リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第70話
リゾスレ初心者向けQ&A
Q.このスレについて教えて!
A.このスレはモーニング娘。36thシングル「リゾナント ブルー」のPV(Another ver.)から想像に想像を膨らませて生まれたスレです
作者一人ひとりによって設定は異なりますが、大まかに共通している設定は
【超能力を持つ「リゾナンター」を名乗る少女たちが仲間同士心を通わせつつ「ダークネス」を名乗る敵の組織と戦う】といった感じです
Q.どの話から読めばわかりやすい?
A.テンプレ
>>1の過去ログまとめで第1話(第1スレ)に目を通すことを推奨。
スレの雑談では『蒼の共鳴』
http://resonant.pockydiary.net/index.cgi?field=44の名がよく上がります。但し一大長編ですけどねw
2周年を記念してスレの住人が色んな質問に答えているスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/music/22534/1271246993/も参考になるかと Q.メンバーのキャラ設定は?
A.作者個々によって違うが多くの作品で共有している設定は以下の通り
高橋愛…………リゾナンターのリーダーで戦闘も強い実力者。喫茶店のマスターをしている
新垣里沙………リゾナンターのまとめ役?だがその正体は「ダークネス」から放たれたスパイ。後に真の仲間となる
亀井絵里………心臓病を患っておりよく入院している。さゆみと親友
道重さゆみ……絵里と親友。心の奥には「さゆみの姉・さえみ」という別人格が眠っている
田中れいな……喧嘩最強でリゾナンター屈指の武闘派。愛の喫茶店で住み込み店員をしている
久住小春………売れっ子芸能人。何も考えていないように見えて案外熱血だったりするかも
光井愛佳………家庭の内外で孤独を感じていたところを愛に救われた。リゾナンター随一の常識人
ジュンジュン…パンダに変身する一族の生まれ。変身が解けると裸になる
リンリン………パンダ一族を守る組織「刃千吏(バッチリ)」の一員。ギャグセンス以外はエリート
譜久村聖………出てきた設定は、能力複写、サイコメトリー、譜久村財閥のお嬢さん、未来から来た24歳など
生田衣梨奈……出てきた設定は、無感情、植物と会話できる、KYの空気感染など
鈴木香音………出てきた設定は、物体をすり抜ける、すごい聴力など
鞘師里保………出てきた設定は、水軍の家系の末裔、念動力(水限定)など
飯窪春菜………
石田亜佑美……出てきた設定は、幻獣使役
佐藤優樹………
工藤遥…………出てきた設定は、千里眼(クレヤボヤンス)
<よくわかる!? リゾナントスレの世界観図説>
リゾナンター派(多数派)─┬─ダークネスと闘う超能力少女たちだよ派(鉄板路線派)
│ ├ダークネスは悪の組織の名前だよ派(暗闇=敵だよ派)
│ │ └ラスボスの名前でもあるよ派(ダクネチュ様派)
│ ├実は前身となる正義の組織があったんだよ派(OGメンはかつての味方だよ派)
│ │ ├方針転換して悪の組織になったので新組織を立ち上げたよ派(見解の相違派)
│ │ └組織はつぶされ現メン(の一部)が生き残ったんだよ派(正義の組織再興派)
│ └前身はなく愛ちゃんが一から始めたんだよ派(OGメンは最初から敵だよ派)
│ ├最初に見つけた仲間はれいなだよ派(同居人優先派)
│ ├最初に見つけた仲間はガキさんだよ派(娘。加入順優先派)
│ ├最初に見つけた仲間はガキれな以外の子だよ派(基本にとらわれないよ派)
│ └愛ちゃんは美少女コレクターだよ派(百合愛好派)
│
├─モーニング娘。をやりつつ敵と闘うよ派(鉄板路線派「かなしみ戦隊」系)
│
├─政府直属の能力者集団だよ派(独自路線派「共鳴者」系)
│
└─その他(各種独自路線派)
リゾナンダー派(少数派)─┬─戦隊モノのヒーローなんだよ派(特撮愛好派)
│ ├各自のイメージカラーが個人の戦隊カラーになってるよ派(LLはどうなったの派)
│ └リゾナンカーとセットで使いたいよ派(とことん特撮派)
│
├─スレが始まった時はこっちだったんだよ派(原理主義)
│
└─その他(各種独自路線派)
“ター”でも“ダー”でもどっちでも派(穏健派) ─┬─面白ければなんでもいいよ派(内容重視派)
│
└─シリアスとギャグで使い分けるよ派(こだわり作者派)
【今まで出てきた能力まとめ】
高橋愛:精神感応(リーディング) /瞬間移動(テレポーテーション)/光使い(フォトン・マニピュレート)
新垣里沙:精神干渉(マインドコントロール)
亀井絵里:傷の共有(インジュリー・シンクロナイズ) /風使い(ウィンド・マニピュレート)
道重さゆみ:治癒能力(ヒーリング)
さえみ(姉人格):物質崩壊(イクサシブ・ヒーリング)
田中れいな:共鳴増幅能力(リゾナント・アンプリファイア)
久住小春:念写能力(ソートグラフィー) /幻術(ハルシネーション)/発電(エレクトロキネシス)
光井愛佳:予知能力(プリコグニション)/心の浄化(ハート・プリフィケイション) /水守(みまもり)
リンリン:念動力(サイコキネシス)/発火能力(パイロキネシス)
ジュンジュン:念動力(サイコキネシス)/獣化(メタモルフォシス(トゥ・ビーストorパンダ))
譜久村聖 :能力複写(リプロデュスエディション) /残留思念感知(サイコメトラー・オブジェクトリーディング)/液状化(リキュエファクション)
生田衣梨奈:精神妨害(マインドジャミング)/精神破壊(マインドデストロイ)/植物と会話(スピリチュアル・トーキング)
鞘師里保 :水限定念動力(アクアキネシス)/水軍流の達人
鈴木香音 :非物質化(ディマテリアリゼーション)・物質透過(ペネトレイト)/超聴覚(ハイパー・ヒアリング)
飯窪春菜:
石田亜佑美:
佐藤優樹:
工藤遥:
【初代まとめサイトで投稿日順に読む裏技】
まとめサイトの[検索]で「(1)」とか指定すると、第1話(1スレ目)の作品が投稿日順に並びます(降順)
(投稿日=まとめサイト掲載日時であり、スレ投下日時ではありません)
ただし、次回予告についてはシングルの順序と合わせるために
順番に並ぶように投稿日をいじってあるのでこの限りではありません
このスレに初めて来たから様子がわかんないよ、って人にはイイかも
※時々検索結果に違うスレの作品が混じりますが、本文中に張ったリンク(例:(01)123)を拾ってしまうためです
【まとめサイトVer.2で投稿日順に読むには】
タグでスレごと(第○話)の作品群を見ることができます。
登録日の順になっているのでそこからたどっていけばおk
【代理投稿を依頼するときのお願い】
したらば掲示板のアク禁スレに作品を上げるときは対処方法の指示も書いてください
例えば
・規制食らったので転載してほしい
・レス数多いから掲載を手伝ってほしい
など
転載する人は必ず投下する旨をアク禁スレに宣言していってください
(投下かぶり防止のため。宣言が同タイミングなこともあるのでリロード&しばらく待つのも大事)
川*’ー’) < テンプレの設定やまとめサイトを参考にして自由に想像するやよ
ノ|c| ・e・) < 登場人物の能力やストーリーの背景・設定は作者さんの自由なのだ
ノノ*^ー^) < シリアル路線でもコメディ路線でもお好きなものどうぞ
从*・ 。.・) < AAを使ったものや1レス完結ものでもOKなの
从*´ ヮ`) < 他の作者さんの設定を流用するのもありっちゃ
ノリo´ゥ`リ < 気に入った話の続きや繋ぎの話を書いてみるのもありカナ☆
川=´┴`) < プロットを書いて他の作者さんにストーリーを書いてっておねだりしてもええで
川*^A^) < アーでも書いてくれるかは作者さん次第ヨ
川´・_o・) < ソッカー
作品投稿の際、10レスを越える場合は連続投稿規制(バイバイさるさん)がかかるので注意。
それから1レス当たり最大32行までしか入らないのでそれも注意。
ttp://resonant.pockydiary.net/file/template/r_coming.jpg 君の作品を待ってる
<※初めてスレを訪れた方へ>
お勧めの作品やわからない用語については遠慮なく質問してみてください
スレに何人もいるであろう「生き字引」が24時間以内に答えてくれるでしょう(多分)
9 :
名無し募集中。。。:2012/06/04(月) 22:40:55.22 0
10 :
名無し募集中。。。:2012/06/04(月) 22:46:43.17 0
11 :
名無し募集中。。。:2012/06/04(月) 22:50:24.41 0
12 :
名無し募集中。。。:2012/06/04(月) 23:37:55.55 0
責任持って上げときます
夜中のうちに落ちなきゃいいですが
13 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 00:16:29.59 O
14 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 01:23:10.17 0
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/577.html http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/584.html http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/610.htmlの続き。
2限目が始まる前、鈴木香音のクラスは所々から談笑が上がっていた。
「昨日のドラマ観た?やっぱりあの警察官が黒幕だったんだよ」
「あの雑誌読んだ?ちょーイケメンでさー」
「髪型変えたんだあ。可愛いーっ」
さすが中高一貫校ともあって、少し色が濃い生徒が何人か居たりもする。
先輩の影響を受けることもあれば、兄弟が居れば様々な情報が入り込む。
当然そういう人間は一目置かれたりもするし、良くも悪くも"有名"のレッテルを
貼られることになる。
大抵のことであればそんなレッテルを喜んだりする事はないのだが、この学校
に入学早々、すごい生徒が居るという噂があった。
「あれこそがKYっていうか、むしろあの人自体が空気っていうか。
空気なのに色があって匂いがあって味があって…いやホントなんだって」
その女子生徒と同学年の姉がいるということで、いろんな話を聞かせてくれたそうな。
だが噂は時間の経過によって様々に形容し、変化する。
だから本当かどうかは定かではない。
空気が読めない。
全くではないが、10個の事柄があれば8個くらいはKYだと言われる。
一生懸命作った積木を一緒に喜びを分かち合ったあとに嬉しそうに
「ダーン」と崩してしまうようなあの感覚、とは少し違うらしい。
ただ空気が読めないという事はやはり他の人にも迷惑がかかっているという訳で。
15 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 01:23:39.37 0
近いものでいえば買おうとしていたゲームが売り切れになって、もしかしたら
まだあるかも、という淡い期待を捨てきれない空気さえも分からずに相手の
真隣で購入したゲームを広げるとか。
趣味がゴルフという事もあって、そういう風速と角度は分かるらしい。訳が分からん。
「でも運動能力はすごく良いんだよ。器械体操だっけ?それやってたらしくて。
ことあるごとにハンドスプリングやってたな。ほら、身体をこおグルって回すヤツ」
それは鈴木も知っている。
一部では「回転少女」という異名で知られていて、部活の先輩から聞いた事がある。
マラソン大会のときに最初から全力疾走で走って、一度も速度を落とすことなく最後まで
ゴールするという荒技をこなした事で、陸上部にスカウトされていたほど凄まじい。
断ったらしいが。
50mの記録は8秒ジャスト、速さは普通だがその耐久度が半端ない。
ただもう一度だけ言う、全ては噂だ。最後の話以外は全て同級生からの都市伝説級の
噂であり、真実は分からない。
キーンコーンカーンコーン。
チャイムが鳴り、ぞろぞろと生徒が自分の席へと座って行く。
先生が来ると客席、礼、挨拶と順序良くこなしていく。
2限目が始まった。
鈴木は窓側で後ろから数えると3番目になる。
ふと、窓から南棟が見えた。屋上は死角になっていて分からないが
本来ならあそこに鞘師里保が居る。
16 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 01:24:06.60 0
そう、本来なら。
譜久村があの場所に風紀委員として調べに来た翌日。
あの屋上を一時的に"閉鎖"するという形を取られてしまったのだ。
出入りしているという事実はすでに教諭の耳にも入ってしまっているため
例え調査しようがしまいが、そういった処置をするというのは決まっていたらしい。
だから鞘師にも説明はしていて、あそこは今無人になっている。
…とは思うけれど。
何せ鞘師がいつあの屋上にいて、いつあの屋上からどこに帰っているのか。
それは鈴木も譜久村も知らない。
何度か譜久村が一緒に帰ろうと誘ってみたりもしたのだが、居る所を目撃されると
面倒だからと断られてしまう。
だが鞘師自身も二人と別れるのは少しばかり寂しいらしく、譜久村がなだめる
ことで少し気を紛らわせては別れることが多かった。
確かにあの包容力を一度味わうとね、鈴木は羨ましくもあり、だが鞘師の気持ち
も分かるものがある。
ただ不思議と、彼女の心配はしなかった。
きっとどこかでグウグウと寝ているのだろう、音楽でも聞いて。
サイダーでも飲みながら。交信でもしてるんだ。
そしてまた会える、どちらかが願えば簡単なことだった。
トントン。
不意に、背中を指で軽くつつかれた。
何事かと振り向くと、後ろ斜め横の机に座る女子生徒がわざと変顔してにんまりと笑った。
17 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 01:24:34.60 0
朝っぱらからハイテンションの芸当をする彼女にリアクションすることなく
鈴木は机に向き直り、几帳面に折りたたまれたルーズリーフの切れ端を開く。
"窓の外に例の影。イチゴは好きなのにバナナは嫌いで、野菜も苦手らしいよ。
でもイチゴって野菜だって知ってた?"
鈴木はチラッと視線を窓の外に向ける。
グランドのド真ん中を堂々と歩き、校舎へと入って来る人影。
スクールバッグをランドセルのように縦に背負い、クリーム色のカーディガンには
この学校の校章が縫い付けられている。
携帯を片手に髪が風になびいた。
"野菜の中でも好き嫌いがあるのと一緒でしょ"
ルーズリーフの空いた場所にそう書き足すと、今度はそれを
振り向かずに脇の隙間から放り投げる、背後で微かに驚いた声が聞こえた。
「回転少女」、もとい生田衣梨奈という先輩の話は紛れも無く背後の彼女からであり
何故鈴木がその話を聞くに至ったかは、実に簡単なものだ。
ただ知れば知るほど、鈴木は生田が少しだけ苦手になっているのも事実。
何せ生田衣梨奈という人物は、一部では「アイドル」だからだ。
18 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 01:27:32.65 0
>>14-17 以上です。もうスレが立たないかと思いましたが
規制されている人間の弱さを痛感します(涙
1年前の出来事を調べていると4人の成長っぷりを垣間見ますね。
-----------------------------------------ここまで。
以上、代理投稿でした。アイドルなのね
19 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 02:35:22.49 0
20 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 05:37:30.05 0
>>1 スレ立て乙です
話は後ほど読ませてもらいます
21 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 06:55:20.98 0
>>18 代理ご苦労様です
一人一人を描いていくことで世界の輪郭が浮かび上がってくる感じがいいですね
彼女らが誰とどのようにこの後繋がっていくのかも含めて展開が気になります
22 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 09:13:04.24 0
リスタート
23 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 10:13:30.41 0
Re-start
70
Resonant
24 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 12:26:43.71 0
やばいな
25 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 14:03:58.39 0
26 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 14:09:54.64 0
>>18 作者さんも転載された方もおつです
独特の雰囲気を持った話ですねえ
各々のメンバーのネタを織り込みながら自分の世界を作っている様子が凄いっす
27 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 15:12:15.65 0
28 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 15:46:52.65 0
すでにハートを撃ち抜かれたよ
29 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 16:54:34.12 0
30 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 18:20:14.28 0
お話考え中ナント
31 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 20:00:56.23 0
ほぜなんと
32 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 20:35:49.27 0
33 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 20:36:34.07 0
* * *
「す…ご……」
遥自身、「ケンカ」にはそれなりの自信があった。
実際、訓練された相手ではないとはいえ、そして“眼”に依るところが大きいとはいえ、大の男を複数這いつくばらせてここまで来た。
だが―――今まさに目の前で繰り広げられている2人の動きは、そんなものとは完全に別次元にある。
遥の“眼”には、これまで“視”たことがないほどに美しく躍動する2人の肢体が映っていた。
その身に纏う空気と同じく、しなやかで、そして獰猛なれいなの動きは、ネコ科の肉食獣のような天性の美しさを感じさせる。
荒々しさとスマートさが同居した、痺れるような憧れを本能的に抱く美しさ―――
対して、一切の無駄がなく流れるように連なってゆくサヤシの動作は、名工の手による日本刀のような研ぎ澄まされた美しさを思わせる。
素材が本来持つ美しさを基に、鍛錬に鍛錬を重ねてもたらされた息を呑むような美しさ―――
圧倒された。
魅了された。
自分の置かれた状況さえも一瞬忘れ、その“眼”に映る2つの肢体に、呆然と遥は見惚れていた。
「田中さんも里保ちゃんも、やっぱりすごいなあ……」
その声に、我に返る。
無意識に視線を動かした先には、地面に座り込んだままの、フクちゃんと呼ばれた(多分)少女の姿があった。
34 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 20:37:01.06 0
「あ、わたしは譜久村聖って言います。あの2人は田中れいなさんと鞘師里保ちゃん。それからあっちが道重さゆみさん。…あなたたちは?」
遥の視線に気付いて振り返ったフクちゃんこと聖は、自己紹介及び「他己紹介」とともに小さく首を傾げた。
「…工藤遥。あとあっちが飯窪春菜。っていうか、譜久村さんたちって……何者?何で助けてくれるんですか?」
“治療”を終えたらしい春菜がさゆみとともにこちらに歩いてくるのを確認しながら、遥も同様に首を傾げる。
安堵感は大きかったが、警戒の思いも小さくはなかった。
「一言では説明できないんだけど……あっ!」
「な、なんですか?」
どう返答するべきか悩ましいというように眉根を寄せていた聖の表情が突然輝き、その体がぐいっと遥の方に寄せられた。
本能的な警戒心が、遥の体を仰け反らせ、同時に身構えさせる。
だが、その先の聖の言動は遥の予想を完全に超えていた。
「遥ちゃん八重歯だ!私八重歯フェチなの!かわいい子の八重歯大好き!かわいい!や〜ん!」
「え、な、ちょ……」
――この人変!ってかヤバいし!
いきなり自分のマニアックなフェチを告白したかと思うと続けて幸せそうに身悶える聖に、遥の中で上下していた警戒数値がカウント不可を告げる。
「道重さん道重さん、ほら、遥ちゃん八重歯めっちゃかわいくないですか!?」
固まっている遥の体越しに、聖はさゆみに幸せそうな笑顔を向ける。
「いや、さゆみは別に八重歯フェチじゃないし」
「えー!なんでこのよさが分からないんですかー」
春菜に手を貸すようにしながら遥たちのところに辿りついたさゆみは、無駄にテンションの高い聖に冷めた言葉を返す。
35 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 20:37:24.46 0
――まともな人もいてよかった…
思わずそう胸の中で嘆息した遥に、さゆみが笑顔を向ける。
「でも……かわいいねほんとに。またこの、大人になり始める寸前の少女…って感じがたまらないなー。ここから先の成長過程は目が離せんね、うん」
「――――」
絶句した。
聖とはまた違った視点からの「恐さ」を放つさゆみに、鳥肌の立った腕を思わず抱く。
無意識の内に、助けを求めるような視線が春菜へと泳いだ。
「遥ちゃん!さゆみさん、すっごくいい匂いがするんだよ!でも香水とかつけてないんだって。さゆみさん本人の匂いがいい匂いなの」
「ってお前もか!」
思わず声に出して突っ込んだ遥に、春菜が不思議そうな困ったような顔で首を傾げる。
突然異世界に放り込まれたような感覚に、遥は先ほどまでとはまったく種類の違う疲労感に襲われた。
「なん盛り上がりようと?」
そのとき、遥を異世界から引き戻さんとする救いの声が、傍らで響いた。
焦点を現世に戻した遥の目に、いつの間にか「戦闘」を終えていたらしいれいなと里保の姿が映る。
思わず見遣ったその背後には、累々と這いつくばる男たちの姿があった。
「れいなは多分そんなに興味のない話」
「あっそ。で、えっと……」
よくあることなのか、それ以上追及することはなく、れいなはあっさりと視線を遥たちの方へと向ける。
一瞬またその表情に見惚れてしまった遥に代わり、聖が口を開いた。
36 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 20:37:48.54 0
「あ、工藤遥ちゃんと、飯窪春菜ちゃんだそうです」
「工藤と飯窪か」
ピンク色の空気にあてられかけていた中、躊躇いのないその名字呼び捨てに、何故か胸が熱くなる。
――ついて行くッス、アネキ!
思わずそんな言葉を響かせた遥の内心に呼応するかのように、れいなはニッと笑った。
「れいなたちと一緒に来ん?っていうか来りーよ」
反射的に頷きかけたが、寸前で思い留まって尋ね返す。
「あの……一緒にってどこに?何かするんですか?」
ここの――《faith》の繰り返しになるのだけはごめんだった。
れいなたちがここの人間と同じ種類だとはまったく思えないが、春菜も巻き込んでいる以上、軽率な判断はできない。
「うん、一言でいえば…力を合わせて一緒に世界を救おう!」
「へっ……?」
思わず間抜けな声が漏れた。
次いで、笑いが込み上げてくる。
同じだった。
言い方こそ違えど、《faith》の人間がしばしば口にする文句と同じだった。
私たちはこの世界を――そしてそこで苦しんでいる人たちを救いたいと願って活動しているの。
遥ちゃん、そのためにあなたのチカラが必要なのよ――――
かつて、そう遥をいざなった言葉と同じだった。
37 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 20:38:05.07 0
だけど―――
「田中さん、一言でいい過ぎです」
「けどゴチャゴチャ説明するの面倒やん。とにかく一緒に来れば分かりようことやし」
「だけどそんな説明だけじゃついて来づらいじゃないですか」
「じゃあ鞘師が分かりやすく説明しーよ」
「無理です」
そのやりとりに、たまらず吹き出す。
違っていた。
言葉こそ同じだが、そこから伝わってくるものは……まったく違っていた。
そして、理屈ではなく、心の奥底のどこかで響く何かが……この出逢いが運命であることを告げていた。
遥が笑い出したことで、れいなと里保の言い合いが止まる。
さゆみと聖、そして春菜の視線も遥へと向けられた。
「わかりました―――」
―――遥が笑顔でそう頷きかけた瞬間だった。
「ツっ――!」
「!!」
れいなの肩口が突然裂け、そこから赤いしぶきが飛び散るのを、遥は見た。
38 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 20:39:11.70 0
>>32-37 ひとまずここまで
残りはまた今夜の手薄な時間にでも上げます
39 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 21:16:52.40 0
乙です。
終わったと思いきや、波乱の始まりか?
続きが気になります。
それにしても作品を書く時間も投下する時間もない。
がきさん・・・私の上司を精神干渉で操って、仕事時間減らしてもらえませんか?
40 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 22:02:52.84 0
おっ何か面白そうなの来てる
41 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 22:22:21.87 0
一瞬にして、場の空気が引き締まる。
素早く身を低くしながら鋭く周囲を見渡すれいなたち4人に、遥たちも慌てて倣う。
「フクちゃん、今のってなんかの能力っちゃろ?カマイタチみたいなもんやろか?それとも絵里みたいな…?」
「いえ、亀井さんのとは確実に違いますね。鋭い刃状のエネルギーを飛ばす能力だと思います。風や真空を操る能力というより、どちらかというと念動力に近いかと」
「要するにカマイタチってことっちゃろ?」
「……ってことでもいいです」
――あいつか…!
れいなと聖のやりとりに、遥は息を呑んだ。
“真空刃―インビジブル・ブレイド―”……確かあの女は自分の能力をそう呼んでいた。
視覚と聴覚が回復し、追ってきたのかもしれない。
でも、どこから………
「!!」
次の瞬間、僅かに身じろぎした里保の頬が裂け、その白い肌を血が伝う。
慌てたようにさゆみがその傍に駆け寄った。
「りほりほ!大丈夫!?すぐ治すから!」
「なあさゆ、れいなも怪我しとーっちゃけど」
「れいなは後!りほりほ大丈夫?もう痛くない?」
「あ、大丈夫です。あのもう大丈夫ですから」
そのやりとりを耳にしながら、遥は“真空刃”が飛んできた方向に“眼”を凝らす。
段々その度合いを増す鈍痛とともに、2つの人影の輪郭ようなものが微かに“視”えた。
「さっきのあいつがいません!もしかして――」
42 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 22:22:43.72 0
ほぼ同時に、春菜のハイトーンが響く。
その指の先からは、触覚を奪われてもがいていたはずの男の姿が消えていた。
「“不可視化―インビジブライズ―”って言ってました。自分とか周りの物を透明にできるんだと思います」
そう補足した遥は、続けて“真空刃―インビジブル・ブレイド―”を使う女のことも簡単に説明する。
「ダブルで“インビジブル”ってことか。厄介だね。さゆみの“治癒”も限界があるし」
「そうですね……。幸い今のところ大したダメージはないですけど、当たり所によっては危険かもしれない」
「連射ができないらしいことと、警戒して遠目から撃っていることで狙いが正確じゃないのが救いですけど…」
遥の説明に、やや緊張をはらんだ空気が流れる。
黙って何かを考えていたれいなが、聖に視線を向けた。
「フクちゃん、まだ“移動”はできん?」
「すみません……この人数となると、もうちょっと回復しないと厳しいです」
「そっか、ならやっぱりなんとかあいつら倒さんと」
独り言のように呟きながら、れいなはごく自然に遥たちから僅かに距離を取った。
瞬間、それを牽制するかのように飛んできた“刃”が、大腿部あたりを切り裂く。
「田中さん!?何を!?」
「鞘師、れいなの1メートル前くらいに膜張れる?。薄いやつ」
だが、れいなは意に介した様子もなく、前を向いたまま里保にそう尋ねた。
「この距離くらいだったらできますけど……でもそれであの攻撃を防ぐのは全然無理ですよ?」
「わかっとーって。いいからやってくれん?」
「…わかりました」
頷いた里保が腰に手を当てると、そこに下げられたボトルポーチから何かが勢いよく飛び出す。
43 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 22:23:06.27 0
「水……?」
中に入っていたらしいペットボトルから噴き出した“水”の塊は、空中を素早く移動すると、次の瞬間一気に広がり、れいなの前で薄い水膜となった。
こんな風に“水”を操ることができるのが里保の能力ということなのだろう。
しかし―――
「一体何を……?」
「うーん……わかんない」
れいなの行動の意味を問うた遥に、里保は首を傾げ返した。
その様子が「年相応」で、遥は妙におかしくなる。
意味を理解しないままに、里保はれいなの指示に従ったということらしい。
きっと、れいなに対してそれだけ揺るぎない信頼があるということなのだろう。
「実は…あいつの能力の防御法思いついたと」
「ほんとに!?」
「ほんとですか?」
「まあ見とりって」
驚く他のメンバーにニヤリと笑ってみせると、れいなは正面に視線を戻す。
そして片手を水平に上げ、内側に向けた手の指を「撃ってこい」とばかりに挑発的に動かした。
「来んのやったらこっちから行くけんね!」
続いてそう叫んだのとほぼ同時に、れいなの前の膜の一部が白く弾ける。
瞬間―――れいなの体がばね仕掛けの人形のように翻った。
「ほら、こうやってどこから飛んで来るかさえ事前に分かれば簡単に避けられ―――」
「「「避けられるか!」ませんよ!」ないですよ!」
44 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 22:23:29.30 0
れいなの言葉を遮るように、さゆみ、聖、里保の3人が同時にツッコむ。
「へ?何で?」
「そんな人間離れしたこと、普通はできないって言ってんの」
キョトンとするれいなに対し、代表してさゆみが呆れたような声を向ける。
「そう?さゆが普通以下なだけやないと?」
「…めっちゃ失礼なんだけど」
「鞘師でも無理?」
「無理ですよ。相手の手元から見えてるならまだともかく、こんな距離で避けられるのは田中さんくらいです」
里保のその言葉を聞いて、れいなはふと思いついたように遥の方に視線を向けた。
「工藤、能力で“視”えんと?その女のカマイタチみたいなやつ」
「え?あ、はい。えと“視”えます」
「“視”えると!?ほんとに!?」
「あ、いやでも…」
不意を突かれて思わず頷いてしまった後、遥は慌てて付け加える。
「あの辺に2人がいるのもぼんやり“視”えます。でも、“眼”を使いすぎたみたいで…」
目の奥で疼く鈍痛の件は触れずにおいたが、最初に比べてチカラが落ちてきていて、いつまで“視”えるか分からないことを伝える。
「それに、“視”えてはいますけど、避けるのは無理です。実際避けきれなかったです」
「そっか……愛佳の言っとったんはこれか」
「え?」
だが、れいなは独り言のようにそう呟くと、今度は春菜へと視線を向けた。
45 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 22:24:04.39 0
「飯窪、協力してくれん?」
「え?協力?私がですか?でも何を……?」
驚きからか、普段の2割増し程度のハイトーンとともに、春菜は目を見開く。
「工藤も」
「あ、はい」
再び思わず頷いてしまった遥にニッと笑ってみせると、れいなは正面を向いた。
「今から、れいなのチカラ―“共鳴増幅能力―リゾナント・アンプリファイア”―で、あんたらの能力増幅するけん」
「共鳴……」
「リゾナント……?」
呆然と繰り返す遥たちに、れいなは背中を見せたまま言葉を続ける。
「工藤、あんたは隠れとーあいつらを“視”てほしい。で、飯窪、あんたのチカラで工藤の“視”とー映像を、れいなたちの視覚に繋いでほしい」
「えっ?」
「視覚に…繋ぐ…?遥ちゃんの“視”てる映像を…全員にってことですか?でも、でもそんなことやったことないですし、できるかどうか―――」
「できる。れいなを……何より自分自身を信じーよ。れいなはあんたのこと信じとーよ」
首だけを僅かに回したれいなの口元に浮かぶ笑みは、その言葉通り自信と――そして信頼に満ちていた。
つられるように、遥の中にも熱い気持ちが湧き上がってくる。
「はるなん、あたしも信じてるよ。はるなんのこと」
「遥ちゃん……」
「はるなんのチカラは、五感の“占拠”でも“密猟”でもない。きっと五感の“共鳴”―――“五感共鳴―センス・リゾナント”だよ」
半分以上は無意識のままに、そんな言葉が口から滑り出る。
れいなが口にした“共鳴―リゾナント”という言葉は、遥の胸の中で、どこか懐かしさを覚えるような響きを伴なってこだましていた。
春菜もきっと同様だったのに違いない。
46 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 22:25:07.87 0
「リゾナント……五感の…共鳴……私の……チカラ……」
呟くようにそう口にしていた春菜の瞳に、強い光が宿る。
「…分かりました。やってみます。…ありがとう、遥ちゃん。いい名前付けてくれて」
「あたしははるなんと違ってセンスいいし」
照れ隠しに視線を逸らしながらそう言うと、遥はれいなの方に向き直り、力強く頷く。
視界の隅に映る春菜も、同様にれいなに向かって頷いた。
「いよっし。鞘師、透明男の方いけると?カマイタチ女はれいながやるけん」
「…大丈夫です。やれます」
「じゃあ頼んだ。あ、フクちゃん、透明の能力便利そうやけど、“複写”はせんでいい?」
「いや、あの、無理です、死んじゃいます。帰りの“移動”が精一杯です」
「あ、そやったね。じゃあこれ終わったらすぐ帰れるようにしっかり回復よろしく」
「わかりました」
「さゆ、もしあいつらがこっち狙ってきたらみんなをフォローしてやって」
「了解」
よどみなく連なり、重なってゆく呼吸が心地いい。
「じゃ、いきますか」
れいながその言葉を発したとき、6人の息がピタリと一つになったのを遥は感じた。
同時に、遥の中に温かく熱い“何か”が流れ込んでくる。
体の中で心地よく響くそれは、胸を高鳴らせ、頭の中をクリアにしてゆく。
「“視”える……!“視”えます、ハッキリ!」
同じく、驚くくらいクリアになった“視”界に、遥は思わず声を上げた。
遥の“眼”には、先ほどまでぼんやりとしか映っていなかった2人の姿が、はっきりと“視”えていた。
47 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 22:25:43.48 0
「ッ!!撃ってきます!!」
直後、女の腕が上がる。
こちらに向けられた掌の周囲に、凶悪なエネルギーが渦巻くのが“視”えた。
次の瞬間、女の手から解き放たれた刃が、高速で飛来する。
「鞘師さ―――」
その先に立つ里保を思わず見遣ったときには、エネルギーの刃はもう到達していた。
だが―――
凶悪な刃は、空気を切り裂いただけに終わる。
ほんの一瞬前までそこにあった里保の体は、最小限の動作で既に移動していた。
「よく“視”えるね。すごい。これなら避けれる。ありがとう、2人とも」
やや興奮気味な笑顔を浮かべる里保は、また年相応の無邪気さを感じさせる。
常人離れした体さばきと、その無邪気さのギャップがかわいいと思いながら、遥は春菜の方を振り返った。
「視覚――“リゾナント”!」
そこにも、ビシッと立てた親指で嬉しさを表した、無邪気な笑顔があった。
「“五感共鳴”できたじゃん!ってかポーズがダサいよ。昭和か」
「もう、遥ちゃんそうやって意地悪ばっかり言うんだから」
妙に嬉しそうな顔で文句を言う春菜から視線を外し、再び遥は前方を“視”る。
その“眼”に映る2人の男女は、焦った表情を浮かべながら何度もこちらを見たり後ろを振り返ったりしていた。
48 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 22:26:13.19 0
「思った通りれいなたちを足止めして時間稼ぎしとーみたいやね、あいつら。援軍が来る前に終わらせてしまわんと。…鞘師、いけると?」
「大丈夫です」
「っしゃ!じゃ、工藤、飯窪。しっかり“視”せててよ。ソッコー終わらせてくるけん」
そう言った次の瞬間、れいなと里保は力強く地面を蹴った。
瞬く間に相手との距離が縮まっていく。
「見えない」はずの自分たちのところへ真っ直ぐ突っ込んでくるれいなと里保に対し、2人は狼狽を露わにした表情を浮かべる。
既にかなり疲労が見える女だったが、必死の面持ちで腕を上げ、掌を突き出す。
そこから生まれた“刃”が、既に至近距離まで迫っていたれいなと里保に向かって放たれる。
だが次の瞬間、それは左右に飛び退いた2人の間を空しく通過して行く。
男と女、それぞれの表情が恐慌と恐怖に歪む。
ほとんど間をおかずして……その体は地面に叩きつけられていた。
「はやいよ…。回復のヒマなんてないじゃないですか…」
本当に速攻で終わらせてこっちに戻ってくるれいなと里保を見遣りながら、聖が泣きそうな声を出す。
八重歯がどうとか言ってる暇があったら静かに休んでおけばよかったのにと、遥は密かに思った。
「さ、そしたら帰ろっか」
聖の嘆きなど知る由もなく、戻ってきたれいなは案の定あっさりとそう言う。
「あ、あの…その前にすみません、ちょっとお聞きしてもいいですか?」
泣きそうな聖を見かねたのか、気を利かせた春菜が口を挟んだ。
「ん?なん?」
「あの、どうやって私たちのことを知ったんですか?どうして助けてくれたんですか?あ、いえ、皆さんのことを疑ってるとかではなくて…」
49 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 22:26:52.58 0
先ほど遥が聖に尋ねかけ、答えを得られないままになっていたその問いに、れいなは一瞬複雑な表情を浮かべた後、すぐに笑顔を浮かべて答えた。
「うん、れいなたちの仲間が“視”たんよ。れいなたちが工藤と飯窪と一緒におるとこ」
「“視”た…って?」
「どういう意味……ですか?」
その言葉の意味が分からずに首を傾げた遥たちに、さゆみが補足する。
「“予知能力―プリコグニション”―――その光井愛佳って子はね、“未来”が“視”えるんだよ。その“未来”の映像を基に、色々調べて辿りついたの」
「“未来”……ですか」
思いもよらなかったフレーズが、遥の中で響く。
先ほどれいなが口にした、「世界を救おう」という言葉が、ふと頭を過ぎった。
もしかすると、あのれいなの言葉は“未来”と関係しているのかもしれない。
「その人には…光井さんには会えるんですか?」
思わずそう尋ねた後、意味のない問いだったと気付く。
「仲間」だというからには、もちろんこれから「帰る」ところに愛佳はいるのだろう。
だが、その予想に反するかのように、れいなたちの表情に翳りが浮かんだ。
「今は……会えん。……でも……きっといつか会える。“未来”の青空の下で」
一瞬の翳りを吹き飛ばすように元通りの明るい笑顔を浮かべると、れいなは全員の顔を見回した。
「よし、じゃあ帰ろー!『リゾナント』に!」
さゆみの、聖の、里保の……そして遥と春菜の顔にも、自然と笑みが浮かぶ。
それは、彼女たちの“未来”への旅路に、また新たな一歩が刻まれた瞬間だった――――
50 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 22:29:09.12 0
―了―
>>32-37 >>41-49 以上『共鳴ハンター<3>』でした
管理人様、保管庫にはまとめて収録をお願い致します
<目指したもの・こと>
・コミカルなシリアス
・ヒーローモノ、少年漫画イメージ
・「恋愛ハンター」の歌詞を取り込む
・「現実」に合わせる(同時にネタを取り込む)
・飯窪さんと工藤さんの能力の拡大解釈
(※譜久村さん鞘師さんの能力は『■■』シリーズからいただいて拡大解釈をしています)
<果たせずに終わった(諦めた)こと>
・リーダーらしい道重さんの描写
・リゾOG含めたメンバー全員の名前を出す(もしくは仄めかす)
・スレ初期の「リゾナンター」との融合
・この先も現実に合わせて続きを書いて行ける世界づくり
ご愛読(?)ありがとうございました
51 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 22:56:36.73 0
かっちょええええええ
自分も 現実に合わせる 話を中心に考えていますが、こういうドラマチックな描写ができていいなと思います
52 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 23:01:39.97 0
>>50 古参ですが素晴らしいの一言に尽きます
スレの歴史を設定に取り入れつつ、新しい風を取り入れていて魅力的♪
時代が変わっているのだからこういう作品もいいんじゃないかなってね
遊びの描写も生き生きしていてエンターテイメントな作品として楽しませてもらいましたよ
『見えない刃』や『学園』も好きだけど、懐かしい感じの正統派もいいですね♪
次回も期待していいですか?
53 :
名無し募集中。。。:2012/06/05(火) 23:33:33.29 0
>>50 最後の愛佳のくだりのとこで「ああ、新しい時代なんだな」と思ってグッときました
できれば続いてほしいところです
なんか王道って感じ
54 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 00:41:15.61 0
>>50 いろいろな過去作にもリゾナントされているフレーズや文体がリゾスレの王道っぽい感じですね
もちろん世界観は作者さん独自のモノになるのでしょうが…。
ぜひ「果たせずに終わった」などと言わずこの先の「未来」のストーリーも紡いでいって欲しいです
55 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 01:50:55.58 0
実に読み応えのある話であった
56 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 02:25:06.64 0
面白かったです
57 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 04:12:11.21 0
>>14-17 の続き。
黎明学園中等部2年、生田衣梨奈。
父親はこの街の市長になった事があり、祖父は知事だったという政治家一家。
母親はステージママ気質があるらしく、モデル雑誌に応募させていたことで
生田はページに掲載された経歴を持つに至った。
なのに、彼女はかなりの不思議ちゃんとして名が通っていたりする。
だから有名人であり、アイドル、なんちゃってアイドルの方が正しいかもしれない。
そんな肩書きもあってか、今でもモデル業を行っているためと
この学校にも顔がきくということで遅刻をしても大目に見られることが多い。
鈴木は普通の家庭で育ち、普通なら羨ましく思えるのかもしれないが、その"普通"
という範囲を越えた家族関係が少しだけ窮屈なもののような気がした。
他人のことなのにまたいろいろと考えてしまうのは性なのかもと思いに駆られるが
空腹によって頭のはじっこに置いておくことにする。
お昼。
この学校は中等部は給食が用意され、高等部になると弁当を持ってくるか
給食かを選択できるようになる。
鈴木は妙に燃えていた。
隣にはあのメモを渡してきた彼女が居て、ギラリと瞳が光る。
「はっはっは、ついにこの時間がやってきたな香音」
「あんた達またやるの?中学生にもなって…」
「給食を笑うものは給食に泣くって言葉しらないの?」
「知らないし…」
「じゃああのみかんゼリーちょうだいよ」
「それとこれとは話は別」
58 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 04:12:47.87 0
別の同級まで混ざり、給食のあれが美味しいだのあれは
マズイだのと談笑を交わす。
遠くから配膳をする生徒にそれを大目に、など注文しながら。
それが終わると生徒達の給食が始まる。
献立はごはん、豚汁、エビフライ、切干大根、みかんゼリー、そして牛乳。
切り干し大根が舞った、プレートから2、3cmの高さにその姿が浮く。
ガチンガチン。箸が鳴る、ガチンガチン。
エビフライの尻尾を掴もうとする箸を阻むのは一本の箸、二刀流とでも言うように構える。
豚汁がこぼれそうになる、隙アリと切干大根に箸が伸びる。
鈴木の瞳がギラリと光った。
箸の先でフタのとれた牛乳瓶を押し倒そうとしたのだ。
「こら香音っ、そんなの反則だろっ」
「そっちだって私が好きなの知ってるクセにっ、LOVE大根!」
「じゃあエビフライ取ろうとするなっ」
机を向き合うようになってる為、斜め横の彼女とはこんなバトルが行われる。
先ほども余った料理を取りに行ったときも一悶着があったというのに、今度は
自分の好きなものを隙あらば取ろうと躍起になる。
隣の男子は何も言わずにモソモソと食べている。
毎度のことなので慣れたのもあってか、自分達の給食も被害に
遭わないようにさりげなく端の方に配置しておいてあったりもする。
早く席替えしないかな。とポツリ。
「こらっ、食べ物で遊ぶんじゃないっ」
59 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 04:13:30.91 0
そんな事をしていると当然教諭にも注意される訳で、一応それで二人は
大人しくなるのだが、いつ攻撃がしかけられるか分からないので鈴木は
切干大根を自分の手の近くに配置する。
給食が終わるとソフトボールをしようと言いだした彼女と別れて鈴木は廊下に出た。
特に用事はない、ただ少し食べ過ぎたせいで暴れるとかなり危険な状況だったのは事実だ。
うぷ。口を手で押さえる。
ふと。
職員室から会釈をしながら出て来た譜久村を見つけた。
最近はタイミングが合わずになかなか会えなかったので声を掛けようとする。
「みずきーっ」
瞬間、背後からの声に思わず掃除道具入れのロッカーに身を隠す。
あれ、デジャヴ?
「あれ?えりぽん…香音ちゃん何してるの?」
譜久村が首を傾げるのは、予想以上に狭かったロッカーをどうやって入ろうか
アタフタして、やけになってバケツ(新品)で頭だけを隠す鈴木に対してのもの。
ハッ、バレテル。
そんな鈴木を見て。
「敵怪人だ!このゼロガッシャーでやっつけてやる!」
生田衣梨奈が散らばったホウキとちりとりを手にとって構えを取った。
ちなみにゼロガッシャーとは、とある仮面ライダー専用武器だったりする。
だが鈴木はその豆知識を全く知らない、頭の中では「???」だ。
瞬間、生田が前にでる。
60 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 04:14:00.50 0
「最初に言っておく。俺はかーなーり、強い!」
台詞をバッチリ決めて生田はドヤ顔を見せつけた。
61 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 04:15:44.08 0
以上です。
l /
(O|゚|O ) </.l /| /\___
/_/_(‘ <_‘|9|| / l / / / //
l┌O-┝⊂ l ___  ̄ > \_/ /____// ガッシャーン
77∧:ヨ (⌒_ノ/、/~ />  ̄ ̄ ̄ ̄
γ⌒X||乢_し' 、/ヽ  ̄>__ || |::
|l (◎)l`ーミ三=Z) l| |/ / /\ || |::
ゝ_.ノ ゝ_.ノ ∠__/  ̄ || |::
-------------------------------------------ここまで。
以上、代理投稿でした。
まさかフクちゃんがデネヴなのか・・・
62 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 07:07:57.73 0
あげなんと
63 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 08:29:05.84 0
>>61 乙です
かのんちゃんの平和な日常とナマタのKYぶりが面白かったっす
ずっとこの調子でも面白いけどどこかで鞘師の剣が振るわれる時が来るのかな
64 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 09:50:15.72 0
ANNMきいたら香音ちゃんはパソコンが得意なんだって
65 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 10:03:47.61 0
>>61 投下代理ともに乙です
物語の空気もさることながら文章も独特でおもしろい
文法や用法を微妙にずらした感じがいい味出してる
66 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 11:18:44.55 0
ここへきて
67 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 11:55:04.80 0
あ?
68 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 13:37:22.13 0
ちょびっと
パリッと
もちょっと
69 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 15:19:33.02 0
あげ
70 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 16:15:22.52 0
あげ
71 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 17:16:15.24 0
あげ
72 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 18:32:54.36 0
あげ
73 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 19:26:40.51 0
おつかれさん
74 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 20:15:50.50 0
75 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 20:40:56.94 0
お、俺じゃないです…
76 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 21:38:29.82 0
あげーしー
77 :
名無し募集中。。。名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 22:04:29.18 0
>>61 面白い胸がポクりそうなくらいに
>>74 ヒッ!僕ポクっちゃいそうです
78 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 22:27:39.32 0
「じっちゃま、今日は風が強いね」
「そうじゃのう、里保。お天道様の機嫌が悪いのかもしれんの、ホッホッホ」
「里保、風が強いの嫌〜い。だってお空の神様が怒っているみたいじゃけえ」
「ホッホッホ、そうかもしれんのう。
じゃがな、里保、あの風はのう、お天道様がわしらに話しかけておるのじゃよ」
「え〜そうなの?ねえ、じっちゃま、なんて言っているの?」
「ありゃりゃ、里保には聴こえておらんのか?しっかり聴くことじゃよ」
「そんなこと言っても里保はまだちっちゃいんだよ。じっちゃまみたいにできないよ」
「ホッホッホ、今は聴こえんでも焦らぬことじゃ。いいことを教えるとするかの
空には空の、土には土の、風には風の、そして水には水の呼吸があるのじゃ」
「呼吸?吸ったり吐いたりすること?」
「そうじゃよ。わしら水軍流は代々、水の呼吸を伝えておる。
里保もまずは水の呼吸をしっかりと身につけることかのう。
そうしたらいつしか風も土も空の声も聞こえるようになるのじゃよ」
「わかった、里保頑張る!」
「それからいつもわしらがしているように感謝することじゃの。
『ありがとう』の気持ちを忘れないことじゃ」
「うん!わかった、じっちゃま、ありがとう!」
「よしよし、いい子じゃ。ん?どうした里保や、わしのおでこなんて触って」
「イヒヒ・・・しわしわ、ポンッ!じっちゃま、大好き!!」
・・・保全
79 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 23:17:05.75 0
なぜかこのくだりを思い出した
「ちょっと待つのりほりほ」
「はいっ」
爽やかに答える里保に対して、さゆみは欲望を隠せない。
「今、回想シーンを始めようとしたでしょ。 冗談はやめやがれでございますの。
昔のことを思い出して新たな力に目覚めるとか、そんなのは『BLEACH』だけにしやがれなの」
「過去の私があるから、今の私がいて、そしてきっと未来に繋がるんだと思います」
「そんな能書きはたくさんなの。 私は過去よりも今現在の可愛いりほりほを食べたいの」
80 :
名無し募集中。。。:2012/06/06(水) 23:18:32.31 0
過去の方がもっとたべたいんでしょ?
81 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 00:19:17.48 0
ムシャムシャ 从*・ 。.・)*´ー´リ zzzz
82 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 00:55:18.12 0
初めての呼吸で
83 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 01:46:57.09 0
コォォォォォォォ……
84 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 01:46:57.25 0
さてネルホ
85 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 03:26:04.05 0
おれも
86 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 05:48:06.22 0
おぱよん
87 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 07:50:56.87 0
幾千光年の孤独
88 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 07:51:04.19 0
蒸し暑い電車の中からホ
89 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 09:07:55.68 0
コンニチハ
90 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 10:12:00.32 0
リゾナンターとホゼナンターってどっちが強いの?
91 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 10:38:30.37 0
ホゼナンターはリゾナンターの存在を消す事が出来る
92 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 10:50:06.48 0
しかしリゾナンターの手にかかればホゼナンターなど赤子の手を捻るようなものだろう
93 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 11:22:31.02 0
むしろ捻られたいホゼナンター多数の予感
94 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 13:02:09.01 0
誰に捻られようか熟考中
95 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 14:02:19.17 0
んn
96 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 15:37:21.59 0
なn
97 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 16:36:53.81 0
みn
98 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 18:38:59.01 0
とn
99 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 19:48:00.92 0
まn
100 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 20:12:57.58 0
ねn
101 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 20:29:36.46 0
バスッ!ドン!
小柄な体が地面にたたきつけられた。
「くそっ!まだだ!」
小柄な体がたちあがった。
そこから出された声はとてもハスキーであった。
その体はボロボロであった。
「遥ちゃん、もうやめようよ。」
「馬鹿野郎!おまえが作ったロボットごときを倒せなくて、リゾナンターになれるかよ!」
「でも、リゾナンターにはなりたくて、なれるものじゃあ・・・」
「おれにだって、なれる!まずはこのポンコツをぶっ壊す!」
工藤遥。
Mの養成機関「EGG」に属している少女である。
小柄な体格であるが、その男勝りな性格とある特殊な能力で成績をあげているのだ。
だが、彼女の夢はあこがれの存在であるリゾナンターになること。
そのために同輩である宮本佳琳に頼んで、あるデータを取り寄せたのだ。
『AK-Bシステム』
かつてリゾナンターが関わったPEPPER事件でPEPPERたちによって破壊されたロボットである。
事件の後でそのシステムは封印されたが、佳琳がハッキングでデータを手に入れて、設計したのである。
「やっぱりやめようよ。ハッキングしただけでもまずいんだから・・・」
「安心しろ、すぐにぶっ壊して証拠隠滅してやるから。」
102 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 20:30:29.25 0
遥はその性格からか無茶をすることがよくある。
M上層部に知れたらただではすまないこの行為も遥の野望のためでもある。
しかしこの復元されたAK-Bシステムには苦戦しているのだが、遥には勝算があった。
(さきほどの攻撃でひずみができたはずだ。千里眼で見えるはずだ。)
バキッ!
遥の放った攻撃は強固なAK-Bの体を破壊した。
千里眼
遥の特殊能力でありとあらゆるものを見ることができる力である。
この能力を遥は敵の弱点を探ったりすることに使っている。
遥はさきほどまでの攻撃で生じたわずかなひずみを狙ったのだ。
「どうだ、見ただろう?俺にかかればこんなポンコツ・・・」
バキッ!
強烈な一撃が遥の頭を襲った。
「遥ちゃん!AK−B止まりなさい!」
佳琳がAK-Bシステムを止めようとするが、命令を聞こうとしない。
どうやら遥の攻撃が暴走を引き起こしたようだ。
バキッ!ボコッ!
AK-Bは遥に容赦ない攻撃を仕掛けている。
このままでは命を奪われかねない。
(くそっ・・・もうだめか・・・誰か・・・誰か助けて!)
103 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 20:31:17.60 0
普段は強がりの遥が初めて、心の底から弱さを見せ、助けを求めた。
そんな中でもAK-Bの攻撃は止まらない。
「もうやめて!」
泣き叫ぶ佳琳の脇を人影が走りこむ。
人影が手をAK-Bにかざすと、その大きな巨体は粉粒になるかのように消滅していった。
(ここは・・・天国か?いや地獄だろうな・・・まぁ、自業自得だよね。佳琳に違法行為すれすれのことさせて・・・悪かったな、佳琳・・・)
遥ちゃん・・・遥ちゃん・・・
(佳琳の声だ・・・・まずい、佳琳まで地獄に連れてきちまったか。本当にすまねぇな、佳琳。)
遥ちゃん・・・遥ちゃん・・・起きて
「うーん、少しは休ませて・・・あ、あれ?ここは・・・」
遥が目を覚ますとそこはEGGの診療所であった。
横には佳琳が心配そうな表情を浮かべていた。
「佳琳・・・俺はどうしたんだ・・・イタタ!」
「あっ、遥ちゃん・・・本当は全治一カ月の大けがなんだから。」
「えっ、でもとてもそんな風には思えないが・・・」
「あの人が治してくれたんだよ。」
104 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 20:32:08.30 0
佳琳はある方向を指さした。
そこには身長と黒髪が長い女性がたっていた。
遥はその女性の顔に見覚えがあった。
「あ、あなたは・・・道重さん!」
「あら、さゆみのことを知っていてくれたの?工藤遥ちゃん。」
「えっ、なんで俺・・・いや私のことを知っているんですか?」
「吉澤さんに聞いたの。最近、危ない訓練している子がいるからね、念のために呼ばれていたの。」
吉澤ひとみはMの諜報機関の隊長である。
どうやら吉澤に遥の危ない行為がばれていたようだ。
「どうしてそこまで危ないことをしてまで訓練しているの?」
「私もリゾナンターになりたいんです。あなたたちの武勇伝は聞いています。」
「あなたは戦いたいの?」
「そうです、私は戦って、活躍したいんです。」
そう意気込む遥の言葉を聞く途端、さゆみの顔は少し悲しそうな表情を浮かべた。
「えっ、どうしたんですか?」
「さゆみはもうこれ以上、戦いなんて起きてほしくないと思うの。」
「でも、私たちが戦わないと悪い奴がのさばるばかりじゃないですか。」
「確かにそう・・・でも、遥ちゃんたちのような子が戦う必要はないの。あんなつらい戦いをするのはさゆみたちで十分。」
105 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 20:33:17.36 0
さゆみにはこの長きにわたるダークネスの戦いが自分たちを確実に消耗し続けている。
もしかしたらこの先、自分たちの誰かが命を落とすかもしれない。
何よりも命を大事に思うさゆみにとってはもはやこれ以上、ダークネスの戦いに人々を巻き込みたくないのだ。
「頑張ろうという気持ちはわかるけど、できれば普通の女の子として過ごしてほしいの。」
「そうですか・・・」
「今すぐに考えをまとめてとは言わないわ。」
そういって、さゆみは部屋を後にした。
チッ!
それを黙って、遥は見守ると思わず舌打ちをした。
「佳琳・・・俺は必ずリゾナンターになってやるぞ!あんな腰ぬけを見返してやるんだ。」
「そんな・・・道重さんは遥ちゃんのことを思って・・・」
「黙ってろ!ここで引っ込んでいたら今までの努力を水を泡にするんだぞ。絶対にあきらめないぞ。」
工藤遥・・・この小さな狂犬が今後のリゾナンターにどんな影響を及ぼすのか誰にもわからない。
106 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 20:37:17.92 0
>>101-105 「リゾスレ4周年突破記念 癒しの少女と千里眼の少女」
どうもリゾクラ作者です。
忙しい日々が続いておりますが、作品作りはなんとか進めていきたい。
さて、今回のコンセプトは道重さゆみは変態ばかりではないという点です。
最近、自分の作品ばかりではなくほかの作者さんの作品でも変態の面が強くなっている気がして、
もともとの原点を見直してみようと書いてみました。
実のところ、このシリーズの最終回にしようかと思い悩んだエピソード。
最終回は別の形で占めたいと思います。
ああ、新しいアイディアが下りてくるといいが・・・
107 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 21:46:46.42 0
おつです!
なんかさゆの優しさというか切なさがにじみ出るし
くどぅーの狂犬ぷりというか熱い想いが伝わってくる作品ですね
108 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 23:05:11.16 0
ハッ! 言われてみれば…
さゆが変態なのを前提化してしまっていた気がw
109 :
名無し募集中。。。:2012/06/07(木) 23:23:33.80 0
なんだかなあ
110 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 00:06:59.01 0
阿藤さんがいるな
111 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 00:43:46.50 0
やめてけれ
112 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 01:46:56.48 0
あげ
113 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 02:09:23.56 0
あげ
114 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 02:22:18.88 0
息が、切れる。
鮮血が飛び散る。
肉が切れ、骨が断たれるような音がする。
「あ゛っ……」
鈍い声が口から漏れた。
肩口をおさえ、折れそうになる膝を堪えた。
それでも倒れまいと真っ直ぐに前を見据える。
「なん、でよ………?」
そうして少女は独り言のように漏らした。
こんなこと、したくないのに。
なのにどうしてだ?
どうして、こんなことをしているのだろう?
「なぁ!なんでよ!!」
暗闇に叫ぶが返答はない。
そこに確かに聴き手はいるはずなのに、彼女は答えてくれない。
答えないことこそが、答えなのだろうかと天を仰いだ。
115 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 02:22:53.25 0
涙なんてとっくに枯れたものと思っていたのに、それでもまだ、この瞳から雫は落ちる。
人間とは、厄介な生き物だと、そう思った。
感情があるから、こんなに悩むんだ。
感情がなければ、もっと素直に行動できた。
なにも考えずに、ただ目の前にあるものを切り裂けば良かった。
欲望のままに、痛みを知らずにただ過ぎ去れば良かったのに。
それなのに。
感情があるが故に、悩み、惑い、震え、涙する。
そんなもの、とっくに捨てたと思っていたのに、こんなにも胸が熱くなる。
まだ、叫んでいる。
心が、痛いと。
必死に叫んでいる。
「なんでよ………ねぇ……」
116 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 02:25:05.43 0
血も、汗も、涙も。
体液はその場に迸り、痛みと哀しみを教える。
それでも彼女は、叫ばずにはいられなかった。
「なんでよ、さゆ!!!」
田中れいなは、無間に続きそうなその闇に叫んだ。
名前を呼ばれた彼女は、闇の奥深くで無表情を崩さぬままれいなを見つめていた。
彼女の瞳に、感情は映らない。
それなのになぜか、確かにその頬に、雫が伝っていた。
「時間が来たんだよ……」
そう彼女は呟いた。
「終わらせよう、すべてを」
117 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 02:25:42.16 0
というような内容がチラリと浮かんだ新参者です
続きませんし始まりませんごめんなさい……
ちゃんと形になったら投下します
保全代わりということで申し訳ないですm(__)m
118 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 02:48:36.06 0
>>117 新しく書いてくれる人が増えるのはいいことです
期待していますよ
119 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 07:10:38.98 0
あげ
120 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 08:05:04.22 0
>>117 何か雰囲気のある文章ですなあ
形になることを願っておりますよ
>>106 スレ的にはこういうさゆの方が本来は正統派なんだろうけどなあ
最終回はどんな顔合わせになるんでしょうかね
楽しみにしております
121 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 10:01:16.63 0
女性作者が多いね
122 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 11:20:44.90 0
これは事件よ!
123 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 12:17:02.39 0
あげ
124 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 12:30:02.99 0
125 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 14:27:13.38 0
これから始まる世界は誰かの世界。
誰かが作り、誰かが存在する世界。
"幻"か"夢"か。
それでもこの世界は始まってしまうしかない。
"誰か"がいる限り。
「リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第55話 『(55)1000 タイトル無し(名も無き世界)』より
126 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 16:57:04.08 0
あげ
127 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 17:33:27.52 O
128 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 19:21:36.42 0
129 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 21:09:59.07 0
新人ちゃん嫉妬保全
130 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 21:15:19.99 0
131 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 21:34:15.17 0
これほどに期待を受けた作者は過去にもいないかもしれないな
132 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 23:29:13.43 0
もうそのくらいにしといてやれw
133 :
名無し募集中。。。:2012/06/08(金) 23:50:17.28 0
134 :
名無し募集中。。。:2012/06/09(土) 00:31:17.24 O
えりりんきたあああああああああああああああああああああ
135 :
名無し募集中。。。:2012/06/09(土) 01:59:35.01 0
ほぜ
136 :
名無し募集中。。。:2012/06/09(土) 02:50:14.04 0
ちゃゆ・・・
137 :
名無し募集中。。。:2012/06/09(土) 03:49:44.28 0
ほぜ
138 :
名無し代理中。。。:2012/06/09(土) 07:17:22.01 0
>>14-17 >>57-61の続き。
振り落とそうとした途端、「あれ?」と生田が素っ頓狂な声を上げて両手を見る。
背後からホウキとちりとりを引っ掴むのは譜久村だ。
「こら、人に向けたら危ないじゃない。それに確か
ゼロノスじゃなくてWにハマってるって聞いた気がするけど」
「そうだっ、ねえねえみずき、今度映画みにいこうよっ、ゼロノスは出ないけど
Wが出るっちゃん、キャッチコピーはこうとよ。
『世界よ、これが日本のヒーローだ!!』」
「私戦隊モノ見たことないから分かんないよ。
それよりさ、モデルになったっていうアイドルの人の話聞きたいんだけど」
「あー…えりなはあんまり好かん人やったかなあ、キャラが被るんよねえ」
ホウキとちりとりを持ったままなので、万歳の姿のままの生田。
バケツ(新品)を被ったままで鈴木は考えていた。
生田衣梨奈の祖父は知事をしたことがあるが、その同級生であり
この街の発展に一役買った立役者、それが譜久村聖の祖父だった。
譜久村に対する周りの反応が「お嬢様」や「お金持ち」なのもここからである。
なので家族の交流もそれなりにあったりして、何気にこの二人も
自然の流れなのか、仲は良い。
譜久村の"音"は薄ピンク、生田の"音"は紫だ。
鈴木には人間のオーラなどを「音」の振動音波によって「色」で知ることが出来る。
霊感とは違って、絶対音感の持ち主だから、というのが主な理由らしい。
子供の頃にある医療施設でそれが発覚したというのを母親から
聞かされたことがある。
そこでは鈴木が持つ能力のことを『共感覚 -シナスタジア-』と呼ばれていた。
これは絶対音感を持つ人間によくある知覚現象らしく、私生活には
問題はないという事で母親はかなり安心したらしい。
知ってるのは家族と、譜久村だけ。
とは言っても、最近その能力が少しだけ変になっている。
一つは相手のオーラが「音」から「色」へ変わる瞬間
なぜだか別の風景イメージが見える時がある。
その異変が起き始めたのが、あのガラスレンズを見てからだった。
鞘師が大事そうに箱に詰めていた、あの不思議なレンズ。
生田のようなバイオレットの"紫"ではなく、アメジストのような"薄紫"。
違和感はまだ残っている。
最初は流し込まれるその風景に戸惑っていたものの、身体に馴染んだのか
それほど酔うようなことも無くなった。
鮮明ではないが、まるで相手の心を見ているような気がして良い気はしない。
自分でもそんなことを相手からされてると思うと嫌だと思うから。
ただあの時に感じたイメージはとても、懐かしい感じがした。
あの"薄紫"の女性は誰だったのか、もしかしたら鞘師は知っているのかも
しれないと思ったのだが、知らない人間の話をするのも気が引けてしまう。
最近こんなことばっかり考えてるな、鈴木は溜息を吐いた。
「香音ちゃん、いつまでこれ被ってるの?」
そんな声が聞こえて、顔にかぶさっていたバケツ(新品)を取り払う
譜久村の顔が、眩しさに細める視界に入る。
気つけば生田の姿が居なくなっていた。
「えりぽんにはちゃんと言っておいたからもう大丈夫。
でも携帯が鳴った途端に急に走ってったからどうしたんだろ…まああの子って
行動力だけは人一倍あるから、別に驚くことじゃないんだけど」
どうやら生田の行動に鈴木が怯えてるんじゃないかと心配したらしい。
正確にはドン引きして対応に迷っていただけだったのだが。
そんな事は夢だと自分で言い聞かせながら、鈴木は久し振りに会話を交わす。
「あのみずきちゃん、今日一緒に帰れる?」
「ああ、ごめん。ちょっとお見舞いに行かなきゃいけなくて…」
「え?お見舞い?」
「あ、そっか、香音ちゃんにはまだ話してなかったね、実は…」
――― カチカチカチカチ。
携帯を操作し続ける。
南棟へ走り込んだ彼女は、この着信をいつも待ちわびていた。
電話はできない、恥ずかしくて泣き声になりながらなどあまりにも
情けなさすぎて出来ないからだ。
それならメールで我慢する。
声が聞けなくとも、文字だけでも心の会話が楽しめるのであれば
そっちの方が何倍も良い。
あの顔と向き合おうものなら失神してしまう。
だからこそせめて文字で、言葉で語り合いたい。
南棟へ辿り着いた。
屋上に向かう階段には『立ち入り禁止』のプレートと障害物。
カチカチカチカチカチ。
カチカチカチカチカチ。ピ。
生田は口角を緩ませた。
仮面ライダーWの関係性は素晴らしいと思う。
俺たちは、僕たちは、二人で一人の仮面ライダーさ!
まるで"私達"のようでとても共感が持てる。
ただ"あの人"の戦闘モノの知識はそれほど豊富ではないらしく
そこが少し残念だけれど。
生田は携帯の画面を見つめる。
両眼に紫の閃が過る。バイオレットの煌めきが。
カチカチカチカチ。
内容に返信を送り、生田は携帯を閉まった。
【i914の反応あり。高橋愛のそうさくを続行】
生田は心底嬉しそうに嗤う、ゾワゾワと沸き立つ愛を一身に受けて。
142 :
名無し代理中。。。:2012/06/09(土) 07:20:49.90 0
>>138-141 以上です。
自分も
>>117さんの作品を楽しみにしてます^^
--------------------------------ここまで。
143 :
名無し募集中。。。:2012/06/09(土) 09:42:47.84 0
独特の世界観楽しみにしてます
そして展開が大きく動きそうですね
144 :
名無し募集中。。。:2012/06/09(土) 09:57:59.41 0
>>142 少しずつ輪郭がはっきりし始めた感があって引き込まれますねえ
先輩メンバーたちとどのように繋がってくのかも楽しみです
145 :
名無し募集中。。。:2012/06/09(土) 12:02:28.63 0
>>142 乙です
少しずつ物語のピースが出揃ってきてはいるけど全容は判らないやw
大変に想像力を刺激される話であります
146 :
名無し募集中。。。:2012/06/09(土) 14:20:09.72 0
読む前にほぜ
147 :
名無し募集中。。。:2012/06/09(土) 15:47:12.57 0
読んだ後もよろしくだぜ
148 :
名無し募集中。。。:2012/06/09(土) 17:28:20.50 0
クジュッキのカラーがまだうろ覚えだ
学習せねば
149 :
名無し募集中。。。:2012/06/09(土) 18:52:25.75 0
150 :
名無し募集中。。。:2012/06/09(土) 18:53:25.39 0
まずそこからかいw
151 :
名無し募集中。。。:2012/06/09(土) 19:38:45.09 0
152 :
名無し募集中。。。:2012/06/09(土) 20:44:33.05 0
チョコレート色ハゥ!
153 :
名無し募集中。。。:2012/06/09(土) 22:04:30.71 0
ロックな夜ナント
154 :
名無し募集中。。。:2012/06/09(土) 23:20:49.62 0
リゾナントliveの感想スレが伸びとる
155 :
名無し募集中。。。:2012/06/10(日) 00:34:53.49 0
明日は書けそう
156 :
名無し募集中。。。:2012/06/10(日) 01:04:59.64 0
寝ますわよ
157 :
名無し募集中。。。:2012/06/10(日) 03:06:40.08 O
寝る前なんと
158 :
名無し募集中。。。:2012/06/10(日) 05:13:16.61 0
起きたなんと
159 :
名無し募集中。。。:2012/06/10(日) 07:33:01.02 0
飯食ったなんと
160 :
名無し募集中。。。:2012/06/10(日) 09:46:50.79 0
どうするかな
161 :
名無し募集中。。。:2012/06/10(日) 11:39:52.89 0
時の記念日
162 :
名無し募集中。。。:2012/06/10(日) 13:21:50.17 0
時は進む・・・それは未来へと
163 :
名無し募集中。。。:2012/06/10(日) 15:11:21.65 0
アミバ記念日
164 :
名無し募集中。。。:2012/06/10(日) 16:25:01.79 0
アミダ?
165 :
名無し募集中。。。:2012/06/10(日) 18:09:16.69 0
ばばあ?
166 :
名無し募集中。。。:2012/06/10(日) 19:49:28.75 0
誰がババアやて…?
167 :
名無し募集中。。。:2012/06/10(日) 20:16:28.05 0
そう言えばばb・・・中澤さんの能力はまだハッキリ決まってないんですね
168 :
名無し募集中。。。:2012/06/10(日) 20:43:24.93 0
中澤さんに限らずはっきり決まってる方が稀ですねw
169 :
名無し募集中。。。:2012/06/10(日) 22:12:18.05 0
世界はただ、輝いて
170 :
名無し募集中。。。:2012/06/10(日) 23:09:46.92 0
次回の日曜劇場はがきさんにとって衝撃的かも・・・
大阪某所、コリアンパブ「華阪神」
夜更けに差し掛かった頃。疲れた表情の男が、店のドアを開いた。
「アラ!牛島サン、イラッシャイ」
「こんばんは…。ティファニーちゃんは?」
「アラ!アノ子昨日辞メチャッタヨ」
「えっ!?」
――それから数ヶ月後、東京・新大久保
「あ〜ポッサム美味しかった〜。愛ちゃんいいお店知ってるね〜」
「やろ?里沙ちゃん次はホットク食べにいこ!ホットク!」
「いいね〜行こ行こ…」
(!)
(!)
すれ違った一人の女性を目で追う2人。そして顔を見合わせる。
「愛ちゃん…」
「うん、今の人やよね。ホットク買ったらすぐ追っかけよ!」
「ホットクはいつでも買いに来れるでしょーが!すぐ追っかける!」
「え〜」
「えーじゃない!」
ハァ、ハァ、ハァ…
その女は、狭い路地を小走りで駆けていた。
後をつけられている事に気付いたのか、時折後ろを気にしながら。
やがて適当な物陰に身を隠し、しばらく辺りを伺う。
「フゥ…」
人の気配はしない。どうやらやり過ごせたようだ。
物陰から出て、冷静になって気付いた。
ここ、どこ…?
無我夢中で逃げているうちに、知らない場所に来てしまっていた。
どこ…?どこ…?
携帯を取り出し、GPSで現在地を調べながら歩く。その時――
ドンッ
「ア、ゴメンナサイ…」
携帯の画面を見ていて、歩いていた男にぶつかってしまった。頭を下げて立ち去ろうとしたが、肩を掴まれた。
「なあ姉ちゃん。痛えんだけど」
「エ…」
「痛えっつってんの」
「ゴメンナサイ。スミマセン。ゴメンナサイ」
「なんだこいつ、日本人じゃねえの」
「でも結構かわいくね?」
「そうだな。じゃあちょっとお詫びしてもらわねぇとな!」
「イヤ…ヤメテ…!イヤーーーーーーーーッ!!!」
毒男の死にたくなる思い出のスレ
608 :名無しさん :05/09 22:34
無茶しやがって・・・
609 :名無しさん :05/09 22:36
俺なんて女に200万円持ち逃げされたぜ
610 :名無しさん :05/09 22:37
kwsk
611 :名無しさん :05/09 22:40
歌手になりたいっていうホステスに入れあげててさ
歌手になれるかもしれないチャンスが来た、資金が必要なんだって頼まれて貸したんだよ
次に店に行ったら辞めてた どこに行ったかは誰も知らないって
612 :名無しさん :05/09 22:41
イ`
613 :名無しさん :05/09 22:42
…まあ、あれだ。あまり落ち込むな
614 :名無しさん :05/09 22:44
プロポーズしようと思って指輪持って店行ったらいなくなってたんだ
指輪も200万の借金のカタに取られたし
まあいい勉強になったよ
615 :名無しさん :05/09 22:48
とりあえずお茶飲め つ 旦
「――次のニュースです。昨夜、新宿区内の路上で、男性3人が倒れているのを近所の住民が見つけ、病院に搬送されました。男性3人はいずれも意識不明の重体です。」
「昨夜7時過ぎ、新宿区百人町付近の路上で、男性3人が血を流して倒れているのを近所に住む女性が見つけ、警察と消防に通報し病院に搬送されました。」
「警察の調べによりますと、男性3人はいずれも全身に鈍器のようなもので強く殴られたような痕があり、全身打撲で現在も意識不明の重体です。」
「警察は傷害事件と見て捜査を進めています。また、男性らが発見される少し前に現場付近で女性の悲鳴のような声を聞いたという証言もあり、関連がないか調べを進めています――」
東京・歌舞伎町、とある雑居ビルの一室――
ギィ
ドアを開け、1人の女が入ってくる。その表情は、暗い。
「…オ疲レ様デス」
「ティファニー」
「ハイ?」
「勝手な行動はするなと言ったはずだ」
「デモ…」
「お前は我々の指示にあった人間だけを始末するんだ、何度も言っているだろう」
「…ハイ」
「他にも、お前の事を嗅ぎ回っている奴らがいるようだからな。目立つような行動は慎め」
「…」
「ね、愛ちゃん。今のニュース見た?」
「うん見た。あん時のだよね」
「絶対そう。あの子を探さなきゃ」
「今日は行ける?」
「夕方からなら」
「よし、じゃああそこでね」
175 :
名無し募集中。。。:2012/06/11(月) 00:15:51.21 0
>>171-174 「Missing You【前編】」
前スレでの何気ない保全のやりとりから得たヒントととあるドラマの設定の一部を元にしています
>>173は誤爆ではありません
176 :
名無し募集中。。。:2012/06/11(月) 00:50:45.95 0
177 :
名無し募集中。。。:2012/06/11(月) 02:39:48.77 0
わくわくしながらおやすみナント
178 :
名無し募集中。。。:2012/06/11(月) 05:13:09.59 0
>>173 乙です
いきなり誤爆かと思ったけど意図があったわけね
保全レスのやりとりからどんな物語が生まれるのか楽しみ
179 :
名無し募集中。。。:2012/06/11(月) 07:56:03.88 0
180 :
名無し募集中。。。:2012/06/11(月) 09:48:58.57 0
うへ
181 :
名無し募集中。。。:2012/06/11(月) 12:01:16.97 0
あひゃ
182 :
名無し募集中。。。:2012/06/11(月) 14:19:24.44 0
なの
183 :
名無し募集中。。。:2012/06/11(月) 16:11:19.75 0
のだ
184 :
名無し募集中。。。:2012/06/11(月) 16:28:41.46 0
ダ
185 :
名無し募集中。。。:2012/06/11(月) 16:47:05.96 O
ハイハイ
186 :
名無し募集中。。。:2012/06/11(月) 17:14:23.27 0
やけん
187 :
名無し募集中。。。:2012/06/11(月) 17:50:40.12 O
やな
188 :
名無し募集中。。。:2012/06/11(月) 18:58:36.02 0
ちゅーす
189 :
名無し募集中。。。:2012/06/11(月) 19:48:48.92 0
>>138-141 「おはようございまーす!」
校門の前、鈴木も見慣れた風景が広がっている。
生徒会と風紀委員が左右に列を作って、あいさつ合戦をしていた。
鈴木も挨拶しようとして、不意に思ってしまう。
うるさい。
いつもは気にもならないのは、今日はやけにうるさく感じた。
頭に響き、眉間に軽くしわが寄って行く。
他の生徒は気にせずに歩いて行くのだが、鈴木は違った。
異様な"音"の混ざり合いに鼓膜が疼いて仕方が無い。
譜久村の姿が見えるが、鈴木はその場を立ち去りたくて早足になる。
玄関先になってもその疼きが止まらないため、鈴木は怖くなった。
上履きにはきかえ、教室に入って友人に挨拶を交わされてもそれは同じ。
「どうかしたの?顔色が悪いけど」
「なんか、気分悪くて…」
「保健室に行った方がいいんじゃない?」
同級生たちは何事も無い様にしている。
誰かは宿題を写させてくれるように友達に頼んでいたり。
誰かはきのう観たバラエティ番組の話で盛り上がっていたり。
誰かは携帯をいじって誰かにメールを送っていたり。
教諭に見つかって注意を受けたが。
「せんせー、香音が不調を訴えてます」
「ん?鈴木どうした?顔色悪いぞー」
鈴木は答えない、答えられなかった。
疼きが痛みへと変わって行く。
"音"がグルグルと、視界に異様に混ざった"色"が見えるようになっていた。
なんじゃこりゃ!
叫びたいのに声が上がらない。
スモッグのような薄い霧が、教室全体を覆い包んでいるのだ。
「おい、香音、しっかりしろっ」
友人の彼女が声をかけたのを最後に、鈴木の意識は途切れた。
完全ノックアウトだ。
――― 嫌な夢を見た。
誰かを失ってしまう、誰かと別れてしまう。
もう二度と会えなくなるような、その気にさせる夢を見た。
誰かは分からない。
鞘師、譜久村、生田、両親、妹、友達、 そのどれもが当てはまらない顔。
だけど知ってるような気がして、鈴木はその身体に抱きつく。
まるで泣き虫な子供がぐずるように。
嫌だ嫌だと泣いて、泣いて、泣いて。
こんなヤツだったかなあたし、そう鈴木が思う内に、誰かの姿は消えた。
誰も居なくなって。誰かを探して腕を上げる。
誰か、ねぇねぇ、誰か――― !!
その時に微かに見えたのが、青空のような水面に映る虹だった。
次に目が覚めると、保健室のベットの上。氷枕でヒンヤリと頭部が冷える。
ボウッとしていた。
先ほど感じた"音"は少し収まっていたが、まだ鼓膜が疼く。
ふと、鈴木の視界に入って来たのは同級生の顔だった。
彼女の顔もしっかりある。
「気が付いた、香音っ」
心配したようにそう声をかける彼女に、鈴木は「ああ」とため息のように零す。
結局あの強烈な"音"に耐えきれずに気絶したのだと分かって、時計を
見るとすでにお昼になりかけていることを知った。
母親には既に連絡をいれているらしく、鈴木は早退することになった。
母親の車から見えた校舎が、いつもよりも大きい。
蜃気楼のように歪んだように見えて、鈴木は視線を逸らす。
それにしても、あの不気味な"音"の正体が分からない。
ただ何処かで、似たようなものを聞いたことがあったかもしれない。
あれはそう、鞘師と会ったあの日に、いじめられっ子の彼女から聞こえた、黒。
あんな風に感じたことも初めてだったし、なによりも鞘師と出会ってから何かがおかしい。
譜久村の友人が入院した事も、変な幻覚や夢を見るようになったのも。
そして気付けば、屋上が閉鎖してから彼女とまったく会えていないという事。
鈴木は自分の部屋でいろいろと考えていた。
保健室で眠っていたときのあの夢が過る、夢のはずなのに、現実味があり過ぎる。
あの9人の顔に見覚えは、ない。それなのにどうしてこんなにも。
「香音、お友達が来てくれたわよ」
母親の言葉に鈴木は疑問を抱く。
まだ学校は終わっていない時間なのに。
部屋のドアが回され、その姿に鈴木はあんぐりと口を開けた。
訳が分からない。
訳が分からねえ。
「こんにちわ、かのんちゃん」
にっこりと、鞘師里保は薄い笑みを浮かべた。
193 :
名無し募集中。。。:2012/06/11(月) 19:51:53.30 0
>>189-192 以上です。ちょっと場面がぐるっと変わりました。
千秋楽のステーシーズを観に行ってきます。
----------------------------------------ここまで。
したらばからの転載でした
194 :
名無し募集中。。。:2012/06/11(月) 20:38:42.69 0
どちらかというと観察者だったかのんちゃんが当事者として関わってきそうな予感
195 :
名無し募集中。。。:2012/06/11(月) 22:16:05.52 0
何かが起きる予感
196 :
名無し募集中。。。:2012/06/11(月) 23:41:29.87 0
スレが危ない予感
197 :
名無し募集中。。。:2012/06/12(火) 00:19:17.03 0
それは危ない予感
198 :
名無し募集中。。。:2012/06/12(火) 01:18:29.05 0
危険が危ない!
199 :
名無し募集中。。。:2012/06/12(火) 03:26:57.47 0
おやすみナント
200 :
名無し募集中。。。:2012/06/12(火) 03:28:51.19 0
>>193 乙です。そろそろ何か起こるのね
ステーシーズは作者陣を刺激する・・・かも
201 :
名無し募集中。。。:2012/06/12(火) 05:59:52.05 0
おぱよん
202 :
名無し募集中。。。:2012/06/12(火) 06:14:48.61 0
>>200 自分は娘。の舞台は初めて観に行ったんですがかなり刺激されましたw
まあ新参だし皆様にからかわれる
>>117ですがw
203 :
名無し募集中。。。:2012/06/12(火) 08:20:22.26 0
ステーシーの原作買うわ
204 :
名無し募集中。。。:2012/06/12(火) 08:22:35.60 0
>>193 色々繋がって話が動き出しつつありますね
9人……
ステーシーズ行きたかったです羨ましい
長旅お気をつけて
205 :
名無し募集中。。。:2012/06/12(火) 11:42:10.53 O
ステーシーズ今日か
206 :
名無し募集中。。。:2012/06/12(火) 13:02:25.55 0
ゾンビあげ
207 :
名無し募集中。。。:2012/06/12(火) 14:53:51.42 0
怖いものを想像しちゃいました
208 :
名無し募集中。。。:2012/06/12(火) 16:52:44.76 0
カラカラになってミイラみたいになりそう
209 :
名無し募集中。。。:2012/06/12(火) 17:40:13.28 0
川*’ー’) < ピコーン !
ノ|c| ・e・) < うん、愛ちゃんやめとこう
210 :
名無し募集中。。。:2012/06/12(火) 18:31:27.05 0
新メニュークルー?
211 :
名無し募集中。。。:2012/06/12(火) 20:00:19.66 0
いらんいらんw
212 :
名無し募集中。。。:2012/06/12(火) 21:17:05.57 0
配信よかった
新メニュー待ち
213 :
名無し募集中。。。:2012/06/12(火) 22:38:34.00 0
ググったら小鯵のゾンビ揚げなる物を見つけたがなかなかのグロなので画像は貼らない
214 :
名無し募集中。。。:2012/06/12(火) 23:31:48.22 0
ウーパールーパーの姿揚げみたいなもんかなw
215 :
名無し募集中。。。:2012/06/13(水) 00:54:14.01 0
ステーシー饅頭 再殺モナカ… ゾンビ揚げ∩゚∀゚∩age
216 :
名無し募集中。。。:2012/06/13(水) 02:57:55.04 0
蝶羽状輝微粉ハーブティ
165分割サイコロステーキ
ハムエサラダ
217 :
名無し募集中。。。:2012/06/13(水) 05:33:44.22 0
さっき「店長を呼べ!」とか騒いでたひと奥に入ったきり戻ってこないなぁ
おっ
うまそうなステーキだね
218 :
名無し募集中。。。:2012/06/13(水) 05:40:00.20 0
やめれw
219 :
名無し募集中。。。:2012/06/13(水) 07:40:49.36 0
从*´ ヮ`) <髪の毛も指も
川*’ー’) < 思い出も骨も
ノ|c| ・e・) < いや怖いから
220 :
名無し募集中。。。:2012/06/13(水) 07:44:15.04 0
冷静ww
221 :
名無し募集中。。。:2012/06/13(水) 08:26:35.20 0
さすがガキさん
222 :
名無し募集中。。。:2012/06/13(水) 09:29:16.55 0
川*’ー’) <臨死遊戯乳酸菌飲料(ニアデスカルピス)はじめるやよ
ノ|c| ・e・) <もう店の名前も喫茶「リゾナンビ」にしちゃえば?
川*’ー’) <そうするやよ
ノ|c| ・e・) <いやしちゃダメでしょ
223 :
名無し募集中。。。:2012/06/13(水) 11:30:24.46 0
じゅんこがステーシー化したら大変なことだろうな
224 :
名無し募集中。。。:2012/06/13(水) 12:30:07.06 0
闇棲ですね
225 :
名無し募集中。。。:2012/06/13(水) 12:53:08.30 0
そういえばあったなあ
226 :
名無し募集中。。。:2012/06/13(水) 13:06:27.82 0
別の闇棲のじゅんこのつもりではなかったけどw
ステーシー化しなくても十分大変だしw
続き読みたいねえ
227 :
名無し募集中。。。:2012/06/13(水) 15:30:09.05 0
作者さんスレを覗いてるならお願い
228 :
名無し募集中。。。:2012/06/13(水) 15:45:06.63 0
勘が正しければ
>>215は闇棲作者さんじゃなかろうか
229 :
名無し募集中。。。:2012/06/13(水) 17:48:35.33 0
闇に食われるぞ・・・保全
230 :
名無し募集中。。。:2012/06/13(水) 19:56:07.29 0
空腹ナント
231 :
名無し募集中。。。:2012/06/13(水) 21:10:34.44 0
喰うゾ
232 :
名無し募集中。。。:2012/06/13(水) 22:26:13.14 0
落ちるゾ
233 :
名無し募集中。。。:2012/06/13(水) 23:03:17.34 0
明日早いのでもう闇に落ちます
あとよろ…し…く…
234 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 00:26:51.56 0
死…苦…
235 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 01:30:28.54 0
夜露死苦?
236 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 01:41:45.44 0
237 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 04:00:28.76 O
にあ です はぴ ねす
238 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 06:29:18.69 0
>>236 ハムエです
嘘ですどちらかというとロストです
闇棲いつまでも待ってます
239 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 08:16:14.69 0
オハヨ
240 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 10:23:33.74 0
ロストといえばLost childrenシリーズあたりの作者さんもまだいるのかな
XOXOシリーズとか
続きが気になるシリーズたくさんあるけどこれだけ現実が変わると難しいか…
241 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 12:33:07.42 0
昼よ昼よ昼昼よ
242 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 13:43:33.41 0
リゾナントブルー
243 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 15:34:57.74 0
午後のまどろみ〜
244 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 17:17:03.34 0
上げておいてやろう
245 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 18:33:42.67 0
作品上げれるまで待っててや。
246 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 18:59:16.92 0
マッテル!
247 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 20:50:36.28 0
インテル!
248 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 21:38:57.68 0
ブチュ!
「うーん!かわいいの!」
「ああ・・・完全にピンクの悪魔だ、こりゃあ。」
絵里は自分の家で酔っ払っているさゆみを見て、あきれ返っている。
酒に酔いピンクの悪魔と化したさゆみを自分の部屋のあるスペースに幽閉している。
そのスペースにはさゆみの隠し撮りも含まれる巷の美少女たち(リゾナンターも)の写真が張り巡らされている。
ピンクの悪魔はその写真にむかって口づけをし続けている。
「こんなんで明日からの定期検診にたちあえるのかな?」
翌日、結局のところさゆみの酔いはさめず、絵里はひとりでさゆみの両親の経営する病院へと定期健診に向かった。
すると病院の院長を務めているさゆみの父が誰か男の人と話しているのが見えた。
「ご援助のほうありがとうございました。わざわざ、ご当主のお孫さんまでお越しになられて・・・」
「お嬢様は道重さんの病院の仕事をぜひ見てみたいとおっしゃられていたので・・・」
と男はさゆみの父にひとりの少女を紹介していた。
だが、どうも少女の目はうつろに見えた。
「あら、絵里ちゃん。来たわね、さゆみはどうしたの?」
「家で酔っ払ってますよ。」
「もうあの子ったら・・・」
249 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 21:39:43.63 0
絵里に話しかけてきたのはこの病院の婦長をしているさゆみの母であった。
自分の娘の情けない行動にあきれる始末だ。
「おばさん、それより誰なんですか?あの人たち?」
「ああ、大財閥の譜久村家の人よ。今、お父さんと話しているのは秘書の方だけど、その隣にいるのが財閥の会長の孫娘の聖さんよ。」
「へぇー。」
「それじゃあ、健診の準備しましょうか。」
そして絵里は奥の部屋の方へと向かった。
絵里が聖という少女とすれ違った瞬間、聖はポケットからカードを取り出した。
聖はそれをじっと見つめていた。
「よし、あともう少しで終わりだよ。」
「ありがとう、先生。」
「いや、それにしても絵里ちゃんに迷惑かけてすまないね。さゆみの奴が・・・」
さゆみの父もさゆみのピンクの悪魔という悪行を聞いたらしい。
「いえいえ、大丈夫ですよ。昔は手に負えなかったですけど、今はなんとかなってますから。(鞘師ちゃんがさゆを押さえつけてくれるから昔みたいにキスされなくなったしね。)」
250 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 21:40:33.18 0
健診が終え、世間話をふたりでしていると・・・
「先生!大変です。」
「どうしたんだね?」
「患者さんの怪我が急に治っているんです。」
その頃、さきほどの少女・聖はふらふらの状態になりながら病院の屋上へと向かっていた。
見るからに聖の顔色は悪い、さきほどまではそんな様子はみじんも感じられなかった。
「これで私も少しは・・・人のためになれたのかな?」
「えっ、女の子に触れたら自然と怪我が治っていた?」
「そうなんじゃ、わしも不思議で仕方がなかったんじゃが・・・」
「もしかして、さゆ?」
絵里とさゆみの母はこの異常事態の原因を探るために怪我が治ったという患者から話を聞いていた。
「あの子ったらやたらに力を使うなってあれほど言っておいたのに!」
「いや、婦長さんのお嬢さんよりももっと若かったよ。たぶん、まだ高校生か中学生ぐらいじゃろう。」
「じゃあ、誰か別の人が・・・」
絵里が事態の謎に頭を悩ませていると・・・
251 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 21:41:22.32 0
「お嬢様!お嬢様!」
「あの人は確か、財閥の・・・何かあったんですか?」
「お嬢様がさきほどからお姿が見えないんです。もしもお嬢様の身になにかあったら・・・」
「じゃあ、絵里が探してみます。」
患者の怪我が治る謎も気になったが、人がいなくなったとなればそちらを優先すべきだろうと考え、絵里は病院の中を探すことにした。
しかし病院のどこにもいなかった。
「本当に病院内にいるのかな・・・あっ、そういえば屋上見てないや。」
絵里は病院の屋上を目指した。
するとふと脳裏にあの日の出来事を思い出していた。
「あの時は・・・愛ちゃんに迷惑かけたし、さゆやれいなにも救われたなぁ。」
それはまだ絵里が自分の傷の共有や病気に悩まされていたころの出来事であり、絵里は苦しんだ挙句、自殺の選択をした。
しかし、それを止めようと愛がやってきたが、絵里の力で傷つけたあげくにダークネスの襲撃があった。れいなによってダークネスは撃退されるが、自分は傷の共有でぼろぼろ。
駆け付けたさゆみによって救われたのだ。
「あれ?こんなところに血が・・・」
絵里は想い出を振り返っているとその場にあるはずのない血痕を見つけた。
そしてあることに気づいた。
(怪我は治癒能力だけで消えるわけじゃない・・・絵里のような傷の共有でも・・・もしそうだとしたら・・・・)
絵里は急いで屋上へ上がった。
自分の力だからこそわかる。あの力を多用しすぎるのは命に関わることだと・・・
252 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 21:42:04.27 0
「あ、人が倒れてる!もしかして!」
絵里は屋上に着くと、少女が屋上に倒れているのを見つけ、急いで駆け寄った。
「しっかりして!やっぱりさっきの子だ。」
絵里は顔を確認して、倒れている少女が聖であることを確認した。
そして彼女の体も調べた。
するとやはり絵里の予想通り、体中にさきほどまでなかった傷跡ができている。
「やっぱり絵里と同じ傷の共有を使ったんだ。早くなんとかしないと・・・でも、さゆを呼んでる時間ないよ。やっぱりここは・・・」
絵里は自ら傷の共有を使用した。
命にかかわる、この力を仲間たちからはなるべく使用しないようにきつく言われていたが、背に腹は代えられなかった。
今、目の前で消えようとしている命をみすみす失わせるわけにはいかないのだ。
「くっ・・・やっぱりきついかな・・・」
聖から移される傷の痛みが絵里にも容赦なく襲いかかってくる。
しかし聖の傷はあまりにも多く、それでもまだ聖の命のともしびは消えかかっている。
「やっぱり、絵里が犠牲になるしかないのかな・・・さゆに怒られるかな?」
絵里はさらに能力を発動しようと力をこめる。
ガシッ!
誰かが絵里の腕をつかんだ。
253 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 21:42:47.03 0
「絵里、無茶しないで!あとはさゆみがやるから。」
そこにはさゆみがいた。
すっかり昨日のお酒は抜けている様子だった。
さゆみは自らの治癒能力を発動した。
するとみるみると聖の傷が治っていく。
(よかった・・・さゆが来ればもう安心だよね。)
安心したおかげか絵里はその場で気を失ってしまった。
「う・・・うーん?ここは?」
「病室よ・・・絵里が無理して力を使うから気絶したの。」
「さゆ・・・」
絵里の寝ているベッドの横にはさゆみが座っていた。
これはここ数年おなじみの光景であったが、今のさゆみは確実に怒っている時の顔であった。
「ああするしかなかったんだよ。それよりもあの子は?」
「自分の目で見たら・・・そこで寝ているの。」
「えっ?」
絵里が隣のベッドを見ると聖が眠っている。
「傷も全部さゆみが絵里の分まで治しておいたから、大丈夫なの。」
「そう、それはよかった。でも、なんでこの子、絵里と同じ力を持っているんだろう。」
「それはたぶん、絵里の能力を写し取ったんだと思うの。」
「どういうこと?」
「実はこの子、ジュンジュンにもあったことあるみたい。」
254 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 21:43:20.86 0
さゆみがこの一件を仲間たちに知らせたときにジュンジュンにはある心当たりがあったのだ。
能力を複写できる少女のことを・・・
その時はそのまま行方をくらませており、その後はわからなかったが、まさか財閥の人間だとは思いもよらなかったらしい。
「でも、ジュンジュンの話だとその子自分が誰だかもよくわかってなかったらしいの。」
「そうなんだ・・・さっき見たとき絵里はこの子の笑顔がぎこちなく感じてたけど、何か悲しみを抱えているのかも。だから、自分の体を犠牲にしてまでみんなを癒そうとしたのかも。」
絵里は自分と同じ力を使い、苦しみを味わった少女の抱えている悲しみをなんとか晴らそうと考えを巡らし始めていた。
しかし、この出会いからリゾナンターの大きな運命の歯車が動き出そうとしていたことはまだ誰も知らない。
255 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 21:46:07.13 0
>>248-254 「リゾスレ4周年突破記念 傷と能力複写を持つ少女」
どうもリゾクラ作者です。
前回、さゆをカッコ良くしたくせに変態に戻してしまいましたが、一応最後はカッコよくしめました。
自分的には新メンバーはまだ謎の多い描写にしようと思い、フクちゃんの設定も謎な部分を残しました。
ちなみに運命の歯車は今シリーズでは動きませんのであしからず・・・
256 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 23:09:20.42 0
乙です
これまでの様々なエピソードが集約されそしてまた新たな物語が紡がれようとしていますね
手に取るように情景も見えてきて作者の端くれとして刺激を受けます
257 :
名無し募集中。。。:2012/06/14(木) 23:14:18.02 0
>>255 乙でございます
このメンツだとつい変態路線に見てしまうのですが
かっこいい先輩に見直せました
258 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 00:40:57.95 O
おつです!
259 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 05:39:35.86 0
おぱよん
260 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 05:40:02.10 0
目覚めた
261 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 06:31:31.37 0
まぶしい朝にウォウウォチャンスセットください
262 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 07:49:20.12 0
>>255 おつでした
意識的に他の作者の書いた作品と繋げることで世界に広がりを感じましたわ
263 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 10:28:00.58 0
264 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 12:46:37.48 0
おっとホゼ
265 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 14:28:02.19 i
「優樹」
初老の男性の声が響く。
優しさと、隠しきれない悲しみを帯びたその声は、
大きな犬を抱きしめた少女の肩を微かに揺らした。
気にしない素振りで少女は犬に集るハエを叩く。
「もう放してあげなさい」
少女の右目から滑り落ちた涙を、血色の悪い舌で舐めとる犬。
その毛並は悪く、栄養が行き届いていないのが明らかだった。
赤い目をした少女もそれは同じ。
だが、少女には犬よりも決定的に、生が溢れていた。
266 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 14:29:24.36 i
「どんな生き物でもこの世にいられる時間は決まってるんだ
神様でもない限り、その時間は引き伸ばしたりできないんだよ」
「でも…」
「優樹は随分神様を待たせてしまったよ、もういい加減にしないといけない」
「だって…」
「お前も…もう充分だろう…」
少女の父親がそっと頭を撫でると犬は悲しそうに鼻を鳴らして、
次々とこぼれる少女の涙を何度も拭った。
その動きが段々と鈍くなっていき、力と『チカラ』の抜けた少女の腕から体を外すと、
大好きだった柔らかい腿に顎を乗せて上目遣いで少女を見つめた。
少女も同じく、大粒の涙をこぼしながら大好きだった優しい犬の目を見つめ返した。
光を失っていく様子を見られたくなかったのか、犬はそっと目を閉じた。
それからすぐ、犬に二度目の死が訪れた。
腐敗の進んだ亡骸を抱きしめて泣きじゃくる少女を、父は静かに見つめていた。
267 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 14:30:25.04 i
『これは神様からのプレゼントだ、優樹が正しいと思うように使いなさい』
深夜。
建物という建物が流された土地に、成長した優樹は立っていた。
右手にはメモ帳を何冊か、左手には沢山の鉛筆を持って。
久しく使っていない『チカラ』を解き放つ。
幼い体からエメラルドグリーンの光が溢れ出す。
「ンッ、ンンッ」
声が漏れるのも抑えられないくらいに『チカラ』を振り絞った。
全部使い切るつもりで、全力で『チカラ』を使った。
268 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 14:31:33.79 i
少しして、土の中から手が出てきた。
降り注ぐ星の光を浴びて戸惑いながら、学生服を来た男が優樹をぼんやりと見つめた。
「こんばんわ」
「え、あ、あぁ…こんばんわ」
「えっと、この紙に、ご家族の方へのメッセージと、お名前と…あっ、ご住所を、お願いします」
「あぁ…えっ?」
現状を理解できていない彼を尻目に、優樹はコンクリートの崩れる音を聞いてそちらに走る。
疑問をぶつける相手もいなくなってしまい、彼は素直に鉛筆を握って、気付く。
小指が千切れていた。痛みがまるでない。鉛筆を握る感覚すらも。
「こんばんわ、この紙に、ご家族へのメッセージと、」
優樹の声がした方を見る。
ついさっきの彼と同じように扱われている男性は、頭が一部凹んでいた。
269 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 14:32:22.80 i
「もういいから、君まで俺らと一緒に死んじゃうよ」
「みなさーん!募る思いもあるでしょうが早く書いちゃってー!」
空が白くなってきた頃、優樹の呼吸は荒く、支えがないと今にも崩れ落ちそうだった。
寒いはずの季節に汗を垂れ流し、虚ろな目の下にクマを作って、それでも優樹は笑って余裕を見せた。
「まだ、だいじょぶ、です」
「無理すんなよまーちゃん、俺ぁもう充分だよ」
「でも、でも、まだ出れてない人もいるかも」
「そんな深くまで埋まっちゃいねーよ」
「ありがとね、まーちゃん」
「でも…っ」
「まーちゃんが倒れちゃダメだろ」
「手紙、お願いね、優樹ちゃん」
「まーちゃん…まーちゃんは…ぁ…」
270 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 14:33:42.45 i
「そろそろ還る時間だ」
「満足したよ」
「ありがとう」
「ありがとね」
「ありがと」
「お疲れさん」
「ありがとな」
「ありがとー」
「ありがとう、まーちゃん」
朝焼けに照らされて、無数の体に囲まれて、少女が眠る。
胸いっぱいに、死者からのメッセージを抱えて。
数年前と同じように、真っ赤な目元で。
271 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 14:36:36.40 i
まーちゃんだけ何もなさそうだったので通りすがりながら勝手に考えてしまいました
ネクロマンシーで心臓をポクポクさせる感じがいいかなと…ステーシーズもあったし…目立ってないらしいけど…
稚拙な文章でスレ汚しスマソ
272 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 15:30:00.13 0
おつです
少しダークだけど優しいという相反する要素の入った話ですね
273 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 16:47:06.63 0
やはりステーシーズは影響力が高そうだ。
274 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 17:21:39.42 0
ステーシーズの動画ちょこっと見たけどすごく創造力を掻き立てられた
ただステーシーズに絡めた話を書くのは難しそうだ
275 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 18:02:50.39 0
>>271 シンプルでいて読ませる話でした
最近はこういう短編が少ないのもあって目新しくてよかったです
ここでは初めて書かれたのでしょうか?
276 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 20:10:51.59 0
飯ナント
277 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 21:31:33.95 O
あげとくか
278 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 22:51:50.06 0
Friday Night
279 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 23:13:15.60 0
生きた証は思い出と共に
過ぎし刻は生きし友の中に
死んでも朽ちぬは永遠の絆
・・・ホゼナント to A
>>275 たまに来てはROMする程度でした
いきなり色々書いておいて今更ですがローカルルール等無視していたらすみません
それからもし構想を練っていた方がいらっしゃいましたら
>>265-270は無視していただいて構いません
281 :
名無し募集中。。。:2012/06/15(金) 23:55:14.15 0
いつでも新たな作者さん募集中。。。
様々な視点からのお話も募集中。。。
282 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 01:19:54.14 0
283 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 01:23:09.21 0
>>280 いろんな能力設定・人物設定が入り乱れるスレだから大丈夫
他の人の設定使うも使わないも自由だから
284 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 03:15:44.99 i
>>271ですありがとうございます
またなんかしら思いついたら書きに来ます
次は他のメンバーとも絡ませてみたいですれいなとかれいなとかれいなとか
いつになるかはわかりませんがw
285 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 06:36:24.97 0
おぱよん
286 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 08:13:34.35 0
目が覚めた
287 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 09:59:07.71 0
飛び起きた
288 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 09:59:55.08 0
小雨の中のホ
289 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 11:51:27.71 0
二度寝のホ
290 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 12:43:51.06 0
規制中のホ
291 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 14:07:19.60 0
292 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 14:07:38.29 0
「キャハハハハ!やれ!全部破壊し尽くせ!キャハハハハハハ!!」
ここではないどこかの世界。
その世界は危機に瀕していた。
「闇の帝国・ダークネス」を名乗る組織が、世界を闇に呑みこまんと突如動き出したのであった。
今日も、一つの街がダークネスの一個師団によって襲撃されていた。
「キャハハハハ!ダークネスに、そしてこのヤグーチ様に逆らうやつらは皆殺しだ!」
師団を率いているのは、やたら背の小っちゃい女将軍・ヤグーチ。
「キャハハハ!ほら、そんなトロトロ逃げてたら殺されちゃうよ?いいの?ほら、撃っちゃうよ?」
「た、助け……うあぁーー!!!」
「キャハハハ!助けるかっつーの!ウケるwww」
残虐非道の限りを尽くす矢口に、人々は恐怖しながら逃げ惑っていた。
「おっ?そこの彼氏イケメンじゃん?隣の彼女殺してオイラの下僕になるんだったら助けてあげるけど?」
「ふざけるな!誰がそんなこと!」
「あっそ。じゃあ死んじゃえ。キャハハハハ!」
「やめろ!やめてくれ!こいつだけは助けてやってくれ!」
「待て!!」
「!?」
必死で彼女をかばう彼氏をヤグーチが冷酷に撃ち殺そうとした刹那、鋭い声がそれを遮った。
「オイラの邪魔するなんてバカはどこのどいつだ!」
振り返った先にあったのは、ヤグーチに怒りのこもった瞳を向けて立つ、女性たちの姿であった。
293 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 14:07:59.82 0
「お前ら――」
何かを言いかけたヤグーチの言葉をガン無視して、女性たちは突然一人ひとりポーズを決めつつ名乗りを上げた。
「煌めく光の共鳴!リゾナントイエロー!」
「吹き荒ぶ風の共鳴!リゾナントオレンジ!」
「轟く雷の共鳴!リゾナントレッド!」
「滾る水の共鳴!リゾナントパープル!」
「燃え盛る炎の共鳴!リゾナントグリーン!」
「5人揃って…」
「「「「「共鳴戦隊・リゾナンター!!!!!」」」」」
効果音が聞こえそうなくらいにビシッとポーズを決めた5人は、表情もこれ以上ないくらいドヤ顔で決めていた。
「つーか待てよ!そんな『みんなお馴染み!』みたいな感じで言われても誰も知らねーよ!っていうか何で5人だよ!9人揃ってリゾナンターじゃねーのかよ!」
「バカはそっちの方やよ!」
「いや別にバカとは言ってねーよ」
「戦隊モノは5人って決まってるんですよ?」
「そりゃそうかもしれないけどさ。じゃあまあそれは置くとしても色おかしいだろ!何だよその組み合わせ!オレンジとかいねーだろ普通!」
「意外と詳しいんっすねー」
「そんな詳しくなくても知ってるだろそれくらい!ってかそれも置くとしてもさ、合ってないだろ色が!雷が赤とか水が紫とか覚えにくすぎるだろ!」
「はぁ?あんた知らんの?『パープルウインド』いう曲」
「そういやそんな曲もあったけどだからって関係……っていうかウインドだろ!風だろ!水関係ねーじゃねーか!何から何まで関係ねーじゃねーか!」
「何やゴチャゴチャうるさいのー!ほやったらどうしたら気が済むんや!」
「逆ギレっすか!?気が済むとかじゃなくて色々ツッコミどころ多すぎっつってんだよ!」
「もーうるさいなあ。じゃああれいっときますか。戦隊モノには付き物の追加戦士ってやつ」
「お、いいねいいねー。いっとこー!」
「いっときまショウ!」
「そういうことじゃねーよ!別にそういうこと言ってんじゃ……」
294 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 14:08:21.33 0
ヤグーチの言葉を遮るように躍り出る一つの影。
「ガウガウガウッガウガウッ!ガウガウガガウガッ!(猛るパンダの共鳴!リゾナントインディゴ!:通訳 by パープル)」
「パンダの共鳴ってなんだよ意味わかんねーよ!そして色!マイナー!パンダ関係ない!」
「お前いい加減にしろよー。なんだかんだうっせーよ」
「こっちの台詞だっつーの!つーか6人とか気持ち悪いんだってなんか!そこまで揃ったならあと3人も呼んで来いよ!」
「あと3人?そんなのいましたっけ?」
「田中と道重!それから新垣だろうよ!何だよその言いぐさ!共鳴の絆とかそういうのどこ行ったんだよ!」
「田中と道重?ああ、あいつらか。あんないい歳して若い子らとチャラチャラヘラヘラやってるやつらと一緒にしないでくれる?」
「ええええええええ!!何それ!何その言い方!可哀想じゃん!お前らがいなくなった後頑張ってくれてるんじゃん!」
「あと新垣とか言うとったっけ?あいつ仲間とちゃうやん。スパイやん」
「許してあげて!もう許してあげて!そんな設定もう生きてないじゃん!」
「移動で席隣になったとき、こっちは気ぃ遣て色々喋りかけとったのに『眠いのにウザい』みたいな態度とりくさってからに。二度と横座ってやらへんかったわ」
「やめて!わかったもういいから!オイラが悪かったから!」
「ハハハ、ダークネスの人なのにいい人デスネ!」
「うっせーよ!そうだよ!せっかく残虐非道な悪の組織的な感じでやってたのにおかしなことになっちまったじゃねーか!」
「グルルッ!バウガウ!(悪いヤツか!その割に小っちゃいなオマエ!:通訳 by パープル)」
「うるせー!関係………お前らのペースに乗るからおかしくなるんだよな。こっからはオイラのペースでやらせてもら―――」
「みんな!必殺の武器で一気に決めるやよ!」
「「「「おう!」」」」「ガウ!」
「だからお前らで進めんなっつてんだろ!おい!」
ツッコみも虚しく、再びビシッとポーズ&ドヤ顔祭りが開催される。
「フォトンブレイド!」
「ウィンドブレード!」
「サンダーブレード!」
「ウォーターブレード!」
「ファイアーブレイド!」
「ガウガウグルガァ!(笹の葉ブレード!:通訳 by パープル)」
「待て!一個おかしいだろ!っていうか逆になんかこう、すっと指先切っちゃった感じのリアルな痛み連想してやな感じなんだけど!」
295 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 14:08:43.17 0
「ダークネス!お前らの悪事もここまでやよ!」
「無視かよ!わかったよじゃあいいよ!そういうことならこっちにも考えがあるかんな!喰らえッッ!」
突き出されたヤグーチの両手から、波動のようなものが放たれた。
「ん?あれ〜?」
「あれ?おかしいなー」
「消えてしまいましたデスね、ハハ」
それぞれの「剣」が消えたことに、それぞれの反応が示される。
「どうだ見たか!オイラの“能力阻害”の威力!」
「全員分掻き消すとか卑怯やろ!もうちょいパワーバランス考えろや!何でもありみたいになって冷めんねんそういうことされると!」
「冷めるとかそういう問題かよ!っていうかこんな話にバランスもくそもねーだろ!付き合ってらんねーんだよ!だいたい―――」
「マダダ…!マダオワッテナイ!」
ヤグーチがキレ返すのを遮り、力強い声が響いた。
「うおう!びっくりした!お前何で裸……そうか、オイラの能力でパンダ化が解けたのか」
「パンダハ解ケテモ、ジュンジュンノササノハブレードハ……マダ生キテル!!」
「そや!ジュンジュンの剣は能力によるものやない!笹や!そやからあいつの卑怯くさい技が効かへんのや!」
「卑怯くさいとか言うな!っていうか要するに普通に笹じゃねーかそれ!どうやって戦うんだよ!」
「イクゾ!クラエ!」
全裸の肢体と笹の葉が踊る。
「うおい!マッパで笹振り回すとかアブない人っぽ――へぶッッ!」
「見タカ!ササノハブレードノチカラ!」
「ってオイ!今の笹持ってる手で普通にぶん殴っただけだろ!?笹関係な――ふぉぶッッ!!」
「コレハ、オ前ニ剣ヲ消サレタ愛チャンノ分!そして亀井サンノ分!クッスミサンノ分!光井サンノ分!リンリンノ分!」
「はぶッ!ほぶッ!ほげッ!やめ…ぐげッ!……待て…ちょっと待て!だからめっちゃ拳―――」
296 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 14:09:12.25 0
「コレハオ前ニハブラレタ道重サント田中サンノ分!」
「えぇっ!?ちょ…はがッ!ぱぎょッ!……ちが、ハブってんのはそっちだろ!」
「以上ダ」
「うぉい新垣は!?新垣の分は!?可哀想すぎるだろ!あいつも仲間に入れてやってくれよ!頼むよ!見てらんねーよ!ほら!もう一発ぶち込んでいいからさ!」
「腐れスパイにかける情けなんてあらへんわボケ:通訳 by パープル」
「通訳ってめっちゃお前の発言だろ!ここまでの殺伐オイラの代でも見たことないって!やりすぎだって!」
「じゃ、代わりに小春が新垣さんの分やったげるー。まゆげ〜〜〜ビ〜〜〜〜〜ム!……ぷっ」
「あっひゃー!!!」
「ウケるー超ウケるんだけど。小春さいこー」
「お前ら!やめろ!もうやめろって!夢壊すなよ!愛ガキとガキカメを返せよ!ガキこはを返せよ!みんなに返せよ……返せよ……」
「アー、眉毛ビーム!やってマシタねそんなこと、ハハ」
「真剣ニヤッテタヤツノ気ガシレナイナ!」
「お前らひでーよ……頼むよオイラが悪かったよ……マジで泣きそうだよ……立ち直れねーよ……」
かくして、ダークネスの野望は今日も食い止められたのであった。
共鳴という名の絆により、街の平和は守られたのであった。
代わりに何かが失われた気がすることには触らない約束になっているのであった。
明日も力を合わせて戦えリゾナンター!
世界の未来を希望で満たせリゾナンター!
共鳴戦隊リゾナンターの勇姿は今でもみんなの心の中に!
いつまでもみんなの心の中に!
297 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 14:09:42.91 0
>>291-296 『共鳴戦隊リゾナンター 参上』
共鳴する9人が今でもいつまでも大好きです
本当です
298 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 14:40:15.42 0
乙です
殺伐www
大好きって言えば言うほど余計に疑わしく(ry
299 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 15:28:34.69 0
ガキさんも入れてあげてw
ともかく面白かった
300 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 16:44:57.80 0
帰宅ナント
301 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 17:24:35.00 0
乙です
矢口さんは私たちの気持ちを代弁してくれてるのね!(豆涙
302 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 17:45:02.87 0
303 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 19:03:34.68 O
斬新ww
304 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 20:42:28.64 0
クソワロタ
305 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 22:06:04.83 0
>>291 ・構想2分 執筆30分
すごい才能やな!
306 :
名無し募集中。。。:2012/06/16(土) 23:19:36.25 0
ほぜなんと
307 :
名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 00:02:09.69 0
リゾモーQ&A 『いざという時に背中を任せるなら誰?』
从*・ 。.・)『愛ちゃんとかれいななら心強いけど、やっぱりエリ♪さゆえり最強(*≧▽≦)人(*・▽・*)』
从 ´ ヮ` )『誰でもええっちゃけど愛ちゃんなら敵なしっちゃろ?』
ノノ刀e _l‘)『スポンサー様ですわ』
|||9|‘_ゝ‘)『 新垣さんはえりぽんが命掛けで守ります』
ノリ*´ー´リ『・・・高橋さんなら任せてみたい・・・私が守るなら香音ちゃん』
从*´◇`)『あゆみちゃん!壁に背を向けるくらい安心するんだろうね』
ノハ*゚ ゥ ゚)『どなたでも私は安心して任せられます。』
川c ’∀´)『どぅー(笑)』
ハo´ 。`ル『石田亜裕美(笑)』
川* ^_〉^)『 背中はまぁーちゃんのものですよ。取り外しできるものじゃないですよ。』
ごめん、10期はネタが思い浮かばなかったんだ
308 :
名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 00:04:04.27 0
漢字間違えた。亜裕美⇒亜佑美だわ
309 :
名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 00:07:20.52 0
www
310 :
名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 00:17:22.53 0
間違えたら、リオンで攻撃されますよ。
自分は今、長編構想中でできれば新旧メンバー全員だしたい野望を持っているが、
その中で間違えないようにせねば・・・
311 :
名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 00:23:48.42 0
少し前に書いた話中で結構間違えてしまっているのは秘密
312 :
名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 00:26:33.18 0
小ネタまで誤字ワロタw
313 :
名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 02:47:40.60 O
おやすみなんと
314 :
名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 06:57:45.88 0
おはさ
315 :
名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 09:38:53.68 0
おひさ
316 :
名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 11:33:02.02 0
おふさ
317 :
名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 12:31:02.40 0
>>308 ノリ*´ー´リ<何度も何度も間違いがないように見直してこれは大丈夫だと確信して投下した
・・・でもそうはならなかった
318 :
名無し代理中。。。:2012/06/17(日) 12:39:42.87 0
ここは掃き溜めの中。
此処はあまりきれいじゃないよ。
つながっていたかっただけで。
死んでしまったあとの花のように。
醜い私は、影にくるまって眠るの。
君は星のように、はかない声で鳴いている。
いつだって昨日の向こう側。
私は死ぬように君を愛す。
君が死んでから私を愛すように。
生きる事が永遠を壊したけれど。
醜い光が私を射つ。
それでも願ってた。
願ってただけだった。
いつか彼女は、世界にココロを鬱されていた。
「泣けなくなったのはいつかなんて覚えてないよ。
神経の異常なのか、障害の一種なのか、考えたって
私にはそんな知識は必要なかったの、必要のない場所に居たから」
受け入れることが生きる事。
全ては日常の中に消えて行く。
誰も彼も、彼女も例外なく、逃れることなく、逃れれる者が居ようもなく。
「だけどね、それで少し良かったって思うことはあるよ。
泣けないなら、笑えばいい。
だってそうすれば、いろんなことが良い方向に進むような気がしない?
後ろ向きに考えるよりはさ、生きてるならきっと、その方がいいよ。
死んだあとのことなんて、人間は考えないんだから」
彼女は鼻歌にメロディを口ずさむ。
流行りではないが、それでもなんとなく気に入っていて、無意識の
うちに口に出してしまうくらいの歌。
心地よかった。意味はない、ただ、心地よかっただけで。
日常の中で、誰もが他人に無関心になる。
"此処"にいる殆どの人間もそうで、そいつの存在自体がまるで最初
から無かったかのように。
しかし彼女はそんなことを傍から理解していて、そしてむしろ、状況を
楽しんでいる節もある。
実際、楽しもうとしていた。
「だから変にディスられてるのも知ってるよ。アハハ。
まあそうだよね、皆やっぱり、心のどこかでは悲しんでるのに、私だけ
気持ち悪いくらいニコニコして立ってるんだから。
でもさ、逆に考えてもいいじゃない?悲しむだけ悲しんでさ、それで
見ぬふりするより、背負った方がいいでしょ?」
誰もが全てを見えているというワケじゃない。
全て見えると思っているだけで、全てを見た気になっているだけで、実際のところ
目に見えるモノなど小指の先ほどの事柄しかない。
しかもそれは決まって、他人にはどうだっていいことなんだ。
そんな事を思うと、彼女は愉快になって軽く吹き出しそうになったが、口元を
ゆるめるだけに留めてくれた。
感情なんて、余計なものだと思う。
「私さ、ずっと笑ってたいんだよね。そんな場合じゃないっていうのは
判ってるんだけどさ。無理に笑ってないのだけは覚えててほしいな。
きっとさ、神様のきまぐれなんだよ。私にそうやって背負えるように
涙を与えなかっただけ。涙だけなら、安いものじゃない?」
彼女はテーブルの上のコーヒーカップに手を伸ばす。
湯気を立てるそれをのぞき込むと、コーヒーの香りとミルクの匂いが
同時に漂ってくる。
コーヒーは正直苦手だけれど、ミルクを入れればそれは別の代物へと変化する。
口が緩むことに躊躇すると、彼女が代わりに笑った。
日常にリアルを求めること自体がすでに不自然だった。
日常こそがすでに非日常で、感覚の麻痺した世界でリアルなど存在しない。
現実感などずっと昔に失くしてしまっているのだから。
最初からそんなモノは存在していないかのように。
最初からセカイは、全てが失せている。
それなのに。
「じゃあさ、もしもどちらかに何かがあった時は、どちらかの気持ちを
互いに渡そう。欠けたものを渡し合おう。
いらないかもだけど、迷惑かもだけど。こんな歪んだものなんてきっと
好きにはなってくれないかもだし、言ってる時点であれか、アハハ。
でもまあ、私は嬉しいかな、―― が泣いてる姿、けっこー好きなんだよね」
泣けない彼女と、笑えない自分。
神経の異常なのか、障害の一種なのかは分からない。
そんな知識の必要がない場所に、自分達は居るのだから。
笑えない代わりに、涙がなんの前触れも無く、流れることがあった。
恐怖も絶望も感じてないはずなのに、それでも人間は本能的に
感情を浮かべるようになっている。
それが自分にとってどんなに目ざとく思っていても。
気がつけば"組織"にいて、気がつけばヒトゴロシだった自分達。
ときには強引に殺し、ときには事故に見せかけて殺し、ときには消し去るように殺す。
研究員たちは"チカラ"のことに関して両目を輝かせ、ヒトゴロシを
する自分や彼女に対しても恐怖と、好奇と、絶望と、希望と。
様々な色と、音と、歌と、血と、人と、死と。
だけど誰が悪いのかなんて、判らなかった。
自分達が悪いのかもしれない、研究員が悪いのかもしれない。
何が悪いのかが分からないけど、どうして悪いのかが分からないけど。
彼女が死んだ時に、自分は、全てを背負えただろうか?
パンッ、パパパパパッ、パパパパパパッ。
複数の乾いたような、連続した音。
銃声。
分解から組み立て、その種類も能力も把握している。
音を聞けばそれが何なのか判った。
気付けば叫んで、常人には有り得ないような脚力で一瞬にして、彼女を
抱き上げ、その場から逃げ出す。
背後から銃声がして、数発が身体をかすめる。
途端に傷口から血が噴き出してきたが、走るのをやめはしない。
抱きしめる身体から少しずつ、確実に力が抜けていた。
それでもまだ暖かい。心臓が、鳴っている。
早かった鼓動が、少しずつ、ゆっくりに。
グッと、腕を掴まれる。
最後の力を振り絞るように、腕を、手を、自分の首に押しやった。
それはまるで、儀式のように行われた通過儀礼。
「私さ、親友を殺したの。もう助からないって思ったから。
私が肌に触れると、そこが砂になって、粒になって、灰になるの。
身も心も血も、全てが燐粉になっていった。まるでヒカリみたいに」
"作戦"が失敗した場合、死んでも"組織"につながるような証拠は残してはならない。
外部に少しでも情報が漏れるのを防ぐために。
自分達の死体ひとつを残すことさえ許されない。
そうやって生まれたときから教育を受けて来て、それが全てだった。
そして"作戦"は、失敗した。
「私が殺してきた人達も、あんな風にヒカリになって、飛んで行った。
蝶みたいに、私もさ、あんな風になれるかな?醜くてもいいから」
最後の言葉なんてものもなく、最後に受け止めるココロもなく。
"作戦"が失敗したという事実だけが残って、カラッポの世界だけが残って。
砂になって、粒になって、灰になる彼女を見上げた。
涙が溢れるのに、恐怖も、絶望もない、ただ、口角を強引に開けて、笑った。
歪な笑顔で笑って、笑って、笑って、笑って、笑って、ごめんと叫ぶ。
「きっとこれも、神様のきまぐれなんだよ。
このセカイも、あのセカイも、この"チカラ"も、私達もね。
もしもどちらかが欠けたなら、探しに行けばいいの。このセカイも私で、―― も、私なんだから」
―― 私は、青空の下に居た。
小さなベンチに一人佇んで、何をすることもなく、眠ることも無く。
このまま地面に溶かされてもいいくらいに思えた。
「どうしたの?まるで死人みたいな顔してさ」
なんて挨拶だと、思った。表情に浮かぶそれに、そっと言葉を乗せる。
「親友が、死んだの」
「そっか、私の親友も、さっき死んじゃったんだ」
「…そう」
「でもね、泣けないんだ、なんでだろうね。悲しいときにも涙は
でるはずなのに、アハハ、ほら、変でしょ?うん、まあこんな事
言ってもしょうがないんだけどね、アハハ。ねえ、そこ座っていい?」
陽の光に、目を細める。
アスファルトから飛び出したその花に名前を付けて。
そうしてまた日常が始まって。ただ願ってたはずのココロが微かに、笑ってた ―― 。
324 :
名無し代理中。。。:2012/06/17(日) 12:46:13.43 0
>>318-323 「Whim of God」
以上です。だいぶ舞台の影響を受けましたってことでツヅカナイヨ。
名前を伏せたのは神様のきまぐれです、ウソです想像に
お任せという事でどうか。
------------------------------------------------ここまで
325 :
名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 13:57:49.63 0
おちゅちゅ
どこか凄惨でどこか美しくて儚い
326 :
名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 15:39:46.49 0
切ない感じですね
327 :
名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 17:24:24.04 0
明るい話も待ってるぜ。
328 :
名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 18:21:42.51 0
ステーシーズが新たな敵の名前にならないかと考えてしまう作者・・・ほぜ
329 :
名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 20:08:29.30 0
保全代わりに投下したいのに間に合わないぜぇ・・・ほぜん
330 :
名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 21:50:26.02 0
まったり
331 :
名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 22:45:46.89 0
長編書くの大変・・・休みをくれ・・・
332 :
名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 23:53:29.63 0
寝るのじゃ
333 :
名無し募集中。。。:2012/06/18(月) 00:04:59.99 0
寝る前に今日買ってきたステーシーズの原作を読むのじゃ
334 :
名無し募集中。。。:2012/06/18(月) 00:14:44.00 0
そんなあなたの夢に彼女たちがw
(
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/605.htmlの続き)
「ぶはっ、ハゥぅ!貴様何をする!」
魔法で造り出されたチョコレートの噴水から救出された蒼の剣士、ダーイシがチョコレートまみれで
イイクボさんに掴み掛かる
「落ち着いてダーイシ、私達の目的は剣術ナンバーワン大会じゃないはずよ」
「貴様に何がわかる!剣士には絶対に負けられない戦いというものが・・・お前ら何がおかしい!」
「ブフォ!!」
「プッ、ウケるぜw」
パラパラパラっ・・・
ダーイシが喋る度に低温で固まったチョコレートがポロポロと全身から落ちる
その様を見てお頭とマサキちゃんがいちいち笑うのだ
これはマズい、そのうちこの人キレる・・・ここはフォローしないとマズいんだろうね
「さっきは有難うございます、ウチのサヤシが失礼をして済みません。取りあえず服を着替えては・・・」
「あ、あぁ・・・」
服の話題を振ったら蒼の剣士、ダーイシは俯いて黙りこんでしまった。
えっ?私何か悪いこと言った?
「いや、ダーイシはいつも一張羅だから・・・」
バツが悪そうにイイクボさんが口を開いた。
そうか・・・それはスマンかった
「ねー、いっちょうらってなにー?」
マサキちゃんがイイクボさんに無邪気に尋ねる
「あ?つまり貧乏ってことだろ」
言ってはいけない一言をさらっとお頭が言い放った
暫し、シーン・・・と場が静まりかえる
こ、これは何とかしないとマズいんだろうね!
「ま、マサキちゃん!ジャンプしてダーイシさんに服を取ってきてあげて!」
「いや、私はいい、この服は古い友から貰った大事な・・・」
「了解っ、じゃあ行こうかだーいし!・・・ぴょこぴょこぉ〜、ジャーンプ!」
「ちょ、な、何をするやめ・・・うわぁあああああああ!」
ちょ!確かにいきなりかい!
マサキちゃんとダーイシの周囲の空間が歪みジャンプで何処かへと飛び去ってしまった
一体どこ行ったのさ!?ちゃんと帰ってくるか超心配なんですけど
「大丈夫だ。マサキのジャンプは跳ぶのが3人ぐらいまでなら狙った場所へ跳べる」
「そ、そう・・・えっ?じゃあ私達が跳んだジャンプは?」
「・・・まぁそういうことだ」
監獄島から脱出したときのジャンプはいちかばちかのランダムジャンプだったらしい
う〜ん、こうしてちゃんと命がある分アタリだったのかハズレだったのか・・・
じー・・・何か嫌ぁ〜な湿った視線を感じる。私はその視線の方向を見る
サヤシ?・・・あ、もしかしてさっきの
「かのんちゃんのバカ・・・」
そう言ってサヤシは拗ねた顔でぷいっと横を向いてしまった。これはまためんどくさいことになったんだろうね。
とうっ、シュタッ!私はいついかなる時も油断していない。
急に妙な能力で何処かに飛ばされたとしても華麗に着地す・・・
「どーん!」
「うぉっ!」
背後からいきなりの衝撃・・・さっきの能力者かっ!
「貴様っ!どういうつもりだ!」
「うへへへ」
「うへへじゃない!此処は何処だ!?」
妙な場所だ、恐らく何処かの山の頂上・・・切り立った岩壁が四方を囲む
辺りを見回しても道らしきものはない
赤いゲートのようなものがある、ゲートには◇を連結させた紙の飾り
何か宗教的なモチーフのゲートのようだ
「うへへ、ここはまぁちゃんのウチだよ」
まぁちゃん?・・・コイツの家ということか
「いいから早く元の場所に戻・・・」
!?
急に周囲が暗くなった、私を覆う巨大な影・・・背後の気配・・・二人か
地面に映るシルエット・・・鳥?いや、人間?どちらにせよ異形の姿だ
私は銀牙と月光に手を掛け、バッ!と振り返った
一人は男、赤い鼻の伸びた面を被り、もう一人は女、黒い鳥、カラス?のモチーフの面を被り
背中に各々、白と黒の大きな翼が生えている。
「あれぇ、まぁちゃんお友達?なんまら可愛い子だべさ」
「ブフォ!!でも茶色まみれじゃのう」
異形の者達は極めて普通に人語を話し始めた。少々訛りは酷いが。
どうやら敵意は無いらしい
「彼らは?」
「まぁちゃんのちちとははだよ〜」
ちち・・・はは・・・父・・・母・・・コイツの両親か
「ブフォフォフォ、風呂にでも入ってゆっくりしていくがよい」
「安心するべ、そのう○ちまみれのお洋服は洗っておくべさ」
ちっ、違う!・・・チガウ・・・違う違う違う違う違う違う違う違う!!!
これは断じて、断じてその・・・アレじゃあない!!!
「ちが・・・」
「いいから早く脱ぐぅ!ぴょこぴょこ〜、ジャーンプ!」
ぶーん、という音と共に私の周囲の空間が歪む・・・チッ!また跳躍か!
私は跳ばされても着地出来るよう、再び身構える
ぴょいーん!と跳躍の音、今度は何処に跳ばす気だ!
・・・ん?さっきと同じ風景
跳んでいない?一体今何を・・・妙に体が軽い気が・・・
「ブフォ!!見事につるぺたじゃのぅ!」
「ちょっとアンタぁ!何見てるべさ!」
バキッ!赤い面の男の顎に炸裂するカラス面の女の拳
その後、数秒して私は二人の言葉の意味をようやく理解しその場にしゃがみ込んだ。
「きゃあああああああああああああああああああああああ!」
嘘だ嘘だ嘘だ!
見ず知らずの男に裸に見られた・・・そんなの絶対嘘だ!
「じゃあお風呂行くよ、ぴょこぴょこ〜、ジャーンプ!」
跳躍!?この体勢で?ふざけ・・・
ドボーン!
あ、あ・・・あっちい!!!
突然何処かの水中に投げ出された私はその熱さにたまらなく跳び上がった
周囲は一面雪を被った岩肌、湯気が立ち込めている・・・温泉?
熱さに身体が慣れ、冷静に状況を判断できるようになったところで
ぴょい〜んと音がなり目の前上空の空間が歪んだ
ドボーン!
あっちい!誰かが落ちてきて飛び散る湯が顔にかかる
目に入って視界がぼやけた・・・跳んできたのはアイツだろう
「うへへへ、お待たせ」
別に待ってない!うっすらとシルエットが見えてくる・・・マサキとかいう能力者
許さんぞ・・・度重なる恥辱の連続、絶対に許さん!
「おいっ!きさ・・・」
貴様っ!と言いかけたところで目に入った湯と湯気でぼやけていた視界がハッキリした
・・・嘘だ。そんなの嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!
「ん〜、どうしたの〜?」
ガキのくせに私より・・・大きい。そんなの絶対嘘だっ!!!
「これしか無いのかっ!」
温泉から上がった後、いきなり私の服を転送した能力者マサキが代わりに持ってきた服を見て私は愕然とした
これを・・・私が着るのか?
「えー、かわいいじゃんいちごー」
全面に苺のプリントの服・・・一体何処で手に入れたんだコレは
「着てみなよ〜、絶対似合うからぁ」
「いやいやいや、似合うとか似合わないとかじゃなくてだな!」
「えー、わがままだなぁもう。じゃあコレはー?」
熊とロバのプリントのTシャツ。これならまだ・・・
「なんまら可愛いシャツっしょ〜?超お買い得だったんだべ。なんと990ダークネス!」
”はは”が出てきて自慢げに解説してくれた
安い・・・だがなかなか味があるシャツだ。熊族とロバ族が平和に共存している心暖まる絵柄がポイント高い
服は値段じゃない、素材じゃない。作り手の想い、着る者の想いこそが重要なのだ
気に入った!私はシャツを手に取り袖を通す
「まぁ、ピッタリ!よかったべさぁ、まぁちゃんの胸がキツくなって着れな・・・」
あああっ!言うな!それ以上は言うな!あーあーあー聞こえない!聞こえないぞ!
「いま父ちゃんが芭蕉扇で青い服乾かしてるから。あ、気に入ったならその服はあげるべさ」
芭蕉扇?なんだそれは?疑問に思った瞬間、ビュウウウウウウウウウウウウウウウ!と物凄い風の音が近くから聞こえ
音のした方を見ると青い物体がひらひら宙を舞って谷底へ落ちて行っている・・・って、ちょ!あれ私の服じゃん!
「おぉ、スマンのぅ。少し力が入り過ぎてしもうた。」
ノースランドのおよそ真ん中らへんに聳え立つ巨大な氷の城、ノーザンクロス
その天守閣の広間の玉座に座り、水晶玉を冷たい目で見つめる人影があった。
「ヘケート様、サンダーウルフが討ち取られました」
「あぁ、今見た」
登城してきた配下の女性士官の報告にだるそうな声で応える喪服のような黒いドレスの女
氷の魔女と呼ばれ1000年近くもの永い間ノースランドの住人に恐れられてきたヘケート、その人である。
「如何されますか?」
「あ?アイツはまだ死んでねぇよ。ねぇショージ?」
魔女は微動だにせず隣に立つダビデ像なような筋肉の屈強な男に語りかけた
すると、微動だにしていなかった男の胸の筋肉がプルプル、プルプルと震え出す
「ミ、ミ・・・」
「その名前で呼ぶんじゃねぇよ!黙っとけこのごくつぶしが!」
何事か言葉を発しようとした男を一喝する魔女
シュン、と悲しそうな顔をする男・・・そんなやり取りを無視して女性士官が言葉を続ける
「死んでいないとはどういうことでしょうか?」
「アイツにはアタシの魔力を与えてある。つまり”永遠”の力もほんの少しだけアイツの中に入ってるのさ、ねぇショージ?」
「ミ、ミ、ミk・・・」
「だからその名前で呼ぶんじゃねぇよ!またかき氷100杯一気食いさせるぞオルァ!」
「か、かき氷100杯・・・」
女性士官が眉間を指でつまむ。想像するだけで頭がキーンとしたのだろう。
「アタシに逆らう奴ら、少しは楽しませてくれそうじゃないか。退屈なんだよ、永遠っていうのもさ」
魔女は一瞬だけ遠い目をした後、口元をほんの少しだけ動かして冷たい微笑を浮かべた
「かのんちゃんのバカ・・・」
そう言い放ったサヤシの目は少し潤んでいるように見えた
さっきは少し言い過ぎたかもしれない
「サヤ・・・」
声を掛けようとした瞬間、私の耳はその”音”を捉えた
ゴロゴロゴロゴロ・・・上!?
私は無我夢中でサヤシに駆け寄る
「サヤシ、危ないっ!!!」
もうタックルのような形でサヤシの身体を抱いてその場から押し出す
「ちょちょちょ!かのんちゃ・・・」
ビシャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
背後で鳴り響く雷鳴の音・・・間に合った!
振り向くと落雷がさっきまでサヤシの居た場所の雪を一瞬で溶かし水蒸気を発生させていた
ウォオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
同時に、獣の声・・・この声は
「どこだぁ!蒼の剣士!」
水蒸気の靄の中から現れたシルエット、それはダーイシが倒したはずの狼獣人達のボス!
胸にはダーイシが双剣で付けた「×」の字型の傷・・・でもその傷が塞がりかけている
死んだはずなのに一体どういうことなの!?
「ミ・・・いや、ヘケート様!感謝するぜぇ!暗黒魔力マンセーーーーーーーーーーーーーー!」
狼獣人がマンセー!と叫ぶと同時に「×」の字の傷跡から何かドス黒い力が溢れ出し、完全に傷を塞いだ
「気をつけて!その獣人から禍々しい魔力を感じます!」
イイクボさんが高い声で叫んだ・・・魔力?アイツにも魔法の力があるってこと?
「蒼の剣士はどこだぁ!人が名乗ってる途中に斬りやがってあの小娘!」
狼獣人は激しくご立腹のようだ・・・そりゃ一度殺されてるから当然なんだろうね
「いいだろうそこの狼、私が代わりに相手になる。名を名乗れ!」
そう言いながらぬっ、と私の身体を隠すようにサヤシが一歩前に踏み出た・・・てっ、敵にも上から目線!?
「お、おぅ!俺様はヘケート様配下の一番隊隊長、雷の牙ことサンダーウルフだ!」
「では私も名乗ろう、私は鞘師の一族の末裔、サヤシリホ!」
リホ?リホっていうんだ下の名前・・・今更だけど初めて知った
「あ?お前噂のインフルエンザブレードだな!面白ぇ!この俺様が黒焦げにして喰い殺してやるぜぇ!」
凶悪な牙を剥き出しにして狼獣人が身を構える
バチ・・・バチバチバチバチ・・・
姿勢を低くして全身に力を込めた獣人の身体に青い光が走り始めた・・・さっきの雷ってやっぱりアイツが!?
「かのんちゃん!私と逆に走って!」
そう言い放って私を突き飛ばすとサヤシは明後日の方向に走り始めた
逆に・・・って
サヤシ、まさか私を攻撃の的から逸らすためにわざわざ派手に名乗ったの!?
ビシャーン!ビシャーン!ビシャーン!ビシャーン!
狼獣人の身体から次々に雷撃が放たれる
サヤシが走った後に次々と走る雷光、溶けて濛々と水蒸気になっていく雪
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
剣も抜かず必死に両手を振って走るサヤシ
何とかギリギリで雷撃を避わしているけど全然余裕無さそう
その行く先は・・・
「おいバカ!こっち来んな!」
「こっ、これはマズいことになったとね!」
「う、嘘ぉ!」
慌てて背を向けて走り出すお頭、KY、イイクボさん
「ガハハハハハハ!さっきの威勢はどうした?逃げるだけか?」
このままじゃやられるのは時間の問題
ドキドキドキドキ、自分の心臓の鼓動が大きく聞こえる
どうする?香音
いや〜、足が震えてきた。嫌だ嫌だ嫌だ、嫌だけど、怖いけど
・・・でもやるしかないよね
「ヘーイ!そこの漏電ウルフマン!ウチと貿易するぅ?」
出来るだけデカい声で叫んだ、中指を立てて変顔をしながら
一瞬でもこっちに注意を向ければサヤシ達が反撃してくれるはず
「あぁん?何だテメェ!ナメてんのか?焼豚にすんぞ!!!」
キター!やっすい挑発に乗って狼獣人がこっちを向く・・・って焼豚ぁ!?ふざけんなゴルァ!
>>335-344 以上、VariableBlade 第三話 「ちちはは天狗と氷の魔女」でした
ご無沙汰しています。なんかふざけ過ぎですみません
来週には続きあげられるよう頑張ります
ステーシーズはたまたま幸運にもカーテンコールの回を見れました
おふざけ再殺部隊にワロタ
346 :
名無し募集中。。。:2012/06/18(月) 00:56:13.33 0
リアルタイムで読めたーおつww
こういうふざけ感も大好きですよw
自分も同じ回観れました
347 :
名無し募集中。。。:2012/06/18(月) 01:34:21.23 0
天狗じゃ!!天狗様の仕業じゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!
…乙です 続きもよろしくねw
348 :
名無し募集中。。。:2012/06/18(月) 03:31:24.50 O
ねるなんと
349 :
名無し募集中。。。:2012/06/18(月) 06:18:57.65 0
起きるのじゃ
350 :
名無し募集中。。。:2012/06/18(月) 07:29:56.03 0
>>345 朝方から笑わせていただきましたわ
それにしても香音ちゃんを怒らせてしまった狼獣人さんが心配ですわ
351 :
名無し募集中。。。:2012/06/18(月) 10:41:28.05 0
ほっ
352 :
名無し募集中。。。:2012/06/18(月) 12:36:54.51 0
かい
353 :
名無し募集中。。。:2012/06/18(月) 14:55:44.19 0
どう
354 :
名無し募集中。。。:2012/06/18(月) 15:24:00.99 0
会社のPCからこっそりあげておくね
355 :
名無し募集中。。。:2012/06/18(月) 17:17:19.49 O
こっそり
356 :
名無し募集中。。。:2012/06/18(月) 17:19:40.06 O
ル*’ー’リ<かめいよかめいよ亀井さん
この世で一番美しいのはだぁれ?
ノノ*^ー^)<それは姫でございます
ル*’ー’リ<キャーーキャーー
もぉ照ーれーるぅ
ノノ*^ー^)<しかも美しさと同時にブレなきキャラも確立してらっしゃる
ル*’ー’リ<キャーーキャーー
完璧すぎるアイドルぅ!
ノノ*^ー^)<雨の日も風の日も
ル*’ー’リ<ももちはいつでもかわいいニャン♪
ノノ*^ー^)<女性受けが悪くても
ル*’ー’リ<ももちの可愛さが罪なのね!
謝りますね、許してニャン♪
ノノ*^ー^)<私が姫のおやつのプリンを食べちゃっても
ル*’ー’リ<プリンさんプリンさん、亀井さんのお腹の中で幸せになってね
ノノ*^ー^)<しかも二個
ル*’ー’リ<おいぃぃ!
357 :
名無し募集中。。。:2012/06/18(月) 17:22:53.82 O
358 :
名無し募集中。。。:2012/06/18(月) 18:24:37.31 0
ww
綺麗な流れだなあw
359 :
名無し募集中。。。:2012/06/18(月) 20:02:44.98 0
蒸し暑いですわ
360 :
名無し募集中。。。:2012/06/18(月) 21:29:05.93 0
361 :
名無し募集中。。。:2012/06/18(月) 22:50:48.85 0
あらしの前の保全
362 :
名無し募集中。。。:2012/06/18(月) 23:48:20.63 0
Your my soul! soul!
363 :
名無し募集中。。。:2012/06/18(月) 23:54:32.54 0
川*’ー’) ノ|c| ・e・) ノノ*^ー^) 从*・ 。.・) 从*´ ヮ`)
ノリo´ゥ`リ 川=´┴`) 川*^A^) 川´・_o・)
いつもすぐそばに居(あ)るよ……
364 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 01:27:13.58 0
狭い部屋の中心に彼女はいた。
ベッドの上に上体を起こし、ぼんやりと窓の外を見つめている。
四角く切り取られた空は温かいオレンジ色に染まっていた。
「調子、どう?」
そうして話しかけると、彼女はくるりと振り向きだらしなく笑う。
「うーん、相変わらず」
「そうやろうねぇ」
彼女は再び窓の外を見た。
狭い空間の中で唯一、外の世界とのパイプ役になっている小さな窓を見るのが彼女は好きだった。
実際はその窓の向こう側にある、広い世界を見つめていたんだろうけど。
365 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 01:27:48.92 0
「ねぇ、れーな」
彼女の言葉に、「れーな」と呼ばれた少女―――田中れいなは顔を上げる。
呼んだ彼女―――亀井絵里は寂しそうに、だけど優しそうに微笑んでれいなに向き直った。
その瞳は真っ直ぐにれいなを射抜いていて、どうしようもなく、胸が痛くなった。
「出来ることならさ、闘いたくないなぁ……」
唐突に話す彼女の真意が、れいなには一瞬掴みかねた。
その「闘い」という意味は分かっている。そうだけれど、なぜ急にそんな話を始めたのかが、分からなかった。
「この心臓が治るよりもね、闘わないで良い世界を見たいっていうのが、絵里の夢なんだぁ」
そうして絵里は胸元に手をやり、ぎゅうと握り締める。
いったいなぜ、こんな話を急にしたのか、れいなには理解できなかった。
だが、無下にその言葉を振り払うことはできず、ただ黙ってれいなは頷いた。
366 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 01:28:19.45 0
「れーなは、闘うの、好き?」
「別にそんなことは……」
「でも、闘ってるときのれーな、いきいきしてるよね」
彼女の言葉は、責めているようなわけではなかった。
れいなは、リゾナンターとして闘うことに、自分の存在意義を見出している部分もあった。
だれも信じられずに生きてきたのに、あの日から世界は一変した。
信じあえる仲間と出逢い、自分の信じる正義を貫いて闘う日々は、楽しいわけではなかったけれど、否定できる日々でもなかった。
「ごめん、言い方、悪かったね」
絵里は素直に謝るが、れいなは「いいよ」とも「別に」とも言わなかった。
ただ黙ってその言葉を受けとめ、絵里の見ていた窓の外を眺める。相変わらず空はオレンジ色。夕陽が沈みかけていた。
その色は温かいのだけれど、夜の始まり、世界の終わりを暗示しているような気がして、れいなは真っ直ぐには見られなかった。
絵里はそんなれいなを見て、やっぱり少しだけ寂しそうに笑った。
なんとなく、「笑われている」ような気がして、れいなはなにも言わずに踵を返した。
絵里もなにも言わずに、れいなの背中を黙って見送った。
オレンジ色の夕陽が沈んだ―――
367 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 01:33:18.11 0
>>363-366 the new WIND―――Introduction
初めまして
>>117です
書き始めたのですが思いのほかに長くなりそうな予感がします・・・
「the new WIND」という名前でシリーズ化していきますが
自己解釈の部分や技の改変が多いのでご了承くださいm(__)m
368 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 01:33:55.23 0
369 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 01:43:35.63 0
>>368 ドンマイだぜぇ〜
連載ものが増えるのは嬉しいぜぇ〜
続き楽しみにしてるぜぇ〜
370 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 03:18:26.92 O
読む前ほぜ
371 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 04:29:49.03 O
リアル一人の朝
372 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 06:22:38.86 0
朝の光
373 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 07:49:39.72 O
>>368 おつ!
まだ導入だからなんとも言えないけどなにかが起きそうな予感がするね
374 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 08:15:23.08 0
描く人が違うことでまた異なる魅力が見えてくるかもしれませんね
375 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 10:32:23.08 0
>>367 今の段階ではまだ内容については感想書けないですが新しい風がスレに吹き込まれるのを楽しみにしてます
376 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 12:24:26.52 0
ステーシーズ読みましたがちょっと情報処理に混乱中
でも書きたい物も思い浮かんだので頭の中を整理したら今書きかけのを完結させて
そして思い浮かんだ物に取りかかりたいです
377 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 13:23:29.77 0
先に書いちゃったらごめんね
378 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 13:40:42.49 0
どっちも書くといいよ
379 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 15:26:25.84 0
同じ題材でも書く人が違えば違った(ry
380 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 16:29:41.61 0
絶対もうこのスレないだろなと次スレ候補探してみたらまだあってワロタw
381 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 17:06:56.24 0
いつまで続くのやら
382 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 18:43:43.95 0
ゆりかごから墓場まで
383 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 19:09:51.63 0
再殺されるまで
384 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 20:46:28.50 0
落ちるまで後少し
385 :
名無し代理中。。。:2012/06/19(火) 21:21:49.18 0
>>189-192 の続き。
闇の中に、【闇】が浮かんでいる。
ユラユラユラユラ。
闇の空間をたゆたう影。
影は黒いコートに身を包み、フードを深く被っていた。
小柄な影。手のひらには三つの球体。
誰かは【ダークネス】と呼んだ。
悪意の塊。
悪意の記憶を糧として生まれた、それが【ダークネス】。
【闇】を満たす唯一の概念。
ただ、其処には何も無い、ナニモナイ。
満たされているから、満たされていると思い込んでしまう。
手では掴めない。
叫んでも答えてくれない。
ただ満たされてるだけ、闇が、在るだけ。
その【闇】に、影は球体を投げ込んだ。
誰かの悪意の記憶を零していく。
すると、闇の中の一部に裂け目が現れ、大きな口の形をしていた。
闇に落ちた球体。
ムシャムシャムシャ…咀嚼音。
喰らっていた、響く、誰かを食べる音が。果てしなく続くような闇の中で。
グググググググググググググ。
闇が盛り上がるように『成長』する音が微かに鳴っている。
パキパキと枯れた音が無骨に。
オオオオオオオオオオオオオオオオ。
【闇】が、啼いた。
*
黎明学園敷地内。
二つの影がフェンスの裏側から入り込み、上手く闇に身を潜めながら校舎に近付く。
何処かに中に入れるところはないかと探していると、一ヶ所灯りの点っている場所を
見つけた。
「…誰かいますかー?」
窓に近付いてそっと中をうかがった鈴木が言った。
そこは警備員が使っている宿直室のような部屋だ。
「鍵もかかってないよ、不用心だなあ」
鈴木が窓に手をかけると、軽く力を入れただけでそれはゆっくりと動いた。
窓の隙間から、暖房の暖かい空気を感じることが出来た。
これでは警備も監視もないじゃないか、とは思ったけれど、そのツメの甘さに
今だけは感謝しようと思う、状況が状況なだけに。
「じゃ、ここから入るよ」
鞘師はうん、と頷いた。
――― 鞘師が彼女の元に来たのは数時間前の事。
鈴木は驚いた、心底驚いた。
だって知るはずがないのだ、鞘師が鈴木の家を知ってるはずがない。
だけど鞘師は平然とサイダーを飲んでいて、鈴木もまたその手に持っていた。
本物だった。
しゅわしゅわしていた、「しゅわしゅわーぽんっ」とお決まりの言葉を言って
恥ずかしそうにしている鞘師は本物だった。
頭痛は、いつの間にか治っていた。
「なんでクマがアフロなの?」
「アフロヘアーに憧れた時期があったんだよ。ちゃーちゃんにも」
「ちゃーちゃんって言うんだ」
そう言って鞘師は飾ってあったクマのアフロを鈴木に被せてニヤニヤ笑っていた。
鈴木はアフロ頭のままで疑問を聞いてみる。
「で、なんでりほちゃんがいるのさ」
「お見舞いだよ」
「あたし、家教えたことないよね?」
「うん」
「いや、うんじゃなくて、誰かに聞いたの?」
「うん」
「誰?」
「宇宙人に」
鈴木はサイダーの瓶を鞘師の頭に振り落とすフリをした。
流れるように避ける鞘師。
壁にドカッと頭をぶつけてしまい、手でさする鞘師。
いろんな意味でアホだった。
「痛いよかのんちゃん」
「りほちゃんが変なこと言うからだよ、しかもあたし何もしてないよ」
「でも聞いたのはホント、信頼できる人だから大丈夫」
信頼してる割には宇宙人呼ばわりとは。
個人情報のセキュリティが期待できないこの時代。
ただそこまでしてこの家に来た訳がなんなのか、それが知りたくなった。
「で、なんでりほちゃんがいるの?」
「かのんちゃんにお願いしたいことがあるの」
「お願い?」
鞘師はまた薄い笑みを浮かべた。
けなしている訳ではないんだろうけど、何かを企んでいる様な笑顔。
引いた表情をすると、今度は口を開いてイヒヒと笑う。
「かのんちゃんだから、お願いしたいことがあるんだよ」
――― 二人はソロソロと足音を消しながら、まるで泥棒みたく
身を小さくして、廊下を進んで行く。
学校というところは、昼間は人の声で溢れている場所も、今は
逆に音を吸い込んだように静まり返っている。
油断すると傍らの闇に引きずり込まれてしまいそうな錯覚に襲われる。
だが、鈴木は平然としていた。
お化けが居ると思うから居るように思うのだと思ってる。
気味が悪いと思うから変な想像をするのだと思ってる。
空気が読めないわけではない。
断じて読めないわけではない。
怖いことは怖い、だけどそう思わないようにしてるだけなのだ。
そんな鈴木とは裏腹に、隣の鞘師は異様に辺りを見回すかと思えば
ギュウギュウと身体をひっつかせてくる。
「ねえ歩きにくいんだけど」
「かのんちゃん怖くないの?」
「怖いけど、りほちゃんが言いだしたことなんだからしっかりしてよね」
「……」
鞘師は何かを言いたそうにしていたが、突然足音が聞こえた。
「!?」
廊下の突き当たりを曲がった向こうから。
こればかりは鞘師ばかりではなく鈴木もビクっと身を震わせ硬直する。
懐中電灯と思われる光が見えてマズイ、と思った。
警備員だ!
鈴木にとってはオバケよりも人間の方が怖い。
鈴木は小さく舌打ちをすると、硬直したままの鞘師の手を引いて
丁度通りかかっていた教室の中に滑り込んだ。
390 :
名無し代理中。。。:2012/06/19(火) 21:26:56.56 0
391 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 22:30:31.86 0
雨の中を帰ってこれから読むナント
392 :
名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 23:21:00.08 0
おつおつ!
393 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 00:36:10.14 0
良いところで切れるねいw
394 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 00:45:35.80 0
懐かしい背徳感を感じた
いや自分にはそんな経験も度胸もなかったけどw
395 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 02:29:04.88 0
ネルナント
396 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 06:29:50.39 0
喫茶リゾナントの朝は早い
397 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 07:45:06.57 O
朝リゾ
398 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 10:24:04.90 0
ヒーローになりたかった
399 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 12:16:01.98 0
ボルテスVの歌はリゾナンターの匂いがするなとふと思ったオッサンが保全
400 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 14:01:38.46 0
けして若くはない自分にもまるで分からない
401 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 17:18:12.59 0
うええおええ
402 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 18:52:29.38 0
らっせーらーらっせーらー
403 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 19:07:55.33 0
<※注>
・ステーシーズ×リゾナント世界(のつもり)
・ただし舞台を見ていない者の駄文です
・設定のズレ等は都合よく解釈お願いします
・
>>376-377横からすみません;;
・不快に思われる方も多いであろう内容ですごめんなさい
・勝手すぎることを言いますが願わくば保管庫への収録は見送ってください
404 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 19:08:27.76 0
遠くの方から、高速回転する機械が発する唸り声が微かに聞こえてくる。
どこかで、今まさに一人の少女がバラバラに切り刻まれているところなのだろう。
窓の外からは、虫の羽音にも似たそのエンジン音とともに、青く澄みきった空から降り下ろされた光が飛び込んで、喫茶「リゾナント」の店内を満たしていた。
私の膝の上で目を閉じ、力の抜けた体をくたりと横たえるれいなにも、場違いなくらいに明るい陽光が注いでいる。
れいなの身体にうっすらと浮き上がり始めた鱗粉状の銀色の微粉が、それを反射してキラキラと輝いていた。
いつの間にか、外から聞こえていた小型チェーンソーの音は途絶えていた。
もう少し近くであれば続いて聞こえてきたかもしれない嗚咽の声は、耳には届いてこない。
聞こえるのは、自分一人の鼓動の音だけ。
「リゾナント」店内は、ほんの1時間前までからは想像もつかないほど静まり返っていた。
つい先ほどまで賑やかに笑い続けていたれいなは、今は物音ひとつ立てずに横たわっている。
どこぞの学者が名付けたらしい「臨死遊戯状様(ニアデスハピネス)」の笑顔を浮かべ、楽しそうに喋り続けていたれいな。
そのときのれいなが瞼の裏に浮かび、やりきれない気持ちになる。
「れいなは幸せっちゃん。愛ちゃんと出会えて。最期の時間を愛ちゃんと過ごせて」
「だかられいなが死んでまた生き返ったら愛ちゃんに殺してほしいと。ちゃんとバラバラのグチャグチャにして?165分割にしてね?」
「だってれいなのこと殺せるんは、愛ちゃんしかおらんけんね」
「それがれいなの幸せやけん。ねえ愛ちゃん。れいなはすっごく幸せよ、愛ちゃん」
アハハッとかイヒヒウフフとか、陽気な笑い声を間に挟みながら、れいなは何度も私に自分の再殺を願い、そして幸せだと繰り返した。
405 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 19:09:25.87 0
その言葉に嘘はなかったのだろう。
ニアデスハピネスの少女たちは、多幸感に包まれ、眼前に迫った死を恐れないのだから。
名前を付けた学者も、死を直前にした少女たちがなぜそのような状態になるかという説明はまるでできなかった。
結局は一言で片付けるしかないのだろう。
れいなたちと同世代の少女たちが、ある日突然死ぬのも。
再び生き返って「ステーシー」と呼ばれる屍少女となり、ユラユラと歩き回り、人を襲って喰らうのも。
そうやって蘇った彼女たちを、誰かが「再殺」しなければならないことも。
きっと、一言で片付けるしかないのだ。
すべては「神様の気まぐれ」だと。
ただそれだけなのだと。
だけど―――
無意識に唇を噛んだとき、ふと、体に微かな振動が伝わってきた。
動かした視線の先で、れいなの唇が僅かに震えている。
薄く開かれたその奥に、小さな歯とその間で蠢くピンク色の舌が覗く。
声とも嗚咽ともつかない、低く潰れた音が、さらにその奥から発せられた。
「ぐごぉごげがぐごごごごご」
「起きたんだね、れいな」
そっと髪を撫で、笑みを向ける。
れいなは、笑顔の代わりに口を半開きにした、どこか間抜けな表情を返した。
「あっがええええええええおおおおおおお」
「じゃあ……行こっか」
虚ろな目をキョロつかせ、声帯から奇妙な音を発し続けるれいなの身体を抱くと、私は光になった。
406 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 19:10:27.49 0
「……懐かしいね。覚えてる?れいな」
一瞬後に辿りついた先――薄暗い廃倉庫を見回しつつゆっくり歩きながら、私はれいなに話しかける。
少し離れたところでようやく上半身を起こしかけているれいなからは、相変わらず意味不明の声しか返ってこない。
だけど、私は構わず話し続けた。
「ここでれいなと出会って……そっか、半年も経ってないのか。なんだかもっと長く一緒にいたような気がするな」
どこかの施設を脱走してきたというれいなと出会い、一つ屋根の下で暮らし始めてからの5ヶ月弱の毎日。
もうニアデスハピネスを迎えることはない年齢の私だけど、そんなものに支配されなくとも本当に幸せだった。
そう思うと同時に、れいなと過ごした日々が脳裏を駆け巡る。
当初接客に慣れず、強張った表情でテーブルとカウンターを往復していたれいなの姿。
ガレット作りの際に粉まみれになった私の顔を見て、手を叩いて笑っていたれいなの笑顔。
型の決まった組手に飽き足らず、「本気で愛ちゃんとやり合いたい」と不服そうにしていたれいなの横顔。
見たいテレビ番組の時間帯が重なった際、チャンネルを変えさせまいとリモコンを抱きしめて抵抗していたときの、れいなの必死の声――
「……なんでだよ……どうしてだよっ!!」
思わず空を仰いで叫んでいた。
目に映る薄汚れた廃倉庫の天井。
その遥か上方から、この光景を眺めてご満悦の表情を浮かべているのかもしれない神様。
気まぐれで、れいなを殺し、生き返らせ、私に再殺させようとしているその存在に対して、私は心底腹を立てていた。
「れいなは幸せよ」と、ニアデスハピネスの笑いとともに心から幸せそうに繰り返していたれいな。
するべきではないと、分かっていた。
その心の中を覗くなどということは、絶対にしてはならないことだと。
407 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 19:11:09.78 0
だけど―――
私は誘惑に負けた。
不安に負けた。
自分が持って生まれたチカラの手招きに…負けた。
「精神感応」で「聞」いたれいなの「声」も、幸せだと繰り返していた。
若く、綺麗なままで死んでいくことができるのだからと。
大好きな愛ちゃんに殺してもらって死ねるのだからと。
こうして最後まで愛ちゃんといられるのだからと。
今はお別れでも、またいつかきっと会えるのだから……と。
「だけどッッ!」
――本当は愛ちゃんと、ずっと一緒にいたかったな。2人ともおばあちゃんになるまで、ずっと……もっと……
さらにその奥から「聞」こえてくるれいなの「声」を、私は「聞」いた。
「聞」いてしまった。
れいなが心の奥底で願い――でもそうはならなかった「未来」を、私は知ってしまった。
「なんでだよーーォォッ!!!ああああぁぁぁぁーーーーッッッ!!!!」
408 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 19:11:45.63 0
もう一度、廃倉庫の天井のさらにその向こう側に向かって絶叫する。
答えはなかった。
自分の声が、倉庫の中に空しく反響するだけで、何一つ返答はなかった。
れいなが死んだ理由も。
違う存在として生き返った理由も。
愛の手で、再び殺さねばならない理由も。
「ステーシー」となる年齢の溝が、自分とれいなの間に作られた理由も。
自分に「声」を「聞」くことのできるチカラを与えた理由も。
れいなの心の奥底の「声」を「聞」かせた理由も。
何一つ。
説明しようとはしなかった。
目に映る薄汚れた廃倉庫の天井。
その遥か上方の、レティクル座だかシリウス座だかに鎮座し、薄笑いを浮かべて見下ろしているのかもしれない神様。
本当にいるのかいないのかさえも説明しようとしないその存在に、私は心底腹を立てていた。
きっと、ずっと以前から。
憎しみと呼んでも差支えないほどに。
そう、今初めて気付いた。
私はこれほどに「神様」を憎悪していたのだと。
「うううううぐううぉええええええああああ」
天井を睨み付ける私の視界の隅で、ゆらりとれいなが立ち上がる。
私も同じようにゆっくりと体をそちらへと向けた。
409 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 19:12:19.05 0
いつの間にか溜まっていた熱い液体を拭い去った目に、わずかによろめきながら立っているれいなの姿が映る。
薄暗い倉庫の中でぼんやりと光を放つれいなから、微かにハーブティーの香りが漂ってきていた。
力強く生命力を湛えていた瞳は、今はただ虚ろに青白い顔の中で佇んでいる。
一瞬、その目が愛を捉え、不敵で少し生意気げな――一緒に過ごしていた頃のれいなの笑みが、その頬に浮かんだ気がした。
そう思った刹那、一際高い唸り声とともに、れいなは一直線にこちらへと向かって走り出した。
先ほどまでユラユラとしていたのが信じられないほどの鋭い踏み込みとともに、鉤爪状に曲げられた右手が襲ってくる。
危うくバックステップでそれをかわした私の目に、再びれいなの不敵な笑みが映った。
気のせい……なのだろう。
ほんの一瞬の表情が、たまたまそう見えただけなのだろう。
だけど―――
その表情で、私は思い出した。
いるかいないか分からない神様に、憎悪の言葉をぶちまけている場合ではなかったということを。
本当に言うべき言葉、そして言うべき相手があったということを。
れいなと同じように……それ以上に不敵な笑みを口元に浮かべながら、私は言った。
れいなが言ってほしがっていることを知りながら、結局一度も言わなかった言葉を。
「来なよ、れいな。本気で。言っとくけど、あーしは負けんよ?」
三度―――れいなが笑った気がした。
「これも神様の気まぐれだっていうのなら……少しくらいは憎しみを割り引いてやるよ」
そう小さく呟くのとほぼ同時に―――れいなが再びコンクリートの床を蹴るのが目に映った。
410 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 19:13:05.69 0
>>403-409 純然たる読み切りのつもりです
続きません
言い訳は色々ありますが……ひとまず今は反省だけ
411 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 20:29:15.03 O
おつです
ステーシーズのれいなの闘う場面を思い出しました
凄惨で悲しいのに美しい
愛ちゃんの抱えたやりきれなさもまた切なくて良いですね
412 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 20:33:20.06 O
ステーシーズの世界観をこのスレに当てはめた場合
一番絵になってしまうのがこの組み合わせかもしれませんね…
乙でした
413 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 21:00:18.59 0
>>410 ミュージカル見てないしストーリーもなんとなくしか知らない俺がリアル涙目なんだがw
今回はラブセン以来にミュージカルDVD買ってみようと思う
414 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 21:08:06.99 0
乙です
軽く読むつもりだったのに泣いてしまった
>>413 是非とも!
見るのおすすめ
415 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 22:30:19.74 0
切ないけど美しいっていうのはリゾスレらしいかも
416 :
名無し募集中。。。:2012/06/20(水) 22:53:34.36 0
リゾナントブルーとステイシー
交わるはずのない二つが出会って化学反応が起きたって感じですね
417 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 00:01:59.24 0
おやすてーしー
418 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 01:11:07.33 0
つかれたーしー
419 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 02:44:37.33 0
ねればいーしー
420 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 06:11:44.73 0
おはだーいし…?
421 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 06:12:16.12 0
しまんちゅがいるな
422 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 07:31:39.28 0
今夜はなにか投下できるといいなと思いながらホゼナント
423 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 08:11:47.80 0
でもそうはならなかった
嘘です待ってます
424 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 08:47:21.84 O
425 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 11:24:12.14 0
流行語対象になってもおかしくないね
狼のだけどw
426 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 12:36:52.26 0
427 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 14:07:50.13 O
なんでもありじゃねぇかww
428 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 15:12:02.03 0
元はめっちゃ切ない台詞なのにw
429 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 17:27:00.85 0
モーニング娘。「One・Two・Three」本編MVきたあああああああああああああああ
今はまだ見れないけど・・・
430 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 18:20:20.69 O
431 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 18:32:27.42 0
432 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 19:00:58.46 0
やめたれwww
433 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 19:57:06.85 0
>>364-366つづき
田中れいなは喫茶リゾナントの地下にある鍛練場にひとり佇んだ。
大きく息を吸って、長めに吐く。
なんどかそれを繰り返し、すっと目を閉じた。
自分の呼吸に集中し、体の中心に己の“気”を集める。
流れるそれを感じるように、耳を澄ませ、開いていた心の扉を閉じる。
徐々に体が熱くなっていくのを感じ、今度は右手に意識を集中させた。
れいなの周囲の“気”が、れいなの右手へと集まってくる。
それを乱さないように、心は閉じたまま、じっと右手のみに感覚をもっていく。
頭の中で、完成のイメージ像をつくる。
最初に浮かんだそのイメージと合致するように、もっと具体的に、太く、濃く線を描く。
不定形だった気が、徐々に、ある形を成していく。
れいながそっとそれを握り締めると、確かに感触があった。
深く息を吐き、右手を見つめると、そこには立派な『刀』が握り締められていた。
「物体具象化能力……」
最近になって身についてきたこの能力に、れいなはそう名前を付けた。
434 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 19:57:41.90 0
-------
あの頃、れいなはリゾナンターとして闘いの日々に明け暮れていた。
ダークネスは昼だろうと夜だろうとお構いなしに現れてはれいなたちを攻撃してきた。
「愛ちゃん!」
「任せろっ!」
それでもれいなたちリゾナンターは、9人という仲間を信じあっていた。
リーダーである高橋愛を中心に、ともに手を取り合って、必死に闘ってきた。
「さっすがリーダー!」
「照れるー」
「もー、調子乗らないの」
闘うことが喜びだと思うことはなかった。
死と常に隣り合わせの毎日は、ときにはだれかの生命を奪うことだってあった。
それでもれいなたちは、自分たちの世界を護るために、自分たちの正義を信じて闘ってきた。
「さぁ、帰ろっか」
そんな日々がいつ終わるのかとか、考えたこともなかった。
この闘いの日々に終わりが来ることなど、気にもせずにただ毎日を送っていた。
そんなリゾナンターの運命が動き始めたのは、あの日からだった。
あの日も今日のように、少しだけ蒸し暑い、夏の終わりのことだった。
435 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 19:58:15.45 0
-------
知らせを聞いたれいなは、無我夢中で病室へと走った。
喧しくセミが己の生命を叫び、ギラギラと睨みをきかせた太陽が空の主役として居座っている。
短距離走は速い方ではないのだが、脚を止めることなく病室へと飛び込んだ。
「小春っ!」
ドアを開けた瞬間そう叫んだ。
しかし、そう呼ばれた彼女からの返事はなかった。
病室のベッドの周りには、リーダーである高橋愛、彼女を陰で支える新垣里沙、そして松葉杖をもった光井愛佳がいた。
れいなは息を切らしながらベッドへと歩み寄る。だれもなにも言わないままに道を開けた。
ベッドの上、久住小春は何重にも包帯を巻き、その顔には人工呼吸器を装着させられていた。
目は軽く閉じられ、いまにも「たなかさーん」といつものように鬱陶しい笑顔で叫んできそうな気配も感じる。
それなのに、彼女の体は全く動いていない。
ただ人工呼吸器から微かに空気の漏れる音が響き、ベッドの隣にある心電図が規則正しい音を刻んでいた。
「……意識、まだ戻らんのやって」
重苦しい空気の中、れいなの斜め後ろにいた愛はそう呟いた。
れいなは振り返ることなくその言葉を受けとめる。
遅れて聞こえてきた足音にも振り返らずにいると、「小春!」という道重さゆみの声が聞こえてきた。
愛は黙ってさゆみを見つめたあと、なにも言わないままに目線だけを小春に向ける。
さゆみの視線は愛に従って動き、ベッドの上の変わり果てた彼女を認めると、その瞳からは自然と涙が溢れていた。
436 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 19:58:45.43 0
「どう……して…?」
絞り出されたその言葉は震えていた。
愛がなにか言おうと口を開こうとしたとき、再び足音が走ってくる。
これ以上騒がしくなることを懸念したのか、里沙は松葉杖をつく愛佳の背中にそっと手をやり、愛佳を外へと誘導した。
それに従うように愛も病室の外へと出る。
「久住サン!!」
さゆみの横から飛んできたジュンジュンの言葉にも、れいなは振り返らなかった。
ただ、横たわる小春の姿を黙って見つめる。ぎゅうと握り締められた手の平が、妙に痛かったことだけは覚えていた。
「れいな……」
いつの間にかれいなの隣に来ていた愛は、なにかを納得させるようにその肩を叩いた。
本当なら、意地でも動きたくはなかったが、愛に逆らうことは出来なかった。自分たちをまとめてくれるリーダーに、意地などはれない。
れいなは下唇を噛んだあと、小春に背を向けた。未だに呆然としているさゆみとジュンジュンを横切り、病室の外へと出た。
437 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 19:59:53.34 0
その数分後、リンリンと絵里も合流し、8人のリゾナンターは病院の屋上へと出た。
ジリジリと照りつける太陽のせいか、普段はあまり汗をかかないれいなの頬には、雫が伝っていた。
だがそんな暑さなど、まったく気にはならなかった。
―――小春と愛佳がダークネスに襲われて、ふたりとも怪我を負った
簡単に言ってしまえば、それが事の一部であり全てであった。
愛佳は左脚の膝から下に怪我を負い、松葉杖なしでは歩くことは叶わなかった。
対する小春は、彼女よりも重症だった。その体、鎖骨から腰骨にかけて斜めに大きな太刀筋を受けた。
「“視”えてはいたんです、その“未来”が……」
愛佳は苦しそうにそう呟いた。
8人の間を風がすり抜けていく。夏の爽やかな匂いを運んでいるはずなのに、ちっとも心地良くはない。
愛佳の言葉はそのまま噛み砕かれて脳へと走る。意味を理解するのは単純だった。ただ、納得は到底できなかった。
それでも7人は、愛佳の言葉を黙って受けとめた。
438 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 20:03:46.19 0
439 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 21:01:22.67 0
>>438 9人の物語心強いです
かつこれまでにあまりなかった色合いでいいですね
440 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 21:10:41.24 O
>>438 从*・´。.`・)<こぱりゅううぅうううう!!!
441 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 22:11:35.06 O
今から読むなんと
442 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 23:31:07.38 O
物語が始動するのは楽しみですね
まだ導入だとは思いますが期待して待ってます
443 :
名無し募集中。。。:2012/06/21(木) 23:42:13.05 0
やはり、この9人だな。
444 :
名無し募集中。。。:2012/06/22(金) 00:49:58.94 0
ねるなんと
>>433-477つづき
-------
小春と愛佳の前に立ちはだかった敵―――ダークネスであることは間違いないのだが、それは見たことのない相手だった。
黒いマントで身を覆い、軽くステップを踏むように体を揺らす姿に、ふたりは直感的に「恐怖」を覚えた。
彼―――恐らく性別は男だと思われる相手は、なにも思案していないような、それでいて思慮深いようにも見える。
世界中の闇を一身に背負ったような黒いオーラに、愛佳と小春は背筋を凍らせる。
「なんか、アイツ凄そうだね……」
小春はそう言うと、ぎゅっと拳を握って構えた。
口調は明るくて軽いが、相手から感じる異様なオーラを振り払おうとしているのは確かだった。
愛佳も小春に倣い構えると、敵の男と目が合った。
瞬間、愛佳の脳内にいくつもの情報が叩きこまれた。
それはだれもが想定しえない、最悪のヴィジョンだった。
遠くに轟く雷鳴。
黒い影。
光の中、宙に舞ったのは鮮血。
倒れたのは、隣にいるはずの小春だった。
小春の体は地面に叩きつけられ、その口元からは多量の鮮血と唾液を零している。
その心臓はいまにも止まりそうであり、すぐ傍に迫った「死」を予感させた。
あまりにも痛々しく、あまりにも恐ろしいその未来に、愛佳の呼吸は短くなる。
悟られないように整えようとするが、動揺は隠しきれない。心臓が高鳴り、ぎゅうと愛佳は胸元をおさえた。
「どうしたの?」
小春は視線は男に向けたまま、愛佳にそう聞いてきた。
噛みあわない視線なのに、小春の言葉は真っ直ぐに愛佳に届く。
愛佳はなにかを言おうと口を開くが、どうしても、言葉にはならない。
自分の中の言語情報は、たったのひとつとしても、音として、外部にもたらされることがなかった。
恐怖のあまりに音が失われたのか、カラカラに渇いた口の中で声が死んだのか、理由は分からない。
「なんか……マジでヤバい感じ?」
小春は片頬をあげて呟く。
引き攣ったその笑みは、自嘲ではなく、思案のようにも見える。
普段、小春がなにを考えているか、愛佳にはよく分からなかった。
脈絡なく話を始めるし、その話もたいていは着地することなく浮遊して終わる。
かと思えば、夜中、鍛練場に佇んでは自分の能力と対峙し、輝きを持った瞳のまま天井を仰ぐ。
その姿は、テレビや雑誌で見かけるつくられた芸能人ではなく、ただひとりの「久住小春」のようにも見えた。
たぶん自分は、小春のなにひとつも、理解などできていないのだろうけどと、その姿を見ながら愛佳は思った。
掴みどころなんてない。
だけど、分かることだってある。
久住小春は、光井愛佳の、大切なリゾナンターの仲間であり、信頼できる友人だった。
「みっつぃー、来るよ……」
分かることがあるからこそ、ダメだ、と愛佳は思う。
言わなければ。伝えなくては。
いま視えた、最悪の、想定しえない未来を。来てはいけない、ほんの数時間後の出来事を。
避けることができる。このまま逃げるなり、仲間を呼ぶなりすれば、回避することなんて容易い。
それなのに。
それなのに、言葉が出てこない。
なぜだ、なぜだ。こんなときにどうして!
遠くで雷の落ちる音が聞こえた。
瞬間、だった。
軽くステップを踏んでいた男が視界から消えたかと思うと、愛佳の至近距離に現れた。
ふたりとも完全に虚をつかれていた。
愛佳は慌てて距離を取るが、刹那、男の右脚がそのまま腹部に直撃した。
「あ゛っ……!」
衝撃を受けた愛佳は、思い切り吹き飛ばされ背中から倒れる
血と交り、胃の中のものが逆流してきた。口内に広がった酸を吐き出した。
吐瀉物が地面に広がった。
「みっつぃー!」
小春は衝撃に倒れた愛佳に駆け寄ろうとする。が、その目の前に男が立ちはだかる。
その圧倒的な存在感に、瞬間、体中が震えた。
男は世界を闇で覆い尽くさんばかりの黒雲を背負っていた。
その中には微かな光さえも存在しない。
全てを呑み込むその存在は、「絶望」という名前が最もしっくりくる。
直感的に、小春は生命の危機というものを覚えた。
いままでなんども敵と戦ってきたが、これほど圧倒的に覚えた危機感はない。
しかもなにより最悪なのが、この場にリゾナンターが全員そろったとしても、その危機感が拭える保障がないと感じたことだった。
―なによ、ホントに……
かと言って、小春の選択肢の中に「逃げる」という項目はなかった。
小春は右脚で地面を蹴り上げたかと思うと、男の頭上より高く体を浮かせ、そのまま踵から振り下りした。
風を切る音のあと、地面がぐしゃりと音を立てて凹んだ。
小春の右脚は地面を抉るが、男はそれをあっさりと躱し、数メートル先に立っている。
「やっぱ躱すよねー……これくらい」
小春は再び男と距離を取る。
ちらりと視線の端に愛佳を入れた。彼女は腹部を抑えながら地面に横たわっている。
我慢強い彼女が立ち上がらないということは、相当な深手を負ったのだろうと推察した。
最悪、内臓破裂だとして、さっさと退却しないことには愛佳の応急処置もできやしない。
―さて、どう逃げようか……
小春はジリジリと距離を取るが、その度に男も詰めてくる。
この男に背を向けてはいけないと本能的に察知する。
愛佳を連れて男の視界から逃げるには、少なくとも12秒の余裕が欲しい。
そんな余裕、こいつがくれるわけないだろうがと、必死に小春は考えた。
―ああ、もう、面倒だな!!
そう心の中で思いながら小春は下唇を噛んだ。
ひとりでなら逃げられる。この圧倒的な存在感に自分ひとりで勝てるわけないことくらい分かっている。
分かっているのに小春は、愛佳を置いて逃げようとはしなかった。
「……バカだよねえ、小春って」
自嘲気味にそう呟いた。
再び遠くで雷鳴がする。先ほどまで晴れていたのに天井には黒雲が居座り始めていた。
面倒事や厄介事なんて大嫌いだった。
ただヘラヘラとバカみたいに笑い、大人の言うことを聞いていれば人生は上々だった。
そうすれば、揉め事に巻き込まれることもなく、平穏な日々がつづいていくはずだった。
だけど、そうしなくなったのは、リゾナンターに入ってからだと小春は思う。
生まれもった不思議な能力。
それを異端として蔑むか、特徴として伸ばすかは人それぞれだ。
小春は自分の能力を疎ましく思ったこともある。この力のせいで面倒事に巻き込まれる日々も多かった。
だけど、それでも小春は真っ直ぐに向き合ってきた。
自分が此処で生きていられるのは、決して自分ひとりの力じゃないと知ったからだ。
仮面を被って笑っていれば、確かに平穏な日々を送ることはできる。
その日々を否定することはしない。
否定はしないけど、肯定したくもなかった。
―――行くやよ小春!
―――待って下さいよたかーしさーん!
―――小春は私の次の次の次の次の、またその次くらいに可愛いの
―――それぜんっぜん褒めてないじゃないですかー!
―――久住さんのこと、これでも尊敬してるんですよ?
―――ぜったい嘘だねみっつぃー!ほら、小春の目を見て言って!
口うるさくて、鬱陶しくて、たくさんケンカもしたし、衝突もしたし、もう知らないと逃げ出したこともあった。
それでも小春は、信頼していた。
静かで、そして熱い、“蒼い共鳴”で結ばれた9人のリゾナンターを。
割り切れたらきっと楽だった。
仲間とか絆とか、そんな鬱陶しいものを放り出して逃げることができたらきっと楽なんだ。
あの頃のようにふざけて笑っていれば毎日は平穏なんだ。
でも、そんな楽な生活であったとしても、みんながいなければ、意味なんてない。
「だから、逃げないんだけどさ」
452 :
名無し募集中。。。:2012/06/22(金) 02:33:22.45 0
>>445は
>>433-437の間違いです…ホントにすみません
>>445-451つづきです
小春は意を決したように呟くと、再び右脚で地面を蹴った。
今度は跳躍ではなく、そのまま男の懐に飛び込む。
突き出した右の拳を躱されたが、そのまま間髪置かずに左拳を突き出す。
男は華麗なステップを踏んでその拳を逃げていく。
遊ばれているのか、それとも興味がないのかは分からないが、力の差は歴然だった。
それでも小春は逃げずに次の手を繰り出す。
左脚を軸にして右脚を振り上げた。
長い脚は見事に回転し、男の腰を捉えようとするが、寸前で逃げられる。
「ちぃっ!」
ひとまず態勢を整えようとバックステップで男から距離を置いた。
男はゆらゆらと体を動かしたままこちらを見ている。
表情は見えない。なにを考えているのかも分からない。まるで男には、心がないようにも小春には見えた。
「っ…あ゛……」
愛佳は痛む腹部を抑えながら上体を起こそうとする。
だが、先ほどの衝撃で内臓を破損したのか、全く力が入らない。
冗談じゃない、此処でのんびり寝ている暇はないんだと必死に力を込める。
愛佳の目の前で、小春は男と闘っている。
小春の攻撃は男に当たることはないが、決して彼女は退こうとしなかった。
なぜ逃げない?
勝ち目がないことくらい、小春にだって分かっているはずだった。
それなのになぜ、小春は逃げないんだ?
瞬間、再び脳内に強いヴィジョンが視えた。
先ほどよりもハッキリと色を持って現れた「それ」に、愛佳は震えた。
小春が逃げないこと、この場に留まって闘い続けることは、結果的に、「未来」へと結びついてしまう。
「逃げて、久住さんっ!!」
再び頭の中に流れ込んできた情報を叩き潰すように、愛佳は叫んだ。
漸く世界に響いた声に愛佳は一瞬ではあるが安堵した。
届いているのなら、どうか応えてほしい。
自分は放っておいて良いから、どうか逃げてくれと愛佳は叫んだ。
「そいつホンマにヤバいんです!私のことは良いから逃げて!!」
愛佳の声は、確かに小春に届いていた。
だが、その声を小春が受け止めても、小春は逃げることをしなかった。
まるで聞こえていないかのように、彼女は闘いつづけた。
「久住さん!!!」
愛佳はありったけの力を振り絞って叫んだ。
が、その声が世界に響いたとき、全ての出来事は終わっていた。
雷が落ちた。
一瞬だけ世界は真っ白になった。
男はその腰に提げていた太刀を抜き、一気に天から降り下ろした。
それはまさに「目にも止まらぬ速さ」と以外に言いようがなかった。
愛佳が確かに確認できたのは、太刀は綺麗に、小春の体、鎖骨から腰骨にかけて一直線の筋をつくったことだけだった。
同時に、その筋はぷつぷつと赤い気泡を浮かべ、刹那のあと、空に赤い雨が降った。
「あ……?」
なにが起こったのか、彼女自身も分からなかったのかもしれない。
小春は口内から鮮血と唾液を迸らせ、ゆっくりと倒れていく。
その瞬間だけ、世界はスローモーションで動いていた。
「久住さんっ!!」
彼女が倒れた瞬間、まるで金縛りが解けたかのように愛佳は立ち上がった。
腹部を突き刺すような激痛に苛まれているが、その両脚でしっかりと地面に立っていた。
しかし、それも束の間の出来事だった。
男は瞬時に愛佳の前へと移動し、その太刀で愛佳の左脚を捉えていた。
ざくりという感触のあと、遅れて骨が軋む音がした。膝が砕け、なんの感触もなくしたのはそのすぐ直後だった。
「―――っぐぁ゛ぁ゛!!!」
体の中心から溢れたような低い声が響いた。
腹部に感じた痛みの何百倍もの重みが左脚を襲い、再び愛佳は地に伏した。
とめどなく溢れる血が、地面に沁み込んでいく。
立ち上がらなきゃ、久住さんを助けなきゃとなんども心の中で叫ぶが、全く体に力が入らない。
血とともに自身の生命力が流れ落ちていくような感覚だった。
男は苦しみに蠢くふたりを黙って見下ろしたまま暫く動かなかった。
しかし、途中で興味をなくしたのか、太刀を仕舞うと再びステップを踏んでその場を立ち去った。
唐突に過ぎ去った脅威に安堵する暇もなく、愛佳は失血のために気を失ってしまった。
小春を、なんとかして小春を助けなくてはと、心の中で、なんども叫んでいた。
ぽつりと雨が落ちてきた。
冷たい夏の雨は、愛佳と、そして小春の頬を濡らし続けた。
-------
「………視えてたんに…なんも、なんもできんかった…」
愛佳は両手で顔を覆う以外に術はなかった。
確かにあのとき、未来が視えていた。だが、それを伝えることも、回避することもできなかった。
自分のせいで、小春を殺してしまいそうになったのだと、なんども頭の中でだれかが囁いていた。
「愛佳のせいじゃない」
「でもっ!」
「違うから、絶対に」
愛はなにかを諭すようにそう呟いた。
愛佳のせいでないことくらい、みんなが分かっている。
分かっていても、やりきれない、何処か靄のかかったような想いを抱えているのは事実だった。
その想いを弁明し、かつ靄を払うように、愛はもういちど「愛佳のせいじゃない」と繰り返した。
「……小春の、容体は?」
「うん……話だと、今夜中には意識が戻るみたい。ただ、傷の回復には、少なくとも2ヶ月はかかるって」
絵里の質問に答えたのは里沙だった。
受けとめるにはあまりにも大きすぎる答えに、まただれもが口を噤む。
「……相手は、だれやった?」
重苦しい空気の中、愛は口を開き、愛佳を見つめる。
愛佳は松葉杖をぎゅうと握り締めたあと「分からないです…」と返した。
「見たことのない男でした…あまりにも真っ黒なオーラを背負ってたことくらいしか分かりませんでした……」
愛佳の答えをしっかりと聞くと、愛は深く頷いて踵を返し、屋上をあとにした。
なにも語ることのないその背中を、7人はただ見送る以外に他なかった。
れいなはぎゅうと拳を握り締める。伸びた爪が皮膚に食い込み、血が流れそうになった。
納得のできないことは山のようにある。
愛佳に詰め寄ったところでなにも解決しないことくらい分かっている。
分かっているからこそ、れいなはギリリと奥歯を噛みしめ、ただそこに突っ立っている以外になかった。
久住小春の意識が回復し、長期の療養が命じられたのはその日の深夜のことだった。
そして、彼女のリゾナンターからの異動が決まったのは、その二日後のことだった。
460 :
名無し募集中。。。:2012/06/22(金) 06:59:35.38 0
ひとまずね
461 :
名無し募集中。。。:2012/06/22(金) 08:10:02.10 0
圧倒的な敵にも引かない小春の熱さがイイね。
462 :
名無し募集中。。。:2012/06/22(金) 10:50:29.01 O
小春の強さがよく表れてるなぁ
彼女の異動がどう波乱を呼び物語が展開していくか気になる
463 :
名無し募集中。。。:2012/06/22(金) 12:18:46.29 0
>>459 緊張感ある物語ですね
以前の分とどういう繋がりを見せていくのかも気になります
>「物体具象化能力」
「エネルギーの物質化」=マテリアライズというのを使ったことはありますが…それとは少しまた違いそうですね
464 :
名無し募集中。。。:2012/06/22(金) 14:31:34.02 O
こういう空気好きです
465 :
名無し募集中。。。:2012/06/22(金) 16:20:59.89 O
夕方ほぜなんと
466 :
名無し募集中。。。:2012/06/22(金) 17:41:17.48 0
同じく
467 :
名無し募集中。。。:2012/06/22(金) 19:06:45.39 O
新参ホゼナンター参上
468 :
名無し募集中。。。:2012/06/22(金) 20:16:12.85 0
古参ホゼナンターじゃぁ
469 :
名無し募集中。。。:2012/06/22(金) 21:00:16.24 0
470 :
名無し募集中。。。:2012/06/22(金) 22:19:17.33 O
支援あげ
471 :
名無し募集中。。。:2012/06/22(金) 23:33:35.18 0
472 :
名無し募集中。。。:2012/06/22(金) 23:35:08.63 0
夜に思い出してトイレ行けなくなりそうw
473 :
名無し募集中。。。:2012/06/22(金) 23:42:32.73 0
お久しぶりです かなしみですm(_ _)m来週辺から次回予告新シリーズVを始めたいと思います 忍法とか解らず不安ですが…
ギャグ多めの40話程度を予定 土日は現場参戦予定なので平日のみうPで最終話まで2ヶ月少々かかると思います
(シングル気まぐれ〜まじですかスカ!&寿司曲 アルバム7,5〜10MYMEとコンサタイトルのライバルサバイバルを使用)
かなしみ戦隊ミラクルズの続きとなります まとめサイトにて かなしみ戦隊、R、S、SS、ミラクルズ、
をお読み頂くと解りやすいと思います 皆さんと比べるとかなりヘッポコで矛盾点 誤字 脱字等あると思いますが
どうぞ宜しくお願いします また素敵にトリビュられる様頑張りますm(_ _)mすごく嬉しかったです!
今 くら寿司でビックらのヤツで苦戦しましたが何とかなりそうですw
愛ちゃんのは仕事で行けなかったけど 亀純リン、ガキさん卒コン参戦しましたヨ最高ダネ ナマタおもろいネ
ステーシー…そういえば筋少のアルバムまでもってるなぁ 「里沙は屍の中にナマタを見つける!」
>>469 スタンド能力か!?
474 :
名無し募集中。。。:2012/06/22(金) 23:59:14.41 0
まじですか!かなしみシリーズが帰って来るんですか!!
う、嬉しいです!!
地球に生まれてよかった!!!!
475 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 00:00:38.93 0
山本高広がいるな
476 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 00:03:13.65 0
いや、マジで「かなしみトリビュート」参加者としては感涙モノですよ
477 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 00:03:24.59 0
マジですかスカ!
楽しみが増えました!
どんな展開を見せるのか待ってます
478 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 00:23:42.73 0
みんなありがとうm(__)m暁の人の予告作品読んでて触発されたのだ あ、予告書きてえ…
すまん愛佳 ガキさん卒コン→ガキ&愛佳卒コンでしたm(__)m
おやすみです
479 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 00:28:53.23 0
うれしい予告だね〜
480 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 02:22:16.38 O
おやすみなんと
481 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 04:12:20.10 0
カメェ…
482 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 06:25:33.03 0
愛ちゃんブログにえりりんきてた
483 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 08:51:54.24 O
あさなんと
484 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 11:21:47.93 0
サタデーナント
485 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 11:33:18.57 0
新垣里沙は緊張する。
だされたコーヒーカップを震える手でつかみながら緊張のうえでののどの渇きを潤そうとしていた。
リゾナンターの中でも極めて冷静沈着なこの少女が珍しく緊張しているのには訳があった。
「緊張するのだ。安倍さんの家・・・念願の安倍さんの家だ。」
そう、ここは里沙が尊敬してやまない安倍なつみの家なのだ。
「ごめんね、待たせちゃって。」
するとなつみが里沙のいる部屋に入ってきた。
「いいえ、大丈夫です。でも、光栄です。安倍さんの家に招かれるなんて。」
「そうでもないべさ、正確に言うとここは裕ちゃんの家なんだから。」
「でも驚きました。まさか安倍さんがあの安倍裕次郎代議士と結婚していたなんて。」
「みんなには隠していたからね。」
なつみの言う裕ちゃんというのはダークネスの中澤裕子のことではない。
将来の総理大臣候補として注目されている人気若手代議士の安倍裕次郎議員のことである。
どこでどうであったのかは定かではないが、なつみは裕次郎の妻となっていた。
「それで安倍さん、私を呼んだわけというのは・・・まさか一緒にドライブとか。」
「できればそういう楽しい話をしたいべさ。でも、そうもいかないべ。」
486 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 11:35:04.64 0
ここはとある研究所のモニタールーム
白衣を着たひとりの男がモニターをじっと見つめている。
そこにはひとりの少女が大勢の戦闘員を相手に戦いを繰り広げている。
「所長、どうです。あの子の調子は?」
「いや、すばらしいよ。かつて田中れいなをテストした時とは比べ物にもならないほどだ。」
「テスト中に脱走されることなんてないでしょうね?」
「当たり前だ、あの時の反省は忘れてはいない。もしかしたらリゾナンターを倒せるんじゃないのか?」
「でも、その前に別の人間の命を奪ってもらうかもしれませんよ。」
数日後、都内のとある会場で安倍裕次郎議員の演説が行われた。
「ありがとうございます。わたしはこれからも誠心誠意努力していく所存であります。」
力強い演説をする裕次郎をなつみはそばで温かい眼差しで見守っている。
そして演説を聞いている一般市民の中に里沙が紛れ込んでいる。
もちろん、裕次郎の演説を聞くのが目的ではない。
「暗殺ですか?」
「裕ちゃんにはまだ言ってないんだけど、そういう噂がささやかれているべさ。なにせ、裕ちゃんって正義感の強い人だからそれを気に食わない人から恨まれてるって話でさ。」
「もしかして裕次郎さんを守る役目を・・・」
「そうがきさんに頼みたいんべさ。暗殺とかそういう諜報的なことはスパイしていたがきさんが一番詳しいでしょ?」
スパイの話自体は里沙にとってあまり触れてほしくない事実なのだが、なつみは悪気がないので仕方がない。
それに自分の経験や技術をなつみが買ってくれているだけでもうれしいのだ。
「まぁ、あくまで噂だからあまり気を張り詰めないほしいべさ。」
487 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 11:36:05.92 0
「とは言われたけど、今のところ異状はないからいいけどね。」
里沙があらゆる可能性を考慮して見回っているが、今のところ異状はない。
しかし事態を大きく揺るがす存在はすぐ近くまで迫っていた。
(衣梨奈は正義の味方になりたかったと。でも、でしゃばりすぎて大けがした。本当に死ぬかと思ったけど、目が覚めたらベッドの上やった。)
生田衣梨奈は正義の味方にあこがれて、とある喧嘩を止めようとした瀕死の重傷を負った。
そして目が覚めた先にあったのはダークネスの研究施設であった。
「君を正義の味方にするために訓練しよう。」
衣梨菜はダークネスの出した様々なテストをパスした。
もともと運動神経はそこまで悪くなかった。
そして特殊な能力が彼女の戦闘を助けていた。
「君の最初の任務は悪徳政治家とそれに取り巻く愚か者たちの排除だ。」
ダークネスは衣梨菜を巧みな催眠で操り、正義を行っていると思っている人形に仕立てた。
そして今、安倍裕次郎の演説会場に足を踏み込んでいる。
キィーン!
「くっ、何今の?」
里沙の頭に強烈な衝撃が襲った。
精神系の能力を使う里沙はこういった精神攻撃に耐性ができている。
しかし周りを見渡すと明らかに異常が起きていた。
「うう・・・うぉー!」
「ぎゃー!」
「ひやー!」
488 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 11:37:53.10 0
会場にいた人たちが急に発狂をし始め、安倍裕次郎の方へと襲いかかっていた。
見ると演説をしていた裕次郎も苦しそうだった。
事前に里沙が精神的な攻撃への防壁をかけていたが、それでも苦しそうだ。
なつみは裕次郎を保護しようと駆け寄っていた。
「どこかにこの状況を作り出している奴がいるはず・・・どこ!」
里沙は精神を集中した。
この混乱した状況の中、この原因を探し出すのは困難だがもとを断たねば最悪の事態になりかねない。
里沙の頭の中には精神が崩壊したような悲鳴ばかりが聞こえてくる。
(本当にこれでいいのかな?)
(うん、ひとりだけ違う・・・もしかして・・・)
里沙はこの混乱の中、ひとりだけ精神状態が違う存在を見つけた。
目の前が大混乱に包まれているのを衣梨菜はじっと見つめていた。
衣梨菜の力は精神破壊。
里沙のように精神をコントロールするのではなく、直接破壊してしまうのだ。
(正義の味方ってこんな光景を望んでないようなはず。正義の味方はみんなが幸せになることを願っているはずと。)
(正義を行うことには必ず暴力がつきもの。世の中はそうやって正義がなされていくのよ。)
衣梨菜の頭の中にひとりの女の声がささやかれた。
ダークネスのマッドサイエンティスト・Dr.マルシェである。
彼女が衣梨奈に話しかけているのだ。
489 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 11:38:48.66 0
(これが私たち、ダークネスの正義なのよ。)
(違うわ、あなたたちのやっていることは正義じゃない。まったく反対の悪に変わりないわ。)
衣梨菜の頭の中にもうひとりの女の声が聞こえてきた。
(あら、がきさんいたのね。また余計なおせっかいを・・・愛ちゃんに似てきちゃった。)
(私たちはもともとおせっかい焼きよ。あさ美ちゃん、その子を解放しなさい。)
(解放?何か勘違いしているわね。その子は自分の意思で行っているのよ。)
(ふざけたことを言わないで・・・私もかつて闇に投じていたからわかる。あなたたちのやりかたわね。)
かつてダークネスのスパイをしていた里沙にはわかっていた。
まだ世間の右も左もわからないようなこの少女に巧みな洗脳を仕掛けていることは・・・
(一体誰!衣梨菜の頭の中で話しかけているのは誰っちゃ!)
(彼女はあなたの敵よ。構わず倒して。)
(その声に耳を傾けてはだめ!あなたがやっているのは正義でもなんでもない!)
(もうわからない!衣梨奈にはわからんちゃ!)
キィーン!
さらに強烈な衝撃が里沙の頭を襲う。
衣梨菜の精神破壊が暴走しかけているのだ。
(まずい、あの子の精神自体が崩壊しかけている。こうなったら・・・)
里沙は暴走している衣梨奈に駆け寄る。
そして衣梨菜の頭の中に侵入し、あるイメージを伝える。
490 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 11:39:18.01 0
(私は新垣里沙。あなたのあこがれの正義の味方のひとりよ。)
(正義の味方・・・)
衣梨菜の頭の中にこれまでのリゾナンターの戦いのすべてが注ぎ込まれていく。
たとえ敵であろうと命を奪わない。
仲間や人々の危機には必ず駆け付ける。
(これが本当の正義の味方・・・よかった、衣梨奈は正義の味方に会えたっちゃ。)
衣梨菜の精神は眠りについた。
それによって精神破壊も収まり、人々ももとに戻った。
「こんな純粋な子を平気で駒みたいに利用する。ダークネス、それにマルシェ絶対に許さないから。」
怒りに身を燃やす里沙の様子をマルシェはモニター越しに見つめていた。
「やっとがきさんも私を敵として認識してくれたみたいね。でも、怒りは禁物よ。怒りは平常心をなくして取り返しのつかないことをしやすくなるんだから。」
491 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 11:42:44.59 0
>>485-490 「リゾスレ4周年突破記念 精神干渉と破壊の少女たち」
どうもリゾクラ作者です。
この短編シリーズの最終回です。
最後はリゾナンターで光と闇の両方を知るがきさんとえりぽんとのコンビでした。
今後は久しぶりに長編を書こうと今どんなテーマで行こうかと思案中です。
492 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 13:00:52.19 O
いまから読む!
493 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 13:01:41.92 0
キャラクターがリゾクラさんっぽいなって思いました。
ただ苦言を呈するなら・・・もう少し読みやすくして欲しいな
ほぼ同期作者からのアドバイスホゼ
494 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 15:00:03.07 0
反省ホゼナント
495 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 16:35:34.55 0
>>491 おっつー
前に言ってた「安倍内閣」のネタを織り込んでるワケね
ガキさんとナマタの組み合わせとか必然性があってよかったです
496 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 18:31:10.69 O
ホゼナンター
497 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 20:03:51.75 O
ほぜ
498 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 20:36:16.30 0
――――――――――――――――――――――
心の中を無にしよう。
この世界は贋物だ。
構成要素の配置が変わっただけの紛い物。
だから、戸惑う必要も捉われる必要もない。
現実(リアリティ)はすべて、この世界の外にある。
――――――――――――――――――――――
499 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 20:37:01.49 0
追いかける。
追いつめる。
この爽快感がたまらない。
敵の能力者は、大通りを突っ切ってそこの角を曲がった。
衣梨奈は知っている。そこの角は行き止まりだ。
もう奴に逃げ場はない。
「観念しなさい、悪の手先め!」
予想通り袋小路に追いつめられて慌てふためく男に向かって、衣梨奈は得意げに人差し指を突き立てた。
「このところの連続婦女誘拐事件の犯人はあんたやろ!調べはついてるけんね!」
「・・・へへ、こんなお嬢ちゃんに追跡されるたぁ俺も落ちたもんだ・・・・・・なあ!」
男は軽薄な笑みを浮かべ、右手を振り上げる。
白くしなやかに蠢くそれは、もはや人間のそれではなかった。
イカだ。
男は半獣人化し、その右手を長さ二メートルはあろうかというイカの足に変化させた。
「ガキには興味ねえ!死ねやぁ!」
白い右手が衣梨奈の身体をなぎ払おうと迫る。
衣梨奈はかろうじてそれを避けると、自らの腰に提げていたバトンに手をかけた。
「くらえ!」
500 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 20:37:46.85 0
引き抜いたバトンを、ブーメランの要領で投げる。
しかし微妙な体勢から放たれたバトンはブーメランのようにはいかない。
ぐらぐらと不規則な回転を繰り返し、衣梨奈のバトンは男の遥か後方に逸れていった。
「ギャハハ!どこ狙ってやがる!」
「いや・・・これでいいっちゃん」
衣梨奈が不敵に笑う。
「半獣化能力者には、能力だけではカバーできん大きな弱点があるとよ」
すると突然、バトンの軌道が変わった。
あさっての方向に飛んだはずのバトンが変則的に曲がり、さらに大きく回転を加えて戻ってくる。
「それは」
「んがっ!!」
戻ってきたバトンが直撃し、男は地面へと倒された。
イカの足と化した白い右手も、隠し玉のつもりだったのだろうカニのハサミと化した赤い左手も、ぴくりとも動かない。
「あ・た・ま。どいつもこいつも、そこだけは人間のままやけんね」
死角から勢いよく飛んできたバトンが後頭部に当たり、気を失っている。
男が起き上がってくる気配はなかった。
「いえーい!生田衣梨奈、完璧完全大勝利ぃー!またバトンの腕が上がったかもー!」
501 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 20:39:02.29 0
「“だいしょうりぃー!”じゃないよ、まったくもう」
勝利の余韻に水を差す、不機嫌そうな声。
衣梨奈が振り返るとそこには、腕を組みこちらを睨むように見つめる鞘師里保と、困ったように眉尻を下げる譜久村聖の姿があった。
「念動力で操ってるんだから“バトンの腕”関係ないじゃん。そもそも犯人が現れたらまずみんなに連絡して、
それから尾行って話に決まったでしょ?何一人で勝手に突っ走っちゃってんの」
「だぁってー、犯人がもう女の人に声かけてたんだもん。このままじゃ次の犠牲者が出ると思って」
「だからって、街中を『こいつ犯人です!こいつ犯人です!』って言いながら追いかけまわすことないじゃん。ホントえりぽんってKYだよね」
「ちょっと!なん、その言い方!」
「本当のことを言ったまでだよ。フクちゃんが通行人の記憶を全部操作するのにどれだけ苦労したか、わかってる?」
「あ、あの、里保ちゃん。そのくらいでもういいから・・・」
喧嘩腰になる里保と衣梨奈の間に、聖が割って入る。
「えりぽん。私たちは目立たずひっそりと、でも確実に敵を倒していかなくちゃいけない。どうしてだか覚えてる?」
「・・・うちらは・・・少人数だから。敵がその気になったら、すぐ潰されちゃうから」
「そうだよね。『でもそこが秘密の正義の味方って感じがしてかっこいい!』って、えりぽんが言ってくれたんだよね」
「・・・・・・」
502 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 20:39:40.64 0
聖の口調は優しかった。
子供の間違いを正す母親のように、優しく衣梨奈に言い聞かせる。
「あんまり派手な妨害をすると目をつけられちゃう。目をつけられたら・・・殺されちゃう」
「・・・ごめん」
「それに、今回はえりぽんだって危なかったんだよ?犯人が逃げた先にもっと強い敵が待ち構えてたらどうするつもりだったの?」
「ごめんってば!」
優しく追及されることが却って辛いこともある。
衣梨奈は強引に話の流れを断ち切り、言った。
「勝手に単独行動に出てすみませんでした!もうしません!」
それこそ子供のするような、投げやりな謝罪だった。
だが衣梨奈の性格を知っている二人は、そんなことに目くじらを立てたりはしない。
「まあ、わかればいいんじゃない?」
「警察には通報しておいたし。・・・帰ろうか。みんな心配して待ってるよ」
里保は矛を収め、聖は笑って手を差し出す。
衣梨奈は膨れっ面をしながらもその手をとる。
それが彼女たちのバランスだった。
この世界においての彼女たちの関係は、そんな風にして成り立っている。
503 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 20:40:10.76 0
= = = =
衣梨奈が誘拐事件の犯人を倒した数日後。
聖たち八人は、彼女たちの本拠地である街外れの空き家に集まった。
空き家と言っても、聖の家が所有して聖が離れとして使うことを黙認されている“生きた”家だ。
誰が手を回したか知らないが当然のように電気は通うし、家具もきちんとされている。
「鈴木さーん!さっきそこで膝を擦りむいちゃったんですけど、これって治してもらえますかねー?」
「ちょっとやめてよ、くどぅー。香音ちゃんは薬箱じゃないんだよ」
「鞘師さんはもっと大きなケガ治してもらったりしてるじゃないですか。ハルこれから撮影なんすよ」
「“傷の共有”使った時の傷と、そこら辺を走り回ってできた傷を一緒にしないでほしい」
「まぁいいからいいから。ほら、どぅー。膝見せてごらん」
八人が集ったリビングはいっそう賑やかだった。
この賑やかさは聖も好んでいたが、真面目な話を切り出すには向いていない雰囲気だと常々思っていた。
「みんなー!ちゅーもーく!」
左手に鍋、右手におたまを持って、大きな音が出るように叩く。
やや古典的だが、効果的なやり方ではあるようだ。
思い思いにくつろいでいたメンバーの視線が聖に集中する。
「はい。先日の誘拐事件はご苦労様でした。みんなの活躍のおかげで犯人は無事逮捕。以後、能力者による事件は今のところ確認されていません」
聖の報告に対して、「イェイ!」「やったー」などと喜びの声が返される。
504 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 20:40:55.43 0
「ただ、今回みたいな事件がまた起こらないとも限らない。だから今日は、いざという時のためのペアを決めたいと思います」
「ペア?」
「そう。一人一人が別々の場所に張り込むのって、効率は良いんだけどやっぱり危険じゃない?
だから今のうちに、そういう事態になった場合に一緒に行動するペアを決めておきたくて」
先日の一件での反省を踏まえた発案だった。
こうすれば、衣梨奈のように深追いして身を危険にさらすメンバーはいなくなる。
「なるほど。じゃあ、私とまーちゃんは一緒にしてください。“白銀のキタキツネ”様をお守りするのが“蒼炎”を背負う私の使命です」
「もうあゆみんってば。そうゆうのヤダって私ずっとゆってるのに」
「亜佑美ちゃんはそう言うと思ったよ。他には?希望ある人はいる?」
聖は周りを見回した。
蝦夷の頃より続く神使の家系である佐藤優樹と、代々神使に仕えてきた一族の末裔・石田亜佑美がコンビを組むことは予想していた。
問題はそれ以外の組み合わせだ。
どういったペアが適当か、聖には皆目見当がつかない。
「希望っていうか推薦なんだけど、えりちゃんは聖ちゃんと一緒がいいと思う」
鈴木香音が手を上げて言った。
「力ずく以外でえりちゃんの暴走を止められるの、聖ちゃんしかいないもん」
「確かに。うちがやったら鋼線でケガさせちゃうけど、聖ちゃんなら“精神干渉”でえりぽんの心を直接止められるもんね」
「ちょっと意味が違うんだけどな・・・」
「え〜!でもでもぉー、リーダーとサブリーダーはバラけたほうがいいっちゃない?」
「は?サブリーダーって生田さんだったんすか?」
「年齢と落ち着きと話の面白さから考えて、てっきりはるなんがサブリーダーかと思ってました」
「えっ!いやいやそんな!私なんてそんな!」
505 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 20:42:01.15 0
聖なら衣梨奈を説得できると考えての香音の提案だったのだが、なぜだか話は逸れていく。
いつしか議題は、「このチームのサブリーダーは誰か」ということになっていた。
「待って、こういうのは年功序列って決まってるの!この中で聖との付き合いが一番長いのはえりやけん、えりが」
「付き合いの長さならフクちゃんと幼なじみのハルのほうが上ですけどね」
「年齢だったら飯窪ちゃんとだーいしのほうが上だし」
「ちーがーうー!そういうことじゃなくって!」
「あ、でも生田さん、この前お一人でイカカニ男を倒したんですよね。すごいです、私一人じゃ絶対無理です!
やっぱりそういう実力を考えると、生田さんのほうがサブリーダーに向いてるんじゃないかなって思うんですけど・・・」
「出た、はるなんのヨイショ芸」
「ほらほらぁ!本人もそう言ってるんだから!サブリーダーは、生田衣梨奈ってことで!」
「しょーじき私はどーでもいいです。ウフフ」
「“どーでも”!?“どっちでも”の言い間違いだよね優樹ちゃん!ねえ!」
= =
話し合いは終わり、解散宣言が出される。
留まるも帰るも個人の自由だ。
これから雑誌の取材の予定が入っているという工藤遥は、大慌てで帰り支度を始める。
「売れっ子の子役も大変だねえ」
「忙しいのに呼び出してごめんね、くどぅー」
「いえいえ。ハルはお仕事してるより、こうしてみんなと過ごすほうが楽しいですから」
遥はテレビや雑誌などで活躍する女優の卵だった。
数年前に母親が応募した子役オーディションに合格して以来、それなりに忙しい日々を送っている。
506 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 20:42:54.33 0
「あっ!くどぅー、いつもの駅は行かないほうがいいよ!accidentのかんばんが視えた!」
「アクシデントの看板?・・・あぁ、人身事故の表示か。サンキューまーちゃん。タクシーで行くよ」
「一人でタクシーなんて大丈夫?仕事場まで“瞬間移動”で送ろうか?」
「大丈夫だって。それよりはるなん、来週からテストって言ってたじゃん。勉強しなくていいの?」
「もぉ!思い出させないでよー!」
「それじゃ、みなさん!お先に失礼しまーす!」
最後に威勢よく挨拶をして、遥は仕事へ向かった。
それからまもなくしてテスト勉強を理由に春菜が、門限を理由に香音が、アルバイトを理由に亜佑美が、それぞれこの場所を後にする。
残ったメンバーは再び他愛のない話に興じた。
やがて、衣梨奈がふと何かに気がついたような顔になる。
「・・・あれ?」
「どうしたの、えりぽん」
「いや、大したことじゃないっちゃけど・・・」
衣梨奈が思い返しているのは、先日の戦闘の後と先程の会話の記憶。
あの日自分は確かに、その場に居合わせなかった仲間に闘いの顛末を聞かせた。
が、“使われなかった”能力についてまで言及した覚えはない。
それなのに彼女はなぜ、敵をはっきり『イカカニ』と称することができたのだろう。
「えり、この前倒した敵がイカ以外にカニの手も持ってたこと、はるなんに教えたっけ?」
507 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 20:43:42.52 0
= =
“女”は、携帯電話で誰かと連絡をとっている。
「はい、そうです。今日は非常時の取り決めだけで特に連絡事項は、えっ・・・ああ、鞘師ですか?
鞘師は鈴木とペアになりました。・・・・・・そうですね、その時に仕掛ければよろしいかと。・・・はい、ではまた」
一拍、二拍、三拍と間を置いて、無機質な電子音。
接続が断たれたことを確認し、女は通話終了のキーを叩いた。
例外的な場合でない限り、こちらから通話を切ることは認められていない。
女は小さく溜息を吐いて空を見上げた。
物憂げだったその表情が、次第に諦念的なものへと変わっていく。
「『私が身を置く組織は破綻する運命にある』。初めにそう忠告したじゃないですか、譜久村さん・・・」
自嘲気味に呟く“春菜”の顔は、仲間の誰にも見せたことがない深い哀しみに包まれていた。
508 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 20:46:36.99 0
――――――――――――――――――――――
「また神様ごっこ?」
その一言が、今回の箱庭世界に蓋をした。
声をかけられたことで集中が途切れ、中澤裕子の作り上げた“箱庭”が霧消する。
中澤の身に現実(リアリティ)が帰ってきた。
瞼の裏で群像劇を繰り広げていた少女たちの姿は、影も形も見えない。
あるのはテーブルとソファと、コーヒーの入ったカップを片手に持った飯田圭織の姿だけだった。
「よく飽きないよね。何をそんな熱心にシミュレーションしてるの?」
「シミュレーションやない。再構築や。この世界の構成要素を全部バラして組み立て直したらどうなるんかなぁ思ってな」
「ふうん」
わかったようなわからないような曖昧な返事をして、飯田は踵を返す。
おそらく、わかってはいないだろう。
飯田は中澤の能力を把握している数少ないメンバーの一人だが、彼女とてその能力の全容を理解しているとは言い難い。
509 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 20:47:20.30 0
自らの持つ空間移動能力によって、中澤は並行世界に起こるすべての事象を把握することができる。
あらゆる並行世界に共通して発生する要素と一定の条件下でしか発生しない要素とを区別し、それらを再度組み直して今までにない世界を頭の中に構築する。
中澤はその作業を“箱庭作り”と呼んでいた。
つい先程まで見ていたのは、高橋愛以下九名のリゾナンターがこの世に存在せず、
まったく別の少女たちが高橋らの立場に成り代わって存在している世界である。
「で?再構築したらどうなったの?」
「興味深いことがわかった。色々とな」
今回高橋らの代わりとして用意した少女たちは、敢えて高橋らと同じ能力を持つよう調整した。
念動力や治癒といったオーソドックスな能力だけではない、傷の共有や獣化といった変わり種まで用意したのだ。
それなのに。
「・・・いっこだけ、どうしても作れへんかったモンがあるんや」
共鳴増幅能力の使い手、田中れいな。
彼女の代わりだけはどうしても再構築することができなかった。
新垣里沙のスパイ要素や、ジュンジュンとリンリンのような神使と庇護者の関係にある者などは配置できたというのに。
「とっておきのイレギュラーやな、アレは」
“田中れいな”は、完全に世界から独立した要素だった。
神の真似事では生み出せない絶対的な存在。
唯一無二の“個”だ。
510 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 20:47:53.97 0
中澤は家具から距離をとり、何もない空間を切り裂く。
「おでかけ?」
「ああ。実地調査に行ってくる」
「なんだ。せっかくおいしいコーヒー持ってきてあげたのに」
「マジか」
「テーブルに置いてあるやつ。お中元にもらったの」
「はよ言ってよ」
「置いたからわかると思って」
コーヒーをすすりながら飯田が言った。
よく見れば、テーブルの上には見慣れないコーヒー豆の袋が載っている。
「惜しいことしたなぁ」
「賞味期限は再来年の七月だってさ」
「ならええわ。それまでには帰ってこれるやろ」
「あれ、飲むの?圭織、持って帰ろうと思ったのに」
「飲むわアホ。あたしの机の一番下の引き出しの中に入れといて」
「オッケー。一番下の引き出しの仕切り板の奥の隠しスペースだね」
「ちょ、待って。なんであんたがあたしの机の秘密を知ってるん」
奇しくも、いつまでに答えを出すべきかの期限が定まった。
遅くとも再来年の七月。
その頃までには、この世界における田中れいなというイレギュラーの扱いが決まっているはずだ。
含み笑いを漏らして、中澤は裂けた空間の中へ足を踏み入れた。
511 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 20:49:54.11 0
>>498-510 『Reconstructed Resonantor 〜箱庭の少女たち〜』です
リゾスレと910期の融合を真面目に考えたらこんな形になりました
=====
以上転載しました
痺れた…!
見事な発想とそれを形にできる力に痺れました
512 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 21:29:02.35 0
>>511 うむ。面白い
イカカニゴンさんが登場してるのもポイント高い
能力設定も全部は出てないけどあまり無理はなさそう
513 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 21:51:08.07 0
>>511 読めば読むほど味わいが濃くなる作品ですね
アイデアと筆の力、そしてこのスレに対する造詣が深くなければ書けない一作ですね
初めの9人と微妙に能力・立場を変えつつ、ここまでリゾナントを湧かせるのは溜息が出る
れいなの特殊性もこのスレの中でキーと思っているので、こういう解釈もあるんだなあと
4年という年月があり、多くの作者が書いたからこそ面白さが共鳴するんだなあって。
514 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 22:09:39.41 0
>>491 ラストのマルシェのモノローグが物凄くクールだと思った
正義というキーワードでガキさんと生田さんが繋がる過程も熱くて好きですよ
>>511 読んでいて最初の方はこのド新参めと思ったが読み終った今参りましたって読後感が残ってる
ウマイこれホント
515 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 23:15:05.08 0
>511
結果的に全然登場していないれいなの孤高というか独自性が語られているという巧みな構造ですね
箱庭の中の彼女たちの活躍もまた見てみたいという気持ちにさせられましたw
516 :
名無し募集中。。。:2012/06/23(土) 23:15:25.70 0
イカカニ男が再登場して嬉しいw
517 :
名無し募集中。。。:2012/06/24(日) 00:16:07.00 0
>>511 箱庭の少女たちの物語にもリゾナントしたくなりますね
跡形なく霧消するにはあまりにも惜しいくらい魅力的でした
このアイディアと構成力にはほんと脱帽です
れいなのチカラの特異性を9人と8人という人数差を利用して表したあたりは嫉妬さえ覚えました
「現実(リアリティ)」の物語の続きは紡がれるのでしょうか…?
518 :
名無し募集中。。。:2012/06/24(日) 02:14:42.21 0
>>511 箱庭の娘。達が消えてしまいそうな儚い存在なのが切ないね
519 :
名無し募集中。。。:2012/06/24(日) 04:13:20.93 0
おやすみなんと
520 :
名無し募集中。。。:2012/06/24(日) 05:56:38.93 0
>>511 すごく面白かったです
単純に8人の話としても面白いのに、分かってから読み返すともう全然違う話になってる
能力の配置も微妙に9人とは違うのが余計に箱庭感を増しててなんとも
521 :
名無し募集中。。。:2012/06/24(日) 08:50:15.33 0
70も続いているだけはある
522 :
名無し募集中。。。:2012/06/24(日) 10:18:21.23 O
うむ
523 :
名無し募集中。。。:2012/06/24(日) 10:40:00.41 0
月に1スレのペースだから
あと2年半で100か
524 :
名無し募集中。。。:2012/06/24(日) 12:32:22.23 0
チェンジ!ホゼナントキショピンク!
525 :
名無し募集中。。。:2012/06/24(日) 12:33:03.89 0
そこまで行きますかねw
とりあえずかなしみ戦隊を迎えるためにホゼナント
526 :
名無し募集中。。。:2012/06/24(日) 14:27:40.31 0
サンデーナント
527 :
名無し募集中。。。:2012/06/24(日) 16:37:26.40 0
/
528 :
名無し募集中。。。:2012/06/24(日) 18:01:29.92 0
100グラム2500円の肉が食べたいです
529 :
名無し募集中。。。:2012/06/24(日) 18:22:25.36 0
ノリ*´ー´リ<でもそうはならなかった!
530 :
名無し募集中。。。:2012/06/24(日) 19:58:10.57 O
相変わらずひどいなww
531 :
名無し募集中。。。:2012/06/24(日) 21:10:47.73 0
こま切れ肉でした・・・
532 :
名無し募集中。。。:2012/06/24(日) 22:31:45.62 0
ドンマイw
533 :
名無し募集中。。。:2012/06/24(日) 22:32:30.75 0
165分割のステーキはいかが
534 :
名無し募集中。。。:2012/06/24(日) 23:57:38.04 0
フォークじゃ刺せなさそうだな
535 :
名無し募集中。。。:2012/06/25(月) 01:41:24.12 0
そのステーキ本当にステーキだろうな?w
536 :
名無し募集中。。。:2012/06/25(月) 03:24:15.95 O
おやすみなんと
537 :
名無し募集中。。。:2012/06/25(月) 05:13:19.04 0
538 :
名無し募集中。。。:2012/06/25(月) 06:56:17.07 0
新シリーズ来た!
不穏な立ち上がりにwktkです
539 :
名無し募集中。。。:2012/06/25(月) 07:40:04.48 0
ついにきましたわね
シリーズ全体に影を落としてきたミティとやらの謎が解明されるのを待ってますわ
540 :
名無し募集中。。。:2012/06/25(月) 09:44:56.08 0
何故におネエw
スレが立ったときからあるシリーズが今度はどう展開するのか楽しみにしてます
541 :
名無し募集中。。。:2012/06/25(月) 11:53:26.89 0
カセットテープ
542 :
名無し募集中。。。:2012/06/25(月) 12:10:20.73 0
ちょっと海岸行ってくる
543 :
名無し募集中。。。:2012/06/25(月) 13:01:06.90 0
>>571 乙です
卒業していく小春を送ったミラクルズのように現実の動向を織り込むのか無視するのか
楽曲をどう料理するのかとともに楽しみにしています
544 :
名無し募集中。。。:2012/06/25(月) 13:05:20.13 0
545 :
名無し募集中。。。:2012/06/25(月) 15:07:24.08 0
新シリーズとともにロングパスにも期待していますw
546 :
名無し募集中。。。:2012/06/25(月) 17:17:38.96 0
いろいろ楽しみがあるなオイ
547 :
名無し募集中。。。:2012/06/25(月) 19:20:08.71 0
スレが落ちては何にもなりませんわ
548 :
名無し募集中。。。:2012/06/25(月) 20:41:03.01 0
ほぜなんとですよ
549 :
名無し募集中。。。:2012/06/25(月) 21:48:18.69 0
ほぜ
550 :
名無し募集中。。。:2012/06/25(月) 22:51:49.74 0
空いてるみたいなので一本
【注意】
・ステイシーとは一切関係なし
・あの「闇に棲む者」を100とした場合7程度の残虐描写があります
大したことはありませんが一応注意をばw
そこはまるで地獄だった。
幾重にも折り重なった屍の中に五体満足なものは見あたらない。
あらぬ方向に折れ曲がった手足。
地面を蛇のように這う臓腑に転々と転がる眼球。
どの屍の顔も恐怖に歪み、狂気に染められていた。
そんな地獄に咲く花一輪。
この惨状の元凶、生田衣梨奈。
…また守れなかった。
公安調査庁の特別捜査官新垣里沙は首都圏で発生した無差別テロで最も被害の大きかったR地区を訪れていた。
同行者がいなかったのは、未だ全容の判明していないテロの実行犯グループが第二波の凶行を起こす可能性を否定しえないため、その対応に人手がいくつあっても足りなかったからだ。
…起きてしまったことより、これから起こる被害を防ぐことに注力するのは当然といえば当然だよね。
では捜査官の中でも優秀な里沙が何故犯行の再発を防ぐ任務から離れているのか?
その理由はR地区で発生した事態の特異性にある。
テロの実行犯グループと彼らによって扇動された暴徒たちが同士討ちを始め、争いあい殺しあった結果、全滅してしまったのだ。
錯綜する情報からその状況を知った里沙には思い当たるところがあった。
その事態を引き起こしたのは、里沙のよく知る人物だという予感があった。
もしもそうだったらその人物を保護しなくてはならないという思いから、毒ガスによる幻覚という捏造した情報まで流して、R地区への単独潜行を認めさせた。
そして里沙は屍の中で見つけた。
かつて里沙が所属し、今は道重さゆみをリーダーとして活動を続けるリゾナンターの一員。
【精神破壊】能力者、生田衣梨奈の亡骸を。
他の屍と同様に、衣梨奈の遺骸も惨憺たるありさまだった。
踏み砕かれた足の皮膚は裂け骨が覗いて見える。
手の爪は全て割れ、左腕に至っては千切れかかっている。
身体にも無数の傷を負っているが、不思議と無傷だった顔は微かに笑みを浮かべていた。
…【精神破壊】を持つあんたがチームの前衛で戦えば、いつかこういうことになりかねないと思った。
だからわたしがリゾナンターから去る前に、最後のリーダー権限で強制的にあんたを後方支援に回した。
あんたの身体能力なら立派に前衛が務まることはわかってたし、わたしの後任になるさゆはそのことでちょっと不満そうだったけど、最後はわかってくれた。
あんたの【精神破壊】がアンコントローラブルな能力だってことを時間をかけて説明したからね。
肝心のあんたをどうやって納得させるか悩んでたけど、あんたは意外と素直に応じてくれた。
「後方支援って響きがなんかカッコイいし。 にーがきさんもそういう地味目な仕事を続けてきて、最後はリーダーになったっちゃろ。衣梨奈もにーがきさんと同じ道をゆくたい」
…あんたの【精神破壊】は打ち込まれた敵の精神を焼き尽くす闇の炎だ。
でもその炎は敵だけでなく、あんたの側にいる仲間も、そしてあんた自身の精神を蝕んでゆく。
わたしがあんたを前衛から外したのは、あんたのことを心配したからなのは確かだけど、他のみんなに被害が及ぶことを危ぶんだからでもあるんだ。
そんなあたしの冷たい打算で行った人事をあんたは喜んで受け入れた。
わたしが決めたことだからという理由で。
「にーがきさん、お仕事はどうですか。 衣梨奈はばっち元気でやっとうよ。こんど新しく入ってきたまあちゃんは高橋さんと同じテレポーターっちゃけど、まだ能力の発動が安定してないので…」
…あんたから届くメールに添付されているメッセージには、あんたから見た後輩の様子が克明に記されていた。
各々の能力の強さやウイークポイントをあんたはよく見ていた。
私に助言を求めていたけど、私は何も言わなかった。
さゆやれいなのことを気にしたからじゃない。
リゾナンターを離れてしまったわたしよりも、その中にいるあんたの思うようにすべきだと考えたんだ。
「にーがきさん。頑張った衣梨奈のことを誉めて欲しいっちゃ」
息絶えた衣梨奈の貌は今にもそう話し出しそうだった。
首都圏で起きたテロの標的は公共機関だった。特に警察や消防、病院など市民の安全に直結する末端が優先的に狙われた。
そしてその中にリゾナンターの本拠、喫茶リゾナントも含まれていた。
表向きはマスターが何代も代替わりした平凡な喫茶店。
実態は持って生まれた異能ゆえに苦しむ能力者にとっての最後の砦。
・・・省からの資金援助を受けてはいるが、公的機関のリストには一切記載されていないリゾナントが狙われた。
・・・省もしくは政府の中に今回のテロの首謀者と内通してるものがいるということだろう。
外見は普通の喫茶店のリゾナントだったが、その襲撃に割かれた人数は第一波の中でも最大級のものだった。
そして狡猾なことに襲撃者の前面には扇動され暴徒と化した市民が押したてられていた。
現在のリゾナンターの先鋒役を担う鞘師、石田、工藤の面々は罪を犯したと暴徒とはいえ市民を攻撃することをためらった。
その逡巡を突かれ包囲されたリゾナンターの危機を救ったのは、普段は後方支援を担当する生田衣梨奈だった。
仲間の制止を振り切り、ただ一人突出して仲間から離れ、暴徒のはるか後方で高みの見物を決め込んでいたテロリストの中核に切り込んだ。
衣梨奈を孤立させまいと続こうとした他の仲間の誰もがその速さにはついていけなかった。
さらに衣梨奈が発動した【精神破壊】により闘争を繰り広げる暴徒の群れが、その追随を阻んだ。
そして今、衣梨奈の遺骸がここにある。
そこはリゾナントのある町から十数キロ離れた郊外の一角。
敵を追い立てて、追い立てて、リゾナントから引き離せるだけ引き離したところで衣梨奈は息絶えたのだろう。
その最期は誰かの手によるものなのか、体の器官が悲鳴を上げたものなのかは定かではない。
しかし衣梨奈は自分の心の中の闇の炎によって自らを焼き尽くしたことだけは間違いない。
ここに来るまでは定かでなかった推測が、衣梨奈の遺骸を見た今となっては確信に変わった。
精神の焼かれ方が比較的浅い人間を救出しながら、衣梨奈と合流しようとしたリゾナンターたちは現在保護という名の禁足状態下にある。
リゾナンターは正式な兵士ではないが、その存在はある種の戦力に対する抑止力となりうるからだ。
衣梨奈を助けるためには、この国の公権力の全てを完全に敵に回しかねないほど熱くなっていたさゆを説得するようれいなに頼まれた里沙は非公式のルートを通じてこう伝えた。
「ナマタは私が見つけ出して、助けるから」
…でも結局助けられなかったね。
まったく、ただ守りたいっていうそれだけの思いを叶えるのがこんなに難しいだなんて思いもしなかった。
それともバカな私が簡単なことをいつのまにか難しくしてしまっていたんだろうか。
立つ位置が変われば見えてくる物も違ってくる。
公権力の中で力を得ることがで、みんなを守ることができると思って、私はリゾナンターを離れた。
その結果がこれだ。
私はリゾナンターに留まるべきだったのか、それとも衣梨奈を強引に引き抜いて私の傍に置いておくべきだったのか。
里沙は公安調査庁のIDカードを手にしていた。
それを手にすることでリゾナンターを守ろうとしていた。
しかし結局それはかなわなかった。
ぼんやりとIDカードを見ていた里沙は、何者かに誰何されていることに気づかなかった。
いや、ほんとうは気づいていたが今はそれに応えるのが億劫だったのかもしれない。
「お前はその女の仲間だな」
「はぁ?」
「お前の顔は資料で見たことがある。 リゾナンターの前リーダーにして公安調査庁の捜査官、新垣里沙。 まり私たちの敵だ」
里沙を取り囲む数十人の男たち。
その位置は高低を変え、遮蔽物を利用して仲間同士が射線に入らないように配されている。
返答しだいでは蜂の巣にしてくれるということだろう。
「その女は悪魔だ。 まるで殺戮を楽しむように笑いながらこの惨状を生み出した。 その遺骸は晒し者にして次なる戦いの烽火にしてくれる。そしてお前は生きたまま捕らえてやつらとの取引材料にしてやる」
里沙には男の言うことがわからなかった。
何を言っているのかはわかったが、わかったということと理解するということは別のものだ。だから黙殺してもよかったが、衣梨奈を悪魔だと言ったことは許し難かった。だから…。
「この子は確かに狂戦士さ。 戦いの中に身を置けば恐怖を忘れ、自分が壊れたって戦いをやめない。でもそれは大切なものを守るため」
「そんなことはどうでもいい。 さあそいつの死体を渡してもらおう。 そしてお前は大人しくしてもらおう」
冷笑で報いることが新垣里沙の答えだった。
「お前、逆らうつもりか。 いくらお前が能力者であってもこの人数とでは戦いにならないぞ」
「戦うなんてとんでもない」
里沙の唇が歪んだ。
「私はあんたたちなんかと戦うつもりなんかないよ、ただこの娘の遺骸に対してひれ伏せ! そして敬意を払え!!」
数十人の男が一斉に平伏した。
ある者は高所にいたが、平伏した所為で地上に転落した。
ある者は平伏した所為で暴徒の屍に顔を埋めた。
ある者は平伏した際に銃が暴発して怪我を負った。
それでもその場にいる生命ある者の全てが里沙の前に、衣梨奈の遺骸の前にひれ伏した。
いや、ただ一人だけ、里沙に声をかけた男だけは…。
「ふん、あんたは生意気に精神にロックをかけられるんだね」
「マインドコントロールか。 噂に違わず薄汚いチカラだ。 人の尊厳を踏みにじることがそんなに誇らしいか」
「まったくあんたの言うとおり薄汚いチカラだと我ながら思うよ。 守るべき者を守り通すことができなかった」
自分を蔑みながら里沙は男に尋ねた。
今回の大規模テロの黒幕を。 リゾナンターの砦を売った裏切り者の正体を。
「バカにするな。 お前ごときに誰が言うか」
「教えてくれないんだったら…」
里沙は膝まづきながらも、額づくことに必死に抗う男に歩み寄った。 そして…。
「落ちな」
男は見た。
ゆっくりと自分に迫ってくる里沙の掌を。
避けることができず、里沙の掌で視界を塞がれた男は、ゆっくりと押し倒された。そして。
暗い闇の中を男は転がり落ち続けていた。
極めて垂直落下に近いが、固い地面だか側壁の上を転がり続けていた。
数秒か、十数秒か、数十秒か。
どんなに長くとも一分には達しない時間を転がり落ち続け、男の落下は突然止まった。
自分の体が収まる程度の平坦な床面に男は転がり落ちていた。
転落の衝撃が収まり、痛みが鈍くなってから落下した時間から自分が何メートル落下したのか計算しようとした男だったが、すぐ諦めた。
加速度にG。
小難しい計算は苦手だった。
男には判っていた。
仮に何メートル落ちたか解ったところでほとんど意味が無いことを。
自分は今、里沙の作り出した幻の中に囚われている。
もしも心臓が止まるイメージを作り出されて認識させられればリアルな死につながりかねない。
精神の中での死は肉体の死につながる。
だから脱出しなければ。
致命的な攻撃を受ける前に脱出しなければ。
まだ体に痛みは残っているが、これは里沙の能力によって精神が作り出した幻だ。
自分なら克服できると暗示をかけて、男は手探りで周囲の状況を把握しようとする。
幻とはとても思えない、リアルな感覚。
今男はV字型の巨大な側溝の底にいた。
脱出するとしたら、前後方向か…。
いやっ、上だ!
男は飛んだ。
ここは精神の中だ。
だから物理的な法則にとらわれることなどありえない。
ひたすらに、飛んで飛んで飛んで飛んで…。
数時間か、あるいは数日間飛び続けても側溝を抜ける兆しは見えない。
もしかしたら自分は上に飛んでいるのではないのではないか。
疑念に支配された瞬間、男は落ちた。
落ちて落ちてひたすらに落ちて、溝の底に落下した時には心臓が破烈しかねない衝撃に襲われた。
それが里沙の精神攻撃だと直感した男は待ちに転じた。
同行していた仲間は里沙にやられたが、それは一部に過ぎない。
この国を、この世界を変えるために共に戦う同志は今も増え続けているはずだ。
…そうとも。無駄に動いてはあの女の思う壺だ。
他の仲間が救出に来るまで待ちの姿勢に徹してやる。
男は待った。
待って待って待って待って待って待って…。
最初の数日間は仲間に救い出された暁には、里沙をどうやって処刑するか想像して時を過ごした。
次の数週間はこれまでに学んだ知識を再確認することで費やした。
次の数ヶ月間は生み出した数十の架空の人格と友達になって平凡な学園生活を送ってみた。
次の数年間は新しい言語体系を作り出し確立することでやり過ごした。
更なる数百年ひたすら許しを乞うことで消えた。
最後の数千年は…無だった。
そして救いの光が見えたとき、男は手を伸ばして…。
「で、どう。 黒幕のこと喋ってくれる気になった」
最初はそれが何のことなのかわからなかったし、女の名前すらわからなかった。
しかし眩しい光の中にいるその女の顔を見つめているうちにその名前を思い出した。
「あ、あ、あんたたたたたたは、にいにいにいがき、りささささささ」
「私の名前はいいいからさ。リゾナンターの情報をあんた達に流した人間の名前を教えてくれる?」
「ひう、ひう、ひいますからから、たたたたたたすけけけけてえ」
【精神操作】によって数千年の孤独を味わった男が明かした名を聞いた里沙は得心した。
以前から芳しくない噂を耳にしていた政府高官。
収集していた状況証拠と照らし合わせれば、彼は内通者というよりも首謀者に近い存在だ。
しかし司直の手が及ぶことはない。
組織を細分化し、情報網を意図的に錯綜させることで、自分と実行犯グループとの関わりを隔絶に近いレベルまで偽装しているようだ。
…ていうことはどんな手段を用いてもあいつを潰さなければこういうテロは何度でも起こりうるってことだよね?
里沙は歯が抜け落ち、瞳が混濁し、麻痺した筋肉を抱えて苦悶する男の残骸から目を逸らした。
五感をシャットダウンし、体内時計を狂わせ無限ループをしかける。
それだけのことで人の器は容易に壊せる。
しかしそれだけのことをいまだかつて行ったことはなかった。
自分のチカラの本当の恐ろしさを認識してからその行使には常に注意してきた。
しかし、これまで守ってきた一線をなんともあっけなく破ってしまった。
生涯の戦友や年下の相方。
同世代の後輩に異邦から来た同胞。
何人もの仲間が傷つき倒れ去っていっても冷静さを作れていた自分の心が今、どす黒く燃え盛っている。
…なんのことはない。 私の精神も知らない間にあんたに焼かれてたのかもしんないね
里沙はオフにしていたイリジウムの衛星携帯電話の電源を入れる。
するとそれを待っていたように、着信が入る。
それはリゾナンターを直接管轄する省庁からの連絡だった。
新たに起こり得るテロの第二波へのリゾナンターの投入の是非を里沙に問うていた。
本来権限の無い里沙にこんな連絡が来たということが、政府内の混乱とリゾナンターの戦略的価値を物語っている。
あっさりと戦線投入を許諾した里沙を電話の向こうでは訝しんだ。
てっきり拒絶されると思っていたようだ。
…あっちの戦力にも限りはある。
第一波と同じ規模のテロは何度も起こせない。
第二波、第三波と小規模な攻撃を仕掛けて、その対応で疲弊したところで勝負をかけてくる。
だったら第二波への介入は比較的危険性は少ない筈。
それに、私がこれからやろうとすることの巻沿いにならないようにアリバイにもなるしね。
破壊されながら炎上を免れた車から抜いたガソリンで衣梨奈の遺骸を火葬することにした。
まだ混乱した状況は続く。
平静を取り戻した官憲によって衣梨奈が回収される前に、さっきの奴らの仲間がまた湧いてくるかもしれない。
それでは地獄に咲いた可憐な花が手折られ、踏みにじられてしまうではないか。
だったらせめて自分の手で送ってやりたいと里沙は思った。
…ほんとうはみんなと最期の別れをするまでそばにいて守ってあげたいんだけどね。
でも、それじゃあんたの守りたかったものは守れない。
だからこうするよ。
文句はこの地獄を突き抜けた先のどこかでいくらでも聞いてあげるからさ。
燃え盛る弔いの火を背に里沙は歩き出す。
その先には法の手の及ばない悪の根源が待っている。
花の名前とその色と形は心に灼きつけた。
…ナマタ、一緒に行こう。
つまらない戦争をさっさと終わらせて、たとえ束の間でもいい。
平和ってやつをこの世界にもたらしてやろうよ。
560 :
名無し募集中。。。:2012/06/25(月) 22:59:13.20 0
561 :
名無し募集中。。。:2012/06/25(月) 23:39:01.83 0
>>560 泣いた…泣きました
冒頭もラストも切なくて美しくてすごく好きです
562 :
名無し募集中。。。:2012/06/26(火) 00:58:14.10 0
明日読むよ
563 :
名無し募集中。。。:2012/06/26(火) 02:28:50.42 0
564 :
名無し募集中。。。:2012/06/26(火) 04:47:54.97 0
切ない・・・
565 :
名無し募集中。。。:2012/06/26(火) 05:15:51.02 0
俺も泣いた凄くせつねえ・・・
566 :
名無し募集中。。。:2012/06/26(火) 06:00:48.08 0
567 :
名無し募集中。。。:2012/06/26(火) 07:53:58.76 0
愛という名の愛という一節がいいねえ
他の3人がどうやって関わっていくのか楽しみ
568 :
名無し募集中。。。:2012/06/26(火) 10:33:41.98 0
>>566 おちゅちゅ
愛ちゃんは愛で鞘師を救ったんだね
569 :
名無し募集中。。。:2012/06/26(火) 12:40:18.43 0
読みたいのに読む間がない
570 :
名無し募集中。。。:2012/06/26(火) 12:49:41.89 0
かなしみさんの予告編は外さないねえ
571 :
名無し募集中。。。:2012/06/26(火) 15:16:48.94 O
あげなんと
572 :
名無し募集中。。。:2012/06/26(火) 17:28:13.51 0
浮上せよ
573 :
名無し募集中。。。:2012/06/26(火) 18:05:32.83 0
574 :
名無し募集中。。。:2012/06/26(火) 19:50:03.88 0
なんだよまだまだ行けるなこのスレ
575 :
名無し募集中。。。:2012/06/26(火) 21:23:28.01 0
既存のメンバーと新メンバーのハーモニーが本格化し始めてるな
576 :
代理募集中。。。:2012/06/26(火) 21:33:17.43 0
>>385-389 の続き。
「かのんちゃんも気付いたんだよね、あの不気味な"音"」
「りほちゃんも分かったの?」
「あの"音"の正体、知りたくない?」
「待ってよ、なんでりほちゃんが分かるの?あたしと同じなの?」
「私はかのんちゃんみたいに絶対音感は持ってないよ。
けど、私もかのんちゃんも、『共鳴』してるから」
「きょう、めい…?」
「私だったら教えてあげれるよ?かのんちゃんに起こってる事」
物音を聞きつけてすぐに警備員達が近くまでやってきた。
鈴木は生徒の机よりも大きく隠れやすい教卓にまず鞘師を押しこみ
次に自分も身体をねじ込んだ。
すぐ傍の廊下では警備員の照らすライトが教室の中に侵入してくる。
「今、物音しましたよね?」
アルバイトらしき若い男性の声。
「念のため、中も調べてみよう」
ベテランといった感じの中年男性の声。
直後に、二人が隠れた教室のドアが開かれる。
鈴木は祈るように目を閉じ、鞘師に身体を密着させた。
懐中電灯の光は教室中を照らす。
大量の汗が体中から噴き出した。冷や汗だ。
もうダメだとなかば諦めている。と。
「何もないみたいだな、他を見に行こう」
中年男性が言って、ピシャっとドアが閉められた。
二人分の足跡がやがて遠ざかって行き、鈴木は大きく深呼吸をした。
無意識に息を止めていたらしい。同じように鞘師も息を吐いた。
「今のは完全にアウトだと思った…」
鈴木は笑顔を引きつらせながら言う。
鞘師も予想外のことが起きてただ笑った。
すぐに出てしまわずにしばらくの間そこで隠れることにする。
ようやく気持ちも呼吸も落ち着いてきた頃になって、二人は教室を出た。
「かのんちゃんなら来てくれると思ってた」
「あんなのがずっと続くのが嫌だから行くだけだよ。出てくるのに苦労したし。
今もほら、また耳がじくじくしてきた」
「大丈夫、私がなんとかしてあげるよ」
「本当は早く行きたいんだけど、このフェンスの穴を使おう」
「え、忍び込むの?」
「うん、かのんちゃん守ってね」
「は?」
「私こういうのダメだから」
周囲に十分注意を払いながらも鞘師は手を引かれ、足早に廊下を進んでいた。
月が雲に隠れたまま出てこない。闇がいっそう濃くなっていた。
非常灯の赤いランプがやけに目に入る。
鈴木は教室を出る少し前からそわそわし始め、何かを強く感じていた。
鞘師にしてみれば、その何かが問題だ。
周囲に十分注意を払いながらも鞘師は手を引かれ、足早に廊下を進んでいた。
月が雲に隠れたまま出てこない。闇がいっそう濃くなっていた。
非常灯の赤いランプがやけに目に入る。
鈴木は教室を出る少し前からそわそわし始め、何かを強く感じていた。
鞘師にしてみれば、その何かが問題だ。
走る。走る。鈴木に聞こえる"音"は、闇の中で静かに啼いている。
闇の中にある"色"は、もっと色濃い闇。
闇の闇の闇の闇の闇。黒と黒と黒と黒。
「最初から見てたって事か」
南棟の屋上。勿体ないほどの広さがある其処。
その柵の傍がぽっかりと空間が喰われた様に、【闇】になっていた。
誰かが静かに佇んでいる。
鈴木は彼女の顔に見覚えがあった。
鼻歌が聞こえたかと思うと、じくじくしていた疼きが強くなる。
「大丈夫?」
「これが大丈夫そうに見える?」
「そうか、あの子自身がサブウーファーなんだよ」
「サブ…なに?」
「「『共鳴振動 -サブウーファー-』、低周波音って分かる?」
「分かんないってばっ、説明はいいからなんとかしてっ」
「…しょうがない、か」
パチンッ――
奇蹟のようなヒカリが、闇夜を貫く。円形の青空が二人に注がれた。
鈴木はその光を仰ぐ。
見上げた先、細まる視線にはあるはずのない青空。
隣の鞘師の身体が白い光に包まれ、手には鞘に収まった『刀』
背中のベルトに固定された何かが重い音を鳴らす。
それら全てが、カタナだった。
「まさか『位相空間』の内側(なか)にまで響くなんて…」
鞘師が苦い表情を見せた、頭痛はまだ疼いている。
目の前の彼女はまだ鼻歌を歌っている。人形の玩具のように。
なによりあの"音"が、何かを突き破るような恐怖を湧き立たせる。
その時だった。鞘師が一瞬にして、彼女との距離を失くす。
彼女の抜き放った刃がまともに顔面を捉える。
彼女の身体もろとも、真っ二つに切り裂かれた。
柔らかいものが斬れる音が生々しく、響く。
鈴木はただ、その光景を見ていることしか出来なかった。
鞘師のオーラの"色"と両眼に釘付けになる。鬼の様に染まった、朱の色に。
580 :
代理募集中。。。:2012/06/26(火) 21:37:49.40 0
>>576-579 以上です。ようやく何かが出て来ました。
引っ張り過ぎてもう夏になりそうですね…(汗
--------------------------------------ここまで。
581 :
名無し募集中。。。:2012/06/26(火) 22:17:52.04 0
おつです!
ここにきて動き始めましたね……どう展開していくかまだまだ気になります
582 :
名無し募集中。。。:2012/06/26(火) 23:26:17.33 0
誰なのだろう…
そして言われてみればこのお話いつはじまったんだろう…
583 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 00:55:37.38 0
おやすみなんと
584 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 03:14:09.68 O
落とすなよ
585 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 05:32:34.51 0
おぱよん
586 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 07:54:28.87 0
あげておきますわ
587 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 08:15:27.23 0
>>580 会話といい空気といい独特だなあ
季節は気にせず進めてくださいw
588 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 09:28:09.26 0
589 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 12:03:03.59 0
1レスなんだよなあ
いつもそれが信じられない
590 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 12:54:37.34 0
構成力がハンパねえ
591 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 15:24:48.16 0
はんぺんあげ
592 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 16:18:28.08 0
>588
おつですわ
いかほど出せば映像化権を売っていただけるのかしら
593 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 18:18:03.49 0
そ、そんな!お金なんて!
594 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 18:55:22.19 0
『「リゾナンター。大好き!」』
〈One ちょびっと不安で 〉
1−1
れいなは絶望した。
敵の力が分かってしまったから。
この少女は武道の達人。
それも、れいなが今まで戦った中でも最強クラスの。
様々な理由によって、リゾナンターのメンバーが大幅に入れ替わった。
高橋・新垣の離脱後は、れいな・鞘師が戦闘における「ツートップ」となっている。
この二人は、攻撃に際して特殊能力を使用していない。
れいなの強さは、天性の格闘センスと、豊富な闘いの経験とによるものだ。
また、鞘師の方は、特殊能力自体いまだに発現していない。
驚くべきことだが、これまで二人は体術だけで強力な能力者を撃退してきたのだ。
そう、これまでは…。
得意の体術勝負で敗れたことに、れいなは打ちのめされていた。
「やっぱり愛ちゃんとガキさんがおらんとダメなんかなあ…。」
れいなが弱音を吐いている。
傷ついたれいなを治療しているさゆみは、それを聞いて衝撃を受けた。
そして、事態の深刻さを思い知った。
595 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 18:55:51.65 0
1−2
その少し前。
街の中心部から外れた細い道を、三人は歩いている。
さゆみは上機嫌である。欲しかった最新のノートパソコンを購入できたのだ。
れいなには、安物のサングラスで恩を着せ、まんまと荷物持ちをさせている。
「好きな食玩を一つ買ってあげるの」と誘い出した愛しの鞘師も一緒だ。
深夜の帰り道、三人はとりとめもない話をしながら歩いていた。
れいなが偽札を発見したことや、石田の唇を見る鞘師の目が妖しいことなど、
楽しいおしゃべりは尽きることが無かった。
「うわーっ、あれ、きれいやねえ。」
遠くに見える高層ビル群をれいなが指差す。
厚い雲に覆われているのか、空には月も星も見えない。
闇を背景に、摩天楼たちは自らの光でショーアップしているように美しく聳えていた。
駅から三十分も歩くと、辺りには気味が悪いほど人気が無くなった。
三人は角を曲がり、さらに寂しい通りに足を踏み入れた。
その時である。
暗闇の中から、すっと一人の少女があらわれた。
そして唐突にこう言った。
「組織に私の力を認めさせたいので、申し訳ありませんが、貴方たちを破壊します。」
この静かで丁重な挨拶が、そのまま戦闘開始の合図となった。
さゆみはその少女の雰囲気に、ちょびっとだが、拭いきれない不安を感じた。
596 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 18:56:12.33 0
1−3
さゆみの不安は的中した。
数十秒後、さゆみの眼前には信じ難い光景があった。
れいなと鞘師がアスファルトに這いつくばっている。
二人の神速の攻撃は、少女にかすりもしなかった。
少女は二人の動きを完全に見切っていた。
人は誰かと戦うとき、相手に対する敵意をまとう。
少女はそのようないわゆる「殺気」を正確に感知することができた。
相手の殺気から、攻撃してくる方向・タイミングを察知してしまうのである。
そして、鍛練の賜物であろう俊敏な動きで、それらを全てかわしていく。
もちろん、れいなや鞘師にだって敵の攻撃を読むことはできる。
実戦で鍛えられた経験や洞察力は、敵の動きの分析・予測を可能にするからだ。
しかしそれは、敵の動きをある程度視認した上でのことである。
その少女は違っていた。
少女の両目は、戦いの間ずっと閉じられていた。
れいなと鞘師の二人がかりの攻撃を、殺気だけを手掛かりに、完全にかわしきる。
さらに、二人の動きの先を読み、速く重い正拳突きを急所に撃ち込んできた。
闇夜であったことが、二人には不利に、そして、その少女には有利に働いた。
そして何より少女の身体能力が、二人のそれを上回っていた。
並外れた天賦の才と、それを磨き続けた努力とが、その強さに結実していた。
また、少女には、地獄から這い上がって来たかのような凄味もあった。
少女の強烈無比な打撃を浴びた二人は思った。
勝ち目が無い、と。
597 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 18:56:29.24 0
〈Two パリッと服着て 〉
2−1
さゆみは倒された二人に駆け寄り、まず比較的傷の浅い鞘師を数秒で応急処置した。
治療が終ると鞘師は立ち上がり、すぐに少女へ向かって行った。
れいなの方は重傷で、治療に数分間かかりそうだった。
そのための時間を稼ごうと、鞘師は少女を引き付けながら、二人から離れた。
さゆみは懸命にれいなを治療している。
れいなは苦痛に顔をゆがめながらも、何かを決意したようだ。
先程の弱気な口調とはうって変わって、しっかりと諭すように言った。
「さゆ。次にれいなが攻撃を仕掛けた時、鞘師を連れて逃げりぃ。
そんでいつか…、あの子らと一緒にあいつにリベンジして…。
あの子らは、絶対にれいなたちより強くなるけん…。」
れいなの言葉に、さゆみは何も答えられなかった。
ただ、目頭の透明な水塊がみるみる大きくなり、零れ落ちそうになっていた。
鞘師は、少女の前に立っていた。
目の前の敵を睨みつけながら、自分が着ている洋服の襟に触れた。
その服は、上京したばかりの頃、着替えが無かった鞘師にれいながくれたもの。
鞘師がそれまで着ていた服は、家の人が選んでくれた、子供っぽいものばかりだった。
少しヤンキーっぽくても、れいなのお下がりの服は、パリッとお洒落なものに感じた。
鞘師はその時の喜びを思い出し、心の中でれいなに誓った。
「田中さん…、田中さんが来るまで絶対に持ちこたえます。
田中さんのように、私は…、どんな場面でも…、逃げない!」
598 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 18:56:49.46 0
2−2
「うわああっ!」
乱暴な子供に放り投げられた縫いぐるみのように、鞘師が二人の方に飛ばされてきた。
そして、道路脇の自動販売機に背中をぶつけ、座ったような姿勢になって、止まった。
鞘師が小さな顔を上げて二人に謝る。
「すみません…。時間…、あまり稼げませんでした…。」
目の光は死んでいなかったが、四肢はもう動かない。
そこへ、鞘師に止めを刺そうと少女が矢のような速さで走って来た。
「りほりほっ!」
さゆみがれいなの治療を中断し、鞘師の方へ無意識に駆け出す。
「うっ!」「きゃあっ!」
二人は鞘師の目の前で激突した。
鞘師を案ずる余り無心で飛び出してきたさゆみに、少女は全く気付いていなかった。
結果、さゆみが少女へ体当たりをくらわせた格好となった。
それは、その夜その少女に初めて当たった攻撃だった。
少女はもんどりうって転倒する。さゆみも大きく弾き飛ばされた。
その光景を、鞘師は見ていた。
節電中とはいえ、後ろの自動販売機の光は、視界をほんのり明るくしてくれていた。
鞘師は途切れそうな意識を必死に保ち、冷静に目の前で起こったことを分析した。
そして、一筋の光明を見出した。
599 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 18:57:05.32 0
2−3
「さゆっ!」れいなが足を引きずりながら、さゆみのもとへ向かう。
そして、さゆみの横にひざまずき、上体を抱き起こす。
少女は立ち上がりつつそれを見ていた。そして、標的を鞘師かられいなに変えた。
れいなは少女を睨みつける。滅多にかかない汗が頬を伝っているのを感じた。
少女は目を閉じ、必殺の一撃を放つべくれいなのまとう殺気を捉える。
(ちくしょー……、二人を守れんかった…。)
(やっぱりさゆみにはリーダーなんて無理だったのかな…。)
れいなとさゆみは同時に思った。
((みんな、ごめん…))
その時、鞘師が叫んだ。
「待てえ!自分の力を証明したいんなら、最強の能力者を倒せばええじゃろう!」
少女が目を開ける。
「…最強?」
「そうじゃ…。その人は、高橋さんも新垣さんも、田中さんもいっぺんに倒した!」
少女は鞘師の方へすっと顔を向けた。
「…リゾナンターを壊滅寸前まで追い詰めた能力者がいたと聞いたことがありますが…
しかし、その能力者はもうこの世にいないのでは?」
「いや…、まだ生きておる…、あの人の『中』に…。」
鞘師は、れいなの腕の中の「あの人」に目を向けた。
れいなとさゆみは思った。
(まさかさえみさんのことをいっとると!?さえみさんはもうおらんとよ!)
(お姉ちゃんは…、お姉ちゃんはあの日…、えりが…。)
二人はただ鞘師を見つめるしかなかった。
600 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 18:57:22.56 0
〈Three もちょっと我慢ね 〉
3−1
二人の思いを知ってか知らずか、鞘師は続ける。
「その人が目覚めたら、誰にも止められん…。おそらくダークネスにも…」
「……いいでしょう。
最強の能力者を破壊できたら、組織からの評価も上がるはず。
その人をすぐに目覚めさせて下さい。」
「それにはあんたにも協力してもらわんといけん。」
そう言うと鞘師は、少女の方を向いてから、自分の背後の方へ視線を移す。
そこには一台の自動販売機…。
「…鞘師!?」
鞘師の狙いに気付いたれいなの顔が一瞬にして蒼白となる。
「田中さん…、これから大変なことになりますが、ちょっと我慢して下さい…。」
「が、我慢って…。」
れいなはそれ以上声が出なかった。
一方、さゆみにはまだ鞘師の狙いが掴めていない。
そんなさゆみを複雑な思いで見つめながら、鞘師はれいなに告げた。
「目覚めさせましょう…。あの……、悪魔を……。」
601 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 18:57:41.57 0
3−2
鞘師の提案を受け入れた少女は、震えるれいなの腕の中からさゆみを引き離した。
そして鞘師の指示通りに、さゆみにあるものを飲ませた。
すなわち、少女は、自らの手で「最強の能力者」を目覚めさせてしまったのだ。
それが少女(たち)にとって惨劇の幕開けとなった。
勝負は、実にあっけなくついた。
ゆらりと立ち上がったさゆみと対峙した少女は、愕然とした。
「動きが全く読めない…。」
目覚めた悪魔に殺気は無かった。あるのは、純粋な「欲望」のみ。
「好きだな、ロリが!」「触りたーい!」「ムシャムシャしたい!」
そのような異常な欲望を感知する術は、武道の修行では習得できなかった。
少女は何の防御もできず、懐に入られ、抱きしめられ、弄ばれた。
不幸にも、着ていた黄色いTシャツや、程よく筋肉質な肢体が欲望に拍車をかけた。
それらは(鞘師の読み通り、)さゆみの脳裏に、ある人物の体を思い出させていた。
最高潮に萌え盛ったピンク色の欲望の炎が、少女の全てを舐め尽くす。
幼時から武道に全てを捧げてきた少女にとって、その愛撫は致死量の劇薬だった。
少女の精神は、初めて体験した屈辱と恍惚によって完全に崩壊してしまった。
悪魔は二本の指を立てた両手の甲を、自分の額の両端につける。
「イエエェッス!!うぅさちゃあーんっ!ぴいいーーーーーーーーーーーっす!!」
こみ上げてきた何かを噴出するような咆哮が、夜空に響き渡った。
悪魔の両目からはピンクの光線が放たれている。
その光線が、サーチライトのように、ゆっくりと次の哀れな獲物をとらえた。
「ひいいっ!さゆが…、さゆが、こっち向きようっ!」
れいなは再び絶望した。
602 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 18:58:10.44 0
3−3
それからしばらく後。
三人の身を案じた譜久村たちがようやく駆けつけた。
七人はまず仰向けに倒れている一人の少女を見つけた。
黄色いTシャツは少しはだけ、スカートも若干ズレ下がっている。
焦点の合わない視線は、いつの間にか雲が消えて月が輝く夜空に向けられている。
口の周りには大量の唾液がついており、なぜかそれは甘いアルコールの匂いがした。
少女には、それを拭い取る体力も気力も残っていないようだった。
「たなさたーん!」
佐藤が突然走り出す。その先にれいなが倒れていた。
特に怪我はなさそうだが意識はなく、少女と同様に服装が乱れていた。
工藤がれいなにすがりつき、わんわんと低い声で泣き出す。
一方佐藤は、お薬のつもりなのか、不味そうな白い飴玉をれいなの口に次々詰め込む。
譜久村たちがさらに辺りを見回すと、何者かに破壊された自動販売機があった。
そして、そのすぐ近くに、気を失っている鞘師が見つかった。
手足はパソコンのコードのようなもので縛られている。服装の乱れはれいな以上だ。
しかし、その表情はどこか満足げにも見える。
腕は折り曲げられていて、胸の前にある両手が服の襟を握りしめていた。
「怪我は無いようです。…それにしても鞘師さん、萌えですねぇ!ハウーーンッ!」
縛られている姿を見て興奮したのか、飯窪が奇妙なポーズをとりながら高音で叫んだ。
一方石田は、自動販売機からこぼれ落ちた硬貨の山を、嬉しそうに凝視している。
「ねえ!今日すごく調子がいいー!上手くなーい?ねえ!何でみんな無視するとー?」
生田はそう言いながら、なぜか狂ったようにハンドスプリングを続けている。
その生田の足に当たり、缶チューハイの空き缶が音を立てて側溝に転がっていった。
603 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 18:58:28.94 0
〈Endingでーす!〉
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛――!」
突然、嬌声とも嗚咽ともつかない声が響いた。
鈴木は、その声が発せられた方向を見た。
「聖ちゃあん!道重さん、見つかったの?」
譜久村は哭きながら、倒れている女性の脇腹辺りに頭を押し付けている。
譜久村が何をしたいのか、鈴木には全く分からない。
近付いて見てみると、その女性はやはり道重さゆみだった。
少しお酒の香りを漂わせ、満ち足りた表情でスヤスヤ眠っている。
鈴木は、三人が見つかったことにとりあえず安堵した。
と同時に、仲間達が繰り広げる異様な光景を前にして、改めて不安になった。
(こんなに自由なメンバーばっかりで、これから大丈夫なのかなあ…。)
そう考えながらさゆみの寝顔を見ていると、その唇がかすかに動き出した。
何やら寝言を言っている。ただしその声は、常人には聞こえないほど小さい。
しかし、鈴木は、確かにその言葉を聞き取った。
それは、新垣がリゾナンターを去る時に残していった、あの言葉だった。
鈴木は何だか嬉しくなり、新米リーダーに向かってこうつぶやいた。
「道重さん、私もです。みんなもきっとそうだと思います。
みんながそう思っていれば、どんなことがあっても絶対に乗り越えられますよね!」
ふと顔をあげると、東の空がかすかに明るさを帯びていた。
―おしまい―
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
604 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 19:01:10.68 0
>>594-603 以上、『「リゾナンター。大好き」』でした。
初投稿です。
皆さんの力作・大作と違い、内容が浅くてお恥ずかしいのですが、
「どんな場面でも逃げない」ということで勇気を出して投稿しました。
ちなみに「少女」のモデルは、(仮)の破壊王です。
===========================
以上、代理投稿でした。
いやいや、よく纏まっていて見習いたいぐらいです。
現娘。のエッセンスもしっかり感じます。
(仮)の人はリゾスレ初登場かな?
605 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 20:27:39.05 0
いきなり現娘。メンバーがリゾナンターなあたりは新しく ピンクの悪魔の伝統芸を生かし
某破壊王を絡ませるなどなかなかのハロオタw
シリアスかと思いきや定番落ちで終わるあたり面白かったですw
「正拳突き」から怪しいムードは感じていましたがw
606 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 20:39:30.40 0
>>604 知識がなくて(仮)のどの人なのかは分からないけどそれは関係なく楽しめました
構成がよかったです
まーちゃんがれいなの口に飴玉詰め込んでる絵が浮かんできて笑えてなりませんw
607 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 21:02:59.99 0
まさかの展開でしたw
608 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 21:07:52.36 0
乙です
破壊王だったかwww
609 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 22:39:21.75 0
落ちそうなので余計なお世話を
アップアップガールズ(仮)の破壊王こと佐保明梨ちゃん
田中れいなに代わり「あぁ!」に抜擢されるなど実力は認められながらも
スマイレージ、娘。等正規メンのオーディションには通らず不遇が続く
一時は引退とも噂されたがやっとUUG(仮)に加入… 特技は空手
一番の晴れ舞台?田中さんに代わり夏焼さん愛理さんと渡り合う佐保ちゃん(右端)
http://www.youtube.com/watch?v=CGvgrRi4yhM
610 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 23:19:12.67 0
>>560 遅レスですみませんが… 泣きましたマジで 生田のいじらしさがガキさんのハートが… 熱い!
ものすごい切なさと共に ラスト燃え上がる炎をバックに敵地へ向かうガキさんがカッコ良すぎる…!!
興奮して蛇足の
>>593貼ってしまい申し訳ありませんでしたm(_ _)m
611 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 23:20:06.80 0
612 :
名無し募集中。。。:2012/06/27(水) 23:32:13.21 0
某スレでも話題になってましたw
美しさと切なさが同居した作品でしたね
613 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 00:03:29.57 0
>>604 前半からガラリと変わった後半ニヤニヤしながら読んでましたw
614 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 00:16:12.66 0
615 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 01:47:00.19 0
かなしみ戦隊復活嬉しいです 相変わらず1レスと信じられない密度の濃さが凄い
新しい作者の方も登場でホントにこのスレは凄いと思いますね
616 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 05:16:53.17 0
いまだに新しい作家さんが参入してくるとはスゴいな
617 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 06:20:07.77 0
1話からいる作者さんと70話から参加した作者さんの作品が読めるってすごいよねw
618 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 06:35:30.08 O
ステーシーズの影響かもしれないけど新参さんも古参さんもいて嬉しい
そんな私もかなりの新参w
619 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 07:57:19.08 0
職人の数が常にこんなに安定してるスレ他にないんじゃ
620 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 09:20:07.85 0
621 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 10:22:36.53 0
ジュンジュン…
リンリン…
なんだか懐かしい香りのする風に頬を撫でられたような気持ち
622 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 12:31:43.30 0
>>620 このスレに最初からいる自分にはため息がでるぐらいステキな話
623 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 15:27:36.54 0
この時間は手薄
624 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 16:59:14.40 0
誰が毛薄だとぉ!?
625 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 17:06:06.38 O
つ◇(鏡)
626 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 18:17:05.32 0
このスレに最初からいる仲間意外といるのでしょうかw
627 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 18:58:19.20 0
∋oノノハヽ
川´・_o・)
| \
ソヨソヨソヨ……⊂| |\つ
〜〜〜〜〜〜〜(_(_ |
〜〜〜〜〜〜〜 | | |
懐かしい香りのする風 ↑ (__)__)
628 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 19:11:37.06 0
やめれww
629 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 19:11:56.51 0
ヤメレ
630 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 20:16:19.99 0
火気厳禁
631 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 20:48:43.99 0
ガス会社wwwwww
632 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 21:30:46.24 0
ジュンジュンとリンリンの夢の合体技が今!
633 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 21:34:35.90 0
おいやめろ
やめろwww
634 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 21:35:45.23 0
発火!
635 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 22:07:34.29 0
☆ノノハ 消火活動シマスヨー ハイハイ
ヽ川*^A^)ノ
( (
) つ ⌒ ヽ
(__(~(__( 旦
636 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 22:12:47.78 0
>>632 ☆ノノハ 合体だヨー
ヽ川*^A^)ノ
( (
) 二二川´・_o・) ソッカー
(__(~(__(
637 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 22:33:50.52 0
キモすぎるだろ!ww
638 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 22:55:15.72 0
なんなんだよコイツら二人w
639 :
名無し募集中。。。:2012/06/28(木) 23:01:50.06 0
獣神とそれに遣える神聖な者じゃねぇのかよw
>>626 初代よりいますよw
何作か投稿もしましたが
今は時間がなくて・・・
641 :
名無し募集中。。。:2012/06/29(金) 00:28:57.43 0
ひどいスレだwwww
642 :
名無し募集中。。。:2012/06/29(金) 02:16:39.67 0
>>639 獣神じゃあサンダーライガーみたいじゃないか とほぜ
643 :
名無し募集中。。。:2012/06/29(金) 04:27:10.33 0
>>642 すまぬ良い言い回しが思い浮かばなかったw
644 :
名無し募集中。。。:2012/06/29(金) 05:14:52.98 0
自分も獣神といえばライガーを思い出すw
645 :
名無し募集中。。。:2012/06/29(金) 07:14:17.90 O
おは
646 :
名無し募集中。。。:2012/06/29(金) 07:19:22.83 0
ズン子がライガーのマスク被ってるの想像した
647 :
名無し募集中。。。:2012/06/29(金) 08:17:49.63 0
身体はパンダでしょうか?
648 :
名無し募集中。。。:2012/06/29(金) 09:16:59.89 0
神獣って言いたかったんだよね多分w
刃千吏では御神体って呼ばれてる
649 :
名無し募集中。。。:2012/06/29(金) 11:19:34.13 O
ああそれかw
違和感なくなったw
650 :
名無し募集中。。。:2012/06/29(金) 12:56:02.75 0
あげておくで
651 :
名無し募集中。。。:2012/06/29(金) 15:28:33.65 0
まげておく
652 :
名無し募集中。。。:2012/06/29(金) 17:20:44.79 0
653 :
名無し募集中。。。:2012/06/29(金) 19:14:42.86 0
654 :
名無し募集中。。。:2012/06/29(金) 20:50:24.13 0
夜を行くれいなというリゾブルの原点とSONGSという楽曲が見事に結びついてる
655 :
名無し募集中。。。:2012/06/29(金) 21:55:16.02 0
いいなあ…
胸が色んな思いで満たされる感じ
656 :
名無し募集中。。。:2012/06/29(金) 23:28:47.94 0
画像も曲も作品の空気も…あの頃を思い出させてくれますね
実にかなしみワールド!
657 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 00:30:03.61 0
寝るで
658 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 03:25:58.12 0
ぬ
659 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 06:18:51.14 0
>>576-579 の続き。
先ほど鞘師が真っ二つにした彼女は、あのいじめっ子のリーダー格だった。
だが雰囲気がまるで違う。
耳障りな鼻歌が頭にこびりついているが、まるで中身が別物の人形のようで。
"色"がまるでない。
しかも上から有り得ない青空の光が降り注いでいるというのに、彼女の周り
は何ものも一切寄せ付けないほど闇に満ちている。
コールタールのようにベットリと、まるで、血液を全て流し落としてしまったように。
【グゲエエエエアアアァアアアァ!!】
鼻歌が止み、身体を曲げた状態で奇声を発する彼女に【闇】が映る、鬱る。
歪が大きくなっていた。
そして身体がまるで喰われるように呑み込まれる。
真っ二つになったはずの少女の口からは、下品で不気味な笑い声を上げていた。
げらげらげらげらげらげらげらげら。
ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ。
げらげらげらげらげらげらげらげら。
呼応するように真っ二つにされた身体が分離して三つへ。
首の根元から別々の顔が浮き出てくるように生えてきたのだ。
「うぇっ…」
最早見られるものじゃなかった。
言葉にするのもおぞましい物体が、今鈴木の目の前に在る。
確認できても三人分の身体。
まるでつぎはぎだらけの大樹のよう。
660 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 06:19:10.11 0
ミシミシと音を立て軋みながら、水蒸気の様な煙を吐いている。
何処かの恐怖映画でもこんな過激な演出をするだろうか。
うねうねと動く幹のような腕が不気味さを増す。
「かのんちゃん、あれが人間の悪意が【闇】に呑まれた姿じゃ。
そうして"狂鳴"した者を【ダークネス】って呼ばれてる」
悪。悪とはなんだ?悪というのはあんなにも醜くて、悲しいモノなのか。
「かのんちゃんはあまり直視しない方がいい。逆に呑まれる」
"色"の中で黒は恐怖の他にも不安や、悲哀を思い付かされる。
鈴木は異様な寂しさにかられ、頭をかかえて叫ぶ。
「分かんないよ、意味分かんないってりほちゃん。
私バカだからさ、頭悪いから、これが現実なのか、夢なのか…」
「…現実だよ」
「あれが現実だっていうの?いじめられてた子が可哀想だって思ってた。
でもやっぱりなんか…ダメだよ、こんなのおかしいって」
「いじめてた事実は変わらないよ。そうして生まれた悪意をあれは
狙って襲って、自分の力に変えるんだ。狙われたら私達にはどうすることも出来ない」
「どうしてそんな風に思えるのさ」
"あれ"を目の前にして、動揺すら見せず、逆に恨んでるように。
「…ずっと、戦ってきたから」
661 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 06:19:26.35 0
鞘師は持っていた刃で襲いかかってきた木の根のような触手を一閃。
背中のベルトに収まっていた鞘から刃を抜き取り、斬り落とす。
次々と斬り落とす、斬って、斬って、斬って、斬る。何本もの刃を突き立てる。
大樹が後ずさりする度にフェンスがひしゃげていく。
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ。
大樹が啼いた。泣いた。泣いている、彼女達が、泣いている。
誰か、ねぇねぇ誰か。
鞘師の刃が、最後の一撃を喰らわせようと振り下ろされた。
「「イヤアアアアァァアア!!」」
鈴木がまるで大樹と同調するように絶叫した。
鞘師の光と波動が辺り一帯を呑み込み、弾ける。
それと同時に、崩れていく大樹のバケモノが爆発し、フェンスごと弾け飛んだ。
体内から飛び出したのは小さな球体が三つ。
「ごめんね、かのんちゃん。巻きこんだりして」
それを手のひらに乗せる鞘師は、冷たい表情をしている。
まるでそれになんの感情も抱いていないように。
鈴木に対して謝ったときだけ、鞘師は泣きそうな表情を浮かべた。
それを最後に、意識は途絶えた。
662 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 06:19:45.15 0
―― 夢を、見る。
それは過去なのか、未来なのか、今なのか。
曖昧で、不明瞭で、でも事実のような、不思議な感覚。
ただ、自分の記憶にないことだけは確かで。
酷く、現実味を帯びない。
だからこれは、夢だ。微かに聞こえる誰かの声に、耳を傾ける。
663 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 06:22:52.45 0
>>659-662 以上です。
話の流れでまた再登場してもらったんですが、酷い扱いに…。
新しい作者さんの作品
>>604 もレベルが高くて
とても楽しませてもらいました。
ガス会社とか酷く懐かしい…w
--------------------------------ここまで。
以上、代理投稿でした。
狂鳴という表現が素敵
鞘師の戦いは00ガンダム1stシーズンの最終話のようでカッケー
664 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 08:05:14.90 0
おちゅちゅ
映ると鬱るとか意識的に多用してるんだろう擬音の数々が不気味な雰囲気を醸し出していて良かった
665 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 10:26:41.63 0
風邪ひいた…
治してちゃゆ…
666 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 11:30:44.02 0
昼だぞ!
667 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 12:59:41.87 0
おっとっと
668 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 14:15:16.08 0
ホゼナント
669 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 15:53:46.42 0
670 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 17:49:31.40 0
はっ!はいっ!保全しまっしゅ!
671 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 17:52:45.97 0
すごい武器持ってるな
672 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 17:55:55.31 0
粛清人になった後か
673 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 19:17:27.05 0
ボツリゾの泉に捨てようとしてた話のさわりを保全がわりに投下します
スレの序盤にあげようと思ってた話なのでその頃と色々実情が違ってきてることを頭の隅に置いておいていただきたい
674 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 19:18:00.85 0
喫茶リゾナントのある町の駅前商店街の一角に、テナントが一切入居していない雑居ビルがある。
周囲の賑やかさからは隔絶したそのビルこそが世界征服を目論む悪の組織ダークネスの本拠だった。
そして今荒れた内部の薄暗い階段を、コンビニのビニール袋を手に提げて昇るジャージ姿の人影があった。
「くそったれが、いいかげんエレベーターのあるビルに引っ越しやがれってんだ。 つうか何で今日は見張りの兵隊が一人もいないんだ」
たるんでやがると悪態をつきながら階段を昇っていくのは"魔女”の二つ名で恐れられる藤本美貴その人だった。
ダークネスの幹部でありながら、独自の行動を容認させている彼女が、何故本拠の会議室へと続く階段を昇っているのか。
それは組織の首領ダークネスによる緊急召集がかかったからである。
「実際、こんなビルに巣を作ってるような組織が世界を征服するなんてこと…まあないよなぁ」
組織の本拠であるにもかかわらず、傍若無人な振る舞いをするのは美貴が自分自身の実力に自信を持っているからだ。
と、同時に首魁であるダークネスへの侮りを意味するのだが。
ともあれ会議室のある階にやってきた美貴が、立て付けの悪いドアを開き室内に入ると、いきなり怒鳴りつけられた。
「遅いっ。 予定時刻をもう5分も過ぎてるではないか」
折り畳み式のテーブルが並べられた部屋の中央に一人の男が仁王立ちしている。
黒の三角覆面を被ったその男こそ悪の組織ダークネスの首領、ダークネスその人だった(紛らわしい
「遅いっつったてまだ誰も来てねえじゃねえか」
畳に換算すれば10畳程度の細長い部屋が広く映るほど、人がいない。
「お前は幹部の中でも後輩ではないか。 だったら先輩より早く来て準備を手伝うのが、真っ当な社会人の在り方ってもんじゃないのか」
社会人の在り方を部下に説く悪の首魁は、その部下がコンビニの袋を提げているのを見て絶句した。
…貴様、と呟くダークネスに美貴は追い打ちをかけた。
「ちゃっちゃと用件言って欲しいんだけど。 美貴、髪切りに行きたいの」
バカ負けしたダークネスが手近にあったパイプ椅子に腰を下ろしたところで、駆け足で階段を昇ってくる音がする。
仮にも悪の組織ともあろうものが、こんな音の筒抜けな所で会議なんかしていいのか。
美貴が疑問に思っていると、立て付けの悪いドアが開く。
「遅くなってすいませ〜ん」
息を切らしているのは組織の科学部門を統括するドクターマルシェこと紺野あさ美その人だった。
ダメじゃないかと声を荒げるダークネスに紺野あさ美の瞳が曇る。
「そんなに慌てて階段を上がって、もし転げ落ちて怪我でもしたらどうするんだ」
自分に対する態度とは大違いだが、美貴は黙っていた。
この程度のことで抗議していては喉が枯れてしまう。
紺野あさ美はダークネスの一推しなのだ。
「すいませ〜ん」
少し巻き舌で呼びかける美貴をおぞましい物でも見るような目つきで見るダークネス。
「もう会議の開始時刻から8分も経っているんで、議題だけでも教えていただけませんか」
どうせつまらないことだろう。
それがはっきりしたら時点でさっさとオサラバしてやる。
そんな美貴の思惑が伝わったのか、ダークネスは忌々しそうに舌打ちした。
「いいだろう。 極めて重大な案件だからな。 先に教えてやるからお前のバカな頭で考えるんだ」
今日はおっさんがイヤに強気に突っかかって来やがる。
少し不審に思った美貴ときょとんとしている紺野あさ美に闇の王は重々しく告げた。
「…例のスレがまた落ちた。 完走はおろか200レスに達する前にデータ圧縮されたのだ、2スレ連続でな」
自分の言ったことが部下たちに伝わったのか、確認するように一旦言葉を切った。
えっと、またそういう設定の話なの?
私たち登場人物が虚構の世界の住人であることを認識しながら話が進行していくメタフィクションってやつ?
「これは由々しき事態だ。 そこでわれらダークネスとしてもあのスレのために何か出来ないか、お前たちに考えてもらいたい」
いつもならここでアタシが手を出して、おっさんにヒィヒィ言わせるところなんだがな。
美貴はいつになく思慮深かった。
もうそういうのも飽きたしな。
ワンパターンつうか、マンネリつうか。
億劫だっつうの。
黙りこくったままの美貴に替わり、マルシェが口を開く。
「恐れながら、リゾナンターのスレが落ちたことは、われらにとって喜ばしいことではないのでしょうか」
「それはそうかもしれんが、あのスレはワシに感動と笑いをくれた。その危機を黙って見過ごすことが出来ようかヒィィィィィ」
気がつけば、振るわないと決めたはずの右の拳を振るっていた。 オッサン、テメエが悪いんだ。
「いい歳したオッサンが赤の他人のしかも素人連中の書いた小説から感動と笑いをもらいましただあ。 いいかテメエは世界征服を狙う悪の組織の首領なんだぞ」
「いかにも。ワシはダークネス。闇の王と呼ばれたおと・ヒィィィ」
「あんな厨二病と自演臭ぷんぷんのスレから感動をもらってる暇があったら、少しは世界に恐怖を与えたらどうなんだ、闇の王さんよう」
「そうは言ってもだ…」
「大体リゾナンターのオリジナルメンバーが二人しか残ってないんだ。 終わらせてやれ。 このまま静かに終わらせてやれ」
何を思ったのか、マルシェがダークネスと美貴の絡みに食いついてきた。
「やはり光井愛佳の卒業は痛かったですね」
リゾナンターのオリジナルメンバーの中で最年少。
高橋愛や新垣里沙から次代のリゾナンターを託されるという設定で描かれることも多かった光井愛佳。
彼女のモーニング娘。卒業はリゾスレ的にも痛かったという面白みのない今更ながらの考察を滔々と述べていく。
「それを言うならお前にしろアタシにしろ…なあ」
美貴の言葉に秘められた意図を感じ取ったのか、マルシェは意味深に笑う。
「それは…まあね」
「そんな寂しいこと言うなぁ」
現実と虚構の狭間から抜け出せない哀れな闇の王が悲痛な声を上げる。
「リゾナンターは17人なの。 小春は月島きらりとして芸能活動を続行中だし、えりりんなんかいつもリゾナントでお昼寝してるし、ジュンジュンやリンリンだって日本にいるの」
夢から覚めずにいるッサンを放置して二人の女子の会話が続く。
「ガキさんの卒業だって痛いぜ。ガキさんのスパイ設定があったからこそのリゾスレだろうが」
「美貴ちゃん、それは違うよ。どのメンバーの卒業もスレ的には大ダメージだよ」
「まあ四年間よく頑張ったんじゃねえか。四年前に大学に入学した奴はもう働き出してるじゃないか」
「そうだねう。スレが最初に立った時に産まれた子供はもう幼稚え…」
二人の間で繰り広げられる回顧調の会話を闇の王が遮った。
「ちょっと待ってってば。そんな終わっちゃうような会話禁止〜」
悲痛な声を上げるオッサンの姿は限りなく、限りなく痛々しい。
「いいか。 全てのものには終わりがあるんだ。終わりがあるから新しいことが始まるんだ」
「だったら新生リゾナンターの始まりを始めようよ〜」
いいかげんにしろ、往生際が悪い。
美貴の声が会議室に響く。
「確かにリゾブルやそのPVは本気度が高かったよ。 いや別に他のが気を抜いているってわけではねえんだろうが伝わってくるもんが違ってた」
「だったらさあっ」
「聞けよ」
凄んでみせる美貴に闇の王は口を噤んだ。
「いくらリゾブルが凄いつったって所詮は四年前のシングルだ。 そんな過去の楽曲のPVから派生したスレにこだわって未来はあるのか」
自分の言葉が闇の王に浸透したことを美貴は見定めた。
「それでもお前がリゾナンターがどうこうしたという世界で生きたいなら、別のスレを立てたらどうだ。たとえば…」
「たとえば?」
「いい歳したおっさんが世界を滅ぼすとか世界を救うとか厨二病っぽい妄想を吐き散らすスレなんてのはどうだ」
あまりの言われように絶句してしまったダークネスを尻目に美貴は会議室を出ていこうとした。
「ちょっと待て、この貧乳魔女が」
「誰が貧乳だ。 今のワタシはけっこう凄いぞ」
「とにかく待て。 お前がワシのことをバカにするのはまだ許せる。しかしあのスレの住人を悪し様に言うことだけは許せない」
こいつ何を言い出したといわんばかりに美貴の眉が顰められた。
「何がいい歳したおっさんが妄想を吐き散らすだ。いいか、あのスレにはな…」
創世記から現在に至るまで少なからぬ数の女性作家が存在することを指摘した闇の王は、彼女たちまでおっさん呼ばわりした美貴の無礼を糾弾した。
「そんなろくでもないスレタイなどたとえ冗談でも許さん」
魔女はというと闇の王の糾弾に堪えた様子も無く、掌をひらひらさせながら軽口を叩く。
「いいじゃんかよ。 どうせ狼のスレに小説を投下するような女なんざ、いくら気取っていたところで一皮剥けばカプ好きの変態ばっかだぜきっと」
「いい加減にしろ、この性悪女が。 お前がそんなに性悪だから焼肉店で食中毒なんか起きて閉店する羽目になるんだ!!」
閉店という言葉を聞いた美貴はバツが悪そうな表情に変わった。
俯くと二の腕に血が滲むくらい爪を立て、同じ言葉を何度も練習している。
顔を上げると殊勝げな表情を装い、誰にともなく話し出した。
「私自身はお店の経営には関与していませんでしたが、私の名前の付いたお店でって、オイッ」
いい加減にやめないかこのメタフィクション構造と凄んでみせる。
「人がぎょうさん死んでんねんでーー(゚ロ゚*(゚ロ゚*(゚ロ゚*(゚ロ゚*(゚ロ゚*(゚ロ゚*(゚ロ゚*(゚ロ゚*(゚ロ゚*)」
「死んでへん。 ちょっとポンポンがビチビチなっただけやって」
ピッ。
いつのまにかレフリーのジャージを羽織ったマルシェの口元でホイッスルが輝いている。
「ダークネス様も美貴ちゃんも今のはちょっと不謹慎だぞっ」
メッ!と両者にイエローカードが呈示された。
「だから何で今日はアタシにそんな強気な態度で臨んでくるわけ」
魔女の二つ名は伊達ではない。
中世から伝わる魔術の術式によって得た異能を使いこなす自分に対して、何のチカラも持たないダークネスがここまで食い下がる真意を問うた。
「何のチカラも持たない? 闇の王として君臨するワシが何のチカラも持たないだと。 愚かな、なんと愚かな」
「何その余裕。 まさか精神と時の部屋で修行でもしたのか? それとも過去を回想して忘れていたチカラが覚醒した?」
揶揄する美貴に対して闇の王は重々しく告げた。
「そこに直れ」
「はぁ?」
「居住まいを正して、ワシの言うことを聞け」
「だから、何??」
「そこに跪いて、ワシの言葉に耳を傾けろって言ってんだよ!」
一瞬手が出かけた美貴だったが、闇の王の態度に興味を抱きとどまってみることにした。
といって跪くのは癪だったので、傍らにあったパイプ椅子の背もたれを抱くようにして腰を降ろした。
「おらよっ。 準備は出来たからオマエの話を聞いてやるぜ」
美貴の横にマルシェも椅子を置き、スマートフォンの録音アプリを起動させながら、闇の王に話しかけた。
「ダークネス様のお話、私も拝聴させて頂いてよろしいでしょうか」
一推しのマルシェの過剰すぎるほど殊勝な態度に気を良くした闇の王は鷹揚に頷いた。
「オマエたちは不思議に思ったことは無いのか。 何故自分たちに異能が発現したのか。 いやこんな言い方では判りにくいかもしれん。 何故、自分たちは異能を使えるようになったか考えたことはないのか?」
681 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 19:27:46.44 0
>>674-680 続きはまだまだあるけど百パーセント規制に引っかかる量なのでとりあえずここまでということで
>>669はいいなあ
何か思いつきそうなw
682 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 20:16:40.99 0
ここれはw
683 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 20:17:17.44 0
乙です
wkwkしてきたのに寸止めくらったw
684 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 20:34:01.69 0
685 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 22:24:24.97 0
♪
686 :
名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 23:56:16.87 0
687 :
名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 02:17:53.93 0
今日の夜中はホゼナンターは手薄か・・・
>>681の危惧が現実になるようだなぁフハハハハハハ!
688 :
名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 03:12:38.25 O
気になる話もたくさんあるのに落としてなるか
689 :
名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 06:32:30.40 0
>>681 メタなネタがてんこ盛りすぎるw
こういうの好きw
690 :
名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 08:15:19.81 0
>>659-662 の続き。
「あなた、クラスで苛められるタイプでしょ」
言われた少女は固まったまま、何も言わない。
言った少女は何も思わないように、ただ言った。
薄紫色の彼女と、赤色の彼女。
だが大人びたように見せても、異なった環境で育ったとしても
何かを落としてしまったように子供の面影を見せる。
二人を繋ぎ合せたものと出会わせたものは、"独り"、だった。
「何で、休業しはるんですか?好きでやらはってるんですよね、お仕事」
赤色の彼女は世間でいう"アイドル"だ。
モデル業などもこなし、メディアでも在る程度の名前も知られているにも関わらず
休業をすると言いだした彼女に、紫色の彼女は問い詰める。
「ダークネスと戦う皆と一緒に戦えるのは、今しかないから」
"アイドル"としての自分を捨てて、対立するある組織との戦いを優先する。
まるで夢物語のような現実に、身を置くことを告げた彼女。
それは強がりであり、意志であり、自分に欠けていた信念とも捉えれる。
そうして自分を確立していく彼女に、紫色の彼女の表情は優れない。
この頃から能力の副作用で、彼女の視力が徐々に低下していた。
「何でなんですか。何で小春がリゾナンターを辞めなければいけないんですか」
赤色の彼女はそのことを仲間に指摘され、半ば喧嘩別れのように店を飛び出す。
紫色の彼女の頬が朱色に染まっている。
悲しそうな表情に、思わず胸が痛んだ。
こうして見ると、薄紫色の彼女はあまりにも優し過ぎる上に、気を遣い過ぎる。
どうして自分の本音を言わないのか疑問になるほど。
どうして相手のことをそこまで思えるのか。
「私の目が光を失うのも、愛佳を失うのも私にとっては同じことなんだよ。
だったら、私はこの目が見えなくなる方を選…」
平手を受ける赤色の彼女。
自分なんかのために大事な視力を無駄にさせるのが情けなかったのもある。
そしてそんな自分なんかのために大事な視力を無駄にさせる彼女が
許せなかった。
「そんなことをして守ってもらったって私は嬉しくない」
初めて本音を叫んだ彼女。
彼女に対して、初めて言葉をぶつけた瞬間だった。
というよりは、本当は前からずっと思っていた事で、それを口に
する事で、これからの関係性に響くのが怖かったのもある。
自分はもっとわがままなのだ、もっと話しをしてみたかったし、もっと
自分の言いたいことを叫んでもみたかった。
だからあの時に叫んだら、意外とそれで良いんだと思えたのだ。
そうして赤色の彼女と、紫色の彼女の心は重なった。
そういった意味では、その時に初めて、彼女達は心を通わせるようになった。
そして、光景が変わる。
タイヤやガラスの破片、車体の部品。
それらが反対車線にまで広がっている。
死者が、出ていた。
四方から、火の手と悲鳴が上がっている。
街中を走行していた大型バスが、原因不明の爆発を起こした。
焼けこげたニオイ。
おびただしい悲壮、炎の色、血の色、黒く染まる空。
そして今、灯が一つ、消えようとしている。
「なんでや、なんで…!?」
『刀』が散らばる其処で、紫色の彼女が絶叫した。
人間の悪意と【闇】が融合することで生まれる【ダークネス】
姿は様々な記憶に形容して変化し、暴走する。
【闇】がどういった概念の存在なのかは判らない。
どうして人間に立ちはだかるのかも。
人間にとって闇は敵で、本能的にも拒絶する存在。
闇によって絶望が生まれるのなら、誰かがやらなければならない。
だから彼女達は闘ってきた。
そうして戦う彼女達をある者はこう呼んだ―― 共鳴者と。
なのに。
「どうしてですか!―― 新垣さん!」
紫色の彼女が対峙するのは、黒いフードとマント姿の女性だった。
その背後には【闇】と、それによって生まれた【ダークネス】が数体。
女性は円形の何かを操作する。
「悪いけど、話してる時間はないよ、だから手っ取り早い方法をとったんだから」
「そんな…そんな事のために他の人を巻き込んだっていうんですか?」
「小春は手間がかかるからね、何か手立てはある?光井」
「…ッ」
「必要なのはあんた達の"共鳴"のチカラだけ」
そして私が、世界を終わらせるんだよ。
それが、【闇】の意志だった。
理解不能?否、理解など通り越して、それは起こりつつある。
今更理解すること自体が間違っているとでも言うように。
ただ、終わらせるだけ。
今自分達がいる世界を終わらせるだけ。
簡単だと、新垣里沙は、【闇】は言った。
次の瞬間には、【闇】が迫っている。
成す術は無い、何も出来ない。
だが背後から黄金の光が追い抜き、何かを告げるように弾けた。
――― 誰かの夢はそこまで。
鈴木香音が目が覚めると、そこは自分の部屋で、ベッドの中で、独りだった。
生まれも死にもしない。
平和の形骸のように切り取られた箱の中。
外には終わる世界で、久遠にたゆたう影。
灰になったモノは全てを失くして、還る。
鈴木の吐く息は何処にも行かず、ただ漂う。
あの学校潜入から3日目の朝を迎えたのを知るのは後の事。
鈴木は制服を着込み、母親の言葉を振り切って家を飛び出した。
学校の廊下で同級たちと会ったが、南棟へと走っていく。
ハアハアハア。息が上がる。
心臓が痛い、階段を二段飛びで上がり、屋上に向かう階段には
『立ち入り禁止』のプレートと障害物。
それすらも跨ごうとして、スカートが引っ掛かってバランスを崩しそうになった。
鍵のかかっているはずのドアはスルリと開く。
給水塔を見上げた瞬間、鈴木は落ちていた空き缶を思いっきり振りあげ、投げた。
寝ていた朱色の彼女は反射的にスルリと避けたが、給水塔の柱にガツンと頭をぶつける。
「痛いよかのんちゃん」
頭を手で撫でる鞘師は、薄い笑みを浮かべていた。
695 :
名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 08:19:50.01 0
>>690-694 以上です。
知らない現実は誰かにとっては夢のように不透明。
厨二病バンザーイ。
---------------------ここまで。
したらばからの転載です
696 :
名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 09:12:23.10 0
>>695 乙ですわ
急展開に息を飲みました
香音ちゃんの夢が現実とつながるのか
生田さんがどう絡んでくるのか次回も楽しみにしていますわ
697 :
名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 11:51:53.91 0
どれ読ませてもらうか
698 :
名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 11:58:29.02 0
>「オマエたちは不思議に
と
>「あなた、クラスで
を連続して読んじゃったから不思議な感じがした
699 :
名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 13:00:23.52 0
確かに対照的な話ですねすいません
ちなみに
>>681の話の題名は「闇に哭く」か「ぶっかけうどんって香川の方が有名だよね」のどっちかになると思います
>>695の話はいろんな話の情景を織り込みながらそれらが書かれた時の意図とおそらくは異なる場面を作り出してる点で作者さんの創作力の凄さを感じますね
こんなのを書きたかったんだけどなw
700 :
名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 14:53:49.49 0
>「闇に哭く」か「ぶっかけうどんって香川の方が有名だよね」
何その対照的な題名w
まあ続き待っとる
701 :
名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 16:51:51.98 0
ほほ
702 :
名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 18:39:29.37 0
ほぜなんと
703 :
名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 19:02:18.41 0
704 :
名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 19:43:30.39 0
>>695 いよいよ「過去」と「現在」の本格的な繋がりが示されつつあって高まります
懐かしい場面もあったりしつつまた当時と全然違う印象で興味深い
705 :
名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 20:54:14.24 0
>>674-680の続き
闇の王の重々しい問いかけに考え込んだマルシェに対して、美貴は相変わらずの軽口を叩く。
「その話、長くなるか?」
「何だと」
「オマエの話はどのくらい続くのか尋ねてるんだよ」
「それは熱く語ろうと思えば、一晩中でも語り続けられるが」
「長い! 三行にまとめろとは言わないから、六行に収めろ」
無茶な注文に一瞬苛立ちを見せたダークネスだったが、知識欲に満ち満ちたマルシェの顔を見ると、気を取り直して語り出す。
…またもやスレが中途で圧縮された。
リゾで検索しました。。。ありませんでしたという文字を空しく眺めながらワシは思う。
ワシにチカラさえあればむざむざ落としはしないのに。
チカラを求める男がチカラの根源に迫ろうと伸ばした手がつかんだモノ、それは…。
次回仮面ライダーダークネス第ニ話「その手でつかめ、ダークマター」
ワシの運命は嵐を呼ぶぜヒィィィィ
獲物に食らいつく猟犬の勢いで襲いかかった美貴に蹴られた膝を抱え、闇の王は訴える。
「膝の皿を割ろうとするのは止めり。それにちゃんとまとめてやっただろうが」
「何か無性に腹が立ったんだよ。何予告編風に仕立ててんだよ!それも仮面ライダーだぁ。確かにテメェは覆面だか仮面だか被ってるけど、自分のことワシっていうヒーローなんかいやしねえ。しかもフォーゼのセリフまでしれっとパクりやがって」
「女のお前に言っても判らんだろうがな、男はみんな心にライダーベルトを巻いてるんだ」
「じゃあ回してみろ。 お前のライダーベルトを回して変身してみろ。 そしてお前の運命で嵐を呼びやがれ」
「ライダーベルトがグルグル回るとか昭和か。お前は昭和の生き証人か」
「メテオのベルトはグルグルグルグル回ってるだろうが、オラオラオラッ」
美貴は両拳を闇の王のこめかみあたりにグリグリねじ込みながら、聞き慣れない言葉が発せられていたことを思い出した。
「テメーなんか今変なこと口走っていやがったな。 ダークマターとかいうのは何のことだ」
「ダークマター。 直訳すれば暗黒物質だけど未詳物質と呼んだ方がニュアンスはつかめるんじゃないかな」
美貴にイエローカードを呈示して、ダークネスから引き離しながらマルシェが説明してくれた。
ダークマター。
宇宙を構成する物質の中で人類の目が捉えることのできる陽子や中性子などは全体の数パーセントにしか過ぎないという。
その5〜6倍はを占めていると推測される未知の物質。
宇宙を観測する際に使用されてきた、光やX線、赤外線などの電磁波では見ることが出来ないことから“暗黒”と冠される物質。
「そうだ。 前スレが落ちてしばらく空白だった時にワシは考えた。ワシが無力なばかりにスレが落ちてしまった。チカラが欲しい。魔女や粛清人のように他人を畏怖させるようなチカラが欲しいと」
美貴の拷問から抜け出たのを良いことに闇の王は述懐を始める。
「スレを落としたくないなら、規制を回避するために●を購入した方が確実なんじゃないのか?」
「●を買ったら負けだと思ってる」
美貴の茶化しはきっぱりと絶った。
「たとえばお前たち能力者の中に異能を発動する器官、いや機関があるとしよう」
いつになく雄弁なダークネスに気を飲まれたのか、美貴はその言葉に耳を傾けることにした。
たとえば念動力。
物質に干渉し、捻り、割り、ねじ曲げて、砕くチカラ。
物質の状態を変える異能の発動機関はそのために必要なエネルギーをどこから調達しているのか。
「そんなことしちめんどうくさいことなんて…」
「考えたこともないだろう」
人には適わざる異能を持っているといっても能力者も人間だ。
一人の人間が生産し、その体内に蓄積できるエネルギーには限界がある。
物質を破壊するために必要なエネルギーと体内に蓄積されたエネルギーの隔たりを埋める存在。
「それがダークマター」
振り付けのような不規則な軌跡を描いた右手の人出し指が虚空を指し示す。
まるで決めのポーズのような挙動に一瞬イラっときた美貴だったが、話を停滞させないために見逃すことにする。
「つまりダークネス様は時に科学の法則さえ超えるかのような異能の発現にはダークマターが関係していると仰られているのですね」
「流石は我らが科学部門を統括する聡明なドクター。 血の気の多い魔女とは違って理解も早い」
「いやですわ、そんな本当のこと仰ったら」
オイオイ、こいつら出来てるんじゃないのか。
息がピッタリな二人のやりとりを目の当たりにして、不穏なことを考えている美貴をよそに、ダークマターに関する会話が続く。
「ダークマターは能力者の意志と反応して、伝達や増幅を行う。 つまり能力者としてチカラを発現できる人間とはダークマターに反応する思念を発することが出来る人間のことを指す」
「もしもダークネス様の仮説が正しければ、私の取り組んできた異能の研究が一気に進むことになります」
「仮説などではないのだよ、ドクター。これこそがこの世界のトゥルース」
また妙な仕草をしやがった。
両手を動かして最後は、二丁拳銃を構えるような動作。
…ちゃん。 今ごろどこで何をしてるのかな。
アルファベットの最後の方の一文字を名前として使っていたチビッコ二人組の片方の名が思い浮かんだ。
一筋の紫煙が変えた少女の運命に思いを馳せながら、目の前で話し続ける年の差カップル(美貴の脳内認定)に意識を戻す。
「確かに大多数の人間にとってダークマターは想像の産物であり、理論の中でのみ存在する未詳物質なのかもしれない」
そしてその状況はダークマターによって異能を発動できる能力者であっても大して変わらないというのがダークネスの立てた仮説だ。
能力者はダークマターの存在を意識することなく、異能を発現してきた。
それが当たり前のように。
「しかしワシはダークマターの存在を認識した。認識したということは、存在するものとして干渉できるということだ」
単位体積当たりのダークマターを増やすことで、能力の威力を上げ、射程を伸ばすことも出来れば、その逆に能力者を無能力者にすることも出来る。
これこそ能力者の王に相応しい能力だと意気軒昂に語るダークネスに、美貴は冷や水をかけた。
「大層な意気込みの割りには随分地味なチカラだなあ、おい」
「な、何だって」
「だからよ、そのダークマター一発で街一つ消し去るぐらいの威力があるかとでも思ってたら、能力の効果がアップするだダウンするだ。有り体に言えば支援系の地味な能力だって言ってんだよ」
「バカな、それがどれほどの意味を持つことなのかお前にはわからないのか!」
「それにぶっちゃけ、れいなのリゾナントアンプリファイアと被ってるじゃん」
「おお、さすが共鳴の蒼の光を発する女。 敵ながら侮れん」
「いや、お前が思いっきり後付けでパクってるようにしか見えねえ」
パクったって、パクったって。
美貴の容赦ない口撃に闇の王も衝撃を受けたようだ。
口をパクパクさせているのが黒覆面越しにわかる。。
「仮にお前がホントにダークマターってやつを操作できたとしよう。ロールプレイングの五人パーティーなら後列に加えてやってもいい。しかし三人パーティーだったらお引き取り願うぐらいのレベルでしかねえ」
「お前のパーティーなんか、こっちから願い下げだ。全滅してしまえ、お前のパーティーなんかリフレクもヘイストも使わず力攻めだけで全滅してしまえ」
険悪な空気が漂う二人の間を、マルシェがとりなそうとする。
「私、さっきから思ってたんですけど…」
どこかのんびりとした口調で話し出した科学者の口元を闇の王と魔女が見つめる。
「…能力のことをチカラって表現するのって、いかにも厨二病って感じですよね、うふっ」
今更、そこかよ。
調子を狂わされた感が否めない魔女の思惑を余所に、科学者は闇の王に問いかけた。
「ダークマターに仰っる通りの性質があって、それを操作出来るとしたら、それだけでも素晴らしい能力だと思いますが、ダークネス様の言葉の端々からそれ以上のものを感じ取ったのですが」
「ワハハハ、さすが才色兼備のドクターだけのことはある。ワシが伏せていた事実を洞察力で突き止めてしまったわ」
「いやですわ、才色兼備だなんてホントのこと言っちゃ」
何このコントみたいに息のあった会話。
あきれている美貴にダークネスが勝ち誇った。
「ワシはダークマターを実体化できる。そうこの世界に存在しながらその実在を未だ証明されていないダークマターを掌の上に載せることができるのだ」
わぁ、スゴいと科学者が手を叩く。
「それがどうしたというような顔をしているな。わけのわからないものを実体化したからといってどうなるをだとか思っているな、貴様」
「わかっているじゃねえか」
「愚かなり、氷の魔女愚かなり、あえて言おう、カスであると」
ダークネスの常にない高言にさすがの美貴も毒気を抜かれてしまった。
王は言った。動物が生きていく上で必要不可欠な存在である酸素も過剰に摂取すれば、健康を損ない生命さえ失われてしまう。
「ダークマターと能力者の関係も似たようなものだ」
能力者を能力者たらしめるのに不可欠な存在であるダークマターは、能力者にとって猛毒にもなる。つまり…。
「…つまり、実体化することによって濃縮されたダークマターは最強最悪の能力者殺しとなる。能力者殺しとなる。能力者殺しとなる。とても大切なことだから三回言いました」
どうやらダークマターという存在はとてつもなく危険なブツらしい。
それを認識しない能力者は、デメリットの部分を回避し、恩恵を被ることが出来るらしい。
しかし一度具現化したダークマターは放射性同位元素のように能力者を蝕んでいくってことか?
ダークマターとやらの実相について考察していた美貴は、闇の王が妙な構えをしていることに気づく。
重ねた両手を拳銃に準え、顔の傍で小粋に構えているような。
あれはまるで、しずちゃんじゃねえか。
女子アマチュアボクシングでロンドン五輪に出場すべく、参加枠を勝ち取ろうと奮戦したお笑い芸人の名を思い浮かべた。
彼女がコンビの相方とネタを披露したときの決めのポーズとよく似ている。
金で他国の出場枠を買おうとした見下げ果てた某お笑い芸人に比べれば、何と壮烈な生き様だった。
元々世界との実力差ははっきりしていたのだから、力を出し切れるようにマスコミも考えてやれよっつーの。
一人の人間の純粋な生き様をも商品として消費したマスコミのえげつなさに義憤を覚えながらも、自分に対して敵対的な態度を見せる相手を威嚇する。
「何だその構えは? 今にも撃つぞってか?」
「ひれ伏せ」
「はぁ?」
「最凶最悪の能力者殺しを手にした王の前にひれ伏して、敬意を表せ」
「何またわけのわかんねえこと言ってんだよ」
「わけがわからないというならお前のその貧弱な胸に手を当てて思い返せ。 これまで王に行ってきた不敬の数々を」
「だから貧弱じゃねえって。 今のアタシは結構…」
「お前の傲慢な行いは許し難い。 本来なら万死に値する。 が、しかしワシは寛容な男だ」
ひれ伏して恭順の意を示せば、これまでの罪は許すという王の言葉を美貴は鼻で笑うのだった。
「はっ。 このオッサンはまた何をのぼせ上がってんだ」
「のぼせあがってなどいない。 ワシは冷静だ」
「けっ、いいか。 ダークマターの設定はそれなりによく考えてるよ。 どうせその辺のラノベから寄せ集めて作った設定だろうがな」
「何を無礼な」
「だが、お前の言ったことは全部絵空事だ。 妄想で凝り固まったお前の中にだけ存在する真実ってやつだ、目を覚ませ」
闇の王がゆらりと揺れたように見えた。
美貴の恫喝にたじろいだのか、あるいは笑ったのか。
「ワシの中にだけ存在するトゥルースだと」
「だから、その無意味なトゥルース押しはやめろって」
「…今日はビルを警護する兵士がいなかっただろうが」
「ああ、まったくたるんでるよな。 トップが惚けてると末端の兵隊まで…まさか」
闇の王の姿が気のせいか大きく映った。
「今日警護担当だった「俺」と「髭」には実験台になってもらった。 その結果わかったことだがダークマターの作用は能力者のレベルの高さに比例するらしい」
レベル1に満たない「俺」は体調不良のため詰め所で寝込む程度で済んだが、レベル3のテレポーター「髭」に関しては大騒動になったらしい。
「「俺」の様子を見てワシも少し怖くなった。だから「髭」に対しては、ダークマターを左腕に軽くお見舞いしてやったのだ。そうしたらあいつの左手だけどこかにテレポートしてしまってな」
突然左腕が消えた「髭」はパニックに陥り、過呼吸状態で意識も飛んでしまった。
やむなく救急車を呼んだら警官がやってきて、事件性の有無や凶器の在処を執拗に問いつめられたという。
「だから刃物で切断したんだったら、その辺が血だらけになってるし、「髭」の命だって危ないっちゅうねん」
幸いだったのは「髭」に対して射出したダークマターがごく少量だったことらしい。
病院で過呼吸の手当を受けた「髭」の状態が落ち着いたら、腕も無事戻ってきたというのだが…。
「今度は悪質なイタズラで警察をからかった、けしからんとか言い出しおっての」
明日にでも警察署に出向き、事情を説明した上で始末書を提出せねばならないとため息を吐いた。
「てめえ、どこの世界に警察に始末書を取られる悪の組織がある。辛気くさいことをぬかす警官なんてぶっ殺してやりゃいいんだ」
「いや、それはダメだろう。 あの人たちだって悪気があったわけじゃない。 市民の安全を守るためにやっているんだから」
「はぁ?言ってる意味がわかりません。 アタシたちは世界を征服して市民を支配するのが目的なんじゃないの」
王と魔女の主張は平行線を辿り、交わる気配すらない。
「…とにかくだ、「俺」と「髭」の篤い忠誠心のお陰でダークマターの効果は実証された。 レベル3の「髭」ですら一時は意識不明になったのだ。 幹部のお前がダークマターを喰らえばどんなことになるかな」
「美貴ちゃんの異能から推測するにダークマターの接触した部位の内部から凍結していっちゃうんじゃないでしょうか」
マルシェの口調はどこかウキウキしているように聞こえた。
「なんと身体の内側から凍るとな。 いくら因果応報とはいえこれは死ぬより辛い。 そんな目に遭いたくなければさっさと過去の過ちを詫びて、ワシに忠誠を尽くすのだ」
「…クソが」
「まだ強がりを言うか、いいかワシの…」
「黙れこのクソ野郎。凍りつくのが死ぬより辛いだと。 テメェは寒空の下で関節を外され身動きできない状態で5ヶ月間忘れ去られたことがあるのか」
「そ、それはスゴい放置プレーだな。命がけで快楽を追求するとは何という性の冒険者」
「違うわ!まったくやる気のない作者の話に登場したせいでエラい目にあっちまったんだよ」
「きっと作者も仕事が忙しくなって、仕方がなかったんだろう、よくあることだ」
「るせーっ!どうにか生き延びて命辛々帰ってきたら、クジュッキーズ、クジュッキーズって、スレのみんなはそんなにクジュッキーズが良いわけ?」
その言外に体を張って頑張ってるアタシのこと少しはねぎらってよという鬱陶しいオーラを発している。
「それは違うぞ、ミティ。 いや今はあえて藤本と呼ばせてもらおう」
闇の王を睨みつける美貴の目元が少しばかり緩んだ。
なんだかんだ言って自分の苦労をわかってくれる理解者がいたといわんばかりに。
「オ、オマエ…」
オマエ呼ばわりこそしていいるが、どこか感激の響きが混じっているのは隠せない。
「それは違うぞ、藤本。 いいか、ワシもクジュッキーズのことは好きだ。 しかしたとえばあと十年後クジュッキーズの中の誰かがリーダーを務めるモーニング娘。に、ニジュッキーズが加入したとしよう」
「オイ、おっさん」
「その時ワシはクジュッキーズよりもニジュッキーズにお熱を上げていると確信を持って言える、グワッ」
美貴の手からダークネス目がけてパイプ椅子が飛んだ。
情け容赦のない投擲だったが、腐っても闇の王。 すんでのところでかわすことができた。
「このロリコン野郎が。 かっかってこいや。 貴様自慢のダークマターってやつをアタシにお見舞いしてみろや」
「そんな大口を叩いてもよいのか。 この距離では外しようもない」
細長いといっても狭い雑居ビルの一室だ。
闇の王と魔女の隔たりは数メートルに過ぎない。
「うるせーよ。 テメーぶっ殺してやる」
「笑止」
組み合わされていた闇の王の両手が解き放たれた。
左右非対称の高さに開かれた両手の先は、まるで影絵の狐のように人差し指と小指が立てられ、他の三本の指先は重ねられている。
その指先で作られた獣の口からついにそれは放たれた。
ダークマター ― この世界を構成しながら、いまだ誰もその存在を実証できなかった未詳物質。
「いいか、藤本。「ブッ殺す」なんてそんな言葉は使う必要がねーんだ。 なぜなら闇に生きる人間が、その言葉を頭の中に思い浮かべた時には、実際に相手をヤっちまってもうすでに終わってるからだ!だから使った事がねェーッ!「ブッ殺した」なら使ってもいいッ!」
714 :
名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 21:06:04.31 0
715 :
名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 21:08:11.91 0
>>714 まだ半分ってw
ダク美貴いつもなげーw
でもまだまだ楽しめるのが嬉しかったりもします
716 :
名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 21:29:19.54 0
乙です
ネタ満載なのにくどくない味わい・・w
じっくり読ませてもらいます
717 :
名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 21:30:01.22 0
>>714 乙です。
香川のぶっかけうどんとは一体・・・
718 :
名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 22:06:31.98 0
乙ですおもろかった
719 :
名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 23:21:22.69 0
まだまだ折り返しで今後も楽しみですw
続き待ってますねー
720 :
名無し募集中。。。:2012/07/02(月) 01:10:47.78 0
よるなんと
721 :
名無し募集中。。。:2012/07/02(月) 02:56:14.97 0
『ぶっかける』…そんな言葉は使う必要がねーんだ。
なぜならオレやオレたちの仲間は、その言葉を頭の中に思い浮かべた時には!
実際にぶっかけてうどんを食っちまってもうすでに終わってるからだ!だから使った事がねェーッ!
ぶっかけは香川の方が有名だよなァ〜〜〜、オレたちの仲間なら…わかるか?
オレの言ってる事…え?
『ぶっかけうどん食った』なら使ってもいいッ!
722 :
名無し募集中。。。:2012/07/02(月) 06:19:11.75 0
朝になったッ!
723 :
名無し募集中。。。:2012/07/02(月) 07:01:13.37 0
724 :
名無し募集中。。。:2012/07/02(月) 07:36:20.65 O
朝からワロタwww
なんて濃厚ww
725 :
名無し募集中。。。:2012/07/02(月) 08:19:43.49 0
りほるって当然のように言うなw
この振り幅がいいわーかなしみ戦隊w
726 :
名無し募集中。。。:2012/07/02(月) 08:28:16.41 0
他の新メンバー編も楽しめそうだ
727 :
名無し募集中。。。:2012/07/02(月) 08:56:49.82 0
りほらない
りほりたい
りほる
りほれば
りほろう
728 :
名無し募集中。。。:2012/07/02(月) 11:22:58.39 0
りほれ!
729 :
名無し募集中。。。:2012/07/02(月) 12:40:27.42 O
ノリ;´ー´リ
730 :
名無し募集中。。。:2012/07/02(月) 12:42:24.79 0
りほやき
りほしょう
りほり
りほじろ!
みちしげ は はいになりました
731 :
名無し募集中。:2012/07/02(月) 14:11:44.17 O
カナリアの人です。
ゲームの中の話の続きではありません。苦手なら飛ばして下さい。
732 :
名無し募集中。:2012/07/02(月) 14:12:33.08 O
『明日香ちゃんの嘘つき!!』
彼女の悲鳴に似た声と同時に、ガシャン!という受話器を叩きつけるような音が私の耳に響いた。
「仕方ないじゃんか…」
私は携帯のボタンを押して自室のベッドに放り投げた。
確かに私は昔ダークネスにいて、脱走した罰として声が出せないようにされ、おまけに超能力者だってことを12年間隠してきたけど、それは彼女を巻き込みたくなかったから。
昔のことも、彼女がダークネスにさらわれた時にバレちゃったし。
私は彼女と毎週月曜日には定期検診に付き添いに行く約束をしていた。
でも今回は仕事が入ってしまった。
うちのバーの常連さんが私が作るクッキーを月曜日までに行くから作ってくれ、という仕事が入ったんだ。
クリスマス前やバレンタインとかには予約注文があって前もって作れるけど、今回は臨時。
だけど休日の月曜日といえど相手はお客様。
たった一人でも信頼をなくしてはいけない。
それを彼女は分かっているはずだと思ったんだけど…。
「ああ、もう!」
私は悶々とした気持ちのまま着替えて一階におりた。
「姉ちゃん何イライラしてんだよ」
カウンターにはヨウヘイが先にいた。
顔に気持ちが出ていたのだろうか?
いちいち答えるのもめんどくさいからヨウヘイを無視してクッキーを焼く準備をした。
733 :
名無し募集中。:2012/07/02(月) 14:15:16.81 O
「また彼女だろ?」
ヨウヘイがにやつきながら言う。
私は無視しながら作業を進める。
「姉ちゃんがイライラするのって、いつも彼女が原因だよな」
「うるせぇな…」
「そんなに気になるなら今からでも追いかけろよ、今日はいつもの病院だろう?」
「…………」
私が無視をしながら作業をしているとテーブルに置いてあった携帯が急に鳴った。
表示されている相手を見る。
非通知!?
誰だよ!
私の携帯番号を知っているのは彼女と家族、吉岡ちゃんだけだ。
怪しいな、でも嫌な予感がする。
私は警戒しながらボタンを押した。
「もしもし…」
『私は氷の魔女。あんたの大事な彼女は預かったよ。返して欲しかったら総合病院近くの公園に来い!ただし一人で来いよ!』
734 :
名無し募集中。:2012/07/02(月) 14:16:24.35 O
こちらの要件も聞かずに相手は一方的に言い放ち、電話を切った。
「まさか!」
またダークネスかよ!?
『氷の魔女』、会ったことはないけど噂には聞いたことがある。
また彼女を巻き込んだのか?!
私が彼女を突き放したから?
でも仕方ないじゃんか、仕事だったんだから!
電話の主は『病院の近く』って言ったな…。
あいつ病院に一人で行く途中にダークネスにさらわれたのか!?
「くそっ!私が付いていかなかったから!」
私はエプロンを慌てて外して携帯を乱暴に折り畳む。
「姉ちゃん…」
「ヨウヘイ、ごめん。また巻き込むかもしれない…」
「慣れたよ、もう。クッキー、後は仕上げだけだからオレがやっておく。早く行ってこいよ」
「ごめん!」
私は店を出て自転車を全力で漕いだ。
735 :
名無し募集中。:2012/07/02(月) 14:17:41.07 O
公園に着いた!
私は自転車を乗り捨てて彼女を探す。
いた!
あいつが氷の魔女か?
この穏やかな公園の雰囲気には合わない真っ黒なドレスを着ている。
彼女と何か言い争っている。
しかし、イライラしてそうに見えるのは魔女の方だ。
とりあえず彼女にはケガはなさそう。
良かった…。
でも相手はダークネスの幹部。
私と同い年らしい。
いつでも本気を出せるように制御装置でもある革手袋を外す。
長い髪をまとめて戦闘体制に入りながら魔女に近付いた。
「やっと来たか!」
魔女は何故か敵意をむき出しにしないで私に好意的な声で迎えてくれた。
想定外の展開に言葉がでない。
「もおー!こいつを早く引き取ってくれよ!さらうんじゃなかった!組織は、あんたが苦しむから、こいつをさらえって言ったけど私にはもう無理!」
「一つ一つ言ってくれないと分かんない!明日香ちゃん、焼き肉、病院、仕事、亜弥ちゃん!」
魔女の隣りで彼女がわめいている。
「だーかーらー!さっきから一つ一つ言ってんじゃん!何コイツ頭悪すぎだ!どこが天才なんだよ、めんどくせえぇぇぇ!!」
私も二人の会話に入るのがめんどくさくなったので、今は二人を見守ることにした。
736 :
名無し募集中。:2012/07/02(月) 14:18:29.59 O
『声をうばわれたカナリア』
お久しぶりです。
カナリアの人です。
ちょっとだけ落ち着いたので、ちょっとだけ続きます。ゲームの中の続きじゃなくてすいません。
737 :
名無し募集中。。。:2012/07/02(月) 17:11:24.05 0
やば
738 :
名無し募集中。。。:2012/07/02(月) 17:44:25.53 0
なんかドタバタっぽくてよい感じ
739 :
名無し募集中。:2012/07/02(月) 18:22:00.49 O
許して…
740 :
名無し募集中。。。:2012/07/02(月) 19:57:28.00 0
にん
741 :
名無し募集中。。。:2012/07/02(月) 20:00:04.59 0
たま
742 :
名無し募集中。。。:2012/07/02(月) 20:50:00.51 0
>>3とか
>>5の 9期10期の設定まとめれる人誰かいないのかな
743 :
名無し募集中。。。:2012/07/02(月) 21:39:06.20 0
>>736 戦いが切迫してる感じいい
続き気になる
744 :
名無し募集中。。。:2012/07/02(月) 22:47:31.76 0
745 :
名無し募集中。。。:2012/07/02(月) 23:29:34.45 O
746 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 00:32:46.09 0
>>714の続き
一つだけ注意というかお断りを
冒頭からかなりサイテーな場面が出て来ます
書いた人間は少し病んでいるのですw
大きな愛で見逃してほしい
…こ、これは。
ダークネス科学部門統括責任者、ドクターマルシェこと紺野あさ美は目の前で繰り広げられている光景に息を飲んでいた。
二つ名の魔女とは名ばかりの肉弾戦を挑もうとしていた藤本美貴の動きが止まっている。
マルシェの知る限りにおいて、こんな藤本の姿は見たことがない。
止めているのはダークネスが実体化したダークマターだ。
闇の王の指先が作ったコルナサインの先端からそれは放出されていた。
ドロドロと粘っこい白濁液がダークネスの指先から藤本美貴の顔に向かって放出されている。
美貴の額に命中した白濁液はところどころで泡立ちながら、重力の法則にしたがってゆっくりと美貴の頬を伝わって落ちてゆく。
「あっ、あっ、あっ」
美貴は倒れそうになりながらも、必死で踏みとどまっている。
その瞳は裏返り、正気と狂気の境目を行ったり来たりしていることが窺いしれる。
「ワハハ、よくぞこらえたものだ。 しかし、ダークマターは無尽蔵にあるぞ
白濁液を放っている左手首を右手で握り締めると、ダークマターの再放出が始まった。
「オラオラオラ! 白くてドロドロしたやつをオマエの顔にぶちまけてやるぜ」
勢いを増した白くて粘っこいやつは美貴の髪の毛も汚し、遂にはその口元に達した。
「うわぁぁぁぁぁ」
突如、美貴が咆哮すると闇の王目がけて跳躍した。
その高い身体能力の爆発は、狭い雑居ビルの天井を突き破る勢いだ。
「ぐわぁぁぁぁ」
間近に迫った天井に頭から激突する直前、美貴の拳が閃いた。
薄い天井ボードが剥がれ、床に落ちる。
天井を一撃した反動で軌道を修正した美貴は、膝頭を躊躇なくダークネスの顔面に炸裂させると同時に三角覆面を鷲掴みにする。
膝を顔面に押し当てたまま体重を前方に移動させると、チェーンソーを入れられた朽ち木のようにダークネスの身体が床へと倒れていく。
敵の頭部に膝を押し当てて薙ぎ倒すという一連の動作は、世界を股にかけ活躍したプロレスラー、ディック・マードックの十八番、カーフブランディングそのものだった。
狂犬というニックネームで知られるマードックのカーフブランディングは、技をかける者とかけられる者の協力があって成立するプロレス特有のムーブメントだった。
しかし美貴は実戦の中で強引に決めてしまった。
既にこの世を去ったマードックが、もし存命だったとしたら。
そしてこの場に居合わせて美貴の動きを目の当たりにしたなら、自分の技の継承者が現れたことを喜び、大きな掌で美貴の背中を叩きながら、こう囁いただろう
「コンバン、イッパツドウデスカ」
何はさておき、ぐしゃり。
己の膝とビルの床に挟まれたダークネスの頭が潰れる感触が伝わってきても、気にも止めない。
顔面に白くてどろりとしたやつをぶっかけられたことの衝撃と屈辱と嫌悪感を打ち払うためだけに身体を動かしている、否。
理性が飛んでしまい、暴力的衝動に身をまかせているのが今の藤本美貴だ。
白くてどろりとしたやつが瞼を横切る度、固く閉ざした口元の上を通る度、自分の身体の下に打ち据えたダークネスに鉄槌を振り下ろしていく、と。
ピィィィィッ。
レフリー服を着たマルシェがホイッスルを吹き鳴らし美貴を制止した。
「タップ、タップ」
戦意喪失したダークネスがタップしていることを美貴に指摘する。
ダークネスの手が自分の身体に触れているのを目にした美貴は、発作を引き起こしたように絶叫すると、振りかぶった両手に全力を込めて止めの一撃を振り下ろそうとする。
ガシッ。
不測の事態を止め、戦いの尊厳を守るべく、レフリー紺野が狂乱状態の美貴に体当たりした。
「藤本美貴、レッドカード」
「うおおおおおおおおおおおっ! ぐおおおおおおおおおおお!」
狂獣の咆哮がビル全体を揺り動かさんばかりの勢いで響いた。
――数分後、会議室の一角に、濡れタオルで顔を拭う美貴の姿があった。
白くてどろりとしたやつのかかったジャージの上下はゴミ袋に脱ぎ捨てた。
今はインナーだけのあられもない姿だ。
その露出度をアイドルの写真集にたとえたならば、デビュー5年目。
無難な水着ショットを掲載する程度では熱烈なファン以外は財布の紐を緩めず、メディアも取り上げてはくれない。
だからといっていきなり「手ブラ」や「髪ブラ」みたいなセミヌード路線に踏み切ることもできないので、いわゆる下着ショットってやつを頑張ってみたという感じだ。
「ホント、信じられない。このド変態!」
「オイッ」
「いったい何考えてんの。この変質者!」
「何か誤解があるようなので、正しておきたいのだが…」
「なんで今日までアンタみたいな異常者が野放しになってたんたろう!まったく」
「ちょっ、異常者って言い過ぎ! ワシの話を聞けって」
「ああ、ヤダヤダ!こんなとんでもない色魔が身近にいたなんて」
「ちょっ、待てってば」
散々な言われようをしているのは、美貴に白くてどろりとしたやつをブッカケた張本人、闇の王ダークネスである。
罵詈雑言を浴びせられるたび、声に張りが出てくるのは生来のM気質なのだろう。
彼が美貴と同じ部屋に居ることを許されているのは、美貴の暴行によって負った傷の治療が終わるまでは動かせないと紺野あさ美が判断したからである。
ダークネスをドMの変態王と認定した美貴としては、とっとと叩き出したいところだった。
しかし白くてどろりとしたやつを清拭するためのタオルやら、何やらを甲斐甲斐しく準備してくれたマルシェの言うことだ。
ましてや始末したジャージの代わりの衣装を、商店街で調達してきてもらおうという心づもりもあるのでなおさら逆らえない。
勿論成人したアイドルがちょっとセクシー路線で頑張ってみたレベルの露出した自分の姿をドMの…闇の王の目に触れさせることは頑として拒んだ。
今居る部屋の元の入居者だったフットマッサージ店が夜逃げした際に残していったパーテーションで、ドMの変…闇の王の視線を遮っている。
「いいか、藤本。 お前はなにか誤解しているぞ」
ドMの変態王は漆黒の三角覆面やフードの上から包帯を巻いていた。
その姿はシュールに映らなくもないが、こんなのをシュールって言ったらホントのシュールリアリズムを表現しようとしてる人に怒られるよねw
パーテーション越しにいがみ合う二人をよそに、紺野あさ美は採取した白くてどろりとしたやつを顕微鏡で観察しながら、首を捻っている。
「手袋をしているとはいえ、そんなおぞましいものをよく触れたもんだ」
「ううん。これは美貴ちゃんが思ってるようなものじゃないと思うよ」
イヤ。この白くてドロドロ粘っこいのはどう見ても男のあれだろう。
その名称をはっきりと出さなかった美貴なりの配慮に際して、科学者ドクターマルシェは無頓着だった。
「美貴ちゃんはダークネス様が保存していた精液を、何らかのトリックを用いた水芸で射出したと思ってるみたいだけど、それは違うよ」
きっぱりと無頓着に言いきった。
「だってこの液体の中には精虫が泳いでない。 だから精液とは考えられないよ」
「いや、しかしこいつが種無しだってことも」
「いまさっきダークネス様がまき散らした液体の量は、一人の男性が一生のうちに体内で作り出す精液の量を遙かに上回っているよ」
「だったら戦闘員どもが総出で自家発電して…」
美貴の言葉はホイッスルの音色で遮られた。
「あんまり下品なこと言ってると、ほんとにスレの住人さんに愛想尽かされちゃうよ」
「アタシはいっそその方がいいけどね」
美貴が顔面にブッかけられたものを観察した結果、生物から分泌されたものではないという。
「それどころか、人類が未だ解析し得ていない物質である可能性が高いんだ」
「それって一体?」
ドMの変態王が声高らかに告げる。
「そう、それこそがこの偽りに満ちた世界に残されたたった一つのトゥルース、ダークマターーーー!!」
顔を拭っている美貴の耳に、「ひぃぃ」と押し殺した悲鳴が聞こえた。
もしや?と思い顕微鏡を覗いていた科学者に視線を転じた。
案の定だ。 話している内に精神が高ぶってやらかしたのだろう。
闇の王が射出した白い粘液が、紺野あさ美の顔面を汚している。
視力矯正のためか、優等生キャラを維持する小道具なのかはわからないが、丸眼鏡のレンズが白濁液ですっかり覆われている。
「だ、大丈夫。 こ、これはダークマター。世界の謎を埋める未詳物質。 あ・赤ちゃんの素なんかじゃな・い・い・い・いいいいいいい」
身に降りかかった災難から受ける精神的ダメージを、自己暗示で最小限に抑えようとしていたマルシェが突如壊れ始めた。
視界を塞ぐ目隠しでしかなくなっていた丸眼鏡を外すと、額や頬に付着していた白濁液を顔中に塗りたくる。
「ち・ち・ち・違いますよ。 わわ・私はダ・ダ・ダ・ダークネスのドクターマルシェなんかじゃありませんよ・よ・よ・よ・よよ」
ヤバい。脳がシャットダウンし始めている。
こんな時は…。
「オイッ、何か甘いものはないのか?なかったら探してこい」
脳に補給する糖分の調達をダークネスに命じると、立ち上がりながら新品のタオルを腰に巻き付ける。
使い走りを命じられ、不機嫌になりかけたダークネスだったが、一推しのマルシェの危機とあっては放っておくわけにもいかず、痛めつけられた身体を抱え給湯室に走る。
「アハ、アハ、アハハハハハハハハハハ」
順調に精神崩壊が進行中のマルシェは両掌で自分の顔を歪めだした。
その表情はもう変顔のカテゴリーを飛び越して、怪奇映像の領域に突入している。
「オイっ、気を確かに持て!」
元々お前推しの住人が少なくないスレで醜態を曝すなと気付け代わりに張り手をぶちかますと思いの外強烈に反撃してきたので、掴み合いになった。
そこへダークネスがプラスチック製のケースを手に戻ってきた。
取っ組み合う二人の部下の姿に一瞬気を飲まれそうになるが、持ってきたのかという美貴の問いかけに応じ、ケースを逆さにして中身を床にぶちまける。
ケースの中には個包装された薬包のようなものがいくつも入っていた。
「ちょっと待っててくれ。いま開けていくから」
不器用な手つきで開封した中身の粉末を広げたキッチンペーパーに落としていく。
「何だその粉は?」
「本当は角砂糖やキャラメルとかあればいいんだろうけどな」
構成員の健康を考慮して白砂糖やそれを使用した菓子の類を処分した本拠では、甘味料としてその粉末を使用しているらしい。
「トウモロコシから採った転化糖の一種で、砂糖と同じ甘さで十分の一の糖分しか摂取されないという…」
「オマエ、とことん使えねー」
ダメ出ししながら美貴は、彼が隠し持っていたものを目にした。
「いいもんがあるじゃねえか!」
チューブ入りのコンデンスミルクをマルシェに摂取させるように命じる。
「ちょお待てって」
ダークネスによるとこの状況でコンデンスミルクを摂取させるのは、色々と誤解を招いてマルシェにとって不利益だという。
「それはまあ顔中に白い粘液をべっとりつけた女がコンデンスミルクなんか舐め回した日にゃ」
その状況を想像した美貴はニンマリと笑った。
「面白え!最高じゃねえか!」
手四つに組んだマルシェの耳元に囁いた。
「ハーイ、あなたは小熊のプーさんでちゅよ」
「プ〜?」
「お腹を空かせたプーさんは甘〜い甘〜いハチミツを探してまちゅ」
「まちゅまちゅ。 まちゅまちゅ」
「ミツバチさんは旅に出たのでプーさんはハチミツを集めることができまちぇん」
「ガルルルル」
「こういうときのためにとっておいたハチミツは悪いクマさんが盗んでいきましたとさ、それっ!!」
闇の王の手からチューブ入りのコンデンスミルクを奪い取ったマルシェは、キャップを外す手ももどかしげに…。
ぶちゅぶちゅ〜。
チューブを握りつぶす勢いで搾り出した中身を、口内に流し込んでいく。
んぐ、んぐ、んぐ。
チューブ一本分のコンデンスミルクを飲み干すと、人心地がついたのか髪をかきあげ物憂げな表情になる。
「どうして私たちは能力なんか持って生まれてきたんだろうね」
「いやっ、この状況でそんなセリフ口にしたって少しも心動かされねーし」
えへっと照れ隠しに出した舌で口の周りについている白い粘液をぺろりと舐めた。
当たりだったらしい。 いやむしろ外れというべきか。
紅潮していた頬がみるみる青ざめていくと、数枚のティッシュペーパーに唾を吐く。
それでも気分が収まらなかったのか、美貴の顔を拭うタオルを濡らすために用意していたバケツを抱え込むと、指を喉に突っ込み…。
げぼげぼ…。
「いやぁぁぁっ。 こんなの紺ちゃんじゃない」
闇の王の悲鳴が壁に吸い込まれていく。
>>747-753 『闇に哭く』の三回目ですかね
ダークネスさまが白いものをぶちまける場面とかは富士見ファンタジア文庫から出版されている「ライジン×ライジン」という小説の主人公の能力をパクr…ではなく触発されてものであることを告白しておきます。
能力の実相とかは異なりますけどね
あとこのままで終わっては美貴様があまりにもあまりにもなのでおまけとして
>>669で貼られていた小春の画像から浮かんだ短編らしきものの断片を置いていきます
混乱して
>>747-753への怒りを忘れてくれればこれ幸いです
755 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 00:42:47.36 0
稲妻が駆け抜ける。
一閃する度に地を這う人影が増えてゆく。
その稲妻の色は倒れた者の躰から流れる血よりも紅く。
かつて共鳴者の一人として蒼き正義を奉じた久住小春という名の稲妻が奔る。
最後の一人を倒した小春に呼びかける声。
「腐れ金で集めたクズども十二人を倒すのに三分近く。 オメエたいしたことないな」
揶揄するような声の主は小春よりも年上の女。
黒の活動的な戦衣の上に白いジャケットを身につけた小春に対して、平凡な、ほんとうに平凡な街のOLにしか見えないスーツを身につけている。
「命を奪うつもりなら一瞬で片付ける。 でもこいつらが金で雇われただけの連中だということはわかっていたから」
だから手加減して命だけは助けてやったってか。
小春の戦いぶりを見届けた藤本美貴はからかうような口調とは裏腹に戦慄を覚えていた。
スナッフビデオのようなものを取るという触れ込みで集めたゴロツキども。
強く抵抗することが予測される主演女優を襲撃して拉致する場面からの撮影。
前金で三十万、成功報酬として百万という破格の条件で集まった男たちは身体の奥から腐臭が漂ってくるようなクズどもばかりだった。
ちょっとした試験。
鳥籠の中に入れられた生きた文鳥を握りつぶすというごく簡単な試験を合格したクズどもは、マグライトを手にして廃墟に現れた標的を目の当たりにしても躊躇する素振りを見せなかった。
所詮は素人連中だ。 銃器を渡したところで使えこなせまい。
スキルに合わせて用意した鉄パイプ、釘バット、ハンマーにサバイバルナイフを手にして襲いかかってくるクズどもを久住小春は雷撃を使用することなく殲滅した。
突如小春の手に現れた禍々しい凶器。
刃渡り二十センチ足らずの両刃の短剣を日輪のように組み合わして作ったチャクラムを投擲されたクズは恐慌状態に陥り得物のサバイバルナイフを取り落とした。
チャクラムが念写で映し出されたものだと藤本美貴が見て取った時、久住小春は本物のナイフを手にしていた。
756 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 00:44:16.01 0
あとは一方的な展開だった。
マグライトとサバイバルナイフの二刀流。
しかし持参したマグライトには念写で映し出したナイフの画像が、ナイフにはマグライトの画像を貼り付けられた。
クズどもはマグライトによる打撃よりも、サバイバルナイフによる斬撃の方を恐れた。
刃と鈍器では防御法も異なってくる。
打撃をくらっても斬撃は免れようとしたクズどもの多くは瞼の上を刃で切られた。
流れ出る血で視界を塞がれた男たちはジュラルミンを削り出して作られた軍用の懐中電灯による一撃を脳天に喰らい昏倒した。
視覚による情報と自分の体に加えられる攻撃の誤差に対応できず混乱した男たちを倒しきった時点で、久住小春は息一つ乱していなかった。
「こいつらは女子供に怪我させることぐらい何とも思っていないクズどもだが、それでも中には家族のある奴だっているんだぜ」
犯罪に手を染めた人間もいるが、その過半数は前科のない一般人だ。
自分の意志で人の道を踏み外すことに何のためらいも覚えないとはいえ一般人の範疇に入る連中に、深手の傷を負わせた久住小春のことを藤本美貴は詰る。
「まったくとんだ正義の味方もあったもんだな」
「私の目的の前に立ちふさがる者は誰であっても排除する」
「それが仲間と離れたお前の見つけ出した正義ってやつか」
「そんな正義なんて今の小春には関係ないよ」
過去を振り捨てるように吐き捨てた小春は真紅に染まった刃を擬して藤本美貴に迫る。
「さあ教えてもらうわよ。 あの人、姿を消した高橋さんは今どこにいるの。 教えてくれないならあんたの身体に訊くから」
闇の中を紅き稲妻が奔る。
以上おまけ『闇を奔る』ですた
757 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 01:07:55.79 0
変態話の直後になぜこんな話が描けるのかw
>マルシェは両掌で自分の顔を歪めだした
13人がかりですねw
758 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 03:44:57.48 0
あさに
759 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 04:57:36.86 0
>>754 なるほど
もう一つの題名候補だった「ぶっかけうどん〜」の意味がわかりました(ニッコリ
トコトンヤレ
おまけはおまけで魅力的だし断片で終わって欲しくないカナ
760 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 06:31:19.54 0
どっちも面白いね
ギャップがすごいわ
761 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 07:13:00.00 0
>>754 想像を上回る酷さだw
過去に類を見ないくらいの攻めの姿勢に敬意を表したいですw
話の続き自体も気になります
小春の方はまたうって変わってかっこええですね
念写の用い方に痺れるようなセンスを感じました
憧れるゥ
762 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 09:40:15.00 0
ハゥ
763 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 11:52:53.33 0
バゥ
764 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 13:48:18.91 O
今日の夜にはなにかあげたいホゼナント
765 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 15:03:01.74 0
でもそうはならなかった
…って言いたい
言いたくて仕方ない
766 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 15:28:22.84 0
767 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 17:36:30.32 0
ほっ
768 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 19:01:50.53 0
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/624.htmlつづき れいなは具象化された刀をしっかりと握り締めた。
一点の曇りもない刀身は思わず目を見張るものがあった。
息を大きく吸って目を閉じる。
広がった暗闇の中、すっと刀を振り上げる。具象化した刀の重さをしっかりと感じた。
両手で持ち、深く息を吐くと同時に振り下ろすと、刀は一瞬で消え去った。
その手から滑り落ち、物体としての存在をなくしたそれは、再び空気へと混ざって消えた。
「まだ、完璧やない…」
れいなは天を仰いで息を吐く。困ったように頭をかいて笑った。
この力はまだ、未完成だった。
769 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 19:02:30.34 0
-------
久住小春の意識が回復して2日後に下された異動は衝撃的だった。
れいなたちリゾナンターがその事実を知ったのはその日の夜のことだった。
上層部、すなわち“上”から下された命令に、れいなは食ってかかった。
「なんでそんなことっ!」
だが、“上”に直接会うことは叶わない。
れいなたちリゾナンターは“上”からの命令で動くが、彼らがどのような考えを持っているかは知ることはない。
知る必要のないことだという意味なのか、“上”と接触することは一切できない。
唯一のパイプ役の愛でさえ、彼らの顔はおろか、声も、名前も知らない。
だから必然的に、れいなが食ってかかる相手は愛になる。
「今回の怪我の重症度を考えれば、長期の休養は当然やろ」
「そうやなくて異動のこと!何処に異動になるとや!」
れいなはそうして愛の胸倉を掴むが、その手を取ったのは愛ではなく里沙だった。
リゾナンターをまとめる愛のサポートに徹する里沙は、鋭い目つきでれいなを睨んだ。
770 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 19:03:19.09 0
「なんね、ガキさん……れなはいま、愛ちゃんと話しようと」
「話すって言う割に手が出てるけど?」
冷静に、だけど強い意志を持ったその声にれいなは押し黙る。
彼女のこういう「大人」の対応がれいなは苦手だった。
感情を押し殺し、表に出さない里沙と、自分の想いに正直であり、気持ちを叫ぶれいなは時折ぶつかることもあった。
いまはまさにその状況であり、その場にいた他のリゾナンターは固唾を飲んだ。
このふたりがぶつかると、収束させるのは骨が折れる。
しかも、よりによっていまぶつかるのは厄介だった。
小春の異動が決まり、愛佳も怪我を負ったいま、仲間割れなんてしている場合ではない。
「……異動のことは私も知らない」
その空気を裂いたのは、当事者である愛だった。
彼女はれいなと里沙の手を丁寧にほどくとそれだけ伝えた。
だが、その答えは到底納得できるものではなく、れいなは再び噛みついた。
「知らんってどういうこっちゃよ」
「そういうことだよ。詳細は聞いてない。ただ、異動するってことを聞いただけ」
「……それで納得したとや愛ちゃんは!」
771 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 19:04:05.76 0
再びれいなが掴みかからんとしたときだった。
愛は彼女の右手を払ったかと思うと、手首をぐるりと捻った。
れいなは見事に宙を舞って回転し、そのままドタンと地に伏せた。
一瞬の出来事に、全員がなにも言えずにポカンとしていた。
「ってぇ!」
突然のことに受身が取れなかったれいなは派手に腰を打った。
そんなれいなを見下ろしながら、愛は言葉をつづけた。
「現状を私は伝えてるだけ。なにか分かったらまた報告するから……」
れいなの鋭い睨み付けをかわし、愛は踵を返して、部屋を出ていった。
それを追いかけるように、里沙も足早に部屋を後にする。
捻り飛ばされたれいなはぶつけた腰をさすったあと、思い切り拳で床を叩いた。
ゴツンという鈍い音が響いたが、だれもなにも言わなかった。
少しずつ、なにかが狂い始めている気がした。
772 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 19:04:49.18 0
-------
結局、小春の異動先について、れいなはおろか、リゾナンターたちだれもが知ることはなかった。
小春の意識が回復して以降、れいなたちは小春と会うことは許されなかった。
つまり、小春の意志も聞けず、怪我の容体を知ることがないまま、彼女は異動してしまった。
“上”からの命令で動き、彼らの意志についてはなにも知ることがないリゾナンター。
この関係性には前々から不信感は抱いていた。
彼らがなにを考え、いかなる理由をもってリゾナンターを配置し、行動させているのかは不明だった。
実際のところ、ダークネスと闘う明確な理由でさえ、れいなたちは知らない。
それに疑念を抱く暇もないままに、闘いの日々の中へ呑み込まれていったのだから。
「わけ分からん……」
れいなは喫茶リゾナントの屋上で寝転がって空を見上げた。
夏の青空は綺麗に澄み渡っていて、白い雲が申し訳なさそうに点在している。
いくら手を伸ばしたところで、その「青」に届くことはなかった。
小春が異動してからもう1週間も経っていた。
愛佳はまだ現場に復帰して充分に戦える状態ではなく、病院にいた。
また、絵里も体調が優れない日が多く、今日も病院で療養している。
773 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 19:05:34.58 0
あの日以来、微妙な緊張関係がリゾナンターたちには生まれていた。
ケンカというにはあまりにも重苦しいその関係性に、当事者であるれいなも溜め息をついた。
愛に食ってかかったことは後悔していない。言いすぎた部分はあるにしても、れいなは納得できなかった。
だが、その行動だけでいまのリゾナンターたちの緊張関係が生まれたわけではなかった。
小春の異動が意味していたものを全員が感じ取っていた。
変わりなく続く未来はない。これから先も、だれかが異動することは充分に考えられる。
いまの8人である体制も、いつまでもつづくかは分からない。“上”の決定次第で、れいなたちはすぐに変わってしまう。
「……なんでよ」
れいなは腕で目を覆った。
変わりたくなんてなかった。“いま”あるものが、れいなにとってのすべてだった。
あのふざけた小春の笑顔とか、愛佳の鋭いツッコミとか、普段は頼りないけど、カッコいい愛とか、口うるさいけど優しい里沙とか、
絵里のふわふわした存在とか、考えなしに見えて分析力のあるさゆみとか、信念を貫くジュンジュンの想いとか、だれかを護ろうとするリンリンの強さとか。
そういういままで普通にあった世界が壊れてしまうことが、れいなにとってはイヤだった。
「もう、戻れんとかいな……」
異能者であり、化け物扱いもされてきた。社会からは爪弾きにされ、不必要だと烙印を押された。
でも、9人は“蒼い共鳴”という絆で結ばれていた。自分を必要とする世界は此処にあった。
だからいままで生きてこれた。あの9人だから、このなにかが欠けたような不確かな世界で生きてこれた。
れいなは知らぬうちに、泣いていた―――涙なんて、枯れたものだと思っていたのにと唇を噛んだ。
「れいな!行くよ!!」
瞬間、屋上の扉が開き、愛の声が飛んできた。
なにも考えずにれいなは涙を拭い、扉へと走った。
とにかくいまは、闘うしかない。
774 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 19:06:13.84 0
とりあえず此処までになります
つづきも早いうちに頑張ります
775 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 20:28:14.99 0
早いうちに帰って読みます
776 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 21:00:15.01 0
>>774 乙
不本意な形でリーダーと対立して悩むれいなの姿が活写されていて新鮮だった
続きも頑張ってくれ
777 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 21:55:21.58 O
帰ったらゆっくり読みます
とりあえずおつ
778 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 22:05:39.28 0
乙です
「もう、戻れんとかいな……」
れいなの苦悩が伝わってくる
779 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 23:20:17.86 O
今から読む
780 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 23:26:00.33 0
次回予告
ttp://resonant.web.fc2.com/data/toro17097.jpg ttp://aewen.com/momusu/group/img/aewen3763.jpg 「あなたが残り3人の内の1人ね」『高橋 愛さんですね…りほちゃんはやられたんですね
・・りほちゃんは・・死んだの・・ですか?私も・・・やっと覚悟が出来ました 参ります!』
「覚悟?戦いの?」『いええ 死ぬ為のです』「っ!!」
大人びた少女の周りにある排水溝やパイプから水が噴き出し またたく間に愛の腰まで水が浸かっていく
「む!この水鉄砲の水圧はかなりのもの さらに足元は水で鈍る…動きを封じられたか」
攻撃をよける事に気を取られて 水中から近づいて来た相手に捕まってしまう!
まっすぐ見つめ愛を強く抱きしめて放そうとしない「これが覚悟です!」
水は2人の全身を包み込みだした このままでは2人共溺れ死んでしまう
ttp://aewen.com/momusu/group/img/aewen4728.jpg「覚悟…自爆するつもりなの この娘は」
-水圧が上がり 水流は激しさを増していく 両者の衣服は千切れ始め
バラバラになったネックレスの破片が今や凶器と化し
宇宙に浮かぶ星のように煌めきながら周りを回っている 2人の体に次第に増えていく傷-
(これがお互い 最後に眺めるプラネタリウムなんて ゴメンよね)
先に溺れたのは少女の方 愛の訓練された肺活量には叶わなかった それでも能力を解除しない相手に
口移しで空気を送り込む愛『ゴボッ!(覚悟…私の覚悟…)』「フッ(無茶しやがって)」『ッ!!』
いつしか周りの水は引き始めて・・・もう 少女は愛をまっすぐ見られないでいた・・・
『私・・この戦いの為に 死ぬ覚悟で挑んだのに・・なのに』
「バカね 死ぬ為の覚悟なんて要らないのよ……あなた名前は?」『ミズキ…譜久村 聖です』
愛は言った「じゃあ…聖…生きる為の覚悟 私に預けてみない?」と
次回かなしみ戦隊リゾナンターV「その出会いのために」
ttp://aewen.com/momusu/group/img/aewen9715.jpg きっと譜久村聖は 先程の愛からの行為に頬を紅く染めつつも
まっすぐ愛の目を見て『はい』と答えるだろう
781 :
名無し募集中。 。 。:2012/07/03(火) 23:47:29.40 O
>>735の続きです。
いつもより変わった書き方なので苦手であればスルーして下さい。
782 :
名無し募集中。 。 。:2012/07/03(火) 23:48:33.17 O
まだ魔女と彼女は言い合いをしている。
「いいからとっとと病院行けよ!」
「やだ!明日香ちゃんと一緒がいい!」
「仕事なんだから仕方ないだろう?ほら!もう迎えに来たぞ!」
魔女が私に指をさした。
「仕事があるから焼き肉行けない!レバ刺し食べたい!」
「レバ刺しはもう焼き肉屋にはないんだよ!」
「なんで?」
「ニュース見てないのか?」
「見てる。食中毒でしょ?」
「それが広がらないように禁止したんだよ」
「誰が広めたの!?」
「ミキが」
「ミキちゃんが?」
「そうだ」
「どうして?」
「ダークネスだから」
「明日香ちゃんもダークネスだったよ?」
「あいつは脱走したんだよ。だからミキは苦しめにきた」
「明日香ちゃん悪いことしてないもん!ぴぃぴぃ!」
783 :
名無し募集中。 。 。:2012/07/03(火) 23:50:06.25 O
「あー、もう!わめくな!ガキか!?ホントにミキと同い年かよ!!」
「やぁだあ!明日香ちゃん、嘘つきぃ!わあわあわあ!」
「嘘付いてないじゃん!仕事だって、さっきあんたが言ったじゃん!」
「ねぇ、ミキちゃんの胸揉みたい」
「はあ!?いきなり訳わかんねぇよ」
「明日香ちゃんは巨乳でも私は、ちっぱい。明日香ちゃんは中学生の時でもうバストは80だったもん」
何ベラベラ喋ってんだよ!?
ん?魔女が黙り込んでる。
784 :
名無し募集中。 。 。:2012/07/03(火) 23:51:31.30 O
「中学生ですでに80…。ミキは今でもCカップにはいかない…」
「さわらせて?」
「やだよ!」
魔女がない胸を隠す。
「やだ!私は男女問わず乳を揉みしだきたいんだもん!」
「変態かよ!」
「変態じゃないもん!オタクだもん!」
彼女はライブの後、私たちだけでなく、スタッフさん達の胸をさわりまくる。
「何でオリメンなのに、こんなのが好みなんだ?安倍さんといい、コイツといい、昔の矢口さんといい、身長ちみっこくて胸がなくて色白で女らしいやつばかりなんだ?」
「ねぇ、安倍さんって誰?」
彼女の目が笑っていない。「矢口さんって誰!?」
「ああ!?」
「だーかーらー!!矢口さんと安倍さんって明日香ちゃんの何なの!?」
彼女は勢いに任せて魔女をポカポカ殴る。
「いってえ!やめろ!お前あいつがガキの時に幹部だったのは知ってるよな?」
「うん。知ってる」
「その同期が安倍さんで、あいつの後輩が矢口さんであいつがいた時に仲が良かったことしかミキは知らない」
「どうして知らないの?」
「ミキは途中から組織に入ったから」
「そうじゃなくて私が聞きたいのは明日香ちゃんと安倍さん、矢口さんの関係だよ!!」
「もー!さっきから言ってんじゃん!」
「明日香ちゃんが時々言う『なっち』って誰!?」
「だから安倍なつみだから『なっち』なんだよ」
785 :
名無し募集中。 。 。:2012/07/03(火) 23:53:03.57 O
「へぇ〜、そうなんだ…」
台詞とは裏腹に彼女の声が冷たい。
しかしいきなり彼女は私の方に向き合って突進してきた!
「明日香ちゃんの浮気ものぉ!!」
「うぇえっ!?」
想定外のことだったので避けられなかった。
突進した彼女は、そのまま私に抱きついてポカポカ殴る。
「明日香ちゃんのバカバカバカ!!」
「ちょっ、やめろって!」
「やっと離れたか。もうミキは帰るからな!」
彼女が離れた途端、魔女は消えた。
どうすりゃいいんだよ、この状況…。
今、チカラ使って彼女を引き剥がしたらまずいな。
制御装置着けてないし加減ができない。
とりあえず今は彼女を落ち着かせることが先決だ。
私は今朝の電話から今までのことを一つ一つ彼女に分かるように語りかけた。
786 :
名無し募集中。 。 。:2012/07/03(火) 23:55:07.11 O
「声を奪われたカナリア」
カナリアの人です。
ヒロインは前作と変わっていません。次くらいで終われそうです。
787 :
名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 23:57:31.68 0
作品いぱい来てるーーー
やたーーー(*´∀`*)
788 :
名無し募集中。。。:2012/07/04(水) 01:07:34.44 O
>>774 小春卒業の時ってこんな感じだったのかなってなんとなく思い出しました
愛ちゃんやガキさんとの対立も綺麗だなと思いました
789 :
名無し募集中。。。:2012/07/04(水) 02:08:45.60 0
>>780 おお今回のシリーズは画像がほとんど一新されとる 相変わらず能力設定も独自ですな
画像のセレクトにかなしみさんの9期愛が感じられますね
790 :
名無し募集中。。。:2012/07/04(水) 06:11:34.95 0
>>780 プラネタリウムという表現が素敵
愛聖のキスがもっと素敵w
791 :
名無し募集中。。。:2012/07/04(水) 08:00:54.89 0
>>780 毎日の更新乙です
生きるための覚悟とか第1シリーズの愛佳との出会いにも通ずるものを感じますね
> 両者の衣服は千切れ始め
これはなんとも実写化して欲しいw
>>786 胸を揉みしだきたいとか彼女はいい趣味してるねw
カナリアの本来の良さは少し減ってる気もするが賑やかなのは良いことです
792 :
名無し募集中。。。:2012/07/04(水) 08:21:20.68 0
ここにきての投下ラッシュはすごいね
したらばにも待機してるし
ダークマターの続きも待ってるのだか
793 :
名無し募集中。。。:2012/07/04(水) 10:42:43.46 0
かきあげ
794 :
名無し募集中。。。:2012/07/04(水) 12:17:27.05 0
泣くよ
795 :
名無し募集中。。。:2012/07/04(水) 12:33:35.04 0
>>690-694 の続き。
その昔、闇と光があった。
闇は光を嫌い、光もまた、闇を嫌っていた。
闇がいつも悪い事をしていたので、光はとても困っていた。
人々が悲しんでいることに心を痛んでいた。
その時、光はある事を思い付く。
闇を打ち払う為の光を増やせばいいのだと。
だけど闇もまた、光と同じことを考え、それを増やす方法を思い付く。
光が考えたのは、人間のチカラを借りるというもの。
それによって、≪共鳴者≫と呼ばれる人達が生まれた。
それによって、【ダークネス】と呼ばれる怪物が生まれた。
≪共鳴者≫は光から与えられたチカラによって戦いを始めた。
【ダークネス】もまた、闇から与えられたチカラによって襲いかかる。
光は≪ココロ≫を使って。
闇もまた【ココロ】を使って。
それからずっと、闇と光は戦い続けている。
学園は静かな日々を送っている。
まるで自分の周りで"事件"が起こっていないように、平穏で、平和な日常。
誰もが知らずに、気付かずに、生きている。
気付いているのはきっと、彼女達だけ。
「――― ……だから、この公式に当てはめると、イコールで、ガッと
答えがくるワケなー。判ったかー?っておーい、譜久村聞いてた?」
名前を呼ばれた。
誰かの名前。
はっ、と顔を上げる。
それが自分の名前だと気付くまでに数秒もかかってしまった。
まるで遠い誰かに声をかけられたみたいだった。
「えっと、あっと、その……っ、…す、すみません。聞いてませんでした」
譜久村聖は、申し訳なさそうに俯いた。微かに笑いが上がる。
教壇に立つ若い数学の教師は、やれやれといった風に大袈裟に溜息を
ついて見せる。
「まあ、判るけどさあ。おまえも…てか、みんな、だな。
この学校に入学してもうけっこー経ったよな。小学校とぜんぜん違うから
最初のうちは緊張してだろうさ。
んでも今の時期、学校にもすっかり慣れて、外は相変わらず
晴れてて、おまけに昼飯を食ってお腹も満たされて。
かったるい授業なんか、受けてられないっつう気持ちも判るさ。
そりゃ、私も今は先生やってるけど、きみらくらいのときがあったワケで
……あ、ごめん。何をいおうと思ってたかってゆうとーあー…判んなくなった」
たくましさのある女性教師が話をはじめた直後、譜久村の態度に怒っているのかと教室中が
緊張感に包みこまれたが、その軽い調子に、緊張が一気に解けて、ドッと笑いが起こる。
ただ譜久村だけが笑っていいのか、まずいのか考えあぐねているらしく
表情を少し強張らせていた。
「まあ、力を抜き過ぎず、入れ過ぎずって感じで、肩に力が入り過ぎてると
うまくいかないこともあるからさ。そうだな、まずは、楽しもう」
穏やかに言葉を落とす。
生徒達の顔に一瞬「?」が浮かび上がり、その科白を呟く。
「楽しもう」
めまぐるしく過ぎて行く日々。
今でも、楽しいと思える授業もある。
でも、中学生になってからは、みんな急に背伸びをはじめ、授業を純粋に
楽しむのがいけないように感じることがあった。
覚えることがたくさん。やらなきゃいけないこともたくさん。
やりたいこともあるけど、やらなきゃならないことの方が多かった。
生徒達、そして、譜久村の中で、ほんの少しの変化。
明日には忘れてしまう気持ちかもしれない。
でも、楽しめばいいんだと、思った。
なんだか判らない切迫感に心を裂かれるよりも、この日々がなんだか判らないのなら
なんだか判らないなりに、それなりに楽しめばいい。
楽しんでいけばいい。
急がなくても、いいんだ。
そう思って、譜久村はさっきまでぼんやりと眺めていた窓の外ののどかな風景から
再び黒板に敷き詰められた文字を目で追った。
これは譜久村聖が2年になったばかりの頃の記憶。
瞬きをした。
「女の子が、助けてくれたんだ」
「女の子?」
「私、どうすればいいのか判らなかったの。支えられなければ動かない足
なんていらないって思ってた。でも、違ったの。私は、いつでも支えられてた。
一人で立ってるって思ってた、独りで走ってるって思ってた。
でも違った、私は、間違ってた、ずっと、ずっと間違い続けて、手遅れに
なるかもって時に、その時に、あの子が助けてくれたの。
やり直すチャンスをくれたの。もうダメかもしれないけど、頑張れるかもって。
ねえ聖、私、まだ言ってないことがあるの、その子に―――」
ベットに横たわる彼女は弱弱しく泣いていたが、それは後悔や絶望でも
ない、ただ力を抜いて、安心したように。
気付けば譜久村は、屋上のドアを回していた。今は昼休み。今が現在。
微かに聞こえる話に耳を傾ける。
「"きょーめいしゃ"?」
「ほとんど敵にしか言われないけどね」
鞘師はどこから取り出したのか、チョークでコンクリートに文字を書く。
「共鳴者」と書いた後に、変なキャラクターが付け加えられている。
「はあ、そうなんですか」
「なんか冷静になってる?」
「いや、驚いてほしいなら驚くよ、リアクション込みで」
「いいよ別に」
空に近い場所に、二人は居る。
誰かが来るような気配はない、鈴木の姿を見ているのは何人も
居る筈なのに、それを追ってきた人間は一人も居なかった。
799 :
名無し募集中。。。:2012/07/04(水) 12:37:58.00 0
800 :
名無し募集中。。。:2012/07/04(水) 14:45:30.71 0
wao!
801 :
名無し募集中。。。:2012/07/04(水) 15:39:21.73 0
>799
乙です
だいぶ見えてきたとはいえまだまだ多い断片的な部分が一つにつながる時が来るのを待ってる
802 :
名無し募集中。。。:2012/07/04(水) 17:19:16.36 0
ううむ読み切れん
803 :
名無し募集中。。。:2012/07/04(水) 19:18:05.74 0
あげておきますわ
804 :
名無し募集中。。。:2012/07/04(水) 20:42:32.49 O
ぬん
805 :
名無し募集中。。。:2012/07/04(水) 21:50:30.24 0
ユースト終わったら投下しますほぜ
806 :
名無し募集中。。。:2012/07/04(水) 22:07:22.67 0
807 :
名無し募集中。。。:2012/07/04(水) 23:24:13.44 0
ミルキーウェイ懐かしいw しかもれいなの画像がw
808 :
名無し募集中。 。 。:2012/07/05(木) 00:20:32.00 O
どうも、カナリアの人です。
読んでくれる人、まとめてくれる人、投下してくれる人、みんな乙です。
この流れの調子だと最終回は次スレになりそうです。また、よろしくお願いします。
809 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 01:10:01.91 0
>>768-773つづき
-------
6人が到着したとき、既に現場は混乱していた。
人が街中で銃を乱射し、多数の被害者が出ている。死人が出ていないだけでマシと言えるが、様子がおかしかった。
銃を持っている人間は能力者ではなく、恐らく一般人なのだろうが、その瞳は輝きをもっていない。
「さゆ!リンリン!人を誘導して!」
愛の指示に従い、さゆみとリンリンは人をこの場から避難させた。とにかくいったん場を収束させる必要がある。
逃げ惑う人々を2人は冷静に移動させ、怪我人を病院へと誘導した。
「いったい何人おるっちゃ…」
れいなが間合いを詰めると、男が銃を乱射した。
ぱららららっと小気味の良いサブマシンガンの音が響き、慌てて避ける。
男の後ろから何人もの人間が現れる。彼らは銃だけではなく、ナイフや鉄パイプ、金属バッドまで持っている。
多勢に無勢とはこのことかとれいなは肩を竦めた。
「これ、だれかに操られてるよね…」
「まあ、そうでしょうね」
里沙と愛は背中合わせに会話をするが、悠長なことを言っている暇はない。
だれかが彼ら一般人の精神に干渉し、操っているのだとしたら、その洗脳を解く必要がある。
810 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 01:10:54.09 0
「ああああああ!」
だれかがそう叫び、銃を乱射し始めた。
慌てて物陰に隠れるが、すぐそこにもナイフを持った男がいる。
リンリンは素早く懐に入り、頸椎を軽く刺激すると、男はなにも言わずに倒れた。
「殺さずにっていうのは、厄介やね」
れいなは弾丸を避けながら闘い、懐に入っては銃を蹴り飛ばし、相手を気絶させる。
小回りのきくれいなをなかなか捉えきれないのか、彼らも無駄弾を使っている。
「でも、キリがないの…」
殺さずに闘うというのは厄介だった。手加減をすると、こちらがやられてしまう。
しかも相手の人数が多すぎた。リゾナンターたちは徐々に追い込まれていく。
瞬間、ジュンジュンはなにかを感じたのか、天を仰いだ。夏の終わりだというのに太陽がギラギラと輝いて眩しい。
「上にイマス…」
目を細めて彼女はそう呟いた。
なんの根拠があるかは分からないが、彼女の感覚は鋭い。いままでもなんどとなく、ジュンジュンの勘に助けられてきた。
愛は彼女の言うことを迷うことなく信じた。
「ジュンジュン、れいなとさゆ連れて、そいつのところ行ってくれる?」
「分かりましタ……でも、愛ちゃんたちハ?」
「こっちはガキさんとリンリンでなんとかするよ」
愛がそうしてニッと笑うと、里沙とリンリンも同じように頷いた。
ジュンジュンもその言葉を信じ、頷く。そのまま3人は走り出した。ジュンジュンの感じた“なにか”の場所へと向かう。
811 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 01:11:46.84 0
3人は、現場からほど近い場所にある廃墟ビルの階段を駆け上がった。ジュンジュン曰く、この屋上に“だれか”がいる。
古びた屋上の扉の前には「立ち入り禁止」という札が掛かっているが、扉は丁寧にも開いていた。
それが答えなのだろうなとなんとなく思いながら屋上へと飛び出した。
「お前やな……」
最初に飛び込んだれいながそう言うと、彼女は振り返った。
まだ幼さを感じさせる佇まいと、それに不似合いな大きな瞳。短めの茶色い髪は夏の季節によく似合っていた。
「早かったですね……あー、参ったな」
そう言いながらも彼女は慌てるそぶりも見せずにいた。
能力者3人を前にして、この余裕はなんだろうと不思議に思うが、あまりお喋りをしている時間はない。
「倒させてもらいマス、アナタヲ」
「倒す?どうやって?」
「方法はいろいろあるけんね、あんたやったら手加減せんと能力使って一気に……」
そこまで言うと、彼女はにこぉっと笑った。
その笑顔は凍りついていて全く楽しそうではない。冷たい微笑みはその幼い顔には不似合いでさゆみは思わず背筋が凍る。
なにか、隠し玉でもあるのだろうかと思った瞬間だった。
812 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 01:12:43.50 0
空気が一瞬にして張り詰めたかと思うと、パリンとなにかが割れるような音がした。
周囲にガラスはなかったので、割れた音はあくまでも気のせいだったのだろう。
しかし、その一瞬の出来事が、れいなたちに大きな変化をもたらした。
「なん……これ……」
言いようのない感覚が3人を襲った。
自分の体は五体満足で、なにも傷ついていないのに、“なにか”が足りない気がした。
いままで自分の中に存在していたものが丸っきり欠落してしまったような、抜け落ちてしまったようなそんな感覚だった。
さゆみは右手を広げ地面を叩く。しかし、パシッという音が響いただけでなにも起きなかった。
突然のことにれいなは眉を顰めるが、そのさゆみの表情を見て、まさかと思う。
「能力が…発動しないの」
その言葉を聞いた途端、彼女は笑い始めた。
「気付きました?“能力封鎖(リゾナントフォビット)”ですよ」
実に楽しそうに笑う彼女は先ほどの氷の微笑みは携えていない。物事が思い通りに進んでいることを心から喜んでいる。
すごろくサイコロ6の目が出てもうすぐゴールできる子どものようだった。
813 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 01:13:54.67 0
「……それがあんたの能力やと?」
「ブッブー。私の能力は“精神干渉(マインドコントロール)”です」
それが合図のように、3人の後ろのドアから人が流れ込んできた。
彼らは先ほど見た人間と同じように、みな瞳の輝きを失っていた。彼らもまた、この女に操られているのだと察した。
ジュンジュンは“念動力(サイコキネシス)”を発動しようとするが、全く発動しない。
舌打ちし、殴りかかってきた男の拳をよけ、左脚を軸にし、腹部を蹴り飛ばした。
「ほらほら、倒して下さいよ、能力で」
金属バットが地面を抉る。無意識のまま操られているせいか、彼らの破壊力は凄まじい。
さゆみは冷静に相手との距離を取りつつもこの場を収束できる方法を考えるが、一向に思いつかない。
別の女が放ったサブマシンガンがさゆみの足元に突き刺さる。抉られた地面の破片が飛び散り、軽くさゆみの左脚を切りつける。
「あ、能力使えないんでしたっけー」
「……黙れっ!」
へらへらと笑う女にれいなは殴りかかろうとするが、その前にふたりの男が立ちはだかる。
ナイフを突き出され、避ける以外に術がない。
これじゃ先ほどと同じ展開じゃないかと思うが、打開策が見当たらなかった。
814 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 01:14:42.75 0
―あの女の能力は“能力封鎖(リゾナントフォビット)”やない。ということは、もうひとり能力者がおるってことやろ?
「ひゃあああああ!」
男が振り翳したナイフを避けようとしたが避けきれず、れいなは左腕を軽く切ってしまった。
服が裂け、シャツに血が滲んだ。白に赤はよく映える。
―どこにおるとよ、その能力者は!
とにかくいちど此処を離れ、“能力封鎖(リゾナントフォビット)”の使い手を見つけ、倒す必要があった。
だが、れいなは現在扉からいちばん遠い位置にいる。この大勢の人間をかき分け、無傷でそこに辿り着く自信はない。
そんなことを考えている間にも、彼らは容赦なく攻撃を続けてくる。
先ほどより人数は少ないはずだが、それでもキリがない。徐々に体力が削られ、受ける傷も増えてきていた。
「あれー、息上がっちゃいました?」
護られた場所にいる女は余裕綽々の態度を崩さない。
勝ち誇り、楽しくて楽しくてしょうがないのか、目を細めて笑っている。
こんな場所で負けるわけにはいかないのだが、いかんせん、体力が落ちてきていた。
「もうちょっと、楽しませて下さいよ」
815 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 01:15:36.53 0
女がそう言って一歩足を踏み出した瞬間だった。
脳内に女が“侵入”してきた。れいなとさゆみ、そしてジュンジュンの動きがぴたりと止まる。頭の中で響く雑音に思わず膝を折った。
さまざまな情報が錯綜し、隅から隅へと突き刺さっていく。雷が落ち、自我が崩壊しそうになる。
―――リゾナンターになれて良かったですね
急に聞こえてきた声に思わず背筋が凍った。
頭の中に、女が“いる”。
―――もしそうじゃなかったら、あなたは社会のゴミ屑として、野垂れ死んでたかも
脳内に整理し蓄積されている記憶。
記憶の扉は数多く、常に開かれているものや閉じてしまっているものもある。
あるいは鍵の在り処さえも忘れてしまっているものさえもある。
れいなの記憶。
リゾナンターとして闘ってきた日々の記憶。最初にリゾナントに来た日の記憶。9人で笑いあった大切な記憶。
すべてが無駄にならない大切な時間という宝物だった。
―――ああ、あの子、異動になったんですね。痛かっただろうし、可哀想ですね
816 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 01:16:56.01 0
「っ……触んなぁ!!」
れいなが天に向かって吼えると、女の声は消えた。
さゆみとジュンジュンも同じように膝を折っていたが、能力の支配が消えたのか必死に息を整えている。
「れなの心に、これ以上触んな……」
「じゃ、触られないように頑張ってくださいね」
女は能力が破られたことになんのプライドもないのか、アッサリと言い放った。
最初から破られることを見越していたのか、それともわざと破らせたのかは定かではなかった。
確認する間もなく、再び男たちがれいなたちに襲いかかってきた。
「もう……キリがないの!」
間髪入れずに立ち上がり、さゆみも必死に闘うが、相手が多すぎる。
もうすでに20人は気絶させているはずだが、それでもまだ30人ほどこの場には存在している。
“精神干渉(マインドコントロール)”は想像以上に術者への負担が大きい。
いま、愛たちが闘っている相手もこの女によって操られた人間たちだが、単純に計算しても100人は操っている事になる。
そんな大量の人間を長時間操ることは、術者にとってはあまりに危険なことだった。
必ず彼女の能力の限界も訪れるはずだとさゆみは見越していた。
だが、残念ながらそう悠長なことを言っている余裕はない。
同じ場に存在するれいなとジュンジュン、そして近くで闘っている愛と里沙、リンリン、そして自分自身さえも体力が尽きそうになっていた。
一刻も早く、この女を倒さないとやられるのはこちらだった。
817 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 01:18:10.61 0
次の一手をどう打つか考えながらちらりとジュンジュンに目線を送った。
すると彼女は下唇を噛んだあと、じりっと後退りした。その距離の取り方は、どう考えても、闘いの意志を感じられなかった。
まさかと思っていると、ジュンジュンはさらに後退りする。その方向には、階段へと通じる扉があった。
「あああああ!」
ぱららららっという音のあと、さゆみは左脚を撃ち抜かれた。
焔のような痛みが脹脛を貫き、奥歯を噛みしめ、膝を折った。
「さゆっ!」
れいなが思わず駆け寄ろうとするがその足元にも銃弾が撃ち込まれ下手に動けない。
左脚をおさえたままさゆみが扉へと向くと、彼女はくるりと背中を向けた。
「ジュンジュンっ!」
れいなの声に気付いたのか、ジュンジュンは脚を止め振り返る。
彼女のやろうとしていることに気付いたのか、思わず声を荒げて叫んだ。
「何処行くっちゃ!!」
「……逃げマス!」
その言葉がなにを意味しているのか、一瞬理解が遅れた。
れいなは思わず「はぁ?!」と返すが、ジュンジュンは気にせずに続けた。
「こんなノ、勝てるわけないデスダカラ!」
「っ……ざけんな!逃げるって、さゆ怪我しとぉのに!」
818 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 01:19:54.45 0
思わず攻撃の手を止めてれいなは叫ぶ。
逃げる?仲間を置いて?この状況で?
彼女のやろうとしていることの意味がなにも分からないままでいると、ジュンジュンはそれでも無視して叫んだ。
「ごめんなさイ、道重サン、田中サン!!」
引き止めることも殴ることもできなかった。
ジュンジュンはそのまま屋上の扉から姿を消し、階段を駆け下りていった。
突然の仲間の離脱をさゆみは黙って見届ける以外になかった。なにも口にすることなどできなかった。
「あははー!仲間割れとかマジウケるー!!ホントにあるんだね、こういうこと!!」
女は予想外の楽しい出来事にゲラゲラと腹を抱えて笑った。
実に醜悪な姿だったが、れいなは下唇を噛みしめる以外に術はなかった。
れいなの頭の中にジュンジュンと過ごした日々が甦った。
いままでなんども大きな敵と闘い、心が折れそうな日々もつづいてきた。
それでも、だれもが手を取り合い、9人で闘ってきた。
819 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 01:28:30.45 O
―仲間やって……仲間やって……
仲間の唐突の離脱はれいなの心を迷わせた。
今日のこの瞬間までいっしょにいた仲間が突然背中を向けた事実に揺れる。
いったいなぜ、こんなことになってしまったのだろう。
小春が異動してしまったことによって、れいなの世界は変わってしまった。
“いま”ある当たり前のものは不変ではなく、一瞬にして消え去ってしまうことを思い知った。
そしていまもなお、その当たり前のものは形を変えてれいなの前から消え去ろうとしていた。
「仲間やって信じとったっちゃ!!!」
夏の終わりだというのに太陽が眩しい。ギラギラと輝いて体力を奪い、汗を滲ませていた。
れいなはただ青く澄んだ空へと叫んだ。しかし、空しいその声は屋上に響いて、消えていった。
820 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 01:29:17.68 O
此処までになります
最後さるさん喰らったので携帯から投稿しましたm(__)m
821 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 03:57:09.78 0
>>820 乙です。
このスレ的に能力阻害と言えばあの人ですが果たして潜んでいる敵は誰なのか・・・
続き楽しみにしてます。
しかし最近このスレの作品数が多いのは何か背景があるんだろうか
822 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 07:06:36.43 0
>>806 ミラクルズ完結の時に言ってた構想がついに形になったわけですね
最初のシリースから見てる人間には感無量です
>>820 懐かしくもありそれでいて新鮮にも感じられる独特の空気が好きです
823 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 08:01:25.65 0
>>820 れいなの心情が痛々しい
続き待ってます
824 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 08:27:00.85 0
おぱよん
825 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 10:26:29.52 O
>>821 ステーシーズの影響は大きいかもね
新規ファンも増えたしリゾナントと世界観が近くて書き手も増えたのかも
826 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 12:32:58.22 0
作者は何人なんだ
827 :
名無し代理中。。。:2012/07/05(木) 12:50:33.85 0
出会い方とか能力とかいろいろあっていいです、よね?と
ちょっと弱気になりつつ投下w
れいなと香音が同じタイミングで耳を塞いだその時、愛佳が両手で目を覆った。
れいなの手から包丁が滑り、指の薄い皮膚を撫でながら床に落ちる。
白い指先から真っ赤な血が溢れ出すその刹那、絵里の指先からも鮮血が生まれ
それが流れ落ちるより早くさゆみが能力を開放した。
キィィィィ、と耳元で電車が猛スピードでカーブに差し掛かる。
鉄が強い力で擦れ、火花が散る。
轟音を響かせながら、車両が何台も途切れることなく通過していく。
香音が耳を手で塞いだまま顔を歪め、目をきつく瞑り天井を仰いだ。
あまりの音にれいなは蹲り、歯を食いしばった。声にならない声が漏れる。
愛佳の脳裏に映し出されるいくつもの映像。
重なり、混じり、走馬灯のように流れていく。
そのスピードに追いつけず愛佳は突っ伏し幾度となくカウンターに頭を打ち付けた。
「生田!!!!」
そう叫んだのは愛だったか、里沙だったか。
リゾナントが紫色の光で覆われた時、3人は同時に意識を失い見えない何かから開放される。
「ダレ!?」
拳を握り立ち上がるジュンジュンとリンリン。それにつられ里保も腰をあげ鞘を握る。
意識を失った所為でバランスを無くし椅子ごと倒れそうになった香音の身体を聖が支えた。
「小春、光井の映像映せる?あたし光井の中に入っていくから。」
里沙の言葉に小春が頷き、カウンターに突っ伏したままの愛佳に触れる。
愛は全神経を愛佳の、里沙の意識に集中させた。
紫色の中にピンクが生まれ、そしてその中にオレンジが混じる。
絵里は能力を開放しさゆみと衣梨奈の力を風に乗せた。
「きたっ」
小春が叫ぶ。
愛佳の見た映像が小春の能力によって目に見えるものとして映し出される。
重なり、混じり、ものすごいスピードで流れる映像。
大声で泣き叫ぶ少女。振り上げられる拳、噛み付く。血飛沫
暗い大きな部屋。蔑む視線。砂埃、細い足、抉れた膝。
強いフラッシュ。靡く長い髪。笑顔。ニコリ。吊り上げられた目。罵倒。
充血した瞳。鋭い眼光。歪む世界。空が…落ちる。闇、闇、闇。
誰か、ねぇねぇ。誰か―――…
新しい未来が動き出す。それは、光か。それとも闇か。
831 :
名無し代理中。。。:2012/07/05(木) 12:56:05.42 0
>>828-830 いいタイトルが浮かばないのでタイトルなしで。以上です
続きは妄想してますが設定が自分勝手すぎるので葛藤中ですw
リゾナントに13人集まったらきっと満員でしょうね。
―――ここまで代理
プロローグっぽい感じがでてますかね
映像の奔流するイメージが圧倒的でした
832 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 14:47:04.80 O
代理投稿てなに?
どうやんの?
833 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 15:33:08.48 0
アクセス規制や忍法帳のレベルが低すぎて作品やネタをスレに投下できない人は
>>1の下の方に貼ってある掲示板の【アク禁】スレに作品を上げられない人の依頼スレにあげておく
そしたら狼に書き込める人間が代わりに投下するみたいな感じ
834 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 15:36:51.55 0
したらばで先に読んでニヤニヤする楽しみ
835 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 17:03:42.96 0
あちゅい
836 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 18:22:43.68 0
電車の中で蒸されながら帰るか
837 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 20:11:13.16 0
hozenanto
838 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 20:26:15.40 0
839 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 20:59:09.89 0
愛佳…
今回のは深いというか意味深というか
840 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 21:41:10.20 0
なんて言って良いのか分からないけど凄く良かった
841 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 22:05:59.90 0
何故かこの画像見てたら泣けてきた。・゚・(ノД`)・゚・。
842 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 23:04:54.73 O
>>833 アクセス規制中ってどうやったらとけるの?
843 :
名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 23:48:43.30 0
>>842 個人レベルで何とか出来るものでは無いような
巻き添え規制されている人が大半だろう
個人でどうにかしようと思うならお試し●を使う位しかないんじゃない?
もしくはあまり規制されないプロバイダに乗り換えるか
844 :
名無し募集中。。。:2012/07/06(金) 01:03:11.39 0
>>838 この駅のホームの愛佳の絵はいまだにハッとなるなあ
845 :
名無し募集中。。。:2012/07/06(金) 02:01:53.44 0
>>795-798 の続き。
昨日のように蘇るあの出来事があったはずの屋上は、何事もなかったように
形を保っていて、維持していて、鳥がフェンスの上で立っている。
ただ夢ではないことだけが、鈴木の記憶に残っていた。
鈴木は両手をあげようとした形で鞘師に止められ、ゆっくりと腕を下げる。
手にあったサイダーの中身がポチャン、と揺れた。
いつものように晴れた青空の色を水で薄めたような其れ。
「≪共鳴者≫はね、【ダークネス】を倒すヒトのことだよ。
かのんちゃんが見たのがそれ、私は、それを追ってここに来たんだ」
「…なんでここなの?」
「別にここじゃなくても良かったと思う。簡単に"悪意"を生産して、なおかつ
まとめて効率的に集めれる場所としては良いってだけ」
「ニワトリって感じか」
「うまいね」
「別に笑わせるために言ったんじゃないよっ。…その制服の学校も?」
「…そうだね」
地雷踏んだ?
鈴木は暗い影を落とす鞘師に何も言えなくなってしまい、サイダーを傾ける。
何かと事情はあるんだろうと思ったが、話がリアルを通り越してしまったらしい。
疲労度満載でここに来たことが馬鹿みたいに感じる。
きょーめいしゃだとかだーくねすとか、今まで聞いたことのない単語は
新しく学ぶ英文よりも理解に悩む。
「あのさ、なんであたしには"アレ"が見えるの?」
846 :
名無し募集中。。。:2012/07/06(金) 02:02:33.98 0
鈴木は自分の目を人差し指で示す。
あの時、鞘師は自分のチカラを知って学校のあの場所に連れ出し、そして感じた。
どうして自分には、あの【闇】が"みえた"のか。
「多分、光に触れたからだと思う」
「ヒカリ?」
「かのんちゃんのチカラは"音"から"色"を探ることが出来る。
それに光が加わったことで、【闇】を感じれるようになったんじゃないかな」
「…へえ」
つまり見えなかったものが見えるようになったという事なのか。
ヒカリとかヤミとか、それにしては少し難しい言葉で彼女は説明をする。
鞘師は本当に宇宙人かなにかかもしれないと思った。
鈴木の表情に気付いたのか、鞘師は口を線に引き、視線を伏せる。
「これが光の正体」
不意に取り出されたのは、見覚えのある小さな箱。
「あ」と漏らす鈴木に、布で包まれたソレが姿を現した。
微かにアメジストのヒカリを帯びた、ガラスレンズ。
「これ、かのんちゃんに預けるね」
「え、なんで?」
「おまじないだよ。あとお礼。それがあればかのんちゃんのチカラも
もっと扱えるようになるかもしれないから」
差し出される箱を鈴木は恐る恐る持ちあげる。
輝きを見ていると、何故だか安心した。ホゥ、と息を吐く。
847 :
名無し募集中。。。:2012/07/06(金) 02:03:31.42 0
「りほちゃんは、なんでこんな事に巻き込まれてるの?
そのきょーめいしゃってヤツだから?」
「かのんちゃんは神様を信じてる?」
鞘師から意外な存在の名前を出されたが、鈴木は素直に頷いた。
「神様がヒトの願いを叶えるなら、神様の願いを叶えるのは誰だと思う?」
「誰って言われても、神様は万能だよ」
「じゃあなんで救われない人がいるか分かる?」
「それは…」
「つまりそういう事だよ。私がこうなろうって思ったのは。
神様ができない事をしようってね」
「神様…ねえ」
神様はいるのかと問われれば、居ると鈴木は思う。
だって願いを叶えて欲しいとお願いするのは『神様』だから。
だから思いもつかなかった。
『神様』の願いを叶えるのは誰かなんて。
鞘師が浮かべる『神様』は、一体どんな姿をしているのだろう。
不思議な気分だった。あんな事があったのに、世界は何事も無く平和で。
あれが夢のような気がして、箱のヒカリに安堵していて。
鈴木は、あの時の夢や、あの時の現実を口にする事はしなかった。
鞘師はサイダーを一口飲んで、僅かに視線を向ける、開いたドアがゆっくりと。
848 :
名無し募集中。。。:2012/07/06(金) 02:04:12.30 0
以上です。
ようやくあの二人と合流できる所まで辿り着いたorz
実に日常的で実に非日常な日々はまだまだ続きます。
------------------------------ここまで。
849 :
名無し募集中。。。:2012/07/06(金) 03:29:36.97 O
起きたら読む
おやすみなんと
850 :
名無し募集中。。。:2012/07/06(金) 06:42:27.67 O
一つ一つの部分的事実が綺麗で早く全貌が見たい
おつです
851 :
名無し募集中。。。:2012/07/06(金) 08:19:11.99 0
相変わらずきれいな話ですわ
852 :
名無し募集中。。。:2012/07/06(金) 10:46:23.16 0
部分的事実が綺麗ってのは上手い表現だなあ
まさにそんな感じ
853 :
名無し募集中。。。:2012/07/06(金) 12:43:21.89 0
眠いナント
854 :
名無し募集中。。。:2012/07/06(金) 15:52:55.23 0
ナントは夢の始発駅
855 :
名無し募集中。。。:2012/07/06(金) 16:22:48.26 0
関西人がいるな
856 :
名無し募集中。。。:2012/07/06(金) 17:46:28.49 0
あちぃな
857 :
名無し募集中。。。:
地球を冷ますんだ