>>120 「Zzz...」
「こらっ!屋上は立入禁止でしょうが!」
「うわぁ!ごめんなさい!──って、亀」
やっぱりいつのまにか眠っていた僕を、先生の振りをして起こしたのは亀井だった。
亀井は僕と同じクラスで、新垣とも幼なじみだって聞いた事がある。
今日の新垣の事、何か知ってるかな?──そう思って亀井に話しかけた。
「あのさ、亀」
「亀言うな!」
僕が亀井を知ったのは、新垣を知るよりもだいぶ前だった。
高校に入った頃、階段から転げ落ちようとした女子を、寸前の所で僕が後から捕まえた。
それが亀井だった。
後になって分かったが、亀井は実にオッチョコチョイでアフォな子だった。
その時も、モンシロチョウを追いかけていたら階段に気付かずに落ちる寸前、の所だったという。
新垣の事について、また問いかけた。
「新垣の様子がおかしいみたいなんだけど、亀、何か知らない?」
「──知らない」
さっきまでの元気とは違って、亀井は急にうつむいてそう答えた。また僕は聞いた。
「幼なじみで親友だろ?」
「うん。──それよりもさ!何であんた、いつもここにいんの?」
返事の後、急に明るく喋り出す亀井は僕の横に座ってきた。
「何でいつもここにいるって知ってんの?」
「うへへへ」
「何で隣に座ってくるの?」
「うへへへ」
率直な疑問を僕が投げかけても亀井は、奇妙な笑い声と満面の笑顔ではぐらかすだけだった。