吉澤ひとみ著「私が抱いた女」

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84名無し募集中。。。
その日は、とても熱かった、としか覚えていない。
85名無し募集中。。。:2006/12/09(土) 02:49:49.00 0
ライブが終わり、地方から地方へ。
明日のライブ会場から程近いホテルの
割り当てられたシングルの部屋で荷物を解く。
私の心は暗かった。

このまま酒でもあおって寝てしまおう。

備え付けの冷蔵庫から銀色の缶を取り出した。
慣れない手つきでプルタブを開け、口をつける。

その苦さは、そのまま自分の気持ちに重なった。
86名無し募集中。。。:2006/12/09(土) 02:50:20.31 0
あんな大事な場面で失敗するなんて…
今まで何をやってきたんだ。

マネージャーやメンバーは慰めてくれた。
それでも、私は自分が許せなかった。
自分の築いてきたモノがガラガラと崩れていくようだった。


アルコールになれていない身体に急激に酔いが回ってきた頃、
ふいに部屋の電話が鳴った。

美貴からだった。
87名無し募集中。。。:2006/12/09(土) 02:50:55.73 0
酔っている私の声を聴いて少し黙った後、
「部屋に行くから」と言う。
全てが面倒だった私は何も考えずにOKした。


ノックの音が思ったより響いていた。
88名無し募集中。。。:2006/12/09(土) 02:51:26.93 0
それからのことは、よく思い出せない。


美貴の香り
優しい吐息
温かい唇


湿った…


美貴は泣きながら、私の下にいた。
泣きながら、私が必要だと言った。


それで充分だった。
89名無し募集中。。。:2006/12/09(土) 02:52:51.12 0
翌朝、目が覚めると一人だった。

缶に少しだけ残るアルコールと乱れたベッドが
昨夜のことを物語っていた。


私を必要としてくれる仲間がいる。
私の居場所は、そこにある。


そこにいてもいいんだと、美貴が教えてくれた。



その後、美貴が部屋に来ることはなかったが、
彼女には感謝している。

彼女がいなければ、今の私は無かっただろう。

美貴は、大切な仲間として、今も私の隣にいる。
90名無し募集中。。。:2006/12/09(土) 02:54:05.12 0
終わり


保全