■増える中古に付加価値を 「東京R不動産」「もぐら不動産」
東京都町田市、神奈川県川崎市、横浜市、大和市に広がる「東急多摩田園都市」。東急電鉄が
鉄道建設と同時に宅地開発をはじめて50年近くが経過し、沿線住民の高齢化が進んでいる。
山や丘を切り開いて開発した宅地には、坂道が多く、歳をとれば移動に不便を感じるように
なる。都心の病院へ行くため、自宅から徒歩でバス停に、バスで最寄り駅へ、そこから電車となると時間もかかる……。
田園都市に限らず、戦後開発された日本の多くの住宅地は同じような問題を抱えている。
住むのに不便を感じるようになった高齢者が郊外から都心のマンションに移り住んだり、
高齢者施設に入ったりすることで、空き家が増える。
そうすると、町から活気が失われ、路線価値が損なわれる。危機感を抱いた東急は横浜市と
共に「次世代郊外まちづくり」の推進に関する協定を締結した。高齢者が移動しやすい路線バス運行ルートを考えたり、高齢者が引っ越していなくなったエリアに子育て世代を呼び
込んだりするというものだ。すでに空き家となった物件に関しては、地域住民の拠点に転用
できるよう、都市計画の変更も検討している。
■20年で倍増した空き家757万戸
日本には、5759万戸(2008年)の住宅があり、そのうち13.1%にあたる757万戸(同)が
空き家だとされている。この20年で倍増した。国土交通省が11年3月に行ったアンケートに
よれば、全国の地方自治体で空き家の実態を把握しているのは16.5%にすぎず、実際の空き家はもっと多いとみられる。
空き家が増えるのは、05年から人口が減少しはじめたことや、高齢化、過疎化などで住む人がいなくなるという社会の構造変化による影響が大きい。空き家は不審火による火災、老朽化に
よる倒壊など、防犯、防災性の低下を招くとして、対策に動く自治体も出はじめている。
「空き屋バンク」はその典型で、物件情報を自治体のホームページなどで紹介して利用者を求めるというものだ。
一方で、空き家の分類を見てみるとあることに気が付く。757万戸のうち、別荘などの2次住宅が41万戸、住む人がいない住宅が268万戸に対して、賃貸・売却用の住宅が448万戸も
ある。貸したい・売りたいとされている物件がこれだけ余っているのだ。しかし、実際に
流通しているのは17.1万戸しかない。これを上手く流通に乗せることができれば、空き家の減少はもちろん、塩漬けされた資産の有効活用にもなる。
塩漬けとなったままの賃貸・売買目的の不動産が多い理由として真っ先に挙げられるのは景気の問題。東急東横線沿線で不動産業を営む男性は「駅前は賑わっているけど、ちょっと
歩けば空室だらけ。貸したい、売りたいという人が10だとすれば、実際に探しているのは
3くらい」と話す。景気が低迷するなかで、引っ越しする人や不動産を購入する人が減っていると見立てる。
■リノベーションで価値を高める
ところが、不景気だけが原因とは言い切れない部分もある。スタッフ4人で中古不動産売買の
仲介、賃貸物件の仲介を手掛けるスタイルアンドデコ(東京都目黒区)。06年の創業以来、
毎年取り扱い件数を伸ばしている。その理由はリノベーション(一般的にリフォームに比べ
てより大規模な改修を行う場合に使われる言葉)にある。※続く
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http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1997