カリスマブロガー福田かのん62つぶ目【エッグ花音】
「せりふの時代」 2009/VOL.50 冬号 連載 『ハロー!ステージ』 〜歌のことばと芝居のことば〜 (1)
【演技の新鮮さが感動を与えてくれる】
前田憂佳(ハロプロエッグ)×福田花音(ハロプロエッグ)×塩田泰造(劇作家・演出家)
ハロプロエッグの一員として、ライブやコンサートで活躍する
前田憂佳さんと福田花音さん。まだ中学2年生でありながら、
お芝居の稽古に真剣に取り組む姿は、周囲の俳優やスタッフたちに
新鮮な感動を与えている。2人が共演した『美女木ジャンクション』の
作・演出を務めた、劇団「大人の麦茶」主宰の塩田泰造さんを交え、
お芝居に挑戦する楽しさを聞いた。
(取材・文/清水ユウ子)
――劇団「大人の麦茶」公演『美女木ジャンクション』(2008年、池袋あうるスポット)を
拝見したときに、お二人ともとても素敵で新鮮なお芝居をなさっていたのが印象的でした。
お芝居は楽しいですか。
前田 私は初めての舞台が「大人の麦茶」さんの公演で、病気の女の子の役を
やらせていただきました。最後のほうのシーンで、お客さんが感動して
泣いているのが見えて、そのときにこのお芝居をやってよかったなと思いました。
誰かに喜んでもらえたり感動してもらえたりするのが楽しいです。
塩田 福田さんはパンフレットに「初めての舞台のときの袖で、舞台って楽しいなって
ふっと感じたことを、今でも鮮明に覚えています」とお書きになっていましたね。
福田 はい。何かを演じることも楽しいんですけど、舞台でお芝居をするということ
自体が楽しいんです。毎日、お客さんの反応を感じて「ここは直そうかな」とか
「ここはもっと伸ばしていこうかな」と考えています。考えたことを生かして、
また次の日に向けてやっていけば、初日に来てくれた人が千秋楽を観たときに、
きっと成長した自分を見てもらえるから、そこが楽しいなって思うんです。
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――お客さんの反応や共演者とのやりとりで、自分の芝居が変わっていく
過程が楽しいんですね。
福田 はい、楽しいです。演技のなかで、何かモヤッとしたところがあったときに、
なんでそうなってしまったのかということを、自分で考えたり、いろんな人に
聞いたりして探るんです。そのモヤッとしたところを改善できたときはすっきりして、
なんか楽しいんです。
塩田 ほんとは、それをやるのは演出の仕事だと思うんです。もちろん稽古場では
それを心がけていますけれど、本番じゃ稽古の3回分くらい成長していくので、
お客さんが彼女たちの成長に手を貸しているんだなと思います。
――お芝居をしているとき、お互いの魅力はどんなところにあると思いますか。
前田 花音は、いつもその役柄になりきれているところが、すごくかっこいいなと
思います。もうその役としてしか見えなくて、ふだんの、素の花音がぜんぜん
見えなくて感動します。あと、声がすごくよく通るんですよね。
福田 ふだんの憂佳はけっこうおっとりしてるっていうイメージがあるんです。
でも舞台に立っている憂佳は、いい意味でおっとりしたイメージが消えていて、
「あれっ、性格変わっちゃったのかな」って思っちゃうくらいなんです。
でもそれがすごく自然な感じなんです。
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――塩田さんは、お二人の舞台人としての魅力はどこにあると思いますか。
塩田 福田さんは、声と表現がとても大きくて起伏に富んでいますね。役になりきろうと
自分で考えてきたプランをすべて実現しつつも、なおかつ鮮度が高いです。
ちゃんと工夫がわかるのに新鮮だから、引き込まれますよね。そしてやっぱり、
声に独特の魅力があると思います。
前田さんは、せりふの入りがすごく早いんです。それはとても努力しているからだと
思うんですが、その努力している様子がきれいに隠されているんです。
その役の人物がそう感じて会話し、行動しているように、ちゃんと見えるんですね。
そして、リアクションがすごく上手いです。やっぱり、俳優への最大の褒め言葉は
「鮮度が高い」ということだと思うんですけど、前田さんにも福田さんにもそれを
すごく感じます。
――相手のせりふを新鮮に聞いて新鮮に反応できるということですよね。
塩田 初めてせりふを聞いて、初めてせりふを答えてっていう連続が芝居じゃないですか。
でもせりふは覚えなきゃいけないですよね。二人ともそれがすごく新鮮なまま、
上手です。それと、変にあがることがないですね。緊張するのはいいパワーに
なるとは思うんですけど、でも変にあがることが全然ないので、信頼できます。
――たしかにお二人とも力んでる感じがなく、すごく自然ですね。でも緊張しますか。
福田 舞台袖にいるときが一番緊張します。舞台に出たら、もうあんまり緊張しないです。
塩田 前田さんは、袖ではけっこう遊んでるほうですよね(笑)。
前田 緊張するから、それをまぎらわせるために、わざと楽しくしてるんです(笑)。
塩田 学校があったり、他の仕事があったりと、制約のある時間のなかで、自分が
できることを全部やりきって舞台に立つから、彼女たちは舞い上がるということが
ないんだと思います。ほんとうに頼もしいと思います。
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――塩田さんは「大人の麦茶」という劇団でお芝居をつくっていますが、そこへ前田さんや
福田さんが参加したことで、作品や稽古場の空気に何か変化がありましたか。
塩田 変化はものすごくあります。やっぱり、お二人は生きている場所も時間も違うので、
とても大きい変化がありますね。たとえば、あるシーンがおかしいなと思ったとき、
劇団の役者たちはそれをなんとか成立させようとします。福田さんや前田さんも
素直だからがんばってくれるんですけど、やはりなんとなく不自然になるんです。
そうすると、僕はその不自然さを取り除こうと考えますし、この気持ちはこうなんだと
彼女達が納得できるところまでもっていけると、あっという間にうまくいきますね。
そういうことが、僕にとっても、一緒にやっている俳優にとっても、とてもいい影響に
なっていると思います。
――福田さんも前田さんも、ご自分のブログで文章を綴っていて、その文章が
とても上手ですが、本を読んだり台本を読んだりするのは好きですか。
福田 好きです。台本をいただいたら、私はまずそれを、一冊の本として読むんです。
学校に提出する作文で、『美女木ジャンクション』とか
『平成レボリューション 〜バックトゥザ・白虎隊』のことを書いたりしてました。
塩田 それ、読ませてくださいよ!(笑)
――読書感想文としてですか。
福田 はい、感想文です。そうやって本として何度か読んでお話が頭に
入ったうえで、次は、自分の役はどんな役だろうって考えて読みます。
あとは、この結末にたどり着くまでに、自分の役の気持ちはどう
変化していくんだろうって考えながら読んだりします。考えたことを
紙に書き出したりしながら読むのが、すごく楽しいんです。
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――そういう台本の読み方は、誰かに教わったんですか。
福田 教わってないんですけど、そういうふうに読んだり書いたりしたら、答えが
見つかるかなと、自分なりに考えてみました。
――戯曲の感想文を書いてくれる中学生は、最近なかなかいませんよ。
嬉しいですね、塩田さん。
塩田 はい、ほんとに、感動です。きっとそうやって、自分のなかで戯曲を再構築
するんですね。前田さんはせりふを覚えるのがとても早いですけど、どうやって
せりふを覚えるんですか。
前田 台本を何回も読むのはもちろんですけど、あとは立ち稽古をやりながら覚えて
いくことが多いです。お稽古しながら、だんだん体に入ってくるっていうか。
小道具をどう使ったらリアルに見えるかなとか、もしこういう状況になったとき、
私だったらどんなふうに動くかなって考えたりします。そうすると、せりふが
すんなり覚えられるんです。
塩田 それは稽古を見るとわかるんですよね。リアルさを考えているんだなと
いうことと、きちんと演技プランの準備があるんだなということが。たとえば、
逃げないでつかまっているようなシーンで、ほんとうは逃げられるのに
逃げないでいる、という複雑さがちゃんと表現できていたりするので驚きます。
役の広げ方の手法を、前田さんも持ってるんですよね。
二人ともこちらの想像をはるかに超えて応えてくれるので、演出家としては
無上の喜びがありますね。「ああ、これが見たかった」っていう感動をもらっています。
前田・福田 ありがとうございます。
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塩田泰造(しおた・たいぞう)
(劇作家・演出家・テレビCFディレクター)早稲田大学法学部卒業後、
CFディレクター中野利彰氏に師事し、98年よりCFディレクターとして活動、
数多くのテレビコマーシャルを手がけている。2001年ACC賞入賞、
03年電通賞を受賞。同時に、前身「JAROPY」としての7公演を経て、
02年に劇団「大人の麦茶」を旗揚げ。年3本の作品を上演。
全公演の作・演出を務める。
福田花音(ふくだ・かのん)
1995年、埼玉県生まれ。2004年、ハロプロエッグオーディションに合格し
ハロプロエッグに加入。ミュージカル『34丁目の奇跡』『白蛇伝』、
舞台『千歳月』『平成レボリューション』『美女木ジャンクション』など多くの
舞台に出演。2008年11月には、ミュージカル『リズミックタウン』で初主演を務めた。
ユニット「しゅごキャラエッグ!」の一員。
前田憂佳(まえだ・ゆうか)
1994年、千葉県生まれ。2004年、ハロプロエッグオーディションに合格し
ハロプロエッグに加入。ハロー!プロジェクトの先輩たちのコンサートなどに
出演しながら、ハロプロエッグのメンバーとともに「新人公演」などのライブも
行っている。アニメ『しゅごキャラ!どきっ』のテーマ曲『みんなのたまご』を
歌うユニット「しゅごキャラエッグ!」の一員。