりと頷く。
一歩ずつではあるが、確実に私は強くなっていると思う。まだ充分じゃないけれど。先輩たちの背中は程遠いけど。
それがはっきりと実感できたのが、嬉しかった。

「4人で謝ればさゆだって鬼じゃないし分かってくれるって」
「とか言って、れなだけ先に行かせて逃げる気やろ?」
「うへへぇ〜、そーんなことないですよ?」

亀井さんと田中さんのやり取りを見ながら、「あれは嘘ついてる目やな」と光井さんは笑った。
今度こそ、雷が落ちるのを覚悟しなきゃなと思いながら、恐らく水道管が破裂した壁を見た。
618名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 03:12:46.97 0
私の先輩たちは変な人ばかりだ。

でも。でも。
とても頼もしくて、優しい先輩たちばかりだと思った。

「じゃ、みんなでごめんなさいしに行きますよ?今度は前借りじゃなくて」

そうして亀井さんは田中さんの肩を叩いて笑った。
私は歩き始めた3人の背中を追いかける。
亀井さん、田中さん、光井さん、ありがとうございます。そして、道重さん、ごめんなさい。と、心の中で呟いて。
619名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 03:15:14.35 0
>>610-618 「水と風と猫と未来への宴」
遂に水道管までぶっ壊したので田中さんの30年以上タダ働きで鞘師さんは市民プール行きになりますw
夜中に勢いで書いたんでいろいろ穴だらけで申し訳ない…
620名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 06:37:39.47 0
乙です
優しい文体のおかげですうっと心に入ってきました

それにしてもタダ働き30年・・・w
621名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 08:33:49.61 0
>>619
素敵な連作ですね
単純にストーリーだけでなく何かが繋がっていくような感じがイイ

市民プールでは無茶しちゃだめだよりほりほw
622名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 11:12:02.69 0
優しい話で心が落ち着く
れいなおつw
623名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 12:20:55.53 0
どんどん仲間の輪が広がってくのが微笑ましいですね
624名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 12:55:15.91 0
りほりほ今回は勘弁してあげるの
そのかわりグフフ
625名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 15:38:33.04 0
それが一番怖いんっすよ
626名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 17:42:46.96 O
ノリ;´ー´リ<やっぱり逃げよう…
627名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 19:17:49.45 0
とりあえず利息代わりにパンツ置いていけなの
628名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 19:27:09.50 0
嫌ヤシ
629名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 20:50:29.84 0
<れーなが捕まればいーじゃん
630名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 21:41:18.94 0
>>588-590 の続き。

 夕暮れのひこうき雲。
 明日は雨かと訊ねてみれば、何処からか嗄れたレコードの音が聞こえてくる。
 春夏秋冬。
 季節は巡り、廻り、回り。

老人がベッドに仰向けに寝そべるようになってから、少女に視線を向けることは無くなった。
真っ白な部屋の天井に向かって口を開く。

 「私の想いは、最後まで伝わらなかった。それでも良いと思ってた。
 だが、駄目だな、心臓をえぐり取られるような気持ちになる。
 だから無くなってしまえばいいと、思ったんだ。だが、それは、悪……か」
  「生まれたときから、わたしは欠けてたんだって、ここがね、しんぞうが、悪いんだ。
 おじいちゃんとおんなじ、おんなじだけど、おじいちゃんの方が悪いんだね。
 きょうもあのうた、きいてないね。おじいちゃんはあのきょく、すきじゃなかったのかな。
 …えりのことも、すきじゃなかったのかな。
 みんな、えりのこと、きらいなのかな、欠けてるから、きもちわるいのかな…」

少女の頭には包帯が巻かれていた。
傷痕が出来ていた。でもこんな痛みよりも、心臓が酷く痛んだ。
持病と同時に、精神が、ココロが、押し潰されそうに。鬱されて、涙が溢れる。
老人は撫でてくれなどしない。
ただボソボソと呟いて、真っ白な天井を見ていた。

 「ああ、誰かを想って目を閉じることは、不幸そのものなのかもしれないな」
631名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 21:41:55.63 0
老人は、自分自身に話しかけている。心の奥の自分自身に。
想いはここに在るのに、わたしはいない。
わたしはここにいるのに、わたしはいない。
わたしはいないのに、想いは此処に在る。

 「その目は私を見てないんだね」

傷痕が痛む。でも自分の想いは、確かに此処に。
希望が、自分を押し潰す。悟る。思い知る。

 老人の真っ白な部屋に、少女は初めから、独りで立っていた。
 レコードは二度と鳴る事はない。

――― 其処は、屋上だ。
 夕暮れ、女性は、屋上に居た。
 其処は階段の上、踊り場の隅、手摺のあっち側、向こう、何処か。
 ヒュー、という音が歌のコーラスのように聞こえる。
 街は、いつの間にか失った自分のはじっこに気付かずに、ずっと歌を唄っている。

そうだったのだ。
老人の部屋にあったレコードの音は、きっと、そんな歌ばかりなのだ。
期待をして、手を伸ばして、届かない。
昨日を全て忘れたフリして、言い訳と意味の無い繰り返し。
この曲は、そんなひとたちを不意に振り向かせるために、流れている。

 そしてそんな曲ですら、女性の近くで鳴ることを止めてしまった。
632名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 21:42:35.10 0
老人は誰を想い、誰を殺したのか、それを知る術はもうない。
女性は扉を開き、そして、大きな、小さな背中を見つけた。
死に方の模索を行い、ヒトは逝き方を選んでいる。

 其処はステージ、命の、オーディション。
 振り返る表情に驚きと、笑顔が浮かんでいた。

 「――― 『リゾナント』で待ってるって約束だったのに、破っちゃいましたよ」

景色が急に変わり、女性は静かに、微笑んだ。
風に水が揺れる、そのたびに、女性の身体もゆるやかな波に上下する。
まるで、宇宙を泳いでいるように。

 「だって皆がふんばってるのに、絵里だけ待ってるなんてそんなの。
 仲間なら仲間らしく、頑張ってみたくなったんです。だって、夢じゃなくて、現実だから」

ミナソコに身体を沈め、其処から歪んだ夜空を眺める。
月が水面に映っている。三日月が、揺れた。
他には何も無い、音も聞こえない。ここは宇宙だ、透明の、宇宙。

 「醜い夢ほど醒めないんだって。だから願うの、いつも願ってた。
 この死体のような未来が夢でありますようにって」

女性の瞳が次第に虚ろう。
探るように誰かを抱きしめ、誰かがむせび泣く声が響く。
頭を撫でる、サラサラとした髪が、風で揺れる。

 「でも大丈夫だって判ったんだよ、夢はいつかは醒めるんだって。
 だから諦めないで。きっと大丈夫だから」
633名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 21:43:12.91 0
諦めないで、ガキさん    


新垣里沙は涙を流しながら、女性を強く抱きしめた。
女性の身体がぐったりと動かなくなったから。
やがてセカイの風景も代わり、誰かの悲鳴が木霊する。
黄金の光が弾け、誰かが言葉を紡いだ。

 「終わらせよう、絶望も、希望も。そして…」

ヒト型を模した光は、一人の女性へと姿を変える。
新垣里沙は視線を交差させ、悲しみと喜びを入れ混じらせた表情を浮かべた。
背後に群がるのは【闇】と、狂気。

 「一緒だったはずなのに、どうして?」
 「あーしはただ、変わってほしかっただけなのに」
 「でも分かってたんでしょ?この子達が、私達が"共鳴"のチカラを
 持っていることで、世界は、また一つになることを望んでる。それを覆すことは出来ないの」
 「そうやね、多分、それはあーしらですら間に合わない。
 でも信じてる、何故バラバラだったはずのものが一つになるのか、一つになった後
 どうやって変わっていくのか、その答えが正しいと、信じ切ってみせる」
 「貴方はなぜそこまで…」
 「信じあうんはあーしらの専売特許やろ?」

新垣は唇を噛み締め、女性へと【闇】を解き放つ。
呑み込まれた女性の身体が爆発したように黄金の光を放ち、全ての光景が包まれた。
634名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 21:44:11.93 0
以上です。
少し話しが混雑してたりと読みにくい点もあるかと思います、すみません。

--------------------------------------------ここまで。


以上代理投稿終了
635名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 21:44:48.34 0
>>630-633
書き忘れていたのだよすまない作者様m(__)m
636名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 21:59:27.42 0
>>635
作者も代理した人も乙
りほりほのスク水からどうやったらこんな展開になるのかわからないがこういう話は好きだ

>世界は、また一つになることを望んでる

この辺は創世記の[Takahashi](01)477 名無し募集中。。。からスレの底流に流れ得ているものを感じた
続き待ってます
637名無し募集中。。。:2012/09/10(月) 23:33:21.92 0
何が起こったのか
そして何が起こってゆくのか
638名無し募集中。。。:2012/09/11(火) 01:34:06.04 0
寝るのだよ
639名無し募集中。。。:2012/09/11(火) 05:00:55.56 0
へっぷし
640名無し募集中。。。:2012/09/11(火) 08:05:42.08 0
現実は色々移りゆくねえ
641名無し募集中。。。:2012/09/11(火) 12:02:49.34 0
リゾナントに行きたいな
642名無し募集中。。。:2012/09/11(火) 14:58:42.35 O
30年タダ働きの店員が不機嫌そうだがなw
643名無し募集中。。。:2012/09/11(火) 17:26:45.43 0
ねえ笑って?
644名無し募集中。。。:2012/09/11(火) 18:28:55.12 0
从*` ロ´)<うるさいっちゃ!
从*`・ 。.・)<お客さんに失礼なの!
645名無し募集中。。。:2012/09/11(火) 20:33:43.44 0
リゾスレで作品書くきっかけになった舞台DVD届いたよ保全
646名無し募集中。。。:2012/09/11(火) 21:49:44.49 0
今スレは何も書いてねえ俺があげておこう
647名無し募集中。。。:2012/09/11(火) 21:56:42.36 0
書かないのが普通になってしまったなあ
648 忍法帖【Lv=2,xxxPP】 :2012/09/11(火) 23:38:38.16 0
ずっきさんのAERAはすくすく育ったのだろうか
649名無し募集中。。。:2012/09/12(水) 00:47:36.18 0
よく分からんがおやすみ
650名無し募集中。。。:2012/09/12(水) 01:57:23.37 0
あえあえあ
651名無し募集中。。。:2012/09/12(水) 06:19:28.23 0
おは
652名無し募集中。。。:2012/09/12(水) 06:51:32.79 0
653名無し募集中。。。:2012/09/12(水) 08:02:49.40 0
夜中になんかあった?
654名無し募集中。。。:2012/09/12(水) 08:07:34.63 0
夜中というか朝方なんかおかしかったかな
655名無し募集中。。。:2012/09/12(水) 09:50:50.88 0
そいつあブルーだぜ
656名無し募集中。。。:2012/09/12(水) 12:07:59.87 O
昼はリゾナントで食べたいな
657名無し募集中。。。:2012/09/12(水) 12:51:32.95 0
30年タダ働きの店員が不機嫌(ry
658名無し募集中。。。:2012/09/12(水) 13:16:32.84 0
<何にすると?
659 忍法帖【Lv=7,xxxP】 :2012/09/12(水) 16:09:45.98 0
手間のかかるメニューを注文したらギロリとにらまれそうだw
660名無し募集中。。。:2012/09/12(水) 18:30:04.18 O
从*`・ 。.・)<ちゃんと働くの
661名無し募集中。。。:2012/09/12(水) 19:06:58.15 0
愛情入れといてとか軽口言ったら唾吐いてくれるかな?wkwk
662名無し募集中。。。:2012/09/12(水) 21:00:11.97 O
|||9|^_ゝ^)<出禁
663名無し募集中。。。:2012/09/12(水) 21:49:29.40 0
ひでぇw
664名無し募集中。。。:2012/09/12(水) 23:18:49.80 0
ナマタに言われる筋合いないわw
665名無し募集中。。。:2012/09/12(水) 23:53:16.05 0
どっちかっつーとナマタの方が出禁になるべきw
そういえば9・10期はリゾナント手伝ってるのかな?
666名無し募集中。。。:2012/09/13(木) 00:33:01.53 0
バイト代は生写真
667名無し募集中。。。:2012/09/13(木) 02:20:53.39 0
PONPONコンビははりきって働くなw
668 忍法帖【Lv=20,xxxPT】 :2012/09/13(木) 07:30:09.55 0
モーニングうええおええ
669名無し募集中。。。:2012/09/13(木) 10:33:45.51 0
OHA
670名無し募集中。。。:2012/09/13(木) 12:05:19.76 0
ランチはリゾナントに行こうかな
671名無し募集中。。。:2012/09/13(木) 14:25:33.32 0
定休日だった
672名無し募集中。。。:2012/09/13(木) 15:14:23.44 0
マスターまた変なバイトか潜入捜査か

http://image.pia.jp/images/news/img/ORG_20120912000010.jpg
673名無し募集中。。。:2012/09/13(木) 16:26:52.75 0
マスター明日で○○歳なのに・・・
674名無し募集中。。。:2012/09/13(木) 17:49:08.80 0
>>672
一発でダークネスにバレるなw
675名無し募集中。。。:2012/09/13(木) 19:08:17.90 0
マスターといいガキさんといい
童顔だなw
676名無し募集中。。。:2012/09/13(木) 20:08:19.12 0
そうかと思えばこんな潜入もしているメンバーたちw
http://tsun-pro.com/ranking/
677名無し募集中。。。:2012/09/13(木) 20:35:04.35 0
678名無し募集中。。。:2012/09/13(木) 20:58:11.01 0
そう俺も思った!
やっぱりリゾナントだよねこれ
679名無し募集中。。。:2012/09/13(木) 21:20:21.69 0
賛否両論あるだろうが現メンでやってくれて嬉しい
フクちゃんがリンリンポジみたいだがやはりおっぱいだからか
680 忍法帖【Lv=20,xxxPT】 :2012/09/13(木) 22:54:37.28 0
共鳴が受け継がれていくのね
681名無し募集中。。。:2012/09/13(木) 23:35:11.32 O
やはりリゾですよね!!衣装も期待♪
682名無し募集中。。。:2012/09/14(金) 00:07:03.96 O
i914
683名無し募集中。。。:2012/09/14(金) 00:09:00.68 0
マスターおめ
684名無し募集中。。。:2012/09/14(金) 01:27:59.51 0
愛ちゃんおめ
しかも「モーニング娘。」って名前が決定した日でもあるんだな
ヲタ暦長いが初めて知ったw
685名無し募集中。。。:2012/09/14(金) 06:11:24.44 0
おはよう諸君
686名無し募集中。。。:2012/09/14(金) 07:11:47.98 0
アイちゃぁぁぁぁ〜〜〜〜ん!!!!
687名無し募集中。。。:2012/09/14(金) 09:09:18.36 0
時は流れているねえ
688名無し募集中。。。:2012/09/14(金) 09:11:56.49 0
マスターおめでとさん
689名無し募集中。。。:2012/09/14(金) 11:57:26.76 O
今日はリゾナントでお祝いかな?
690名無し募集中。。。:2012/09/14(金) 13:13:12.13 0
れいなだけはお仕事ですよ?
691名無し募集中。。。:2012/09/14(金) 16:13:17.02 0
借金まみれいな
692名無し募集中。。。:2012/09/14(金) 17:01:13.75 O
<なんでれいなが…
<ハイハイ働くの
693名無し募集中。。。:2012/09/14(金) 19:14:00.60 0
れいなが不憫すぎるw
694 忍法帖【Lv=28,xxxPT】(1+0:8) :2012/09/14(金) 20:37:40.91 0

           (    ) |
  (.⌒⌒⌒)  .(   ) |
   |_i_i_i_i_i_|    ζ ジュー
   从*` ロ´)っ=(二二)|<人使い荒かとよ
       ノ . || ̄ ̄ ̄|
695名無し募集中。。。:2012/09/14(金) 21:30:24.17 O
給料渡してあげてw
696名無し募集中。。。:2012/09/14(金) 21:40:12.40 0
タダ働きだから現物支給のCDもなしかw
697名無し募集中。。。:2012/09/14(金) 21:49:34.32 0
秋紺リゾ確定
さてジュンポジからフクポジの練習するか
698名無し募集中。。。:2012/09/14(金) 22:15:26.24 0
てかれいなリゾのCD何枚持ってるんだよってなる
699名無し募集中。。。:2012/09/14(金) 23:21:00.63 O
从*` ロ´)<いくらなんでもあんまりっちゃ!
700名無し募集中。。。:2012/09/15(土) 00:28:56.67 O
701 忍法帖【Lv=5,xxxP】(1+0:8) :2012/09/15(土) 01:45:34.37 0
702名無し募集中。。。:2012/09/15(土) 03:17:16.95 O
703名無し募集中。。。:2012/09/15(土) 07:55:01.17 0
にゃん
704名無し募集中。。。:2012/09/15(土) 10:07:08.16 O
にゃー
705名無し募集中。。。:2012/09/15(土) 11:22:45.05 0
ここが噂の猫カフェか
706名無し募集中。。。:2012/09/15(土) 12:56:46.28 0
店の看板猫というより店の奴隷猫
707名無し募集中。。。:2012/09/15(土) 15:20:28.57 0
この流れは地下プールの話からなのね
708名無し募集中。。。:2012/09/15(土) 15:28:07.37 O
ノリ;´ー´リ ゴメンナサイ…
709名無し募集中。。。:2012/09/15(土) 16:45:44.10 0
スレの保全ネタや流れの元になるような話を書ける作者になりたいぜ
710名無し募集中。。。:2012/09/15(土) 17:55:15.65 0
544 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2012/09/15(土) 16:06:24.25 0
変態ふくちゃんとうとうさゆえりジビッツ作っちゃった
http://beebee2see.appspot.com/i/azuY8YKJBww.jpg
http://24.media.tumblr.com/tumblr_madfc1K0zQ1qzegu6o1_500.jpg

551 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2012/09/15(土) 17:26:15.15 0
キャスパー ‏@casper2253
リゾナントのガキカメポジションがさゆみずきで感激。ふくちゃんはえりパート( ;∀;)
711名無し募集中。。。:2012/09/15(土) 19:38:23.60 O
魂の継承だな
712名無し募集中。。。:2012/09/15(土) 20:24:35.36 0
また夢を見た  同じ夢だ

「あんたじゃ私を超えられないよ」

何度も繰り返し見る 同じ夢

「結局 あんたはね あたしの代わりにしかならないんだ」

あたしはだれとくらべられている? だれにもとめられている?

「あんたがなにをしても みているのは過去の姿を追っているんだよ」

違う、違う、そうじゃない、私は 私だ それ以外の何者でもない

「あんたがいまあるのは あたしたちがいるからなのよ わかってる?」

それはそうかもしれない みとめよう
でも いまと むかしはちがう

『そう 違うんだから あなたにはあっし、いやあっしらを超えてもらわないと困る』

・・・認めてくれる声もする

『過去にしばられるな 新たな世代よ あっしらは ともにひとつ』

時代はかわる わたしはかわらない それがいいんだ

過去を超え 時代を跳ね返し 突き進む
荒ぶる魂は蒼き共鳴の元から解き放たれ 新たな扉が開かれる

保全
713名無し募集中。。。:2012/09/15(土) 20:29:36.04 0
熱いね
刺激される懐かしさを覚える熱さだ
714名無し募集中。。。:2012/09/15(土) 22:11:17.65 O
枯れかけた創作意欲が燃え上がるな
715名無し募集中。。。:2012/09/15(土) 22:18:06.69 0
何か書きたい気持ちが久々に沸き上がった
時間がないけど…
716名無し募集中。 。 。:2012/09/15(土) 23:37:29.29 O
カナリアの人です。精神的に、まだまだ落ち着きませんが落ち着いたら、カナリアと現メンの話を構想しようかなと思ってます。
717名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 01:11:31.84 O
ねるなんと
718名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 07:04:11.80 0
起きてー
719名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 09:05:02.09 O
はっ
720名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 11:40:01.67 0
全てが夢の出来事だった







ノリ*´ー´リ<でもそうはならなかった
721名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 13:15:20.93 O
力強いじゃないか
722名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 13:35:43.89 0
>>630-633 の続き。

――― 醒める。
真っ白な天井、少しだけ不安になる、今は、まだあの現実の中?

 「聖!」
 「みずきちゃん!」

聴覚が、視覚が、触覚が、二人の姿を見つけ、在ることを感じさせる。
元気な笑顔を浮かべてくれる彼女達に、譜久村は自然と、ほころんだ。
瞬間、引き上げられるように意識が覚醒する。

 「里保ちゃんは!?」
 「隣で寝てるよ」

鈴木を挟み、隣のベットには鞘師が寝息を立てていた。
冷静になってみると、ここは保健室らしく、時計を見るともう夜になろうとしている。

 「…里保ちゃんと一緒に居た子は?」
 「大丈夫だよ。先に目が覚めて帰っていったから」
 「そっか、良かった…助けられたんだね」
 「でも不思議やったね、気がついたらあの水も無くなっとったし。
 何よりも窓が元に戻っとったっちゃんっ」
 「え?」
 「確かに割ったはずっちゃけど、まあ先生にも上手く言って、聖達をここまで
 運んでもらえたらええんやけどね、怒られなかったのはラッキー♪」
723名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 13:36:46.63 0
生田がニヒッと笑ってピースした。
妙なことを口走ったが、あまりにもアッサリと言うものだから譜久村は面喰ってしまう。
正直、彼女よりも一緒に居た三人が巻き添えを喰らっていたかもしれない訳だが。

 「どうやって言ったの?」
 「簡単っちゃよ。水にすっころんで気絶しちゃったんですーって」
 「ちょ、私達がアホみたいじゃないそれ」
 「でも信じてくれたけんね」

生田が悪びれた様子もなく言いのけ、譜久村は文句を呟く。
ただそのやりとりが、ようやく終わった事を告げているような気がした。
鈴木も安心したようにその姿を見守っている。

 「ああ、あと、今先生が家に電話してくれとるよ。聖のところは
 お母さんが怖い人やけんね、上手く言ってくれるようにお願いしといたから」
 「あ、そういえばこんな時間…ごめんね、私のせいで二人にも迷惑かけて…」
 「それは里保にも責任があるっちゃよ。なんか変なのに狙われとおみたいだし」
 「うーん、何から話せばいいのか…」

生田の疑問に譜久村が頬を掻く。
すると、保健室のドアがノックする音が聞こえ、三人は顔を見合わせる。
先生が戻ってきたのか?
咄嗟に鈴木が立ちあがり、ドアを開けようと手を伸ばす。
瞬間、グアッと勢いよく外側から開け放たれ、鈴木は思わず横に避けた。

 「りほりほ!りほりほおおおおお!」
724名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 13:37:31.83 0
叫び声が上がる。一瞬空気が固まった様な気がした。
黒髪をなびかせ、長身の背中が走り抜けた先には二人が居る簡易ベット。

 「きゃあああああああああああ」

と、何も無い所でつまづいた長身の影が、譜久村が居る簡易ベットへと倒れ込んだ。
その後に悲鳴。
名も知らない訪問者に抱き倒されてしまった譜久村は慌てふためく。

 「はっ、このふくよかな感じ。
 この持ち主は誰!?もしやこれが覚醒したりほりほだというの!?」
 「聖になにするっちゃこの変態!」
 「む、失礼なの、この私に向かって変態なんてそんな面白みのない名前で
 片付けようという誰かさんは、KYえりぽんね?」
 「な、なんでえりなのこと知っとおと?」

生田が不意をつかれたように珍しく慌てた。

 「ドアの前に居るのがかのんちゃん、で、この子がフクちゃん、ね。
 ふむふむ、やっぱり可愛らしい子が揃ってるの。若くて可愛くて…はぁ」
 「道重さん、あまりそういうことをするのはどうかと思いますよ」

鈴木にバシバシと叩き起こされた鞘師が、ムクリと身体を上げる。
道重と呼ばれた影、女性はその姿を見て更に表情を豊かにさせた。
725名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 13:38:55.54 0
>>722-724
以上です。

この作品において謙虚に隠れて誰かの事をベタ褒めしては
危ない発言をするという行為をしている、という事は一切ありません。
言いたいことは面と向かって言いましょう(真顔

愛ちゃんの誕生日に続き11期メンバーが決定し、9期と10期の
ブログ始まったりといろいろ目まぐるしいですが嬉しいことだらけです。

>>710
愛ガキのお守りを作った人と同じくらいの熱を感じる…。

-----------------------------------ここまで。

したらばからの転載です


726名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 14:42:12.63 0
遂につながったのか
これまでじれったいくらいゆっくり進んでた話が一気に開けてきた
727名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 15:35:25.68 0
>>725
おっつー
さゆのテンション高
次はQ期以前のリゾナンターの動向が明かされるのカナ
728名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 18:06:34.55 0
ほいっ
729名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 19:27:26.18 0
一度最初から読み返してみよう
730名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 20:55:02.20 O
静かな夜だ
731名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 21:49:35.03 0
『恋愛ハンター』

〈どんな場面でも逃げない〉

1−1

「No.6も結局失敗したわね。報告書みたけど、あの子達ほんとダメダメよね〜。
殺せるときに殺しとかないと後で酷い目に遭うんだって、なんで分かんないのかな?」
粛正人Rのその言葉に、マルシェは反論する。
「あの…、彼女たち、標的を『殺せ』とは指示されてなかったと思いますけど…」
「そんなの関係ないわよ。『絶対に殺すな』とも言われてないんでしょ?
正当防衛で仕方がありませんでしたって言えば、それで済む話じゃない」
「これまで石川さんはそうしてきたんですか?」
「私は正直者だから、そんな言い訳しない」
「そうですよね…。石川さんはいつも『ムカついたから殺した』ですもんね…」
「分かってるじゃん」
(だから、上から信頼されないんだって、この人、なんで分かんないのかな?)
マルシェはそう思いながら、ある少女のデータを画面に開いた。Rがそれを覗き込む。
「どれどれ…。なんか地味な能力ね〜。やっぱりこの子もダメなんじゃない?」
「そうですかね。これ、初めて戦う相手には、かなり有効だと思いますよ」
「じゃあ、賭ける?もしこの子が失敗したら、最新の能力増幅薬1ダースちょうだい」
「あれ、かなり寿命縮めますよ」
「別にいいわよ。長生きしようなんて思ってないし」
「石川さんがよければ別にいいですけど…。じゃあこの子が成功したら何くれます?」
「そうねえ…、私が趣味で作った、断末魔だけを二時間収録したCDなんてどう?」
「……ほんと、素晴しいご趣味ですね」
Rはそれを褒め言葉として受け取った。
「まあね!それはともかく、この子以外の6人はもう全員『不用品』ってことよね。
てことは私の出番か。あの子達、どんな断末魔を聞かせてくれるのか、楽しみだわ〜」
Rは両手の指を胸の前で組み、嬉しそうにお尻を振った。
732名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 21:50:36.89 0
1−2

鞘師里保と鈴木香音は、とある寂れた歴史博物館に来ていた。
社会科の授業で歴史新聞を作ることになり、その資料を集めるためだ。
入り口の左側にある小窓の向こうでは、受付係と思われるおじさんが爆睡していた。
入場料と書かれた箱に中学生2名分の料金を入れ、二人は暗い廊下を進んでいった。
休日だというのに、他に入館者は一人もいないようだ。
「里保ちゃん!見てて!」
鈴木は、大声で替え歌を歌い、廊下を猛スピードで匍匐前進し始めた。
「香音ちゃん、遊びに来たんじゃないんだよ」
「私さあ、歴史とか超苦手だもん。こういうことは頭のいい里保ちゃんにまかせた!」
鈴木はそう言いながら鞘師の方を振り返り、渾身の変顔をした。
鞘師はニコリともせず、一人で展示室の方へ向かっていった。

鞘師が三番目に入った展示室は、ガランとしていて中学校の教室ほどの広さがあった。
たくさんのガラスケースが壁際に並び、そこに日本の伝統的な武器が展示されている。
鞘師は、その中の一振りの日本刀に釘付けになった。
機能美の塊のような刀身。美しく装飾された鞘。
鞘師は時間を忘れて、その美を堪能していた。
「きれいじゃのう…」
「本当ね」
突然、女性の声がした。鞘師は後ろを振り返る。
そこには、自分よりは年上と思われる、一人の少女が立っていた。
「でも、こんな風に飾られてるだけじゃあ、この子が可哀そう…
この子が生まれたのは、こうやって見世物になるためじゃないのに…」
少女がケースに近づく。その目つきは明らかにおかしい。
「ほら、聞こえるでしょ?『私、もっと綺麗になりたい…、私の唇に紅をさして…』」
少女はガラスを拳で叩き割り、日本刀を手に取った。
「分かったわ…、私が今から綺麗にお化粧してあげますからね…」
妖しい笑みを浮かべて刀に話しかけながら、その少女は鞘師の方を向いた。
733名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 21:51:20.16 0
1−3

「あんた、何者だ?」
少女はその問いに答えず、両手で刀の柄を握り、切っ先越しに鞘師を見据えた。
その構えは、四肢のどこにも力みがない見事なものだった。
だが、鞘師には余裕があった。少女の構えには、わずかではあるが隙がある。
このレベルの相手なら容易に倒せると鞘師は思った。
睨み合って数秒が経った。
(そろそろ来るか…)
鞘師がそう思った時、少女の姿が突然消えた。
(何っ!?)
鞘師は左の脇腹に冷たさを感じた。
そして、左後方から少女の声が聞こえてきた。
「うふふっ…。とっても綺麗よ…」
鞘師が振り向くと、少女が満足そうな顔で、目の前にかざした刃先を見つめている。
自分の左の脇腹を見ると、服が裂けていて、白い肌に一本の赤い筋が走っている。
そこに、赤くて丸い球が幾つか生まれ、大きくなり、じわじわ垂れ落ち始めた。
鞘師は痛みを堪えながら、いま起こったことを冷静に分析した。
少女が消えて、後ろに現れた。そして、その間に自分の腹部が斬られた。
少女は瞬間移動したわけではない。瞬間移動であれば、斬る「時間」がない。
おそらく、彼女は、文字通り目にも止まらぬ高速で移動し、攻撃したのだろう。
人より優れている自分の動体視力をもってしても、少女の動きは全く見えなかった。
ということは、少女は通常時の何十倍、いや、何百倍の速度を出せるということか…。
仕方がない。もう一度少女の動きを観察して、攻略の糸口を掴もう。
そう結論付けると、鞘師は少女の一挙一動を見逃すまいと目を凝らした。
鞘師の頭の中に、「逃げる」という選択肢はなかった。
「この子、あなたの血がもっと欲しいみたい…」
少女は、わずかに血脂のついた刃先を、鞘師に向けていた。
鞘師は瞬きもせず少女を凝視し続ける。少女の視線が一瞬右大腿部の辺りに注がれた。
そして、また少女が消えた。鞘師は、左足に冷たさを感じた。
734名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 21:51:57.86 0
〈立場なんてのは関係ない〉

2−1

スカートが裂け、左の太ももの内側から血が流れ出ている。
鞘師は激痛に耐えながら、再び敵の能力を分析し始めた。
消える前の目線から推測するに、少女は、間違いなく右足を斬るつもりだった。
実は、鞘師は「罠」を仕掛けていた。右足に分かりやすい隙を作っておいたのだ。
そして、少女が消えた瞬間、鞘師は右足を引いた。
結果、少女は、狙っていた右足を斬ることができなかった。
左足を斬られたのは、たまたま切っ先が届いてしまっただけだろう。
鞘師は、以上の状況から、二つの結論を導き出した。
一つは、少女は、消える前に、刀で斬りつける場所を予め決めているということ。
もう一つは、攻撃が始まったら、斬りつける場所を途中で変更できないということ。
「里保ちゃん!?」
突然、鈴木の声がした。鞘師の傷と少女の刀を見て、鈴木は状況を理解したようだ。
鈴木は怒りの形相で少女に突進した。鞘師は足の傷で動けない。鞘師が叫ぶ。
「香音ちゃん!そいつ、すごいスピートで襲ってくるから、気を付けて!」
頷く鈴木。とりあえず鞘師は、鈴木の戦いを見守ることにした。
二人の戦いが始まった。だが、少女はなぜかあの「加速」攻撃をしてこない。
鈴木は、物質透過能力を駆使して、少女の斬撃をすり抜けることができる。
そのため、鈴木の方が次第に優勢になり、少女は防戦一方になっていった。
戦い始めて5分後、ついに鈴木の強烈な蹴りが、少女の腹部を完璧にとらえた。
少女は数m吹っ飛ばされて、部屋の壁に背中を打ちつけた。
鈴木もさすがに攻め疲れたのか、その場を動かずに呼吸を整えている。
少女は何とか立ち上がり、刀を構えた。
睨み合う両者。
そして、鈴木が少女へ向かって駆け出そうとした時、少女が消えた。
鈴木は急いで透過能力を発動する。一方、鞘師は鈴木の5mほど後方を見た。
鞘師の視線の先に、少女が現れた。刀に付着している血の量がさっきより増えていた。
735名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 21:52:31.62 0
2−2

「ううッ…」
鈴木がしゃがみこむ。腹部から血が大量に流れ出す。
(香音ちゃん…)
鈴木の状態を心配しつつも、鞘師は懸命に分析を続けた。
この少女の特殊能力が「加速」であることは間違いない。
今の「加速」攻撃を見ると、少女が消えてから鈴木の後方に現れるまで、約0.4秒。
その間に少女は10m程移動した。あの少女の通常の動きなら、2秒はかかる距離だ。
すると、その速度は通常の約5倍…。
だが、その程度であれば、自分の動体視力をもってすれば見えないことはない。
それなのに、今回も自分の目は少女の姿を捉えることができなかった。
このことから導き出される答えはただ一つ。
おそらくこの少女は、「加速」能力だけではなく、「透化」能力も使用している。
動きが見えないのは、速すぎるからではない。見えないように姿を消しているからだ。
加えて、もう一つ気付いたことがある。
それは、少女が「加速」能力を連続で使用できないということだ。
もしできるのであれば、鈴木に攻め込まれ、劣勢になったときに使っていたはずだ。
では、なぜ使用できなかったのか。
おそらく、あの能力は、発動する前に一定の「準備」時間が必要なのだろう。
ちなみに、鈴木は、物質透過能力を発動させるのに、約0.5秒かかる。
しかし、一度発動させれば、3秒間程その状態を持続させることができる。
よって、少女が「加速」能力を発動するタイミングを正確に予測することができれば、
鈴木はその物質透過能力によって、少女の斬撃を完全にかわすことができる。
鞘師は、少女の「加速」攻撃を、もう一度じっくり観察したいと思った。
少女が鞘師にゆっくり近づいて来る。
鞘師の目は、少女が自分の心臓の辺りへ一瞬視線を向けたのを見逃さなかった。
(次はここを狙っちょるんか…。避けそこのうたら一巻の終わりじゃのう…。
じゃが、うちは負けん。絶対に香音ちゃんに攻撃のタイミングを教えるんじゃ)
鞘師は、少女の動きに目を凝らした。
736名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 21:53:15.54 0
2−3

その時、鈴木が叫んだ。
「里保ちゃん!見てて!」
そして、少女に再び突進し、息もつかせぬ連打を繰り出した。
鞘師はすぐに気付いた。
鈴木は、己の身を犠牲にして、鞘師に少女の能力を見せようとしているのだ。
(香音ちゃん…、ありがとう。香音ちゃんの覚悟、絶対に無駄にしない!)
鈴木は攻め続ける。ただし、腹部の流血が尋常ではない。
鈴木の動きはすぐに鈍くなり、ついに足が止まった。
少女がニヤリと笑う。そして、少しの間鈴木を睨みつけてから、また姿を消した。
0.4秒後、少女は鈴木の後方に姿を現し、同時に鈴木の肩口からは鮮血が噴き出た。

少女は倒れている鈴木の頭を踏みつけ、それまでの鬱憤を晴らすかのように喚いた。
「雑魚のくせにでしゃばりやがって!私の標的は、お前じゃなくて鞘師里保なんだよ!
お前みたいな雑魚はなあ、自分の立場をわきまえて、大人しくしてりゃあいいんだ!」
鞘師の目つきが変わる。
鞘師の心の中で固い「殻」のようなものが割れて、灼熱の怒りが溢れだした。
その溶岩のような怒りは、血と混じりあって、全身に満ちていく。
少女はようやく気が済んだのか、鈴木から離れて、刀の切っ先を鞘師に向ける。
鞘師は無意識に、割れたガラスケースの中にある鞘を取り出した。(…1、…2、)
そして、その鞘を左手で握り、自分の左脇腹に押し付ける。(…3、…4、)
脇腹から血があふれ出し、握った鞘の口へ滑り込んでいく。(…5、…6、)
見えない刀の柄を握るように、鞘師は右の拳を鞘の口に当てた。(…7、…8、)
鞘師が両目を閉じる。(…9、…来る!)
少女が消えた。同時に、鞘師の右拳が、凄まじい速さで弧を描く。
その右拳の後を追うように、鞘の口から真っ赤な線が走った。
消えてから0.4秒後、鞘師の後方に、少女の姿が現れる。
少女は刀を右前方に突き出し静止している。鞘師も右拳を天高く掲げたまま動かない。
静かな時が流れる。その静寂を破ったのは、少女が床に倒れた音だった。
737名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 21:54:15.13 0
〈恋のタイミングをのがさない〉

3−1

俯せに倒れている少女の胸の辺りから血が流れ出し、野火のように広がっていく。
鞘師は右手を降ろし、床にゆっくり跪いた。
服の胸元が刀で斬り裂かれている。
だが、露わになった白い肌には、かすり傷一つ無かった。

鞘師は、少女の「加速」攻撃の弱点を掴んでいた。
あの攻撃は、「どこを」・「いつ」襲って来るかさえ分かれば、容易にかわせる。
「どこを」襲って来るか。
これは、少女の視線を追えば簡単に推測できた。
「いつ」襲って来るか。
これも、鈴木香音のおかげで、遂に見極めることができた。
人は、何かに集中すると、どうしても呼吸の仕方や目の動きに変化が生ずる。
鞘師は、そのような変化が少女の身体に現れたのを見逃さなかった。
そして、その変化から、少女が消えるまでの時間を正確に計った。
その結果、少女が集中してからちょうど10秒後、「加速」能力が発動した。

ちなみに鞘師は、異常に正確な「時間感覚」を持っている。
例えば、表示を見ずにストップウォッチを15秒00で止めることなどは朝飯前だ。
今回の戦いにおいては、鞘師のこの精密な「時間感覚」が力を発揮した。

一方、少女を斬ったことについては、鞘師自身、よく覚えていなかった。
戦い終えた鞘師は、周囲をよく見回してみた。
すると、血痕が、自分の足もとの床から、壁、天井まで一直線に走っている。
鞘師はそれを見て、自分があの時何をしたのか、ようやく理解した。
(血で、斬ったんか…)
それが、鞘師の特殊能力、液体限定のサイコキネシスの最初の発現だった。
738名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 21:55:10.27 0
3−2

鞘師の連絡を受け、佐藤優樹が道重さゆみと一緒に瞬間移動してきた。
さゆみは、すぐに、深手を負っている鈴木の治療に取り掛かった。
一方、佐藤は、持参したバケツと雑巾でせっせと展示室の掃除をしている。
さゆみは、両手からピンク色の光を放出し、鈴木の傷を一分ほどで全て治した。
ただし、出血量がかなり多かったため、しばらくは安静が必要だ。
さゆみに「寝てもいいんだよ」と優しく言われると、鈴木はすぐに寝息を立て始めた。
続いてさゆみは、鞘師の治療にとりかかった。
鞘師の傷はさほど深くなく、意識もはっきりしている。治療は数秒で終わった。
「あの…、道重さん…。そこの傷…、もう治ってますよ」
さゆみは、鞘師の内ももを撫でている手を名残惜しそうにゆっくり放した。

さゆみは、敵の少女をそのままにしておけず、傷の治療を始めた。
傷は非常に深く治療には数分かかりそうだった。鞘師は複雑な表情でそれを見ていた。
5分後、佐藤の瞬間移動が可能になり、鈴木を喫茶リゾナントへ運んでいった。
それからすぐに、少女の治療が完了した。しかし、少女は気を失ったままだ。
汗を拭きながらさゆみが顔を上げると、見なれない少女が展示室の入口に立っていた。
鞘師もすぐに気付き、さゆみの前に跳び出して臨戦態勢をとる。
だが、その少女は意外にも二人に深々と頭を下げた。
鞘師の肩越しにさゆみが尋ねる。
「最近、立続けに私たちを襲ってきたのは、あなたの仲間よね?目的は一体何なの?」
「…自分たちの力を組織に認めてもらって、正式な『戦士』に昇格するためです…」
「組織って、ダークネス?」
「はい…」
「あなた、ダークネスがどんな組織か、分かってるの?」
「……」
「あいつらは、人を人とも思わない、ひどいやつらなのよ?そんな…」
突然、さゆみの言葉が止まった。
鞘師が振り返ると、さゆみの鳩尾の辺りに、赤く染まった刃先が突き出ていた。
739名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 21:55:55.28 0
3−3

さゆみの背後には、気を失っていたはずのあの少女が刀を握りしめて立っていた。
「動くな!動いたら、心臓を斬る!」
鞘師は、刃先の位置と鬼気迫る少女の顔とを見て、やむをえず攻撃を断念した。
少女が鞘師を睨みつけながら、後から現れた少女に向って叫ぶ。
「せっきー!早くこいつを洗脳して!こいつさえ始末すればミッションは成功なの!」
「みーこ!もうやめて!その人がみーこの傷を治してくれたこと分かってるんでしょ?
もう、無理して悪人を演じるのはやめて…。そんなみーこ、私、見たくない!」
「なに甘いこと言ってんの!?私が負けたら、7人みんな終わりなのよ!?」
「そんなことない!組織から追放されたって、死ぬわけじゃないわ!」
「あのね、せっきー…、私達はもう組織について深く知りすぎてしまったの…。
そんな私達を、あの組織が無事に外の世界に戻してくれると思う?」
「……」
「…でも、私が昇格できれば、上に頼みこんで皆を救うことができるかもしれない。
私にとってあなた達は、生まれて初めてできた『仲間』なのよ…。
あなた達を守るためなら、私、鬼にでも、悪魔にでもなってやるわ!」
「…あんたこそ、甘いの…」
さゆみが蒼白い顔を苦痛で歪ませながら、後ろで刀を握り締めている少女に言う。
「…あんた、本当は心のどこかで気付いているんでしょ?
ダークネスが、あんたみたいな下っ端の言うことに耳を貸すわけないってこと…。
気付いているくせに、それを認めるのが怖くて、現実から目を背けてる…。
もし仲間を救いたいなら、自分の全てを賭けて、目の前の現実に立ち向かいなよ…。
その覚悟もないくせに、『仲間を守りたい』だなんて、軽々しく言うんじゃねえっ!」
さゆみが前へ動いた。
少女は反射的に刀を左に滑らせ、心臓を斬り裂く。
切っ先が背中から離れ、傷口から大量の血が噴き出した。
鞘師はすぐ刀を蹴り飛ばし、少女の顔面に拳を叩き込む。
さゆみはゆっくり前に倒れながら、胸に両手を当てた。
ピンク色の光が、さゆみの胸で爆発する。
740名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 21:57:07.77 0
〈Ending:計算なんてのはしない〉

「道重さん!道重さん!」鞘師は、さゆみの上体を抱き上げて叫んだ。
さゆみは、背中に鞘師の温もりを感じ、自分が生きていることを認識できた。

さゆみには強力な治癒能力がある。だが、意識が無ければ、その能力は発動できない。
そして、治癒能力を発動できなければ、当然のことだが、さゆみは死ぬしかない。
それが分かっていながら、さゆみは前に出た。
意識を失う前に能力を発動できるのか。また、できたとしても治療は間に合うのか。
それらの「計算」を、さゆみは一切しなかった。
さゆみは、人質をとられているという呪縛から、一刻も早く鞘師を解き放ちたかった。
さゆみの頭の中にあったのは、仲間を守りたいという思いだけだった。
鞘師は、さゆみを見つめながら、その愚かなまでにまっすぐな仲間への愛情と、心臓を
斬られるという壮絶な恐怖と痛みに耐えたその強靭な精神力に、畏敬の念を抱いた。

「みーこ」は床に這いつくばりながら、さゆみと鞘師の姿を呆然と見ていた。
「せっきー」が「みーこ」の横に跪き、手を肩にそっと乗せる。
八匹の犬が展示室に入ってきて、二人をとり囲み、一緒に消えた。

さゆみは、鞘師の可愛らしい顔を間近で見ているうちに、欲望を抑えきれなくなった。
「りほりほ〜、さゆみ、なんか目が見えなくなってきたの。もっと強く抱いて…」
ハンターのように爛々と輝いている目を見れば、その言葉が嘘なのはすぐに分かる。
だが、鞘師は、自分のささやかな胸の膨らみに、さゆみの顔をギュッと押し付けた。
(道重さん、今回だけ…特別ですよ)
「おー、いっつあぱぁらだいすなの!」

―おしまい―

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
以上、『恋愛ハンター』でした。なお、敵の少女のモデルは、(仮)の仙石さんです。
741名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 22:03:52.51 O
>>731-740『恋愛ハンター』
レス番忘れてました
携帯から失礼しました
742名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 22:59:41.40 0
おつです!
歌詞に乗せたテンポの良さと話の広げ方にいつも敬服します
リーダーの残念な一言もまた良いかとw
743名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 23:07:10.68 0
刀を血で染めるのを唇に紅をさすって表現するのがカッコいい
リーダーの強さも描けていて面白かった
744名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 23:14:07.89 0
>>741
いつもながら見事なストーリーの組み立てでおもしろかったです
…けど構想していた話と思い切りかぶった部分がありました…w

>もし仲間を救いたいなら、自分の全てを賭けて、目の前の現実に立ち向かいなよ…。
>その覚悟もないくせに、『仲間を守りたい』だなんて、軽々しく言うんじゃねえっ!

ここすごく好きでした
その後の残念さとのギャップがむしろ素敵ですw
745名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 23:30:41.11 0
構想してたのがかぶるってのは分かるw
さっさと形にしようw
746名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 23:33:41.75 0
>だが、鞘師は、自分のささやかな胸の膨らみに、さゆみの顔をギュッと押し付けた














ふう・・・
747名無し募集中。。。:2012/09/16(日) 23:44:16.16 0
リーダーカッコいいと思ったのにw
748名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 01:40:12.18 0
寝るッス
749名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 05:16:06.70 0
保全小ネタ作ってたらもう朝だよ保全
750名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 07:16:03.82 0
工藤遥と佐藤優樹が敵と遭遇したのは、陽が完全に沈み、夜が始まった直後のことだった。
いつだったか、太陽がじりじりと睨みを利かす午後、遥は図体だけが大きい男と遭遇したことがあった。
今回、ふたりの前に現れたのもその男と似たようなものだった。
現在のリゾナンター最年少であるふたりを前にして、男は鼻で笑う。

「どうして俺の相手が、こんなガキなんだろうなー」

そうして自虐的に言い放つと、男は拳を振り翳してきた。
相手は随分と大柄であったため、その拳の破壊力は凄まじい。ふたりとの体格差を考えても、この拳を浴びてはひとたまりもないだろう。

「膝悪いんだろ。ムリすんなよ、お嬢ちゃん!」

男はそうして遥の右膝を砕こうとした。
ある一戦で負傷した脚は、最近になってようやく回復の見込みが立ってきた。
こんな男にまた壊されてたまるかと思いっ切り脚を引く。瞬間に膝から激痛がのし上がってきた。

「どぅー?」
「そんな顔すんな、前向いとけよ」

心配そうに遥を見た優樹に対し、鋭く言い返した。
負傷して以降、彼女は一戦を退いて療養していたため、こうして実戦に赴くのは久しぶりだ。
まだリハビリも終わっていない現段階で、激しい戦いをするのはあまりに危険だった。
長引くことは得策ではないと無意識に思いながら短く息を吐く。
751名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 07:16:44.83 0
「威勢の良いのは口だけなんだろ」

口汚く吐いた男を睨み返した瞬間、男は大きくのけ反っていた。
優樹が男の懐に入り込み、顎を下から砕いたのだと気付いたのは、その数秒後のことだった。

「なっ―――?」

一瞬、なにが起きたのか分からないというように男は声を発したが、それは最後まで音として認められることはなかった。
優樹は左脚を軸にして体を回転させ、その反動で相手の右膝を砕いた。
勢いよく折れて体が傾き、顔が落ちそうになったとき、優樹は両手を結んで上から後頭部へと振り落とした。
鈍い「ぼぐん」という音のあと、男は前のめりに無様に地に伏せた。
土下座をしていたのに後ろから押されたようなその格好は実に滑稽で、思わず笑ってしまいそうになった。

「どぅー、だいじょうぶ?」

肩まで伸びたさらさらの髪を風に靡かせながら優樹はそう言った。
それを聞いたときに遥の心に浮かんだ最初の言葉は「いつの間に?」というものだった。
確かに遥は暫くの間、一戦から離れていた。暫くと言っても1ヶ月も経っていない。
そのわずか1ヶ月の間に、優樹はこんなにも成長していた。
いつもヘラヘラ笑って、なかなか戦闘の基礎を覚えられないで怒られてばかりだったくせに、と思う。
そう、怪我をする前に地下の鍛錬場で手合わせをしたときは、18分で私が勝っていたのに…と。

「まーちゃん、そいつまだ―――!」

遥は「ありがとう」の言葉を出すより先にそう言った。地面に伏した男の指がまだ動いていることに気付いたからだ。
勝利を手中に収めたという思い込みから相手の自爆に巻き込まれそうになったことを思い出す。
752名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 07:17:33.32 0
だが、優樹は黙って首を振る。慌てる素振りも見せない。そうして揺れる黒い髪が綺麗だなんて、ぼんやり思った。
優樹は膝を折って男の肩を叩いた。

「だいじょうぶですか?」

その言葉に遥はもちろん、話しかけられた男でさえも目を見開いた。
いったいなにを言っているのだろう、彼女は。敵に対して、生命を狙ってきた男に対して、なにを?

「まだやるって言うんだったら、相手します。でも、そしたら私もどぅーも、あなたをころしちゃいます」

その言葉はなんとも無機質なものだった。
機械的で、冷淡で、感情の色もないその言葉に、果たして音は乗っていたのだろうかと勘繰るほどだった。
少しだけ舌足らずで明るくて高い彼女の普段の声からは想像もつかない。
それ故に、彼女の言葉のもつ真意が強く強く色を帯びて迫ってきて、遥は思わず震え上がった。
ぞわぞわと、足の裏から虫がせり上がってくるような気持ちの悪さを払拭するように、水浴び後の犬のように体を振った。

「もう二度と攻撃しないってやくそくしたら、逃がしてあげます」

恐怖の言葉のあとにやって来た宣告に、再び耳を疑った。
男はしっかりと優樹と目を合わせ、その瞳の奥にある真意を見つけようとしていた。
当たり前だ。生命を狙ってきた男に対し、「助ける」と言っているのだから。しかも、“やくそく”という不定形な契約で。

「なに言ってんの?こいつはハルたちを殺しに来たんだよ。逃がすってどういうことだよ?!」
「もう闘わないってやくそくしたら、だよ。そうじゃなかったら」
「意味分かんないよ!なんだよ、やくそくって!」
753名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 07:18:25.82 0
男は目の前で繰り広げられる言い合いに唾を吐き、口元を拭ってよろよろと立ち上がった。
遥は思わず距離を測って構えるが、優樹は相変わらずその場から動かない。

「そうだぜ、お嬢ちゃん。なめてっとその首へし折るぞ」
「ホントに、まだ闘うんですか?」
「当たり前だ!お前たちを殺すまで、お前たちが殺すまで、終わらないんだ!」

男は一歩下がったところで拳を構えた。
先ほどよりも小さな構えは、憶病からなのか、コンパクトにして手堅く攻めようとしているからなのか、判別できなかった。
早く構えろよまーちゃん!と心の中で遥は思うが、彼女は黙ったまま男を見つめていた。

「しんで終わりなんて、いやです」
「なに……?」
「まーちゃんは、まだ、しにたくなんてないんです。でも、無意味にころしたくもないんです」

静かに、静かに、静かに、だが確実に、その言葉を優樹は胸に届けようとしていた。
彼にとって、優樹はいくつ年下なのだろう。優樹は遥より数ヶ月だけ年上だけど、まだ13歳の中学生。
そんな中学生の言葉なんて、世迷言で、戯言で、色なんて持っていない、ただの“音”でしかないはずなのに。
それなのに、遥も、そして男も、その場から一歩も動けずに佇んでいる。
彼女の、優樹の放った“意味”に耳を貸している。その瞳に、吸い寄せられるように、黙って、立っている。

「いきるんです。ちゃんと、ここに、いのちがあるから。私の信じる、想いのためにいきるんです。だから闘うんです」

優樹の瞳は遥からは見えない。いったいどんな色と輝きを放った瞳を、あいつに向けているというのだろうと思う。
あどけない中学生のそれではないことは分かっていた。
でも、れいなのような大人びた、何処か憂いだものとも、少し違う気がした。
754名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 07:19:32.89 0
「でも、闘うのと、ひとをころすのが、いっしょになるのは、いやです。ころすために、闘うんじゃないんです」

駄々をこねる、子どものようにも見えた。
成さねばならない現実と、自分の欲求とが乖離した、交わらない複雑な心が暴れている。それが彼女の苦悩なのか、我儘なのか、判別はできない。
だが、そのとき遥の頭には彼女の「今現在」目覚めている能力のひとつ、“死霊魔術(ネクロマンシー)”が頭に浮かんだ。
だからどうした?と聞かれれば、そこまでなのだけれど。

「あきらめて、くれませんか?」

それは随分と、乱暴なロジックだったが、優樹の中に混在している想いが膨張しているのが遥には分かった。
いくら背伸びをしても、鍛錬を重ねても、あの背中に追いつきたくても、まだふたりは「子ども」だった。
言いたいことを身勝手に口にして、そのくせに胸の気持ちを言葉にできない、どうしようもない、「子ども」だった。

「……バカか、お前は」

男は苦々しく吐き捨てた。やはりこんな子どもの荒唐無稽なロジックが通用するわけないと遥は改めて身構えた。
それでもなお、優樹は動かずに男を見つめていた。ああ、いまだ。と遥は思った。
その瞳、どんな色で、どんな音で、どんな想いで、まーちゃんはそいつを見てるの?
まーちゃんは、どうしてそんなに―――?

「俺にだって信念があんだよ。お前が信じるように、俺にも、下っ端なりのな」

男はそうして右腰に腕を伸ばした。
“千里眼(クレア・ボヤンス)”で視なくとも分かる手にした鉄の物質を直感的に判断した遥は走り、優樹を抱きかかえるようにしてビルの陰に隠れた。
高い銃声が2発響き、壁にめり込んだ。
755名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 07:20:26.38 0
「次は外さんぞガキどもがぁ!」

男の声が響き、足音が聞こえた。
遥は優樹の手を引いて路地を走り出す。しかし、優樹は走ろうとせず、あろうことか、その手を振り払った。

「ちょ、なにすんの?!」
「もう1回言ってみる!」

この期に及んでなにをと聞き返さなくても分かっていた。
優樹はまた、あの男を説得しようとしている。
冗談じゃない。今度あの至近距離で撃たれてしまっては、確実に避けきれる保証はない。

「なに言ってんの?私たち闘ってるんだよ、あの男と。向こうはこっちを殺す気でいる。こっちも本気でやらないと、マジでヤバいから」
「でも!」
「でもじゃない!まーちゃんがイヤって言っても、私が殺すから」
「そんなのダメ!」

男に向かおうとする遥の手を優樹が取った。
振りほどこうともがいても、思いのほかに彼女の力が強くてそれが敵わない。
こんな場所で禅問答をしている場合ではないのに、どうして彼女は行かせてくれないのだろう。
話しならあとでいくらでも聞いてあげるのに。と思った瞬間に、遥の“千里眼(クレア・ボヤンス)”はそれを捉えた。
ヤツが、来る―――

「受け入れなよ!」

優樹の手を再び取って遥は走り出した。
再び路地に入った瞬間、左脹脛の裏を銃弾が掠めた。痛みはさほどないが、思わずよろける。
「どぅー!」と叫んだ彼女を遮って遥は叫んだ。
756名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 07:21:34.08 0
「仕方のないことなんだよ!リゾナンターである以上、闘うのも、殺すのも!
それを分かってリゾナンターであることをまーちゃんは選んだんだよ。だったら受け入れなきゃ!仕方がないんだって!自分で決めたんだって!」

喧しく捲し立てる言葉は後方にいるであろう男にも聞こえていたはずだ。
彼は紳士なのか、自分も遥の言葉の“意味”を捉えようとしていたのか、それともただの気まぐれか、銃を放つことをやめた。
暗がりで響くハスキーな声は何処までも通る。街中に届いているのではないかと、錯覚するくらい。

「だから私は闘う。これが私の選んだ道だから!」
「でも!」
「でもじゃないっての!だって私は!」

ぱん。と銃声が響くのと、遥が押し倒されたのは同時だった。優樹が遥を庇い、左腕を弾が掠めたと気付いたのもそのときだ。
彼女は苦痛に顔を歪めて天を仰ぎ、遥は「優樹!」と叫んで上体を起こした。肉を削がれた腕にハンカチを巻きつけ、荒っぽく止血する。
ああ、畜生。こういうときに限って自分は無力だ。だから嫌いだ。早く強くなりたいのにと遥は唇を噛んだ。
がきんという鈍い音の方向へ目を向けると、男は天を仰いだあとに銃を投げ捨てた。

「弾切れ。やっぱツイてないな」

男と遥は黙って正対し、構える。夜の風が生温かく纏わりついて気持ち悪い。
膝はまだ痛む。一気に走ったせいか、歯車が外れたようにガクガクと笑い出しそうだ。
100%の勝機があるようには思えないが、負傷した優樹を残して逃げる気など毛頭ない。
遥が短く息を吐くと、優樹も同じように立った。黙って、構える。その瞳を見て、遥はなにも言わなかった。

男は眉を顰め、困ったような溜息をついた。実に対照的な色だと思う。
殺意を滾らせた紅い焔と、何処か諦めた寂しい蒼は、おおよそ「子ども」の持つものではない。
ああ、なんだ。俺は最初から間違っていたんだなと気付いた。
757名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 07:22:24.49 0
「……ガキなんて言って、悪かったな」

その言葉が合図のように、拳が振り下ろされた。
先ほどまでの大振りではなく、着実に堅実に仕留める小さくて速い突きを遥は丁寧に躱す。
図体の割にこのスピードは反則だなと思いながらも、優樹を庇うように前に出てその脚を砕こうとする。
体格差がある故に、下からの攻撃には弱いはずだと遥は考えた。

「信念とか、想いってのは厄介だな」

そのとき、男はひとり言のように呟いた。
耳を貸すものかと思っていたが、そんな意志を無視して、耳は音を拾ってくる。

「昔は俺にも、真っ直ぐな奴があったんだけどな」

男の言葉はあまりにも柔らかかった。とても先ほどまで銃をぶっ放していた男からは想像もつかない声で思わず脚が止まる。
最大の好機を逃さぬように拳を入れられると思ったが、男も同じように、動きを止めた。
まるで糸の切れた操り人形のように、男は両手を垂らして立ち竦んだ。なにが起きているのか、分からなかった。

「壊す側じゃなくて、護る側のな」

唐突に、男は理解した。優樹から受け取った“言葉”と遥から感じた“想い”がいまになって融合したのだと。
昔は自分の中にも、ちゃんとあったはずだ。目の前の人くらい護りたいという信念が。
それなのに、何処をどう間違ってしまったのだろう。その信念は闇に取り込まれ、いまでは子ども―――いや、彼女たちを殴っている。
俺は随分と遠い場所まで来てしまったのだなと苦笑した。

「……若いからこそ、未来が見えるのかもな」

笑った、ようにも見えた。遥と優樹は確かに、彼がそんな表情を携えているように見えた。
前髪が風に揺れ、汗が瞳に流れてぼやけたために見間違えたのかもしれない。
確証は何処にもなかった。なかったからこそ、ただ静かに息を呑んだ。
遥はどうして良いか分からなくなり、思わず男に一歩近づいた。
758名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 07:24:21.28 0
>>750-757 10レスで収めるはずが思いのほかに長くなったので前編として此処まで
後編はまたあとで投下します。言い訳タイムもその時に…w
759名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 08:39:39.04 0
>>758
深いね
単なる一エピソードではなく根底にある何かを感じさせます
どういう結末を迎えるのか…
760名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 11:13:24.38 0
こ、これはどういうことだ
過疎ってるのをいいことに駄作を投下しにきたら力作が目白押しではないか
寝坊した俺が悪いのか

>>758
敵の命を奪うのか救うのかいろんな価値観があって
物語を戦隊寄りにするのかシリアス寄りにするかで変わって来ちゃいますね
二人がどんな答えにたどり着くのか続き待ってます
いろんな価値観が
761名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 12:22:29.97 0
とりあえずチミは落ち着いて書き込む前にチェックする癖をつけなさいw

駄作力作待ってるでよ

762名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 14:02:39.60 O
ところどころに散りばめられた言葉が素敵です
最年少の若い2人の見る未来が楽しみです
763名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 14:16:18.09 0
朝のつづきです


「―――!」

瞬間、だった。
遥の“千里眼(クレア・ボヤンス)”は確かにそれが視えていたのに、動くことはできなかった。
脚が竦んだのか、怯えたのか、それとも哀しかったのか、判別はできない。
子どもの頭でもちゃんと理解できたのは、自分の左腹部に刀が刺さっていて、そこから綺麗に血が流れ始めたということだった。

「だーめだよ、おっちゃん。ちゃんと殺さないと、仕事になんないじゃん」

男の後方から軽口が聞こえた。甲高くて耳障りなその声に聞き覚えはある。
だがそれよりも遥は、自分の腹部に生えた刃が、目の前の男の右腹部と繋がっていることが気になった。
おい、嘘でしょ?ねぇ、ねぇ、ねえ!なんて、叫ぶことは敵わなかった。

「どぅー!!」

優樹の声が響き、刀が抜かれた。
紅色の水鉄砲のように、腹部から噴出された鮮血が世界を染める。闇に浮かんだ紅が妙に綺麗だった。
遥はそのまま後方に倒れて天を仰いだ。光を呑み込んで増殖する闇が怖いと、正直に思った。
男は膝を折り、口から血を吐いた。地面の血溜まりを見つめながら振り返ると、そこには金髪の女がいた。
上司にあたるその女は、男との体格差は相当あるにもかかわらず、圧倒的な存在感を放つ。
女はにこぉっと笑うと「役に立たないなー、もう」と手にしていた刀を振り上げた。

「自分の信念語る前に、目の前のがきんちょ殺せっつーの」

甲高い、耳障りな笑い声のあと、振り下ろされた銀色の刃が頭に食い込んだ。
不思議なことに、痛みはなかった。正確に言えば、痛いと思ったときには既に男は死んでいた。
刃は綺麗に男の脳天を砕き、額から鼻筋を辿り、首、鎖骨と切り裂いて骨に当たって止まった。
764名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 14:17:15.62 0
「あーあ。買ったばっかなんだよー、この秋の新作コート。どうしてくれんのさ」

女は既に肉の塊となったそれを高いピンヒールで蹴った。
赤いヒールに赤い血とは見事だな、なんて詩的な表現が浮かんだことに可笑しくなり、また「キャハハ!」と笑った。
その耳障りな音に、遥の不機嫌さが高まっていく。
それ以上に、「仲間」を盾にしたあの女の下品さが腹立たしく、腸が煮えくり返りそうだった。
あの連中にも、仲間意識なんて言うものがあれば、の話であるが。

「どぅー!しっかり!」

優樹は自分の腕に止血のために巻かれたハンカチを取り、遥の腹部に押し当てた。
刀は貫通しているために、裂かれた血管から止め処なく鮮血が溢れ出る。さながらガードレールを失った自動車のようだ。
正しく誘導されずに外へと逃げ出したそれをなんとかしようと、優樹は必死に押さえる。
急いでこの場を離れようと“瞬間移動(テレポーテーション)”で飛ぼうとした。

「ダメだよー、そんなことしちゃ」

瞬間、空間が破裂し、言い知れない感覚が優樹に襲い掛かってきた。
自分の体の中にあった“なにか”が、隣にあったものが丸っきり欠落してしまったような、抜け落ちてしまったようなそんな感覚だった。

「“能力阻害(インペディメント)”―――使わせてもらったよ?」

そこで優樹は理解した。あの女は、優樹の有している“瞬間移動(テレポーテーション)”を阻害している。このままでは、遥を連れて飛ぶことはできない。
未だに鮮血を垂れ流す遥の腹部を優樹は必死に押さえた。なんとか、なんとかしなくてはと考える。

「キャハハ!その子死んじゃうかもねー!ねえねえどうすんのどうすんの?」
765名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 14:18:36.31 0
実に楽しそうに笑う女に遥は眉を顰めた。
優樹に余計なこと言うな、殺すぞと叫びたいが、言葉にならない。
とにかく、このままではふたりとも死んでしまうと、遥は優樹ひとりでも逃がそうとした。
なんとか説得しようとしたとき、優樹は立ち上がって女を睨み付けた。
その瞳は先ほどのような蒼ではなく、遥が有していた、殺意の籠った紅に近かった。

「どぅーを、傷つけさせない」

その言葉に女はまた笑った。笑うことが仕事のようだ。
こんな下品な笑いほど、不愉快なものはないのだけれどなと遥は必死に体を起こそうとする。
しかし、血とともに体力や生命力までも失っていくようで、どうにも力が入らない。

「なに言ってんの。さっきまで殺せないとか弱っちぃこと言ってたのにさ。そんな甘いこと言っててウチら斃せると思ってんの?
仲良し小好し、闘争心もなくて、なあなあの微温湯に浸かってるから、そこのお友達死んじゃうんじゃないの?」

早口で捲し立てる女にも、優樹は怯まない。
随分と身勝手なことを言ってくれるなと遥は反論したいが、声にもならない。
だが、女の言っていたことをすべて否定できないのもまた事実だった。
優樹の「ころしたくない」という言葉は、結局はそういうものなんじゃないかと、思ったからだ。

「覚悟がないんだよ、覚悟!人殺しになる、か・く・ご!」

じゃあお前に覚悟はあるのかと聞いてやりたかった。
しかし困ったことに喉からは風しか出てこない。由々しき事態だと思う。あれ、由々しきってなんだっけ?
ああ、もう、どうでも良いやと遥は歯を食い縛って寝返りを打った。思い切り腹部が地面と擦れて激痛が走る。
視界が歪むが、泣いてなんかないと言い聞かせ、女を睨み付けた。
766名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 14:19:52.97 0
「ねー、きみもそうなんでしょ?」
「……はぁ?」
「この子と仲良くやってさ、ライバルなんて言葉で誤魔化してるだけなんでしょ?だっからリゾナンターっていつまでも成長ないんだよねー。キャハハ!うけるー!」

身長が低いため、遥は常に人を見上げ、見下ろされる立場にいる。だが、これほどまで見下されたのは初めてだ。
沸々と湧き上がる怒りをぶつけたかった。ああ、ジュンジュンさんやリンリンさんのように“念動力(サイコキネシス)”があればな。
その醜く歪んだ顔に石礫の雨を降らせてやろうかと思った瞬間、優樹の姿が消えていた。
女もそれを認めたのか、漸く笑顔を引っ込めた途端、無様に地面に倒れこんだ。後方から蹴られたのだと気付いたのはそのときだ。

「決めつけないでください」

優樹は静かに、だが滾るような思いを携えてそう言った。
女は長い刀を振り翳して優樹を切り裂こうとするが、優樹は一足引いてそれを避ける。

「私たちには、私たちなりの闘い方があるんです」
「へー。それが殺さないってやつ?だからさー、それが甘いって言ってんじゃん。覚悟ないんでしょ?怖いんでしょ?子どもだしねー」
「ころさない、覚悟です」

遥はしっかりと、その言葉を聞いた。今度は絶対に、その“意味”を逃さないように耳を澄まし、目で追いかけた。
彼女の伝えたいものは、なんなんだ?

「あー、面倒くさいな。それ。長くなる?だったらもうヤッちゃうね?」

だが、その“意味”を捕まえようとした途端に女はせせら笑った。
女は腰に手を回し、なにかを取り出した。見なくても、分かる。だが、分かったところで状況は悪化の一途を辿るばかりだ。
刀とは違い、遠距離でも攻撃可能な拳銃は、ある意味で、万能だと思った。
767名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 14:22:10.02 0
「ねえねえ、怖い?怖い?やっぱ怖いよねー。だってさー、もう死んじゃうんだよ?しかも100%!」

優樹は必死に頭を回転させた。
先ほどから何度も発動させようとしているが、“能力阻害(インペディメント)”はなかなか破れないうえに体力まで奪われていく。
“瞬間移動(テレポーテーション)”が使えない以上、遥を助けるには、背負って走るしかない。
だが、銃が発射されてから避けるにはあまりにも無理がある。せめて刀ならば、回避距離を測って逃げられる。やはり、ネックはあの銃だ。あれをなんとかして始末するしかない。

「あ、そーだ、ゲームする?これから右腕・左腕・右脚って順番に撃ってくからさ、最後まで悲鳴あげなかったらそっちの勝ちって」

そのとき、女の足元に小石が投げられた。
弱々しいその力の発生源は、それでもなお光を失わない目をした遥だった。

「ゴタゴタ…くだらねえこと言うんじゃねえよ、おばさん」
「へー、そういうこと言っちゃうんだクソガキは」

女は下衆な笑いを引っ込めて銃口を遥に向けた。
優樹は思わず銃に飛びかかるが、あっさりとその膝を撃ち抜かれた。「優樹!」という声のあと、反動で数歩下がる。正直、痛かったが、退くわけには、いかない。

「次は何処が良い?当ててあげるよ、お望みの場所。耳?腕?お腹?もうちょっと楽しみたいから頭はナシねー」

優樹は言葉が終わる前に右脚で地面を蹴った。
一足で懐に入るが、目の前に銃口が突きつけられる。引き鉄が動く前にスライドを掴み、捻る。
女は銃を離さないがまだ撃たない。そのままでいてくれよと今度は逆に捻る。

「いっ…たいなぁ!」

先ほど撃ち抜かれた膝を蹴られ、優樹は思わず顔を歪めた。
握っていた手の力が弱まり、女は拳銃を再び握り直し、優樹に構えた。

「優樹!」
「もういいや!死ね!!」
768名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 14:24:17.29 0
>>763-767 ごめんないコレが中編です
次こそ後編投下します。言い訳タイムもやっぱりその時に…w
769名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 15:22:16.89 0
まったく思わせぶりな所で切りよってからに
770名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 16:23:17.79 0
続き待ち〜
771名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 16:33:13.59 0
魅力的に描かれてるなあ…
772名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 16:38:37.39 0
手直ししてましたごめんなさい
つづきです


ふたりの声が響き、優樹は覚悟した。ぎゅうと目を瞑り、やって来るであろう痛みに備える。
しかし、数秒経っても、その痛みは現れなかった。もしかしてもうしんじゃった?と恐る恐る目を開くと、女は優樹よりさらに後方を向いていた。
その表情には「恐怖」という色が貼りついて取れそうになかった。

「随分可愛がってくれたっちゃね、うちの後輩を」
「“能力阻害(インペディメント)”なんて、弱いもの苛めもいいとこなの」

その聞き慣れた優しい声に、遥と優樹は振り返った。
ずっと自分たちを支えてくれた彼女たちの存在は、あまりにも、あまりにも大きかった。
闇を切り裂くその光に、ふたりは思わず目を細めた。

「遊びたいっちゃろ?相手しちゃるよ」

れいなはそうして笑うと、首に巻いていたストールを解き、宙へと放った。
ふわりと黒に浮かんだ薄い水色が妙に綺麗で、遥も優樹も一瞬見とれてしまう。

「いや、そういうことじゃないよ、全然ッ」
「遠慮せんでよか。れなも退屈しちょったっちゃ」

だが、ふたりはいままでに感じたことのない、圧倒的な共鳴の力に震えた。
空気が痺れ、あまりにも重く圧し掛かる。これほどまでの純粋な怒りを、ふたりは知らない。
女は震えながら拳銃をれいなに向けるが、れいなは全く意に介さずに、その銃口に手を翳して見せた。
773名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 16:40:11.96 0
「撃ちぃよ。ほれ。やりたいっちゃろ?」

背筋が、凍る。ぞわぞわと足元から虫が這い上がるような嫌悪感にも似た恐怖を覚えた。
こんな田中さん、見たことがないと、情けないことに膝が震えた。
「はい、動かないでねー」とさゆみは冷静に遥の手当てを始めるが、ふたりはそれでも、れいなから目を離せない。

「仲良し小好し?微温湯?成長がない?はっ、アンタは決定的に勘違いしてるっちゃよ」

れいなは女の胸倉を掴むとぐいと引き寄せた。まるでダンスの振り付けのようだ。
舞踏会に出席した王子と姫の、素敵なダンス。一歩間違えればキスをしてしまうような甘い雰囲気は存在しないが。
ぶるぶると情けなく震える女に、抵抗する術はない。ただ黙ってれいなの力に従うだけだ。

「愚直でも、自分の信じるもん信じて、大切なもん背負っていけば、世界は変えられるっちゃ」

遥の手当てを終えたさゆみはその声を聞きながら優樹の膝に手を翳す。
淡いピンク色の光がゆっくりと包み込み、先ほどまであった傷を癒していった。
優樹は黙って彼女の声を聞く。
世界を変える、そのチカラを―――

「信念もって、想い背負って、対決する。それがリゾナンターの覚悟っちゃよ!」

れいなは大きく振りかぶり、その喧しい女の顔に拳を突き立てた。
クリーンヒットしたために女の顔は一瞬醜く歪み、その鼻からはだらしなく血が流れ出る。
推定距離で2メートルは吹き飛んだ女は「か、顔が!あたしの顔!顔が!」と鼻血を垂らしたそこを押さえて喚いた。
774名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 16:41:06.27 0
れいなは意に介さずに一歩近づくと、女はびくっと肩を震わせ、その腰に手を回した。
遥にはそれが「閃光弾」だと視えたため、「田中さん目を閉じて!」と叫んだ。

「キャハハハハ!じゃーねー!!」

まさに鼬の最後っ屁のような声のあと閃光弾が破裂し、光がすべての闇を喰らいつくした。
こういう光は嫌いだと腕を翳して目を庇うが、次にその場を見たときには、もうだれもいなかった。
れいなは苦虫を噛み潰したような顔をし、その場に落ちていた缶を蹴った。綺麗な音を立て、缶は放物線を描いて飛んで行った。


-------

遥は静かに息を呑んだ。
冷たくて寂しい風の吹く夜の街に優樹、さゆみ、そしてれいなは佇んでいた。
れいなは鋭い眼光で優樹を睨み付けている。もともと目つきの厳しい彼女の光に、遥は委縮し、なにも言えなくなる。

「答えるっちゃ、佐藤」

れいなはゆっくりと、だがハッキリ言葉を紡ぐ。
答えを求められた優樹だったが、怯えているのか、考えているのか、その言葉が喉から出てくることはなかった。
言葉を失うことがいちばん良くないことを遥は知っている。正解だろうが不正解だろうが、解答の意志があることを示さなくてはならない。
解答の意志を放棄してしまっているようにも見える優樹に、遥は思わず「田中さん、あの」と口を出した。

「佐藤に聞いとぉと。工藤は黙っとき」

そして遥は一喝された。そうなることは目に見えていたのだが、それでも遥は背筋を伸ばし、生唾を呑み込んだ。
カラカラになった喉が痛くなる。情けないことに、膝が笑い出しそうになっていた。
遥の額に汗が滲み出る。ちらりと優樹に目を向けると、彼女はまだ、言葉を出す準備をしていなかった。
775名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 16:42:20.90 0
「もっかい聞くけんね。なんで逃がそうとしたと?」

れいなは再び、同じ質問を優樹に向けた。
詰問の対象となったのは、彼女がなぜ、最初に現れた敵を逃がそうとしたかということだ。
光井愛佳から電話がかかってきた直後、れいなとさゆみは此処へと走った。彼女の視たヴィジョンは不可思議なもので、ふたりは一瞬、耳を疑った。
しかし、先ほど敵の女と交わされた言葉や遥の態度を見て、確信に変わった。優樹はなんらかの理由で、敵を逃がそうとしたのだということを。

「れいな、今日はもう良いんじゃない?ふたりとも疲れてるし、傷だって」
「ちゃんと話すまでは帰さん。もう少しでふたりとも死ぬとこやったっちゃよ!?」

さゆみは場を収束させようと言葉をかけたが、れいなの言うことももっともだと分かる。
情けをかけて敵を逃がし、それが発端で自分が死ぬことになるなど言語道断だ。
今回の場合は、逃がそうとした敵が反旗を翻したわけではないが、今後そう言ったことが怒らないとも限らない。
どういう意図を持っての行動だったのか、れいなとさゆみには知る必要がある。

「……まーちゃん」

遥は優樹に答えを促すと、彼女は深く息を吐いて「はい」と発した。漸く言葉がまとまったようだ。
彼女はもういちど息を吸うと、「ころしたく、ないんです」と呟いた。

「護りたいんです。どぅーも、田中さんも道重さんも、リゾナンターを、此処にいるみんなを、たくさんの人を」

淡くて優しい光が優樹を包み込んだように見えた。
しかし、その光はまるで幻影のようにおぼろげで儚く、すぐに消えてしまった。
776名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 16:43:32.71 0
「だから、闘うんです。私の信じる想いのために、いきるために」

先ほど男に渡した言葉を、もういちど彼女は繰り返した。
彼女は「ここに、いのちがあるから」と言った。確かにそのとき彼女は、胸を射していた。

「だから、いきてほしいんです、みんなに。だれだって、しんじゃいたいって思ってないから」

その言葉を聞いたとき、遥の頭の中には“死霊魔術(ネクロマンシー)”が浮かんだ。
あのときはその理由が分からなかったけれど、いまなら分かる気がする。
彼女は多くの“死”を見てきたはずだ。強制的に選ばされた終末と、その無念の想いを彼女はずっと背負ってきていた。

優樹はリゾナンターの前で“死霊魔術(ネクロマンシー)”を使わない。
その理由を明確に聞いたことはない。いつも「恥ずかしいから」とか「自信がないから」と言って、彼女は見えない場所で能力を行使する。
しかし、一度だけ遥は、その能力を見たことがある。
どういう風にして能力が発動し、死者が甦るのか、どういう風にして話すのか、触れるのか、興味があった。
深夜、ひとりで人気の少ない路地へと歩いた優樹のあとをつけ、物陰に隠れてその能力の発動を待った。
そしてそれは起きた。
闇の中、優樹が両手を広げエメラルドグリーンの光が舞ったかと思うと、その場には明らかにこの世のものでないものが立っていた。
彼は穏やかな目で笑い、なにかを優樹に伝えていた。少しだけ会話をしたあと、彼は深く頭を下げ、笑って消えていった。

―凄いじゃんまーちゃん!

遥は少年のように目を輝かせた。
自信がないなんて言わないで、もっと使えば良いのにと素直に思った。
先輩たちだって認めてくれるはずだ。死者の声を聞き、その想いを届けるなんて素敵だ。
その能力が戦闘に応用できるかは分からないが、それでも十分な能力だと遥は物陰から飛び出そうとした。

しかし、遥にはそれが敵わなかった。
月夜が街を照らしはじめたころ、優樹は天を仰いだ。淡い月光のスポットライトを浴びた彼女はとても綺麗だった。
そのとき優樹は、泣いていたんだ―――
777名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 16:44:35.49 0
「ころすために闘うのはイヤです。だから、もう闘わないってやくそくしてもらったら、逃がすつもりでした」

記憶の蓋を閉じた遥は、彼女の中で、闘うこととだれかを殺すことは決してイコールではないのだと気付いた。
護ること、生きること、優樹の言う「想い」のために闘うのだとしても、殺すという行為に彼女は抵抗を感じている。
“死霊魔術(ネクロマンシー)”という能力を有する優樹だからこそ、死を最も恐れているのかもしれない。
死は生と表裏一体でなく、全く別の虚無のものだとだれかが話したことがある。
優樹はそれを最も身近で肌で感じているのではないだろうか。

でも、だからと言って「逃がす」という行為は、リゾナンターであることを否定しているのではないかと遥は思う。
そんな悠長で甘いことを言っていて、この世界で生きていけるのかと疑問を投げたかった。
実際に、あの女からも散々罵声を浴びた。「仲良し小好し」「闘争心がない」「なあなあの微温湯」「覚悟がない」「成長がない」と。

「護るために、いきるために、想いを背負って闘います。でも、無意味にころしたくないんです」

ころさない覚悟、と彼女は言った。
恐らく、本気であの男が殺意を向けてきたら、彼女は男を殺していただろう。
無機質で、感情の色もなく、音階さえ存在しなかった言葉を聞いたとき、遥は理解していた。優樹は既に、人を殺す覚悟はあるのだと。
だが、そうはせずに、優樹が説得を試みたのは、彼の中に、迷いや微かに残った信念があったからだ。
優樹は最後まで、自分の中にある想いを背負って、対決しているのだと遥は気付いた。

ああ、もう、と思う。
本当にいつの間に、彼女は私よりも前を走っていくようになったのだろう。
それが嬉しくて、悔しくて、もっと、もっと大人になりたいと、そう願わずにはいられない。
778名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 16:45:29.93 0
「……覚悟があるっちゃったら貫きぃよ」

れいなは低く言葉を吐くと優樹の頭にぽんと手を乗せた。
叩かれると思った優樹はぎゅうと目を瞑ったが、小さな温かいその手の存在に恐る恐る目を開いた。
れいなは優樹の髪の毛をぐしゃぐしゃにしたかと思うと、優しく撫でた。

「絶対に護り切るっちゃよ。今回みたいに、れなやさゆン力借りんでも、工藤とか護り切るっちゃよ」

真っ直ぐな瞳を向けられたあと、彼女は笑った。
その意味を理解した優樹は太陽のような笑顔を見せ「はい!」と返した。

「どぅーはまーちゃんが護ります!」
「いやいや、護れてないじゃん。つーかハルは自分で護れるし!ハルがまーちゃんを護るんだし!」
「えー。やだぁー」
「やだってなんだよ」

そうしていつものやり取りが始まり、さゆみとれいなはクスッと笑った。
「じゃあ帰ろうか」という声をきっかけに、4人は夜の街をゆっくりと歩き出した。
後方でまだうるさく騒ぐ後輩を尻目に、さゆみはれいなの隣で大袈裟に肩を竦めて見せた。

「愚直でも、信じるものを信じて、大切なものを背負っていけば、世界は変えられる―――」

さゆみの言葉にれいなは目だけを向けた。
彼女は柔らかく笑って「愚直なんて言葉、絶対知らなかったでしょ?」と返した。

「何処から仕入れたの?さっきの言葉」
「……さあ」
779名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 16:47:07.04 0
れいなはそうしてとぼけたが、さゆみもそれ以上は追及せずに再び繰り返した。

「信じて、背負って、対決する。それがリゾナンターの覚悟―――」

長年れいなといっしょに闘ってきたが、覚悟や信念という話をするようになったのは最近だった。
久住小春の異動から始まり、徐々に形を変えてきたリゾナンターの中で、ふたりはいつの間にか、その頂点に立っていた。
後輩を指導し、ともに手を取り合って世界を変えていくには、真っ直ぐに対決するしかない。
でたらめでも、ムチャクチャでも、自分の信じるもののために、想いのために、闘っていくしかない。

「……だれだって、そうやろ。れなにもさゆにも、信じられるものがあって、だれかの想いを背負って闘うっちゃろ」

れいなの言う“だれか”とは、だれだろうとさゆみは思った。
長くリーダーを務めた高橋愛や、彼女を支えるために身を挺してきた新垣里沙、脚の怪我のために一戦を退いた愛佳の顔も浮かんだ。
でも、やはりそれは、彼女を指すのではないか。
それこそ、愚直なまでに世界の平和を願い、優しい想いを届けようとだらしなく笑って、対決していった彼女がさゆみの中に浮かんだ。


―――わたしたちがこうやってずーっとずーっと祈り続けてさぁ、想いが届いて、笑顔になれたって人が、ひとりでもいたら嬉しいよね


頭の中に不意に、そんな彼女の言葉が甦った。ああ、そうだ、とさゆみは唐突に思い出だした。
梅雨晴れのあの日、隣町が見渡せる丘の上で3人は祈ったじゃないか。
遠い遠い地平線の向こう、海の向こう、見たこともない外の国、広い広いこの世界中の人たちに、シアワセを届けることができないかなぁと、祈ったじゃないか。

「3人で見た、夢のつづきなんだね」

さゆみは目を細めて笑うと、れいなも同じように、笑った。たぶん、彼女も同じように笑ってくれているはずだ。
なんだかそんな気がする。というよりも、そうであってほしいなと思う。いや、そのはずだ、絶対に。

後ろから聞こえてくる楽しそうな声に振り返ると、ふたりは仲良く言い合いをしていた。まだ護って護られるかの論争はつづいているらしい。
それを見てれいなは大袈裟に肩を竦めてみせた。ああ、近所迷惑ごめんなさいとさゆみはそっと謝ってリゾナントへ帰る。
それぞれの心の中に、確かな優しい想いと信念を携えながら。
780名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 16:49:31.67 0
>>772-779 以上「crossing belief」
死者召喚は(70) 265 名無し通りすがり(心臓をポクポク) 2012/06/15(金) 14:28:02.19 i
6期の祈りは(08) 248 『Healing Winds』 2008/06/15(日) 18:31:06.16 0 からそれぞれお借りしました
作中の言葉は「ステーシーズ」と相変わらず「魔王」からお借りしています。ごめんなさい
無駄に長くなってしまったんですが感想ありがとうございましたm(__)m
781名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 16:58:00.69 0
>>780
最後リアルタイムで読ませてもらいました
懐かしさを覚える思いが根底にあるようにも感じながらこれまでになかった類の胸の震えを覚える作品でした
ラストにあの作品に繋がっていったところは感動でした

月光を浴びて泣くまーちゃんの場面……すごく好きです
782名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 18:36:24.61 0
>>780
まーちゃんの思いは胸に響くものがあった
強さというのは敵をねじ伏せる強さではなく己の信念を守る強さなのだなと思った
783名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 20:22:32.39 O
最年少コンビと最年長コンビの想いの交差がいいね
受け継がれつつも新しい物語に泣いた
784名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 21:10:01.44 0
これは涙?泣いているのは俺?

しかし矢口ムカつくw
785名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 21:19:32.29 0
乙です
同期っていいね
786名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 21:45:27.09 0
知の嫌われっぷりというか小者感はリゾスレにかかせないw
787名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 21:51:23.30 0
慣れ合いがどうこうとか矢口言いそうwって思ってしまうねw
その辺も胸のすく思いだった
788名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 21:53:09.21 0
オリメン様は作者としては非常に使い易い悪役w
789名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 22:13:41.52 0
やっぱリゾスレは現メンだけってパターンが多い感じだね
790名無し募集中。。。:2012/09/17(月) 22:18:03.81 0
???
よく意味が分からないけど・・・?
791名無し募集中。。。:2012/09/18(火) 00:02:17.60 0
まーちゃんの泣くシーン好きだ
792名無し募集中。。。:2012/09/18(火) 01:27:05.99 0
繋がってゆくことは大切でもあり難しくもあるね
793名無し募集中。。。:2012/09/18(火) 02:36:13.12 0
時代は過去から未来へと流れていく
過去を踏襲しつつ新しい未来へ引き継ぐのは大変なんだな
794名無し募集中。。。:2012/09/18(火) 04:11:55.12 O
夜が明けるよ
795名無し募集中。。。:2012/09/18(火) 07:59:40.17 0
すっきりしないね
796名無し募集中。。。:2012/09/18(火) 10:30:17.59 0
やれやれだぜ…
797名無し募集中。。。:2012/09/18(火) 12:43:47.39 0
自分も通りすぎた道のはずなのに
今そこを通っている人の気持ちを
忘れてしまうものなのかな
798名無し募集中。。。:2012/09/18(火) 15:18:32.34 0
http://aewen.com/momusu/group/img/aewen12195.jpg

魂は継承され明日へ向かうさ
799 忍法帖【Lv=33,xxxPT】(1+0:8) :2012/09/18(火) 18:10:12.12 0
夜のうええおええ
800名無し募集中。。。:2012/09/18(火) 18:43:27.15 0
消防車の音だ…
801名無し募集中。。。:2012/09/18(火) 18:49:42.08 0
>>788
やっぱり合宿参加すると貫禄つくんだね
802 忍法帖【Lv=33,xxxPT】(1+0:8) :2012/09/18(火) 19:11:17.71 0
「ほぼ」オリメン
803名無し募集中。。。:2012/09/18(火) 19:24:53.21 0
川=´┴`) <なんやねんオリメンとか…
804名無し募集中。。。:2012/09/18(火) 20:54:37.67 0
>>722-724 の続き。

道重さゆみと名乗った女性は鞘師の知り合い、らしい。
ただこの人物もきっと普通の人ではない、と思う。

 「りほりほ、寝癖がついてるの、ああでもこの感じがまた寝起きって感じで…」
 「心で呟いてることが全部もれてますけど」
 「意思疎通!やっぱりりほりほは才子なの!」
 「ごめんね皆、ふだんはこんな感じじゃないんだけど」
 
鞘師が苦そうに笑みを浮かべる。

 「この人って、りほちゃんのお姉さん…?」
 「んー保護者、かな」
 「一つ屋根の下で一緒に暮らしてる時点ですでに姉妹に近い繋がりはあるの。
 でもりほりほはそんな風に思ってくれてないみたいね」
 「いや、別にそういう意味じゃなくて、お世話になってるのはいつも感謝してますから」
 「…さゆみ泣きそうなんだけど。りほりほにそんなに感謝されてたなんて…」
 「そんなわけで道重さん、皆を送ってほしいんですけど」
 「判ったの、全力で送ってってあげる。すぐに手配するね」
 「その前に聖が放心状態っちゃけど、おーい聖ー」

上手く言いくるめた鞘師のおかげでその場は落ちつくことに。
職員室に寄ってみたが先生が居なかったため、書き置きを残して学校を後にした。
どこから手配したのか、黒服を着込む運転手に道重は目的地を伝え、車が発車する。

 「もしかしたら危ない仕事とか?」
805名無し募集中。。。:2012/09/18(火) 20:55:09.63 0
そんな少し失礼な発言が上がってしまうほど、道重の人物像が不透明だった。
不敵に笑みを浮かべた道重が、続いて提案する。

 「それなら私とりほりほの家に遊びに来てみる?さゆみとりほりほの」
 「別に強調しなくてもいいと思うんですけど…」
 「いいじゃないりほりほ。せっかくなら泊まって行くのもアリなの」

突然の提案に顔を見合わせる。鈴木が少し遠慮気味に口を開く。

 「えっと、今じゃダメですか?」
 「今日はいろいろとあったし、皆疲れてるでしょ。
 そんな状態で聞くよりはまた日を改めてって事で」
 「なんで知ってると?事情なんてほとんど話してないのに」
 「まあ来るなら来て、住所は教えておくの。えりぽん以外の二人は大歓迎」
 「うわーん、みずきーっ」

生田に抱きつかれる譜久村に渡された紙には本当に住所が明記されていた。
車が止まり、最初に降りたのは生田だ。次に譜久村。最後は鈴木。
鈴木が車を降りたとき、鞘師が口を開く。

 「ごめんね、かのんちゃん」
 「え?」
 「部活、サボらせちゃったから」
 「ああ、まあ学校もあんな感じだったし、部活どころじゃなかったかもだしね。
 りほちゃんが無事だったから、今回はそれでチャラだよ」
806名無し募集中。。。:2012/09/18(火) 20:55:46.05 0
鈴木は鞘師の肩をポンポンと叩いて笑顔を浮かばせ、家のドアに消えて行く。
車は自身が住まう家へと発車する、道重の視線に気づいた。

 「良い子たちね。ここまで付き合ってくれるなんて」
 「…多分、そういうセカイだからだと思います」
 「主軸の歪みか。でもあの子達は何も知らないの。純粋に心配してるんじゃないかな。
 "わざと敵に捕まる"っていうのは考えものだけど」
 「…」
 「<MEM>の回収を手伝ってくれるのはホントに感謝してるし、それなりの
 ことをしてあげることが条件にも含まれてる、でもさゆみのチカラでは
 どうすることも出来ないことだってあるの、特にこのセカイではね。
 それは判っていてほしいの」
 「…すみません」
 「ううん、謝るのはさゆみの方。鞘師を、あの子達を巻き込んで
 自分のわがままを突き通すなんて勝手なことだと思ってる。
 だからいつでも止めて良いんだよ、きっとどう転んでも鞘師やあの子達に
 とって、最悪の事態にしかならないんだから」
 「でも私が"歪み"なら、別の道もありえるかもしれないんです。
 答えを見つけれるかもしれない、だからこれは、私の意志です」

 私の、意志と、覚悟なんです。

鞘師の真剣な眼差しに、道重はそれ以上言えなかった。
彼女には心の底から根付く「覚悟」と「意志」に突き動かされている。
それは自分達のせいではないかと、道重は悲しくなった。
807名無し募集中。。。:2012/09/18(火) 20:56:25.41 0
"Reborn" 、有限の人間に変化を求めた無限の現象。
醜い人間の果てに、それでも必要としたセカイの群れ。

 眠り続ける親友は一体今、どんな夢を見ているのだろう。
 行方不明の同期は一体今、どんな現実を目の当たりにしているのだろう。

自分がこのセカイに在ることにどんな意味を持つのだろう。
答えはまだ、見えなかった。
808名無し募集中。。。:2012/09/18(火) 20:57:34.31 0
>>804-807 以上です。
これで今の時点でストックは終了です。
ゆっくり投下なのは本当に申し訳ないのですが
実はまだ中盤にも差し掛かってないのが実状(汗
しばらく潜ります。次回はリゾナンターの動向から始まる予定、かも。

---------------------------ここまで。

以上代理投下終了
809名無し募集中。。。:2012/09/18(火) 21:39:34.38 0
>>808

Rebornとか気になるキーワードが出てきた
浮上する日を待っとります
810名無し募集中。。。:2012/09/18(火) 23:20:28.74 0
雷ほぜなんと
811名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 00:41:58.77 0
>>808
さゆの感情の振れ幅が大きいけど背負ってるものが重いからだとすると胸に迫ってくるね
812名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 03:04:13.41 0
ねる
813名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 06:08:10.22 0
保全替わりに唐突に http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/645.html#id_d3a65f89の続き

静止した時間の中で保田圭を一蹴した後藤真希。
動き出した時間の中で自らのチカラが飛躍的に増大するきっかけとなった夢の話を語り始めた。

その夢は共鳴の絆で結ばれた九人との戦い。
道重さゆみの【限定時空遡行】能力によって逆行させられた自分の時間。 
そして開けた光の道。

 「時間を追い越すような距離を夢中で走って、もう一人の私と出会ったんだよ」

自分が生まれてこなかったことにされた夢を見てから、【重力制御】のチカラは飛躍的に伸長したという。
時間にすら干渉できるほどに。

保田は痛む身体を抱え、後藤の見たという夢の謎解きする。

  「もし仮に道重さゆみがもたらす【治癒】の実態が【時空遡行】だったとしても、後藤真希という存在を構成した要素を全て無かったことには出来ないわ」

道重さゆみの【時空遡行】によって粒子の状態に戻され、ワームホールを通過できるようになったことによる時空移動。
ワームホールを経由しての時空移動は理論上、未来への方向にしか不可能だ。
だが、しかし時間の流れが星の運行のように円還して繋がっているのなら…。

 「存在を無かったことにされた少し未来のあんたが、時間の流れを一周して少し過去の私たちの世界へ到達することは可能かもね」
  「道重さゆみの能力で過去に戻されたっていうだけの解釈はちょっと安っぽいかなって思ってたけど、やっぱ圭ちゃんは頭がいいね」
814名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 06:09:16.30 0

感心したような後藤の声を聞きながら、保田は違和感を覚える。
もし今ここにいる後藤真希が未来からやってきた存在だったとして、現在で生きる後藤真希と遭遇していたなら、その衝撃だけでこの世界は失われている。

  「後藤、あんたまさか?」
  「私の中に彼女はいる、っていうか今しゃべっているのは彼女の中の私?  要するに私たちは二人は一つになったのかな?」

一人の人間は10の26乗の原子で構成されている。
その原子を核融合させれば、全人類を絶滅させるほどのエネルギーを生み出すことができるという科学者もいる。
一つの身体に二人分の肉体を構成する原子を所有する人間がいて、その人間が能力者だったとしたら…。

   ―― 勝てない。 能力者の能力がどうやって生まれてくるか完全に解明されたわけではないけど、肉体を構成する原子の数は能力の強さに影響するはず、でも…

 「今もこうして世界が存在しているということは、あんたの中に世界を終わらせたくないっていう気持ちがあるからじゃない?」
  「夜の闇がはこんなに優しくて、朝焼けがあんなにきれいなのにそれを終わらせたくないっていう自分がいたことは事実だけど、もうっ!!」

全てを破壊したい気持ちを抑えることは出来ないという後藤の目は妖しく光っていた。

次回、暁の戦隊 第29話「宝石」

宝石のような目をした後藤の掌の上には重力を歪めて作り出した小型のブラックホールが形成されつつある。
その身体から発生する重力線に引き寄せられた瓦礫群は巨大な漆黒の翼のように映る。

 「さあ、そろそろ終わりを始めようか」

815名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 06:10:47.22 0
後藤さんの見た夢というか一周前の世界とかは次の作品に準拠しています

『―How to kill an EVIL―』

どういうわけか初代まとめサイトにも2代目まとめサイトからも漏れている
ログ速とかアンカーでも拾えない幻の作品は以下のアドレスでhtml化された過去ログから読めるみたいです

http://blog-imgs-26.fc2.com/r/e/s/resonanter/1241705392.html の401から

まあ少しばかりややこしいですがそういうことです
要するに荒唐無稽のSFですw
816名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 07:52:24.31 0
途絶えかけていた物語が動き出すのか
817名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 07:58:53.90 0
よかった続き書かれるんだ!
豪華ラインナップの中にリゾナンターが合流してくるのが楽しみ
818名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 10:32:52.19 0
だいぶ忘れてしまっているw
戻って読み直さねば
819名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 12:32:06.32 0
昼の明太
820名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 15:46:17.57 O
夕方
821名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 17:07:09.73 0
どれあげとくか
822名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 18:54:55.45 0
眠いのだよ
823名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 20:43:21.69 0
寒いな
824名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 20:58:53.43 0
秋だね
825名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 21:37:17.38 0
あきうらら
826名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 21:46:21.61 0
秋麗が読めなかったのはカメちゃんだっけ?w
827名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 22:26:39.48 0
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/677.htmlつづきです

-------

「推定距離は7メートルってとこだね」
「な、7って遠すぎやろ!」
「でも世界記録は8.95だしいけるでしょ。あ、女子は7.52か」
「アホかっ!死ぬっちゃよそんなん!」

病院に隣接した建物の屋上でさゆみとれいなは言い合いをしていた。
地上と地下がセキュリティで封鎖されているいま、出入り口はもはや病院の屋上しかない。
恐らく警察側もそれを読んでいるのか、先ほどの無線ではヘリコプターを要請していた。
警察にバレないように飛ぶには、もういましかない。

「だいじょうぶ、身体能力高いし、追い風だし、一応命綱あるし」
「あのねぇ……」
「悪いけど躊躇してる暇ないよ。さっきの情報だと院長が撃たれたし、要求通らないとまただれか撃たれる。
警察のヘリが到着する前に侵入して肩をつけないと、絵里と愛佳の鎮痛剤も切れる」

さゆみは早口で捲し立てると腰に巻いたロープをもういちど確認した。
確かに此処で議論している時間はない。幸いにも人並み以上の身体能力はある。もう、飛ぶしかない。

「死んだら一生笑ってあげるの」
「……アホか」

れいなは深く息を吸い込んで吐き出した。
828名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 22:27:39.98 0
職務規定違反だとか、突入してからどうするかとか、全く考えていなかった。
頭の中には仲間の笑顔が浮かんでいて、もうそれを消したくはなかった。最後の最後まで、あの9人で闘いたかった。
もうそれが一生叶わないことだとしても、それでも、いまのこの瞬間の仲間を護りたかった。

れいなは意を決して右脚で地面を蹴った。
地上50メートルの高さから見る世界は新鮮だった。地面に吸い込まれそうになる恐怖が押し寄せる。
必死に堪えていると、ふいに風がれいなの体を押した。そのまま風に乗って体を滑り込ませる。
余裕をもって着地できるはずもなく、無様に屋上に倒れこんだが幸いにも無事に屋上へ飛び移ることができた。
震える体を必死に抑えるように短く息を吐いていると、すぐ横にさゆみも滑り込んできた。

「はぁっ!はっ、はぁっ!と……飛べたっ…」

さゆみ自身、信じられないというように短く息を吐きながらロープを外そうとする。
一瞬だけ吹いたあの風は、まさか絵里の起こしたものだったのだろうかとれいなは思う。
彼女の能力について正確に認識はしていないが、そんなことが可能なのだろうか。


ぱん・ぱん・ぱん・ぱん―――


そのとき、4つの銃声が響いた。下にいるマスコミが騒ぎ始める。
まさかと思ったふたりは急いでロープを外し、屋上の扉を開けた。人質と犯人のいる待合室まで一気に階段を駆け下りた。
829名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 22:29:08.15 0
-------

ふたり目に撃たれた男は、この病院の外科部長だった。
黒い覆面の男の娘は2週間前の雨の夜に通り魔にあい、この病院に運ばれる予定だった。
しかし、当直の外科部長が酒に酔って受け入れを拒否したために、娘は死んだという。

「罪を償うには罰を受けるしかないんですよ」

男たちはそうして再び死体を運び出した。
狂っているのは男たちか、それとも自分たちかが分からなくなる。こうも短時間に人が死ぬのを目撃すれば尚更だ。
たとえ自分たちに罪がなかったとしても、目の前で人が死ぬのはたくさんだ。

と、絵里はそこまで考えて唐突に頭の中でなにかが弾ける。
ざわりと気持ちの悪い仮定が頭をよぎるが、そんなことはないはずだと言い聞かせる。

「……ねぇ、愛佳ちゃん」
「なんですか?」

それでも絵里がふと口にした途端、震えとともに心臓が大きく唸り声を上げた。
ぎゅうと鷲掴みにされるような感覚のあと、最後の直線に入った馬のように心臓が走り出した。
早鐘を打つ心臓を絵里は必死におさえる。

「か、亀井さんだいじょうぶですかっ?!」
「っ……だいじょうぶ……ねぇ、聞いて……」

だいじょうぶとは言うものの、胸を押さえて苦しむその姿は見るに堪えない。
医者を呼ぼうとするが、だれもが次の犠牲を怖がって肩を震わせている。
大声で叫ぼうとした愛佳を制し、絵里は言葉を紡ぐ。
830名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 22:30:25.03 0
「これは…罰かもしれない」
「え?」
「雨の夜の通り魔……あ、あの男なんじゃないかなって」

絵里の言葉に愛佳は耳を傾け、解釈する。なにを言わんとしているのか噛み砕こうとする。
そして思い当たる。まさか、彼らの弟や娘を襲った通り魔とは……

「あの男……い、一般人も、襲ってるかも…しれない」

“あの男”というのがだれを指しているのかくらい、愛佳にもわかった。
あくまではすべて仮定の話だが、否定することはできない。
男が現れた日は確かにすべて雨の夜であるし、リゾナンターたちは男に傷はほとんど与えられていない。
男の目的はまだ分からないが、一般人を襲っているのだとしたら、その責任は少なからずリゾナンターにもある。

「罪を償うには罰を受けるしかない」

絵里は先ほどの男の言葉を繰り返す。
自分の心に言い聞かせるようにも、ただ呪文のように唱えているようにも見えた。

「罰……なのかな。私たちへの」
「なんで、そんなこと言うんですか……」
「へへ。一般人、護ってるって言うつもりはないけどさ……ダークネス以外にも私たちは…傷つけてるんだね、多くの人を」

発作が徐々におさまっていったのか、絵里は大きく息を吸って言葉を繋ぐ。
刺さる言葉が痛くて重い。背負ってきたものがあまりにも大きい。見ない振りをしていたわけではない。
831名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 22:31:33.50 0
だが、確かにそこにあった可能性を敢えて考えないようにはしていた。
だれもが平和に生きられる明日をつくるために、だれかを犠牲にしてきた昨日がある。
その闘いに無関係な一般人を巻き込んで、自分たちだけ笑って生きていて良いはずなんてない。

「でも……私たちは」
「分かってる……可能性、だから」

愛佳の悲痛の目を感じたのか、絵里は無理に笑って見せた。
なにが正しいか、なにが正義か、なにを信じて此処まで来たのか。
万人の答えなんてあるはずもなく、揺るがないただひとつの信念を持ってひたすらに闘ってきた。
だが、その先にあるのは、果たして信じられる未来なのだろうか。

「……絶望の闇と、変わらんですやん」

愛佳がそう呟いたとき、電話が鳴った。この音もまた、絶望の音なのだろうかとぼんやり思う。
緊張感が走る中、男が電話を取り「3人目も必要か?」と訊ねた。
どうやら警察は最後まで、議員を渡さないつもりらしい。それが国策なのか、独断かは判別できないが、また地獄が始まるのかと髪をぐしゃりと掴む。

「ひぐっ…うぇっ……」

そのときだ。
先ほど泣いていた女の子が再びしゃくり上げ始めた。
ひとりで入院している小児病棟の子だろうか。長くて黒い髪を垂らし、その細く白い肌は儚さを際立たせる。
832名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 22:32:20.46 0
「あー、また泣いてるんでちゅかー、お嬢ちゃーん」

赤い男がニヤニヤしながら少女に近づいてきた。
苛立ちを通り越して快感を覚えたのだろうか。銃口を少女に向けるが、今度は仲間のだれも止めようとはしない。

「撃っていーかー?」

男は受話器に聞こえるように叫ぶ。
リーダー格は黙ってそれを見ているが、時計を確認し、顎でしゃくった。男の口角が上がり、引き鉄をもつ指に力が込められる。

人とは違う能力を恨んだ。この能力があることで異端だと蔑まれ、死と隣り合わせの世界に飛び込んだ。
それでも、今日ほど無力を感じたことはない。どんな能力があっても、たったひとりの女の子も救えやしないのだから。

「やめてっ!!」

そう叫ぶのと銃声が響いたのはほぼ同時だった。
銃弾は女の子の左脚の骨を砕き、肉を削ぎ、貫通して床に突き刺さった。

「あああ!い、痛い!痛いよぉっ……痛いよっ、お母さぁん!!助け…お母さん……!」

愛佳はすぐさま少女に駆け寄り、撃ち抜かれた右脚にハンカチを巻きつけ止血をはかる。
だが、貫通しているせいか血は一向に止まらない。だれか応急処置をと目を向けるが、医者たちは一様に目を逸らす。
此処は病院じゃないのかと顔を歪め、「だれか手当を!お医者さん!看護師さん!」と叫んだ。
833名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 22:33:28.63 0
「4人目出したくなかったら検討してくださいね」

そうして電話が再び切られる。
死の匂いはいっそう強くなり、明確な形をもって待合室の人間たちを包み込んだ。
この男たちの目的はもう達せられたのだろうか。もし達せられていないとしたらまただれか確実に殺される。

だが、少女への発砲のことからすると、もう彼らはそんなことはどうでも良いのかもしれない。
人は非現実世界へ放り込まれると、徐々にその世界へ適応するために思考を変えていくのだという。
今回の一件もある意味で、犯人たちは思考を変容させていると言える。
使命をもって殺人をしてきた彼らだが、ふたり殺した時点で、快楽へと脳が走ってしまったのかもしれない。
だとしたら、いよいよこの先、希望なんてものは見えなくなる。

「ふぇっ…痛い……痛いよぉ…おかあしゃぁん……っぐ」
「だいじょうぶ…だいじょうぶやからね……」

痛みと恐怖に耐えきれない少女はそれでも大声では叫ばずに涙を零す。
愛佳はなんども「だいじょうぶ」と言って頭を撫でてやるが、気休めにしかならない。
この痛みを代わってあげられたらとなんども思うが、そんなこと、できるはずもなかった。

そうしてハッとした。
愛佳が絵里へと目を向けると、彼女はなんどか深く呼吸をして、少女の脚に指先を向けた。

「あきませんよ、亀井さんっ」

愛佳は慌てて彼女を制する。
自分が考えることくらい、彼女だって考え付く。まして彼女自身が“傷の共有(インジュリー・シンクロナイズ)”の持ち主なのだから。
834名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 22:34:41.64 0
「この子に罪はないよ」
「だれにだって罪はありません。この子も、亀井さんも」

だが絵里は首を振る。

「私たちのせいで傷ついたのなら、私たちが護る必要がある」
「それはそうです。でも、通り魔があの男とは限りません。それに、いま能力使ったら、今度こそっ」

必死で絵里を説得するその声は男たちの「なにコソコソ話してんだ!」という大声で遮られる。
だが、愛佳は構わずに言葉を紡いだ。これ以上、だれかが傷つくのは見たくない。そんな未来、絶対に止めてみせる。

「もうすぐきっと警察が来ます。せやからそれまで」
「この子はそれまでもたない」

絵里がきっぱりと言い放った言葉に愛佳は眉を顰めた。
少女の呼吸が浅くなっていることに気付いたのはそのときだ。異様に汗をかき、短く息を吐いている。

「血色も悪いし、点滴のあともたくさんある。病名とか知らないけど、このまま放置すると、確実に死ぬ」
「……せやからって……せやからって亀井さん……」
「だいじょうぶ、絵里はこれでも我慢強いんですよ?」

絵里はそうしてにこっと笑った。
いつものようにだらしなくて、それでもいつもより頼もしいその笑顔に愛佳は泣きそうになる。
ああ、どうして自分は無力なんやろう。
この脚が軋まなければ、この脚が動けば、もっと攻撃的な能力があれば、もっと力があれば……私はっ―――!
835名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 22:36:40.57 0
愛佳は下唇を噛み、太ももの上で握りしめていた拳を震わせた。
どうすれば良いというのだろう。どうすることが正解だというのだろう。
だれもが傷つかず、平和な明日を築きたいだけなのに、どうしてこんなにも、多くの痛みと哀しみを背負わなければならないのだろう。

「…信じてるから」

震える拳に絵里は手を重ねた。
愛佳は涙を零した瞳を彼女に向けると絵里は優しく微笑んでくれていた。
それは大天使ミカエルにも、女神アルテミスにも、聖母マリアにも、そして普通の女の子にも見えた。

「愛佳ちゃんを、仲間を、信じてるから―――」

絵里はそう言うとすっと息を吸い込み、点滴の針を腕から引き抜いた。
ぶちっという音のあと、腕からは血がつうと垂れた。
妙に綺麗な赤色をしている血をぺろりと舐めたあと、撃ち抜かれた少女の脚に指先をもっていく。
泣きじゃくる少女は、絵里の行動を不思議そうに見つめていた。絵里は涙を拭ってやり、頭を撫でてやった。

「もう、痛くないからね?」
「ふぇっ……?」
「よくがんばったね。お母さん、きっと迎えに来るからね」

絵里はそうして指先に神経を集中させる。
能力を発動させるためにはある程度の体力も必要だ。残された絵里の体力はどれほどだろうとぼんやり考える。
正直、死なない程度としか分からない。次に発作が起きれば、そのときこそ、地獄の門が開くだろうなと覚悟した。

絵里の指先と少女の負った傷が淡い光を発した。
836名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 22:39:02.64 0
>>827-835 とりあえず此処までです
亀更新で申し訳ないですm(__)m そろそろ浮気は控えますw
837名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 22:49:16.64 0
乙です
抑えた文体に引き込まれました
続きめっちゃ気になるw
838名無し募集中。。。:2012/09/19(水) 23:03:14.68 0
>>836
胸に重く圧し掛かる快感とでも言えばいいのか…そんな感覚を抱く作品です
続き待ってます
839 忍法帖【Lv=34,xxxPT】(1+0:8) :2012/09/20(木) 00:14:31.26 0
ひとまず揚げナント
840名無し募集中。。。:2012/09/20(木) 01:20:41.74 O
絵里と愛佳のやり取りが痛くて切ない…
841名無し募集中。。。:2012/09/20(木) 04:20:39.31 0
川=;´┴`;)
842名無し募集中。。。:2012/09/20(木) 06:19:23.83 0
843名無し募集中。。。:2012/09/20(木) 06:20:29.29 0
「後藤、やめなさい」

【重力操作】によって小型のブラックホールを創り出そうとしている後藤真希を制止したのは安倍なつみだった。
一度目の【シャイニングバタフライ】の発動で消耗した彼女は、中澤裕子の力を借りて辛うじて立っている。

   「ごとーは知ってるよ。 【シャイニングバタフライ】はなっちと圭織の二人がいてはじめて完璧な能力になるってこと」

【シャイニングバタフライ】で未来を変える代償は大きい。
その規模が大きければ大きいほど安倍なつみは因果律に介入したカウンターに見舞われる。
カウンターを安倍なつみが受け止めきれなかった合、行き場を失ったカウンターは無限ループ状に世界に災厄をもたらす。
だから飯田圭織が運命の糸を視た結果に従って、安倍なつみが因果律に介入することによって未来からのカウンターは最小限に抑えられる。

   「もしも圭織が生きていたら、ピンポイントでオゾン層をとっぱらって、太陽光線で私を焼き殺すことも出来たし、人工衛星を命中させることだってできただろうけど…」

安倍なつみ一人では都庁の残骸を"Jacob’s Ladder”に再構築するだけで精一杯だという後藤の言葉に中澤裕子が反応した。

   「お前、まさかそれが狙いで圭織を手にかけたんか」
   「ごとーはむしろ圭織にここにいて欲しかったよ」

自分のチカラの増大に気がついていなかった後藤は、未来の記憶の中で不慮の死を遂げていた飯田圭織を救いに行こうとしたという。
黒崎との会談の為、自衛隊の施設に赴いた飯田圭織の跡を追った後藤が建物に侵入しようと【重力操作】を発動した結果、建物を崩落させてしまった。
そして圭織を救おうと伸ばした手に秘められた最凶のチカラが、圭織の命を奪ったことも。

   「ほざいてろ、ボケがぁぁぁっ!!」

安倍なつみから離れた中澤裕子は、【空間裂開】を叩き込むために、後藤真希への最短距離を走った。
【空間裂開】の射程内に後藤を収める直前にその姿は消えた。
巨大な重力の足枷に耐えられず倒れ伏してしまった中澤を救おうと、安倍なつみは歩を進めるがその足取りはすぐに止まってしまう。

次回、暁の戦隊 第30話「月色の光」

仲間同士が相克の戦いを繰り広げることに耐え切れない安倍なつみの頬を涙がまるで見上げた月の雫のように、涙が伝った。
844名無し募集中。。。:2012/09/20(木) 07:54:42.79 0
タイトル聞き覚えがないと思ったら安倍さんの曲なんですね(スミマセン
しかし割って入るのが不可能なんじゃないかってくらい壮大な戦いですね
どうなるんだろ
845名無し募集中。。。:2012/09/20(木) 08:09:12.29 0
スケールが大きいな
846名無し募集中。。。:2012/09/20(木) 10:53:35.60 O
全作共通だがマンガにしたいな
847名無し募集中。。。:2012/09/20(木) 10:55:24.38 0
それ言うなら実写で見たいよw
848名無し募集中。。。:2012/09/20(木) 12:19:52.47 0
届け…!
849名無し募集中。。。:2012/09/20(木) 14:38:18.01 0
関係ないけど今回は新メンバーの話題まったく出ないんだね
なんでデショ
850名無し募集中。。。:2012/09/20(木) 17:23:07.81 0
夕暮れ
851名無し募集中。。。:2012/09/20(木) 18:37:47.84 0
夜の始まり
852名無し募集中。。。:2012/09/20(木) 20:23:11.67 0
>>847
実写化だと問題はジュンジュンの裸だなw
853名無し募集中。。。:2012/09/20(木) 20:35:42.01 0
モザイクかけたらいいんじゃないか?
854名無し募集中。。。:2012/09/20(木) 21:05:13.89 0
一周年記念動画思い出すw
855名無し募集中。。。:2012/09/20(木) 21:05:20.12 0
部分的に隠せばおk
856名無し募集中。。。:2012/09/20(木) 21:21:29.23 0
動画久々に見て感動したんだが笑ったよw
857名無し募集中。。。:2012/09/20(木) 23:09:03.36 0
おっとぉ
858名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 00:22:10.30 0
ガウ
859名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 02:32:26.79 0
おやすみなんと
860名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 05:52:26.57 0
>>843

ダークネス幹部チームを完全に葬り去ろうとした後藤真希を飛来した漆黒の矢が阻んだ。 その矢の放ち手は…。

  「せっかく助けてあげた命をわざわざ捨てに来るなんて馬鹿だなあ、藤本」

藤本の【凝縮】能力で大気中の窒素を固めて作り出した漆黒の矢は【重力操作】で尽く撃ち落とした。
その代償として小型のブラックホールの創成は一旦中止せざるを得なかった。

  「テメーが神を堕とす悪魔ならアタシは神をたぶらかす魔女。お似合いの相手だろうが」

次々と撃ち出される窒素の矢の威力や密度は先刻戦った時よりも威力を増している。
【時間停止】という現象を創り出すことは後藤にとっても楽なことではない。
ことに幹部チームとの戦いで一度時間を停止させている上に、小型ブラックホールを創りかけていた。
頭の奥底に軽い痺れを感じながら、それでも後藤は喜びを感じていた。

  ―― こうして戦ってるとこんなわたしでも生きてるって感じがするね。 このお礼に藤本には直接【重力操作】を叩き込んでやろう

【重力操作】の影響で電力会社からの送電がストップしている都庁付近のビル群が光で輝いている。 不規則な間隔をおいて、まるで文字のように。

決戦の場、都庁に赴こうとしていた美貴とリゾナンンターに間賀が随行を申し出たことから話が始まる。
間賀が勤務するという建物管理会社は都庁の一括管理を請け負っているという。
この夜も夜勤で泊まっているはずの同僚たちの身が心配だという間賀の同乗を美貴は許した。

藤本美貴の【凝縮】能力は、魔術の儀式というルーティンワークで脳内のスイッチを入れて発動する異能だ。
儀式の場が成立していれば、限界を超えた異能を発動することすら可能となる。
今、都庁とその付近のビル群は巨大な魔法陣と化して藤本美貴という器に魔力を注ぎ込んでいる。
間賀やその同僚たちが自家発電を稼働させ、藤本の指定した魔法言語を描いているのだ。

次回、暁の戦隊 第31話「葬送(前)」

  ―― さあ、来いよ。 勝ち誇ったテメーが自分の手で息の根を止めに来た時が終わりだ
861名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 07:51:23.90 0
>>860
間賀美貴胸熱!
葬送後編期待!
862名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 09:48:06.81 0
間賀さん活躍するなあ
863名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 11:32:37.03 0
豪華な対決が続くね
864名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 13:34:47.11 0
>>860
おちゅちゅ
リボンの騎士の聞かせどころの曲名をタイトルにするとは渋いw
魔女は本当の愛を見つけることができるのかしらん
865名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 14:37:03.40 0
葬送の歌詞は後藤さんに向けられるのかな
それとも・・・?
866名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 17:00:57.55 O
っほ
867名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 19:16:28.53 0
とりあえずね
868名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 20:13:36.51 0
さゆってやっぱりかわいいなってふと思った
869名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 20:14:44.49 0
さゆ乙
870名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 21:06:49.89 0
ぬれぎぬなの
871名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 21:14:25.68 0
『私がいて 君がいる』

〈どうして涙が出るんだろう〉

1−1

「さゆ…、れいなは絶対に賛成できん」
喫茶リゾナントの店内の空気がピンと張り詰める。
道重さゆみはコーヒーカップに目を落としたまま、厳しい顔つきで黙っている。
れいなは、鞘師里保の方を見た。
鞘師は複雑な表情で、天井に目を向けていた。
二階では鈴木香音が寝ている。
鈴木は鞘師のために、自分の身を犠牲にした。そして、あの少女に刀で斬り刻まれた。
大量出血のダメージは大きく、鈴木はすぐに近くの病院に入院し、輸血を受けた。
鈴木が退院して、皆のもとに戻って来れたのは、つい昨日のことだ。
鞘師はれいなの問いに何も答えない。店内は静まり返った。
「私は、道重さんの意見に従います」静寂を破って、譜久村が強い口調で言い切る。
「リーダーの出した結論に従うのが、私達の義務だと思います」
「リゾナンターにそんな義務はない!」れいなが声を荒げる。
れいなの後ろにいた工藤が、おもむろに口を開く。
「あの…、私は、田中さんの方が明らかに正しいと思います。
偉そうに言って申し訳ありませんが…、道重さんの考えは、間違っています」
工藤はれいなの横に並び、さゆみと譜久村の方を見つめた。
飯窪、石田、佐藤は困惑した表情で黙っている。さゆみが懇願するように言った。
「れいな、これがさゆみのわがままだっていうのは、よく分かってるの…。
でも、さゆみ、ほうってはおけないの…。お願い、れいな、分かって…」
「分からん!さゆは、仲間が傷つくことになっても平気なんか!」
現在の体制において、れいなとさゆみの対立はリゾナンターの崩壊に繋がりかねない。
重苦しい雰囲気の中、生田は心の中でつぶやいていた。
(…新垣さん…、早く…早く帰って来て下さい…)
872名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 21:15:03.73 0
1−2

高橋愛・新垣里沙・光井愛佳が相次いで離脱し、一方で新人がどんどん増えた。
その結果、リゾナンターは、結成以来、最も脆弱な体制となってしまった。
愛佳が去って数日経った夜、れいなとさゆみは、二人きりで話し合った。
新人たちの教育、新しいフォーメーション、今後の戦略…。論点は尽きなかった。
二人は、時間が経つのを忘れて、忌憚のない意見を言い合った。
知りあってもう何年もたつが、こんなに長い時間二人だけで話したのは初めてだった。
議論は翌朝になってようやく終わった。
窓の外を眩しそうに眺めながら、れいなが最後に言った。
「さゆ、やっぱり、リーダーはどっちかに決めといたほうがいいと思う。
さゆがリーダーやってよ。れいな、そういうのは性に合わん」
どちらがリーダーになろうが、二人がリゾナンターの中心であることに変わりはない。
そう思ったさゆみは、れいなの提案を快く受け入れ、新リーダーに就任した。
しかし、さゆみはすぐに後悔することとなった。

リーダーは、重要な事案の全てに対して、最終的な決定を下さなければならない。
さゆみはいつも恐れていた。
(さゆみが決めたことのせいで、メンバーの誰かが死んじゃったら、どうしよう…)
もちろん、さゆみが独断で何かを決めることはなかった。
必ずれいなや後輩たちと話し合い、皆が納得できる最善の結論を出す。
当然、結論に対する責任は、話し合いに参加したメンバー全員が、負っている。
だが、さゆみは、そうは思っていなかった。
リーダーとして、その結論にGOサインを出した時、全ては自分の責任になる。
リーダーとはそういうものだと、さゆみは考えていた。
ミーティングの最後、決定したことをさゆみが確認する。全員の視線が自分に集まる。
メンバー一人一人の信頼に満ちた視線が、焼けた火箸のようにさゆみの心を突き刺す。
(愛ちゃんだったらどうしてたかな…?ガキさんならもっと良い案を出してたかも…)
ミーティングのあと、さゆみは、誰もいない公園で一人考え込むようになった。
ある夜、れいなが、たまたまその姿を見かけた。
873名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 21:15:43.14 0
1−3

れいなが公園の横を通ると、さゆみが一人でベンチに座っているのが見えた。
薄暗い外灯に照らされたその表情は、今まで見たことがないほど、苦悩に満ちていた。
(さゆが、また何か悩みよう…。最近、毒舌も出んし、ほとんど笑わんくなった。
リーダーになったからって、そんなに一人で背負い込まんでいいのに…)
れいなは苛立っていた。
どうしてさゆみは自分に相談してきてくれないのか。
自分の頭が悪いからか。
いやいや、さゆみだって似たようなもんだ。
さゆみ、絵里、自分の三人は、タイプは違えど間違いなく全員「あほ」に分類される。
(…絵里…か…)
亀井絵里を思い出したことによって、れいなの苛立ちが別の感情に変わった。
(…れいなじゃあ、絵里のかわりは、つとまらんか…)
鉛色の無力感が、れいなの胸の底に重くのしかかった。

だが、れいなは前向きな人間である。
れいなは、これからは自分が全力でさゆみを支えていこうと決意した。
誰かを支えたいなどと思ったのは、れいなにとって、生まれて初めてのことだった。

れいなの不器用な努力の日々が始まる。
れいなはまず、日ごろ思っていることをどんどん口に出すことにした
「さゆ、二人でがんばろう!」
「さゆ、何か悩みがあるなら、れいなに言い!」
「さゆがいてくれて、本当に良かったっちゃ」
れいなは、照れ臭さに耐え、さゆみに声をかけ続けた。
これまで、れいながそんなことを口に出して言うことは、まずなかった。
さゆみは、れいなのそのような変化に驚き、怯え、訝しんだ。
しかし、徐々に、それらがれいなの自分に対する気遣いの表れだと分かってきた。
さゆみは、涙が出そうなほど嬉しかった。
874名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 21:16:27.25 0
〈どうして楽しくなるんだろう〉

2−1

ある日、さゆみが訓練に遅れた。
予定では、その日は新しいフォーメーションを考えることになっていた。
これまでも、さゆみが遅刻することはたまにあった。
そんなとき、れいなは、決まってこう言っていた。
「もういい!さっさと始めよ!さゆは後方担当やし、後で教えればいいっちゃろ!」
だが、その日のれいなは違った。
「さゆが来てから決めたいけん、みんな、ちょっと待っとろう」
そう後輩たちに言って、訓練のスケジュールを大幅に変更した。
遅れて訓練室に入って来たさゆみに、飯窪が耳打ちする。
「田中さんが、道重さんを待とうって、おっしゃったんですよ」
さゆみは、石田と乱取りをしているれいなを、笑顔で見つめた。

また、こんなこともあった。
7月になって、さゆみの誕生日が近づいてきた。
れいながカレンダーを見ながらつぶやく。
「さゆ、誕生日の0時にメールをもらうと、すごく嬉しいって言っとったな…」
れいなは決めた。
今年は、0時ちょうどにさゆみにハッピーバースデイメールを送ってみよう。
もちろん、そんなことをするのは、生まれて初めてだ。
その日かられいなは、暇さえあれば、メールの内容を考えるようになった。
そして、あっという間に誕生日の前日になった。
深夜11時。数十行に及ぶ長文のメールはもうとっくに完成している。
時計をぼんやり眺めていると、突然、携帯が鳴りだした。
「うわっ、佐藤だ。こんな遅くに何やろ?」
れいなは着信ボタンに触れた。
875名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 21:17:08.88 0
2−2

「こんちくわ〜、たなさたん、おきてました〜?」
「ああ、起きとったよ。どうしたと?」
「あの〜、たなさたんにおしえてほしいことがあるんです」
「なによ?」
「みちしげさんのたんじょうびってあしたですか?あさってですか?
きょう、ふくむらさんにおしえてもらったんですけど、
まーちゃん、どっちだったか、わすれちゃって…」
れいなは、自分が今していることを、後輩に知られるのが急に恥ずかしくなった。
「さゆの誕生日?うーん、れいなもよく覚えとらん」
「そうですか〜。まーちゃん、いつもみちしげさんにめいわくかけてるから、
ごめんなさいっていうきもちをつたえたくて〜、たんじょうびのめーるを、
よるの12じにおくりたいなあっておもったんです」
「そっか…。じゃあ、工藤とかに聞きいよ」
「どぅーもあゆみんもはるなんもみんなねちゃってて、おきないんです。
せんぱいさんたちも、るすばんでんわでした」
れいなは、今日の訓練終了後、くたくたになっていた8人の姿を思い出した。
「まあ、あんだけ疲れとったら、しゃあないやろね。佐藤は眠くないんか?」
「まーちゃんは、7じにねて、めざましどけいをせっとして、いま、おきました」
(ふーん、佐藤もああ見えて、けっこう考えとるっちゃね…)
「あ、思い出した!さゆの誕生日は明日で合うとるよ」
「そうですか!たなさたん、ありがとーごだいまったー!おやすみなさ〜い」
れいなは電話を切ったあと、ふと思った。
(あれ?佐藤が0時に送った場合、れいなの送ったメールはどうなるんやろ?
ひょっとして、0時ちょうどには着かんと?)
なにぶん、れいなにとっては初めての挑戦なので、どうなるのか全く予測がつかない。
(佐藤のメールのせいで、れいなのメールが遅れて着いたらどうしよう。
さゆ、0時ちょうどが嬉しいって言っとったしな〜)
れいなは、さゆみの誕生日を佐藤に教えたことを、少し後悔した。
876名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 21:17:53.80 0
2−3

れいなは緊張していた。時計の長針が、59分を指している。
れいなは、佐藤に負けたくなかった。
もちろん、自分のメールが少し遅れても、きっとさゆみは喜んでくれるだろう。
また、一番最初のメールが佐藤のものでも、それはそれでさゆみは嬉しいはずだ。
しかし…、れいなは納得がいかなかった。自分は、三時間もかけてメールを打った。
どんな内容にするか悩んだ時間は、おそらく数十時間を超えている。
こんなに一生懸命考えて書いた自分のメールが、一番に届かないのは納得がいかない。
れいなの胸の中で、負けず嫌いな性格が爆発する。
秒針が頂点に近づいていく。れいなの額を滅多にかかない汗が伝う。
5…4…3…2…1…(いけえっ!)
れいなは、人差し指に全神経を集中させ、画面を超高速で「タン!」と叩いた。
(…うまく、…いったと!?)れいなは携帯を持ったまま、中腰の体勢で立っていた。
そして、座ることも忘れて、数分間、携帯の画面をじっと見つめていた。
♪しょおじきをつたえないのがあ〜♪
メールの着信音が鳴った。れいなは、急いでその返信メールを開いた。
「……おっ、れいなが一番だったって書いてある!やったー!めっちゃ、嬉しい!」
れいなは、自分が一番だったことを、子どものように喜んだ。
そして、満面の笑みで、メールの続きを読んだ。
「うん…うん…、よっしゃ!さゆがよろこびよう!」
メールの文面からは、さゆみの感激がひしひしと伝わってきた。

れいなの気遣いはその後も続いた。そのせいか、さゆみの顔にも明るさが戻ってきた。
次第に毒舌も出てくるようになり、もう一人で公園に行くこともなくなった。
さゆみが元気にしていると、なぜかれいなも嬉しかった。
さゆみが自分を信頼してくれているというのが、以前の何倍も強く伝わってきた。
二人でふざけているときには、今までなかったほどの楽しさを感じた。
れいなは思った。
(れいな、今のさゆが一番好きかも!)
877名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 21:18:41.58 0
〈どうして愛 求めるんだろう〉

3−1

リゾナント店内の空気は、ますます重苦しさを増している。
れいながきつい口調でさゆみに言う。
「さゆ、いい加減に目を覚ましいよ!」
そして、鞘師の方を見て、励ますように言った。
「鞘師も、自分の気持ちをはっきり言い!」
鞘師は複雑な表情のまま、口を固く閉じている。
このままでは埒が明かない。そう思ったれいなは、説得をあきらめ、最終手段に出た。
「こうなったら、多数決で決めるしかないやろ。
さゆの意見に賛成やったら左手を、反対なら右手を挙げる。さゆ、それでええやろ?」
さゆみが頷く。
「それじゃあ、みんな…、手を上げり!」
さゆみと譜久村が左手を挙げる。
れいなと工藤は右手を挙げた。
鞘師・生田・飯窪・石田・佐藤は、どちらの手も挙げていない。
こわばった表情の鞘師に、れいなが諭すように言った。
「鞘師、さゆに遠慮は要らん。自分の気持ちに正直になりい」
それを聞いて、鞘師は、ようやく手を挙げはじめた。
だが、頭上に挙げられたのは、右手と左手、すなわち、両手だった。
れいなの表情が一気に険しくなる。
「鞘師!」「待ってください!」
突然、鈴木の声が響いた。れいなが振り向くと、階段を下りた所に鈴木が立っていた。
「私、里保ちゃんが何を悩んでいるのか、分かるんです。
ずっとここで、皆さんの話し合いを見てました。
里保ちゃんが道重さんの意見に、賛成でも、反対でもあるのは、理由があるんです」
「香音ちゃん、やめて…」
止めようとする鞘師の方を一度見てから、鈴木は意を決したようにこう言った。
878名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 21:19:17.68 0
3−2

「里保ちゃん、亜佑美ちゃんの写真が撮りたいんです!」
「えぇっ!?…鞘師さん…?」石田が、頬を赤らめながら鞘師を見る。
鞘師は恥ずかしそうに顔を隠しながら走って外へ出ていった。飯窪が慌てて後を追う。
「はあああああ!?」目の前の状況に驚くれいな。鈴木が話を続ける。
「里保ちゃん、亜佑美ちゃんの唇が好きなんです。私、ずっと前から気付いてました。
でも、里保ちゃん、あの性格だから、ずっと言い出せないで悩んでたんです…」
「えっと…、れいなは、鞘師が傷つくやろと思って、さゆに反対しとったっちゃけど、
ひょっとして、鞘師も、『そっち』の人やったと?」
「…もういいの。れいな、今回のことはさゆみが悪かったの…」
さゆみが、ホワイトボードに長い横線を引く。その線の下にはこう書いてあった。
『リゾナンター新ルール!写真を撮られても気にしない!』
さゆみが椅子に座り、ため息混じりに言う。
「さゆみ、りほりほの寝顔を見ると、どうしても放っておけないの。
あんなに愛くるしい寝顔は、人類の至宝として永久保存すべきだと思うの」
「道重さんの言う通りです。愛するものを写真に残すのがどうしてだめなんですか!」
興奮して大声になってしまっている譜久村に、工藤が反論する。
「でも譜久村さん、私が着替えてるところまで撮るじゃないですか!」
「撮るわよ。それが何か?」
「『それが何か』って、そんなの、だめに決まってるでしょお!」
「誰にも見せないわよ。聖が一人で愉しむだけ。ねぇ、道重さあん」
「ねぇ、フクちゃあん」
れいなは心底呆れていた。
そして疲れ切ったように階段へ向かいながら、こう思った。
(絵里は、さゆの暴走をうまく操縦しとったなあ。けどれいなはもう付き合いきれん!
やっぱり、れいなじゃ、絵里のかわりはつとまらん!)

一方、生田は、皆の話を全く聞いておらず、相変わらず新垣のことばかり考えていた。
(愛する新垣さん、早く帰って来て下さいね…。衣梨奈、毎日待ってるんですよ…)
879名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 21:20:09.29 0
3−3

ミーティングは自然に終了となった。
皆が帰り支度をし始めた時、突然、「カランコロン」とドアベルが鳴った。
入ってきたのは、一人の少女と、八匹の犬。
とっさに警戒するメンバーたち。だが、少女は背中に深い傷を負っていた。
さゆみが前に出て言った。「あなた…、『せっきー』さんよね?」
すると、その少女は、その場でいきなり土下座をし、大声で叫んだ。
「お願いです、助けて下さい!このままじゃあ、みんな、殺されちゃう!」
床についた手に、涙がぽたぽた落ちている。
さゆみは、すぐに少女を奥の部屋に連れて行き、傷の治療をした。
戻ってきた鞘師・飯窪も含めて全員が見守る中、少女の治療は無事に終わった。
梓は、さゆみに礼を言ってから、自分がここに来た理由を涙ながらに話し始めた。
ミッションに失敗した梓たち7人は、自分たちが死刑になると確信していた。
そこで、ダークネスから逃げ出す計画を立て、今日、それを決行した。
だが、脱走は失敗した。梓以外の6人はすぐに捕まってしまった。
何とか逃げ出すことのできた梓は、仲間を助けたくてリゾナントに瞬間移動してきた…。
「自分の言ってることが、すごくずうずうしいってことは分かってます…。
でも…、他に頼る人がいないんです…」

梓を奥の部屋に残し、全員が店の方に移動した。
「…さゆ、どうする?」れいながさゆみに言う。
「…あの目は嘘をついてないと思う…。さゆみは、あの子達を助けに行きたい」
さゆみはそう言うと、メンバー一人一人の顔を見た。
鞘師が、鈴木が、そして後輩全員が、それぞれさゆみを見て頷いた。
最後に、隣にいるれいなが、引き締まった表情でさゆみの目を見て言う。
「罠かもしれんけど、まあ、れいながおるし、なんとかなるっちゃろ。
とにかくれいなは、リーダーのさゆについていくけん!」
「…れいな、ありがとう!」
メンバー一人一人の信頼に満ちた視線が、さゆみの心を暖かく包み込んだ。
880名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 21:21:45.19 0
〈Ending:少し大人になったかな〉

関根梓を加えた11人が、8匹の犬の作る円の中に入った。
工藤の顔がこわばっているのを見て、佐藤がニヤニヤしながら言う。
「どぅー、きんちょうしてるでしょ〜?」
「してないよ!まーちゃんと『飛ぶ』より、犬と『飛ぶ』方がずっと恐くないわ!」
「えー!どぅーはまーより、いぬさんのほうがすきなの!?」
「もう、うるさい!佐藤!工藤!静かにしい!
…さゆ、佐藤って、もう13歳やろ?年の割りに、幼すぎると思わん?
れいな、あのくらいの頃は、絶対、もっと大人やったと思う。
そういえば、さゆ、佐藤からの誕生日メール、なんて書いてあったと?」
「え?誕生日メール?佐藤からは来んかったよ。来たのは次の日…だったかな?」
「はあ!?ちょっと!佐藤!聞きたいことがあるっちゃけど!」
梓が大きな声で言う。「みなさん、準備はいいですか?」
佐藤がれいなの方を見て、口の前に人差し指を立てて「シーッ」とする。
れいなが佐藤に「べーだ!」と言う。佐藤も「べーだ!」と返す。
さゆみが溜息をつく。
「それでは、行きます!」梓の合図で、11人と8匹が、一斉に消えた。

その数分後…。
リゾナントから遠く離れた地で、光井愛佳は携帯を懸命に操作していた。
「どうしよう…、誰の携帯にも繋がらへん…。みんな、どこにおるん…?
…お願い…、電話に出て……」

―おしまい―

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
>>871-880 以上、『私がいて 君がいる』でした。
次回からは、(仮)篇のクライマックスになります。
881名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 21:52:17.30 0
>>880
乙ですた
みんなで何の話し合いをしてるのかは途中で気がつきましたけどそこに絡めてくるさゆれなの話が現実と繋がってて胸に迫ってきますね
(仮)の子達を敵キャラとして使い捨てにするのではなく新たな展開に結びつけていくのもすごい意欲だと思います
でもこの流れだと小春が…
882名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 22:42:15.28 0
一つの話に何話ぶんものネタを詰め込んでるなあ
見事すぎる
883名無し募集中。。。:2012/09/21(金) 23:27:32.56 0
構成がおもしろいですねえ本当に
今回のは上にもあるようにオチ自体にはすぐ気付きましたけどw
全体としての展開も気になります
884名無し募集中。。。:2012/09/22(土) 00:56:06.58 0
ステーシーズ感想会終わり保全
知ってる人も多いだろうが舞台演出の末満氏が「共鳴」という言葉を使ったのは感動したw
885名無し募集中。。。:2012/09/22(土) 04:48:15.88 0
あぶねっ
886名無し募集中。。。:2012/09/22(土) 06:02:19.12 0
寝落ちて参加できなかったぜ
887名無し募集中。。。:2012/09/22(土) 07:50:39.76 0
ステーシーズ未開封のままだ
888名無し募集中。。。:2012/09/22(土) 09:39:24.05 0
>>860  

―― ちっ、どうしてもタイムラグは生まれるな

ビル群の壁面に描かれた魔法陣から創り出される魔力は強大で、最強のGすらたじろがせる底知れなさがある。
しかし、構築した魔法陣が巨大なことで藤本が【凝縮】能力を発動させるタイミングに若干のズレが生じている。
状況を見切った後藤が窒素の矢や炭素の槍を掻い潜り藤本に肉薄する。

  「藤本、お疲れ〜」

破滅の力が込められた拳が藤本の身体に炸裂する。

  「…やっぱ、こう来ると思ってたぜ。 最後は自分の拳でカタをつけるとな」

藤本は相殺しきれないチカラに身体を蝕まれながら、勝利を確信した。
今、この瞬間、自分の周辺に存在する大気中の窒素を一点に圧縮する。
窒素爆弾。 核に次ぐ破壊力を有する兵器を作り出し、一気に決着をつける、筈だったが……。

  「テメー、何をした」
  「あぁ。 ごとーを道連れにしようと何か企んでたのが不発に終わっちゃったのがごとーの所為だとでも? でもそれは違うよ」

藤本美貴の異能の根源は魔術の術式だ。
そして、魔術の源流を遡れば呪詛に辿りつく。
他者への嫉妬、他者への憎悪、他者への憤怒を成就させるための歪んだ感情から生まれた闇の儀式こそが魔術の原始。

  「ごとーのことをやっつけちゃいたいって意識で突っ走ってるうちは良かったんだけど、最後自分を犠牲にしてでも誰かを守ろうとしたよね、藤本」

藤本美貴に自己犠牲の精神が生まれたとき、呪詛に根ざした魔術の効果は薄れていった。

  「愛されるより愛する愛が愛だと知った今の藤本は魔女でもなんでもないだたのつまらない人間。 "Jacob’s Ladder”に立つ資格は…無い!!」

強烈な波動が藤本美貴を天空に投げ出した。
889名無し募集中。。。:2012/09/22(土) 09:41:25.01 0
  ぐわぁぁぁぁぁ!!

優に百メートルを超える高さから転落した藤本を緊急避難用の巨大な緩衝材が地上で受け止めた。
緩衝材の周りには黒装束に身を固めた男たちが群がっている。
どの男たちの身体もボロボロだ。

  「…テメーら、能無しの戦闘員どもはまとめてクビにしたはずだけどな」
  「だからフリーを満喫させてもらってますよ。 クソ生意気な女の負けっぷりを見物しに来たんですけどね」
  「じゃあ、今の無様なアタシを見て笑えよ」

次回、暁の戦隊 第32話「壮争(後)」

  ―― 笑えるはずがねえだろうが。 身体を張って戦った今のアンタを見て

言葉を失くした「俺」に藤本が声をかける。

  「なあ、アタシの身体を立たせてくんないかな。 まだやれる、まだやれるはずなんだ…」
  「アンタは十分に戦った。 ただの人間風情が鋼翼の悪魔とあそこまで壮絶に争ったんだから」

  「じゃあ、後はあいつらに任せるしかねえ…か」
890名無し募集中。。。:2012/09/22(土) 12:19:44.29 0
むむ
葬送を壮争と意図的に読み違えたか
891名無し募集中。。。:2012/09/22(土) 13:15:15.50 0
ヤバイちょっと涙出た
892名無し募集中。。。:2012/09/22(土) 15:24:00.44 0
皮肉な敗因が魔女らしくて泣けますね
しかしやっぱり熱いね暁戦隊
893名無し募集中。。。:2012/09/22(土) 15:57:20.81 0
>>889
戦闘員たちを首にしたのは布石だったのねん
間賀さんとか「俺」とかそういうキャラを使うのがうまいわ
ただリゾナンターの影が薄い気が
894名無し募集中。。。:2012/09/22(土) 16:33:43.71 0
俺はそれだけにきっとリゾナンターの合流間近……と読んでるんだがw
895名無し募集中。。。:2012/09/22(土) 18:22:52.73 0
合流前に落ちちゃいますよ
896名無し募集中。。。:2012/09/22(土) 19:49:03.58 O
落とすわけにはいかん
897名無し募集中。。。:2012/09/22(土) 21:02:07.05 0
モゲナント
898名無し募集中。。。:2012/09/22(土) 21:19:19.06 0
何がもげた?w
899名無し募集中。。。:2012/09/22(土) 22:43:21.47 0
そりゃあお前・・・w
900 忍法帖【Lv=37,xxxPT】(1+0:8) :2012/09/23(日) 00:12:55.42 0
おやすみ前にうええおええ丼特盛
901名無し募集中。。。:2012/09/23(日) 02:17:52.90 0
今日も雨か
902名無し募集中。。。:2012/09/23(日) 06:34:24.25 0
小春が暴れてるのか雷落ちたぞw
903名無し募集中。。。:2012/09/23(日) 07:46:38.09 0
>>889 
 ―― これはちょっといただけないな

新たに戦場に現れたリゾナンターの一手の猛攻をいなしながら後藤真希は思考する。
ジュンジュンにリンリン。 亀井絵里に道重さゆみ。 近接戦のスペシャリスト二人に回復役という配置は通常の敵一人に対してなら十分過ぎるが…。

  ―― 中国のお友達二人は私に敵わないことは身に染みて判ってる筈だけどな

【重力操作】で四人のリゾナンターを一気にを葬り去ることは可能といえば可能だが、しかし…。

一周前と一周後では世界の形や人の有り様は微妙に違っている。
一周前の世界では国会議員だった黒崎が一周後のこの世界では都知事を務めていたのには少し驚いた。
しかし、人の本質は変わらなかった。
黒崎という男は邪悪で卑小な存在だった。
飯田圭織という予知能力者は何を考えているか判らないようでいて、人間の深淵を視ていた。 だったら…。

  ―― 愛ちゃんの本質も変わらないよね

高橋愛は危険な使命を仲間に負わせて、自分の身を安全な場所に置くことを良しとするような人間ではない。

  ―― 愛ちゃんがごとーの息の根を止めに来てくれるんだよね。 この子たちはその機会が訪れるまでのj時間稼ぎか、ならば…

次回、暁の戦隊 第33話「摩天楼ショー」

  ―― この摩天楼ショーを少しの間楽しませてもらおうかな

拳の嵐、炎の嵐、風の刃に吹かれながら、後藤真希は踊る。

目の前の敵との交戦は反射神経に任せ、切り離した意識はあらゆる事態の変化に対応するために研ぎ澄ます。
高橋愛の意図する処を見破り、自らの命を危険に晒したギリギリの直前で打ち破る。

  ―― 胸が高鳴るねえ
904名無し募集中。。。:2012/09/23(日) 08:21:46.03 0
合流来ましたナ!
「黒い羊」と似たシチュエーションからどう展開していくのか…
本編読みたいなあこれ
905名無し募集中。。。:2012/09/23(日) 09:55:44.39 0
次はリゾナンターのターンか
906名無し募集中。。。:2012/09/23(日) 11:10:40.27 0
9期もいるのが「1周前」との違い…か?
907名無し募集中。。。:2012/09/23(日) 12:10:42.81 0
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/677.htmlつづき


それはとても温かな光だった。
涙で滲んだ愛佳の瞳には、確かに笑顔の彼女が見えた。
唐突に愛佳は、これが、「愛」であり「想い」であり「祈り」なのだと感じた。

絵里は一閃引くように指を動かした。
光は唐突に失われたが、それと同時に少女の銃創も消えていた。当然のように、少女から痛みも消えていた。

「お姉ちゃん……っ!」

まるで魔法使いのような絵里の行動に少女は目を輝かせた。
しかし次の瞬間、彼女に起こった変化に、少女は言葉を失った。
絵里の左脚、少女が撃たれた場所と全く同じ部位に、全く同じ傷痕が出現していた。

「亀井さんっ!」

愛佳は即座に手にしていたハンカチで止血を始めた。
少女の受けた傷と全く同じであるために、血が完全に止まらないことなど分かっている。だが、それでも愛佳はなんとかしたかった。
これくらいしかできない自分を呪う。なんで自分には“治癒能力(ヒーリング)”がないのだろうと。

「おい、なにしやがったぁ!?」

こちらに起きた異変にいち早く男が気付いた。
撃ったはずの少女が無傷になり、撃たれていない絵里が傷ついているのだから当たり前だ。
男はこちらに迷わず銃口を向ける。患者たちは「ひぃぃっ!」と目を逸らす。
908名無し募集中。。。:2012/09/23(日) 12:12:06.07 0
それでもなお、彼女は笑っていた。


「信じてるよ、みんな―――」


絵里はそう言うと痛みを堪えながら指先を伸ばし、一閃を引いた。
彼女がなにをしたのか、愛佳は一瞬で把握した。そして、止められなかった自分を、呪った。

「うああああ!!!」

銃を向けていた男が膝を折って倒れた。男の脚には、絵里と全く同じ箇所に同じ傷が浮かび上がっている。
なにが起きたのか把握できない仲間たちだったが、考える余裕なんて与えずに、絵里は“傷の共有(インジュリー・シンクロナイズ)”を発動させた。

「がぁっぁぁぁっ!」
「なんだぁぁっ?!」

次々に倒れていく男たちに患者たちは茫然とした。
だが、漸くこれが好機だと気付いたのか、ひとりの患者が銃を奪い取った。

「け、け、警察っ!!」

患者の叫び声に我に返った医者は、慌てて受話器を取った。
突入態勢が整ったのか外が騒がしくなる。

「この……クソガキがっ!」

絵里の“傷の共有(インジュリー・シンクロナイズ)”を受けてもなお、赤い男は銃をこちらに向ける。
909名無し募集中。。。:2012/09/23(日) 12:13:52.12 0
愛佳が絵里を庇おうとした瞬間、彼の体は数メートル先の柱に吹き飛ばされた。男は柱に全身を打ちつけ、手にしていた拳銃を落とした。

「亀井さんっ!!」
「っはぁ……あっ…ごめっ……使っちゃったよ…“風”……」

絵里はとっさに空間に“風”を起こした。
彼女の瞳の焦点はもう合っていない。愛佳の姿すら、その瞳には映していないかもしれない。
だれか……だれか彼女を、亀井さんを助けて下さいと愛佳は必死に叫ぶ。だが、混迷がつづく中、その声はだれにも届かない。

紫色の男は最後の力で銃を握り、絵里に向けている。
絵里は短い呼吸の中で叫んだ。分かってる。分かってるよ、この温かい風の持ち主を―――

「れーなぁっ、さゆぅーっ!!」

その声が響いた瞬間、2階へと通じるエスカレーターの頂上かられいなが降ってきた。
文字通り、彼女は飛び降りてきたのだ。

突然現れた少女に虚を突かれた男は、銃口を慌ててそちらに向けた。
しかし、気付いたときにはれいなの拳を顔面で受け、その鼻の骨を折られていた。
れいなは勢いそのままに、別の男へと殴り掛かる。

「待ってれいな、落ち着いてっ!もうすぐ警察も来るから!」
「離せッ!こいつらが…こいつらが絵里と愛佳をっ!!」
「道重さん先に亀井さんをっ!!」

我を忘れて殴り掛かるれいなを止めるさゆみは、愛佳に引きずられるように絵里の治療にあたる。
愛佳は必死でれいなを止めようとするが、彼女は止まらない。その拳が血で汚れるのも厭わずに、殴りつづけた。
910名無し募集中。。。:2012/09/23(日) 12:14:47.97 0
「絵里っ、絵里っ!!」

さゆみは絵里を背負い、エスカレーターの陰で死角となった場所で“治癒能力(ヒーリング)”を使う。
だが、“傷の共有(インジュリー・シンクロナイズ)”で受けた銃創は治せても、絵里の心臓にかかった負荷は治せない。

「はっ…闘わ、ないって……でかいこと、言っときながら…この、ざまですよ」
「絵里ちょっと待ってて!お医者さん呼んで薬打ってもらうから!」
「はぁっ……むり、だよぉ…さゆ……」

絵里はそうして笑って首を振るが、さゆみは立ち上がり、医者を呼びに行った。

「すみませんっ!この子、心臓発作起こしてるんです!だれか、だれか薬をっ!」
「それが……薬がないんです!」
「はっ?」
「最初の爆発で、薬やカルテはすべてなくなってしまったんです。担当の外科部長も…もう……」

その言葉を聞いてさゆみは看護師に詰め寄った。

「此処は病院でしょ?なのに…なのに助からないなんてそんな……?」

瞬間、警察が突入してきた。
大勢の人間でごった返す中、愛佳はさゆみの肩を掴み、叫んだ。

「警察に運んでもらいましょう!近くの別の病院ならなんとかなりますっ!」

そこで漸く正気に戻ったれいなは大声で警察を呼び、絵里の病態を知らせた。
警察の流れと逆行し、4人は外へと出る。
波のように人質たちが解放され、マスコミのフラッシュとインタビューを受ける。
911名無し募集中。。。:2012/09/23(日) 12:16:36.62 0
「離せぇぇ!!」

後方で、犯人たちの声が聞こえた気がしたが、振り返らずに走り出す。
待機していた救急隊員がすぐに対応を始めた。隊員たちがで絵里を運ぼうとするが、れいなは彼女を離そうとはしなかった。
悲劇のヒロインを見つけたマスコミが一気に押し寄せてくる。さゆみは吐き気がした。

「お姉ちゃんっ…!」

そのとき、先ほど怪我をした少女が絵里たちに叫んだ。
絵里は微かなその声が聞こえたのか少女へと振り返る。絵里の瞳はもう生気を宿していない。
少女は母親らしき人物に抱きかかえられ、こちらに笑いかけた。その姿を、捉えることはできなくとも、絵里は見る。

「ありがとう、お姉ちゃんっ!」

絵里はその声を認めると優しく笑いかけた。
ああ、良かったと思った瞬間、れいなの服を掴んでいた腕がだらりと垂れた。
嘘やろ?とれいなが思った瞬間、隊員たちはれいなから強引に絵里を奪い取り、救急車に乗せた。

「――――い――ね」

絵里がなにかを呟くが、れいなは救急車に乗ることはしなかった。
先ほどまで抱きしめていた温もりが急になくなっていくのを感じる。
震え始める腕には、絵里の血がべっとりとついていた。赤くて、さらさらで、綺麗だった。

「世界って―――やっぱ綺麗なんだね」

絵里は直後に酸素マスクをつけられ、マスコミを押しのけて病院を出ていった。
912名無し募集中。。。:2012/09/23(日) 12:17:32.90 0
「れいな……」

さゆみと愛佳はれいなの背中に声をかけた。
だが、彼女はその声には振り返ろうとはしなかった。

オレンジ色の夕陽が世界を照らしていた。
あの日も、こんな風に日が沈んでいった。
温かい色が世界を包み込んで優しいくせに、夜の始まりや世界の終わりを暗示しているような気がして、れいなは真っ直ぐには見られなかった。

「……なん、でよ……」

れいなは拳を震わせた。
なぜ、どうしてこんなことになってしまうのだろう。
どうして、どうして、どうして―――?

「絵里いいいぃぃぃ!!」

れいなはありったけの力を込めて叫んだ。
世界が綺麗だと呟いた彼女の笑顔が脳裏をよぎる。
ダークネスじゃなくても、人は人を殺し、奪い、騙し、傷つける。
この世界の、この腐りきった世界の何処が綺麗だというのだ?

なにを護っていたのだろう。
なにを信じていたのだろう。

だれが為に、闘ってきたのだろう。

れいなは膝から崩れ落ちた。
涙がとめどなく溢れ出る。

オレンジ色の夕陽が、沈んでいった―――
913名無し募集中。。。:2012/09/23(日) 12:18:53.27 0
>>907-912 「the new WIND―――亀井絵里」
予想されうる展開で申し訳ないです
あまり納得いかない文章ですがご容赦を…
914名無し募集中。。。:2012/09/23(日) 14:16:13.11 0
読ませる展開だなあ
915名無し募集中。。。:2012/09/23(日) 15:02:43.12 0
亀井絵里…だなぁ…
916名無し募集中。。。:2012/09/23(日) 16:42:59.70 O
まさか泣くとは思わなかった…言葉にならない
917名無し募集中。。。:2012/09/23(日) 18:23:18.71 O
読む前ほ
918名無し募集中。。。:2012/09/23(日) 19:49:22.96 0
胸が締め付けられるような話だ
現実の娘。の動向とシンクロさせるなら新たな共鳴者が仲間に加わるのだが
919 忍法帖【Lv=38,xxxPT】(1+0:8) :2012/09/23(日) 21:17:39.62 0
ほぜなんほぜなん
920 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) :2012/09/23(日) 22:44:37.16 0
レベル見とこ
921名無し募集中。。。:2012/09/24(月) 00:03:28.69 0
ネマス
922名無し募集中。。。:2012/09/24(月) 02:01:28.71 O
ノノ*´ー`) 信じてるよ
923名無し募集中。。。:2012/09/24(月) 03:27:01.88 0
えりの心臓の設定って飼育から?
924名無し募集中。。。:2012/09/24(月) 06:24:06.44 0
多分違う
925名無し募集中。。。:2012/09/24(月) 07:15:11.89 0
>>903

獣化したジュンジュンの爪、懐に飛び込んで来るリンリンの拳と応戦しながら、後藤の意識は高橋愛との決着の時を待っていた。
彼女たちの攻撃は後藤には届かない。
逆に後藤が反射的に繰り出した一撃で負った傷を亀井絵里と道重さゆみが協力して治癒していく。

  ―― 傷は治っても痛みは感じるだろうし、恐怖も残るだろうにね。

今、自分と退治している四人が高橋愛を認め、未来を信じていることを痛感する。

  ―― 確か、こっちの世界の愛ちゃんは一周前の世界の愛ちゃんが持っていないチカラを持ってるんだよね

フォトンマニピュレイト。 光を操るという能力の実相を後藤は実は知らない。
一周前の自分の中の認識と一周後の世界のカタチとの間に生じていたズレを解明すべく、様々な情報を収集している間に知り得た事実だ。

  ―― もしかして目からビームでも発射するのかな、うふっ、カッコいい

もしも高橋愛が滅びの光を放ったなら回避する術はない。
最強のGといえど光の速さには敵わない。
小型のブラックホールを形成すれば光の進行を歪めることは出来るが、一定の威力に留めておくのは大変困難だ。

  ―― 愛ちゃんやれいなと拳を交えないうちに全てを終わらせるのは勿体ないからね

高橋愛が仕掛けてくる瞬間を見切って、【時間停止】を発動させる。
タイミングを見誤れば死に直面するという予感は後藤の心を浮き立たせた。
926名無し募集中。。。:2012/09/24(月) 07:16:49.87 0

  ―― でも、愛ちゃんはどうやて強力な光を発生させるつもりなんだろう?。 ん、フォトンマニピュレイトってのは光を収束させて放つことなのかな。 だったら…

夜明けには遠いこの時間ではフォトンマニピュレイトは発動できないと後藤は考えた。 収束させるに足りうる太陽光が射さないこの時間では。

  ―― そっか、だから小春がこの場にいないのかな。 謎は全て解けた、なんてね

後藤は高橋愛や田中れいなについで気がかりだった存在の顔を思い浮かべた。
久住小春。 彼女の放つ雷撃の速さは脅威だと考えていた。
しかし、小春一人で発生させうる雷撃の威力には限界がある。 目標に命中させる精度の問題。 そして何より命を奪う覚悟の有無。

しかし、ここに顔を見せていないリゾナンターが力を合わせれば。

ビル群の電灯ぐらいしか光源のない夜の闇の中で殺傷力を有する光を作り出す唯一の手段を後藤は見出した。

One  鞘師里保の【水限定念動力】と生田衣梨奈の【気体操作】で水蒸気を上昇させ、電位差が生じやすい大気の状態を局地的に作り出す。
Two  田中れいなによってチカラを【増幅】された小春が自分一人では発生させられない規模の強力な雷を起こす。
Three 小春が起こした強烈な雷の光を高橋愛が【操作】して収束して標的を射抜く。

次回、暁の戦隊 第34話「One・Two・Three」

  ―― 大好き 大好き 大好き 大好き……だからわたしのことを殺しに来てよ

雷鳴が轟いている。


927名無し募集中。。。:2012/09/24(月) 08:14:30.75 0
すごく高まる展開……なのになんだろうこのすごく物悲しい感じ
ワクテカでいて悲しきメロディな感じです
ピョコピョコではない
928名無し募集中。。。:2012/09/24(月) 09:35:51.28 0
後藤さんの狂おしい情熱がかなしいな
929名無し募集中。。。:2012/09/24(月) 11:48:38.97 0
One・Two・Threeの曲の感じが不思議とハマるなあ
930名無し募集中。。。:2012/09/24(月) 13:58:50.47 O
931名無し募集中。。。:2012/09/24(月) 15:30:46.74 0
妙な天気だ
932名無し募集中。。。:2012/09/24(月) 17:31:45.65 0
こんな戦いがもし本当に起こったら天候も狂いそう
933名無し募集中。。。:2012/09/24(月) 18:57:21.14 0
ほっ
934名無し募集中。。。:2012/09/24(月) 20:39:58.31 0
かいどうはでっかいどう
935名無し募集中。。。:2012/09/24(月) 22:17:49.36 0
でっかいどぅー
936名無し募集中。。。:2012/09/24(月) 23:31:48.57 0
ノリ*´ー´リ<ちっちゃいだー
川c ’∀´)<…何がですか?
937名無し募集中。。。:2012/09/25(火) 00:02:31.77 O
唇スレから出張してきたなw
938名無し募集中。。。:2012/09/25(火) 00:04:09.72 0
スレ間違えたかとおもたw
939名無し募集中。。。:2012/09/25(火) 00:53:17.02 0
乱立してるな








イイヨイイヨー
940名無し募集中。。。:2012/09/25(火) 02:36:38.40 O
从*・ ∀.・)<りほりほが順調に成長してるのw


从*` ロ´)<これ以上はスレチっちゃ!
941名無し募集中。。。:2012/09/25(火) 07:08:33.58 O
おはよう諸君
942名無し募集中。。。:2012/09/25(火) 10:30:23.51 O
完走見えてきたな
943名無し募集中。。。:2012/09/25(火) 12:28:38.63 0
なのでホ
944名無し募集中。。。:2012/09/25(火) 14:30:27.77 0
うむ テ
945名無し募集中。。。:2012/09/25(火) 16:37:43.48 0
はいな ル
946名無し募集中。。。:2012/09/25(火) 18:47:06.16 0
おっとと
947名無し募集中。。。:2012/09/25(火) 20:41:41.24 0
おとといのライブでハンターのフリを間違ったフクちゃん
リゾナントで張り切りすぎたらしい
それ聞いてなんかいろいろうれしかったホ
948名無し募集中。。。:2012/09/25(火) 21:31:21.96 0
胸の辺りがいつも張り切ってるのも嬉しいテ
949名無し募集中。。。:2012/09/25(火) 22:33:14.88 0
ムッツリ変態さは誰にも負けないフクちゃんル
950名無し募集中。。。:2012/09/25(火) 23:19:57.02 0
何気に島津ゆたかがいるな
951名無し募集中。。。:2012/09/26(水) 00:14:52.28 0
从*・ 。.・)<ホテルで愛して  って歌ですかw

>>925-926


952名無し募集中。。。:2012/09/26(水) 00:16:50.09 0
稲妻が走った。しかしそれ以外は何も起こらなかった。

  ―― 試し射ちだったのか、それとも稲妻の光を愛ちゃんが収束して放つっていうのは見立て違いだったのか、でも…

果敢に立ち向かってきたジュンジュンとリンリンが、距離を置こうとしているのは、雷が攻撃の起点である証のように思える。

最強同士の戦いで二転三転する白熱の攻防は有り得ない。
有利なポジションを取り、先んじた方が勝利を収める。
ほんの僅かな誤差が取り返しのつかないミスを呼ぶ遠距離からの射撃を高橋愛が行うとは思えない。

  ―― 愛ちゃんはもうすぐ私の命を奪うために “Jacob’s Ladder”にやってくる。 

共鳴という絆に全てを委ねた者たちの奏でる魂の鼓動は後藤真希にとって、本来不快な不協和音だ。 しかし今は敢えて耳を傾ける。
最初の雷からの間合い、そしてジュンジュンたちから感じられるリズム。

  ―― 来る。

後藤真希は闇の波動を全開放した。 極限に増大した重力に時間が絡め取られていく。

  ―― 思ったよりも遠い

ゼロ距離からの攻撃を仕掛けてくるのではと期待した高橋愛が数十メートル離れた地点で静止している。
そんな安全策をとった理由は愛のすぐそばにいた。

  ―― あの子、たしか予知能力者の光井愛佳

後藤真希が看破した通り高橋愛のフォトンマ二ピュレートは収束させた光で敵を射抜く。
光を収束させるために自らの目の水晶体をレンズとして用いるので、一時的に視力を失ってしまう。
後藤という最強の能力者相手に二の矢を放つ機会は訪れないことを予期した愛は、たった一度の機会をより確実に使うために未来を視ることのできる愛佳を自分の目の代わりにした。
自分一人なら後藤と刺し違えることすら厭わなかっただろう愛は、愛佳が一緒に行動することを考えて一定の距離を取らざるを得なかった。
収束光の速度を考えればそれは十分な至近距離といえたのだが…
953名無し募集中。。。:2012/09/26(水) 00:18:45.94 0

  ―― 重い。 まさか自分のチカラにこんな風に足を引っ張られるとはね

静止した時間の中で唯一動ける存在である後藤真希が、愛との距離を詰めていく。
自分の拳で直接【重力操作】を愛に叩き込むことが後藤の設定した勝利条件だった。
巧みな操作で時間停止の状態を保ったまま移動する後藤だったが、極限を超えて強化された重力線の軛から完全に逃れることはできない。
確実で安全な対抗策は時間を停止するために増大させている重力のベクトルを減少に転じ、愛の射線から逃れて稲妻の放ち手である久住小春を倒しに行くことだとわかっている。
しかしそれはしない。

  ―― 愛ちゃんも他の子もあたしを倒すために、全てを失くす覚悟で向かってきている。 だったら私はそれを真っ向から潰してあげる。

いつまで時間を停止させられるかは自分でもわからない。
時間が動き出せば馬鹿正直に真正面から向かっていく自分のことを愛は光の槍で貫くことだろう。
二つの世界の自分が一つになってから嗅ぐことの無かった死の匂いが後藤真希を高揚させる。
喜びを得るために愛たちと同じだけの大切なものを差し出しながら、足跡を刻みつけていく。

  ―― ヤバッ、ちょっと間に合わないかも

時間が動き出す予兆を感じたが、愛との間にはいまだ十メートルばかりの隔たりがある。
後藤の脳裏にある光景が浮かんだ。
それは鈴木香音を救い出そうとした鞘師里保が、武器となる水の存在しない閉鎖環境で取った手段。

  ―― もらうよ、里保ちゃん

何のためらいもなく自分の手首を噛み切った後藤は、血液が噴き出そうとしている傷口を愛の顔面に向け振り下ろす。
動き出す時間。 夜の闇を走る稲妻。 愛の瞳を染める血の滴。変動する屈折率。そして…。

次回、暁の戦隊 第35話「足跡」

赤い光を潜り抜けた後藤の拳が愛に炸裂する。
愛の口から崩れ落ちる愛の口から真っ赤なものが…。
954名無し募集中。。。:2012/09/26(水) 01:26:44.45 0
ゥオオオウ!かっこいい!!
955名無し募集中。。。:2012/09/26(水) 06:08:40.80 0
ホゼナント
956名無し募集中。。。:2012/09/26(水) 06:31:46.92 0
なんて濃密な戦い…!
957名無し募集中。。。:2012/09/26(水) 08:07:51.86 0
さて最強のGを誰が止める
958名無し募集中。。。:2012/09/26(水) 09:49:23.59 0
Aカップの猛者たち?
959名無し募集中。。。:2012/09/26(水) 12:17:08.39 0
私Cだから
960名無し募集中。。。:2012/09/26(水) 14:31:01.09 0
Combat
961名無し募集中。。。:2012/09/26(水) 15:30:39.45 0
午後ティー
962名無し募集中。。。:2012/09/26(水) 17:27:25.74 0
御酒ティー
963名無し募集中。。。:2012/09/26(水) 19:36:28.64 0
保全戦隊ホゼナント!!!!!
964名無し募集中。。。:2012/09/26(水) 20:46:51.26 0
( `.∀´)<時間よ止まれ!
965名無し募集中。。。:2012/09/26(水) 21:52:16.43 0
パッパヤパヤ パッパッパー
966名無し募集中。。。:2012/09/26(水) 22:47:58.08 0
ほぜ
967名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 00:11:42.86 0
てぜ
968名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 01:20:37.15 0
るぜ
969名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 03:41:01.83 0
どうしてもホテルにしたいんだなw
970名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 06:22:17.66 0
ホテルリゾナント
971名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 07:20:09.62 0
保全おーねがいよー席を立ーたないで
972名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 08:17:00.11 0
Welcome to the Hotel Resonant
Such a lovely place
Such a lovely face
Plenty of room at the Hotel Resonant
Any time of year
You can find it here


ようこそホテルリゾナントへ
とても素敵な空間なの
かわいい子たちもいるの
ホテルリゾナントの部屋はたっぷりあるの
休まず営業してるの
あなたはここできっと……見つけることができる
973名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 11:51:30.87 0
ラブリー
974名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 12:21:24.24 0
パーー!
975名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 12:45:15.97 O
中1の鞘師がいるなw
976名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 15:21:20.33 O
>>913
亀レスですがとても読みごたえのある作品でした。えりぃ…
977名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 15:27:03.24 0
私にはもう保全する力しか残されていない
978名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 17:05:39.44 0
私にも保全の力を振り絞るのが精一杯だ…
979名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 17:28:59.88 0
――い…つも、ありがとう、ござい、ます…。
  後方、支援部の、方々の…おかげで、私達、安心して、戦えるん、です――
980名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 17:32:54.96 0
新曲のPV(仮ver.)カッケー  つhttp://bit.ly/UYJFt0
981名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 17:33:56.33 0
>>979
えりぃ……
982名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 18:21:44.36 0
今スレは感想で埋めましょうか。
983名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 19:30:49.69 0
いいね
今回はシリーズ多かったね
どれも甲乙つけがたいけど「3×3+1」のやつ好きだな
984名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 19:52:51.15 O
自分は唐突に出た「あえあ」がツボでしたw
985名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 20:40:47.48 0
嵐の前のなんだけど香音ちゃん鞘師さんの学園物が少し和んでよかった
986名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 20:54:59.89 0
「crossing belief」は他の話とも繋がっていながらそれ自体で完結しているという点で印象に残った
あとスカイツリートリオの話もまだこんな話を書く人が残っているという点で嬉しかった
そんな俺が今スレで一番好きな更新は>>630-633なのだがね
987名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 21:05:37.64 0
「crossing belief」は何かを見通したような内容で印象的だったな
988名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 21:11:42.21 0
シリアスモノもよかったが123シリーズにちょこちょこ入るネタがよかったw
989名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 21:23:11.96 0
JJパンダ動物園とかしまし2012が面白かった
あとLLの話はチョト涙ガ出たヨ
990名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 21:35:09.64 O
水と風シリーズはほっこりした
現実に見ない組み合わせには弱いな
991名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 21:37:32.63 0
ストーリーではnewWIND
構成では3×3+1
文章ではQualia
心震えるのはかなしみ&暁戦隊
和んだのはプールの話

シリーズも熱いね
992名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 22:20:28.64 0
今回はシリアスとほのぼのが均等に入り混じった印象だな
993名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 23:21:24.67 0
今回も1つしか書けませんでした…
994名無し募集中。。。:2012/09/27(木) 23:23:12.79 0
the new WINDの更新が一番の楽しみ
作者さん次スレでもよろしくお願いします
995名無し募集中。。。:2012/09/28(金) 00:06:06.38 0
作者はもちろん、読者の方にもホゼナンターの方にも感謝!
996名無し募集中。。。:2012/09/28(金) 00:16:13.02 0
997名無し募集中。。。:2012/09/28(金) 00:41:07.36 0
ゾ 埋めるのか?w
998名無し募集中。。。:2012/09/28(金) 00:43:44.70 0
ナ 次スレはどなたか立ててもらえるんでしょうか?
999名無し募集中。 。 。:2012/09/28(金) 00:44:58.42 O
今回も中途半端な話をかいてしまった…。
1000名無し募集中。。。:2012/09/28(金) 01:16:35.42 0
    iーj;二二;,__r‐、
   {~タ-―=二、`ヾ、~l           石川と結婚するのが吉澤の夢!
 ,-r'"_,,........,__  ` -、 `i)                                            /|
 彡;:;:;:;:;/~_Z_ ̄`ー、_  `l、       ,.-=-.、.                           ,..ィ"~~~~~:::::ヽ
 7:;:;:;:;:/. `ー-ヲ t‐-、!`ヽi::r   ,:、 ,..ム.゚.,..゚..,.、l                         ,r'"::;;;_;;::::::::::__:::::::\
 ;:;:;:;:;/ /   ,.、 `!~|:::)::/   / :K"/ r:'" ,iii ~\         ,,...-,-、           /,.r''"     ヽ:::::::::::i!
 :;,;-〈 /  Fニニヽ | .|:::l:::ヽ   ラ-{ `"・ ・ ・ 。。 llL_/!      /-v"  `丶、       i"    ,.-。-ュ-.ヽ:::::::::;!
 '   fヽ  ヾ--"  l,/::/r'"  /`ー!: |~r-。、~`-、゚_  lソ     /  l      ` 、      i ,r・')、 |:`''''' " ヽヽ:::::::ヽ
   | ` 、___,..- '"|::::ゝ   /  l ノ i/`"'" ´゚-y' ./メ,      /  (・・)`丶、    '''ヽ     l :~ ヽ! ,..-、  ヾ;:::::::::|
   ヽ   /    レ"`‐.、_./  .レ /:; r-ニ、 K ./ 「    r''  //~~`''ーヾ'ー、   ノ     l   f'" '"~ノ  l |::::::::L
 ヽ        _,.-‐−―`ー"ヽ_l ヾ `ー'",.! | |_/     |  /、,,..-i'''t=ニ;ラ",l|`ゝr'     ヽ   ヽ-‐"  //'"二
  `,.-―'''''''''''<.,_     i"   l  ヽ....,,-" く__/     `ヽy:|`T"~、.,,__  `,i|ヾ |       ヽ、 ,.:-‐-'',/,.r‐''"
 '' "        l     i.   `   /    |,~`-、      | :i|  F‐'''"|  ! |ヽイ、_     ,..-‐f彡ゝ--‐"
           |     `: 、_         ノ   ヽ    ヽ'、  l!;;;;;;;/  / /:::::::`t''''丶、
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