米航空機大手ボーイングの最新鋭中型旅客機「787」のエンジン向けに、
IHIの「低圧タービン」が受注を伸ばしている。部材や構造などを見直して大幅な軽量化を実現し、
エンジンの燃費性能を大きく改善できると評価されたためだ。
IHIでは、同タービンの受注総数を向こう20年間で約3200台と見込んでおり、
長期間にわたり業績を牽引(けんいん)する“基幹装置”の一つとして大きな期待を寄せている。
IHIの低圧タービンは、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が最終的な組み立てを行う
787向けジェットエンジン「GEnx」に搭載されている。エンジンの性能を左右する装置で、
航空機が推力を得るためのファンを回すのに使われる。
787は炭素繊維複合材を使って機体を軽量化したほか、
搭載するGEnxエンジンについても従来の同型に比べ燃費を15%改善、トータルで2割の燃費改善を図った。
エンジン装置のうち、低圧タービンを担当するIHIは、平成16年の開発当初から、常に燃費改善を念頭に取り組んだ。
燃費性能が競争力を左右する航空機業界にあって、
燃費向上要請に応えられない部材メーカーは老舗のIHIといえども淘汰(とうた)の危機にさらされかねない。
民間エンジン事業を担当する航空宇宙事業本部の井上浩一・業務部長は
「寝ても覚めても燃費のことが頭から離れなかった」と漏らす。
最終的に、重量を従来に比べて20%前後減らし、燃費改善に大きく貢献することになるが、
決して最初からすべてがうまくいったわけではなかった。
燃費改善に大きく寄与する重量の削減は中核のテーマだ。
ただ、低圧タービンを構成するブレード(歯)の枚数を削減すると、
逆に空気の流れが変わり、燃費効率が悪化してしまう。
形状の変更など試行錯誤の末、ブレードの素材に軽量で耐熱性に優れている「チタンアルミナイド」を採用するなどして、
ようやく求められた規定を上回る燃費向上を達成した。
実現に要した期間はじつに5〜6年。長期の開発の末に磨き上げてきた技術なだけに、
「この低圧タービンはIHIにしかつくれない」と井上業務部長は胸を張る。
実際、自信が確信に変わる出来事もあった。
昨年3月に発生した東日本大震災で低圧タービンのブレードをつくる同社相馬工場(福島県相馬市)が被災し、
部品の供給が停止したときのことだ。IHIはこの状況下でも787向けの供給を止めるわけにいかず、
やむを得ず同業他社にブレード生産を依頼。しかし、要求水準を満たす部品はどこの社でもつくれなかった。
続きます
>>2-5 http://www.sankeibiz.jp/business/news/120625/bsc1206250000001-n1