1 :
名無し募集中。。。:
1.
紗季は父親の顔を知らない
母親の顔は覚えてるが笑顔は思い出せない
街角で道化をしてる男に拾われて10年ほど過ぎた
2 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:41:26.46 0
日が落ちると道化が帰ってくる
紗季が拵えた粗末な夕餉を2人で食べる
「鉄拳、今日は良いお天気だったね」
3 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:41:42.65 0
紗季が”鉄拳”と呼ぶ道化はさびしく笑った
「人出は良かったが、実入りが少なくてな…」
紗季は表情を変えない
「これだけあれば3日は大丈夫だよ」
4 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:42:00.24 0
紗季は黴臭い床に就く
道化は道具の手入れをしている
明り取りの小窓の月は明日の晴天を予言している
5 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:42:18.47 0
「紗季、手伝ってくれないか」
道化の申し出を待っていた気がした
「わたし何でもするよ」
暗い天井に紗季は答えた
6 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:42:34.57 0
古着屋で紗季の衣装を買った
スカートを極端に短く直した
「ちょっと寒いね…」
7 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:42:51.35 0
紗季の呟きに道化は言葉を探した
「もうじき暑くなるさ」
2月の風が紗季の短いスカートを揺らした
8 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:42:55.28 O
なんかよさげ
9 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:43:08.10 0
風変わりな衣装で紗季は街角に立った
寒さか不安か、紗季は震えた
「鉄拳…」
道化は自分の袖をつまむ小さい手を握った
10 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:43:26.88 0
紗季は歌った
道化の袖とスカートの裾をつまんで歌った
母に聞いた歌を歌った
11 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:43:44.13 0
観客は風変わりな衣装の話を止めた
観客は少女の身の上の蔑みを止めた
観客は少女の歌声に聴入った
12 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:44:03.19 0
「鉄拳、今日はチーズが買えるね」
紗季の笑顔に道化は救われた
すこしゆっくりと夕餉を過ごした
13 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:44:24.35 0
紗季に養子の話が来た
音楽好きの富豪の手紙を道化は渡した
紗季は字が読めないと嘘をついた
14 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:44:41.60 0
明り取りの月に道化は言った
「俺は紗季より早く死ぬ」
紗季の不自然な寝息が少し早くなった
15 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:45:02.11 0
翌朝、紗季の薄汚れた衣装は無く豪華なドレスが置かれていた
表には迎えの使者が来ている
道化は黙って道具の手入れをしている
「鉄拳…」
16 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:45:18.99 0
「鉄拳!」
もう一度紗季は呼んだ
返事の無いことは分かってる
母と別れた時もそうだった
17 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:45:37.93 0
道化は一人でいつもの街角に向かった
街はいつもの賑わい
そしていつもの人だかり
18 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:45:55.46 0
「いつもの?」
人だかりの真ん中で紗季が歌っている
ドレスを短く切り落として昨日と同じく紗季が歌っている
19 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:46:15.54 0
「鉄拳、今日もチーズが買えそうだよ」
ドーランの涙の痕を歪めて紗季は笑った
20 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:46:58.50 0
2.
紗季はまた道化と暮らすことになった
富豪は断ったが道化は支度金を工面して返還した
高利貸しの取立てが来たとき紗季に事情を話した
21 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:47:20.75 0
夕餉の後紗季が言った
「私が酒場の女の人みたいな格好すればお客さん増えるよね」
道化は紗季の頬を打った
22 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:47:46.91 0
道化は初めて紗季を殴った
紗季は幼い頃を思い出した
毎日些細な理由で折檻され続けた日々を思い出した
23 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:48:06.86 0
「ごめんなさい、ごめんなさい…」
反射的に言葉を発し反射的に震えている
道化は紗季の肩を抱いた
24 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:48:26.63 0
黴臭い布団の中で紗季は頬をさすった
道化の大きな手を思い出していた
十六夜の月が明り取りの窓に見えた
25 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:48:46.38 0
高利貸しの返済に2年かかった
いつもの粗末な夕餉の後に道化が聞いた
「紗季は好きな人はいるのか?」
26 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:49:03.91 0
「紗季が結婚したら鉄拳は一人ぼっちだよ」
「紗季が来る前も一人だったし慣れてるはずさ」
紗季の表情が曇った
27 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:49:22.02 0
「紗季がお嫁に行ってもいの?夕餉は誰が拵えるの?」
道化は笑った
「紗季はまだまだ子供だな」
28 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:49:39.83 0
頬を膨らませてる紗季に道化は言った
「紗季が結婚したら俺は隣町に行く」
「どうして?」
「隣町に伝わるほど幸せになって欲しいからな」
29 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:50:01.46 0
紗季は暗い天井を見ていた
新月の夜はとても暗い
何も見えないけど道化の寝息が聞こえる
紗季もいつしか眠っていた
30 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:50:40.60 0
無駄のない表現で良いと思う
31 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:51:32.22 0
3.
朝から酷い雨だ
道化は道具を手入れしている
紗季はケーキの絵を描いている
32 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:52:01.53 0
「今日は街に出れないね」
実入りが無ければ乾いたパンで夕餉は終わる
「午後だけでも日が出ればなぁ」
紗季の憂いを道化は繕う
33 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:52:20.17 0
紗季は誕生日を知らない
道化に拾われた日を毎年祝ってもらっっていた
今年は雨が一日続いた
冷たい布団で雨音を聞きながら紗季は少し泣いた
34 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:52:38.06 0
雨季は長引いて道化は工面に出かけた
紗季はケーキの絵を描きかけて止めた
見よう見まねで道化の道具の手入れをしていた
35 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:52:55.60 0
数日振りに晴れた
二人は街に出た
乾いたパンも底を付いていた
36 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:53:13.66 0
「やっとパンが帰るね」
紗季はいつもキラキラと笑う
道化も久しぶりに笑った
37 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:53:32.47 0
”Happy birthday Saki"
焼きたてのパンにチョコの文字があった
「今年もケーキ買えなくてごめんな」
38 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:53:51.50 0
明り取りの窓には澄んだ満月
道化は少し泣いた
紗季は号泣した
39 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:55:14.72 0
4.
質屋の主人が訪ねてきた
紗季は耳を塞いでいた
道化の空しい哀願を聞きたくなかった
40 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:55:36.11 0
質屋の主人は紗季の手首を掴んだ
長すぎた雨季は紗季を質草にしていた
覚悟は少し出来ていた
41 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:55:52.84 0
道化は言葉を捜した
紗季も言葉を捜した
「元気でな」
「元気でね」
42 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:56:13.72 0
数人のメイドに導かれ紗季は入浴した
真新しい寝衣を纏い真新しいシーツに横たえられた
43 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:56:32.77 0
紗季は鼓動だけを聞いてる
明るい部屋に明り取りの窓は無い
晴れているはずの月も見えない
道化の寝息も聞こえない
44 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:56:50.59 0
ドアに靴音を聞くと身を硬くした
泣きたいけど泣かないと誓った
その夜紗季の部屋を訪れる者はなかった
45 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:57:10.72 0
眠れないまま朝になった
メイドに導かれ朝の食卓に着く
主の席は空いていた
46 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:57:30.95 0
「ご主人様は急用で出かけられました」
メイドに促され紗季は朝食を食べた
夥しい料理に手をつけずパンだけを食べた
47 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 22:57:54.84 0
パンの柔らかさに驚いた
道化の事を思い出した
メイドは皆自分を見ている
涙をこらえようと目を閉じた
代わりに泣き声が溢れた
48 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 23:01:01.06 0
鉄拳ってこういうちょっとうら寂しい話が似合うよな
49 :
名無し募集中。。。 :2011/07/28(木) 23:03:31.41 0
じっさい近くで見たとき
剃り残しの髪がまばらで
貧乏臭かった
50 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 23:06:45.17 0
でもメイク落とすと結構イケメンだという噂
51 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 23:10:39.13 O
52 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 23:13:43.06 0
佐吉っておはガールの3人の中では
一番子供っぽい感じがする
鉄拳も面白いひとって感じでなついてるみたい
53 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 23:17:22.41 O
この話はもう終わりなの?
54 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 23:22:41.26 0
なにげに続きを期待してるけど
平日の晩だし作者は忙しい人かもしれないので
とりあえず続きがあればいいなというスタンスで待ってみてる
55 :
名無し募集中。。。:2011/07/28(木) 23:28:30.29 O
これって何か元ネタあるの?
56 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 00:03:33.93 0
この先はハイジみたいな展開になるのでしょうか?
57 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 00:19:46.51 0
前もここで終わっていなかったかい?
58 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 00:34:48.41 0
山寺がキーマンになると見た
59 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 01:44:20.68 0
5.
翌日の夕食で紗季は”買主”と初めて対面した
何も食べない、何も話せない紗季に主は聞いた
「好きなものを聞いておこう」
60 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 01:47:47.68 0
「鉄拳との夕餉です」
紗季は硬いパンの粗末な夕餉を話した
主は静かに聞いていた
61 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 01:49:18.24 0
その夜、寝室に主が訪れた
「私は君を情婦として迎えた」
紗季は身を硬くした
62 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 01:50:02.29 0
「その為に大金を払った」
紗季は深く息をして
寝衣のボタンに手をかけた
63 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 01:51:07.32 0
手が震える
何とかボタンを一つはずした
「鉄拳…」
64 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 01:52:25.24 0
道化の面影を消そうと目を閉じた
主は紗季の震える手を握った
「もう止めなさい」
65 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 01:54:10.77 0
紗季の服はメイドの物になった
部屋も屋根裏になった
朝は暗いうちから始まった
66 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 01:54:50.41 0
叱られない日は無かった
慣れない仕事は体中に痣を作った
生傷を庇う気力も無かった
67 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 01:55:38.29 0
紗季は疲れ果てた体を硬いベッドに横たえる
埃臭い屋根裏部屋は月が見える
「鉄拳…」
紗季の言葉を紗季が聞いた
今日一日こらえた涙がまとめて溢れた
68 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 01:58:58.05 0
6.
一月ほどして紗季は主に呼ばれた
汚れたメイド服の埃を払ってノックした
返事の声は優しく聞こえた
69 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 01:59:42.78 0
「メイドの仕事は辛いか」
「いいえ」
「メイドの仕事は楽しいか」
70 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:00:36.05 0
紗季の日常は穏やかだった
仕事を覚え叱られる事もほとんど無い
痣が出来ても笑ってくれる友ができた
71 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:01:29.75 0
「楽しいです」
控えめに微笑む紗季に主はメモを渡した
一ヶ月の給金と借金の残高が書いてあった
72 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:02:22.95 0
「完済には3年ほどかかるな」
「3年後は鉄拳と暮らせるんですか」
喜ぶ紗季の笑顔はすぐに曇った
73 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:03:06.91 0
「道化は病に臥してるらしい」
「どうして…」
紗季の弱い声に答えは無かった
74 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:03:55.28 0
紗季は暗い屋根裏で月を見ていた
「鉄拳は月を見てるかな、見られるのかな…」
紗季は屋敷を飛び出した
75 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:08:19.84 0
7.
紗季の噂に道化は苦しんでいた
情婦を拒んで使用人として虐げられる紗季の噂に耳を塞いだ
道化は無理を重ねた
紗季を戻してあげたい
道化の望みは体を蝕んだ
76 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:08:57.23 0
「鉄拳、ただいま!」
久しい声に道化は体を起こす
77 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:09:46.25 0
「紗季…元気なのか…」
「ご主人様が鉄拳の看病しなさいって言ってくれたんだ」
紗季の幼稚な嘘を裸足の足が暴いている
78 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:10:54.67 0
「大丈夫だからお屋敷に戻りなさい」
道化の言い付けを無視して紗季は食事の支度をした
紗季はずっと話している
79 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:11:50.12 0
痣を作った逸話は全て話した
叱られたことも全部話した
やわらかいパンの話もした
80 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:12:43.36 0
道化の表情がほころんだ
聞いた噂を話すと紗季は笑った
キラキラと紗季は笑った
81 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:13:39.04 0
三日目の朝、道化は街に出る支度を始めた
「もう大丈夫なの?」
「紗季のおかげだな」
82 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:14:43.60 0
「お屋敷に戻ってもいい?」
紗季の問いは拒否を望んでいる
「やわらかいパンを食べなさい」
83 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:15:42.23 0
「鉄拳といっしょに食べたいのに…」
紗季の無邪気な要求は道化を責めた
「…辛抱してくれ……」
84 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:16:52.48 0
言葉を奪われ泣きそうな紗季に道化は言った
「三年後の紗季は美人かな」
紗季は俯いている
85 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:17:55.49 0
「紗季が美人になったら結婚してやるよ」
「鉄拳なんかお爺ちゃんになっちゃうよ」
泣き笑いの紗季の背中を押す
86 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:18:52.73 0
登り始めた朝日が紗季を照らす
長い影を引き連れて紗季は歩き出した
帰りの道のりは何倍も遠く思えた
87 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:24:19.29 0
8.
紗季が戻ると主は留守だった
紗季は落胆した
身勝手を主に戒めて欲しかった
88 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:25:28.13 0
重い足取りでメイドの部屋に向かった
紗季の身勝手を支持する者もいた
しかし多くのメイドは紗季に不満を抱いていた
89 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:26:08.18 0
紗季の仕事を押し付けられて不平を言うもの
情婦の座が確約されていると決めつけ紗季を妬むもの
メイド達の和は乱されていた
90 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:27:35.27 0
紗季の素直な、しかし無思慮な行動はメイド達の平穏を奪った
紗季の繰り返される謝罪は何も解決しなかった
紗季の涙も慟哭もメイド達を苛立たせるだけだった
91 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:28:28.36 0
紗季は言われるままにあらゆる作業をこなした
手伝いの申し出は断った
他のメイドを巻き添えにしたくなかった
92 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:29:11.68 0
紗季は孤独を思い出した
道化に拾われるまで
母親と暮らした数年間の孤独を思い出していた
93 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:30:23.82 0
9.
翌日紗季は主の部屋に呼び出された
メイド達の小声は紗季への過酷な罰の予想をしている
「勝手なことをして申し訳ございません…」
94 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:31:14.72 0
紗季の謝罪を遮って主は紗季の頬を打った
「あっ…」
紗季は蹲り震えている
95 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:31:54.19 0
紗季の唇が切れて血が流れる
主はメイド達を全て外に出した
紗季は両手を固く握り締めて必死に涙を堪えている
96 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:32:47.08 0
主が紗季の肩を抱いた
涙が紗季の握り締めた手に落ちる
主が泣いていた
97 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:33:48.91 0
「道化の病を伝えないほうが良かったか」
「いいえ」
「紗季が戻って嬉しい」
主の涙はさらに紗季の両手を濡らした
98 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:34:57.66 0
紗季は身勝手な行動を何度も詫びた
メイド達の安寧を取り戻したいと主に訴えた
主は紗季に罰を与えることにした
99 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:35:48.89 0
紗季は地下牢に入れられた
鞭打ちの痕を庇いながら静かに体を横たえる
道化を思うと笑みがこぼれる
訝しがる牢番に紗季は言った
「3年経てば一緒に暮らせるんだ、ずっと暮らせるんだよ」
100 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:36:34.50 0
道化が見てるはずの月は満月
紗季は傷を摩りながら眠りにつく
「3年経てば…」
牢番もいつしか紗季の3年後を想像していた
101 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:37:22.98 0
10.
「もうすぐ3年」
メイドの仕事をこなす紗季は浮かれていた
道化との暮らしがすぐそこに迫っていた
102 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:38:06.16 0
紗季は主の部屋に呼ばれた
さし当たって大きな失敗の無い紗季は笑顔で主の部屋に入った
紗季の笑顔が曇った
103 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:39:05.84 0
主は紗季に求婚した
情婦ではなく正妻としての申し出だった
養父の道化にも破格の結納金が提示された
104 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:40:05.94 0
紗季はしばしば主の世話をしていた
情婦ではなくメイドとして身の回りの世話をした
時折主は孤独を訴えた
105 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:40:51.72 0
権力者の孤独を紗季は初めて知った
決断の苦痛を初めて知った
106 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:41:37.65 0
紗季は歌った
道化の芸を見よう見真似で披露した
それしか出来なかった
107 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:42:31.65 0
主は少年のような笑顔で見ていた
用を済ませ部屋を出る時紗季は思った
自分を捨てた母の気持ちを想像していた
108 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:43:23.48 0
その主が求婚している
紗季を必要だと言っている
混迷する紗季に主は言った
109 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:44:13.06 0
「私は道化が羨ましい」
紗季の目から涙が溢れた
「私の妻になりたい女性はいくらでもいるんだよ」
110 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:45:01.46 0
「お許しください、ご主人様…」
額を床につけ紗季は泣いている
主は紗季の肩を抱いて起こした
111 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:45:41.95 0
「今までありがとう」
紗季はまだ泣いている
「君の笑顔に何度も救われたんだよ」
112 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:46:20.73 0
紗季は笑おうとした
ぎこちない笑顔に主は笑って言った
「幸せになりなさい」
113 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:47:40.09 0
11.
紗季はバージンロードに立っていた
隣には正装した道化がいる
114 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:48:29.29 0
「鉄拳がお父さんみたいだね」
紗季はキラキラと笑う
「お爺ちゃんじゃないのかい?」
紗季はまたキラキラと笑う
115 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:49:19.64 0
主の結婚式が始まろうとしていた
「ここにいたら叱られちゃうよ」
紗季が道化の手を引く
116 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:49:57.54 0
席に着くと道化は言った
「紗季もそろそろ結婚しないとな」
紗季は黙っている
117 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:50:45.78 0
「紗季、どうした?」
薄化粧をした紗季の頬が紅潮する
「鉄拳と同じ日に結婚するよ」
118 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:51:31.42 0
主夫妻が入場し賑やかに式典が始まった
「どういうことだ?」
聞こえないフリをして紗季はキラキラと笑った
119 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:52:05.48 0
おしまい
120 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 02:55:11.59 0
おつかれさま
121 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 03:09:55.16 0
ここまで一気に読んでしまった
てか地下牢ワロタw
122 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 03:14:23.81 0
いい最後だ
123 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 03:32:04.21 0
切ないな
124 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 03:43:16.00 O
感動したよ
爽やかなエンディングも良かった
125 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 03:58:35.84 0
紗季の笑顔にはキラキラという形容詞がよく似合う
126 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 04:07:46.25 O
何故だかキッド 街の灯 ライムライトとか
チャップリンの映画を連想した
それはがんばらの振り付けや髭がチャップリン風なのが関係しているかも
127 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 04:57:36.29 O
おいらは「ペーパー・ムーン」って映画を思い出した
128 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 06:20:40.52 0
定番のハッピーエンドでよかったです
129 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 08:03:57.56 0
世紀末の詩の斉藤洋介のが元ネタというか
そこからの発展系だと思うけど素晴らしい出来だな チャップリンもそうだしシベールの日曜日みたいな印象
130 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 08:46:32.53 0
全俺が泣いた
131 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 09:19:28.91 O
朝から素晴らしいものをありがとう
132 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 09:28:41.54 0
萩尾望都のアメリカン・パイって短編を思い出した
保護者のような恋人のような関係
133 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 09:44:39.95 0
山寺の出番はなかったな
134 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 09:47:44.71 0
登場人物みんな良い人なんだな
悪代官や越後屋が出なくても悲劇って書けるんだな
幼稚な感想ですまそ
135 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 10:16:51.12 0
|||s・ _・)<鉄拳と同じ日に結婚するよ
136 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 10:36:04.96 O
>>133 勝手に
紗季を買った主を山ちゃんとして読むこともできなくはない
137 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 11:59:51.20 0
いい話だ
138 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 13:28:35.17 0
メイドの中で孤独に苦しむ紗季
→主の孤独に対して無力を思い知る紗季
→無力な母の心情を想い起こす紗季
こんな単純な仕掛けに嵌って泣いてしまった
139 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 15:20:40.65 0
職人乙
140 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 16:06:48.39 0
紗季と鉄拳とストWとバーチャファイター
141 :
名無し募集中。。。:2011/07/29(金) 17:49:55.57 0
次は早貴とおちんちんを書いてくれ
142 :
名無し募集中。。。:
佐紀とおにいちゃんもよろしく