>>406 「僕は──れいにゃが好きだ」
「「はぁぁぁ!?」」
僕は正直な気持ちを述べた。そう、僕は『娘。』のれいにゃヲタだった。
新垣も亀井もかなりいい所まで行ったけど、僕にとってまだまだだった。
れいにゃを超える存在なんて無かった。
新垣と亀井はしばらく放心状態になった。
大丈夫か?と肩を揺すっても、二人は岩のように微動だにしなかった。
しばらくして、新垣が正気に戻って僕の事をを睨み、無言のまま自分のリュックを漁り始めた。
それは置いといて、僕は亀井の肩を揺すって正気に戻させた。
そんな僕を新垣は押しのけ、気が付いた亀井の手に何かを装着した。
振り向いた新垣の右手と、こっちを睨みだした亀井の左手には見慣れたものが着けられていた。
「それは?もしかして──」
怯えながら僕は問いかけたが、新垣と亀井はそれを聞かずに腕を振りかぶった。
「「このバカ!」」
そう言ってカイザーナックルの装着された手を振りぬく新垣の亀井の動きが、僕にはスローモーションに見えた。
交通事故の時とかにこんな感覚になるって言ってたな──ゆっくりと進む時間の中で、僕はそう思った。
初夏の光を反射しながらゆっくりと向かってくるカイザーナックルの指の背部分には、何か文字が彫ってあった。
新垣の手と亀井の手が近付くにつれて、その文字が読めてきた。
左から、「モ」「ー」「ニ」「ン」、「グ」「娘」「。」「命」。
僕はそこから先の事をあまり覚えていない。
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