1 :
名無し募集中。。。:
作者キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
3 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 03:53:40 0
4 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 03:54:33 0
でも話のタイトルは
亀井vs道重 ROUND and ROUND
リd*^ー^)<そこんとこよろしくぅ
5 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 03:56:28 0
待ってました!
絵里と小春は梨華の運転する車に揺られて、幹部会に向かっていた。絵里はひどく気が進まなかったが、小春はどこかうきうきしている。
これまで全く組織の活動に関われなかった小春。梨華が意識的に遠ざけてきた。しかし先だっての初仕事依頼、小春は少しずつではあるが、組織の内情に触れられるようになった。
王宮の力は強く、支持も大きい。
そして組織には、求心力も、武力という面でも一時期の隆盛に比べれば遥かに心許ない。今何をすべきか、それを自身で考えるためにはもっと知らなければならない。
小雨がぱらつく殺風景な国道を3人は一路駆けていた。
絵里と小春は同時に、あることに気づいた。窓の外を流れていく風景、曇り空の下に重苦しく過ぎ去る風景が、いつか見た景色のような気がした。
絵里はすぐにその場所を思い出した。しかし小春にはまだ思い出せないでいた。
「石川さん、会議ってどこであるんですか?」
小春が運転中の梨華に尋ねる。助手席に掛けていた絵里は相変わらず窓の外を眺め続けた。
「今から、Y浜に行くのよ」
「…Y浜、ですか」
梨華の短い言葉を聞いて、小春の中でもすべてに合点がいった。そこは小春にとって、生まれ育った地だ。
Y浜。この街は首都の西に位置する街道の都市で、通商によって栄えた街だった。そして、この街には大きな意味合いがある。
かつて反政府組織の一大拠点があったのがこのY浜である。内戦の末期、この都市の組織を一掃しようと、政府軍が大量の軍隊を送り込み、史上稀に見る激戦となった。
後にY浜の戦いと呼称されるこの戦役は、街に悲惨な爪痕を残すことになった。そして、この戦いでの政府の暴虐ぶりと、敗北とが、この後に起こった国王暗殺の直接の原因と言われている。
「小春はY浜で生まれたのよね。久しぶりでしょ?故郷を訪れるのは」
梨華が運転しながら言う。その表情は窺い知れない。小春はハイと心無く頷いた。
Y浜の戦いは壮絶なものだった。軍は戦車を投入し、一般市民の巻き添えをまるで省みない総力戦に出た。上がる火の手と逃げ惑う市民。政府はY浜で平穏に暮らしていた市民を次々と殺していった。
そこに組織の拠点があったという、それだけの理由で政府は彼らを組織の支援者とみなした。実際この街の市民が組織に加担し、活動を容認していたという部分はあったが、それは彼らの活動を真に正しい、解放活動と信じていたからだ。
圧制を敷く政府に誰もが心の底では反発していた。
小春の両親も、そうしてその街に暮らしていた。ただ十に満たない一人娘のこともあり、自ら組織に加わって戦うということはしていなかった。
普通に働いて、このY浜で3人の小さな家族を支えていく。そうして生きていくことが夢だった。
しかし戦いの中で二人は死んだ。明らかに組織の戦闘員ではない、一般市民であった二人は、王国軍の銃撃によって、小春の目の前で崩れた。
小春はそのときの場面を思い出していた。
辺りに上がる火の手と、悲鳴。優しかった両親が、その胸に穴のあいた後もなお、小春を気遣い、逃がそうとしてくれたことを。
このとき強く、思った。何かがおかしいのだと。何かが狂っている。この国の何かが。
その時小春を助けてくれたのは当時の組織の一員だった。どんな人だったか、今となっては思い出せない。何せまだ十歳にもなっていなかったのだ。
車はY浜の市内に入った。
呪われた街。いつのころからか、そんな呼ばれ方をするようになったこの街は、まだ生々しく戦いの爪痕が残っている。
ただ、この土地の人々の力強さと、さゆみに政権が渡って以来の政府からの支援、それに組織の支援によって僅かずつではあっても、息吹を取り戻してきているのも事実だ。
街の奥深くにある小さな雑居ビル、その前に3人を乗せた車は止まった。
梨華が先頭を切って中に入っていくと程なく慣れた様子の男が梨華に声を掛けた。
「やあ、石川さん。早かったですね。あなたは忙しいだろうから最後じゃないかって、中で話してたんですよ」
梨華も笑って男に返す。
「私の我侭で集まって貰ったんですもの、遅れるわけにはいかないわ」
男はそのまま3人を先導して階段を上って行った。
その間に、ちらりと、絵里と小春に目線をくれる。
「今回は絵里も同伴ですか…。それと…?」
「後で紹介するわ」
ある階で男が扉を開いた。中にはもう一重、扉がある。ゆっくりとした動きで男が歩いていく。
絵里は扉が開かれる前に扉の中の会話を聞いていた。
『石川さんはやりすぎた…』『いくら裏切りものとはいっても…』『しかし…』『逆効果に…』
梨華や小春には聞こえてはいないだろう。
絵里はいつかの梨華の言葉、そして死ぬ間際のれいなの言葉を思い出していた。
梨華に、トップとしての資質は無い。誰もが、わかっている―――
扉が開かれた。
梨華と絵里にとっては見慣れた、小春にとっては初めて見る顔が並んでいる。
席についていた者たちが口々に梨華に挨拶をする。梨華もそれに答えた。絵里はいつものように仏頂面に、口元だけに笑みを浮かべたまま何を考えるともなく考えていた。
小春は絵里の隅で所在無さげにしている。
程なく、メンバーがみな集合し、会談は始まった。
「始める前になんだが、石川さんに一つ聴きたい」
「なんでしょう?」
「この間の27人殺し。ありゃあ、あんたのやったことだな?いや、正確に言えば絵里か…。絵里以外にできる奴なんていない」
「そう。あの裏切り者達は絵里が始末しました」
小春は梨華の横でその会話を聞き、目を見開いた。まだそのことを知らなかったのだ。絵里が凄腕の殺し屋であることは聞き知ってはいたが、あの世間を震撼させた事件の実行犯が絵里であったことなど寝耳に水だ。
絵里の顔を伺い見ると、普段となんら変わらない、よくわからない表情をしていた。
「……やりすぎじゃないか?仮にも共に戦った仲間達だ…説得も出来たんじゃ…」
「説得して、また戻ってきたとして、そんな連中がいる中で組織が纏まる?彼らは王宮の船に乗って海外に逃げようとまでしたのよ?」
「そりゃあ…そうだが…」
「今私たちの力は弱い。小さな皹が、たちまち全体を壊すことに繋がるわ。連合組織の中に不信感を残してはいけないのよ」
「……」
部屋の空気は妙な重苦しさを帯びた。それを打開するように、斜向かいにいた若いリーダーが声を出す。
「それよりも、今後について考えましょう。27人事件、そして山崎会長の事件、二つとも石川さんがしたことですが…政府の対応はどうでしょう。どちらも世間を震撼させた大事件なのに全く動こうとしない」
「ああ、全く不気味なくらい沈黙を守っているな…」
「石川さんの元にも刺客が送られたり、捜査が入ったりってことは無いんだろ?」
「ええ、今のところは…確かに不気味ね…」
「ただ、私たちを一気に潰せない理屈はわかるわ。昔のように巨大な組織ではないし、各地に拠点が散らばっている。それに、王女は軍隊を国内で動かすことを極端に厭っている…。密偵組織があるという噂だけれども、それがどれくらい機能するか怪しいものね」
「そのことなんだが石川さん…うちの若いのが手に入れた情報なんだが、王宮の密偵部隊を纏め上げたのは、あの紺野だって話だ…」
「紺野…?」
「ああ、しかもそうとう強力な組織らしい…ただ、ぎりぎりまで動くことは無いだろうが…」
「あの紺野が…それは、やっかいね。でも、そうね、鉄橋も叩いて渡る紺野がトップにいるとなれば、王宮が動かない理由もわからないでもない…」
「ああ、ただこれからが危険だな。注意しておかないと一網打尽だ…」
梨華の横で小春は緊張して聞いている。よくわからないことも多いが、ともかく前線の会話が為されているのだ。
その横で、絵里はすでにあくびをかみ殺していた。何一つとして興味の無い話だ。小春と暇つぶしでもしようと思って横を伺うのだが、真剣な表情の小春には声が掛けづらい。
話は格組織の戦力の話題に移っていた。
「最近はしかし、いい若いのが沢山入ってきたよ」
一人の男が言うと、また一人がそれに呼応する。
「ああ、こんな時勢だからな…国が王女一色、そんな中だからそれに異論を唱えられる、視野のある若者が出てくるよ。頼もしい限りだ。彼らは俺らみたいに凝り固まった年よりと違って柔軟に物事を考えられる」
「そういえば石川さん、あんたんとこは、絵里しかいないんだな。まあ、絵里がいりゃ、何百人いるよりもよっぽどいいだろうが」
そんな振りで急に視線が絵里に集まると、絵里は慌てて目を開けるのだ。殆ど寝ていた。
梨華は少し得意そうに鼻を一つ鳴らし、周りを見渡してから言った。
「今日は絵里以外にももう一人、私の部下を連れてきたのよ」
小春がぱっと梨華の顔を見る。梨華が一度小春に目を合わせて、微笑んでから続けた。
「小春。この子はね、あの山崎会長の暗殺を初仕事で成功させた新鋭よ。ゆくゆくは…私に代わって組織を纏め上げる人物になる、私はそう期待しているわ」
一度に小春に視線が集中する。小春はなんだかわからず緊張するや、照れくさいやらで頭を下げた。
「はは、そうか。まだ子供だけどいい目をしてるな」
男たちが口々に言う。
「ああ、石川さんがそう言うなら、大したものだろう」
「期待してるよ、小春」
会談は終わった。終わってみればお互いの情報交換と現状報告。それに梨華の言葉通り小春のお披露目という意味合いも強く具体的な進展は無かった。
会議が終わってから梨華と絵里、それに小春はY浜の街を歩いていた。小春にとっては勿論、梨華や絵里にとっても大きな意味合いを持つ街。
「小春、どうだった?幹部会は」
梨華が尋ねると、小春は少し興奮気味に返した。
「はい、何だかまだまだ分からないことも多かったですが…これからの為に、よかったです!」
「そう、連中の印象は?」
「はい、みんないい人そうで…」
「ふふ、馬鹿正直が取り柄みたいな人たちだからね…。でも最後には彼らみたいな連中が頼りになるわ」
絵里は二人の横で黙り込んでいる。
Y浜の景色をじっと眺めていた。絵里にとっても、この街は切り離せない関係にある。別にY浜の戦いに参加したという訳ではないのだが…。
絵里は大抵のことは忘れない。そんな絵里でさえもうおぼろげにしか覚えていない嫌な記憶と、一生無くしたくはない大切な記憶、それがこの街には同居している。
「この街も…活気が戻ってきましたね…よかったです」
小春がしみじみと言う。
「小春の生まれ故郷だものね…」
所々にくずれたままの壁がある。そして丘の上には、嘗て組織が根城にしていた洋館が、そのまま残っていた。梨華がその洋館を懐かしげに見上げる。
その横で絵里は、恨めしげにそれを見つめていた。
前スレ埋め立てありがとう
なんかいろいろありがとう
14 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 04:09:34 0
一応上げとこう
15 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 04:11:28 0
前スレ後半戦を復習中・・・
16 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 04:36:17 0
乙ー
17 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 10:04:31 0
ほ
18 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 11:06:46 0
ほす
乙
やべー嬉しすぎて泣きそう・・・
復活オメ
21 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 14:12:24 0
保全
今気づいたよーーーーーーーーーーーーーー
作者乙ーーーーーーーーーーーーーーーー
復活おめ。待ってたよ
ほ
リd*^ー^)
保全
ほ
28 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:02:07 0
ほ
29 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:02:46 0
保全
30 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:03:39 0
ほ
31 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:04:46 0
保全
32 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:05:40 0
ほ
33 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:06:24 0
保全
34 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:06:56 0
ほ
灰汁禁志願者か
36 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:07:40 0
保全
37 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:08:11 0
ほ
38 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:08:40 0
保全
39 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:09:17 0
ほ
40 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:10:03 0
ほ
41 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:10:41 0
ほ
42 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:15:04 0
このニ、三日は狼くると毎日このスレ探しからはじめてました
復活オメ
43 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:47:01 0
ほ
44 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:47:43 0
ほ
45 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:48:37 0
保全
46 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:49:16 0
ほ
47 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:50:58 0
ほ
48 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:52:05 0
ほ
49 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:53:55 0
ほ
50 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:54:36 0
保全
51 :
名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 23:55:16 0
ほ
今度はプロレス勝負だ
三人は暫くY浜の市街を歩いていた。昔懐かしい町並み。三様の思いを持って見つめる。
そうしていると不意に、梨華が忘れ物を思い出したと呟き、元来た道を引き返していった。小春と絵里は思いがけず二人きりになってしまった。
慌てて駆け戻った梨華の背中を二人はぼんやりと見つめる。
「いっちゃいましたね…」
「石川さんも案外間抜けなところあるからね…」
来しなに降っていた小雨がまた降り始める。二人はとりあえず傘を広げ、とりあえず市街を歩くことにした。
戦いで壊れ、組みなおされた真新しい石塀が雨に濡れる。
昔から変わらない凸凹の道も、やはり雨に濡れている。
「あ、このあたり…」
小春が立ち止まり、傘のふちを少し持ち上げて辺りを見回した。鉛色の雲に覆われた灰色の街は、ひっそりと呼吸している。石塀に囲まれた、街道の町独特の埃っぽい匂いが、雨に鎮められてなりを潜める。
「どうしたの?」
同じように傘のふちを持ち上げた絵里の視界に、赤い傘に照り返されてどこかしら幻想的に、儚げに揺れる小春の二つの目が映った。
「私が…昔住んでた辺りです…」
「そっか」
「家は、もう無いですが…。この堀、街灯、花屋さんの前の鉢植え、外国語の看板…。なにも、変わってないなぁ…」
小春の言葉に呼応するように雨は強まった。そのとたん、何かしら二人を包み込むように街がその体を擡げてきた。時間の感覚が覚束なくなるような、不思議な感じ。
小気味よく跳ねる雨音が、昔懐かしい感覚を思い起こさせる。
次第に暗さを増した街に、ぽつりぽつりと明かりが灯り始めた。二人は、小さな広場になっているそこで暫くの間雨に打たれてたたずんでいた。
絵里はどこかしら、遣る瀬無い思いで、小春の小さな身体を覆う傘の照り返しを見つめていた。
「亀井さん!あそこのカフェ、昔お父さんとよく行ったんです。店主さんが気さくないい人で…まだいるかな?…寄っていっていいですか?」
小春が振り返り笑顔で絵里に問いかけると、絵里も笑顔で頷いた。
小春は嬉々としてその店の戸を潜る。重厚な一枚木で出来たいかにも洒落た扉。先の戦いで壊れなかったのは奇跡的といっていいかもしれない。そこに雨が染み込み、黒ずんでいる。
絵里は改めて小春がまだ若いことを思い出していた。幼くして両親を失い、生まれ故郷を離れた。そしてこれからは一人の戦士として戦うことになるのだ。
彼女の基盤を生み出したのは、何に変えても、やはりこの街。幼い頃の掛け替えの無い記憶に寄るところだろう。今再び、その記憶の断片に触れ、戸惑いながらそれを懐かしんでいる姿は、少し痛ましくもある。
子供として生きることを捨てざるをえなかった、彼女の不安を絵里が知ることは出来ない。
小春が潜った店の中から、再会の悦びの声が上がった。姿はまだ見ていないが、声から察するにもう年老いた店主だろう。それが小春に、最大限の親しみと慈しみを込めた言葉をかけ、小春もそれに応じている。
そのやり取りを暫くきいていた絵里の口元にはまた笑顔が浮いていた。
小春がこれから向かう大きな戦いの前に、小さな休息の場が見つけられたことはいいことだろう。彼女自身が、じっくりと前を見つめていくために。
「亀井さん!濡れちゃいますよ!」
小春が木戸から顔を出し、絵里を手招きする。その顔には満面の笑みが浮いている。後ろからひょっこりと顔を出した想像通りの年老いた店主も、やはり同じだった。
二人の笑顔は、重苦しい雨模様にひとかどの華を咲かせたと見えた。
絵里が店の中に入ると、小春が店主に絵里を紹介し、絵里に店主を紹介した。
小春が幼い頃からずっと知っている、馴染みの店なのだそうだ。
薄暗い店内の中で店主の顔はよくはわからなかった。
しかし、絵里にもその顔に、見覚えがあるような気がした。ドアの外から聞こえる微かな雨音には、ごちゃまぜに古い記憶を思い起こさせるような妙な響きがある。
絵里の身体の中を不快感が襲う。耳鳴りのように、こみ上げてくる。
その正体を、絵里は知っていた。それはこのY浜に足を踏み入れてから燻り、消えることの無かった感覚。吐き気にも近い感覚だった。
夏とはいえ雨に冷えた二人の身体を慮って店主がホットチョコレートを二つ、出してくれた。その甘い湯気を見ていると、珍しく、絵里の中の記憶が止め処なく溢れ出す。
美味しそうにチョコレートを飲んでいる小春に、絵里はぽつりと言った。
「小春はさぁ、この街で生まれたんだよね?」
「はい、そうです。ずっとこの辺りで、育ちました。Y浜の戦いの後まで…」
一度絵里が小春の顔をじっと見つめた。小春はその視線にどきりとした。普段の絵里とは何かが違った。何が違うのかははっきりとは分からない。ただ、無関心な、適当な絵里とは違う。
何か思いを込めた目が、それも切実な思いを込めた目が小春を見ていた。
チョコレートの湯気がたゆたう。
もう一度絵里が口を開いた。
「私も、この街で生まれたんだ」
小春は一瞬様々なことに吃驚して動きを止めた。
「あー、うん。やっぱやめよう。折角のチョコレートが美味しくなくなっちゃうね…」
勝手に自己完結してしまいそうな絵里を慌てて引き止める。
「き、聞きたいです…亀井さんのこと…」
絵里の言葉の内容、それも大きな驚きではあったが、それよりも絵里が自ら自分のことを話し出したことが小春には驚きだった。いつも知りたいと思いながら聞く術のなかった絵里のことを。
今この機会を逃せば次はないかもしれない。絵里にもっと近づきたい。その一心で、小春は声を張り上げた。
「うへへ…そう?」
「はい!」
小春の異様な食いつきが、小春自身には切実でも絵里にはなんだか可笑しく思えた。それで切羽詰った感覚は大分薄れた。
それでも、言ってしまいたいと思った。
小春は絵里を慕ってくれた。さすがの絵里でもそれは分かったし、そんな風に絵里を慕ってくれたのは小春ただ一人だった。それが何だか嬉しかった。さゆみやれいなとはまた違う。
今ここで自分の昔話をすることは、小春に不快感を与えることはわかっていた。或いはもう自分についてきてはくれないだろうことも。
でも聞いて欲しい。人は自分だけに抱え込んだものを誰かに聞いて欲しいと願うことが得てしてある。今絵里が思っているのは、そんな子供じみた願望だった。
「あんまりね、人に話せることでもないんだ…きいて後悔しても知らないよ?」
「はい…」
「小春はさあ、この街の生まれならこんな話、聞いたことない?『悪魔の子供』っていう」
更新乙
明らかになる絵里の秘密!
おっつー
気になるねぇ
えりりん
さゆ
ノノ*^ー^)<テキトーですよ?
ho
64 :
名無し募集中。。。:2005/09/12(月) 12:18:14 0
さゆみん
ほ
作者さんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!
保全
悪魔の子供気になる保
リd*^ー^)
うおー今日もキテタ――――!!!!
最近ここを見るために狼に来てるようなもんだよw
ノノ*^ー^)
保
田
74 :
名無し募集中。。。:2005/09/13(火) 02:15:55 0
さーゆみん
きたきたきたkたいたきあ!!!!1
新スレ乙!!!!!!!!!!!!!!!!
76 :
名無し募集中。。。:2005/09/13(火) 03:04:24 0
酒井法子の碧いうさぎの歌詞はさゆえりにはまっていいよ
聞いてみて
立ってたのか
新スレ乙
あおいうーサーぎー
ho
ほぜ
ほ
83 :
名無し募集中。。。:2005/09/13(火) 11:53:28 0
さゆみんはうさぎだからな
ho
85 :
名無し募集中。。。:2005/09/13(火) 15:15:42 0
ho
ノノ*^ー^)
87 :
名無し募集中。。。:2005/09/13(火) 17:06:22 0
,....、⊥,....、
/´/⌒l⌒ヽ`ヽ☆ハヽ
/ / ̄ ̄ ̄ヽ ノノ*^ー^)
│ | ハヽo | | ̄lつつ /l//l/l
[l. |*・ 。.・) |∠ノーn\\__〆〆 ´`\
ヽ._ ̄: ̄ ̄ ̄: ̄ノ匚|JJヽ>ー|--|---‐メ、゚_゚)
/、| ,ゝ__,、__,、:_./、|,ゝ匚ニニニニニコ .〈コ
|‐*‐)─*-)|‐*‐)*-)〉// /`ー、ヽ
ヽ、|_ン ヽ、|_ン ヽ、|_ン 、.|_ン〈/〈/ヽ〉 ヽ〉ヽ〉
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ノノ*^ー^)
ho
ノノ*^ー^)
91 :
名無し募集中。。。:2005/09/13(火) 21:55:27 0
ハヽo
*・ 。.・)
ze
をー!今気付いた!!やった!!
n
この作品をドラマ化、映画化してくれんかのー
ノノ*^ー^)
ho
___ ____
─=ニ二__  ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄"""'''''''''──
__
 ̄ ̄ ̄二二ニ=-
'''''""" ̄ ̄
-=ニニニニ=-
. キョウケン・・・カ
ノノハヽ _,,-''"
_ (V|l川/^),-''"; ;, '
/ ,_O_,,-''"'; ', :' ;; ;, ''
(.゙ー'''", ;,; ' ; ;; ': , '
_,,-','", ;: ' ; :, ': ,: :'
从*・ 。.・)
ふじもんがたそがれとる
ho
103 :
名無し募集中。。。:2005/09/14(水) 16:49:19 0
。 。
∧М∧
∂/ハヽヽ
. 从*・ 。.・)
. (__)~~∞~(__)
ノ∪lノ .ヽ∪
r'( ァ、
^; `ァ〜r-〜'" ,r'
`^〜〜-〜'^
ze
n
リd*^ー^)
呪われた街Y浜。小春が生まれた街であり、絵里が生まれた街でもある。そしてこの街は、絵里と、さゆみやれいなとが初めて出会った街でもあった。
首都圏と西部の主要都市との物流だけでなく情報交流の拠点でもあったこの街は、その重要性から大いに発展を遂げた。そんな街の中でも数代に渡ってこの地を取り仕切った名門の旧家があった。
丘の上に今でも残っている洋館。後に反政府組織の居城として使われることになる建物の主が、その人物だった。
この当主は、若くしてこの名門の家を引き継ぎ、莫大な富と何不自由ない物流の中で安穏な生活を送っていた。人々からも慕われ、この土地の全ての人から愛された領主だった。
夫人は美しく優雅で、この上なく幸福な家庭であるはずだった。
17年ほど前のこと、夫人は待ち望まれた第一子を身ごもった。誰からも祝福された、跡取りの誕生。このとき、誰が後の悲劇を想像しえただろうか。些細な、悪魔の悪戯が二人の身に降りかかっていたことに誰が気付いただろう。
絵里は待望の第一子としてこの夫婦の間に生まれた。しかし、生れ落ちた瞬間から、絵里に向けられる祝福は消え失せた。
悪魔の子供。生まれて直ぐに、誰ともなく絵里はそう呼ばれた。
絵里は殆ど産声も上げず、薄気味悪い笑顔を湛えて生れ落ちた。凡そ人間の赤ん坊と思えないような運動能力。生まれて直ぐに与えられた哺乳瓶を悪戯に握りつぶしたとき、その場に居た誰の顔からも血の気が引いた。
僅か数日で動き回り、半年の間に二本の足で立ち上がった。
絵里はいつでも不気味な笑みを湛えていた。何かを追い回せば、例えば蝶も、鼠も、すぐに絵里に捕まっては握りつぶされた。絵里は、その運動能力以外ではただ好奇心の旺盛な幼児だった。
しかしその目は誰も悪魔と呼びたくなるような深い暗闇だった。
両親は、それでも絵里を人並に、愛情を持って育てようとした。周りの人たちから出来るだけ絵里を遠ざけ、隠れるように、根気よく恐ろしい絵里を育てていた。
洋館の周囲では、この領主に対するよくない噂が次第に広がっていった。子供を決して人に会わせようとしない、子供を閉じ込めているのでは、子供が生まれたというのが、そもそもの嘘なのでは…
絵里が4つになるまで二人は世間の視線から逃れながら根気よく絵里を育てた。しかし、身体の能力ばかりが異常に発達し、頭や行動がそれに続かない絵里を二人はどうしても、心の底から愛することは出来なかった。
絵里のちょっとした「悪戯」が惨事を招きそうになったこともしばしばあった。両親が我慢していても、屋敷内の人間はみなあからさまに絵里を不気味がった。
父親は、それを頑なに許さなかったから、屋敷内の空気はどんどんと汚れていった。
(領主様だって内心では絵里様のことを不気味がっているくせに、私たちに辛く当たるのだわ…)
(あんな不気味な子供のいる家に、もう一日だって仕えていたくない)
絵里の両親は、使用人達に口外することも許さず、屋敷を離れることを許さなかった。信頼しあっていた主従関係は壊れ、絵里の父親自身もあらゆる状況の責め苦によって憔悴していた。
絵里はただ無邪気に生活していた。僅か4歳では、父や母がいったい何に苦しんでいるのか分からなかった。ただ二人が苦しみ、家の人間がみな暗鬱な顔をしていることがわかった。
両親も家の人間も、一度も絵里の前に心からの笑顔を見せることは無かった。
絵里は戸惑っていた。何一つ分からない状況の中で、自分の周りを暗闇だけが包み込んでいるようだった。両親にかまって貰おうと、飛んでいる鳥を素手で捕まえて見せても誰も喜んではくれなかった。
4年の間、それでも両親は我慢を続けた。あと少し、せめて絵里に少しの分別がわかるようになるまで我慢していたなら、すべては変わっていたかもしれなかった。絵里が両親の苦しみと、自分の異常性を少しでも理解できるくらい、育っていれば。
ある嵐の夜、父親はとうとうその身を取り囲む全ての苦悩に勝てなくなった。長年積もったストレスはこの男の人相をも変えていた。やつれはて、嘗ての人々から愛された領主の面影は一つとしてなかった。
男は夫人を呼びつけ、言った。
「私は4年という間、我慢を続けてきた。娘を愛そうと努力してきた。しかし、絵里ときたらどうだ、ますます不気味になっていくばかりじゃないか…」
疲れ果て、年齢よりもずっと老け込んでしまった夫人も、この言葉には驚いた。
「あなた…!我が子のことを不気味などと…お願いです、変な気を起こさないで」
「いや、今こそ白状しよう。私はあの娘を我が子だなどと思ったことはない。愛したこともない。あれは悪魔の子供だよ。私たちは悪魔に誑かされたんだ。そして、君も同じように思っている」
「そんな、私は…」
「いや、そうだろう。私は今夜決着をつける。あの娘を亡き者とし、悪魔の呪縛から逃れる。君も私と来るね…?」
二人はもう何を信じるかも見失っていた。ただしがらみと、責め苦とから逃れたい、その一心で絵里を殺害することを決めてしまった。絵里が4つになった、寒い嵐の夜。
家族が三人で父親のコレクションルームに来ていた。蒐集癖のある父が、古今から集めた美術品や彫像が並んでいる。そのコレクションに、新たに追加された一品を夫人と絵里に紹介するためにやってきたのだ。
その一品は刀だった。古今随一の名刀として、また伝説的な妖刀としてこの男の目に留まったものだ。
男が振りかざして見せると、夫人はその刀身の輝きに目を奪われた。二人の心の中には既に、妖気を孕んだその刀以上の暗黒が支配していた。絵里は何もわからずに、その刀をぼんやりと見ていた。
何が美しいものか、それがいったいどんな用途になるものか、わからなかった。
部屋の外からは嵐が窓を叩く音が聞こえた。暫く黙り込んでいた男と夫人が、視線を合わせたとき、部屋にあった空気は色を変えた。
無言で絵里の背後に立つ父親。手には刀。夫人は既に死んだ目をして、じっとその様子を覗っていた。刀が物凄い力で振り上げられたとき、絵里は振り返った。
絵里はこのとき、始めて出会った。「人間」の殺意、憎悪。どれだけ望んでも得られなかった愛情の変わりに、その負の感情は瞬く間に膨張し、両親を飲み込んでいた。そして、それは現実だった。何よりも、憎悪という現実が絵里の中を一瞬にして走り抜けた。
絵里の防衛本能は、そのとき形成されつつあった理性を全て遮断した。感情的な一切は切り捨てられ、ただ生きる為の行動を取った。
父の刀を交わし、刹那にその手からそれを奪い取ると、一瞬後には血の雨が降った。絵里の両親は絶命した。
始めに発見したのはこの家に勤めていた家政婦だった。
血の海の中に沈んでいる二人の主人と、その血を浴びながら、不気味に笑って座っていたその娘。
そのすさまじい光景は、この世の終わりを思わせた。
警察が入っても、犯人は分からなかった。主人がひた隠しにしてた為に誰も絵里の異常体質を知らない。知っている屋敷内の人間は、その事件の真相をすぐに見抜いたが、関わり合いを恐れて誰も口にしなかった。
普通に考えれば、4歳の子供が二人の大人を切り殺すことなどできるはずがない。
警察の結論は、夫婦が無理心中を図り運よく子供だけが生き残ったというものだった。そんな結論は、誰にとってもどうでもいいことだった。
事件の数日後には屋敷に、絵里の見たことも無い人間が大勢集まった。親戚縁者と名乗る人間たちが、突然主を失った莫大な財産を狙い集まったのだった。
あるものは絵里の身請けを買って出た。しかし、どの人間の目も、ただ欲望に燃え立っていた。両親の死を嘆くものすらただの一人もいなかった。
数回目の縁者の会談の席が屋敷内に設けられたとき、絵里はその席に入っていった。
彼らの欲望と、執心と嫉妬と、あらゆる負の感情を醜く露呈した姿は、一度感情を棄てた絵里が、再びそれらを取り戻す機会を奪った。絵里の感情は、自分自身のその深い闇の目の中に飲み込まれてしまった。
会談の席に現れた絵里の姿を気に留める人間は居なかった。誰も、この哀れな少女よりも自分の配当のことで頭がいっぱいだった。
事件の凶器であり、重要な資料であるはずの刀は屋敷に戻ってきていた。その資産価値を鑑定するため、縁者が力任せに警察から引き取ったのだ。
この家の主人であった二人の血を啜ったばかりの刀を。みな、狂っていた。
絵里はその刀を握っていた。僅か数分後、家の人間も殆ど気付かないくらいの静かのなかで、絵里はその連中を皆殺しにしていた。既に、目的は分からなかった。ただ自身を闇に導かれるように、絵里は刀を振り回していた。
第二の事件の後、絵里は消えた。一人、どこかに旅立った。絵里の姿を最後に見たのは、家に長く仕えていた執事だった。議場から血塗れた姿で出来てた絵里の、嘗て無いほどに恐ろしい闇の目を見た老執事は言葉も発せず、腰を抜かしてしまった。
絵里はそれから長く、闇の赴くまま、全国を渡り歩いた。腰に一本の刀を下げて、口元に笑みを浮かべて。
Y浜の事件で俄かに世間に噂されるようになった「悪魔の子供」は、一種の都市伝説の様相を呈して全国に広がっていった。
『悪魔の子供は悪魔の子供。一目みたなら殺される。
綺麗な笑みに見惚れたら、つぎの瞬間(とき)には首が無い。
悪魔の子供は悪魔の子供。誰もその目で見たことはない。
見て生きている、者はない…』
乙
更新乙です
何かの呪いですかね・・
乙です
キタコレ
116 :
名無し募集中。。。:2005/09/15(木) 00:02:23 0
さゆさゆ
出会いが気になる
さゆ保
えり保
ho
絵里スゴス
作者さん乙です
おもしろい
朝保
ho
ほ
125 :
名無し募集中。。。:2005/09/15(木) 12:08:34 0
B'zのもう一度キスしたかったがいい
ノノ*^ー^)
ho
>>125 レミオロメンの3月9日もこの話にあってていいよ
保全代わりに… 俺はHYのあなたでイメージしてるな
わかってる わかってる 二人はきっと愛し合ってる
恥ずかしがりやのあなただから きっとうまく言えないんだよね ってね
ze
m
ho
>飛んでいる鳥を素手で捕まえて見せても誰も喜んではくれなかった
えりりんスゴス
でもカワイソス
猫かと
ノノ*^ー^)<にゃぁ〜〜お
リd*^ー^)
从*・ 。.・)
从*・ 。.・リd*^ー^) <ニャンニャンニャンニャン♪
リd*^ー^)<きまずい
141 :
名無し募集中。。。:2005/09/16(金) 07:34:55 0
从*・ 。.・)<ほ ぜ ん
、 ,
从*・ 。.・)
ho
ze
n
小春は息を呑み、じっと聞いていた。記憶力のいい絵里も、その頃のことは殆ど覚えていなかった。それでも一生懸命に思い出しながら話した。
話している絵里自身も、分からないことはごく多い。そのとき両親や、自分の周りに居た人たちがいったい何を考えていたのか、何がおこっていたのか、やはり判らなかった。
雨の音が強く響いてくる。店内は静まり返っている。
「と、いうようなことがありました。うへへ…」
絵里が一旦言葉を切ると幾分緩やかな空気が店内に流れた。しかしそれでも雨音は妙に静けさを誇張する。
「そうか…あんたが、亀井の一人娘か…」
次に静寂を破ったのはこの店の店主だった。カウンターの奥で、彼もじっと絵里の話を聞いていた。その言葉に小春は驚いて顔を上げる。しかし、彼にしてみれば、長年住んでいるこの街の大きな事件である。
絵里も彼の言葉に顔を上げた。
「はい、そぉです」
店主は暗い顔をしている。
「わしもずっとこの街に住んどる…噂ばかりだが、あんたのことも知っとるよ…」
「……」
「悪いことは言わん。この街に留まらないほうがいい」
小春はさらに驚いて男と絵里の顔を見回した。
「あの事件…亀井のダンナと、その一族が全滅した事件以来、この街にいい話はない…。街の凋落はあれから始まった。このY浜が呪われた街なんと呼ばれるようになったのもそれからだ…」
「おじさん…?」
「あんたの気持ちもわからんでもないが…。もうこの街の誰も戦いや諍いを望んでいない。それに『悪魔の子供』であるあんたを留めておく気もあるまい…」
店主は脂汗を浮かべながらも決然と言い放った。絵里の話がどこまで真実で、自分の耳にした噂がどこまで正しいのかはわからない。しかしそれでも、僅か4歳で一族を皆殺しにした少女が今眼前にいるのだ。
自分の命は、もう絵里に預けられていると思った。だからこそ、絵里をこの街に留めておくわけにはいかない。
「そうですか…」
絵里は寂しげに笑って頷いた。
小春だけが、納得のいかないような、苦しげな表情をしている。雨音が煩く、思考が阻害される。
通商を取り仕切っていた亀井家の壊滅は、直接この街の力を失わせた。後に続けるだけの実力も、資産も他の住人には無かった。海路や鉄道での通商が勢力を拡大しつつあった中で、政府はあっさりとこの街を見放した。
後に政府から省みられなくなったこの街は、嘗ての機能を残している格好の隠れ家として、台頭し始めていた反政府組織の根城となったのだ。そしてY浜の戦いという悲劇を生んだ。
こじ付けでしかない。それでも、絵里と亀井家に起こった惨事が、全ての引き金であるということは確かだった。
小春の戸惑いの表情を感じ取った店主は項垂れて言った。
「悪く思わんでくれ…この街は亀井の家と共にあった。調度小春が生まれた頃だ、事件が起こったのは…。その次は反政府組織。わしらはいつも強者の下でへばり付いて生きてきた。その盛衰と運命を共するしか無かった…」
「自分たちには何にも力が無い。いつも被害者面で…しかしいつも無いものねだりしてきた…。呪われた街の住人はわしらなんじゃ…。自分の足で立つことも出来なくなった、わしらなんじゃ…」
「おじさん…」
窓の外から稲光が光った。数秒後にはけたたましい雷鳴が轟く。その喧しさが、何かしら寂しい店内の静けさを引き立たせていた。
絵里が立ち上がった。
「わかりました、おじさん。嫌なこと思い出させちゃってごめんなさい…」
小さく言って、店の外へ出ようとする。小春も慌てて追おうとした。店主が弱弱しく引き止める。
「待ちなさい。わしにはあんたに何にもしてやれん…せめて、最後までチョコレートでも味わっていってくれ…」
絵里が店主の顔をじっと見る。その顔には深く皺が折りたたまれ、じっとりと汗が浮いていた。
「もう30年以上もここでやってる。その昔、あんたの両親も若い頃に飲みに来たことがある。本当に綺麗で、明朗で、いい夫婦じゃった。ワシのチョコレートを美味しいといって贔屓にしてくれたもんじゃ…」
絵里は縺れ出した口を一生懸命に動かし、詫びるように言う老主人に小さく微笑んだ。そして、また席に戻り、カップに半分ほど残ったチョコレートに口をつけた。まだ仄かに温かい。
「あんたの両親を追い込んでしまったのは、わしらかもしれん…勝手な噂話を流行らせて、ずっと世話になってた恩も忘れて詰め寄った…」
雨と雷鳴の届く店内には、どこか物悲しい音が響いていた。
「ご馳走様です」
絵里はそう告げると、再び静かに席を立った。小春は遣る瀬無い表情のままその背を追った。老主人は小春にも一つ、深々と頭を下げて見送った。
店の外は土砂降りだった。
絵里が傘を広げ、元来た道を引き返すと、小春も肩を濡らしながら一生懸命についていった。
絵里がふと立ち止まる。小春もつられて絵里の背後に立ち止まる。
「小春、ありがと」
降りしきる雨の間を縫って聞こえた絵里の言葉に小春は戸惑った。
絵里がニッと笑って続ける。
「ほら、ついてきてくれて、さ」
傘が意味を成さないくらいに雨は強い。もう二人の肩はずぶ濡れだった。絵里が不意に傘を外す。礫のような雨が髪に、額に覆いかぶさった。
あの夜もこんな雨が降っていた。でも絵里は外に出してさえもらえず、こうして雨に当たることは無かった。その代わりに浴びた血の雨よりも、この雨はずっと冷たい。気持ちを落ち着かせてくれる。
小春は傘を避けた絵里を見て、自分もそれに倣った。殆ど反射的に。
どんどん水を帯びていく絵里の姿は、やっぱり、綺麗だと思った。その顔中についている水滴が、涙のように見えた。
しかし、小春は思う。絵里は強い。絵里は、決して泣かない。今の自分のように、雨にその涙を誤魔化すことなど、絵里には無いのだ。彼女は本当に、強いのだから。
暫く濡れた街の中を二人歩いていくと、見知った大きな傘が眼前に現れた。
「ちょっと!あんたたち私を置いといて二人でどこいってたのよ!」
梨華の怒号が飛ぶ。思わず絵里と小春は身を竦めた。
「しかも、こんなびしょ濡れで…傘持ってる意味ないじゃん…。ほら、早く車に戻るわよ。風邪ひいても知らないんだから」
呆れた溜息をつきながらプンプンと怒って戻っていく梨華の背中を二人は追った。一度その顔を見合わせ、びしょ濡れになって髪の張り付いたお互いの顔に噴出しながら。
乙!小出しいいよいいよ!
ちょっ・・涙が・・・
更新ありがとうございます
ノノ*^ー^)
毎回毎回この作品読むときいい意味で緊張する 良いよ
156 :
名無し募集中。。。:2005/09/16(金) 22:06:01 0
从*・ 。.・)<なの
从*・ 。.・)<保全するの♪
更新キテター
読むたび本当に鳥肌立つよ
キレイ。
保全
保全
保全じゃ
物凄く面白いよ。
保全
ほい
ノd*^ー^) うへへへへっ
167 :
名無し募集中。。。:2005/09/17(土) 10:08:44 O
ノノ*^ー^)<人間凶器ですよ?
168 :
名無し募集中。。。:2005/09/17(土) 11:13:33 0
从*・ 。.・)<ほ ぜ ん
狂犬ほ
ほ
なんか今回、梨華ちゃんが梨華ちゃんらしい感じがした
172 :
名無し募集中。。。:2005/09/17(土) 15:52:27 0
前スレの妄想
|/!/!/!/!/!/!/!___!___!___!___!___!___!___!___!___!___!__
|/!/!/!/!/!/!/!___!___!___!___!___!___!___!___!___!___!__
|/!/!,ィ()/!/!/!/!___!___!___!___!___!___!___!___!___!___!__
|/!/!lソ !/!/!/!/!___!___!___!___!_∫.__!___!___!___!___!__
|/!/!┃!/!/!/!/ ∬ =- -= ∫ .フ/i___
|/!/!┃!/!/!/----------------------'/ |_____
|/!/!┃!/!/i ̄ ̄ ̄ノノハヽ..  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄i /∠∠
|/!/!┫!/!/|__...ノノ*^ヮ^)ノノ人ヽ___|/∠∠∠
|/!/!/!/∠∠∠∠./ つ@゚从*・ 。.・)。.∠∠∠∠∠
|/!/!/∠∠∠∠/(_  ̄)゚o゚/。つ。と)o゜∠∠∠∠
|/!/∠∠∠∠∠i====i(__)(~~)。o゜(~~)゜o。∠∠
|/∠∠∠∠∠∠ └‐┘∠∠∠∠'゜゚:"'∠∠∠∠
リd*^ー^)
从*・ 。.・)
ほぜん
保全
リd*^ー^)
保全
从*・ 。.・)
181 :
名無し募集中。。。:2005/09/18(日) 02:38:37 0
从*・ 。.・)
ノノ*^ー^)
183 :
名無し募集中。。。:2005/09/18(日) 02:51:08 0
从*・ 。.・)
从*・ 。.・)<保全するの♪
( ´ Д `)んぁ?
从*´ヮ`) ひまだー
ハロほ
モニほ
ノノ*^ー^)
( ^▽^)
191 :
名無し募集中。。。:2005/09/18(日) 16:23:58 0
从*・ 。.・)<保全するの♪
ノノ*^ー^)
ちゅっ♥
〃ハヾ ハヾ ミ、
ノノノ *^)(.・ *从ヾ
と ノ ヽ つ
(_)) ((_)
194 :
名無し募集中。。。:2005/09/18(日) 20:29:24 0
最初から見たけどさゆえりのハァーンの部分と
シリアスな部分がとても好きです
195 :
名無し募集中。。。:2005/09/18(日) 21:26:42 0
☆ノハヽ ゴールデンコンビだっ!! oノ人ヽo
ノノ*^ー^)つ ⊂(・ 。.・*从
( つ / _. ヽ ⊂ )
| (⌒) (Y_Y) (⌒) |
し' 三 三 `J
リd*^ー^)
从*・ 。.・)
保全
ほ
200 :
名無し募集中。。。:2005/09/19(月) 02:28:13 O
ドラクエ5よりもストーリー製がいい
ノノ*^ー^)
ho
ho
ドラクエシリーズなんて全部ストーリー糞じゃん。
205 :
名無し募集中。。。:2005/09/19(月) 11:57:02 O
5は神でしょ
子供の時に父親を殺されて大人になるまで奴隷にされて父親の仇を見つけたら石にされて…
。・゚・(つД`)・゚・。
ナニ関係ない話してるんだか
ほほほい
ほ
保全
リd*^ー^)
ほ
ho
ほぜん
_, ,_ パーン
ノノ*^ー^)
⊂彡☆))Д.´从
_, ,_ パシッ
ノノ*^ー^) ノn oノ人ヽヽo
ヽ(・ 。.・*从
☆ノノoノノヽヽo
∩ノノ* (・*从从∩ ん…
☆ノハヽ
ノノ*´ー`) ポッ oノノ人ヽo スタ スタ
(( 从*・ 。.・)
ハァ━━━━━ ;´Д` ━━━━━!!!
保全
保全
リd*^ー^)
保全
ho
ze
n
223 :
な:2005/09/20(火) 11:25:17 O
あ
へ
ん
226 :
FLH1Aak174.ngn.mesh.ad.jp:2005/09/20(火) 16:19:36 0
ズキュ━━━ ;´Д` ━━━ンLOVE!!!!
227 :
FLH1Aak174.ngn.mesh.ad.jp:2005/09/20(火) 16:22:44 0
ごめんね
雨上がりの星の見える夜に、さゆみは王宮の一室から外を見ていた。
首都であるこの街の夜景は、絢爛で美しい。高層のビルや、ネオンサインが、雨上がりなだけ一層のおぼろげに浮かんでいる。
王宮の正面には王宮通りと呼ばれている巨大な遊歩道がある。そして国内最大の大都会。さらにその向こうには無数の民家の明かりが見える。
さゆみはぼんやりと考えていた。
この光りの一つ一つに、人の息吹がある。一つの明かりの下に、一つ以上の人格と、思いと、命がひしめいている。その全てが、自分の肩の上に乗っているのだ。
過剰な意識ではない。この国の、唯一の主権者としてのさゆみの責任と義務。
この場所から見える全ての家の、すべての人、そしてこの場所からは見えない、この国に住む総ての人々の、命を守り、幸福を願い、それに尽力する義務がさゆみにはある。
とてつもなく巨大な責務だ。その重みは、たださゆみの上に、想像もつかない巨大な塊となって降り注ぐだけ。そして、それを考える度に彼女は思う。自分はなんて小さいのだろう、と。
王などとは幻に過ぎない。自分はただの、小さな人間だ。自分以外の人との間に、寸分の違いもあるものか。
さゆみの吐いた息は星空と街明かりの間を頼りなく彷徨い、消えた。
眼下の街を見下ろしながらさゆみは只管に考えた。
この場所から見える明かりの下の人の、どれだけが幸せを感じているだろう。苦悩と絶望を抱えているだろう。そして、自分という存在はその人達にとって、いったい何だというのだろう。
或いは星や月のような、一つの風景ではないだろうか。大昔から漠然とそこにあって、それが無かったとて大した意味はないような。ただそれが在るがために愛でられるような、そんな存在。それでも私は、彼らの幸福を願うことが出来るというのか……
私は強くない。この国の総ての人の幸せを願い、この国に住む総ての人の為に祈りを捧げることは出来ない。強くなりたい。強い心が欲しい。この窓から見える全ての家の幸せを、そしてこの窓から見えない総ての人の幸せを祈れるくらいに。
しかし、さゆみは今正反対の心を持ってしまっている。人々を、国民を、全世界の人間を呪いかけている。総てが灰になればいいとさえ、考えてしまうときがある。
さゆみに、幾人もの人々の命を奪わせたこの世界を。さゆみに、愛する人の命を奪わせようとする、この世界を。
再び、思う。
何かのせいにするのが私の心の弱さなら、すべてを引き起こしたのもまた、私の弱さだろう。一体強さとは何だろう。本当に強い人間など、この世にいるのだろうか。そして、若し居たのなら、それは本当に人間だろうか…
絵里だけが私に光りをくれた。彼女の存在だけが私を留まらせている。彼女に縋る私の心が、彼女を愛する私の心が弱さだとするならば、強さもまた、幻に過ぎないかもしれない。
思えば私は生まれたときから幻想と対峙して生きてきた。国家という幻想。平和という幻想。幸福という幻想。そして、孤独から抜け出せるという幻想…
それが無形の、けして触れることの出来ないものであればあるだけ、私は強くそれを追い求めてきたのだ。理想という幻想を。そして強さもまた、私は追い求めるだろう。
私はもはや、幻想に追いすがることしかできない。私という存在もまた幻想だから。
私にとって確かなものは一つしかない。私にとっての唯一の光りは、やはり絵里しかいない―――
その頃、外遊から帰ってきた里沙はあさ美のところに来ていた。
「お疲れ様です、新垣さん。3日で3国を周るのは大変だったでしょう。今晩はお休みになってはどうですか?」
「いや、ぜんぜん、大丈夫、問題ないよ。もう慣れてるからね」
「そうですか。陛下のところへは?」
「先程、ご挨拶に伺った」
王宮内にあるあさ美の個室は、さゆみ以外の誰も立ち入ることは出来ない。しかし里沙だけは、あさ美が個人的に通すことにした。あさ美にとって里沙が信頼できる友であると同時に、里沙にとってもあさ美が、唯一心落ち着ける相手であることを知っていたから。
「しかし宰相であるあなたが、直接他国を訪れなければならないとは…」
「仕方ないよ…。やっと内政が落ち着いてきたところで、外政を立て直すのはこれからの課題だからね…」
「まだ、王宮内でも敵は多そうですね」
「まあね。ある意味あさ美ちゃんが羨ましいよ」
「何なら対立者を消しましょうか?」
「……怖いって。真顔でそういうことをさぁ…」
「冗談はさておき、どうでしたか、成果は」
「ま、ぼちぼちかな」
「……」
「対立国だったS国も大分態度を軟化させてきたよ。他の二国も同様。国力が充実してきたら手のひらを返すっていうありがちなパターンかな」
あさ美はいったん考えこむような仕草をしてから口を開いた。
「そのことなんですが…今月に入って既に7人、他国のスパイを捕縛しました。S国のスパイも二人。しかしこれも氷山の一角でしょう」
「うん、だろうね。正直どこもまだ様子見してるね。品定めってとこでしょ。陛下の御力でここまで回復したとはいっても、この先どうなるかはまだ分からない。特にS国をはじめとした民主国は我国と根本的に折り合うはずは無いんだしね」
「嘗ては散々組織に加担して国内を荒らしてくれた彼らが、今度は国利の為に手のひらを返す…。私には政治のことはよく分かりませんが、恐ろしいものですね」
「そういうもんだよ。しかもそれが『国民が話し合って決めた』やり方だからね…」
「私は外国に行ったことはありますが、民主主義国で生活したことはありませんので、よくわかりませんが…。そういうものですか。国民の総意が、他国の血を啜る結果になる…」
「どこの民主主義もまだ幼いんだよ。一見立派なシステムがあっても、国民全体のレベル低ければ衆愚に陥る。そしてこの国もそう。もし今この国で同じことをすればもっと悲惨な状況は免れないね」
「私も嘗ては反政府組織の一員ですからね…確かに急ぎすぎていたきらいがありましたが…」
「でもいつかはそちらに移行しなければならない」
里沙の言葉に、あさ美は少し驚いて顔を上げた。この王政国家の最高の政治家から、そんな言葉が出たことがあさ美には酷く意外だった。
「お、あさ美ちゃんが意外そうな顔してる。でもね、これは陛下のご意向なんだよ」
「え…?」
「陛下はこの国もいずれ国民に主権を譲渡するのが自然の流れだと仰った。ただ、今はまだ国も小さく、国民も幼すぎるからそれが出来ないだけだって」
「……」
「だから私に内政、特に教育の拡充を強く要請なさったんだよ」
あさ美もはっきりとではないが、さゆみからそんな話を聞いたことがあることを思い出した。そしてその時に、あさ美が考えたことも同時に思い出す。
あさ美は、今度はひどく暗い面持ちになった。里沙はその理由がよくわからず、あさ美の顔を覗き込む。あさ美はゆっくり口を開いた。
「その陛下のご意向の意味が、新垣さんにはわかりますか…?」
「…どういうこと?」
あさ美は深く椅子に腰を下ろし、溜息をついた。
「主権を譲渡する…口では簡単に言えますが、そんなこと普通は出来っこありません。陛下のお考え通りに機が熟せば、再び血の革命が起こるでしょう」
「…そうだろうね」
「陛下は自分自身が手塩にかけて教育を施した国民の手によって自らを殺そうとしている…」
「……」
「教育を得、他国を知った国民はこう思うでしょう。『王政はやはりおかしい。国政は国民の手で行うべきだ』そして革命を起こすでしょう。陛下はそれを望んでおられる…」
「……そんな」
「諸外国をよく見てきたあなたなら分かるでしょう。殆どの国ではそれまでの国王は処刑されるか、少なくともその地位を剥奪され罪人となったはずです」
「でも…それは圧制を敷き、国民の怒りを招き結果倒された王達だよ…」
「同じことですよ。やがて国民は、陛下一人がこの国の主権を持っていることに怒りを覚えるようになる」
「……」
「あの御方の考えは崇高すぎる。人にはそれが狂気に映るでしょう。喩えるならば、自分を食い殺させる為に子供を育てているようなものです」
「そんな…あさ美ちゃんの考えすぎでじゃ…」
「あの御方の目を見ていればわかりますよ。計り知れない高みをいつも見据えておられる。そしてもがき苦しんでおられる…」
里沙の額から汗が浮かんできた。あさ美はすっと目を閉じ、さゆみの言葉の一つ一つを思い出している。里沙にも、思い当たる節はあった。
「そういえば最近の陛下は酷く塞ぎこんでおられる…先程、報告に覗ったときも…」
「陛下は今本当に苦しまれてますよ。それはあらゆる事柄に起因していると思いますが…」
「うん…分かるよ。陛下の理想はとてつもなく大きい…それはわかるけど…」
「陛下は、ご自身の美しさをすら憎んでいるようです」
「……陛下の美しさ?」
「以前、私にこんなことを仰ったことがあります。
『国民は私の美しさに熱狂しすぎているわね。すごく、危険なことだわ…。私の、この美しさは一つは役に立ちました。しかし今となっては…。
もし、この顔が焼けただれ、醜く歪んでしまえば国民は冷静になれる。今までどれだけ幻想に現を抜かしていたか、雲が晴れるように理解することでしょうね…。でも、私にはその勇気すら無いのです』と」
「……陛下は、昔からそうだった。ご自分の美しさ故に人々が巻き起こす事に酷く気を落とされていたね…」
「私は古くから陛下のお側に居たわけではありませんが、陛下はずっと孤独の中に生きてきたそうです。そして、その美しさも、孤独を助長するものだった」
「陛下の苦しみは、私も感じてはいたよ…でもそれを気丈に耐える強さが陛下にはあった…」
「いえ、そんなことはありません。陛下は今も、常に孤独を感じていらっしゃる…。陛下は…本当はまだ齢16の少女なんですから…」
里沙はあさ美の話を聞き、深く項垂れた。すっかり雨の上がった窓の外からは、夏を予感させる生暖かい風が流れ込んできた。あさ美も未だ目を閉じ、自らの苦悩と戦っていた。
さゆみの苦しみを誰よりも近くで感じていた。しかし、あさ美にはどうする術も無かった。ただじっとさゆみを見守ることしかできなかった。そしてこれからも、きっと自分はそうするだろうと思った。
「私はおろか、あさ美ちゃんですら陛下を苦しみからお救いすることは出来ないの…?」
里沙が呟いた。あさ美が目を開け、今度は天井に釣り下がった電灯を見上げる。
「誰も、陛下の心に立ち入ることは出来ませんよ…。ましてや私たちは陛下の道具、手足です。手足は決して話しかけることは無いのですから…」
あさ美はそう呟きながら、心に一人の姿を思い浮かべた。もしさゆみの心に立ち入ることが出来る人間がいるとするならば、彼女だろう…
二人はそれぞれに思い悩んでいた。さゆみにとっての自分たちとは一体なんなのか。自分たちには何が出来るのか。
街の夜は今日も穏やかに更けていった。蠢く影の存在など、誰の目にも留まりはしない。
ノノ*^ー^) 作者さん乙ですよ
更新キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
さゆが処刑されませんように……
237 :
◆3CwfEE6bF. :2005/09/20(火) 18:14:37 O
ノノ*^ー^)絵里バカだからよくわかりませんよ?(クネクネ)
さゆが「パンがなければお菓子を食べればいい」って言ったら革命開始
更新キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
禿乙です
240 :
名無し募集中。。。:2005/09/20(火) 20:16:40 0
さゆーーー
保全
保全
243 :
名無し募集中。。。:2005/09/20(火) 22:29:14 0
狂犬ミキティーとか敵は増えるのに味方はふにゃふにゃ
さゆ頑張れー
244 :
名無し募集中。。。:2005/09/20(火) 22:38:31 0
コンコンと理沙ちゃん、さゆを信じて支えてあげて
保全
ノノ*^ー^)
从*・ 。.・)<作者さん乙なの
コンコンとガキさんもいい味出してるよね
というかキャラ全てがそれぞれ味がある
保全
ノノ*^ー^)