>>249 「あっ!ごめんなさいっ!商品をお預かりしますっ!」
ローラは慌ててレジを打ち始めた。慌てていたせいで、途中で値段の計算を間違えてしまった。
「あっ…間違えました、ごめんなさい…」
「そぎゃんに…焦らなくても…よかよ…」
ローラの耳に聞こえたその声は、ローラの好きな…あの人の声…に似ていた、気がした。
「ひゃ、105円のお返しになります。ありがとうございました!」
女の子はビニール袋に包まれた食パンとお釣りをもらうと、何も言わずに立ち去った。ローラは店から出る彼女の後ろ姿を見た。
「もしかして…まさか…」
似ていた、ような気がした。でも、まさか彼女がこんな店に来るわけない、とも思った。そして、彼女を追いかける勇気が、ローラにはなかった。
「…きっと、気のせいだよ、うん、気のせい、気のせい…」
ローラはそう呟いて、閉店の準備を始めた。結局、彼女の正体が誰なのかは、ローラには分からないままであった。