シリコンバレーにSilicon Valley Innovation Forumという日本人の交流団体がある。
もう20年近く活動を続けている。そこで「日本の家電業界の将来」について講演をしないかとの誘いがあった。
筆者が強い関心を寄せている分野であり、お引き受けすることにした。
筆者のように長くシリコンバレーに住んでいる日本人と、転勤でシリコンバーに赴任してくる駐在員との交流は思ったほど多くない。
今回の講演では100名ほどの日本人が集まった。その大半は日本企業の駐在員だった。日本の駐在員にはIT関係者が多い。
彼らが日本の家電業界に無関心ではいられないからだろう。
勝ち組と負け組
最初に筆者は勝ち組と負け組を分けた。勝ち組はアップル、サムスン、鴻海である。負け組はシャープ、パナソニック、ソニーである。
アップルはiPhone、iPadの成功で驚異的な増収増益を続けている。
サムスンはスマートフォンが好調だった反面、テレビが足を引っ張り、売上・利益ともに減少した。
鴻海は中国の安い労働力を使ったEMS(受託製造サービス)で底堅い決算をした。
6社の売上高(過去5年間)はグラフの通り。
http://diamond.jp/mwimgs/2/6/600/img_2644d1576c51f2e75ba8515b24ad8e9818364.jpg 6社の損益(過去5年間)は次の通り。
http://diamond.jp/mwimgs/f/a/600/img_fad5f44821558dc8d2115199202a2d1320664.jpg 筆者はまず勝ち組の分析から始めた。
■アップルアップルの経営陣は実質的に4人しかいない(Steve Jobsが亡くなる前は5人)。
Jobs死後も“Jobsの価値観を実現する会社”という色彩が強い。
経営会議で討議される議題の大半は製品開発に関することである。
社内組織には、製品別の事業部はなく、製品設計・ソフトウェアといった機能別のグループが存在するだけである。
個々のグループには予算権限がなく、権限を持つのは全社でCFO(最高財務責任者)ただ一人である。
極端な秘密主義を貫いており、社員でも立ち入れない社内の場所がいくつもある。
開発情報が外部に漏れるのを極度に恐れるためである。
社員が外部で社内のことを喋るのも禁止されている。
社員は個性的な提案をすることを求められ、週に15件ほどの提案がトップ会議にかけられるが、13件は即座に却下される。
残り案件については2週間以内にトップが決断する。
社内の組織には企画・設計・販売管理しかなく製造は全て外部に委託している。
権限の下部委譲は一切ない。社内に官僚組織を作らせないJobsの考えといわれる。
製品開発のプロセスもユニークで、まず製品の外形を完成させてしまう。
それが決まってから内部の回路設計に入る。通常の会社の逆である。続きます
>>2-7 http://diamond.jp/articles/-/19888