厳しさが続く大学生の就職活動だが、そんな中でも企業や病院の採用担当者から引っ張りだこなのが薬学部の学生たちだ。
薬学部が4年制から6年制に移行し、卒業生が極端に少ない空白期間が生まれた影響で“超売り手市場”になっている。
「どんな学生でもいい」と漏らす企業もあり、争奪戦は熱を帯びている。
薬剤師の国家試験を受けるには大学薬学部での履修が条件。薬物療法の高度化などを受け、
薬剤師の専門性を高めようと、2006年4月の入学生から薬学部は6年制になった。
4年制最後の学生は09年3月に卒業し、6年制最初の学生は今年3月に卒業。
この間の10年3月と11年3月の卒業生は留年した学生など少数に限られていた。
薬剤師試験の合格者でみると、1万人前後で推移していたのが、10年3月は約3800人、
11年3月は約1500人と落ち込み、今春は約8600人に盛り返した。
「薬剤師は全く足りていない。正直、どんな学生でもいいから採用したい」。
5月26日、東京都内で開かれた薬学部生対象の就職セミナーで、地方から来た調剤薬局の採用担当者が打ち明けた。
兵庫県内でも、薬学部生の就職活動は好調。神戸薬科大(神戸市東灘区)では今春、1人当たり9社から求人があったという。
卒業生264人の就職率は99%。就職担当者は「企業などから『学生を集めるにはどうしたらいいのか』という相談もあった。
他学部では考えられない売り手市場。来年以降も同様の傾向が続くだろう」と話す。
同大学5年筒井沙耶さん(22)=三木市=は「自分の希望する病院や薬局に就職できるよう、
時間をかけて見極めたい」と意気込んだ。
武庫川女子大(西宮市)でも薬学部生への求人は多く、「特に病院は、空白期間中に欠員補充が難しかったためか、
求人数が2、3割増えた」としている。
一方、人材不足は地方でより深刻に現れている。九州の薬剤師会の担当者は「地方の薬剤師不足は慢性的だが、
大都市での争奪戦に地方が割り込む余地はほとんどない」と嘆いた。
【大学生の就職状況】 厚生労働省などの調査によると、今春卒業した大学生の就職率は4月1日時点で93・6%
(男子94・5%、女子92・6%)。1996年の調査開始以降で最低だった前年同期から2・6ポイント上がり、
4年ぶりに改善したが、就職を希望しながら職を得られなかった人は推計で2万5千人に上る
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0005144885