日本の格差問題も英米に比べればまだまし――。
そう考える人は多いことだろう。しかし、ハーバード大学の
マルガリータ・エステベス・アベ教授は、福祉機能で米国に劣り、
雇用環境で欧州以下の日本こそが、先進国で
一番冷たい格差社会であると警鐘を鳴らす。
アメリカは確かに国家の福祉機能が小さく、利潤追求と競争の市場原理を
重視しているが、それがすべてというわけではない。市場原理にまったく
従わない民間非営利セクターが大きな力をもち、福祉機能、
すなわち社会を維持する役割を担っている。
貧困者や市場で失敗した人たちの救済活動はその分かりやすい例だろう。
非営利団体はホームレスのシェルター(無料宿泊所)を運営したり、
食事や古着を提供したりしている。ハーバード大学の学生も忙しい
勉強の合間にボランティアで恵まれない子供に勉強を教えたり、
あるいはシリコンバレーで成功した人が社会貢献活動をするのがブームに
なったりしている。このようにアメリカには、政治に対する意識とは別に
自分が社会に何を還元できるのかを考える人が多いのである。
正規・非正規社員の賃金格差の問題にしても、同じ仕事をしながら
賃金に大きな差がでるということはアメリカではあり得ない。
http://diamond.jp/series/worldvoice/10012/