文部科学省は22日、私立大学と短期大学への「私学助成金」の支給要件を厳格化し、
要件を満たさない大学への削減額を最大で従来の5倍にすることを決めた。さらに、
教育内容や財務状況の改善が見込めない大学には統廃合を迫るとしている。私立大
・短大はこの10年で65校が学生の募集を停止しているが、文科省の方針で今後、
私立大の削減・再編が加速しそうだ。
■文科省、経営透明化迫る
私立大・短大に通う学生は約227万人(11年5月現在)で、国公立大も含めた
全学生の4分の3を占める。文科省は「社会を支える人材の土台」として私立大
・短大の役割を重視しているが、4割の私立大で定員割れしていることや大学進学率
が5割に達する中で学生の学力低下が指摘されていることを受け、助成金の支給を
厳しくし、改革を迫ることにした。11年度は年間約3394億円が886法人に
出されている。経営法人の財務情報を公開していない学校に対し、これまで1%としていた助成金の
削減幅を5%に拡大。学生数や就職状況の情報を公開していない場合は3%から
5%に削減幅を引き上げる。経営に問題があり助成金を交付されなかった法人が
再度満額の助成金を受給するには、従来5年間だった「経過期間」を2年延長して
7年とする。また、定員をオーバーして入学させている大学への助成金も削減幅を拡大。
創立間もない学校の審査も厳格化する。同省は、毎年8?12月に全国から約35校
を選んで省職員や会計士らが学校法人の実地調査を実施しているが、従来より詳細な
質問項目を設けたり追加の調査をしたりすることも検討している。文科省は現在、金融投資で損失を出したり、学生数が定員を大幅に割り込んだりして
いる大学を調査中で、法令違反があれば学校教育法に基づく解散命令も視野に入れている。
日本私立短期大学協会の佐藤弘毅会長(目白大・目白短大学長)は「少子化が止まらず大学、短大の統合再編は進む。協会加盟校に生き残りの改革を呼び掛けている」と話している。
■赤字かさみ募集停止も
昨年度、財務諸表を公開していないとして私学助成金を削減された大学・短大は
全体の約9%にあたる79校。学生数や就職状況が未公開として削減された大学
・短大も100校以上ある。また、在籍学生数が定員の5割を下回るなどして
助成金ゼロとされた大学は40校、短大は37校に達している。今年5月には東京女学館大(東京都町田市)が、来春から学生募集を停止し、4年後に
閉校する方針を発表した。02年に開学したが、定員割れの状況が続き、累積赤字も
約25億円に達したという。このほか10?12年度に5大学と18短大が募集を停止した。
文科省が今年度、助成金の支給要件を厳格化するのは、大学・短大に情報公開を迫り、
社会に対する説明責任を果たさせる一方、教育内容や経営に課題があり改善が見込めない大学・短大には厳しく臨み、私学の教育の質を高める効果を促す狙いがある。
◎
http://mainichi.jp/select/news/20120623k0000m040117000c