>>1より
結局、自社工場の復旧を急ぎ、何とか供給の遅れを最小限に食い止めたが、
この一件がIHIの技術力を改めて知らしめる結果になった。
「IHIは、過去の受注実績に基づく経験の蓄積がある。低圧タービンでは絶対負けない」。
井上業務部長には、豊富な経験に裏付けられた強い自負がある。
IHIは、これまでジェットエンジンの国際共同開発に数多く参画。
世界の大型旅客機市場を独占するボーイング777に搭載される「GE90」や
小型旅客機向けの「CF34」など高い技術力が求められる旅客機向けエンジンの低圧タービンを担当し
「航空機メーカーからも高い信頼を得ている」(アナリスト)。
787向けエンジンで6割超のシェアを握るGEのGEnxへの供給は、IHIの評価をさらに高めつつある。
他社製の低圧タービンを使っている英ロールス・ロイス製の787向けエンジン「T1000」に比べ、
GEのGEnxは1〜2%燃費が良く、IHIの斎藤保社長は「市場の反応もものすごく良い」と目を細める。
787の採用拡大を追い風に、IHIは、これまでに、1400台分のエンジン用の低圧タービンを受注した。
ブレードや圧縮機を生産する相馬工場やそれらをモジュールに組み立てる瑞穂工場(東京都瑞穂町)では現在、
フル生産を続けており、1日に1台をGE向けに納入するほどの繁忙ぶりだ。
ただ、IHIに慢心はない。IHIでは、今回のエンジン向け装置の売上高について、
補修部品なども含めて62年度までの累計で1兆3000億円と見込むが、
同社の業績を中長期に下支えさせるためにも「常に他社より技術で一歩も二歩もリードしていく」(井上業務部長)。
同社の技術革新への挑戦はやむことがない。(今井裕治)
GEnx 米ゼネラル・エレクトリック(GE)がボーイングの旅客機用に開発したターボファンエンジン。
250席級の中型機「787」にはエンジンが2機、500席クラスの大型機「747−8」には4機が搭載される。
同エンジンのファン翼など主要部材に複合材を使い、軽量化を実現。
燃費も787では従来の同型機に比べ20%改善し、日本からアメリカ東海岸まで無補給でのフライトが可能となっている。
以上です。