ho
shu
名前で呼び合う期間がすぎて、
いつしか俺は「お父さん」としか呼ばれなくなっていた。
自分の遺伝子を持った人間が、新たに生まれるなんて、考えただけでもゾッとする。
そう思っていた。けれど、いざ生まれてみると、自分の血を引いているってだけで、
なんでこんなに愛おしいんだろう?
…そう思う。
僅かながらも言葉を発し始めた(それぐらいの時期がまた可愛い!)
次女を膝の上に乗せながら、新聞を読む。
そんな、幸せを絵に描いたような、日曜の昼下がり。
新聞に没頭していると、不意にチャイムの音が鳴り響いた。
思わず妻の方を見つめる。
洗い物をしていた妻は、フキンで濡れた手をぬぐうと、
我が意を得たりといった感じで、リビングを出ていった。
その様子に安心し、また新聞に目を通し始める。
チャイムの音にもビクともせず、
静かな寝息を立て続ける、
膝の上の暖かさに、思わず微笑みを浮かべながら。
「お父さん?」
「ん?」
「ちょっと良い?」
どうやら、来客は俺にも関係する人らしい。
リビングに上げない事を考えると、それほど親しい人ではないのだろう。
安らかな寝息を立て続けるお姫様を抱え上げ、
そのまま後ろを付いて行く。
そして、妻の背中越しに、玄関にじっと立っているその人影を見た、その…瞬間。
(!)
あまりの驚きで、抱えていた娘を落としそうになってしまった。
命よりも大事だとすら思える娘を、だ。
そこに居たのは…
「はじめまして、矢口と申します」
〜〜〜〜〜〜
そこに立っていたのは、なんと…マリちゃんだった。
十年近い年月が経っているというのに、パッと見の印象はほとんど変わらない。
俺の前から姿を消した時と比べたら、変わったと思えるのは、
明らかに日焼けの度合いが増えている肌の色ぐらいで。
「…お父さん?」
直立不動で、マリちゃんを見つめ続ける俺を不思議に思ったのか、横から妻が話しかけてきた。
「あ…で、どういうお客さんなの?」
動転していたせいで、少し声が裏返ってしまう。
「うん。隣に引っ越してきたんだって」
「はい。よろしくお願いします」
そう言って手を伸ばしてきたマリちゃんの表情は…笑顔とも怒りともとれる微妙なものだった。
「…よろしく…お願いします」
左手で娘を抱えたまま、伸ばされた手に右手で答えると、マリちゃんは妖しく笑い返してきた。
(怖い!)
背中を嫌な汗がつたう。
言いようの無い悪寒に襲われる。
何故、今頃になって俺の前に現れたのだ?
一体、なにを考えているのだ?
昔、マリちゃんに対して行った、さまざまな悪事が、走馬灯のように蘇る。
彼女に対してやってしまった事が、妻や、妻の実家なんかにしれてしまった日には…
家族は崩壊しかねない。
出来婚で怒り心頭だった義父には、婿入りを条件になんとか結婚を許してもらったのだ。
バレたりでもしたらどうなるかは…火を見るより明らかではないか。
それだけは避けなければ…
そんな事を考えていると、
マリちゃんは後ろを振り向き、誰かに向かって話をしはじめた。後ろに…誰か居る?
「ほぉら、アンタも出てきて挨拶なさい?」
その言葉につられ、マリちゃんの背中に隠れていた男の子が、照れくさそうにヒョイっと顔を出した。
小柄なマリちゃんの背中に隠れるぐらいだから、背格好はかなり小さい。
上の娘と同じぐらいだろうか?
そう思いつつ、マリちゃんに似た、かわいらしい表情を見つめた途端、
俺は強烈な悪寒に襲われていた。
(!)
父親は…誰なんだ!?
「ずっと海外に住んでたんですけど、この子が小学校に上がるんで戻ってきたんです、
やっぱ…教育の事考えたら、日本に住むのが一番なんで」
「へぇ〜。バレエのお稽古で居ないけど、家にも君と年が近い娘が居るの。仲良くしてあげてね?」
妻は、しゃがみ込みながら、その子に話しかけている。その後も何事か話していたようだが、
内容など、俺の耳には入っていなかった。
『来年小学校にあがる』
その言葉が意味する不吉さに震撼していて、それどころではなかったのだ。
わざわざ隣に引っ越してきたことが、偶然だとは思えない。思えるはずが無い。
俺がマリちゃんに対してした事を思えば、俺の顔を忘れているなんてあり得ないはずなのに
『はじめまして』なんて白々しい挨拶をしてきた事を思うと、
どう考えても、意図的だとしか思えないではないか。
「お父さんは…今日お仕事なのかな?」
何気なく話しかけたその言葉に、動悸はさらに激しくなる。
「あ…父親は居ないんです。シングルマザーってやつで」
マリちゃんが男の子のかわりに答える。
「あ!そうなんですか…すいません」
「いいんです。今時シングルマザーなんて珍しくないですから」
意味ありげに視線を投げかけてきたマリちゃんの態度に、動悸は更に激しくなる。
もう…頼むから…帰ってくれ!
「お隣なんだし、困ったことがあったら、何でも言って下さいね」
「はい。ありがとうございます。ほら、アンタも挨拶して」
二人で挨拶をしたあと、マリちゃん達は帰っていった。
俺は、昔の過ちが、一番わかりやすい形で見せ付けられた事で、放心状態になっていた。
マリちゃんが俺に復讐をするために、隣に引っ越してきたと考えるのは早計かもしれない。
けれど…
俺がマリちゃんに対してした事を考えたら、そうだとしか思えないではないか!
先が見えている脅しであれば、耐えようという気力もわく。
でも、それがいつまで続くかわからないとなれば話は別だ。そんな状態に、俺は耐えられるだろうか?
「お父さん…どうしたの?顔色が悪いけど」
「いや…なんでもない」
マリちゃんの事は彼女も知っているはずだが、
なにしろ昔の話だ。
短い期間だったとはいえ、入れ替わりで同じ派出所に勤務していたのだ。
話ぐらいは聞いていただろうし、写真ぐらい見た事があるだろう。
だが、なんせ8年近くも前の話しなのだ。忘れているほうが自然だろう。
人は…忘れる生き物だ。
「でも…どっかで…」
(!)
「…気のせいだろう」
「そうかなあ?ヤグチって苗字、なんか聞き覚えがあるのよね…」
首をかしげる彼女の背中を押し、リビングに戻った。
子供を優しくソファに寝かせた後、後姿の妻を背中から抱きしめる。
「なに?」
「…」
「痛いよ…」
「…」
昔、こいつと向き合おうと、そう決めたときにした覚悟。それをふと思い出していた。
あの時、考えうる最悪の事態を思い浮かべたはずなのに、今のこの状態はどうだろう?
今、この生活を失うとなれば、あの時思い浮かべた最悪の事態など、問題にもならない。
遥か先を行っている。
神は、分不相応な幸せを享受できたのだから、もういいだろう…と、幸せを奪おうとしているのだろうか?
だとしたら…残酷だ。残酷すぎる。
胸の中に広がる嫌な予感と共に、昔見たドラマで聞いた台詞を思い出していていた。
幸せの後の不幸は、不幸の連続よりも、ずっと辛いものだ…と。
何気なく聞いていたその台詞が、今、重く圧し掛かる。
俺は、迫り来る破滅の予感に、ただただ怯えていた…
おわり
納得いかない終わり方かもしれませんが…
不幸になる(かもしれない)のはビデオ男のみって事で許してください。
れいなに関しては別の機会に書こうと思います。
高橋スレなのでここに書くべきでもないと思いますし。
乙です!
イイヨイイヨー!愛ちゃん幸せなら!!
修羅場?オッケーィ!!
初代さん乙
愛ちゃんならそんなビデオ男も愛せるハズ…たぶん
687 :
名無し募集中。。。:2005/11/21(月) 04:48:26 0
これまで長らく楽しませてもらいました。
個人的には想像していなかった終わりかただったけれど
余韻を残す終わり方で良かったです。
これから二人でなんとか男の過去を乗り越えていくのかもしれないし
男は一人ぼっちになるのかもしれない。
色々と想像する余地があっていいですね。
川*´ー`)=3 んふーっ!あっしのこと末永く頼むやよー!
川*´ー`)=3 んふーっ!
このスレでちょっと高橋が好きになったよ
長い事ごくろうさんでした。
最高の作品でしたよ。
無理やりさせられちゃった姉弟はどうなったんだろ
本当に面白かったです
気になってヤグポリスの話を朝から読んでしまった・・・
__
/ ___ヽ
レ〆ノノハ) ∬ おかえりなさいあなた
川*’ー’) ,;'"゙;, ご飯にするかの?
Q_ ノ/{l y'/}ヽ、 ./てフ
,___("ァx'´(`ー'´,、 y'^'フ´
、,.ヘ|:======:|'ヾ、_ノ> ヽ_,,ノ´
─.、//|======|─‐./´ 人)──
<,/ |_r---t_,| (_、_/_ン〉
カコーン
o O ○。
_ 。 0 。
┻┓∬( 。) ノノハヽo∈ お風呂にするかの?
|||(0⌒○ (~ヽ (’ー’*川
( ̄ ̄ ̄o ̄ ̄ ̄ ̄ ̄とノ ̄ ̄)
i ̄○ ̄ i ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄o ゚ ̄i
(__oノ_O__゚__。_ ノ ____
)) ((o o。o)) ○( [ ∩]
ノノハヽo∈
川*’ー’) それとも…あっし?
/ _ノ⌒⌒⌒`〜、_
( ̄⊂人 //⌒ ノ ヽ)
⊂ニニニニニニニニニニニニニニ⊃
ho
作者さん
遂に完結お疲れさまでした
俺はこのラスト好きですよ
ありがとうございました
れいな編 期待してます
ほ
ほ
ぜ
まんこ
川*’ー’)
川*’ー’)<ちんこ
マリちゃんが男ともう一度関係を持って家庭を崩壊させるというのもいいが
考えてみたら何もしないでただ隣に住んでいたほうが圧力は大きいよな。
あとは10年後くらいにマリちゃんのところの男の子と
愛ちゃんのところの女の子が互いのことを知らずに禁断の恋に落ちれば完璧だ。
れいな書いて━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
お疲れ様でした。
このスレに出会って愛ちゃんが大好きになってしまいました。
前から気になっていましたけど、とどめを刺された感じで・・・
隣に引っ越ししてきた矢口さん。子供の父親はやはり・・・
あの〜空気嫁ずに言うとヤグポリスって何ですか?
初代の作家さんお疲れ様でした、そういう形になりましたか
なるほど〜。高橋ヲタじゃないけど凄く読んでて楽しかったです。
また書いて下さいね。
>>708 もしもロダで「もしも矢口真里がHな婦警だったら・・・」をどうぞ
(〜^◇^)<お楽しみはこれからだよ キャハハハハ
(〜^◇^)>やぐやぐ〜
なんで警官になったのかは明らかにされなかたな
713 :
名無し募集中。。。:2005/11/22(火) 00:38:14 0
全てを読み返すと壮大な妄想ワールドやな…。
作者さん最高でした♪
れいな編も期待してます
714 :
名無し募集中。。。:2005/11/22(火) 00:45:22 0
まだ愛ちゃんが足りない気がしてきた
とりあえず男は愛ちゃんを幸せにしてやれ
川*’ー’)
b
ホシュ
するのだ
ほ
しゅ
子供を一人産んだぐらいのほうが子宮が下がってきて
奥まで入れると入り口が先にこつんとあたってすごく具合がいいそうだから
愛ちゃんのそれはなおいいんだろうな
724 :
名無し募集中。。。:
ほ