吉澤ひとみ著「私が抱いた女」

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彼女は一見甘え上手に見えるかもしれない、だけど本当に弱っている時には決して甘えたりしない。
むしろ誰にも弱い自分を見せまいと強く強くあろうとする。私はそんな彼女をただ見ていた。
無闇に手を差し出すわけにはいかない、一度拒絶されれば二度と機会は巡って来ない。
美貴はそういう女だった。


初めて美貴を抱いたのは、そう飯田さんが卒業する少し前頃だったと思う。
辻加護が卒業した後くらいから美貴の様子が明らかに変わってきたんだ。
何も見ていない見えてないみたいな感じになる事が多くなって、妙にはしゃいでるかと思えば黙り込んだり。
収録中でも構わず私に触れてきたりしてさ。
それまでも触れて来る事はあったんだけど、違ってたんだよね。なんか感じが。
前は独占ていうのかな?自分のとこへ引き寄せるような感じだったんだけど、それが変わったんだ。
まるで縋ってるみたいな、触れてないと倒れてしまいそうな感じ。
美貴に何かあったのは分かったけど、しばらくは何もせずに杖役をやってた。
訊いたからって素直に話してくれるとも思えないし、美貴なら自分で乗り越えられるだろうと思ってたから。

ツアー中のホテルで突然にその瞬間は訪れたんだ。
いつもみたいにまいちん(里田まい)の部屋に行ってたんだけど、眠たくなって自分の部屋に帰るつもりで
廊下を歩いてたら、美貴がいた。何をするでもなく、ただそこにいるだけ。
なんとなく杖が必要なんじゃないかと思えて、側に寄って行くと顔を上げた美貴と目が合って――――
不思議な感覚で逸らせないんだよね、むしろ引き込まれるような感覚。
どんどん近づいて行くあいだもずっと見つめあったままでさ、気が付いたらキスしてた。