国民の生活を守るため、野田佳彦首相は関西電力大飯原発3、4号機を再稼働させるという
のだろうか。国民は知っている。その手順が間違っていることを。このままでは安心など
できないことを。
これは原発再稼働への手続きではなく、儀式である。
西川一誠福井県知事の強い要請を受け、従来の発言をなぞっただけ、西川知事にボールを
投げ返しただけではないか。誰のための記者会見だったのか。いくら「国民の生活を守る
ために」と繰り返しても、国民は見抜いている。そして儀式には、もううんざりだ。
国民は、首相の言葉をどのように受け止めたのだろうか。
「スケジュールありき、ではない」と首相は言う。しかし、長期停止した原発のフル稼働には
六週間ほどかかる。そのような再起動の手順を踏まえた上で、小中学校が夏休みに入り、電力
需要が本格的に高まる前に原発を動かしたいという、“逆算ありき”の姿勢は変わっていない。
経済への影響、エネルギー安保など、原発の必要性は、執拗(しつよう)に強調された。
だが国民が何より求める安全性については、依然置き去りにしたままだ。
「実質的に安全は確保されている。しかし、政府の安全判断の基準は暫定的なもの」という矛盾した言葉の中に、自信のなさが透けて見えるようではないか。
会見で新たな安全対策が示されたわけでもない。緊急時の指揮所となる免震施設の建設や、
放射能除去フィルターの設置など、時間と費用のかかる対策は先送りにされたままである。
これでどうして炉心損傷を起こさないと言い切れるのか。どんな責任がとれるのか。首相の言葉が軽すぎる。
未来のエネルギーをどうするか。脱原発依存の道筋をどのように描いていくか。次代を担う
子どもたちのために、国民が今、首相の口から最も聞きたいことである。それについても、八月に決めると先送りしただけだ。
「関西を支えてきたのが福井県であり、おおい町だ」と首相は言った。言われるまでもなく電力の消費者には、立地地域の長い苦渋の歴史を踏まえ、感謝し、その重荷を下ろしてもらう
ためにも、節電に挑む用意がある。ともに新たなエネルギー社会をつくる覚悟を育てている。
そんな国民を惑わせ、隔ててしまうのは、その場しのぎの首相の言葉、先送りの姿勢にほかならない。
◎原題は『「大飯」再稼働会見 国民を守るつもりなら』
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012060902000148.html ◎主な関連スレ
【社説】大飯再稼働 : 政府や消費地である関西圏の対応はあまりに問題が多く、身勝手ではないか--福井新聞 [06/09]
http://anago.2ch.net/test/read.cgi/bizplus/1339203020/ 【社説】大飯再稼働 : 福井県の姿勢には首をかしげたくなる。京都や滋賀の知事が安全性確保に関与を求めるのは当然だ--朝日新聞 [06/09]
http://anago.2ch.net/test/read.cgi/bizplus/1339203316/