六麓荘(ろくろくそう)など高級住宅地のある街として知られる兵庫県芦屋市で、
市立芦屋病院の新病棟(199床)が完成し、15日、リニューアルオープンした。
落ち着いた調度品で統一した豪華特別室7室を含めて病床の約64%を個室とし、
プライバシーを確保。富裕層の多い芦屋らしさに配慮し、公立病院としては異例の
方向性を打ち出した。セレブに囲まれた市立病院には、どんな事情があるのだろうか。
■個室割合、日本一?
R芦屋駅から緑豊かな街路樹が植えられた坂道をのぼっていくと、高級スーパー「いかり芦屋店」や専門店街が並び、道を高級外車が行き交う。市立芦屋病院は、
高級住宅地として知られる六麓荘に近い山手にあり、屋上からは大阪湾が一望できる絶好のロケーションに位置している。
開院は昭和27年。31〜38年に建設された病棟が老朽化し、平成22年から
建て替え工事(総事業費58億円)を進めていた。旧病棟は今後取り壊され、駐車場として整備される。周辺の緑化も行い、来年3月には「クリーン&グリーン」をコンセプトとした新病院として完全に生まれ変わる予定だ。
全国の公立病院で、老朽化や建て替えが議論されているところは多い。多くの自治体では
病院事業で累積赤字が問題となっており、採算性や無駄をいかに省くかが検討される。
隣接の兵庫県西宮市でも市立中央病院の建て替えをめぐり、人件費削減、効率的な運営
方法などをめぐって熱い議論が交わされている。
この点、市立芦屋病院の新病棟は病床の64%が個室となっており、効率的な運営と
しては首をひねらざるを得ない。だが、佐治文隆・病院事業管理者(68)は新病棟を披露する記者会見で、晴れ晴れと言い切った。
「個室の割合は公立病院としては圧倒的に高く、全国で一番でしょう。看護師にとっては
負担になるが、芦屋らしい病院になりました」
「金は出すから病室改装させて」
市立芦屋病院が目指す“芦屋らしさ”とは何なのか。実はこれまで、同病院には、患者からの特殊な要望が相次いでいた。
市立芦屋病院は市内の「六麓荘」だけでなく、西宮市の「苦楽園(くらくえん)」など
複数の高級住宅地と近接している。このため、こうした地に住むセレブが病院を利用することが多いといい、「金を出すから病室を改装させてほしい」との申し出もあったという。
「トイレに温水洗浄装置を設置し、壁紙やカーテンが汚いからとすべて取り換えた患者さんが
いらっしゃいました」と佐治事業管理者は振り返る。特別室3室は常にほぼ満室の状態で、
「特別室が不可能ならば個室を」との要望も多かったという。「市民からそこまでの期待があるなら、芦屋市として応えていくことも大切な責務だと
判断したのです」(佐治事業管理者)。今回新たに設置した7室の特別室のうち、グレード
の高い「A」(差額室料1日5万円)は約52平方メートルと広く、海外ブランドのソファ
セットやカーテン、大型液晶テレビなどの高級調度品に1室150〜200万円をかけた。
ベッドも無機質なものではなく、木目家具調で幅広のベッドを使用し、高級感にこだわっている。※続く
●広さ約51平方メートルの特別室A。ホテルの一室のような空間が広がる
http://sankei.jp.msn.com/images/news/120623/wlf12062312000002-p1.jpg ◎
http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/120623/wlf12062312000002-n1