秋元康 「今時の若者に一言。 言葉尻に『ですね』を付ければ、何でも許されると思っているのか?」

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最近の若者の言葉で気になっているものがある。僕が真剣に仕事の指示をしている時に、
20代の若者が言う「なるほどですね」。一人ではない、僕のまわりで何人か口癖のように
使うのだ。男女関係なく、連発する。もちろん、殊勝な顔でうなずいているので、反抗的な
態度を取っているわけではない。むしろ、本当に納得しているのだ。「なるほど」と……。
しかし、年上の先輩に向かって、「なるほど」とうなずくだけではいけないと思うらしく、
丁寧な言葉にしようと「ですね」を付け加えているうちに、ひとつのフレーズになったらしい。

「なるほどですね」。何だ、そりゃあ? 「ですね」を付ければ、何でも許されると思っているのか?
だとしたら、「やだ! ですね」「ふざけんなですね」「おやじ、うるせえんだよ! ですね」も
許されるのか、ということになる。
自分が大人げないことを言っているとは思う。日本語の乱れがどうのこうのと説教できる立場でもない。
僕たちが若い頃、「おまえらが日本語を乱しているんだ」とさんざん大人たちに叱られてきたのだから。
言語というものは、時代とともに変容を成し遂げるものだ。今さら、「美しい日本語を使え!」とは
言わない。しかし、「なるほどですね」はいかがなものか?

ある若者にそのことを愚痴ると、「よく聞いてくださいよ」と言われた。「『なるほど』と『ですね』の間に
スペースがありますよね? つまり、『なるほど』は独り言で、独り言をつぶやいてしまった自分に、
はっと気づいて、先輩にちゃんと理解したことを言わなければいけないと思って、思わず口に出た言葉が
『ですね』なんですよ」。若者は、悪びれることもなく、僕に釈明した。どこにそんなスペースがあんねん?
東京生まれ、東京育ちの僕が思わず関西弁で突っ込みを入れたくなるほどの弁明である。人の悪口を
言う時に、「いい意味で」と取ってつけたような言葉を言えば、免罪符になると思っているのと同じだ。

(日刊ゲンダイ 2009/01/16 掲載)
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