NTTドコモは、イタリアの携帯電話向けサービス会社を7月にも買収するなど、
急速に浸透するスマートフォン(高機能携帯電話)向けサービスを核に海外戦略の
強化に乗り出した。ネットワーク提供だけに頼る「土管」型ビジネスに陥るのを
避ける狙い。しかし、ドコモには、日本で大ヒットした従来型携帯電話向けサービス
「iモード」の普及を急ぎ、米携帯電話大手などに相次ぎ出資したものの、巨額の
投資損を出した苦い経験がある。過去の失敗を教訓に、スマホの国際競争では攻めの
姿勢を貫き、リベンジを誓う。
ドコモが今回買収するのは、イタリアの「ボンジョルノ」。株式公開買い付け(TOB)で
3分の2超の株式の取得を目指す。すでに今月4日に買い付けを開始。完全子会社化した
場合の買い付け総額は2.2億ユーロ(約240億円)となる。同社は欧州、北米、南米
など57カ国で携帯向けコンテンツ配信などを手がける。コンテンツ開発力にも定評があり、
ドコモ国際事業部の紀伊肇部長は「(買収を機に)スマホ向けのサービスを拡充したい」と意欲を示す。
ドコモが世界へ再び挑戦する背景には、米アップルなどがスマホ向けサービスを展開し、
顧客の囲い込みを進めていることへの対抗心がある。アップルに真っ向勝負を挑まなければ、
「土管」型ビジネスに甘んじることへの恐れがあるからだ。
■海外展開急務 生かせるか「iモードの教訓」
データ通信量が飛躍的に拡大するスマホでは、サービス利用による通信料収入などが「ドル箱」
となる。スマホ利用者が拡大する中、ドコモはここを取りに行くつもりだ。
ドコモは、クラウドを活用してこれまでにない機能をネットワークに持たせるなど、国内外で
新たなスマホ向けサービスの提供を目指す。すでに国内ではクラウドによる音声認識サービス
「しゃべってコンシェル」を始めている。
こうした新サービスの海外展開での足がかりとなるのが、ボンジョルノなどの事業者という
わけだ。実際、ドコモはスマホが登場し始めたころからコンテンツ配信などのサービス事業者
に攻勢をかけており、09年にはドイツの「ネットモバイル」、11年にはベトナムの「VMG」にそれぞれ出資した。
ただ、ドコモの海外事業には苦い思い出がつきまとう。2000年にオランダのKPNモバ
イルに約4000億円、01年には米AT&Tワイヤレスに1兆2000億円を投じ、豊富な
資金力を背景に海外投資を本格化した。ところが、世界的なITバブル崩壊に見舞われ、
すべて撤退を余儀なくされ、差し引きで約1兆5000億円の大損失を被った。(※続く)
●NTTドコモの主な海外投資
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