内閣府は7月、15〜39歳のひきこもりが推計69万6000人に上ると公表した。約半数が30代だが、
中高年のひきこもりに詳しいNPO法人「レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク」(札幌市)の田中敦理事長は
「40〜50代を加えると、平均年齢はもっと上がるはず」と指摘する。田中理事長によると、中高年のひきこもりは
「親が親せきや近所に知られたくないという思いが強く、密室化しやすい」という。親の死後、子が完全に
孤立する恐れもある。
ひきこもりが高齢化する背景には、社会に出てつまずく人の多さがある。国の調査でも「職場になじめなかった」
「就職活動がうまくいかなかった」が、ともに20%を超えている。非婚化も進み、老親の年金を頼りに同居する
パラサイトシングルが親の死を隠し不正受給する事件も後を絶たない。
中高年で「ひきこもり」/死を隠し不正受給も
閉ざしたドア越しに、玄関へ向かう父の足音が聞こえる。息子は「散歩か」と思いつつ、部屋から顔を出し
「行ってらっしゃい」と言う気はない。父も期待していないのか、「行ってきます」の声はない。
42歳の男性は、父(80)と2人暮らしの札幌市のマンションにひきこもるようになって7年になる。
母は20年以上前に亡くなり、兄は既に自立した。
大学卒業後、男性はアルバイトを転々とした。郵便局で非常勤職員として働き始め、人間関係で悩んだ末に退職した。
父は激高した。「人生を台無しにしたな。これからどうやって生活するつもりだ!」。男性は部屋にこもりがちになった。
国民年金保険料は父が老齢年金から払ってくれる。感謝の思いは伝えられないでいる。
「今のうちに自立しなければ」と焦るが、40代の定職探しは容易ではない。
http://mainichi.jp/life/today/news/20100921ddm013100099000c.html