もうすぐ夏休み。今年は格安航空会社(LCC)の利用を計画している人も多いのではないか。国内で
LCCが次々誕生する裏で、日本の航空業界では大幅な規制の見直しが進んでいる。空の旅がますます
手軽になろうとしている今、安全への影響はないのだろうか。
【井田純】
◇現場から不安の声
昨年末から航空機の安全・運航に関する規制見直し作業を進める国土交通省は、今月までに100点に及ぶ
緩和項目をとりまとめた。内容は、機長の審査や整備士の資格制度から、機体の整備、給油時の規定など
多岐にわたる。中でも、新聞各紙やテレビなどが報じて話題を呼んだのが、パイロットの年齢制限緩和。
従来、60歳以上のパイロットは1機に1人しか乗務できなかったが、今回の見直しで、国内線と短距離
国際線で機長、副操縦士とも60歳以上の乗務を可能にする通達が出された。
背景にあるのは、世界的なLCC拡大などによるパイロットの不足だ。日本の「LCC元年」といわれる今年、
3月には関西国際空港を拠点とするピーチ・アビエーション(全日空系)が就航。さらに来月、再来月には
いずれも成田国際空港に本拠を置くジェットスター・ジャパン(カンタス・日航系)とエアアジア・
ジャパン(全日空系)が第1便を運航する予定だ。これらLCCのパイロットの多くは、既存航空会社を
退職したベテラン。ピーチは「機長の大半が50歳以上で、60歳以上も1人いる。こうした緩和措置は
ありがたい」と歓迎する。
国交省航空局は一連の規制見直しについて、「必ずしもLCC育成のためではなく、航空業界全体の
ビジネスモデルの変化に対応していくため」と説明する。海外LCCの進出などで厳しい競争に
直面している航空業界。緩和の対象項目は、航空各社からの要望に基づき有識者会議での論議を経て
決められる。同局は「航空機はもちろん、フライトシミュレーターなどの関連装置も進歩し、
安全性は高まった。航空技術の発展で5年前、10年前と実態が異なっている点では合理的な
見直しが必要」と説明する。【続く】
毎日新聞夕刊
http://mainichi.jp/feature/news/20120628dde012040066000c.html